(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】帯電防止性ターポリン、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20250417BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20250417BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20250417BHJP
D06N 7/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
B32B27/18 J
B32B27/12
B32B27/28 101
D06N7/00
(21)【出願番号】P 2023204538
(22)【出願日】2023-12-04
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093625(JP,A)
【文献】特開2022-025308(JP,A)
【文献】特開2001-191433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
D06N 1/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリン、または「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンであって、前記エチレン系共重合体樹脂裏面導電層に複合導電体を含み、この複合導電体が、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなり、この導電性液体化合物の一部または全部が前記導電性粉体に吸着担持されたもので、前記導電性粉体が、アセチレンブラック単体、またはアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用であり、前記導電性液体化合物が、カチオン及びアニオンのイオン対であることを特徴とする帯電防止性ターポリン。
【請求項2】
前記カチオンが、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、四級アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、から選ばれた1種、かつ前記アニオンが化学式、BF
4
-、PF
6
-、TaF
6
-、NbF
6
-、SiF
6
-、AlF
4
-、AlCl
4
-、NO
2
-、NO
3
-、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、CN
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NbF
6
-、TaF
6
-、CF
3SO
2
-、CF
3SO
4
-、(CF
3SO
2)
2N
-、p-CH
3PhSO
3
-、CH
3CO
2
-、HSO
4
-、HSO
3
-、CH
3SO
3
-、CH
3SO
4
-、CF
3SO
3
-、(CF
3SO
2)
3C
-、C
3F
7CO
2
-、C
4F
9SO
3
-、(C
2F
5SO
2)
2N
-、(CF
3SO
2)(CF
3CO)N
-、(CN)
2N
-、から選ばれた1種である請求項1記載の帯電防止性ターポリン。
【請求項3】
前記エチレン系共重合体樹脂表面層、エチレン系共重合体樹脂中間層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層が、エチレン系共重合体樹脂を主体に構成され、このエチレン系共重合体樹脂が、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体樹脂、から選ばれた1種以上で、エチレン単位の含有量が65~85質量%である請求項1または2に記載の帯電防止性ターポリン。
【請求項4】
前記目開織物の一部に、導電性繊維糸条を含む
請求項1に記載の帯電防止性ターポリン。
【請求項5】
「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリン、または「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンの製造方法であって、
前記エチレン系共重合体樹脂裏面導電層が、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなる複合導電体を含み、エチレン系共重合体樹脂裏面導電層の製造時、または製造の準備段階に、前記導電性液体化合物の一部または全部を前記導電性粉体に吸着担持させて前記複合導電体に加工する工程、
この複合導電体を含むエチレン系共重合体樹脂層フィルムを成型し、前記目開織物、または前記エチレン系共重合体樹脂中間層に積層する工程を含み、
前記導電性粉体が、アセチレンブラック単体、またはアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用であり、前記導電性液体化合物が、カチオン及びアニオンのイオン対であることを特徴とする帯電防止性ターポリンの製造方法。
【請求項6】
前記カチオンが、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、四級アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、から選ばれた1種、かつ前記アニオンが化学式、BF
4
-、PF
6
-、TaF
6
-、NbF
6
-、SiF
6
-、AlF
4
-、AlCl
4
-、NO
2
-、NO
3
-、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、CN
-、AsF
6
-、SbF
6
-、NbF
6
-、TaF
6
-、CF
3SO
2
-、CF
3SO
4
-、(CF
3SO
2)
2N
-、p-CH
3PhSO
3
-、CH
3CO
2
-、HSO
4
-、HSO
3
-、CH
3SO
3
-、CH
3SO
4
-、CF
3SO
3
-、(CF
3SO
2)
3C
-、C
3F
7CO
2
-、C
4F
9SO
3
-、(C
2F
5SO
2)
2N
-、(CF
3SO
2)(CF
3CO)N
-、(CN)
2N
-、から選ばれた1種である請求項5に記載の帯電防止性ターポリンの製造方法。
【請求項7】
前記目開織物の一部に、導電性繊維糸条を含む請求項5または6に記載の帯電防止性ターポリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルコンテナバッグの製造に用いるターポリン原反と、その製造方法に関し、特に帯電防止性、さらには防爆性を有するターポリンと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルコンテナバッグは円筒型、四角柱型があり、天井部は充填口、底床部は排出口を有し、充填口と排出口の密閉/解放が自在な大型容器で、空のフレキシブルコンテナバッグは折り畳んで減容し、その取り扱いも容易である。このフレキシブルコンテナバッグは大別して、小麦粉、米、麦、大豆、小豆、胡麻、砂糖、塩などの食品原料の貯蔵、運搬用と、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂ペレット、塩化ビニル樹脂粒、炭酸カルシウム粉末、などの工業材料の貯蔵、運搬用がある。これらのフレキシブルコンテナバッグに用いるターポリン原反には、目開織物を芯材として、その両面にエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂層を積層した柔軟シートが使用されている。エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂製のフレキシブルコンテナバッグが使用される理由は、その軽量性(軟質塩化ビニル樹脂製より2~3割軽量)、化学的安定性(充填物の酸性、アルカリ性による変質を受け難い)、安全性(充填物を安定剤、可塑剤などで汚染しない)、高周波癒着性、印刷性が挙げられる。
【0003】
しかしながら、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂製のフレキシブルコンテナは、摩擦で静電気を帯び易すく、特にポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂ペレットや米の排出時(フレキシブルコンテナバッグ底部の開口による自由落下)には、樹脂ペレットとフレキシブルコンテナバッグ内壁との摩擦によって帯電し、とフレキシブルコンテナバッグ内壁に樹脂ペレットや米粒が静電付着して、その除去作業を要する手間があった。周囲の環境によっては、静電気火災の原因となり、さらに小麦粉、炭酸カルシウムなどの粉体排出時の粉煙が、粉塵爆発を誘発する危険があるため、帯電防止性能を付帯する防爆性フレキシブルコンテナバッグが必須となっている。これらは導電性カーボンブラックが配合されたポリオレフィン系樹脂層を含むフレキシブルコンテナ(特許文献1)、不飽和エステル単位を少なくとも10質量%含む樹脂分100質量部に対し、高分子型永久帯電防止剤を15~50質量部含む樹脂層からなるターポリン(特許文献2)などが知られている。しかしながら特許文献1の導電性カーボンブラックの使用では、高周波溶着時に通電スパーク(発火)を生じてターポリンに焦げた穴開きを生じる危険事故の可能性があり、特許文献2の高分子型永久帯電防止剤(熱可塑性樹脂)の15~50質量部の配合は、ポリオレフィン系樹脂の物性に悪影響し、高周波溶着性にも悪影響するものであった。従って十分な帯電防止性を有しながら安全な高周波溶着性を有し、さらに防爆性を有するフレキシブルコンテナバッグ(JIS C61340 4-4)を製造するための、帯電防止性に優れたターポリン原反はまだ存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-191433号公報
【文献】特開2017-019145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、帯電防止性に優れ、さらには防爆性を有するフレキシブルコンテナバッグ用ターポリンと、その製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、エチレン系共重合体樹脂製のターポリンとして、その裏面層に導電性粉体、及び導電性液体化合物からなる複合導電体を含み、この導電性液体化合物の一部または全部が導電性粉体に吸着担持されたものとすることで、得られたターポリンが帯電防止性に優れ、さらには防爆性を有することを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明の帯電防止性ターポリンは、「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリン、または「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンであって、前記エチレン系共重合体樹脂裏面導電層に複合導電体を含み、この複合導電体が、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなり、この導電性液体化合物の一部または全部が前記導電性粉体に吸着担持されたもので、前記導電性粉体が、アセチレンブラック単体、またはアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用であり、前記導電性液体化合物が、カチオン及びアニオンのイオン対であることが好ましい。導電性粉体に導電性液体化合物を吸着担持させることで、導電性粉体粒子間をより濃密に密着させた複合導電体とすることができ、「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンの場合、導電性粉体の含有量はエチレン系共重合体樹脂導電層を構成するエチレン系共重合体樹脂100質量部に対して2.5~10質量部の配合量、防爆レベルでは11~20質量部の配合量であり、「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンの場合、導電性粉体の含有量は導電層の厚さが半分近く薄くなることでエチレン系共重合体樹脂導電層を構成するエチレン系共重合体樹脂100質量部に対して5~20質量部の配合量、防爆レベルでは21~30質量部の配合量とする。導電性粉体(アセチレンブラック、オイルファーネス系カーボンブラック)の微細粒子によって、帯電防止性を発現し、スパーク発火を起しにくい安全な高周波溶着を可能とするターポリンを得ることができる。これらのターポリンを原反として、帯電防止性に優れたフレキシブルコンテナバッグ、さらには防爆性を有するフレキシブルコンテナバッグの提供を可能とする。
【0008】
本発明の帯電防止性ターポリンは、前記カチオンが、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、四級アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、から選ばれた1種、かつ前記アニオンが化学式、BF4
-、PF6
-、TaF6
-、NbF6
-、SiF6
-、AlF4
-、AlCl4
-、NO2
-、NO3
-、F-、Cl-、Br-、I-、CN-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、CF3SO2
-、CF3SO4
-、(CF3SO2)2N-、p-CH3PhSO3
-、CH3CO2
-、HSO4
-、HSO3
-、CH3SO3
-、CH3SO4
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、C3F7CO2
-、C4F9SO3
-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(CN)2N-、から選ばれた1種であることが好ましい。導電性液体化合物の含有量は導電性粉体の配合量に対して20~100質量%の配合量である。これによって、導電性粉体ストラクチャー内に導電性液体化合物が侵入し、滑剤による帯電防止性のロスを抑止することができ、このターポリンを用いることで、安全に高周波溶着してなる帯電防止性フレキシブルコンテナバッグ、さらには防爆性のフレキシブルコンテナバッグを得ることを可能とする。
【0009】
本発明の帯電防止性ターポリンは、前記エチレン系共重合体樹脂表面層、エチレン系共重合体樹脂中間層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層が、エチレン系共重合体樹脂を主体に構成され、このエチレン系共重合体樹脂が、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体樹脂、から選ばれた1種以上で、エチレン単位の含有量が65~85質量%であることが好ましい。極性成分を15~35質量%有することによって、高周波溶着を可能とする。
【0010】
本発明の帯電防止性ターポリンは、前記目開織物の一部に、導電性繊維糸条を含むことが好ましい。これによって帯電防止性、及び防爆性を向上させることができる。
【0011】
本発明の帯電防止性ターポリンの製造方法は、「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリン、または「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンの製造方法であって、
前記エチレン系共重合体樹脂裏面導電層が、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなる複合導電体を含み、エチレン系共重合体樹脂裏面導電層の製造時、または製造の準備段階に、前記導電性液体化合物の一部または全部を前記導電性粉体に吸着担持させて前記複合導電体に加工する工程、
この複合導電体を含むエチレン系共重合体樹脂層フィルムを成型し、前記目開織物、または前記エチレン系共重合体樹脂中間層に積層する工程を含み、
前記導電性粉体が、アセチレンブラック単体、またはアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用であり、前記導電性液体化合物が、カチオン及びアニオンのイオン対であることが好ましい。
【0012】
本発明の帯電防止性ターポリンの製造方法は、前記カチオンが、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、四級アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、から選ばれた1種、かつ前記アニオンが化学式、BF4
-、PF6
-、TaF6
-、NbF6
-、SiF6
-、AlF4
-、AlCl4
-、NO2
-、NO3
-、F-、Cl-、Br-、I-、CN-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、CF3SO2
-、CF3SO4
-、(CF3SO2)2N-、p-CH3PhSO3
-、CH3CO2
-、HSO4
-、HSO3
-、CH3SO3
-、CH3SO4
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、C3F7CO2
-、C4F9SO3
-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(CN)2N-、から選ばれた1種であることが好ましい。
【0013】
本発明の帯電防止性ターポリンの製造方法は、前記目開織物の一部に、導電性繊維糸条を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、帯電防止性、さらには防爆性(JIS C61340 4-4)を有するターポリンと、その製造方法の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の帯電防止性ターポリンの断面図の一例
【
図2】本発明の帯電防止性ターポリンの断面図の一例
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の帯電防止性ターポリンは、「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリン、または「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンであって、エチレン系共重合体樹脂裏面導電層に複合導電体を含み、この複合導電体が、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなり、この導電性液体化合物の一部または全部が導電性粉体に吸着担持された態様、目開織物の一部に、導電性繊維糸条を含む態様であり、これらの製造方法には、エチレン系共重合体樹脂裏面導電層が、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなる複合導電体を含み、エチレン系共重合体樹脂裏面導電層の製造時、または製造の準備段階に、導電性液体化合物の一部または全部を導電性粉体に吸着担持させて複合導電体に加工する工程、この複合導電体を含むエチレン系共重合体樹脂層フィルムを成型し、目開織物、またはエチレン系共重合体樹脂中間層に積層する工程を必須とする。
【0017】
本発明の帯電防止性ターポリンに用いる目開織物は、目開織物が経糸条群、及び緯糸条群により製織された空隙率が10~25%、目付が125~325g/m2のもので、経緯双方の糸条群各々に、マルチフィラメント糸条を15~30本/inchの織り密度で配列された平織、綾織、繻子織、模紗織、バスケット織などが挙げられる。特に平織物が得られるターポリンの経・緯方向での物性バランスに優れ好ましいが、複数のターポリンパーツを立体縫製してなるフレキシブルコンテナバッグ全体としては、内圧荷重に対して均等なストレス分散効果が得らえる三軸織物、四軸織物なども使用できる。マルチフィラメント糸条は、繊度555~1665dtexの撚糸(撚数100~300回/m)で、フィラメントは繊度2.2~11dtex、特に2.2~5.5dtex、フィラメント本数は、50~757本、特に100~300本が好ましい。ここで繊度555dtexの撚糸とは、277dtex撚糸2本の合撚糸であってもよく、さらに繊度1665dtexの撚糸とは、277dtex撚糸3本の合撚糸であってもよい。また、マルチフィラメント糸条は、タスラン糸条、捲縮糸条、などの嵩高糸条を使用することができ、これらは非嵩高のマルチフィラメント糸条と、糸条本数比率、1(嵩高):1(非嵩高)~1(嵩高):5(非嵩高)の範囲で併用し、部分嵩高織物として使用すると、エチレン系共重合体樹脂層内に嵩高部分のフィラメントが食い込むアンカー効果によって、目開織物とエチレン系共重合体樹脂層との接着力が増し、その効果でフレキシブルコンテナバッグ接合部の耐クリープ性が向上して品質が安定する。あるいはマルチフィラメント糸条と嵩高糸条の合撚糸であっても同様のアンカー効果を得ることができるが、合撚によりその効果が不十分となることがある。タスラン糸条は、高圧乱気流内でマルチフィラメントを開繊してループ状の毛羽を発生させる方法で、嵩高度合い(糸条径の膨れ状態1.2~1.6倍)はオーバーフィード率、仮撚数、乾熱セット温度(繊維の軟化温度以下の近傍)などで種々調整でき、鞘部を嵩高ループ状とした芯鞘型タスラン糸条なども使用できる。捲縮糸条は、仮撚マルチフィラメント糸条を乾熱セットした後、セットした撚りを強制的に解撚してカールが絡み合った状態に嵩高加工したもので、捲縮度合い(糸条径の膨れ状態1.2~1.6倍)は、仮撚数、乾熱セット温度(繊維の軟化温度以下の近傍)、解撚率、オーバーフィード率、糸の引き取り速度、撚数、弛緩熱処理温度、などの組み合わせによって種々コントロールすることができる。
【0018】
目開織物を構成する糸条の繊維種は、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレートなど)繊維、ナイロン繊維(6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロンなど)、これらのリサイクル繊維を解重合して得たモノマーを再重合して得た再生繊維などが使用でき、必要に応じて2種類の繊維種を使用する。特にマルチフィラメント糸条群の一部に、導電性炭素繊維、または導電メッキ処理繊維を使用して、一定の本数間隔でストライプ状、好ましくは格子状導電ネットワーク構造に配置し、帯電防止性を付帯する導電構造とすることができる。この具体例は、目開織物の主構成にポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維をマルチフィラメント糸条用い、経糸群、及び緯糸群のマルチフィラメント糸条の一部(n本間隔:nは1~100の整数で、例えば24、または49)を導電性炭素繊維糸条と置換した格子状導電ネットワーク構造による帯電防止効果の強化態様である。このとき導電性炭素繊維糸条は、ポリエステル繊維マルチフィラメント糸条を芯部とし、導電性炭素繊維糸条(または導電メッキ処理繊維)を鞘部とする2層構造糸条であってもよく、またはポリエステル繊維マルチフィラメントと、導電性炭素繊維(または導電メッキ処理繊維)との混紡糸条であってもよい。これらの織仕様におけるターポリンは、目開織物に直接エチレン系共重合体樹脂裏面導電層を設けることが帯電防止性向上のために不可欠である。また、全芳香族ポリエステル繊維(ポリアリレート繊維)、全芳香族ポリアミド繊維(ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、ポリパラベンズアミド繊維、パラフェニレン3,4オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合繊維など)などの高強度耐熱繊維糸条も使用でき、これらの糸条を、経糸群、及び/または緯糸群のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維マルチフィラメント糸条の一部(n本間隔:nは整数)を高強度耐熱繊維糸条と置換した引裂防止効果の飛躍的強化態様とすることもできる。また導電性炭素繊維糸条と高強度耐熱繊維糸条を併用し、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維をマルチフィラメント糸条の一部と置換した目開織物を使用することもできる。本発明において用いる目開織物には、必要に応じて接着剤塗布、樹脂含浸加工、吸水防止(撥水)処理、防炎処理などを施すことができる。
【0019】
本発明の帯電防止性ターポリンに用いるエチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層は、エチレン系共重合体樹脂を主体に構成され、その厚さは150~350μm程度で、表面層、及び裏面導電層は同じ厚さが好ましいが、充填物の性状に応じて裏面導電層を表面層よりも薄く、あるいは厚くすることができる。特に裏面樹脂層を「エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の2層構造とすることで、薄くした導電層では導電性粉体、及び導電性液体化合物を濃密化することができ、防爆性基準をクリアすることを容易とする。このエチレン系共重合体樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン-メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体樹脂、から選ばれた1種以上で、エチレン単位の含有量が65~85質量%であることが好ましい。酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸などの極性成分を15~35質量%有することによって、高周波溶着を可能とする。エチレン単位の含有量が85質量%を超えると極性成分が少ないために高周波溶着性を悪くし、通電アンペアを高くする必要となるが、この高出力状態では作業に危険を伴うことがある。一方、エチレン単位の含有量が70質量%を下回ると、エチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の皮膜強度が低下して、耐摩耗性を悪くする傾向となる。エチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の耐摩耗性を向上させる手段として、上記エチレン系共重合体樹脂とエチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(メタロセンポリエチレン)のブレンドによるエチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂導電層とすることができる。エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂のブレンド量は、エチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層における酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルなどの含有量15~30質量%が保持され、高周波溶着を可能とする範囲内であることが好ましい。またエチレン系共重合体樹脂表面層、エチレン系共重合体樹脂中間層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層のメルトフローレート(MFR:190℃、荷重2.16kgf)は、0.5~5.0g/10分、特に1.0~3.5g/10分が好ましい。MFRが0.5g/10分未満だとエチレン系共重合体樹脂表面層、エチレン系共重合体樹脂中間層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の風合いが硬くなって得られるフレキシブルコンテナバッグのフレキシブル性が損なわれる。またMFRが5.0g/10分を超えるとエチレン系共重合体樹脂表面層、エチレン系共重合体樹脂中間層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の耐熱温度が低くなって得られるフレキシブルコンテナバッグの接合部(高周波溶着部)の耐熱クリープ性を悪くして、温度の高い充填物による破袋事故が起き易くなる。
【0020】
エチレン系共重合体樹脂裏面導電層には導電性粉体を含み、導電性粉体として、アセチレンブラック単体、またはアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用で、「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンの場合、その含有量はエチレン系共重合体樹脂導電層を構成するエチレン系共重合体樹脂100質量部に対して2.5~10質量部の配合量、防爆レベルでは11~20質量部の配合量であり、「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンの場合、その含有量は導電層の厚さが半分近く薄くなることでエチレン系共重合体樹脂導電層を構成するエチレン系共重合体樹脂100質量部に対して5~20質量部の配合量、防爆レベルでは21~30質量部の配合量とする。これら導電性粉体の1次粒子は、炭素6員環が30~40個結合したプレートが3~5層積み重なった結晶子が1000~ 2000個集合した10~200nmの粒子径のものであり、導電性粉体は、この1次粒子20~100個が化学的物理的に結合したストラクチャーである。このような導電性粉体としてのアセチレンブラックは、20~50nmの1次粒子径、BET比表面積35~160m2/g、 DBPオイル吸着量140~220ml/100gのストラクチャー(PH9~10)であり、オイルファーネス系カーボンブラックは、10~100nmの1次粒子径、BET比表面積50~300m2/g、DBPオイル吸着量40~200ml/100gのストラクチャー(PH7~8)で、特にDBPオイル吸着量40~220ml/100gの特性を満たすことで、併用する導電性液体化合物の一部または全部を吸着担持することを可能とする。本発明において導電性粉体としてアセチレンブラックが好ましい理由は、高純度のグラファイト構造と、ストラクチャーの長い連鎖構造(アグリゲート、アグロメレート)により、高周波溶着時の昇温による連鎖構造の切断に伴う急激な電気抵抗増加(PTC現象)が起こりにくいことで、防爆性フレキシブルコンテナバッグの高周波溶着時にスパーク発火を起しにくいからである。従ってアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用は、アセチレンブラック:オイルファーネス系カーボンブラックの質量比10:1~1:1である。導電性粉体が2.5質量部未満(中間層ありの態様では5質量部未満)だと十分な帯電防止性(防爆性)が得られず、10質量部を超える(中間層ありの態様では20質量部を超える)と高周波溶着時にスパーク発火を伴うことがある。アセチレンブラック、及びオイルファーネス系カーボンブラックは、エチレン系(共重合体)樹脂中に高濃度で分散させた顔料ペレットを使用することが均一分散性、及び導電性の安定化の観点で好ましく、この顔料ペレットには導電性液体化合物も同時に含み、導電性粉体ストラクチャー中に導電性液体化合物が吸着担持され、導電性粉体粒子間が密着した複合導電体とすることで、より高度の帯電防止性(防爆性)を得ることができる。この際、導電性粉体のストラクチャー中に導電性液体化合物を吸着させ、導電性粉体粒子間をより密着させた複合導電体ペースト化することが好ましい。
【0021】
導電性粉体に吸着担持させる導電性液体化合物は、カチオン及びアニオンのイオン対で形成され、カチオンが、イミダゾリウム系(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3ジメチルイミダゾリウムなど)、イミダゾリニウム系(1-ブチル-3-メチルイミダゾリニウム、1-アリル-3-メチルイミダゾリニウム、1-ブチル-2,3ジメチルイミダゾリニウムなど)、ピリジニウム系(1-ブチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウムなど)、ピラゾリウム系(1-ブチルピラゾリウム、1-エチルピラゾリウム、1-ブチル-4-メチルピラゾリウムなど)、ピロリジニウム系(1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムなど)、ピペリジニウム系(1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムなど)、四級アンモニウム系(アミルトリエチルアンモニウム、ブチルトリエチルアンモニウム、ベンジルエチルジメチルアンモニウムなど)、ホスホニウム系(テトラブチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルヘキシルホスホニウムなど)、スルホニウム系(トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、トリブチルスルホニウムなど)から選ばれた1種である。またアニオンは化学式、BF4
-、PF6
-、TaF6
-、NbF6
-、SiF6
-、AlF4
-、AlCl4
-、NO2
-、NO3
-、F-、Cl-、Br-、I-、CN-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、CF3SO2
-、CF3SO4
-、(CF3SO2)2N-、p-CH3PhSO3
-、CH3CO2
-、HSO4
-、HSO3
-、CH3SO3
-、CH3SO4
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、C3F7CO2
-、C4F9SO3
-、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(CN)2N-、から選ばれた1種である。これらの導電性液体化合物(イオン対)の配合量は、導電性粉体の配合量に対して20~100質量%である。導電性粉体と導電性液体化合物を併用し、特に導電性粉体のストラクチャー中に導電性液体化合物を吸着担持させた導電複合体(ペースト)とすることによって優れた帯電防止性(防爆性)を得ることができる。導電性液体化合物の配合量が20質量%未満だと、導電性粉体ストラクチャー内に浸透する導電性液体化合物量が不足して、滑剤が導電性粉体ストラクチャー内に浸透することによる帯電防止性(防爆性)の低下を抑止する効果が不充分となることがあり、また配合量が100質量%を超えるとエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の表面に導電性液体化合物がブリードして、フレキシブルコンテナバッグ内の充填物を汚染することがある。
【0022】
導電性液体化合物の中でも、特に四級アンモニウム塩が好ましく、具体的に(C2H5)5N+ 、(C3H7)4N+ 、(C4H9)4N+ 、(C5H11)4N+ などの四級アンモニウムカチオンと、CF3SO4
-、CH3SO4
-、HSO4
-、CF3SO4
-、CH3SO3
-、HSO3
-などの硫酸または亜硫酸を含むアニオンとからなる塩が挙げられる。また、四級アンモニウムカチオンが有する4つのアルキル基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。これらの中でも、ブチルトリエチルアンモニウム、アミルトリエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウム硫酸水素塩が好ましく、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩〔(C4H9)4N(HSO4)〕が特に好ましい。これらの導電性液体化合物は予め導電性粉体(アセチレンブラック、またはアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用)に吸着担持させて導電性粉体粒子間をより濃密に密着させた複合導電体(ペースト)、もしくは濃縮ペレットに造粒しておくことが、非飛散性、分散性、高度の帯電防止性(防爆性)発現の観点において好ましい。吸着担持は、特定量の導電性液体化合物を特定量の導電性粉体をまぶし、攪拌後、常温常圧で数時間静置することで得られる。
【0023】
必要に応じて、エチレン系共重合体樹脂表面層、及び/またはエチレン系共重合体樹脂中間層には合成非晶質シリカを3~20質量%含むことで、高周波溶着性を向上させ、さらに耐熱クリープ性を向上させることができる。合成非晶質シリカ(二酸化ケイ素)は、ケイ酸ソーダと鉱酸(硫酸)及び塩類を、水溶液中で反応させる湿式法によって得られるもので、シリカ表面のシラノール基(R1R2R3Si-OH基※Rは水素、アルキル基など)に水素結合で結合する水分と、シラノール基自体が含有する水酸基として存在する水分を結合水分として有する含水シリカで、平均凝集粒径(コールカウンター法)が1~20μmのもの、好ましくは2~10μm、含水率3~15質量%のもの、好ましくは5~10質量%である。合成非晶質シリカの配合量が3質量%より少ないと、耐熱クリープ性の向上効果が不十分となり、また配合量が20質量%を超えると、エチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂中間層の加工性、及び耐摩耗強度を低下させることがある。この合成非晶質シリカには導電性液体化合物を、合成非晶質シリカの質量に対して10~50質量%吸着させたものを使用し、帯電防止性(防爆性)を強化することができる。また必要に応じてエチレン系共重合体樹脂表面層、エチレン系共重合体樹脂中間層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層には、EPDM、EPMなどのゴムを10質量%程度含ませることで、耐摩耗性、耐熱クリープ性を改善することができる。またエチレン系共重合体樹脂表面層、エチレン系共重合体樹脂中間層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層には、安定剤、フィラー、着色顔料、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などの公知の添加剤を任意に配合することができる。
【0024】
エチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層用フィルムは、例えばT-ダイス押出法、カレンダー法など公知法により、厚さ150~350μm程度に成型したフィルムがフレキシブルコンテナバッグに適している。特に裏面樹脂層が「エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の2層構造の場合は、この2層で厚さ150~350μm程度とする。エチレン系共重合体樹脂裏面導電層は、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなる複合導電体を含むものである。この複合導電体はエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の製造時、または製造の準備段階に、導電性液体化合物の一部または全部を導電性粉体に吸着担持させて複合導電体に加工する工程により得ることが好ましく、次にこの複合導電体を含むエチレン系共重合体樹脂層フィルムを成型し、目開織物、またはエチレン系共重合体樹脂中間層に積層する工程を含むことが好ましい。具体的にフレキシブルコンテナバッグの原反となる帯電防止性ターポリンは、目開織物の両面にこれらのフィルムを積層して得られるもので、予め成形した2層のフィルムを表側、及び裏側用(または中間層用)として、金属熱ロール/ゴムロール、ヒーターを装備するラミネーターを通過させ、フィルムを加熱で半溶融軟化させた状態で目開織物上に熱圧着して、0.5~1.2mm程度の厚さで得られる。エチレン系共重合体樹脂中間層を含む態様では、もう1度ラミネーターを通過させてエチレン系共重合体樹脂中間層上にエチレン系共重合体樹脂裏面導電層を積層して0.5~1.2mm程度の厚さとする。これらでは、目開織物の空隙部を介在して表側と裏側(2層構造の場合もある)のフィルム同士が部分的に熱溶融ブリッジを形成することで、エチレン系共重合体樹脂表面層、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層(またはエチレン系共重合体樹脂中間層)と目開織物との接着力を増すことで、フレキシブルコンテナバッグ接合部の耐熱クリープ性を向上させる。
【0025】
フレキシブルコンテナバッグの熱溶着縫製は、高周波ウエルダー融着法、熱風融着法、超音波融着法などが可能である。得られた帯電防止性ターポリンのエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の表面抵抗値は、JIS C61340 4-4「特定応用のための標準的試験方法-フレキシブルコンテナの静電気的分類」において、帯電防止性では105Ω~108Ω、特に防爆性的には103Ω~104Ωが好ましい。また帯電防止性フレキシブルコンテナバッグ、さらには防爆性フレキシブルコンテナバッグにおいて、内側部となるエチレン系共重合体樹脂裏面導電層、さらには織物基布に含む導電性繊維にはアース線接続され、コンテナバッグバッグ外部に飛び出るアース線の付帯を必須とし、これによって防爆性が確保される。
【0026】
実施例
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
1)高周波融着性
ターポリンの下端部と、もう一方のターポリンの上端部とを9cm幅で平行に重ね合わせ、9cm幅×30cm長のウエルドバー(凹凸歯形:凸部高さ0.5mm直線9本/インチ、凹部深さ0.5mm直線9本/インチ)を装着した高周波ウエルダー溶着機(山本ビニター(株)製YTO-8A型:高周波出力8KW)を用い、陽極電流0.8A(通電5秒/冷却5秒)でターポリンを高周波溶着接合して、スパーク(火花)の発生の有無を確認した。
2)ターポリンの帯電防止性:表面抵抗率(JIS K7194準拠)
23℃、相対湿度50%RHで膜材片を24時間静置後、下記の抵抗率計(JIS K7194準拠)を用い表面抵抗率を3回測定し、その平均値を表面抵抗率とした。
表面抵抗率は導電性材料(導電性粉体、導電性液体化合物)の配合量によって左右され、配合量が多いほど防爆レベルに到達できる。
A)高抵抗・抵抗率計
株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタUP MCP-HT800(レンジ103~1014Ω)
B)低抵抗・抵抗率計
株式会社三菱化学アナリテック製「ロレスタGX MCP-T700(レンジ10-4~107Ω)」
【0027】
[実施例1]
<目開織物1>
750デニールのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)832dtex(144フィラメント)を、S撚り150T/mで撚りを掛けたマルチフィラメント糸条(M)を用い、経糸群配置19本/inch、及び緯糸群配置20本/inchの織密度による空隙率20%、質量136g/m2の平織物
<帯電防止性ターポリン1>
エチレン系共重合体樹脂表面層:〔配合1〕を厚さ0.26mmのフィルム(青色)にカレンダー圧延成型する工程による
エチレン系共重合体樹脂裏面導電層:〔配合2〕を厚さ0.22mmのフィルム(黒色)にカレンダー圧延成型する工程による
目開織物1の表面にエチレン系共重合体樹脂表面層のフィルム(青色)、裏面にエチレン系共重合体樹脂裏面導電層のフィルム(黒色)を、ラミネーター150℃の金属熱ロール/ゴムロール間で熱圧着して、目開織物1の空隙部20%を介在してエチレン系共重合体樹脂表面層の一部、及びエチレン系共重合体樹脂裏面導電層の一部をブリッヂして、厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン1を得た。得られたターポリン1は帯電防止性に優れていた。
〔配合1〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
(酢酸ビニル含有率20質量%、MFR2.0) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
酸化チタン(白顔料) 1.4質量部
フタロシアニンブルー(青顔料) 2質量部
〔配合2〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
(酢酸ビニル含有率20質量%、MFR2.0) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 8質量部
テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(四級アンモニウム系導電性液体化合
物:〔(C4H9)4N・(HSO4)〕) 4質量部
※アセチレンブラック(アセチレンB)導電粉体8質量部にテトラブチルア
ンモニウム硫酸水素塩4質量部を吸着担持させた複合導電体を使用(導電性
液体化合物を導電性粉体にまぶし攪拌して常温3時間静置する工程を含み、
以下の実施例2~8も同様の工程を含む)
【0028】
[実施例2]
<帯電防止性ターポリン2>
エチレン系共重合体樹脂表面層:〔配合1〕を厚さ0.28mmのフィルム(青色)にカレンダー圧延成型し、またエチレン系共重合体樹脂裏面導電層:〔配合3〕を厚さ0.28mmのフィルム(黒色)にカレンダー圧延成型し、実施例1と同様にして、目開織物1を基材とする、厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン2を得た。得られたターポリン2は帯電防止性に優れていた。
〔配合3〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
(酢酸ビニル含有率20質量%、MFR2.0) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 5質量部
オイルファーネス系カーボンブラック(導電粉体:粒子径40nm、比表面
積58m2/g、DBP吸収量168ml/100g) 3質量部
トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スル
ホニウム系導電性液体化合物:〔(CH2CH3)3S・(CF3SO2)2
N〕) 4質量部
※アセチレンブラック導電粉体5質量部、及びオイルファーネス系カーボン
ブラック(FカーボンB)導電粉体3質量部にトリエチルスルホニウムビス
(トリフルオロメタンスルホニル)イミド4質量部を吸着担持させた複合導電
体を使用
【0029】
[実施例3]
<目開織物2>
実施例1と同一のマルチフィラメント糸条(M)、及び下記の炭素繊維糸条(E)を用い、経糸群配置、及び緯糸群配置が、マルチフィラメント糸条(M)24本:炭素繊維糸条(E)1本の混用比率、「(M)24本/(E)1本):E本数4%」の繰り返し配置とし、織密度が経糸群配置20本/inch、及び緯糸群配置19本/inchの平織として、空隙率20%、質量136g/m2の目開織物2とした。炭素繊維糸条は、1188デニール(1320dtex:2000フィラメント)を、S撚り160T/mで撚りを掛けたマルチフィラメント糸条(E)で、その配置は経糸群、緯糸群共に、1本目、25本目、50本目、75本目、100本目・・・である。
<帯電防止性ターポリン3>
エチレン系共重合体樹脂表面層:〔配合1〕を厚さ0.28mmのフィルム(青色)にカレンダー圧延成型し、またエチレン系共重合体樹脂裏面導電層:〔配合4〕を厚さ0.28mmのフィルム(黒色)にカレンダー圧延成型し、実施例1と同様にして、目開織物3を基材とする、厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン3を得た。得られたターポリン3は目開織物2の炭素繊維糸条(E)の導電性、及び炭素繊維糸条(E)と接触する(高濃度で複合導電体を含有する)裏面導電層の効果によって防爆性に優れていた。
〔配合4〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
(酢酸ビニル含有率20質量%、MFR2.0) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 16質量部
ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(ピリジニウム系導電性液
体化合物:〔CH3(CH2)3N・PF6〕) 8質量部
※アセチレンブラック導電粉体8質量部にブチルピリジニウムヘキサフルオ
ロホスファート4質量部を吸着担持させた複合導電体を使用
【0030】
[実施例4]
<目開織物3>
実施例1と同一のマルチフィラメント糸条(M)、及び実施例3の炭素繊維糸条(E)を用い、経糸群配置、及び緯糸群配置が、マルチフィラメント糸条(M)49本:炭素繊維糸条(E)1本の混用比率、「(M)49本/(E)1本):E本数2%」の繰り返し配置とし、織密度が経糸群配置20本/inch、及び緯糸群配置19本/inchの平織として、空隙率20%、質量136g/m2の目開織物2とした。炭素繊維糸条の配置は経糸群、緯糸群共に、1本目、50本目、100本目、150本目・・・である。
<帯電防止性ターポリン4>
エチレン系共重合体樹脂表面層:〔配合1〕を厚さ0.28mmのフィルム(青色) にカレンダー圧延成型し、またエチレン系共重合体樹脂裏面導電層:〔配合5〕を厚さ0.28mmのフィルム(黒色)にカレンダー圧延成型し、実施例1と同様にして、目開織物4を基材とする、厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン4を得た。得られたターポリン4は目開織物3の炭素繊維糸条(E)の導電性、及び炭素繊維糸条(E)と接触する(高濃度で複合導電体を含有する)裏面導電層の効果によって防爆性に優れていた。
〔配合5〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-メタクリル酸メチル共重合体樹脂(EMMA)
(メタクリル酸メチル含有率20質量%、MFR2.5) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 16質量部
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(イミダゾリウム系導電性液体
化合物:〔CH3NC3H3N(CH2)3CH3・Cl〕)8質量部
※アセチレンブラック導電粉体8質量部に1-ブチル-3-メチルイミダゾリ
ウムクロリド4質量部を吸着担持させた複合導電体を使用
【0031】
【0032】
[実施例5]
実施例1の帯電防止性ターポリン1の裏面層(0.22mm)を、「エチレン系共重合体樹脂中間層(0.12mm)〔配合1〕/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層(0.1mm)〔配合6〕」とした以外は実施例1と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン5を得た。得られたターポリン5は帯電防止性に優れていた。
〔配合6〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
(酢酸ビニル含有率20質量%、MFR2.0) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 16質量部
テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(四級アンモニウム系導電性液体化合
物:〔(C4H9)4N・(HSO4)〕) 8質量部
※アセチレンブラック導電粉体8質量部にテトラブチルアンモニウム硫酸水
素塩4質量部を吸着担持させた複合導電体を使用
【0033】
[実施例6]
実施例2の帯電防止性ターポリン2の裏面層(0.22mm)を、「エチレン系共重合体樹脂中間層(0.12mm)〔配合1〕/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層(0.1mm)〔配合7〕」とした以外は実施例2と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン6を得た。得られたターポリン6は帯電防止性に優れていた。
〔配合7〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
(酢酸ビニル含有率20質量%、MFR2.0) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 10質量部
オイルファーネス系カーボンブラック(導電粉体:粒子径40nm、比表面
積58m2/g、DBP吸収量168ml/100g) 6質量部
トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スル
ホニウム系導電性液体化合物:〔(CH2CH3)3S・(CF3SO2)2
N〕) 8質量部
※アセチレンブラック導電粉体5質量部、及びオイルファーネス系カーボン
ブラック導電粉体3質量部にトリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメ
タンスルホニル)イミド4質量部を吸着担持させた複合導電体を使用
【0034】
[実施例7]
実施例3の帯電防止性ターポリン3の裏面層(0.22mm)を、「エチレン系共重合体樹脂中間層(0.12mm)〔配合1〕/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層(0.1mm)〔配合8〕」とした以外は実施例3と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン7を得た。得られたターポリン7は、目開織物2の空隙部断面に含む炭素繊維糸条(E)の一部と裏面導電層とが接触する構造であるため帯電防止性に優れていた。
〔配合8〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)
(酢酸ビニル含有率20質量%、MFR2.0) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 16質量部
ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(ピリジニウム系導電性液
体化合物:〔CH3(CH2)3N・PF6〕) 8質量部
※アセチレンブラック導電粉体8質量部にブチルピリジニウムヘキサフルオ
ロホスファート4質量部を吸着担持させた複合導電体を使用
【0035】
[実施例8]
実施例4の帯電防止性ターポリン4の裏面層(0.22mm)を、「エチレン系共重合体樹脂中間層(0.12mm)〔配合1〕/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層(0.1mm)〔配合9〕」とした以外は実施例4と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン8を得た。得られたターポリン8は、目開織物3の空隙部断面に含む炭素繊維糸条(E)の一部と裏面導電層とが接触する構造であるため帯電防止性に優れていた。
〔配合9〕 エチレン系共重合体樹脂組成物
エチレン-メタクリル酸メチル共重合体樹脂(EMMA)
(メタクリル酸メチル含有率20質量%、MFR2.5) 100質量部
有機リン酸エステル系化合物(液状滑剤) 1質量部
アセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、
DBP吸収量160ml/100g) 16質量部
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド(イミダゾリウム系導電性液体
化合物:〔CH3NC3H3N(CH2)3CH3・Cl〕)8質量部
※アセチレンブラック導電粉体8質量部に1-ブチル-3-メチルイミダゾリ
ウムクロリド4質量部を吸着担持させた複合導電体を使用
【0036】
【0037】
[比較例1]
実施例1の〔配合2〕のアセチレンブラック(導電粉体:粒子径35nm、比表面積69m2/g、DBP吸収量160ml/100g)8質量部を、オイルファーネス系カーボンブラック(導電粉体:粒子径40nm、比表面積58m2/g、DBP吸収量168ml/100g)8質量部に置換した〔配合10〕とした以外は実施例1と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン9を得た。得られたターポリン9は、帯電防止性に優れたものであったが、接合部耐熱クリープ性試験片の作成時の高周波溶着時にスパーク発火を生じ、電気事故の危険を伴う仕様であった。
【0038】
[比較例2]
実施例1の〔配合2〕のテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩4質量部を省略した〔配合11〕とした以外は実施例1と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン10を得た。得られたターポリン10は帯電防止性がターポリン1よりも劣り、ターポリン1と同等の帯電防止性を得るには、〔配合11〕のアセチレンブラック8質量部を12質量部に増量する不経済性があった。
【0039】
[比較例3]
実施例1の〔配合2〕のアセチレンブラック8質量部を省略した〔配合12〕とした以外は実施例1と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン11を得た。得られたターポリン11は帯電防止性がターポリン1よりも劣り、〔配合12〕のテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩4質量部を12質量部に増量してもターポリン1と同等の帯電防止性が得られないばかりでなく、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩がターポリン11の表面にブリードするベタ付き汚染の問題を生じた。
【0040】
[比較例4]
実施例1の〔配合2〕において、アセチレンブラック導電粉体8質量部にテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩4質量部を吸着担持させる工程を省略し、アセチレンブラック導電粉体8質量部と、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩4質量部をそのままエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂100質量部に対して配合したコンパウンドからエチレン系共重合体樹脂裏面導電層(厚さ0.22mmの黒色フィルムをカレンダー圧延成型した以外は実施例1と同様として厚さ0.67mm、質量649g/m2のターポリン12を得た。得られたターポリン12は液状滑剤の有機リン酸エステル系化合物の一部がアセチレンブラック導電粉体表面に付着して、アセチレンブラックストラクチャーの導電性を阻害する悪影響により帯電防止性がターポリン1よりも劣り、ターポリン1と同等の帯電防止性を得るには、〔配合2〕のアセチレンブラック8質量部を10質量部に増量する不経済性があった。
【0041】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、帯電防止性、さらには防爆性(JIS C61340 4-4)を有するターポリンと、その製造方法の提供を可能とするので、このターポリンを用いて、安全に高周波溶着してなる帯電防止性、さらには防爆性(JIS C61340 4-4)を有するフレキシブルコンテナバッグの提供を可能とする。
【符号の説明】
【0043】
1:帯電防止性ターポリン
2:目開織物
2-1:経糸
2-1-1:マルチフィラメント糸条(M)
2-1-2:導電性繊維糸条(E)
2-2:緯糸
2-2-1:マルチフィラメント糸条(M)
2-2-2:導電性繊維糸条(E)
3―1:エチレン系共重合体樹脂表面層
3-2:エチレン系共重合体樹脂裏面導電層
3-3:エチレン系共重合体樹脂中間層
【要約】
【課題】帯電防止性に優れ、さらには防爆性を有するフレキシブルコンテナバッグ用ターポリンと、その製造方法の提供。
【解決手段】「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面、または「エチレン系共重合体樹脂表面層/目開織物/エチレン系共重合体樹脂中間層/エチレン系共重合体樹脂裏面導電層」の断面を構成するターポリンであって、エチレン系共重合体樹脂裏面導電層に複合導電体を含み、この複合導電体が、導電性粉体、及び導電性液体化合物からなり、この導電性液体化合物の一部または全部が導電性粉体に吸着担持されたもので、導電性粉体を、アセチレンブラック単体、またはアセチレンブラックとオイルファーネス系カーボンブラックの併用とし、導電性液体化合物をカチオン及びアニオンのイオン対とする帯電防止性ターポリン。
【選択図】
図1