(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】熱分解処理システム、熱分解モジュール、シャッタモジュール、および収容容器
(51)【国際特許分類】
C10B 47/46 20060101AFI20250417BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
C10B47/46
C10B53/00 A
(21)【出願番号】P 2024177120
(22)【出願日】2024-10-09
【審査請求日】2024-10-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524084274
【氏名又は名称】草場 勇
(73)【特許権者】
【識別番号】593017119
【氏名又は名称】村松 俊之
(73)【特許権者】
【識別番号】524373879
【氏名又は名称】草場 真莉
(74)【代理人】
【識別番号】100210804
【氏名又は名称】榎 一
(74)【代理人】
【識別番号】100198498
【氏名又は名称】高橋 靖
(72)【発明者】
【氏名】讃井 有喜夫
(72)【発明者】
【氏名】草場 勇
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特許第7508076(JP,B1)
【文献】特公昭50-021310(JP,B2)
【文献】特開平03-181788(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043138(WO,A1)
【文献】特開2008-249297(JP,A)
【文献】特開2002-275476(JP,A)
【文献】特開2000-063848(JP,A)
【文献】特開平10-001679(JP,A)
【文献】特開2011-094138(JP,A)
【文献】特開2004-333074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 47/32-47/48、53/00
F27B 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解処理の対象物を収容して搬送するための収容容器と、
前記収容容器の搬送路に搬送口を並べて設置され、前記熱分解処理を個別単位に分担する複数台の熱分解モジュールと、
前記熱分解モジュールの前記搬送口を遮蔽する位置に個別単位に挿入され、前記収容容器の搬送に際して開き、前記熱分解処理に際して閉じる複数台のシャッタモジュールと
を備え、
前記シャッタモジュールは、
中空の内部空間を囲む外枠で構成され、前記収容容器の前記搬送路に合わせて貫通路が設けられた外枠ユニットと、
前記外枠ユニットの前記内部空間を移動することによって前記貫通路を開閉する内枠ユニットと、
前記内枠ユニットを移動する内枠駆動機構と、
前記内枠ユニットが前記貫通路を閉鎖するに際して、前記内枠ユニットを拡幅させて前記外枠ユニットの前記内部空間で突っ張ることによって、前記熱分解モジュールの前記搬送口を密閉する拡幅機構とを備えた
ことを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の熱分解処理システムであって、
複数台のうちの先頭に位置する前記熱分解モジュールは、加熱された不活性ガスを内部に満たすことによって、前記収容容器と共に外部から入った酸素を抜く脱酸素処理と、後続する前記熱分解処理に先行して前記対象物を加熱する予熱処理とを担当する予備炉の役割を果たし、
複数台のうちの最後尾に位置する前記熱分解モジュールは、非加熱の不活性ガスを内部に循環させることによって、前記熱分解処理によって高温になった残渣物を脱酸素環境で冷ます放熱処理を担当する放熱炉の役割を果たす
ことを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項3】
請求項2記載の熱分解処理システムであって、
複数台のうちの途中に位置する前記熱分解モジュールおよび前記シャッタモジュールをモジュール単位に挿置または減数することによって、前記熱分解処理の処理段数を増減可能にした
ことを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の熱分解処理システムであって、
前記熱分解モジュールは、
前記対象物を熱分解するための機構として、
前記収容容器を搬入した状態で、前記搬送口を前記シャッタモジュールで遮蔽することによって、前記熱分解処理の処理空間を形成する処理室と、
前記処理室に前記収容容器を搬入し、前記処理室から前記収容容器を搬出することによって、前記収容容器を順送りに搬送する搬送機構と、
不活性ガスを加熱制御して前記処理室に供給する不活性ガスヒーターと、
水蒸気を加熱制御して前記処理室に供給する水蒸気ヒーターと、
前記処理室を加熱制御する炉内ヒーターと、
前記不活性ガスヒーターおよび前記水蒸気ヒーターに付属して前記処理室に給気するための配管群であって、複数台の熱分解モジュールの間で接続・分離可能にユニット化された給気処理用配管ユニットと、
を備えたことを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項5】
請求項4記載の熱分解処理システムであって、
前記熱分解モジュールは、
前記熱分解処理の排気処理を行うための構成として、
前記処理室から前記熱分解処理の排気を取り込んで触媒による浄化処理を行う触媒フィルタと、
前記触媒フィルタを経た前記排気を冷却して気液混合体を出力する冷却室と、
前記冷却室を経た前記気液混合体を気体と液体に分離する気液分離部と、
前記気液分離部で分離された前記気体をオフガスタンクに送るガス送りポンプと、
前記気液分離部で分離された前記液体を油分と水分に分離する油水分離部と、
前記触媒フィルタ、前記冷却室、前記気液分離部、前記ガス送りポンプ、および前記油水分離部に付属して前記処理室の排気処理を行うための配管群であって、複数台の熱分解モジュールの間で接続・分離可能にユニット化された排気処理用配管ユニットと、
を備えたことを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項6】
請求項5記載の熱分解処理システムであって、
前記熱分解モジュールの前記気液分離部は、
前記冷却室を経た前記気液混合体からテレフタル酸を析出させて分離する第1気液分離槽と、
前記第1気液分離槽の残留気体から残りの前記液体を分離する第2気液分離槽とを備える
ことを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項記載の熱分解処理システムであって、
前記収容容器は、
前記収容容器の底において、前記熱分解処理で落ちる残渣物を受け止めるトレーを支持する底部と
前記底部から立設し、筐体骨組みを構成するフレーム部と、
多孔面で側方および底面を囲み、前記底部から浮かせた状態で前記フレーム部に取り付けられ、前記熱分解処理の前記対象物を収容する多孔カゴ部と、
前記多孔カゴ部の仕切り位置に配置される熱循環ボックスとを備え、
前記熱循環ボックスは、内部に中空空間を有し、仕切りとなる側面部分を多孔側壁で構成し、上面部分を封鎖壁で構成することにより、前記中空空間に入った加熱水蒸気および加熱不活性ガスを前記仕切り位置から前記対象物の内側部分に通過させる
ことを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項8】
請求項1
~3のいずれか一項記載の熱分解処理システムの構成モジュールとしての前記シャッタモジュール
であって、
中空の内部空間を囲む外枠で構成され、前記収容容器の前記搬送路に合わせて貫通路が設けられた外枠ユニットと、
前記外枠ユニットの前記内部空間を移動することによって前記貫通路を開閉する内枠ユニットと、
前記内枠ユニットを移動する内枠駆動機構と、
前記内枠ユニットが前記貫通路を閉鎖するに際して、前記内枠ユニットを拡幅させて前記外枠ユニットの前記内部空間で突っ張ることによって、前記熱分解モジュールの前記搬送口を密閉する拡幅機構と、
を備えたことを特徴とするシャッタモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解処理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃棄物などを炉内で熱分解処理する熱分解処理システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、『連続炉の内部において、廃棄物の収容容器を移送コンベアに載せて搬送しつつ、熱分解処理を順次に実施する炭化処理装置(熱分解処理システム)』旨の技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、熱分解処理システムでは、廃棄物の熱分解処理に伴って、油分や残渣物が発生する。連続炉や途中の搬送路は、これらの油分や残渣物に晒されて焼き付くなどして、汚染が蓄積する。そのため、熱分解処理システムの性能を維持するため、システム全体を定期的に大規模解体するなどして、連続炉や途中の搬送路を念入りに清掃することが好ましい。
【0006】
ところで、特許文献1の図面は、熱分解処理システムに本来必要な構成が省略され、単純化されている。実際の熱分解処理システムは、これら多段に連なる連続炉の間にまたがって、多数の付属装置や、個々の炉を接続するための配管が必要になる。そのため、現実の熱分解処理システムは、個々の炉が多数の付属装置に対して複雑に配管され、分解メンテナンスが難しいという点で改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、メンテナンス性に優れた熱分解処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱分解処理システムは、次の構成(収容容器、複数台の熱分解モジュール、複数台のシャッタモジュール)を備える。
【0009】
収容容器は、熱分解処理の対象物を収容して搬送するための容器である。
複数台の熱分解モジュールは、前記収容容器の搬送路に搬送口を並べて設置され、前記熱分解処理を個別単位に分担する。
【0010】
複数台のシャッタモジュールは、前記熱分解モジュールの前記搬送口を遮蔽する位置に個別単位に挿入されて隙間なく連結され、前記収容容器の搬送に際して開き、前記熱分解処理に際して閉じる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、熱分解処理システムを、熱分解モジュールを連結する形式にモジュール化する。
【0012】
このようなモジュール化によって、複数台の熱分解モジュールの分離や、分離後の熱分解モジュールの清掃や、組み立てが容易になる。
【0013】
したがって、本発明は、メンテナンス性に優れた熱分解処理システムを提供することが可能になる。
【0014】
なお、上述した以外の課題、構成および効果の詳しい内容については、後述する実施形態において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、熱分解処理システム100の外観を例示する図である。
【
図2】
図2は、熱分解モジュール300の共通構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、シャッタモジュール400の共通構成を例示する図である。
【
図4】
図4は、収容容器200の構成を例示する図である。
【
図5】
図5は、搬送機構303の動作(前半)を説明する図である。
【
図6】
図6は、搬送機構303の動作(後半)を説明する図である。
【
図7】
図7は、熱分解処理システム100の配管系統を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0017】
《熱分解処理システム100の外観構成》
図1は、熱分解処理システム100の外観を例示する図である。
図1において、熱分解処理システム100は、収容容器200、熱分解モジュール300、予備炉300a、放熱炉300b、シャッタモジュール400、および共用設備500を備える。
【0018】
収容容器200は、熱分解処理の対象物(有機廃棄物など)を収容して搬送するための台車付きの容器である。
【0019】
熱分解モジュール300は、収容容器200の搬送路Rに搬送口301を並べて設置され、熱分解処理を個別単位に分担するモジュールである。これら熱分解モジュール300の詳細な共通構成については、後述する。
【0020】
これら複数台の熱分解モジュール300のうち、先頭に位置する熱分解モジュール300は、予備炉300aとなる。予備炉300aは、不活性ガスを炉内に満たすことによって、収容容器200と共に外部から入った酸素を炉内から抜く脱酸素処理を実施する。また、加熱された不活性ガスと炉内ヒーター306(後述)によって、後続する熱分解処理に先行して対象物を予熱する予熱処理も実施する。なお、この予備炉300aは、熱分解処理の予備動作を分担するため、熱分解処理に伴う排気処理までは行わない。そのため、予備炉300aでは、
図1に示すように、熱分解モジュール300の共通構成(後述)から、排気処理に必要なユニット部分(装置や配管など)を省いてもよい。
【0021】
また、複数台の熱分解モジュール300のうち、最後尾に位置する熱分解モジュール300は、放熱炉300bとなる。放熱炉300bは、非加熱(例えば常温)の不活性ガスを内部に循環させることによって、熱分解処理によって高温になった残渣物(炭化物など)が外部の酸素環境によって自然発火しないまでに冷ます放熱処理を担当する。この放熱炉300bは、熱分解処理の後処理を分担するため、熱分解処理に伴う排気処理までは行わない。そのため、放熱炉300bでは、
図1に示すように、熱分解モジュール300の共通構成(後述)から、排気処理に必要なユニット部分(装置や配管など)を省いてもよい。
【0022】
シャッタモジュール400は、熱分解モジュール300(予備炉300a、放熱炉300bを含む)の搬送口301を遮蔽する位置に個別単位に挿入して連結される。シャッタモジュール400は、収容容器200の搬送に際して開き、熱分解処理に際して閉じる。これらシャッタモジュール400の詳細な共通構成については、後述する。
【0023】
これら複数台のシャッタモジュール400のうち、先頭には入口シャッタ400aを配置し、最後尾には出口シャッタ400bを配置する。これらは、シャッタモジュール400と共通構成にしてもよい。なお、入口シャッタ400aおよび出口シャッタ400bは、収容容器200の外部搬入装置(搬入コンベアや搬入車両など)や外部搬出装置(搬出コンベヤや搬出車両など)に組み合わせる目的でカスタマイズしてもよい。
【0024】
共用設備500としては、ボイラー510、窒素発生器520、クーリングタワー530、および制御コンピュータ580を備える。
【0025】
ボイラー510は、水を加熱して水蒸気を生成し、個々の熱分解モジュール300に供給する。なお、実施例1では、ボイラー510を共用設備500として別途設けているが、熱分解モジュール300のモジュール単位に、水を加熱して水蒸気を生成するヒーター(例えば、後述する水蒸気ヒーター305と一体化など)を備えてもよい。
【0026】
窒素発生器520は、窒素ガス(不活性ガスの一種)を出力し、個々の熱分解モジュール300に供給する。なお、実施例1では、窒素発生器520を共用設備500として別途設けているが、熱分解モジュール300のモジュール単位に、不活性ガスを出力する装置を備えてもよい。
【0027】
クーリングタワー530は、熱分解モジュール300の排気処理に必要な冷却液(水など)を循環して生成する。
【0028】
制御コンピュータ580は、熱分解処理システム100の各部動作を制御する司令部である。
【0029】
なお、後述する
図7に示すように、その他の共用設備500としては、循環ポンプ530a、油送りポンプ540a、油タンク540、オフガスタンク550、凝縮器560、および排水処理装置570を備える。
【0030】
循環ポンプ530aは、クーリングタワー530の冷却液を、熱分解モジュール300の冷却用の配管に循環させる。
【0031】
油送りポンプ540aは、熱分解モジュール300から油分を回収する。
油タンク540は、油送りポンプ540aが回収した油分を蓄積する。
オフガスタンク550は、熱分解モジュール300の排気から揮発性の高いガスを分離して回収する。
【0032】
凝縮器560は、油水分離部314およびオフガスタンク550を経由して収集された排液から、大部分を占める水分を蒸発させることで、排液の容量を凝縮する。
【0033】
排水処理装置570は、凝縮器560を経由した排液を排水可能な状態に処理する。
続いて、熱分解処理システム100の各部構成について説明する。
【0034】
《熱分解モジュール300の共通構成》
図2は、熱分解モジュール300の共通構成を例示する図である。
図2において、熱分解モジュール300は、対象物を熱分解するための機構として、処理室302、搬送機構303、不活性ガスヒーター304、水蒸気ヒーター305、炉内ヒーター306、および給気処理用配管ユニット307を備える。
【0035】
処理室302は、収容容器200を搬入した状態で、搬送口301をシャッタモジュール400で遮蔽することによって、熱分解処理の処理空間を形成する。
【0036】
搬送機構303は、処理室302に収容容器200を搬入し、処理室302から収容容器200を搬出することによって、収容容器200を順送りに搬送する。搬送機構303の動作の詳細については後述する。
【0037】
不活性ガスヒーター304は、個々の熱分解処理の設定温度ごとに不活性ガスを加熱制御した後、吐出ノズル302aを介して処理室302に供給する。
【0038】
水蒸気ヒーター305は、個々の熱分解処理の設定温度ごとに水蒸気を加熱制御した後、吐出ノズル302aを介して処理室302に供給する。
【0039】
炉内ヒーター306は、個々の熱分解処理の設定温度ごとに処理室302を加熱制御する。
【0040】
給気処理用配管ユニット307は、不活性ガスヒーター304および水蒸気ヒーター305などに付属して処理室302に給気するための配管群である。給気処理用配管ユニット307は、複数台の熱分解モジュール300や共用設備500との間で接続栓C(
図7参照)によって接続・分離可能にユニット化される。この給気処理用配管ユニット307の具体的なユニット構成については、
図7において具体的に図示される。
【0041】
さらに、熱分解モジュール300は、熱分解処理の排気処理を行うための構成として、触媒フィルタ310、冷却室311、気液分離部312、ガス送りポンプ313、油水分離部314、および排気処理用配管ユニット315を備える。
【0042】
触媒フィルタ310は、処理室302から熱分解処理の排気を取り込んで、触媒による浄化処理を行う。
【0043】
冷却室311は、触媒フィルタ310を経た排気を冷却して、気液混合体を出力する。
【0044】
気液分離部312は、冷却室311を経た気液混合体を、気体と液体に分離する。この気液分離部312は、第1気液分離槽312aおよび第2気液分離槽312bを備える。
【0045】
第1気液分離槽312aは、冷却室311を経た気液混合体からテレフタル酸を析出させて、液体中に混合させる。PET樹脂の熱分解によって生成される排気中のテレフタル酸は、冷却に際して液相を取らずに固相に直接変化する。そこで、テレフタル酸の析出温度に調整された第1気液分離槽312aを設けてテレフタル酸を回収する。
【0046】
第2気液分離槽312bは、第1気液分離槽312aの残留気体を受け入れて、残りの液体を分離する。
【0047】
ガス送りポンプ313は、気液分離部312(実施例1では第2気液分離槽312b)に残留する気体を、オフガスタンク550に送る。
【0048】
油水分離部314は、気液分離部312で分離された液体を、油分と水分に分離する。なお、実施例1では、油水分離部314は、第1油水分離槽314aおよび第2油水分離槽314bを備える。第1油水分離槽314aは、第1気液分離槽312aを経由した液体を、油分と水分に分離する。第2油水分離槽314bは、第2気液分離槽312bを経由した液体を、油分と水分に分離する。このように、第1油水分離槽314aを別に備えることによって、第1気液分離槽312aにおいて析出したテレフタル酸を分離回収してもよい。
【0049】
排気処理用配管ユニット315は、触媒フィルタ310、冷却室311、気液分離部312、ガス送りポンプ313、および油水分離部314などに付属して、処理室302の排気処理を行うための配管群である。排気処理用配管ユニット315は、熱分解モジュール300や共用設備500との間で接続栓C(
図7参照)によって接続・分離可能にユニット化される。この排気処理用配管ユニット315の具体的なユニット構成については、
図7において具体的に図示される。
【0050】
《シャッタモジュール400の共通構成》
続いて、シャッタモジュール400の共通構成について説明する。
図3は、シャッタモジュール400の共通構成を例示する図である。
図3において、シャッタモジュール400は、外枠ユニット401、内枠ユニット403、内枠駆動機構404、および拡幅機構405を備える。
【0051】
外枠ユニット401は、中空の内部空間Sを囲む外枠で構成される。この外枠には、収容容器200の搬送路R(
図1参照)に合わせて貫通路402となる開口部分が設けられる。
【0052】
内枠ユニット403は、外枠ユニット401の内部空間Sを移動することによって、貫通路402を開閉する。
【0053】
内枠駆動機構404は、内枠ユニット403を移動するための機構である。実施例1では、内枠駆動機構404として、駆動モータ404a、スライド変換機構404b、および上下アーム404cを備える。駆動モータ404aの正/逆の回転運動は、スライド変換機構404bを介して、上昇/下降のスライド運動に変換される。このスライド運動は、上下アーム404cを介して内枠ユニット403に伝達され、内枠ユニット403を上昇/下降させる。
【0054】
拡幅機構405は、内枠ユニット403が貫通路402を閉鎖するに際して、内枠ユニット403を拡幅させる。実施例1では、拡幅機構405として、カム機構が採用される。内枠ユニット403の下端が外枠ユニット401の内底面406に当接した状態で、上下アーム404cが更に下降することによって、カム機構(拡幅機構405)が働いて内枠ユニット403が拡幅する。このような拡幅機構405の拡幅動作によって、外枠ユニット401の内部空間Sで内枠ユニット403が貫通路402の開口部分に突っ張ることによって、熱分解モジュール300の搬送口301は密閉される。
【0055】
《収容容器200の構成》
続いて、収容容器200の構成について説明する。
図4は、収容容器200の構成を例示する図である。
図4において、収容容器200は、底部202、フレーム部203、多孔カゴ部204、熱循環ボックス205、前方係合部210a、および後方係合部210bを備える。
【0056】
底部202は、収容容器200の底において、熱分解処理で落ちる残渣物を受け止めるトレー201を支持する。
【0057】
フレーム部203は、底部202の周縁などから立設し、収容容器200の筐体骨組みを構成する。
【0058】
多孔カゴ部204は、多孔面で側方および底面を囲み、底部202から浮かせた状態でフレーム部203に取り付けられ、熱分解処理の対象物を収容する。
【0059】
熱循環ボックス205は、多孔カゴ部204の一つ以上の仕切り位置に配置される。熱循環ボックス205の配置数については、多孔カゴ部204の内容積に応じて加減される。熱循環ボックス205の内部は、中空空間205sを有する。このような熱循環ボックス205は、対象物に接する側面部分を多孔側壁205aで構成し、上面部分を封鎖壁205bで構成する。
【0060】
熱循環ボックス205の中空空間205sには、処理室302の左右内壁の吐出ノズル302aから加熱水蒸気や加熱不活性ガスが注入される。注入された加熱水蒸気や加熱不活性ガスは、上面が封鎖壁205bで封鎖されることによって、多孔側壁205aから吹き出す。吹き出した加熱水蒸気や加熱不活性ガスは、多孔カゴ部204に収容された対象物の内側部分を通過して循環することによって、対象物の熱分解処理が促進される。
【0061】
なお、熱循環ボックス205の下面についても封鎖することによって、多孔側壁205aの吹き出し量を増加させてもよい。
【0062】
《搬送機構303の動作説明》
続いて、熱分解モジュール300にモジュール単位に設けられる搬送機構303の動作について説明する。
【0063】
図5および
図6は、搬送機構303の動作を説明する図である。
以下、これらの図に示す動作ステップの順番に、搬送機構303の動作を説明する。
【0064】
ステップS1: 収容容器200の前側(
図5では前側の略半分)が入った処理室302において、制御コンピュータ580は、搬送機構303を前方係合部210aに係合させる。
【0065】
ステップS2: 搬送機構303が前方係合部210aに係合した状態で、制御コンピュータ580は、搬送機構303を前進させることによって、収容容器200の全体が処理室302に収まる位置まで前進させる。制御コンピュータ580は、開いていたシャッタモジュール400を閉じて、熱分解処理の処理空間を形成する。この状態で、制御コンピュータ580は、加熱水蒸気と不活性ガスを処理室302に供給して熱分解処理を行い、それに伴う排気処理も併せて実施する。
【0066】
ステップS3: 熱分解処理中または熱分解処理後の処理室302において、制御コンピュータ580は、搬送機構303を後進させることによって、搬送機構303を前方係合部210aから離して後方係合部210bへ移動させる。
【0067】
ステップS4: 搬送機構303は、後方係合部210bの前端に跳ね上げられて後方へ回り込むことによって、後方係合部210bに係合する。制御コンピュータ580は、排気処理の完了後に、シャッタモジュール400を開く。
【0068】
ステップS5: 制御コンピュータ580は、搬送機構303が後方係合部210bに係合した状態で、搬送機構303を順次に前進させることによって、収容容器200の前側(
図6では前側の略半分)が一つ先の処理室302に入る位置まで順送りに前進させる。
【0069】
ステップS6: 一つ先の処理室302では、搬送機構303が、前方係合部210aの前端に跳ね上げられて後方に回り込み、前方係合部210aに係合する。
【0070】
ステップS7: 制御コンピュータ580は、収容容器200を前進させた搬送機構303を後方へ移動させる。
【0071】
ステップS8: 搬送機構303は、前方係合部210aの前端に跳ね上げられて後方に回り込み、前方係合部210aに係合する。
【0072】
上述した動作(ステップS1~8)を処理室302ごとに繰り返すことによって、搬送機構303は、熱分解モジュール300のモジュール単位に独立して、収容容器200を順送りに搬送する機能を実現する。
【0073】
《給気処理用配管ユニット307および排気処理用配管ユニット315の説明》
続いて、熱分解モジュール300のモジュール単位にユニット構成される配管ユニット(給気処理用配管ユニット307および排気処理用配管ユニット315)について説明する。
【0074】
図7は、熱分解処理システム100の配管系統を例示する図である。
以下、
図7を参照しつつ、熱分解モジュール300の配管ユニットについて系統ごとに説明する。
【0075】
(1)ボイラー510の配管系統
ボイラー510の配管は、複数台の熱分解モジュール300の給気処理用配管ユニット307の対応する接続栓Cにそれぞれ接続される。ボイラー510からの水蒸気は、この給気処理用配管ユニット307の配管を経由して水蒸気ヒーター305で加熱され、加熱水蒸気として処理室302内の吐出ノズル302aから噴射される。
【0076】
(2)窒素発生器520の配管系統
窒素発生器520の配管は、複数台の熱分解モジュール300の給気処理用配管ユニット307の対応する接続栓Cにそれぞれ接続される。窒素発生器520からの窒素ガス(不活性ガスの一種)は、この給気処理用配管ユニット307の配管を経由して不活性ガスヒーター304で加熱され、加熱不活性ガスとして処理室302内の吐出ノズル302aから噴射される。
【0077】
(3)クーリングタワー530の配管系統
クーリングタワー530の配管は、複数台の熱分解モジュール300の排気処理用配管ユニット315の対応する接続栓Cにそれぞれ接続される。クーリングタワー530は、外気の循環や気化熱によって冷却液を冷却する。この冷却液は、排気処理用配管ユニット315の冷却用配管を経由して、冷却室311および気液分離部312(第1気液分離槽312aおよび第2気液分離槽312b)を循環する。循環した冷却液は、排気処理用配管ユニット315の対応する接続栓Cを経由した後、循環ポンプ530aによってクーリングタワー530へ戻る。
【0078】
(4)処理室302の排気の配管系統
処理室302の排気管は、複数台の熱分解モジュール300の排気処理用配管ユニット315の対応する配管にそれぞれ接続される。処理室302から排気される蒸気には、対象物の熱分解処理によって発生した水分や油分が含まれる。これらの蒸気は、排気処理用配管ユニット315の配管を経由して、触媒フィルタ310で浄化される。浄化後の排気は、さらに排気処理用配管ユニット315の配管を経由して、冷却室311に入る。冷却室311では、冷却液によって蒸気の熱が冷まされた後、排気処理用配管ユニット315を経由して第1気液分離槽312aに入る。第1気液分離槽312aでは、冷却液によってテレフタル酸の析出温度まで冷やされる。第1気液分離槽312aの内部では、析出したテレフタル酸が液体に混合する。一方、第1気液分離槽312aに残留する気体は、第2気液分離槽312bに入る。第2気液分離槽312bでは、冷却液によって更に冷やされ、気体と液体に分離される。
【0079】
(5)第2気液分離槽312bの排気の配管系統
第2気液分離槽312bに残留する気体は、排気処理用配管ユニット315の対応する配管を経由してガス送りポンプ313に吸気される。ガス送りポンプ313の出力は、複数台の熱分解モジュール300の排気処理用配管ユニット315の対応する接続栓Cをそれぞれ介して、オフガスタンク550に接続される。オフガスタンク550では、揮発性の高いガスを抽出して蓄積する。このような揮発性の高いガスは、ボイラー510の燃料などに使用してもよい。一方、オフガスタンク550に蓄積される水分は、凝縮器560へ送られる。
【0080】
(6)第1気液分離槽312aおよび第2気液分離槽312bの液体の配管系統
第1気液分離槽312aおよび第2気液分離槽312bで分離された液体は、排気処理用配管ユニット315の対応する配管をそれぞれ経由して、第1油水分離槽314aおよび第2油水分離槽314bにそれぞれ入る。第1油水分離槽314aおよび第2油水分離槽314bでは、液体を比重によって油分と水分に分離する。
【0081】
(7)第1油水分離槽314aおよび第2油水分離槽314bの油分の配管系統
第1油水分離槽314aおよび第2油水分離槽314bで分離された油分は、排気処理用配管ユニット315の対応する接続栓Cを介して油送りポンプ540aに吸引される。油送りポンプ540aは、個々の熱分解モジュール300において油分が所定の蓄積量に達するたびに油分を吸引し、油タンク540に蓄積する。
【0082】
(8)第1油水分離槽314aおよび第2油水分離槽314bの水分の配管系統
第1油水分離槽314aおよび第2油水分離槽314bで分離された水分は、排気処理用配管ユニット315の対応する接続栓Cをそれぞれ介して、凝縮器560へ排出されて収集される。凝縮器560は、複数台の熱分解モジュール300から収集される水分を蒸発させて容量を削減する。凝縮器560で容量削減された水分は、排水処理装置570で処理された後に排水される。
【0083】
《実施例1の効果》
実施例1は、上述した構成や動作によって、下記の効果を奏する。
【0084】
(1)実施例1では、複数台の熱分解モジュール300をモジュール単位に連結する構成で、熱分解処理システム100を構成する。このようなモジュール化によって、複数台の熱分解モジュール300の分離や、分離後のモジュール単位の清掃や、組み立てが容易になる。したがって、実施例1は、メンテナンス性の良い熱分解処理システム100が実現するという点で優れている。
【0085】
(2)実施例1では、シャッタモジュール400を、熱分解モジュール300それぞれに連結・分離可能なモジュール構成として、熱分解処理システム100を実現する。このように、シャッタモジュール400を熱分解モジュール300と独立構成としてモジュール化したことによって、シャッタモジュール400を熱分解モジュール300から分離することが容易になり、分離後の両モジュールを別々に清掃することが可能になる。したがって、実施例1は、シャッタモジュール400についてもメンテナンス性が良いという点で優れている。
【0086】
(3)実施例1では、先頭に位置する熱分解モジュール300を、脱酸素処理および予熱処理を分担する予備炉300aとする。この脱酸素処理では、不活性ガスを予備炉300a内に満たすことによって、収容容器200と共に外部から入った酸素を炉内から抜く。さらに予熱処理では、加熱された不活性ガスを対象物に循環させることによって、後続する熱分解処理に先行して対象物を予熱する。したがって、実施例1は、先頭に位置する熱分解モジュール300が予備炉300aの役割を分担することによって、熱分解処理をパイプライン式に遅滞なく円滑に開始できるという点で優れている。
【0087】
(4)実施例1では、最後尾に位置する熱分解モジュール300を、放熱処理を分担する放熱炉300bとする。この放熱処理では、非加熱の不活性ガスを内部に循環させることによって、熱分解処理によって高温になった残渣物を脱酸素環境で冷ます。そのため、残渣物の排出後に、外部の酸素環境に触れて残渣物(炭化物)が自然発火するなどの事態を防止できる。したがって、実施例1は、最後尾に位置する熱分解モジュール300が放熱炉300bの役割を分担することによって、熱分解処理をパイプライン式に遅滞なく円滑に完了できるという点で優れている。
【0088】
(5)従来の熱分解処理では、連続炉の間の配管が複雑なため、熱分解処理の処理段数を変更するには、連続炉の間の配管を複雑に組み換える必要があった。それに対して、実施例1では、途中の熱分解モジュール300およびシャッタモジュール400がモジュール単位に切り離し可能になる。したがって、実施例1では、これらモジュールを挿置または減数することで、熱分解処理の処理段数の変更が容易になるという点で優れている。
【0089】
(6)実施例1では、熱分解モジュール300は、処理室302、搬送機構303、不活性ガスヒーター304、水蒸気ヒーター305、炉内ヒーター306、および給気処理用配管ユニット307などを備える。特に、給気処理用配管ユニット307は、不活性ガスヒーター304および水蒸気ヒーター305に付属して処理室302に給気するための配管群である。これらの配管群は複数台の熱分解モジュール300の間で、対応する接続栓C(
図7参照)を介して接続・分離可能にユニット化される。このように給気用の配管群を、熱分解モジュール300の単位にユニット化したことにより、熱分解モジュール300単位の配管の分離や、分離後のモジュール単位の配管清掃や、組み立てが容易になる。したがって、実施例1は、給気用の配管群においてもメンテナンス性が良いという点で優れている。
【0090】
(7)実施例1では、熱分解モジュール300は、触媒フィルタ310、冷却室311、気液分離部312、ガス送りポンプ313、油水分離部314、および排気処理用配管ユニット315などを備える。特に、排気処理用配管ユニット315は、触媒フィルタ310、冷却室311、気液分離部312、ガス送りポンプ313、および油水分離部314に付属して、処理室302の排気処理を行うための配管群である。これらの配管群は複数台の熱分解モジュール300の間で、対応する接続栓C(
図7参照)を介して接続・分離可能にユニット化される。このように排気処理用の配管群を、熱分解モジュール300の単位にユニット化したことにより、熱分解モジュール300単位の配管の分離や、分離後のモジュール単位の配管清掃や、組み立てが容易になる。したがって、実施例1は、排気処理用の配管群においてもメンテナンス性が良いという点で優れている。
【0091】
(8)実施例1では、シャッタモジュール400が、拡幅機構405を備える。この拡幅機構405は、内枠ユニット403が貫通路402を閉鎖するに際して、内枠ユニット403を拡幅させる。拡幅した内枠ユニット403は、外枠ユニット401の内部空間Sで突っ張ることによって、熱分解モジュール300の搬送口301を隙間なく密閉する。このように搬送口301を密閉することによって、熱分解処理の蒸気(油分を含む)がシャッタモジュール400(特に外枠ユニット401の内部空間S)へ漏れ出すことがなくなり、シャッタモジュール400の内部汚れの蓄積を軽減することが可能になる。したがって、実施例1は、シャッタモジュール400に拡幅機構405を備えたことによって、メンテナンス性の良いシャッタモジュール400が実現するという点で優れている。
【0092】
(9)従来の熱分解処理では、収容された対象物を外周から加熱するため、対象物の内側部分までなかなか加熱されず、熱分解処理に時間がかかった。そこで、実施例1では、多孔カゴ部204の仕切り位置に熱循環ボックス205を備える。この熱循環ボックス205は、内部に中空空間205sを有し、仕切りとなる側面部分を多孔側壁205aで構成し、上面部分を封鎖壁205bで構成する。この熱循環ボックス205は、中空空間205sに入った加熱水蒸気および加熱不活性ガスが途中の仕切り位置から噴出して、対象物の内側部分を通過する。したがって、実施例1は、収容された対象物を仕切り位置から加熱するため、対象物の全体をより速く加熱することが可能になり、対象物の熱分解処理にかかる時間を短縮できるという点で優れている。
【0093】
《その他の補足事項》
なお、上述した実施形態では、給気処理用配管ユニット307や排気処理用配管ユニット315などの配管群について、説明を簡明にするため、逆流防止弁の説明を省略した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。これらの配管群において、逆流の可能性がある箇所に逆流防止弁を配置することが好ましい。
【0094】
また、上述した実施形態では、不活性ガスとして窒素ガスを使用する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。不活性ガスとしては、対象物を燃焼させずに熱分解できる流体であればよい。
【0095】
本発明は、上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0096】
例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために全体を詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成や全てのステップを備えるものに限定されない。
【0097】
また、本発明は、個々の構成に限定されるものではない。例えば、個々の構成を、均等な機能を有する別種類の構成に変更してもよい。
【0098】
また、実施形態の個々の要素を部分的に組み合わせてもよい。さらに、実施形態に対して、他の構成や他のステップを追加・置換をすることも可能である。また、実施形態に対して、一部の構成や一部のステップを削除してもよい。
《(参考)本願出願時の請求範囲》
[付記1]
熱分解処理の対象物を収容して搬送するための収容容器と、
前記収容容器の搬送路に搬送口を並べて設置され、前記熱分解処理を個別単位に分担する複数台の熱分解モジュールと、
前記熱分解モジュールの前記搬送口を遮蔽する位置に個別単位に挿入され、前記収容容器の搬送に際して開き、前記熱分解処理に際して閉じる複数台のシャッタモジュールと、
を備えたことを特徴とする熱分解処理システム。
[付記2]
付記1記載の熱分解処理システムであって、
複数台のうちの先頭に位置する前記熱分解モジュールは、加熱された不活性ガスを内部に満たすことによって、前記収容容器と共に外部から入った酸素を抜く脱酸素処理と、後続する前記熱分解処理に先行して前記対象物を加熱する予熱処理とを担当する予備炉の役割を果たし、
複数台のうちの最後尾に位置する前記熱分解モジュールは、非加熱の不活性ガスを内部に循環させることによって、前記熱分解処理によって高温になった残渣物を脱酸素環境で冷ます放熱処理を担当する放熱炉の役割を果たす
ことを特徴とする熱分解処理システム。
[付記3]
付記2記載の熱分解処理システムであって、
複数台のうちの途中に位置する前記熱分解モジュールおよび前記シャッタモジュールをモジュール単位に挿置または減数することによって、前記熱分解処理の処理段数を増減可能にした
ことを特徴とする熱分解処理システム。
[付記4]
付記1~3のいずれか一項記載の熱分解処理システムの構成モジュールとしての熱分解モジュールであって、
前記対象物を熱分解するための機構として、
前記収容容器を搬入した状態で、前記搬送口を前記シャッタモジュールで遮蔽することによって、前記熱分解処理の処理空間を形成する処理室と、
前記処理室に前記収容容器を搬入し、前記処理室から前記収容容器を搬出することによって、前記収容容器を順送りに搬送する搬送機構と、
不活性ガスを加熱制御して前記処理室に供給する不活性ガスヒーターと、
水蒸気を加熱制御して前記処理室に供給する水蒸気ヒーターと、
前記処理室を加熱制御する炉内ヒーターと、
前記不活性ガスヒーターおよび前記水蒸気ヒーターに付属して前記処理室に給気するための配管群であって、複数台の熱分解モジュールの間で接続・分離可能にユニット化された給気処理用配管ユニットと、
を備えたことを特徴とする熱分解モジュール。
[付記5]
付記4記載の熱分解モジュールであって、
前記熱分解処理の排気処理を行うための構成として、
前記処理室から前記熱分解処理の排気を取り込んで触媒による浄化処理を行う触媒フィルタと、
前記触媒フィルタを経た前記排気を冷却して気液混合体を出力する冷却室と、
前記冷却室を経た前記気液混合体を気体と液体に分離する気液分離部と、
前記気液分離部で分離された前記気体をオフガスタンクに送るガス送りポンプと、
前記気液分離部で分離された前記液体を油分と水分に分離する油水分離部と、
前記触媒フィルタ、前記冷却室、前記気液分離部、前記ガス送りポンプ、および前記油水分離部に付属して前記処理室の排気処理を行うための配管群であって、複数台の熱分解モジュールの間で接続・分離可能にユニット化された排気処理用配管ユニットと、
を備えたことを特徴とする熱分解モジュール。
[付記6]
付記5記載の熱分解モジュールであって、
前記気液分離部は、
前記冷却室を経た前記気液混合体からテレフタル酸を析出させて分離する第1気液分離槽と、
前記第1気液分離槽の残留気体から残りの前記液体を分離する第2気液分離槽とを備える
ことを特徴とする熱分解モジュール。
[付記7]
付記1~3のいずれか一項記載の熱分解処理システムの構成モジュールとしてのシャッタモジュールであって、
中空の内部空間を囲む外枠で構成され、前記収容容器の前記搬送路に合わせて貫通路が設けられた外枠ユニットと、
前記外枠ユニットの前記内部空間を移動することによって前記貫通路を開閉する内枠ユニットと、
前記内枠ユニットを移動する内枠駆動機構と、
前記内枠ユニットが前記貫通路を閉鎖するに際して、前記内枠ユニットを拡幅させて前記外枠ユニットの前記内部空間で突っ張ることによって、前記熱分解モジュールの前記搬送口を密閉する拡幅機構と
を備えたことを特徴とするシャッタモジュール。
[付記8]
付記1~3のいずれか一項記載の熱分解処理システムが備える収容容器であって、
前記収容容器の底において、前記熱分解処理で落ちる残渣物を受け止めるトレーを支持する底部と
前記底部から立設し、筐体骨組みを構成するフレーム部と、
多孔面で側方および底面を囲み、前記底部から浮かせた状態で前記フレーム部に取り付けられ、前記熱分解処理の前記対象物を収容する多孔カゴ部と、
前記多孔カゴ部の仕切り位置に配置される熱循環ボックスとを備え、
前記熱循環ボックスは、内部に中空空間を有し、仕切りとなる側面部分を多孔側壁で構成し、上面部分を封鎖壁で構成することにより、前記中空空間に入った加熱水蒸気および加熱不活性ガスを前記仕切り位置から前記対象物の内側部分に通過させる
ことを特徴とする収容容器。
【符号の説明】
【0099】
100...熱分解処理システム、200...収容容器、201...トレー、202...底部、203...フレーム部、204...多孔カゴ部、205...熱循環ボックス、205a...多孔側壁、205b...封鎖壁、205s...中空空間、210a...前方係合部、210b...後方係合部、300...熱分解モジュール、300a...予備炉、300b...放熱炉、301...搬送口、302...処理室、302a...吐出ノズル、303...搬送機構、304...不活性ガスヒーター、305...水蒸気ヒーター、306...炉内ヒーター、307...給気処理用配管ユニット、310...触媒フィルタ、311...冷却室、312...気液分離部、312a...第1気液分離槽、312b...第2気液分離槽、313...ガス送りポンプ、314...油水分離部、314a...第1油水分離槽、314b...第2油水分離槽、315...排気処理用配管ユニット、400...シャッタモジュール、400a...入口シャッタ、400b...出口シャッタ、401...外枠ユニット、402...貫通路、403...内枠ユニット、404...内枠駆動機構、404a...駆動モータ、404b...スライド変換機構、404c...上下アーム、405...拡幅機構、406...内底面、500...共用設備、510...ボイラー、520...窒素発生器、530...クーリングタワー、530a...循環ポンプ、540...油タンク、540a...油送りポンプ、550...オフガスタンク、560...凝縮器、570...排水処理装置、580...制御コンピュータ、C...接続栓、R...搬送路、S...内部空間
【要約】
【課題】本発明は、メンテナンス性に優れた熱分解処理システムを提供する。
【解決手段】
本発明の熱分解処理システムは、次の構成(収容容器、複数台の熱分解モジュール、複数台のシャッタモジュール)を備える。収容容器は、熱分解処理の対象物を収容して搬送するための容器である。複数台の熱分解モジュールは、前記収容容器の搬送路に搬送口を並べて設置され、前記熱分解処理を個別単位に分担する。複数台のシャッタモジュールは、前記熱分解モジュールの前記搬送口を遮蔽する位置に個別単位に挿入され、前記収容容器の搬送に際して開き、前記熱分解処理に際して閉じる。
【選択図】
図7