(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】木材処理部の可視化方法
(51)【国際特許分類】
B27K 3/50 20060101AFI20250417BHJP
A01N 51/00 20060101ALI20250417BHJP
A01N 43/653 20060101ALI20250417BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20250417BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
B27K3/50 A
A01N51/00
A01N43/653 C
A01P3/00
A01P7/04
(21)【出願番号】P 2021041764
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】馬場 庸介
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-139606(JP,A)
【文献】特開2004-017653(JP,A)
【文献】特開2005-035288(JP,A)
【文献】特開2003-073211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008610(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線波長490-550nmの範囲である緑に発光する紫外線発光物質を含む木材処理剤が処理されてなる木材に対し
ピーク波長375nmの紫外線を照射することにより該発光物質を発光させ、
該発光の検出から木材における木材処理部を可視化する木材処理部の可視化方法。
【請求項2】
木材処理剤には、有効成分としてネオニコチノイド系化合物類およびピレスロイド系化合物類からなる群より選ばれる1種以上の殺虫成分を含んでなる請求項1に記載の木材処理部の可視化方法。
【請求項3】
木材処理剤には、有効成分としてアゾール系化合物類の防腐成分を含んでなる請求項1または2に記載の木材処理部の可視化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材処理部の可視化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材に対し防蟻性能や防腐性能を付与するため、殺虫成分、防腐成分などを含有する木材処理剤を噴霧等により木材に処理する方法が取られている。
木材処理剤の処理に斑があると、木材処理剤の処理が不十分な部分が害虫に食害される、または腐朽することから、木材に木材処理剤が適切に処理されているか否かを確認することを目的に、木材処理部を可視化できることが求められていた。しかしながら、木材処理剤は通常無色であるため、木材処理部を可視化することが困難であった。
【0003】
そこで、着色剤を配合した木材処理剤を木材に処理し木材を呈色させることにより、木材処理部を可視化する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法により木材処理剤の処理部を可視化できる一方、木材が呈色されたことにより、木材が汚損し、美観性が損なわれたと感じる人がいた。また木材処理剤を噴霧にて処理する場合、対象物である木材の周辺をも呈色する恐れがあることから、使用場所が制限される場合があった。
【0006】
このような課題に対し、木材を呈色することなく木材における木材処理部を可視化できる新たな方法が求められていた。
【発明が解決しようとする手段】
【0007】
本発明者らはかかる課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に至った。すなわち本発明は、
[1]紫外線発光物質を含む木材処理剤が処理されてなる木材に対し紫外線を照射することにより該発光物質を発光させ、
該発光の検出から木材における木材処理部を可視化する木材処理部の可視化方法
[2]木材処理剤には、有効成分としてネオニコチノイド系化合物類およびピレスロイド系化合物類からなる群より選ばれる1種以上の殺虫成分を含んでなる上記の木材処理部の可視化方法。
[3]木材処理剤には、有効成分としてアゾール系化合物類の防腐成分を含んでなる上記載の木材処理部の可視化方法。
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、紫外線発光物質を含む木材処理剤が処理された木材に紫外線を照射すると、該処理剤に含有される発光物質が発光し、該発光の検出から木材における木材処理部が可視化できるので、木材に木材処理剤が適切に処理されているか否かの判別が可能となる。また本発明の可視化方法に使用される紫外線発光物質は、可視光線域では識別できない物質のため、美観性を損ねる恐れがなくなり、使用場所の制限がない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に使用される紫外線発光物質とは、紫外線照射による発光により識別できるが、可視光線域では識別できない物質のことである。より詳しくはブラックライトによる主波長300nm~400nmの紫外線の照射によって発光し、かつ可視光線域下の肉眼では容易に識別できない物質のことである。かかる物質としては、フルオレセイン類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類、フラビン類当の有機発光物質、希土類元素や量子ドット等の無機発光物質が挙げられる。
これら紫外線発光物質の発光の色調については、青、赤、緑、黄、白などがあるが、このうち緑に発光する紫外線発光物質を用いることが好ましい。
【0010】
前記紫外線発光物質は、例えば、シンロイヒ社株式会社製のMLCB-12(グリーン)、MLCB-13(レッド)、MLCB-18(ブルー)、FM-109(ホワイト)などの市販の顔料に含まれているので、本発明では当該顔料を後述する方法で木材処理剤に配合すればよい。
【0011】
本発明における木材処理剤は、通常、有効成分として、殺虫成分、防腐成分、防かび、忌避、昆虫生育阻害成分等を一種または二種以上含む製剤を用いる。また、前記製剤を水で希釈した希釈液を用いても良い。製剤または希釈液に前記顔料を配合することで、紫外線発光物質を含む木材処理剤となる。紫外線発光物質を含む前記顔料を、通常、木材処理剤に対し0.1~1.0重量%となるように配合する。
【0012】
殺虫成分としては、例えば、フェニトロチオンなどの有機リン系化合物類;ペルメトリンなどのピレスロイド系化合物類;シラフルオフェン、エントフェンプロックスなどのピレスロイド様化合物類;フェノブカルブなどのカーバメート系化合物類、クロチアニジンなどのネオニコチノイド系化合物類、ホウ酸、ヒドラメチルノン、クロルフェナピルなどのピロール系、フェニルピラゾール系化合物、ブロフラニリドなどのメタジアミド化合物などが挙げられる。
【0013】
防腐成分としては、例えば、トリアゾール誘導体、スルホンアミド系、ベンゾイミダゾール系、チオシアネート系、モルホリン誘導体、有機ブロモ誘導体、イソチアゾリン系、ベンゾイソチアゾリン系、ピリジン系、金属塩類、有機スズ誘導体、ジアルキルジチオカルバメート系、ニトリル系、活性ハロゲン原子を含有する微生物剤、ベンゾチアゾール系、キノリン系、ホルムアルデヒドを放出する化合物、ヒドロキシルアミン系、ナフタリン系、アニリド系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、タール系、アルデヒド類、直鎖脂肪酸、芳香族カルボン酸、アルコール類、イソチアゾリン系などが挙げられる。
【0014】
これら有効成分の含有量は、通常、木材処理剤全体量に対し0.01~20重量%である。
【0015】
前記有効成分を含む製剤の例としては、油剤、乳剤、可溶化製剤、水和剤、粉剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、サスポエマルション剤などが挙げられる。このうち、水性の製剤を用いることが好ましい。
【0016】
製剤化に際しては、前記有効成分のほか、溶剤、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、粘度調整剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、酸化防止剤、増粘剤等の他の成分を用いて、公知の方法により製剤化する。
【0017】
前記溶剤としては、例えば、水、芳香族または脂肪族炭化水素(アルキルベンゼン、フェニルキシリルエタンなど)、アルコール類(ポリプロピレングリコール、シクロヘキサノール、2-メチル-1-ブタノールなど)、エーテル類(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなど)、エステル類(アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチル、クエン酸アセチルトリブチルなど)、ケトン類(メチル-n-ブチルケトン、イソホロンなど)等が挙げられる。
【0018】
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレートなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレートなど)、ポリオキシエチレンひまし油エーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる、市販されている非イオン系界面活性剤としては、ニューカルゲン(登録商標)CP-120(竹本油脂株式会社製)、ニューカルゲンD-240K(竹本油脂株式会社製)、ニューカルゲンD-931(竹本油脂株式会社製)、ニューカルゲンCP-80(竹本油脂株式会社)などが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンベンジル(又はスチリル)フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノ-又はジ-アルキルナフタレン酸スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレン、モノ-又はジ-アルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(又はスチリル)フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(又はスチリル)フェニルエーテルホスフェート又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートなどが挙げられ、市販されている陰イオン系界面活性剤としては、ニューカルゲンEP-70G(竹本油脂株式会社製)、ニューカルゲンFS-72PG(竹本油脂株式会社製)などが挙げられる。なお、これらの界面活性剤は二種類以上を組み合わせて使用してもよく、非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を混合した市販されている界面活性剤としては、ニューカルゲンFS-26(竹本油脂株式会社製)、ニューカルゲンKL-30(竹本油脂株式会社製)、サニマル(登録商標)SFT(日本乳化剤株式会社製)、ソルポール(登録商標)SM-100PM(東邦化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0019】
本発明においては、木材処理剤は、公知の方法により木材に処理すればよい。例えば、水刷毛、ローラー、噴霧器などを用いて木材に木材処理剤を処理してもよく、木材を木材処理剤に浸漬して処理してもよい。
【0020】
本発明においては、まず、紫外線発光物質を含む木材処理剤が処理された木材に対し、市販のブラックライト等を用いて紫外線を照射する。紫外線を照射すると、該物質が発光するので、その発光を目視検出することにより、木材処理部を可視化する
紫外線を照射しても発光しない部分は、木材処理剤が適切に処理できていない部分であることから、当該部分に対して木材処理剤を処理し直すと、木材処理剤を木材に適切に処理することができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
[製剤例1]
製剤として木部用ガントナーMC(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製、有効成分:クロチアニジン、ヘキサコナゾール)に対し、MLCB―12(シンロイヒ株式会社製)が4重量%となるよう混合した後、水で20倍に希釈し木材処理剤1を得た。
【0023】
[製剤例2]
製剤例1において、MLCB-12をMLCB-13(シンロイヒ株式会社製)に変更した以外は同様の手順で木材処理剤2を得た。
【0024】
[製剤例3]
製剤として木部用ガントナー20EC(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製、有効成分:クロチアニジン、ヘキサコナゾール、IPBC)に対し、FM-109(シンロイヒ株式会社製)が5重量%となるよう混合した後、水で20倍に希釈し木材処理剤3を得た。
【0025】
[製剤例4]
製剤として木部用ガントナーMC(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製、有効成分:クロチアニジン、ヘキサコナゾール)を水で20倍希釈した後、MLCB―12(シンロイヒ株式会社製)が0.2重量%となるよう混合し木材処理剤4を得た。
【実施例1】
【0026】
木材処理剤1~4を夫々、木材に噴霧塗布し風乾することで紫外線発光物質を含む木材処理剤を木材に処理した。夫々の木材に対し、ブラックライト(コンテック者製 PW-UV141P―01)を用いて紫外線を照射すると、木材処理剤に含まれる紫外線発光物質が発光した。該発光を検出することにより木材における木材処理部を可視化することができた。