(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】塗布具及び塗布容器
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20250416BHJP
B65D 47/42 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
A45D34/04 515C
A45D34/04 515A
B65D47/42
(21)【出願番号】P 2021177208
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2024-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】本間 友梨
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-538726(JP,A)
【文献】特表平09-505232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0172302(US,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0002622(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の先端に被塗布物を塗布するための塗布体を備えた塗布具であって、
前記軸体は、筒状の外軸体と、当該外軸体の内側に回転可能に挿入されると共にその先端が前記外軸体の先端から突出する内軸体と、を有し、
前記塗布体は、前記被塗布物が付着されると共に弾性変形可能に構成される塗布部と、前記塗布部と前記外軸体の先端とを連結する基端部と、前記塗布部と前記内軸体の先端とを連結する先端部とを有
し、
前記被塗布物を内容物として収容する容器本体の口部に脱着可能に装着されるキャップ本体と、前記キャップ本体に対して回転可能に設けられる回転操作体とが設けられ、
前記外軸体は前記キャップ本体に設けられ、前記内軸体は前記回転操作体に設けられて前記回転操作体と一体に回転し、
前記キャップ本体は、前記内軸体の基端部が挿入される筒体を備え、
前記塗布部は、前記被塗布物を保持する溝がスパイラル状に設けられたスパイラル体から構成され、
前記回転操作体の回転操作による前記内軸体の回転によって前記塗布部は捻じれて外径が小さくなるように弾性変形し、
前記塗布部が捻じれた状態に維持されるように前記内軸体の回転を規制するロック機構が設けられ、
前記ロック機構は、前記内軸体の外周面と前記筒体の内周面との間に設けられた突出部と凹部との係合によって前記内軸体の回転を規制する、塗布具。
【請求項2】
前記塗布部は、線材を所定のピッチで螺旋状に巻回することにより得られた線状巻回体であり、巻回された前記線材間の溝に前記被塗布物が保持される請求項
1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記外軸体に対して前記内軸体は第一位置から
前記塗布部が捻じれた状態に維持される第二位置までの間で回転可能とされており、
前記ロック機構は、前記外軸体に対して前記内軸体を前記第一位置及び前記第二位置に切替可能に固定す
る請求項1
又は請求項
2に記載の塗布具。
【請求項4】
請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の塗布具と、
前
記容器本体と
、を備
える、塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を塗布するための塗布具及び塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマスカラ等のまつげ用化粧料を内容液として収容するものとして、まつげに内容液を塗布するための塗布具を備えた塗布容器が使用されている。このような塗布容器として、容器に装着されるキャップに軸部が設けられ、この軸部の先端に塗布具が設けられたものが広く用いられている(例えば、「特許文献1」参照)。
【0003】
まつげ用化粧料には、ボリュームタイプのマスカラ、繊維を含むロングタイプのマスカラ、カラーマスカラ等のポイント使い用のマスカラ、カールのキープ力を高めるためのマスカラ用下地等々種々のものが存在する。ユーザはこれら種々の製品から、目的に応じてまつげ用化粧料を選択することができる。
【0004】
ところで、上まつげは下まつげと比較すると長く、毛量も多い。そのため、上まつげと下まつげとでは、まつげ用化粧料の塗布量や塗布方法が相違する。また、目力を強調したい場合、或いは、ナチュラルに仕上げたい場合など、目的とする仕上げ方法によってもまつげ用化粧料の塗布量や塗布方法を変化させることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の塗布容器には基本的には一種類の塗布具しか設けることができなかった。そのため、ユーザが塗布位置や目的とする仕上げ方法に応じて、複数種類の塗布具を使い分けたいと考えた場合、目的とする塗布具を備える製品を複数用意する必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、内容物を塗布する位置や仕上げ方法等に応じて形態を変化させることができる塗布具、及び当該塗布具を備えた塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る塗布具は、軸体の先端に被塗布物を塗布するための塗布体を備えた塗布具であって、前記軸体は、筒状の外軸体と、当該外軸体の内側に回転可能に挿入されると共にその先端が前記外軸体の先端から突出する内軸体と、を有し、
前記塗布体は、前記被塗布物が付着されると共に弾性変形可能に構成される塗布部と、前記塗布部と前記外軸体の先端とを連結する基端部と、前記塗布部と前記内軸体の先端とを連結する先端部とを有し、前記被塗布物を内容物として収容する容器本体の口部に脱着可能に装着されるキャップ本体と、前記キャップ本体に対して回転可能に設けられる回転操作体とが設けられ、前記外軸体は前記キャップ本体に設けられ、前記内軸体は前記回転操作体に設けられて前記回転操作体と一体に回転し、前記キャップ本体は、前記内軸体の基端部が挿入される筒体を備え、前記塗布部は、前記被塗布物を保持する溝がスパイラル状に設けられたスパイラル体から構成され、前記回転操作体の回転操作による前記内軸体の回転によって前記塗布部は捻じれて外径が小さくなるように弾性変形し、前記塗布部が捻じれた状態に維持されるように前記内軸体の回転を規制するロック機構が設けられ、前記ロック機構は、前記内軸体の外周面と前記筒体の内周面との間に設けられた突出部と凹部との係合によって前記内軸体の回転を規制することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る塗布具において、前記塗布部は、線材を所定のピッチで螺旋状に巻回することにより得られた線状巻回体であり、巻回された前記線材間の溝に前記被塗布物が保持されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る塗布具において、前記外軸体に対して前記内軸体は第一位置から前記塗布部が捻じれた状態に維持される第二位置までの間で回転可能とされており、前記ロック機構は、前記外軸体に対して前記内軸体を前記第一位置及び前記第二位置に切替可能に固定することが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る塗布容器は、上記塗布具と、前記容器本体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る塗布具は、軸体の先端に被塗布物を塗布するための塗布体を備え、塗布体に被塗布物を付着させることで被塗布物を塗布部位に塗布することができる。本発明に係る塗布具では、軸体を筒状の外軸体に対して、内軸体が回転可能に挿入されると共に、外軸体の先端から内軸体の先端が突出するように構成している。また、塗布体は、被塗布物が付着され、且つ、弾性変形可能な塗布部を有する。この塗布部は基端部により外軸体の先端に連結され、先端部により内軸体の先端に連結されている。外軸体に対して内軸体を回転させると、塗布部は弾性変形可能なため基端部側に対して先端部側が捻れて、その外径が小さくなる。回転を解除すると、塗布部は元の形状に復元し、外径が大きくなる。このように本発明の塗布具によれば、外軸体に対して内軸体を回転させることで、塗布体の外径を変化させることができる。
【0014】
塗布部は弾性変形可能であるため、外径の大きい形態と、外径の小さい形態とに可逆的に変化させることができる。例えば、内容物がまつげ用化粧料である場合に、塗布位置が上まつげである場合には、塗布部を外径の大きな太ブラシ状とし、塗布位置が下まつげである場合には、塗布部を外径の小さな細ブラシ状等とすることができる。このように、本発明に係る塗布具によれば、外軸体に対して内軸体を回転させることで、被塗布物を塗布する位置や仕上げ方法等に応じて塗布体の形態を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る塗布具を備えた塗布容器の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す塗布具に関し、(a)は塗布体の外観を示す正面図であり、(b)は塗布体が設けられた軸体の先端部分を示す部分断面図であり(c)は外軸体の先端部分を示す部分断面図であり、(d)は
図1及び
図2(b)のA-A断面図である。
【
図3】
図1に示す塗布具に関し、(a)は塗布体の第一形態を示す断面図であり、(b)は塗布体の第二形態を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す塗布容器に関し、(a)はキャップの構成を示す部分断面図であり、(b)は内軸体の固定部付近を示す部分断面図である。
【
図5】
図1に示す塗布具に関し、(a)は塗布体が第一形態であるときの
図1及び
図5(b)におけるB-B断面図であり、(b)は第一形態であるときのキャップ及び塗布具の断面図である。
【
図6】
図1に示す塗布具に関し、(a)は塗布体が第二形態であるときの
図6(b)におけるB-B断面図であり、(b)は第二形態であるときのキャップ及び塗布具の断面図である。
【
図7】
図1に示す塗布具の使用方法を説明するための図であり、(a)は塗布体が第一形態である使用方法の一例を説明するための図であり、(b)は塗布体が第二形態であるときの使用方法の一例を説明するための図である。
【
図8】
図1に示す塗布具の使用方法を説明するための他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る塗布具及び塗布容器の実施の形態を説明する。
図1に本実施の形態の塗布容器100を示す。
図1に示す塗布容器100は、内容物C(被塗布物)(
図2(b)等参照)が収容される容器本体10の口部11に、キャップ20が脱着可能に装着されている。キャップ20は塗布具30を備える塗布具付キャップ80として構成されている。容器本体10からキャップ20を取り外すと、塗布具30により内容物Cを被塗布部位に塗布することができるように構成されている。
【0017】
本実施の形態における塗布容器100には、化粧料、洗剤、薬剤、接着剤等の種々の内容物Cを収容することができる。また、内容物Cの状態は液状、ゲル状、クリーム状等の種々の状態でよく、繊維等を含んでいてもよい。このように内容物の種類や状態は特に限定されるものではないが、本実施の形態では、内容物Cとしてマスカラ又はマスカラ用下地等のまつげ用化粧料が容器本体10に収容されており、被塗布部位がまつげである場合を例に挙げて説明する。
【0018】
なお、本明細書における「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものであり、塗布容器100を
図1に示すように正立姿勢に配置した状態で、容器本体10の口部11の中心軸Oに沿う軸方向において容器本体10が位置する側を「下」、キャップ20が位置する側を「上」と称するものとする。また、
図1に示す状態において、中心軸Oを含む平面で塗布容器100を分断したときに紙面の表側を塗布容器100の「手前」側と称し、紙面の裏側を塗布容器100の「奥」側と称する。
【0019】
まず、
図1を参照して容器本体10側の構成について説明する。容器本体10は、内容物C(
図1において図示略)が収容される有底筒状の胴部12と、胴部12と上記口部11とを連結する肩部13とを備えている。口部11は胴部12よりも小径に形成されており、口部11の外周面にはねじ部14が設けられている。このねじ部14にはキャップ本体21側のねじ部22cが螺合し、キャップ20が口部11に脱着可能に装着される。また、口部11の内側には、しごき部材15が設けられている。
【0020】
しごき部材15は、ポリプロピレン樹脂(PP)、HDPE(高密度ポリエチレン樹脂)、LDPE(低密度ポリエチレン樹脂)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂)、ゴム、熱可塑性樹脂系エラストマー、熱硬化性樹脂系エラストマー等の弾性変形可能な材料から形成されている。
【0021】
しごき部材15は、軸体40の表面に付着した内容物Cを掻き取るための軸体用しごき片15aと、塗布体50の表面に付着した内容物Cを掻き取るための塗布体用しごき片15bとを備えている。容器本体10からキャップ20を取り外すと、キャップ20に取り付けられた塗布具30はその軸体40及び塗布体50がそれぞれ軸体用しごき片15a及び塗布体用しごき片15bに密接しながら口部11を通過する。そのため、軸体40の外周面や塗布体50に余分に付着した内容物Cがしごき部材15により掻き取られ、塗布体50には適量の内容物Cが付着する。
【0022】
次に、キャップ20及び塗布具30の主要構成を説明する。
図1に示すように、キャップ20は容器本体10の口部11に脱着可能に装着されるキャップ本体21と、有天筒状に構成され、キャップ本体21に対して回転可能に外嵌される回転操作体25とを備えている。
【0023】
塗布具30は、上述のとおり軸体40と、軸体40の先端に設けられた塗布体50とを有する。軸体40は、筒状の外軸体41と、当該外軸体41の内側に回転可能に挿入される内軸体42とを備え、内軸体42の先端は外軸体41の先端から下方に突出している。本実施の形態では、外軸体41はキャップ本体21と一体に成形されている。また、内軸体42は固定部43を介して回転操作体25の内周面に回転不可に取り付けられている。
【0024】
塗布体50は、内容物Cが付着されると共に弾性変形可能に構成される塗布部51と、塗布部51を外軸体41の先端に連結する基端部52と、内軸体42の先端に連結する先端部53とを備えている。また、本実施の形態では、塗布体50の先端に短い櫛歯状凸部54が複数本設けられている。
【0025】
本実施の形態において、塗布部51は、
図2(a)に示すように樹脂製の線材51aを所定のピッチで螺旋状に巻回することにより得られた線状巻回体として構成されている。線材51aの一端側は基端部52に連結されており、他端側は先端部53に連結されている。
【0026】
図2(b)に示すように塗布部51の内側には内軸体42が挿入されており、内軸体42の外周面と線材51aとの間は離間している。塗布部51をこのような線材51aを巻回することで溝をスパイラル状に設けたスパイラル体とすることで、線材51a間の溝内に内容物Cを保持することができる。また、これと同時に螺旋状に巻回された線材51aを、内容物Cをまつげに塗布するためのブラシ又はコームのように機能させることができる。なお、
図2(b)には塗布部51に内容物Cが適量付着された状態を示している。
【0027】
図2(a)に示すように塗布体50の基端部52は略短筒状に構成されており、
図2(b)に示すように、その内周面には軸方向に長尺な溝部52aが径方向両側にそれぞれ1本ずつ設けられている。
図2(c)に示すように、外軸体41の外周面には、この溝部52aに対応する位置に径方向外側に突出する外軸回転止部41aが径方向両側にそれぞれ1つずつ設けられている。
図2(b)に示すように、塗布体50の基端部52に外軸体41の先端が挿入された状態で、溝部52aには外軸回転止部41aが係合されている。溝部52aに外軸回転止部41aが係合されることで塗布体50の基端部52は外軸体41の先端に回転不能に連結される。なお、
図2(c)は軸体40のみを示す断面図であり、外軸体41の先端部分を示した図である。
【0028】
塗布体50の先端部53は、
図2(a)に示すように、略円錐台状を呈し、基端側に対して先端側が小径となっている。先端部53の内側には、
図2(d)に示すように断面矩形の嵌合穴53aが設けられている。
図2(d)に示すように内軸体42の先端部42aも断面矩形の角棒状に形成されている。塗布体50の先端部53に設けられた嵌合穴53aに内軸体42の先端部42aが嵌合されることで、塗布体50の先端部53に内軸体42が回転不能に連結される。
【0029】
本実施の形態では塗布具付キャップ80(キャップ20及び塗布具30)を上記のように構成することで、キャップ本体21に対して回転操作体25を中心軸Oを回転中心として所定の角度(当該実施の形態では略180°)だけ回転操作すると、外軸体41に対して内軸体42が
図1(及び
図5)に示す第一位置(初期位置)から所定の角度だけ回転する。この内軸体42が所定の角度回転した位置を第二位置(
図6参照)と称する。なお、第一位置から第二位置に回転させる向きを順方向と称し、第二位置から第一に回転させる向きを逆方向と称し、線材51aの巻回方向は順方向と一致するものとする。
【0030】
図2(b)等に示すように、塗布体50の基端部52は外軸体41の先端に回転不能に連結されているのに対して、塗布体50の先端部53は内軸体42の先端に回転不能に連結されている。従って、塗布部51は内軸体42と共に順方向に回転しようとするが、外軸体41と連結された基端部52が固定されているため回転することができず、塗布部51には捻れの力が負荷される。塗布部51に対して順方向に捻れの力が負荷されることで、
図3(b)に示すように、線材51aが内軸体42の周囲にきつく巻き付けられるような状態となる。
【0031】
ここで、内軸体42の第一位置に対応する塗布体50の状態を第一形態(
図2(b)、
図3(a)等)と称し、内軸体42の第二位置に対応する塗布体50の状態を第二形態(
図3(b)等)と称する。
以下、
図3を参照しながら説明する。
図3(a)に示すように、第一形態では、塗布体50に捻れの力が負荷されていないため、線材51aが巻回されるピッチ幅は初期状態の第一のピッチ幅P1であり、塗布部51の外径(幅)は初期状態の第一の外径W1となる。第二の形態では、線材51aが内軸体42の周囲にきつく巻き付けられるため、線材51aのピッチ幅が第一のピッチ幅P1から第二のピッチ幅P2に狭く変化し、塗布部51の外径も
図3(a)に示す第一の外径W1から
図3(b)に示す第二の外径W2に狭く変化する。上述のとおり、塗布部51は弾性変形可能であるため、回転に伴う捻れの力が解除されると、線材51aは緩み、塗布体50は元の形状に復元する。
【0032】
このように、塗布体50を第一形態と第二形態とに可逆的に変化可能に構成することで、第一形態では塗布体50を外径及びピッチ幅の大きい太ブラシのように機能させることができ、第二形態では塗布体50を外径及びピッチ幅の狭い細ブラシのように機能させることができる。
【0033】
ところで、
図2(b)に示すように第一形態において適量の内容物Cが付着した塗布具付キャップ80を用いてまつげに内容物Cを塗布すると、内容物Cがまつげ側に移行するため、塗布部51における内容物Cの付着量が減少する。
図3(a)は、第一形態において内容物Cをまつげに塗布した後の塗布体50を示している。
図3(a)に示す状態では、内容物Cの付着量が少なく線材51a間の溝の底の方にしか内容物Cが残っていないため、線材51a間にまつげを挿入させてもまつげに内容物Cを塗布することが困難である。
【0034】
しかしながら、このとき塗布体50を第一形態から第二形態に変化させると、上述のとおり線材51aが内軸体42の周囲にきつく巻き付けられる。その結果、
図3(b)において白抜き矢印で示す箇所のように、内軸体42の周囲にきつく巻き付けられていく線材51aによってまつげ化粧料が線材51aの外側に押し出されていき、第二形態ではまつげに内容物Cを塗布するために十分な付着量にすることができる。すなわち、塗布体50を第一形態で使用した後に、回転操作体25を回転させることで、塗布体50を太ブラシ状から細ブラシ状に形態を変化させることができるだけでなく、内容物Cを新たに付け足すことなく塗布具30を使用することができる。
【0035】
次に、
図4~
図6を参照しながら、本実施の形態の塗布具付キャップ80(キャップ20及び塗布具30)の構成をより具体的に説明する。ここで、
図4(a)は
図1に示す塗布容器100のキャップ20の構成を示す部分断面図であり、
図4(b)は内軸体42をキャップ20の回転操作体25に固定するための固定部43の構成を示す部分断面図である。また、
図5は回転操作体25が第一位置にあり、塗布体50が第一形態である状態を示す。
図6は回転操作体25が第二位置にあり、塗布体50が第二形態である状態を示す。
【0036】
まず、キャップ20の詳細構成を説明する。
図4(a)に示すように、キャップ本体21は、容器本体10の口部11を覆う下筒体22と、下筒体22の天壁面22aには外側上筒体23と、内側上筒体24とを備えている。下筒体22の内周面には、上記口部11の外周面に設けられたねじ部14に螺合するねじ部22cが設けられている。また、下筒体22の天壁面22aの下面側には外軸体41が下方に突出するように設けられている。この天壁面22aの略中央には、筒状の外軸体41と連通し、且つ、内軸体42を挿通するための挿通孔22bが設けられている。上述のとおり、キャップ本体21(下筒体22、外側上筒体23、内側上筒体24)と、外軸体41とは樹脂材料等により一体に成形されている。
【0037】
外側上筒体23は、下筒体22よりも小径であり上記天壁面22aを下面とする短筒状を呈する。外側上筒体23の外周面の下部には径方向外側に突出する環状凸部23aが設けられている。回転操作体25の内周面には、この環状凸部23aに嵌合する環状凹部25aが設けられている。外側上筒体23に対して回転操作体25はこれらにより回転可能に外嵌されると共に抜け止めされている。
【0038】
内側上筒体24は、上記挿通孔22bの内径よりも大きな内径を有し、内側上筒体24内に内軸体42の基端部42bが回転可能に挿入される。ここで、内側上筒体24の説明に先立ち、内軸体42の構成を説明する。
【0039】
内軸体42は、
図5(a)及び
図6(a)に示すように断面が略円形の長尺な丸棒状に形成されている。内軸体42は、上述のとおり、外軸体41に対して回転可能に挿入されており、外軸体41の先端よりも下方に突出している(
図5(b)及び
図6(b)参照)。また、内軸体42は上述のとおり、塗布部51の内側に挿入され、塗布体50の先端部53に嵌入されている。
【0040】
内軸体42の基端部42bは拡径されており、上記内側上筒体24内に回転可能に収容される。
図4(b)、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、内軸体42の基端部42bの外周面には径方向外側に突出する内軸ロック部42cが片側に設けられている。
【0041】
一方、
図4(a)、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、内側上筒体24の内周面には、半筒形状の半筒部24aが設けられている。半筒部24aを内側上筒体24の内周面に設けられることで、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、内側上筒体24の壁厚が中心軸Oを含む平面で分けたときに奥側が手前側よりも厚くなるに構成されている。内軸体42の基端部42bは上記内軸ロック部42cを備え、当該内軸ロック部42cは半筒部24aに当接する。そのため、内軸体42を外軸体41に対して回転させると、内軸ロック部42cは半筒部24aが設けられていない範囲内、すなわち手前側の略180°の範囲内でのみ回転することができるようになっている。
【0042】
図4(a)、(b)を参照しながらより具体的に説明する。
図4(a)、(b)に示すように、「内側上筒体24の内半径R1」は、「内軸体42の基端部42bの最大外半径r1」と「基端部42bの外面からの内軸ロック部42cの突出長r2」との和「r3=(r1+r2)」より大きくなるように構成されている。
一方、「半筒部24aの内半径R2」は、「内軸体42の基端部42bの最大外半径r1」と「内軸体42の基端部42bの外面からの内軸ロック部42cの突出長r2」との和「r3」より小さくなるように構成されている。
従って、内軸体42の基端部42bは内側上筒体24内に回転可能に収容されているが、内軸体42の基端部42bには上記内軸ロック部42cが設けられているため、内軸ロック部42cが半筒部24aの端部に当接すると内軸体42の回転が規制される。そのため、内軸体42の回転可能範囲は内軸ロック部42cの回転可能範囲である上記所定の角度(略180°)に制限される。
【0043】
次に、本発明にいうロック機構について説明する。
図5(a)及び
図6(a)に示すように、内側上筒体24の内周面には径方向内側に突出する係止部24b(
図4(a)において図示略)が、半筒部24aの両端面に対して所定の距離を開けてそれぞれ設けられている。当該係止部24bはいわゆるアンダーカットであり、軸方向に長尺な凸部として形成されている。
図5(a)及び
図6(a)に示すように、当該係止部24bの角は丸められている。そのため、回転操作体25を強く回転させると、内軸ロック部42cが回転方向側に位置する係止部24bを乗り越えることができるようになっている。
【0044】
ここで、
図5(a)及び
図6(a)に示すように各係止部24bはそれぞれ半筒部24aの端部に対してそれぞれ所定の距離だけ離間するように配置されている。そのため、半筒部24a端部と係止部24bとの間にはそれぞれ軸方向に長尺な凹部が形成される。以下、当該凹部を以下ロック溝24cと称する。回転操作体25を強く回転させて、内軸ロック部42cが係止部24bを乗り越えると、内軸ロック部42cが当該ロック溝24cに収容される。この状態で回転操作体25を同じ方向に回転させても、上記のとおり半筒部24aに内軸ロック部42cによって、内軸体42及び回転操作体25をそれ以上回転させることができなくなる。そのとき、回転操作体25の回転操作を停止すると、回転操作体25に力が加えられない限り、回転操作体25及び内軸体42はその位置で固定される。つまり、初期状態においては内軸体42を第一位置に固定することができ、初期状態から回転操作体25を順方向に回転させると、内軸体42を第二位置に固定することができる。このように、内側上筒体24に設けた半筒部24a、係止部24b及びロック溝24cと、内軸体42に設けた内軸ロック部42cによって、内軸体42の回転範囲を規制すると共に、内軸体42を第一位置から第二位置に固定するロック機構として機能させることができる。
【0045】
回転操作体25は、
図4(a)に示すように有天筒状に形成されている。その内周面には、径方向内側に突出する軸方向に長尺な縦リブにより形成された凹溝25bが2つ設けられている。内軸体42の固定部43は、有底筒状に形成されている。固定部43の内周面には、上記凹溝25bに対応する位置に回転止凸条部43aが2つ設けられており、各凹溝に回転止凸条部43aがそれぞれ係合されており、回転操作体25に対して内軸体42が回転不能に取り付けられる。
【0046】
次に、
図7及び
図8を参照しながら当該塗布具付キャップ80の使用例等について説明する。なお、
図7及び
図8では符号を一部省略している。なお、当該塗布具付キャップ80ではキャップ20部分を塗布具30の把持部とすることができる。
【0047】
図7(a)は、塗布容器100からキャップ20を取り外して、キャップ20を指で把持した状態で塗布具30により上まつげに内容物Cを塗布する様子を示した図である。但し、指は図示略している。
図7(a)において、塗布具30の塗布体50は第一形態とされており、第一の外径W1(
図3(a)参照)を有する太ブラシ状とされている。そのため、塗布部51に十分な量の内容物Cを付着させた状態(例えば、
図2(b)に示す状態)で、上まつげに内容物Cを塗布することができる。このとき、線材51aが巻回されるピッチ幅は広い第一のピッチ幅P1とされているため、線材51a間の溝に複数本のまつげを挿入させることができる。上まつげに対して塗布部51の位置を少しずつ変化させながら、塗布部51で上まつげを上方に持ち上げるようにしながらとかすことで、ダマにならないようにしながら上まつげに内容物Cを塗布することができる。
【0048】
図7(b)は、塗布具30により下まつげに内容物Cを塗布する様子を示した図である。上まつげに内容物Cを塗布した後、例えば、
図3(a)に示すように内容物Cの付着量が減少する。しかしながら、上述したとおり、塗布体50を第二形態に変化させて細ブラシ状にすることで、当該塗布具30を容器本体10に挿入して内容物Cを付け足すことなく、塗布部51に付着した内容物Cを下まつげに塗布することができる。第二形態では、線材51aのピッチ幅が狭い第二のピッチ幅P2とされているため、上まつげと比較すると毛量が少なく密度の低い下まつげを線材51a間の溝に挿入させることが容易である。また、溝が狭いため、下まつげに対して内容物Cが不自然に多く付着することを防止し、下まつげに適切な量を塗布することができる。また、塗布部51に対する内容物Cの付着量が適度であるため、下まつげに内容物Cを塗布する際に、頬などの意図せぬ位置に内容物Cが付着することを防止することができる。
【0049】
そして、本実施の形態では、塗布体50の先端には、下方に突出する櫛歯状凸部54が設けられている。そのため、
図8に示すように、下まつげ(或いは上まつげ)の一本一本等に内容物Cを塗布することができ、ポイントメイクなどの細かい部分に内容物Cを塗布する際の作業性が良好である。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態の塗布具付キャップ80及び塗布容器100によれば、回転操作体25をキャップ本体21に対して回転させることで、塗布体50を太ブラシ状の第一形態と、細ブラシ状の第二形態とに可逆的に変化させることができる。そのため、内容物Cを上まつげに塗布するときは太ブラシ状の第一形態とし、内容物を下まつげに塗布するときは細ブラシ状の第二形態とすることで、上まつげと下まつげにそれぞれ適量の内容物Cを塗布することができる。また、上まつげについてもナチュラルな仕上げにしたいときなどは、細ブラシ状の第二形態としてもよく、内容物Cを塗布する位置や仕上げ方法等に応じて塗布体50の形態を変化させることができる。
【0051】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜変更してもよいのは勿論である。また、上記の実施の形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0052】
例えば、上記実施の形態では、塗布体50を樹脂製の線材51aを所定のピッチで螺旋状に巻回することにより得られた線状巻回体として構成したが、本発明に係る塗布具及び塗布容器において、塗布体50はこれに限定されるものではない。線材51aを実際に巻回する必要はなく、当該形状に成形されたものであってもよい。また、例えば、シリコーン等の弾性変形可能な材料により溝がスパイラル状に形成された成形体により塗布部51又は塗布体50全体を構成してもよい。また、内容物が液体である場合に、例えば、弾性変形可能な多孔質吸収体により塗布部51を構成し、塗布部51に対して上記のように捻れの力が負荷されたときに、内容物が絞りだされるようにしてもよい。
【0053】
また、上記塗布具30は、塗布容器100に設けられる塗布具付キャップ80として構成し、容器本体10に脱着可能に装着されるキャップ20を塗布具30の把持部とする場合を例に挙げて説明したが、塗布具30は当該構成に限定されるものではない。本発明に係る塗布具は、軸体40の先端に被塗布物(内容物C等)を塗布するための塗布体50を備え、軸体40を、筒状の外軸体41と、当該外軸体41の内側に回転可能に挿入されると共にその先端が当該外軸体41の先端から突出する内軸体42と、を有し、塗布体50を、被塗布物が付着されると共に弾性変形可能に構成される塗布部51と、この塗布部51と外軸体41の先端とを連結する基端部52と、塗布部51と内軸体42の先端とを連結する先端部53とを有するものであれば、外軸体41に対して内軸体42を回転させるための具体的な構成は特に限定されるものではない。また、軸体40及び塗布体50についてもその具体的な構成は上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 :容器本体
11 :口部
12 :胴部
13 :肩部
14 :ねじ部
15 :しごき部材
15a :軸体用しごき片
15b :塗布体用しごき片
20 :キャップ
21 :キャップ本体
22 :下筒体
22a :天壁面
22b :挿通孔
22c :ねじ部
23 :外側上筒体
23a :環状凸部
24 :内側上筒体
24a :半筒部
24b :係止部
24c :ロック溝
25 :回転操作体
25a :環状凹部
25b :凹溝
30 :塗布具
40 :軸体
41 :外軸体
41a :外軸回転止部
42 :内軸体
42a :先端部
42b :基端部
42c :内軸ロック部
43 :固定部
43a :回転止凸条部
50 :塗布体
51 :塗布部
51a :線材
52 :基端部
52a :溝部
53 :先端部
53a :嵌合穴
54 :櫛歯状凸部
80 :塗布具付キャップ
100 :塗布容器
C :内容物
O :中心軸
P1 :第一のピッチ幅
P2 :第二のピッチ幅
R1 :内半径
R2 :内半径
W1 :第一の外径
W2 :第二の外径
r1 :最大外半径
r2 :突出長