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  • 特許-非リボソームRNA含有試料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】非リボソームRNA含有試料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20250416BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20250416BHJP
【FI】
C12N15/10 120Z
C12Q1/6869 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021561394
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 JP2020043538
(87)【国際公開番号】W WO2021106814
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019211933
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】水戸 麻理
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-514850(JP,A)
【文献】Methods,2017年,vol.126, p.112-129
【文献】生物工学会誌,2016年,第94巻 第8号,p.481-484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
mRNAとリボソームを含む試料中で、
Mg2+ キレート剤を用いてリボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)、及び
工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを限外ろ過又はサイズ排除クロマトグラフィーにより除去する工程(b)を含む、
非リボソームRNA含有試料の製造方法。
【請求項2】
mRNAとリボソームを含む試料中でRNAを分解する工程又はRNAを断片化する工程を更に含む、請求項1に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法。
【請求項3】
前記Mg2+ キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びグリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA、GEDTA)からなる群から選択される少なくとも一である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して非リボソームRNA含有試料を得る工程、及び
非リボソームRNA含有試料中のRNAの塩基配列を決定する工程
を含む、非リボソームRNAの分析方法。
【請求項5】
Mg2+ キレート剤、及び
限外ろ過膜又はサイズ排除クロマトグラフィーカラムを含む、
請求項1~3の何れか一項に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施するために用いられるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非リボソームRNA含有試料の製造方法に関する。本発明は、非リボソームRNA含有試料の製造方法により製造された非リボソームRNA含有試料を用いる、非リボソームRNAの分析方法に関する。更に、本発明は、非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施するために用いられるキットに関する。
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月25日出願の日本特願2019-211933の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
【背景技術】
【0002】
次世代シーケンサーの登場により、シーケンス解析のスピードは飛躍的に向上し、大きなゲノム領域を対象とする研究ができるようになった。次世代シーケンサーはランダムに切断された数千万から数億のDNA断片を同時並列に処理することができ、1回のシーケンスランで10億塩基(1ギガベース)から1000億塩基(1テラベース)に届くまでデータを得ることができる。次世代シーケンサーは、全ゲノムシーケンスのほか、疾患などの特定の研究対象に関連するゲノム領域をターゲットにするターゲットシーケンスやメチル化シーケンスのようなエピジェネティクスなどの研究で利用されている。
【0003】
また、次世代シーケンサーは、分子生物学のセントラルドグマ、すなわち遺伝情報は「DNA→(転写)→mRNA(メッセンジャーRNA)→(翻訳)→タンパク質」の順に伝達されるという概念の研究にも利用されている。例えば、RNA-Seq(RNAシーケンス)は、次世代シーケンサーを使用して、特定の瞬間の生体サンプル中のRNAの存在と量を明らかにして、網羅的な遺伝子発現解析を行うことができる。更に、mRNAからタンパク質が作られる翻訳という反応がどのように制御されているのかを解明する研究では、次世代シーケンサーを使用するリボソームプロファイリングという技術により、どのようなmRNAのどのコドンがリボソームによって解読されているかを網羅的に解析して、翻訳の状態を俯瞰することができる。
【0004】
リボソームプロファイリングは、リボソームで保護されたmRNA 断片のディープシーケンシングに基づいた手法である(特許文献1)。リボソームプロファイリングの情報は、翻訳調節の調査、遺伝子発現の測定、タンパク質合成速度の測定、又はタンパク質の存在量の予測に役立てることができる。
【0005】
特許文献1 米国特許第8486865号明細書
【0006】
非特許文献1 Ingolia et al., 2009, Science, 324, 218-23
非特許文献2 Weinberg et al., 2016, Cell Rep, 14, 1787-1799
非特許文献3 McGlincy and Ingolia, 2017, Methods, 126, 112-129
特許文献1および非特許文献1から3の全記載は、参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のリボソームプロファイリングには、リボソームRNA(rRNA)がシーケンシングライブラリを過剰に占有しているため、分析に使用可能なシーケンスリードの割合、具体的にはタンパク質コード領域(CDS)にマッピングされるシーケンスリードの割合が少ないという問題がある。例えば、非特許文献1は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeでリボソーム保護アッセイを使用して得た4200万個のフラグメントをシーケンスしたところ、700万(16%)のシーケンスリードがCDSにマッピングされたが、残りのほとんどはrRNAに由来したと報告している。一般に統計分析はmRNAのシーケンスリードの規模に依存するため、ライブラリで使用可能なシーケンスリードの収率が低いと、リボソームプロファイリングなどのディープシーケンシングベースのアプローチで分析の障害となる。
【0008】
リボソームプロファイリングのほか、RNA-seqにもシーケンシングライブラリ中に過剰なrRNAが混入するという課題が存在する。非特許文献2は、mRNAが濃縮されていないトータルRNAからRNA-seq用ライブラリを調製したところ、1億9970万のリードの90.2%がrRNAであったことを報告している。過剰なrRNAのシーケンスリードの存在は、トランスクリプトーム解析の効率を著しく低下させるという問題がある。
【0009】
rRNAのシーケンスリードを減らすために、rRNAにハイブリダイズして磁気ビーズにトラップできるrRNA-subtraction オリゴヌクレオチドが使用されている(非特許文献2,3)。しかしながら、rRNA-subtraction オリゴヌクレオチドを使用したrRNA-depletionでも、rRNAのシーケンスリードを十分に減らすことはできなかった。よって、rRNAのシーケンスリードを減じるための新たな方法が求められていた。
よって、本発明の課題は、リボソームを除去するための新たな工程を含む、非リボソームRNA含有試料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離することにより効率的にリボソームのサブユニットが除去できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1] mRNAとリボソームを含む試料中で、
リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)、及び
工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)を含む、
非リボソームRNA含有試料の製造方法。
[2] mRNAとリボソームを含む試料中でRNAを分解する工程又はRNAを断片化する工程を更に含む、[1]に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法。
[3] リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)がキレート剤を用いて行われる、[1]又は[2]に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法。
[4] 工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)が限外ろ過により行われる[1]~[3]の何れか一に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法。
[5] [1]~[4]の何れか一に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して非リボソームRNA含有試料を得る工程、及び
非リボソームRNA含有試料中のRNAの塩基配列を決定する工程
を含む、非リボソームRNAの分析方法。
[6] リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させるための試薬、及び
リボソームのサブユニットを除去するための手段を含む、
[1]~[4]の何れか一に記載の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施するために用いられるキット。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の概要図である。従来の精製法(図中のPurification(standard method))では、RNase 処理(RNase treatment)後、超遠心又はゲルろ過(ultracentrifuge/gel-filtration)により得たモノソーム(monosome)画分をタンパク質変性剤(例えば、フェノール、グアニジンイソチオシアネート)を含む溶液で処理して、フットプリント(Footprint)を精製する。本発明の改良法(図中のModified method)では、超遠心又はゲルろ過(ultracentrifuge/gel-filtration)により得たモノソーム(monosome)画分をキレート剤で処理してリボソームを大小サブユニットとフットプリントに剥離し(Ribosome splitting with chelating agent)、続いて大小のサブユニットを除去する(Removal of ribosome subunits)ことによりフットプリントを精製する。
図2図2は、実施例のスタンダード法、Ribosome splitting法、スタンダード法+rRNA depletion、及びRibosome splitting法+rRNA depletionにより調製したライブラリの解析で得られたリード数を示す。「Mapped」は、タンパク質コード領域(CDS)にマップされたリード数を意味し、mRNA中のリボソームの数に対応する。RPM は、reads per million である。
図3図3は、実施例のスタンダード法、Ribosome splitting法、スタンダード法+rRNA depletion、及びRibosome splitting法+rRNA depletionの各方法(それぞれ2回の繰り返し)により調製したライブラリの解析で得られたリード数に関するピアソンの相関係数である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に記載する本発明の説明は、代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。RNAの長さに関する「nt」はヌクレオチドを意味する。
【0013】
RNA-seq(RNAシーケンス)は、ゲノムワイドな遺伝子発現レベルのプロファイリングを行うことができる技術である。本明細書において、RNA-seqは、細胞の転写プロファイルを生物学的モーメントで包括的に把握できる全トランスクリプトームシーケンス(全RNA-seq)のほか、対象転写産物のみを測定して発現差異やアリル特異的な遺伝子発現を解析するターゲットRNA シーケンス、転写制御及び翻訳制御に関する低分子ノンコーディングRNAシーケンス(例えば、転移RNA、snoRNAやsnRNAなど)やmicroRNAシーケンスを含む。snRNA(核内低分子RNA)は、真核生物の核内に存在する低分子RNAの一群であり、他のタンパク質とともにRNAスプライシングやrRNAプロセシングを初めとした様々な反応過程に関わっている。snoRNA(核小体低分子RNA)は、rRNAや他のRNAの化学的修飾(メチル化やシュードウリジル化など)に関与する一群の低分子RNAである。microRNAは、機能性のノンコーディングRNAに分類されているが、ゲノム上にコードされ、多段階的な生成過程を経て最終的に20から25塩基長の微小RNAとなる機能性核酸であり、例えば細胞の発生、分化、増殖および細胞死などの基本的な生命現象の調節に関わっている。
【0014】
リボソームプロファイリングは、mRNA分子を酵素などで分解すると、リボソームが結合していたmRNAの一部は分解から保護されて残ることを利用して、リボソームが結合していたmRNAの一部の配列を多数決定し、ある特定時に細胞内でアクティブに翻訳されていたmRNAの領域を決定する技術である。
【0015】
本明細書中「フットプリント」は、リボソームプロファイリングにおいて、酵素等による分解から保護されて残ったmRNAの一部を意味する。フットプリントの長さは約40nt以下、概ね30nt程度である。
【0016】
本明細書中「リード」又は「シーケンスリード」は、一般に、DNAサンプル又はRNAサンプルで決定された、A、T、C、及びG 塩基のデータ列を意味する。本明細書のリード又はシーケンスリードは、特に、本発明の非リボソームRNA含有試料から調製されたシーケンシングライブラリ中のDNA断片について決定された配列である。
【0017】
本明細書中「ノンコーディングRNA」は、タンパク質をコードしないRNAの総称として用いられ、ノンコーディングRNAの例としてはrRNA、転移RNA(tRNA)、ミトコンドリア由来リボソームRNA (Mt-rRNA)、ミトコンドリア由来転移RNA (Mt-tRNA)、葉緑体由来リボソームRNA、葉緑体由来転移RNA、snRNA、snoRNA、microRNA等を挙げることができる。
本明細書中「非リボソームRNA」は、リボソームRNA(rRNA)以外のRNAの総称として用いられ、非リボソームRNAの例としては mRNA、転移RNA(tRNA)、ミトコンドリア由来転移RNA (Mt-tRNA)、葉緑体由来転移RNA、snRNA、snoRNA、microRNA等を挙げることができる。
【0018】
<非リボソームRNA含有試料の製造方法>
本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法は、mRNAとリボソームを含む試料中で、
リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)、及び
工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)を含む。
【0019】
非特許文献1は、リボソームプロファイリングで得たシーケンスリードの16%がCDSにマッピングされたが、残りのほとんどはrRNAに由来したと報告している。非特許文献2は、mRNAが濃縮されていないトータルRNAからRNA-seqライブラリを調製したところ得られたシーケンスリードの90.2%がrRNAであったことを報告している。後記の実施例においても、従来のスタンダード法では、全リードの92%がrRNAに由来したことが示されている。rRNA由来のシーケンスリードを減らすために、rRNAにハイブリダイズして磁気ビーズにトラップできるrRNA-subtraction オリゴヌクレオチドが使用されている(非特許文献2,3)。後記の実施例では、この方法を採用しても、全リードの77%がrRNAに由来し、mRNAのリードは18%であったことが示されている。
【0020】
本発明で製造された非リボソームRNA含有試料から調製したリボソームプロファイリング用ライブラリの解析では、全リードの23%がmRNAに由来し、rRNA-subtraction オリゴヌクレオチドを使用する方法と組み合わせるとmRNAのリードは全リードの50%に増加したことが後記の実施例では示されている。本発明によれば、rRNA の含有割合が低減された非リボソームRNA含有試料を製造することができる。よって、本発明で製造された非リボソームRNA含有試料からリボソームプロファイリング用又はRNA-seq用ライブラリを調製すれば、効率よくmRNAやノンコーディングRNA、特に低分子ノンコーディングRNAやmicroRNAのリードを得ることができる。なお、本発明により製造された非リボソームRNA含有試料は、リボソームプロファイリングにおける使用に限定されるものではなく、RNA-seqにも有効である。
【0021】
<mRNAとリボソームを含む試料〉
本発明の「mRNAとリボソームを含む試料」は、mRNAとリボソームを含有する、一細胞、細胞集団、培養細胞又は組織を溶解又は破砕して得た細胞又は組織の粗抽出液(以下、ライセートという)を意味し、一細胞、細胞集団、培養細胞又は組織は任意の生物に由来するものである。具体的には、細菌、真菌、動物細胞若しくは組織、植物細胞若しくは組織、又はそれらの培養細胞のライセートを挙げることができるがこれらに限定されない。ライセートは、界面活性剤を用いた細胞溶解や物理的な破砕(例えば、機械的破砕、溶液中でのホモジナイズ、超音波処理、凍結融解、乳鉢と乳棒による破砕)などにより調製することができ、調整法は生物種や細胞・組織のタイプに応じて適宜選択することができる。本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法は、前処理として、細胞を溶解又は破砕してライセートを得る工程を含むことができる。
【0022】
ライセートは、リボソームの分解や損傷を避けるため、穏やかな手段、例えば、界面活性剤を用いた細胞溶解で調整することが好ましい。また、同様の理由で、タンパク質変性剤やMg2+キレート剤、フェノールやクロロホルム等の有機溶媒を使用せずにライセートを調製することが好ましい。DNAは、後のcDNA合成の妨げとなるため、例えば、DNase等を用いて分解してもよい。更に、タンパク質の翻訳阻害剤シクロへキシミドの存在下でライセートを得ることができる。一実施態様において、ライセートは、後記の実施例のように、細胞を、界面活性剤とシクロへキシミドを含むバッファー中に懸濁し、DNase I(RNase-free)の存在下でインキュベートし、遠心処理して得た上清として得ることができる。
【0023】
mRNAとリボソームを含む試料は、mRNAとリボソームのほか、ノンコーディングRNA、例えばrRNA、転移RNA(tRNA)、ミトコンドリア由来リボソームRNA (Mt-rRNA)、ミトコンドリア由来転移RNA (Mt-tRNA)、葉緑体由来リボソームRNA、葉緑体由来転移RNA、snRNA、snoRNA、microRNA RNA等を含み得る試料ということができる。
【0024】
<非リボソームRNA含有試料>
本発明の「非リボソームRNA含有試料」は、mRNAとリボソームを含む試料中で、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)、及び工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)を実施することにより得られる。非リボソームRNA含有試料は、mRNA、転移RNA(tRNA)、ミトコンドリア由来転移RNA (Mt-tRNA)、葉緑体由来転移RNA、snRNA、snoRNA、microRNA等を含んでいてもよく、さらに特定のRNA種について濃縮されていてもよい。非リボソームRNA含有試料は、シーケンシングライブラリを調製するための試料であってもよく、シーケンシングライブラリは、例えば、リボソームプロファイリング用やRNA-seq用のライブラリであることができるが、これらに限定されない。本発明の非リボソームRNA含有試料中のrRNA含有量は、従来法(例えば実施例1のスタンダード法)により得た非リボソームRNA含有試料の同含有量と比較して減少している。本発明の非リボソームRNA含有試料から調製したシーケンシングライブラリで決定されたrRNAのリード数の全リード数に対する比率は、従来法(例えば実施例1のスタンダード法)により得た試料から調製したシーケンシングライブラリ中における同比率と比較して減少している。
【0025】
<リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)>
リボソームは、数本のrRNA分子と50種類ほどのタンパク質からなる巨大なRNA・タンパク複合体であり、全体として大小2つの粒子からなる。本明細書中、リボソームの大小2つの粒子について、それぞれ大サブユニット及び小サブユニットという。リボソームの具体的な構成は、例えば原核生物のリボソームでは、大サブユニット及び小サブユニットは、それぞれ 50Sサブユニット及び30Sサブユニットと呼ばれており、50Sサブユニットは、23S rRNA(2904nt)、5S rRNA(120nt)と34種類のタンパク質からなり、分子量は160万であり、30Sサブユニットは、16S rRNA(1542nt)と21種類のタンパク質からなり、その分子量は90万である。これらの両サブユニットの会合体が70S粒子となり、その分子量は270万である。真核生物のリボソームでは、大サブユニット及び小サブユニットは、それぞれ 60Sサブユニット及び40Sサブユニットと呼ばれており、60Sサブユニットは、28S rRNA(4718nt)、5.8S rRNA(160nt)、5S rRNA(120nt)と50種類のタンパク質からなり、分子量は300万であり、40Sサブユニットは、18S rRNA(1874nt)と33種類のタンパク質からなり、その分子量は150万である。これらの両サブユニットの会合体が80S粒子となる。
【0026】
リボソームはmRNAをくわえ込み、その遺伝情報を読み取ってタンパク質へと変換する翻訳が行われる場である。両サブユニットの会合体を大小の各サブユニットに剥離させることにより、くわえ込まれていたmRNAをリボソームから分離させることができる。
【0027】
リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)は、任意の方法で実施することができるが、例えば、両サブユニットの会合体を維持する為に必要な Mg2+イオンを除くことにより実施することができる。Mg2+イオンは、任意の方法で除くことができるが、例えばキレート剤により除去することができる。すなわち、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)はキレート剤を用いて行うことができる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA、GEDTA)等を挙げることができ、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。キレート剤の濃度は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の場合には、0.1mMから30mMとすることができ、5mMから15mMとすることが好ましい。キレート剤による処理は、EDTAの場合には、氷上に30秒~60分置いて処理すればよく、処理時間は適宜変更することができる。
【0028】
<工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)>
工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)は、上記のリボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)において剥離させた大小サブユニットを、mRNAとリボソームを含む試料から除去する工程である。大小サブユニットの除去は、それらのサイズに基づき除去することができる任意の方法を採用して実施することができ、例えば、限外ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)等により行うことができる。後記のとおり、リボソームサブユニットの中で最も小さい原核生物の小サブユニットの分子量は約90万である。転移RNA(tRNA)、ミトコンドリア由来転移RNA (Mt-tRNA)、葉緑体由来転移RNA、snRNA、snoRNA、及びmicroRNAなどは、リボソームサブユニットの中で最も小さい原核生物の小サブユニットよりも十分に小さいので、上記の方法でサイズの違いによって、大小サブユニットと分離することができる。一方、mRNAの長さはさまざまで、ヒトの場合は、1000塩基を超えるものが多いため、サイズの違いによって大小サブユニットと分離することができない場合があるので、「工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)」の前に後記のRNAを断片化する工程を実施し、mRNAを断片化して大小サブユニットと分離できるサイズにすることが好ましい。
【0029】
限外ろ過(Ultrafiltration)は、溶液を膜に透過させて、溶液中の成分を濃縮又は除去する方法である。限外ろ過膜には、分画分子量(MWCO:Molecular Weight Cut Off)が設定されており、膜の分画分子量よりも大きな分子が膜に保持され、透過液からは膜の分画分子量よりも大きな分子が除去される。本発明では、リボソームの大小サブユニットを除去する工程を限外ろ過により行うことができる。より具体的には、限外ろ過を用いて、mRNAとリボソームを含む試料中のRNAを透過させ、リボソームの大小サブユニットを膜上に保持して、RNAを含む透過液を得ることができる。限外ろ過膜を透過させ回収されるRNAは任意のRNAであってもよく、mRNA、tRNA、Mt-tRNA、葉緑体由来転移RNA、snRNA、snoRNA、microRNAなどであり、rRNAも混入しうる。
【0030】
限外ろ過膜としては、RNAを透過させ、リボソームの大小サブユニットを膜上に保持できる限外ろ過膜を使用すればよい。限外ろ過膜の透過性や保持性は、種々の条件、例えばろ過圧、他の溶質の存在、分子の形状、吸着性、イオン強度等により変動するので、以下に、限外ろ過膜の選定の例を示すがこれらに限らず、RNAの回収率やろ過処理の迅速性を考慮して、適宜最適なものを選定できる。
【0031】
本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法の工程(b)で使用することができる限外ろ過膜は、分画分子量(MWCO)が10K(以下、Kは103を表す)から2000Kの範囲、10Kから1500Kの範囲、10Kから1000Kの範囲、10Kから900Kの範囲、10Kから800Kの範囲、10Kから700Kの範囲、10Kから600Kの範囲、10Kから500Kの範囲、10Kから400Kの範囲、10Kから300Kの範囲、10Kから100Kの範囲、30Kから2000Kの範囲、30Kから1500Kの範囲、30Kから1000Kの範囲、30Kから900Kの範囲、30Kから800Kの範囲、30Kから700Kの範囲、30Kから600Kの範囲、30Kから500Kの範囲、30Kから400Kの範囲、30Kから300Kの範囲、又は30Kから100Kの範囲の膜から選定できるが、これらに限定されない。
【0032】
より詳細には、限外ろ過膜による大小サブユニットの除去に関しては、リボソームサブユニットの中で最も小さい原核生物の小サブユニットの分子量が約90万であるので、分画分子量(MWCO)が900Kより小さい限外ろ過膜、好ましくはMWCOが150Kから300Kの限外ろ過膜を使用すれば、原核生物の大小サブユニットを膜上に保持して除去することができる。また、真核生物の小サブユニットの分子量が約150万であるので、MWCOが1500Kより小さい限外ろ過膜、好ましくはMWCOが250Kから500Kの限外ろ過膜を使用すれば、真核生物の大小サブユニットを膜上に保持して除去することができる。大小サブユニットの膜上への保持率の点からはMWCOが500K以下の膜を使用することが好ましく、MWCOが300K以下の膜を使用することがより好ましい。
【0033】
本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法は、後記のとおり、RNAを分解する工程又は断片化する工程を含む場合がある。これらの工程を含む場合には、RNA分解により、RNAは40nt長以下のフットプリントとして残るか、或いはシーケンシングプラットフォームに応じた長さに断片化される。RNAの分子量(約320.5 / 塩基)に基づいて、RNA断片を回収するための限外ろ過膜の選定を以下に検討する。例えば、MWCOが30K~500Kの範囲の膜を使用すれば、少なくとも約40ntのRNA(分子量約13000)を透過させ、原核生物及び真核生物の大小サブユニットを膜上に保持することができる。また、MWCOが100K~500Kの範囲の限外ろ過膜を使用すれば、少なくとも約100ntのRNA(分子量約32000)を透過させ、原核生物及び真核生物の大小サブユニットを膜上に保持することができる。MWCOが300K~500Kの範囲の限外ろ過膜を使用すれば、少なくとも約500ntのRNA(分子量約16万)を透過させ、原核生物及び真核生物の大小サブユニットを膜上に保持することができる。MWCOが500Kの限外ろ過膜を使用すれば、少なくとも約1000ntのRNA(分子量約32万)を透過させ、原核生物及び真核生物の大小サブユニットを膜上に保持することができる。なお、RNAのような直鎖状の分子は、同じ分子量の球状分子を阻止できるような膜を通りぬけることがあると考えられる。
【0034】
一実施態様では、限外ろ過は、限外ろ過膜を備えたチューブで構成される遠心式限外ろ過フィルターユニットを使用して実施することができる。当該遠心式限外ろ過フィルターユニットは、さらにチューブに挿入されて2重構造の遠心式限外ろ過チューブを形成することができる。遠心式限外ろ過フィルターユニットは、供給元の使用説明書の記載に従って使用すればよい。
【0035】
工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)はサイズ排除クロマトグラフィーにより行うことができる。一実施態様では、工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)は、スピンカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより行うことができる。具体的には、例えばillustraTM MicroSpinTM S-400 HR Columns (GE Healthcare, cat. no. 27-5140-01)を用いて、以下の手順で行うことができる。1. S-400カラムをよく混合し、カラムの先端を取り外し、2 mLのリザーバーチューブに入れる。2. 700 μlの溶解液(20 mM Tris-HCl (pH 7.5)、150 mM NaCl、5 mM EDTA, 1 mM ジチオトレイトール(DTT)、100 μg/mL シクロヘキサミド、RNase-free water;氷上に置く)をS-400カラムにロードし、740g、4℃で1分間遠心する。カラムを新しい2 mLリザーバーチューブに入れる。これを合計3回繰り返す。3. S-400カラムを新しい清潔な1.5 mLチューブに入れる。上記「リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)」を実施して得た溶液100 μLをカラムの樹脂の中央にロードし、740g、4℃で2分間遠心する。4.追加の溶解液100 μLをロードし、740g、4℃で2分間遠心する。溶出液を得る。
【0036】
別の実施態様では、工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)は、超高圧液体クロマトグラフィー(uHPLC)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー法で行うことができる(Yoshikawa et al. eLife 2018;7:e36530 DOI: 10.7554/eLife.36530)。具体的には、5μmの粒子の7.8×300 mmのカラム、例えば、Thermo BioBasic SEC 300A、1,000A、2,000Aカラム、またはAgilent Bio SEC-5 2,000Aカラムを使用することができる。 Dionex Ultimate 3,000 Bio-RS uHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、各SECカラムを2カラム容量(CV)のろ過SECバッファー(20 mM Hepes-NaOH(pH 7.4)、60 mM NaCl、30 mM EDTA、0.3% CHAPS、0.2 mg / mLヘパリン、2.5 mM DTT)で平衡化し、非特異的相互作用の部位をブロックするためにPBSで希釈した10 mg / mLのろ過ウシ血清アルブミン(BSA)溶液100μLを1回注入し、10μLの10 mg / mL BSA溶液と25μLのHyperLadder 1 kb(BIOLINE)を含む標準液を注入してカラムの状態をモニターした後、上記「リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)」を実施して得た溶液をカラムに注入する。 ダイオードアレイ検出器による1 Hzのデータ収集レートで、215、260、280 nmのUV吸光度を測定することにより、クロマトグラムを監視する。流速は0.8 mL / minで、48×100μLのフラクション、24×200μLのフラクション、または16×300μLのフラクションを、低タンパク質結合96ディープウェルプレート1 mL(エッペンドルフ)を使用して9分から14.6分に4℃で収集する。Chromeleon 6.8クロマトグラフィーデータシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、ピークを定量化する。
【0037】
限外ろ過、サイズ排除クロマトグラフィー等により、リボソームのサブユニットが除去された後の試料は精製に供することができる。精製は、公知のRNA精製法を用いればよく、例えば、フェノール/クロロホルム、フェノールとグアニジンイソチオシアネート等を含んだ溶液を用いて精製することができる。
【0038】
本発明非リボソームRNA含有試料の製造方法は、公知のrRNA除去方法、モノソームの濃縮法、mRNAの濃縮方法と組合せることができる。組合せ可能な公知のrRNA除去方法としては、rRNAにハイブリダイズして磁気ビーズにトラップできるrRNA-subtraction オリゴヌクレオチドを用いる方法(非特許文献2,3)があり、Ribo-Zero(登録商標) rRNA Removal Kit(illumina社)を用いて実施することができる。また、組合せ可能な公知のmRNAの濃縮方法としては、ポリA選択法があり、ポリAテイルRNAを、Oligotex(登録商標)-dT30<Super> mRNA Purification Kit(Takara)やoligo(dT)-Dynabeads(登録商標)を用いて濃縮することができる。組合せ可能な公知のモノソームの濃縮法としては、ショ糖密度勾配遠心法、ショ糖クッション遠心法、上記のスピンカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィー等がある。
【0039】
本発明で製造された非リボソームRNA含有試料からシーケンシングライブラリを調製すれば、全リード数に対するrRNAのリード数を減じることができる。具体的には、全リード数に対するrRNAのリード数の割合は、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下にまで減じることができる。更に、本発明の製造方法とrRNAにハイブリダイズして磁気ビーズにトラップできるrRNA-subtraction オリゴヌクレオチドを用いる方法(非特許文献2,3)とを組み合わせると、全リード数に対するrRNAのリード数をより減じることができる。具体的には、全リード数に対するrRNAのリード数の割合は、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下にまで減じることができる。
【0040】
<RNAを分解する工程又は断片化する工程>
本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法は、mRNAとリボソームを含む試料中でRNAを分解する工程又は断片化する工程を更に含むことができる。リボソームプロファイリングは通常、RNAを分解する工程を含み、本発明では、RNAを分解する工程は、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)の前に実施することができる。また、非リボソームRNA含有試料に含まれる解析目的のRNAが長く、大小サブユニットとサイズに基づく分離ができない場合には、「工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)」前にmRNAの断片化を実施すればよい。
【0041】
RNAを分解する工程は、例えばリボソームプロファイリングで解析されるフットプリントを得る目的において実施することができる。RNAを分解する工程は、例えば酵素的分解によって行うことができる。RNA分解とは、分解前より長さが短くなるようにRNAを修飾することいい、RNAの酵素的分解は分解前より長さが短くなるようにRNAを修飾することができる酵素を用いて、RNAの分解を行うことをいう。用いる酵素は、エンドリボヌクレアーゼ又はエキソリボヌクレアーゼなどのリボヌクレアーゼ(RNA分解酵素)であってもよく、1本鎖特異的RNAエンドヌクレアーゼ、例えばRNase I を用いることができる。RNA分解に使用できる他の酵素としては、RNase A、RNase T1等を挙げることができる。RNA分解は、後記の部分的アルカリ加水分解により実施してもよい。
【0042】
一実施態様において、リボソームプロファイリング用ライブラリを調製するための非リボソームRNA含有試料の製造方法において、RNAを分解する工程は、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)の前に実施し、RNA分解は、RNase I消化により実施することができる。RNase I消化により、mRNAとリボソームを含む試料中のRNA分子は分解されるが、リボソームが結合しているmRNAの一部は分解から保護される。1つのリボソームが結合しているmRNAの一部を、モノソームという。mRNAとリボソームを含む試料中のモノソームは、ショ糖密度勾配遠心法、ショ糖クッション遠心法、又は上記スピンカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィー等により濃縮することができる。
【0043】
RNAを断片化する工程は、例えば、上記工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)において、リボソームのサブユニットをサイズに基づいて分離できるよう十分にRNAを小さくする目的で実施することができ、それを実施できる任意の手段で、所望のサイズにすることができる。
【0044】
RNAを断片化する工程は、例えば酵素的断片化、化学的断片化、及び/又は機械的断片化によって行うことができる。RNA断片化とは、RNAを適切な断片サイズに切断することいい、例えば、シーケンシングプラットフォームに応じた長さに切断することである。一実施態様において、RNA断片化は部分的アルカリ加水分解により実施することができる。部分的アルカリ加水分解は、例えば、10μLの2xアルカリ加水分解液(2 mM EDTA、12 mM Na2CO3、88 mM NaHCO3、pH 9.3)を等量のRNA含有溶液(例えば、ライセート)に添加して混合し、混合液を95℃で20分インキュベートし、インキュベート後、氷上に置き、300μLの0.3 M NaOAc (pH 5.2)を添加することにより実施することができる。部分的アルカリ加水分解による断片化はRNAが適当なサイズになるように高度に制御して行うことができるが、本発明のためには、例えば100~3000nt、好ましくは100~1000nt、より好ましくは100~500nt、さらにより好ましくは100~300ntに断片化される。
【0045】
一実施態様において、RNA断片化は超音波せん断により実施することができる。超音波せん断は、例えば、15mLファルコンチューブにライセートをいれ、4℃の水浴中で既存の超音波破砕機を用いて超音波処理することにより実施することができる。超音波処理による断片化はRNAが適当なサイズになるように高度に制御して行うことができるが、本発明のためには、例えば100~3000nt、好ましくは100~1000nt、より好ましくは100~500nt、さらにより好ましくは100~300ntに断片化される。
【0046】
一実施態様において、RNA断片化は酵素的に行うことができる。例えば、塩基配列に依存せず、一本鎖RNA をバイアスなしにランダムに、目的のサイズにまで断片化することができる酵素を使用することが好ましい。具体的には、RNase I、RNase A、RNase T1、RNase T2、 MNase(Micrococcal Nuclease)、RNase V1、RNase S1などを用いることができる。酵素による断片化はRNAが適当なサイズになるように高度に制御して行うことができるが、本発明のためには、例えば100~3000nt、好ましくは100~1000nt、より好ましくは100~500nt、さらにより好ましくは100~300ntに断片化される。
【0047】
RNA-seq用ライブラリを調製するための非リボソームRNA含有試料の製造方法において、リボソームが壊れない限り、RNAを断片化する工程とリボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)とは、どちらを先に行ってもよい。
【0048】
更に別の実施態様において、RNAを分解する工程又は断片化する工程を行わず、非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して、非リボソームRNA含有試料を製造する場合もある。例えば、低分子ノンコーディングRNA(例えば、tRNA、snoRNAやsnRNAなど)やmicroRNAを分析するためのRNA-seq用ライブラリを調製する場合である。低分子ノンコーディングRNA は約200nt長以下、microRNAは30nt長以下と短く、断片化せずとも、リボソームのサブユニットとサイズに基づいて分離できるためである。
【0049】
<非リボソームRNAの分析方法>
本発明の非リボソームRNAの分析方法は、上記の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して非リボソームRNA含有試料を得る工程、及び非リボソームRNA含有試料中のRNAの塩基配列を決定する工程を含む。非リボソームRNAは、mRNA(フットプリントを含む)、tRNA、Mt-tRNA、葉緑体由来転移RNA、snRNA、snoRNA、microRNAなどである。非リボソームRNAの分析方法は、より具体的には、RNA-seq(RNAシーケンス)法やリボソームプロファイリング法を意味する。
【0050】
非リボソームRNA含有試料中のRNAの塩基配列を決定する工程は、非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して得た非リボソームRNA含有試料を用いてRNAの塩基配列を決定する工程であり、塩基配列の決定は、RNAを構成する塩基の決定のほかに、RNAを構成する塩基における化学的修飾の決定を含む。RNAの塩基配列決定は、非リボソームRNA含有試料から調製されたシーケンシングライブラリに含まれる増幅産物を用いて行ってもよい。
【0051】
シーケンシングライブラリの調製方法は、典型的には、逆転写酵素を用いてcDNAに逆転写をし、得られた逆転写産物を、適切な核酸増幅法を用いて増幅する工程を含んでいる。なお、ここで「(核酸を)増幅する」とは、当該核酸のコピーの数を増加させる(例えば、指数的に増加させる)目的で、当該核酸を、少なくとも1ラウンドの伸長、複製又は転写に供するプロセスを指す。核酸のコピーは当該核酸の相補的なコピーであってもよい。また、このプロセスでは、伸長、複製又は転写を複数ラウンド行うことがより好ましい。なお、核酸増幅法は特に限定されないが、例えば、PCR増幅又はローリングサークル増幅等が挙げられる。また、シーケンシングライブラリの調整法は、上述の特許文献1及び非特許文献1~3等の記載も適宜参照することができる。
【0052】
一実施態様において、リボソームプロファイリング用シーケンシングライブラリの調製のため、本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して、フットプリントを選択的に含む非リボソームRNA含有試料を得ることができる。例えば、mRNAとリボソームを含む試料中(シクロへキシミドの存在下でライセートを得て、RNAをRNase Iで分解しショ糖クッション法を実施することによりモノソームが濃縮された試料)で、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)、及び工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)を含む非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して非リボソームRNA含有試料を得る。これにより、ライセートを調製した時点のフットプリントを選択的に含む非リボソームRNA含有試料を得ることができる。リボソームプロファイリング用シーケンシングライブラリの調製は、後記の実施例のとおり行えばよく、非リボソームRNA含有試料をRNA サイズマーカーと共に変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、26ntから34nt長のRNAを切り出してゲルから精製し、後記の実施例に準じて、リンカーを付与し、cDNAに逆転写し、環状化し、PCR増幅及びバーコード付加をすることにより作成することができる。目的の長さのRNAを切り出してゲルから精製した後のリンカー、アダプター、又はバーコードの付与、逆転写及びPCR増幅反応は、任意の公知の方法、好ましくは次世代シーケンサーでの解析に用いられている任意の公知の方法に準じて行うことができる。
【0053】
一実施態様において、全トランスクリプトームシーケンス(全RNA-seq)のシーケンシングライブラリの調製のため、本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して、mRNAを選択的に含む非リボソームRNA含有試料を得ることができる。好ましい実施態様では、mRNAとリボソームを含む試料中(シクロへキシミドの存在下でライセートを得て、mRNAのポリA選択後、RNAが断片化された試料)で、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)、及び工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)を含む非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して非リボソームRNA含有試料を得る。これにより、ライセートを調製した時点で発現していたmRNAの断片を含む非リボソームRNA含有試料を得ることができる。全RNA-seq用シーケンシングライブラリの調製は、非リボソームRNA含有試料をRNA サイズマーカーと共に変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、シーケンシングプラットフォームに応じた長さのRNA、例えば26ntから500nt長のRNAを切り出してゲルから精製し、後記の実施例に準じて、リンカーを付与し、cDNAに逆転写し、環状化し、PCR増幅及びバーコード付加をすることにより作成することができる。目的の長さのRNAを切り出してゲルから精製した後のリンカー、アダプター、又はバーコードの付与、逆転写及びPCR増幅反応は、任意の公知の方法、好ましくは次世代シーケンサーでの解析に用いられている任意の公知の方法に準じて行うことができる。
【0054】
一実施態様において、tRNA、snRNA、snoRNAのような低分子RNA解析用、及びmicro RNA解析用のシーケンシングライブラリの調製のため、本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して、tRNA、snRNA、snoRNA、及びmicroRNAを含む非リボソームRNA含有試料を得ることができる。好ましい実施態様では、mRNAとリボソームを含む試料中で、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させる工程(a)、及び工程(a)で剥離されたリボソームのサブユニットを除去する工程(b)を含む非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施して非リボソームRNA含有試料を得る。例えば、microRNA解析用のシーケンシングライブラリの調製は、非リボソームRNA含有試料をRNA サイズマーカーと共に変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、18ntから30nt長のRNAを切り出してゲルから精製し、後記の実施例に準じて、リンカーを付与し、cDNAに逆転写し、環状化し、PCR増幅及びバーコード付加をすることにより作成することができる。目的の長さのRNAを切り出してゲルから精製した後のリンカー、アダプター、又はバーコードの付与、逆転写及びPCR増幅反応は、任意の公知の方法、好ましくは次世代シーケンサーでの解析に用いられている任意の公知の方法に準じて行うことができる。
【0055】
配列決定を行うためのシーケンシング技術として、次世代シーケンサーを用いる方法を採用することができる。次世代シーケンサーの種類は特に限定されないが、例えば、HiSeq2000(Illumina社)、Genome Analyzer IIx( Illumina社)、及び、Genome Sequencer-FLX(Roche社)等が挙げられる。次世代シーケンサーを用いるRNAの配列決定は、フローセル上又はマイクロアレイ上に、核酸を固定化する工程を含んでいる。配列決定のプロセスにおいて、ブリッジ増幅(特にブリッジPCR)が、核酸がその上に固定化されたフローセル内、又は、核酸がその中に固定されたマイクロアレイ内で発生しうる。
【0056】
RNAの配列決定は、「sequencing by synthesis (SBS)」技術を用いて達成される。ここで、SBS技術とは、対象となる核酸の相補鎖を合成することによって当該核酸の配列決定を行う技術を指す。SBS技術は、「ピロシーケンシング」、「ライゲーションによるシーケンシング」、及び、「伸長によるシーケンシング」からなる群より選択されてもよい。「ピロシーケンシング」は、ヌクレオチドの取り込みに際して生じるピロリン酸を検出することで配列決定を行う方法を指す。「ライゲーションによるシーケンシング」は、核酸配列内の指定された位置に存在するヌクレオチドを同定するために、リガーゼを使用して核酸配列を決定する方法を指す。「伸長によるシーケンシング」は、プライマーが、既知の又は検出可能なヌクレオチドを伴って伸長される核酸配列決定法を指す。
【0057】
配列決定を行うためのシーケンシング技術として、「ディープシーケンシング」を採用することができる。「ディープシーケンシング」は、並行して複数の核酸を配列決定する方法を指す(Bentleyら、Nature 2008、456: 53-59)。典型的な、「ディープシーケンシング」を用いた配列決定プロトコルでは、核酸(例えば、DNA断片)は、反応プラットホーム(例えば、フローセルやマイクロアレイ等)の表面に取り付けられる。取り付けられた核酸は、in situで増幅され、検出可能な標識(例えば、蛍光可逆的ターミネーターデオキシリボヌクレオチド)を用いた合成的シーケンシング(例えばSBS)のためのテンプレートとして使用することができる。代表的な可逆的ターミネーターデオキシリボヌクレオチドには、アデニン、シトシン、グアニン及びチミンそれぞれの3’-O-アジドメチル-2’-デオキシヌクレオシド三リン酸が含まれ得、これらはそれぞれ、リンカーを介して、互いに認識可能でかつ取り外し可能なフルオロフォアでさらに標識されていてもよい。配列決定は、シングルリード法で行うこともでき、ペアエンド法で行うこともできる。
【0058】
非リボソームRNA含有試料中のRNAの塩基配列を決定する工程において、各種シーケンシングライブラリの塩基配列を決定した場合には、シーケンスリードは、参照配列にアライメントされ、アライメントの後、一塩基多型(SNP)や挿入と欠失(indel)の同定、RNA 手法のためのリード数のカウント、系統進化解析やメタゲノム解析など、さまざまな解析を行うことができる。
【0059】
非リボソームRNA含有試料中のRNAの塩基配列を決定する工程において、混入している可能性があるrRNAのシーケンスリードの存在も、参照配列にアラインすることにより明らかとなる。
【0060】
<キット>
本発明の非リボソームRNA含有試料の製造方法を実施するために用いられるキットは、リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させるための試薬、及びリボソームのサブユニットを除去するための手段を含む。リボソームのサブユニットとmRNAを剥離させるための試薬は、キレート剤であってもよく、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA、GEDTA)等を挙げることができ、特にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。リボソームのサブユニットを除去するための手段は、限外ろ過膜を備えたチューブで構成される遠心式限外ろ過フィルターユニットであってもよい。当該遠心式限外ろ過フィルターユニットは、さらにチューブに挿入された2重構造の遠心式限外ろ過チューブでもよい。
【実施例
【0061】
以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において、特に記載しない限り、「%」等は質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
実施例で使用した材料及び機器は、実施例の末尾に記載する。
【0062】
(実施例1)
スタンダード法によるシーケンシングライブラリの調製
【0063】
McGlincy NJ et al 2017(非特許文献3)に記載の手順でリボゾームプロファイリング用ライブラリをHEK293 cells (ATCC, cat. no. CRL-1573)から調製した。以下に、McGlincy NJ et al 2017(非特許文献3)に基づくプロトコールを記載する。本明細書中、実施例1に記載のプロトコールを「スタンダード法」という。
【0064】
1. ライセートの作製
<シクロへキシミド処理>
【表1】
上記のバッファーを作製し、冷やしておく。
以下の試薬を使用直前に加える。
【0065】
【表2】
【0066】
1. 10 cmディッシュの細胞を冷PBS 5 mLでリンスする。
2. PBSをよく吸い捨て、Lysis buffer(EDTAフリー)を400 μL入れて全体に広げる。
3. ピペッティングで細胞を剥がし、DNA Lobind チューブに移す。Lysis buffer 200 μLで洗い込む。
4. 2 U/μL Turbo DNase I 7.5 μL 加え、氷上に10 minおく。
5. 20,000 g 4℃ 10 minで遠心する。
6. 上清をチューブに取り、転倒混和する。
7. 濃度測定用5 μL 1本、残りは100 μLずつ分注し、液体窒素で瞬間冷凍し-80℃で保存する。
【0067】
<RNA濃度測定Qubit RNA BR Assay Kit>
1. Working Solution 200 μL×(スタンダード用2 本+サンプル4本分)を用意する。Working Solution=Qubit RNA BR Reagent 1 μL : Qubit RNA BR Buffer 200 μL
2. 0.5 mLチューブにスタンダード用190 μL 、サンプル用199 μLずつ分注。スタンダード試薬#1,#2を10μL、サンプルを1μLずつ加え、ボルテックス、スピンダウン。室温で2 min 置く。
3. Qubit 2.0 Fluorometer で測定、RNA BR Assayを選択。スタンダード、サンプルを測定する。
*80% confluentのHEK cellで10 cmディッシュ1枚から200-300 ng/μLになる。(600 μL ライセートの場合)
【0068】
2. RNase消化~超遠心(ショ糖クッション)
・ヒートブロック25℃準備
・超遠心機のローター冷やしておく
【表3】
【0069】
Sucroseが溶けたら氷上で冷やしておき、使用直前に以下を加える。
【表4】
<サンプル準備>
・Rnase Iは 2 U/1ug RNAで使用する。(RNA 10 ugの時20 U使用)
【0070】
【表5】
【0071】
1. チューブにRNAをとり、Lysis bufferで298 μLにする
2. RNase Iを2 μLずつ入れ優しく混合、ヒートブロックで25℃ 45 min(サンプル間で反応時間に差が出ないよう正確に行う)。
3. 氷上へ移して、すぐに SUPERase In (RNase inhibitor)を各チューブに10 μL (200 U)ずつ加える。 (冷やすことで反応止める効果があるので先に氷上へ移す)。
4. 超遠心チューブにRNaseI消化後のサンプル300 μLを移す。
5. Sucrose cushion buffer 900 μLをサンプルの下から2層になるようゆっくり注ぐ。
6. TLA110 ローターで、100,000 rpm 4℃ 1 h遠心し、リボソームのペレットを得る。
7. ペレットを崩さないよう、上清を液面の上部から吸い捨てる。
【0072】
3. Footprint Fragment 精製
<ダイレクトRNAリカバリー>
ペレットにTRIzol reagent を300 μL入れて(ペレットが見えるようになる)よく溶かし(TRIzol sampleという)、DNA Lobindチューブに移す。
【0073】
<Direct-zol MicroPrep kit カラム精製>
【表6】
【0074】
1. カラムに移して12,000 g, 1 min, 4℃. 受けチューブは1回ごとに使い捨てる。
2. PreWash buffer 400μL を加え12,000 g, 1 min, 4℃で遠心する。2回行う。
3. Wash Buffer 700 μLを加え12,000 g, 1 min, 4℃で遠心する。
4. 空遠心 12,000 g, 5 min, 4℃を行う
5. RNase-free waterを6 μL を加え 12,000 g, 2 min, 4℃で遠心する。
6. 2x RNA Loading Bufferを6 μL加える
【0075】
<RNA サイズマーカー準備と泳動>
【表7】
【0076】
1. RNA サイズマーカーとサンプルをヒートブロックで95℃ 3 min → 氷上 2 min の処理を行う。RNA サイズマーカーは、非特許文献3(McGlincy and Ingolia, 2017, Methods, 126, 112-129)に記載の、Upper size marker oligoribonucleotide NI800 (34 nt)、Lower size marker oligoribonucleotide NI801 (26 nt)を使用した。
2. WAKO SuperSep RNA 15% ゲルを用する。
【0077】
3. well掃除を行ってから、サンプルをアプライする。コンスタント10 mA で50 min泳動する。
4. 1 x TBE 50 mL + SYBRGold 5 μL (10,000倍希釈)でゲルを染色する。シェーカーで揺らしながら3 min行う。
5. ブルーライトに乗せて、バンドを確認しサンプルの26bp-34bpの間を切り出す。
6. マーカーも切り出しておく。
【0078】
<gelからのRNA抽出>
【表8】
【0079】
1. 1.5 mLチューブに入れたゲル片をペッスルで潰す。
2. RNA gel extraction buffer 400 μLを入れ、ペッスルについたゲルを洗い込む。
3. -80℃, 30 min or 液体窒素で凍結する。
4. 室温 2 h以上転倒混和する。
5. Spin-XカラムをDNA Lobind 1.5 mLチューブにセットし、先太チップでゲル溶液を移す。
6. 10000 g, 1 min, 4℃
7. GlycoBlue 3 μL , イソプロパノール500 μLを加えよく混ぜる。
8. 冷凍庫に1 h入れた後、20,000 g, 30 min, 4℃で遠心する。
9. 上清を捨てて、70% エタノールリンス
10. ペレットに10 mM Tris pH7.5を7 μL入れ、溶かす。
【0080】
4. 20 μM Preadenylated linker 作製
1. 以下の溶液を8連チューブに調製する。
【表9】
65℃ 1 h → 85℃ 5 minの処理を行う。
上記表中の5′p-linker-ddC primerは、非特許文献3(McGlincy and Ingolia, 2017, Methods, 126, 112-129)に記載の、NI-810からNI-817 (Table 8)を使用した。
【0081】
2. Oligo clean & Concentrator カラム精製
【表10】
【0082】
カラムに移して12,000 g, 1 minで遠心する。Wash buffer 750 μL を加え、12,000 g, 1 min遠心する。空遠心 12,000 g, 5 minを行う。RNase-free water 6 μLでElution。
PAUSE POINT -20℃
【0083】
5. Dephosphorylation and Linker Ligation
<脱リン酸化>
1. Mixtureの準備 マーカー + サンプル4つの場合
【表11】
2. サンプルは8連チューブに移し、95℃2 min → 氷上3 minの処理を行う。
3. mixtureを3μLずつ分注し37℃ 1 h 置く。
PAUSE POINT -80℃
【0084】
<リンカーライゲーション>
・サンプルごとにそれぞれ別のリンカーをつける。メモしておく。
・マーカーにはどのリンカーをつけても良い
1.脱リン酸化後 95℃2 min → 氷上3 minの処理を行う。
【表12】
【0085】
2. サンプルに9 μLずつ分注する。
3. Preadenylated linker (20 uM)を1 μLずつ分注 mixする。
4. 22℃ 3 h → 4℃の処理を行う。
5. Oligo clean カラム精製(前述の通りに精製)する。
6. Elution 6 μL + 2 x RNA Loading Buffer 6 μL
PAUSE POINT -80℃
【0086】
<泳動準備>
(1) linker のみ
【表13】
(2) Linker ligation後のマーカー
(3) Linker ligation後サンプル
1. ヒートブロック95℃ 3 min → 氷上2 minの処理を行う。
2. 前述の通りに泳動する。
3. Linker ligation後のサンプルとマーカーを切り出す。
*切り出したサンプルはリンカーがそれぞれ違うので、以降は混ぜても良い。
4. gelからのRNA抽出(前述の通り)
【0087】
6. 逆転写反応
RT primerは、非特許文献3(McGlincy and Ingolia, 2017, Methods, 126, 112-129)に記載の、Reverse transcription primerNI-802を使用した。
1. 8連チューブに以下のものを用意する。
(1) RT primerのみ (RNase-free water 10μL) 又は
(2) RT primer + linker (RNase-free water 9.5 μL + 20 uM liker 0.5 μL) 又は
(3) マーカー(linker ligation後)10 μL 又は
(4) サンプル(linker ligation後)10 μL

1.25 uM RT primer NI802 2 μL
total 12 μL
6℃ 5 min → 氷上 5 min
【0088】
2. mixtureを(1)~(4) + RT primerに8μLずつ分注する
【表14】
【0089】
3. 50℃ 30 minの処理をする。
4. 1 M NaOHを2.2 μLずつ加え、混ぜる。70℃ 20 minの処理をする。
5. Oligo clean & Concentrator カラム精製
【0090】
RNase-free waterを28 μL足して50 μLにする。前述の通りに精製する。
Elution 6μL + 2x RNA Loading Buffer 6μL
PAUSE POINT -20℃
【0091】
<泳動準備>
・リンカーとRT primerがアニールしたものがサンプルサイズと重なるため、ヒートブロックで100℃ 5 min → 氷上においてから泳動する。
DNA gel extraction buffer(泳動の間に作っておく)
【表15】
【0092】
切り出したゲルはDNA gel extraction bufferを入れDNAを抽出し、前述の通りにイソプロ沈を行い、ペレットに10 mM Tris pH7.5を12 μL入れ溶かす。
【0093】
7. Circularization
1. mixtureを8連チューブに8 μLずつ分注する。
【表16】
2. サンプルを12 μLずつ分注する
3. 60℃ 1 h → 80℃ 10 minの処理をする。
PAUSE POINT -20℃
【0094】
8. PCR Amplification and Barcode Addition
サンプルはサイクル数を振って(6 ,8, 10サイクル)、非特異バンドが少ないバンドを切り出す。
コントロール(1) RT primerのみ(2) RT primer + linker (3) マーカー(linker ligation後)は8サイクルのみでよい。
1. サンプルは反応液100 μLを作り、33 μLずつ3つのwellに分ける(6 ,8, 10サイクル)
【0095】
コントロールは100 μL 分のtemplateなし反応液作成、3つのwellに分け、templateを1.7 μLずつ加える(8サイクル)。
PCR後、ライブラリをさらにpoolする場合は、ライブラリごとに異なるRv primer (非特許文献3(McGlincy and Ingolia, 2017, Methods, 126, 112-129)に記載の、NI822-826)を必要に応じて用いる。
(poolできるサンプル数 = linkerバーコード X PCR primerバーコード)
【表17】
NI798 Fw primer及びNI799 Rv primerは、非特許文献3(McGlincy and Ingolia, 2017, Methods, 126, 112-129)に記載の、Forward library PCR primer, NI-798 及びTable 9のIndexed reverse library PCR primer NI-799を使用した。
【0096】
2. PCRをスタートさせたら、各サイクルの伸長反応が終わったところでチューブを回収していく。
1) 98℃ 30 sの処理をする。
2) [98℃ 10 s, 65℃ 10s, 72℃ 5 s] x6, x8, x10(になるよう2サイクルずつ回収する)
3) 72℃ 5 minの処理をする。
4) 4℃ に置く。
PAUSE POINT -20℃
【0097】
9. PCR productのゲル精製
PCR productはdenatureさせてはいけない。ゲルはSuperSep DNA, 15%を使用する。 Loading Dyeは6 x non-denaturing purple loading dyeを使用する。
<泳動準備>
【0098】
サンプル33 μL + 6 x non-denaturing purple loading dye 6.5 μL を混合し、2 wellに19 μLずつ泳動する
RT primer, linker, Marker 33 μL + 6 x non-denaturing purple loading dye 6.5 μL を混合し、2 wellに10 μLずつ泳動する
20 mA 1 h 20min泳動し、前述の通りにゲル染色する
最適サイクル数を確認して、バンドを切り出す
【0099】
<gelからのDNA抽出>
1. 2 well分のゲル片をペッスルで潰し、DNA gel extraction buffer 230 μL入れる。
2. -80℃ or 液体窒素で凍結後、室温2 h以上転倒混和。Spin-Xカラムでゲル片を取り除く。
3. NucleoSpin Gel and Cleanカラム精製
【表18】
【0100】
4. カラムに移して、11,000 g, 1 min, 4℃で遠心する。
5. Buffer NT3 700μL でWASHし、11,000 g, 1 min, 4℃で遠心する。2回行う
6. 空遠心 11,000 g, 5 minを行う.
7. NE buffer 17 μL 加え、室温 1 minおく
8. Elution 11,000 g, 1 min, 4℃で遠心する。
【0101】
10. Quality Check by MultiNA
【0102】
<超高感度モードで測定>
・1/25 Gel Star(TEで25倍希釈したもの)
・1/5 島津マーカーDNA-1000(H2Oで5倍希釈したもの)
・1/50 100 bp DNA ラダー(TEで50倍希釈したもの)
1.分離Buffer の準備
【表19】
2.サンプル、ラダーの準備
【表20】
3. 機械にセットして測定
4. 濃度、mol数は結果を1/5した値になる。(超高感度測定のため)
シーケンスに必要な量は1 nM が15 μL分である。
足りない場合は最適サイクルのみを100μL分PCRし、同様にゲル精製を行う。
【0103】
(実施例2)
Ribosome splitting法によるシーケンシングライブラリの調製
本実施例では、リボソームのサブユニットを剥離し限外ろ過でリボソームを除去してリボソームプロファイリングライブラリを調製した。
【0104】
実施例1に記載の方法と同様に、細胞からライセートを作製し(実施例1の1. ライセートの作製の項)、RNase消化後に超遠心を行い、リボソームのペレットを得る(実施例1の2. RNase消化~超遠心(ショ糖クッション)の項)。本実施例2では、実施例1の3. Footprint Fragment 精製の項に記載の<ダイレクトRNAリカバリー>に替えて、下記<リボソームの剥離と限外ろ過>を実施する。
【0105】
<リボソームの剥離と限外ろ過>
1.下記表に従い、ペレット懸濁液を調製し、氷上に5分程度置く。
【表21】
【0106】
2.リボソームのペレットを限外ろ過用チューブに入れて、150μLペレット懸濁液に再懸濁する。 ペレット懸濁液中のEDTAが、リボソームを大サブユニット、小サブユニット、footprintに剥離する。
【0107】
3.混合物を、付属のリザーバーチューブを備えたAMICON(登録商標) ULTRA 0.5ML-100KDa cutoff (Millipore, cat. no. UFC510024) のフィルターカップに移し、 4℃で10分間、14,000 gで遠心する。
【0108】
4.上部フィルターカップを廃棄し、360 μLのTRIzol LS試薬をリザーバーチューブのフロースルーと混合する(TRIzol sampleという)。
【0109】
5. 実施例1の3. Footprint Fragment 精製の項に<Direct-zol MicroPrep kit カラム精製>を行う。続いて、実施例1の「4. 20 μM Preadenylated linker 作製」の項~「10. Quality Check by MultiNA」の項に記載のとおり、実験を行う。
【0110】
(実施例3)
「スタンダード法+rRNA Depletion」によるシーケンシングライブラリの調製
本実施例では、実施例1に記載の「スタンダード法」に、rRNA Depletion工程を加えてサンプルの調製を行った。
【0111】
実施例1の「1. ライセートの作製」の項~「5. Dephosphorylation and Linker Ligation」の項に記載のとおり、実験を行う。実施例1の「6. 逆転写反応」の前に、「5. Dephosphorylation and Linker Ligation」において、Linker LigationしたRNAサンプルに対して、rRNA Depletionを下記のとおり行った。
【0112】
<Ribosomal RNA Depletion>(Ribo-Zero処理)
Ribo-Zero処理では4サンプルをまとめて処理する。全量が26 μLになるように、10 mM Tris pH 7.5で溶解する。
【0113】
1. ビーズを225 μL チューブに移し、マグネットに立てる。
2. 上清を捨てて、RNase-free water 225 μL で2回洗浄する。
3. Resuspension solution 60 μLで懸濁する。室温においておく。
4. 1.5mLチューブに以下の溶液を作製。
【表22】
68℃ 10 min → 室温 5 minの処理を行う。
【0114】
5. 用意しておいたビーズ65 μLを入れピペッティング、vortex 10 s 行う。室温で5 minおいた後vortex 10 sを行い、マグネットに立てる。
6. 上清を新しいチューブに移す。
7. Oligo clean & Concentratorカラム精製を行う。
【0115】
【表23】
【0116】
(カラムには800 μLまでしか入らないので、2回に分けてカラムに通す)
前述の通りに精製し、RNase-free water 10 μLでElutionする。
【0117】
(実施例4)
「Ribosome splitting法+ rRNA Depletion」によるシーケンシングライブラリの調製
本実施例では、実施例2に記載の「Ribosome splitting法」に、rRNA Depletion工程を加えてサンプルの調製を行った。
【0118】
実施例1の「1. ライセートの作製」の項~「5. Dephosphorylation and Linker Ligation」の項に記載のとおり、実験を行うが、実施例1の3. Footprint Fragment 精製の項に記載の<ダイレクトRNAリカバリー>に替えて、<リボソームの剥離と限外ろ過>を実施する。実施例1の「6. 逆転写反応」の前に、「5. Dephosphorylation and Linker Ligation」において、Linker LigationしたRNAサンプルに対して、rRNA Depletionを実施例3の<Ribosomal RNA Depletion>(Ribo-Zero処理)に記載のとおり行った。
【0119】
(実施例5)
実施例1~4でそれぞれ調製してQuality Checkしたライブラリついて、HiSeq4000(Illumina)を用いて、ディープシーケンシングを行った。
スタンダード法、Ribosome splitting法、スタンダード法+rRNA depletion、及びRibosome splitting法+rRNA depletionで調製したシーケンシングライブラリのリード数の結果を図2に示す。図2中の「Mapped」は、タンパク質コード領域(CDS)にマップされたリード数を意味し、mRNA中のリボソームの数に対応する。
【0120】
HEK293細胞からのスタンダード法により調製したライブラリのリボソームプロファイリングでは、rRNAのリード数は9.2 × 105 reads per million (RPM)でライブラリの92%であり、ノンコーディングRNA(rRNA、tRNA、Mt-rRNA、Mt-tRNA、snRNA、snoRNA、microRNAなど)に由来しない有用なリードは、わずか5.4%(0.54×105 RPM)であった(図2、Standard method)。
【0121】
rRNAにハイブリダイズして磁気ビーズにトラップできるrRNA-subtraction オリゴヌクレオチドが、rRNAのリードを枯渇させるために使用されている(Ingolia et al., 2009, Science, 324, 218-23; Weinberg et al., 2016, Cell Rep, 14, 1787-1799; McGlincy and Ingolia, 2017, Methods, 126, 112-129)。このrRNA-subtraction オリゴヌクレオチドを用いたrRNA depletionの手段により、rRNAの混入が減少し、rRNAのリード数は7.7×105 RPMでライブラリで77%となり、mRNAのリード数が1.8×105 RPM、ライブラリで18%と増加した(図2、Standard method+rRNA depletion)。
【0122】
一方、Ribosome splitting法では、mRNAのリード数が2.3 × 105 RPM、ライブラリで23%と増加した(図2、Ribosome splitting method)。更に、Ribosome splitting法にrRNA depletionを組み合わせると、mRNAのリード数が5.0 × 105 RPM、ライブラリで50%と増加した(図2、Ribosome splitting method+rRNA depletion)
【0123】
スタンダード法、Ribosome splitting法、スタンダード法+rRNA depletion、及びRibosome splitting法+rRNA depletionで、それぞれ2回別個に繰り返してライブラリを調製しリボソームプロファイリングを行った結果のmRNAのリード数に関し、各方法と2回の繰り返しについて、ピアソンの相関係数を算出した。ピアソンの相関係数は、無次元量であり、-1以上1以下の値をとる。0.7以上1以下で強い相関があると判断される。図3に相関係数を示す。mRNAのリード数は、各方法で2回繰り返したところ再現性があり、更に上記4つの方法間でもデータの高い相関が観察された。
【0124】
材料
HEK293 cells (ATCC, cat. no. CRL-1573)
DMEM (1x) + GlutaMAX-I (ThermoFisher Scientific, cat. no. 10566-016), with 10% FBS before use.
0.05% Trypsin-EDTA (ThermoFisher Scientific, cat. no. 25300-54)
Cycloheximide 100 mg/ml (Sigma/Aldrich, cat. no. C4859-1ML)
D-PBS (-)(1x) (nacalai tesque, cat. no. 14249-24)
RNase-free water, molecular biology grade (Millipore, cat. no. H20MB1001) or (ThermoFisher Scientific cat. no. 10977-015)
1 M Tris-HCl pH 7.5, molecular biology grade (Wako Pure Chemical Industries, Ltd., cat. no. 318-90225)
5 M NaCl, molecular biology grade (nacalai tesque, cat. no. 06900-14)
1 M MgCl2, molecular biology grade (nacalai tesque, cat. no. 20942-34)
Turbo DNase, 2 U/μl (ThermoFisher Scientific, cat. no. AM2238)
Triton X-100, molecular biology grade (nacalai tesque, cat. no. 12967-32)
Qubit RNA BR Assay kit (ThermoFisher Scientific, cat. no. Q10210)
SUPERase・In, 20 U/μl (ThermoFisher Scientific, cat. no. AM2694)
Sucrose, molecular biology grade (Wako Pure Chemical Industries, Ltd., cat. no. 198-13525)
3 M NaOAc pH 5.2, molecular biology grade (nacalai tesque, cat. no. 06893-24)
RNase I, 10 U/μl (Epicentre, cat. no. N6901K)
13 x 56 mm polycarbonate ultracentrifuge tube (Beckman Coulter, cat. no. 362305)
Direct-zol RNA MicroPrep (Zymo Research, cat. no. R2062)
TRIzol (ThermoFisher Scientific, cat. no. 15596018) or other Direct-zol compatible reagent
Ethanol, molecular biology grade (Wako Pure Chemical Industries, Ltd., cat. no. 054-07225)
Isopropanol, molecular biology grade (Wako Pure Chemical Industries, Ltd., cat. no. 168-21675)
GlycoBlue, 15 mg/ml (ThermoFisher Scientific, cat. no. AM9515)
0.5 M EDTA, molecular biology grade (Wako Pure Chemical Industries, Ltd., cat. no. 311-90075)
2× RNA Loading Buffer without Ethidium Bromide (Wako Pure Chemical Industries, Ltd. cat. no. 182-02571)
SuperSepRNA, 15%, 17well (Wako Pure Chemical Industries, Ltd. cat. no. 194-15881)
10,000x SYBR Gold (ThermoFisher Scientific, cat. no. S11494)
UltraPure 10% SDS (ThermoFisher Scientific, cat. no. 15553-027)
T4 polynucleotide kinase (New England Biolabs, cat. no. M0201S). Supplied with 10x T4 polynucleotide kinase buffer.
T4 RNA Ligase 2, truncated K227Q (New England Biolabs, cat. no. M0351S). Supplied with PEG 8000 50% w/v and 10x T4 RNA ligase buffer
Preadenylated linkers at 20 μM
Oligo Clean & Concentrator (Zymo Research, cat. no. D4060)
10 mM dNTP mix (New England Biolabs, cat. no. N0447L)
ProtoScript II (New England Biolabs, cat. no. M0368L). Supplied with 5x first-strand buffer and 0.1 M DTT
1M Sodium hydroxide (nacalai tesque, cat. no. 37421-05)
CircLigaseII ssDNA ligase (Epicentre, cat. no. CL9025K). Supplied with 10x CircLigaseII buffer, 5 M Betaine, and 50 mM MnCl2.
Phusion polymerase (New England Biolabs, cat. no. M0530S). Supplied with 5x HF buffer.
Gel Loading Dye, Purple (6×) (New England Biolabs, cat. no. B7024S)
SuperSep DNA, 15%, 17 well (Wako Pure Chemical Industries, Ltd., 190-15481)
DNA-1000 kit (SHIMAZU BIOTECH)
GelStar Nucleic Acid Gel Stain 10,000× (LONZA, cat. no. 50535)
100 bp DNA Ladder (TAKARA BIO, cat. no. 3407A)
NucleoSpin Gel and PCR Clean-up (TAKARA, cat. no 740609.250)
【0125】
機器
DNA LoBind Tube 1.5 mL (eppendorf, cat. no. 022431021)
8-strip PCR tube with lid (BIO-BIK, cat. no. 3247-00)
Nunc 50mL Conical Sterile Polypropylene Centrifuge Tubes (ThermoFisher Scientific, cat. no. 339652)
Eppendorf Tubes 5.0 mL (eppendorf, cat. no. 0030122313)
Low retention filter tips (greiner bio-one, cat. nos. 771265, 773265, 738265, and 750265)
Short 10 μl filter tips (watson, cat. no. 1252-207CS)
Wide Bore 200 μl filter tips (Axygen, cat. no. TF-205-WB-R-S)
Gel loading 20 μl filter tips (ThermoFisher Scientific, cat. no. 2155P)
Refrigerated microcentrifuge (TOMY, cat. no. MX-307)
Qubit 2.0 Fluorometer (ThermoFisher Scientific)
Optima MAX-TL Ultracentrifuge (Beckman, cat. no. A95761)
TLA 110 rotor (Beckman, cat. no. 366735)
Dry block heater (Major science, cat. no. MC-0203)
EasySeparator (Wako Pure Chemical Industries, Ltd. cat. no. 058-07681)
Electrophoresis power supply (Amercham Biosciences, cat. no. EPS301)
Blue light illuminator and orage filter cover (NA). A standard UV transilluminator can be used instead.
Razors (Feather, cat. no. FAS-10) or (Feather, cat. no. No 11 stainless steel)
Spin-X centrifuge tube filter 0.22 μM (costar, cat. no. 8160)
Thermal cycler (Applied Biosystems, cat. no. 2720)
DynaMag-2 separation rack (ThermoFisher Scientific, cat. no. 12321D)
MixMate (eppendorf)
MultiNA (SHIMAZU BIOTECH)
Disposable homogenizer pestle R-1.5 (ASONE, cat. no. 1-2955-01)
図1
図2
図3