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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】医薬化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20250416BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20250416BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20250416BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250416BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250416BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250416BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
C07D405/14
A61K31/5513
A61P31/14
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 S
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022525559
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 GB2020052769
(87)【国際公開番号】W WO2021084280
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】1915932.6
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】バレット、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】コッカリル、ジョージ スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】グッド、ジェームス
【審査官】石田 傑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/090319(WO,A1)
【文献】特表2008-537953(JP,A)
【文献】特表2006-526015(JP,A)
【文献】特表2018-524386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中:
およびRのそれぞれは、独立してHまたはハロであり;
は、H、C-Cアルキルまたは-NHRであり
【化2】
【化3】
【化4】
は、全て結合であり、
【化5】
【化6】
【化7】
は、不在であるか;または
【化8】
【化9】
【化10】
は、全て結合であり、
【化11】
【化12】
【化13】
は、不在であるかのいずれかであり;
は、HまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は、非置換であるかまたは置換されており;
は、Hまたはハロであり;
は、-OR、-NRまたは-Rであり;
は、Hまたはハロであり;
およびRのそれぞれは、独立してHまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は、非置換であるかまたは置換されており;
nは、1または2であり;
V、WおよびXの1つは、NまたはCHであり、他の2つは、CHである)のベンゾジアゼピニルピラゾールである化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がベンゾジアゼピニル環系の9位のハロ置換基である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
【化14】
【化15】
【化16】
が全て結合であり、
【化17】
【化18】
【化19】
が不在である、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
【化20】
【化21】
【化22】
が全て結合であり、
【化23】
【化24】
【化25】
が不在である、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
VおよびWが両方ともCHであり、XがNまたはCHである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
がベンゾジアゼピニル環系の9位のFである、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
nが1であり、RおよびRがそれらが両方とも結合している6員環のそれぞれ環位置2および環位置4にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
5-(2,6-ジフルオロ-4-メチルフェノキシ)-1-エチル-N-[(3S)-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(2-フルオロ-4-メチルフェノキシ)-1-(オキサン-4-イル)-N-[(3S)-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2-フルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキセタン-3-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2-フルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキセタン-3-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド
ら選択される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において定義される化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
RSV感染症の治療または予防に使用するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
(a)請求項1から8のいずれか一項において定義される化合物またはその薬学的に許容される塩;および
(b)1つ以上のさらなる治療剤;
を含有する、RSV感染症を患うまたは起こしやすい対象の治療における同時の、別個のまたは連続的な使用のための製品。
【請求項12】
さらなる治療剤が:
(i)RSVヌクレオカプシド(N)-タンパク質阻害剤;
(ii)タンパク質阻害剤;
(iii)抗RSVモノクローナル抗体;
(iv)免疫調節性toll様受容体化合物;
(v)呼吸器ウイルス抗ウイルス剤;並びに/または
(vi)抗炎症化合物
である、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
請求項12において定義されるさらなる治療剤と組み合わせて使用するための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
(a)請求項1から8のいずれか一項において定義される化合物またはその薬学的に許容される塩、および(b)請求項12において定義される1つ以上の治療剤を、薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項15】
請求項1において定義される薬学的に許容される塩を製造する方法であって、その方法が、請求項1において定義される式(I)のベンゾジアゼピン誘導体を適切な溶媒中で適切な酸で処理することを含む、方法。
【請求項16】
酸が塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸およびグルタミン酸から選択される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾジアゼピン誘導体および呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症を治療することまたは予防することにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
RSVは、パラミクソウイルス科のマイナス一本鎖RNAウイルスである。RSVは、表面または手から手への移動を介して感染した人からの分泌物によって容易に伝染する。インフルエンザとは異なり、それは、小粒子エアロゾルによっては伝染しない。接種の成功の後、インキュべーション期間は4日と6日との間であり、その時間の間に、ウイルスは、感染細胞の未感染細胞との融合によっておよび壊死した上皮の腐肉形成によって、鼻咽頭から下気道に拡散する。幼児においては、増加した粘液分泌および浮腫と相まって、これは、粘膜の詰まりに至り、細気管支炎を示す遠位肺組織の過膨張および崩壊を引き起こし得る。低酸素症は、一般的であり、供給能力は、呼吸困難のために、しばしば損なわれる。RSV肺炎においては、気道の炎症性湿潤は、単核細胞からなり、細気管支、気管支および肺胞を含んでより一般化される。ウイルス排出の期間および程度は、臨床兆候および疾患の重篤度と相関することが見出された。
【0003】
RSVは、世界中で、幼児および小児における重篤な気道感染症の主な原因である。RSV感染症について入院した多くの幼児はその他の点では健康であるが、最も高い罹患率および死亡率は、早産で生まれた者においておよび慢性の肺または心臓疾患を有する者について起こる。幼年期における重篤なRSV感染症は、数年間の再発性喘鳴に至り得、後の喘息の発症に関連している。
【0004】
RSVはまた、高齢者における並びに免疫不全の子供および成人並びに慢性閉塞性肺疾患(COPD)および鬱血性心不全(CHF)を有する者における罹患率および死亡率の主要な原因である。
【0005】
RSVは、季節的な発生率を有し;それは、高度に予測可能であり、両半球の冬において、欧州および北米においては9月から5月に起こり、12月および1月にピークに達し、熱帯国においては年中起こり得る。それは2歳までの幼児および小児の>90%に影響を及ぼし、自然免疫は短命であるので;多くは、毎年再感染するであろう。インフルエンザでのように、高齢者においては、RSVは、10%の関連する死亡率を有する約10%の冬の入院を引き起こす。
【0006】
現在の抗RSV治療は、パリビズマブと呼ばれるRSVに対するモノクローナル抗体の使用を含む。そのようなパリビズマブの使用は、治療的であるよりもむしろ予防的なRSVの治療である。この抗体はしばしば効果的であるが、その使用は、早産児および高リスクの幼児に制限される。実際、その限定された有用性は、抗RSV治療を必要とする多くの人々にとって利用できないことを意味する。従って、既存の抗RSV治療に対する効果的な代替物についての緊急の必要性がある。
【0007】
低分子もまた、RSVの阻害剤として提案されてきた。これらは、ベンズイミダゾールおよびベンゾジアゼピンを含む。例えば、サブマイクロモルの抗RSV活性を有するベンゾジアゼピン化合物であるRSV604の発見および初期開発は、Antimicrobial Agents and Chemotherapy,Sept. 2007,3346-3353(Chapman et al)中に記載されている。RSVのベンゾジアゼピン阻害剤はまた、WO2004/026843およびWO2005/089770(Arrow Therapeutics Limited);WO2016/166546およびWO2018/033714(Durham University);並びにWO2017/015449、WO2018/129287およびWO2018/226801(Enanta Pharmaceuticals,Inc.)を含む刊行物中に開示されている。
【0008】
抗RSV活性を有するさらなる化合物、特に強力な抗ウイルス活性および好ましい薬物動態特性の組合せを有する化合物を同定する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
今や、新規な一連のベンゾジアゼピン誘導体が好ましい薬物動態および良好な物理化学的特性とともに強力な抗RSV活性を有することが見出された。従って、本発明は、式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
(式中:
およびRのそれぞれは、独立してHまたはハロであり;
は、H、C-Cアルキルまたは-NHRであり;
(i)
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
は、全て結合であり、
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
は、不在であるか;または
【0020】
【化8】
【0021】
【化9】
【0022】
【化10】
【0023】
は、全て結合であり、
【0024】
【化11】
【0025】
【化12】
【0026】
【化13】
【0027】
は、不在であるかのいずれかであり;
は、HまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は、非置換であるかまたは置換されており;
は、ハロであり;
は、H、-OR、-NRまたは-Rであり;
は、Hまたはハロであり;
およびRのそれぞれは、独立してHまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は、非置換であるかまたは置換されており;
nは、1、2または3であり;
V、WおよびXの1つは、NまたはCHであり、他の2つは、CHである)
のベンゾジアゼピニルピラゾール;またはその薬学的に許容される塩である化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本明細書において定義される任意の基、環、置換基または部分が置換されているとき、それは、典型的には、以下で定義されるQにより置換されている。
【0029】
1-6アルキル基または部分は、直鎖または分枝状である。C1-6アルキル基は、典型的には、C1-4アルキル基、またはC4-6アルキル基である。C1-6アルキル基および部分の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル(すなわち3-メチルブタ-1-イル)、t-ペンチル(すなわち2-メチルブタ-2-イル)、ネオペンチル(すなわち2,2-ジメチルプロパン-1-イル)、n-ヘキシル、i-ヘキシル(すなわち4-メチルペンタン-1-イル)、t-ヘキシル(すなわち3-メチルペンタン-3-イル)およびネオペンチル(すなわち3,3-ジメチルブタン-1-イル)を含む。疑いの回避のために、基中に2つのアルキル部分が存在する場合、該アルキル部分は、同じであり得または異なり得る。C1-6アルキル基は、非置換であるかまたは、典型的には、以下で定義される1つ以上の基Qにより置換されている。例えば、C1-6アルキル基は、非置換であるかまたは以下で定義される1つ、2つ若しくは3つの基Qにより置換されている。
【0030】
Qは、ハロ、ニトロ、-CN、OH、C1-6アルコキシ、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルキルチオ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-4ハロアルコキシ、-COR’、-NR’、-SR’、-S(=O)R’、-S(=O)R’、C-C10シクロアルキル、5から10員のヘテロシクリル、5から12員のアリールまたは5から12員のヘテロアリールであり、ここで、各R’は、独立してH、C1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、5から10員のヘテロシクリル、C6-10アルールおよび5から10員のヘテロアリールから選択される。疑いの回避のために、これらの定義におけるアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール部分は、それ自身は典型的には非置換である。
【0031】
1-6アルコキシ基は、直鎖または分枝状である。それは、典型的にはC1-4アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、i-プロポキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシまたはtert-ブトキシ基である。C1-6アルコキシ基は、非置換であるかまたは、典型的には、上記で定義した1つ以上の基Qにより置換されている。
【0032】
1-6アルキルチオ基は、直鎖または分岐状である。それは、典型的にはC1-4アルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-プロピルチオ、n-ブチルチオ、sec-ブチルチオまたはtert-ブチルチオ基である。C1-6アルキルチオ基は、非置換であるかまたは、典型的には、上記で定義した1つ以上の基Qにより置換されている。
【0033】
ハロゲンまたはハロ基は、F、Cl、BrまたはIである。典型的には、それは、FまたはClである。ハロゲンにより置換されたC1-6アルキル基は、「C1-6ハロアルキル」と示され得、これは、1つ以上の水素がハロにより置き換えられている上記で定義したC1-6アルキル基を意味する。同様に、ハロゲンにより置換されたC1-6アルコキシ基は、「C1-6ハロアルコキシ」と示され得、これは、1つ以上の水素がハロにより置き換えられている上記で定義したC1-6アルコキシ基を意味する。典型的には、C1-6ハロアルキルまたはC1-6ハロアルコキシは、1つ、2つまたは3つの前記ハロゲン原子により置換されている。ハロアルキルおよびハロアルコキシ基は、-CXおよび-OCX(式中、Xは、ハロゲンである)などのパーハロアルキルおよびパーハロアルコキシ基、例えば-CF- CCl -OCFおよび-OCClを含む。
【0034】
1-6ヒドロキシアルキル基は、1つ以上のOH基により置換された、上記で定義したC1-6アルキル基である。典型的には、それは、1つ、2つまたは3つのOH基により置換されている。好ましくは、それは、単一のOH基により置換されている。
【0035】
-C10アリール基は、6から10個の炭素原子を含有する芳香族炭素環式基である。それは、単環式または芳香環が別の芳香族炭素環に縮合している縮合二環式環系である。C-C10アリール基の例は、フェニルおよびナフチルを含む。置換されているとき、アリール基は、典型的には、上記で定義した基Qにより、例えば上記で定義した基Qから選択される1つ、2つまたは3つの基により置換されている。より具体的には、置換フェニル基などの置換アリール基は、C-Cアルキル、ハロ、-ORおよび-N(Rから選択される1つまたは2つの基により置換されており、ここで、Rは、HまたはC-Cアルキルであり、2つ存在するときは各Rは同じであるかまたは異なっている。
【0036】
3-10シクロアルキル基は、3から10個の炭素原子を有する飽和炭化水素環である。C3-10シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロへプチルなどのC-Cシクロアルキルであり得る。典型的には、それは、C-Cシクロアルキル、またはC-Cシクロアルキル、例えばシクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。1つの実施態様においては、それは、シクロブチルである。C3-10シクロアルキル基は、非置換であるかまたは、典型的には、1つ以上の上記で定義した基Qにより置換されている。
【0037】
4から10員のヘテロアリール基または部分は、O、NおよびSから選択される1つ、2つ、3つ、または4つのヘテロ原子を含有する4から10員の芳香族複素環基である。それは、単環式または二環式である。典型的には、それは、1つのN原子およびO、SおよびNから選択される0、1、2または3個の追加のヘテロ原子を含有する。それは、例えば、単環式の5から7員のヘテロアリール基、例えば5または6員のN含有ヘテロアリール基であり得る。例は、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリルおよびピラゾリル基を含む。フラニル、チエニル、イミダゾリル、ピリジルおよびピリミジニル基が、好ましい。それは、あるいは、二環式ヘテロアリール基、例えば8から10員の二環式ヘテロアリール基であり得る。例は、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、イミダゾピリダジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリミジニルおよびピロロピリミジニルを含む。置換されているとき、ヘテロアリール基(単環式のまたは二環式の)は、典型的には、C1-4アルキル基および上記で定義した基Qから選択される1つ以上、例えば1つ、2つまたは3つの基により置換されている。
【0038】
4から10員のヘテロシクリル基は、5から10個の炭素原子および少なくとも1つの、N、O、S、SO、SOおよびCOから選択される原子または基、より典型的にはNまたはOを含有する、単環式または二環式の非芳香族の飽和または不飽和環系である。環系が二環式であるとき、1つの環は飽和であり得、1つの環は不飽和であり得る。典型的には、それは、環中の炭素原子の1つ、2つまたは3つがO、S、SO、COおよびNHから選択される原子または基で置き換えられた、C4-10環系である。より典型的には、それは、単環式環、好ましくは単環式C-C環である。例は、ピペリジル、ピペリジン-2,6-ジオニル、ピペリジン-2-オニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、S,S-ジオキソチオモルホリニル、1,3-ジオキソラニル、ピロリジニル、イミダゾール-2-オニル、ピロリジン-2-オニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニルおよびテトラヒドロピラニル部分を含む。
【0039】
疑いの回避のために、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル基の上記定義は、環中に存在し得る「N」原子に言及するが、任意のそのようなN原子は、単結合を介してその隣接する環原子のそれぞれに付着する場合、プロトン化されるであろう(または上記で定義した置換基を有するであろう)ことが、熟練した化学者に明らかであろう。そのようなプロトン化形態は、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル基の本定義内に包含される。
【0040】
上記で定義した式(I)の一つの実施態様においては、Rは、ベンゾジアゼピニル環系の9位のハロ置換基、特にFである。そのような化合物の例は、以下の式(I’):
【0041】
【化14】
【0042】
(式中、Rは、Hまたはハロであり、Rは、Hまたはハロであり、残りの基および変数は、式(I)について上記で定義したとおりである)のものである。典型的には、Rは、HまたはFであり、Rは、HまたはFである。例えば、Rは、HまたはFであり、Rは、Fである。
【0043】
式(I)の一つの実施態様においては、
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
【化17】
【0047】
は、全て結合であり、
【0048】
【化18】
【0049】
【化19】
【0050】
【化20】
【0051】
は、不在である。そのような化合物は、以下の式(Ia):
【0052】
【化21】
【0053】
(式中、全ての基および変数は、式(I)または(I’)について上記で定義したとおりである)を有する。
【0054】
式(I)の別の実施態様においては、
【0055】
【化22】
【0056】
【化23】
【0057】
【化24】
【0058】
は、全て結合であり、
【0059】
【化25】
【0060】
【化26】
【0061】
【化27】
【0062】
は、不在である。そのような化合物は、以下の式(Ib):
【0063】
【化28】
【0064】
(式中、全ての基および変数は、式(I)または(I’)について上記で定義したとおりである)を有する。
【0065】
上記の式(I)、(I’)、(Ia)および(Ib)の一つの実施態様においては、VおよびWのそれぞれは、CHであり、Xは、Nである。そのような構造の例は、以下の式(Ia’)および(Ib’):
【0066】
【化29】
【0067】
のベンゾジアゼピニルピラゾールを含む。
【0068】
上記の式(Ia’)および(Ib’)において、RからRのそれぞれおよびnは、式(I)または(I’)について上記で定義したとおりである。
【0069】
上記の式(I)、(I’)、(Ia)および(Ib)の別の実施態様においては、V、WおよびXは、全てCHである。そのような構造の例は、以下の式(Ia’’)および(Ib’’):
【0070】
【化30】
【0071】
のベンゾジアゼピニルピラゾールを含む。
【0072】
式(Ia’’)および(Ib’’)において、RからRのそれぞれおよびnは、式(I)または(I’)について上記で定義したとおりである。
【0073】
ある一面においては、本発明は、以下の式(IIa):
【0074】
【化31】
【0075】
(式中、基および変数のそれぞれは、式(I)または式(I’)について上記で定義したとおりである)のベンゾジアゼピニルピラゾール、またはその薬学的に許容される塩である化合物を提供する。
【0076】
別の一面においては、本発明は、以下の式(IIb):
【0077】
【化32】
【0078】
(式中、基および変数のそれぞれは、式(I)または(I’)について上記で定義したとおりであり、mは、0、1または2である)のベンゾジアゼピニルピラゾールである化合物を提供する。
【0079】
構造式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ib’)、(Ia’’)、(Ib’’)、(IIa)または(IIb)のいずれかを有する本発明の化合物の一つの実施態様においては、Rは、ベンゾジアゼピニル環系の9位にある。この実施形態では、典型的にはRは、ハロ置換基、特にFである。より典型的にはこの実施態様においては、Rは、HまたはFであり、Rは、HまたはFである。例えば、Rは、HまたはFであり、Rは、Fである。
【0080】
式(IIa)におけるRおよびRが上記の式(I’)中に示す同じ環位置をとるとき、得られる化合物は、以下の式(IIa’):
【0081】
【化33】
【0082】
(式中、Rは、Hまたはハロであり、Rは、Hまたはハロであり、残りの基および変数は、式(IIa)について上記で定義したとおりである)のベンゾジアゼピニルピラゾールである。典型的には、Rは、HまたはFであり、Rは、HまたはFである。例えば、Rは、Hであり、Rは、Fである。
【0083】
同様に、式(IIb)におけるRおよびRが上記の式(I’)中に示す同じ環位置をとるとき、得られる化合物は、以下の式(IIb’):
【0084】
【化34】
【0085】
(式中、Rは、Hまたはハロであり、Rは、Hまたはハロであり、残りの基および変数は、式(IIb)について上記で定義したとおりである)のベンゾジアゼピニルピラゾールである。典型的には、Rは、HまたはFであり、Rは、HまたはFである。例えば、Rは、Hであり、Rは、Fである。
【0086】
上記で定義した構造式のいずれかを有する本発明の化合物においては、Rは、H、C-Cアルキルおよび-NR(式中、RおよびRのそれぞれは、独立してHまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は、非置換であるかまたは置換されている)から選択される基である。典型的には、Rは、Hであり、Rは、HまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は非置換であるかまたは置換されている。一つの実施態様においては、Rは、Hであり、Rは、HまたはC-Cアルキルである。
【0087】
上記で定義した構造式のいずれかを有する本発明の化合物においては、Rは、HまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は非置換であるかまたは置換されている。一つの実施態様においては、Rは、C-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は、非置換であるかまたは置換されている。典型的にはRは、C-Cアルキル(C-Cアルキルなどの)、C-Cシクロアルキル(シクロプロピルなどの)および4から10員のヘテロシクリル(例えば、オキセタニル、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニルなどのO含有ヘテロシクリル基)から選択される基である。
【0088】
上記で定義した構造式のいずれかを有する本発明の化合物においては、Rは、Hまたはハロ、特にFである。
【0089】
上記で定義した構造式(I)、(I’)、(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ib’)、(Ia’’)または(Ib’’)のいずれかを有する本発明の化合物においては、1つ、2つまたは3つの基Rがあり得、これらは、複数存在するときは同じであるかまたは異なる。少なくとも1つの基Rは、典型的にはFである。または(The or)各Rは、それが付着している6員環の任意の利用可能な環炭素原子に結合している。
【0090】
一つの実施態様においては、Rは、Hであり、nは、2であり、1つのRは、Fであり、他のRは、FまたはClである。別の実施態様においては、Rは、Hであり、nは、3であり、2つの基Rは、それぞれFであり、他のRは、Clである。
【0091】
一つの実施態様においては、少なくとも1つのRは、6員環を隣接するO原子に連結する結合を有する環炭素に対してオルトで結合している、すなわち1つのRは、環位置2または6で結合している。例えば、nは、1であり、Rは、環位置2または6で結合しているか;またはnは、2であり、2つの基Rは、環位置2および4、または2および6、または4および6で結合している。そのような実施態様においては、または(the or)各オルト結合基Rは、典型的にはFである。
【0092】
上記で定義した構造式(I)、(I’)、(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ib’)、(Ia’’)、(Ib’’)、(IIb)または(IIb’)のいずれかを有する本発明の化合物においては、Rは、Rが占めていない任意の利用可能な環炭素原子で結合している。例えば、それは、環位置4(すなわち6員環を隣接するO原子に連結する結合を有する環炭素に対してパラで結合しているか;またはそれは、環位置3または5、すなわち6員環を隣接するO原子に連結する結合を有する環炭素に対してメタで結合している。
【0093】
上記の構造式(I)、(I’)、(Ia)、(Ib)、(Ia’)、(Ib’)、(Ia’’)および(Ib’’)の化合物における基RおよびRが結合する6員環の例は、以下の構造(i)から(v):
【0094】
【化35】
【0095】
を含む。
【0096】
上記で定義した構造式のいずれかを有する本発明の化合物においては、Rは、-OR、-NRまたは-R(式中、RおよびRのそれぞれは、HまたはC-Cアルキル、C-Cシクロアルキルおよび4から10員のヘテロシクリルから選択される基であり、該基は、非置換であるかまたは置換されている)である。典型的にはRは、H、C-Cアルキル、-ORまたは-NR(式中、Rは、C-Cアルキル(C-Cアルキルなどの)、C-Cシクロアルキル(シクロプロピルまたはシクロブチルなどの)であり、Rは、HまたはC-Cアルキルであり、該アルキルおよびシクロアルキル基は、非置換であるかまたは置換されている)である。より典型的にはRは、C-Cアルキル、-ORまたは-NR(式中、Rは、非置換C-Cアルキル(メチル、エチルまたはi-プロピルなどの)またはC-Cシクロアルキル(シクロプロピルまたはシクロブチルなどの)であり、該シクロアルキル基は、非置換であるかまたは非置換C-Cアルキル(メチルなどの)で置換されており、Rは、C-CアルキルまたはHである)である。
【0097】
一つの実施態様においては、Rは、C-Cアルキルまたは基-NR(式中、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、それぞれHまたはC-Cアルキルである)であり、nは、1または2であり、各Rは、Fである。これらの実施態様におけるC-Cは、典型的にはメチルまたはエチルである。
【0098】
本発明の特定の化合物は、以下:
5-(2,6-ジフルオロ-4-メチルフェノキシ)-1-エチル-N-[(3S)-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(2-フルオロ-4-メチルフェノキシ)-1-(オキサン-4-イル)-N-[(3S)-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2-フルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキセタン-3-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2-フルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキセタン-3-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド;
5-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェノキシ)-N-[(3S)-9-フルオロ-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキサミド;
およびそれらの薬学的に許容される塩を含む。
【0099】
本発明の化合物は、不斉またはキラル中心を含有し得、従って異なる立体異性体形態で存在し得る。ジアステレオマー、エナンチオマーおよびアトロプ異性体、並びにラセミ混合物などのそれらの混合物を含むがこれらに限定されない、本発明の化合物の全ての立体異性体形態が本発明の一部を形成することが、意図される。1つ以上のキラル中心を含有する式(I)の化合物は、エナンチオマー的またはジアステレオ異性体的に純粋な形態で、または異性体の混合物の形態で使用し得る。
【0100】
本発明は、上記で定義した、本発明の化合物の全ての幾何および位置異性体を包含する。例えば、本発明の化合物が二重結合または縮合環を組み込む場合、cis-およびtrans-体、並びにそれらの混合物は、本発明の範囲内に包含される。単一の位置異性体および位置異性体の混合物の両方とも、また本発明の範囲内である。
【0101】
本発明の化合物は、無溶媒和形態並びに水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在し得、本発明は溶媒和形態および無溶媒和形態の両方を包含することが意図される。
【0102】
本発明の化合物は、異なる互変異性体形態で存在し得、全てのそのような形態は、本発明の範囲内に包含される。用語「互変異性体」または「互変異性形態」は、低エネルギー障壁を介して相互変換可能な異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)は、ケト-エノール互変異性などのプロトンの移動を介する相互変換を含む。原子価互変異性体は、結合電子のいくつかの再編成による相互変換を含む。
【0103】
本発明の化合物は、以下に続く実施例において記載される合成方法によって、または熟練した化学者になじみのある適切な出発材料および方法論を使用する、そのような方法と類似の方法によって調製し得る。
【0104】
従来の方法によって、式(I)のベンゾジアゼピン誘導体は、その薬学的に許容される塩に変換し得、塩は、遊離化合物に変換し得る。例えば、式(I)のベンゾジアゼピン誘導体は、薬学的に許容される酸と接触して薬学的に許容される塩を形成し得る。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される酸または塩基との塩である。
【0105】
薬学的に許容される酸は、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸などの無機酸およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸などの有機酸の両方を含む。薬学的に許容される塩基は、アルカリ金属(例えばナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えばカルシウムまたはマグネシウム)水酸化物並びにアルキルアミン、アラルキルアミンおよび複素環アミンなどの有機塩基を含む。
【0106】
本発明の化合物は、生物学的試験において呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の阻害剤であると見出された。それらは、強力な抗RSV活性の、良好なバイオアベイラビリティおよび良好な物理化学的特性との組合せを有する。この特性の組合せが、化合物を、治療的に有用であり、前に論じた先行技術参考文献中で開示される多くの化合物よりも薬物候補として優れたものとする。
【0107】
従って、本発明はさらに、療法によりヒトのまたは動物の体を治療する方法における使用のための、上記で定義した式(I)のベンゾジアゼピン誘導体、またはその薬学的に許容される塩である化合物を提供する。
【0108】
本発明はまた、RSV感染症を治療するまたは予防する方法における使用のための、上記で定義した本発明の化合物を提供する。なおさらに、本発明は、RSV感染症を治療することまたは予防することにおける使用のための薬剤の製造における、上記で定義した本発明の化合物の使用を提供する。RSV感染症を患うまたは起こしやすい対象はすなわち、上記で定義した本発明の化合物の該対象への投与を含む方法によって治療し得る。対象の状態は、それによって向上され(improved)または改善され(ameliorate)得る。
【0109】
RSV感染症は、典型的には気道感染症である。RSV感染症は、子供、例えば10歳未満の子供または2歳未満の幼児における感染症であり得る。一つの実施態様において、本発明は、小児患者におけるRSV感染症を治療することまたは予防することにおける使用のための、上記で定義した化合物を提供する。あるいは、感染症は、成熟したまたは高齢の成人、例えば60歳を超える成人、70歳を超える成人、または80歳を超える成人における感染症であり得る。本発明はさらに、老人患者におけるRSV感染を治療することまたは予防することにおける使用のための化合物を提供する。
【0110】
RSV感染症は、免疫不全の個人あるいはCOPD若しくはCHFを患う個人における感染症であり得る。別の実施態様においては、RSV感染症は、易感染性でない個人、例えばその他の点では健康である個人における感染症である。
【0111】
本発明の化合物は、種々の剤形で、例えば錠剤、カプセル、糖-またはフィルム-被覆錠剤、液体溶液若しくは懸濁液の形態でなどの経口でまたは非経口で、例えば筋肉内で、静脈内で若しくは皮下で投与し得る。化合物は従って、注射、注入によって、または吸入若しくは噴霧(nebulaisation)によって与え得る。化合物は好ましくは、経口投与によって与える。
【0112】
投与量は、患者の年齢、体重および状態並びに投与の経路を含む種々の要因に依存する。1日投与量は、広範な制限内で変化し得、各項目における個人の要求に調節されるであろう。しかしながら、典型的には、化合物が単独で成人のヒトに投与されるときの投与の各経路について採用される投与量は、0.0001から650mg/kg、最も一般的には0.001から10mg/kg、体重の範囲中、例えば0.01から1mg/kgである。そのような投与量は、例えば、1日1から5回与え得る。静脈内注入については、適切な1日用量は、0.0001から1mg/kg体重、好ましくは0.0001から0.1mg/kg体重である。1日投与量は、単回投与量としてまたは分割投与スケジュールに従って投与し得る。
【0113】
錠剤またはカプセルなどの単位用量形態は、通常1~250mgの活性成分を含有するであろう。例えば、式(I)の化合物は、100~250mgの間の用量で1日1回、1日2回または3回のいずれかでヒト患者に投与し得るであろう。例えば、式(I)の化合物は、100~250mgの間の用量で1日1回、1日2回または3回のいずれかでヒト患者に投与し得るであろう。
【0114】
式(I)の化合物およびそのその薬学的に許容される塩は、そのままで使用し得る。あるいは、それらは、医薬組成物の形態で投与し得る。従って、本発明はまた、本明細書中前記で定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と共同して含む医薬組成物を提供する。適切な医薬製剤の選択および調製についての従来の手順は、例えば“Pharmaceuticals-The Science of Dosage Form Designs”,M. E. Aulton,Churchill Livingstone,1988中に記載されている。
【0115】
投与の様式に依存して、医薬組成物は、好ましくは0.05から99%w(重量パーセント)、より好ましくは0.05から80%w、なおより好ましくは0.10から70%w、およびさらにより好ましくは0.10から50%wの活性成分を含み、全ての重量パーセントは全組成に基づく。
【0116】
本発明はさらに、本明細書中前記で定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を薬学的に許容される補助剤、希釈剤または担体と混合することを含む、本発明の医薬組成物の調製のための方法を提供する。
【0117】
本発明の化合物は、種々の剤形で投与し得る。すなわち、それらは、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、溶液、分散性粉末または顆粒として経口的に投与し得る。本発明の化合物はまた、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、経皮で、点滴技術によりまたは吸入若しくは噴霧によりであろうとなかろうと、非経口で投与し得る。化合物はまた、坐剤として投与し得る。
【0118】
本発明の医薬組成物の固体経口形態は、活性化合物と一緒に、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはジャガイモでんぷん;潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム若しくはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤;例えばでんぷん、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;脱凝集剤、例えばでんぷん、アルギン酸、アルギネートまたはでんぷんグリコール酸ナトリウム;泡立ち混合物;染料;甘味料;レシチン、ポリソルベート、ラウリルサルフェートなどの湿潤剤;並びに、一般に、医薬製剤において使用される非毒性の薬理学的に不活性な物質を含有し得る。そのような医薬製剤は、公知の方法で、例えば、混合、顆粒化、打錠、糖被覆、またはフィルム被覆プロセスによって製造し得る。
【0119】
経口投与のための液体分散液は、シロップ、乳濁液および懸濁液であり得る。シロップは、担体として、例えば、サッカロースまたはグリセリンおよび/若しくはマンニトールおよび/若しくはソルビトールと一緒にサッカロースを含有し得る。
【0120】
懸濁液および乳濁液は、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロール、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有し得る。筋肉内注入のための懸濁液または溶液は、活性化合物と一緒に、薬学的に許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール、および所望であれば、適切な量のリドカイン塩酸塩を含有し得る。懸濁液のためのさらなる適切な担体は、滅菌水、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリソルベート80、ポリビニルピロリドン(PVP)、エアロゾルAOT(すなわちl,2-ビス(2-エチルヘキソキシカルボニル)エタンスルホン酸ナトリウム)、pluronic F127および/またはcaptisol(すなわちスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン)を含む。
【0121】
本発明の化合物は、例えば:
(i)0.5%w/vヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)/0.1%w/vポリソルベート80;
(ii)0.67%w/vポリビニルピロリドン(PVP)/0.33%w/vエアロゾルAOT(l,2-ビス(2-エチルヘキソキシカルボニル)エタンスルホン酸ナトリウム);
(iii)1%w/v pluronic F 127;および
(iv)0.5%w/vポリソルベート80
から選択される担体中の水性懸濁液として処方し得る。
【0122】
担体は、当業者に公知の標準的な手順によって調製し得る。例えば、担体(i)から(iv)のそれぞれは、必要とされる量の賦形剤を適切な容器中に量り取り、最終体積の約80%の水を加え、溶液が形成されるまで磁気攪拌することによって、調製し得る。担体は、次いで水で所定の体積にされる。式Iの化合物の水性懸濁液は、必要とされる量の式Iの化合物を適切な容器中に量り取り、必要とされる体積の100%の担体を加え、磁気攪拌することによって、調製し得る。
【0123】
注射または注入のための溶液は、担体として、例えば、滅菌水を含有し得るか、または好ましくは、それらは、滅菌の水性の等張生理食塩水溶液の形態であり得る。
【0124】
本発明の化合物はまた、ウイルス感染症の治療のために使用される他の化合物と組み合わせて投与し得る。すなわち、本発明はさらに、ウイルス感染症、特にRSVによる感染症の治療または予防のための、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本発明の化合物を含む医薬組成物若しくは製剤を、他の治療剤(単数または複数)と同時にまたは連続的にまたは組合せ製剤として投与する組合せ療法に関する。
【0125】
本明細書において、用語「組合せ」が使用される場合、これは同時の、別個のまたは連続的な投与を指すと理解されるべきである。本発明のある一面においては、「組合せ」は、同時の投与を指す。本発明の別の一面においては、「組合せ」は、別個の投与を指す。本発明のさらなる一面においては、「組合せ」は、連続的な投与を指す。投与が連続でまたは別個である場合、第2の成分を投与することにおける遅延は、組合せの有益な効果を失うようなものではないべきである。
【0126】
組合せ療法における使用のための適切な治療剤は、
(i)RSV融合阻害剤
(ii)他のRSVヌクレオカプシド(N)-タンパク質阻害剤;
(iii)リンタンパク質(P)タンパク質およびラージ(L)タンパク質を阻害するものなどの、他のRSVタンパク質阻害剤;
(iv)ヌクレオシドまたはLタンパク質を阻害するポリメラーゼ阻害剤;
(v)F-タンパク質抗体などの、抗RSVモノクローナル抗体;
(vi)免疫調節性toll様受容体化合物;
(vii)抗インフルエンザおよび抗ライノウイルス化合物などの、他の呼吸器ウイルス抗ウイルス剤;および/または
(viii)抗炎症性化合物
を含む。
【0127】
RSVヌクレオカプシド(N)-タンパク質は、ウイルス転写および複製において極めて重要な役割を果たし、ゲノムRNAとウイルスでコードされたRNA-依存RNAポリメラーゼとの間の相互作用を媒介する。RSV P-およびL-タンパク質は、RSVのウイルスでコードされたRNA-依存RNAポリメラーゼの成分である。
【0128】
本発明のさらなる一面によれば、RSVの治療における使用のための、上記(i)から(vi)としてリストした治療剤の1つ以上と組み合わせた本明細書中前記で定義した式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0129】
以下に続く実施例は、本発明をさらに例示するのに役立つ。調製例は、実施例の化合物を調製するために使用される出発物質および中間体の調製に関する。実施例および調製例のいずれも、いかなる方法でも本発明を限定しない。
【実施例
【0130】
試薬は、商業的供給源から入手し、さらなる精製なく使用した。全ての温度は、℃である。TLCは、254nM(メジアンポアサイズ60Å)の蛍光インジケーターを有するアルミニウムで裏打ちされたシリカゲルプレート上で実施した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、別途記載されていない限り、KP-Sil若しくはUltraシリカゲルカラムを使用するBiotage Isolera Oneシステムを使用して実施した。NMRスペクトルは、周囲のプローブ温度(名目295K)で400MHzの分光計上で記録した。化学シフト(δ)は、ppmで示し、溶媒の残留ピークを内部標準として使用することによって(CDCl、δ=7.26ppm、δ=77.16ppm;DMSO-d、δ=2.50ppm、δ=39.52ppm)較正する。結合定数は、ヘルツ(Hz)で示す。LRMSは、APCIイオン源を備えたAdvion Plate Express expressionコンパクト質量分析計を使用して記録した。
【0131】
調製例(3S)-3-アミノ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オンおよび(3S)-3-アミノ-9-フルオロ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オンは、WO/2004/026843、WO/2005/090319、およびWO/2017/015449中に記載されている方法を使用して調製した。
【0132】
【表1】
【0133】
調製例
1A エチル5-アミノ-1-エチルピラゾール-4-カルボキシレート
【0134】
【化36】
【0135】
無水EtOH(120mL)中のエチル(エトキシメチレン)シアノアセテート(10.50g、62.06mmol)の懸濁液を調製し、エチルヒドラジンシュウ酸塩(9.32g、62.06mmol)を加え、その後、NEt(17.3mL、124.1mmol)を15分かけてシリンジにより加えた。反応物を、50℃で5時間加熱し、次いでrtで16時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、残渣をEtOAc(100mL)中に溶解した。粗生成物を、水(2×60mL)およびブライン(60mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、溶媒を減圧下で除去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(30%EtOAc:ヘプタン)により精製して、黄色の固体(5.16g、45%)を得た。LRMS:184.0[M+H];TLC(EtOAc) R=0.63.
【0136】
2A エチル5-クロロ-1-エチルピラゾール-4-カルボキシレート
【0137】
【化37】
【0138】
亜硝酸t-ブチル(5.19mL、43.7mmol)を、窒素下でMeCN(90mL)中の塩化銅(I)(3.24g、32.7mmol)の冷却(0℃)溶液に加えた。中間体1A(5.00g、27.3mmol)を30分かけて少しずつ加え、反応物を、0℃で1時間撹拌し、次いで65℃で40分間加熱した。反応物を、rtに冷却し、6M HCl水溶液(100mL)中に注ぎ、CHCl(100mL、次いで3×50mL)で抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(MgSO)、溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0~10%EtOAc:ヘプタン)により精製して、無色の油(2.87g、52%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.98(s,1H),4.23(q,J=7.1Hz,2H),4.19(q,J=7.3Hz,2H)1.33(t,J=7.2Hz,3H),1.27(t,J=7.1Hz,3H). LRMS:202.9[M+H]
【0139】
3A エチル5-ブロモ-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキシレート
4A エチル3-ブロモ-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキシレート
【0140】
【化38】
【0141】
オキサン-4-イル4-メチルベンゼンスルホネート(1.67g、6.53mmol)を、DMF(10mL)中のエチル3-ブロモ-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(1.30g、5.93mmol)およびCsCO(2.63g、8.01mmol)の溶液に加え、80℃で16時間加熱した。rtに冷却してすぐ、水(40mL)を加え、混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出した。有機物を、水およびブライン(各20mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュクロマトグラフィー(10~80%EtOAc:ヘプタン)による精製により、中間体3Aを白色の固体(445mg、25%)として得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.05(s,1H),4.66(tt,J=11.3,4.3Hz,1H),4.24(q,J=7.1Hz,2H),4.01-3.91(m,2H),3.50(td,J=12.0,2.1Hz,2H),2.08-1.94(m,2H 1.83(ddd,J=12.6,4.4,2.0Hz,2H),1.27(t,J=7.1Hz,3H). LRMS:303.0/305.0[M+H]. 中間体4A(2番目に溶出する位置異性体(regiosomer))を、白色の固体(1.02g、57%)として得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.43(s,1H),4.45(dd,J=10.5,5.0Hz,1H),4.22(q,J=7.1Hz,2H),4.00-3.88(m,2H),3.48-3.36(m,2H),2.04-1.83(m,4H),1.27(t,J=7.1Hz,3H). LRMS:303.4/305.4[M+H]
【0142】
5A エチル5-ブロモ-1-(オキセタン-3-イル)ピラゾール-4-カルボキシレート
6A エチル3-ブロモ-1-(オキセタン-3-イル)ピラゾール-4-カルボキシレート
【0143】
【化39】
【0144】
エチル3-ブロモ-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(1.70g、7.76mmol)、オキセタン-3-イル4-メチルベンゼンスルホネート(1.95g、8.50mmol)およびCsCO(3.43g、10.48mmol)を用い、90℃で22時間加熱して、中間体3Aについて記載したものと類似の手順によって調製した。フラッシュクロマトグラフィー(10~100%EtOAc:ヘプタン)による精製により、中間体5A(最初に溶出する位置異性体)を白色の固体(640mg、30%)として得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.15(s,1H),5.75(tt,J=7.4,6.2Hz,1H),4.98-4.85(m,4H),4.24(q,J=7.1Hz,2H),1.28(t,J=7.1Hz,3H). LRMS:275.5/277.5[M+H]. 中間体6A:2番目に溶出する位置異性体、白色の固体(1.06g、50%)。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.50(s,1H),5.60(tt,J=7.5,6.1Hz,1H),4.94-4.77(m,4H),4.23(q,J=7.1Hz,2H),1.27(t,J=7.1Hz,3H). LRMS:275.5/277.5[M+H]
【0145】
7A エチル5-(2-フルオロ-4-メチルフェノキシ)-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキシレート
【0146】
【化40】
【0147】
1-メチル-2-ピロリドン(2mL)中の中間体3A(150mg、0.49mmol)、2-フルオロ-4-メチルフェノール(68.7mg、0.54mmol)およびCsCO(324mg、0.99mmol)の溶液を、密封したバイアル中で135℃で21時間加熱した。反応物を、rtに冷却し、水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×15mL)で抽出した。合わせた有機物を、水(2×15mL)およびブライン(15mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、溶媒を減圧下で除去した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0~30%EtOAc:ヘプタン)により精製して、白色の固体(100mg、58%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.94(s,1H),7.28-7.15(m,1H),6.98-6.86(m,1H),6.74(t,J=8.6Hz,1H),4.54-4.40(m,1H),4.04-3.86(m,4H),3.51-3.39(m,2H),2.27(s,3H),2.10-1.95(m,2H),1.84-1.72(m,2H),0.96(t,J=7.1Hz,3H). LRMS:349.1[M+H]
【0148】
以下の中間体化合物は、中間体7Aについて記載したのと同じ一般的な手順によって調製した。
【0149】
【表2】
【0150】
13A エチル5-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェノキシ)-1-(オキセタン-3-イル)ピラゾール-4-カルボキシレート
【0151】
【化41】
【0152】
MeCN(8mL)中の塩化銅(II)(25.0mg、0.19mmol)、亜硝酸t-ブチル(0.03mL、0.22mmol)、中間体11A(63mg、0.15mmol)を使用し、0℃で20分間、次いでrtで4時間撹拌して、中間体2Aと類似の手順によって調製した。黄色の油(20mg、38%)。LRMS:359.1[M+H];TLC(1:1 EtOAc:ヘプタン) R=0.65.
【0153】
14A エチル5-(4-クロロ-2,6-ジフルオロフェノキシ)-1-(オキサン-4-イル)ピラゾール-4-カルボキシレート
【0154】
【化42】
【0155】
MeCN(16mL)中の塩化銅(II)(76.4mg、0.57mmol)、亜硝酸t-ブチル(0.08mL、0.68mmol)および中間体12A(167mg、0.45mmol)を使用し、0℃で30分間およびrtで3時間撹拌して、中間体2Aと類似の手順によって調製した。白色の固体(27mg、15%)。LRMS:387.3[M+H];TLC(1:1 EtOAc:ヘプタン) R=0.83.
【0156】
15A 5-(2,6-ジフルオロ-4-メチルフェノキシ)-1-エチルピラゾール-4-カルボン酸
【0157】
【化43】
【0158】
THF:MeOH(1:1;6mL)中の中間体8A(70mg、0.230mmol)およびLiOH(1M水溶液;1.8mL、1.8mmol)の溶液を、55℃で3時間加熱した。揮発性物質を減圧下で除去し、残渣をHCl(1M水溶液)でpH約2に酸性化し、次いでEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、水およびブライン(各10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、溶媒を減圧下で除去して、白色の固体(58mg、91%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.73(s,1H),7.02(d,J=9.8Hz,2H),4.12(q,J=7.3Hz,2H),2.27(s,3H),1.34(t,J=7.2Hz,3H). LRMS:283.0[M+H]
【0159】
以下の中間体化合物は、中間体15Aと類似の方法で調製した。
【0160】
【表3】
【0161】
実施例
1. 5-(2,6-ジフルオロ-4-メチルフェノキシ)-1-エチル-N-[(3S)-2-オキソ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-3-イル]ピラゾール-4-カルボキサミド
【0162】
【化44】
【0163】
NEt(0.04mL、0.32mmol)およびHATU(66.6mg、0.18mmol)を、DMF(1mL)中の中間体15A(49.4mg、0.18mmol)および(3S)-3-アミノ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オン(40.0mg、0.16mmol)の溶液に加え、反応物を、rtで2時間45分間撹拌した。水(20mL)を加え、沈殿物の形成をもたらし、これを、濾過により収集し、水(5mL)で洗浄した。沈殿物を、EtOAc(20mL)中に溶解し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(50~100%EtOAc:ヘプタン)により精製して、白色の固体(66mg、80%)を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ10.85(s,1H),9.02(d,J=8.2Hz,1H),8.34(s,1H),7.65-7.59(m,1H),7.55-7.37(m,5H),7.31-7.16(m,3H),6.93(d,J=9.8Hz,2H),5.23(d,J=8.2Hz,1H),4.12(q,J=7.2Hz,2H),2.21(s,3H),1.35(t,J=7.2Hz,3H). LRMS:516.5[M+H]
【0164】
本発明の以下の化合物は、実施例1の化合物について記載した手順により、(3S)-3-アミノ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オンまたは(3S)-3-アミノ-9-フルオロ-5-フェニル-1,3-ジヒドロ-1,4-ベンゾジアゼピン-2-オンを用いて調製した。
【0165】
【表4】
【0166】
実施例7:インビトロにおける有効性
化合物を、以下のプロトコルに従ってRSVプラーク減少アッセイに供した。
【0167】
プラーク減少アッセイ。
Hep-G2細胞(ECACC,85011430)を、フラスコ中で継代し、24-ウェルプレート中、抗生物質を含有し10% FBSを補充したDMEM中に播種した。接種および引き続くインキュベーションの間、細胞を、2%FBSを含有するDMEM中で培養した。1ウェル当たり100プラーク形成単位のRSV(RSV A2 ECACC,0709161v)を、化合物の8つの段階希釈物と混合した。引き続き、100μLのウイルス/化合物混合物を、コンフルエントのHep-G2細胞単層に加えた。細胞およびウイルス/化合物混合物を、接種材料の除去および化合物希釈液を含有する1mLのオーバーレイ(2%FBSおよび0.8%CMCを含有するDMEM)の追加前に、加湿した5% COインキュベーター中で、37℃で2時間インキュベートした。細胞およびを、加湿した5% COインキュベーター中、37℃で2日間インキュベートした。
【0168】
細胞を、75/25% v/v EtOH/MeOHを加える前に、PBSで3分間洗浄した。固定剤を除去し、プレートをPBSで洗浄した。予備滴定した量の一次抗体を200μL PBS/2%粉ミルク中に加え、プレートを37℃で90分間インキュベートした。プレートを、200μL PBS/2%粉ミルク中のウサギ抗-ヤギ西洋わさびペルオキシダーゼの追加前に、PBS/0.05% Tween20で3回洗浄し、37℃で1時間インキュベートした。PBS/0.05% Tween20での3回の洗浄工程に続き、200μLのすぐに使用できるTrueBlueを加え、プレートを、水での洗浄前にrtで10~15分間インキュベートした。水の除去後、プレートを、暗所で空気乾燥した。
【0169】
免疫染色したプラーク(virospots)を計数するためのBioSpot分析ソフトウェアを備えたImmunospot S6 Macro分析器を使用して、プレートを、スキャンし、分析した。プラーク計数を使用して、RSVについてのウイルス対照ウェル中のプラーク計数の平均に対する%感染を計算した。EC50値を、Dotmaticsにおける可変勾配を有する4-パラメータ非線形回帰に適合させた阻害曲線の内挿によって、それぞれシグナルにおける50%低下として計算した。プラークEC50および細胞毒性CC50値は、少なくとも2回の実験の平均であり、数字は、単位全体に丸められる。
【0170】
結果
【0171】
【表5】
【0172】
実施例7:インビトロ薬物動態
化合物を、以下のアッセイに供し、肝ミクロソーム安定性を調査した。
【0173】
ミクロソームインキュベーション:実験手順
プールした肝ミクロソームを、信頼できる商業的供給業者から購入し、使用前に-80℃で保存した。ミクロソーム(最終タンパク質濃度0.5mg/mL)、0.1Mリン酸緩衝液pH7.4および試験化合物(最終基質濃度1μM;最終DMSO濃度0.25%)を、NADPH(最終濃度1mM)の添加の前に37℃でプレインキュベートし、反応を開始させた。最終インキュベーション体積は、50μLであった。対照インキュベーションを、各試験した化合物について含み、ここで、0.1Mリン酸緩衝液pH7.4を、NADPHの代わりに加えた(NADPHを引く)。2つの対照化合物を、各種で含んだ。全てのインキュベーションを、各試験化合物について単数で実施した。各化合物を、0、5、15、30および45分間インキュベートした。対照(NADPHを引く)は、45分間のみインキュベートした。反応は、適切な時間点でインキュベートを1:3の比でアセトニトリル中に移すことによって、停止させた。停止プレートを、3,000rpmで、4℃で20分間遠心分離して、タンパク質を沈殿させた。タンパク質の沈殿に続き、サンプルの上清を4つの化合物までのカセット中で合わせ、内部標準を加え、サンプルを、LC-MS/MSにより分析した。時間に対するlnピーク面積比(化合物ピーク面積/内部標準ピーク面積)のプロットから、線の勾配を決定した。引き続き、半減期(t1/2)および固有クリアランス(CLint)を計算した。
【0174】
結果
【0175】
【表6】
【0176】
実施例8:水性製剤
実施例1の化合物を、以下の手順に従ってpH4で30%w/v captisol(すなわちスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン)中の溶液として処方する。
【0177】
30%w/v captisol(すなわちスルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン)の担体を、必要とされる量のcaptisolを適切な容器中に量り取り、最終体積の水の約80%を加え、溶液が形成されるまで磁気攪拌することによって調製する。担体を、次いで水で所定の体積にする。
【0178】
実施例1の化合物の水溶液を、175mgの該化合物を適切な容器中に量り取り、必要とされる体積の担体の約80%を加えることによって調製する。塩酸の水溶液を使用して、pHをpH2に調節し、得られる混合物を、溶液が形成されるまで磁気攪拌する。処方物を、次いで担体で所定の体積にし、水酸化ナトリウムの水溶液を使用してpHをpH4に調節する。
【0179】
実施例9:錠剤組成物
それぞれ0.15gの重量であり25mgの本発明の化合物を含有する錠剤を、以下のとおり製造する。
【0180】
【表7】
【0181】
本発明の化合物、ラクトースおよびコーンスターチの半分を、混合する。混合物を、次いで0.5mmメッシュサイズの篩に通す。コーンスターチ(10g)を、暖かい水(90mL)中に懸濁させる。得られるペーストを使用して、粉末を顆粒化する。顆粒を、乾燥し、1.4mmメッシュサイズの篩上で小さなフラグメントに粉砕する。残りの量のスターチ、タルクおよびマグネシウムを加え、注意深く混合し、錠剤に加工する。
【0182】
実施例10:注射製剤
【0183】
【表8】
【0184】
本発明の化合物を、水(35℃~40℃)の大部分中に溶解し、必要に応じて塩酸または水酸化ナトリウムを用いてpHを4.0と7.0との間に調節する。バッチを、次いで水で所定の体積にし、滅菌細孔フィルターを通して滅菌10mL琥珀色ガラスバイアル(タイプ1)中にろ過し、滅菌クロージャーおよびオーバーシールを用いて密封する。
【0185】
実施例11:筋肉内注射
【0186】
【表9】
【0187】
本発明の化合物を、グリコフロール中に溶解する。ベンジルアルコールを、次いで加え、溶解し、水を3mLまで加える。混合物を、次いで滅菌細孔フィルターを通してろ過し、滅菌3mLガラスバイアル(タイプ1)中に密封する。
【0188】
実施例12:シロップ製剤
【0189】
【表10】
【0190】
本発明の化合物を、グリセロールおよび精製水の大部分の混合物中に溶解する。安息香酸ナトリウムの水溶液を、次いで溶液に加え、その後、ソルビトール(sorbital)溶液および最後に香味料を加える。精製水で所定の体積にし、よく混合する。