(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】粒子状吸水剤、該吸水剤を含む吸収体及び該吸収体を用いた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20250416BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20250416BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20250416BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
B01J20/26 D
C08J3/12 A CEY
B01J20/28 Z
B01J20/30
(21)【出願番号】P 2023502543
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007925
(87)【国際公開番号】W WO2022181771
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021030521
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021030524
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】足立 芳史
(72)【発明者】
【氏名】従野 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 舞
(72)【発明者】
【氏名】若林 亮太
(72)【発明者】
【氏名】野田 敦裕
(72)【発明者】
【氏名】上田 洵也
(72)【発明者】
【氏名】金子 淳平
(72)【発明者】
【氏名】植田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】玉置 まり子
(72)【発明者】
【氏名】野田 ゆいか
(72)【発明者】
【氏名】北野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】池内 博之
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-083693(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002387(WO,A1)
【文献】特表2019-519663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
B01J 20/26
B01J 20/28
B01J 20/30
C08L 101/14
A61L 15/24
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、
前記粒子状吸水剤は、外部と通じる空間である連通孔と、外部と通じない閉鎖空間である独立気泡と、を含み、
前記連通孔の総体積率は10体積%以上であり、
前記独立気泡の総体積率は0.5体積%以下であることを特徴とする、粒子状吸水剤。
【請求項2】
CRCが25g/g以上である、請求項1に記載の粒子状吸水剤。
【請求項3】
AAP0.3psi(2.06kPa)が20g/g以上である、請求項1又は2に記載の粒子状吸水剤。
【請求項4】
含水率が5質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項5】
23℃における粘度5mPa・sの溶液の吸収時間が140秒以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項6】
250μm~425μmの粒子の割合が30質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤を用いた吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤、該吸水剤を含む吸収体及び該吸収体を用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent Polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤である。吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤は、紙オムツ、生理用ナプキンや成人向け失禁用製品等の衛生物品、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等、様々な用途の吸収性物品に利用されている。このような吸水性樹脂は、原料として多くの単量体や親水性高分子が提案されているが、性能及びコストの観点から、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いたポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、最も多く用いられている。
【0003】
粒子状吸水剤の主用途である紙オムツの高性能化に伴い、粒子状吸水剤に対して多くの機能(物性)が要求されている。粒子状吸水剤の物性の具体的な例としては、吸水速度、吸水倍率、加圧下吸水倍率、通液性、戻り量(逆戻り)、ゲル強度、水可溶分、粒度分布、耐尿性、抗菌性、耐衝撃性(耐ダメージ性)、粉体流動性、消臭性、耐着色性(白色度)、低粉塵等が挙げられる。
【0004】
紙オムツを例に挙げると、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)としては、尿漏れ、肌かぶれに対する改善が求められている。例えば、紙オムツにおいて尿が紙オムツの中に取り込まれにくい場合、あるいは、取り込まれても粒子状吸水剤による吸収が遅い場合に尿漏れや肌かぶれが起こると推定されている。このことから、粒子状吸水剤の吸収性を改善しつつ粒子状吸水剤の吸水速度を向上させることが、紙オムツの戻り量、吸収時間を低減し、引いては尿漏れ、肌かぶれの低減につながると考えられている。
【0005】
例えば、粒子状吸水剤の吸収性及び吸水速度を向上させるために、吸水性樹脂の粒子形状を改善する技術が提案されている。特許文献1には、発泡重合により得られる、外部と通じる空間である開放気泡と外部と通じない閉鎖空間である独立気泡とを有する吸水性樹脂が通液性及び吸水速度に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術により得られた吸収性樹脂を用いて作製した吸収体では戻り量低減効果を発揮するが、高濃度の液(例えば、経血)の吸収、あるいはパルプを使用しない吸収体では液の取り込み速度や戻り量の点で必ずしも十分な効果ではないという問題があった。
【0008】
よって、本発明は、液の取り込み速度に優れ、かつ戻り量が低減された吸収体を作製することができる粒子状吸水剤を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の他の目的は、従来よりも液の吸収速度に優れ、かつ戻り量が低減された吸収体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、前記粒子状吸水剤は、外部と通じる空間である連通孔と、外部と通じない閉鎖空間である独立気泡と、を含み、前記連通孔の総体積率は10体積%以上であり、前記独立気泡の総体積率は0.5体積%以下であることによって、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液の取り込み速度に優れ、かつ戻り量が低減された吸収体を作製することができる粒子状吸水剤が提供される。すなわち、本発明によれば、吸収体において優れた液の取り込み速度及び戻り量を付与する粒子状吸水剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤に形成されている空洞(連通孔及び独立気泡)を説明する概略の正面図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る製造方法に用いられるゲル粉砕装置(ミートチョッパー/スクリュー押出機)の一例が示された一部切り欠き側面図である。
【
図2B】
図2Aのゲル粉砕装置における押出口に取り付けられる支持具を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る製造方法に用いられるゲル粉砕装置(複軸型混練機)の一例が示された一部切り欠き側面図である。
【
図4】
図3のゲル粉砕装置の拡大図(本体中央部を上から見た図)である。
【
図5】押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置の分類を模式的に示す図である。
【
図6】ゲル整粒装置における押出し部分を模式的に示す図である。
【
図7】一実施形態に係るゲル整粒装置(球面状(ドーム状)のダイを有するスクリュー型前押出し式装置)の構成を模式的に示す模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る製造方法に用いられる乾燥装置(加熱管付き回転型加熱装置)の一例が示された一部切り欠き側面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る吸収体において、短手方向に沿って切断した、吸収体の断面を表す模式図である。
【
図10】
図9のA-A線に沿った断面図を表す模式図である
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る吸収体において、間隙の他の実施形態を模式図である。
【
図12】
図9のA-A線に沿った断面図を表す模式図であり、間隙の他の実施形態を示す模式図である。
【
図13】
図9のA-A線に沿った断面図を表す模式図であり、間隙の他の実施形態を示す模式図である。
【
図14】
図9のA-A線に沿った断面図を表す模式図であり、間隙の他の実施形態を示す模式図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る吸収体において、短手方向に沿って切断した、吸収体の断面を表す模式図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る吸収体における他の実施形態を示す図であり、短手方向に沿って切断した、吸収体の断面を表す模式図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る吸収体の断面を表す模式図である。
【
図18】液の取り込み時間及び戻り量を測定するための評価装置である。
【
図19】実施例及び比較例で作製した吸水性樹脂粒子の連通孔及び独立気泡の相関関係を示すグラフである。
【
図20】戻り量の評価に用いた液注入筒の平面図及び正面図である。
【
図21】戻り量評価において本願の実施例で用いた吸収体の上に液注入筒を置いた様子を示した模式図であり、吸収体の長手方向から見た模式図と、吸収体の短手方向から見た模式図である。
【
図22】戻り量評価において漏斗を使用して液注入筒から塩化ナトリウム水溶液を吸収体に投入している様子を示した正面図である。
【
図23】戻り量評価において本願の実施例で用いた吸収体の上に液注入筒を置いた様子を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0014】
〔1〕用語の定義
〔1-1〕「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、下記の物性を満たすものをいう。すなわち、本明細書において「吸水性樹脂」とは、NWSP 241.0.R2(15)により規定されるCRC(遠心分離機保持容量)(水膨潤性)が5g/g以上であり、かつ、NWSP 270.0.R2(15)により規定されるExt(水可溶成分)が50質量%以下である高分子ゲル化剤を指す。なお、「NWSP」については後述する。
【0015】
上記吸水性樹脂は、その用途・目的に応じた設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量が架橋重合体である形態に限定されず、上記の各物性(CRC、Ext)が上記数値範囲を満たす限り、添加剤等を含んだ組成物であってもよい。
【0016】
本発明における「吸水性樹脂」は表面架橋(別称;後架橋、2次架橋)されたものであってもよく、表面架橋されていないものであってもよい。好ましくは、表面架橋されているものである。なお、本明細書において、「吸水性樹脂粒子」(「吸水性樹脂粉末」とも称する場合がある)とは、粉末状の吸水性樹脂を指し、好ましくは、所定の固形分率(含水率)及び粒度(粒子径)に調整された吸水性樹脂である。また、所定の表面架橋処理が完了した吸水性樹脂粒子は、別途、「表面架橋(後架橋)された吸水性樹脂粒子」ないし「粒子状吸水剤(吸水剤)」と称することもある。
【0017】
〔1-2〕「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂」
本発明における「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」とは、ポリ(メタ)アクリル酸及び/又はその塩を指し、「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、主成分として(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(以下、「(メタ)アクリル酸(塩)」とも称する)に由来する構造を繰り返し単位として含み、任意成分として内部架橋剤に由来する構造を含む架橋重合体を意味する。ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂は(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造を繰り返し単位として含み、内部架橋構造を有するポリ(メタ)アクリル酸(塩)の架橋重合体であって、表面架橋されていることが好ましい。
【0018】
上記「主成分」とは、(メタ)アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体全体(架橋剤を除く全単量体)に対して、好ましくは50モル%~100モル%、より好ましくは70モル%~100モル%、更に好ましくは90モル%~100モル%、特に好ましくは実質100モル%であることを意味する。
【0019】
ここで、「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)」は、未中和でもよいが、好ましくは部分中和又は完全中和されたポリ(メタ)アクリル酸(塩)であり、より好ましくは一価の塩、更に好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、より更に特に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0020】
ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、粒子状吸水剤中、粒子状(別称;粉末状)である。本明細書中、粒子状のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂を「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子」と称するが、単に「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とも称する場合がある。
【0021】
〔1-3〕「粒子状吸水剤」
本明細書において、吸水剤は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分として含む。本明細書において粒子状吸水剤とは、粒子状(別称;粉末状)の吸水剤を意味し、一粒の粒子状吸水剤であっても、複数個の粒子状吸水剤であっても粒子状吸水剤と称する。「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味し、粒子とは、測定可能な大きさを持つ、固体又は液体の粒状小物体(JIS工業用語大辞典第4版、2002頁)をいう。なお、本明細書において、粒子状吸水剤を単に吸水剤と称する場合もある。
【0022】
なお、水性液とは水に限らず、尿、血液、汗、糞、廃液、湿気、蒸気、氷、水と有機溶媒及び/又は無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含めば特に制限されるものではない。好ましくは、尿、経血、汗、その他の体液を挙げることができる。
【0023】
本発明にかかる粒子状吸水剤は、水性液を吸収するための衛生材料として好適に使用されるものである。本発明の粒子状吸水剤は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とする。つまり、粒子状吸水剤中にポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子は、好ましくは60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、90~100質量%含まれる。その他、粒子状吸水剤は、他の吸水性樹脂粒子、水、及び/又は、水不溶性無機粒子等の添加剤を任意に含む。粒子状吸水剤の好適な含水率は0.2~30質量%である。すなわち、これらの成分が一体化された吸水性樹脂組成物も粒子状吸水剤の範疇である。また、本発明で使用される粒子状吸水剤は高湿度下での取り扱い性に優れることが好ましい(具体的には、WO2017/170605に記載の吸湿流動性(吸湿ブロッキング率)が、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下の粒子状吸水剤である。)。
【0024】
なお、吸水剤中のポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子の上限は99質量%、更には97質量%、特に95質量%程度であり、好ましくは水や後述の添加剤(水不溶性無機粒子)を更に含む。
【0025】
また、本発明の粒子状吸水剤においては、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とするが、粒子状吸水剤は、その他の吸水性樹脂を含有していてもよい。その他の吸水性樹脂としては、ポリスルホン酸(塩)系吸水性樹脂、無水マレイン酸(塩)系吸水性樹脂、ポリアクリルアミド系吸水性樹脂、ポリビニルアルコール系吸水性樹脂、ポリエチレンオキシド系吸水性樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系吸水性樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系吸水性樹脂、ポリアルギン酸(塩)系吸水性樹脂、デンプン系吸水性樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0026】
〔1-4〕「吸収体」
本発明における「吸収体」とは、液を直接的に吸収する吸液面が表面側に形成された第1の基材と、前記第1の基材の裏面側に配置される吸水層と、を有するものであって、吸水層は、1枚以上の基材、および/または、繊維(好ましくは親水性繊維)に粒子状吸水剤(吸水性樹脂)が担持および/または挟持された構造物をいう。上記吸水層は、粒子状吸水剤の他に、親水性繊維等の繊維材料を含んでいてもよい。そして、吸水層が粒子状吸水剤と親水性繊維とからなる場合には、上記吸収体の構成としては、粒子状吸水剤と親水性繊維とを均一に混合したもの、および/または、層状に形成した親水性繊維間に粒子状吸水剤を挟持したものを含む構成が例示される。なお、上記吸収体の構成は、粒子状吸水剤と親水性繊維とを含む吸水層を不織布やティッシュペーパー等でさらに挟持することにより一体化されてもよく、これら例示の構成に限定されるものではない。さらに、親水性繊維を含まずに粒子状吸水剤を不織布やティッシュペーパー等のシート状基材に、直接粒子状吸水剤を固定して複合化した吸水層(すなわち、粒子状吸水剤とシート状基材とを含む吸水層)も本発明の吸収体になり得る。
【0027】
〔1-5〕評価方法の定義
「NWSP」は「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表し、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)が、不織布及びその製品の評価法を米国及び欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。特に断りのない限り、本発明では「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。NWSPに記載のない評価方法に関しては、実施例に記載された方法及び条件で測定する。
【0028】
〔1-5-1〕「CRC」(NWSP 241.0.R2(15))
「CRC」は、CentrifugeRetentionCapacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)の無加圧下での吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で3分間、水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、重合後及び/又はゲル粉砕後の含水ゲルについては、含水ゲル0.4gを使用し、測定時間を24時間に変更し、且つ固形分補正してCRCを求める。
【0029】
〔1-5-2〕「PSD」(NWSP 220.0.R2(15))
「PSD」は、ParticleSizeDistributionの略称であり、篩分級により測定される粒子状吸水剤(吸水性樹脂)の粒度分布を意味する。なお、質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号のカラム27~28の(3)質量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差に記載された方法と同様の方法で振動分級機(電源60Hz)にて測定される。
【0030】
〔1-5-3〕「AAP」(NWSP 242.0.R2(15))
「AAP」は、AbsorptionAgainstPressureの略称であり、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)の加圧下における吸水倍率を意味する。
【0031】
具体的には、AAP0.3psi(2.06kPa)は、粒子状吸水剤又は吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm2、0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、荷重条件を4.83kPa(49g/cm2、0.7psi)に変更して測定する場合もある。この場合、AAP(4.83kPa)と記載する。本発明では、吸水倍率(単位;g/g)は、実施例に記載の条件で測定したAAP0.3psi(2.06kPa)とする。
【0032】
〔1-5-4〕「Moisture Content」(NWSP 230.0.R2(15))
「Moisture Content」は、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)の乾燥減量で規定される含水率を意味する。具体的には、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)4.0gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;質量%)のことをいう。なお、本発明において、乾燥後の粒子状吸水剤(吸水性樹脂)については、粒子状吸水剤(吸水性樹脂)1.0gの180℃、3時間の乾燥減量で規定され、乾燥前の含水ゲルについては、含水ゲル2.0gの180℃、24時間の乾燥減量で規定される。
【0033】
〔1-6〕その他
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「質量ppm」又は「重量ppm」を意味する。更に、「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
【0034】
また、「リットル」を「l」又は「L」、「重量%」を「wt%」と便宜上記すことがある。更に、微量成分の測定等を行う場合において、検出限界以下をN.D(Non Detected)と表記する。
【0035】
〔2〕「粒子状吸水剤」
〔2-1〕連通孔及び独立気泡
本発明の粒子状吸水剤は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、粒子状吸水剤は、連通孔と独立気泡とを含み、連通孔の総体積率は10体積%以上、かつ、独立気泡の総体積率は0.5体積%以下である。ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子については、〔1-2〕に述べたとおりである。以下では、粒子状吸水剤に含有されるポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を、単に「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある。
【0036】
ここで、本発明において、「連通孔」(「Cavity(キャビティ)」とも称される)とは、
図1において連通孔1aとして示すように、粒子状吸水剤1に形成されている空洞のうち、粒子状吸水剤1の外部と繋がっている(粒子状吸水剤1の表面に露出している)空洞を指す。すなわち、「連通孔」は、粒子状吸水剤中に存在する外部と通じる空間(空洞)である。当該空洞には、粒子状吸水剤1の表面に形成されている窪みや溝等も含まれる。具体的には、連通孔とは、後述するようにマイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-100CT/株式会社島津製作所製)を用いて下記条件で3次元画像データを取得し、高速3次元解析ソフト(TRI/3D-VOL-FCS64/ラトックシステムエンジニアリング社製)を用いて当該3次元画像データを実施例に記載の条件で解析したときに、粒子状吸水剤1の表面に存在を確認することができる穴、貫通孔、窪み、溝等を指す。
【0037】
本発明において、「独立気泡」(「Void(ボイド)」とも称される)とは、
図1において独立気泡1bとして示すように、粒子状吸水剤1に形成されている空洞のうち、粒子状吸水剤1の外部と繋がっていない(粒子状吸水剤1の内部に存在する)気泡等の空洞を指す。すなわち、「独立気泡」は、粒子状吸水剤中に存在する外部と通じない閉鎖した空間(空洞)である。具体的には、独立気泡とは、後述するようにマイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-100CT/株式会社島津製作所製)を用いて下記条件で3次元画像データを取得し、高速3次元解析ソフト(TRI/3D-VOL-FCS64/ラトックシステムエンジニアリング社製)を用いて当該3次元画像データを実施例に記載の条件で解析したときに、粒子状吸水剤1の内部に存在を確認することができる気泡等の空洞を指す。
【0038】
なお、本発明の粒子状吸水剤において、連通孔及び独立気泡を含む粒子は、主に吸水性樹脂粒子であるが、粒子状吸水剤に含まれるその他の粒子が連通孔及び独立気泡を更に含んでいてもよい。粒子状吸水剤において(粒子状吸水剤を構成する全成分において)、全体として、連通孔及び独立気泡が所定の範囲の体積を占めることにより、本発明の効果が発揮される。また、後述の実施例では、粒子状吸水剤を用いて連通孔の総体積率と独立気泡の総体積率とを測定しているが、本発明の連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率の測定方法においては、吸水性樹脂粒子のみを測定対象としても、粒子状吸水剤を測定対象としても、連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率の数値はほぼ変わらない。
【0039】
本願の実施例において、吸水性樹脂粒子に対して、添加剤(キレート剤であるDTPA又はEDTMP、無機微粒子であるリン酸三カルシウム、ハイドロタルサイト又はシリカ粒子、無機還元剤である亜硫酸ナトリウム)を添加した粒子状吸水剤と、添加剤を添加していない粒子状吸水剤とを作製している。例えば、実施例1-1と実施例1-11とを比較すると、粒子状吸水剤として添加剤の有無が相違するが、連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率は変化していないのが示されている。これは、X線CT測定の分解能は10μm(ボクセルサイズが0.01(mm/voxel)であることにより分解能が10μmであることが示されている)であり、無機微粒子の大きさはそれ以下であること;キレート剤及び無機還元剤は通常水溶液として添加するため、キレート剤及び無機還元剤と吸水性樹脂粒子とは一体化していること;及び添加剤の添加量も吸水性樹脂粒子に対して1%以下と少ないこと;から、添加剤の添加有無に関わらず、連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率が変化しないものと考えられる。
【0040】
以下の連通孔及び独立気泡の説明では、粒子状吸水剤の連通孔及び独立気泡として説明するが、吸水性樹脂粒子としても同様に理解されうる。
【0041】
「連通孔の総体積率」とは、粒子状吸水剤の全体積に対する連通孔の全体積の比率を意味し、具体的には、後述の実施例に記載の方法により算出される。「独立気泡の総体積率」とは、粒子状吸水剤の全体積に対する独立気泡の全体積の比率を意味し、具体的には、後述の実施例に記載の方法により算出される。
【0042】
本実施形態の粒子状吸水剤は、連通孔の総体積率は10体積%以上、かつ、独立気泡の総体積率は0.5体積%以下であることにより、液の取り込み速度に優れ、かつ戻り量が低減される。すなわち、本実施形態の粒子状吸水剤は、液を速やかに吸収することができ、かつ吸収した後の戻り量が少ない。粒子状吸水剤において連通孔の総体積率が10体積%未満の場合、粒子状吸水剤の高粘度液吸収速度が減少し、戻り量(逆戻り量)が顕著に大きくなる(比較例1-7)。粒子状吸水剤において独立気泡の総体積率が0.5体積%を超える場合、粒子状吸水剤において液の取り込み速度及び戻り量(逆戻り量)が顕著に大きくなる(比較例1-1~1-9)。
【0043】
粒子状吸水剤を含む吸水性物品の実使用を想定した場合、様々な使用状況、例えば、体重がかかった状態で排尿される場合や、排尿時は無加圧で膨潤するが動作に伴い加圧される場面、又は血液を吸収する場合など、種々のケースが想定される。本発明者らは、「液を速やかに吸収することができ、かつ吸収した後の戻り量が少ない吸収体(粒子状吸水剤)」という課題の中で、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)の形状、すなわち、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)の連通孔と独立気泡との存在割合が重要であることを見出し、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)における連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率に着目したものである。
【0044】
連通孔の総体積率が大きい粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)は、比表面積が大きくなる傾向にある。ただし、連通孔の総体積率は、比表面積を測定するだけでは十分に評価できないため、粒子表面の凹部分の体積を評価する。連通孔の総体積率が10体積%以上になると、毛細管現象により吸水性樹脂粒子自体が液体を吸収する速度が向上することに加え、吸水性樹脂粒子が膨潤したときのゲル粒子同士の隙間も大きくなり、ゲル粒子が有する連通孔体積部分及びゲル粒子同士の隙間に保持される液体の量が増加する。その結果として、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)の吸収性が向上し、液の取り込み速度が向上する。これにより、本発明に係る粒子状吸水剤は、パルプ等の繊維材料の比率の小さい吸収体及び当該吸収体を含む薄型の紙オムツ等の吸収性物品に使用された場合であっても、液の取り込み速度に優れる。独立気泡の総体積率が0.5体積%以下の粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)は、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)に液が吸収される際に、独立気泡による液吸収妨害が発生しないので粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)の吸収性が向上し、液の取り込み速度が向上する。それに加えて、吸収した液が独立気泡内に入り込むことが低減され、液が吸水性樹脂自体に吸収されやすく、これによりいったん吸収された液が戻ることが低減され、戻り量が低減される。よって、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)における連通孔及び独立気泡との存在割合を所定の範囲とすることにより、液を速やかに吸収することができ、かつ吸収した後の戻り量が少ないことが発揮されたものと考えられる。
【0045】
一実施形態において、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)の連通孔の総体積率は、好ましくは10体積%を超え、より好ましくは11体積%以上、更に好ましくは12体積%以上、特に好ましくは13体積%以上、最も好ましくは14体積%以上である。粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)における連通孔の総体積率の上限は、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)の連通孔の総体積率が大きすぎると、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)自体及び膨潤ゲルの機械的強度が著しく低下してしまうことから、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、更に好ましくは30体積%以下、特に好ましくは25体積%以下である。一実施形態において、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)における独立気泡の総体積率は、好ましくは0.5体積%以下、より好ましくは0.4体積%以下、更に好ましくは0.3体積%以下でありうる。粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)における独立気泡の総体積率の下限は、特に制限されないが、好ましくは0.01体積%以上である。
【0046】
なお、本発明において、「液を速やかに吸収することができ、かつ吸収した後の戻り量が少ない」とは、粒子状吸水剤やパルプ等を含む吸収層を不織布等で積層した吸収体(吸収シート)での評価であって、粒子状吸水剤そのものの評価ではない。また、戻り量評価は、吸収体中に含まれる粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)が飽和状態とは限らない。
【0047】
また、本発明において、「液の取り込み速度」及び「戻り量」は、通常、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)の物性評価として用いられている「液の取り込み速度」(あるいは「吸収時間」又は「吸収速度」等)及び「戻り量」(逆戻り、Re-Wetと称されることもある)とは評価方法が異なるものである。従来の評価方法では、粒子状吸水剤(吸水性樹脂粒子)を用いて作製した吸収体を平面に配置し、平面に配置された吸収体に対して液を吸収する速度(すなわち、「吸収速度」)及び戻り量を測定する。本発明においては、U字形状に配置した吸収体に対して、液を吸収する時間(液の取り込み速度)及び戻り量を測定する。すなわち、オムツや生理用品等の衛生用品として使用する際の、実際の使用形態を模した状態での評価である。なお、本明細書中、液の取り込み速度は、液取り込み時間[sec]により表される。また、本発明の液の取り込み速度及び戻り量の測定に用いる液は、高粘度溶液(例えば、23℃における粘度5mPa・sの溶液)である。本明細書中、高粘度溶液を用いたU字評価(U字形状に配置された吸収体による評価)により算出される液の取り込み速度及び戻り量を、「スポット吸収性」と称する。スポット吸収性が優れるとは、液の取り込み速度が高く、かつ戻り量が低いことを意味する。本明細書中、平らな台の上に配置された吸収体に対して、23℃の0.9%質量塩化ナトリウム水溶液を用いて測定された液の吸収する時間を「吸収速度」と称し、U字形状に配置された吸収体に対して、高粘度溶液を用いて測定された液の吸収する時間を「液の取り込み速度」と称する。ただし、「液の取り込み速度」は、一般的な吸収体の物性の評価として、単に「吸収速度」と称する場合もある。
【0048】
吸収体のある一部分に局所的に液が導入された場合、導入された液は、吸収体の表面及び内部に拡散しながら吸収されていくため、吸収体への液の取り込み速度は、浸透による吸収(縦方向/厚み方向)と、拡散による吸収(横方向/面方向)とに関係する。一方、吸収体をU字形状とすることにより、液の拡散が制限されるため、浸透による吸収が主な吸収経路となると推測される。すなわち、U字評価を用いることにより、液の自重による拡散に起因する吸収体への液取り込みと、液戻りの抑制が制限された状態で評価することとなり、厚み方向に存在する粒子状吸水剤の吸水性能(液の取り込み速度、戻り量)がより顕著に評価できる。
【0049】
また更に、本発明の評価においては、高粘度溶液を用いる。通常、吸水剤の吸収性能の評価には生理食塩水や人工尿として0.5質量%程度の水溶液を用い、その粘度は23℃で1mPa・s程度である。本発明においては高粘度溶液を用いるため、自重による拡散速度が低い。このため、吸収体に導入された液体は生理食塩水や人工尿に比べて吸収体の横方向/面方向への拡散が起こりにくく、液体が導入された位置に局所的に液体が滞留することとなる。このため、本発明の吸収体評価はよりいっそう吸水剤の吸収性能を顕著に評価できると考えられる。
【0050】
〔2-2〕CRC(遠心分離機保持容量)
本発明の粒子状吸水剤のCRCは、25g/g以上であることが好ましく、30g/g以上であることがより好ましく、32g/g以上であることが更に好ましく、33g/g以上であることが更により好ましい。CRCが25g/g以上であることで、吸収量が適切となり、紙おむつ等の衛生物品の吸収体としての性能が確保される。また、本発明の粒子状吸水剤のCRCは、70g/g以下であることが好ましく、60g/g以下であることがより好ましく、50g/g以下であることが更により好ましく、40g/g以下であることが特に好ましい。CRCが70g/g以下であることで、尿や血液等の体液等を吸収する速度が保持されるため、高吸水速度タイプの紙おむつ等への使用にも適する。なお、CRCは、内部架橋剤の種類や量等で制御することができる。なお、本発明の粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子においても、CRCは粒子状吸水剤と同様の数値範囲が好ましい。
【0051】
〔2-3〕加圧下吸水倍率(AAP)
本発明の粒子状吸水剤のAAP0.3psi(2.06kPa)は、好ましくは20g/g以上、より好ましくは24g/g以上、更に好ましくは26g/g以上、更により好ましくは28g/g以上、特に好ましくは29g/g以上、最も好ましくは30g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは40g/g以下である。AAP0.3psi(2.06kPa)が上記範囲であることで、本発明の効果がより発揮される。また、AAP0.3psi(2.06kPa)が上記範囲の粒子状吸水剤を用いて製造した紙おむつは、パルプからの尿の吸い取り能力に優れ、戻り量を低減でき、肌かぶれや尿漏れを抑制できるようになる。なお、AAPは、粒度の調整や表面架橋剤の変更等により制御することができる。なお、本発明の粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子においても、AAP0.3psi(2.06kPa)は粒子状吸水剤と同様の数値範囲が好ましい。
【0052】
〔2-4〕含水率及び固形分率
本発明の粒子状吸水剤の含水率は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、特に好ましくは7質量%以上、最も好ましくは8質量%以上である。粒子状吸水剤の含水率の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは14質量%以下、更に好ましくは13質量%以下、特に好ましくは12質量%以下である。この含水率を上記範囲内とすることで、粉体特性(例えば、流動性、搬送性、耐ダメージ性等)に優れた吸水剤が得られる。また、本発明の粒子状吸水剤の固形分率は、好ましくは85質量%~99質量%、より好ましくは86質量%~95質量%、更に好ましくは87質量%~94質量%、特に好ましくは88質量%~93質量%、最も好ましくは88質量%~92質量%である。なお、本発明の粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子においても、含水率及び固形分率は粒子状吸水剤と同様の数値範囲が好ましい。
【0053】
〔2-5〕粒度
本発明の粒子状吸水剤の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm以上、より好ましくは200μm~600μm、更に好ましくは230μm~550μm、特に好ましくは250μm~500μmである。また、粒子状吸水剤における粒子径106μm未満の粒子の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。また、粒子状吸水剤における粒径850μm超の粒子の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。この粒子状吸水剤は、粒子径106μm~850μmの粒子を、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含む。理想的には、粒子状吸水剤は、粒子径106μm~850μmの粒子を100質量%で含む。本発明に係る粒子状吸水剤は、粒子径250μm~425μmの粒子を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは36質量%以上、特に好ましくは37質量%以上含む。粒子状吸水剤において粒子径250μm~425μmの粒子の割合の上限は、特に制限されないが、実用上、一実施形態として、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下でありうる。粒子径250μm~425μmの粒子の割合が上記範囲であることにより、本発明の効果がより発揮される。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.40、更に好ましくは0.27~0.35である。なお、本発明の粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子においても、粒度は粒子状吸水剤と同様の数値範囲が好ましい。
【0054】
〔2-6〕高粘度液吸収時間
高粘度液吸収時間とは、生理食塩水の代わりに高粘度液を用いて行う吸水性樹脂の吸収時間である。高粘度液吸収時間の測定は、JISK 7224-1996年度「高吸水性樹脂の吸水速度試験法 解説」に記載されている基準に準拠し、使用する生理食塩水を実施例に示した方法で調製した高粘度試験液に変更して行う。
【0055】
本発明の粒子状吸水剤の高粘度液吸収時間は、好ましくは140秒以下、より好ましくは135秒以下、更に好ましくは130秒以下、更により好ましくは120秒以下、特に好ましくは110秒以下、最も好ましくは100秒以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上である。
【0056】
高粘度液吸収時間が上記範囲であることにより、短時間で所定量の液を吸収することができる。紙オムツ等の吸収性物品の吸収体に使用した際に、使用者が肌の濡れを感じる時間が少なくなり、不快感を与えにくくなるとともに、漏れ量も減少することができる。なお、本発明の粒子状吸水剤に含まれる吸水性樹脂粒子においても、高粘度液吸収時間は粒子状吸水剤と同様の数値範囲が好ましい。
【0057】
〔2-7〕水不溶性無機粒子
本発明の粒子状吸水剤は、水不溶性無機粒子を更に含むことが好ましい。
【0058】
粒子状吸水剤が、水不溶性無機粒子を含むことで、粒子状吸水剤の吸湿流動性を、向上させることができる。また、水不溶性無機粒子を添加することで、吸収性物品の吸収量の向上を図ることができる。更に、吸水性樹脂粒子(組成物)は、製造後の保管によって吸収性物品を製造する際に流動性を失っている場合がある。かような流動性を失った吸水性樹脂粒子(組成物)に対して、水不溶性無機粒子を混合して好適には吸収体を成形することで、性能を維持したまま、吸水性樹脂粒子(組成物)の流動性が回復するので、生産性が向上する。ここで、吸湿流動性とは、高湿条件下に保管された場合の粒子状吸水剤の流動性を指し、吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤は一般的に吸湿によりその流動性が低下する。
【0059】
水不溶性無機粒子としては、ハイドロタルサイト等の多元金属化合物、二酸化ケイ素(シリカ)、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、金属リン酸塩(例えば、リン酸三カルシウム等のリン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム)、金属硼酸塩(例えば、ホウ酸チタン、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸鉄、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン、ホウ酸カルシウム)、珪酸又はその塩、粘土、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、活性白土等が挙げられる。中でも、本発明の効果が顕著に得られることから、水不溶性無機粒子が多元金属化合物、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、タルク、及びリン酸三カルシウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ハイドロタルサイト、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウム及びリン酸三カルシウムから選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0060】
〔3〕粒子状吸水剤の製造方法
本発明に係る粒子状吸水剤の製造方法は、重合工程、乾燥工程及び表面架橋工程を有している。好ましくは、この製造方法は、更に、重合工程と同時にゲル粉砕工程又は重合工程の後にゲル粉砕工程、乾燥工程の前にゲル整粒工程、表面架橋工程の前に、冷却工程、乾燥物の粉砕工程、分級工程を有し、表面架橋工程の後に、添加剤の添加工程を含む。その他には、単量体水溶液の調整工程、分離工程、各種添加剤の添加工程、微粉除去工程及び微粉リサイクル工程を含んでもよい。更に、目的に応じて各種の公知の工程を含むことができる。以下に、本発明にかかわる粒子状吸水剤の製造工程〔3-1〕~〔3-11〕について示す。
【0061】
〔3-1〕単量体水溶液の調製工程
本工程は、単量体(例えば(メタ)アクリル酸(塩))を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する工程である。なお、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明を行う。
【0062】
また、上記「主成分」とは、(メタ)アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、吸水性樹脂の重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
【0063】
((メタ)アクリル酸)
本発明では、得られる粒子状吸水剤の物性及び生産性の観点から、単量体として(メタ)アクリル酸及び/又はその塩(以下「(メタ)アクリル酸(塩)」と称する)を用いる。
【0064】
上記「(メタ)アクリル酸」は、公知の(メタ)アクリル酸でよく、重合禁止剤として好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp-メトキシフェノールを、アクリル酸の重合性や粒子状吸水剤の色調の観点から、好ましくは200ppm以下、より好ましくは10~160ppm、更に好ましくは20~100ppmを含んでいればよい。また、(メタ)アクリル酸中の不純物については、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された化合物が本発明にも適用される。
【0065】
また、上記「(メタ)アクリル酸塩」は、上記(メタ)アクリル酸を下記塩基性組成物で中和したものである。本発明において(メタ)アクリル酸に含まれるカルボキシル基の一部又は全部が中和された中和塩を単量体として用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸塩としては一価のカチオンとの塩であることが好ましく、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、アルカリ金属塩であることが更に好ましく、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であることがより更に好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。(メタ)アクリル酸塩として、市販の(メタ)アクリル酸塩(例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム)でもよいし、粒子状吸水剤の製造プラント内で中和して得られたものでもよい。
【0066】
(塩基性組成物)
本発明において、「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を指し、例えば、市販の水酸化ナトリウム水溶液等が該当する。
【0067】
上記塩基性化合物として、具体的には、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。これらの中でも、得られる粒子状吸水剤の物性の観点から、強塩基性であることが望まれる。即ち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0068】
(中和)
本発明における中和として、(メタ)アクリル酸に対する中和(重合前)又は(メタ)アクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(重合後)(以下、「後中和」と称する)の何れかを選択又は併用することができる。また、これらの中和は、連続式でもバッチ式でもよく特に限定されないが、生産効率等の観点から連続式が好ましい。
【0069】
なお、中和を行う装置、中和温度、滞留時間等の条件については、国際公開第2009/123197号や米国特許出願公開第2008/0194863号に記載された条件が本発明にも適用される。
【0070】
本発明における中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10~90モル%、より好ましくは40~85モル%、更に好ましくは50~80モル%、特に好ましくは60~75モル%である。該中和率が10モル%未満の場合、吸水倍率が著しく低下することがある。一方、該中和率が90モル%を超える場合、加圧下吸水倍率の高い吸水性樹脂が得られないことがある。
【0071】
上記中和率は、後中和の場合でも同様である。また、最終製品としての粒子状吸水剤の中和率についても、上記中和率が適用される。なお、中和率75モル%とは、(メタ)アクリル酸25モル%及び(メタ)アクリル酸塩75モル%の混合物を意味する。また、該混合物を(メタ)アクリル酸部分中和物と称する場合もある。
【0072】
(他の単量体)
本発明において、「他の単量体」とは、上記(メタ)アクリル酸(塩)以外の単量体を指し、他の単量体をアクリル酸(塩)と併用して粒子状吸水剤を製造することができる。
【0073】
上記他の単量体として、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が挙げられる。具体的には、米国特許出願公開第2005/0215734に記載された化合物(但し、(メタ)アクリル酸は除く)が本発明にも適用される。
【0074】
(内部架橋剤)
本発明で使用される内部架橋剤として、米国特許第6241928号に記載された化合物が本発明にも適用される。これらの中から反応性を考慮して1種又は2種以上の化合物が選択される。本発明においては、吸水性能を考慮して、内部架橋剤を用いた架橋体を表面処理することが好ましい。
【0075】
また、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を2個以上有する化合物、より好ましくは下記乾燥温度で熱分解性を有する化合物、更に好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有する重合性不飽和基を2個以上する化合物が、内部架橋剤として用いられる。
【0076】
上記重合性不飽和基として、好ましくはアリル基、(メタ)アクリレート基、より好ましくは(メタ)アクリレート基が挙げられる。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としてポリエチレングリコールが好ましく、n数として好ましくは1~100、より好ましくは6~50である。
【0077】
したがって、本発明では、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート又は(ポリ)アルキレングリコールトリ(メタ)アクリレート、より好ましくは(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが用いられる。
【0078】
上記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.0001~10モル%、より好ましくは0.001~1モル%である。該使用量を上記範囲内とすることで所望する吸水性樹脂が得られる。なお、該使用量が少なすぎる場合、得られる含水ゲル状架橋重合体の強度が不足し作業性等が問題となる虞があり、該使用量が多すぎる場合、吸水倍率が低下する傾向にある。
【0079】
本発明では、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加しておき、重合と同時に架橋反応する方法が好ましく適用される。一方、該手法以外に、重合中や重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法や、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を用いた放射線架橋する方法等を採用することもできる。また、これらの方法を併用することもできる。
【0080】
(その他、単量体水溶液に添加される物質)
本発明において、得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記の物質を単量体水溶液の調製時に添加することもできる。
【0081】
具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子を、単量体水溶液中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下(下限は0重量%)で添加したり、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤、界面活性剤、ジエチレントリアミン5酢酸(塩)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(塩)等のキレート剤、乳酸(塩)等のヒドロキシカルボン酸化合物、連鎖移動剤等を、単量体水溶液中、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)で添加したりすることができる。
【0082】
また、上記物質は、単量体水溶液に添加される形態のみならず、重合途中で添加される形態でもよいし、これらの形態を併用することもできる。
【0083】
なお、親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉-アクリル酸重合体、PVA-アクリル酸重合体等)が得られる。これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明の範疇である。
【0084】
(単量体成分の濃度)
本工程において、単量体水溶液を調製する際に、上記の各物質が添加される。該単量体水溶液中の単量体成分の濃度としては特に限定されないが、吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10~80重量%、より好ましくは20~75重量%、更に好ましくは30~70重量%である。
【0085】
また、水溶液重合又は逆相懸濁重合を採用する場合、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもできる。この場合、溶媒の種類は特に限定されない。
【0086】
なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記(式i)で求められる値であり、単量体水溶液の重量には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性溶媒の重量は含めない。
(単量体成分の濃度(重量%))=(単量体成分の重量)/(単量体水溶液の重量)×100 (式i)。
【0087】
〔3-2〕重合工程
本工程は、上記単量体水溶液の調製工程で得られた(メタ)アクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0088】
(重合開始剤)
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、又はこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第7265190号に開示された重合開始剤のうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や粒子状吸水剤又は吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が使用される。
【0089】
該重合開始剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001~1モル%、より好ましくは0.001~0.5モル%である。また、該還元剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.0001~0.02モル%である。
【0090】
なお、上記重合開始剤に代えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤を併用してもよい。
【0091】
(重合形態)
本発明に適用される重合形態としては、特に限定されないが、吸水特性や重合制御の容易性等の観点から、好ましくは噴霧液滴重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、逆相懸濁重合、更に好ましくは水溶液重合が挙げられる。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、連続ベルト重合、連続ニーダー重合の何れでも適用される。
【0092】
具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号、同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
【0093】
また、上記連続水溶液重合の好ましい形態として、「高温開始重合」や「高濃度重合」が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する形態をいい、「高濃度重合」とは、単量体濃度を好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う形態をいう。これらの重合形態を併用することもできる。
【0094】
また、本発明においては、空気雰囲気下で重合を行うこともできるが、得られる吸水性樹脂の色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合を行ってもよい。この場合、例えば、酸素濃度を1容積%以下に制御することが好ましい。なお、単量体水溶液中の溶存酸素についても、不活性ガスで置換(例えば、溶存酸素;1mg/l未満)しておくことが好ましい。
【0095】
また、水溶液重合の形態としては、単量体水溶液を静置状態で重合する静置重合法、攪拌装置内で重合する攪拌重合法、などで本発明を実施することができる。静置重合法では、エンドレスベルトを用いるのが好ましい。ベルトは重合熱を接材面から逃しにくい樹脂ないしゴム製のベルトが好ましい。
【0096】
本発明に適用される重合形態として逆相懸濁重合を採用することもでき、国際公開第2009/025235号、第2013/018571号、第2016/182082号、第2020/067310等に開示されている。バッチ式逆相懸濁重合でも、連続式逆相懸濁重合でもよいが、各工程及び工程間におけるそれぞれの操作を連続的に実施でき、長時間の運転により大量生産が可能となる点で連続式逆相懸濁重合が好ましく、更に好ましくは液相液滴連続重合である。
【0097】
〔3-3〕細断工程
細断工程は、重合工程後ゲル粉砕工程前に、含水ゲル状架橋重合体を、ゲル粉砕装置に投入可能な大きさに切断又は粗砕する任意の工程である。特に、上記重合工程がベルト重合であり、シート状又はブロック状の含水ゲルが得られる場合に、この細断工程を実施することが好ましい。したがって、本発明の一実施形態では、重合工程後に得られる含水ゲル状架橋重合体がシート状であり、ゲル粉砕工程前に、シート状の含水ゲル状架橋重合体を細断する細断工程を更に含む。細断工程における含水ゲルを切断又は粗砕する手段は特に限定されず、ロータリーカッター、ローラーカッター、ギロチンカッター等が用いられる。細断するサイズは、後述するゲル粉砕装置に投入できる範囲であれば特に限定されないが、細断後の含水ゲルの大きさとして、好ましくは1mm~3mであり、より好ましくは5mm~2.5mであり、特に好ましくは1cm~2mである。なお、本発明の目的が達成される場合、細断工程を実施しなくてもよい。例えば、逆相懸濁重合を行った場合は粒子状の含水ゲル状架橋重合体が得られるため、本工程は不要である。
【0098】
〔3-4〕ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合後に、この重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を粉砕して細粒化することにより、粒子状含水ゲル状架橋重合体(以下、「粒子状含水ゲル」)を得る任意の工程である。目的とする形状及び性能の(表面架橋された)吸水性樹脂粒子が高収率で得られるように、粒子状含水ゲルの粒子径が、後述する好ましい範囲に調整される。なお、所定の粒子径の粒子状含水ゲルを得るために、本工程を2回以上実施してもよい。なお、本発明の目的が達成される場合、ゲル粉砕工程を実施しなくてもよい。例えば、気相重合や逆相懸濁重合を行った場合は粒子状の含水ゲル状架橋重合体が得られるため、本工程は不要である。
【0099】
本発明において、ゲル粉砕工程では、吸水性能(液の取り込み速度及び戻り量)を損なうことない限り、ゲル粉砕装置の種類は特に限定されない。ゲル粉砕装置としては、例えば、バッチ式又は連続式の双腕型ニーダー等、複数の回転撹拌翼を備えたゲル粉砕機、1軸押出機、2軸押出機、ミートチョッパー等のスクリュー押出し機、2軸以上の複軸型混練機(ニーダー)、カッターミル等のゲル粉砕機等が挙げられる。なお、上記重合工程がニーダー重合の場合、重合工程とゲル粉砕工程とが同時に実施されている。
【0100】
一実施形態において、ゲル粉砕工程では、ミートチョッパー、2軸以上の複軸型混練機が好ましく用いられる。特に、水溶液重合により含水ゲルを得た場合、ゲル粉砕工程において、ミートチョッパー、2軸以上の複軸型混練機を用いることにより微細な粒子を形成することができる。これにより、吸水性樹脂粒子を得たときに、微細な粒子の凝集体として連通孔を数多く形成でき、かつ、独立気泡を低減できる。よって、吸水性樹脂粒子に形成された連通孔及び独立気泡の存在割合を制御しやすく、本発明の効果を更に発揮することができる。すなわち、好ましい実施形態において、水溶液重合の後、ミートチョッパーによるゲル粉砕工程、又は2軸以上の複軸型混練機によるゲル粉砕工程が行われる。なお、上記以外のゲル粉砕条件や形態については、国際公開第2011/126079号に開示される内容が、本発明に好ましく適用される。
【0101】
(ゲル流動化剤)
本実施形態において、ゲル粉砕工程前及び/又はゲル粉砕工程中に、ゲル流動化剤を添加してもよい。これにより、ゲル流動化剤を含む粒子状含水ゲルが得られる。ゲル流動化剤の添加により、後述する乾燥工程において、含水ゲル粒子同士の付着又は接着が抑制され、連通孔の形成が促進され、独立気泡の形成が抑制されることで、得られる吸水性樹脂の吸水性能が向上するという効果が得られる。また、後述する乾燥後の粉砕工程における負荷が低減され、微粉発生量が減少するという効果も得られる。更に、乾燥工程において攪拌乾燥を行う場合には、得られる粒子状乾燥重合体の粒子径が製品粒子径に近づくため、上記効果が顕著になる。得られる粒子状含水ゲルの各粒子が均一にゲル流動化剤を含むとの観点から、ゲル粉砕工程中の添加が好ましい。なお、重合工程で逆相懸濁重合を行う場合等、ゲル粉砕工程を要しない場合にも、少なくとも乾燥工程前に、粒子状含水ゲルにゲル流動化剤を添加することが好ましい。
【0102】
ゲル流動化剤の添加量は、含水ゲル又は粒子状含水ゲルの含水率やゲル流動化剤の種類に応じて適宜設定される。その添加量は、含水ゲルの固形分に対して、好ましくは0.001質量%~0.5質量%、より好ましくは0.01質量%~0.3質量%、更に好ましくは0.02質量%~0.2質量%である。
【0103】
このゲル流動化剤の例として、アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び両性の界面活性剤、並びにこれらの低分子型又は高分子型の界面活性剤、高分子滑剤等が挙げられる。
【0104】
(界面活性剤)
具体的には、ゲル流動化剤に用いられる界面活性剤として、(1)ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステルなどのノニオン性界面活性剤、(2)カプリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン;ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルヒドロキシスルホベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤、(3)ラウリルアミノジ酢酸モノナトリウム、ラウリルアミノジ酢酸カリウム、ミリスチルアミノジ酢酸ナトリウム等のアルキルアミノジ酢酸モノアルカリ金属などのアニオン性界面活性剤、(4)長鎖アルキルジメチルアミノエチル4級塩などのカチオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0105】
(高分子滑剤)
本実施形態において、本発明の目的が達成される範囲内で、以下に例示する高分子滑剤を、上記単量体水溶液や含水ゲルに添加することができる。
【0106】
上記高分子滑剤として、具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。これらの分子量(重量平均分子量)は、好ましくは200~200万、より好ましくは400~100万の範囲で適宜選択される。これらのうち、2種以上を併用してもよい。
【0107】
また、ゲル流動化剤として、これらの高分子滑剤と上記界面活性剤とを併用してもよい。界面活性剤と高分子滑剤とを併用する場合、その合計添加量は、重合形態、単量体水溶液の組成及び含水ゲルの含水率に応じて適宜設定される。単量体水溶液に添加する場合には単量体成分に対する濃度として、含水ゲルに添加する場合にはその固形分率に対して、両方に添加する場合には上記の合計として設定される。これらのゲル流動化剤は、逆相懸濁重合を行う際に使用する分散助剤と重複していてもよい。
【0108】
界面活性剤と高分子滑剤との合計添加量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。
【0109】
(過酸化水素)
本実施形態において、乾燥工程以前の工程において、過酸化水素を添加してもよい。乾燥工程以前の工程において過酸化水素を添加し、乾燥工程又はそれ以降の工程において加熱することにより、乾燥工程以降において熱が加わった際に、過酸化水素により吸水性樹脂中の架橋構造が切断され、ゲル粉砕やゲル整粒工程での連通孔や独立気泡の形成に影響することなく吸収倍率(CRC)を効率的に高めることができる。より具体的には、重合工程以前で過酸化水素を前記単量体水溶液に添加する及び/又はゲル破砕工程中に含水ゲルに添加することが好ましい。
【0110】
過酸化水素の単量体水溶液及び/又は含水ゲルに対する添加量は、選択する重合条件や乾燥前に残存する過酸化水素量(ppm)を考慮して適宜設定されるが、例えば、得られる吸水性樹脂の物性、特には吸収倍率(CRC)の向上を考慮すると、単量体水溶液又は含水ゲル状架橋重合体の固形分質量(%)に対して、合計量で好ましくは50ppm(0.005質量%)以上であり、より好ましくは50ppm(0.005質量%)~10000ppm(1.0質量%)、さらに好ましくは100ppm(0.01質量%)~5000ppm(0.5質量%)である。
【0111】
過酸化水素の添加方法は、特に限定されるものではないが、添加が容易であることから、過酸化水素を溶解した水溶液で添加することが好ましく、その濃度は、特に限定されるものではないが、通常1~40質量%程度である。また、過酸化水素水溶液には、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の少量の親水性溶媒を含有させてもよい。過酸化水素又は過酸化水素溶液を添加する際の温度は特に問わず、例えば-10~100℃の範囲であればよく、より好ましくは0~30℃である。
【0112】
また、過酸化水素を添加する場合、乾燥工程以降において、含水ゲル状架橋重合体及び/又は乾燥重合体は、その最高到達温度が160℃を超えるよう加熱されることが好ましい。このような加熱により、過酸化水素により吸水性樹脂中の架橋構造が切断され、吸収倍率(CRC)の高い粒子状吸水剤を得ることができる。
【0113】
(表面張力)
ゲル流動化剤の種類と添加量とは、ゲル粉砕工程及び乾燥工程における粒子状含水ゲルの流動性等を考慮して適宜調整される。得られる吸水性樹脂の吸収性物品(おむつ)での実使用における戻り量等から、最終製品の吸水性樹脂の表面張力が過度に低下しない種類や量のゲル流動化剤が好ましい。例えば、吸水性樹脂の表面張力(生理食塩水中の吸水性樹脂の分散液の表面張力)が、好ましくは55mN/m以上、より好ましくは60mN/m以上、更に好ましくは65mN/m以上となるように、ゲル流動化剤の種類及び量が選択される。この表面張力はWO2015/129917に記載の方法で測定される。
【0114】
(含水ゲルの固形分率)
ゲル粉砕工程に供される含水ゲルの固形分率(以下、ゲル固形分率)は、25質量%以上が好ましい。ゲル粉砕後の含水ゲル粒子同士の凝集抑制、粉砕に要するエネルギー、乾燥効率及び吸収性能の観点から、ゲル固形分率は25質量%~75質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましく、35質量%~65質量%がより更に好ましく、40質量%~60質量%が特に好ましい。
【0115】
(粒子状含水ゲルの含水率)
粒子状含水ゲルの含水率(以下、ゲル含水率)は、下記実施例に記載した測定方法によって求められる。後述する乾燥工程における粒子状含水ゲルの流動性の観点から、ゲル含水率は25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上が更に好ましく、40質量%以上が特に好ましく、43質量%以上が極めて好ましい。過度の高濃度重合は吸水性樹脂の物性を低下させる可能性があり、乾燥効率及び吸収性能の観点から、ゲル含水率は75質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下が特に好ましい。
【0116】
(粒子状含水ゲルの粒度)
得られる吸水性樹脂の粒子径及び連通孔及び独立気泡の存在割合の制御の観点から、ゲル粉砕工程を経て得られる粒子状含水ゲル(乾燥前の粒子状含水ゲル)の質量平均粒子径は、固形分換算で、好ましくは10μm~1000μm、より好ましくは20μm~800μm、更に好ましくは40μm~500μm、特に好ましくは50μm~300μm、最も好ましくは60μm~200μmである。なお、固形分換算の粒子状含水ゲルの平均粒子径(固形分換算の平均ゲル粒子径)は、WO2016/204302の「含水ゲル粒子の乾燥物に換算した重量平均粒子径(μm)」に記載の方法により測定できる。
【0117】
(ミートチョッパーによるゲル粉砕)
一実施形態において、ゲル粉砕工程では、
図2Aに示すミートチョッパー100(スクリュー押出機)を用いたゲル粉砕が好ましい(
図2Aの詳細はWO2013/0023187を参照)。従来のミートチョッパー100を用いたゲル粉砕では、押出口16にはダイス(「ダイプレート」又は「多孔板」とも称する)が備えられているが、本発明のゲル粉砕工程においてミートチョッパー100を用いた場合は、このようなダイスを用いずにゲル粉砕を行うのが好ましい。ダイスがミートチョッパーの押出口16に設けられないことにより、粉砕の際にゲルにかかる圧力が緩和され、粉砕されたゲル粒子同士の過度の密着が抑えられることで、吸水性樹脂中の連通孔を十分に保持できる。本実施形態では、ミートチョッパー100の押出口16には、ダイスの代わりに支持具17を設けている。
【0118】
図2Bに支持具17の一実施形態を示す。支持具17は、押出口16において、スクリュー13を支持する部材である。
図2Bに示す支持具17において、領域17aは、粉砕された粒子状含水ゲルが通過する部分であり、領域17bは、スクリュー13の軸を支持する部分である。よって、領域17bは、スクリュー13の軸が貫通する部分であり、粒子状含水ゲルは通過しない。支持具17の形状は、スクリュー13の軸を支えるのに必要最小限の強度を有していればよく、特に制限されないが、
図2Bに示される支持具17は、できるだけ開口率を大きく(穴の数をできるだけ少なくし、1つの穴の大きさをできるだけ大きく)した形状であり、好ましい。開口率の定義は、領域17a(粉砕された粒子状含水ゲルが通過する部分)の面積を分子とし、支持具17の外径Dの円面積を母数として算出した値となる。なお、本願実施例では開口率56%の支持具を使用している。
【0119】
また、ミットチョッパーによる粉砕は、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、ミートチョッパーを通過させるのが好ましい。本発明において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(Gel Grinding Energy,GGE)は、上限値として、60[J/g]以下が好ましく、50[J/g]以下がより好ましく、40[J/g]以下が更に好ましい。また、下限値としては、18[J/g]以上が好ましく、20[J/g]以上がより好ましく、25[J/g]以上が更に好ましい。例えば、本発明において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE(1))は、18~60[J/g]であり、好ましくは20~50[J/g]であり、より好ましくは25~40[J/g]である。また、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE(2))は、18~60[J/g]であり、好ましくは20~50[J/g]であり、より好ましくは25~40[J/g]である。当該GGE(1)、GGE(2)を上記範囲内に制御することで、適切なせん断・圧縮力を含水ゲルに与えながらゲル粉砕することができる。なお、上記ゲル粉砕エネルギー(GGE(1))は、ゲル粉砕機の空運転時のエネルギーを含んで規定され、ゲル粉砕エネルギー(GGE(2))は、ゲル粉砕機の空運転時のエネルギーを差し引いて規定される。複数回のゲル粉砕を行った場合は、各粉砕で与えられたゲル粉砕エネルギーを合計する。
【0120】
ゲル粉砕エネルギーとは、国際公開第2011/126079号(米国特許出願公開第2013/026412号明細書、米国特許出願公開第2016/332141号明細書に対応)に記載され、含水ゲル状架橋重合体をゲル粉砕する際、ゲル粉砕装置が必要とする単位重量(含水ゲル状架橋重合体の単位重量)あたりの機械的エネルギーを意味し、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、下記(式a-1)により算出される。
ゲル粉砕エネルギーGGE(1)[J/g]
={31/2×電圧×電流×力率×モーター効率}/{1秒間にゲル粉砕装置に投入される含水ゲルの重量} ・・・(式a-1)。
【0121】
ここで、力率及びモーター効率は、ゲル粉砕装置の稼働条件等によって変化する装置固有の値であり、0~1までの値をとる。ゲル粉砕装置が単相交流電力で駆動する場合、上記式中の31/2を1に変更することで算出される。上記(式a-1)において、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲルの質量の単位は[g]である。
【0122】
ゲル粉砕機の空運転時のエネルギーを差し引いて規定されるゲル粉砕エネルギーGGE(2)は、下記(式a-2)により算出される。
ゲル粉砕エネルギーGGE(2)[J/g]
={√3×電圧×(ゲル粉砕時の電流-空運転時の電流)×力率×モーター効率}/{1秒間にゲル粉砕装置に投入される含水ゲルの重量} ・・・(式a-2)。
【0123】
上記(式a-2)において、力率及びモーター効率は、(式a-1)と同様に、ゲル粉砕装置の稼働条件等によって変化する装置固有の値であり、0~1までの値をとる。上記(式a-2)において、電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、含水ゲルの質量の単位は[g]である。
【0124】
ミートチョッパー(スクリュー押出機)を用いたゲル粉砕としては、上述のダイスの構成(押出口16においてダイスを使用しない代わりに支持具17を使用する)とゲル粉砕エネルギーとを除けば、WO2013/0023187に記載の条件が本発明に適用できる。
【0125】
(2軸以上の複軸型混練機によるゲル粉砕)
一実施形態において、ゲル粉砕工程では、
図3及び
図4に示す複軸型混練機を用いたゲル粉砕が好ましい。
図3及び
図4に示されるように、重合工程後のゲル粉砕工程において、投入口、複数の回転軸を内蔵する本体、排出口を有するゲル粉砕装置が用いられる。それぞれの回転軸は粉砕手段を有する。このゲル粉砕装置では、投入口から本体内に連続的に投入された含水ゲル状架橋重合体が、各回転軸が有する粉砕手段により50℃以上で粉砕され、粒子状含水ゲル状架橋重合体として、排出口から連続的に取り出される。すなわち、投入口から本体内に投入された含水ゲル状架橋重合体は、50℃以上を保ちつつ投入口から排出口まで移動しながら、各回転軸が有する粉砕手段により粉砕される。尚、本発明において、本体とは、複数の回転軸及び粉砕手段が設置される胴体部分(
図3の符号208)を意味し、バレル、トラフ、ケーシング等とも称される。
【0126】
前記複軸型混錬機は、連続式である限り、縦型(含水ゲルの進行方向が上下方向)であってもよく、横型又は水平型(含水ゲルの進行方向が左右方向又は水平方向)であってもよい。また、縦型及び横型のゲル粉砕装置において、水平方向に対して0°~90°の傾斜を有してもよい。例えば、
図3に示される横型連続粉砕装置の場合、必要に応じて適宜傾斜が設けられるが、その傾斜は、投入口から排出口に向かって(即ち、含水ゲルの進行方向に対して)、下向きであってもよく、上向きであってもよい。通常、その傾斜角度は0°~10°であり、好ましくは0°~1°であり、特に好ましくは0°である。
【0127】
前記複軸型混錬機では、投入口から投入された含水ゲルは、排出口から排出されるまでの間に、含水ゲルに過度の圧力をかけることなく目的とする粒度にまで粉砕される。したがって、この複軸型混錬機では、従来の押出機(ミートチョッパー)のように、ダイスから押し出すことを必須とせず、目的とする粒度に調整された粒子状含水ゲルが排出口から取り出される。前記複軸型混錬機を用いることにより、粉砕の際にゲルにかかる圧力が緩和され、粉砕されたゲル粒子同士の過度の密着が抑えられることで、吸水性樹脂中の連通孔を十分に保持できる。
【0128】
50℃以上で連続的にゲル粉砕を行う観点から、前記複軸型混錬機は、加熱手段及び/又は保温手段を有することが好ましい。加熱手段及び/又は保温手段としては特に限定されないが、含水ゲル及び粒子状含水ゲルの付着及び凝集防止の観点から、対流伝熱による直接伝熱及び/又は熱媒で加熱されたゲル粉砕装置の加熱面(含水ゲルとの接触面、熱源部分)からの熱伝導による間接伝熱による加熱手段が好ましい。より好ましい加熱手段は、直接伝熱では通気加熱式、間接伝熱では外壁加熱式である。
【0129】
含水ゲルへの過度の負荷を低減する観点から、好ましくは、本体の外面に、加熱手段及び/又は保温手段、より好ましくは加熱手段を備える。この保温手段としては、例えば、本体の外面の一部又は全面(好ましくは本体の外表面の50%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは全面)を、断熱材で被覆する方法が挙げられる。また、加熱手段としては、電気トレス、スチームトレス、熱媒で加熱されたジャケット等が例示される。本発明において求められる連通孔を有する吸水性樹脂粒子を得るには、従来技術の範囲で想定されるよりも、温度変化による含水ゲル粒子の付着性及び流動性の変動による影響が大きいことがわかった。その結果、含水ゲルの粉砕に必要なエネルギーや、粉砕されたゲル粒子同士の密着性が、温度によって大きく変動することが、本発明における検討により明らかになった。複軸型混錬機が、上記加熱手段及び/又は保温手段を備えることにより、より好ましい温度域でゲル粉砕工程を実施することができる。また、季節や昼夜といった気温差の影響によるゲル粉砕の質の悪化を避けることができる。更に、ゲル粉砕装置の立ち上げ時にも、スムーズに安定運転に誘導することも可能になる。
【0130】
本発明の効果が得られる限り、それぞれの回転軸が有する粉砕手段の種類は特に限定されない。例えば、含水ゲルに対する剪断作用を有するものとして、各種形状のディスクが挙げられる。ディスクは、チップ、パドル、エレメント、ニーディング、ローター等と称される場合がある。ディスクの形状は特に限定されず、円板状、楕円状、略三角形状等から適宜選択される。異なる形状のディスクを組み合わせて使用することも可能であり、その配列は、目的とする粒子状含水ゲルの粒子径、粉砕に要するエネルギーの観点から適宜調整される。また、粉砕手段として、アーム、羽根、ブレード、カットディスク(CD)等が併用されてもよい。
【0131】
例えばそれぞれの回転軸が粉砕手段として、円板状又は楕円状のディスクを有する場合、このディスクの最大径D(Diameter;直径の異なる複数のディスクを使用する場合は、最大ディスクの直径)に対する本体内部の有効長さL(Length)の比は、L/Dとして定義される。このL/Dは、5~40が好ましく、6~30がより好ましく、6.5~20が更に好ましい。尚、この有効長さLとは、
図3に示されるように、投入口から排出口を含めた本体(バレル)部分の軸方向長さ(全長)を意味する。
【0132】
また、ディスク及び本体(バレル)の間の距離(クリアランス)は、場所によって異なる場合もある。ディスク外周と本体(バレル)の内壁との距離が最短となる距離を最小クリアランスCとしたとき、最小クリアランスCは、ディスクの最大径Dに対して、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更により好ましく、5%以下が特に好ましい。上記上限値以下であれば、ゲル粉砕時にバレルとディスクとの間でのせん断力が強くなり、ゲル粉砕効率が良好となる。また、最小クリアランスCは、ディスクの最大径Dに対して、0.2%以上が好ましく、0.5%以上がより好ましく、1%以上が更に好ましい。上記下限値以上であれば、ディスクと本体(バレル)内壁との接触が抑制され、磨耗による金属異物混入が抑制される。本発明の好適な形態は、最小クリアランスCは、ディスクの最大径Dに対して、0.2~20%である。
【0133】
前記複軸型混錬機の複数の回転軸の回転数は、等速でもよく、非等速でもよく、装置によって適宜設定されるが、好ましくは1rpm~1000rpm、より好ましくは3rpm~500rpm、更に好ましくは5rpm~300rpmの範囲である。また、各回転軸の回転数が異なる場合、一の回転軸の回転数に対する他の回転軸の回転数の比率は、通常1~10の範囲であり、好ましくは1~2の範囲である。
【0134】
また、この複数の回転軸が、粉砕手段としてディスクを有する場合、下記(式b)で定義されるディスクの周速(V)は、等速でもよく、非等速でもよく、装置によって適宜設定されるものであるが、0.05m/s~5m/sが好ましく、0.1m/s~5m/sがより好ましく、0.15m/s~3m/sが更に好ましく、0.2m/s~2m/sが特に好ましい。上記範囲を超えると、含水ゲルに係る剪断力が過大になり、粉砕後の含水ゲル粒子の物性劣化及び過度の圧密が発生するため好ましくない。また、上記範囲を下回ると、ゲル粉砕工程における単位時間当たりの処理量が減少するため好ましくない。また、各回転軸が有するディスクの周速が異なる場合、一の回転軸における周速に対する他の回転軸における周速の比率は、通常1~10の範囲であり、好ましくは1~2の範囲である。
【0135】
周速(V)(m/s)=πD×n/60 ・・・ (式b)
ここで、(式b)中、Vはディスクの周速(単位;m/s)、Dはディスクの最大径(単位;m)、nは単位時間当たりのディスクの回転数(単位;rpm)である。
【0136】
また、複数の回転軸の回転方向は、それぞれの回転軸が同じ方向に回転する同方向型であってもよく、それぞれの回転軸が反対方向に回転する異方向型であってもよい。同方向型装置ではセルフクリーニング性が期待でき、異方向型装置では強力な剪断力が期待できる。各回転軸の回転方向は、前述した粉砕手段の配列(ディスクパターン)との組み合わせにより適宜選択される。
【0137】
前記複軸型混錬機は、本体内部に、水及び/又は水蒸気を供給する機能を備えることが好ましい。水及び/又は水蒸気(好ましくは、水及び水蒸気)を供給しながらゲル粉砕を行うことで、所望の連通孔を十分に含む吸水性樹脂粒子を得ることができる。したがって、本発明の一実施形態によれば、ゲル粉砕工程において、本体の内部に水及び/又は水蒸気が供給される。水及び/又は水蒸気を供給する手段として、ゲル粉砕装置に、複数の投入口を備えてもよい。この水及び/又は水蒸気の投入口の設置位置は問わないが、好ましくは、含水ゲルの投入口側に設置される。また、水と水蒸気とが、それぞれ異なる投入口から供給されてもよい。
【0138】
水蒸気添加に際しては特に限定されないが、例えば、空気、ドライエアー、窒素等のガスを水蒸気に混合し、混合気体として添加してもよい。添加される水蒸気の圧力は特に限定されないが、好ましくは0.2~0.8MPaである。水及び/又は水蒸気(混合気体を含む)の温度は特に限定されないが、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である。過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、120℃以下が更により好ましく、100℃以下が特に好ましい。好ましい形態は、本体の内部に供給される水及び/又は水蒸気の温度が50~120℃である。前記複軸型混錬機の含水ゲル及び粒子状含水ゲルの温度を、用いられる水及び/又は水蒸気(混合気体を含む)の温度並びに投入量によって調整することも可能である。この場合、水蒸気及び/又は混合気体は直接伝熱の熱媒とし作用して、本体内部の含水ゲル及び粒子状含水ゲルが所定の温度に加熱又は保温される。尚、添加する水及び/又は水蒸気(混合気体を含む)に、後述するゲル流動化剤、架橋剤、酸化剤、還元剤、重合開始剤等の添加剤を配合してもよい。
【0139】
この水及び/又は水蒸気の供給量としては、含水ゲルの固形分換算による質量に対して、それぞれ、0.1質量%~50質量%が好ましく、0.5質量%~40質量%がより好ましく、1質量%~30質量%が更に好ましい。
【0140】
前記複軸型混錬機は、好ましくは本体の外面に、加熱手段及び/又は保温手段を備えるが、本体の外面に設置されたジャケット等に温水やオイルのような液状の熱媒を導入してもよく、加熱されたガス(熱風)を熱媒として導入してもよい。これら熱媒は、間接伝熱の熱媒として作用する。間接伝熱の加熱効率及び/又は保温効率の観点から、熱媒の温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である。一方、過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、熱媒の温度は、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、130℃以下が更により好ましく、110℃以下が特に好ましい。特に好ましい熱媒は、温水又は水蒸気である。また、熱媒の温度は一定温度でもよいし、ゲル粉砕途中で適宜変更してもよい。
【0141】
より好ましくは、含水ゲルが前記複軸型混錬機に投入される前に、本体内部(内表面)の温度が、50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、更により好ましくは80℃以上に加熱されていることが好ましい。これにより、本体の内表面への含水ゲルの付着が低減される。また、これにより、得られる吸水性樹脂粒子が十分に連通孔を含み、吸水性能が更に向上する。すなわち、前記複軸型混錬機によるゲル粉砕では、含水ゲルの投入前、ゲル粉砕開始時に、本体の内表面が前述した温度以上に加熱されていることが好ましい。より好ましくは、本体の内表面及び複数の回転軸並びに各回転軸が有する粉砕手段の外表面が、前述した温度以上に加熱されていることが好ましい。一方、過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、含水ゲルがゲル粉砕装置に投入される前において、本体内部(内表面)の加熱温度は、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、130℃以下が更により好ましく、110℃以下が特に好ましい。例えば、本体に備えられたジャケット内部に熱媒を循環させて保持することにより、本体内部(内表面)の温度を所望の範囲に調節することができる。ゲル粉砕工程における温度を50℃以上に保持する観点から、ゲル粉砕工程において本体内部(内表面)の温度は上記範囲に保持されていることが好ましい。
【0142】
ここで、「含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕する」とは、
図3の(A)で示す区間、つまり投入口を過ぎてから排出口に至るまでの区間において、含水ゲル状架橋重合体の温度を50℃以上に維持しながら、含水ゲル状架橋重合体を連続的に粉砕することをいう。例えば、複軸型混錬機の投入口に投入される含水ゲル状架橋重合体の温度T1を50℃以上とし、装置本体の外側に設置されたジャケットの熱媒温度を50℃以上とすれば、
図3の(A)の区間において含水ゲル状架橋重合体の温度を50℃以上に維持でき、含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕することができる。また、例えば、複軸型混錬機の投入口に投入される含水ゲル状架橋重合体の温度T1が50℃以下であっても、投入口部分で高温の水及び/又は水蒸気を供給する、装置本体のジャケット熱媒温度を高温に設定するなどして、含水ゲル状架橋体重合体を急速に昇温させ、(A)部分では50℃以上として連続的に粉砕する場合も含まれる。
【0143】
含水ゲル状架橋重合体を連続的に粉砕する温度は、好ましくは50℃以上であるが、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、更により好ましくは80℃以上である。
【0144】
含水ゲル状架橋重合体を連続的に粉砕する温度の上限は、特に制限されるものではないが、過度の昇温と含水ゲルの乾燥を抑制する観点から、200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、130℃以下が更により好ましく、110℃以下が特に好ましい。
【0145】
図3及び4には、本発明に好適に用いられる複軸型混錬機(ゲル粉砕装置)200の一例が示されている。
図3は、このゲル粉砕装置200の一部切り欠き側面図であり、
図4は、このゲル粉砕装置200の拡大図(本体中央部を上から見た図)である。以下、
図3及び
図4を用いて、このゲル粉砕装置200の基本構成及び使用方法を説明する。
【0146】
図示される通り、このゲル粉砕装置200は、投入口204、本体208、2本の回転軸206、排出口210、駆動装置214及びガス投入口216を備えている。尚、本体208は、バレルとも称される。
図1においては、紙面の直交方向に沿って2本の回転軸206が設けられている。回転軸206は、本体208の長さ方向に延在している。回転軸206は、その一端が本体208を貫通して、駆動装置214に接続されている。図示されないが、このゲル粉砕装置200では、回転軸206の他端は、その後方に設置されている軸受けベアリングで回転自在に支持されている。つまり、回転軸206はその両端で保持された形態となっている。但し、本発明に係る製造方法におけるゲル粉砕装置は、このような両軸持ちの形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限り、排出口210の後方に軸受けベアリングを有さない、所謂片軸持ち構造であってもよい。投入口204、ガス投入口216、ゲル流動化剤投入口217及び排出口210は、それぞれ、本体208に固定され、本体208の内部と連通している。
図3における左右方向は、本体208の長さ方向であり、回転軸206の軸方向である。図示されないが、本体208はジャケット構造を有している。
【0147】
図4には、ゲル粉砕装置200の本体208の一部が示されている。図示される通り、このゲル粉砕装置200では、2本の回転軸206が、本体208に内蔵されている。2本の回転軸206の外周には、それぞれ、粉砕手段212が設けられている。すなわち、粉砕手段212及び回転軸206は、別体として構成されている。この実施形態では、回転軸206は、粉砕手段212として複数のディスクを有している。
図4における上下方向は、本体208の幅方向である。
図4における左右方向は、本体208の長さ方向であり、回転軸206の軸方向である。
【0148】
このゲル粉砕装置200を用いてゲル粉砕工程を実施する好適な一形態では、始めに、図示されないジャケットに熱媒体を循環させて、本体208を加温する。その後、駆動装置214(例えば、モーター)により各回転軸206を回転させる。回転軸206の回転にともなって、スクリュー206及び粉砕手段212である複数のディスクが回転する。
【0149】
次に、含水ゲルを投入口204に連続的に投入する。この際、投入口204には、同時に水又は水蒸気を投入してもよい。また、ガス投入口216には水蒸気又は水を投入してもよい。水及び水蒸気により、含水ゲル及び本体208が加温され、所定の温度に保温される。
【0150】
本体208に投入された含水ゲルは、排出口210に向かって移動する。
【0151】
含水ゲルは、本体208内において、粉砕手段212(即ち、複数のディスク)と接触する。含水ゲルは、回転する複数のディスクによる剪断作用によって細粒化される。含水ゲルは、粉砕手段212の剪断作用により、粉砕されつつ、排出口210に向かって移動する。排出口210では、所定の粒度に調整された粒子状含水ゲルが取り出される。
【0152】
ゲル粉砕装置の回転軸は、複数のディスクを有している。複数のディスクの形状は、同一であっても異なっていてもよいが、異なることが好ましい。ディスクの組合せは、例えば特許文献(特開2005-35212号公報)などを参考に含水ゲルの物性、得たい粉砕ゲルのサイズ等に応じて、適宜変更される。
【0153】
このような基本構成を備えたゲル粉砕装置(複軸型混錬機)の例として、例えば、二軸以上の複軸型混練機(ニーダー)が挙げられる。具体的には、2軸、3軸、4軸又は8軸の混練機が挙げられる。このゲル粉砕装置は、生産効率の観点から連続式が好適に用いられる。具体的には、ゲル粉砕装置として、CKH型連続混練機(本田鐵工(株))、2軸押出機TEX((株)日本製鋼所)、2軸押出機TEXαIII((株)日本製鋼所)、コンティニュアースニーダー(CONTINUOUS KNEADER、(株)ダルトン)、KRCハイブリッドリアクタ(KRC HYBRID REACTER、(株)栗本鐵工所)、KRCニーダー(KURIMOTO-READCO CONTINUOUS KNEADER、(株)栗本鐵工所)、KEXエクストルーダー(KEX EXTRUDER、(株)栗本鐵工所)、KEXDエクストルーダー(KEXD EXTRUDER、(株)栗本鐵工所)、双腕型ニーダールーダー(KNEADER-RUDER、(株)モリヤマ)、2軸混練押出機TEX-SSG(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-CS(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-SX(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-DS(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-A(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-B(東芝機械(株))、2軸混練押出機TEX-BS(東芝機械(株))4軸、8軸混練押出機WDRシリーズ((株)テクノベル)等が例示される。したがって、本発明の好ましい実施形態において、ゲル粉砕装置は、連続式の複軸型混練機である。
【0154】
複軸型混練機による粉砕において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE)が、上限値として、150[J/g]以下であるのが好ましく、130[J/g]以下であるのがより好ましく、120[J/g]以下であるのが更に好ましい。また、下限値としては、20[J/g]以上が好ましく、40[J/g]以上がより好ましく、50[J/g]以上が更に好ましい。例えば、本発明において、含水ゲルをゲル粉砕するためのゲル粉砕エネルギー(GGE(1))は、20~150[J/g]であり、好ましくは40~130[J/g]であり、より好ましくは50~120[J/g]である。また、GGE(2)は、20~150[J/g]であり、好ましくは40~130[J/g]であり、より好ましくは50~120[J/g]である。当該GGE(1)、CGE(2)を上記範囲内に制御することで、適切なせん断・圧縮力を含水ゲルに与えながらゲル粉砕することができる。
【0155】
(ゲル温度)
複軸型混練機によるゲル粉砕において、含水ゲル状架橋重合体を50℃以上で連続的に粉砕する観点から、ゲル粉砕工程において、ゲル粉砕装置の投入口に投入される含水ゲル状架橋重合体の温度T1(以下、「投入口におけるゲル温度T1」又は単に「ゲル温度T1」とも称する)は、50℃以上であることが好ましい。このゲル温度T1は、好ましくは、投入口に設置された温度計にて測定される。ゲル粉砕された含水ゲルの装置への付着防止の観点から、このゲル温度T1は、60℃以上が好ましく、吸水性樹脂粒子の吸水性能を更に向上させる観点から、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。過度の乾燥を抑制する観点から、ゲル温度T1は130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。これと同様の理由から、粉砕時のゲル温度は、好ましくは130℃以下である。なお、ゲル温度T1は、ゲル粉砕装置に投入される含水ゲル状架橋重合体について、重合熱で温度が上昇した含水ゲル状架橋重合体を保温する、あるいは得られた含水ゲル状架橋重合体を加温することにより、所望の範囲内に調節することができる。
【0156】
ゲル粉砕された含水ゲル同士の凝集抑制の観点から、ゲル粉砕装置から排出される粒子状含水ゲル状架橋重合体の温度T2(以下、「排出口におけるゲル温度T2」又は単に「ゲル温度T2」とも称する)は、60℃~140℃が好ましく、70℃~130℃がより好ましく、80℃~120℃が更により好ましく、80℃~115℃が特に好ましく、100~115℃が最も好ましい。好ましくは、温度T2が係る温度範囲であり、かつ温度T1が前述した温度範囲となるように設定される。このゲル温度T2は、好ましくは、排出口に設置された温度計にて測定される。なお、ゲル温度T2は、ゲル粉砕装置の加熱手段及び/又は保温手段の設定温度、更には、ゲル粉砕装置内部での含水ゲル状架橋重合体の滞留時間を適宜調整することにより、所望の範囲内に調節することができる。
【0157】
複軸型混練機によるゲル粉砕では、上述したゲル流動化剤を添加するのが好ましい。ゲル流動化剤は、1回で添加しても、2回以上に分割して複数回添加してもよく、添加する位置も混練機のいずれの位置であってもよい。ゲル流動化剤を複数回に分割して添加する場合は、異なる位置で添加するのが好ましい。一実施形態では、複軸型混練機による粉砕において、複軸型混練機のゲル投入口付近(例えば、
図3中、短冊状含水ゲルを投入する投入口204)とゲル排出口付近(
図3中、ゲル流動化剤投入口217)とでゲル流動化剤を分割して添加する。ゲル流動化剤を分割添加することにより、粉砕ゲル同士の付着や融着が抑制される。ゲル粉砕工程において
図3及び
図4に示す複軸型混練機を用いた場合、小さい粒径の粒子状含水ゲルを得ることができるが、ゲル流動化剤を添加することにより、吸水性樹脂粒子において、粒子の過度な凝集を抑制することができ、連通孔が塞がることを抑制できる。これにより、吸水性樹脂粒子において連通孔及び独立気泡の存在割合の変動を抑制でき、本発明の効果を向上することができる。
【0158】
〔3-5〕分離工程
上記重合工程において逆相懸濁重合を行った場合、分離工程において、得られた含水ゲル状架橋重合体と疎水性有機溶媒とを分離する。分離工程で用いる装置の種類及び構造については吸水性能(液の取り込み速度及び戻り量)を損なうことがない限り、特に限定されないが、例えば、ろ過、沈降、遠心分離、圧搾等の公知の装置を利用することができる。また、重合工程で用いた攪拌羽を有する攪拌装置を用いて常圧又は減圧下で加熱し、共沸脱水することにより疎水性有機溶媒と分離してもよい。バッチ式逆相懸濁重合においては常圧又は減圧下での共沸脱水が好適に行われる。
【0159】
連続式懸濁重合の場合は、重合工程において形成された含水ゲルが、連続相をなす疎水性有機溶媒とともに反応装置から連続的に排出される。上述した通り、疎水性有機溶媒と含水ゲルは、例えば、ろ過、沈降、遠心分離、圧搾等の公知の方法により分離できる。また、好ましい形態としては、本工程で分離した疎水性有機溶媒を回収し、配管を通じて分散装置に循環させる循環型のプロセスが好ましい。
【0160】
〔3-6〕ゲル整粒工程
上記重合工程において逆相懸濁重合を行った場合、上記分離工程で疎水性有機溶媒から分離された含水ゲル重合体を、押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置を用いて含水ゲルを整粒することが好ましい。これにより、整粒された含水ゲル重合体(以後、ゲル整粒後の含水ゲルを整粒ゲルと表す)が得られる。
【0161】
「ゲル整粒装置」
本明細書において、「ゲル整粒」とは、粒子状含水ゲルからなる湿塊を多孔板の小孔から円柱状に押し出すことにより、ほぼ均一な形状及びサイズを有する粒を作製する操作である。つまり、多孔板を用いることにより、前工程の溶媒分離工程で過度に凝集した粗大凝集物の形状になっている含水ゲルは解砕され、小粒径の単粒子状の含水ゲルは適度な凝集状態とされる。したがって、本工程によって、比較的粒子径の均一な造粒形状の含水ゲル(整粒ゲル)であって、連通孔を十分に含有する凝集体を得ることができる。なお、整粒ゲルは単粒子状の含水ゲルを含んでいてもよい。
【0162】
ゲル整粒工程において使用される「押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置」としては、押出作用部と、多孔板(ダイ又はスクリーン)とを有し、押出作用部が通常は多孔板に向かって内容物を押出し供給する押出し部材を有し、多孔板から材料を押し出すことにより一定サイズの粒を作製可能な装置であれば特に限定されない。
【0163】
図5は、押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置の分類を模式的に示す図である。押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置は、押出作用部の構造から、スクリュー形式、回転多孔ダイス形式、及び回転ブレード形式に大別される。
【0164】
スクリュー形式のゲル整粒装置310は、回転駆動されるスクリュー311(押出作用部に相当する)と、小孔312が形成されたダイス313(多孔板に相当する)とを有する。投入された材料(矢印314を参照)は、回転駆動されたスクリュー311によってダイス313に向かって押出し供給され、ダイス313の小孔312から押し出される(矢印315を参照)。スクリュー形式のゲル整粒装置310は、材料が押し出される方向から、横押出し方式と、前押出し方式とがある。横押出し方式の場合、図示例のように、ダイス313は、スクリュー311の回転軸が伸びている方向と平行な方向に配置され、材料は、スクリュー311の回転軸と交差する方向に押し出される。前押出し方式の場合、ダイス313は、スクリュー311の回転軸と直交する方向に配置され、材料は、スクリュー311の回転軸が伸びている方向に押し出される。
【0165】
スクリュー形式のゲル整粒装置としては、スクリュー型前押出し式整粒機、スクリュー型横押出し式整粒機、スクリュー型前処理兼用押出し式整粒機などが用いられうる。スクリュー型横押出し式整粒機としては、アキラ機工株式会社製のニーダー付一軸押出し造粒機が挙げられる。スクリュー型前押出し式整粒機としては、株式会社ダルトン製のツインドームグランシリーズが挙げられる。スクリュー型前処理兼用押出し式整粒機としては、株式会社ダルトン製のマルチグランが挙げられる。
【0166】
回転多孔ダイス形式のゲル整粒装置320は、ロール321(押出作用部に相当する)と、小孔322が形成され回転駆動される回転ダイス323(多孔板に相当する)とを有する。ロール321は、回転ダイス323の内側に配置される。回転ダイス323とロール321との間に投入された材料(矢印324を参照)は、ロール321によって回転ダイス323の小孔322から押し出される(矢印325を参照)。
【0167】
回転多孔ダイス形式のゲル整粒装置としては、ロール型リングダイ式押出し整粒機が用いられうる。ロール型リングダイ式押出し整粒機としては、株式会社ダルトン製のディスクペレッターが挙げられる。
【0168】
回転ブレード形式のゲル整粒装置330は、回転駆動されるパドル331(押出作用部に相当する)と、小孔332が形成された円筒状ダイス333(多孔板に相当する)とを有する。パドル331は、円筒状ダイス333の内側に配置される。パドル331の上方には、回転駆動される押込み羽根336が配置される。投入された材料(矢印334を参照)は、回転駆動された押込み羽根336及びパドル331によって円筒状ダイス333に向かって押出し供給され、円筒状ダイス333の小孔332から押し出される(矢印335を参照)。
【0169】
回転ブレード形式のゲル整粒装置としては、ブレード型バスケット式押出し整粒機、ブレード型オシレーティング式押出し整粒機などが用いられうる。ブレード型オシレーティング式押出し整粒機としては、フロイント・ターボ株式会社製の円筒造粒機が挙げられる。ゲル整粒工程において使用される「押出作用部及び多孔板を有するゲル整粒装置」は、好ましくは、スクリュー型前押出し式整粒機又はスクリュー型横押出し式整粒機であり、より好ましくはスクリュー型前押出し式整粒機である。
【0170】
ここで、「多孔板」とは、粒子を一定のサイズにするための、多数の孔を有する部材であり、ダイ又はスクリーンに対応するものである。多孔板の形状は特に制限されず、平面状、曲面状、球面状(ドーム形状)などが採用されうる。例えばスクリュー型前押出し式押出し整粒機であれば、スクリューの先端部分にドーム形状のダイが配置されている。また、スクリュー型横押出し式押出し整粒機であれば、スクリューの外周部分に曲面状のスクリーンが配置されている。このときの押出し羽根も、球面状(すなわち、そのエッジの輪郭が球面の一部を形成するような形状)とされていることが好ましい。このように、ダイ又はスクリーンを球面状にし、押出し羽根の先端も球状にすることにより、孔径の小さなダイでも押出し整粒を容易に行うことができ生産性がより向上し、更に強度の強い整粒粒子が任意の粒子径で得られる。なお、この「球面」には、真円や楕円などの円の回転してできる軌跡面、更には複数の円を組み合わせて回転させて得られる軌跡面、半球面、曲面、双曲面、放物面など平面以外の面が広く含まれる。
【0171】
更に、この多孔板(ダイ又はスクリーン)の孔の形は特に限定されず、真円状、楕円状、六角形等の多角形、三角形状等、使用に適した形状に任意に選択することが可能であるが、整粒強度の観点から真円状、楕円状が好ましい。孔径についても特に制限されないが、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることが更により好ましい。かような上限以下であることで、得られる整粒ゲルのサイズが必要以上に増大することが防止され、粒径と連通孔総体積率が適切な吸水性樹脂粒子を得ることができる。孔径は、好ましくは0.3~1.5mmであり、より好ましくは0.3~0.8mmである。多孔板の孔径が0.3mm以上であれば、押出し操作を実施する際に効率よく押出すことができる。なお、上記孔径については以下のように定義する。まず、孔が真円でない場合は孔の短径と長径の相乗平均値を孔径として採用する。また、多孔板の孔の各孔径が異なる場合は、全ての孔の孔径を算出し、その相加平均値を多孔板の孔の孔径として採用する。更に多孔板の押出し作用部側からその反対側までの間で多孔板の孔径が変化する(多孔板の厚み方向において孔径が変化する)場合は、その中で孔径が最少となる値を採用する。
【0172】
多孔板(ダイ又はスクリーン)の厚みについても特に限定されないが、ゲル整粒装置の特性上、孔径が小さい場合には多孔板の厚みを薄くしないと押出し整粒が困難となる場合がある。したがって、多孔板(ダイ又はスクリーン)の厚みは、好ましくは多孔板の孔径の0.1~5倍程度であり、より好ましくは孔径の0.2倍~3倍であり、更に好ましくは孔径の0.5~2倍である。多孔板(ダイ又はスクリーン)の厚みが孔径の5倍以下であれば、孔部分での抵抗の増大が防止され、押出し整粒をスムーズに実施することができる。一方、多孔板の厚みが孔径の0.1倍以上であれば、整粒強度の低下が防止されうる。
【0173】
図6は、ゲル整粒装置における押出し部分を模式的に示す図である。図中符号「CL」は、ゲル整粒装置340における多孔板343(ダイ又はスクリーン)と押出作用部341との間の隙間を示している。図示例では、押出作用部341はスクリューから構成されている。押出作用部341が押出し羽根を有する場合には、隙間CLは、押出し羽根のエッジからゲル整粒装置340の多孔板343裏面までの距離である。また、図中符号「d」は、多孔板343の小孔342の孔径を示している。なお、図中の白抜き矢印344は、ゲルの押出し方向を示している。
【0174】
ゲル整粒装置340における多孔板343(ダイ又はスクリーン)と押出作用部341との間の隙間CL(押出作用部341が押出し羽根を有する場合には、押出し羽根エッジからゲル整粒装置340の多孔板343裏面までの距離)は、好ましくは0.1~10.0mmであり、より好ましくは、多孔板343の孔径dが0.3~1.5mmのとき、ゲル整粒装置340における多孔板343(ダイ又はスクリーン)と押出作用部341との間の隙間CL(押出作用部341が押出し羽根を有する場合には、押出し羽根エッジからゲル整粒装置340の多孔板343裏面までの距離)は、好ましくは0.1mm~10.0mmである。上記隙間が0.1mm以上であれば、多孔板343とスクリュー341とが接近し過ぎることによって多孔板343が損傷し、当該多孔板343の寿命が短くなるのを防止することができる。一方、上記隙間が10.0mm以下であれば、押出し操作を実施する際の圧力が増大することによって、含水ゲルの一次粒子同士が過度に密着し、凝集体中の連通孔が潰れ、連通孔の総体積率が低下するのを防止することができる。ここで、例えばスクリュー型前押出し式整粒機の場合には、押出作用部としてストレートスクリューがあり、このストレートスクリューとダイとの間が均圧部と称されるが、この均圧部の厚みが「多孔板(ダイ又はスクリーン)と押出作用部との間の隙間(クリアランス)」に相当する。また、横押出出し式整粒機の場合には、ダイがストレートスクリューの周囲に配置されているが、このダイとストレートスクリューとの間の距離がクリアランスに相当する。なお、上記隙間の長さ(距離)は、多孔板と押出作用部との間の隙間の最も短い長さ(距離)である。
【0175】
なお、回転ブレード形式(ブレード型バスケット式押出し整粒機及びブレード型オシレーティング式押出し整粒機)の場合は、回転ブレードのエッジから多孔板の裏面までの距離が多孔板と押し出し作用部の間の隙間CLとなり、押し出し整粒機と同様の数値範囲であることが好ましい。回転多孔ダイス形式(ロール型リングダイ式押出し整粒機)の場合は、当該隙間は実質0となるため、この限りではない。
【0176】
図7は、上述したような球面状(ドーム状)のダイを有するスクリュー型前押出し式整粒機の構成を模式的に示す模式図である。このスクリュー型前押出し式整粒機400においては、押出作用部としての送りスクリュー420が、ギヤーボックス410内の歯車機構を介して駆動部(図示せず)に接続され、スクリューケース430の内部に収納されている。また、上記スクリューケース430の頂部には、原料を投入するための投入ホッパー440が設けられ、スクリューケース430の前部には球面状ダイ450が取り付けられている。そして、送りスクリュー420の先端部は球面状とされ、この球面状先端部420aには1枚又は複数枚の球面状押出し羽根460が設けられている。この球面状押出し羽根460のエッジ460aの輪郭が上記球面状ダイ450の球面状裏面450aに沿った形状とされるとともに、上記球面状先端部420aの表面上に螺旋状に形成されている。このため、球面状押出し羽根460のエッジ460aの回転軌跡と上記球面状裏面450aとの間には等間隔の間隔(クリアランス)が全面にわたって形成されることになる。
【0177】
(含水ゲル温度)
整粒装置に入る含水ゲルの温度の下限は特に制限はないが、整粒効率及び含水ゲルへのダメージの抑制の観点から好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃、更に好ましくは80℃以上である。整粒装置投入時の含水ゲル温度の上限は特に制限はないが、一般的に100℃以下である。
【0178】
本ゲル整粒工程において、前述したゲル流動化剤等を添加することもできる。
【0179】
ゲル流動化剤は、上記の通りゲル整粒工程で添加することができるが、逆相懸濁重合法を採用した場合、それ以外の添加方法として、分離工程で疎水性有機溶媒から分離した含水ゲルに添加する、乾燥工程前の整粒ゲルに添加する、単量体水溶液調製工程で単量体水溶液に添加することが挙げられる。また、分散工程で分散助剤として用いる界面活性剤、高分子添加剤と重複してもよい。
【0180】
ゲル流動化剤として挙げられる界面活性剤及び高分子滑剤の合計添加量は、ゲル整粒機に投入するゲルの固形分に対して好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。
【0181】
〔3-7〕乾燥工程
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル、ゲル整粒工程で得られた整粒ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められ、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85~99重量%、更に好ましくは90~98重量%、特に好ましくは92~97重量%である。
【0182】
上記粒子状含水ゲルの乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥(通気バンド式乾燥機)がより好ましい。
【0183】
上記熱風乾燥における乾燥温度(熱風の温度)としては、吸水性樹脂の色調や乾燥効率の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは150~200℃である。なお、熱風の風速や乾燥時間等、上記乾燥温度以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総重量及び目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。バンド乾燥によって、乾燥後の吸水性樹脂の連通孔及び独立気泡の存在割合が適切な粒子状吸水剤を得ることができる。
【0184】
一実施形態では、乾燥工程における乾燥装置として、加熱装置が用いられる。この加熱装置は、その内部に粒子状含水ゲルを収容して回転する回転容器と、この回転容器の内部に位置して、その軸方向に延在し、かつこの回転容器とともに回転する複数の加熱管とを備えている。本願明細書において、この構成を有する加熱装置を、「回転型加熱装置」又は「加熱管付き回転型加熱装置」と称する場合がある。より好ましくは、この加熱装置は、その回転容器の外周面に、更に他の加熱手段を備えている。この加熱装置では、回転容器に収容された粒子状含水ゲルが、この容器の回転によって攪拌され、複数の加熱管との接触又は加熱管からの熱伝導によって、加熱される。複数の加熱管の輻射熱等により回転容器内面も加熱されるが、必要に応じて、粒子状含水ゲルは、回転容器の外周面に位置する加熱手段により、更に加熱される。この加熱装置では、必要により撹拌翼等他の攪拌手段も併用されるが、主として、粒子状含水ゲルを収容する回転容器の回転及びこの回転容器とともに回転する複数の加熱管の作用によって、粒子状含水ゲルが容器内で流動するため、被乾燥物である粒子状含水ゲルに対する機械的及び熱的ダメージが少ない。これにより、乾燥工程における微粉発生及び物性劣化が抑制される。更に、この加熱装置では、加熱管からの間接伝熱により乾燥されるため、熱風による乾燥(通気バンド式乾燥機や通気加熱式ロータリーキルン)のような乾燥物の飛散もなく、大量の廃ガス処理も要しないという利点がある。また、この加熱装置では、主として回転容器の回転により被乾燥物が流動するため、撹拌翼等で撹拌する連続攪拌乾燥機のように、粘着性を有する粒子状含水ゲルの撹拌に大きなエネルギーを要することもなく、乾燥後の吸水性樹脂の物性低下(例;吸水性能の低下、可溶成分の増加)、微粉発生、乾燥時の凝集等が回避されるという利点もある。
【0185】
乾燥工程において、回転型加熱装置を用いることにより、微粉発生が抑制されるとともに、乾燥工程において連通孔が塞がれることが抑制される。このため、乾燥工程において回転型加熱装置を用いることが好適な実施形態の一例である。これにより、適切な連通孔と独立気泡の存在割合の吸水性樹脂粒子を得ることができ、本発明の効果を向上することができる。
【0186】
一実施形態において、本発明に係る吸水性樹脂粒子は、ゲル粉砕工程においてダイスを使用しないミートチョッパーにおいて複数回のゲル粉砕が行われ、乾燥工程において回転型加熱装置が用いられる。これにより、粉砕されたゲル粒子同士の圧密が抑制されることで連通孔が塞がれにくくなることと、及び吸水性樹脂粒子において微細な粒子の凝集体として連通孔を数多く形成でき、かつ独立気泡を低減でき、本発明の効果をより向上することができる。
【0187】
一実施形態において、本発明に係る吸水性樹脂粒子は、ゲル粉砕工程において複軸型混練機が用いられ、乾燥工程において回転型加熱装置が用いられる。これにより、吸水性樹脂粒子において微細な粒子の凝集体として連通孔を数多く形成でき、かつ独立気泡を低減でき、本発明の効果をより向上することができる。すなわち、好ましい実施形態において、水溶液重合の後、2軸以上の複軸型混練機によるゲル粉砕工程、続いて回転型加熱装置による乾燥工程が行われる。
【0188】
本実施形態に用いられる加熱装置として、例えば水蒸気管付き回転型乾燥機が挙げられる。具体例としては、スチームチューブドライヤー(株式会社栗本鐵工所製)、スチームチューブドライヤー(宇部興産機械株式会社製)、スチームチューブドライヤー(月島機械株式会社製)、スチームチューブドライヤー(三井造船株式会社製)等挙げられる。
【0189】
図8には、加熱管付き回転型加熱装置502の一例が示されている。以下、
図8を用いて、この加熱装置502の基本構成を説明する。加熱管付き回転型加熱装置の使用方法、及び加熱管付き回転型加熱装置を用いた乾燥工程及び表面処理工程については、WO2018/092863に記載の条件が本発明にも適用される。
【0190】
図8に図示される通り、この加熱装置502は、主部504、投入部及び取り出し部506、スチーム出入り部508を有している。主部504は、回転容器510、多数の加熱管512、第一歯車514、第二歯車516を有している。回転容器510は、概して円筒状である。
図8における左右方向は、この回転容器510の軸方向である。
【0191】
この回転容器510の中に、多数の加熱管512が収容されている。それぞれの加熱管512は、回転容器510の軸方向に延在して、回転容器510の両端を貫通している。後述する通り、多数の加熱管512は、軸方向において、いずれも回転容器510の内周面とは接触していない。
【0192】
第一歯車514は、回転容器510の外周面に固定されている。第二歯車516は、第一歯車514と噛み合っている。
【0193】
投入及び取り出し開口部506より、乾燥、加熱対象物の投入、及び処理物の取り出しを行う。なお、乾燥途中の粒子状含水ゲルに表面架橋剤溶液を添加する場合は、投入及び取り出し開口部506からスプレー等で噴霧添加すればよい。
【0194】
スチーム出入り部508は、スチーム入口544及びドレーン546を有している。スチーム入口544は、多数の加熱管512と連通している。ドレーン546も、多数の加熱管512と連通している。
【0195】
この加熱装置502によって乾燥工程が実施されるには、スチーム入口544から加熱管512に向かってスチームが導入される。このスチームにより、回転容器510の中の温度が高まる。スチームの一部は、熱交換によって冷却される。冷却されたスチームは、水となり、ドレーン546から排出される。水となり排出されたスチームを補うように、スチーム入口544から連続的にスチームが導入されることにより、回転容器510内部の温度が制御される。
【0196】
回転容器510の中には、ガスが導入される。ガスは、回転容器510の中に充満する。過剰なガスは回転容器510から排出される。
【0197】
第二歯車516が、図示されない駆動手段(例えばモーター)により回転させられる。第二歯車516の回転により第一歯車514が回転し、さらに回転容器510が回転する。回転容器510と共に、多数の加熱管512も回転する。図示されないが、パッキンによって回転容器510とスチーム出入り部508は縁切りがされているので、回転容器510が回転してもスチーム出入り部508は回転しない。
【0198】
〔3-8〕粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂」と称する)を得る工程である。
【0199】
本発明の粉砕工程で使用される機器としては、例えば、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられ、必要により併用される。
【0200】
また、本発明の分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程、分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)、その他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)で適宜実施できる。
【0201】
上記工程で得られる吸水性樹脂(表面架橋工程前の吸水性樹脂、いわゆるベースポリマー)は、重量平均粒子径(D50)として、好ましくは200~600μm、より好ましくは200~550μm、更に好ましくは250~500μmである。また、粒子径106μm未満の粒子の割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値としては、何れの場合も少ないほど好ましく、0重量%が望まれるが、0.1重量%程度でもよい。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50、より好ましくは0.25~0.40、更に好ましくは0.27~0.35である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2-02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
【0202】
上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」又は「吸水性樹脂粉末」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての粒子状吸水剤についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理(表面架橋工程)されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。
【0203】
〔3-9〕表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粒子の表面層(吸水性樹脂粒子の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、加熱処理工程及び冷却工程(任意)から構成される。
【0204】
該表面架橋工程において、吸水性樹脂粒子表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
【0205】
(表面架橋剤)
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機又は無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。例えば、米国特許7183456号に開示される1種又は2種以上の表面架橋剤が挙げられる。より具体的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物又はそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物(例えばエチレンカーボネート)、環状尿素化合物等が挙げられる。
【0206】
有機表面架橋剤の具体例として、(ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコール、(ジ、ポリ)プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチルー1,3-ペンタンジオール、(ポリ)グリセリン、2-ブテンー1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジ又はトリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリアルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ、ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;2-オキサゾリドン、N-ヒドロキシエチル-2-オキサゾリドン、1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、及び、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン;登録商標);γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル3-オキセタンエタノール、3-クロロメチル-3-メチルオキセタン、3-クロロメチル-3-エチルオキセタン、多価オキセタン化合物などのオキセタン化合物、2-イミダゾリジノン等の環状尿素化合物等が挙げられる。
【0207】
前記多価アルコールとしては、炭素数が2~8の多価アルコールが好ましく、炭素数3~6の多価アルコールがより好ましく、炭素数3ないし4の多価アルコールが更に好ましい。更に、ジオールが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールが例示され、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールから選ばれる多価アルコールが好ましい。
【0208】
また、エポキシ化合物としてはポリグリシジル化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテルが好適に使用される。
【0209】
上記有機表面架橋剤に加えて、表面架橋をより効果的に行う観点から、イオン結合性表面架橋剤としてポリアミンポリマーなどの多価カチオン性ポリマーを併用してもよい。
【0210】
該表面架橋剤の使用量(複数使用の場合は合計使用量)は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部である。また、該表面架橋剤は水溶液として添加することが好ましく、この場合、水の使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。更に必要に応じて、親水性有機溶媒を使用する場合、その使用量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0211】
(混合工程)
本工程は、吸水性樹脂粒子と上記表面架橋剤とを混合する工程である。該表面架橋剤の混合方法については、特に限定されないが、予め表面架橋剤溶液を作製しておき、該液を吸水性樹脂質量部に対して、好ましくは噴霧又は滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が挙げられる。
【0212】
該混合を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が挙げられる。重合工程において逆相懸濁重合を採用した場合は、分離工程において有機溶媒を留去又は共沸脱水する際に表面架橋剤を添加し、溶媒分離と同時に表面架橋を行ってもよい。
【0213】
(加熱処理工程)
本工程は、上記混合工程から排出された混合物に熱を加えて、吸水性樹脂粒子の表面上で架橋反応を起させる工程である。
【0214】
該架橋反応を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくはパドルドライヤーが挙げられる。該架橋反応での反応温度は、使用される表面架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、好ましくは50~300℃、より好ましくは100~200℃である。
【0215】
(冷却工程)
本工程は、上記加熱処理工程後に必要に応じて設置される任意の工程である。
【0216】
該冷却を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは加熱処理工程で使用される装置と同一仕様の装置であり、より好ましくはパドルドライヤーである。熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるためである。なお、上記加熱処理工程で得られた吸水性樹脂粒子は、該冷却工程において、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃に、必要に応じて強制冷却される。
【0217】
〔3-10〕添加剤添加工程
本工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、多価金属塩、カチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、水不溶性無機粒子、界面活性剤、非高分子水溶性化合物等の添加剤を添加する工程である。上述したように、該添加剤は上記表面架橋剤(水溶液)と同時に、吸水性樹脂粒子と混合することもできる。
【0218】
(多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー)
得られる吸水性樹脂の通液性、吸湿流動性等の向上の観点から、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを添加してもよい。
【0219】
上記多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーとして、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔7〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0220】
(キレート剤)
得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)、劣化防止等の観点から、キレート剤を添加してもよい。
【0221】
上記キレート剤として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔2〕キレート剤」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0222】
(無機還元剤)
得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)、劣化防止、残存モノマー低減等の観点から、無機還元剤を添加してもよい。
【0223】
上記無機還元剤として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔3〕無機還元剤」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0224】
(α-ヒドロキシカルボン酸化合物)
得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)等の観点から、α-ヒドロキシカルボン酸を添加してもよい。なお、「α-ヒドロキシカルボン酸化合物」とは、分子内にヒドロキシル基を有するカルボン酸又はその塩のことで、α位にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸である。
【0225】
上記α-ヒドロキシカルボン酸化合物として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔6〕α-ヒドロキシカルボン酸化合物」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0226】
(水不溶性無機粒子)
吸水性樹脂粒子の流動性改善等の観点から、水不溶性無機粒子を添加してもよい。具体的には、上記〔2-7〕の欄で記載した水不溶性無機粒子が挙げられる。
【0227】
(界面活性剤)
得られる吸水性樹脂の物性(例えば、吸水速度)向上等の観点から、界面活性剤を添加してもよい。
【0228】
上記界面活性剤として、具体的には、国際公開第97/017397号や米国特許第6107358号に開示された界面活性剤、即ち、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0229】
(非高分子水溶性化合物)
吸水性樹脂の粉塵低減等の観点から、非高分子水溶性化合物を添加してもよい。国際公開第2014/034667号の「非高分子水溶性化合物」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
【0230】
本発明においては、上述した添加剤以外の添加剤を、吸水性樹脂に種々の機能を付加させるため、添加することもできる。該添加剤として、具体的には、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。
【0231】
該添加剤の使用量(添加量)は、その用途に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。また、該添加剤は、上記工程とは別の工程で添加することもできる。
【0232】
〔3-11〕その他の工程
本発明においては、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉の再利用工程等を必要に応じて設けることができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等の1種又は2種以上の工程を更に含んでもよい。なお、「整粒工程」は、表面架橋工程以降の微粉除去工程や吸水性樹脂が凝集し、所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程を含む。また、「微粉の再利用工程」は、本発明のように微粉をそのまま添加する形態の他、大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程に添加する工程を含む。
【0233】
〔4〕粒子状吸水剤の用途
本発明の粒子状吸水剤は、吸水を目的とした用途に用いられ、吸収体として広く使用される。また、当該吸収体を含む吸収物品として用いられる。特に、本発明の粒状吸水剤は、加圧下での逆戻りが低減されることから、吸収物品の中でも、ヒトまたは動物が使用する、尿や血液等の体液を吸収するための衛生物品に適した吸収体(すなわち、後述する「装着タイプの吸収体」)として、好適に用いられる。また、ある物(例えば、床、ベッドシーツ等)の上に配置して用いられるヒトまたは動物の尿や血液等の体液を吸収するための衛生物品に適した吸収体(すなわち、後述する「配置タイプの吸収体」)としても、好適に用いられる。装着タイプの吸収体としては、例えば、紙オムツ、失禁パッド、生理用ナプキン等が挙げられ、配置タイプの吸収体としては、ペットシート、介護用防水シーツ、災害用簡易トイレ等が挙げられる。その他の吸収性物品の一例としては、例えば、ネコ砂、ドリップ吸収材、鮮度保持材、結露防止シート、等が挙げられる。その他の吸水性樹脂の用途としては、土壌保水剤、育苗用シート、種子コーティング材、使い捨てカイロ、冷却用バンダナ、保冷剤、医療用廃液固化剤、残土固化材、水損防止廃液ゲル化剤、吸水土のう、湿布材、化粧品用増粘剤、電気・電子材料通信ケーブル用止水材、ガスケットパッキング、肥料用徐放剤、各種徐放剤(空間除菌剤、芳香剤等)、創傷保護用ドレッシング材、結露防止用建築資材、油中水分除去剤等が挙げられる。また本発明の粒子状吸水剤は、塗料、接着剤、アンチブロッキング剤、光拡散剤、艶消し剤、化粧板用添加剤、人工大理石用添加剤、トナー用添加剤等として、吸水・膨潤させ樹脂や基材に混合する用途でも使用することができる。
【0234】
すなわち、本発明の好適な一実施形態は、上記形態の粒子状吸水剤を含む吸収体である。
【0235】
また、本発明の他の好適な一実施形態は、上記形態の吸収体を含む衛生物品である。
【0236】
吸収体としては、粒子状吸水剤と繊維基材(例えば、親水性繊維)とを主成分して成形された吸収材が挙げられる。上記吸収体中の粒子状吸水剤と親水性繊維との合計重量に対する粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)は、20~100重量%、より好ましくは25~90重量%、特に好ましくは30~80重量%、最も好ましくは40~80重量%が更に好ましい。上記吸収体中のコア濃度が高いほど、吸収体や吸収物品等の製造時における粒子状吸水剤の吸水性能の影響をより受けるものとなる。このような吸収体は、例えば、親水性繊維等の繊維基材と粒子状吸水剤とをブレンド又はサンドイッチして成形される。用いられる繊維基材としては、例えば、粉砕された木材パルプ等の親水性繊維、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等が挙げられる。これらの繊維基材は、好ましくはエアレイドしてなるものがよい。
【0237】
また、吸収体としては、2枚のシート(例えば、不織布)間に吸水性樹脂を固定化した(パルプレスの)吸収性シートであってもよい。
【0238】
また、上記吸収物品とは、上記吸収体、液透過性を有する表面シート及び液不透過性を有する背面シートを備えてなるものである。上記吸収性物品は、吸収体(吸収コア)を製造し、該吸収コアを、液透過性を有する表面シートと液不透過性を有する背面シートでサンドイッチする。その後、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することにより、大人用紙オムツや生理用ナプキン等の吸収物品が得られる。なお、このとき、上記吸収コアは、例えば、密度0.06~0.50[g/cm3]、坪量0.01~0.20[g/cm2]の範囲に圧縮成形される。
【0239】
以下では、上記形態の粒子状吸水剤を含む吸収体の好ましい形態を説明する。
【0240】
〔4-1〕装着タイプの吸収体(装着タイプ)
一実施形態において、本発明の粒子状吸水剤を含む吸収体は、ヒトや動物に装着する吸収体性物品を構成する吸収体として用いられる。本実施形態において、吸収体は、液を直接的に吸収する吸液面が表面側に形成された第1の基材と、前記第1の基材の裏面側に配置される吸水層と、を有する吸収体であって、前記吸水層は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分として含む粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤は、外部と通じる空間である連通孔と、外部と通じない閉鎖空間である独立気泡と、を含み、前記連通孔の総体積率は、10体積%以上であり、前記独立気泡の総体積率は、0.5体積%以下であり、下記(a)及び(b)の少なくとも1つを満たす、吸収体:(a)前記吸水層において前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成される;(b)前記第1の基材は、空隙率が95%以上の液体透過性シートである。
【0241】
本実施形態の吸収体は、まず、特定の粒子状吸水剤、すなわち上記形態の粒子状吸水剤を用いていることに特徴を有する。よって、本実施形態に係る吸収体において、粒子状吸水剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、連通孔と独立気泡とを含む形状を有し、連通孔の総体積率は10体積%以上、かつ、独立気泡の総体積率は0.5体積%以下である。以下では、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とし、連通孔と独立気泡とを含む形状を有し、連通孔の総体積率は10体積%以上、かつ、独立気泡の総体積率は0.5体積%以下である粒子状吸水剤を、「特定の粒子状吸水剤」と称する場合がある。特定の粒子状吸水剤の構成については、上述のとおりである。特定の粒子状吸水剤を吸水層に用いることで、液の取り込み速度が高く、かつ戻り量が低減した吸収体とすることができる。本実施形態では、この優れた吸収性能を有する特定の粒子状吸水剤を用いて、さらに優れた吸収性能を発現することができる構成を見出したものである。
【0242】
なお、本明細書中、液の吸収速度は、吸収体において所定の量の液体が吸収される時間を示し、上記時間が短いことが良好とされる。また、戻り量(逆戻り量又はRe-wetとも称される)とは、吸収体に吸収された液体が、吸収体に圧力が加わることにより放出される液体の量を示し、戻り量は少ないことが良好とされる。
【0243】
本実施形態の吸収体は、吸水層が特定の粒子状吸水剤を含むことに加えて、下記(a)及び(b)の少なくとも1つを満たすことが好ましい:(a)前記吸水層において前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成される;(b)前記第1の基材は、空隙率が95%以上の液体透過性シートである。
【0244】
かかる構成によって、液の取り込み速度が高く、かつ戻り量が低減された吸収体、すなわち、液の取り込み速度及び戻り量が有意に優れた吸収体とすることができる。本実施形態の吸収体は、第1の基材の表面は、液を直接的に吸収する吸液面を形成する。本明細書中、「直接的」とは、吸水層に接触する前に、液体が基材に接触、または、基材を透過することである。本形態において、吸水層に含有されていた粒子状吸水剤の一部が第1の基材を透過して第1の基材上に移動して一部露出しても、それは吸水層が配置されているとはみなさない。なお、当該移動の要因は、例えば、吸収体が最終製品となり、輸送や運搬がなされて生じた振動などが想定される。第1の基材上に粒子状吸水剤を意図的に散布又は配置したような場合は、本形態の範疇ではない。
【0245】
本実施形態の別の形態において、第1の基材の表面が直接的に吸収する吸液面であるため、第1の基材上には吸水層が配置されていない。よって、本実施形態に係る吸収体は、液を直接的に吸収する吸液面が表面側に形成された第1の基材と、前記第1の基材の裏面側に配置される吸水層と、を有する、吸収体であって、前記第1の基材の表面側には吸水層が配置されておらず、前記吸水層は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分として含む粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤は、外部と通じる空間である連通孔と外部と通じない閉鎖空間である独立気泡とを含み、前記連通孔の総体積率は、10体積%以上であり、前記独立気泡の総体積率は、0.5体積%以下であり、下記(a)及び(b)の少なくとも1つを満たす、吸収体:(a)前記吸水層において前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成される;(b)前記第1の基材は、空隙率が95%以上の液体透過性シートである。
【0246】
本発明者らは、従来の吸収体においては、本願の実施例における戻り量の測定において、戻り量が顕著に多いことを見出した。つまり、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があると、通常の構成であれば、液量が設定の吸収量以上となって過剰な「戻り」が発生してしまう。これに対し、本実施形態では、(a)及び(b)の少なくとも1つの構成を満たすことにより、吸液面より導入された液を、吸液面上に滞留することなく(さらには、導入した液を局所的に滞ることなく)、吸水機能を担う下層の吸水層に液を効率的に送り込むことができる。
【0247】
(a)の構成によれば、吸水層において粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成されている。ここで、粒子状吸水剤が含まれる領域の間に存在する間隙は、液の導入があった場合に、第1の基材から吸水層へと液が導入される際の通液路として機能することができる。すなわち、通液路が存在することにより、吸液面より導入された液を、吸液面上に滞留することなく(さらには、導入した液が局所的に滞ることなく)、吸水層に液を効率的に送り込むことができる。具体的には、第1の基材中を通過した液(例えば、尿)が、吸水層の表面全体と間隙とに導入される。間隙に導入された液は、粒子状吸水剤が含まれる領域に対し、通液を妨げる粒子状吸水剤がなく、拡散しやすくなる。液が拡散した結果、液を導入した部位の粒子状吸水剤の液吸収量が多く、液導入部から離れた部位の粒子状吸水剤の液吸収量が少なくなるといった、液の吸収量に偏りが生まれることを防止する。このため、粒子状吸水剤が飽和膨潤した部位が発生する、つまり、液を吸収できない部位が発生して戻り量が増加するといった作用を防止することができる。よって、結果として、戻り量が低減できるものと考えられる。
【0248】
また、間隙が、吸収体の長手方向に伸びた形状であることにより、液が吸液面に局所的に導入された場合であっても、吸水層に達した液を面方向に拡散しやすくなる。また、本実施形態の吸収体は、優れた吸収性能を有する特定の粒子状吸水剤を吸水層に用いている。特定の粒子状吸水剤を含む吸水層において吸収体の長手方向に延びた形状の間隙を設けることにより、液が吸液面に局所的に導入された場合の拡散が効率的に発揮される。すなわち、特定の粒子状吸水剤は、優れた吸収性能(液の取り込み速度)を有しているため、局所的に導入された液もすぐ吸収することができるが、その周辺の粒子状吸水剤にも液が導入される構成(すなわち、吸収体の長手方向に伸びた間隙を設けること)により、その周辺の粒子状吸水剤の吸収性能も十分に利用することができる。よって、本構成とすることにより、特定の粒子状吸水剤の吸収性能をさらに優れたものとできる。
【0249】
また、例えば、粒子状吸水剤が液を吸収して膨潤した場合、粒子状吸水剤が含まれる領域はその体積が増加するため、間隙とされていた領域まで膨潤した粒子状吸水剤が侵入し、間隙が減少してしまう場合がある。この場合、断続的に複数回の液の導入があったとしても、間隙の減少に応じて徐々に液の吸収能力が低下することが考えられる。そして、間隙の減少に伴い、間隙を液が通過しにくくなり、粒子状吸水剤が部分的に飽和膨潤しやすくなるため、吸水層から液が放出される場合は、第1の基材の吸液面まで逆戻りする量が徐々に増加していくことになる。これにより、逆戻りした液が肌まで上がる(肌に接する)ことになり、不快感を生じることになる。
【0250】
これに対し、本実施形態の吸収体は、上述のように特定の粒子状吸水剤を吸水層に用いており、さらに吸水層において吸収体の長手方向に伸びた間隙を設けることにより、粒子状吸水剤の吸収性能を最大限に活用できるため、このような逆戻りを有意に低減できることを見出した。すなわち、本実施形態によれば、特定の粒子状吸水剤と(a)の構成とにより、優れた吸収体となることを見出したものである。
【0251】
(b)の構成によれば、第1の基材は、空隙率が95%以上の液体透過性シートである。ここで、本明細書中、「基材の空隙率」とは、「基材を構成する繊維基質」の空隙率を意味し、下記(式1)で表される。
【0252】
空隙率(%)=[1-(M/(A×T×D))]×100 (式1)
M:基材(繊維基質)の質量(g)
A:基材(繊維基質)の面積(cm2)
T:基材(繊維基質)の厚み(cm)
D:基材(繊維基質)を形成する繊維の密度(g/cm3)。
【0253】
第1の基材の空隙率が95%以上の液体透過性シートの場合、第1の基材中において多くの空隙が存在し、液体が導入された場合に流路を形成しやすい。これにより、吸液面(第1の基材の上面)より導入された液を、吸液面上に滞留することなく(さらには、導入した液を局所的に滞らせることなく)、吸水層全面に液を効率的に送り込むことができる。具体的には、第1の基材中を液が通過する際において液の面方向の拡散性が高く、拡散された液(例えば、尿)を、吸水層の表面全体に広く隈なく移行する(マイグレートする)からと考えられる。すなわち、吸収された液が吸水層に到達する際には、液は面方向に拡散されており、ゆえに、液が多量に吸水層に導入されても、吸水層は局所でなく面方向に広がった液を吸収することになる。よって、吸水層において十分に液を吸収及び保持することができる。そして、いったん液が吸水層に吸液されると、特定の粒子状吸水剤の優れた吸収性能により、吸水層で吸収した液が逆戻りして第1の基材の吸液面まで逆戻りすることを有意に低減することができ、これにより逆戻りした液が肌まで上がる(肌に接する)ことを抑制することできる。
【0254】
また、本実施形態に係る吸収体は、例えば、走ることを覚え始めの、膀胱がまだ小さな乳児が昼間等の活動的に動き回っている時間帯に使用する吸収性物品(例えば、オムツ)として好適であるが、無論使用形態がこれに限定されるわけではない。また、本明細書中に記載したメカニズム等が本願の請求の範囲の技術的範囲を限定することはない。
【0255】
以下、添付した図面を参照しながら、本実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0256】
第1の実施形態:「(a)の構成による吸収体」
本発明の第1の実施形態に係る吸収体は、液を直接的に吸収する吸液面が表面側に形成された第1の基材と、前記第1の基材の裏面側に配置される吸水層と、を有する吸収体であって、前記吸水層は、特定の粒子状吸水剤を含み、(a)前記吸水層において前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成される;を満たす吸収体である。
【0257】
一実施形態において、第1の実施形態に係る吸収体は、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する。すなわち、一実施形態において、吸収体は、第2の基材を更に含み、吸水層は、第1の基材と第2の基材との間に位置する。
【0258】
第1の実施形態について、
図9~
図14に基づいて説明する。
図9は、第1の実施形態に係る吸収体において、短手方向に沿って切断した、吸収体の断面を表す模式図である。
図10は、
図9のA-A線に沿った上からの断面図を表す模式図である。
図11は、第1の実施形態に係る吸収体において、間隙の他の形態を表す模式図である。
図12~
図14は、
図9のA-A線に沿った上からの断面図を表す模式図であり、間隙の他の実施形態を示す模式図である。
図9及び
図11において、矢印は、吸収される液が導入される方向を示している。
【0259】
図9に示すように、吸収体50は、第1の基材51と、吸水層52と、第2の基材53とを含む。吸水層52は、第1の基材51及び第2の基材53に挟持された構造となっている。第1の基材51は、吸水層52に対して吸収される液(吸液される液)が導入される側に位置する。すなわち、第1の基材51は、液体の排出側(例えば紙オムツでは肌側)に配置される。第1の基材51と第2の基材53との間に吸水層52が配置される。
【0260】
吸水層52には、粒子状吸水剤54が含まれている。
図9において、吸水層52は、第1の基材51及び第2の基材53の間に粒子状吸水剤54が存在している状態を示す。一部の粒子状吸水剤54は各基材51,53から脱離していてもよい。粒子状吸水剤54(粒子状吸水剤54が含まれる領域)は、実質的に粒子状吸水剤54を含まない間隙55を隔てて配置されている。間隙55は、第1の基材51と第2の基材53との間に形成されている。したがって、吸水「層」とは、シートのような連続体だけを指すのではなく、第1の基材51及び第2の基材53間に一定の厚さと長さとをもって存在するものであればいずれの形態であってもよい。例えば、吸水層52は、第1の基材51と第2の基材53との間に、一定の厚さと長さとを有して断続的に存在していてもよい。
【0261】
吸水層52は、第1の基材51に接触している(もしくは、固着している)粒子状吸水剤54及び第2の基材53に接触している(もしくは、固着している)粒子状吸水剤54を含む。一部の粒子状吸水剤54は、各基材51,53に接触していなくてもよい(もしくは、固着していなくてもよい。各基材51,53から脱離していてもよい)。各基材51,53に粒子状吸水剤54を固着させる場合、例えば、接着剤を使用すればよい。
【0262】
第1の基材51内には、粒子状吸水剤54が存在してもよい。第1の基材51内の粒子状吸水剤54としては、例えば、第1の基材51に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤54や、第2の基材53に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤54が脱離して、第1の基材51内に捕捉された粒子状吸水剤54であってもよい。
【0263】
本実施形態において、第1の基材51と、吸水層52における粒子状吸水剤54とは、直接又は接着剤を介して接することが好ましく、及び/又は、第2の基材53と、吸水層52における粒子状吸水剤54とは、直接又は接着剤を介して接することが好ましい。
【0264】
間隙55は、吸水層において一部に形成されていればよく、吸水層の一部において、粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置されていればよい。
【0265】
ここで、
図10に示すように、間隙55は、吸収体50の長手方向に伸びて形成されている。
図10において、間隙55は、吸収体50の長手方向及び短手方向の中央に配置されている。例えば、吸収体50が長さ160mm×幅80mmのサイズを有する場合、間隙55は長さ60mm×幅10mmのサイズである。
【0266】
本実施形態に係る吸収体50は、間隙55の領域に粒子状吸水剤54が散布、配置されないため、間隙55の領域は、実質的に粒子状吸水剤54を含有しない。この間隙55の領域に粒子状吸水剤54以外の添加剤等を含有してもよい。例えば、間隙55は、第1の基材51と第2の基材53とが直接又は接着剤を介して接することにより形成されていてもよい。または、間隙55は、第1の基材51が粒子状吸水剤54(粒子状吸水剤54が含まれる領域)に追随した形状となってもよい。この場合、
図11に示すように、第1の基材51は、粒子状吸水剤54が含まれる領域上で粒子状吸水剤54が含まれる領域を覆うような形状となり、間隙55上では、粒子状吸水剤54が含まれる領域の上側面に沿った後、第2の基材53に向けて沈み込む形状となる。あるいは、第2の基材53が粒子状吸水剤54(粒子状吸水剤54が含まれる領域)に追随した形状となってもよい。この場合、第2の基材53は、粒子状吸水剤54が含まれる領域下で粒子状吸水剤54が含まれる領域を覆うような形状となり、間隙55下では、粒子状吸水剤54が含まれる領域の下側面に沿った後、第1の基材51に向けて持ち上げる形状となる(図示略)。
【0267】
第1の基材51及び/又は第2の基材53が粒子状吸水剤54に追随した形状となる場合、第1の基材51と第2の基材53とが接することにより粒子状吸水剤54が含まれる領域が隔たれている。本実施形態において、このような場合も、第1の基材51と第2の基材53とが接触しているが、通液路が維持されているので間隙55とみなす。吸水層52に第1の基材51(場合によっては第1の基材51及び第2の基材53)が入り込むことにより、吸水層52が隔てられるため、当該形態において吸水層52は断続的に存在する。また、第1の基材51の端部と第2の基材53の端部とを重ね合わすことにより、吸収体50の端部が第1の基材51と第2の基材53とにより閉じられる場合もある(図示略)。この場合においても、吸水層52の端部において第1の基材51(場合によっては第1の基材51及び第2の基材53)が入り込むことにより、吸水層52の端部において、吸水層52が存在しない状態となる。
【0268】
吸収体50において、第2の基材53上の一部に粒子状吸水剤54の非存在領域が設けられることにより、間隙55が形成される。本実施形態の吸収体50において、間隙55(すなわち、粒子状吸水剤54の非存在領域)は、吸収体50の長手方向に沿って伸びて設けられる。これにより、通液路としての機能が効果的に発揮できる。間隙55が長手方向に沿って設けられる形状としては、例えば、直線状、曲線状、又は波型であってもよい。間隙55は、連続した形状であれば、その設けられる位置は制限されないが、吸収性の観点から、吸収体50の短手方向における中央であるのが好ましい。間隙55の長さ(長手方向における長さ)は、本実施形態の効果が発揮できる範囲であれば制限されないが、吸収性の観点から、吸収体50の長さ(長手方向の長さ)に対して、1/50~1/1であるのが好ましく、より好ましくは1/20~1/1、さらに好ましくは1/10~1/1である。また、間隙55の幅(短手方向における長さ)は、本実施形態の効果が発揮できる範囲であれば制限されないが、吸収性の観点から、吸収体50の幅(短手方向の長さ)に対して、1/50~1/1であるのが好ましく、より好ましくは1/20~1/1、さらに好ましくは1/10~1/1である。また、間隙55は、1つであっても複数であってもよい。間隙55の形態の一例を
図7~
図9に示す。
【0269】
間隙55は、長手方向に伸びて配置された部分が一部分あればよい。例えば、
図12(A)に示すように、間隙55が吸収体50の長手方向の一端部から他端部まで形成されていてもよい。また、
図12(B)~(D)に示すように、長手方向に伸びた間隙55に対して直交、又は角度を有して交差する間隙55がさらに1以上設けられていてもよい。
図13(A)~(C)に示すように、長手方向に伸びた間隙55が複数設けられていてもよく、間隙55が断続的に設けられていてもよい。
図14(A)~(D)に示すように、間隙55は、波形、V型、O型及びこれらを組み合わせた形状であってもよい。
【0270】
第2の実施形態:「(b)の構成による吸収体」
本実施形態の第2の実施形態に係る吸収体は、液を直接的に吸収する吸液面が表面側に形成された第1の基材と、前記第1の基材の裏面側に配置される吸水層と、を有する吸収体であって、前記吸水層は、特定の粒子状吸水剤を含み、(b)前記第1の基材は、空隙率が95%以上である液体透過性シートである;を満たす吸収体である。
【0271】
一実施形態において、第2の実施形態に係る吸収体は、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する。すなわち、一実施形態において、吸収体は、第2の基材を更に含み、吸水層は、第1の基材と第2の基材との間に位置する。
【0272】
第2の実施形態について、
図15及び
図16に基づいて説明する。
図15は、第2の実施形態に係る吸収体50において、短手方向に沿って切断した、吸収体50の断面を表す模式図である。
図16は、第2の実施形態に係る吸収体における他の実施形態を示す図であり、短手方向に沿って切断した、吸収体の断面を表す模式図である。第2の実施形態では、吸水層52において間隙55が設けられないこと、第1の基材の空隙率が特定の範囲であること、第2の基材が積層構造となること以外は、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成は省略する。すなわち、
図15及び
図16における説明は、
図9~
図14の説明(符号)が同様に適用できる。
【0273】
図15に示すように、吸収体50は、第1の基材51と、吸水層52と、第2の基材53とを含む。吸水層52は、第1の基材51及び第2の基材53に挟持された構造となっている。第1の基材51は、吸水層52に対して吸収される液(吸液される液)が導入される側に位置する。すなわち、第1の基材51は、液体の導入側(例えば紙オムツでは肌側)に配置される。第1の基材51と第2の基材53との間に吸水層52が配置される。吸水層52には、粒子状吸水剤54が含まれている。
図15において、吸水層52は、第1の基材51及び第2の基材53の間に粒子状吸水剤54が存在している状態を示す。
【0274】
第2の実施形態において、第1の基材51は、空隙率が95%以上の液体透過性シートであり、第1の基材51は、空隙率が、好ましくは95.5%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは96.5%以上、特に好ましくは97.5%以上、最も好ましくは98%以上の液体透過性シートである。第1の基材の空隙率は、上記した方法に従って算出された値を採用する。第1の基材の空隙率は、嵩密度、目付量、材質、網目構造、製造工程条件などによって制御可能である。
【0275】
第2の実施形態において、第2の基材53は、第3の基材53aを重ねることによって形成されていてもよい。例えば、
図16に示すように、第2の基材53は、第3の基材53aが複数(例えば、3層)積層されることにより形成されている。これにより、吸収された液が第2の基材53に達した際に拡散され、第2の基材における液保持量が増えるため、吸収速度及び戻り量をさらに向上することができる。第3の基材53aは、2層以上積層されるのが好ましく、3層以上積層されるのがより好ましい。積層させる第3の基材53aの上限は、実用上、10層以下である。
【0276】
本実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0277】
以下、本実施形態に係る吸収体を構成する各部材について詳細に説明する。なお、以下の説明において、特に言及しないかぎり、第1の実施形態及び第2の実施形態のどちらにも適用されるものとする。
【0278】
[1]第1の基材
第1の基材は、吸液される液が導入される側に位置する、液体透過性の基材である。なお、吸液される液とは水に限らず、尿、血液、汗、糞、廃液、湿気、蒸気、氷、水と有機溶媒及び/又は無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含んでいれば特に制限されるものではない。好ましくは、尿、経血、汗、その他の体液を挙げることができる。
【0279】
本実施形態の第1の実施形態に係る吸収体において、第1の基材としての上記液体透過性の基材は、液体を透過することができる素材、構成および形状であれば特に制限されない。例えば、親水性繊維と熱融着性樹脂や接着剤などとを混合してシート状に加工した液体透過性シート(例えば不織布)でもよく、熱融着性樹脂や接着剤などを使用せずに親水性繊維を圧縮しただけの層状の成形物(例えばパルプ製のパッド)でもよい。なお、本明細書中、「液体透過性の基材」とは、液体を透過することができれば、素材、構成および形状は特に制限されない。「液体透過性シート」とは、親水性繊維と熱融着性樹脂や接着剤などとが混合され、シート状に加工されたものであるという点に制限される。よって、「液体透過性シート」と称する場合は、親水性繊維のみで形成されることがなく、かつ形状がシート状であるという限定された液体透過性の基材である。
【0280】
本実施形態の第2の実施形態に係る吸収体において、第1の基材としての上記液体透過性の基材は、液拡散性および戻り量の観点から、液体透過性に加えて保形性が高いことが好ましい。よって、第2の実施形態における第1の基材は、親水性繊維と熱融着性樹脂や接着剤などとを混合してシート状に加工した液体透過性シート(例えば不織布)であるのが好ましい。
【0281】
第1の基材が、液体透過性の基材であり、かつ、吸液される側に位置することで、本実施形態の効果である吸収体の性能(逆戻り量、面方向の漏れなど)を充分に発揮することができる。液体透過性の基材の透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましい。該透水係数は、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。
【0282】
第1の実施形態において、第1の基材は、目付量が3~100g/m2であるのが好ましく、5~90g/m2であるのがより好ましく10~80g/m2であるのがさらに好ましい。第1の基材の目付量がかような範囲であることにより、結果として吸収体の吸収速度がさらに高まり、戻り量をさらに低減できる。第2の実施形態において、第1の基材51は、目付量が3~100g/m2であるのが好ましく、5~90g/m2であるのがより好ましく10~80g/m2であるのがさらに好ましい。第1の基材の目付量がかような範囲であることにより、第1の基材において液が効率的に拡散でき、結果として吸収体の吸収速度がさらに高まり、戻り量をさらに低減できる。
【0283】
第1の実施形態及び第2の実施形態において、第1の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.01mm以上10mm以下であり、より好ましくは0.03m以上9mm以下であり、さらに好ましくは0.05mm以上8mm以下であり、特に好ましくは0.07mm以上7mm以下であり、最も好ましくは0.09mm以上6mm以下である。第1の基材の厚みがかような範囲であることにより、第1の基材の吸液面と、吸水層及び第2の基材との距離が十分に確保でき、いったん吸水層及び第2の基材へと達した液が逆戻りするのを有意に低減できる。第2の実施形態における第1の基材の厚みは、上記したとおりである。
【0284】
なお、本願における第1の基材、第2の基材、吸収体の厚みは、ノギスを用いて測定した。測定点数は、測定対象のシートにおいて、異なる箇所を5点とし、各箇所について2回測定し、測定値は合計5点の平均値とした。厚み測定時は、測定対象のシートに圧力が出来るだけかからないようにして、厚みを測定した。
【0285】
第1の基材の厚みや目付量は、第1の基材を構成する材料、第1の基材の製法などによって制御することができ、これらのバランスで第1の基材の厚みや目付量が定まる。
【0286】
「基材を構成する材料」
第1の基材を構成する材料としては、例えば、紙(衛生用紙、例えばティッシュペーパー、トイレットペーパー及びタオル用紙)、木材から得られるメカニカルパルプやケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等の親水性繊維、ネット、不織布、織布、フィルム等が挙げられる。本実施形態の第1の実施形態においては、透水性の観点から、第1の基材は、好ましくはパルプ等の親水性繊維または不織布が使用される。本実施形態の第2の実施形態においては、透水性と保形性の観点から、第1の基材は、好ましくは不織布が使用される。
【0287】
使用される親水性繊維または不織布としては特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性及び吸収体とした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース繊維)等が挙げられる。
【0288】
第1の基材として用いられうる不織布の材質としては、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維及びこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。これらの繊維は親水化処理が施されていてもよい。
【0289】
また、第1の基材として用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよい。
【0290】
なお、エアスルー法は、PE/PPやPE/PETなどの熱融着可能な複合繊維に熱風を吹きつけて、熱融着を行うとともに、繊維の間に含まれる空気の量を増やし、嵩を高くし、密度を低くする加工のことをいう。また、エアレイド法は、空気の流れに乗せて均一分散させ、金網上に吸い取らせて不織布を作る方法であり、パルプ繊維の分散に空気を利用しているため、嵩を高くし、密度を低くすることができる。第1の基材がエアスルー不織布であることにより、吸収される液が第1の基材の吸液面に接した後、速やかに第1の基材の中へ導入されやすい。すなわち、第1の基材をエアスルー不織布にすることにより、吸水力が低く、通液力の高い第1の基材とすることができ、吸収体における逆戻り量を有意に低減することができる。
【0291】
第1の実施形態においては、第1の基材は、パルプ等の親水性繊維のみで形成された基材、エアスルー法又はエアレイド法で得られた不織布(エアレイド不織布又はエアスルー不織布)であることが好ましく、エアスルー不織布がより好ましい。第1の実施形態の形一実施態において、第1の基材は、エアレイド不織布及びパルプからなる群より選択される少なくとも1種を含む。第2の実施形態においては、第1の基材は、エアスルー不織布が好ましい。
【0292】
[2]第2の基材
第2の基材が、液体透過性の基材であり、かつ、吸液される側の反対側に位置することで、本実施形態の効果である吸収体の性能(逆戻り量、面方向の漏れなど)を充分に発揮することができる。本実施形態の第1の実施形態および第2の実施形態に係る吸収体において、第2の基材としての上記液体透過性の基材は、液体を透過することができる素材、構成および形状であれば特に制限されない。例えば、親水性繊維と熱融着性樹脂や接着剤などとを混合してシート状に加工した液体透過性シート(例えば不織布)でもよく、熱融着性樹脂や接着剤などを使用せずに親水性繊維を圧縮しただけの層状の成形物(例えばパルプ製のパッド)でもよい。液体透過性の基材の透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましい。該透水係数は、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。
【0293】
第1の実施形態及び第2の実施形態において、第2の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.01mm以上50mm以下であり、より好ましくは0.05mm以上45mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上40mm以下であり、特に好ましくは0.15mm以上35mm以下であり、最も好ましくは0.2mm以上30mm以下である。なお、第2の実施形態において、第2の基材が第3の基材が複数積層されることにより形成される場合は、第2の基材の厚みは複数の第3の基材の合計の厚みを意味する。
【0294】
第1の実施形態において、第2の基材は、目付量が5~500g/m2であるのが好ましく、10~400g/m2であるのがより好ましく15~350g/m2であるのがさらに好ましい。第2の基材の目付量がかような範囲であることにより、結果として吸収体の吸収速度がさらに高まり、戻り量をさらに低減できる。第2の実施形態において、第2の基材は、目付量が5~750g/m2であるのが好ましく、10~650g/m2であるのがより好ましく15~550g/m2であるのがさらに好ましい。第2の基材の目付量がかような範囲であることにより、第1の基材において液が効率的に拡散でき、結果として吸収体の吸収速度がさらに高まり、戻り量をさらに低減できる。
【0295】
第2の基材の厚み、目付量は、第2の基材を構成する材料、第2の基材の製法などによって制御することができ、これらのバランスで第2の基材の厚みや嵩密度が定まる。
【0296】
「基材を構成する材料」
第2の基材を構成する材料は、第1の基材と同様のものが適用できる。第1の実施形態及び第2の実施形態において、透水性の観点から、第2の基材は、好ましくはパルプ等の親水性繊維及び不織布が使用される。また、不織布の材質としては、第1の基材と同様のものが適用でき、例えば、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維及びこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。
【0297】
また、第2の基材として用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよい。なお、スパンレース法は、繊維を高圧水流により攻絡させる方法で、接着剤を使用しない方法である。また、エアレイド法は、粉砕パルプをエアで分散させ吸引ケージロールやスクリーンメッシュベルトで受け止めてウェブを成形し、表面に接着剤や熱融着繊維等を用いて熱プレスする方法である。
【0298】
第2の基材は、パルプ等の親水性繊維のみで形成された基材、エアレイド法で得られたもの(エアレイド不織布)又はスパンレース法で得られたもの(スパンレース不織布)であることが好ましく、パルプ等の親水性繊維のみで形成された基材又はエアレイド不織布がより好ましく、エアレイド不織布がさらに好ましい。一実施形態において、第2の基材は、エアレイド不織布及びパルプからなる群より選択される少なくとも1種を含む。第2の基材がパルプ等の親水性繊維のみで形成された基材、エアレイド不織布又はスパンレース不織布であることにより、吸収体における吸収速度を向上させ、戻り量を有意に低減することができる。
【0299】
第2の実施形態において、第2の基材が第3の基材を重ねることによって形成される場合、第2の基材は、第3の基材を重ねることによって形成されるものであるのが好ましい。この場合、吸収体における吸収速度を向上させ、戻り量を有意に低減することができる。
【0300】
[3]吸水層
本実施形態に係る吸収体における吸水層は、特定の粒子状吸水剤を含む。第1の実施形態及び第2の実施形態において、吸収体に含有される粒子状吸水剤(好ましくは、特定の粒子状吸水剤)の含有量は、好ましくは50~400g/m2であり、より好ましくは75~380g/m2であり、さらに好ましくは100~350g/m2である。
【0301】
本実施形態に係る吸収体は、吸水層において、特定の粒子状吸水剤の他に、他の粒子状吸水剤、パルプ、消臭剤、抗菌剤、香料、各種の無機粉末、顔料、染料、吸水性繊維、酸化剤、還元剤等を含んでいてもよい。本実施形態に係る吸収体においては、粒子状吸水剤とパルプ等の親水性繊維とを混合した吸水層であってもよい。この場合、例えば、粒子状吸水剤と、粉砕した親水性繊維とをミキサー等の混合機を用いて乾式混合し、得られた混合物を、例えば、空気抄造等によってウェブ状に成形した後、必要により圧縮成形して製造する方法等により吸水層が作製できる。このような吸水層として、
図17に一例を示す。
【0302】
図17は、本実施形態の第2の実施形態に係る吸収体50において、短手方向に沿って切断した、吸収体50の断面を表す模式図である。また、
図17の形態は、吸水層の形態が異なること、吸水層の形態が異なることにより第2の基材を必須としないこと以外は、
図15及び
図16と同様である。
図17に示すように、吸収体50の吸水層52には、粒子状吸水剤54と親水性繊維56とが含まれている。なお、当該吸水層の形態は、第1の実施形態においても同様に適用される。よって、第1の実施形態においても、粒子状吸水剤54と親水性繊維56とを含む吸水層を有する吸収体50の場合、第2の基材53を有していなくてもよい。
【0303】
第2の実施形態の一実施形態において、第1の実施形態のように、吸水層において粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成されていてもよい。よって、第2の実施形態において、
図9~
図14の形態が同様に適用できる。第2の実施形態の一実施形態において、吸水層において粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成され、第2の基材が第3の基材を重ねることによって形成される。この場合、吸収体における吸収速度を向上させ、戻り量を有意に低減することができる。
【0304】
(粒子状吸水剤)
吸水層は、特定の粒子状吸水剤を含む。なお、別途記載のない限り、吸水剤が複数種類の粒子状吸水剤の混合物である場合は、以下の記載は、当該混合物の物性に関する説明である。すなわち、粒子状吸水剤の物性は、吸水層に含まれるすべての粒子状吸水剤を混合した場合の物性である。また、粒子状吸水剤の物性は、吸収体から、綿状パルプなどが混じらないように粒子状吸水剤のみを取り出して物性を測定してもよい。
【0305】
本実施形態に係る吸収体は、吸水層において、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分とし、連通孔と独立気泡とを含む形状を有し、連通孔の総体積率は10体積%以上、かつ、独立気泡の総体積率は0.5体積%以下である、特定の粒子状吸水剤を含む。このような特定の粒子状吸水剤については上述のとおりである。
【0306】
〔4-2〕配置タイプの吸収体
一実施形態において、本発明の粒子状吸水剤を含む吸収体は、ある物(例えば、ベッド、床等)の上に配置して用いられる吸収体物品に適している。本実施形態の吸収体も、装着タイプの吸収体と同様に、特定の粒子状吸水剤、すなわち上記形態の粒子状吸水剤を用いていることに特徴を有する。よって、配置タイプの吸収体は、吸水層を有し、前記吸水層は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分として含む粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤は、外部と通じる空間である連通孔と、外部と通じない閉鎖空間である独立気泡と、を含み、前記連通孔の総体積率は、10体積%以上であり、前記独立気泡の総体積率は、0.5体積%以下である。特定の粒子状吸水剤を吸水層に用いることで、液の取り込み速度が高く、かつ戻り量が低減した吸収体とすることができる。本実施形態では、この優れた吸収性能を有する特定の粒子状吸水剤を用いて、さらに優れた吸収性能を発現することができる構成を見出したものである。
【0307】
配置タイプの吸収体としては、特定の粒子状吸水剤を含む吸水層をそのまま吸収体としてもよい。この場合、吸収体(吸水層)と、吸収体(吸水層)を覆うように配置される液体透過性シートと、液体透過性シートとともに吸収体(吸水層)を挟み込むように配置された液体不透過性シートと、により後述の吸収性物品(〔4-3〕参照)となりうる。吸収体(吸水層)としては、特定の粒子状吸水剤を紙、ティッシュ又は不織布で包んだもの、又はパルプ、綿等と特定の粒子状吸水剤とを混合したものを紙、ティッシュ、不織布等で包んだものを使用することができる。吸収体(吸水層)は、液体透過性シートと液体不透過性シートの中央付近に配置され、ヒトまたは動物が排泄した尿等の排泄物を吸収する。
【0308】
この場合、吸収体(吸水層)は、溝が形成されていてもよい。溝は、吸収体(吸水層)をロールで圧し、あるいは、吸収体を構成する成分(粒子状吸水剤、パルプ、綿等)の厚さを薄くする等の方法によって形成することができる。溝は、連続的であっても、断続的であってもよい。また、吸収体(吸水層)の全面にエンボス加工を施してもよい。この場合、吸収体(吸水層)の全面又は一部において、吸収体(吸水層)上に複数の凹部が形成される。凹部は、吸収体(吸水層)をロールで圧する所謂エンボス加工プロセスによって形成することができる。凹部の形状は、特に制限されず、四角、三角、その他の多角形、丸、楕円等とすることができる。溝及び凹部の幅、深さは、特に制限されず、適宜調整される。
【0309】
一実施形態において、配置タイプの吸収体は、第1の基材と、前記第1の基材の裏面側に配置される吸水層と、を有する吸収体であってもよい。すなわち、一実施形態において、配置タイプの吸収体は、液を直接的に吸収する吸液面が表面側に形成された第1の基材と、前記第1の基材の裏面側に配置される吸水層と、を有する吸収体であって、前記吸水層は、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子を主成分として含む粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤は、外部と通じる空間である連通孔と、外部と通じない閉鎖空間である独立気泡と、を含み、前記連通孔の総体積率は、10体積%以上であり、前記独立気泡の総体積率は、0.5体積%以下であり、下記(a)及び(b)の少なくとも1つを満たす、吸収体:(a)前記吸水層において前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記間隙は前記吸収体の長手方向に伸びて形成される;(b)前記第1の基材は、空隙率が95%以上の液体透過性シートである。本実施形態において、好ましくは、吸収体は、上記(b)を満たす吸収体である。また、本実施形態において、より好ましくは、吸収体は、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する。すなわち、一実施形態において、吸収体は、第2の基材を更に含み、吸水層は、第1の基材と第2の基材との間に位置する。
【0310】
本実施形態において、第1の基材、第2の基材、吸水層については、下記の吸水層における粒子状吸水剤の目付量以外は、上述の装着タイプの吸収体と同様のものが使用できる。配置タイプの吸収体としては、比較的大きな面積(例えば、20cm×20cm以上)で用いられる。この場合においては、粒子状吸水剤の目付量は、5~100g/m2であるのが好ましい。
【0311】
〔4-3〕吸収性物品
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、〔4-1〕及び〔4-2〕で説明されている吸収体を、液体透過性シート及び液体不透過性シートによって挟持した構造を有している。ここで、液体透過性シートは、第1の基材側に位置し、液体不透過性シートが、第2の基材側に位置している。すなわち、本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、本発明の吸収体を液体透過性シートと、液体不透過性シートとで挟持することによりなり、液体透過性シートが、第1の基材側に位置し、液体不透過性シートが、前記第2の基材側に位置している。なお、吸収性物品における液体透過性シートは、上述の第1の基材において用いられる液体透過性シートとは別に用意されるものである。吸収性物品の具体例としては、紙オムツ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、介護用防水シーツ、災害用簡易トイレ、食品用ドリップシート、電力ケーブルの止水剤などが挙げられる。
【0312】
液体透過性シート及び液体不透過性シートとしては、吸収性物品の技術分野で公知のものを、特に制限なく用いることができる。また、吸収性物品は、公知の方法によって製造することができる。
【実施例】
【0313】
以下の実験例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの説明に限定解釈されるものではなく、各実験例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実験例も、本発明の範囲に含まれるものとする。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0314】
〔実施例1-1〕
(単量体水溶液の調製工程)
アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.65質量部、0.1質量%エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウム水溶液16.4質量部、及び脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を調製した。
【0315】
38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部をラインミキシングにて連続混合した。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は87℃まで上昇した。
【0316】
(単量体水溶液の重合工程)
更に、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部をラインミキシングにて連続混合した後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合時間3分間で連続的に重合を行って、帯状の含水ゲル状架橋重合体(1-1a)を得た。得られた帯状の含水ゲル(1-1a)を、重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、等間隔に連続して切断することで、切断長300mmの短冊状含水ゲル(1-1b)を得た。
【0317】
(含水ゲルの粉砕工程)
スクリュー押出機に得られた短冊状含水ゲル(1-1b)を投入して、ゲル粉砕を行った。該スクリュー押出機として、スクリュー軸の外径が86mmであり、先端部(押出口)に直径100mm、厚さ10mmの支持具(
図2B参照)を有する、
図2Aに示すミートチョッパー100を使用し、含水ゲル(1-1b)と同時に80℃の温水、水蒸気及び10質量%濃度のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を供給しながらゲル粉砕(第1ゲル粉砕)を行った。なお、含水ゲル(1-1b)の固形分に対して80℃の温水は1質量%、水蒸気は1質量%、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインは有効成分として0.05質量%となるように供給した。続いて、同様に温水、水蒸気及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を供給しながら、第1ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルを更にゲル粉砕(第2ゲル粉砕)した。続いて、同様に温水、水蒸気及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を供給しながら、第2ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルを更にゲル粉砕(第3ゲル粉砕)した。続いて、同様に温水、水蒸気及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を供給しながら、第3ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルを更にゲル粉砕(第4ゲル粉砕)した。なお、第1ゲル粉砕、第2ゲル粉砕、第3ゲル粉砕、第4ゲル粉砕いずれもスクリュー軸回転数は65rpmで行った。GGE(2)は第1ゲル粉砕、第2ゲル粉砕、第3ゲル粉砕、第4ゲル粉砕のトータルで35J/gであった。
【0318】
得られた粒子状含水ゲル(1-1c)は、固形分率が49質量%(含水率が51質量%)、固形分換算の平均ゲル粒子径が135μmであった。
【0319】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
得られた粒子状含水ゲル(1-1c)を、熱風乾燥機を用いて乾燥した。この乾燥機は、目開き1.2mmの金網からなる籠(底面のサイズ30cm×20cm)を備えている。粒子状含水ゲル(1-1c)500gを、この籠の底面に略均一になるように広げ、下方から190℃の熱風を30分間送風することにより、乾燥物(1-1A’)を得た。
【0320】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
冷却した乾燥物(1-1A’)をロールミルに供給して粉砕し、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、吸水性樹脂(1-1A)を得た。
【0321】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
次に、吸水性樹脂(1-1A)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部及び脱イオン水2.0質量部からなる表面架橋剤溶液を噴霧して混合した。この混合物を200℃で30分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-1B)を得た。
【0322】
(添加剤の添加工程)
表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-1B)100重量部に対して、キレート剤として、0.1重量%のエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウム水溶液10重量部を攪拌しながら添加し、1分間混合した。
【0323】
次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、リン酸三カルシウム0.5重量部を混合した。混合は表面架橋された吸水性樹脂粒子(1B)30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にリン酸三カルシウムと共に入れ、ペイントシェーカーを用いて3分間振とうし、粒子状吸水剤(EX-1-1)を得た。
【0324】
〔実施例1-2〕
(単量体水溶液の調製工程)
エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムをジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムに変更した以外は実施例1-1と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0325】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-2b)を得た。
【0326】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-2c)を得た。
【0327】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
実施例1-1の(粒子状含水ゲルの乾燥工程)と同様にして、乾燥物(1-2A’)を得た。
【0328】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
実施例1-1の(乾燥物の粉砕、分級工程)と同様にして、吸水性樹脂(1-2A)を得た。
【0329】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
得られた吸水性樹脂(1-2A)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部及び脱イオン水2.0質量部からなる表面架橋剤溶液を、連続式高速撹拌乾燥機(ホソカワミクロン社製タービュライザー)にて噴霧混合して、加湿物(1-2B’)を得た。
【0330】
得られた加湿物(1-2B’)を、
図8に示される基本構成を備えた乾燥装置(加熱管付き回転型加熱装置)を用いて加熱処理した。この乾燥機は、その内部に回転軸方向に延在する10本の加熱管を有する円筒状の回転容器(容積35L)を備えている。
【0331】
始めに、回転型加熱装置の各加熱管に、ゲージ圧1.8MPa(温度210℃)の水蒸気を導入し、回転容器の内表面を予め180℃超に加熱し、更に回転容器の外壁をトレスで充分に加熱した。次いで、乾燥機内に加湿物(1-2B’)を4.0kg投入し、フルード数Fr0.07となるように回転容器を回転させて、30分間加熱処理を行った。加熱処理後、乾燥機から取り出した吸水性樹脂を80℃以下に冷却して、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-2B)を得た。
【0332】
(添加剤の添加工程)
エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムをジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムに変更し、リン酸三カルシウム0.5質量部をハイドロタルサイト(DHT-6、協和化学工業社製)0.2重量部に変更した以外は実施例1-1の(添加剤の添加工程)と同様にして、粒子状吸水剤(EX-1-2)を得た。
【0333】
〔実施例1-3〕
(単量体水溶液の調製工程)
実施例1-2の(単量体水溶液の調製工程)と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0334】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-3b)を得た。
【0335】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-1の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-3c)を得た。
【0336】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
得られた粒子状含水ゲル(1-3c)を、
図8に示される基本構成を備えた乾燥装置(加熱管付き回転型加熱装置)を用いて乾燥した。この乾燥装置は、その内部に回転軸方向に延在する10本の加熱管を有する円筒状の回転容器(容積35L)を備えている。はじめに、各加熱管に2.7MPa(温度228.1℃)の水蒸気を導入して、回転容器内部(接触温度計で規定)を予め200℃超に加熱した後、更に回転容器の外壁もトレスで十分に加熱した。次いで、95℃の粒子状含水ゲル(1-3c)を4.0kg投入し、フルード数Fr0.07となるように回転容器を回転させて、回転容器内へ140℃のキャリア空気を65L/hrで供給し、40分間乾燥を行った。乾燥後、取り出し口で採取した乾燥物(1-3A’)は、固形分率98.5質量%であった。
【0337】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
続いて、加熱装置の取り出し口から排出された乾燥物(1-3A’)を、冷風により、強制的に80℃以下に冷却した後、その冷却物を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕し、850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、吸水性樹脂(1-3A)を得た。
【0338】
(吸水性樹脂粒子の表面架橋工程)
得られた吸水性樹脂(1-3A)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.2質量%及び水3質量%を含む表面架橋剤溶液を噴霧し、150℃で30分間加熱することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-3B)を得た。
【0339】
(添加剤の添加工程)
実施例1-1の(添加剤の添加工程)にて、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムをジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムに変更し、リン酸三カルシウム0.5重量部の代わりに疎水性シリカ(AEROSIL R-972、日本アエロジル株式会社製)0.3質量部を混合した以外は実施例1-1と同様にして、粒子状吸水剤(EX-1-3)を得た。
【0340】
〔実施例1-4〕
(単量体水溶液の調製工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の調製工程)と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0341】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-4b)を得た。
【0342】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-1の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-4c)を得た。
【0343】
(粒子状含水ゲルの乾燥及び表面架橋工程)
実施例1-3の乾燥装置へ、95℃の粒子状含水ゲル(1-4c)を投入してから10分経過後に、乾燥途中の粒子状含水ゲル(1-4c)の固形分に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.16質量%及び水2質量%を含む表面架橋剤溶液を、乾燥装置機内へノズルを挿入して噴霧添加した以外は、実験例3の(粒子状含水ゲルの乾燥工程)と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-4B)を得た。
【0344】
(添加剤の添加工程)
実施例1-1の(添加剤の添加工程)にて、リン酸三カルシウム0.5重量部の代わりにハイドロタルサイト0.6質量部を混合した以外は実施例1-1と同様にして、粒子状吸水剤(EX’-1-4)を得た。
【0345】
(粉砕、分級工程)
得られた粒子状吸水剤(EX’-1-4)を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕し、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、粒子状吸水剤(EX-1-4)を得た。
【0346】
〔実施例1-5〕
(単量体水溶液の調製工程)
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)を1.19質量部に変更し、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムをジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムに変更し、60質量%濃度の乳酸ナトリウム水溶液を3.1質量部追加した以外は実施例1-1と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0347】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-5b)を得た。
【0348】
(含水ゲルの粉砕工程)
スクリュー押出機に得られた短冊状含水ゲル(1-5b)を投入して、ゲル粉砕を行った。該スクリュー押出機として、スクリュー軸の外径が86mmであり、先端部(押出口)に直径100mm、厚さ10mmの支持具(
図2B参照)を有する、
図2Aに示すミートチョッパー100を使用し、含水ゲル(1-5b)と同時に80℃の温水、水蒸気、10質量%濃度のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液及び5質量%濃度の過酸化水素水溶液を供給しながらゲル粉砕(第1ゲル粉砕)を行った。なお、含水ゲル(1-5b)の固形分に対して80℃の温水は1質量%、水蒸気は1質量%、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインは有効成分として0.05質量%、過酸化水素は有効成分として0.09質量%となるように供給した。続いて、同様に温水、水蒸気、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液及び過酸化水素水溶液を供給しながら、第1ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルを更にゲル粉砕(第2ゲル粉砕)した。続いて、同様に温水、水蒸気、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液及び過酸化水素水溶液を供給しながら、第2ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルを更にゲル粉砕(第3ゲル粉砕)した。続いて、同様に温水、水蒸気、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液及び過酸化水素水溶液を供給しながら、第3ゲル粉砕で得られた粉砕ゲルを更にゲル粉砕(第4ゲル粉砕)した。なお、第1ゲル粉砕、第2ゲル粉砕、第3ゲル粉砕、第4ゲル粉砕いずれもスクリュー軸回転数は65rpmで行った。GGE(2)は第1ゲル粉砕、第2ゲル粉砕、第3ゲル粉砕、第4ゲル粉砕のトータルで32J/gであった。
【0349】
得られた粒子状含水ゲル(1-5c)は、固形分率が48.0質量%(含水率が52.0質量%)、固形分換算の平均ゲル粒子径が149μmであった。
【0350】
(粒子状含水ゲルの乾燥及び表面架橋工程)
実施例1-4の(粒子状含水ゲルの乾燥及び表面架橋工程)と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-5B)を得た。
【0351】
(添加剤の添加工程)
表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-5B)100重量部に対して、0.1重量%のジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液10重量部と亜硫酸ナトリウム0.1質量部を混合した水溶液を攪拌しながら添加し、1分間混合した。
【0352】
次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、リン酸三カルシウム0.3重量部を混合した。混合は表面架橋された吸水性樹脂粒子(5B)30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にリン酸三カルシウムと共に入れ、ペイントシェーカーを用いて3分間振とうし、粒子状吸水剤(EX’-1-5)を得た。
【0353】
(粉砕、分級工程)
得られた粒子状吸水剤(EX’-5)を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕し、目開き850μm及び106μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、106μmの篩を通過しない成分を採取して、粒子状吸水剤(EX-1-5)を得た。
【0354】
〔実施例1-6〕
(単量体水溶液の調製工程)
アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.65質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を作成した。
【0355】
38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部をラインミキシングにて連続混合した。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は87℃まで上昇した。
【0356】
(単量体水溶液の重合工程)
更に、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部をラインミキシングにて連続混合した後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合時間3分間で連続的に重合をおこなって、帯状の含水ゲル状架橋重合体(1-6a)を得た。得られた帯状の含水ゲル(1-6a)を、重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、等間隔に連続して切断することで、切断長300mmの短冊状含水ゲル(1-6b)を得た。
【0357】
(含水ゲルの粉砕工程)
ゲル粉砕装置として、同方向に回転する2本の回転軸を内蔵する本体(バレル)を備えた2軸混練機を使用して、短冊状含水ゲル(1-6b)のゲル粉砕をおこなった。それぞれの回転軸には、主に粉砕手段である円板状ディスクが設けられている。バレルはジャケット構造であり、このジャケットを貫通し、本体内部に水蒸気を投入するガス投入口を有するものであった。また、粉砕された粒子状含水ゲル(1-6c)の排出口に近い位置に、ジャケットを貫通し、本体内部にゲル流動化剤を投入する溶液投入口を有するものであった。
【0358】
始めに、ジャケットの内部に105℃の熱媒を循環させ、本体(バレル)内部の温度を105℃に保持した。その後、回転数50rpmに設定して、80℃に加温した短冊状含水ゲル(1-6b)を0.25kg/minの速度(2.5秒毎に短冊状含水ゲル(1-6b)1枚のペース)で、2軸混練機の投入口に投入した。その際、含水ゲル(1-6b)と同時に、90℃の水、更に、ゲル流動化剤として10質量%濃度のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を供給し、更に、1質量%濃度の過酸化水素水溶液を投入口から供給し、更に、0.6MPaの水蒸気をガス投入口から供給した。90℃の水の供給量は、短冊状含水ゲル(1-6b)の固形分に対して11.8質量%であった。0.6MPaの水蒸気の投入量は、短冊状含水ゲル(1-6b)の固形分に対して9.7質量%であった。ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの有効成分としての投入量は、短冊状含水ゲル(1-6b)の固形分に対して0.08質量%であった。過酸化水素の有効成分としての投入量は、短冊状含水ゲル(1-6b)の固形分に対して0.01質量%であった。また、出口付近にて10質量%濃度のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を供給した。ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの有効成分としての投入量は、短冊状含水ゲル(1-6b)の固形分に対して0.08質量%であった。ゲル粉砕に使用したディスクの直径Dは50mmであり、バレルとディスクとの間の最小クリアランスは1mm(ディスク直径Dの2%)であった。なお、ゲル粉砕時のGGE(2)は89J/gであった。
【0359】
得られた粒子状含水ゲル(1-6c)は、固形分率が45質量%(含水率が55質量%)、固形分換算の平均ゲル粒子径が132μmであった。
【0360】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
得られた粒子状含水ゲル(1-6c)を、熱風乾燥機を用いて乾燥した。この乾燥機は、目開き1.2mmの金網からなる籠(底面のサイズ30cm×20cm)を備えている。粒子状含水ゲル(1-6c)500gを、この籠の底面に略均一になるように広げ、下方から190℃の熱風を30分間送風することにより、乾燥物(1-6A’)を得た。
【0361】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
冷却した乾燥物(1-6A’)をロールミルに供給して粉砕し、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、吸水性樹脂(1-6A)を得た。
【0362】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
次に、吸水性樹脂(1-6A)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部及び脱イオン水2.0質量部からなる表面架橋剤溶液を噴霧して混合した。この混合物を200℃で30分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-6B)を得た。
【0363】
(添加剤の添加工程)
表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-6B)100重量部に対して、キレート剤として、0.1重量%のDTPA(ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム)水溶液10重量部を攪拌しながら添加し、1分間混合した。
【0364】
次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、リン酸三カルシウム0.5重量部を混合した。混合は表面架橋された吸水性樹脂粒子(6B)30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にリン酸三カルシウムと共に入れ、ペイントシェーカーを用いて3分間振とうし、粒子状吸水剤(EX-1-6)を得た。
【0365】
〔実施例1-7〕
(単量体水溶液の調製工程)
ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムをエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムに変更した以外は実施例1-6の(単量体水溶液の調製工程)と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0366】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-6の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊含水ゲル(1-7b)を得た。
【0367】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-6の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-7c)を得た。
【0368】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
実施例1-6の(粒子状含水ゲルの乾燥工程)と同様にして、乾燥物(1-7A’)を得た。
【0369】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
実施例1-6の(乾燥物の粉砕、分級工程)と同様にして、吸水性樹脂(1-7A)を得た。
【0370】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
得られた吸水性樹脂(1-7A)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部及び脱イオン水2.0質量部からなる表面架橋剤溶液を、連続式高速撹拌乾燥機(ホソカワミクロン社製タービュライザー)にて噴霧混合して、加湿物(1-7B’)を得た。
【0371】
得られた加湿物(1-7B’)を、
図8に示される基本構成を備えた乾燥装置(加熱管付き回転型加熱装置)を用いて加熱処理した。この乾燥機は、その内部に回転軸方向に延在する10本の加熱管を有する円筒状の回転容器(容積35L)を備えている。
【0372】
始めに、回転型加熱装置の各加熱管に、ゲージ圧1.8MPa(温度210℃)の水蒸気を導入し、回転容器の内表面を予め180℃超に加熱し、更に回転容器の外壁をトレスで充分に加熱した。次いで、乾燥機内に加湿物(1-7B’)を4.0kg投入し、フルード数Fr0.07となるように回転容器を回転させて、30分間加熱処理を行った。加熱処理後、乾燥機から取り出した吸水性樹脂を80℃以下に冷却して、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-7B)を得た。
【0373】
(添加剤の添加工程)
ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムをエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムに変更した以外は実施例1-6の(添加剤の添加工程)と同様にして、粒子状吸水剤(EX-1-7)を得た。
【0374】
〔実施例1-8〕
(単量体水溶液の調製工程)
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)を0.85質量部に変更し、60質量%濃度の乳酸ナトリウム水溶液を1.8質量部追加した以外は実施例1-6と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0375】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-6の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-8b)を得た。
【0376】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-6の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-8c)を得た。
【0377】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
得られた粒子状含水ゲル(1-8c)を、
図8に示される基本構成を備えた乾燥装置(加熱管付き回転型加熱装置)を用いて乾燥した。この乾燥装置は、その内部に回転軸方向に延在する10本の加熱管を有する円筒状の回転容器(容積35L)を備えている。はじめに、各加熱管に2.7MPa(温度228.1℃)の水蒸気を導入して、回転容器内部(接触温度計で規定)を予め200℃超に加熱した後、更に回転容器の外壁もトレスで十分に加熱した。次いで、95℃の粒子状含水ゲル(1-8c)を4.0kg投入し、フルード数Fr0.07となるように回転容器を回転させて、回転容器内へ140℃のキャリア空気を65L/hrで供給し、40分間乾燥を行った。乾燥後、取り出し口で採取した乾燥物(1-8A’)は、固形分率98.5質量%であった。
【0378】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
続いて、加熱装置の取り出し口から排出された乾燥物(1-8A’)を、冷風により、強制的に80℃以下に冷却した後、その冷却物を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕し、850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、吸水性樹脂(1-8A)を得た。
【0379】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
得られた吸水性樹脂(1-8A)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.2質量%及び水3質量%を含む表面架橋剤溶液を噴霧し、150℃で30分間加熱することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-8B)を得た。
【0380】
(添加剤の添加工程)
表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-8B)100重量部に対して、0.1重量%のジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液10重量部と亜硫酸ナトリウム0.1質量部を混合した水溶液を攪拌しながら添加し、1分間混合した。
【0381】
次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、ハイドロタルサイト0.2重量部を混合した。混合は表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-8B)30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカーを用いて3分間振とうし、粒子状吸水剤(EX-1-8)を得た。
【0382】
〔実施例1-9〕
(単量体水溶液の調製工程)
ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムをエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムに変更した以外は実施例1-6の(単量体水溶液の調製工程)と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0383】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-6の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-9b)を得た。
【0384】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-6の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-9c)を得た。
【0385】
(粒子状含水ゲルの乾燥及び表面架橋工程)
実施例1-8の乾燥装置へ、95℃の粒子状含水ゲル(1-9c)を投入してから10分経過後に、乾燥途中の粒子状含水ゲル(1-9c)の固形分に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.16質量%及び水2質量%を含む表面架橋剤溶液を、乾燥装置機内へノズルを挿入して噴霧添加した以外は、実験例1-8の(粒子状含水ゲルの乾燥工程)と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-9B)を得た。
【0386】
(添加剤の添加工程)
ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウムをエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸5ナトリウムに変更した以外は実施例1-6の(添加剤の添加工程)と同様にして、粒子状吸水剤(EX’-1-9)を得た。
【0387】
(粉砕、分級工程)
得られた粒子状吸水剤(EX’-1-9)を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕し、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、粒子状吸水剤(EX-1-9)を得た。
【0388】
〔実施例1-10〕
(単量体水溶液の調製工程)
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)を0.85質量部に変更した以外は実施例1-6と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0389】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-6の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-10b)を得た。
【0390】
(含水ゲルの粉砕工程)
供給する過酸化水素水溶液の濃度を5質量%とし、過酸化水素の有効成分としての投入量を、短冊状含水ゲル(1-10b)の固形分に対して0.1質量%としたこと以外は実施例1-6の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-10c)を得た。得られた粒子状含水ゲル(1-10c)は、固形分率が45.2質量%(含水率が54.8質量%)、固形分換算の平均ゲル粒子径が148μmであった。ゲル粉砕時のGGE(2)は75J/gであった。
【0391】
(粒子状含水ゲルの乾燥及び表面架橋工程)
実施例1-9の(粒子状含水ゲルの乾燥及び表面架橋工程)と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-10B)を得た。
【0392】
(添加剤の添加工程)
リン酸三カルシウム0.5質量部をハイドロタルサイト0.3質量部に変更した以外は実施例1-6の(添加剤の添加工程)と同様にして、粒子状吸水剤(EX’-1-10)を得た。
【0393】
(粉砕、分級工程)
得られた粒子状吸水剤(EX’-1-10)を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕し、目開き850μm及び106μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、106μmの篩を通過しない成分を採取して、粒子状吸水剤(EX-1-10)を得た。
【0394】
〔実施例1-11〕
(単量体水溶液の調製工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の調製工程)と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0395】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-11b)を得た。
【0396】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-1の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-11c)を得た。
【0397】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
実施例1-1の(粒子状含水ゲルの乾燥工程)と同様にして、乾燥物(1-11A’)を得た。
【0398】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
実施例1-1の(乾燥物の粉砕、分級工程)と同様にして、吸水性樹脂(1-11A)を得た。
【0399】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
実施例1-1の(吸水性樹脂の表面架橋工程)と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-11B)を得た。
【0400】
(添加剤の添加工程)
表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-11B)100重量部に対して、脱イオン水10重量部を攪拌しながら添加し、1分間混合した。
【0401】
次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、粒子状吸水剤(EX-1-11)を得た。
【0402】
〔実施例1-12〕
国際公開第2020/067310号の
図1に示す製造プロセスに従って、一連の工程を運転し、含水ゲル重合体(1-12c)を調製した。
【0403】
まず、有機溶媒であるn-ヘプタンを、分散装置12、重合装置14、上記分離装置16及びこれらを接続する配管(接合部を含む)内に投入した。続いて、送液ポンプ18を稼働させて、流量300mL/分で疎水性有機溶媒の循環を開始した。なお有機溶媒はその全量を分散装置12を介して重合装置14に投入した。また、熱交換器20を稼働させて、上記循環する有機溶媒の温度が90℃となるように加熱した。次に、分散助剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(商品名:ハイワックス(登録商標)1105A/三井化学株式会社)を、上記疎水性有機溶媒100質量%に対して0.005質量%の量で添加した。
【0404】
アクリル酸、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を混合し、更に、内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均重合度:9)及びジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムを配合することで、単量体溶液(1-12a)を調製した。また、別途、重合開始剤である過硫酸ナトリウム及びイオン交換水を混合することで、6質量%の過硫酸ナトリウム水溶液(1-12a’)を作製した。
【0405】
続いて、上記操作で得られた単量体溶液(1-12a)と過硫酸ナトリウム水溶液(1-12a’)とを混合装置10に供給して混合することで、単量体水溶液(1-12b)を作製した。該単量体水溶液(1-12b)のモノマー濃度は43質量%であり、中和率は75モル%であった。また、ポリエチレングリコールジアクリレートの量は単量体(アクリル酸)100モル%に対して0.020モル%、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムの量は単量体(アクリル酸)に対して200ppm、過硫酸ナトリウムの量は単量体(アクリル酸)に対して0.1g/モルであった。
【0406】
単量体水溶液(1-12b)を、流量40mL/分(47.2g/分)で、分散装置の配管に送液した。供給された上記単量体水溶液(1-12b)は、分散装置によって上記疎水性有機溶媒中で液滴状に分散した。
【0407】
次いで、上記のようにして得られた分散液を、重合装置14に供給した。上記単量体水溶液(1-12b)からなる液滴は、上記連続相である疎水性有機溶媒が満たされた重合装置内を疎水性有機溶媒の循環方向に移動しながら重合した。上記一連の操作で得られた含水ゲル重合体(1-12c)は、上記疎水性有機溶媒とともに連続的に重合装置から接合部を介して分離装置16に供給され、該分離装置において、該含水ゲル重合体(1-12c)と有機溶媒とが分離された。
【0408】
ゲル整粒装置(ドームグラン DG-L1、ドームダイの孔径:0.5mm、押出作用部との隙間:1.2mm、株式会社ダルトン製)に、予めゲル流動化剤として3.5質量%のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液(含水ゲル重合体(1-12c)の固形分率に対して0.20質量%)を添加混合した含水ゲル重合体(1-12d’)(ゲル温度:90℃)を投入し、ゲル整粒装置から排出させることで整粒ゲル(1-12d)を得た。
【0409】
続いて、上記で得られた整粒ゲル(1-12d)を撹拌型乾燥機へ供給し、撹拌型乾燥機中、ジャケット温度200℃にて50分間乾燥して乾燥重合体(1-12A’)を得た。乾燥重合体(1-12A’)を目開き粒子径850μmの篩を用いて分級し、当該目開き粒子径850μmの篩の非通過物を粉砕し、篩を通過した粒子と粉砕前に目開き粒子径850μmの篩を通過した粒子を混ぜ合わせたものを目開き粒子径150μmの篩を用いて分級した。このようにして目開き粒子径850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない区画を回収し、吸水性樹脂(1-12A)を得た。
【0410】
最後に吸水性樹脂(1-12A)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.015質量部、プロピレングリコール1.0質量部及びイオン交換水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液をスプレーで噴霧して、高速連続混合機を用いて均一に混合した。
【0411】
得られた混合物を雰囲気温度195℃±2℃に調温した熱処理機に導入して、30分間加熱処理を行った後、粉温を60℃まで強制的に冷却することで表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-12B)を得た。
【0412】
上記吸水性樹脂粒子(1-12B)100重量部に対して、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム0.1重量部及びイオン交換水10重量部からなる混合液を滴下し、均一に混合した。その後、60℃の熱風乾燥機中に静置させ、目開き1000μmのJIS標準篩に通過させることで整粒し、含水率10%の粒子状吸水剤(EX-1-12)を得た。
【0413】
〔実施例1-13〕
(単量体水溶液の調製工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の調製工程)と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0414】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-1の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-13b)を得た。
【0415】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-1の(含水ゲルの粉砕工程)にて、第4ゲル粉砕をしなかったこと以外は実施例1-1の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-13c)を得た。GGE(2)は第1ゲル粉砕、第2ゲル粉砕、第3ゲル粉砕のトータルで25J/gであった。
【0416】
得られた粒子状含水ゲル(1-13c)は、固形分率が50質量%(含水率が50質量%)、固形分換算の平均ゲル粒子径が321μmであった。
【0417】
(粒子状含水ゲルの乾燥及び表面架橋工程)
実施例1-3の乾燥装置へ、95℃の粒子状含水ゲル(1-13c)を投入してから10分経過後に、乾燥途中の粒子状含水ゲル(1-13c)の固形分に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.16質量%及び水2質量%を含む表面架橋剤溶液を、乾燥装置機内へノズルを挿入して噴霧添加した以外は、実施例1-3の(粒子状含水ゲルの乾燥工程)と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-13B)を得た。
【0418】
(添加剤の添加工程)
実施例1-1の(添加剤の添加工程)にて、リン酸三カルシウム0.5重量部の代わりにハイドロタルサイト0.6質量部を混合した以外は実施例1-1と同様にして、粒子状吸水剤(EX’-1-13)を得た。
【0419】
(粉砕、分級工程)
得られた粒子状吸水剤(EX’-1-13)を1段のロールミル(粉砕機)に供給して粉砕し、目開き850μm及び106μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、106μmの篩を通過しない成分を採取して、粒子状吸水剤(EX-1-13)を得た。
【0420】
〔実施例1-14〕
(単量体水溶液の調製工程)
実施例1-6の(単量体水溶液の調製工程)と同様にして、単量体水溶液を調製した。
【0421】
(単量体水溶液の重合工程)
実施例1-6の(単量体水溶液の重合工程)と同様にして、短冊状含水ゲル(1-14b)を得た。
【0422】
(含水ゲルの粉砕工程)
実施例1-6の(含水ゲルの粉砕工程)にて、ゲル粉砕装置のバレルとディスクとの間の最小クリアランスを2.5mm(ディスク直径Dの5%)に変更したこと以外は実施例1-6の(含水ゲルの粉砕工程)と同様にして、粒子状含水ゲル(1-14c)を得た。なお、ゲル粉砕時のGGE(2)は32J/gであった。
【0423】
得られた粒子状含水ゲル(1-14c)は、固形分率が45質量%(含水率が55質量%)、固形分換算の平均ゲル粒子径が297μmであった。
【0424】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
実施例1-6の(粒子状含水ゲルの乾燥工程)と同様にして、乾燥物(1-14A’)を得た。
【0425】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
実施例1-6の(乾燥物の粉砕、分級工程)と同様にして、吸水性樹脂(1-14A)を得た。
【0426】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
実施例1-6の(吸水性樹脂の表面架橋工程)と同様にして、表面架橋された吸水性樹脂粒子(1-14B)を得た。
【0427】
(添加剤の添加工程)
実施例1-6の(添加剤の添加工程)と同様にして、粒子状吸水剤(EX-1-14)を得た。
【0428】
〔比較例1-1〕
比較例1-1では、国際公開2016/204302号実施例12に開示された「粒子状吸水剤(EX-12)」を、粒子状吸水剤(CE-1-1)とした。
【0429】
〔比較例1-2〕
比較例1-2では、国際出願PCT/JP2020/047821に開示された実施例1と同様にして、粒子状吸水剤(CE-1-2)を得た。具体的には、下記のとおりである。
【0430】
(単量体水溶液の調製工程)
容量2Lのポリプロピレン製の容器に、アクリル酸422.0質量部、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液173.9質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)2.5質量部、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液2.6質量部、及び脱イオン水403.3質量部を投入し、混合することで単量体水溶液を調製した。当該単量体水溶液の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、40℃を超えていた。
【0431】
(重合工程)
次に、前記単量体水溶液を攪拌しながら冷却し、液温が40℃となった時点で、40℃に調温した48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液178.7質量部を、大気開放状態で約20秒間掛けて前記単量体水溶液に投入し、混合した(二段目の中和を開始)。これにより、単量体水溶液(1-22a)を調製した。このとき、前記単量体水溶液(1-22a)の液温は、前記混合の過程で発生した中和熱及び溶解熱によって、約78℃まで上昇していた。また、前記単量体水溶液に前記水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたものの、次第に溶解して、調製された単量体水溶液(1-22a)は透明な均一溶液となった。
【0432】
そして、攪拌状態の前記単量体水溶液(1-22a)に、木下式ガラスボールフィルター(フィルター粒子No.4/木下理化工業株式会社製)を用いて、窒素ガスを圧力0.1MPa、流量0.1L/分の条件下で5秒間導入した。続いて、単量体水溶液(1-22a)に、4.5質量%過硫酸ナトリウム水溶液18.4質量部を加えた。その後、直ちに、ステンレス製のバット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に、当該単量体水溶液(1-22a)を大気開放状態で流し込んだ。尚、二段目の中和を開始した時点からバット型容器に前記単量体水溶液(1-22a)を流し込むまでの時間は65秒間とした。また、当該バット型容器は、ホットプレート(NEO
HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社製)を用いて、表面温度が50℃となるまで加熱した。
【0433】
前記単量体水溶液(1-22a)を前記バット型容器に流し込んだ後、1分以内に重合反応が開始した。当該重合反応においては、水蒸気を発生しながら四方八方に膨張発泡しながら単量体水溶液(1-22a)の重合が進行した。その後、得られた重合体は、バット型容器の底面よりも若干大きいサイズにまで収縮した。重合反応の開始から2分間経過後に、含水ゲル(1-22b)をバット型容器から取り出した。尚、これら一連の操作は、大気開放状態で行った。
【0434】
(ゲル粉砕工程)
次に、前記重合反応で得られた含水ゲル(1-22b)を、1個当たりの質量が60g程度となるように切断した後、ミートチョッパー(HL-G22SN、プレート孔径6.0mm/レマコム株式会社製)を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(1-1)を得た。前記含水ゲル(1-1)の投入量は凡そ360g/分であり、当該含水ゲル(1-22b)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を25g/分でミートチョッパーに添加しながらゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(1-22c)を得た。
【0435】
前記粒子状含水ゲル(1-22c)のD50(質量平均粒子径)は320μmであり、σζ(粒度分布の対数標準偏差)は0.91であった。
【0436】
(乾燥工程)
次に、前記粒子状含水ゲル(1-22c)を目開き300μmの金網上に広げて載せ、熱風乾燥機に入れた。その後、190℃の熱風を30分間通気させることで粒子状含水ゲル(1-22c)を乾燥させ、乾燥重合体(1-22A’)を得た。当該乾燥重合体(1-22A’)中に未乾燥物はなかった。
【0437】
(分級工程)
次に、前記乾燥重合体(1-22A’)をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社製)に投入して粉砕した後、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(1-22A)を得た。
【0438】
(表面架橋工程)
次に、前記表面架橋前の吸水性樹脂(1-22A)100質量部に対して、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.7質量部、脱イオン水2.9質量部、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001質量部からなる表面架橋剤水溶液を噴霧添加して均一に混合した。その後、得られた混合物を200℃で40分間、加熱処理することで表面架橋を行った。次いで、当該混合物を、目開き710μm及び150μmの2種類のJIS標準篩を用いて分級した。この操作によって、目開き710μmの篩を通過し、目開き150μmの篩上に残留した粒子状吸水剤(CE-1-2)を得た。
【0439】
〔比較例1-3〕
比較例1-3では、WO2019/221154に開示された実施例1と同様にして、WO2019/221154の実施例1に記載の「吸水性樹脂粒子(C1)」を得た。これを本願では粒子状吸水剤(CE-1-3)とした。
【0440】
〔比較例1-4〕
比較例1-4では、WO2018/092863に開示された実験例28と同様にして、WO2018/092863の実験例28に記載の「表面架橋された吸水性樹脂粉末(28)」を得た。これを本願では粒子状吸水剤(CE-1-4)とした。
【0441】
〔比較例1-5〕
比較例1-5では、WO2018/092863に開示された実験例18と同様にして、WO2018/092863の実験例18に記載の「吸水性樹脂(18)」を得た。これを本願では粒子状吸水剤(CE-1-5)とした。
【0442】
〔比較例1-6〕
比較例1-6では、国際出願PCT/JP2021/034800に開示された実験例3と同様にして、粒子状吸水剤(CE-1-6)を得た。具体的には、下記のとおりである。
【0443】
(単量体水溶液の調製工程)
アクリル酸300質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、0.1質量%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、脱イオン水273.2質量部からなる単量体水溶液を作成した。
【0444】
次に、38℃に調温した上記単量体水溶液を定量ポンプで連続供給した後、更に48質量%水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部をラインミキシングにて連続混合した。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液の液温は87℃まで上昇した。
【0445】
(単量体水溶液の重合工程)
更に、4質量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部をラインミキシングにて連続混合した後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合時間3分間で連続的に重合をおこなって、帯状(シート状)の含水ゲル状架橋重合体(1-26a)を得た。得られた帯状の含水ゲル(1-26a)を、後述するゲル粉砕装置での処理スピードと投入間隔に合わせて切断し、幅数cmの短冊状含水ゲル(1-26b)を得た。例えば、ゲル粉砕装置の処理スピードを0.64kg/minとし、短冊状含水ゲルを2.5秒間隔で投入する場合、短冊状含水ゲル1枚当たりの質量を0.0267kgとする。尚、短冊状含水ゲル(1-26b)の重合率は98.5質量%、固形分率は53質量%であった。
【0446】
(含水ゲルの粉砕工程)
ゲル粉砕装置として、同方向に回転する2本の回転軸を内蔵する本体(バレル)を備えた2軸混練機を使用して、短冊状含水ゲル(1-26b)のゲル粉砕をおこなった。それぞれの回転軸には、主に粉砕手段である円板状ディスクが設けられている。バレルはジャケット構造であり、このジャケットを貫通し、本体内部に水蒸気を投入するガス投入口を有するものであった。
【0447】
始めに、ジャケットの内部に105℃の熱媒を循環させ、本体(バレル)内部の温度を105℃に保持した。その後、回転数100rpmに設定して、80℃に加温した短冊状含水ゲル(1-26b)を0.64kg/minの速度(2.5秒毎に短冊状含水ゲル(1-26b)1枚のペース)で、2軸混練機の投入口に投入した。その際、含水ゲル(1-26b)と同時に、90℃の水を投入口から供給し、更に、0.6MPaの水蒸気をガス投入口から供給し、更に、10質量%濃度のラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液を投入口から供給した。90℃の水の供給量は、短冊状含水ゲル(1-26b)の固形分に対して11.8質量%であった。0.6MPaの水蒸気の投入量は、短冊状含水ゲル(1-26b)の固形分に対して9.7質量%であった。ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの固形分としての投入量は、短冊状含水ゲル(1-26b)の固形分に対して0.15質量%であった。ゲル粉砕に使用したディスクの直径Dは50mmであり、バレルとディスクとの間の最小クリアランスは1mm(ディスク直径Dの2%)であった。なお、ゲル粉砕時のGGE(2)は125J/gであった。
【0448】
得られた粒子状含水ゲル(1-26c)は、固形分率が48.2質量%(含水率が51.8質量%)、固形分換算の平均ゲル粒子径が141μmであった。
【0449】
(粒子状含水ゲルの乾燥工程)
得られた粒子状含水ゲル(1-26c)を、熱風乾燥機を用いて乾燥した。この乾燥機は、目開き1.2mmの金網からなる籠(底面のサイズ30cm×20cm)を備えている。粒子状含水ゲル(1-26c)500gを、この籠の底面に略均一になるように広げ、下方から190℃の熱風を30分間送風することにより、乾燥物(1-26A’)を得た。
【0450】
(乾燥物の粉砕、分級工程)
冷却した乾燥物(1-26A’)をロールミルに供給して粉砕し、目開き850μm及び150μmのJIS標準篩を用いて分級した。850μmの篩を通過し、150μmの篩を通過しない成分を採取して、吸水性樹脂(1-26A)を得た。
【0451】
(吸水性樹脂の表面架橋工程)
次に、吸水性樹脂(1-26A)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部及び脱イオン水2.0質量部からなる表面架橋剤溶液を噴霧して混合した。この混合物を200℃で35分間加熱処理することにより、粒子状吸水剤(CE-1-6)を得た。
【0452】
〔比較例1-7〕
比較例1-7では、特開2006-057075号公報に開示された実施例12と同様にして、特開2006-057075号公報の実施例12に記載の「粒子状吸水剤(10)」を得た。これを本願では粒子状吸水剤(CE-1-7)とした。
【0453】
〔比較例1-8〕
比較例1-8では、WO2015/129917に開示された実施例1と同様にして、WO2015/129917の実施例1に記載の「粒子状吸水剤(EX-1)」を得た。これを本願では粒子状吸水剤(CE-1-8)とした。
【0454】
〔比較例1-9〕
比較例1-9では、WO2009/025235に開示された実施例5と同様にして、WO2009/025235の実施例5に記載の「吸水性樹脂」を得た。これを本願では粒子状吸水剤(CE-1-9)とした。
【0455】
[評価方法]
実施例1-1~1-14で得られた粒子状吸水剤(EX-1-1)~(EX-1-14)及び比較例1-1~1-9で得られた粒子状吸水剤(CE-1-1)~(CE-1-9)について、「連通孔の総体積率[体積%]」、「独立気泡の総体積率[体積%]」、「高粘度液吸収時間」、「CRC」、「AAP2.06kPa」、「含水率」、「スポット吸収性」を測定した。「CRC」、「AAP2.06kPa」、「含水率」は、上述に記載の方法により測定した。評価結果は、表2、表3に示した。
【0456】
「連通孔の総体積率[体積%]及び独立気泡の総体積率[体積%]の測定」
本発明に係る粒子状吸水剤の総体積に占める、連通孔の総体積率(単位:体積%)及び独立気泡の総体積率(単位:体積%)は、マイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-100CT/株式会社島津製作所製)を用いて、粒子状吸水剤の3次元画像データを取得し、高速3次元解析ソフト(TRI/3D-VOL-FCS64/ラトックシステムエンジニアリング社製)を用いて当該3次元画像データを解析し、Microsoft Excelを用いて計算することにより求めた。連通孔の総体積率及び、独立気泡の総体積率は、250μm~425μmの粒度の粒子状吸水剤を用いて求めた。具体的には、250μm~425μmの粒度の粒子状吸水剤の3次元画像データを、前記マイクロフォーカスX線CTシステムを用いて取得し、前記高速3次元解析ソフトを用いて解析した後に、それらの解析結果をExcelを用いて算出した。
【0457】
具体的な算出方法について記載する。初めに、250μm~425μmの粒度の粒子状吸水剤の抽出方法を記載する。まず、JIS標準の篩(The IIDA TESTING SIEVE/株式会社飯田製作所製、直径:8cm、篩の目開き:425μm/250μm)を、上から目開きの大きい順に重ね合わせ、一番下に受器(株式会社飯田製作所製、直径:8cm)を重ねた。続いて、一番上の篩(篩の目開き:425μm)に、粒子状吸水剤10.0gを投入し、蓋(株式会社飯田製作所製、直径:8cm)をした。続いて、重ね合わせた蓋、2つの篩、及び受器のセットを、IIDA SIEVE SHAKER(TYPE:ES-65型、SER.No.0632)を用いて、5分間振とうさせた。振とう後、目開き250μmの篩上に残存した吸水性樹脂のみを抽出し、これを250μm~425μmの粒度の粒子状吸水剤とした。前記操作は、温度が20.0~25.0℃、かつ湿度が35%から50%の間に調整された室内で実施した。
【0458】
プラスチック製の蓋付き円筒型容器(内径約1cm、高さ約5cm)に熱硬化性球状微粒子(エポスターMV1002/株式会社日本触媒製)0.3gを投入した後、250μm~425μmの粒度の粒子状吸水剤0.1gを投入し、シェイキングやタッピングを行ないよく振り混ぜることで、熱硬化性球状微粒子中に粒子状吸水剤を均一に分散させてサンプルを作製した。続いて、前記円筒型容器の底面に両面テープを貼り付け、前記マイクロフォーカスX線CTシステムの試料台に固定した後、下記条件で3次元画像データを取得した。
【0459】
【0460】
前記高速3次元解析ソフトを用いて、下記手順に沿って解析を実施した。
【0461】
1.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子>粒子分離>巨大粒子分離を選択した。
【0462】
2.EVCパネル上のBinarizeタブでL-Wを選択し、W値は初期値のままで、L値を初期値から「1」大きい値に変更し、円形の計測対象領域を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した画像データを(A)とし、BCパネル上のbin5ch(b5)に保管した。
【0463】
3.EVCパネル上のBinarizeタブでL-Wを選択し、W値は初期値のままで、L値を初期値から「37580」に変更し、計測対象領域における全粒子状吸水剤を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した粒子画像データを(B)とし、BCパネル上のbinDch(bD)に保管した。
【0464】
4.粒子画像データ(B)を基にして、先ず、EVCパネル上のBinaryタブでErs Sml を選択し、粒子サイズが10voxcel以下である、ノイズと考えられる粒子を除去した。続いて、EVCパネル上のBinaryタブでInvertを選択し、粒子が抽出されている領域とされていない領域とを反転させた。続いて、EVCパネル上のBinaryタブでErs Sml を選択し、粒子サイズが1voxcel以下である、ノイズと考えられる粒子を除去した。次いで、EVCパネル上の3DタブでLabelingを選択し、更に体積及びMaxを選択し、最も体積の大きな領域のみを抽出した。ここで、Label Countが1と表示されていることを確認した上で、EVCパネル上のBinaryタブでInvertを再度選択することで、計測対象領域においてノイズを除去すると共に、全粒子をVoid(独立気泡)が埋まった状態で抽出した。これらの操作により抽出した粒子画像データを(C)とし、BCパネル上のbin2ch(b2)に保管した。
【0465】
5.LOpタブ(チャンネル間論理演算処理)で、対象1は「2」を、対象2は「D」を選択し、更に「SUB」を選択し、実行を押すことで、粒子画像データ(C)から粒子画像データ(B)を引いた。その後、EVCパネル上のBinaryタブでErs Sml を選択し、粒子サイズが1voxcel以下である、ノイズと考えられる粒子を除去することで、Void(独立気泡)を抽出した。これらの操作により抽出した粒子画像データを(D)とし、BCパネル上のbin6ch(b6)に保管した。
【0466】
6.粒子画像データ(C)を基にして、EVCパネル上の3Dタブで8連結周囲を選択し、膨張処理(Dilation)を2回行った後、収縮処理(Erosion)を2回行った。この操作により抽出した粒子画像データを(E)とし、BCパネル上のbin1h(b1)に保管した。
【0467】
7.LOpタブ(チャンネル間論理演算処理)で、対象1は「1」を、対象2は「2」を選択し、更に「SUB」を選択し、実行を押すことで、粒子画像データ(E)から粒子画像データ(C)を引いた。この操作により、Cavity(連通孔)を抽出した。得られた粒子画像データを(F)とし、BCパネル上のbin7ch(b7)に保管した。
【0468】
8.粒子画像データ(E)を基にして、巨大粒子分離パネル上で小粒子抽出を選択し(大粒子抽出は選択しない)、くびれ割合、Repair Filter Size、及びRepair Mrg Sml Diameter を何れも「0」に設定して、粒子の分離及び色分けを行った。
【0469】
9.EVCパネル上の3DタブでLabelingを選択し、更に座標値(サイクル)を選択すると共に微小粒子サイズを「100」に設定し、粒子の分離操作を行った。これらの操作により抽出した粒子画像データを(G)とし、BCパネル上のbin1ch(b1)に保管した。
【0470】
10.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子中Void(独立気泡)>分離後計測を選択した。
【0471】
11.分離後計測パネル上で、単位としてvoxcelを選択し、続いてエッジ粒子除去を選択し、更に計測項目として表面積計算及びVoid(独立気泡)計算を選択し、計測ROI指定としてBinary 5chを選択して計算処理を行った。
【0472】
12.前記10の計算処理によって得られたデータを、ExcelのCSV形式で抽出した。
【0473】
以上の操作により、計測対象領域に存在する全ての粒子状吸水剤に対し、1粒子毎に、粒子体積(単位:mm3)、Void体積(以下、「独立気泡体積」)(単位:mm3)、及びCavity体積(以下、「連通孔体積」)(単位:mm3)のデータが得られた。なお、前記の粒子体積は、粒子状吸水剤中の該Void(独立気泡)及び該Cavity(連通孔)が埋まった状態で算出された値である。また、前記計測対象領域には、200個~500個程度の粒子を含む粒子状吸水剤が存在している。
【0474】
(連通孔の総体積率[体積%]の算出)
次に、Excelで抽出した1粒子毎の粒子体積(単位:mm3)、独立気泡体積(単位:mm3)、及び連通孔体積(単位:mm3)のデータを用いて、連通孔の総体積率[体積%]を算出した。まず、1粒子毎の粒子体積(単位:mm3)、独立気泡体積(単位:mm3)、及び連通孔体積(単位:mm3)をそれぞれ合計し、全粒子の粒子総体積(H)(単位:mm3)、独立気泡の総体積(I)(単位:mm3)、及び連通孔の総体積(J)(単位:mm3)を算出した。なお、前記の全粒子の粒子総体積は、粒子状吸水剤中の該Void(独立気泡)及び該Cavity(連通孔)が埋まった状態で算出された値である。次に下記式(1)に基づいて、計測対象領域に存在する全ての粒子状吸水剤の平均値となる、連通孔の総体積率(単位:体積%)を算出した。
【0475】
連通孔の総体積率=J/(H-I)×100 …式(1)
ここで、
H:全粒子の粒子総体積(単位:mm3)
I:全粒子の独立気泡の総体積(単位:mm3)
J:全粒子の連通孔の総体積(単位:mm3)
である。
【0476】
(独立気泡の総体積率[体積%]の算出)
下記式(2)に基づいて、計測対象領域に存在する全ての粒子状吸水剤の平均値となる、独立気泡の総体積率(単位:体積%)を算出した。
【0477】
独立気泡の総体積率=I/(H-J)×100 …式(2)
ここで、
H:全粒子の粒子総体積(単位:mm3)
I:全粒子の独立気泡の総体積(単位:mm3)
J:全粒子の連通孔の総体積(単位:mm3)
である。
【0478】
「高粘度液吸収時間」
(高粘度試験液の作製)
イオン交換水792.8質量部、塩化ナトリウム7.2質量部、炭酸ナトリウム35.6質量部、グリセリン160質量部、赤色食用色素0.04質量部、カルボキシメチルセルロース(アルドリッチ社製、品番:C5678-500G)4.4質量部からなる試験液を作製した。本試験液の粘度は23℃で5mPa・s、37℃で3.4mPa・sであった。
【0479】
(高粘度液吸収時間[sec]の測定)
液温23℃に調整した高粘度試験液50gを100mLビーカーに計り取り、長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に、粒子状吸水剤2.00gを投入し、吸収時間を(秒)を測定した。終点は、JISK 7224-1996年度「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、粒子状吸水剤が高粘度試験液を吸液して試験液がスターラーチップを覆うまでの時間を、高粘度液吸収時間(秒)として測定した。
【0480】
「スポット吸収性」(「液取り込み時間及び戻り量」)
本発明に係る粒子状吸水剤に関して、下記の吸収体を作製して評価を行なった。
【0481】
(粒子状吸水剤単層シートの作製)
幅10cmのビニルテープ(日東電工社製、日東ビニールテープNo.21-100TM)を切断長18cmに切断し、その粘着面を上にして、水平な実験台の上に置き、内枠の縦の長さが8cm、横の長さが16cmであり、外枠の縦の長さが10cm、横の長さが18cmである、プラスチック製の枠(枠の厚みは1cm)を上から張り付けた。この時、ビニルテープ面にしわができないようにした。ビニルテープの粘着面に対して、粒子状吸水剤1.278gを均一に散布した。この時、ビニルテープ面を、1区画が縦8cm、横5.33cmの3区画として捉え、1区画に対して粒子状吸水剤を0.426gずつ均一に散布した。散布後、枠を傾けることですべての粒子状吸水剤をビニルテープの粘着面に粘着させた。プラスチック製の枠から、粘着した粒子状吸水剤が落ちないようにビニルテープを剥がし、粒子状吸水剤が粘着した面を上にして水平な実験台の上に置いた。粒子状吸水剤が粘着したビニルテープの上から、縦10cm、横18cmにカットした不織布(目付量18.5g/m2のスパンボンド不織布)を乗せ、ビニルテープの残った粘着面を利用して張り付け、粒子状吸水剤単層シートを得た。この時、ビニルテープの四隅と不織布の四隅を合わせて貼り合わせるようにし、不織布の下面が粒子状吸水剤と触れるようにした。得られた粒子状吸水剤単層シートの中心部に黒マジックペンで印をつけ、液入れ漏斗位置とした。また中心部から12時、3時、6時、9時の4方向27.5mm部分に1点ずつ、合計4か所の印をつけ、ろ紙置き場の目印とした。
【0482】
(粒子状吸水剤単層シートの試験液の取り込み速度及び戻り量)
不織布部分を上にして、粒子状吸水剤単層シートを
図18に示す評価装置の枠内曲面に完全に沿わせて設置した。なお、
図18の装置は、半円状の凹部が内部に形成された容器(材質:透明アクリル樹脂)であり、凹部のサイズは、円の直径122mm×幅102mm(深さ61mm)である。この時、底面に中心部が来るように設置し、ろ紙置き場部分の不織布にしわができないようにした。評価装置の曲面部に合わせて、180mm×10mmのシリコンシート(厚み2mm)を装置の曲面部の底部両隅に、すなわち粒子状吸水剤単層シートの長さ180mmの2つの辺上に沿わせて1つずつ乗せ、サイドからの液漏れが起こらないようにした。
【0483】
液入れ漏斗位置から高さ1cmの部分に、高粘度試験液5gが2秒で投入できるように調整した漏斗を設置した。漏斗に高粘度試験液5gを投入して最初の液が粒子状吸水剤単層シートに触れた瞬間にストップウォッチを始動し、粒子状吸水剤単層シート面上の液面すべて消えるまでの時間を計測し、液取り込み速度(sec)として記録した。なお、液取り込み速度が短い場合、液取り込み速度に優れることを意味する。以下の表2~4では、液の取り込み速度を「取込速度」と表記する。
【0484】
最初の液が粒子状吸水剤単層シートに触れてから2分50秒後、液投入面を上に向けた状態で粒子状吸水剤単層シートを評価装置から取り出し、水平な実験台の上に置いた。最初の液が粒子状吸水剤単層シートに触れてから3分後、中心部(ろ紙置き場)にあらかじめ総重量(W1[g])を測定したΦ55mmのろ紙を5枚重ねて置き、錘(Φ50mm、重量1035g、5.2kPa)を置いて10秒間荷重をかけた。錘を置いて10秒後、上記Φ55mmのろ紙5枚の重量(W2[g])を測定し、その差(W2-W1)を粒子状吸水剤単層シートの戻り量[g]として算出した。
【0485】
【0486】
【0487】
図19は、x軸を連通孔の総体積率とし、y軸を独立気泡の総体積率として、実施例及び比較例の粒子状吸水剤についてプロットしたグラフである。
図19によれば、連通孔の総体積率と独立気泡の総体積率との相関関係が示されている。
図19より、連通孔の総体積率が10体積%以上及び独立気泡の総体積率が0.5体積%以下である実施例1-1~1-14の粒子状吸水剤は、グラフの右下の領域を占めていることがわかる。この領域となる粒子状吸水剤を用いた吸収体は、液取り込み速度及び戻り量に優れていると考えられる。また、
図19より、比較例1-1~1-9の粒子状吸水剤(CE-1-1)~(CE-1-9)は、本発明の粒子状吸水剤における連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率の規定を満たしていないことが理解される。
【0488】
〔参考例〕
目開き425μmの篩を通過し,目開き250μmを通過しない粒子のX線CT測定により求められる、連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率が規定を満たす粒子状吸水剤を用いることにより、吸収体の液の取り込み速度の向上及び戻り量の減少が達成できることを示すために、下記参考例を示す。
【0489】
〔参考例1-1〕
実施例1-1で得られた粒子状吸水剤(EX-1-1)30gを、目開き850/425/250/106μmの篩で分級した。まず、JIS標準の篩(The IIDA TESTING SIEVE/株式会社飯田製作所製、直径:15cm、篩の目開き:850μm/425μm/250μm/106μm)を、上から目開きの大きい順に重ね合わせ、一番下に受器(株式会社飯田製作所製、直径:15cm)を重ねた。続いて、一番上の篩(篩の目開き:850μm)に、粒子状吸水剤(EX-1-1)30.0gを投入し、蓋(株式会社飯田製作所製、直径:15cm)をした。続いて、重ね合わせた蓋、2つの篩、及び受器のセットを、IIDA SIEVE SHAKER(TYPE:ES-65型、SER.No.0632)を用いて、5分間振とうさせた。振とう後、目開き850μmの篩を通過し,目開き425μmを通過しない粒子状吸水剤(フラクションA)は13.02g(43.4質量%)であった。目開き425μmの篩を通過し,目開き250μmを通過しない吸水剤(フラクションB)は11.40g(38.0質量%)であった。目開き250μmの篩を通過し、目開き106μmを通過しない粒子状吸水剤(フラクションC)は5.58g(18.6質量%)であった。
【0490】
比較例1-5で得られた粒子状吸水剤(CE-1-5)30gを、同様に目開き850/425/250/106μmの篩で分級した。目開き850μmの篩を通過し,目開き425μmを通過しない粒子状吸水剤(フラクションX)は12.90g(43.0質量%)であった。目開き425μmの篩を通過し,目開き250μmを通過しない粒子状吸水剤(フラクションY)は11.46g(38.2質量%)であった。目開き250μmの篩を通過し,目開き106μmを通過しない粒子状吸水剤(フラクションZ)は5.64g(18.8質量%)であった。
【0491】
フラクションX、フラクションB及びフラクションZを混合して、粒子状吸水剤(RE-1)を得た。粒子状吸水剤(RE-1)を用いて吸収体評価を行なった結果、液取り込み速度は21secであり、戻り量は0.4gであった。
【0492】
〔参考例1-2〕
フラクションA、フラクションY及びフラクションCを混合して、粒子状吸水剤(RE-2)を得た。粒子状吸水剤(RE-2)を用いて吸収体評価を行なった結果、液の取り込み速度は29secであり、戻り量は0.7gであった。
【0493】
以上参考例1-1及び1-2より、目開き425μmの篩を通過し、目開き250μmを通過しない粒子のX線CT測定により求められる、連通孔の総体積率及び独立気泡の総体積率が規定を満たす吸水剤を用いることにより、吸収体の液の取り込み速度の向上及び戻り量の減少が達成できることが示されている。具体的には、参考例1-1は実施例1-1と同様に、液の取り込み速度及び戻り量は良好である。参考例1-2は比較例1-5と同様に液の取り込み速度及び戻り量は悪化している。以上の結果から、吸収体評価における液の取り込み速度及び戻り量を支配するのは目開き425μmの篩を通過し、目開き250μmを通過しないフラクションであり、吸水剤全体の35質量%以上を占めていることが好ましいことが分かる。
【0494】
【0495】
(425/250粒度でのX線CT測定が好ましい理由)
425μm以上のフラクションを用いてX線CT測定を行うと、一度に測定できる粒子数が100個以下と少なくなることがあり、連通孔及び独立気泡を算出する際の測定母数が不足し、データの正確性が損なわれるため好ましくない。また250μm以下のフラクションを用いてX線CT測定を行うと、測定母数は増加するが分解能の関係で測定精度が低下し、データの振れが大きくなるため好ましくない。425/250粒度(425~250μmの粒子)であれば、X線CT測定において十分な測定母数を確保でき、かつ測定精度も高くすることができる。
【0496】
〔実施例2-1〕
実施例1-1、1-2のいずれかの製法にならい、実施例に記載された「単量体溶液の調製工程」における架橋剤ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)の量及び「乾燥物の粉砕、分級工程」におけるロールミルのギャップを調整することにより、粒子状吸水剤(EX-2-1)を得た。粒子状吸水剤(EX-2-1)の物性を表5に示す。
【0497】
〔実施例2-2〕
実施例1-1、1-2のいずれかの製法にならい、実施例に記載された「単量体溶液の調製工程」における架橋剤ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)の量及び「乾燥物の粉砕、分級工程」におけるロールミルのギャップを調整することにより、粒子状吸水剤(EX-2-2)を得た。粒子状吸水剤(EX-2-2)の物性を表5に示す。
【0498】
【0499】
[実施例3-1]
木材粉砕パルプを、ミキサーを用いて乾式混合し、得られた混合物を、400メッシュ(目開き38μm)のワイヤースクリーン上で、バッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造を行い、200mm×400mmの大きさのウェブを成形した。次いで、上記ウェブの長手方向を5等分して80mm×160mmの大きさに切り出し、各々を7.8kPaの圧力で1分間プレスすることにより、厚み2.5mm、坪量(目付量)が45g/m2であるパルプ製パッド(第2の基材に相当する)を得た。縦80mm、横160mmの大きさに成形されたパルプ製パッド中央に縦10mm、横60mmの型紙を設置した。次にパルプ製パッド上の型紙を設置した面に粒子状吸水剤(EX-2-1)1.92g(散布量:150g/m2)を均一に散布した。型紙の上に粒子状吸水剤(EX-2-1)の一部が散布された場合、粒子状吸水剤(EX-2-1)を散布しているパルプ製パッドに向かって型紙を傾けて、粒子状吸水剤(EX-2-1)をパルプ製パッドの上に落とした。その後パルプ製パッドの中央に設置した型紙は取り除き、取り除いた個所に、縦10mm、横60mmの両面テープ(NICHIBAN製;ナイスタック(一般タイプ)、粘着力02(普通)、幅10mm、NWBB-10)を貼り付け、両面テープのはく離紙を剥がした。次に、別途作成した縦80mm、横160mm、厚み2.5mm、坪量45g/m2のパルプ製パッド(第1の基材に相当する)を、パルプ製パッドの粒子状吸水剤(EX-2-1)が散布された面に載せ、下方のパルプ製パッド(第2の基材)と上方のパルプ製パッド(第1の基材)の中央部(縦10mm、横60mm)は、第2の基材の中央部に貼り付けた両面テープで直接貼り合わせ、吸収体(1)を得た。
【0500】
[実施例3-2]
実施例3-1と同一の手法で作成されたパルプ製パッド(縦80mm、横160mm、厚み2.5mm、坪量45g/m2、第2の基材に相当する)へ粒子状吸水剤(EX-2-1)を1.92g(散布量:150g/m2)均一に散布した。次に、縦80mm、横160mmに切断した不織布B(オレフィンを主成分とし、エアスルー法で作成されたものであり、厚み1.4mm、坪量20g/m2、第1の基材に相当する)を、パルプ製パッドの粒子状吸水剤(EX-2-1)が散布された面に載せ、吸収体(2)を得た。
【0501】
[実施例3-3]
実施例3-1と同様の手法で作成されたパルプ製パッド(縦80mm、横160mm、厚み2.5mm、坪量45g/m
2)を長手方向が合うように3枚重ねた(
図16に示すように、第2の基材に相当する(各パッドが第3の基材に相当する))。3枚重ねたパルプ製パッドのうち、最も上(第2の基材の上面(吸水層側の面))のパルプ製パッドへ粒子状吸水剤(EX-2-1)を1.92g(散布量:150g/m
2)均一に散布した。次に、縦80mm、横160mmに切断した、不織布B(オレフィンを主成分とし、エアスルー法で作成されたものであり、厚み1.4mm、坪量20g/m
2、第1の基材に相当する)を、パルプ製パッドの粒子状吸水剤(EX-2-1)が散布された面に載せ、吸収体(3)を得た。
【0502】
[実施例3-4]
実施例3-1の粒子状吸水剤(EX-2-1)を粒子状吸水剤(EX-2-2)に置き換えることにより、吸収体(4)を得た。
【0503】
[実施例3-5]
実施例3-2の粒子状吸水剤(EX-2-1)を粒子状吸水剤(EX-2-2)に置き換えることにより、吸収体(5)を得た。
【0504】
[実施例3-6]
実施例3-3の粒子状吸水剤(EX-2-1)を粒子状吸水剤(EX-2-2)に置き換えることにより、吸収体(6)を得た。
【0505】
[実施例3-7]
実施例3-1において第1の基材及び第2の基材として用いたパルプ製パッドを縦80mm、横160mmに切断した不織布A(パルプ繊維を主成分とし、エアレイド法で作成されたものであり、厚み0.5mm、坪量45g/m2)に置き換えることで、吸収体(7)を得た。
【0506】
[実施例3-8]
実施例3-2において第2の基材として用いたパルプ製パッドを実施例3-7に記載の不織布Aに置き換えることで、吸収体(8)を得た。
【0507】
[実施例3-9]
実施例3-3において第2の基材として用いたパルプ製パッドを実施例3-7に記載の不織布Aに置き換えることで(すなわち、不織布Aが3枚重ねられてる(第2の基材に相当;各不織布Aが第3の基材に相当)、吸収体(9)を得た。
【0508】
[実施例3-10]
実施例3-4において第2の基材として用いたパルプ製パッドを実施例3-7に記載の不織布Aに置き換えることで、吸収体(10)を得た。
【0509】
[実施例3-11]
実施例3-5において第2の基材として用いたパルプ製パッドを実施例3-7に記載の不織布Aに置き換えることで、吸収体(11)を得た。
【0510】
[実施例3-12]
実施例3-6において第2の基材として用いたパルプ製パッドを実施例3-7に記載の不織布Aに置き換えることで(すなわち、不織布Aが3枚重ねられている(第2の基材に相当;各不織布Aが第3の基材に相当)、吸収体(12)を得た。
【0511】
[実施例3-13]
実施例3-8から吸収体のサイズ(すなわち、不織布Bおよび不織布Aのサイズ)を縦300mm×横300mm、粒子状吸水剤の散布量を4.5g(50g/m2)へ変更することで吸収体(13)を得た。
【0512】
[実施例3-14]
実施例3-13から粒子状吸水剤の散布量を0.45g(5g/m2)へ変更することで吸収体(14)を得た。
【0513】
〔液体透過性の基材について〕
実施例3-1~3-14で用いた液体透過性の基材、すなわち不織布A、不織布B、パルプ製パッドの厚みは、ノギスを用い、不織布に圧がかからない状態における厚みを測定した。また、求めた厚みから、目付/厚さである嵩密度(g/cm3)を計算した。空隙率は下記(式1)より算出した。
【0514】
空隙率(%)=[1-(M/(A×T×D))]×100 (式1)
M:基材(繊維基質)の質量(g)
A:基材(繊維基質)の面積(cm2)
T:基材(繊維基質)の厚み(cm)
D:基材(繊維基質)を形成する繊維の密度(g/cm3)。
【0515】
不織布Aの空隙率は94%、不織布Bの空隙率は98.5%、パルプ製パッドの空隙率は98.8%であった。
【0516】
なお、実施例3-1~3-14で用いた液体透過性の基材のうち、液体透過性シートに相当する基材は不織布Aおよび不織布Bである。
【0517】
〔吸収体評価方法〕
<実施例3-1~3-12:吸収速度及び戻り量の測定>
図20~
図22に示されるように、実施例3-1~3-12において作成した縦8cm、横16cmの吸収体(1)~(12)について、以下の方法に従って、吸収速度及び戻り量を評価した。
【0518】
平面な台の上で、吸収体50を液体不透過性のビニールシート31の上に第1基材が最上面になるように置き、次に吸収体50と同一の寸法に切断した液体透過性の不織布C(スパンボンド法で作成されたものであり、厚み0.15mm、坪量18g/m
2)を長手方向が合うように載せ(図示しない)、その上に重さ150gの高さ65mm×外径49mm(内径39mm)の液注入筒32(
図20)を
図21に示されるように吸収体50の中央に置いた。この状態で、流速6ml/秒で液投入が可能な漏斗33(
図22)を使用して23℃の0.9%質量塩化ナトリウム水溶液10mlを投入した。尚、漏斗33の先端は、吸収体50から1.5cmの高さとなるように設置した。液を投入してから、液がすべて吸収体50へ吸収されるまでの時間を測定し、吸収速度1とした。1回目の液投入から3分後、同様の操作を繰り返し、吸収速度2を測定した。さらに2回目の液投入から3分後、同様の操作を繰り返し、吸収速度3を測定した。3回目の液投入から27秒後に液注入筒32を外し、予め質量を測定した濾紙(円形定性ろ紙 型式 No.2、ADVANTEC製;直径55mm)30枚を、うら面(密)を下側にして吸収体50及び不織布Cの中央に載せ、直径50mmの円筒形の錘(1036(±2g)をさらに載せて、10秒間保持した。10秒後、錘を除去し、濾紙の質量増分から戻り量(g)を測定した。尚、錘を外してから戻り量の測定を開始するまでの時間は約3秒であった。
【0519】
<実施例3-13:吸収速度及び戻り量の測定>
図23に示されるように、実施例3-13、3-14において作成した縦30cm、横30cmの吸収体(13)について、以下の方法に従って、吸収速度及び戻り量を評価した。
【0520】
平面な台の上に、吸収体50を液体不透過性のビニールシート31の上に第1基材が最上面になるように置き、次に吸収体50と同一の寸法に切断した液体透過性の不織布C(スパンボンド法で作成されたものであり、厚み0.15mm、坪量18g/m
2、図示しない)を吸収体50に重ねて載せ、その上に重さ50gの高さ65mm×外径49mm(内径39mm)の液注入筒32(
図20)を
図23に示されるように吸収体50の中央に置いた。この状態で、流速6ml/秒で液投入が可能な漏斗33(
図22)を使用して23℃の0.9%質量塩化ナトリウム水溶液30mlを投入した。尚、漏斗33の先端は、吸収体50から1.5cmの高さとなるように設置した。液を投入してから、液がすべて吸収体50へ吸収されるまでの時間を測定し、吸収速度とした。液投入から2分57秒後に液注入筒32を外し、予め質量を測定した濾紙(円形定性ろ紙型式No.2、ADVANTEC製;直径110mm)30枚を、うら面(密)を下側にして吸収体50及び不織布Cの中央に載せ、底面が直径100mmの円筒形の錘(2749(±2g)をさらに載せて、30秒間保持した。30秒後、錘を除去し、濾紙の質量増分から戻り量(g)を測定した。尚、錘を外してから戻り量の測定を開始するまでの時間は約3秒であった。
【0521】
<実施例3-14:吸収速度及び戻り量の測定>
実施例3-14において作成した縦30cm、横30cmの吸収体(14)について、<実施例3-13:吸収速度及び戻り量の測定>において23℃の0.9%質量塩化ナトリウム水溶液投入量を10mlへ変更したこと以外は吸収体(13)に対する評価方法と同様の評価方法にて吸収速度及び戻り量を評価した。
【0522】
【0523】
【0524】
本出願は、2021年2月26日に出願された日本特許出願番号第2021-030521号および2021年2月26日に出願された日本特許出願番号第2021-030524号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。
【符号の説明】
【0525】
1 粒子状吸水剤
1a 連通孔
1b 独立気泡
12 台
13 スクリュー
14 供給口
15 ホッパー
16 押出口
17 支持具
18 回転刃
19 リング
20 逆戻り防止部材
20a 帯状突起(逆戻り防止部材)
21 モーター
31 ビニールシート
32 液注入筒
33 漏斗
50 吸収体
51 第1の基材
52 吸水層
53 第2の基材
53a 第3の基材
54 粒子状吸水剤
55 間隙
56 親水性繊維
100 ミートチョッパー
200 ゲル粉砕装置
204 投入口
206 回転軸
208 本体(バレル)
210 排出口
212 粉砕手段
214 駆動装置
216 ガス投入口
217 ゲル流動化剤投入口
310 ゲル整粒装置
311 スクリュー
312 小孔
313 ダイス
320 ゲル整粒装置
321 ロール
322 小孔
323 回転ダイス
330 ゲル整粒装置
331 パドル
332 小孔
333 円筒状ダイス
336 押込み羽根
340 ゲル整粒装置
343 多孔板
341 押出作用部
342 小孔
400 スクリュー型前押出し式整粒機、
420 送りスクリュー、
420a 球面状先端部、
410 ギヤーボックス、
430 スクリューケース、
440 投入ホッパー、
450 球面状ダイ、
450a 球面状裏面、
460 球面状押出し羽根
460a 球面状押出し羽根のエッジ
502 加熱装置
504 主部
506 投入部及び取り出し部
508 スチーム出入り部
510 回転容器
512 加熱管
514 第一歯車
516 第二歯車
544 スチーム入口
546 ドレーン