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特許7667577ゲル、多孔質体、及びゲル又は多孔質体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】ゲル、多孔質体、及びゲル又は多孔質体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/075 20060101AFI20250416BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
C08J3/075 CEP
C08J9/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022532308
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011482
(87)【国際公開番号】W WO2021256038
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2020105534
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 由莉奈
(72)【発明者】
【氏名】南川 卓也
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-226732(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110606992(CN,A)
【文献】特表2011-500119(JP,A)
【文献】特表2018-511677(JP,A)
【文献】特開2008-069315(JP,A)
【文献】特表2017-535641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28、99/00、
C08J9/00-9/42、
B29C44/00-44/60、67/20-67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性官能基を有するファイバー状高分子を溶液に溶解させる第一の工程と、
前記ファイバー状高分子を溶解させた溶液を凍結させる第二の工程と、
前記凍結させた溶液に所定量の架橋剤を添加して前記高分子同士を架橋させる第三の工程を有し、
前記ファイバー状高分子はカルボキシメチルセルロースであり、
前記架橋剤には、有機酸又は無機酸が用いられ、
前記有機酸には、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸のうち少なくとも1種類が用いられ、
前記無機酸には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸のうち少なくとも1種類が用いられ、
前記カルボキシメチルセルロースの量は、0.04gであり、
前記架橋剤の濃度は1M以上であり、かつその添加量は2ml以上であることを特徴とするゲルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゲルの製造方法において、
前記架橋剤はクエン酸であることを特徴とするゲルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゲルの製造方法において、
前記第一の工程と同時、又は前記第一の工程の後に、前記溶液に粘土鉱物、活性炭素粉末、酸化チタン、ヨウ素、又は銀イオンのいずれかを添加することを特徴とするゲルの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のゲルの製造方法において、
前記第三の工程の後に前記ゲルの乾燥工程を有することを特徴とするゲルの製造方法。
【請求項5】
多孔質構造を有し、カルボキシメチルセルロースを主成分とし、有機酸又は無機酸で架橋されたゲルにおいて、
前記有機酸は、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸のうち少なくとも1種類であり、
前記無機酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸のうち少なくとも1種類であり、
前記ゲルは含水した状態において、1mm/secの速度で80%圧縮率で圧縮し、1mm/secの速度で圧縮を解いた場合、少なくとも2回は略同一の応力ひずみ曲線となることを特徴とするゲル。
【請求項6】
請求項5に記載のゲルにおいて、
前記ゲルには粘土鉱物、活性炭素粉末、酸化チタン、ヨウ素、又は銀イオンのいずれかが含まれることを特徴とするゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル、多孔質体、及びゲル又は多孔質体の製造方法に関するものであり、より具体的には、ファイバー状の高分子を凍結した状態で所定の薬品を用いて架橋して得られた高分子多孔質体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマーを三次元に架橋した多孔質体は保水性、生体適合性を有するものが多く存在し、吸着材料から医療材料まで幅広い分野で利用されている。一方、環境や医療分野で利用するためには無害で環境に優しい材料であることが求められる。
【0003】
当該多孔質体を構成するポリマーは、合成高分子と天然高分子とに大別される。合成高分子を用いる場合、一般的には、アクリルアミド系ゲルに見られるように主に架橋剤とのラジカル重合によってゲルが合成されている。ラジカル重合を行う際には重合開始剤が用いられるため、作成された多孔質体に残存する重合開始剤の有毒性等が課題となる場合があり、医療分野における一部の使用方法では使用できない。
【0004】
一方、天然高分子は有毒性がなく生体的合成に優れているため、手術時の傷口封止材やドラッグキャリアとして広く活用されている。しかし、ゲルを合成できる天然高分子には限りがある。また、合成の際に高温での加熱が必要になるため、例えばたんぱく質や細胞等の熱に弱い材料の内包等、その用途によっては利用が制限される場合がある。
【0005】
以上の背景から、より汎用性が高く、環境負荷が低く、合成方法が簡便であり、かつ低コストな多孔質体ポリマーが求められている。
【0006】
上記要望を満たす天然高分子としてセルロースが注目されている。例えば、セルロースを用いた多孔質体の合成方法では、セルロースにカルボキシル基を導入したカルボキシメチルセルロースを用いる方法があり、その物性を変化させる合成方法について種々研究がなされている。
【0007】
特許文献1に記載のセルロースを用いた多孔質体の合成方法では、カルボキシメチルセルロースに酸を加えることによって、カルボキシメチルセルロース分子間に架橋を生じさせることによってゲルを合成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-69315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のセルロース多孔質体の合成方法では、カルボキシメチルセルロースに酸を混錬するだけでゲルを合成できるため、毒性のある試薬を使用する必要が無く、安全なセルロース多孔質体を提供することが可能となる。
【0010】
しかし、本発明の筆者らが特許文献1に記載の方法で合成したゲルについて、強度の測定を行った際、その強度が十分でないことが分かった。また、ゲルから水分を抜いた際に残る多孔質体も同様に、その強度が十分でない。
【0011】
そのため、ある程度の力が加わるような場所に上記ゲルや多孔質体を用いた場合、その機能を発揮する前にセルロースゲル自体が破壊されてしまう可能性があり、より強度を向上させる必要がある。
【0012】
また、特許文献1に記載の方法では20wt%ほどの高濃度のカルボキシメチルセルロースを合成時に用いる必要があるが、一般的に高濃度の多糖水溶液は高粘度であることから作成が極めて困難である。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、簡便に、かつ強度が高いゲル及び多孔質体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に記載の多孔質体の製造方法は、反応性官能基を有するファイバー状高分子を溶液に溶解させる第一の工程と、ファイバー状高分子を溶解させた溶液を凍結させる第二の工程と、凍結させた溶液に所定量の架橋剤を添加してファイバー状高分子同士を架橋させる第三の工程を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に記載の多孔質体は、反応性官能基を有するファイバー状高分子が溶解された溶液を凍結した状態で架橋し、架橋後に凍結された溶液を融解し、乾燥した後に得られることを特徴とする。
【0016】
また、ファイバー状高分子を主成分とするゲルは、80%圧縮率で圧縮した場合、少なくとも2回は略同一の応力ひずみ曲線となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明を実施することにより、簡便に、かつ強度が高いゲル及び多孔質体を提供することが可能となる。
【0018】
なお、上述した課題及び効果に記載されていない新たな課題や効果については、発明を実施するための形態の記載にて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は従来技術のゲルの合成方法、(b)は本発明に係るゲルの合成方法をそれぞれ示した図である。
図2】(a)は従来技術のゲル合成の概念を模式的に示した図、(b)は本発明に係るゲル合成の概念を模式的に示した図である。
図3】本発明の実験例1の方法により合成されたゲルを示した図である。
図4】本発明の実験例1の方法により得られたゲルの応力ひずみ曲線を示した図である。
図5】本発明の比較例1の方法により合成されたゲルを示した図である。
図6】本発明の比較例1の方法により得られたゲルの応力ひずみ曲線を示した図である。
図7】本発明の実験例5の色素が添加された水溶液であり、それぞれ(a)ベーシックブルー水溶液、(b)メチレンブルー水溶液、(c)マラカイトグリーン水溶液、(d)ローダミンB水溶液を示した図である。
図8】本発明の実験例3で得られた多孔質体を、それぞれ(a)ベーシックブルー水溶液、(b)メチレンブルー水溶液、(c)マラカイトグリーン水溶液、(d)ローダミンB水溶液に添加・撹拌し、12時間経過したものを示した図である。
図9】本発明のゲルの表面状態であって、(a)実験例1の方法により合成されたゲル、(b)比較例1の方法により合成されたゲル、(c)実験例2の方法により合成されたゲルをそれぞれ示した図である。
図10】本発明の実験例2の方法により得られたゲルの応力ひずみ曲線を示した図である。
図11】本発明の実験例1から実験例4、及び比較例1から比較例3の実験結果をまとめた表である。
図12】本発明の実験例6のフィルム状の多孔質体を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本開示に係るゲル及び多孔質体の実施形態について説明する。
【0021】
<第一の実施形態>
本発明で最も特徴的な点は、ゲルの合成方法にある。図1(a)は従来技術のゲルの合成方法を示すフローチャートであり、図1(b)は本発明に係るゲルの合成方法を示すフローチャートである。
【0022】
従来技術のゲルの合成方法は、まずステップS1でカルボキシメチルセルロースを準備し、その後ステップS2でカルボキシメチルセルロースを水に溶解させる。最後にステップS3にてカルボキシメチルセルロース溶液に酸又は酸水溶液を添加し、混錬することによってセルロースゲルを得る。
【0023】
一方、本発明に係るゲルの合成方法は、図1(b)に示すようにステップS11でファイバー状高分子を準備する。そしてステップS12で水にファイバー状高分子を溶解させる。そして次のステップS13及びステップS14が本発明で最も重要な点となる点である。従来技術では、カルボキシメチルセルロースを水に溶解させた後、直ぐに酸又は酸水溶液を加えて架橋を行っていたが、本発明では、まずステップS13でファイバー状高分子が溶解した溶液を凍結させ、その後ステップS14において凍結体に架橋剤を添加してゲルの合成を行う。そして最後にステップS15に進み、所定時間架橋反応を行わせた後、凍結体を融解させてゲル体を得る。このようにして得られたゲル体は、後述するように、従来技術で得られるゲル体とは異なり高強度が付与されることとなる。
【0024】
なお、本発明中で言う強度が高いとは、いわゆる多少の力を加えても破壊されず圧縮復元性が高いということを意味している。
【0025】
本発明に係るゲルの合成方法を用いた場合、従来の方法と比較して成形性の点でも利点がある。従来技術を用いた場合、複雑な構造のゲルを合成しようとすると、複雑な構造の容器に溶液を入れる必要がある。この時、容器に溶液を入れた上で酸を添加して混錬しようとしても、複雑な容器構造ゆえに、容器の細部にまで酸を行きわたらせて均一に架橋することが困難である。そのため、従来技術で複雑な構造のゲルを作成したとしても、細部の強度が弱く、形状を十分に維持できない。
【0026】
一方で本発明に係るゲルの合成方法を用いた場合、凍結体に架橋剤をかけて合成するため、凍結体の外周部から架橋反応が進むことになる。そのため、凍結体の外周部から強固に架橋されていくため、複雑な構造のゲルを容易に合成することが可能となる。
【0027】
<ファイバー状高分子>
本発明で用いられるファイバー状高分子は、例えば分子内に親水基として、カルボキシル基、スルホン基、その他アニオン性基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基のうちの少なくともいずれか1種類を有する高分子であり、具体例を挙げるとすると、セルロース、カルボキシメチルセルロース、キトサン、キチン、アガロース、アルギン酸、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、及びコラーゲン等が挙げられる。
【0028】
本発明に係るゲルを合成する場合には、用途に応じて上述したファイバー状高分子のうち少なくともいずれか1種類が選択されることとなる。一例を挙げるとすれば、医療用途で人体に接触する部位に使用されるといった場合は、人体への影響がないカルボキシメチルセルロースを選択することが好ましい。
【0029】
<架橋剤>
本発明で用いられる架橋剤は、選択された水溶性高分子を架橋可能な薬剤から選択されることになる。特に本発明ではファイバー状高分子と水素結合またはイオン結合を形成する架橋剤が好ましく、例えば酸を用いて架橋する場合には、有機酸、無機酸のいずれでも良いが、有機酸であれば、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸等のうちの少なくともいずれか1種類が用いられ、無機酸であれば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等のうちの少なくともいずれか1種類が用いられる。
【0030】
一方、塩基性の架橋剤を用いる場合には、例えば、炭酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等を用いることが可能である。
【0031】
一方、金属性の架橋剤を用いる場合には、例えば、多価金属塩の塩化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム等を用いることが可能である。
【0032】
なお、架橋剤の価数がゲルを合成した際の強度に影響を与えているものと考えられ、例えば価数が大きければ大きいほど合成されたゲルの強度が向上するものと推察される。
【0033】
<凍結速度>
ファイバー状高分子が溶解された溶液は、凍結されることとなるが凍結速度及び凍結温度については特に制限はないが、凍結速度を調整することによって、氷の粒度をある程度制御することが可能となる。より具体的には、急速凍結させれば氷の粒度は小さくなり、緩慢凍結させれば氷の粒度は大きくなる。そのため、ゲル体から水分を除去して得られる多孔質体の表面積を調整したい場合には、凍結速度を調整すれば良い。
【0034】
なお、詳細は原理及び実験例にて説明をするが、急速凍結をさせるよりも緩慢冷凍を行う方が強度が向上することが確認されている。
【0035】
<融解速度>
凍結体に架橋剤を添加し、所定時間反応させた後、ゲルを得るために凍結体を融解させることとなる。この際に、凍結体を融解させる速度については特に制限はない。
【0036】
<原理>
本発明に係るゲルの合成方法により、ゲルの強度向上が図れる点については明確な理由は解明されていない。そのため、あくまで推察となるが、次のような物理現象によって、ゲルの強度向上が図られているのではないかと考察している。
【0037】
図2(a)は従来技術におけるゲル合成の概念を模式的に示したものであり、図2(b)は本発明に係るゲル合成の概念を模式的に示したものである。
【0038】
図2(a)の上段図は水にカルボキシメチルセルロース1が分散した状態を示しており、図1(a)のステップS2の状態を示している。図1(a)のステップS3に進むと図2(a)の下段図の状態になり、丸印は架橋部2を示している。従来技術におけるゲル合成では、溶液の状態で反応が進むため、カルボキシメチルセルロース1の密度が低い状態で架橋反応が促進されると考えられる。そのため、強度が高いゲルが得られないものと考えられる。
【0039】
一方、図2(b)の上段図は水にファイバー状高分子11が分散した状態を示しており、図1(b)のステップS12の状態を示している。図1(b)のステップS13に進むと図2(b)の中段図の状態になると推察される。つまり、水が氷13に変化し、ファイバー状高分子を押しのけて狭い空間に追いやり、ファイバー状高分子の密度を上げた状態を作り上げていると考えられる。そのため、図1(b)の次のステップであるステップS14では、水溶性高分子の密度が上がったところに架橋剤が添加されて架橋部12が形成されることとなる。
【0040】
以上の理由によって、本発明に係るゲルの合成方法を用いれば、高強度なゲルが合成されるものと推察される。
【0041】
また、緩慢冷凍の方が急速凍結させるよりも強度が向上する理由は次の通りと考えられる。急速凍結を行った場合、ファイバー状高分子が氷13に押しのけられず、一部が氷13中に残ってしまう。つまり、狭い空間に十分ファイバー状高分子が押しのけられず、ファイバー状高分子の密度が上がりきらなくなるため緩慢冷凍よりも強度が多少弱くなる。
【0042】
一方で、緩慢冷凍を行った場合、徐々に氷が成長するため、ファイバー状高分子を十分に押しのけるだけの時間がある。そのため、ファイバー状高分子の密度が十分に上がり、高強度なゲルが合成できるものと考えられる。
【0043】
<その他>
なお、上記図1(b)の説明の際には述べなかったが、ステップS12の際に様々な物質を添加することによって、出来上がったゲルに特定の特性を付与することも可能である。
【0044】
例えば、ファイバー状高分子を水に溶解させた際に、粘土鉱物、活性炭粉末、を添加することによって、ゲルを乾燥させて得られた多孔質体の吸着性能を格段に向上させることが可能となる。なお、吸着材として粘土鉱物や活性炭粉末を一例として挙げたが、吸着性能を有するものであって、溶媒に分散するものであればどのようなものでも添加可能である。
【0045】
上記添加物を添加した場合、アンモニア、二酸化炭素、硫化水素等のガス吸着にも有用となる特性を付加することが出来る。
【0046】
また、ヨウ素、銀イオン、活性炭等を添加することによって、ゲルを乾燥させて得られた多孔質体に殺菌性、抗ウイルス性等を付与することもできる。なお、殺菌性を付与する材料として、ヨウ素を一例として挙げたが、殺菌性を有するものであって、溶媒に分散するものであればどのようなものでも添加可能である。
【0047】
また、酸化チタン等のチタン酸化合物を添加することによって、ゲルやゲルを乾燥させて得られた多孔質体に光触媒活性を付与することもできる。なお、光触媒活性を付与する材料として、チタン酸化合物を一例として挙げたが、光触媒活性を有するものであって、溶媒に分散するものであればどのようなものでも添加可能である。なお、ゲルを乾燥させて得られた多孔質体は、その厚みによってフィルター状からスポンジ状にも制御可能である。詳細については後の実験例で説明する。
【0048】
また、コレステロールや脂肪酸等の疎水性分子を添加することによって、ゲルを乾燥させて得られた多孔質体に疎水性等を付与して疎水性分子の吸着剤として利用することもできる。なお、疎水性を付与する材料として、コレステロールや脂肪酸を一例として挙げたが、疎水性を有するものであって、高分子の有する官能基と結合を形成するものであればどのようなものでも添加可能である。
【0049】
ゲルの乾燥方法については、凍結乾燥、エタノール置換乾燥、加熱乾燥等、様々な乾燥法を用いることが可能である。
【0050】
なお、本実施形態では説明を分かりやすくするために水とファイバー状高分子を用いた例を一例として挙げたが、冷却することによって固化させることが可能な有機溶媒を用いれば、水を用いた場合と同様に高強度なゲル又は多孔質体を得ることが可能である。
【0051】
一方で有機溶媒ではなく水単体を用いる場合には、水の調達コストが安い、凍結温度が0℃であることから冷却にかかるコストを抑えることが出来る、ゲルを作成する際の時間が短時間で済む、より大きなゲルや多孔質体を得やすい、と言った様々なメリットがある。また、ゲルや多孔質体に残存する有機溶媒成分が無いため、人体に優しいゲルや多孔質体を提供することが出来る。なお、水単体には、不純物として多少の有機成分が含まれていても良いことは言うまでもない。
【0052】
続いて本発明に係る実験例について説明する。
【0053】
<実験例1>
市販のカルボキシセルロースナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、BiNFi-s(TFo-10002),2重量パーセント)2gを容器に入れ、-20℃で一晩凍結させて凍結体を得た。
【0054】
得られた凍結体に対して、2Mのクエン酸水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製、030-05525)2mLを加えた後、-4℃で一晩静置して凍結体を融解させる。以上の工程によって、図3に示すゲル14が得られた。
【0055】
得られたゲルの一部を凍結乾燥機(EYELA社製、FDU-1100)で乾燥させて重量変化を測定したところ、その含水率は94.7%であった。空隙率は98.9%であった。また、このゲルに水を浸水させた状態で、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザー(TA.XAPlus)を用いて3回圧縮試験を繰り返して応力ひずみ曲線の測定を行った。応力ひずみ曲線の測定は、円筒プローブ(直径20mm)を用いて、1mm/secの速度で80%圧縮まで押し込み、1mm/secで上昇し、2gfの加重を検知した点をゼロ位置とするサイクルを1サイクルとして測定を行った。その結果を図4に示す。
【0056】
この応力ひずみ曲線の測定では、3回の測定とも略同一の曲線を示すという結果になった。これは、本発明に係る合成方法を用いて得られたゲルが、繰り返しの圧縮によって構造変化しないことを意味している。つまり、より詳細に説明すると、圧縮による水の排出をしにくい、非常に給水性・保水性に優れたゲルであることを意味している。
【0057】
さらに、得られたゲルの表面状態を観察するため、JEOL社製の走査型電子顕微鏡(JSM-6010PLUS/LA)を用いた測定を行った。その結果を図9(a)に示す。
【0058】
ゲルの表面状態を見ると、大きな孔が形成されていることが分かる。これは上述の原理で示した通りのゲル形成が行われているものを示す結果と考えられる。
【0059】
<比較例1>
市販のカルボキシセルロースナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、BiNFi-s(TFo-10002)、2重量パーセント)2gを容器に入れ、2Mのクエン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、030-05525)2gを極静かに加えて一晩静置した。この時、セルロースナノファイバー水溶液に対してクエン酸を普通に添加、または攪拌した場合にはゲルは形成しなかった。極静かに添加した場合、図5に示すゲル15が得られた。
【0060】
ゲルの一部を凍結乾燥機(EYELA社製、FDU-1100)で乾燥させて重量変化を測定したところ、その含水率は84.8%であった。空隙率は96.6%であった。また、このゲルに水を浸水させた状態で、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザー(TA.XAPlus)を用いて圧縮試験を行い応力ひずみ曲線の測定を行った。測定条件は実験例1と同様の条件にて測定を行った。その結果を図6に示す。
【0061】
この応力ひずみ曲線の測定では、1回の測定でゲルが破砕してしまうという結果になった。これは、従来技術の合成方法で得られたゲルでは、強固な架橋構造が形成できていないことを示している。裏を返せば、本発明に係る合成方法を用いることによって、ゲルが強固な架橋構造を形成したことを示す結果になる。また、本発明に係る合成方法を用いた場合には、少なくとも2回は略同一の応力ひずみ曲線が測定できることが分かった。
【0062】
さらに、得られたゲルの表面状態を観察するため、実験例1と同様にJEOL社製の走査型電子顕微鏡(JSM-6010PLUS/LA)を用いた測定を行った。その結果を図9(b)に示す。
【0063】
本合成方法により得られたゲルの表面状態を見ると、実施例1のような大きな孔がないことが分かる。これは実験例1と比較して、ファイバーの密度が低い状態でゲル形成が行われていること示す結果と考えられる。
【0064】
<実験例2>
市販のカルボキシセルロースナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、BiNFi-s(TFo-10002)、2重量パーセント)2gを容器に入れ、-70℃で瞬時に凍結させて凍結体を得た。
【0065】
得られた凍結体に対して、2Mのクエン酸水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製、030-05525)2mLを加えた後、-4℃で一晩静置して凍結体を融解させる。以上の工程によって、ゲルが得られた。
【0066】
得られたゲルの一部を凍結乾燥機(EYELA社製、FDU-1100)で乾燥させて重量変化を測定したところ、その含水率は70.3%であった。空隙率は53.5%であった。また、このゲルに水を浸水させた状態で、Stable Micro Systems社製のテクスチャーアナライザー(TA.XAPlus)を用いて3回圧縮試験を繰り返して応力ひずみ曲線の測定を行った。測定条件は実験例1と同様の条件にて測定を行った。その結果を図10に示す。
【0067】
この応力ひずみ曲線の測定では、実験例1とは異なり、3回の測定とも略同一の曲線を示さなかったが、ゲルが破砕するまでには至らなかった。これは、比較例1と比べて本実験例に係る合成方法を用いて得られたゲルが、比較例1で得られたゲルよりも強度が向上していることを示している。
【0068】
さらに、得られたゲルの表面状態を観察するため、他の実験例と同様にJEOL社製の走査型電子顕微鏡(JSM-6010PLUS/LA)を用いた測定を行った。その結果を図9(c)に示す。
【0069】
ゲルの表面状態を見ると、比較例1よりも大きな孔が形成されているが、実験例1ほどの孔の大きさまではないことが分かる。これは上述の原理で示した通り、急速凍結が行われるとファイバー状高分子が氷の中に束縛されてしまい、ファイバー状高分子同士の密度が上がりきらなくなるため、実験例1ほどの大きさの孔が確保できない結果となったと考えられる。
【0070】
<実験例3>
本実験例では、架橋剤の添加量以外について実験例1と同様の条件としており、クエン酸の量を1Mとしている。得られたゲルの含水率は94.8%、空隙率は98.6%であった。
【0071】
また得られたゲルに対して応力ひずみ曲線の測定を行った結果、3回の圧縮試験で略同一の曲線を示した。
【0072】
<実験例4>
本実験例では、架橋剤の添加量以外について実験例1と同様の条件としており、クエン酸の量を0.5Mとしている。得られたゲルの含水率は94.3%、空隙率は98.7%であった。
【0073】
また得られたゲルに対して応力ひずみ曲線の測定を行った結果、3回の測定においてそれぞれの曲線で多少のずれは生じたが、実験例2ほどのずれは無かった。さらに、本測定においてはゲルが破砕するまでには至らなかった。
【0074】
<比較例2>
本実験例では、架橋剤の添加量以外について実験例1と同様の条件としており、クエン酸の量を0.1Mとしている。得られたゲルの含水率は96.6%、空隙率は99.3%であった。
【0075】
また得られたゲルに対して応力ひずみ曲線の測定を行った結果、1回の測定でゲルが破砕してしまうという結果になった。
【0076】
<比較例3>
本実験例では、架橋剤の添加量以外について実験例1と同様の条件としており、クエン酸の量を0.05Mとしている。得られたゲルの含水率は97.9%、空隙率は99.6%であった。
【0077】
また得られたゲルに対して応力ひずみ曲線の測定を行った結果、1回の測定でゲルが破砕してしまうという結果になった。
【0078】
<各実験例及び各比較例に対する考察>
実験例1から実験例4、及び比較例1から比較例3の測定結果をまとめたものを図11に示す。応力ひずみ測定による圧縮復元性の結果については、1回の測定でゲルが破砕されたものには×、3回の測定で略同一の曲線を示さないがゲルが破砕するまでには至らなかったものには△が、3回の測定で略同一の曲線を示したものには〇がそれぞれ記載されている。なお、実験例4について実験は3回の測定で概ね同一の曲線を示しているため△から〇という評価になっている。実験例1から実験例4の4つの実験例に共通する特徴としては、80%圧縮まで押し込んだ際にゲルが破壊されないという特性を有する点である。
【0079】
~架橋剤の添加量について~
凍結温度を固定し、架橋剤の添加量のみを変更した実験例1、実験例3、実験例4、比較例2、及び比較例3のそれぞれの結果を比較すると、本実験例における圧縮復元性については、架橋剤の添加量が0.5M以上である場合に概ね十分な強度が得られていることが分かる。一方で、架橋剤の添加量が0.5Mの場合には応力ひずみ曲線の測定において、多少のずれが生じたため、より確実にゲルの強度を向上させるのであれば、1M以上の架橋剤を添加することが好ましい。なお、架橋剤の量は多ければ多いほど架橋密度が増すため、その上限は特に限りはなく、架橋剤の溶媒への飽和溶解量が上限となる。また、架橋剤の添加量は使用する架橋剤の価数にも左右されるので、その必要量については架橋剤によって変動する可能性があることは言うまでもない。
【0080】
~凍結状態での架橋の有無について~
実験例1と比較例1を比較すればとわかる通り、架橋剤の添加量が同一量であれば、凍結状態で架橋した方がより強度が向上していることは明らかである。そのため、従来のゲルよりも強度を上げる要件としては、凍結状態で架橋をすることが重要となる。
【0081】
~空孔の大きさ、及び空隙率・含水率について~
ゲルの表面状態を観察した結果からわかる通り、本発明に係るゲルと凍結せずに架橋したゲルを比較すると、本発明に係るゲルの方が空孔が大きいという点が挙げられる。
【0082】
一方で、ゲルの強度と含水率・空隙率の関係性については特段共通点が無いことが分かる。逆に言うと、凍結速度を調整することによって、ゲルの強度を確保しつつ空隙率や含水率の調整が可能であることを意味する。
【0083】
そのため、本発明を用いることによって、復元性を有する強度を確保した上で、用途に応じた含水率や空隙率を調整することが可能となり、様々な分野への応用が期待できる。
【0084】
<実験例5>
市販のカルボキシセルロースナノファイバー(株式会社スギノマシン社製、BiNFi-s(TFo-10002)、2重量パーセント)2gを容器に入れ、当該水溶液2gに40mgの粘土鉱物の1種であるベントナイト(ボルクレイ製、ボルクレイベントナイト)を加え、撹拌させた。ベントナイトを拡散させた水溶液を容器に入れ、-20℃で一晩凍結させて凍結体を得た。
【0085】
得られた凍結体に対して、2Mのクエン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、030-05525)2gを加えた後、-4℃で一晩静置して凍結体を融解させる。以上の工程によって、ベントナイトが分散したゲルが得られた。
【0086】
得られたゲルを凍結乾燥させた後、多孔質体を得た。図7にそれぞれ示す通り、(a)ベーシックブルー(東京化成社製、B1301)、(b)メチレンブルー(東京化成社製、A5015)、(c)マラカイトグリーン(東京化成社製、A5100)、(d)ローダミンB(東京化成社製、R0040)の色素がそれぞれ入った水溶液を準備し、この多孔質体を添加した。
【0087】
多孔質体が添加された後に撹拌をし、12時間静置した結果が図8である。それぞれ(a)は図7(a)の青色のベーシックブルー水溶液、(b)は図7(b)の青色のメチレンブルー水溶液、(c)は図7(c)の青緑色のマラカイトグリーン水溶液、(d)は図7(d)の鮮紅色のローダミンB水溶液に対応する。
【0088】
図8に示すように、多孔質体がそれぞれ色素を吸着していることが確認できた。
【0089】
図8に示すように、多孔質体の色素吸着容量はカルボキシメチルセルロース、ベントナイト各々を足し合わせた場合よりも高い値を示した。これは、本発明の多孔質体が構成成分の色素吸着力を向上させ得ることを意味している。その原理については未だ定かではないが、ゲル合成時の凍結がベントナイトの層状構造を剥離させたことにより吸着面積が向上したことと考えられる。
【0090】
なお、本実験例においてベントナイトはカルボキシメチルセルロース水溶液を調整した後に加えたが、カルボキシメチルセルロース水溶液の調整と同時に加えても良いことは言うまでもない。
【0091】
また、ゲルから水分を抜いた多孔質体を得る工程においては凍結乾燥法を用いたが、高分子の組成が変化しない範囲での乾燥方法であれば、どのような乾燥方法であっても適用可能である。特に、前述したように凍結乾燥ではなく、エタノール置換乾燥法、加熱乾燥法または自然乾燥を用いることも可能である。凍結乾燥法以外の乾燥法を使う場合、多孔質体の生産性を向上させることが出来るため、コストダウンにも非常に有効である。
【0092】
<実験例6>
本実験例ではゲルを乾燥させ、フィルム状の多孔質体を得る方法について説明する。
【0093】
まずは実験例1と同様の方法にて、厚さ0.5mmのゲルを得る。このゲルをポリジメチルシロキサンのシート上に配置し、自然乾燥を行った。その結果得られたフィルム状の多孔質体16を図12に示す。
【0094】
厚さ0.5mmのゲルは、乾燥後に厚さは0.1mmのフィルム状の多孔質体となる。そのため、準備するゲルの厚さを調整することにより、乾燥後に得られる多孔質体をフィルム状にすることも、ある程度の厚みを持ったスポンジ状にすることも可能である。
【0095】
また、本実験例ではポリジメチルシロキサン上で乾燥させたが、ガラス板上で乾燥させることももちろん可能である。ただし、ポリメチルシロキサン上で乾燥させた方が、フィルムとなった多孔質体16の強度が強くなった点が、非常に興味深い点である。これは、ゲル体とポリジメチルシロキサンシートとの間の相互作用が小さく、乾燥時にゲル体に余計な応力がかからなくなるため、フィルム状の多孔質体の強度が強くなったものと考えられる。つまり、フィルムとなった多孔質体の強度を求めるのであれば、ポリジメチルシロキサンのシート上に配置して乾燥させることが好ましい、ということである。
【0096】
本実施形態1を簡単にまとめる。まず、本発明のゲル又は多孔質体の合成方法では、反応性官能基を有するファイバー状高分子を溶液に溶解させる第一の工程と、ファイバー状高分子を溶解させた溶液を凍結させる第二の工程と、凍結させた溶液に所定量の架橋剤を添加して前記ファイバー状高分子同士を架橋させる第三の工程を有することを特徴とする。
【0097】
上記方法を用いることによって、凍結時に高分子の密度を上げた状態でファイバー状高分子同士を架橋することが出来るため、従来技術と比べて高強度なゲルを得ることが出来る。
【0098】
また、本実施形態に記載のゲル又は多孔質体の合成方法では、高分子にカルボキシメチルセルロースを用い、架橋剤はクエン酸を用いることを特徴とする。
【0099】
上記方法を用いることによって、天然高分子及び人体に害のないクエン酸を用いているため、医療用途であったとしても安全に使用することが可能なゲルや多孔質体を提供することが出来る。
【0100】
また、本実施形態に記載のゲル又は多孔質体の合成方法では、第一の工程と同時、又は前記第一の工程の後に、溶液に粘土鉱物、又は活性炭素粉末を添加することを特徴とする。
【0101】
上記方法を用いることによって、ゲルや多孔質体が元来有する吸着性能をさらに向上させることが出来るため、液体の浄化等にも使用することが可能となる。
【0102】
また、本実施形態に記載のゲル又は多孔質体の合成方法では、第一の工程と同時、又は前記第一の工程の後に、溶液にヨウ素、酸化チタン又は銀イオンのいずれかを添加することを特徴とする。
【0103】
上記方法を用いることによって、ゲルや多孔質体に対して殺菌性を付与できるため、除菌・殺菌が求められる製品にも使用することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態に記載の多孔質体は、ゲルをポリジメチルシロキサン上に配置して乾燥して作製していることを特徴とする。
【0105】
上記方法を用いることによって、多孔質体の強度を向上させることが出来る。
【0106】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
1:カルボキシメチルセルロース
2:架橋部
11:ファイバー状高分子
12:架橋部
13:氷
14:ゲル
15:ゲル
16:多孔質体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12