(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250416BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2022039458
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠
(72)【発明者】
【氏名】小田垣 啓二
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-228930(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215193(JP,U)
【文献】登録実用新案第3126501(JP,U)
【文献】特開2015-136233(JP,A)
【文献】特開2016-123241(JP,A)
【文献】特開2016-202053(JP,A)
【文献】特開2003-250421(JP,A)
【文献】特開2007-274954(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0171766(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0202202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00ー 7/98
H02J 3/00ー 5/00
A01M 1/00ー99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を供給する直流電源と、
前記直流電源と接続されるとともに、交流の電力系統と接続され、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記直流電源から供給された直流電力を前記電力系統に応じた交流電力に変換し、変換後の交流電力を前記電力系統に供給する電力変換装置と、
前記直流電源と前記電力変換装置との間の直流電路と大地との間に設けられ、前記直流電路に重畳する高周波電流を大地に流せるようにする高周波電流供給部と、
前記直流電路の経路上に設けられた整流素子と、
を備え、
前記電力変換装置は、前記直流電源から供給された直流電力を前記電力系統に応じた交流電力に変換し、交流電力を前記電力系統に供給する第1動作と、前記電力系統の交流電力を直流電力に変換し、直流電力を前記直流電路に供給する第2動作と、を実行可能であり、
前記電力変換装置は、前記第2動作において、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電力系統の交流電力を前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数に応じた高周波成分を含む直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記直流電路に供給することにより、前記高周波電流供給部を介して高周波電流を大地に流
し、
前記高周波電流供給部は、前記整流素子よりも前記電力変換装置側の部分において前記直流電路と接続される電源システム。
【請求項2】
直流電力を供給する直流電源と、
前記直流電源と接続されるとともに、交流の電力系統と接続され、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記直流電源から供給された直流電力を前記電力系統に応じた交流電力に変換し、変換後の交流電力を前記電力系統に供給する電力変換装置と、
前記直流電源と前記電力変換装置との間の直流電路と大地との間に設けられ、前記直流電路に重畳する高周波電流を大地に流せるようにする高周波電流供給部と、
を備え、
前記電力変換装置は、前記直流電源から供給された直流電力を前記電力系統に応じた交流電力に変換し、交流電力を前記電力系統に供給する第1動作と、前記電力系統の交流電力を直流電力に変換し、直流電力を前記直流電路に供給する第2動作と、を実行可能であり、
前記電力変換装置は、前記第2動作において、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電力系統の交流電力を前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数に応じた高周波成分を含む直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記直流電路に供給することにより、前記高周波電流供給部を介して高周波電流を大地に流し、
前記高周波電流供給部は、前記直流電路から大地への前記高周波電流の流れを抑制する第1状態と、前記直流電路から大地への前記高周波電流の流れを可能にする第2状態と、を切り替える切替回路を有し、前記電力変換装置が前記第1動作を実行している時に、前記切替回路を前記第1状態に切り替え、前記電力変換装置が前記第2動作を実行している時に、前記切替回路を前記第2状態に切り替える電源システム。
【請求項3】
前記高周波電流供給部は、前記直流電源の周囲に前記高周波電流を流す請求項1
又は2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記高周波電流供給部は、前記電力変換装置の周囲に前記高周波電流を流す請求項1
又は2に記載の電源システム。
【請求項5】
複数の前記高周波電流供給部を備え、
複数の前記高周波電流供給部は、前記直流電源の周囲及び前記電力変換装置の周囲のそれぞれに前記高周波電流を流す請求項1
又は2に記載の電源システム。
【請求項6】
前記電力変換装置は、前記第2動作において、前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数を変化させる請求項
1~5のいずれか1つに記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源と電力変換装置とを備えた電源システムが知られている。直流電源は、例えば、太陽電池パネルや蓄電装置などである。電力変換装置は、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、直流電源から入力された直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を交流の電力系統に供給する。電源システムは、発電電力の電力系統への供給や電力系統の安定化などを行う。
【0003】
電源システムでは、所定の条件下においては、電力変換装置が動作を停止した待機状態となる。例えば、直流電源が太陽電池パネルである場合には、夜間などの日射強度の不足している時に、電力変換装置が待機状態となる。また、直流電源が蓄電装置である場合には、電力系統の電力が安定している時に、電力変換装置が待機状態となる。
【0004】
しかしながら、上記のように電力変換装置を待機状態としてしまうと、電力変換装置の利用効率が低下してしまう。例えば、直流電源を太陽電池パネルとした電源システムでは、夜間に待機状態となるため、半日近く電力変換装置が待機状態となってしまう可能性がある。このように、電源システムでは、電力変換装置が比較的長い時間にわたって待機状態となってしまう可能性がある。このため、電源システムでは、上記のような条件下においても、電力変換装置の動作を停止させて待機状態とすることなく、電力変換装置に有益な動作を行わせることにより、電力変換装置をより有効的に活用できるようにしたいという要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-107893号公報
【文献】特開2017-85915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、電力変換装置をより有効的に活用することができる電源システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、直流電力を供給する直流電源と、前記直流電源と接続されるとともに、交流の電力系統と接続され、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記直流電源から供給された直流電力を前記電力系統に応じた交流電力に変換し、変換後の交流電力を前記電力系統に供給する電力変換装置と、前記直流電源と前記電力変換装置との間の直流電路と大地との間に設けられ、前記直流電路に重畳する高周波電流を大地に流せるようにする高周波電流供給部と、前記直流電路の経路上に設けられた整流素子と、を備え、前記電力変換装置は、前記直流電源から供給された直流電力を前記電力系統に応じた交流電力に変換し、交流電力を前記電力系統に供給する第1動作と、前記電力系統の交流電力を直流電力に変換し、直流電力を前記直流電路に供給する第2動作と、を実行可能であり、前記電力変換装置は、前記第2動作において、前記複数のスイッチング素子のスイッチングにより、前記電力系統の交流電力を前記複数のスイッチング素子のスイッチング周波数に応じた高周波成分を含む直流電力に変換し、変換後の直流電力を前記直流電路に供給することにより、前記高周波電流供給部を介して高周波電流を大地に流し、前記高周波電流供給部は、前記整流素子よりも前記電力変換装置側の部分において前記直流電路と接続される電源システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
電力変換装置をより有効的に活用することができる電源システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電源システムを模式的に表すブロック図である。
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る電源システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電源システム10は、直流電源12と、電力変換装置14と、を備える。直流電源12は、直流電力を電力変換装置14に供給する。電力変換装置14は、直流電源12と接続されるとともに、交流の電力系統2と接続される。なお、電力変換装置14と電力系統2との間には、例えば、図示を省略した変圧器や遮断器などがさらに設けられていてもよい。電力変換装置14は、複数のスイッチング素子14sを有する。電力変換装置14は、複数のスイッチング素子14sのスイッチングにより、直流電源12から供給された直流電力を電力系統2に応じた交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統2に供給する。
【0012】
直流電源12は、例えば、太陽電池パネルである。電力変換装置14は、太陽電池パネルで発電された電力を電力系統2に供給する。電源システム10は、換言すれば、太陽光発電システムである。以下では、直流電源12を太陽電池パネル12とし、太陽光発電システムの場合を例に説明を行う。
【0013】
太陽電池パネル12は、例えば、パネル本体12aと、架台12bと、を有する。パネル本体12aは、複数のセルを有する。また、パネル本体12aは、複数のセルを直列に接続した複数の直列接続体(モジュール又はストリング)を有する。パネル本体12aは、複数の直列接続体によって構成され、複数の直列接続体のそれぞれから直流電力を出力する。但し、パネル本体12aの構成は、上記に限定されるものではない。パネル本体12aは、1つの直流電力を出力する構成などでもよい。
【0014】
架台12bは、パネル本体12aを支持する。パネル本体12aは、架台12bに支持された状態で、地面の上や建築物の上などに設置される。架台12bは、太陽高度などに応じた最適な角度となるようにパネル本体12aを支持する。架台12bは、最適な発電量が得られる向き及び角度でパネル本体12aを支持する。
【0015】
また、架台12bは、パネル本体12aを地面よりも高い位置に設置する。これにより、架台12bは、例えば、塵埃、雑草、あるいは降雪の影響などによる太陽電池パネル12の発電量の低下を抑制する。
【0016】
さらに、太陽電池パネル12は、農地に設置される場合がある。架台12bは、この場合に、パネル本体12aを支持しつつ、パネル本体12aの下方の農地での農作物の育成を可能にする。架台12bは、例えば、比較的高い位置にパネル本体12aを設置し、農作物や作業機械のスペースを確保するとともに、パネル本体12aの複数のセル又は複数の直列接続体の間に隙間を空けてパネル本体12aを支持し、パネル本体12aの下方の農地にも光が入射するようにすることにより、パネル本体12aの下方の農地での農作物の育成を可能にする。こうした太陽光発電システムは、例えば、営農型太陽光発電などと呼ばれている。
【0017】
但し、架台12bの構成は、上記に限ることなく、パネル本体12aを適切に支持し、地面や建築物などの上にパネル本体12aを適切に設置することができる任意の構成でよい。
【0018】
電源システム10は、例えば、複数の太陽電池パネル12を備える。
図1では、2つの太陽電池パネル12を図示している。但し、太陽電池パネル12の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。太陽電池パネル12の数は、任意の数でよい。また、例えば、1つの架台12bに対して複数のパネル本体12aを設置してもよい。架台12bの数は、必ずしもパネル本体12aの数と同じでなくてもよい。
【0019】
電源システム10は、例えば、接続箱16と、集電箱18と、をさらに備える。接続箱16は、例えば、太陽電池パネル12が複数の直列接続体を有する場合に、複数の直列接続体の出力を1つに集約して出力する。接続箱16は、太陽電池パネル12の複数の直列接続体の出力を並列に接続することにより、1つの出力に集約する。接続箱16は、このように、複数の直列接続体の出力を1つに集約して出力することにより、例えば、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間における直流電圧の電圧降下を抑制する。
【0020】
接続箱16は、例えば、複数の遮断器16aと、複数の整流素子16bと、を有する。複数の遮断器16aは、複数の直列接続体のそれぞれに対応して設けられる。接続箱16は、複数の遮断器16aの投入及び開放を切り替えることによって、複数の直列接続体の接続及び接続の解除を個別に切り替えられるようにする。これにより、例えば、所定の直列接続体が故障した際にも、太陽電池パネル12あるいは電源システム10全体の動作を停止させることなく、対応する遮断器16aを開放することで、故障した直列接続体のみの交換などを行うことができる。従って、電源システム10のメンテナンス性を向上させることができる。接続箱16は、複数の出力を1つに集約することで直流電圧の電圧降下を抑制しつつ、電源システム10のメンテナンス性を向上させる。
【0021】
複数の整流素子16bは、複数の直列接続体のそれぞれに対応して設けられる。複数の整流素子16bは、太陽電池パネル12から電力変換装置14に向かう方向に直流電流の流れる方向を整流することにより、太陽電池パネル12への直流電流の逆流を抑制する。複数の整流素子16bは、例えば、逆流防止ダイオードである。
【0022】
なお、この例では、複数の直列接続体のそれぞれに対応する複数の整流素子16bを設けている。これに限ることなく、例えば、複数の直列接続体の出力を1つに集約した後の経路に1つの整流素子16bを設ける構成としてもよい。また、整流素子16bは、接続箱16とは別に設けてもよい。整流素子16bを設ける位置は、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間の直流電路の経路上の任意の位置でよい。換言すれば、電源システム10は、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間の直流電路の経路上に設けられた整流素子を備えてもよい。
【0023】
電源システム10は、例えば、複数の太陽電池パネル12に対応する複数の接続箱16を備える。この例では、2つの太陽電池パネル12のそれぞれに対応する2つの接続箱16を備えている。接続箱16は、例えば、架台12bのパネル本体12aの下方の空間に取り付けられる。これにより、複数の直列接続体の出力を1つに集約するまでの経路を短くし、直流電圧の電圧降下をより適切に抑制することができる。但し、接続箱16は、太陽電池パネル12とは別の場所に設置してもよい。
【0024】
例えば、接続箱16の入力端子(遮断器16a)の数が、太陽電池パネル12の直列接続体の数よりも多い場合には、複数の太陽電池パネル12の出力を1つの接続箱16に入力してもよい。反対に、接続箱16の入力端子の数が、太陽電池パネル12の直列接続体の数よりも少ない場合には、1つの太陽電池パネル12の出力を複数の接続箱16に入力してもよい。このように、接続箱16の数は、太陽電池パネル12の数と必ずしも同じでなくてもよい。
【0025】
集電箱18は、複数の接続箱16と電力変換装置14との間に設けられる。集電箱18は、複数の接続箱16の出力を1つに集約して電力変換装置14に出力する。集電箱18は、複数の接続箱16の出力を並列に接続することにより、1つの出力に集約する。集電箱18は、このように、複数の接続箱16の出力を1つに集約して電力変換装置14に出力することにより、例えば、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間における直流電圧の電圧降下をより抑制する。
【0026】
集電箱18は、例えば、複数の遮断器18aを有する。複数の遮断器18aは、複数の接続箱16のそれぞれに対応して設けられる。集電箱18は、複数の遮断器18aの投入及び開放を切り替えることによって、複数の接続箱16の接続及び接続の解除を個別に切り替えられるようにする。これにより、例えば、所定の接続箱16の系統において不具合などが生じた際にも、電源システム10全体の動作を停止させることなく、対応する遮断器18aを開放することで、不具合の生じた接続箱16の系統のみを停止させることができる。不具合の発生した接続箱16の系統の動作のみを停止させ、残りの接続箱16の系統での電力の供給を継続することができる。従って、電源システム10のメンテナンス性をより向上させることができる。
【0027】
接続箱16及び集電箱18は、太陽電池パネル12(直流電源)と電力変換装置14との間の直流電路の経路上に設けられる。接続箱16及び集電箱18は、換言すれば、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間の直流電路の一部を構成する。
【0028】
接続箱16及び集電箱18は、必要に応じて設けられ、省略可能である。例えば、接続箱16の数が、1つのみである場合には、集電箱18は省略される。例えば、電力変換装置14が接続箱16の機能を有している場合がある。この場合には、接続箱16及び集電箱18が省略される。
【0029】
電源システム10は、複数の高周波電流供給部20、30をさらに備える。複数の高周波電流供給部20、30は、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間の直流電路と大地との間に設けられ、直流電路に重畳する高周波電流を大地に流せるようにする。
【0030】
高周波電流供給部20は、接続箱16において直流電路と接続される。高周波電流供給部20は、例えば、複数の整流素子16bよりも電力変換装置14側の部分において直流電路と接続される。高周波電流供給部20は、例えば、複数の整流素子16bよりも電力変換装置14側の複数の出力を集約した後の部分において直流電路と接続される。
【0031】
電源システム10は、例えば、複数の接続箱16のそれぞれに対応した複数の高周波電流供給部20を備える。但し、高周波電流供給部20は、必ずしも複数の接続箱16のそれぞれに設けなくてもよい。
【0032】
高周波電流供給部30は、集電箱18において直流電路と接続される。高周波電流供給部30は、例えば、集電箱18の複数の出力を集約した後の部分において直流電路と接続される。
【0033】
但し、高周波電流供給部20、30を直流電路と接続する位置は、上記に限ることなく、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間の直流電路の経路上の任意の位置でよい。また、電源システム10に設けられる高周波電流供給部の数は、上記に限ることなく、任意の数でよい。
【0034】
高周波電流供給部20は、例えば、接地電極21と、高周波フィルタ22と、切替回路23と、を有する。
【0035】
接地電極21は、大地に埋め込んで設置されることにより、大地との電気的な接続を得る。接地電極21は、完全に地中に埋め込んで設置してもよいし、一部が地表から露出するように設置してもよい。接地電極21の設置の態様は、大地との電気的な接続を得ることが可能な任意の態様でよい。
【0036】
高周波フィルタ22は、直流電路と接地電極21との間に設けられる。高周波フィルタ22は、直流電路に重畳する高周波電流が大地に流れることを許容し、直流電路に流れる直流電流が大地に流れることを抑制する。換言すれば、高周波フィルタ22は、直流電路に重畳する高周波電流の成分のみを大地に流すようにする。高周波フィルタ22は、例えば、直流電路と接地電極21との間に設けられたコンデンサを有する。高周波フィルタ22は、例えば、ハイパスフィルタ、あるいはバンドパスフィルタである。これにより、高周波電流の成分のみを大地に流すことができる。高周波フィルタ22の構成は、これに限ることなく、高周波電流のみを大地に流すことができる任意の構成でよい。
【0037】
切替回路23は、直流電路から大地への高周波電流の流れを抑制する第1状態と、直流電路から大地への高周波電流の流れを可能にする第2状態と、を切り替える。第1状態は、例えば、直流電路と接地電極21とを電気的に絶縁した状態であり、第2状態は、例えば、直流電路と接地電極21とを電気的に接続した状態である。切替回路23は、例えば、スイッチング素子を有し、スイッチング素子のオン状態及びオフ状態の切り替えによって、第1状態と第2状態とを切り替える。切替回路23の構成は、上記に限ることなく、第1状態と第2状態とを適切に切り替えることが可能な任意の構成でよい。
【0038】
高周波電流供給部30は、例えば、接地電極31と、高周波フィルタ32と、切替回路33と、を有する。高周波電流供給部30の構成は、高周波電流供給部20の構成と実質的に同じであるから詳細な説明は省略する。
【0039】
電力変換装置14は、太陽電池パネル12から供給された直流電力を電力系統2に応じた交流電力に変換し、交流電力を電力系統2に供給する第1動作と、電力系統2の交流電力を直流電力に変換し、直流電力を直流電路に供給する第2動作と、を実行可能である。
【0040】
第2動作は、複数のスイッチング素子14sのスイッチングにより、電力系統2の交流電力を複数のスイッチング素子14sのスイッチング周波数に応じた高周波成分を含む直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流電路に供給することにより、高周波電流供給部20、30を介して高周波電流を大地に流す動作である。高周波電流は、直流電路及び高周波電流供給部20、30を介して大地に流れ、大地を介して電力変換装置14に戻る電流である。高周波電流は、換言すれば、漏れ電流(コモンモード電流)である。
【0041】
電力変換装置14は、例えば、複数のスイッチング素子14sをブリッジ接続した2レベルインバータである。電力変換装置14は、3レベルインバータなどのマルチレベルインバータなどでもよい。電力変換装置14の構成は、複数のスイッチング素子14sのスイッチングによって第1動作及び第2動作を実行可能な任意の構成でよい。
【0042】
電力変換装置14は、例えば、日中などの太陽電池パネル12の発電量の大きい時に第1動作を実行し、夜間などの太陽電池パネル12の発電量の小さい時に第2動作を実行する。
【0043】
電力変換装置14は、例えば、複数の太陽電池パネル12のそれぞれから供給される直流電力の直流電圧の大きさが所定電圧以上である際に、第1動作を実行し、直流電圧の大きさが所定電圧未満である際に、第2動作を実行する。このように、電力変換装置14は、太陽電池パネル12から供給される直流電力の直流電圧の大きさなどに基づいて、第1動作と第2動作とを自動的に切り替える。但し、これに限ることなく、電力変換装置14は、例えば、外部から入力される制御信号に基づいて第1動作と第2動作とを切り替えてもよい。電力変換装置14は、例えば、上位のコントローラなどから入力される制御信号に基づいて第1動作と第2動作とを切り替えてもよい。
【0044】
電力変換装置14は、例えば、第2動作において、複数のスイッチング素子14sのスイッチング周波数を有害動物の忌避する周波数に設定することにより、有害動物の忌避する周波数の高周波電流を大地に流す。例えば、ゴキブリは、15kHz~30kHz程度の周波数の電磁波を忌避すると考えられている。また、例えば、ネズミは、20kHz~50kHz程度の周波数の電磁波を忌避すると考えられている。電力変換装置14は、第2動作において、複数のスイッチング素子14sのスイッチング周波数をこうした周波数に設定する。
【0045】
例えば、接続箱16に接続された高周波電流供給部20を太陽電池パネル12の周囲に設置し、太陽電池パネル12の周囲に高周波電流を流すとともに、集電箱18に接続された高周波電流供給部30を電力変換装置14の周囲に設置し、電力変換装置14の周囲に高周波電流を流す。
【0046】
これにより、ゴキブリなどの害虫やネズミなどの害獣などの有害動物が、太陽電池パネル12や電力変換装置14に寄り付くことを抑制することができる。従って、有害動物から太陽電池パネル12及び電力変換装置14を保護することができる。例えば、有害動物の感電による短絡事故や、配線を有害動物にかじられることによる断線事故などの発生を抑制することができる。
【0047】
また、例えば、電源システム10が営農型太陽光発電である場合には、電力変換装置14は、太陽電池パネル12の周囲(パネル本体12aの下方の農地の周囲)に、有害動物の忌避する周波数の高周波電流を流す。例えば、イノシシ、シカ、サルなどの害獣は、20kHz以上40kHz以下程度の周波数の電磁波を忌避する可能性がある。有害動物は、害獣に限ることなく、ダニなどの害虫でもよい。これにより、有害動物による農作物の被害を抑制することができる。
【0048】
電力変換装置14は、例えば、太陽電池パネル12の周囲に雑草の育成を阻害する周波数の高周波電流を流してもよい。これにより、雑草による発電量の低下を抑制することができるとともに、雑草を除去する手間を省くことができる。
【0049】
さらに、電源システム10が営農型太陽光発電である場合には、電力変換装置14は、例えば、太陽電池パネル12の周囲(パネル本体12aの下方の農地の周囲)に、農作物の育成を助勢する周波数の高周波電流を流してもよい。
【0050】
高周波電流供給部20は、電力変換装置14が交流電力を電力系統2に供給する第1動作を実行している時に、切替回路23を高周波電流の流れを抑制する第1状態に切り替え、電力変換装置14が直流電力を直流電路に供給する第2動作を実行している時に、切替回路23を高周波電流の流れを可能にする第2状態に切り替える。
【0051】
これにより、電力変換装置14が第1動作を行っている時の意図しないスイッチング周波数に応じた高周波電流が大地に流れてしまうことを抑制することができる。電力変換装置14が第2動作を行っている時の所望の周波数の高周波電流のみを大地に流すことができる。
【0052】
切替回路23は、例えば、電力変換装置14と通信を行い、電力変換装置14からの制御信号に基づいて第1状態と第2状態とを切り替える。換言すれば、電力変換装置14は、切替回路23に制御信号を送信することにより、第1動作を実行している時に切替回路23を第1状態に切り替え、第2動作を実行している時に切替回路23を第2状態に切り替える。
【0053】
但し、切替回路23の第1状態及び第2状態の切り替えは、電力変換装置14からの制御信号に限定されるものではない。切替回路23の第1状態及び第2状態の切り替えは、例えば、上位のコントローラからの制御信号に応じて切り替えてもよい。切替回路23の第1状態及び第2状態の切り替えの方法は、切替回路23の第1状態及び第2状態を適切に切り替えることができる任意の方法でよい。なお、高周波電流供給部30の切替回路33の動作は、高周波電流供給部20の切替回路23の動作と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【0054】
なお、電力変換装置14が第1動作を行っている時のスイッチング周波数に応じた高周波電流が大地に流れたとしても、周囲の環境に与える影響が少ない場合などには、必ずしも切替回路23、33を設けなくてもよい。電力変換装置14が第1動作を行っている時の高周波電流も、高周波電流供給部20、30を介して大地に流してもよい。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態に係る電源システム10では、直流電路に重畳する高周波電流を大地に流せるようにする高周波電流供給部20、30を備え、電力変換装置14が、交流電力を電力系統2に供給する第1動作と、直流電力を直流電路に供給する第2動作と、を実行する。電力変換装置14は、第2動作において、複数のスイッチング素子14sのスイッチングにより、電力系統2の交流電力を複数のスイッチング素子14sのスイッチング周波数に応じた高周波成分を含む直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流電路に供給することにより、高周波電流供給部20、30を介して高周波電流を大地に流す。
【0056】
これにより、大地に流す高周波電流の周波数に応じて、上記のように、有害動物の寄り付きの抑制、雑草の育成の抑制、あるいは農作物の育成の助勢などを行うことができる。また、これにより、例えば、上記の対策を行うために必要な忌避剤やフェンスの設置などの設備費用の低減も図ることができる。なお、大地に流す高周波電流の大きさは、有害動物の寄り付きの抑制、雑草の育成の抑制、あるいは農作物の育成の助勢などを適切に行うことが可能な任意の大きさでよい。
【0057】
このように、本実施形態に係る電源システム10では、太陽電池パネル12の発電量の小さい時など、従来では電力変換装置14の動作を停止させて待機状態とする条件下においても、電力変換装置14に有益な動作を行わせることができる。従って、電力変換装置14をより有効的に活用することができる。
【0058】
高周波電流供給部20は、太陽電池パネル12(直流電源)の周囲に高周波電流を流す。これにより、上記のように、太陽電池パネル12を有害動物から保護したり、雑草の影響を抑制したり、農作物の育成を助勢したりすることができる。電源システム10は、例えば、複数の高周波電流供給部20を備え、複数の太陽電池パネル12(直流電源)のそれぞれの周囲に高周波電流を流す。これにより、複数の太陽電池パネル12のそれぞれについて、上記のような対策を行うことができる。
【0059】
高周波電流供給部30は、電力変換装置14の周囲に高周波電流を流す。これにより、上記のように、電力変換装置14の有害動物からの保護などを行うことができる。
【0060】
電源システム10は、複数の高周波電流供給部20、30を備え、太陽電池パネル12の周囲、及び電力変換装置14の周囲に高周波電流を流す。これにより、例えば、太陽電池パネル12及び電力変換装置14を適切に有害動物から保護することができる。
【0061】
なお、高周波電流は、太陽電池パネル12(直流電源)の周囲のみに流してもよいし、電力変換装置14の周囲のみに流してもよい。高周波電流を流す位置は、これに限ることなく、例えば、有害動物の寄り付きの抑制、雑草の育成の抑制、あるいは農作物の育成の助勢などを必要とする任意の位置でよい。
【0062】
また、電源システム10は、太陽電池パネル12と電力変換装置14との間の直流電路の経路上に設けられた整流素子16bを備える。高周波電流供給部20、30は、整流素子16bよりも電力変換装置14側の部分において直流電路と接続される。これにより、電力変換装置14が第2動作を行う際に、太陽電池パネル12側に直流電流が流れてしまうことを抑制することができる。例えば、第2動作において、直流電圧のみが直流電路に印加され、直流電流は実質的に直流電路に流れることなく、高周波電流の成分のみを大地に流す状態とすることができる。これにより、電力変換装置14が第2動作を行う際にも、第2動作の実行にともなう電力の消費を抑制することができる。有害動物の寄り付きの抑制、雑草の育成の抑制、あるいは農作物の育成の助勢などを、少ない消費電力で行うことができる。
【0063】
電力変換装置14は、例えば、第2動作において、複数のスイッチング素子14sのスイッチング周波数を変化させてもよい。これにより、例えば、複数種類の有害動物の寄り付きを抑制したり、有害動物の寄り付きの抑制や雑草の育成の抑制などを同時に実現したりすることができる。さらには、有害動物の特定の周波数の高周波電流に対する慣れを抑制することなども期待することができる。従って、電力変換装置14により有益な動作を行わせることができる。なお、スイッチング周波数の変化は、段階的な変化でもよいし、連続的な変化でもよい。
【0064】
なお、上記実施形態では、太陽電池パネル12を直流電源として説明している。直流電源は、太陽電池パネルに限ることなく、例えば、蓄電装置などでもよい。直流電源が蓄電装置である場合には、電力変換装置14は、例えば、電力系統2の交流電力が安定していて蓄電装置の充放電を行う必要がない時に、第2動作を行う。例えば、直流電源が蓄電装置である場合には、蓄電装置の充電時の動作を第2動作とし、大地に高周波電流を流してもよい。
【0065】
直流電源は、例えば、風力発電機などの交流電力を発電する発電機と、交流電力を直流電力に変換する変換器と、を組み合わせて構成してもよい。直流電源は、電力変換装置14に対して直流電力を供給可能な任意の電源でよい。
【0066】
電力変換装置14が第2動作を行うタイミングは、電力系統2への交流電力の供給を行わない任意のタイミングでよい。電力変換装置14が第2動作を行うタイミングは、直流電源の構成などに応じて適宜設定すればよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
2…電力系統、 10…電源システム、 12…直流電源(太陽電池パネル)、 12a…パネル本体、 12b…架台、 14…電力変換装置、 14s…スイッチング素子、 16…接続箱、 16a…遮断器、 16b…整流素子、 18…集電箱、 18a…遮断器、 20、30…高周波電流供給部、 21、31…接地電極、 22、32…高周波フィルタ、 23、33…切替回路