(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-15
(45)【発行日】2025-04-23
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、コーティング層、及び、フィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 59/02 20060101AFI20250416BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250416BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20250416BHJP
C08K 5/5435 20060101ALI20250416BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20250416BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250416BHJP
【FI】
C08G59/02
C08L63/00 C
C08K5/1515
C08K5/5435
C09D163/00
C08J5/18 CFC
(21)【出願番号】P 2024549488
(86)(22)【出願日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2024015822
(87)【国際公開番号】W WO2024225246
(87)【国際公開日】2024-10-31
【審査請求日】2024-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2023070821
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】小野 真輝
(72)【発明者】
【氏名】内野 慎也
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230725(WO,A1)
【文献】特開2022-153475(JP,A)
【文献】特開昭53-120799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C08K 5/1515-5/5435
C09D 163/00
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂とカップリング剤と重合開始剤とを含有し、
前記硬化性樹脂は、1分子中に4つ以上のグリシジル基を有する硬化性樹脂を含み、
前記カップリング剤は、1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤を含み、
前記硬化性樹脂全体と前記カップリング剤全体との合計100質量部に対する前記1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤の含有量が
20質量部以上50質量部以下であり、
コーティング層又はフィルムを形成するために用いられる
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化性樹脂とカップリング剤と重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂は、1分子中に2つ以上のグリシジル基を有する硬化性樹脂を含み、
前記カップリング剤は、1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤を含み、
前記硬化性樹脂全体と前記カップリング剤全体との合計100質量部に対する前記1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤の含有量が
20質量部以上50質量部以下であり、
前記硬化性樹脂組成物にUV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm
2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後のJIS K 5600-5-4に準拠して測定される鉛筆硬度が4H以上であり、
前記硬化性樹脂組成物にUV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm
2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後のJIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット法による付着性試験における分類が0又は1である
ことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合開始剤は、光重合開始剤を含む請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を用いて形成されるコーティング層。
【請求項5】
請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物を用いて形成されるフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いて形成されるコーティング層及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体素子は、消費電力が低く、長寿命であることから、液晶表示装置のバックライトや照明器具等に広く用いられている。光半導体素子は、大気中の水分やガスと接触することにより劣化し、光取り出し効率が低下するため、通常、封止剤で封止するとともにカバーガラス等で保護して用いられる。近年、カバーガラス等を用いずに光半導体素子を保護封止する方法として、ハードコート剤を用いて光半導体素子の表面上にコーティング層を形成することが検討されている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光半導体素子を保護封止するハードコート剤には、硬化後の硬度及び接着性(特にガラスに対する接着性)を両立することが求められる。しかしながら、従来のハードコート剤は、硬化後の硬度及び接着性に優れるものであっても、高温高湿環境に曝された場合に硬度及び接着性を維持することが困難であった。
本発明は、高温高湿環境に曝された場合でも硬度及び接着性に優れる硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いて形成されるコーティング層及びフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示1は、硬化性樹脂とカップリング剤と重合開始剤とを含有し、上記硬化性樹脂は、1分子中に2つ以上のグリシジル基を有する硬化性樹脂を含み、上記カップリング剤は、1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤を含み、上記硬化性樹脂全体と上記カップリング剤全体との合計100質量部に対する上記1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤の含有量が10質量部以上50質量部以下である硬化性樹脂組成物である。
本開示2は、上記重合開始剤は、光重合開始剤を含む本開示1の硬化性樹脂組成物である。
本開示3は、上記硬化性樹脂組成物にUV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後のJIS K 5600-5-4に準拠して測定される鉛筆硬度が4H以上である本開示1又は2の硬化性樹脂組成物である。
本開示4は、上記硬化性樹脂組成物にUV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後のJIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット法による付着性試験における分類が0又は1である本開示1、2又は3の硬化性樹脂組成物である。
本開示5は、本開示1、2、3又は4の硬化性樹脂組成物を用いて形成されるコーティング層である。
本開示6は、本開示1、2、3又は4の硬化性樹脂組成物を用いて形成されるフィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者は、硬化性樹脂組成物について、1分子中に2つ以上のグリシジル基を有する硬化性樹脂と、1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤とを組み合わせて用い、かつ、該1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤の含有量を特定の範囲内とすることを検討した。その結果、高温高湿環境に曝された場合でも硬度及び接着性(特にガラスに対する接着性)に優れる硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、1分子中に2つ以上のグリシジル基を有する硬化性樹脂(以下、「本発明にかかる硬化性樹脂」ともいう)を含む。
本発明にかかる硬化性樹脂を、後述する含有量の1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤と組み合わせて用いることにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、高温高湿環境に曝された場合でも硬度及び接着性(特にガラスに対する接着性)に優れる硬化物を得ることができるものとなる。
【0008】
本発明にかかる硬化性樹脂は、1分子中に2つ以上のグリシジル基を有する。本発明にかかる硬化性樹脂は、反応性や得られる硬化物の硬度等の観点から、1分子中にグリシジル基を4つ以上有することがより好ましい。また、本発明にかかる硬化性樹脂が1分子中に有するグリシジル基の数の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は8つである。
【0009】
本発明にかかる硬化性樹脂としては、具体的には例えば、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0010】
上記硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0011】
上記硬化性樹脂全体とカップリング剤との合計100質量部に対する本発明にかかる硬化性樹脂の含有量の好ましい下限は50質量部である。本発明にかかる硬化性樹脂の含有量が50質量部以上であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物が、高温高湿環境に曝された場合の硬度及び接着性(特にガラスに対する接着性)により優れるものとなる。
また、上記硬化性樹脂全体中における本発明にかかる硬化性樹脂の含有割合の好ましい下限は50質量%、より好ましい下限は90質量%である。上記硬化性樹脂全体中における本発明にかかる硬化性樹脂の含有割合は100質量%、即ち、上記硬化性樹脂は、本発明にかかる硬化性樹脂のみからなるものであってもよい。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物100質量部中における上記硬化性樹脂全体の含有量の好ましい下限は40質量部、好ましい上限は90質量部である。上記硬化性樹脂全体の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が硬化性及び接着性により優れるものとなる。上記硬化性樹脂全体の含有量のより好ましい下限は45質量部、より好ましい上限は85質量部である。
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含有する。
上記カップリング剤は、1分子中に1つのグリシジル基を有するカップリング剤(以下、「本発明にかかるカップリング剤」ともいう)を含む。
なお、本明細書において上記「1分子中に1つのグリシジル基を有する」とは、1分子中にグリシジル基を1つのみ有することを意味し、1分子中にグリシジル基を2つ以上有するカップリング剤は、本発明にかかるカップリング剤として扱わない。
【0014】
本発明にかかるカップリング剤としては、1分子中に1つのグリシジル基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0015】
上記1分子中に1つのグリシジル基を有するシランカップリング剤としては、具体的には例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0016】
上記カップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0017】
上記硬化性樹脂全体と上記カップリング剤全体との合計100質量部に対する本発明にかかるカップリング剤の含有量の下限は10質量部、上限は50質量部である。本発明にかかるカップリング剤の含有量が10質量部以上であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物が高温高湿環境に曝された場合の接着性に優れるものとなる。本発明にかかるカップリング剤の含有量が50質量部以下であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物が高温高湿環境に曝された場合の硬度に優れるものとなる。本発明にかかるカップリング剤の含有量の好ましい下限は20質量部、好ましい上限は40質量部、より好ましい上限は30質量部である。
また、上記カップリング剤全体中における本発明にかかるカップリング剤の含有割合の好ましい下限は10質量%、より好ましい下限は30質量%である。上記カップリング剤全体中における本発明にかかるカップリング剤の含有割合は100質量%、即ち、上記カップリング剤は、本発明にかかるカップリング剤のみからなるものであってもよい。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
上記光重合開始剤は、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
【0019】
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、例えば、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、(BX4)-(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。また、上記アニオン部分としては、PFm(CnF2n+1)6-m
-(但し、式中、mは0以上5以下の整数であり、nは1以上6以下の整数である)等も挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
【0020】
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。なかでも、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0021】
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0022】
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0023】
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0024】
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0025】
上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
【0026】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、みどり化学社製の光カチオン重合開始剤、ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤、ADEKA社製の光カチオン重合開始剤、3M社製の光カチオン重合開始剤、BASF社製の光カチオン重合開始剤、ソルベイ社製の光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
上記みどり化学社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、DTS-200等が挙げられる。
上記ユニオンカーバイド社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、UVI6990、UVI6974等が挙げられる。
上記ADEKA社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、SP-150、SP-170等が挙げられる。
上記3M社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、FC-508、FC-512等が挙げられる。
上記BASF社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、IRGACURE261、IRGACURE290等が挙げられる。
上記ソルベイ社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、PI2074等が挙げられる。
上記サンアプロ社製の光カチオン重合開始剤としては、例えば、CPI-100P、CPI-200K、CPI-210S等が挙げられる。
【0027】
上記重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0028】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が1質量部、好ましい上限が20質量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が硬化性及び保存安定性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は3質量部、より好ましい上限は15質量部である。
【0029】
本発明の硬化性樹脂組成物は、耐光性の観点から、更に、紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0030】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-エトキシ-2’-エチルシュウ酸ビスアニリド、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、2-(2’-ヒドロキシ-4’-n-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-t-ブチルフェニル、2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.001質量部、好ましい上限が5質量部である。上記紫外線吸収剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が耐光性により優れるものとなる。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は0.1質量部、より好ましい上限は1質量部である。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物は、塗膜の平坦性の観点から、更に、レベリング剤を含有してもよい。
【0033】
上記レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等が挙げられる。
【0034】
上記レベリング剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.01質量部、好ましい上限が10質量部である。上記レベリング剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が塗布性及び塗膜の平坦性により優れるものとなる。上記レベリング剤の含有量のより好ましい下限は0.03質量部、より好ましい上限は1質量部である。
【0035】
本発明の硬化性樹脂組成物は、塗布性の観点から、更に、チキソ性付与剤を含有してもよい。
【0036】
上記チキソ性付与剤としては、例えば、ポリシロキサン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエステル、アルキル変性セルロース、ペプチド、ポリペプチド、シリカ等が挙げられる。
【0037】
上記チキソ性付与剤の含有量は、上記硬化性樹脂100質量部に対して、好ましい下限が0.1質量部、好ましい上限が5質量部である。上記チキソ性付与剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が塗布性により優れるものとなる。上記チキソ性付与剤の含有量のより好ましい下限は1質量部、より好ましい上限は3質量部である。
【0038】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低アウトガス性により優れ、かつ、脱溶剤工程を要しないものとなることから、溶剤の含有量が1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、溶剤を含有しないことが特に好ましい。
【0039】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、染料、硬化遅延剤、補強剤、粘度調整剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は、E型粘度計を用いて、25℃にて測定した粘度の好ましい下限が10mPa・s、好ましい上限が5万mPa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が塗布性に優れるものとなる。上記粘度のより好ましい下限は20mPa・s、より好ましい上限は1万mPa・sである。
上記粘度は、例えば、E型粘度計としてVISCOMETER TV-22(東機産業社製)、No.1のローターを用いて1rpm又は10rpmの回転速度にて測定することができる。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物は、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物のJIS K 5600-5-4に準拠して測定される鉛筆硬度(以下、単に「硬化物の鉛筆硬度」ともいう)が4H以上であることが好ましい。上記硬化物の鉛筆硬度が4H以上であることにより、本発明の硬化性樹脂組成物をハードコート剤として光半導体素子等の保護封止に好適に用いることができる。上記硬化物の鉛筆硬度は7H以上であることがより好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後のJIS K 5600-5-4に準拠して測定される鉛筆硬度(以下、「信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度」ともいう)が4H以上であることが好ましい。上記信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度が4H以上であることにより、高温高湿環境に曝される場合であっても、本発明の硬化性樹脂組成物をハードコート剤として光半導体素子等の保護封止に好適に用いることができる。上記信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度は7H以上であることがより好ましい。
なお、鉛筆硬度の測定に使用する鉛筆としては、6Bから10Hまでの硬さの鉛筆が用いられる。
また、本明細書において鉛筆硬度が「nH以上(nは整数である)」とは、鉛筆硬度がnHとなる硬さである、又は、nHとなる硬さよりも硬いことを意味する。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物をハードコート剤として光半導体素子等の保護封止に用いる場合の信頼性の観点から、上記硬化物の鉛筆硬度と上記信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度との差は、2段階以下であることが好ましく、1段階以下であることがより好ましく、0段階、即ち、上記硬化物の鉛筆硬度と上記信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度は同じであることが最も好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物について、JIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット法による付着性試験における分類(以下、単に「硬化物の付着性分類」ともいう)が0又は1であることが好ましい。上記硬化物の付着性分類が0又は1であることにより、本発明の硬化性樹脂組成物をハードコート剤として光半導体素子等の保護封止に好適に用いることができる。上記硬化物の付着性分類は0であることが最も好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより得られる硬化物について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後のJIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット法による付着性試験における分類(以下、「信頼性試験後の硬化物の付着性分類」ともいう)が0又は1であることが好ましい。上記信頼性試験後の硬化物の付着性分類が0又は1であることにより、高温高湿環境に曝される場合であっても、本発明の硬化性樹脂組成物をハードコート剤として光半導体素子等の保護封止に好適に用いることができる。上記信頼性試験後の硬化物の付着性分類は0であることが最も好ましい。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ハードコート剤、ディスプレイ用封止剤、マイクロレンズ等に用いることができる。なかでも、ハードコート剤として光半導体素子等の上にコーティング層を形成する、又は、フィルム状として光半導体素子等を被覆することにより、該光半導体素子等を保護封止するために好適に用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成されるコーティング層もまた、本発明の1つである。本発明の硬化性樹脂組成物を用いて形成されるフィルムもまた、本発明の1つである。
【0045】
本発明のコーティング層は、本発明の硬化性樹脂組成物を光半導体素子等の被塗布物上に塗布した後、硬化させることにより形成することができる。また、本発明のフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を離型フィルム等に塗布した後、硬化させることにより形成することができる。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、バーコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物が上記重合開始剤として上記光重合開始剤を含有する場合、本発明の硬化性樹脂組成物は、光照射によって容易に硬化させることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物を光照射によって硬化させる方法としては、例えば、300nm以上400nm以下の波長及び300mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下の積算光量の光を照射する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物に光を照射するための光源としては、例えば、UV-LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
これらの光源は、上記光重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記光照射を行った後、加熱することにより硬化させてもよい。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、高温高湿環境に曝された場合でも硬度及び接着性に優れる硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物を用いて形成されるコーティング層及びフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0053】
(実施例2、3、6、参考例1、4、5、7、8、及び、比較例1~6)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、撹拌混合機を用いて撹拌混合することにより、実施例2、3、6、参考例1、4、5、7、8、及び、比較例1~6の各硬化性樹脂組成物を作製した。撹拌混合機としては、あわとり練太郎ARE-310(シンキー社製)を用いた。
【0054】
<評価>
得られた各硬化性樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0055】
(硬化物の硬度及び硬度保持性)
得られた各硬化性樹脂組成物を、長さ5cm、幅5cm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、スピンコーターを用いて、900rpm、20秒の条件で塗布し、厚さ10μmの塗膜を得た。次いで、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより硬化性樹脂組成物を硬化させ、試験片を得た。
得られた試験片について、750gの荷重にてJIS K 5600-5-4に準拠して鉛筆硬度を測定し、以下の基準により硬化物の硬度を評価した。使用する鉛筆としては、6Bから10Hまでの硬さの鉛筆を用いた。
また、得られた試験片について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後、同様にして鉛筆硬度を測定し、信頼性試験後の硬化物の硬度を評価した。
AA:鉛筆硬度が7H以上であった場合
A:鉛筆硬度が4H以上6H以下であった場合
B:鉛筆硬度が3H以下であった場合
なお、本明細書において鉛筆硬度が「nH以下(nは整数である)」とは、鉛筆硬度がnHとなる硬さである、又は、nHとなる硬さよりも柔らかいことを意味する。
更に、硬化物の鉛筆硬度(信頼性試験を行わなかった硬化物の鉛筆硬度)と信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度との差から、以下の基準により硬度保持性を評価した。
AA:硬化物の鉛筆硬度と信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度とが同じ(差が0段階)であった場合
A:硬化物の鉛筆硬度と信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度との差が1段階又は2段階であった場合
B:硬化物の鉛筆硬度と信頼性試験後の硬化物の鉛筆硬度との差が3段階以上であった場合
【0056】
(ガラスに対する接着性)
得られた各硬化性樹脂組成物を、長さ5cm、幅5cm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、スピンコーターを用いて、900rpm、20秒の条件で塗布し、厚さ10μmの塗膜を得た。次いで、UV-LEDを用いて波長365nm、照度100mW/cm2の紫外線を30秒照射した後、100℃で30分間加熱することにより硬化性樹脂組成物を硬化させ、試験片を得た。
得られた試験片について、JIS K 5600-5-6に準拠して、カッターを用いて碁盤目に切り込みを入れて試験箇所を設け、試験箇所にテープ(ニチバン社製、「セロテープ(登録商標)No.405」)を貼り付けた後、テープを剥離するクロスカット法による付着性試験を行った。切り込み間隔は1cmとし、テープの剥離角度は90°とした。付着性試験後の試験片を目視にて観察し、JIS K 5600-5-6における分類(付着性分類)をもとに、以下の基準によりガラスに対する接着性を評価した。
また、得られた試験片について、85℃、85%RHの環境下に24時間曝す信頼性試験を行った後、同様にしてクロスカット法による付着性試験を行い、信頼性試験後のガラスに対する接着性を評価した。
AA:付着性分類が0又は1であった場合
A:付着性分類が2又は3であった場合
B:付着性分類が4又は5であった場合
【0057】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、高温高湿環境に曝された場合でも硬度及び接着性に優れる硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該硬化性樹脂組成物を用いて形成されるコーティング層及びフィルムを提供することができる。