(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/495 20060101AFI20250416BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20250416BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20250416BHJP
A61K 31/4535 20060101ALI20250416BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20250416BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20250416BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250416BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250416BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20250416BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20250416BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250416BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
A61K31/495
A61K31/192
A61K31/198
A61K31/4535
A61K31/485
A61K31/137
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/08
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2021065660
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2020072620
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020147335
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】東 梢
(72)【発明者】
【氏名】志賀 祐子
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-90572(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111167(WO,A1)
【文献】特開2014-111567(JP,A)
【文献】特開2011-225529(JP,A)
【文献】特開2018-108950(JP,A)
【文献】特開2016-94364(JP,A)
【文献】Anes A M Thabit et al.,"Design and Evaluation of Effervescent Powder Formulations of a Novel Combination of Ketoprofen, Pseudoephedrine HCl and Levocetirizine dihydrochloride",Journal of Chemical and Pharmaceutical Research,2018年,Vol.10, No.7,p.7-16,https://www.researchgate.net/publication/343798444
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
9/00-9/72
47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ロキソプロフェン又はその塩
と、(b)レボセチリジン又はその塩
と、(c)(c1)カルボシステイン、(c2)チペピジン及びその塩、(c3)デキストロメトルファン及びその塩、(c4)プソイドエフェドリン及びその塩、(c5)ジメモルファン及びその塩、並びに(c6)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種
とを含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
(a)ロキソプロフェン及びその塩がロキソプロフェンナトリウム水和物である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(b)レボセチリジンの塩がレボセチリジン塩酸塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
成分(c)が、(c1)カルボシステインである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
成分(c)が、(c2)チペピジンまたはその塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
チペピジンの塩がチペピジンヒベンズ酸塩である請求項1又は5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
成分(c)が、(c3)デキストロメトルファン又はその塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である請求項1又は7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
成分(c)が、(c4)プソイドエフェドリン又はその塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
プソイドエフェドリンの塩がプソイドエフェドリン塩酸塩である請求項1又は9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
成分(c)が、(c5)ジメモルファン又はその塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ジメモルファンの塩がジメモルファン
リン酸塩である請求項1又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
成分(c)が、(c6)メチルエフェドリン又はその塩である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
メチルエフェドリンの塩がdl-メチルエフェドリン塩酸塩である請求項1又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
剤形が、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、経口液剤、又はシロップ剤である請求項1~14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
(a)ロキソプロフェン又はその塩及び(b)レボセチリジン又はその塩を含み、(b)レボセチリジン又はその塩が安定化された医薬組成物を製造するための、(c)(c1)カルボシステイン、(c2)チペピジン及びその塩、(c3)デキストロメトルファン及びその塩、(c4)プソイドエフェドリン及びその塩、(c5)ジメモルファン及びその塩、並びに(c6)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用。
【請求項17】
(a)ロキソプロフェン又はその塩及び(b)レボセチリジン又はその塩を含む医薬組成物中の(b)レボセチリジン又はその塩を安定化するための、(c)(c1)カルボシステイン、(c2)チペピジン及びその塩、(c3)デキストロメトルファン及びその塩、(c4)プソイドエフェドリン及びその塩、(c5)ジメモルファン及びその塩、並びに(c6)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェンとレボセチリジン又はその塩を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンは、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛、手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎に有効であるほか、急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛にも有効であり、スイッチOTC成分として認可された(非特許文献1)。
【0003】
レボセチリジン及びその塩は、第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第2世代抗ヒスタミン薬)として、アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,皮膚疾患(湿疹・皮膚炎,皮膚そう痒症)に伴うそう痒に有効である(非特許文献2)。レボセチリジンは、セチリジン塩酸塩の光学異性体のうち、より生理活性の強いR-エナンチオマーのみを光学分割したものである。
【0004】
カルボシステインは、粘液構成成分調整作用、杯細胞過形成抑制作用、気道炎症抑制作用及び粘膜正常化作用を有し、上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核に対する優れた去痰作用を有する化合物として広く知られており、総合感冒薬や鎮咳去痰薬に広く配合されている(非特許文献3)。
【0005】
チペピジン及びその塩は延髄の咳中枢を抑制し咳の感受性を低下させることにより鎮咳作用を示すとともに、気管支腺分泌を亢進し気道粘膜線毛上皮運動を亢進することにより去痰作用を示す化合物として、感冒・上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)・急性気管支炎・慢性気管支炎・肺炎・肺結核・気管支拡張症に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難に広く用いられている(非特許文献4)
【0006】
デキストロメトルファン及びその塩は、延髄にある咳中枢に直接作用し、咳反射を抑制することにより鎮咳作用を示す化合物として、感冒・急性気管支炎・慢性気管支炎・気管支拡張症・肺炎・肺結核・上気道炎(咽喉頭炎,鼻カタル)に伴う咳嗽に広く用いられている(非特許文献5)。
【0007】
プソイドエフェドリン及びその塩は、α受容体を刺激し、鼻粘膜の血管平滑筋を収縮させ、血流を減少させることにより、鼻粘膜の充血や腫脹を軽減し、強い鼻閉改善効果を示すことから、内服用鼻炎薬に広く用いられている(非特許文献6)。
【0008】
ジメモルファンリン及びその塩は、延髄の咳中枢に直接作用して鎮咳作用を示す化合物として、上気道炎、肺炎、急性気管支炎、肺結核、珪肺および珪肺結核、肺癌、慢性気管支炎に伴う鎮咳に広く用いられている(非特許文献7)。
【0009】
メチルエフェドリン及びその塩は、交感神経興奮様薬物であり、β2受容体刺激による気管支拡張作用を有し、総合感冒薬や鎮咳去痰薬に広く配合されている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】添付文書 ロキソニン錠60mg/ロキソニン細粒10%(2018年1月改訂(第20版))第一三共株式会社
【文献】添付文書 ザイザル錠5mg(2019年8月改訂(第9版))グラクソ・スミスクライン株式会社
【文献】添付文書 ムコダイン錠250mg/ムコダイン錠500mg(2016年12月改訂(第16版))杏林製薬株式会社
【文献】添付文書 アスベリン錠10/アスベリン錠20/アスベリン散10%/アスベリンドライシロップ2%/アスベリンシロップ0.5%/アスベリンシロップ「調剤用」2%(2017年10月改訂(第13版))ニプロESファーマ株式会社
【文献】添付文書 メジコン錠15mg/メジコン散10%(2016年4月改訂(第11版))塩野義製薬株式会社
【文献】添付文書 ディレグラ配合錠(2019年7月改訂(第7版))塩野義製薬株式会社
【文献】添付文書 アストミン錠(2015年10月改訂(第10版))株式会社オーファンパシフィック
【文献】添付文書 フスコブロン配合シロップ(2019年7月改訂(第13版))武田テバファーマ株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、ロキソプロフェン又はその塩及びレボセチリジン又はその塩を含有する医薬組成物を製造したところ、レボセチリジン又はその塩の含量が経時的に低下するという驚くべき知見を得た。本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ロキソプロフェン又はその塩とレボセチリジン又はその塩を含有しても、レボセチリジン又はその塩の経時的な含量低下が抑制された医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、カルボシステイン、チペピジン及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、プソイドエフェドリン及びその塩、ジメモルファン及びその塩,並びにメチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させると、意外にもレボセチリジン塩酸塩の経時的な含量低下が抑えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は
(1)(a)ロキソプロフェン又はその塩、(b)レボセチリジン又はその塩、(c)(c1)カルボシステイン、(c2)チペピジン及びその塩、(c3)デキストロメトルファン及びその塩、(c4)プソイドエフェドリン及びその塩、(c5)ジメモルファン及びその塩、並びに(c6)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする医薬組成物、
(2)(a)ロキソプロフェン及びその塩がロキソプロフェンナトリウム水和物である(1)に記載の医薬組成物、
(3)(b)レボセチリジンの塩がレボセチリジン塩酸塩である(1)に記載の医薬組成物、
(4)成分(c)が、(c1)カルボシステインである(1)に記載の医薬組成物、
(5)成分(c)が、(c2)チペピジンまたはその塩である(1)に記載の医薬組成物、
(6)チペピジンの塩がチペピジンヒベンズ酸塩である(1)又は(5)に記載の医薬組成物、
(7)成分(c)が、(c3)デキストロメトルファン又はその塩である(1)に記載の医薬組成物、
(8)デキストロメトルファンの塩がデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物である(1)又は(7)に記載の医薬組成物、
(9)成分(c)が、(c4)プソイドエフェドリン又はその塩である(1)に記載の医薬組成物、
(10)プソイドエフェドリンの塩がプソイドエフェドリン塩酸塩である(1)又は(9)に記載の医薬組成物、
(11)成分(c)が、(c5)ジメモルファン又はその塩である(1)に記載の医薬組成物、
(12)ジメモルファンの塩がジメモルファンリン塩酸塩である(1)又は(11)に記載の医薬組成物、
(13)成分(c)が、(c6)メチルエフェドリン又はその塩である(1)に記載の医薬組成物、
(14)メチルエフェドリンの塩がdl-メチルエフェドリン塩酸塩である(1)又は(13)に記載の医薬組成物、
(15)剤形が、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、経口液剤、又はシロップ剤である(1)~(14)のいずれかに記載の医薬組成物、
(16)(a)ロキソプロフェン又はその塩及び(b)レボセチリジン又はその塩を含み、(b)レボセチリジン又はその塩が安定化された医薬組成物を製造するための、(c)(c1)カルボシステイン、(c2)チペピジン及びその塩、(c3)デキストロメトルファン及びその塩、(c4)プソイドエフェドリン及びその塩、(c5)ジメモルファン及びその塩、並びに(c6)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用、
(17)(a)ロキソプロフェン又はその塩及び(b)レボセチリジン又はその塩を含む医薬組成物中の(b)レボセチリジン又はその塩を安定化するための、(c)(c1)カルボシステイン、(c2)チペピジン及びその塩、(c3)デキストロメトルファン及びその塩、(c4)プソイドエフェドリン及びその塩、(c5)ジメモルファン及びその塩、並びに(c6)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の使用、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ロキソプロフェン又はその塩及びレボセチリジン又はその塩を含有し、レボセチリジン又はその塩の安定性に優れた医薬組成物の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いられるロキソプロフェンは、化学式C15H18O3で示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。ロキソプロフェンは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、ロキソプロフェンの塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等が挙げられ、特に好ましくはナトリウム二水和物である。ロキソプロフェン又はその塩は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の医薬組成物中におけるロキソプロフェンの含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常5~95質量%、好ましくは5~90質量%、5~85質量%、5~80質量%、5~70質量%、5~60質量%である。
【0016】
本発明に用いられるレボセチリジンは、化学式C21H25ClN2O3示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。また、レボセチリジンの塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ヒベンズ酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。レボセチリジン又はその塩は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の医薬組成物中におけるレボセチリジン又はその塩の含有量(レボセチリジン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.001~50質量%、0.01~50質量%、好ましくは0.01~10質量%、0.1~10質量%である。
【0017】
本発明に用いられるカルボシステインは、化学式C5H9NO4Sで示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしないが、通常、L-カルボシステインが使用される。カルボシステインは、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の医薬組成物中におけるカルボシステインの含有量は、特に限定されないが、通常1~95質量%、5~85質量%、好ましくは10~70質量%である。
【0018】
本発明に用いられるチペピジンは、化学式C15H17NS2で示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなチペピジン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、チペピジン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ヒベンズ酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくはヒベンズ酸塩である。本発明の医薬組成物中におけるチペピジン又はその塩の含有量(チペピジン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.1~50質量%、0.1~30質量%、好ましくは1~30質量%である。
【0019】
本発明に用いられるデキストロメトルファンは、化学式C18H25NOで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなデキストロメトルファン又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、デキストロメトルファン又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、臭化水素酸塩、フェノールフタリン塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは臭化水素酸塩である。本発明の医薬組成物中におけるデキストロメトルファン又はその塩の含有量(デキストロメトルファン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.1~90質量%、0.1~50質量%、好ましくは0.5~30質量%である。
【0020】
本発明に用いられるプソイドエフェドリンは、化学式C10H15NO示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。また、プソイドエフェドリンの塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ヒベンズ酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。プソイドエフェドリン又はその塩は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の医薬組成物中におけるプソイドエフェドリン又はその塩の含有量(プソイドエフェドリン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常1~95質量%、好ましくは1.5~90質量%、1.5~85質量%、1.5~80質量%、1.5~70質量%、1.5~20質量%である。
【0021】
本発明に用いられるジメモルファンは、化学式18H25NC示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。また、ジメモルファンの塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ヒベンズ酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくはリン酸塩である。ジメモルファン又はその塩は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の医薬組成物中におけるジメモルファン又はその塩の含有量(ジメモルファン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.01~50質量%、好ましくは0.1~30質量%である。
【0022】
本発明に用いられるメチルエフェドリンは、化学式C11H17NO示される化合物であり、医薬的に許容されるものであれば特に限定はしない。また、メチルエフェドリンの塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、ヒベンズ酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。メチルエフェドリン又はその塩は、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明の医薬組成物中におけるメチルエフェドリン又はその塩の含有量(メチルエフェドリン又はその塩のうちの2種以上が含有される場合にはそれらの合計含有量、以下同じ)は、その薬効を示す量であれば特に限定されないが、通常0.01~50質量%、好ましくは0.05~10質量%である。
【0023】
また、(a)ロキソプロフェン又はその塩と(b)レボセチリジン又はその塩の配合比は、特に限定されないが、レボセチリジン及びその塩1質量部に対し、ロキソプロフェン6質量部以上、12質量部以上が好ましい。レボセチリジン及びその塩の経時的な含量低下が顕著になるからである。上限は特に限定されないが、36質量部、18質量部としてもよい。
【0024】
また、(a)レボセチリジン及びその塩と、(c)カルボシステインの配合比は、発明の効果の点からレボセチリジン及びその塩1質量部に対し、カルボシステインを4質量部以上が好ましく、25質量部以上、50質量部以上でもよい。また、上限は特に限定されず、150質量部、75質量部としてもよい。
【0025】
(a)レボセチリジン及びその塩と、(c)チペピジン及びその塩の配合比は、レボセチリジン及びその塩1質量部に対し、発明の効果の点からチペピジン及びその塩を1質量部、2質量部以上が好ましく、2.5質量部以上、5質量部以上がより好ましく、4質量部以上としてもよい。また、上限は特に限定されず、15質量部、7.5質量部、3.75質量部としてもよい。
【0026】
(a)レボセチリジン及びその塩と、(c)デキストロメトルファン及びその塩の配合比は、レボセチリジン及びその塩1質量部に対し、発明の効果の点からデキストロメトルファン及びその塩を0.5質量部以上、0.8質量部以上、1質量部以上が好ましく、1.6質量部以上、2.4質量部以上、3.2質量部以上がより好ましい。また、上限は特に限定されず、10質量部としてもよく、9.6質量部、4質量部としてもよい。
【0027】
(a)レボセチリジン及びその塩と、(c)プソイドエフェドリン及びその塩の配合比は、レボセチリジン及びその塩1質量部に対し、発明の効果の点からプソイドエフェドリン及びその塩を2質量部以上、4質量部以上、4.5質量部以上、9質量部以上が好ましく、また、上限は特に限定されず、27質量部、13.5質量部、12質量部としてもよい。
【0028】
(a)レボセチリジン及びその塩と、(c)ジメモルファン及びその塩の配合比は、レボセチリジン及びその塩1質量部に対し、発明の効果の点からジメモルファン及びその塩を0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、4質量部以上が好ましく、また、上限は特に限定されず、10質量部としてもよく、9.6質量部、4質量部としてもよい。
【0029】
(a)レボセチリジン及びその塩と、(c)メチルエフェドリン及びその塩の配合比は、レボセチリジン及びその塩1質量部に対し、発明の効果の点からメチルエフェドリン及びその塩を0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、4質量部以上が好ましく、また、上限は特に限定されず、15質量部、7.5質量部、3.75質量部としてもよい。
【0030】
本発明の医薬組成物中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、清涼化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、懸濁剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤、可塑剤、可溶化剤、乳化剤、pH調節剤、緩衝剤、矯味矯臭剤、清涼化剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。
【0031】
本発明の医薬組成物に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0032】
本発明の医薬組成物に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール等が挙げられ、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、清涼化剤としては、メントール、ハッカ油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、日本薬局方の製剤通則に規定されている剤形であれば特に限定
されず、通常使用され得る任意の剤形をとることができる。例えば、錠剤、散剤、細粒剤
、顆粒剤、丸剤、カプセル剤などの固形製剤、又は経口液剤、シロップ剤などの液剤が挙
げられる。好ましくは錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(好ましくは硬カプセル剤)である。日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠及び溶解錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、有核錠、積層錠などが含まれる。また、錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることができる。さらに、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。
【0034】
本発明の固形製剤は、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。
例えば、(a)ロキソプロフェン又はその塩(以下、(a)成分ともいう)、(b)レボセチリジン又はその塩(以下、(b)成分ともいう)、(c)カルボシステイン、チペピジン及びその塩、デキストロメトルファン及びその塩、プソイドエフェドリン及びその塩、ジメモルファン及びその塩,並びにメチルエフェドリン及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、(c)成分ともいう)を単に混合するだけでも良く、混合後に造粒しても良く、得られた造粒物を被覆してもよい。また、(a)成分、(b)成分又は(c)成分は必ずしも同一の造粒物に含まれている必要はない。 例えば、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後に、(b)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(b)成分を含有する造粒物を製造後に、(c)成分を混合する、あるいは、(a)成分と(c)成分を含有する造粒物と、(b)成分と(c)成分を含有する造粒物を製造後、2つの造粒物を混合する、等である。
【0035】
造粒方法も特に限定されず、湿式造粒法、乾式造粒法又は溶融造粒法などにより製造できるが、好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法には、例えば撹拌造粒法、流動層造粒法、練合造粒法、押し出し造粒法、転動流動造粒法が挙げられる。また得られた造粒物に適宜上記有効成分や賦形剤などの慣用の製剤添加剤を配合してもよい。また、このようにして得た混合物を打錠して錠剤とすることもできる。錠剤を製造する場合は、直接打錠法により製造してもよい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例、対照例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
(対照例1)
レボセチリジン塩酸塩に適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例1)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例2)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部及び結晶セルロース4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例1)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部及びL-カルボシステイン4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例2)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部及びチペピジンヒベンズ酸塩4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例3)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部及びデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例4)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部、プソイドエフェドリン塩酸塩2質量部及び乳糖7質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
【0037】
(試験方法)
対照例、比較例及び実施例の組成物を65℃にて14日間保存し、14日後における組成物中のレボセチリジン塩酸塩の残存率をHPLC法により評価した。
表1に、65℃14日保存後のレボセチリジン塩酸塩残存率(%)を示した。
【0038】
【0039】
表1に示すように、ロキソプロフェンナトリウム水和物とレボセチリジン塩酸塩を配合した比較例1~2ではレボセチリジン塩酸塩の含量に低下が確認された。一方、L-カルボシステイン、チペピジンヒベンズ酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、及びプソイドエフェドリン塩酸塩を配合した実施例1~4では、レボセチリジン塩酸塩の含量の低下を抑制することができた。
【0040】
(実施例5)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部、チペピジンヒベンズ酸塩1質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例6)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物1.6質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例7)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部、ジメモルファンリン酸塩1質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(実施例8)
レボセチリジン塩酸塩1質量部に対し、ロキソプロフェンナトリウム水和物10質量部、dl-メチルエフェドリン塩酸塩1質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
【0041】
(試験方法)
実施例の組成物を65℃にて14日間保存し、14日後における組成物中のレボセチリジン塩酸塩の残存率をHPLC法により評価した。
表2に、65℃14日保存後のレボセチリジン塩酸塩残存率(%)を示した。
【0042】
【0043】
表1の比較例1~2で確認されたレボセチリジン塩酸塩の含量の低下が、チペピジンヒベンズ酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、ジメモルファンリン酸塩及びdl-メチルエフェドリン塩酸塩を配合した実施例5~8では抑制されていることが明らかとなった。
【0044】
以下に製剤調製例を挙げる。
製剤例1~12
表3及び表4記載の処方例について、公知の技術を用いて錠剤、散剤又は顆粒剤を製造する。得られる散剤又は顆粒剤を、公知の技術を用いて、硬カプセルに充填し、硬カプセル剤を製造する。
【0045】
【0046】
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により、ロキソプロフェン又はその塩及びレボセチリジン又はその塩を含有し、レボセチリジン及びその塩の安定性に優れた医薬組成物の提供が可能となった。