(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】音響波測定装置、整合材袋、整合ゲル、分離フィルムおよび音響波測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/13 20060101AFI20250417BHJP
【FI】
A61B8/13
(21)【出願番号】P 2022517098
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016343
(87)【国際公開番号】W WO2021215510
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2020077580
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520147108
【氏名又は名称】株式会社Luxonus
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【氏名又は名称】橘高 英郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】吉川 彩
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】由井 敬清
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 恭史
(72)【発明者】
【氏名】中林 貴暁
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-213533(JP,A)
【文献】特開2019-195583(JP,A)
【文献】特開2019-187617(JP,A)
【文献】特開2017-77410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を支持する支持面と、前記被検体の所定の被検部位を測定するために前記支持面に開設された開口と、を有する支持台と、
前記支持面よりも鉛直下側に設けられ、液状またはゲル状の音響整合材を収容可能に構成される容器と、
前記支持面よりも鉛直下側に設けられ、前記被検部位から発生する音響波を受信する受信素子と、
を備え、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、液状またはゲル状の音響整合材を収容した整合材袋もしくは流動性が制限され音響調整作用を持つ整合ゲルと、当該整合材袋もしくは当該整合ゲルを載置する載置部と、を設置可能に構成されている
音響波測定装置。
【請求項2】
前記載置部として、前記音響整合材を浸透させない分離フィルムを設置可能とし、前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、当該分離フィルムと、前記整合材袋もしくは前記整合ゲルと、をこの順で設置可能に構成されている
請求項1に記載の音響波測定装置。
【請求項3】
前記載置部は、前記支持面の鉛直下側に向けて凹む凹部を有し、
前記分離フィルムは、前記凹部の少なくとも底部を構成する
請求項2に記載の音響波測定装置。
【請求項4】
前記凹部は、鉛直下側に向けて狭まるよう構成されている
請求項3に記載の音響波測定装置。
【請求項5】
前記整合材袋内の前記音響整合材もしくは前記整合ゲルが前記凹部の全体を覆うように、該整合材袋もしくは該整合ゲルを設置可能に構成されている
請求項3又は請求項4に記載の音響波測定装置。
【請求項6】
前記載置部は、マッチング液を前記凹部内に収容可能に構成されている
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項7】
前記載置部は、前記凹部内から外側への前記マッチング液の溢れを抑制する溢れ抑制部を有する
請求項6に記載の音響波測定装置。
【請求項8】
前記載置部として、前記整合材袋もしくは前記整合ゲルと前記被検部位とを保持する保持メッシュを設置可能とし、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、当該保持メッシュと前記整合材袋もしくは前記整合ゲルと、をこの順で設置可能に構成され、
前記容器内の前記音響整合材により前記保持メッシュの孔を塞ぐように、前記保持メッシュと、前記容器内の前記音響整合材の上面とが近接可能に構成されている
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項9】
前記開口は、鉛直下側に向けて狭まるよう構成され、
前記開口全体を覆うように、前記整合材袋もしくは前記整合ゲルを設置可能に構成されている
請求項1に記載の音響波測定装置。
【請求項10】
前記整合材袋が設置された状態で、前記整合材袋と外部の間で前記音響整合材が流動可能に構成された流動管と、
前記流動管を開閉可能に構成された開閉部と、
を備える
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項11】
前記支持台は、前記支持面よりも鉛直下側に前記流動管を配置可能に構成されている
請求項10に記載の音響波測定装置。
【請求項12】
所定の固定部材により前記整合材袋もしくは前記整合ゲルを前記支持台に対して固定可能に構成されている
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の音響波測定装置。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の音響波測定装置に用いられる
整合材袋。
【請求項14】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の音響波測定装置に用いられる
整合ゲル。
【請求項15】
請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の音響波測定装置に用いられる
分離フィルム。
【請求項16】
支持面、および被検体の所定の被検部位を測定するために前記支持面に開設された開口を有する支持台と、前記支持面よりも鉛直下側に設けられ液状またはゲル状の音響整合材を収容した容器と、前記支持面よりも鉛直下側に設けられた受信素子と、を有する音響波測定装置を準備する工程と、
前記支持台の前記支持面上に被検体を載置する工程と、
前記被検部位から発生する音響波を前記受信素子により受信する工程と、
を備え、
前記音響波測定装置を準備する工程では、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、液状またはゲル状の音響整合材を収容した整合材袋もしくは流動性が制限され音響調整作用を持つ整合ゲルと、当該整合材袋もしくは当該整合ゲルを載置する載置部と、を設置する
音響波測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波測定装置、整合材袋、整合ゲル、分離フィルムおよび音響波測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば医療分野において、被検体から発生する音響波を測定し、被検体内の特性情報を得る装置が開発されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、適切な音響整合を確保しつつ、被検体への負荷軽減と、清浄状態の容易な確保とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
被検体を支持する支持面と、前記被検体の所定の被検部位を測定するために前記支持面に開設された開口と、を有する支持台と、
前記支持面よりも鉛直下側に設けられ、液状またはゲル状の音響整合材を収容可能に構成される容器と、
前記支持面よりも鉛直下側に設けられ、前記被検部位から発生する音響波を受信する受信素子と、
を備え、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、液状またはゲル状の音響整合材を収容した整合材袋もしくは流動性が制限され音響調整作用を持つ整合ゲルと、当該整合材袋もしくは当該整合ゲルを載置する載置部と、を設置可能に構成されている
音響波測定装置が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、
上述の音響波測定装置に用いられる
整合材袋が提供される。
【0007】
本発明の更に他の態様によれば、
上述の音響波測定装置に用いられる
整合ゲルが提供される。
【0008】
本発明の更に他の態様によれば、
上述の音響波測定装置に用いられる
分離フィルムが提供される。
【0009】
本発明の更に他の態様によれば、
支持面、および被検体の所定の被検部位を測定するために前記支持面に開設された開口を有する支持台と、前記支持面よりも鉛直下側に設けられ液状またはゲル状の音響整合材を収容した容器と、前記支持面よりも鉛直下側に設けられた受信素子と、を有する音響波測定装置を準備する工程と、
前記支持台の前記支持面上に被検体を載置する工程と、
前記被検部位から発生する音響波を前記受信素子により受信する工程と、
を備え、
前記音響波測定装置を準備する工程では、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、液状またはゲル状の音響整合材を収容した整合材袋もしくは流動性が制限され音響調整作用を持つ整合ゲルと、当該整合材袋もしくは当該整合ゲルを載置する載置部と、を設置する
音響波測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切な音響整合を確保しつつ、被検体への負荷軽減と、清浄状態の容易な確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る音響波測定装置を示す概略図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の変形例1-1に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の変形例1-2に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【
図7A】本発明の第2実施形態に係る音響波測定装置の一部を示す概略平面図である。
【
図7B】本発明の第2実施形態に係る音響波測定装置の一部を示す概略平面図である。
【
図8B】保護フィルムを剥がすときの整合材袋を示す概略断面図である。
【
図9】整合材袋を載置部の凹部内に載置するときを示す概略図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の変形例2-1に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の変形例2-2に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【
図12】本発明の第2実施形態の変形例2-3に係る音響波測定装置の一部を示す概略断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態の変形例2-4に係る音響波測定装置の一部を示す概略断面図である。
【
図14】参考例に係る音響波測定装置において、整合材袋上に被検部位を載置したときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0013】
従来の音響波測定装置(音響波受信装置)は、上述の特許文献1などのように、例えば、支持台と、保持部材と、液槽と、探触子と、を有している。支持台は、被検体を支持する支持面を有する。保持部材は、被検体の所定の被検部位を保持しつつ、被検体側マッチング液を貯留する。液槽は、支持台の支持面下で、探触子側マッチング液を貯留する。探触子は、液槽に設けられ、被検体の所定の被検部位から被検体側マッチング液、保持部材および探触子側マッチング材を介して音響波を受信する。
【0014】
このように、従来の音響波測定装置では、音響整合に係る構成として、「被検体/被検体側マッチング液/保持部材/探触子側マッチング液/探触子」の分離構造を採用していた。このような構造により、被検部位から探触子までの間に空気を介在させないことで、音響波の測定精度低下を抑制していた。
【0015】
しかしながら、従来の音響波測定装置では、被検体の所定の被検部位を被検体側マッチング液に直接浸漬させていた。被検体側マッチング液を収容可能な深さを有する液槽を採用する必要があったため、液槽内に被検部位を挿入するときに、被検体の一部が液槽の角に当たったり、被検体が無理な体勢になったりする可能性があった。このため、被検体への負荷が大きくなっていた。また、被検部位が被検体側マッチング液によって濡れることとなるため、被検体への負荷が大きく、被検体としての被検者が嫌悪感を抱く可能性があった。また、検査衣や、被検部位を覆う暗幕なども濡れることがあったため、測定環境が悪化し、被検体への負荷がさらに大きくなっていた。
【0016】
また、探触子側マッチング液を介した被検体間の交差感染を抑制するために設置される分離フィルムは、異なる被検体を測定する前に廃棄される。このため、分離フィルムを廃棄する際に、少なくとも被検体側マッチング液を除去する必要があった。このとき、従来の音響波測定装置では、例えば、スポンジなどを用い、保持部内に貯留された被検体側マッチング液を吸い取って除去していた。このため、被検体側マッチング液の除去が困難であり、除去に多くの時間を要していた。
【0017】
このように、従来の音響波測定装置では、被検体への負荷軽減と、清浄状態の容易な確保とを両立することが困難となっていた。
【0018】
本発明は、発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0019】
<本発明の第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
(1)音響波測定装置(音響波受信装置)
図1~
図3Bを用い、本実施形態の音響波測定装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係る音響波測定装置を示す概略図である。
図2は、
図1の一部拡大図である。なお、
図1および
図2において、被検体100の被検部位110以外の部分を省略している。
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ、整合材袋を示す概略平面図および概略断面図である。
【0021】
本実施形態の音響波測定装置10は、例えば、光音響トモグラフィ(PAT:PhotoAcoustic Tomography)装置(光音響イメージング装置)として構成されている。PAT装置では、例えば、被検体の所定の被検部位に対して光を照射する。被検部位の組織で光が吸収されると、光を吸収した部分が熱を放出し、体積膨張によって音響波(粗密波)を発生させる。この現象を「光音響効果」と呼び、光音響効果により発生する音響波を「光音響波」とも呼ぶ。「光超音波」と称されることもある。当該光音響効果により発生した光音響波を受信することで、被検体内の特性情報およびその分布を得ることができる。
【0022】
図2に示すように、本実施形態の音響波測定装置10は、例えば、支持台(基台)200と、受信ユニット(検出ユニット)300と、光源620と、光学系640と、撮像部690と、走査機構(移動機構)380と、載置部400と、整合材袋500と、供給部800と、処理部700と、を備えている。
【0023】
なお、以下でいう「被検体(被験体)100」とは、例えば、生体(人体)であり、被検体100の所定の「被検部位(被験部位)110」とは、音響波を測定(検出)する部位のことを意味し、例えば、手、足、顔、体幹部、乳房などである。
【0024】
(支持台)
支持台200は、例えば、被検体100が載置される基台として構成されている。具体的には、支持台200は、例えば、支持面210と、開口220と、を有している。
【0025】
支持面210は、例えば、被検体100のうち被検部位110以外の部分を支持している。支持台200の支持面210の下には、空間があけられており、後述の受信ユニット300などが設けられている。
【0026】
開口220は、例えば、被検体100の所定の被検部位110を測定するために、支持面210に開設されている。開口220は、所定の被検部位110からの音響波を測定するため、被検部位110よりも広く設けられている。開口220の平面形状は、例えば、四角形である。
【0027】
本実施形態では、支持台200は、例えば、分離フィルム420と整合材袋500とを設置可能に構成されている。この点については、詳細を後述する。
【0028】
(受信ユニット)
受信ユニット300は、例えば、被検体100の所定の被検部位110からの音響波を受信するよう構成されている。本実施形態の受信ユニット300は、例えば、容器320と、受信素子(探触子、変換素子)340と、素子保持部360と、を有している。
【0029】
[容器]
容器320は、例えば、支持面210よりも鉛直下側に設けられている。容器320は、例えば、音響整合材310を収容(貯留)可能に構成されている。
【0030】
音響整合材310は、例えば、液状またはゲル状であり、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。本実施形態でいう音響インピーダンスが「被検体100と整合する」とは、被検体100の音響インピーダンスと完全に一致する場合だけでなく、被検体100の音響インピーダンスに所定の誤差で近似される場合も含んでいる。具体的には、「被検体100と整合する音響インピーダンス」は、例えば、被検体100の音響インピーダンスの0.5倍以上2倍以下の範囲内である。具体的な音響整合材310としては、例えば、水、油などである。
【0031】
本実施形態では、容器320は、例えば、音響整合材310を固定せず不定形に変化させることが可能な状態で音響整合材310を収容しており、すなわち、流動性を有する状態で音響整合材310を収容している。
【0032】
また、本実施形態では、容器320内において、後述の分離フィルム420に接する位置まで、音響整合材310が充填される。これにより、被検部位110から受信素子340までの音響波の伝播経路に空気が介在することを抑制することができる。
【0033】
[受信素子]
受信素子340は、例えば、支持面210よりも鉛直下側に設けられている。受信素子340は、例えば、被検部位110から発生する音響波を受信するよう構成されている。
【0034】
また、受信素子340は、例えば、受信した音響波を電気信号に変換するよう構成されている。以下、音響波を変換した電気信号を「音響信号」と呼ぶ。受信素子340は、例えば、100kHz以上1000MHz以下の周波数を有する音響波を受信可能に構成されている。より好ましくは、受信素子340は、例えば、100kHz以上50MHz以下の周波数を有する音響波を受信可能に構成されている。具体的な受信素子340としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などからなる圧電素子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの高分子圧電膜材料、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)、ファブリペロー干渉計などが挙げられる。
【0035】
本実施形態では、受信素子340は、例えば、複数設けられている。複数の受信素子340により音響波を受信することで、測定精度を向上させることができる。例えば、被検部位110内の特性情報の測定位置精度を向上させることができる。
【0036】
[素子保持部]
素子保持部360は、例えば、複数の受信素子340を保持している。素子保持部360は、例えば、鉛直下側に向けて凹んだ半球状(お椀状)に構成されている。ここでいう「半球状」とは、平坦な断面で分割された真円球の形状、平坦な断面で分割された楕円球の形状、またはそれらに所定の誤差で近似される形状のことを意味している。素子保持部360が構成する球面の中心角は、例えば、140°以上180°以下である。
【0037】
素子保持部360は、例えば、複数の受信素子340のそれぞれの指向軸が半球面の曲率中心付近に集中するように、半球面に沿ってアレイ状に複数の受信素子340を保持している。これにより、半球面の曲率中心付近において、高分解能を得ることができる。
【0038】
本実施形態では、素子保持部360の半球面の曲率中心は、例えば、後述の整合材袋500上に被検部位110が載置されたときの被検部位110内に位置するように設定されている。これにより、所定の被検部位110内で高分解能の測定を行うことができる。
【0039】
本実施形態では、素子保持部360は、例えば、容器320の底部に設けられ、容器320に一体として固定されている。素子保持部360内には、上述の音響整合材310が収容される。これにより、受信素子340は、音響整合材310を介して音響波を受信するようになっている。
【0040】
また、本実施形態では、上述のように容器320が、流動性を有する状態で音響整合材310を収容していることで、素子保持部360が複雑な形状を有していても、素子保持部360内に、空気を介在させることなく音響整合材310を密に充填することができる。
【0041】
(光源)
光源620は、例えば、所定の被検部位110に対して光を照射するよう構成されている。光源620は、例えば、パルス光を出射可能に構成されている。具体的には、光源620は、例えば、レーザ、発光ダイオード、またはフラッシュランプである。レーザとしては、例えば、ガスレーザ、固体レーザ、色素レーザ、半導体レーザなどが挙げられる。
【0042】
光源620は、例えば、光音響効果が得られる条件下で、光を出射するよう構成されている。
【0043】
光源620から出射される光の波長は、例えば、被検部位110の組織を構成する所定の吸収体に吸収される波長であり、かつ、被検部位110の内部まで伝播可能な波長である。具体的には、光の波長は、例えば、500nm以上1200nm以下である。
【0044】
なお、光源620は、例えば、異なる波長の光を出射可能に構成されていてもよい。異なる波長の光を被検部位110に照射することで、異なる波長における吸収係数の違いに基づいて特性情報の分布を得ることができる。例えば、酸素飽和度分布などを得ることができる。
【0045】
光源620から出射される光のパルス幅は、いわゆる熱ストレス閉じ込め条件を満たしている。すなわち、パルス幅は、被検部位110内の所定の吸収体から熱が伝播して逃げる前に光照射が終了する時間幅であり、かつ、音響波が吸収体内を通過する前に光照射が終了する時間幅である。具体的には、パルス幅は、例えば、1ns以上100ns以下である。
【0046】
(光学系)
光学系640は、例えば、光源620からの光を伝送するよう構成されている。光学系640は、例えば、レンズならびにミラーなどの光学部品、光ファイバなどにより構成されている。
【0047】
光学系640の終端における光出射口660は、光源620から伝送された光を被検部位110に向けて出射するよう構成されている。光出射口660は、例えば、素子保持部360の底部に設けられている。光出射口660が受信素子340とともに素子保持部360に設けられていることで、被検部位110内の広い範囲における光音響波を測定することができる。
【0048】
(撮像部)
撮像部690は、例えば、支持面210よりも鉛直下側に設けられ、鉛直下側から少なくとも被検部位110を撮像するよう構成されている。撮像部690は、例えば、素子保持部360の底部に設けられている。
【0049】
また、撮像部690は、例えば、被検部位110に対して光を照射するライト695を有している。ライト695は、例えば、リング状に構成され、半球状の素子保持部360の外縁に沿って(該外縁を囲むように)設けられている。
【0050】
後述するように、測定工程S300の前に、測定に用いられる光の漏れを抑制するため、被検部位110上に暗幕(不図示)が被せられる。そこで、ライト695により被検部位110に光を照射しつつ、撮像部690により鉛直下側から被検部位110を撮像することで、暗幕が被せられた状態であっても、被検部位110の位置調整を行うことが可能となる。
【0051】
本実施形態では、撮像部690は、例えば、光源620からの光をカットするカットフィルタを有していることが好ましい。これにより、光源620からの光に起因した撮像部690のダメージを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、撮像部690は、例えば、鉛直下側から整合材袋500を撮像するよう構成されていてもよい。これにより、整合材袋500の位置並びに状態、整合材袋500並びに分離フィルム420の間の気泡の有無などを確認することができる。
【0053】
(走査機構)
走査機構380は、例えば、支持台200上に載置された被検体100に対して、受信素子340を相対的に走査(移動)させるよう構成されている。本実施形態では、走査機構380は、例えば、容器320と受信素子340とを有する受信ユニット300を一体として走査させるよう構成されている。
【0054】
走査機構380は、少なくとも所定の1方向に受信素子340を走査させるよう構成されている。走査機構380が受信素子340を走査させる方向は、例えば、2次元方向(XY方向)であっても、または3次元方向(XYZ方向)であってもよい。本実施形態では、走査機構380は、例えば、支持面210に平行な水平面上をXY方向に受信素子340を走査させるよう構成されている。
【0055】
本実施形態では、上述のように容器320が、流動性を有する状態で音響整合材310を収容していることで、走査機構380により受信ユニット300を走査させても、受信素子340が音響整合材310と接した状態を維持することができる。
【0056】
(供給部)
供給部800は、例えば、容器320内に供給管820を介して音響整合材310を供給するよう構成されている。供給管820は、例えば、素子保持部360の一部に接続されている。供給部800からの音響整合材310の供給により、容器320内の音響整合材310の上面が所定位置に維持される。
【0057】
(処理部)
処理部700は、例えば、音響波測定装置10の各部を制御し、被検部位110内の特性情報を処理するよう構成されている。
【0058】
処理部700は、例えば、コンピュータとして構成されている。具体的には、処理部700は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、およびI/Oポートを有している。RAM、記憶装置、およびI/Oポートは、CPUとデータ交換可能に構成されている。I/Oポートは、例えば、所定の増幅器、AD変換器および演算回路などの信号処理部(不図示)を介して受信素子340のそれぞれに接続され、光源620、撮像部690、走査機構380および表示部720に接続されている。記憶装置は、音響波測定に係るプログラム、および被検部位110内の特性情報などを記憶するよう構成されている。記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどである。RAMは、CPUによって記憶装置から読み出される情報やプログラム等が一時的に保持されるよう構成されている。CPUは、記憶装置に格納された所定のプログラムを実行することで、音響波測定装置10の各部を制御し、被検部位110内の特性情報を処理するように構成されている。表示部720は、所定のプログラムの実行によって得られた被検部位110内の特性情報を表示したり、撮像部690が撮像した被検部位110などの画像を表示したりするよう構成されている。
【0059】
(2)音響整合に係る構成
図2~
図3Bを用い、本実施形態の音響波測定装置10における音響整合に係る構成について詳細を説明する。
【0060】
本実施形態の音響波測定装置10は、音響整合に係る構成として、「被検体/整合材袋/分離フィルム/音響整合材/受信素子」の分離構造を有している。
【0061】
すなわち、
図2に示すように、本実施形態の音響波測定装置10は、例えば、容器320内に収容された音響整合材310から被検部位110までの間に、音響整合材310を浸透させない分離フィルム420と、液状またはゲル状の音響整合材510を収容した整合材袋500と、をこの順で設置可能に構成されている。このように、被検体100側の音響整合材510を整合材袋500内に収容することで、被検体100への負荷軽減と、清浄状態の容易な確保と、を両立することができる。
【0062】
なお、ここでいう「設置可能」とは、分離フィルム420および整合材袋500が音響波測定装置10に交換可能(取り外し可能)に設置する(取り付ける)ことができることを意味する。言い換えれば、音響波測定装置10が、分離フィルム420および整合材袋500を取り付け可能な取付部(符号不図示)を有していると考えてもよい。
【0063】
(載置部)
図2に示すように、載置部400は、例えば、整合材袋500を載置するよう構成されている。また、本実施形態では、載置部400は、例えば、被検体100側と受信ユニット300側とを分離するよう構成されている。
【0064】
載置部400を構成する分離フィルム420は、例えば、音響整合材310を浸透させないよう構成されている。また、分離フィルム420は、例えば、光源620からの光を透過するよう構成されている。さらに、分離フィルム420は、例えば、被検部位110からの音響波を伝播させることができるように、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。具体的には、上述の要件を満たす分離フィルム420の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレン(PE)などが挙げられる。
【0065】
分離フィルム420の厚さは、被検部位110の特性情報の取得に用いられる音響波の周波数帯域と分離フィルム420内の縦波音速とに基づいて決定される。ここで、分離フィルム420内の縦波音速は、例えば、典型的な生体としての被検体100と同程度である。具体的には、分離フィルム420内の縦波音速は、例えば、1000m/s以上2500m/s以下である。このとき、1.5MHz以下の周波数帯域の音響波を用いて特性情報を取得する場合、分離フィルム420の厚さは、例えば、1mm以下であることが好ましい。1.5MHz超10MHz以下の周波数帯域の音響波を用いて特性情報を取得する場合、分離フィルム420の厚さは、例えば、0.15mm以下であることが好ましい。10MHz超50MHz以下の周波数帯域の音響波を用いて特性情報を取得する場合、分離フィルム420の厚さは、例えば、0.03mm以下であることが好ましい。分離フィルム420の厚さが上記範囲外であると、特定周波数や特定の角度にて著しい信号強度の低下が生じる可能性がある。これに対し、上述のように、特性情報の取得に用いられる音響波の周波数帯域に応じて、分離フィルム420の厚さを所定厚さ以下とすることで、測定精度を向上させることができる。なお、特性情報の取得に用いられる音響波の周波数帯域が高いほど、高分解能な情報を取得することができる。
【0066】
本実施形態では、載置部400の少なくとも分離フィルム420は、例えば、交換可能(使い捨て可能)に構成されている。被検体100が代わったときに分離フィルム420を交換することで、被検体100間の交差感染を抑制することができる。
【0067】
載置部400は、例えば、支持台200の開口220を塞ぐ(覆う)ように設けられている。具体的には、載置部400は、例えば、開口220よりも広くなっている。載置部400は、例えば、開口220の周囲において、所定の取付部(不図示)により支持台200の支持面210に固定されている。このような構成により、被検体100が容器320内の音響整合材310に接触することを抑制することができる。
【0068】
載置部400は、例えば、トレイ状に構成され、支持面210の鉛直下側に向けて凹む凹部440を有している。上述の分離フィルム420は、開口220内で凹部440の少なくとも底部(一部)を構成している。分離フィルム420は、例えば、上述の材料を用い、圧空成型により成型されている。
【0069】
載置部400が鉛直下側に向けて凹んでいることで、載置部400を構成する分離フィルム420は、容器320内に収容された音響整合材310に接触している。これにより、分離フィルム420と音響整合材310との間に空気が介在することを抑制することができる。
【0070】
また、載置部400が凹部440を有していることで、載置部400は、例えば、後述の整合材袋500を凹部440内に収容可能に構成されている。これにより、整合材袋500を安定的に収容(載置)することができる。
【0071】
また、載置部400を構成する分離フィルム420が凹部440を有していることで、載置部400の分離フィルム420は、例えば、マッチング液(音響整合液)410を凹部440内に収容可能に構成されている。凹部440により、支持台200上へのマッチング液410の流出を抑制することができる。
【0072】
マッチング液410は、例えば、音響整合材310と同様に、液状であり、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。マッチング液410としては、例えば、水、油などである。分離フィルム420と後述の整合材袋500との間にマッチング液410を密に介在させることで、分離フィルム420と整合材袋500との間に空気が介在することを抑制することができる。
【0073】
載置部400の凹部440は、支持台200の開口220に取り外し可能に嵌合するようになっている。載置部400の凹部440の面積は、例えば、支持台200の開口220の面積とほぼ同じか、若干小さい。これにより、支持台200の開口220内での載置部400の凹部440のずれを抑制することができる。
【0074】
載置部400の凹部440の深さは、凹部440内に収容される整合材袋500の上面の位置に基づいて決定され、例えば、30mm以下、好ましくは20mm以下である。本実施形態では、凹部440の深さは、例えば、10mmである。このように凹部440の深さを30mm以下とすることで、被検体100としての被検者の痛みを軽減することができる。この点については、後述する。
【0075】
(整合材袋)
図2~
図3Bに示すように、整合材袋500は、例えば、音響整合材510を収容している。音響整合材510は、例えば、音響整合材310と同様に、液状またはゲル状であり、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。音響整合材510としては、例えば、水、油などである。
【0076】
整合材袋500は、例えば、載置部400上に配置(載置)され、載置部400と被検体100との間に介在している。音響整合材510が整合材袋500内に内包された状態で、整合材袋500が載置部400と被検体100との間に介在することで、これらの間に空気が介在することを抑制しつつ、被検体100が音響整合材510に直接接触することを抑制することができる。
【0077】
なお、整合材袋500と被検部位110の間に空気の介在が生じる可能性がある場合には、これらの間にさらに少量の音響整合材を密に介在させてもよい。これにより、被検部位110への整合材袋500の追従では排除しきれない空気の介在を抑制することができる。この部分の音響整合材は、例えば、液状またはゲル状であり、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。音響整合材としては、例えば、水、油、親水性溶液などである。介在方法としては、例えば、スプレーでの吹き付け、塗布などが挙げられる。なお、整合材袋500と被検部位110の間に介在させる音響整合材は少量であるため、被検体100への負荷は軽減される。
【0078】
整合材袋500は、例えば、可撓性を有している。これにより、整合材袋500を被検部位110の形状に追従させることができる。その結果、被検部位110と整合材袋500の表面との間に空気が介在することを安定的に抑制することができる。
【0079】
本実施形態では、整合材袋500は、例えば、分離フィルム420から分離され、音響整合材510とともに交換可能(使い捨て可能)に構成されている。被検体100が代わったときに整合材袋500を交換することで、常に清浄な状態の整合材袋500上に被検部位110を載置することができる。
【0080】
また、本実施形態では、少なくとも、支持台200の支持面210上に被検体100を載置した状態(すなわち、被検部位110が整合材袋500上に載置された状態)で、整合材袋500の上面の少なくとも一部が支持面210と同一高さに位置するか、或いは、支持面210よりも鉛直上側に位置するように、整合材袋500を設置できるようになっている。これにより、支持面210の開口220の周端部における段差において、被検体100の荷重による応力の集中を抑制することができる。
【0081】
さらに、本実施形態では、支持台200の支持面210上に被検体100を載置しない状態(すなわち被検部位110が整合材袋500上に載置される前の状態)で、整合材袋500の上面の少なくとも一部が支持面210と同一高さに位置するか、或いは、支持面210よりも鉛直上側に位置するように、整合材袋500を設置できるようになっていることが好ましい。これにより、支持面210の開口220の周端部における段差において、被検体100の荷重による応力の集中を確実に抑制することができる。
【0082】
次に、
図3Aおよび
図3Bを用い、整合材袋500の具体的構成について説明する。
図3Aおよび
図3Bに示すように、整合材袋500は、例えば、袋本体520と、注入口540と、を有している。
【0083】
袋本体520は、例えば、音響整合材510を収容する収容空間(収容域、符号不図示)を有する袋状のフィルムからなっている。袋本体520を構成するフィルムは、例えば、音響整合材510を浸透させないよう(漏出させないよう)構成されている。また、フィルムは、例えば、光源620からの光を透過するよう構成されている。さらに、フィルムは、例えば、被検部位110からの音響波を伝播させることができるように、被検体100と整合する音響インピーダンスを有している。具体的には、上述の要件を満たすフィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン、およびこれらの積層体などが挙げられる。
【0084】
袋本体520を構成するフィルムの厚さは、分離フィルム420の厚さと同様に、被検部位110の特性情報の取得に用いられる音響波の周波数帯域と、袋本体520を構成するフィルム内の縦波音速とに基づいて決定される。ここで、袋本体520を構成するフィルム内の縦波音速は、例えば、上述の分離フィルム420と同様に、典型的な生体としての被検体100と同程度である。具体的には、袋本体520を構成するフィルム内の縦波音速は、例えば、1000m/s以上2500m/s以下である。このとき、袋本体520を構成するフィルムの厚さは、特性情報の取得に用いられる音響波の周波数帯域に応じて、例えば、上述の分離フィルム420の厚さと同じ範囲内とすることができる。これにより、測定精度を向上させることができる。例えば、ポリウレタンまたはポリエチレンからなるフィルムの厚さを25μm以下とすることで、必要な解像度を得ることができる。
【0085】
例えば、袋本体520の収容空間を構成する部分が載置部400の凹部440内に載置される一方で、袋本体520の収容空間を囲む外周部分は、支持台200の支持面210上に載せられる。
【0086】
袋本体520は、収容空間を囲む外周部分に、例えば、固定代(固定しろ、縁部、枠部、耳部)522と、切込み部524と、を有している。
【0087】
固定代522は、例えば、収容空間を囲むように設けられ、後述の固定部材280によって支持台200に対して固定可能に構成されている。具体的には、固定代522は、例えば、袋本体520を構成する一対のフィルムを重ね合わせ、収容空間を画定するよう枠状にヒートシールすることにより構成されている。このように、固定代522を固定部材280によって固定することで、整合材袋500を支持台200に対して安定的に固定することができる。
【0088】
なお、固定代522は、例えば、収容空間を構成する部分よりも高い強度を有していてもよい。具体的には、固定代522全体がヒートシールされていてもよい。これにより、袋本体520を構成するフィルムの破れなどを抑制することができる。
【0089】
切込み部524は、例えば、固定代522の外縁から収容空間に向けて切り込まれている。整合材袋500の交換時に切込み部524を引き裂くことで、収容空間内の音響整合材510を整合材袋500から容易に排出することができる。
【0090】
注入口540は、例えば、袋本体520の外縁から内側(収容空間)に向けて連通し、整合材袋500の収容空間内に音響整合材510を注入可能に構成されている。これにより、注入口540を介して音響整合材510を注入することで、音響整合材510の漏れを抑制することができる。なお、注入口540は、例えば、整合材袋500内に音響整合材510を不可逆に注入可能な逆止弁として構成されていることが好ましい。これにより、注入口540からの音響整合材510の漏れを抑制することができる。
【0091】
注入口540は、例えば、可撓性を有している。具体的には、注入口540は、例えば、袋本体520と同様にフィルムにより構成されている。なお、注入口540を構成するフィルムの材料および厚さは、袋本体520を構成するフィルムの材料および厚さと同じであってもよいし、異ならせてもよい。本実施形態では、注入口540は、上述のようにフィルムにより構成されているため、スパウトまたはコネクタなどの硬い器具で構成されていない。これにより、注入口540において、被検体の荷重による応力の集中を抑制することができる。
【0092】
(固定部材)
図2に示すように、例えば、所定の固定部材280によって、上述の整合材袋500を支持台200に対して固定できるようになっている。
【0093】
具体的には、固定部材280は、例えば、支持台200の支持面210に設けられ、整合材袋500の固定代522を弾性的に挟み込むバインダ(クリップ)として構成されている。固定部材280は、例えば、4つ設けられている。4つの固定部材280は、例えば、支持台200の開口220の周囲において、開口220の中央に対して対称に配置されている。このような構成により、整合材袋500を支持面210に安定的に固定することができる。
【0094】
(3)音響波測定方法
図1および
図2を用い、本実施形態に係る音響波測定方法について説明する。
【0095】
本実施形態の音響波測定方法は、例えば、準備工程S100と、載置工程S200と、測定工程S300と、終了判定工程S400と、をこの順で有している。
【0096】
(S100:準備工程)
まず、
図2に示すように、支持台200、容器320および受信素子340などを有する上述の音響波測定装置10を準備する。
【0097】
容器320内には、流動性を有する状態で音響整合材310を収容する。容器320内において、音響整合材310が分離フィルム420に接することになる位置まで、音響整合材310を充填する。
【0098】
容器320内に音響整合材310を収容したら、容器320内に収容された音響整合材310から被検部位110までの間に、分離フィルム420と、音響整合材510を収容した整合材袋500と、をこの順で設置する。
【0099】
具体的には、支持台200の開口220を塞ぐように載置部400を配置する。載置部400を配置したら、載置部400の枠部を所定の取付部により支持台200の支持面210に固定する。載置部400を支持台200に固定したら、載置部400の凹部440内に、マッチング液410を収容する。本実施形態では、整合材袋500を用いているので、マッチング液410は少量で充分である。
【0100】
一方で、整合材袋500を準備する。整合材袋500の収容空間内に注入口540を介して音響整合材510を注入しておく。
【0101】
載置部400の配置と整合材袋500の準備が完了したら、音響整合材510を注入した整合材袋500を、載置部400の凹部440内に載置する。
【0102】
このとき、本実施形態では、少なくとも、支持台200の支持面210上に被検体100を載置したときに、整合材袋500の上面の少なくとも一部が支持面210と同一高さに位置するか、或いは、支持面210よりも鉛直上側に位置するように、整合材袋500を設置する。さらに、本実施形態では、支持台200の支持面210上に被検体100を載置しない状態(すなわち、当該準備工程S100の段階)で、整合材袋500の上面の少なくとも一部が支持面210と同一高さに位置するか、或いは、支持面210よりも鉛直上側に位置するように、整合材袋500を設置することが好ましい。
【0103】
具体的には、整合材袋500の上面についての上述の要件を満たすように、例えば、載置部400の凹部440の深さと、音響整合材510を収容した状態の整合材袋500の高さと、を設定する。または、整合材袋500の上面についての上述の要件を満たすように、例えば、載置部400の凹部440の深さを所定の深さで固定する一方で、整合材袋500内に注入する音響整合材510の量を調節してもよい。なお、このとき、被検体100や被検部位110に応じて、整合材袋500内に注入する音響整合材510の量を調節することで、整合材袋500の上面の高さを変化させてもよい。
【0104】
整合材袋500を設置したら、整合材袋500の固定代522を、固定部材280によって支持台200に対して固定する。
【0105】
(S200:載置工程)
次に、支持台200の支持面210上に被検体100を載置し、被検部位110を整合材袋500上に載置する。
【0106】
このとき、整合材袋500と被検部位110の間に空気の介在が生じる可能性がある場合には、これらの間にさらに少量の音響整合材を密に介在させてもよい。例えば、整合材袋500および被検部位110のうち少なくともいずれか一方に対して、スプレーでの吹き付け又は塗布などにより、音響整合材を付与する。音響整合材を付与した後、被検部位110を整合材袋500上に載置する。
【0107】
被検体100を載置したら、被検部位110上に暗幕(不図示)を被せる。これにより、測定に用いられる光の漏れを抑制することができる。
【0108】
(S300:測定工程)
次に、被検体100の所定の被検部位110から発生する音響波を、受信素子340により受信する測定工程S300を行う。
【0109】
本実施形態の測定工程S300では、以下の手順により、光音響効果により発生した光音響波を受信することで、被検体100内の特性情報およびその分布を取得する。以下、音響波測定装置10の各部の制御、および特性情報の処理は、処理部700により行われる。
【0110】
まず、光源620から光学系640を介して被検部位110に対して、光を照射する。照射した光が被検部位110内の組織の所定の吸収体によって吸収されると、光を吸収した吸収体が熱を放出し、体積膨張によって音響波を発生させる。このようにして被検部位110から発生する音響波を、受信素子340により受信する。受信素子340が音響波を受信したら、受信素子340により、受信した音響波を電気信号としての音響信号に変換する。
【0111】
処理部700では、受信素子340から得られた音響信号に基づいて、被検部位110内の特性情報を取得する。具体的な特性情報としては、例えば、音響波の発生源の位置、被検部位110内の初期音圧、初期音圧に基づいて求められるエネルギー吸収密度ならびに吸収係数、被検部位110の組織を構成する物質の濃度などが挙げられる。
【0112】
さらに、被検部位110内の各位置の特性情報に基づいて、2次元または3次元の特性情報分布を取得し、特性情報分布として画像データを生成する。具体的な特性情報分布としては、例えば、初期音圧分布、エネルギー吸収密度分布、吸収係数分布、酸素飽和度分布などが挙げられる。画像データを生成する際の画像再構成手法としては、例えば、UBP(Universal Back Projection)、FBP(Filtered Back Projection)、整相加算(Delay and Sum)などが挙げられる。生成した画像データに対しては、所定の画像処理を行ってもよい。画像データが得られたら、画像データを表示部720に表示する。
【0113】
このとき、走査機構380により、複数の受信素子340を有する受信ユニット300を被検体100に対して相対的に移動させながら、複数の受信素子340のそれぞれにより、被検部位110の各位置からの音響波を受信し、音響信号に変換する。このようにして得られた音響信号に基づいて、特性情報分布として画像データを生成する。これにより、画像データに発生するアーチファクトの生成を抑制することができる。
【0114】
(S400:終了判定工程)
上述の被検体100において、所定の被検部位110の測定が終了したら、異なる被検体100において上述と同様の測定を行うか否かを判定する。
【0115】
前回の被検体100と異なる新たな被検体100を測定する場合には、前回の測定で使用した整合材袋500および分離フィルム420を廃棄し、整合材袋500および分離フィルム420をそれぞれ清浄な新規品に交換する。整合材袋500および分離フィルム420を交換したら、新たな被検体100について、上述の載置工程S200および測定工程S300を行う。
【0116】
一方で、異なる被検体100の測定を行わない場合には、測定を終了する。
【0117】
以上により、本実施形態の音響波測定工程を終了する。
【0118】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0119】
(a)本実施形態の音響波測定装置10は、音響整合に係る構成として、「被検体/整合材袋/分離フィルム/音響整合材/受信素子」の分離構造を有している。すなわち、本実施形態の音響波測定装置10は、容器320内に収容された音響整合材310から被検部位110までの間に、分離フィルム420と、音響整合材510を収容した整合材袋500と、をこの順で設置可能に構成されている。
【0120】
音響整合材510が整合材袋500内に内包された状態で、整合材袋500が載置部400と被検体100との間に介在することで、これらの間に空気が介在することを抑制しつつ、被検体100が音響整合材510に直接接触することを抑制することができる。これにより、例えば、被検部位110が音響整合材510によって濡れることを抑制することができる。また、例えば、検査衣や暗幕などの濡れも抑制することができ、測定環境の悪化を抑制することができる。これらの結果、被検体100への負荷を軽減することができる。
【0121】
また、被検体100側の音響整合材510を整合材袋500内に収容することで、被検体100が代わったときに、前回の測定で使用した整合材袋500および分離フィルム420をすぐに廃棄し、整合材袋500および分離フィルム420をそれぞれ清浄な新規品に容易に交換することができる。被検体100が代わったときに、整合材袋500および分離フィルム420を交換することで、常に清浄な状態の整合材袋500上に被検部位110を載置することができ、被検体100間の交差感染を抑制することができる。
【0122】
このように、本実施形態によれば、適切な音響整合を確保しつつ、被検体100への負荷軽減と、清浄状態の容易な確保と、を両立することが可能となる。
【0123】
(b)本実施形態では、少なくとも、支持台200の支持面210上に被検体100を載置した状態(すなわち、被検部位110が整合材袋500上に載置された状態)で、整合材袋500の上面の少なくとも一部が支持面210と同一高さに位置するか、或いは、支持面210よりも鉛直上側に位置するように、整合材袋500を設置することができる。これにより、支持面210の開口220の周端部における段差に対して、被検体100が当接することを抑制することができる。当該段差への被検体100の当接を抑制することで、被検体100の荷重による応力の集中を抑制することができる。応力集中を抑制することで、被検体100への負荷を安定的に軽減することができ、被検体100が痛みを感じることを抑制することができる。その結果、音響波の測定を安定的に継続することができる。
【0124】
(c)載置部400は、例鉛直下側に向けて凹む凹部440を有している。分離フィルム420は、開口220内で凹部440の少なくとも底部を構成している。
【0125】
載置部400が鉛直下側に向けて凹んでいることで、載置部400を構成する分離フィルム420を、容器320内に収容された音響整合材310に容易に接触させることができる。これにより、分離フィルム420と音響整合材310との間に空気が介在することを抑制することができる。
【0126】
また、載置部400が凹部440を有していることで、載置部400の凹部440内に、整合材袋500を安定的に収容(載置)することができる。これにより、整合材袋500のずれを抑制することができる。
【0127】
また、載置部400が凹部440を有していることで、載置部400の凹部440内に、マッチング液410を収容することができる。これにより、分離フィルム420と整合材袋500との間にマッチング液410を密に介在させるができ、これらの間に空気が介在することを抑制することができる。その結果、空気介在に起因した音響波の測定精度低下を抑制することができる。
【0128】
(d)所定の固定部材280によって、整合材袋500を支持台200に対して固定できるようになっている。整合材袋500を支持台200に固定することで、被検体100が動いたとしても、整合材袋500のずれを抑制することができる。整合材袋500のずれを抑制することで、整合材袋500に皺が生じることを抑制することができる。整合材袋500の皺を抑制することで、整合材袋500の皺を起因とした空気介在の発生および整合材袋500の厚さの変動を抑制することができる。その結果、音響波の測定精度低下を抑制することができる。
【0129】
(5)第1実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0130】
<変形例1-1>
図4を用い、本実施形態の変形例1-1の音響波測定装置10について説明する。
図4は、本実施形態の変形例1-1に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【0131】
上述の実施形態では、載置部400が分離フィルム420により構成される場合について説明したが、以下の変形例1-1のように、載置部400は、保持メッシュ460と枠体480とをさらに有していてもよい。これにより、整合材袋500と被検部位110をより安定的に保持できるようになる。変形例1-1の音響波測定装置10では、載置部400の構成が、上述の実施形態と異なっている。
【0132】
図4に示すように、保持メッシュ460は、例えば、分離フィルム420の鉛直下側に(接するように)配置され、整合材袋500と被検体100の所定の被検部位110とを保持するよう構成されている。具体的には、保持メッシュ460は、例えば、被検部位110、整合材袋500および分離フィルム420の総重量に耐えるよう構成されている。保持メッシュ460は、例えば、網目状に構成され、光源620からの光の少なくとも一部を透過するよう構成されている。さらに、被検体保持部は、例えば、被検部位110からの音響波の少なくとも一部を伝播可能(透過可能)に構成されている。保持メッシュ460を構成する材料としては、例えば、ポリエステルなどが挙げられる。
【0133】
枠体480は、例えば、保持メッシュ460を囲むように保持する板状の枠部材として構成されている。本実施形態の枠体480は、例えば、枠下部482と、枠上部484と、クッション材488と、を有している。
【0134】
枠下部482は、例えば、平面視で矩形状に構成され、上述の凹部440の側部を構成している。枠下部482は、例えば、アルミなどの軽量金属からなっている。枠下部482の下面には、保持メッシュ460が固定されている。例えば、枠下部482の下面に接着剤により保持メッシュ460が接着されている。
【0135】
また、枠下部482は、例えば、上面に溝482aを有している。溝482a内には、後述の枠上部484に取り付けられたクッション材488が嵌め込まれるようになっている。
【0136】
枠下部482は、例えば、保持メッシュ460を支持台200に係止させるように配置される。具体的には、支持台200は、例えば、開口220に係止部(係止爪)222を有している。枠下部482は、例えば、保持メッシュ460を保持した状態で、開口220内に取り外し可能に嵌合し、支持台200の係止部222に係止されるようになっている。
【0137】
枠上部484は、例えば、枠下部482と同様に平面視で矩形状に構成され、枠下部482上に固定される。枠上部484と枠下部482とは、例えば、分離フィルム420を挟持するよう構成されている。具体的には、枠上部484の開口から上面、外側面および下面をこの順に通って枠上部484を囲むように、分離フィルム420が折り込まれる。分離フィルム420が折り込まれて枠上部484の下面に接する部分は、枠上部484と枠下部482との間に挟持される。
【0138】
クッション材488は、例えば、枠上部484の下面に取り付けられている。枠上部484に取り付けられたクッション材488は、枠下部482の溝482a内に嵌め込まれるようになっている。クッション材488が枠下部482の溝482aの底面に当接することで、走査機構380により受信ユニット300を走査させたときに、容器320内の音響整合材310が波立って、分離フィルム420と枠下部482との隙間から容器320内の音響整合材310が上昇して外に漏れ出すことを抑制することができる。
【0139】
なお、上述の保持メッシュ460および枠体480は、容器320内の音響整合材310に接しているため、長期的な使用により保持メッシュ460の支持力が低下するおそれがある。このため、保持メッシュ460および枠体480は、所定の定期メンテナンスのタイミングで、交換できるよう構成されている。
【0140】
(効果)
変形例1-1では、保持メッシュ460を設けることで、整合材袋500と被検体100の所定の被検部位110とを安定的に保持することができる。また、網目状の保持メッシュ460は、超音波の受信に影響を与えにくい事が確認されており、前述の保持安定性と高画質画像が得られる点とで優れている。
【0141】
<変形例1-2>
図5を用い、本実施形態の変形例1-2の音響波測定装置10について説明する。
図5は、本実施形態の変形例1-2に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【0142】
変形例1-2の音響波測定装置10では、容器320および載置部400の構成が、上述の実施形態と異なっている。
【0143】
図5に示すように、本変形例の容器320は、例えば、容器底部322と、ゴム側部324と、を有している。容器底部322は、例えば、素子保持部360を有し、素子保持部360以外の部分が平板状に設けられている。ゴム側部324は、例えば、音響整合材310を浸透させないゴムからなり、容器底部322の周囲を囲むように設けられている。ゴム側部324は、例えば、2重に設けられている。
【0144】
本変形例では、例えば、2重のゴム側部324の間に排出管840が接続され、排出管840を介して供給部800が接続されている。供給部800は、例えば、容器320内に内側のゴム側部324から漏れない最上限まで音響整合材310を充填するよう構成されている。一方で、供給部800は、例えば、内側のゴム側部324から溢れ出た音響整合材310を、排出管840を介して戻すよう構成されている。排出管840を介して戻された音響整合材310は、容器320内への音響整合材310の供給に再利用される。
【0145】
本変形例の載置部400は、例えば、分離フィルム420と、保持メッシュ460と、枠体480と、を有している。
【0146】
分離フィルム420は、例えば、上述の実施形態と同様に、音響整合材310を浸透させないよう構成され、開口220内で鉛直下側に向けて凹む凹部440を構成している。分離フィルム420は、例えば、上述の実施形態と同様の材料からなり、圧空成型により成型されている。
【0147】
保持メッシュ460は、例えば、分離フィルム420の鉛直下側に(接するように)配置され、整合材袋500と被検体100の所定の被検部位110とを保持するよう構成されている。具体的には、保持メッシュ460は、例えば、被検部位110、整合材袋500および分離フィルム420の総重量に耐えるよう構成されている。保持メッシュ460は、例えば、網目状に構成され、光源620からの光の少なくとも一部を透過するよう構成されている。さらに、被検体保持部は、例えば、被検部位110からの音響波の少なくとも一部を伝播可能(透過可能)に構成されている。保持メッシュ460を構成する材料としては、例えば、ポリエステルなどが挙げられる。
【0148】
枠体480は、例えば、保持メッシュ460を囲むように保持する板状の枠部材として構成されている。枠体480は、例えば、アルミなどの軽量金属からなっている。枠体480の下面には、保持メッシュ460が固定されている。例えば、枠体480の下面に接着剤により保持メッシュ460が接着されている。
【0149】
枠体480は、例えば、保持メッシュ460を支持台200に係止させるように配置される。具体的には、支持台200は、例えば、開口220に係止部(係止爪)222を有している。枠体480は、例えば、保持メッシュ460を保持した状態で、開口220内に取り外し可能に嵌合し、支持台200の係止部222に係止されるようになっている。
【0150】
なお、上述の保持メッシュ460および枠体480は、容器320内の音響整合材310に接しているため、長期的な使用により保持メッシュ460の支持力が低下するおそれがある。このため、保持メッシュ460および枠体480は、所定の定期メンテナンスのタイミングで、交換できるよう構成されている。
【0151】
整合材袋500は、例えば、上述の実施形態と同様に分離フィルム420上に載置される。整合材袋500は、例えば、固定部材280によって枠体480に固定され、枠体480を介して支持台200に固定される。
【0152】
本変形例の音響波測定装置10は、容器320内の音響整合材310により保持メッシュ460の孔を塞ぐように、保持メッシュ460と、枠体480の下面と、容器320内の音響整合材310の上面とが近接可能に構成されている。
【0153】
分離フィルム420は、枠体480の下面よりも鉛直下側には突出しておらず、容器320内の音響整合材310に沈んでいない。一方で、容器320内の音響整合材310は、保持メッシュ460の孔を塞ぎ、分離フィルム420に接触している(張り付いている)。
【0154】
例えば、保持メッシュ460の孔のサイズが小さい場合には、容器320内の音響整合材310の上面が毛細管現象によって上昇することで、音響整合材310が保持メッシュ460の孔を塞ぎ、分離フィルム420に接触する。一方で、例えば、保持メッシュ460の孔のサイズが大きい場合には、上述の毛細管現象は生じないが、供給部800から容器320内に音響整合材310が常に供給されるので、音響整合材310が保持メッシュ460の孔を塞ぎ分離フィルム420に接触した状態が維持される。このようにして、保持メッシュ460の孔のサイズによらず、分離フィルム420と、保持メッシュ460と、容器320内の音響整合材310との間に、気泡(空気層)が介在することを抑制することができる。
【0155】
(効果)
変形例1-2では、容器320内の音響整合材310により保持メッシュ460の孔を塞ぐように、保持メッシュ460と、枠体480の下面と、容器320内の音響整合材310の上面とを近接させることができる。これにより、測定工程S300において、走査機構380により、複数の受信素子340を有する受信ユニット300を被検体100に対して相対的に移動させるときに、分離フィルム420、保持メッシュ460および枠体480に起因した音響整合材310の抵抗を低減することができる。音響整合材310の抵抗を低減することで、受信ユニット300をスムーズかつ高速に移動させることができる。その結果、測定工程S300を安定的かつ高速に行うことが可能となる。
【0156】
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上述の第1実施形態の変形例と同様に説明を適宜省略する。
【0157】
(1)新たな知見
発明者等は、上述の第1実施形態に係る装置をさらに検討したところ、以下の新たな知見を得た。
【0158】
図14を参照し、上述の第1実施形態に係る装置において得た新たな知見について説明する。
図14は、参考例に係る音響波測定装置において、整合材袋上に被検部位を載置したときの図である。
【0159】
(i)凹部の上側角部
図14に示すように、参考例の載置部400では、凹部440の上側角部の角度を、例えば、直角としていた。この場合、整合材袋500上に被検部位110を載置したときに、被検部位110の重さおよび整合材袋500内の音響整合材510の量などに依存して、被検部位110が凹部440の上側角部に当接する可能性がある。このため、被検体100が痛みを感じる可能性がある。
【0160】
(ii)整合材袋の端部の立ち上がり
図14に示すように、参考例として、整合材袋500上に被検部位110を載置したときに、被検部位110の重さおよび整合材袋500内の音響整合材510の量などに依存して、整合材袋500内に被検部位110が大きく沈む場合がある。この場合、整合材袋500内の音響整合材510が被検部位110よりも外側に移動し、整合材袋500の端部が立ち上がる。整合材袋500の端部が立ち上がると、整合材袋500の端部が凹部440内のマッチング液410から離れ、これらの間に間隙が生じてしまう。このような間隙が生じていると、音響インピーダンスが被検体100と整合せず、音響波を安定的に測定することが困難となる可能性がある。
【0161】
(iii)音響整合材の溢れ
上述の(ii)に対し、整合材袋500を載置部400の凹部440内に密に敷き詰めることが考えられる。しかしながら、この場合では、載置部400の凹部440と整合材袋500との間の容積が小さくなる。このため、例えば、整合材袋500を凹部440内に載置するとき、または整合材袋500上に被検部位110を載置するときに、マッチング液410が該凹部440から溢れ出す可能性がある。その結果、整合材袋500を用いたにもかかわらず、被検部位110がマッチング液410によって濡れてしまう可能性がある。
【0162】
(iv)整合材袋の汚染および損傷
上述の実施形態のように、整合材袋500は、被検体100(被検者)が代わる毎に取り換えることとなるため、多数の被検者の測定のためには、未使用の整合材袋500を多くストックしておく必要がある。このとき、多数の整合材袋500をそれらの表面が露出された状態で積み重ねて保管しておくと、整合材袋500の表面が汚染されたり損傷したりする可能性がある。その場合、整合材袋500を用いた測定において、整合材袋500の清浄性および剛性(形状安定性)が損なわれてしまうおそれがある。
【0163】
以下の第2実施形態は、発明者等が見出した上述の新たな知見に基づくものである。
【0164】
(2)音響波測定装置
図6~
図7Bを用い、本実施形態の音響波測定装置10について説明する。
図6は、本実施形態に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
図7Aおよび
図7Bは、本実施形態に係る音響波測定装置の一部を示す概略平面図である。
【0165】
図6に示すように、本実施形態では、載置部400の凹部440は、例えば、鉛直下側に向けて狭まるよう構成されている。言い換えれば、載置部400は、例えば、凹部440が鉛直下側に向けて狭まるように、支持面210に対して傾斜した内側面440sを有している。具体的には、枠下部482の内側面440sが支持面210に対して傾斜しており、枠下部482の上側角部の角度が鈍角になっている。これにより、被検体100への負荷を軽減することができる。
【0166】
また、本実施形態では、音響波測定装置10は、例えば、整合材袋500内の音響整合材510が凹部440の全体を覆うように(凹部440の周縁よりも外側まで延在するように)、該整合材袋500を設置可能に構成されている。具体的には、整合材袋500内の音響整合材510は、例えば、凹部440の周縁よりも外側における枠体480の上面まで延在している。固定部材280は、例えば、支持台200上において、枠体480の凹部440の周縁から音響整合材510の延在部分に相当する間隙をあけた位置で、整合材袋500を固定している。このような構成により、整合材袋500の端部が立ち上がったとしても、当該端部を撮像領域から離すことができ、撮像への影響が及ぶことを抑制することができる。
【0167】
また、本実施形態では、載置部400は、例えば、凹部440内から外側へのマッチング液410の溢れを抑制する溢れ抑制部490を有している。具体的には、溢れ抑制部490は、例えば、枠体480の上面から鉛直下側に凹んで設けられた溝として構成されている。溝としての溢れ抑制部490は、例えば、平面視で凹部440の外縁よりも外側で、整合材袋500の下に隠れるように設けられていることが好ましい。また、溝としての溢れ抑制部490は、例えば、平面視で凹部440を囲むように設けられていることが好ましい。このような構成により、溢れたマッチング液410に対する被検部位110の接触を抑制することができる。
【0168】
なお、本実施形態では、枠体480は、枠下部482との間に保持メッシュ460を挟持する挟持部483を有している。挟持部483は、例えば、枠下部482の下側に設けられ、保持メッシュ460を挟持しつつ、枠下部482に固定されている。挟持部483は、例えば、ボルト(不図示)により枠下部482に締結されるようになっている。枠下部482および挟持部483により、保持メッシュ460を支持台200に強固に係止させることができる。
【0169】
また、
図7Aおよび
図7Bに示すように、本実施形態では、音響波測定装置10は、例えば、流動管592と、漏出抑制部594と、開閉部596と、をさらに備えている。
【0170】
流動管592は、例えば、整合材袋500が設置された状態で、整合材袋500と外部の間で音響整合材510が流動可能に構成されている。流動管592は、例えば、整合材袋500の注入口540に挿入されている。
【0171】
漏出抑制部594は、例えば、注入口540の内周と流動管592の外周との間からの音響整合材510の漏出を抑制するよう構成されている。漏出抑制部594は、例えば、注入口540を流動管592に対して締め付ける締付部として構成されている。
【0172】
開閉部596は、例えば、流動管592を開閉可能に構成されている。開閉部596を開閉することにより、整合材袋500内の音響整合材510の量を調整することができる。
【0173】
なお、
図7Aおよび
図7Bに示すように、流動管592、漏出抑制部594および開閉部596は、音響波測定装置10を構成する部材としてだけでなく、上述した整合材袋500とともに使用される部材としても考えられる。したがって、整合材袋500、流動管592、漏出抑制部594および開閉部596により、「整合材袋セット50」が構成されていると考えてもよい。
【0174】
また、本実施形態では、固定部材280が整合材袋500を強固に固定するよう構成されていることが好ましい。
【0175】
具体的には、
図7Aに示すように、固定部材280は、例えば、整合材袋500の一辺の全体に亘って、整合材袋500を支持台200に対して固定可能に構成されていることが好ましい。
【0176】
或いは、
図7Bに示すように、固定部材280は、例えば、整合材袋500の一辺の複数箇所で、整合材袋500を支持台200に対して固定するように、複数設けられていることが好ましい。
【0177】
(3)整合材袋
図8Aを参照し、本実施形態に係る整合材袋500について説明する。
図8Aは、整合材袋を示す概略断面図である。
【0178】
図8Aに示すように、本実施形態では、使用前の整合材袋500は、例えば、保護フィルム580を有している。保護フィルム580は、例えば、袋本体520の外周を覆い、該袋本体520から着脱可能に袋本体520を保護している。なお、保護フィルム580は、例えば、袋本体520の表裏両面に設けられていることが好ましい。このような構成により、使用前の袋本体520を安定的に保護することができる。
【0179】
また、保護フィルム580は、例えば、該保護フィルム580を剥がすときに把持する把持代582を有している。把持代582は、例えば、保護フィルム580の周縁から外側に延在している。なお、把持代582は、例えば、保護フィルム580の本体と一体として同じ材質により構成されていてもよいし、或いは、保護フィルム580の本体と異なる材質により構成されていてもよい。このような構成により、保護フィルム580を容易に剥がすことができる。
【0180】
(4)音響波測定方法
図8Bおよび
図9をさらに参照し、本実施形態に係る音響波測定方法について説明する。
図8Bは、保護フィルムを剥がすときの整合材袋を示す概略断面図である。
図9は、整合材袋を載置部の凹部内に載置するときを示す概略図である。
【0181】
(S100:準備工程)
音響波測定装置10の準備が整ったら、整合材袋500を準備する。具体的には、
図8Bに示すように、把持代582を把持しながら保護フィルム580を引っ張ることで、保護フィルム580を袋本体520から剥がす。
【0182】
次に、
図7Aに示すように、固定部材280により整合材袋500を支持台200に対して固定し、整合材袋500が皺にならないよう、載置部400の凹部440内に整合材袋500を引っ張りながら載置する。整合材袋500を載置したら、整合材袋500の注入口540内に流動管592を挿入し、漏出抑制部594により注入口540を流動管592(の外周面)に対して締め付ける。なお、整合材袋500の注入口540内に流動管592を挿入および固定してから、整合材袋500を載置部400の凹部440内に載置してもよい。
【0183】
次に、開閉部596を開き、整合材袋500の収容空間内に注入口540を介して音響整合材510を注入する。このとき、音響整合材510の注入により、袋本体520の下面は緊張状態となり皺は発生しないが、袋本体520の上面は緊張状態でないため皺が発生する。そこで、袋本体520の上面の皺が消失するように、整合材袋500内に音響整合材510を満たす。その状態で、開閉部596を閉じる。
【0184】
次に、整合材袋500の一辺を固定部材280により固定した状態で、該整合材袋500の一辺を挟んで載置部400の凹部440と反対側に、整合材袋500を折り返す。整合材袋500を折り返したら、載置部400の凹部440内に少量のマッチング液410を注入する。このとき、折り返しの基準とした整合材袋500の一辺とマッチング液410とが平行となるように、凹部440内にマッチング液410を注入することが好ましい。
【0185】
次に、
図9に示すように、折り返しの基準とした整合材袋500の一辺と反対側の辺を把持し、整合材袋500を引っ張って持ち上げる。整合材袋500を折り返した側における凹部440の端から整合材袋500を徐々に下し、整合材袋500と分離フィルム420との間に気泡が入らないように、整合材袋500を凹部440内に載置する。
【0186】
このとき、整合材袋500の袋本体520に皺が生じてしまったら、袋本体520の固定代522を引っ張って、袋本体520の上面および下面から皺を消失させる。
【0187】
袋本体520を整えたら、折り返しの基準とした整合材袋500の一辺と反対側の一辺において、袋本体520の固定代522を弛ませて、固定部材280により該固定代522を支持台200に固定する。袋本体520の固定代522を弛ませることで、整合材袋500上に被検部位110を載置したときの整合材袋500の変位を吸収させることができる。
【0188】
(S200:載置工程)
次に、被検部位110を整合材袋500上に載置する。
【0189】
このとき、撮像部690により取得した画像を確認しながら、開閉部596を開閉することで、整合材袋500内の音響整合材510の量を調整する。これにより、被検部位110を受信ユニット300に近づけることができる。すなわち、受信ユニット300の視野範囲(Field of view,FOV)内に被検部位110を配置することができ、高画質な画像を得ることが可能となる。また、整合材袋500内に被検部位110を沈ませることで、被検部位110の動き(体動)を抑制することができる。さらには、整合材袋500の端部の立ち上がりを抑制することができる。
【0190】
載置工程S200以降の測定工程S300などについては、上述の第1実施形態と同様である。
【0191】
(5)本実施形態により得られる効果
(a)本実施形態では、載置部400の凹部440は、鉛直下側に向けて狭まるよう構成されている。これにより、凹部440の上側角部を支持面210に対して斜めに形成することができる。このような構成により、たとえ装置状況に応じて凹部440の上側角部に被検部位110が当接したとしても、被検体100が感じる痛みを軽減することができる。その結果、被検体100への負荷を軽減することができる。
【0192】
(b)本実施形態では、音響波測定装置10は、整合材袋500内の音響整合材510が凹部440の全体を覆うように、該整合材袋500を設置可能に構成されている。たとえ整合材袋500内に被検部位110が大きく沈み、整合材袋500の端部が立ち上がったとしても、当該端部を撮像領域から離すことができ、撮像への影響が及ぶことを抑制することができる。つまり、整合材袋500内の音響整合材510を、凹部440の端までマッチング液410と密に接した状態で維持することができる。その結果、広い範囲に亘って被検体100と音響インピーダンスを整合させ、音響波を安定的に測定することが可能となる。
【0193】
(c)本実施形態では、載置部400は、凹部440内から外側へのマッチング液410の溢れを抑制する溢れ抑制部490を有している。たとえ凹部440内に整合材袋500が密に載置され、該凹部440内から外側へマッチング液410が溢れそうになっても、溢れたマッチング液410を溢れ抑制部490内に留め、更なるマッチング液410の広がりを抑止することができる。これにより、溢れたマッチング液410に対する被検部位110の接触を抑制することができる。
【0194】
(d)本実施形態では、注入口540は、袋本体520の外縁から内側に向けて連通し、整合材袋500の収容空間内に音響整合材510を注入可能に構成されている。これにより、注入口540を介して音響整合材510を安定的に注入することができる。
【0195】
また、流動管592は、整合材袋500が設置された状態で、整合材袋500と外部の間で音響整合材510が流動可能に構成されている。開閉部596は、流動管592を開閉可能に構成されている。開閉部596を開閉することにより、整合材袋500内の音響整合材510の量を調整することができる。
【0196】
上述の構成を用いることにより、例えば、整合材袋500上に被検部位110を載置したときに、整合材袋500の端部が立ち上がったとしても、整合材袋500から音響整合材510を流出させることができ、整合材袋500内の音響整合材510の量を減少させることができる。その結果、整合材袋500の端部が立ち上がったとしても、当該端部を撮像領域から離すことができ、撮像への影響が及ぶことを抑制することができる。
【0197】
(e)本実施形態では、漏出抑制部594は、注入口540の内周と流動管592の外周との間からの音響整合材510の漏出を抑制するよう構成されている。これにより、音響整合材510の漏出を抑制しつつ、注入口540を介した音響整合材510の流出入を安定的に行うことができる。また、被検部位110が音響整合材510によって濡れることを抑制することができる。
【0198】
(f)本実施形態では、整合材袋500は、保護フィルム580を有している。保護フィルム580は、袋本体520の外周を覆い、該袋本体520から着脱可能に袋本体520を保護している。これにより、使用前の袋本体520を安定的に保護することができる。例えば、整合材袋500の表面における汚染および損傷を抑制することができる。その結果、整合材袋500の清浄性および剛性(形状安定性)を安定的に確保することが可能となる。
【0199】
(6)第2実施形態の変形例
<変形例2-1>
図10を参照し、本実施形態の変形例2-1の音響波測定装置10について説明する。
図10は、本実施形態の変形例2-1に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【0200】
変形例2-1では、枠体480の構成が、上述の実施形態と異なっている。
【0201】
図10に示すように、本変形例では、上述の実施形態と同様に、載置部400の凹部440は、例えば、鉛直下側に向けて狭まるよう構成されている。
【0202】
本変形例では、枠体480の枠上部484は、例えば、凹部440の上端から下端に亘って、支持面210に対して傾斜した内側面440sの形状に倣って設けられている。また、枠上部484は、例えば、枠下部482との間に分離フィルム420を挟持している。
【0203】
本変形例によれば、枠下部482と枠上部484との間における分離フィルム420の挟持範囲を広くすることができる。これにより、枠体480により分離フィルム420を安定的に保持することができる。また、繰り返し使用可能な枠体480を用い、枠下部482と枠上部484とにより分離フィルム420を挟持することで、分離フィルム420の立体形状を容易に形成することができる。すなわち、手作業による分離フィルム420の成形工程を省略することが可能となる。
【0204】
<変形例2-2>
図11を参照し、本実施形態の変形例2-2の音響波測定装置10について説明する。
図11は、本実施形態の変形例2-2に係る音響波測定装置の一部を示す概略拡大図である。
【0205】
変形例2-2では、溢れ抑制部490の構成が、上述の実施形態と異なっている。
【0206】
図11に示すように、本変形例では、溢れ抑制部490は、例えば、凹部440内から外側へのマッチング液410の広がりを規制するバンク(堤防、土手)として構成されている。具体的には、バンクとしての溢れ抑制部490は、例えば、枠体480の上面から、凹部440の中央側の斜め上方向に向けて突出している。また、溢れ抑制部490は、例えば、平面視で凹部440を囲むように設けられている。
【0207】
本変形例によっても、溢れたマッチング液410に対する被検部位110の接触を抑制することができる。
【0208】
<変形例2-3>
図12を参照し、本実施形態の変形例2-3の音響波測定装置10について説明する。
図12は、本実施形態の変形例2-3に係る音響波測定装置の一部を示す概略断面図である。
【0209】
変形例2-3では、支持台200の構成が、上述の実施形態と異なっている。
【0210】
図12に示すように、本変形例では、支持台200は、例えば、支持面210よりも鉛直下側に流動管592を配置可能に構成されている。具体的には、支持台200は、例えば、支持面210から鉛直下側に凹み、流動管592を収容する溝290を有している。
【0211】
本変形例によれば、整合材袋500が凹部440内に載置された状態であっても、流動管592が支持面210上に突出することを抑制することができる。これにより、被検部位110が流動管592上に乗り上げることを抑制し、流動管592の閉塞を抑制することができる。その結果、整合材袋500と外部の間で音響整合材510を安定的に流動させることが可能となる。
【0212】
<変形例2-4>
図13を参照し、本実施形態の変形例2-4の音響波測定装置10について説明する。
図13は、本実施形態の変形例2-4に係る音響波測定装置の一部を示す概略断面図である。
【0213】
変形例2-4では、分離フィルム420が設けられていない点が、上述の実施形態と異なっている。
【0214】
図13に示すように、本変形例では、支持台200の開口220が鉛直下側に向けて狭まるよう構成されている。音響波測定装置10は、分離フィルム420を設置せずに、開口220全体を覆うように、整合材袋500もしくは整合ゲルを、保持メッシュ460の上に直接設置可能に構成されている。従って、分離フィルム420のみならず、分離フィルム420を押さえる枠上部484も不要となる。
【0215】
本変形例によれば、整合材袋500もしくは整合ゲルが分離フィルム420の役割を兼ねることができる。すなわち、分離フィルム420を設けなくても、被検部位110側へ音響整合材310を浸透させず、且つ、開口220よりも外側への音響整合材310の溢れを抑制することができる。また、分離フィルム420に起因した画質の劣化を抑制することができる。
【0216】
なお、本変形例では、整合材袋500を用いることが好ましい。整合ゲルを用いた場合には、保持メッシュ460の編み目に整合ゲルが入り込むおそれがあるが、整合材袋500はその危険性が無いので、整合材袋500を用いることが好ましい。
【0217】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0218】
上述の実施形態では、音響波測定装置10がPAT装置として構成されている場合について説明したが、音響波測定装置10は、音響波を測定可能であれば、PAT装置以外の装置として構成されていてもよい。例えば、音響波測定装置10は、被検体100の所定の被検部位110に対して音響波(超音波)を照射し、照射された部分から反射または散乱された音響波(反射波)を受信する超音波エコー装置として構成されていてもよい。
【0219】
上述の実施形態では、音響波測定装置10が、容器320内に収容された音響整合材310から被検部位110までの間に、分離フィルム420と整合材袋500とをこの順で設置可能に構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。音響波測定装置10は、容器320内に収容された音響整合材310から被検部位110までの間に、分離フィルム420と整合ゲルとをこの順で設置可能に構成されていてもよい。整合ゲルは、例えば、流動性が制限され、音響調整作用を持つものである。なお、「流動性が制限されている」とは、例えば、被検部位110への追従性を有しつつ、結合状態を維持していることをいう。また、「音響調整作用を持つ」とは、例えば、被検体100と整合する音響インピーダンスを有することをいう。具体的な整合ゲルとしては、例えば、ナノコンポジットゲルなどが挙げられる。この場合、後述するように、載置部400の凹部440内におけるマッチング液410は設けなくてもよい。このような整合ゲルを用いても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0220】
なお、音響波測定装置10は、容器320内に収容された音響整合材310から被検部位110までの間に、分離フィルム420と、整合材袋500および整合ゲルを組み合わせた整合ブロックと、をこの順で設置可能に構成されていてもよい。
【0221】
上述の実施形態では、素子保持部360が半球状に構成されている場合について説明したが、素子保持部360は、半球状以外の形状で構成されていてもよい。素子保持部360は、例えば、平面状であってもよい。
【0222】
上述の実施形態では、光出射口660が素子保持部360の底部に設けられている場合について説明したが、光出射口660は、光源620から伝送された光を被検部位110に向けて出射することができれば、素子保持部360の底部以外の位置に設けられていてもよい。光出射口660は、例えば、容器320の側部に設けられていてもよい。
【0223】
上述の実施形態では、走査機構380が、支持台200上に載置された被検体100に対して、受信素子340を相対的に走査させるよう構成されている場合について説明したが、被検体100と受信素子340とを相対的に移動させることができれば、この場合に限られない。走査機構380は、例えば、固定された受信素子340に対して被検体100(すなわち支持台200)を走査させるよう構成されていてもよい。または、走査機構380は、例えば、受信素子340と被検体100との双方を相対的に走査するよう構成されていてもよい。
【0224】
上述の実施形態では、走査機構380が、容器320と受信素子340とを有する受信ユニット300を一体として走査させるよう構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。走査機構380は、例えば、固定された容器320内で、複数の受信素子340を有する素子保持部360を走査させるよう構成されていてもよい。
【0225】
上述の実施形態では、分離フィルム420と整合材袋500との間にマッチング液410を設ける場合について説明したが、整合材袋500の代わりに、含水率の高いナノコンポジットゲル等の整合ゲルを用いた場合には、整合ゲル自体の表面の水分により別途マッチング液410を用意しなくても、充分な信号が得られる。従って、このようなナノコンポジットゲル等を用いた場合には、凹部440を設けてマッチング液410を用いることは、必ずしも必須ではない。
【0226】
上述の実施形態では、載置部400において、分離フィルム420自体が凹むように成型されている場合について説明したが、分離フィルム420は、載置部400の凹部440の少なくとも底部を構成していれば、この場合に限られない。載置部400は、例えば、鉛直下側に向けて凹む枠体480と、枠体480の下面に沿って設けられた平坦な分離フィルム420と、を有していてもよい。この場合によれば、分離フィルム420が薄い場合であっても、載置部400の凹部440を容易に形成することができる。
【0227】
上述の実施形態では、整合材袋500の注入口540がフィルムにより構成されている場合について説明したが、注入口540は、スパウトまたはコネクタにより構成されていてもよい。ただし、上述の実施形態のように注入口540がフィルムにより構成されていたほうが、被検体100としての被検者が痛みを感じることがないため、好ましい。
【0228】
上述の実施形態では、整合材袋500を固定する固定部材280がバインダとして構成されている場合について説明したが、この場合に限られない。固定部材280は、支持台200から分離された別部材であってもよい。具体的には、固定部材280は、例えば、粘着テープであってもよい。または、固定部材280は、例えば、磁力により挟み込むマグネットとして構成されていてもよい。
【0229】
上述の実施形態では、開閉部596が流動管592を開閉可能に構成されている場合について説明したが、開閉部596は、注入口540を開閉するように構成されていてもよい。
【0230】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0231】
(付記1)
被検体を支持する支持面と、前記被検体の所定の被検部位を測定するために前記支持面に開設された開口と、を有する支持台と、
前記支持面よりも鉛直下側に設けられ、液状またはゲル状の音響整合材を収容可能に構成される容器と、
前記支持面よりも鉛直下側に設けられ、前記被検部位から発生する音響波を受信する受信素子と、
を備え、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、液状またはゲル状の音響整合材を収容した整合材袋もしくは流動性が制限され音響調整作用を持つ整合ゲルと、当該整合材袋もしくは当該整合ゲルを載置する載置部と、を設置可能に構成されている
音響波測定装置。
【0232】
(付記2)
前記載置部として、前記音響整合材を浸透させない分離フィルムを設置可能とし、前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、当該分離フィルムと、前記整合材袋もしくは前記整合ゲルと、をこの順で設置可能に構成されている
付記1に記載の音響波測定装置。
【0233】
(付記3)
前記載置部は、前記支持面の鉛直下側に向けて凹む凹部を有し、
前記分離フィルムは、前記凹部の少なくとも底部を構成する
付記2に記載の音響波測定装置。
【0234】
(付記4)
前記凹部は、鉛直下側に向けて狭まるよう構成されている
付記3に記載の音響波測定装置。
【0235】
(付記5)
前記整合材袋内の前記音響整合材もしくは前記整合ゲルが前記凹部の全体を覆うように、該整合材袋もしくは該整合ゲルを設置可能に構成されている
付記3又は付記4に記載の音響波測定装置。
【0236】
(付記6)
前記載置部は、マッチング液を前記凹部内に収容可能に構成されている
付記3から付記5のいずれか1つに記載の音響波測定装置。
【0237】
(付記7)
前記載置部は、前記凹部内から外側への前記マッチング液の溢れを抑制する溢れ抑制部を有する
付記6に記載の音響波測定装置。
【0238】
(付記8)
前記載置部として、前記整合材袋もしくは前記整合ゲルと前記被検部位とを保持する保持メッシュを設置可能とし、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、当該保持メッシュと前記整合材袋もしくは前記整合ゲルと、をこの順で設置可能に構成され、
前記容器内の前記音響整合材により前記保持メッシュの孔を塞ぐように、前記保持メッシュと、前記容器内の前記音響整合材の上面とが近接可能に構成されている
付記1から付記7のいずれか1つに記載の音響波測定装置。
【0239】
(付記9)
前記開口は、鉛直下側に向けて狭まるよう構成され、
前記開口全体を覆うように、前記整合材袋もしくは前記整合ゲルを設置可能に構成されている
付記1に記載の音響波測定装置。
【0240】
(付記10)
前記整合材袋が設置された状態で、前記整合材袋と外部の間で前記音響整合材が流動可能に構成された流動管と、
前記流動管を開閉可能に構成された開閉部と、
を備える
付記1から付記9のいずれか1つに記載の音響波測定装置。
【0241】
(付記11)
前記支持台は、前記支持面よりも鉛直下側に前記流動管を配置可能に構成されている
付記10に記載の音響波測定装置。
【0242】
(付記12)
所定の固定部材により前記整合材袋もしくは前記整合ゲルを前記支持台に対して固定可能に構成されている
付記1から付記11のいずれか1つに記載の音響波測定装置。
【0243】
(付記13)
前記支持面上に前記被検体を載置した状態で、前記整合材袋の上面の少なくとも一部が前記支持面と同一高さに位置するか、或いは、前記支持面よりも鉛直上側に位置するように、前記整合材袋を設置可能に構成されている
付記1から付記12のいずれか1つに記載の音響波測定装置。
【0244】
(付記14)
前記支持面上に前記被検体を載置しない状態で、前記整合材袋の上面の少なくとも一部が前記支持面と同一高さに位置するか、或いは、前記支持面よりも鉛直上側に位置するように、前記整合材袋を設置可能に構成されている
付記1から付記13のいずれか1つに記載の音響波測定装置。
【0245】
(付記15)
付記1から付記14のいずれか1つに記載の音響波測定装置に用いられる
整合材袋。
【0246】
(付記16)
付記1から付記14のいずれか1つに記載の音響波測定装置に用いられる
整合ゲル。
【0247】
(付記17)
付記2から付記7のいずれか1つに記載の音響波測定装置に用いられる
分離フィルム。
【0248】
(付記18)
支持面、および被検体の所定の被検部位を測定するために前記支持面に開設された開口を有する支持台と、前記支持面よりも鉛直下側に設けられ液状またはゲル状の音響整合材を収容した容器と、前記支持面よりも鉛直下側に設けられた受信素子と、を有する音響波測定装置を準備する工程と、
前記支持台の前記支持面上に被検体を載置する工程と、
前記被検部位から発生する音響波を前記受信素子により受信する工程と、
を備え、
前記音響波測定装置を準備する工程では、
前記容器内に収容された前記音響整合材から前記被検部位までの間に、液状またはゲル状の音響整合材を収容した整合材袋もしくは流動性が制限され音響調整作用を持つ整合ゲルと、当該整合材袋もしくは当該整合ゲルを載置する載置部と、を設置する
音響波測定方法。
【符号の説明】
【0249】
10 音響波測定装置
100 被検体
110 被検部位
200 支持台
300 受信ユニット
310 音響整合材
320 容器
340 受信素子
400 載置部
410 音響整合材
420 分離フィルム
500 整合材袋
510 音響整合材