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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】給紙装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/26 20060101AFI20250416BHJP
【FI】
B65H1/26 312B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021062624
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158024
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】白石 嘉儀
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-064433(JP,A)
【文献】特開2008-120588(JP,A)
【文献】特開平04-286548(JP,A)
【文献】特開2016-020243(JP,A)
【文献】特開2006-327823(JP,A)
【文献】特開平08-259007(JP,A)
【文献】特開2019-148829(JP,A)
【文献】米国特許第05236187(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に対して第1方向に挿入および引き出し可能に設けられた給紙カセットと、を備えた給紙装置において、
前記本体部は、前記給紙カセットを装着位置まで引き込む引き込み装置と、前記給紙カセットを支持する支持部材と、を有し、
前記給紙カセットは、前記支持部材の上に当接する、前記第1方向に延伸したレール部を有し、
前記レール部は、前記引き込み装置によって前記給紙カセットを引き込む力が、前記給紙カセットを前記装着位置まで移動させるために必要となる力よりも小さくなるときに前記支持部材と当接する領域において、前記給紙カセットの引き出し方向に向かって高くなるように傾斜した第1傾斜部を備える給紙装置。
【請求項2】
前記レール部は、前記第1傾斜部の、前記給紙カセットの挿入方向の側の端部に接続され、前記挿入方向に向かって高くなるように傾斜する第2傾斜部を含む、請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記第2傾斜部は、階段状に傾斜する請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記第2傾斜部は、2以上の傾斜面と、前記2以上の傾斜面と接続される1以上の水平面とを含む、請求項3に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記レール部は、前記装着位置において前記給紙カセットが所定の基準高さとなるように前記第1方向に延伸する基準水平部を有し、
前記水平面の高さは、前記基準水平部の高さよりも低い、請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記引き込み装置は、前記第1方向に延伸し、前記給紙カセットを前記装着位置に案内するガイドフレームに設けられる、請求項1から5のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記給紙カセットが前記ガイドフレームに対して前記第1方向において相対的に移動可能となるように回転する回転体である、請求項6に記載の給紙装置。
【請求項8】
前記支持部材は、前記ガイドフレームの、前記給紙カセットの引き出し方向側の端部に、または前記ガイドフレームの、前記給紙カセットの引き出し方向側の端部と隣接する位置に設けられており、
前記第1傾斜部は、前記レール部の、前記給紙カセットの引き出し方向側の端部に設けられる、請求項6または7に記載の給紙装置。
【請求項9】
前記給紙カセットは、用紙を載置する底面と、
前記底面の端縁に接続され、前記底面から立設された複数の側壁部と、を有し、
前記底面において、前記第1方向に対して直交する方向を第2方向としたとき、
前記複数の側壁部は、前記第2方向における前記底面の一方側の端部に配置され前記第1方向に延伸する第1側壁部と、前記第2方向における他方側の端部に配置され、前記第1方向に延伸する第2側壁部と、を含み、
前記第2方向において、前記第1側壁部の方が前記第2側壁部よりも前記給紙カセットの重心に近い位置に配置されており、
前記レール部は、前記第1側壁部に設けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項10】
前記給紙カセットは、前記給紙カセットの挿入方向に突出した棒部材である突出部を備え、
前記本体部は、前記突出部を挿通させる孔部を備えており、
前記孔部の内周の少なくとも一部は、凹凸形状を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の給紙装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置から送出された用紙に画像を形成する画像形成部と、を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機等の画像形成装置では、複数枚の用紙を重ねて収容する給紙カセットを有した給紙装置が設けられている。特許文献1では、このような給紙装置において、給紙カセットを装置本体にある程度まで押し込むと、給紙カセットを装着させる所定の装着位置まで自動的に引き込む引き込み装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された引き込み装置は、装置本体の左右のレールにそれぞれ設けられた被係合部と、給紙カセットの左右にそれぞれ設けられた係合部とを備えた一対の引き込みモジュールを有している。
【0004】
特許文献1に開示された引き込み装置は、引き込み開始位置で被係合部と係合部とが係合すると、引き込み終了位置に向かって給紙カセットを引き込むことができる。このため、装置本体に給紙カセットを挿入する際、ユーザが装置本体に給紙カセットを押し込む負担を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-27991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1は、給紙カセットを装着位置まで引き込む際に生じる負荷の大きさと、引き込み装置の引き込む力の大きさとの関係を検討し、適切に給紙カセットを所定の装着位置まで引き込む構成とはなっていない。
【0007】
本開示の目的は、適切に給紙カセットを装着位置まで引き込むことができる給紙装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る給紙装置は、本体部と、前記本体部に対して第1方向に挿入および引き出し可能に設けられた給紙カセットと、を備えた給紙装置において、前記本体部は、前記給紙カセットを、装着位置まで引き込む引き込み装置と、前記給紙カセットを支持する支持部材と、を有し、前記給紙カセットは、前記支持部材の上に当接する、前記第1方向に延伸したレール部を有し、前記レール部は、前記引き込み装置によって前記給紙カセットが引き込まれる間に、前記支持部材と当接する領域において、前記給紙カセットの引き出し方向に向かって高くなるように傾斜した第1傾斜部を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る画像形成装置は、本体部と、前記本体部に対して第1方向に挿入および引き出し可能に設けられた給紙カセットと、を備えた給紙装置において、前記本体部は、前記給紙カセットを装着位置まで引き込む引き込み装置と、前記給紙カセットを支持する支持部材と、を有し、前記給紙カセットは、前記支持部材の上に当接する、前記第1方向に延伸したレール部を有し、前記レール部は、前記引き込み装置によって前記給紙カセットが引き込まれる間に前記支持部材と当接する領域において、前記給紙カセットの引き出し方向に向かって高くなるように傾斜した第1傾斜部を備える給紙装置と、前記給紙装置から送出された紙に画像を形成する画像形成部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、給紙装置は、適切に給紙カセットを装着位置まで引き込むことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る画像形成装置を正面側から見た内部構造を示す概略図である。
図2】実施形態に係る給紙装置を示す斜視図である。
図3図2に示す給紙装置が備える給紙カセットを上方から見た平面図である。
図4図2に示す給紙装置が備える給紙カセットを右側から見た側面図である。
図5図2に示す給紙装置が備える給紙装置本体部の内部構造を示す斜視図である。
図6】給紙装置本体部に形成された第1ボス孔を示す斜視図である。
図7】実施形態に係る給紙装置本体部が備える引き込みユニットの内部構造を示す平面図である。
図8】実施形態に係る給紙装置本体部が備える引き込みユニットの内部構造を示す平面図である。
図9】実施形態の比較例に係る給紙装置における、引き込みユニットの引き込み力と、給紙カセットを装着位置まで引き込むために必要となる力との関係を示すグラフである。
図10図4に示す給紙カセットの領域Aにおける部分拡大図である。
図11図10に示す給紙カセットのレール部の高低差を模式的に示す図である。
図12】実施形態に係る給紙装置における、引き込みユニットの引き込み力と、給紙カセットを装着位置まで引き込むために必要となる力との関係を示すグラフである。
図13】実施形態に係る給紙装置が備える給紙カセットを装着位置まで引き込む力の発生原理を模式的に示す図である。
図14】実施形態の変形例に係る給紙カセットのレール部の高低差を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態及び変形例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。この実施形態及び変形例以外であっても、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
[画像形成装置]
実施形態に係る画像形成装置100について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る画像形成装置100を正面側から見た内部構造を示す概略図である。なお、画像形成装置100において、正面側から見たときの水平方向のうち、左側を左方向、右側を右方向とそれぞれ規定する。また、正面側から見たときの奥行方向のうち、画像形成装置100の正面側(手前側)を前方向、背面側(奥側)を後方向とする。また、画像形成装置100において、底部側を下方向、反対側を上方向とそれぞれ規定する。
【0014】
実施形態に係る画像形成装置100は、記録用紙等のシートPに対して多色及び単色の画像を形成するカラー画像形成装置である。画像形成装置100は、画像読取装置200により読み取られた画像データ、または外部から受信した画像データに基づき、シートPに画像を形成する。なお、画像形成装置100は、モノクロ画像形成装置であってもよい。
【0015】
図1に示されるように、画像形成装置100は、本体部110、画像読取装置200、給紙装置400、および手差しユニット510を備えてなる構成である。
【0016】
本体部110の上部には、画像読取装置200が設けられている。画像読取装置200は、原稿Gの画像を読み取る装置である。画像読取装置200は、透明材によって形成された、原稿Gを載置する原稿載置台221を備える。原稿載置台221の上方には、ヒンジ等を介して開閉自在に取り付けられた原稿押えカバー218が設けられている。原稿押えカバー218の上面には原稿供給トレイ220が設けられており、その内部には、図示しない、自動送り装置(ADF:Auto Document Feeder)が備えられている。ADFは、原稿供給トレイ220に載置された原稿Gを画像読取位置222に1枚ずつ自動で供給する。
【0017】
画像読取装置200は、原稿Gから画像を読み取る画像読取部226を内蔵している。画像読取部226は、図示しない、光源、複数のミラー、結像レンズ、およびラインセンサを備えている。そして、画像読取装置200は、原稿Gを、光源から発した光によって露光し、原稿Gから反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度または色度が検出され、原稿Gに基づく画像データが生成される。ラインセンサとしては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)またはCIS(Contact Image Sensor)等を用いることができる。
【0018】
本体部110の下部には、給紙カセット410およびシート供給部420を備える給紙装置400が設けられている。
【0019】
給紙カセット410は、本体部110に供給するシートPを収容する。本実施形態に係る画像形成装置100では、給紙カセット410内に500枚のシートPが収容できるように構成されている。給紙カセット410に収容されたシートPは、シート供給部420によって本体部110へ供給される。
【0020】
すなわち、シート供給部420は、呼込ローラ421、供給ローラ422、および分離ローラ423を有する。呼込ローラ421は、回転駆動して給紙カセット410に収容されたシートPを上から引き出して供給ローラ422および分離ローラ423に向けて送出する。分離ローラ423は、供給ローラ422と対向する位置に配置されている。本体部110へシートPを供給する場合、分離ローラ423は供給ローラ422を押圧した状態に維持される。そして、分離ローラ423が回転駆動することで、供給ローラ422と分離ローラとの間でシートPを1枚ずつ分離させ搬送する。なお、呼込ローラ421を設けることなく、供給ローラ422が呼込ローラ421を兼ねる構成であってもよい。このような構成の場合、供給ローラ422が、回転駆動してシートPを給紙カセット410から引き出す。
【0021】
図1では、説明の便宜上、1つの給紙カセット410、および1つのシート供給部420のみを図示しているが、実施形態に係る画像形成装置100は、3つの給紙カセット410が上下方向に多段に配置され、各給紙カセット410にシート供給部420が設けられた構成となっている。給紙装置400の詳細な構成については後述する。
【0022】
また、本体部110の右側部の下方側には、シート収容部を有する手差しユニット510が設けられている。手差しユニット510は、給紙装置400の給紙カセット410にセットできないシートPを画像形成装置100に供給する。
【0023】
給紙装置400が有する給紙カセット410に収容されたシートPおよび手差しユニット510が有するシート収容部に収容されたシートPは、搬送ローラ12aを通じて本体部110のシート搬送路W1に送出される。
【0024】
本体部110は、画像形成部102およびシート搬送系103を有する。
【0025】
画像形成部102は、露光ユニット1、現像ユニット2、静電潜像担持体として作用する感光体ドラム3、クリーニング部4、帯電装置5、1次転写装置6、定着ユニット7、および2次転写装置10を備える。画像形成部102は、給紙カセット410等から搬送されたシートP上に画像を形成して、排出トレイ14に排出する。シートP上に画像を形成するための画像データとしては、画像読取部226で原稿Gから読み取った画像データまたは外部のコンピュータ等から送信された画像データが挙げられる。
【0026】
一方、シート搬送系103は、シート搬送路W1を備えている。シート搬送路W1では、搬送ローラ12aから排出トレイ14に向かって、レジストローラ13、2次転写装置10が備える転写ローラ10a、定着ユニット7が有する定着ローラ71および加圧ローラ72、ならびに排出ローラ31が配設されている。この搬送ローラ12aから排出トレイ14に向かう方向をシート搬送方向と称する。
【0027】
画像形成装置100において画像形成を行う場合、画像形成部102では、帯電装置5が感光体ドラム3の表面を一様に帯電する。また、露光ユニット1が、画像データに基づき、帯電された感光体ドラム3の表面をレーザー露光する。これによって、感光体ドラム3の上に静電潜像を形成する。なお、露光ユニット1は、不図示のレーザー出射部および反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成することができる。
【0028】
感光体ドラム3の上に形成された静電潜像は、現像ユニット2にて現像されてトナー像にそれぞれ顕像化される。つまり、現像ユニット2は、図示しない、トナーを収容する現像槽および現像剤担持体として機能する現像ローラを備える。そして、現像ユニット2は、感光体ドラム3の表面にトナーを供給し、感光体ドラム3の表面に形成された静電潜像をトナーによって顕像化する。なお、現像槽の内部には、トナー濃度を検知する、図示しないトナー濃度検知センサが設けられている。このトナー濃度検知センサによって検知されたトナー濃度が所定値よりも低くなると、図示しないトナー補給装置から現像槽にトナーが補給される。
【0029】
感光体ドラム3の上のトナー像は、1次転写装置6において、駆動ローラ6aと従動ローラ6bとの間に張架され周回方向Eに沿って周回する中間転写ベルト6cの上に転写される。そして、中間転写ベルト6cの上のトナー像は、2次転写装置10まで搬送される。
【0030】
一方、給紙装置400または手差しユニット510から供給されたシートPは、シート搬送路W1を通じて、搬送ローラ12aを経てレジストローラ13まで搬送される。次に、シートPは、シートPと感光体ドラム3の上のトナー像とが整合するタイミングでレジストローラ13によって転写ローラ10aに搬送される。そして、感光体ドラム3の上のトナーは、転写ローラ10aによってシートPの上に転写される。その後、シートPは定着ユニット7における定着ローラ71および加圧ローラ72を通過し、排出ローラ31を経て排出トレイ14に排出される。
【0031】
なお、定着ユニット7は、定着ローラ71および加圧ローラ72を備え、画像形成部102よりもシート搬送方向の下流側に配置されている。定着ローラ71は、所定の定着温度(たとえば160℃)となるように設定されており、定着ローラ71と加圧ローラ72との間のニップ域(定着ニップ部)をシートPが通過することによって、シートPに転写されたトナー像が溶融、混合および圧接される。このようにして、シートPに対してトナー像が熱定着される。
【0032】
なお、シートPの表面だけでなく、シートPの裏面に画像形成を行う場合、シートPは、排出ローラ31から反転シート搬送路W2を通じて逆方向に搬送される。シートPは、反転シート搬送路W2において、所定の間隔を隔てて2箇所に設けられた反転搬送ローラ12bそれぞれを経てシートPの表裏を反転させた状態でレジストローラ13へ再度導かれる。そして、シートPの表面と同様にして、シートPの裏面に対してもトナー像が形成され、定着される。その後、シートPは、排出トレイ14へ排出される。
【0033】
なお、現像および画像転写後、感光体ドラム36の表面にはトナーが残留する。そこで、画像形成装置100は、感光体ドラム36の表面に当接するクリーニングブレード等を有したクリーニング部4を備え、このクリーニング部4によって、感光体ドラム36の表面に残留したトナーを除去するように構成されている。
【0034】
また、上記した構成を有する本体部110は、図示しないCPUおよびメモリ等を含む制御部を備えている。そして、制御部は、操作パネルへの入力操作などに応じて、画像形成装置100の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置100に種々の動作を実行させるように構成されている。
【0035】
なお、画像形成装置100は、給紙装置400および手差しユニット510を備える構成であった。しかしながら、画像形成装置100は、外付けの給紙装置を備え、この外付けの給紙装置からシート搬送路W1にシートPが給紙される構成としてもよい。
【0036】
(給紙装置)
図2図5を参照して、実施形態に係る給紙装置400の構成について説明する。実施形態に係る給紙装置400として、画像形成装置100の下部に内蔵された給紙装置を例に挙げて説明するがこれに限定されるものではない。例えば、給紙装置400は、画像形成装置100とは別体に設けられていてもよい。
【0037】
図2は、実施形態に係る給紙装置400を示す斜視図である。図3は、図2に示す給紙装置400が備える給紙カセット410を上方から見た平面図である。図4は、図2に示す給紙装置400が備える給紙カセット410を右側から見た側面図である。図5は、図2に示す給紙装置400が備える給紙装置本体部401の内部構造を示す斜視図である。
【0038】
図2は、給紙装置400を正面側から見たときの斜視図であり、正面側から見たときの水平方向のうち、左側を左方向、右側を右方向とそれぞれ規定する。また、正面側から見たときの奥行方向のうち、給紙装置400の正面側(手前側)を前方向、背面側(奥側)を後方向とする。また、給紙装置400において、底部側を下方向、反対側を上方向とそれぞれ規定する。なお、図2では、給紙カセット410が給紙装置本体部401から引き出された状態を示す。また、図5では、給紙装置本体部401の内部構造を理解しやすいように、便宜的に給紙装置400の左右の側壁部は省略して図示している。
【0039】
図2に示されるように給紙装置400は、略直方体形状を有しており、給紙装置本体部401(本体部)と、3つの給紙カセット410とを備える。3つの給紙カセット410それぞれは、給紙装置本体部401に対して前後方向(第1方向)に抜き差し可能(挿入および引き出し可能)に設けられている。なお、前後方向において、給紙カセット410を給紙装置本体部401に挿入する方向を挿入方向と称し、給紙カセット410を給紙装置本体部401から引き出す方向を、給紙カセット410の引き出し方向と称する。
【0040】
(給紙カセット)
給紙カセット410は、図2、3に示されるように、矩形状の底部410a、底部410aの外周に沿って、底部410aから上方に向かって立設された第1カセット壁部410b、第2カセット壁部410c、第3カセット壁部410d(第2側壁部)、および第4カセット壁部410e(第1側壁部)を含む。
【0041】
第1カセット壁部410bは底部410aの前側の端縁に、第2カセット壁部410cは底部410aの後側の端縁に、第3カセット壁部410dは底部410aの左側の端縁に、第4カセット壁部410eは底部410aの右側の端縁にそれぞれ接続され、底部410a、第1カセット壁部410b、第2カセット壁部410c、第3カセット壁部410d、および第4カセット壁部410eによって上面が開口した直方体形状の容器を形成している。
【0042】
複数のシートPは、底部410a、第1カセット壁部410b、第2カセット壁部410c、第3カセット壁部410d、および第4カセット壁部410eによって囲まれたシート収容領域における所定の位置に載置される。なお、図3では説明の便宜上、シートPは省略している。
【0043】
シート収容領域には、複数枚のシートPを所定の位置に整列させるための第1ガイドクリップ411aおよび第2ガイドクリップ411bが設けられている。第1ガイドクリップ411aおよび第2ガイドクリップ411bそれぞれは、底部410aから上方に向かって立設した仕切り板を有している。第1ガイドクリップ411aの仕切り板は左右方向に移動可能となっており、仕切り板を移動させてシートPの左側部に当接させる。また、第2ガイドクリップ411bの仕切り板は、前後方向(第1方向)に移動可能となっており、仕切り板を移動させてシートPの前側部に当接させる。このように第1ガイドクリップ411aの仕切り板および第2ガイドクリップ411bの仕切り板によって、シート収容領域における所定の位置に、複数枚のシートPを整列させた状態で載置させることができる。
【0044】
本開示の実施形態では、後述するが給紙カセット410を給紙装置本体部401に挿入したとき、給紙装置本体部401の給紙カセット410の右側に対応する位置にシート供給部420が設けられる。このため、給紙カセット410を平面視したとき、給紙カセット410の左右方向において中央位置よりも右側にシートPが載置される。それゆえ、給紙カセット410の底部410aにおいて、左右方向の中央位置よりも右側に給紙カセット410の重心がくることとなる。
【0045】
図2図4に示されるように、給紙カセット410の左右の両側部、すなわち第3カセット壁部410dおよび第4カセット壁部410eそれぞれの外側面には、給紙装置本体部401と当接する一対のレール部412が設けられている。第3カセット壁部410dに設けられたレール部412は、第3カセット壁部410dから左側に突出するとともに、前後方向に延びる鍔部材である。また、第4カセット壁部410eに設けられたレール部412は、第4カセット壁部410eから右側に突出するとともに、前後方向に延びる鍔部材である。第4カセット壁部410eに設けられたレール部412は、図4に示されるように、レール部412の略中間位置において、後述する引き込みユニット500と係合する突起部415が設けられている。
【0046】
また、例えば図4に示されるように、一対のレール部412それぞれの後側位置には、給紙カセット用コロ416が設けられている。給紙カセット用コロ416は、給紙カセット410の挿入、および引き出しを容易とするためにガイドフレーム403と当接する円柱形の回転部材である。給紙カセット用コロ416によって給紙カセット410の前後方向の移動を補助することができる。なお、レール部412の詳細については後述する。
【0047】
また、給紙カセット410の第1カセット壁部410bは、図3に示されるように、第3カセット壁部410dとの接合位置よりも左側に突出した第1フランジ410b1と、第4カセット壁部410eとの接合位置よりも右側に突出した第2フランジ410b2とを有している。第2フランジ410b2には、後方向(挿入方向)に向かって突出した棒状部材である第1ボス413(突出部)が設けられている。
【0048】
また、第2カセット壁部410cには、第4カセット壁部410eとの接合位置の近傍に、後方向に向かって突出した棒状部材である第2ボス414(突出部)が設けられている。
【0049】
後述するが給紙装置本体部401には、第1ボス413を挿通させる第1ボス孔406(孔部)と、第2ボス414を挿通させる第2ボス孔407(孔部)とが設けられている。そして、第1ボス413を第1ボス孔406に挿通させ、第2ボス414を第2ボス孔407に挿通させることで、給紙装置本体部401内において給紙カセット410を位置合わせすることができる。
【0050】
また、給紙カセット410の第1カセット壁部410bの略中央部分において、前側に突出するように把手部417が設けられている。ユーザは、この把手部417をつかんで、給紙カセット410を給紙装置本体部401に挿入したり、給紙装置本体部401から引き出したりすることができる。
【0051】
(給紙装置本体部)
給紙装置本体部401は、図2および図5に示されるように、上面と前面が開口した略直方体形状となっている。なお、給紙装置400が画像形成装置100と別体で設けられている場合は、上面は上部壁によって塞がれてもよい。
【0052】
給紙装置本体部401は、矩形状の給紙装置底部401a、給紙装置底部401aの外周に沿って、給紙装置底部401aから上方に向かって立設された後側壁部401b、左側壁部401c、および右側壁部401dを含む。後側壁部401bは、給紙装置底部401aの後側の端縁に、左側壁部401cは、給紙装置底部401aの左側の端縁に、右側壁部401dは、給紙装置底部401aの右側の端縁にそれぞれ接続され、給紙装置底部401a、後側壁部401b、左側壁部401c、および右側壁部401dによって、上面と前面とが開口した、実質的に直方体形状となる筐体を形成している。そして、前面の開口を通じて給紙カセット410を、給紙装置本体部401の内部に挿入したり、給紙装置本体部401の内部から引き出したりすることができるように構成されている。
【0053】
また、給紙装置本体部401は、図2に示されるように、右側壁部401dの上にシート供給部420が設けられる。このため、上記したように、給紙カセット410においてシートPが載置されるシート収容領域は、給紙カセット410の中央位置よりも右側に位置することとなる。
【0054】
図5に示されるように、給紙装置本体部401の前面において開口を形成する枠体402の右側の枠辺には上記した第1ボス孔406が形成されている。また、後側壁部401bには上記した第2ボス孔407が形成されている。本実施形態では、給紙装置400には、3つの給紙カセット410が設けられる。このため、第1ボス孔406および第2ボス孔407は、各給紙カセット410に応じた位置にそれぞれ形成されている。
【0055】
第1ボス孔406の内面は、図6に示されるように、複数の凹凸からなる凹凸部406aが形成されている。図6は、給紙装置本体部401に形成された第1ボス孔406を示す斜視図である。図6に示されるように、第1ボス孔406では、第1ボス孔406の内周のうち、左右の側壁の一部に凹凸部406aが設けられている。
【0056】
このように、第1ボス孔406では、その内周に凹凸部406aが設けられているため、第1ボス孔406と第1ボス413との接触面積を低減させることができる。それゆえ、第1ボス孔406への第1ボス413の挿入時の負荷を低減させることができる。
【0057】
なお、第2ボス孔407についても、図示しないが第1ボス孔406と同様に、第2ボス孔407の内面に凹凸部が形成されている。このため、第2ボス孔407と第2ボス414との接触面積を低減させることができ、第2ボス孔407への第2ボス414の挿入時の負荷を低減させることができる。
【0058】
また、図5に示されるように、給紙装置本体部401の左側壁部401cおよび右側壁部401dの内側には、前後方向(第1方向)に延伸し、給紙装置本体部401に挿入された給紙カセット410を装着位置に案内することができる一対のガイドフレーム403が設けられている。なお、装着位置とは、給紙装置本体部401に給紙カセット410を装着させるときの所定位置である。給紙カセット410が装着位置にあるとき、給紙カセット410に収容されたシートPは所定の給紙位置となる。
【0059】
一対のガイドフレーム403は、枠体402の左右の枠辺と後側壁部401bとの間で横架するように配置された、前後方向に延伸する棒部材である。図5に示されるように、ガイドフレーム403は、断面がコの字側となっており、下方に給紙カセット用コロ416が移動する滑走面403aが形成されている。この滑走面403aによって給紙カセット410を下から支持するとともに、給紙カセット410を前後方向に移動可能とする。
【0060】
また、一対のガイドフレーム403のうち右側のガイドフレーム403の上面403bには引き込みユニット500(引き込み装置)が設けられている。なお、本実施形態では、引き込みユニット500はガイドフレーム403を介して給紙装置本体部401に設けられた構成となっているが、この構成に限定されるものではない。例えば、引き込みユニット500は給紙装置本体部401の右側壁部401dの内側に、直接、設けられた構成であってもよい。
【0061】
引き込みユニット500は、給紙装置本体部401内に挿入された給紙カセット410と係合し、後方向側、すなわち挿入方向側に向かって引っ張るように力を作用させる。これによって、引き込みユニット500は、給紙カセット410を装着位置まで引き込むことができる。このため、給紙カセット410を給紙装置本体部401内に挿入させる際、ユーザが給紙カセット410を給紙装置本体部401に押し込む負担を軽減させることができる。引き込みユニット500の詳細については後述する。
【0062】
また、一対のガイドフレーム403の滑走面403aの前側端部(給紙カセット410の引き出し方向側の端部)それぞれにはコロ405(支持部材)が設けられている。コロ405は、給紙カセット410がガイドフレーム403に対して前後方向において相対的に移動可能となるように回転する回転体である。コロ405は、水平方向において前後方向に対して垂直となる方向に延びた軸を回転軸として回転する。このため、レール部412がコロ405に当接することで給紙カセット410の前後方向の移動を補助することができる。このため、コロ405は、給紙カセット410の挿入、および引き出しを容易とすることができる。
【0063】
なお、給紙装置本体部401では、コロ405がガイドフレーム403の前側端部に設けられた構成であるが、コロ405が設けられる位置はこれに限定するものではない。コロ405は、例えば、前後方向において、ガイドフレーム403の前側端部と隣接する位置に、ガイドフレーム403とは別の部材に回転可能に設けられていてもよい。
【0064】
また、図2に示されるように、シート供給部420の下部であって右側のガイドフレーム403の後側の上方に、切替えレバー409が備えられている。切替えレバー409は、分離ローラ423を、供給ローラ422に押圧させた押圧状態と、この押圧状態を解除した解除状態とを切替えるための部材である。切替えレバー409は、水平方向に揺動可能に設けられている。つまり、給紙カセット410が給紙装置本体部401に挿入され、給紙カセット410が切替えレバー409に当接すると、切替えレバー409が初期位置から後側に向かって移動する。このように、切替えレバー409が後側に向かって移動すると、分離ローラ423は供給ローラ422を押圧するように構成されている。一方、給紙カセット410が給紙装置本体部401から引き出されることで、給紙カセット410が揺動部材424から離れると、揺動部材424は前側に移動し初期位置に戻る。このように、揺動部材424が初期位置に戻ると、分離ローラ423の供給ローラ422に対する押圧状態が解除されるように構成されている。
【0065】
また、図2に示されるように、給紙装置本体部401の後側壁部401bには、シートPのサイズを検知するサイズ検知スイッチ408が設けられている。サイズ検知スイッチ408は、後側壁部401bから前側に突出した複数の検出部を備える。サイズ検知スイッチ408は、この検出部にシートPが当接することでシートPのサイズを検出することができる。
【0066】
(引き込みユニット)
次に、図7および図8を参照して引き込みユニット500について説明する。図7および図8は、実施形態に係る給紙装置本体部401が備える引き込みユニット500の内部構造を示す平面図である。図7は、引き込みユニット500の係合部505が最も後側に位置した時の状態を示し、図8は引き込みユニット500の係合部505が最も前側に位置した時の状態を示す。
【0067】
図7および図8に示されるように、引き込みユニット500は、ダンパー部501と、スプリング502と、ダンパー部501およびスプリング502を収容する筐体503と、を備えてなる構成である。ダンパー部501は、流体(例えばオイル)が満たされたケース内において不図示のピストンが前後方向に往復するように構成されている。ダンパー部501は、前後方向に延伸しケースの前端部から突出するロッド504を備えている。ロッド504は、前後方向に延伸しており、ケース側の端部を基端、基端の反対側の端部を先端としたとき、先端には係合部505が設けられ、基端はピストンと接合されている。
【0068】
スプリング502は、例えば、コイルばねであり、後側の端部が筐体503内で固定され、前側の端部がロッド504の先端部と接続されている。ところで、ロッド504の先端部は、ダンパー部501のケースに対して、前後方向に進退するように構成されている。このため、ロッド504の先端部に固定されたスプリング502は、ロッド504の前後方向における進退に応じて伸縮する。
【0069】
係合部505は、給紙カセット410を給紙装置本体部401内に挿入する際に、給紙カセット410の突起部415と当接する第1当接部505aと、給紙カセット410を給紙装置本体部401内から外部に引き出す際、給紙カセット410の突起部415と当接する第2当接部505bとを備える。第1当接部505aおよび第2当接部505bは筐体503の左側部から突出するように設けられている。
【0070】
係合部505は、筐体503の上面および下面それぞれに形成されたガイド溝506と係合する第1ガイド軸505cおよび第2ガイド軸505dをさらに備えている。第1ガイド軸505cは係合部505の前側に、第2ガイド軸505dは係合部505の後側にそれぞれ設けられている。そして、第1ガイド軸505cおよび第2ガイド軸505dは、ガイド溝506に沿って移動するように構成されている。そのため、係合部505の移動は、ガイド溝506によって規制されることとなる。
【0071】
ガイド溝506は、筐体503の左側部に沿って、筐体503の略中間位置から前側に向かって延伸するとともに筐体503の前側端部の近傍において右方向に向かって折れ曲がるように形成された略L字形状のスリットである。
【0072】
このため、図7および図8に示されるように、係合部505が後側から前側に向かって移動する場合、係合部505は、筐体503の左側部に沿って移動する。そして、第1ガイド軸505cは、筐体503の前側端部の近傍で、ガイド溝506に沿って筐体503の右側部に向かって移動し、第2当接部505bを筐体503内に引き込む。そして、第1ガイド軸505cは、ガイド溝506の端部で係止される。
【0073】
これにより筐体503の前側端部で係合部505の第2当接部505bが筐体503内に収容され、給紙カセット410の突起部415と係合部505との係合が解除される。
【0074】
具体的には、給紙カセット410を、給紙装置本体部401内から外部に向かって引き出す場合、給紙カセット410の突起部415が第2当接部505bと当接して係合する。そして、給紙カセット410を引き出すためにユーザがから及ぼされた力によって、突起部415と係合している係合部505を、前方向に向かって移動させる。この時、ロッド504の先端は前方向に移動するため、スプリング502は前方向に向かって伸張する。
【0075】
係合部505が引き込みユニット500の先端部の近傍まで移動すると、上述したように第2当接部505bは、筐体503内に収容され、突起部415と第2当接部505bとの係合が解除される。このため、給紙カセット410は引き込みユニット500から離れて、前側に移動し、給紙装置本体部401内から外部に給紙カセット410が引き出される。
【0076】
一方、給紙カセット410を給紙装置本体部401内に挿入する際、引き込みユニット500の第2当接部505bは、筐体503内に収容された状態にあるため、給紙カセット410の突起部415は、第2当接部505bに阻害されることなく第1当接部505aと当接し、係合する。そして、給紙カセット410を押し込むために及ぼされたユーザからの力によって、突起部415が第1当接部505aを後方向に向かって押圧すると、この力によって第1ガイド軸505cの係止が解除される。
【0077】
第1ガイド軸505cの係止が解除されると、伸張していたスプリング502の復元力によって係合部505が前側から後側に向かって、すなわち挿入方向に向かって移動する。この係合部505の移動の際、第2当接部505bが突起部415を挿入方向に向かって押圧する。この第2当接部505bからの押圧力により突起部415が挿入方向に押し出され、結果として給紙カセット410が給紙装置本体部401内に引き込まれる。このように、主としてスプリング502の復元力によって給紙カセット410は給紙装置本体部401内に引き込まれることとなる。
【0078】
このため、ユーザが給紙カセット410を、突起部415が第1当接部505aと当接する位置まで押し込むと、その後は、給紙カセット410は、引き込みユニット500によって給紙装置本体部401内に引き込まれる。それゆえ、ユーザが、給紙装置本体部401に給紙カセット410を挿入する際の負担を低減させることができる。
【0079】
ところで、給紙カセット410を給紙装置本体部401内に挿入する際、様々な負荷が給紙カセット410の移動を妨げる方向に力を及ぼす。例えば、このような負荷としては、上記した切替えレバー409またはサイズ検知スイッチ408などが挙げられる。さらには、このような負荷としては、給紙カセット410に収納されたシートPを所定の給紙口高さまで昇降させるリフトアップ機構におけるリフトアップ軸と連結するカップリング機構なども挙げられる。
【0080】
上述したように、引き込みユニット500は、スプリング502の復元力を利用して給紙カセット410を、装着位置まで引き込む構成である。それゆえ、引き込みユニット500が給紙カセット410を引き込む力の大きさは、給紙カセット410が装着位置に近づくにつれて小さくなる。
【0081】
このため、引き込みユニット500によって給紙カセット410を装着位置まで確実に移動させるためには、引き込みユニット500による給紙カセット410を引き込む力の大きさと、給紙カセット410の移動に際して生じる負荷の影響とを考慮する必要がある。
【0082】
ここで、本実施形態の給紙装置400と同様な構成を有する比較例に係る給紙装置を準備し、引き込みユニットによる給紙カセットの引き込み力と、給紙カセットを装着位置まで移動させるために必要となる力との関係について検討した。
【0083】
比較例に係る給紙装置は、給紙カセットが有するレール部の形状が異なる点を除いて、実施形態に係る給紙装置400と同様な構成となる。つまり、比較例に係る給紙装置では、レール部は、給紙カセットの前端部から後端部まで同じ高さで延伸するように設けられている。
【0084】
図9に示されるように、比較例に係る給紙装置では、引き込みユニットによって給紙カセットを装着位置まで引き込むための引き込み力が、負荷等の影響によって給紙カセットを装着位置まで引っ込むために必要となる力よりも小さくなってしまう場合がある。図9は、実施形態の比較例に係る給紙装置における、引き込みユニットの引き込み力と、給紙カセットを装着位置まで引き込むために必要となる力との関係を示すグラフである。図9では、比較例に係る給紙装置の引き込みユニットの引き込み力の大きさの変化を実線で示し、給紙カセットを装着位置まで引き込むために必要となる力の大きさの変化を一点鎖線で示す。
【0085】
なお、これ以降、引き込みユニットの引き込み力を第1の力と称し、給紙カセットを装着位置まで引き込むために必要な力を第2の力と称する。
【0086】
図9では、横軸に、比較例に係る給紙装置が備える給紙カセットの装着位置と、給紙カセットとの間の距離を示す。つまり、給紙カセットが装着位置にあるときの後壁部の位置を0mmとする。そして、横軸では、後壁部がその装着位置からどのくらいの距離だけ離れているか示している。一方、縦軸は、第1の力および第2の力それぞれの大きさを示す。なお、図9では、後壁部と装着位置との距離が0mmから50mmとなる範囲で、第1の力と第2の力の変化を示す。なお、図9において第2の力の変化を示すグラフは、給紙カセットにA3サイズのシートを500枚収容させた状態(収納可能な最大用紙サイズで且つ最大枚数)で測定して得た。
【0087】
図9に示されるように、比較例に係る給紙装置における第1の力は、装着位置に近づくほど小さくなる。つまり、引き込みユニットが有するスプリングの復元力は、給紙カセットが装着位置に近づくにつれて小さくなる。一方、比較例に係る給紙装置における第2の力の大きさは、給紙カセットと装着位置との間の距離が約7mmとなる時点までは、第1の力の大きさを上回ることがなく、かつ第1の力と同様に徐々に小さくなっている。なお、第2の力の大きさが小さくなる要因は、レール部とガイドフレームに設けられたコロとが当接する位置を支点としたとき、レール部と支点との相対的な位置関係が変化するからである。つまり、給紙カセットが装着位置に向かって移動するにつれ、支点から給紙カセットの後端部までの距離が徐々に長くなる。このため、梃子の原理により給紙カセットが装着位置に向かって移動するにつれて、給紙カセットを略水平に支えるために必要となる力が小さくなるからである。
【0088】
しかしながら、給紙カセットと装着位置との間の距離が約6mmになると、上記したような様々な負荷の影響により、第2の力の大きさは、第1の力の大きさを上回る。このように、給紙装置において第1の力の大きさが、第2の力の大きさよりも小さくなる場合、給紙カセットが引き込みユニットによって装着位置まで引き込まれず、適切に装着位置に配置されない可能性がある。
【0089】
ここで、給紙カセットが装着位置に確実に配置されるようにするためには、引き込みユニットが備えるスプリングの引っ張り力を大きくして、上記した第1の力の大きさを大きくする構成が考えられる。しかしながら、このようにスプリングの引張力を大きくする構成の場合、給紙装置本体部から給紙カセットをユーザが引き出す際、さらに大きな力が必要となりユーザの負担が増すこととなる。
【0090】
そこで、実施形態に係る給紙装置400は、給紙カセット410のレール部412の形状を工夫することで、引き込みユニット500により装着位置まで給紙カセット410を確実に引き込むことができるように構成する。
【0091】
具体的には、一対のレール部412のうち少なくとも第4カセット壁部410eに設けられたレール部412の当接面412aの形状を工夫する。なお、第4カセット壁部410eは、給紙カセット410の左右方向において、シートPを載置したときの給紙カセット410の重心に近い側の壁部となる。また、第3カセット壁部410dに設けられたレール部412の当接面412bは、第4カセット壁部410eに設けられたレール部412の当接面412aと同様の形状であってもよい。あるいは、第3カセット壁部410dに設けられたレール部412の当接面412bは、後述する基準高さで前後方向にまっすぐ伸びた形状であってもよい。
【0092】
以下において、第4カセット壁部410eに設けられたレール部412について説明する。
【0093】
(レール部)
図10図13を参照して実施形態に係る給紙装置400が備える給紙カセット410の第4カセット壁部410eに設けられたレール部412の構成について説明する。
【0094】
図10は、図4に示す給紙カセット410の領域Aにおける部分拡大図である。図11は、図10に示す給紙カセット410のレール部412の高低差を模式的に示す図である。図12は、実施形態に係る給紙装置400における、引き込みユニット500の引き込み力と、給紙カセット410を装着位置まで引き込むために必要となる力との関係を示すグラフである。図13は、実施形態に係る給紙装置400が備える給紙カセット410を装着位置まで引き込む力の発生原理を模式的に示す図である。
【0095】
なお、図10では、説明の便宜上、第1カセット壁部410bおよび把手部417を省略して図示している。また、図11では、横軸にレール部412の前側端部を起点とした、水平方向の距離(mm)を、縦軸に給紙カセット410の底部410aから、レール部412の当接面412aまでの鉛直方向の距離(mm)を示す。
【0096】
図12では、給紙装置400の引き込みユニット500の引き込み力(第1の力)の変化を実線で示し、給紙カセット410を装着位置まで引き込むために必要となる力(第2の力)の変化を一点鎖線で示す。また、図12の横軸に、給紙装置400が備える給紙カセット410の装着位置と、給紙カセット410との間の距離を示す。つまり、給紙カセット410が装着位置にあるときの第2カセット壁部410cの位置を0mmとする。そして、横軸では、第2カセット壁部410cがその装着位置からどのくらいの距離だけ離れているか示している。一方、縦軸は第1の力および第2の力それぞれの大きさを示す。図12では、第2カセット壁部410cと装着位置との距離が0mmから50mmとなる範囲で、第1の力と第2の力の変化を示す。なお、図12において第2の力の変化を示すグラフは、給紙カセット410にA3サイズのシートPを500枚収容させた状態(収納可能な最大用紙サイズで且つ最大枚数)で測定して得た。
【0097】
本開示の実施形態では、給紙カセット410が給紙装置本体部401に挿入され、給紙カセット410の後側端部が装着位置から前側(引き出し方向側)に50mm離れた位置まで押し込まれたとき、引き込みユニット500の係合部505と給紙カセット410の突起部415とが係合され、引き込みユニット500による給紙カセット410の引き込みが開始される。
【0098】
図10、11に示されるように、レール部412は、ガイドフレーム403に設けられたコロ405と当接する当接面412aを有する。この当接面412aは、第1傾斜部412a1、第2傾斜部412a2、および基準水平部412a3を含む。第1傾斜部412a1および第2傾斜部412a2は、引き込みユニット500によって給紙カセット410が挿入方向に引き込まれる間に、レール部412の当接面412aとコロ405とが当接する領域(第1範囲)内において設けられている。
【0099】
第1傾斜部412a1は、前後方向において、給紙カセット410の挿入方向側に向かって低くなるように傾斜する傾斜面である。
【0100】
本実施形態では、第1傾斜部412a1は、図11に示されるようにレール部412において、前側端部から後側方向に10mm離れた位置までの間で、基準高さから3.5mm低くなるよう傾斜するように設けられている。なお、給紙カセット410が装着位置にあるときのレール部412の高さ、換言すると基準水平部412a3の高さを基準高さとする。また、給紙カセット410が装着位置にあるときとは、第1ボス413が第1ボス孔406に、第2ボス414が第2ボス孔407にそれぞれ挿通され、給紙カセット410が給紙装置本体部401内において位置合わせされた状態であって、給紙カセット410の用紙が給紙可能な状態にあるときである。レール部412の前側端部の高さは、この基準高さと一致する。また、実施形態に係る給紙装置400では、第1傾斜部412a1の高低差が3.5mmとなるように設定されているがこれに限定されるものではない。例えば、1.5mmから4.5mmの間で適宜、設定することができる。
【0101】
第2傾斜部412a2は、前後方向において、レール部412の前側端部から後側方向に10mm離れた位置から、さらに22mm離れた位置(前側端部から後側方向に32mm離れた位置)までの間で、基準高さまで戻るように傾斜する傾斜面である。つまり、第2傾斜部412a2は、第1傾斜部412a1の挿入方向側の端部に接続され、挿入方向に向かって高くなるように傾斜する。
【0102】
第2傾斜部412a2は、レール部412において第1傾斜部412a1を設けるために第1傾斜部412a1と基準水平部412a3(基準高さ)との高低差を補う傾斜である。ただし、第1傾斜部412a1の最も低い位置が基準高さとなる場合は、第2傾斜部412a2は省略することができる。
【0103】
このようにレール部412の当接面412aは、第1傾斜部412a1、第2傾斜部412a2、および基準水平部412a3を含む。そして、ガイドフレーム403のコロ405がレール部412の第1傾斜部412a1と当接するとき、図13に示されるように給紙カセット410の自重によって給紙カセット410を引き込む力を生み出すことができる。
【0104】
つまり、レール部412の第1傾斜部412a1とコロ405とが当接する際、この両者の当接位置において、給紙カセット410から及ぼされる荷重(鉛直方向、下向きの力F1)、給紙カセット410を装着位置に向かって引き込む力(前後方向、挿入方向側の力F2)、第1傾斜部412a1がコロ405と当接することで、給紙カセット410が挿入方向に向かって移動する力(力F3)とが発生する。このとき、力F3は力F1と力F2との合力に相当する。
【0105】
したがって、レール部412の第1傾斜部412a1とガイドフレーム403のコロ405とが当接する位置で、給紙カセット410を装着位置に向かって引き込む力F2を発生させることができる。
【0106】
ところで、給紙装置400では、給紙カセット410が装着位置となるとき、レール部412の前側端部と、ガイドフレーム403の前側端部とが一致するように構成されている。また、第1傾斜部412a1は、上記したように、レール部412の前側端部から後側方向に10mmとなる範囲に設けられている。
【0107】
このため、給紙カセット410と装着位置との間の距離が10mm以下となる範囲で第1傾斜部412a1がガイドフレーム403のコロ405と当接することとなる。このため、図9に示されるように、第1の力が第2の力よりも小さくなる範囲では、第1傾斜部412a1によって発生させた引き込み力を利用することができる。
【0108】
それゆえ、図12に示すように、実施形態に係る給紙装置400では、給紙カセット410と装着位置との距離が10mm以下となる範囲であっても給紙カセット410を引き込む力(第1の力)が、給紙カセット410を装着位置まで移動させるために必要となる力(第2の力)よりも小さくなることを防ぐことができる。
【0109】
なお、給紙カセット410を給紙装置本体部401から引き出す場合、レール部412は、逆に第1傾斜部412a1はコロ405と当接し下から上に向かって移動するため、引き出し方向へ作用する力を阻害する力が生じる。ただし、装着位置と給紙カセット410との間の距離が10mmとなる範囲では、引き込みユニット500のスプリング502の引張力は小さい。このため、給紙カセット410を給紙装置本体部401から引き出す場合、装着位置と給紙カセット410との間の距離が10mm以下となる範囲において引き出し方向へ作用する力が大きくなることを抑制することができる。
【0110】
なお、レール部412における第2傾斜部412a2の始点、すなわち基準水平部412a3と第2傾斜部412a2との接合点、ならびに第1傾斜部412a1の始点、すなわち第2傾斜部412a2と第1傾斜部412a1との接合点は、給紙カセット410が、引き込みユニット500から第1の力を受ける間にコロ405と当接する範囲であって、かつ他の負荷からの影響が発生していない位置とすることが好適である。
【0111】
また、当接面412aが第1傾斜部412a1および第2傾斜部412a2を含むレール部412は、前後方向に延伸する第3カセット壁部410dおよび第4カセット壁部410eのうち、左右方向において、シートPが載置されたときの給紙カセット410の重心に近い第4カセット壁部410eに設けられる構成であった。また、引き込みユニット500は、第4カセット壁部410eに設けられたレール部412と当接するコロ405が備えられた右側のガイドフレーム403に設けられる構成であった。
【0112】
このように、左右方向において給紙カセット410の重心に近い側の第4カセット壁部410eに、当接面412aを含むレール部412が設けられる。また、このレール部412と当接するコロ405が備えられた右側のガイドフレーム403に引き込みユニット500が設けられている。このため、給紙カセット410を給紙装置本体部401内に挿入する際、給紙カセット410がつかえることなくスムースに給紙装置本体部401内に導くことができる。
【0113】
(変形例)
次に、図14を参照して実施形態の変形例に係る給紙装置400の構成について説明する。図14は、実施形態の変形例に係る給紙カセット410のレール部412の高低差を模式的に示す図である。
【0114】
実施形態の変形例に係る給紙装置400は、実施形態に係る給紙装置400と比較して、レール部412の当接面412aの形状が異なる。それ以外の点について実施形態の給紙装置400の構成と同様となるため、同様な部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0115】
すなわち、実施形態の変形例に係るレール部412では、当接面412aの第2傾斜部412a2が形成される範囲が、実施形態に係るレール部412の当接面412aの第2傾斜部412a2が形成される範囲よりも長くなっている点で相違する。また、実施形態に係るレール部412の当接面412aでは、第2傾斜部412a2が線形的に傾斜する1つの傾斜面を有しているのに対して、実施形態の変形例に係るレール部412の当接面412aでは、第2傾斜部412a2は、水平面を挟んで2つの傾斜面を有している。すなわち、第2傾斜部412a2は、傾斜面と水平面とが交互に配置された階段状に形成されている。
【0116】
このように実施形態の変形例に係るレール部412では、当接面412aの第2傾斜部412a2が階段状に形成されているため、第1傾斜部412a1によって生じた基準高さとの高低差を段階的に解消することができる。それゆえ、実施形態の変形例に係るレール部412では、給紙カセット410を給紙装置本体部401から引き出す際、第2傾斜部412a2がコロ405と当接するとき、コロ405の上を給紙カセット410がよりスムースに第1傾斜部412a1に向かって移動することができる。
【符号の説明】
【0117】
100 画像形成装置
102 画像形成部
400 給紙装置
401 給紙装置本体部
401a 給紙装置底部
401b 後側壁部
401c 左側壁部
401d 右側壁部
403 ガイドフレーム
405 コロ
406 第1ボス孔
406a 凹凸部
407 第2ボス孔
408 サイズ検知スイッチ
409 レバー
410 給紙カセット
410a 底部
410b 第1カセット壁部
410c 第2カセット壁部
410d 第3カセット壁部
410e 第4カセット壁部
411a 第1ガイドクリップ
411b 第2ガイドクリップ
412 レール部
412a 当接面
412a1 第1傾斜部
412a2 第2傾斜部
412a3 基準水平部
412b 当接面
413 第1ボス
414 第2ボス
415 突起部
420 シート供給部
500 引き込みユニット
501 ダンパー部
502 スプリング
503 筐体
504 ロッド
505 係合部
505a 第1当接部
505b 第2当接部
505c 第1ガイド軸
505d 第2ガイド軸
506 ガイド溝
P シート
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14