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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】非中性子核燃料
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/28 20060101AFI20250417BHJP
   G21D 7/00 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
G21C3/28 600
G21D7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023511629
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 US2021049330
(87)【国際公開番号】W WO2022060597
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】17/027,422
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523050988
【氏名又は名称】ロウ,オースティン
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【弁理士】
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,オースティン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009337(JP,A)
【文献】特開平08-122444(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104898156(CN,A)
【文献】特公昭62-61906(JP,B2)
【文献】特開平8-54471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/28
G21D 7/00
G21C 1/00
G21C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料セルにおいて、
核燃料であって、
正味の中性子生成物質と、
中性子消費物質と、
中性子減速物質とを含む核燃料と、
エミッタ及びコレクタの間に配置されたガスを含むシステムと、
中性子源と、を備えており、
前記核燃料は、前記中性子源及び前記システムに隣接して配置されており、
前記中性子生成物質は、前記中性子源により生成された中性子に暴露されたとき、核分裂して核分裂片及び中性子を生成するように構成されており、
前記核分裂片は、ベータ崩壊するように構成されており、
前記ベータ崩壊による電子は、前記エミッタ及び前記コレクタの間に配置された前記ガスをイオン化されたプラズマに変換するように作用可能であり、
前記中性子減速物質は、前記中性子生成物質によって生成された高速中性子を減速するように構成されており、
前記中性子消費物質は、前記核燃料セル内の中性子を調節する際に中性子を吸収するように構成されている、核燃料セル。
【請求項2】
前記正味の中性子生成物質は、核分裂性である、請求項1に記載の核燃料セル。
【請求項3】
前記中性子消費物質は、中性子活性化を受けるように構成されている、請求項1に記載の核燃料セル。
【請求項4】
前記中性子消費物質は、前記ベータ崩壊の間に中性子活性化を受けるように構成されている、請求項3に記載の核燃料セル。
【請求項5】
前記中性子消費物質に対する前記正味の中性子生成物質の比率は、前記核燃料セル内の中性子を調節するように作用可能である、請求項1に記載の核燃料セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT国際出願は、2020年9月21日に出願された米国特許出願第17/027,422号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、一般に、熱を電気エネルギーに直接変換するための中性子の少ない或いは中性子の無い非中性子核燃料に関する。
【背景技術】
【0003】
この節は、本開示に関係する背景情報を提供するものであり、必ずしも従来技術ではない。
【0004】
原子力の潜在的な低い運転コストや全体的な経済的競争力は、従来の力学的熱・電気エネルギー変換方法の使用により過小評価されている。これらの補助システムの使用により、従来の発電所は、著しい運転コストおよび維持費の問題があり、これによりそのような発電所の経済的有効性および効率が低く抑えられている。厄介な力学的熱・電気エネルギー変換システムに対する1つの代替は、熱電子エネルギー変換(TEC)、すなわち熱電子放出から発電する直接熱・電気エネルギー変換過程である。TECは、維持に手がかからない自律発電のための機会を提供し、経済的競争力のある先進の原子炉のための可能性を示す。
【0005】
TECシステムのいくつかは、電極間プラズマを利用し、熱電子放出された電子をシステムの「高温」側(すなわち、エミッタ)からシステムの「低温」側(すなわち、コレクタ)に伝導する。すべての実証可能なTECシステムは、放出された電子を使用し、低いイオンポテンシャルのプラズマ(たとえば、セシウム)をイオン化するが、この方法は、装置効率を制限する。以前の取り組みでは、電極間プラズマをイオン化するためにクラッド無し燃料要素からの核分裂片を使用することが模索された。しかし、これらの以前の取り組みは、連鎖反応を持続させるために、すなわち臨界系のために十分な燃料を必要とした。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この節は、開示の全体的な概要を提供するものであり、その完全な範囲、またはその特徴のすべての包括的な開示ではない。
【0007】
開示の一態様は、中性子の少ない或いは中性子の無い非中性子核燃料を提供する。核燃料は、正味の中性子生成物質(net neutron-producing material)と、中性子消費物質(neutron-consuming material)と、中性子減速物質(neutron-moderating material)とを含む。正味の中性子生成物質、中性子減速物質、および中性子消費物質が中性子源に暴露されたとき、(i)中性子消費物質および(ii)中性子減速物質に対する正味の中性子生成物質の比率は、正味の中性子を生成することなく中性子を荷電粒子に変換するように作用可能なものである。
【0008】
本開示のこの態様の実施例は、以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施例では、正味の中性子生成物質は、核分裂性(fissile)である。いくつかの例では、正味の中性子生成物質は、親物質(fertile)である。随意には、正味の中性子生成物質は、核分裂し得る。いくつかの実施例では、中性子消費物質は、中性子活性化を受ける。いくつかの例では、中性子消費物質は、ベータ崩壊過程において中性子活性化を受ける。いくつかの実施例では、中性子消費物質に対する中性子生成物質の比率は、プラズマをイオン化するための荷電粒子を生成することが可能である。
【0009】
本開示の別の態様は、発電する方法を提供する。この方法は、第1の物質を用いて複数の中性子を生成することと、第2の物質を用いて複数の中性子のうちの少なくとも1つを消費することとを含む。また、この方法は、第3の物質を用いて或る量の複数の中性子を減速することと、第1の物質、第2の物質、および第3の物質を中性子源に暴露することとをも含む。
【0010】
この態様は、以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施例では、第1の物質は、核分裂性である。いくつかの例では、第1の物質は、親物質である。随意には、第1の物質は、核分裂し得る。いくつかの実施例では、第2の物質は、中性子活性化を受ける。いくつかの例では、第2の物質は、ベータ崩壊過程において中性子活性化を受ける。いくつかの実施例では、方法は、荷電粒子を用いてプラズマをイオン化することをも含む。
【0011】
本開示の別の態様は、核燃料セルを提供する。核燃料セルは、厚さT1を画定する正味の中性子生成物質と、中性子消費物質と、中性子減速物質とを含む。また、核燃料は、正味の中性子生成物質を囲み、第2の厚さT2を画定するクラッディングを含み、厚さT2に対する厚さT1の比率は、エミッタからコレクタへの電子の伝達率を増大するように作用可能なものである。
【0012】
この態様は、以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施例では、正味の中性子生成物質は、核分裂性である。いくつかの例では、正味の中性子生成物質は、親物質である。随意には、正味の中性子生成物質は、核分裂し得る。いくつかの実施例では、中性子消費物質は、中性子活性化を受ける。いくつかの例では、中性子消費物質は、ベータ崩壊過程において中性子活性化を受ける。
【0013】
利用可能性のさらなる領域は、本明細書に提供されている説明から明らかになろう。この概要における説明および特定の例は、例示のためのものとして意図されているにすぎず、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0014】
本明細書に記載の図面は、選択された構成を例示するためのものにすぎず、可能な実施例のすべてではなく、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来技術の熱電子エネルギー変換システムの機能ブロック図である。
図2】本開示の原理による熱電子エネルギー変換システムの機能ブロック図である。
図3】本開示の原理による熱電子エネルギー変換システムの機能ブロック図である。
図4】本開示の原理による熱電子エネルギー変換システムを利用する燃料セルの概略図である。
図5】本開示の原理による、図4の燃料セルを動作させる方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対応する符号は、図面を通して対応する部分を示す。
【0017】
次に、例示的な構成について、添付の図面を参照してより十分に述べる。例示的な構成は、この開示が徹底したものとなり、開示の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されている。本開示の構成の徹底した理解をもたらすために、特定の構成要素、装置、および方法の例など、特定の詳細が記載されている。当業者には、特定の詳細が使用されることを必要としないこと、例示的な構成は多数の異なる形態で具体化され得ること、および特定の詳細および例示的な構成は、開示の範囲を限定すると解釈されるべきでないことが明らかであろう。
【0018】
図1に示されているように熱電子エネルギー変換システム100は、エミッタ102、媒体104、コレクタ106、および熱源108を含み得る。下記でより詳細に述べるように、熱電子エネルギー変換システム100は、熱源108からの熱を熱電子放出からの電気エネルギーに直接変換し、次いでそれを使用し、エミッタ102とコレクタ106の両端間にバイアス電圧をかけることによって電気負荷110を駆動することができる。バイアス電圧は、エミッタ102とコレクタ106のそれぞれの仕事関数間の差に比例する。そうする際に、システム100は、従来の発電において電気エネルギーを生成するために必要とされるはずの様々な部品(たとえば、タービン)を省くことを可能にする。
【0019】
図1に示されているようにエミッタ102は、電子112を含む。エミッタ102が熱源108によって加熱されたとき、エミッタ102は、電子112を放出する。放出された電子112は、エミッタ102とコレクタ106との間の媒体104に入る。エミッタ102とコレクタ106との間の媒体104が導電性である場合、負荷110を駆動することが可能な電流が生成される。
【0020】
エミッタ102が熱源108によって加熱されるにつれて、エミッタ102は、電子112を放出する。エミッタ102によって放出された電子112は、エミッタ102とコレクタ106との間の媒体104に入る。エミッタ102によって放出された電子112の負電荷は、他の負電荷の電子112と反発する。したがって、エミッタ102から放出された電子112が媒体104に入ったとき、電子112の負電荷は、追加の電子112と反発し、そのような追加の電子112がエミッタ102を離れコレクタ106に到達するのを抑制し、かつ/または妨げ、システム100の効率を減少させる空間電荷を生み出す。いくつかの実施例では、プラズマがエミッタ102とコレクタ106との間の媒体104として働く。これに関して、媒体104は、本明細書では「プラズマ104」と称されることがある。プラズマ104は、媒体104の空間電荷を軽減し、他の電子がエミッタを離れることをも抑制することなく、電子112がエミッタ102を離れることを可能にし得る。プラズマ104は、異なる形態をとってもよい。たとえば、いくつかの実施例では、プラズマ104は、セシウム蒸気など蒸気を含む。
【0021】
システム100の効率は、プラズマ104を用いて負の空間電荷を低減することによって増大させることができる。負の空間電荷がプラズマ104によって中和されるにつれて、追加の電子112がエミッタ102からより自由に放出され、したがってプラズマ104を通る電流の流れを増大し、次いでシステム100の効率を改善する。これに関して、プラズマ104は、自然の予備イオン化状態(すなわち、希薄蒸気またはガス)にあるとき、電子112を伝導し得ない。プラズマ104は、エミッタ102と接触し、エミッタ102がプラズマ104にわたって電子112を伝達することを可能にすることによってイオン化され得る。別の実施例では、プラズマ104は、放出された電子112がプラズマ104の中性原子に当たり、中性原子をイオン化して追加の電子およびイオンにすることによってイオン化され得る。プラズマ104がイオン化された後、プラズマ104は電子112を伝導し得る。プラズマ104がイオン化されたとき、電子112は、エミッタ102からプラズマ104を通ってコレクタ106に伝導され、それによって電流を発生させることができる。加熱されたエミッタ102からコレクタ106への電子112の流れは、負荷110を駆動するために使用され得る電気エネルギーを発生させる。
【0022】
電子112を利用してプラズマ104をイオン化することは、熱電子エネルギー変換システム100の全体効率を減少させる。たとえば、追加の電子112がエミッタ102から放出されることを可能にするようにプラズマ104をイオン化することによって、電子112は、プラズマ104をイオン化したとき、電気エネルギーを生成するのではなくそれ自体のエネルギーを費やし、したがってシステム100の電気効率を低下させる。
【0023】
重イオン熱電子エネルギー変換(HITEC)システム200が図2に示されている。HITECシステム200は、別段本明細書において示されている、または記載されている場合を除き、熱電子エネルギー変換システム100と実質的に同様であってよい。HITECシステム200においてプラズマ104をイオン化する例示的な方法は、核分裂片208を利用する。たとえば、中性子源202が中性子204を生成する。また、HITECシステム200は、核分裂性である(たとえば、U-235)、すなわち中性子を吸収した後、核分裂反応が可能であるもの、または親物質である(たとえば、U-238)、すなわち中性子を吸収した後、核分裂反応することが可能でないものとすることができる正味の中性子生成物質206を含み得る。
【0024】
中性子源202が、正味の中性子生成物質206(たとえば、U-235)によって吸収される中性子を生成するとき、中性子生成物質206は不安定になり核分裂片208に分割され、その過程でいくつかの新しい中性子を放つ。核分裂過程から放たれた新しい中性子は、以下の式に従ってそれ自体核分裂し得、追加の核分裂片208を生み出し、中性子を放ち、連鎖反応をもたらす。ここで「n」は中性子204である。
【数1】
【0025】
核分裂過程から発生した核分裂片208は、エミッタ102とコレクタ106との間のプラズマ104に入り、プラズマ104をイオン化する。HITECシステム200においてプラズマ104をイオン化するために核分裂片208を使用することは、より多くの電子112がエミッタ102からプラズマ104を通ってコレクタ106に流れることを可能にする。特に、電子112は、プラズマ104をイオン化するために使用されるのではなく、電気エネルギーを発生させるように、単独でエミッタ102からコレクタ106に流れることができ、それにより、HITECシステム200の効率を高める。
【0026】
プラズマ104をイオン化するために核分裂片208を利用することは、プラズマ104中の重金属の蓄積を引き起こす。特に、プラズマ104をイオン化した後の核分裂片208は、プラズマ104内で中性重金属粒子になる。プラズマ104中での中性重金属粒子としての核分裂片208の蓄積は、エミッタ102から放出された電子112が中性重金属粒子と衝突する可能性を増大する。核分裂片208からの中性重金属粒子と衝突する電子112は、その衝突によりエネルギーを喪失し得、したがって、それらの電子112が生成する電気エネルギーは少なくなり、HITECシステム200の効率を減少させる。いくつかの例では、核分裂片208は、エミッタ102の表面上に堆積され、エミッタが放出する電子112をより少なくし、生成される電気エネルギーの量を減少させることによってHITECシステム200の全体的な効率をさらに減少させる。
【0027】
図2に示されているように、HITECシステム200は、中性子消費物質210および中性子減速物質212を含み得る。中性子減速物質212は、中性子生成物質206から放たれた中性子204の速度を低減する。たとえば、中性子生成物質206または中性子消費物質210によって吸収される中性子204を中性子源202が生成するにつれて、中性子生成物質206の中性子は不安定になり核分裂片208に分割され安定化するまえにいくつかの新しい中性子を放ち得る。核分裂からの放たれた中性子204は、高速で移動し得、中性子生成物質206または中性子消費物質210によって吸収される可能性が低くなる。
【0028】
中性子減速物質212(たとえば、黒鉛、水、または水素化ジルコニウム)は、核分裂によって生成される高速中性子204の速度を低減し、したがって放たれた中性子が中性子生成物質206および中性子消費物質210によって吸収される可能性を増大し、これは次いで、より多くの核分裂片208の生成をもたらすことができる。核分裂過程によって生成されるより多くの中性子204の速度が中性子減速物質212によって低減され、中性子生成物質206によるより多くの中性子204の吸収、およびより多くの核分裂片208の生成がもたらされるにつれて、HITECシステム200は、核分裂連鎖反応を開始するために中性子源202に依存することが少なくなり、したがってHITECシステム200の効率を増大する。
【0029】
図2に示されているように、中性子消費物質210は、HITECシステム200内の中性子の再生成を調節するように核分裂から発生した中性子204を吸収する。中性子消費物質210なしにHITECシステム200によって生成される中性子204の量は、システムを、生成される中性子204の数が制御されない速さで加速する超臨界状態にし、HITECシステム200内の正味の中性子の数を長期持続可能性にとって望ましいものより高いものにする。
【0030】
別の例示的なHITECシステム300が図3に示されている。HITECシステム300は、別段本明細書において示されている、または記載されている場合を除き、HITECシステム200と実質的に同様であってよい。HITECシステム300は、中性子生成物質306、中性子消費物質210(たとえば、核分裂可能な物質306)、プラズマ104、およびベータ崩壊粒子310を含み得る。中性子生成物質306は、核分裂性(たとえば、U-235)または親物質(たとえば、U-238)とすることができる。これに関して、核分裂性の中性子生成物質306は、中性子204を吸収した後、核分裂反応可能であり得、一方、親物質の中性子生成物質306は、中性子204を吸収した後、核分裂反応することができないものであり得る。
【0031】
動作中、HITECシステム300は、中性子源202を使用し、中性子生成物質306によって吸収され得る中性子204を生成する。中性子204を吸収した後、中性子生成物質306は、核分裂し得る。特に、中性子生成物質306が中性子204を吸収したとき、中性子生成物質306は不安定になり核分裂片208に分割され、その過程でいくつかの新しい中性子204を放つ。いくつかの例では、中性子生成物質306が中性子204を吸収したとき、中性子生成物質306は、重および/または軽核分裂片208ならびにいくつかの中性子204を生成する。核分裂過程からの放たれた中性子204は、次いで中性子生成物質306内に吸収され得、追加の核分裂片208を生み出し、追加の中性子204を放つ。
【0032】
HITECシステム300が動作するとき、核分裂片208は、ベータ崩壊過程を受け得る。特に、核分裂過程によって発生する核分裂片208はベータ崩壊し、その場合、本明細書で「ベータ崩壊粒子310」と称される追加の電子を放つことによって核分裂片208がその中性子204のうちの1つを陽子312に変換する。核分裂片208のベータ崩壊反応は、以下の式によって説明することができる。
【0033】
【数2】
ここで、Xは親原子核(parent nucleus)、X’は娘核(daughter nucleus)、Zは陽子数、Nは中性子数、Aは陽子数と中性子数の和、eは電子、および
【0034】
【数3】
は反ニュートリノ(antineutrino)である。
【0035】
ベータ崩壊過程から放たれたベータ崩壊粒子310は、エミッタ102とコレクタ106との間のプラズマ104に入り、プラズマ104をイオン化する。ベータ崩壊粒子310は、エミッタ102から放出される電子112よりはるかに高いエネルギーを含む。ベータ崩壊粒子310のより高いエネルギーは、エミッタ102から放出される電子112に比べて数桁多いプラズマ104原子をベータ崩壊粒子310がイオン化することを可能にし、それにより、HITECシステム300によって生成される電気の量、およびその全体的な効率を増大する。たとえば、ベータ崩壊粒子310は、上記の過程によってプラズマ104をイオン化し、それにより、(i)電子112がエミッタ102からプラズマ104を通ってコレクタ106に流れることを可能にし、(ii)HITECシステム300の効率を増大する。これに関して、ベータ崩壊粒子310は、プラズマ104中の中性重金属粒子の蓄積を生み出すことなくプラズマ104をイオン化することができる。特に、ベータ崩壊過程からイオン化のためにベータ崩壊粒子310を使用することは、図2に関して上記したHITECシステム200の動作中、核分裂片208を使用してプラズマ104をイオン化したとき生じる中性重金属粒子蓄積をもたらさない核分裂片208の間接的な使用をもたらすことができる。
【0036】
いくつかの実施例では、中性子活性化は、中性子204が中性子消費物質210によって吸収され、中性子消費物質210中で放射能を生じさせる(たとえば、アルファ崩壊、ベータ崩壊、ガンマ崩壊)とき行われ得る。特に、中性子消費物質210は、ベータ崩壊過程において中性子活性化を受け得る。中性子消費物質210が中性子204を吸収したとき、中性子消費物質210はベータ崩壊する。したがって、中性子消費物質210は、中性子活性化によって、プラズマ104に入るベータ崩壊粒子310を生成し得る。
【0037】
図4は、HITECシステム(たとえば、HITECシステム300)を使用する燃料セル400を示す。燃料セル400は、エミッタ102、プラズマ104、コレクタ106、中性子減速物質408、および燃料410を含み得る。燃料410は、中性子生成物質306、中性子消費物質210、および中性子減速物質408を、正味の中性子を生成することなく中性子をベータ崩壊粒子310に変換することが可能な比率で含み得る。燃料410は、燃料410内で核分裂片208を保持し、一方、ベータ崩壊粒子310が燃料410から脱出しイオン化のためにプラズマ104に入ることを可能にする薄いクラッディング412を含み得る。燃料410内で核分裂片208を保持することによって、薄いクラッディング412は、核分裂片208がイオン化のためにプラズマ104に入るのを防止し、したがって、中性重金属粒子の前述の蓄積を防止し、一方、ベータ崩壊粒子310がプラズマ104をイオン化することを依然として可能にする。いくつかの例では、薄いクラッディング412は、放射性物質(すなわち、核分裂片208)が環境に入るのを防止するための追加の安全機構を提供する。いくつかの実施例では、薄いクラッディング412の厚さT1は、15ミクロン未満である。特に、薄いクラッディングの厚さT1は、10ミクロンと100ミクロンとの間であってよい。いくつかの実施例では、薄いクラッディングの厚さT1は、実質的に10ミクロンに等しい(+/-10%)。特に、クラッディング412の厚さT1は、燃料410の厚さT2の0.25%と1.25%との間であってよい。いくつかの例では、クラッディング412の厚さT1は、燃料410の厚さT2の0.5%と1%との間である。これに関して、ベータ粒子310の範囲は、薄いクラッディング412、特に、厚さT2に対する厚さT1の比率が、燃料要素410内での核分裂片208の保持、およびそのイオン化のためにプラズマ104にベータ粒子310を放つことを可能にし、これが次いでシステム200に対して燃料セル400およびシステム300の効率を増大するように、核分裂片208の範囲より2から3桁まで大きくてもよい。
【0038】
中性子減速物質408は、やはり中性子を吸収しない軽量物質(たとえば、黒鉛)を含み得る。図4に示されているように燃料410は、燃料セル400の中央部分に配置され得る。エミッタ102は、燃料410周りに(たとえば、囲んで)配置され得る。プラズマ104は、エミッタ102が燃料410とプラズマ104との間に配置されるように、エミッタ102周りに(たとえば、囲んで)配置され得る。コレクタ106は、プラズマ104がコレクタ106とエミッタ102との間に配置されるように、プラズマ104周りに(たとえば、囲んで)配置され得る。中性子減速物質408は、コレクタ106周りに(たとえば、囲んで)配置され得る。クラッディング412は、燃料410周りに、燃料410とエミッタ102との間に配置され得る。
【0039】
燃料セル400は、電子112をエミッタ102からコレクタ106に伝導することによって電気エネルギーを発生させ得る。プラズマ104は、導電性媒体として働くようにエミッタ102とコレクタ106との間にあってよい。これに関して、プラズマ404が電子112を伝導するためには、非イオン化状態にあるプラズマ404は電子112をエミッタ102からコレクタ106に伝導しないので、プラズマ104はイオン化されなければならない。イオン化されているとき、プラズマ104は、電子112がエミッタ102からコレクタ106に流れることを可能にし得る。
【0040】
図3および図4を参照すると、燃料セル400は、HITECシステム300を使用し、プラズマ404をイオン化し得る。たとえば、中性子源202は、前述のように核分裂過程を受ける中性子204を生成し得る。中性子減速物質408は、中性子204が追加の核分裂過程を受ける可能性を増大し、それにより核分裂連鎖反応を引き起こすために、核分裂過程から生まれた中性子204が移動する速度を低減し得る。核分裂過程は核分裂片208を生み出し、核分裂片はさらに崩壊してベータ崩壊粒子310を生み出す。ベータ崩壊過程は、前述のようにベータ崩壊粒子310を放つことによって中性子204を陽子312に変換する。次いで、ベータ崩壊粒子310はプラズマ104をイオン化するために使用され得、プラズマ104をイオン化状態にし、したがってプラズマ104を電子112が流通するための導電性媒体にする。さらに、核分裂片208は、熱電子放出のための熱を生成する。核分裂片208によって生成される熱は、エミッタ102を加熱し、より多くの電子112がエミッタ102からコレクタ106に放出されることを可能にする。
【0041】
図5を参照すると、HITECの方法500が示されている。ステップ502では、方法500は、電子112をエミッタ102からプラズマ104に放つようにエミッタ102を加熱する熱源を含み得る。いくつかの例では、熱源は、核分裂片208によって生成される熱を含む。プラズマ104は、電子112をエミッタ102からコレクタ106に伝導しない予備イオン化状態にある。ステップ504では、中性子源202は、中性子生成物質206によって吸収される中性子を生成する。ステップ506では、中性子生成物質206が中性子を吸収した後、中性子生成物質206は不安定になり核分裂片208に分割される。ステップ508では、核分裂によって生成された核分裂片208は、ベータ崩壊粒子310を放つことによって陽子312にベータ崩壊する。ステップ510では、ベータ崩壊粒子310は、薄いクラッディング412を脱出し、プラズマ104に入りイオン化する。ベータ崩壊粒子310によるプラズマ104のイオン化は、プラズマ104の負電荷を減少させ、追加の電子112がエミッタ102からプラズマ104内に放出されることを可能にする。ステップ512では、エミッタ102から放出された電子112は、プラズマ104を通ってコレクタ106に伝導され、負荷110を駆動することが可能な電気エネルギー を発生させる。
【0042】
本明細書で使用されている術語は、特定の例示的な構成を説明するためのものにすぎず、限定するものとすることは意図されていない。本明細書で使用されているとき、単数の冠詞「a」「an」および「the」は、別段文脈により明らかに示されていない限り、複数形をも含むことが意図されていることがある。「comprises(含む)」「comprising(含む)」「including(含む)」および「having(有する)」という用語は包括的なものであり、したがって、特徴、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つもしくは複数の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。本明細書に記載の方法ステップ、過程、および動作は、実施の順番として具体的に識別されていない限り、論じられている、または示されている特定の順番でそれらを実施することを必然的に必要とするものと解釈されるべきでない。追加または代替のステップが使用されてもよい。
【0043】
要素または層が別の要素または層「上にある」「に係合されている」「に接続されている」「に取り付けられている」または「に結合されている」と称されるとき、他方の要素もしくは層上に直接あっても、係合されていても、接続されていても、取り付けられていても、結合されていてもよく、または介在する要素もしくは層が存在してもよい。対照的に、或る要素が別の要素または層「上に直接ある」「に直接係合されている」「に直接接続されている」「に直接取り付けられている」または「に直接結合されている」と称されるとき、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用される他の語も同様に解釈されるべきである(たとえば、「間」対「直接間」「隣接する」対「直接隣接する」など)。本明細書で使用されるとき、「および/または」という用語は、関連の列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意の組合せおよびすべての組合せを含む。
【0044】
第1、第2、第3などの用語が様々な要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを説明するために本明細書で使用されることがある。これらの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、またはセクションを別の領域、層、またはセクションから区別するためだけに使用され得る。「第1」「第2」などの用語、および他の数の用語は、文脈により明らかに示されていない限り、順序または順番を暗示しない。したがって、下記で論じられる第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な構成の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと呼ぶことができる。
【0045】
本願発明の実施形態は、例えば、次のとおりである。
[実施形態1]
核燃料セルにおいて、
正味の中性子生成物質と、
中性子消費物質と、
中性子減速物質とを含み、
前記正味の中性子生成物質、前記中性子減速物質、および前記中性子消費物質が中性子源に暴露されたとき、(i)前記中性子消費物質および(ii)前記中性子減速物質に対する前記正味の中性子生成物質の比率は、正味の中性子を生成することなく中性子を荷電粒子に変換するように作用可能なものである、核燃料セル。
[実施形態2]
前記正味の中性子生成物質は、核分裂性である、実施形態1に記載の核燃料セル。
[実施形態3]
前記正味の中性子生成物質は、親物質である、実施形態1に記載の核燃料セル。
[実施形態4]
前記正味の中性子生成物質は、核分裂する、実施形態1に記載の核燃料セル。
[実施形態5]
前記中性子消費物質は、中性子活性化を受ける、実施形態1に記載の核燃料セル。
[実施形態6]
前記中性子消費物質は、ベータ崩壊過程において中性子活性化を受ける、実施形態5に記載の核燃料セル。
[実施形態7]
前記中性子消費物質に対する前記正味の中性子生成物質の前記比率は、プラズマをイオン化するための荷電粒子を生成することが可能である、実施形態1に記載の核燃料セル。
[実施形態8]
発電する方法において、
第1の物質を用いて複数の中性子を生成することと、
第2の物質を用いて前記複数の中性子のうちの少なくとも1つを消費することと、
第3の物質を用いて或る量の前記複数の中性子を減速することと、
前記第1の物質、前記第2の物質、および前記第3の物質を中性子源に暴露することと、
中性子を生成することなく前記複数の中性子のうちの少なくとも1つを荷電粒子に変換することとを含む方法。
[実施形態9]
前記第1の物質は、核分裂性である、実施形態8に記載の方法。
[実施形態10]
前記第1の物質は、親物質である、実施形態8に記載の方法。
[実施形態11]
前記第1の物質は、核分裂する、実施形態8に記載の方法。
[実施形態12]
前記第2の物質は、中性子活性化を受ける、実施形態8に記載の方法。
[実施形態13]
前記第2の物質は、ベータ崩壊過程において中性子活性化を受ける、実施形態12に記載の方法。
[実施形態14]
前記荷電粒子を用いてプラズマをイオン化することをさらに含む、実施形態8に記載の方法。
[実施形態15]
核燃料セルにおいて、
厚さT1を画定する正味の中性子生成物質と、
中性子消費物質と、
中性子減速物質と、
前記正味の中性子生成物質を囲み、第2の厚さT2を画定するクラッディングとを含み、
前記厚さT2に対する前記厚さT1の比率は、エミッタからコレクタへの電子の伝達率を増大するように作用可能なものである、核燃料セル。
[実施形態16]
前記正味の中性子生成物質は、核分裂性である、実施形態15に記載の核燃料セル。
[実施形態17]
前記正味の中性子生成物質は、親物質である、実施形態15に記載の核燃料セル。
[実施形態18]
前記正味の中性子生成物質は、核分裂する、実施形態15に記載の核燃料セル。
[実施形態19]
前記中性子消費物質は、中性子活性化を受ける、実施形態15に記載の核燃料セル。
[実施形態20]
前記中性子消費物質は、ベータ崩壊過程において中性子活性化を受ける、実施形態19に記載の核燃料セル。
前述の説明は、例示および説明のために提供されている。網羅的であることも本開示を限定することも意図されていない。特定の構成の個々の要素または特徴は、概してその特定の構成に限定されず、適用可能な場合、相互交換可能であり、具体的に示されても記載されてもいない場合でさえ、選択された構成に使用することができる。また、同じことが、多数の仕方で変わることもある。そのような変形形態は、本開示からの逸脱とみなされるべきでなく、そのような変更すべてが本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5