(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】透過型電子顕微鏡カソードルミネッセンスのための装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20250416BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/26
(21)【出願番号】P 2022561202
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 US2021025860
(87)【国際公開番号】W WO2021207115
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-03-25
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511314887
【氏名又は名称】ガタン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GATAN,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハント、ジョン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】バーティルソン、マイケル
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503198(JP,A)
【文献】特開2000-205954(JP,A)
【文献】特開2002-162350(JP,A)
【文献】特表2013-534692(JP,A)
【文献】特開2005-337789(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0044261(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0141803(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103999185(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01J 3/12
G01J 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡中の透過型電子顕微鏡(TEM)試料によって発生するカソードルミネッセンス(CL)光を集光し、分析するための装置であって、
入口面を有する分光写真器であって、前記分光写真器は、光の強度の2次元画像を有する光スペクトルを作成するように構成され、前記画像の一方の軸が光の波長に対応し、他方の軸が前記分光写真器の前記入口面に入る前記光の空間座標に対応する分光写真器と、
第1のTEM試料表面から発せられた第1のCL光を伝送するように構成された第1の受信端、及び前記第1のCL光を前記分光写真器に結合するように構成された第1の送信端を有する第1の光ファイバー・ケーブルと、
透過したTEM電子ビームが外に出る第2のTEM試料表面から発せられた第2のCL光を伝送するように構成された第2の受信端、及び前記第2のCL光を前記分光写真器に結合するように構成された第2の送信端を有する第2の光ファイバー・ケーブルと
を備え、前記第1及び第2の送信端は、前記分光写真器が、前記第1の光ファイバー・ケーブルについては第1の光スペクトルを生成し、前記第2の光ファイバー・ケーブルについては別の
第2の光スペクトルを生成するように配置される、装置。
【請求項2】
前記分光写真器と前記第1及び第2の光ファイバー・ケーブルとの間の開口数の不一致を低減するために継手光学系が使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の光スペクトルと前記第2の光スペクトルとの間の差分を測定するために、前記第1の光スペクトルと前記第2の光スペクトルとを数学的に組み合わせる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
ディスプレイをさらに含み、前記測定された前記第1の光スペクトルと前記第2の光スペクトルとの間の差分をリアルタイムで前記ディスプレイに出力する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記光スペクトルの間の前記差分がチェレンコフ放射に関係する、請求項3記載の装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の光スペクトルが、単一の撮像デバイス上に投影され、単一の画像内に個別の第1及び第2のスペクトルを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
電子顕微鏡中の透過型電子顕微鏡(TEM)試料によって発生するカソードルミネッセンス(CL)光を集光し、分析するための装置であって、
電子ビームの入射に直接露出する試料表面上の、前記試料によって発せられた
第1のCL光を集光するように配置された第1の集光ミラーと、
前記電子ビームが前記試料から外に出る試料表面上の、前記試料によって発せられた
第2のCL光を集光するように配置された第2の集光ミラーと、
入口面を有する分光写真器であって、光の強度の2次元画像を有する光スペクトルを生成するように構成され、前記画像の一方の軸が光の波長に対応し、他方の軸が前記分光写真器の前記入口面に入る前記光の空間座標に対応する分光写真器と、
前記試料から前記第1の集光ミラーによって反射された前記第1のCL光を伝送するように構成された第1の受信端、及び前記第1のCL光を前記分光写真器に結合するように構成された第1の送信端を有する第1の光ファイバー・ケーブルと、
前記試料から前記第2の集光ミラーによって反射された前記第2のCL光を伝送するように構成された第2の受信端、及び前記第2のCL光を前記分光写真器に結合するように構成された第2の送信端を有する第2の光ファイバー・ケーブルと
を備え、前記分光写真器が、前記第1の光ファイバー・ケーブルについては第1の光スペクトルを生成し、前記第2の光ファイバー・ケーブルについては別の
第2の光スペクトルを生成するように、前記第1及び第2の送信端が配置される、装置。
【請求項8】
前記試料から発せられた第3のCL光を集光するように配置された第3の集光ミラーと、
前記試料から前記第2の集光ミラーによって反射された前記第3のCL光を伝送するように構成された第3の受信端、及び前記第3のCL光を前記分光写真器に結合するように構成された第3の送信端を有する第3の光ファイバー・ケーブルと
をさらに備え、前記第1の光ファイバー及び第2の光ファイバーの送信端は、前記分光写真器が、前記第1の光ファイバー・ケーブルについては第1の光スペクトルを生成し、前記第2の光ファイバー・ケーブルについては別の光スペクトルを生成し、前記第3の光ファイバー・ケーブルについては別の光スペクトルを生成するように配置される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記分光写真器と前記第1及び第2の光ファイバー・ケーブルとの間の開口数の不一致を低減するために継手光学系が使用される、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の光スペクトルと前記第2の光スペクトルとの間の差分を測定するために、前記第1の光スペクトルと前記第2の光スペクトルとを数学的に組み合わせる、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
ディスプレイをさらに含み、前記測定された前記第1の光スペクトルと前記第2の光スペクトルとの間の差分をリアルタイムで前記ディスプレイに出力する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記光スペクトルの間の前記差分がチェレンコフ放射に関係する、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記第1及び第2の光スペクトルが、単一の撮像デバイス上に投影され、単一の画像内に個別の第1及び第2のスペクトルを形成する、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子ビームやイオン・ビームなどの高エネルギー荷電粒子が試料に当たると、試料の材質によっては光子が放出されることがある。この現象はカソードルミネッセンス(CL:CathodoLuminescence)として知られる。紫外線(UV)から可視光線を通って赤外線(IR)までの波長域におけるこれらの光子の収集及び検出は、調査中の試料に関する豊富な情報を提供することができる。CLは通常、電子顕微鏡内の試料に対して、CLが放出する光子を、例えば、これらのいずれか又はすべてが電子顕微鏡のビーム・カラム外に配置され得る光センサ、イメージ・アレイ、又は分光機器に誘導することによって検査される。電子顕微鏡のビーム・カラム内部は低圧に保たれており、それゆえ電子は、電子ビーム・カラム中のガスによって大きく散乱されることなく、試料まで進むことができる。集光された光は、低圧環境から光学窓を通ってCL光を分析する器具に送られ得る。
【0002】
CLで放出された光子を収集する一般的な方法は、電子ビーム(e-beam)と同軸上、試料の上方(走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で検査するバルク試料で典型的である)、下方、又は上方と下方の両方(透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で典型的である)に配置された集光ミラーによるものである。集光ミラーには、電子ビームがミラーに遮られることなく通過できるようにホールが設けられているのが一般的である。
【0003】
CL信号のスペクトル情報を詳細に分析するには、集光ミラーからのCL光を、一般的には光の波長の関数としての光の強度の1次元プロットを作成するために使用される光分光器に結合する必要がある。一部の光分光器は、本明細書では「分光写真器」と呼ぶが、「イメージング分光器(imaging spectrometer)」又は「イメージング分光写真器(imaging spectrograph)」などの他の用語で呼ばれることもあり、分光写真器の入口面に入る光の2次元画像を生成する追加機能を有し、光の波長が1つの次元に沿ってマッピングされ、光が分光写真器に入った入口面に沿った位置がもう一方の次元に対応する。
【0004】
TEMでは、電子エネルギー(30~300keV)が走査型電子顕微鏡(0.5~30keV)よりも格段に高くなる。TEMの試料は、電子ビームが試料をほとんど透過するくらいに十分薄く、CL光が試料の上部(電子の入射するすなわち上流の表面)と下部(下流の表面)の両方から出現することができる場合に検査される。この光を試料の上方及び下方に配置された集光ミラーから集めるTEM CL試料ホルダーが開発された。TEMの試料環境は試料及び集光ミラーに対する空間要件が厳しいので、CL光は、集光ミラーから個別の光ファイバーを介してTEM環境の外部に個別に伝達され得る。光分光器は、光ファイバーからの混合した光を分析するために使用され得る。
【0005】
TEMで使用される高エネルギー電子は、電子が試料媒質中で光の位相速度よりも速く試料中を進むため、チェレンコフ放射とも呼ばれる制動放射を発生しやすい。このチェレンコフ放射は下流方向に飛散し、したがって試料下方の集光ミラーでは十分に集光されるが、試料上方の集光ミラーではほとんど集光されない。下部ミラーからの信号から上部ミラーからの信号の倍数を差し引くことで、チェレンコフ信号の1次近似を行うことができる。チェレンコフ放射の分析は、試料の屈折率に関する情報を与え、電子エネルギー損失分光法(EELS:electron energy-loss spectrometry)によって同時に行われる誘電応答の特性評価の改善に利用され得る。
【0006】
いくつかの試料、例えばフォトニック・デバイスや層状材料では、チェレンコフ放射とは関係ない方向効果によって、下流方向と上流方向とで大きく異なる光分布が発生することがある。これらの差は、上部ミラーからの信号の倍数を下部ミラーからの信号から差し引くことで概算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】励起源に起因する試料におけるカソードルミネッセンス光(CL)の発光を示す図である。
【
図2】電子顕微鏡におけるバルク標本からのカソードルミネッセンス光を集光する装置の構成図である。
【
図3】TEM試料の上面及び下面からのCLの発光と、上流(上部)及び下流(下部)の集光ミラーでの反射と、上部及び下部の光ファイバーへの入射を示す図面である。
【
図4】上流及び下流のCL集光ミラーからの個別の光信号を同時に撮像するための本発明の一態様の実施例を示す図面である。
【
図5】本発明の一態様の実施例に基づく、イメージング分光写真器の入口スリットの平面における、2つの分離した光ファイバーからの光の分布を示すシミュレーション画像である。
【
図6A】本発明の一態様の実施例に基づく、分光写真器のカメラの平面における分離したスペクトルを示すシミュレーション画像を示す図である。
【
図6B】例示的な実装による、強度対波長スペクトル及び差分スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
当業者であれば、本発明の教示を採用すれば開発することができる、他の詳細な設計及び方法を思い出すであろう。ここで提供される実例は例示であり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。以下の詳細な説明は添付の図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は、同一又は類似の要素を示し得る。
【0009】
図1に示すように、電子ビーム10、イオン・ビーム、又は光子ビームなどの励起ビーム源が試料にエネルギーを伝達すると、試料30からCL光が発せられ得る。放出されたCL光光子34は、試料10の分析領域の元素特性、化学特性、又は誘電体特性に特徴的な波長と、励起源ビームに対する角度θ(XY平面)、φ(Z軸を基準とする)とを有し得る。これらの特性は、波長I(λ)、角度I(θ,φ)、又は波長-角度I(λ,θ,φ)の放出光子強度(I)分布を解析することにより、かなりの情報を得ることができる。これらの分布の光学的偏光を調べることで、さらなる情報を得ることができる。
【0010】
図2は、電子顕微鏡(全体は図示せず)のポール・ピース12を出て、バルク試料30に誘導される電子ビーム(e-beam)10を示す。電子ビーム10が試料30に当たる点32において、カソードルミネッセンス(CL)光34が発生し得る。集光ミラー20は、CL光34を、電子顕微鏡の外部に配置され得る検出器(図示せず)に反射するために設けられる。集光ミラー20は、通常、電子ビーム10を通過させるためのホール又は開口部22を有するが、これは、ミラーがさもなければ電子ビームを遮る材料(例えば、ダイヤモンド研磨されたアルミニウム)でできていることがあるからである。集光ミラー20によって集光されたCL光34は、試料30に正確に合焦されると、ミラー20の出射光軸(ラベル付けされていない)に沿ってコリメートされた光パターン35を生成する。一般的なCL器具では、集光ミラー20で集光された光は、1つ又は複数のCL分析器具へ送られる。
【0011】
本発明の実施例に合致して、
図3は、上部集光ミラーホール344に入り、電子透明試料331を通過するTEM電子ビーム310を示している。電子ビーム310は、入射電子ビーム310が入射したところから試料331の表面を通過して進む上流側CL光332、又は入射電子ビーム310が入射したところとは反対側の試料331の表面を通過して進む下流側CL光333を生成し得る。試料331を通過した後、電子ビーム310の多くの部分は下部集光ミラーホール345を通過して存続し、TEM撮像、TEM回折、又は電子エネルギー損失分光法(EELS)などの技術を用いて透過型電子顕微鏡(図示せず)中でさらに分析され得る。
【0012】
試料の上方(上流)と下方(下流)の両方に設置した集光ミラーからCL光を集めるTEM CLシステムが開発された。集光ミラー342及び343は、TEM試料ホルダーの一部であっても、試料ホルダーと別体であってもよい。TEMの試料環境は、試料331及び集光ミラー342と343に対する空間要件が厳しい。集光ミラー342及び343からのCL光は、個別の光ファイバーを介してTEM環境の外部に引き出すことができる。実際には、集光ミラー342及び343は、試料331から発せられる光のすべてを集光するわけではない。集光ミラー342は、上流のCL光332の一部352のみを上流光ファイバー362に送る。集光ミラー343は、下流のCL光333の一部353のみを下流光ファイバー363に送る。
【0013】
本発明の一態様は、TEM CLシステムにおいて、上流集光ミラー342から集光された光352及び下流集光ミラー343から集光された光353の同時且つ個別のスペクトル測定を提供する。
図4は、2つの個別の光ファイバー162及び163に含まれる光から2つの個別のスペクトル192及び193を生成する分光写真器を示す、本発明の態様の実施例の概略図である。上流光ファイバー362から分光写真器入力光ファイバー162への信号は、容易に接続し再接続することができる1つ又は複数の光ファイバー・ケーブル(図示せず)を介して結合させることができる。同様に、下流光ファイバー363から分光写真器入力光ファイバー163への信号は、容易に接続及び再接続することができる1つ又は複数の光ファイバー・ケーブル(図示せず)を介して結合させることができる。
【0014】
光ファイバー162及び163は、分光写真器へ直接つなぎ込むには最適とは言い難い開口数及び芯径を有することがあり、それゆえ、光ファイバー162、163の開口数と分光写真器の開口数との間の不一致を修正するために継手光学系170を使用することができる。代替的実施例では、継手光学系は使用されず、代わりに光ファイバー162及び163が、分光写真器の入口面176の近くに直接配置され得る。
【0015】
継手光学系170を通り、分光写真器の入口面176を通って投影される光信号152を伝送する光ファイバー162が示されている。入口スリット175で遮られない光信号152の部分は、回折格子180上の領域182を照らす。回折格子180は、2次元カメラ190の領域192に集中させられる、領域182を照らす光の波長の分散を生じる。
【0016】
同様に、継手光学系170を通り、分光写真器の入口面176を通って投影される光信号153を伝送する光ファイバー163が示されている。継手光学系170は、1つ又は複数のレンズ又はミラーを含むことができ、光ファイバー163と分光写真器との間の開口数の不一致を補償し得る。入口スリット175で遮られない光信号153の部分は、回折格子180上の領域183を照らす。回折格子180は、2次元カメラ190の領域193に集中させられる光の波長の分散を生じる。
【0017】
本発明の一態様の実施例では、回折格子180は分光写真器の無限空間中にあり、領域182及び領域183は、カメラ190における信号混合を起こすことなく部分的又は完全に重なり得る。
【0018】
図5は、光信号152(
図4)からの、光信号152が入口スリット175の平面を通過するときの、本発明の一態様の実施例に基づく光線束172のシミュレーション画像である。同様に、
図5は、光信号153(
図4)が入口スリット175の平面を通過するときの、光信号153からの光線束173のシミュレーション画像を示している。例示的な実装では、光線束172と光線束173は、カメラ190における信号混合を防ぐようによく分離されている。
【0019】
図6aは、本発明の一態様の実施例に基づく、カメラ190(
図4)からのシミュレーション画像191を示す図である。画像領域192は、回折格子180で分散され、カメラ190上に集中させられた後の光信号152(
図4)のシミュレーション画像を示す。同様に、画像領域193は、回折格子180で分散され、カメラ190上に集中させられた後の光信号153(
図4)のシミュレーション画像を示す。画像領域192と193が良好に分離されていることが示されている。シミュレーション画像191は、カメラ190のイメージセンサなど2次元画素化されたデバイスに投影される画像の典型的なものであり、画素の複数の水平方向の行に編成され得る。スペクトル192、193の各々は、画素デバイスの複数の水平方向の行を有する。
【0020】
カメラ190は、XY平面に配列された画素を備える、電荷結合素子撮像センサ又はその他の固体の2次元撮像法であり得る。スペクトル192,193はまた、2つ以上の撮像デバイス、例えばCCDセンサ及び感光板に同時に投影し得る。
【0021】
本発明の一態様の実施例に基づき、
図6bは、画像領域192中の各画像行の画素の強度を同時に合計することによって計算され得る1次元の強度対波長スペクトル292を示す。
図6bは、画像領域193中の各画像行の画素の強度を同時に合計することによって計算され得る1次元の強度対波長スペクトル293も示す。例示的な実装では、システム・コントローラ(図示せず)は、
図6a及び
図6bに示されるディスプレイなどのディスプレイへの出力を制御し得る。例えば、システム・コントローラは、強度対波長スペクトル292及び293を生成する、後述の差分スペクトル294を計算するなど、様々なタスクを実行するための命令を解釈し、実行し得るプロセッサ、マイクロプロセッサ又は処理論理回路を含み得る。システム・コントローラは、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装され得、本明細書に記載された動作を制御するために他のタスクを実行することがある。いくつかの実装では、システム・コントローラは、電子顕微鏡中に実装され得る。他の実装では、システム・コントローラが本明細書に記載の光学系中に実装されるなど、電子顕微鏡に対して外部に実装され得る。
【0022】
本発明の一態様の実施例に基づき、
図6bを参照すると、スペクトル292は上流ミラー342(
図3)から集光された光から作成され得、スペクトル293は下流ミラー343から集光された光から作成され得る。上流CLスペクトル292と下流CLスペクトル293とを個別に同時に記録する利点は、それらの差分スペクトル294が、例えばシステム・コントローラ/処理デバイスによって計算され、リアルタイムで表示され得ることである。本発明の一態様の実施例では、差分スペクトル294は、下流CLスペクトル293から、上流CLスペクトル292を乗じた定数を引いたものに等しい。1次近似として、定数は1に設定することができるが、収集効率の違いや、試料や光ファイバーによる伝送効率の違いを考慮して調整し得る。チェレンコフ放射が下流CLスペクトル293と上流CLスペクトル292との主な差分であると予見される場合には、定数は、赤/IR領域295における下流CLスペクトル293の積分を、赤/IR領域295における上流CLスペクトル292の積分で除した値に設定され得る。
【0023】
本発明の一態様の別の実施例では、試料の上方に複数のCL集光ミラーが存在し、試料の下方に複数のCL集光ミラーが存在し得る。それに応じて、上流のCL光を分光器に結合する複数の光ファイバー及び/又は下流のCL光を分光器に結合する複数の光ファイバーが存在することになる。これにより、上流のCL光について撮像デバイスに投影されるスペクトルは複数になり、及び/又は下流のCL光について撮像デバイスに投影されるスペクトルは複数になる。
【0024】
以上、本発明を詳細に説明したが、本発明は本発明の思想から逸脱することなく改変され得ることが関連技術分野の当業者には明らかであることは、明確に理解される。本発明に対しての種々の形態、デザイン、又は配置の変更は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく行われ得る。したがって、上述した説明は、限定的なものではなく例示的なものとみなされるべきであり、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲において定義されるものである。
【0025】
本出願明細書で使用される、いかなる要素、行為又は指示も、そのように明示的に記述されていない限り、本発明にとって重要又は必須であると解釈されるべきでない。また、本明細書で使用されるとき、冠詞「a」は、1つ又は複数の項目を含むことが意図されている。また、「~に基づく(based on)」という表現は、特に断りのない限り、「少なくとも部分的に、~に基づく」ということを意味することが意図されている。