(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】要素間のラッチアクティベーション
(51)【国際特許分類】
H02K 49/02 20060101AFI20250417BHJP
A62B 35/00 20060101ALI20250417BHJP
B60R 22/28 20060101ALI20250417BHJP
F16D 59/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
H02K49/02 B
A62B35/00 D
B60R22/28 104
F16D59/00 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195495
(22)【出願日】2021-12-01
(62)【分割の表示】P 2017527293の分割
【原出願日】2015-12-04
【審査請求日】2021-12-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-19
(32)【優先日】2014-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】525008907
【氏名又は名称】シュアワークス ユーエスエー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SureWerx USA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【氏名又は名称】山田 行一
(72)【発明者】
【氏名】アリントン, クリストファー ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ディール, アンドリュー カール
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ケヴィン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒル, ウェストン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルタース, デイヴ
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】中野 浩昌
【審判官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-189530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K49/02
B60R22/28
F16D59/00
A62B35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフリトラクティングライフラインであって、
ラインを伴うスプールを磁気相互作用を用いて外部要素のラッチに選択的に結合することで、前記スプールおよび前記スプール上のラインと前記外部要素との間の相対運動を低減または停止させるように構成される結合器を備え、
前記結合器が、爪を含み、前記爪は、前記スプールに連結され、前記スプール上のラインが前記スプールから繰り出されると前記スプールと共に回転し、
前記磁気相互作用が前記爪と前記外部要素の両方に配置された少なくとも一つの磁石の間で生じるように、前記爪と前記外部要素が互いに対向しており、
前記スプールからのライン繰り出しにより、前記スプールが速度の閾値未満で回転すると、前記爪が、前記磁気相互作用が引き起こす付勢関係の変化のため、前記スプールの回転軸線を基準として径方向の内向きおよび外向きに振動し、前記結合器が、前記スプールを前記外部要素に結合せず、
前記スプールからのライン繰り出しにより、前記スプールが速度の閾値以上で回転すると、前記結合器の前記爪が、径方向の外向きに十分に遠く展開位置まで移動し、前記爪または前記爪の一部が、前記外部要素のラッチ用幾何学的境界面に係合し、それにより、前記外部要素と前記スプールを結合することで、前記外部要素と前記スプールとの間の相対運動を停止させる、セルフリトラクティングライフライン。
【請求項2】
前記爪が前記スプールに直接連結される、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項3】
前記爪が非結合位置に付勢される、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項4】
前記付勢がばねである、請求項3に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項5】
前記外部要素のラッチ用幾何学的境界面が歯を含む、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項6】
前記外部要素が少なくとも2つの歯を含む、請求項5に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項7】
前記爪の末端がラッチ用幾何学的境界面に係合する、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項8】
前記外部要素のラッチ用幾何学的境界面が、ラチェットとして形成されることで、一旦結合されると、前記スプールが、前記スプールにラインを巻き付けるように逆方向にのみ動くことができ、ラインを前記スプールから引き出すことができなくなる、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項9】
前記外部要素が、前記スプールまたは前記スプールの一部の周りの筐体である、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項10】
前記爪が回転軸線を有し、前記爪の前記回転軸線が、前記スプールの前記回転軸線からずれている、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項11】
前記爪が、前記スプールに連結された第1の端部と、結合時に前記外部要素とラッチする反対側の第2の端部とを備えた細長い要素である、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【請求項12】
前記外部要素と前記スプールとの間の相対運動が停止すると、前記スプールおよび前記スプールから繰り出されるラインの絶対速度が0になる、請求項1に記載のセルフリトラクティングライフライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、部材間の相対速度を制御するためのシステム、使用方法およびシステムを使用したセルフリトラクティングライフライン(SRL)装置が記載される。
【背景技術】
【0002】
渦電流関連装置の分野における本出願人の同時係属中および付与された特許には、米国特許第8,851,235号明細書、米国特許第8,490,751号明細書、ニュージーランド特許第619034号明細書、ニュージーランド特許第627617号明細書、ニュージーランド特許第627619号明細書、ニュージーランド特許第627633号明細書、ニュージーランド特許第627630号明細書、および他の同等物が含まれ、すべて参照により本明細書に組み込まれる。特に、ニュージーランド特許第627617号明細書は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる要素間のラッチ動作を実現する方法を記載している。ニュージーランド特許第627617号明細書に記載されている装置は有用であり得るが、相対運動および/または制動を制御する他の方法も実現され得るか、または少なくとも公衆に選択肢を提供する。
【0003】
システム、使用方法およびセルフリトラクティングライフライン(SRL)装置のさらなる態様および利点は、単に例として与えられる以下の説明から明らかとされよう。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、部材間の相対運動の停止を引き起こす部材間の動的応答を制御するシステム、使用方法およびシステムを使用したセルフリトラクティングライフライン(SRL)装置が記載される。磁気相互作用、渦電流抗力、遠心力および/または慣性力は、運動を制御するさまざまな機構を提供し得る。
【0005】
第1の態様では、少なくとも2つの部材が運動学的関係にあるシステムが提供され、システムは、第1の部材を少なくとも1つの別の部材に結合する手段を備え、そうすることで、部材間の同期した相対運動を生じさせ、規定のシステム動的応答に応答して結合が起こり、動的応答は、
(a)部材のうちの1つまたは複数の特定の速度動作、
(b)部材のうちの1つまたは複数の特定の加速度動作、
(c)部材のうちの1つまたは複数の特定のジャーク動作、
のうちの少なくとも1つから選択される。
【0006】
第2の態様では、部材間の相対運動を制御する方法であって、
(a)実質的に本明細書に記載のシステムを選択するステップと、
(b)システムに原動力を加えて、システム内の少なくとも1つの部材の運動を引き起こすステップと、
(c)規定のシステム動的応答が生じたときに部材間の結合を引き起こすステップと、
を含む方法が提供される。
【0007】
第3の態様では、実質的に本明細書に記載のシステムを組み込んだセルフリトラクティングライフライン(SRL)が提供される。
【0008】
記載されたシステム、使用方法およびSRL装置は、運動制御を実現するための代替方法を提供するという利点を提案するか、または少なくとも公衆に選択肢を提供する。
【0009】
システム、使用方法およびSRL装置のさらなる態様は、単なる例として与えられる以下の説明からおよび添付の図面を参照して、明らかとされよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】制動要素と運動要素との間に磁気相互作用を組み込む一実施形態の簡略化された正面図である。
【
図2】別の双安定の実施形態の簡略化された正面図である。
【
図3】上記の双安定の実施形態の磁力相互作用を示すグラフである。
【
図4】コギングトルク手法を採用した別の実施形態の斜視図および正面図である。
【
図5】コギングトルク手法による速度依存性結果を示す2つのグラフである。
【
図6】バーキング要素および運動要素のコギングトルク手法の簡略化された正面図である。
【
図7】回転自由度を利用する別の実施形態の簡略化された正面図である。
【
図11】別のカム経路の実施形態の簡略化された斜視図である。
【
図12】別のカム経路の実施形態の簡略化された斜視図および正面図である。
【
図13】別のカム経路の実施形態の簡略化された正面図である。
【
図14】カム、幾何学的形状、慣性応答および渦電流の組み合わせを使用する別の実施形態のさまざまな正面図である。
【
図15】爪を用いた技術の速度感知装置の簡略化された正面図である。
【
図16】爪を用いた技術の加速度感知装置の簡略化された正面図である。
【
図17】ジャーク感知装置の簡略化された正面図である。
【
図18】さまざまな位置合わせにおける
図17のジャーク感知装置の簡略化された正面図である。
【
図20】別のジャーク感知装置の簡略化された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述したように、部材間の相対運動の停止を引き起こす部材間の動的応答を制御するシステム、使用方法およびシステムを使用したセルフリトラクティングライフライン(SRL)装置が本明細書に記載されている。磁気相互作用、渦電流抗力、遠心力および/または慣性力は、運動を制御するさまざまな機構を提供し得る。
【0012】
本明細書の目的のために、「約(about)」または「おおよそ(approximately)」という用語やその文法上の変形は、基準の数量、レベル、程度、値、数、頻度、比率、寸法、サイズ、量、重量、または長さに対し、30,25,20,15,10,9,8,7,6,5,4,3,2,または1%だけ異なる、数量、レベル、程度、値、数、頻度、比率、寸法、サイズ、量、重量、または長さを意味する。
【0013】
「実質的に(substantially)」という用語またはその文法上の変形は、少なくとも約50%、例えば、75%、85%、95%、または98%を参照する。
【0014】
「含む、備える(comprise)」という用語やその文法上の変形は、その包括的な意味を有するべきであり、すなわち、列挙されている直接参照する構成要素だけでなく、他の特定されていない構成要素または要素を含むことを意味すると解釈される。
【0015】
用語「ジャーク」またはその文法的変形は、加速度変化、典型的には通常の動作パラメータと比較して急激な加速度変化を指す。
【0016】
第1の態様では、少なくとも2つの部材が運動学的関係にあるシステムが提供され、システムは、第1の部材を少なくとも1つの別の部材に結合する手段を備え、そうすることで、部材間の同期した相対運動を生じさせ、規定のシステム動的応答に応答して結合が起こり、動的応答は、
(a)部材のうちの1つまたは複数の特定の速度動作、
(b)部材のうちの1つまたは複数の特定の加速度動作、
(c)部材のうちの1つまたは複数の特定のジャーク動作、
のうちの少なくとも1つから選択される。
【0017】
本発明者らは、実際には、システム動的応答に基づく部材の結合に関連するシステムを作り出した。その目的は、部材を所定の条件の下で同期した運動にさせることである。
【0018】
部材間の結合は、
(a)機械的に、
(b)磁気的に、
(c)機械的および磁気的な組み合わせで
達成され得る。
【0019】
結合は、受動的に生じてもよく、一度結合されると、部材は結合したままであってもよいし、解放可能に結合されていてもよい。代わりに、能動手段により結合を達成してもよい。
【0020】
同期した運動は、絶対速度ゼロまたは停止効果であってもよい。この効果は、例えば、落下安全装置において、すべての動きを停止する必要がある場合に有用であり得る。
【0021】
結合はまた、渦電流誘導抵抗に基づいてもよく、または少なくとも渦電流誘導抵抗による影響を受けてもよい。これは、発明者の経験上は必須ではないが、動的応答特性をさらに調整するのに有用であり得る。
【0022】
1つの特定の実施形態では、部材間の結合を、第1の部材に連結された少なくとも1つの爪であって、振動運動の動作を行う爪と、少なくとも1つの別の部材上のまたは少なくとも1つの別のである少なくとも1つのラッチ部材との間の機械的な結合により達成することができ、結合は、規定のシステム動的応答に応じた速度閾値で発生する。
【0023】
爪とラッチ部材との間に付勢関係が存在してもよく、付勢関係は、爪の引力、斥力、または交番する引力および斥力のために配置された少なくとも1つの磁石の使用によって達成される。
【0024】
少なくとも1つの磁気素子を爪と第1の部材の両方に配置することができ、爪と第1の部材の回転が起こると、付勢関係が変化し、したがって爪の振動運動が生じる。爪を第1の部材に軸方向に取り付けることができ、爪の重心が爪の回転軸から外れると、振動効果にさらに影響を及ぼすことができる。
【0025】
理解され得るように、爪の振動の程度を、例えば、第1の部材と爪(または第1の部材および少なくとも1つの別の部材)の相対的な動きの速度に応じて変化させることができる。
【0026】
爪の動的応答を、爪の慣性力を変化させることによってさらに調整することができる。上述したように、爪の質量中心は、爪がこのようにして第1の部材に接続されていると仮定すると、爪の回転軸から外れていてもよい。爪の一部または複数の部分は、爪の慣性力を運動に合わせるように加重され、それによってシステム動的応答を調整することができる。
【0027】
システムは、以下のように作動することができる:
(a)所定の速度では、爪がラッチ部材と結合するのに十分な時間にわたり爪が展開位置に移動すると、結合が生じる;
(b)所定の速度よりも低い速度では、爪が結合しなくてもよい。
【0028】
爪にラッチ部材をスキップさせることによって、結合を回避することができ、すなわち爪がラッチ部材を妨げるのに十分に展開され得ない。スキップは、爪の慣性効果が克服され、爪がラッチ部材と結合するのに十分に遠くに展開するまで続くことができる。
【0029】
システムは、
(a)動きの速度が爪の慣性効果を克服するには不十分である場合には、爪が結合したままであり得、
(b)動きの速度が爪の慣性効果を克服するのに十分である場合、結合解除が起こり得る
ように、さらに作動することができる。
【0030】
振動を引き起こす上述の付勢の程度は、爪の所望の動的応答挙動を提供するように構成され得る。
【0031】
別の特定の実施形態では、部材間の結合は、規定のシステム動的応答に応じて、慣性力および/または加えられた抗力の反作用効果に基づく機械的なカムシステムによって達成され得る。
【0032】
上記のシステムでは、第1の部材および少なくとも1つの別の部材を整列させることができ、カム機構を第1の部材と少なくとも1つの別の部材との間に配置することができる。実際には、システムは少なくとも2つの独立した運動部材を有する。
【0033】
少なくとも1つの別の部材は、原動力がシステムに加えられたときに第1の部材に対して遅い動きを受けるように、動きに起因する慣性特性および/または減速抵抗のいずれか一方または両方で構成されてもよい。
【0034】
第1の部材と少なくとも1つの別の部材との間の相対速度は、部材間の変位をもたらすことができ、カムプロファイルの規定運動経路により部材を分離させることができる。分離とは、部材が互いに対して離れて動くことを言う。
【0035】
少なくとも1つの別の部材の運動は、第1の部材上またはその周囲のラッチ部材との結合を引き起こし、少なくとも1つの別の部材上の少なくとも1つの固定具をラッチ部材に結合することができる。
【0036】
理解され得るように、別の部材をラッチ部材に結合することによっても、第1の部材と別の部材との間に間接的に結合が生じる。
【0037】
結合は、
(a)ラッチ用の幾何学的境界面、
(b)磁極の引力、または
(c)ラッチ用の幾何学的境界面と磁極の引力との組み合わせ
により達成され得る。
【0038】
別の特定の実施形態では、結合は、部材間の磁力に依存することができ、部材間の磁力は、部材間の引力を達成するように構成され、引力は、部材間の相対運動を遅らせ停止させるのに十分であり、その結果、規定のシステム動的応答に応じて相対運動が同期される。
【0039】
磁力は、部材間に作用する磁極要素によって与えられてもよい。この明細書の目的では、磁極動作は「コギング」と呼ばれる。コギングシステムは、接続されたシステムおよび任意の周辺エネルギー吸収手段の動的挙動を考慮して、システムが意図された条件下で停止および保持動作を達成するように設計されてもよい。磁極要素は、所定の条件下では無効または非アクティブに構成されてもよい。磁極動作の変化は、例えば1つまたは複数の磁石を含む部材間またはその部分間の分離距離を変化させることによって達成され得、それによって磁気相互作用力が低減される。
【0040】
上記のシステムは、外部から加えられた原動力が部材の初期運動をもたらす連続的に結合されたシステムであってもよいが、原動力が規定のシステム動的応答を誘発するのに十分であれば、遅くし停止させる動作が部材間で直ちに効力を生じる。
【0041】
理解され得るように、上記第1の態様および記載された特定の実施形態では、部材は、実質的に直線的な運動学的関係で移動してもよい。あるいは、部材は、実質的に回転的な運動学的関係で移動してもよい。両方の動作は、システムが使用され得る装置に応じて可能であり、適切である可能性がある。本明細書において与えられるかまたは使用される例は、回転的な実施形態で説明される。直線的な同等の実施形態は、当業者には明らかとされよう。
【0042】
さらに別の特定の実施形態では、部材は、実質的に回転的な運動学的関係にあり得、所定の大きさの原動力が加わると、部材が規定のシステム動的応答に応じて結合するように、遠心力に基づいて設計されたシステムにより部材間の結合を達成することができる。
【0043】
部材に作用する遠心力は、少なくとも1つの重み要素もしくは加重された要素またはその一部の使用によって影響され得る。
【0044】
第1の部材および少なくとも1つの別の部材を整列させることができ、第1の部材と少なくとも1つの別の部材との間に1つまたは複数の遠心機構を配置することができる。
【0045】
部材の速度は、遠心機構の変位を促すことができ、この変位は、次に、少なくとも1つの別の部材に加えられた遠心力により部材を分離させることができる。
【0046】
少なくとも1つの別の部材の運動は、第1の部材上またはその周囲のラッチ部材との結合を引き起こし、少なくとも1つの別の部材の少なくとも1つの固定具をラッチ部材に結合することができる。理解され得るように、別の部材をラッチ部材に結合することによっても、第1の部材と別の部材との間に間接的に結合が生じる。
【0047】
結合は、
(a)ラッチ用の幾何学的境界面、
(b)磁極の引力、または
(c)ラッチ用の幾何学的境界面と磁極の引力との組み合わせ
により達成され得る。
【0048】
上述したように、動的応答は、3つの方法のうちの1つであり得る。より詳細には、3つの動作がどのように行われるかの具体的な例は、以下の通りであり得る:
速度感知装置が、付勢要素の拘束に対して作用する求心力によって作動する爪を使用して構成され得る;
加速感知装置が、爪の慣性挙動を利用して、爪取り付け板の加速に応じて、その旋回軸の周りで爪を回転させることができる;
ジャーク感知装置が、一対の磁極間に存在する非線形剪断耐力を利用して構成され得る。
【0049】
理解されるように、構成は変更されてもよく、上記のオプションは非限定的な例としてのみ見なされるべきである。
【0050】
第2の態様では、部材間の相対運動を制御する方法であって、
(a)実質的に本明細書に記載のシステムを選択するステップと、
(b)システムに原動力を加えて、システム内の少なくとも1つの部材の運動を引き起こすステップと、
(c)規定のシステム動的応答が生じたときに部材間の結合を引き起こすステップと、
を含む方法が提供される。
【0051】
第3の態様では、実質的に本明細書に記載のシステムを組み込んだセルフリトラクティングライフライン(SRL)が提供される。
【0052】
上記のように、記載された装置はSRL装置で使用されてもよい。制動要素を検出して作動させる能力は、SRL装置にとって重要である。
【0053】
落下事象の検出は、一般に、線状体ないしはラインの状態の変化に応答する機構によってトリガされる。機構は、潜在的に、ラインの変位、速度、加速度もしくはジャーク(加速度の変化率)によって、またはこれらの信号の組み合わせによってトリガされ得る。
【0054】
既存のSRLは、一般に、スプールをブレーキに結合するためのラチェット装置および爪装置を使用して、速度または加速機構を使用する。ラチェットプレートまたは爪セットのいずれかを回転スプールに取り付けることができる。
【0055】
直線的な構成は、キャリア(運動要素)の加速度の変化(ジャーク)を感知する手段を含むことができる。キャリアは、既知の質量のライダ(制動要素)に所与の慣性で取り付けられてもよい。接触力がキャリアに加えられると、ライダとキャリアは結合されて整列したままである。キャリアへの加えられた力の変化(ジャーク)は、慣性効果によりライダをキャリアに対して滑らせる。その後、ライダとキャリアとの間の変位によって慣性効果を追跡することができる。キャリアの加速度が変化すると、ライダとキャリアとの間の相対変位も変化する。
【0056】
同じ原理が回転方向で使用されてもよい。ライダは、キャリアと一緒に自由に回転することができる。キャリアに加えられる角加速度の変化は、キャリアとライダとの間の相対的な角度変位となることができる。
【0057】
SRL用途の他に、装置および方法を、さまざまな他の用途に使用することができ、非限定的な例として、以下の速度制御または負荷制御が挙げられる:
オートビレイ装置;
ロータリタービンのロータ;
運動器具、例えば、ローイングマシン、エピサイクリックトレーナ、ウェイトトレーニング機器;
ローラコースタおよび他の娯楽の乗り物;
エレベータおよびエスカレータシステム;
避難降下装置と火災避難装置;
コンベヤシステム;
工場の生産施設におけるロータリドライブ;
コンベヤベルトやシュート内の制動装置などのマテリアルハンドリング装置;
路側安全システム、例えば、エネルギー吸収器が、エネルギー吸収器を介したエネルギーの散逸を通して衝突減衰を提供するシステムに接続されてもよい;
車両のシートベルト;
ジップライン;
トロリおよびキャリッジの制動機構;
輸送用途におけるバンプストップ;
クレーン用途におけるバンプストップ;
機械式ドライブトレインのトルクまたは力制限装置;
風力タービンの構造過負荷保護;
構造物、建物および橋梁における荷重制限およびエネルギー散逸。
【0058】
上述したシステム、使用方法およびSRL装置は、例えば遠心力および/または渦電流力のみに依存することなく、運動制御を達成する代替方法を提供するという利点を提案する。加えて、部品と運動制御が生じる速度との間の関係は、本明細書に記載された実施形態を使用して影響されてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態は、個別にまたはまとめて、本出願の明細書に参照されるすなわち示されている部品、要素、および特徴、ならびに2つ以上の前記部品、要素、または特徴の、任意のまたはすべての組み合わせで構成されていると、概して言うことができ、ここで、特定の完全体が、本実施形態が関連する技術分野で均等物と知られているものとして本明細書に記載され、このような公知の均等物は、個別に記載のように本明細書に組み込まれると見なされる。
【0060】
特定の完全体が、本発明が関連する技術分野で均等物と知られているものとして本明細書に記載されている場合には、このような既知の均等物は、個別に記載のように本明細書に組み込まれると見なされる。
【0061】
上記のシステム、使用方法およびこれらの装置を使用したセルフリトラクティングライフライン(SRL)装置の例を、特定の例を参照して説明する。
【0062】
例1
以下に、制動要素の運動によって引き起こされる磁気ラッチングの一般的な例を示す。
【0063】
図1は、爪の運動によって引き起こされる磁気ラッチングの例を示している。永久磁石10によって加えられる直接的な引力は、スプール12(第1の部材)と同心の外部要素13(別の部材)との間の爪11を作動させる手段としての渦電流抗力(渦電流力が使用される場合)を増強または元に戻すために使用され得る。爪11が同心の外部要素13にラッチされると、スプール12と同心の外部要素13との間の運動が同期される。
【0064】
例2
双安定装置を、本出願人の同時係属中のニュージーランド特許出願第619034号明細書に記載されているチューブおよびシリンダ(プランジャ)手法と共に使用することができる。この例では、
図2に示すように、アクティブブレーキ要素/プランジャ50とリードスクリュ51との間の初期相対運動を遅らせる手段として、および/またはプランジャの軸方向移動ストローク52,53の端部でブレーキ50をラッチしてロックする手段として、プランジャ50の渦電流ブレーキ構成が示されている。プランジャストローク52,53のいずれかの端部での力がどのように高く、続いてプランジャストローク52,53の移動段階を通じて降下するかを示す力/運動相互作用に関する出力が
図3にグラフで示されており、用語「力」は、プランジャを横に並進させるために必要な力を指し、運動は、プランジャの横方向の運動であることに留意されたい。
【0065】
例3
さらなる実施形態では、コギングの例が
図4に示されている。コギングトルクは、矢印60で全体的に示される互いに対して回転する磁極から生じる。これは、
図5に示すグラフに最もよく見られる速度依存性のトルク関係をもたらし、ここで、Fは、振動の力/程度を表し、oは、渦電流制動に依存するブレーキの低速ロックオフを可能にすることができる運動経路を表す(低速で最大のラッチ力が発生する)。
【0066】
図6は、磁石60がどのように低速で整列し、それによりさらなる運動を停止させるかを示している。この実施形態は、部品間の相対運動を完全に停止させることが可能であるが、部分的な干渉または摩擦を伴わず、すなわち制動は無摩擦である。
【0067】
図6はまた、遠心力による実施形態を示している。部材の1つには、画定された経路に沿って移動する加重されたボールが含まれている。最大の回転力では、ボールが移動して重心が変わり、それによってシステム動的応答が変化する。
【0068】
例4
制動要素の磁気ラッチングを、この例では制動要素71の運動要素72(回転子)に対する回転軸70である、主駆動軸に垂直な回転自由度を中心に構成することもできる。
図7は、このタイプのシステムの3つの実施形態を示している。また、
図7の実施形態には、システム動的応答をさらに調整する付勢手段(磁石および/またはばね)の使用が示されている。
【0069】
例5
運動要素と制動要素との間の相対的な回転は、慣性力または遠心力の使用によってさらに影響を受けて、要素間に速度差が生じることもある。一実施形態では、
図8~
図13に示すように、カム経路100により軸方向変位を駆動するために速度差を使用することができる。ボールの運動を制御するために、異なるプロファイルを使用することができ、したがって、部品に作用する遠心力およびそれらの運動特性を変更することができる。
【0070】
図8~
図13に示す実施形態における2つの半体の間の接触を維持するのに必要な軸方向の荷重は、ばね力、磁気斥力によって、またはカム100の角度により作用する渦電流抵抗トルクの結果として生成されてもよい。この力生成に関する追加の詳細が
図12および
図13に示されている。
【0071】
例6
カム形状、慣性応答および渦電流の抗力‐速度関係の組み合わせを利用する別の構成が
図14に示されている。
【0072】
例7
上述のように、制動要素を検出して作動させる能力はSRL装置にとって重要である。
【0073】
落下事象の検出は、一般に、線状体ないしはラインの状態の変化に応答する機構によってトリガされる。機構は、潜在的に、ラインの変位、速度、加速度もしくはジャーク(加速度の変化率)によって、またはこれらの信号の組み合わせによってトリガされ得る。
【0074】
既存のSRLは、一般に、スプールをブレーキに結合するためのラチェット装置および爪装置を使用して、速度または加速機構を使用する。ラチェットプレートまたは爪セットのいずれかを回転スプールに取り付けることができる。
【0075】
図15に示すように、付勢要素(ばね)111の拘束に対して作用する求心力によって作動する爪(制動要素)110を使用して、技術の速度感知装置を構成することができる。
【0076】
技術の速度感知装置は爪112の慣性挙動を利用して、爪112の取り付け板の加速に応答して爪112をその旋回軸113の周りで回転させることができる。この手法は
図16に示されている。
【0077】
例8
1対の磁極の間に存在する非線形剪断耐力を利用することにより、ジャーク感知装置を構成することができる。
【0078】
直線的な構成が
図17~
図19に示されている。構成は、キャリアの加速度の変化(ジャーク)を感知する手段を示している。キャリア120は、既知の質量のライダ130に所定の慣性で取り付けられている。接触力がキャリア120に加えられると、ライダ130およびキャリア120は結合されて整列したままである。キャリア120に加えられた力の変化(ジャーク)は、慣性効果によりライダ130をキャリア120に対して滑らせる。慣性効果を、その後、変位dによって追跡することができる。キャリア120の加速度が変化すると、ライダ130とキャリア120との間の相対変位が変化する。
【0079】
システム、使用方法およびシステムを使用したセルフリトラクティングライフライン(SRL)装置の態様は、単なる一例として記載されており、本明細書の特許請求の範囲から逸脱することなく修正および追加が可能であることを理解されたい。