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  • 特許-植物性蛋白素材及び食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】植物性蛋白素材及び食品
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/14 20060101AFI20250416BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20250416BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20250416BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20250416BHJP
【FI】
A23J3/14
A23L5/00 M
A23L29/256
A23L29/269
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020136335
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032493
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中西 健太
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】井川 菜央
(72)【発明者】
【氏名】酒井 純
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/158562(WO,A1)
【文献】特公昭48-010548(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第110915939(CN,A)
【文献】特公昭47-022793(JP,B1)
【文献】特開2010-200627(JP,A)
【文献】国際公開第2007/013146(WO,A1)
【文献】特開2016-054719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 1/00- 7/00
A23L 1/00-33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織化された植物性蛋白と、これを被覆する被膜とを有し、
前記被膜にて被覆された領域内に調味成分が含まれてなり、
前記被膜が凝固したアルギン酸ナトリウムであり前記被膜の厚みが、10μm~300μmであり、
前記組織化された植物性蛋白が、その組織中に保湿ゲルを内包し、
前記保湿ゲルは、カラギーナン及び/又はキサンタンガムを含む、
ことを特徴とする植物性蛋白素材。
【請求項2】
前記組織化された植物性蛋白が、層状又は繊維状である請求項に記載の植物性蛋白素材。
【請求項3】
前記調味成分が、前記組織化された植物性蛋白及び/又は前記保湿ゲルに含まれている請求項に記載の植物性蛋白素材。
【請求項4】
前記保湿ゲルが、油脂を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の植物性蛋白素材。
【請求項5】
前記油脂が、植物性原料からなる請求項に記載の植物性蛋白素材。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の植物性蛋白素材を含むことを特徴とする食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性蛋白素材及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、畜肉原料を取り巻く社会情勢は厳しくなる現状があり、畜肉の代替原料あるいは増量剤として大豆蛋白質等の植物性蛋白が使用される傾向が強まっている。
植物性蛋白は、加工食品の分野で広く利用されており、日本農林水産省において、「植物性たん白の日本農林規格」によって定義付けされている。この規格において、植物性蛋白の原材料は、大豆粉、脱脂大豆粉、小麦粉、小麦グルテン等から選ばれるものとされている。そして、植物性蛋白の種類は、粉末状植物性蛋白、ペースト状植物性蛋白、粒状植物性蛋白及び繊維状植物性蛋白と区分されている。
【0003】
植物性蛋白の中でも、脱脂大豆や粉末状大豆蛋白素材を原料として組織化された植物性蛋白素材は多様な用途に用いられており、ハンバーグやミートボール等の畜肉加工食品には挽肉の増量剤として組織化された植物性蛋白素材が用いられている。
【0004】
一方、組織化された植物性蛋白素材の食感の特徴として、咀嚼時のほぐれや消失感が挽肉に比べて劣るという点が挙げられる。このような組織化された蛋白素材の食感改良について様々な研究がなされてきている。
【0005】
例えば、特許文献1には、植物性蛋白素材及び水をベースとするペースト中に、融点が5℃以上の固体状の油脂が分散しており、水と固体状の油脂との重量比率を2:1~2:6とする挽肉様加工品が開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、食肉構造化タンパク質製品と、食肉様の属性(油脂性、芳香、味覚、色)を付与する作用剤放出システム(カプセル化体)とを含む食肉用食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-139684号公報
【文献】特表2018-533945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示された挽肉もしくは挽肉様加工品では、調味料を加えることで味を付与することができるが、挽肉もしくは挽肉様加工品を構成する植物性蛋白素材自体の風味が乏しいといった問題があった。
【0009】
また、特許文献2で開示された食肉用食品では、作用剤放出システムと、食肉構造化タンパク質製品(組織化された植物性蛋白)とが別々の構成として存在するために、咀嚼することにより作用剤放出システムが一度に放出されてしまうので、風味の持続性に乏しいといった問題があった。また、作用剤放出システムが局在化されてしまい、咀嚼時の味わいが不均一になるといった問題もあった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、風味が豊かであり、風味の持続性に優れ、かつ、均一な味わいが得られる植物性蛋白素材及びこれを含む食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、組織化された植物性蛋白と、これを被覆する被膜とを有し、上記被膜にて被覆された領域内に調味成分が含まれてなることを特徴とする植物性蛋白素材である。
【0012】
本発明の植物性蛋白素材では、被膜により被覆された領域内に調味成分が含まれてなることにより豊かな風味を有するとともに、咀嚼するごとに調味成分が放出されるので、風味の持続性にも優れる。
また、被膜により被覆された領域内に調味成分が含まれてなるため、調味成分が局在化せず、カプセル内に調味成分を閉じ込めた場合と比べて、咀嚼時に均一な味わいを得ることができる。
【0013】
本明細書において、「組織化された植物性蛋白」とは、植物性蛋白であり、「植物性たん白の日本農林規格」に規定された粒状植物性蛋白及び/又は繊維状植物性蛋白からなる肉様の組織を有するもののことを意味する。また、「組織化された植物性蛋白」には、「層状」に組織化されたものを含み、「層状」とは、「植物性たん白の日本農林規格」に規定されたものとは若干異なり、2次元的に広がる所定の厚さの組織が複数積層されて層状となった構造のものを意味する。
【0014】
本発明の植物性蛋白素材は、被膜の厚みが、0.1μm~1000μmであることが好ましい。
被膜の厚みが上記範囲とすることにより、植物性蛋白素材の硬さを好適に調整することができ、その結果、風味の持続性と食感とを好適に付与することができる。
【0015】
本発明の植物性蛋白素材は、組織化された植物性蛋白が、層状又は繊維状であることが好ましい。
組織化された植物性蛋白が層状又は繊維状であることにより、植物性蛋白素材に天然の畜肉や魚肉等と同様の食感を付与することができる。また、後述する保湿ゲルを組織化された植物性蛋白に好適に内包させることもできる。
【0016】
本発明の植物性蛋白素材は、組織化された植物性蛋白が、その組織中に保湿ゲルを内包することが好ましい。
組織化された植物性蛋白の組織中に保湿ゲルを内包することにより、植物性蛋白素材にジューシー感を好適に付与することができる。
【0017】
本発明の植物性蛋白素材は、調味成分が、組織化された植物性蛋白及び/又は保湿ゲルに含まれていることが好ましい。
組織化された植物性蛋白及び/又は保湿ゲル中に含まれているため、調味成分が局在化を抑制することができ、カプセル内に調味成分を閉じ込めた場合と比べて、咀嚼時に均一な味わいを好適に付与することができる。
【0018】
本発明の植物性蛋白素材は、保湿ゲルが、炭水化物を含むことが好ましい。
保湿ゲルが、炭水化物を含むことにより、炭水化物が保湿ゲルに含まれる水分を水和することで、保湿性を高められる。また、風味の豊かさを好適に付与することもできる。
【0019】
本発明の植物性蛋白素材は、保湿ゲルが、油脂を含むことが好ましい。
保湿ゲルが油脂を含むことにより、植物性蛋白素材の風味をより豊かにすることができるとともに、ジューシー感を好適に付与することもできる。
【0020】
本発明の植物性蛋白素材は、油脂が植物性原料からなることが好ましい。
保湿ゲルに含まれる油脂が、植物性原料からなることにより、宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができる。また、飽和脂肪酸や脂質の含有量が少なくなるので、健康の観点からも好ましい。
【0021】
本発明の食品は、本発明の植物性蛋白素材を含むことを特徴とする。
本発明の食品は、本発明の植物性蛋白素材を含むことにより、風味が豊かであり、風味の持続性に優れ、かつ、均一な味わいが得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、風味が豊かであり、風味の持続性に優れ、かつ、均一な味わいが得られる植物性蛋白素材及びこれを含む食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例1及び比較例1で得られた植物性蛋白素材と、牛サーロインの重量減少率をレオメーターにて測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の植物性蛋白素材は、組織化された植物性蛋白と、これを被覆する被膜とを有し、上記被膜にて被覆された領域内に調味成分が含まれてなることを特徴とする。
本発明の植物性蛋白素材では、以下の効果を得ることができる。
【0025】
本発明の植物性蛋白素材では、被膜により被覆された領域内に調味成分が含まれてなることにより豊かな風味を有するとともに、咀嚼するごとに調味成分が放出されるので、風味の持続性にも優れる。
また、被膜により被覆された領域内に調味成分が含まれてなるため、調味成分が局在化せず、カプセル内に調味成分を閉じ込めた場合と比べて、咀嚼時に均一な味わいを得ることができる。
【0026】
(組織化された植物性蛋白)
本発明の植物性蛋白素材は、組織化された植物性蛋白を有する。
【0027】
組織化された植物性蛋白は、蛋白質原料を用いて形成されることが好ましい。
蛋白質原料としては、例えば、大豆、エンドウマメ、黄色エンドウ、ソラマメ、緑豆、米、カボチャ、アルファルファ、レンズマメ、ビーン、クローバ、ハッショウマメ、フリホールアカマメ、フリホールクロマメ、アオイマメ、ひよこ豆、小麦、トウモロコシ、キャノーラ、ハギ属、甘草、ハウチワマメ、メスキート、イナゴマメ、ピーナッツ、タマリンド、フジ属、カシア属、ガルバンゾ、コロハ、及び、グリーンピース等の植物に由来する蛋白が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
蛋白質原料としては、脱脂されたものであっても良いし、粉末状のものであってもよく、精製蛋白、濃縮蛋白であってもよいし、それらをペースト状にしたものであってもよい。
【0028】
組織化された植物性蛋白は、蛋白質原料と、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等とを複合して形成することもできる。
【0029】
炭水化物としては糖類や食物繊維が挙げられ、具体的には、果糖、ブドウ糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、水飴、カップリングシュガー、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖,還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール、還元水飴等)、デキストリン、及び、澱粉類(生澱粉、加工澱粉等)が挙げられる。
また、食物繊維としては、寒天、アルギン酸塩、大豆レシチン、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、結晶セルロース、増粘多糖類(カラギーナン、カシアガム、セルロースガム、カードランガム、グアガム、ヒドロキシプロピルセルロース、こんにゃく、ローカストビーンガム、ペクチン、キサンチンガム)等が挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
脂質としては、例えば、アマニ油、エゴマ油、シソ油、くるみ油、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、エッセンシャルオイル、アーモンド油、アロエベラ油、キョウニン油、アボカド油、バオバブ油、キンセンカ油、キャノーラ油、ツキミソウ油、グレープシードオイル、ヘーゼルナッツ油、ホホバ油、マカダミア油、天然油、ニーム油、非水素化油、部分的水素化油、ラッカセイ油、合成油、植物油、ω-脂肪酸(例えば、アラキドン酸、ω-3-脂肪酸、ω-6-脂肪酸、ω-7-脂肪酸、ω-9-脂肪酸)、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、及び、魚油等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
脂質としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
【0031】
栄養分としては、例えば、ビタミン類、ミネラル(ナトリウム、マグネシウム、カリウム、鉄、カルシウム、及び、亜鉛等)、ポリフェノール類やカロテノイド類やサポニン類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
調味成分としては、例えば、ジンジャーエキス、ニンジンエキス、トマトエキス等の野菜エキス、エビエキス、カニエキス、牡蠣エキス、ホタテエキス等の魚介エキスもしくは魚介風味の植物性エキス、ビーフエキス、ボークエキス、チキンエキス等の畜肉系エキスもしくは畜肉風味の植物性エキス、酵母エキス、砂糖、塩、お酢、醤油、味噌、みりん、コンソメ、グルタミン酸ソーダ等のアミノ酸調味成分、こしょう等の香辛料、及び、香料(草根、木皮、花、果実、果皮又はその他動植物を素材として調製された天然香料や、コーヒー由来、紅茶由来、緑茶由来、ウーロン茶由来、ココア由来、ハーブ由来、スパイス由来、フルーツ由来の合成香料等)等の調味成分が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明の植物性蛋白素材において、調味成分が、組織化された植物性蛋白及び/又は後述する保湿ゲルに含まれていることが好ましい。
従来の作用剤放出システムとしてろう分子等を閉じ込めたカプセルを使用した場合には、食肉構造化タンパク質製品(組織化された植物性蛋白)とカプセルとが別々の構成として存在するために、作用剤放出システムが局在化して味が不均一になるといった問題があった。被膜により被覆された領域内(組織化された植物性蛋白)に調味成分が含まれることにより、調味成分が局在化せず、カプセル内に調味成分を閉じ込めた場合と比べて、咀嚼時に均一な味わいを得ることができる。
また、調味成分としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
【0034】
組織化された植物性蛋白を、蛋白質原料と、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等とを複合して形成する場合、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等は、蛋白質原料100重量部に対して、0.1~500重量部含むことが好ましく、50~300重量部含むことがより好ましい。
【0035】
組織化された植物性蛋白は、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤等を含んでもよい。
【0036】
組織化された植物性蛋白は、その形状は特に限定されないが、粒状、層状、繊維状等、いかなる形状であっても用いることができる。
なかでも、層状又は繊維状であることが好ましい。植物性蛋白素材に天然の畜肉や魚肉等と同様の食感を付与するとともに、後述する保湿ゲルを好適に内包させることができるからである。
【0037】
組織化された植物性蛋白が「層状」である場合、「植物性たん白の日本農林規格」に規定されたものとは若干異なり、2次元的に広がる所定の厚さの組織が複数積層されて層状となった構造を有する。
この場合、構成する層状植物性蛋白の厚みが0.01μm~1000μmであることが好ましく、外力により層状方向に引き裂くことができる構造であることが好ましい。
なお、組織化された植物性蛋白が層状である場合、厚みとは、乾燥状態における層状の組織状植物性蛋白の任意の30個について測定した最も短い部分を計測して得られた値の平均値を意味し、積層数は、層状の組織状植物性蛋白の任意の30個について測定した平均値を意味する。
【0038】
組織化された植物性蛋白が「繊維状」である場合、「植物性たん白の日本農林規格」に規定された繊維状植物性蛋白からなる肉様の組織を有する。
この場合、平均繊維径が0.01μm~1000μmであることが好ましく、外力により線維方向に引き裂くことができる構造であることが好ましい。
また、アスペクト比が、10以上であることが好ましい。アスペクト比は、繊維長/平均繊維径により計算される。
なお、組織化された植物性蛋白が繊維状である場合、平均繊維径及びアスペクト比は、乾燥状態における繊維状の組織状植物性蛋白の任意の30個について測定した平均値を意味する。
【0039】
組織化された植物性蛋白は、吸水率が200%以上、600%未満であることが好ましい。
後述する保湿ゲルを好適に内包させることができ、ジューシー感を好適に付与することができるからである。
吸水率の測定方法としては、例えば、組織化された植物性蛋白の10gを試料として200mLビーカーに入れ、そこに98℃の水を200g加えて5分間静置する。その後、篩を用いて5分間水切りを行った後、湯戻し後の試料の重量を測定し、下記数式により吸水率を算出することができる。
吸水率(%)=(湯戻し後の試料の重量/試料10g中の固形分重量)×100
【0040】
組織化された植物性蛋白は、植物性蛋白素材の全体の重量に対して、5~80重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
組織化された植物性蛋白の重量が上記範囲であることにより、植物性蛋白素材に天然の畜肉や魚肉等と同様の食感を付与するとともに、保湿ゲルを好適に内包させることができる。
【0041】
(保湿ゲル)
本発明の植物性蛋白素材は、組織化された植物性蛋白が、その組織中に保湿ゲルを内包することが好ましい。
組織化された植物性蛋白の組織中に保湿ゲルを内包することにより、植物性蛋白素材にジューシー感を好適に付与することができる。
【0042】
保湿ゲルは、融点が100℃未満であることが好ましい。
融点が100℃未満であると、咀嚼することにより保湿ゲルが容易に融解されるため、ジューシー感を好適に付与することができる。
保湿ゲルの融点は、80℃未満であることがより好ましく、60℃未満であることが更に好ましい。
【0043】
保湿ゲルとしては、例えば、カラギーナン(κタイプ、ιタイプ、λタイプ)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースガム、ヒドロキシプロピルセルロース、タラガム、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸エステル、グアガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、キサンタンガム、カードラン、プルラン、コラーゲン、ゼラチン、アミノ酸各種及びそれらのペプチド、寒天、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、コンニャクマンナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、昆布酸、大豆蛋白、大豆レシチン、及び、結晶セルロース等のゲル化剤を含むものが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、保湿ゲルとしては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
【0044】
保湿ゲルにおけるゲル化剤の含有量としては、保湿ゲルの全体の重量に対して、0.3~20重量%であることが好ましく、0.5~5重量%であることがより好ましい。
【0045】
保湿ゲルは、水を含有することが好ましい。
水の含有量としては、保湿ゲルの全体の重量に対して、40~99.7重量%であることが好ましく、80~99重量%であることがより好ましい。
【0046】
保湿ゲルは、炭水化物を含むことが好ましい。
保湿ゲルが炭水化物を含むことにより、炭水化物が保湿ゲルに含まれる水分を水和することで、保湿性を高められる。また、風味を好適に付与することもできるからである。
炭水化物としては、上述した組織化された植物性蛋白で記載したものや、ゲル化剤として記載したものを適宜選択して用いることができる。
【0047】
保湿ゲルは、油脂を含むことができる。
保湿ゲルが油脂を含むことにより、風味をより豊かにすることができるとともに、ジューシー感を好適に付与することもできる。
【0048】
油脂としては、上述した組織化された植物性蛋白で脂質として記載したものを適宜選択して用いることができる。
【0049】
油脂は、固形分油脂であることが好ましい。
油脂が固形分油脂であることにより、保湿ゲルの融点と固形分油脂の融点との差により、複雑な風味と(奥深い)ジューシー感とを付与することができるからである。
固形分油脂の融点は、60℃以下であることが好ましい。
【0050】
油脂は、乳化剤で乳化させて含有させることもできる。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤を用いることができ、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、糖脂質、オリゴペプチド、リポペプチド、リン脂質、及び、サポニン等が挙げられる。
【0051】
油脂は、植物性原料からなることが好ましい。
保湿ゲルに含まれる油脂が、植物性原料からなることにより、宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。また、飽和脂肪酸や脂質の含有量が少なくなるので、健康の観点からも好ましい。
【0052】
油脂の含有量としては、保湿ゲルの全体の重量に対して、0.1~30重量%であることが好ましく、1~20重量%であることがより好ましい。
油脂の含有量が上記範囲であることにより、植物性蛋白素材にジューシー感を好適に付与できるからである。
【0053】
保湿ゲルは、調味成分及び栄養分を含むことが好ましい。
調味成分、栄養分としては、上述した組織化された植物性蛋白で記載したものを適宜選択して用いることができる。
保湿ゲルに調味成分が含まれることにより、調味成分が局在化せず、従来のカプセル内に調味成分を閉じ込めた場合と比べて、咀嚼時に均一な味わいを得ることができる。
また、調味成分としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
【0054】
保湿ゲルにおける調味成分の含有量は、付与したい味や風味に応じて適宜調整すればよい。
【0055】
保湿ゲルは、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤、増粘剤、結着剤等を添加してもよい。
【0056】
保湿ゲルは、植物性蛋白素材の全体の重量に対する保湿ゲルの重量が、以下の式(I)を満たすように調整してなることが好ましい。
5%<[(M(10)-M(80))/M(10)]×100(%)<80%・・・式(I)
保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで植物性蛋白素材を破砕した場合の10℃における植物性蛋白素材の重量をM(10)、保湿ゲルが溶融の際に植物性蛋白素材の外に流出する程度にまで植物性蛋白素材を破砕した場合の80℃における植物性蛋白素材の重量をM(80)とそれぞれ定義する。
保湿ゲルの重量を上記範囲に調整することにより、加熱調理による保湿ゲルが流出することを好適に抑制することができ、加熱調理後におけるジューシー感をより一層維持することができるからである。
M(10)及びM(80)の測定は下記の方法で行うことができる。
10℃の条件で、植物性蛋白素材をフードプロセッサーにて粉砕した後、粉砕した植物性蛋白素材10gを測り取り、これをM(10)とする。
次いで、粉砕した植物性蛋白素材10gを吸湿性素材(スポンジ生地等)上に静置して100gの荷重を掛け、80℃に加熱したオーブン内にて10分間放置した後、吸湿性素材の重量を測定し、吸湿性素材の重量差(粉砕した植物性蛋白素材を静置する前の吸湿性素材の重量と、オーブン内にて10分間放置した後の重量差)からM(80)を求める。
【0057】
(被膜)
本発明の植物性蛋白素材は、被膜を有する。
【0058】
被膜の融点は、保湿ゲルの融点よりも35℃以上高いことが好ましい。
被膜の融点を所定の範囲に制御することにより、加熱調理をしたとしても、保湿ゲルが流出することを抑制することができ、加熱調理後においてもジューシー感を好適に維持することができる。
被膜の融点は、保湿ゲルの融点よりも40℃以上高いことがより好ましく、50℃以上高いことが更に好ましい。
【0059】
被膜としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、寒天、こんにゃく、カラギーナン(κタイプ、ιタイプ、λタイプ)、ジェランガム、ペクチン、及び、キサンタンガム等の炭水化物を含むものが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、カルボキシメチルセルロースナトリウム、タラガム、ジェランガム、グアガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、カードラン、プルラン、コラーゲン、ゼラチン、寒天、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、コンニャクマンナン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ガッティガム、アラビノガラクタン、昆布酸、大豆蛋白、セルロースガム、ヒドロキシプロピルセルロース、大豆レシチン及び、結晶セルロース等のゲル化剤を含むものが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、被膜としては、植物由来のものが好ましい。宗教上の理由から動物性食品を摂取できない者でも食することができるからである。
これらの中でも、アルギン酸ナトリウム、ペクチン等、金属イオンにより凝固する成分が好ましい。
【0060】
金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウム、アルミニウムイオン等が挙げられる。
カルシウムイオンを供給するカルシウム塩として、例えば乳酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム等を、マグネシウムイオンを供給するマグネシウム塩として、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を、アルミニウム塩として、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム等を例示できる。
【0061】
被膜の厚みとしては、0.01μm~1000μmであることが好ましく、10μm~300μmであることがより好ましい。
被膜の厚みが上記範囲であることにより、風味の持続性を好適に付与することができる。
また、加熱調理をしたとしても、保湿ゲルが流出することを好適に抑制することができ、加熱調理後においてもジューシー感を維持することができる。
なお、マイクロスコープで観察し、最も厚みが小さくなる部分を計測して得られた値を被膜の厚みとする。
【0062】
(植物性蛋白素材)
本発明の植物性蛋白素材は、上述した構成を有するため、風味が豊かであり、風味の持続性に優れ、かつ、均一な味わいが得られる。
【0063】
本発明の植物性蛋白素材は、保水率が40~90%であることが好ましく、50~85%であることがより好ましい。
保水率は、105℃で4時間乾燥した前後の重量差より求めることができる。
【0064】
(植物性蛋白素材の製造方法)
本発明の植物性蛋白素材の製造方法としては特に限定されないが、例えば、組織化された植物性蛋白を作製し、被膜を形成して植物性蛋白素材を製造する方法等が挙げられる。必要に応じて、組織化された植物性蛋白を作製した後、組織化された植物性蛋白に保湿ゲルを内包させ、その後、被膜を形成してもよい。
調味成分は、被膜にて被覆された領域内に含まれており、例えば、組織化された植物性蛋白に複合されていてもよいし、保湿ゲルに含まれていてもよい。
【0065】
組織化された植物性蛋白の作製方法としては特に限定されないが、例えば、蛋白質原料と、必要に応じて、炭水化物、脂質、栄養分、及び、調味成分等をエクストルーダー(押出成型機)に投入し、その後、加圧加熱処理し熱可塑性となった蛋白質原料をスクリューの先端部に設けたダイ(口金)より押し出し、組織を所望な程度に膨化させ、次いで細断もしくは破砕、乾燥・冷却、整粒工程を経ることにより、組織化された植物性蛋白を作製することができる。
【0066】
加圧加熱処理は、公知のエクストルーダーを用い、公知の方法に従って行なうことができる。混練が強く安定的に組織化しやすい二軸以上の軸を有するエクストルーダーを用いることが望ましい。
【0067】
エクストルーダーの加熱条件は、80~150℃が望ましい。また、整粒方法としてはふるいや風力分級などの方法を採用することができる。さらに、パワーミルのように破砕とふるいによる整粒を同時に行う方法でもよい。吸水率は、原料組成、エクストルーダーの加熱温度により調整することができる。
【0068】
組織化された植物性蛋白に、保湿ゲルを内包させる方法としては特に限定されないが、例えば、沸騰水中にゲル化剤、及び、必要に応じて調味成分を加えて保湿ゲル水溶液を作製し、この保湿ゲル水溶液中に組織化された植物性蛋白を加えた後、静置をして組織化された植物性蛋白に、ゲル化剤水溶液を内包させる。その後、保湿ゲル水溶液を内包する組織化された植物性蛋白を取り出し、冷却を行うことにより保湿ゲル水溶液をゲル化させて、組織化された植物性蛋白に保湿ゲルを内包させることができる。
【0069】
保湿ゲル水溶液において、ゲル化剤は、保湿ゲル水溶液の重量に対して、0.1~50重量%であることが好ましい。
【0070】
被膜の形成方法としては、金属塩を添加して金属イオンを含む水溶液に、上述した植物性蛋白を浸漬させる。その後、金属イオンを含む水溶液に炭水化物を溶解させ、金属イオンと炭水化物とを接触させて凝固させることにより被膜を形成することができる。これにより植物性蛋白素材を製造することができる。
【0071】
金属イオンを含む水溶液は、結着剤を含有してもよい。
結着剤としては、例えば、トランスグルタミナーゼ、でんぷん等を使用することができる。
【0072】
金属イオンを含む水溶液には、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、界面活性剤、着色剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0073】
(食品及びその製法)
本発明の食品は、本発明の植物性蛋白素材を含むことを特徴とする。
そのため、風味が豊かであり、風味の持続性に優れ、かつ、均一な味わいが得られる。
【0074】
本発明の食品は、例えば、本発明の植物性蛋白素材を円柱状、楕円柱状等の凹型成形治具に入れ、凸型成形治具を用いて加圧して成形して食品成形体とすることにより得られる。成形治具の形状は円柱状や楕円柱状に限定されず、食品に応じて選択できる。また、加圧成形は、凹型、凸型治具を用いた一軸プレス以外に、多軸プレス、等方プレス(冷間静水圧プレス)等を使用してもよい。さらに、成形した後、エビ、カニ、魚、肉、麺類等各食品によく見られる形状に切削加工することもできる。
【0075】
また、本発明の植物性蛋白素材を成形した食品成形体をゲル化剤溶液や被膜を形成するための溶液中に浸漬して食品成形体中にゲル化剤を浸透させたり、食品成形体の表面に被膜を形成してもよい。例えば、本発明の植物性蛋白素材の被膜形成のためにアルギン酸ナトリウム水溶液及びカルシウム塩水溶液を使用した場合には、当該植物性蛋白素材を含む食品成形体を塩化カルシウムや乳酸カルシウム等のカルシウム塩水溶液に浸漬して被膜の凝固反応を進行させることで、食品成形体が加熱調理中に崩れないように植物性蛋白素材同士の結着性を改善することができる。
さらに、本発明の植物性蛋白素材にデンプン、トランスグルタミナーゼ等の結着剤や市販の植物性蛋白粒子、着色剤、調味成分等を加えて、成形して食品成形体とすることもできる。
【実施例
【0076】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0077】
(実施例1)
[組織化された植物性蛋白の作製]
脱脂大豆90重量部、粉末状大豆蛋白9重量部、及び、カツオだし1重量部からなる主原料粉を混合し二軸エクストルーダーにて原料混合粉に対し25重量部の水を供給しながら出口温度120℃、スクリュー回転数450RPMの条件で、厚み1mm幅15mmのスリットダイから押出してシート状の組織化された植物性蛋白を作製した。
シート状の組織化された植物性蛋白は出口にて押出方向に対して垂直方向にカットし、平均幅5.0mmの棒状の組織化された植物性蛋白を作製した。組織化された植物性蛋白は85℃の恒温器にて乾燥を行い、乾燥体を得た。
【0078】
[保湿ゲルの作製]
沸騰水中にカッパー型カラギーナン(WR-78-J)を1重量%、キサンタンガム(SATIAKINE CX90)1重量%、10重量%のココナッツオイル、5重量%のパーム油、植物性牛肉風エキス1重量%を添加し攪拌し、保湿ゲル水溶液を得た。
組織化された植物性蛋白に対し、10倍量の本保湿ゲル水溶液を加え、92℃で5分静置し、組織化された植物性蛋白と保湿ゲル水溶液とを複合化させた。その後、保湿ゲルと複合化された組織化された植物性蛋白を取り出し、冷蔵庫にて30分静置し冷却させ、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を得た。
【0079】
[被膜の形成]
5%の乳酸カルシウムを含む水溶液に、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を浸漬させた後、2重量%の濃度のアルギン酸ナトリウム溶液(IL-6M)に60℃で10秒程度浸漬させ、アルギン酸ナトリウムを凝固させて厚さ100μmの被膜を形成し、植物性蛋白素材を作製した。
【0080】
(実施例2)
[組織化された植物性蛋白の作製]
実施例1と同様にして、組織化された植物性蛋白を作製した。
【0081】
[保湿ゲルの作製]
沸騰水中にカッパー型カラギーナン(WR-78-J)を1重量%、キサンタンガム(SATIAKINE CX90)1重量%及びトマトエキス0.5重量%を加え保湿ゲル水溶液を作製した。
組織化された植物性蛋白に対し、10倍量の本保湿ゲル水溶液を加え、92℃で5分静置し、組織化された植物性蛋白と保湿ゲル水溶液とを複合化させた。その後、保湿ゲルと複合化された組織化された植物性蛋白を取り出し、冷蔵庫にて30分静置し冷却させ、保湿ゲルを内包する組織化された植物性蛋白を得た。
【0082】
[被膜の形成]
実施例1と同様にして、厚さ100μmの被膜を形成し、植物性蛋白素材を作製した。
【0083】
(比較例1)
保湿ゲル及び被膜を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして植物性蛋白素材を作製した。
【0084】
(比較例2)
実施例1と同様であるが、カツオだしを組織化された植物性蛋白の製造の際に添加せず、植物性蛋白素材を作製した後、カツオだしをまぶして味付けした。
【0085】
[肉様食品の作製]
実施例1、2、比較例1及び2で得られた植物蛋白素材を個別にそれぞれ円柱状の凹型容器に入れて上から凸型治具で加圧しながら成形品(食品成形体)を作り、実施例1、2及び比較例2については成形品をさらに10%の塩化カルシウム溶液に含浸させることで被膜成分を完全に凝固させ、それぞれの肉様食品を作製した。
【0086】
<評価結果>
【0087】
(保湿ゲルの重量変化)
作製した植物性蛋白素材を50℃で湯煎し、レオメーターにて圧縮時の保水率を測定した。
直径Φ20mmのプランジャーを備えるレオメーター(SUN RHEO METER CR-100)により、テクスチャー解析モード、歪率50%、反復回数1回の条件で圧縮した。圧縮時に放出された水分を定量濾紙5C(ADVANTEC製)に吸水させ、重量減少量を測定した。測定は5回実施し、圧縮回数による水分放出量を評価した。比較として、牛サーロインのデータを取得した。
図1は、実施例1及び比較例1で得られた植物性蛋白素材と、牛サーロインの重量減少率をレオメーターにて測定した結果である。
図1に示すように、実施例1で得られた植物性蛋白素材は、重量減少率が牛サーロインに近く、複数回咀嚼後(押し込み回数3回以上)も旨味分が染み出していることが確認できた。一方で、比較例で得られた植物性蛋白素材では、複数回咀嚼後(押し込み回数3回以上)では重量減少がほぼ見られず、旨味及びジューシーさが感じられない。
【0088】
(風味の持続性)
作製した植物性蛋白素材を咀嚼し、以下の評価基準により風味の持続性を評価した。
〇:咀嚼するごとに調味成分が放出され、風味が持続した。
×:咀嚼すると一度に調味成分が放出されてしまい、風味が持続しなかった。
【0089】
(味わいの均一性)
作製した植物性蛋白素材について、幅方向の両端部から1mmを切除した。
切除した両端部から1mmの部分と、残りの部分とを咀嚼し、以下の評価基準により風味の均一性を評価した。
〇:切除した両端部から1mmの部分と、残りの部分の味わいが同程度であった。
×:切除した両端部から1mmの部分と、残りの部分の味わいの強さが異なっていた。
【0090】
【表1】
【0091】
組織化された植物性蛋白と、これを被覆する被膜とを有し、被膜にて被覆された領域内に調味成分が含まれている実施例1及び2で得られた植物性蛋白素材は、風味の持続性に優れ、かつ、均一な味わいが得られることが確認された。
一方で、比較例1で得られた植物性蛋白素材は、被膜を有さないために風味の持続性に劣っており、味わいの均一性にも劣っていた。また、比較例2で得られた植物性蛋白素材では、被膜にて被覆された領域内に調味成分を含まないために、風味の持続性に劣っており、味わいの均一性にも劣っていた。
【0092】
さらに、実施例1、2、比較例1、2の植物性蛋白に基づいて製造された肉様食品についても、風味の持続性を上記評価方法に従って評価し、味わいの均一性は、10回噛んで、5回以上同じ味わいである場合を○として評価し、同じ味わいが5回未満である場合を×として評価した。その結果を表2に示す。
評価は、各植物蛋白素材の評価と同じとなった。
【0093】
【表2】
図1