(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】荷重付与装置、及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20250417BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250417BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20250417BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/262 E
H01M50/262 S
(21)【出願番号】P 2024117216
(22)【出願日】2024-07-22
【審査請求日】2024-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524276156
【氏名又は名称】合同会社Manuvance Technologies
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】秋田 潤
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-048853(JP,A)
【文献】特開2023-053604(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0050040(KR,A)
【文献】特開2019-109998(JP,A)
【文献】特開2021-051862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 50/262
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池の積層構造体に荷重を付与する荷重付与装置であって、
支持体と、
前記支持体から支持され、自身が弾性変形して弾性力を生成する弾性部と、
前記弾性部と前記積層構造体とに接し、前記弾性部から入力される弾性力を前記積層構造体の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達し
、伝達した力の少なくとも一部から
前記弾性変形の方向とは異なる前記積層構造体の積層方向の力を分割して前記積層構造体に伝達する力伝達部と、
前記支持体又は前記力伝達部の表面に設けられ、少なくとも一部に前記積層方向に対して傾斜した表面を有し、前記傾斜した表面上を前記弾性部が移動することで前記弾性部から前記力伝達部に入力される弾性力の少なくとも一部を補正する力補正部と、
を備えること
を特徴とする荷重付与装置。
【請求項2】
全固体電池の積層構造体に荷重を付与する荷重付与装置であって、
支持体と、
前記支持体から支持され、自身が弾性変形して弾性力を生成する弾性部と、
前記弾性部と前記積層構造体とに接し、
前記弾性部から回転運動自在又は揺動運動自在に軸支され、前記弾性部から入力される弾性力を前記積層構造体の膨縮に応じて
回転運動又は揺動運動することで可変の力伝達方向に伝達し
、伝達した力の少なくとも一部から
前記弾性変形の方向とは異なる前記積層構造体の積層方向の力を分割して前記積層構造体に伝達する力伝達部と、
を備えること
を特徴とする荷重付与装置。
【請求項3】
前記支持体又は前記力伝達部の表面に設けられ、前記弾性部から前記力伝達部に入力される弾性力の少なくとも一部を補正する力補正部をさらに備えること
を特徴とする請求項
2に記載の荷重付与装置。
【請求項4】
前記力伝達部は、複数点で前記弾性部と接すること
を特徴とする請求項1
~3の何れか1項に記載の荷重付与装置。
【請求項5】
全固体電池を含む積層構造体と、
請求項1
~3の何れか1項に記載の1以上の荷重付与装置と、
を備えること
を特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全固体電池を含む積層構造体に荷重を付与する荷重付与装置、及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、次世代電池の一つとして全固体電池に関する技術が開発されている。全固体電池の実用化に向けては、電池内部における亀裂の発生や界面の接触不良等の課題を解決し、全固体電池の耐久性を向上させる必要がある。その手法の一つとして、全固体電池に対して一定の荷重を付与する方法がある。
【0003】
特許文献1~4には、全固体電池に対する荷重付与を維持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-51862号公報
【文献】特開2022-114625号公報
【文献】特開2019-125455号公報
【文献】特開2023-84884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシステムによれば、電池に対して一定の荷重付与を維持するためのソフトアクチュエーターの制御にエネルギー供給を要し、また全固体電池の体積変化に合わせてソフトアクチュエーターによる荷重を制御するために変位量の計測装置を要する。このため、特許文献1に開示されたシステムでは、エネルギーの一部を荷重付与に消費せざるを得ず、エネルギーの消費効率を向上できない問題がある。
【0006】
また、特許文献2に開示された装置によれば、電池に対して一定の荷重付与を維持するための弾性体のばね定数を切替える制御装置の制御にエネルギー供給を要し、また切替の要否又は可否を判断するための計測装置を要する。さらに、ばね定数の切替時に荷重が急変するおそれがある。このため、特許文献2に開示された装置では、全固体電池の耐久性向上及びエネルギー消費効率の向上を図ることができない問題がある。
【0007】
また、特許文献3に開示された装置によれば、電池の積層面全域において積層方向に複数配置されたばねの弾性力により電池に荷重を付与するため、電池の膨張による変形量とばねの弾性力による荷重とが単調増加関数の関係にある。また、特許文献4に開示された装置によれば、電池の外装材の弾性変形による変形応力により電池に荷重を付与するため、外装材の変形量によって変形応力が異なる。このため、特許文献3、4に開示された装置では、全固体電池の耐久性向上を図ることができない問題がある。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる荷重付与装置、及び蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明における荷重付与装置は、全固体電池の積層構造体に荷重を付与する荷重付与装置であって、支持体と、前記支持体から支持され、自身が弾性変形して弾性力を生成する弾性部と、前記弾性部と前記積層構造体とに接し、前記弾性部から入力される弾性力を前記積層構造体の膨縮(膨張と収縮)に応じて可変の力伝達方向に伝達し、伝達した力の少なくとも一部から前記弾性変形の方向とは異なる前記積層構造体の積層方向の力を分割して前記積層構造体に伝達する力伝達部と、前記支持体又は前記力伝達部の表面に設けられ、少なくとも一部に前記積層方向に対して傾斜した表面を有し、前記傾斜した表面上を前記弾性部が移動することで前記弾性部から前記力伝達部に入力される弾性力の少なくとも一部を補正する力補正部と、を備えることを特徴とする。
第2発明における荷重付与装置は、全固体電池の積層構造体に荷重を付与する荷重付与装置であって、支持体と、前記支持体から支持され、自身が弾性変形して弾性力を生成する弾性部と、前記弾性部と前記積層構造体とに接し、前記弾性部から回転運動自在又は揺動運動自在に軸支され、前記弾性部から入力される弾性力を前記積層構造体の膨縮に応じて回転運動又は揺動運動することで可変の力伝達方向に伝達し、伝達した力の少なくとも一部から前記弾性変形の方向とは異なる前記積層構造体の積層方向の力を分割して前記積層構造体に伝達する力伝達部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
第3発明における荷重付与装置は、第2発明において、前記支持体又は前記力伝達部の表面に設けられ、前記弾性部から前記力伝達部に入力される弾性力の少なくとも一部を補正する力補正部をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第4発明における荷重付与装置は、第1発明~第3発明の何れか1つにおいて、前記力伝達部は、複数点で前記弾性部と接することを特徴とする。
【0012】
第5発明における蓄電装置は、全固体電池を含む積層構造体と、第1発明~第3発明の何れか1つの1以上の荷重付与装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明~第4発明によれば、荷重付与装置は、弾性部から入力される弾性力を積層構造体の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から積層方向の力を分割して積層構造体に伝達する力伝達部を備える。このため、積層構造体に対して積層方向に安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる。
【0014】
特に、第3発明によれば、荷重付与装置は、支持体又は力伝達部の表面に設けられ、弾性部から力伝達部に入力される弾性力の少なくとも一部を補正する力補正部をさらに備える。このため、積層構造体に対して積層方向にさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0015】
特に、第4発明によれば、力伝達部は、複数点で接する1以上の弾性部から弾性力が入力される。このため、積層構造体に対して積層方向にさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0016】
第5発明によれば、蓄電装置は、弾性部から入力される弾性力を積層構造体の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から積層方向の力を分割して積層構造体に伝達する力伝達部を備える。このため、積層構造体に対して積層方向に安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1実施形態における荷重付与装置及び蓄電装置の構成の一例を示す模式斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における荷重付与装置の構成の一例を示す模式図であり、
図2(a)が側面図、
図2(b)が仰瞰図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態における荷重付与装置の動作の一例を示す模式図であり、
図3(a)が積層構造体の膨張前、
図3(b)が積層構造体の膨張後を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態における荷重付与装置が付与する荷重の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態における荷重付与装置の積層方向変位量と荷重との関係の一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態における荷重付与装置の構成の第1変形例を示す模式図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、第1実施形態における荷重付与装置の構成の第2変形例~第4変形例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態における荷重付与装置及び蓄電装置の構成の一例を示す模式斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、第2実施形態における荷重付与装置の構成の一例を示す模式側面図であり、
図9(b)は、第2実施形態における荷重付与装置の構成の一例及び第1変形例を示す模式側面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態における荷重付与装置の構成の第2変形例を示す模式側面図である。
【
図11】
図11(a)~
図11(c)は、第2実施形態における荷重付与装置の構成の第3変形例を示す模式側面図である。
【
図12】
図12は、第1実施例における荷重付与装置の積層方向変位量と荷重との関係の一例を示す模式図である。
【
図13】
図13(a)~
図13(c)は、第2実施例における荷重付与装置の積層方向変位量と補正幅及び荷重との関係の一例を示す模式図である。
【
図14】
図14(a)~
図14(b)は、第3実施例における荷重付与装置の積層方向変位量と補正幅及び荷重との関係の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態としての荷重付与装置1及び蓄電装置100の一例について詳細に説明をする。なお、各図において、積層構造体2が積層される方向を積層方向Xとし、積層方向Xと直交する積層直交方向のうち1つの方向を第1積層直交方向Yとし、積層方向X及び第1積層直交方向Yのそれぞれと直交する方向を第2積層直交方向Zとする。各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0019】
(第1実施形態:荷重付与装置1)
図面を参照して、本実施形態における荷重付与装置1の一例を説明する。
【0020】
荷重付与装置1は、例えば
図1に示すように、全固体電池を含む積層方向Xに積層された積層構造体2に荷重を付与する装置である。荷重付与装置1は、例えば積層構造体2と組み合わせることで蓄電装置100を構成する。
【0021】
荷重付与装置1は、例えば支持体10と、弾性部11と、力伝達部12と、を備える。荷重付与装置1は、弾性部11が弾性変形したとき、力伝達部12を介して積層構造体2に対して荷重を付与することができる。
【0022】
このような蓄電装置100は、荷重付与装置1の機能により、弾性部11から入力される弾性力を積層構造体2の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から積層方向Xの力を分割して積層構造体2に伝達する力伝達部12を備える。この場合、積層構造体2に対して積層方向Xに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる。
【0023】
<支持体10>
支持体10は、弾性部11を支持する。支持体10は、例えば荷重付与装置1の各構成や積層構造体2等を内部に収容可能な中空体であり、函体、角筒体、側面視コの字状の構造体、骨組み構造体等を含む。支持体10は、例えば弾性部11が弾性変形したときに積層構造体2に対して荷重を付与可能な剛性を有する材質が用いられる。支持体10は、例えば積層構造体2の周囲を覆う外装体として構成されてもよい。
【0024】
支持体10は、例えば第1支持板101と、第2支持板102と、対向板103と、を含む。第1支持板101及び第2支持板102は、例えば積層方向Xに略平行に延長され、第1積層直交方向Yに互いに離間して対向する。対向板103は、例えば第1積層直交方向Yに略平行に延長され、積層構造体2に対向して配置される。対向板103は、一端が第1支持板101と接続され、他端が第2支持板102と接続される。第1支持板101、第2支持板102、及び対向板103は、例えば内面の表面が平滑な形状でもよく、扁平形状でもよく、湾曲形状でもよい。
【0025】
支持体10は、例えば弾性部11を構成する非弾性材料からなる第1積層直交方向Yに略平行に延長された基部111を、積層方向Xに運動自在に挟持する。支持体10は、例えば基部111が第1支持板101の表面と第2支持板102の表面とから外れないように、基部111と接触する部分において、基部111の端部を積層方向Xに運動自在に遊嵌するためのレールが設けられてもよい。
【0026】
支持体10は、例えば第1支持板101と第2支持板102とが相互に対向する側の内面のうち少なくとも何れかに平滑板104を有する。すなわち、支持体10は、平滑板104において基部111を積層方向Xに運動自在に挟持する。ここで、平滑面とは、積層方向Xに対して略平行であり、積層方向Xへ運動する基部111に対してほとんど外力を作用しない面をいう。なお、本実施形態では支持体10の内面に平滑板104が取り付けられる例を説明するが、支持体10の内面が平滑板104と同様の平滑な面に加工されてもよい。
【0027】
支持体10は、例えば基部111を積層方向Xにのみ直線運動するように支持してもよい。この場合、基部111が積層方向Xを含む二次元又は三次元の運動をする場合と比べて、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0028】
支持体10の材質としては、例えば弾性定数が大きく、変形しにくい材質が用いられ、「JIS K 6899-1」に示すプラスチックや、カーボン、ガラス、セラミックス、各種金属合金、又はこれらの複合材料等が用いられる。
【0029】
<弾性部11>
弾性部11は、支持体10に支持され、自身が弾性変形して弾性力を生成する。弾性部11は、例えば
図2(a)に示すように、基部111と、第1摺動部112と、第2摺動部113と、第1嵌合部114と、第2嵌合部115と、固定部116と、弾性体117と、可動部118と、を有する。なお、弾性体117以外の弾性部11の各構成は、例えば支持体10と同様の材質が用いられてもよい。
【0030】
<基部111>
基部111は、例えば支持体10に積層方向Xに運動自在に挟持される。基部111は、例えば第1積層直交方向Yに延長される。
【0031】
基部111は、例えば第1積層直交方向Yに延長され、その両端が第1嵌合部114と第2嵌合部115とに嵌合される。なお、基部111は、例えば一部が積層方向Xに拡幅されてもよい。
【0032】
基部111の形状としては、積層構造体2に対して荷重を付与可能であり、かつ、接続される力伝達部12が基部111上を運動自在とされる形状及び剛性を有していればよく、直線状の棒体の他、少なくとも一部が積層方向Xに湾曲した湾曲体でもよく、少なくとも一部が積層方向Xに突出した凸曲面からなる紡錘体でもよい。また、基部111の材質としては、例えば支持体10と同様の材質が用いられてもよい。
【0033】
なお、基部111は、例えば接続される力伝達部12が表面から外れないように、力伝達部12と接触する部分において、力伝達部12を運動自在に遊嵌するためのレールが設けられてもよい。
【0034】
<第1摺動部112>
第1摺動部112は、例えば
図1に示すように、支持体10のうち第1支持板101又は平滑板104と接触する。第1摺動部112は、例えば
図2(a)に対応する底面図の
図2(b)に示すように、ローラR112が取り付けられており、ローラR112を介して第1支持板101又は平滑板104の表面と接触する。このとき、第1摺動部112は、ローラR112が回転することにより、第1支持板101の表面に対して積層方向Xに摺動自在とされている(
図3(a)~
図3(b)参照)。
【0035】
<第2摺動部113>
第2摺動部113は、例えば支持体10のうち第2支持板102と接触する。第2摺動部113は、例えばローラR113が取り付けられており、ローラR113を介して第2支持板102の表面と接触する。このとき、第2摺動部113は、ローラR113が回転することにより、第2支持板102の表面に対して積層方向Xに摺動自在とされている。
【0036】
<第1嵌合部114>
第1嵌合部114は、例えば基部111の一端が挿通されるとともに第1固定具B114を介して第1摺動部112に固定されることで、基部111の一端が嵌合される。
【0037】
<第2嵌合部115>
第2嵌合部115は、例えば基部111の他端が挿通されるとともに第2固定具B115を介して基部111及び第2摺動部113に固定される。このとき、第1摺動部112及び第2摺動部113が支持体10の表面に対して積層方向Xに摺動することで、基部111は積層方向Xに運動することができる。
【0038】
<固定部116>
固定部116は、固定支持される端部である。固定部116は、例えば基部111、第1摺動部112、第2摺動部113、第1嵌合部114、第2嵌合部115のうち少なくとも何れかと接続される。この場合、支持体10に固定される場合と比べて、力伝達部12が積層構造体2の膨縮に応じて積層方向X及び第1積層直交方向Yに運動しつつ、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。なお、固定部116は、例えば支持体10に固定されてもよい。
【0039】
<弾性体117>
弾性体117は、自身が弾性変形して弾性力を生成する。弾性体117は、例えば略直線状に弾性変形自在であり、固定部116と可動部118とを接続する。本実施形態では、弾性体117が第1積層直交方向Yに略直線状に弾性変形する例を説明するが、これに限定されない。弾性部11は、積層方向Xと異なる方向に略直線状に弾性変形するように配置されてもよい。
【0040】
弾性体117としては、略直線状に弾性変形自在の公知のコイルばね(圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばね)の他、板ばね、渦巻ばね、輪ばね等が用いられてよい。また、弾性体117の材質は、略直線状に弾性変形自在の公知の金属ばね(鋼ばね、銅合金ばね、ニッケル合金ばね)等が用いられてよい。
【0041】
<可動部118>
可動部118は、可動自在の端部である。可動部118は、例えば固定部116を基準として、弾性体117の弾性変形に応じて弾性方向に可動である。
【0042】
可動部118は、力伝達部12と接続される。ここで、可動部118は、積層構造体2の膨縮に応じて力伝達部12から外力を受けるとき、固定部116に近接する。すなわち、弾性体117が固定部116と可動部118とにより圧縮されて弾性変形する。その結果、可動部118は、弾性体117から弾性方向に弾性力を受け、力伝達部12に対して反力を与える。これにより、荷重付与装置1は、弾性体117が生成した弾性力を荷重として、力伝達部12を介して積層構造体2に付与することができる。
【0043】
<力伝達部12>
力伝達部12は、弾性部11と積層構造体2とに接する。力伝達部12は、弾性部11から弾性方向に入力される弾性力を、積層構造体2の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達する。力伝達部12は、力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から弾性方向とは異なる積層構造体2の積層方向Xの力を分割して、積層構造体2に伝達する。
【0044】
力伝達部12は、例えば一の部材、又は複数の部材から構成される。力伝達部12は、例えば一以上の部材121を有する。なお、力伝達部12の各構成は、例えば支持体10と同様の材質が用いられてもよい。
【0045】
<部材121>
部材121は、弾性部11から弾性方向に弾性力が入力される。部材121は、積層構造体2の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達する。部材121は、例えば
図2(a)に示すように、可動部連結部121aと、第1アーム部121bと、第1アーム連結部121cと、を有する。
【0046】
可動部連結部121aは、例えば基部111の延長方向に運動自在に基部111に遊嵌される。可動部連結部121aは、例えば可動部118に固定され、可動部118の運動に応じて基部111の延長方向に運動する。可動部連結部121aは、例えば基部111を挿通可能な中空空間を有し、基部111がその中空空間に挿通されることで、第1積層直交方向Yに運動自在に遊嵌される。なお、可動部連結部121aは、例えば中空空間を有さなくてもよい。この場合、可動部連結部121aは、基部111の表面に設けられたレールに遊嵌されることで、第1積層直交方向Yに運動自在とされてもよい。
【0047】
可動部連結部121aは、例えば基部111上を、基部111に対して第1積層直交方向Yにのみ直線運動する。この場合、可動部連結部121aが基部111に対して第1積層直交方向Yを含む二次元又は三次元の運動をする場合と比べて、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0048】
第1アーム部121bは、例えば一方向に延長された部材であり、延長方向の一端が可動部連結部121aを介して基部111に接続される。第1アーム部121bは、例えば可動部連結部121aの運動に応じて可動部連結部121aを軸として回転運動又は揺動運動するように、可動部連結部121aに軸支される。
【0049】
第1アーム部121bは、可動部連結部121aを介して弾性部11から弾性方向に弾性力が入力される。第1アーム部121bは、例えば延長方向の他端が積層構造体2に接触しており、入力された弾性力を一端から他端に向かって伝達し、積層構造体2に対して荷重として付与することができる。
【0050】
第1アーム連結部121cは、例えば第1アーム部121bの延長方向の他端に接続され、第1アーム部121bと積層構造体2又は部材121の他の部材とを連結する。第1アーム連結部121cは、例えば第1アーム部121bと積層構造体2とを連結するとき、第1アーム部121bに入力された弾性力を積層構造体2に対して荷重として付与することができる。
【0051】
ここで、従来の装置では、弾性力と付与する荷重との向きが略同一であり、また、電池の膨張の反力としての弾性力をそのまま荷重として付与するが、本発明によれば、力伝達部12が積層構造体2の膨縮に応じて回転運動又は揺動運動することにより可変の力伝達方向に力を伝達し、かつ、伝達した力の少なくとも一部から弾性方向とは異なる積層構造体2の積層方向Xの力を分割して積層構造体2に伝達することができる。
【0052】
すなわち、部材121は、弾性部11から弾性方向に入力される弾性力を積層構造体2の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から積層方向Xの力を分割して積層構造体2に伝達する。この場合、積層構造体2に対して積層方向Xに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる。
【0053】
また、力伝達部12は、例えば複数点において積層構造体2に荷重を付与する。この場合、一点において積層構造体2に荷重を付与する場合と比べて、局所的な荷重付与による全固体電池内部の亀裂発生を抑制しやすい。また、力伝達部12を積層構造体2の表面に嵌合又は固定する場合において、荷重の変動に伴う当該嵌合部分又は当該固定部分への応力を複数点に分散できる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0054】
部材121は、例えば第2アーム部121dと、第2アーム連結部121eと、第3アーム部121fと、第3アーム連結部121gと、をさらに有してもよい。このとき、部材121は、各アーム部121b、121d、121fが連結されてなる。詳しくは、第2アーム部121dは、延長方向の一端が第1アーム連結部121cに回転運動自在に軸支され、延長方向の他端が第2アーム連結部121eを介して第3アーム部121fと連結される。また、第3アーム部121fは、延長方向の一端が第2アーム連結部121eに回転運動自在に軸支され、延長方向の他端が第3アーム連結部121gを介して基部111と連結されるとともに、第3アーム連結部121gに回転運動自在に軸支される。第3アーム連結部121gは、例えば可動部連結部121aと同様の構成を有してもよく、基部111の延長方向(第1積層直交方向Y)に運動自在に基部111に遊嵌されてよい。
【0055】
部材121は、例えばローラR121をさらに有してもよい。ローラR121は、例えば第1アーム連結部121cに取り付けられるローラR121cと、第2アーム連結部121eに取り付けられるローラR121eと、を有する。部材121は、例えば第2アーム部121dが各ローラR121c、R121eを介して積層構造体2の表面と接触する。このとき、第2アーム部121dは、各ローラR121c、R121eが回転することにより、積層構造体2の表面に対して摺動自在とされている。ここで、積層構造体2が全固体電池の膨縮に伴い膨縮するとき、部材121は、例えば第1アーム部121bの一端、第2アーム部121dの両端、第3アーム部121fの一端、あるいは各ローラR121c、R121eを介して、積層構造体2に荷重を付与することができる。なお、第2アーム部121dは、例えば第1アーム連結部121c及び第2アーム連結部121eの少なくとも何れかが積層構造体2の表面に設けられたレールに遊嵌されることで、積層構造体2の表面に沿って運動自在とされてもよい。
【0056】
部材121は、例えば
図2(b)に示すように、各アーム部121b、121d、121fの延長方向の他端が、延長方向の一端よりも第2積層直交方向Zにずれて相互に独立して運動自在とされてもよい。すなわち、力伝達部12は、各アーム部121b、121d、121fを介して第2積層直交方向Zにおいて異なる複数点において積層構造体2に荷重を付与する。この場合、積層構造体2に対して積層方向Xに面的に安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる。
【0057】
部材121は、例えば
図2(a)に示すように、第4アーム部121b’と、第4アーム連結部121c’とをさらに有してもよい。なお、第4アーム部121b’は第1アーム部121bに、第4アーム連結部121c’は第1アーム連結部121cに、それぞれ対応する構成及び機能を有する。
【0058】
第4アーム部121b’は、例えば一方向に延長された部材であり、延長方向の一端が可動部連結部121aを介して基部111に接続される。第4アーム部121b’は、例えば基部111に対して第1アーム部121bとは反対側において、可動部連結部121aの運動に応じて可動部連結部121aを軸として回転運動又は揺動運動するように、可動部連結部121aに軸支される。
【0059】
第4アーム部121b’は、可動部連結部121aを介して弾性部11から弾性方向に弾性力が入力される。第4アーム部121b’は、例えば延長方向の他端が対向板103に接触しており、入力された弾性力を一端から他端に向かって伝達し、対向板103に対して荷重として付与することができる。
【0060】
第4アーム連結部121c’は、例えば第4アーム部121b’の延長方向の他端に接続され、第4アーム部121b’と対向板103又は部材121の他の部材とを連結する。第4アーム連結部121c’は、例えば第1アーム部121bと対向板103とを連結するとき、第4アーム部121b’に入力された弾性力を対向板103に対して荷重として付与することができる。
【0061】
すなわち、部材121は、弾性部11から弾性方向に入力される弾性力を積層構造体2の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から積層方向Xの力を分割して対向板103に伝達する。ここで、可動部連結部121aに入力される弾性部11からの弾性力は、第1アーム部121bと第4アーム部121b’とに分散され、積層構造体2に付与される荷重の変化が抑制されやすい。この場合、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率のさらなる向上を図ることができる。
【0062】
部材121は、例えば第5アーム部121d’と、第5アーム連結部121e’と、第6アーム部121f’と、をさらに有してもよい。なお、第5アーム部121d’は第2アーム部121dに、第5アーム連結部121e’は第2アーム連結部121eに、第6アーム部121f’は第3アーム部121fに、それぞれ対応する構成及び機能を有する。このとき、部材121は、各アーム部121b’、121d’、121f’が連結されてなる。詳しくは、第5アーム部121d’は、延長方向の一端が第4アーム連結部121c’に回転運動自在に軸支され、延長方向の他端が第5アーム連結部121e’を介して第6アーム部121f’と連結される。また、第6アーム部121f’は、延長方向の一端が第5アーム連結部121e’に回転運動自在に軸支され、延長方向の他端が第3アーム連結部121gを介して基部111と連結されるとともに、第3アーム連結部121gに回転運動自在に軸支される。
【0063】
部材121のローラR121は、例えば第4アーム連結部121c’に取り付けられるローラR121c’と、第5アーム連結部121e’に取り付けられるローラR121e’と、をさらに有してもよい。部材121は、例えば第5アーム部121d’が各ローラR121c’、R121e’を介して対向板103の表面と接触する。このとき、第5アーム部121d’は、各ローラR121c’、R121e’が回転することにより、対向板103の表面に対して摺動自在とされている。ここで、積層構造体2が全固体電池の膨縮に伴い膨縮するとき、部材121は、例えば第4アーム部121b’の一端、第5アーム部121d’の両端、第6アーム部121f’の一端、あるいは各ローラR121c’、R121e’を介して、対向板103に荷重を付与することができる。なお、第5アーム部121d’は、例えば第4アーム連結部121c’及び第5アーム連結部121e’の少なくとも何れかが対向板103の表面に設けられたレールに遊嵌されることで、対向板103の表面に沿って運動自在とされてもよい。
【0064】
<積層構造体2>
積層構造体2は、積層方向Xに積層された構造体であり、公知の全固体電池を含む。積層構造体2は、例えば
図1に示すように、正極材21と、固体電解質22と、負極材23と、保護材24と、を含み、これらが断面視において積層方向Xに積層される。
【0065】
荷重付与装置1が積層構造体2に対して積層方向Xに荷重を付与することで、積層構造体2は、保護材24を介して正極材21及び固体電解質22が負極材23に向かって押圧され、その結果、正極材21と固体電解質22との界面、又は負極材23と固体電解質22との界面の接触を良好に保つことができる。
【0066】
(第1実施形態:荷重付与装置1の動作)
次に、図面を参照して、本実施形態における荷重付与装置1の動作の一例を説明する。
【0067】
荷重付与装置1の動作については、例えば
図3(a)に示す電池収縮モードと、
図3(b)に示す電池膨張モードと、の2つに大別される。
図3(a)~
図3(b)は、各構成の説明のため弾性体117の記載を省略している。なお、
図3(b)に示す破線で示す六角形の各辺は、
図3(a)における互いに連結された第1アーム部121b、第2アーム部121d、第3アーム部121fと、互いに連結された第4アーム部121b’、第5アーム部121d’、第6アーム部121f’の位置をそれぞれ示し、六角形の頂点は、
図3(a)における可動部連結部121a、第1アーム連結部121c、第2アーム連結部121e、第3アーム連結部121g、第4アーム連結部121c’、第5アーム連結部121e’の位置をそれぞれ示す。
【0068】
荷重付与装置1は、
図3(b)に示すように、電池収縮モードから電池膨張モードへの移行に伴い、弾性部11が積層方向Xに運動する。また、弾性部11の積層方向Xへの運動に伴い、可動部連結部121aと、第1アーム部121bと、第1アーム連結部121cと、第2アーム部121dと、第2アーム連結部121eと、第3アーム部121fと、第3アーム連結部121gとが、積層方向Xに運動する。また、積層方向Xへの運動と同時に、可動部連結部121aと、第1アーム部121bと、第1アーム連結部121cと、第2アーム部121dと、第2アーム連結部121eと、第4アーム部121b’と、第4アーム連結部121c’と、第5アーム部121d’と、第5アーム連結部121e’とが、第1積層直交方向Yに運動する。なお、電池収縮モードから電池膨張モードへの移行において、支持体10は、積層方向X及び第1積層直交方向Yに運動しない。
【0069】
まず、積層方向Xの運動の詳細について説明する。電池収縮モードから電池膨張モードへの移行に伴い、積層構造体2は、積層方向Xのうち膨張方向(積層構造体2から荷重付与装置1に向かう方向)に膨張する。
【0070】
積層構造体2が膨張方向に積層方向変位量ΔHだけ膨張したとき、力伝達部12は、第1アーム連結部121cと、第2アーム部121dと、第2アーム連結部121eとが、膨張方向に積層方向変位量ΔHだけ運動する。このとき、第1アーム部121bは、延長方向の他端に第1アーム連結部121cを介して入力された膨張方向の力を延長方向の一端まで伝達するとともに、可動部連結部121aを介して基部111に伝達する。また、第3アーム部121fは、延長方向の一端に第2アーム連結部121eを介して入力された膨張方向の力を延長方向の他端まで伝達するとともに、第3アーム連結部121gを介して基部111に伝達する。その結果、可動部連結部121aと、第3アーム連結部121gと、基部111とは、膨張方向に積層方向変位量ΔIだけ運動する。
【0071】
なお、基部111の膨張方向への運動に伴い、第4アーム連結部121c’、第5アーム部121d’、第5アーム連結部121e’にも膨張方向の力が作用するが、同時に対向板103から積層方向Xのうち縮小方向(荷重付与装置1から積層構造体2に向かう方向)の垂直抗力が作用する。ここで、第4アーム連結部121c’と、第5アーム部121d’と、第5アーム連結部121e’とは、膨張方向の力と縮小方向の力とがつり合うため、積層方向Xには運動しない。
【0072】
次に、第1積層直交方向Yの運動の詳細について説明する。
【0073】
第3アーム部121fは、延長方向の一端に第2アーム連結部121eを介して入力された膨張方向の力を延長方向の他端まで伝達するとき、延長方向の力成分のみを分割して他端まで伝達するとともに、延長方向以外の力成分をトルクとして第3アーム連結部121gを軸として基部111に近接するように回転運動する。その結果、第2アーム連結部121eは、第1積層直交方向Yに第1積層直交方向変位量ΔJだけ運動する。
【0074】
第2アーム部121dと第1アーム連結部121cとは、第2アーム連結部121eの運動に伴い、積層構造体2の表面に沿って第1積層直交方向変位量ΔKだけ運動する。
図3(b)の例では、第2アーム部121dと第1アーム連結部121cとは、第2アーム連結部121eを軸に回転運動せずに第1積層直交方向Yに運動しており、このときΔK=ΔJとなる。
【0075】
第1アーム部121bは、第1アーム連結部121cの第1積層直交方向Yの運動に伴い第1積層直交方向Yに運動する。また、第1アーム部121bは、延長方向の他端に第1アーム連結部121cを介して入力された膨張方向の力を延長方向の一端まで伝達するとき、延長方向の力成分のみを分割して一端まで伝達するとともに、延長方向以外の力成分をトルクとして可動部連結部121aを軸として基部111に近接するように回転運動する。その結果、可動部連結部121aは、第1積層直交方向Yに第1積層直交方向変位量ΔLだけ運動する。このときΔL=ΔJ+ΔKとなる。
【0076】
また、第6アーム部121f’は、第3アーム部121fの回転運動と同様に、延長方向の一端に第5アーム連結部121e’を介して入力された縮小方向の力を延長方向の他端まで伝達するとき、延長方向の力成分のみを分割して他端まで伝達するとともに、延長方向以外の力成分をトルクとして第3アーム連結部121gを軸として基部111に近接するように回転運動する。その結果、第5アーム連結部121e’は、第2アーム連結部121eと同様に、第1積層直交方向Yに第1積層直交方向変位量ΔJだけ運動する。
【0077】
第5アーム部121d’と第4アーム連結部121c’とは、第5アーム連結部121e’の運動に伴い、対向板103の表面に沿って第1積層直交方向変位量ΔKだけ運動する。
図3(b)の例では、第5アーム部121d’と第4アーム連結部121c’とは、第5アーム連結部121e’を軸に回転運動せずに第1積層直交方向Yに運動しており、このときΔK=ΔJとなる。
【0078】
第4アーム部121b’は、第4アーム連結部121c’の第1積層直交方向Yの運動に伴い第1積層直交方向Yに運動する。また、第4アーム部121b’は、延長方向の他端に第4アーム連結部121c’を介して入力された縮小方向の力を延長方向の一端まで伝達するとき、縮小方向の力成分のみを分割して一端まで伝達するとともに、延長方向以外の力成分をトルクとして可動部連結部121aを軸として基部111に近接するように回転運動する。その結果、可動部連結部121aは、第1積層直交方向Yに第1積層直交方向変位量ΔLだけ運動する。
【0079】
可動部118は、可動部連結部121aの運動に伴い、基部111の延長方向に沿って第1積層直交方向変位量ΔLだけ運動する。
図3(b)の例では、可動部連結部121aは、第1積層直交方向Yに運動している。
【0080】
弾性体117は、可動部118の運動により可動部118と固定部116との間で圧縮され、弾性方向に対する弾性力を生成する。その後、弾性体117により生成された弾性力は、可動部118、可動部連結部121a、第1アーム部121b、第1アーム連結部121cを介して積層構造体2に伝達される。
【0081】
以上の動作により、荷重付与装置1は、積層構造体2に対して積層方向Xに安定性の高い荷重を付与することができる。
【0082】
次に、
図4を参照して、可動部連結部121aに対して作用する力Fと、積層構造体2に対して付与される荷重Pとの関係について説明する。なお、力Fの方向に対する第1アーム部121b及び第4アーム部121b’の延長方向の角度をαとする。
【0083】
基部111は、例えば
図4に示すように、弾性体17から可動部連結部121aに向かう方向であり、かつ、第1積層直交方向Yに対して角度θだけ傾斜した方向に力F
Dを受ける(
図1~
図3の例はθ=0の場合を示す)。このとき、可動部連結部121aは、例えば基部111を介して、第1積層直交方向Yのうち弾性体17から可動部連結部121aに向かう方向に力F(=F
D×cosθ)を受ける。その後、可動部連結部121aは、第1アーム部121b及び第4アーム部121b’に対して、力Fのうち、第1アーム部121b及び第4アーム部121b’の延長方向に伝達する伝達方向に分割した伝達方向成分(F
B=1/2×F/cosα)だけ荷重を付与する。その後、第1アーム部121bは、積層構造体2に対して、伝達方向成分のうち、積層方向Xに分割した積層方向成分(=F
B×sinα=1/2×F×tanα)だけ荷重を付与する。
【0084】
この場合、荷重Pは、力FDのうち第1積層直交方向Yの力Fの積層方向成分と、積層方向Xの力FPと、の和として、式[1]のとおり算出される。
【0085】
【0086】
次に、
図5を参照して、積層構造体2の膨張の程度を示す積層方向変位量ΔHと、積層構造体2に付与される荷重Pとの関係について説明する。
図5中の実線は本発明の荷重Pを、破線は従来技術の荷重Pを、一点鎖線はそれぞれの初期荷重(基準線)を示している。なお、
図5に示す積層方向変位量ΔH及び荷重Pの数値は、同様の単位系において比較可能に相対的に示された値を示しているため、任意単位a.u.(arbitrary unit)を適用することができる。また、
図5に示す積層方向変位量ΔHの範囲においては、例えば基部111が対向板103に接触するなど弾性部11の積層方向Xへの運動が制限される状態に至っておらず、また可動部118が固定部116に接触するなど弾性部11の第1積層直交方向Yへの運動が制限される状態に至っていないものとする。
【0087】
荷重付与装置1が積層構造体2に付与する荷重Pは、例えば
図5に示すとおり、積層方向変位量ΔHが0(a.u.)から約30(a.u.)までの間上昇した後、約30(a.u.)をピークとして減少し、約70(a.u.)を超過した時点で0(a.u.)における荷重Pを下回る。すなわち、弾性部11による弾性力の方向と力伝達部12による積層構造体2に付与する荷重の方向とが異なる本発明は、
図5の破線で示した、弾性力の方向と荷重(積層構造体2に付与する荷重)の方向とが同じである従来技術と比べて、荷重Pの変化が明確に抑制されている。
【0088】
(第1実施形態:荷重付与装置1の第1変形例)
弾性部11は、例えば
図6に示すように、第1摺動部112と、固定部116と、弾性体117と、可動部118とを有し、第2摺動部113を有さなくてもよい。この場合、力伝達部12は、第2摺動部113の代わりに第2支持板102の表面に対して積層方向Xに摺動自在とされてよい。
【0089】
図6の例では、力伝達部12は、可動部連結部121aに接続されるローラR121aをさらに有し、ローラR121aが対向板103の表面上を第1積層直交方向Yに摺動可能とされている。また、第2アーム連結部121eに接続されるローラR121eが第2支持板102の表面上を積層方向Xに摺動可能とされている。なお、
図6に示す破線は、それぞれ電池収縮モード時の可動部連結部121a、第1アーム部121b、第1アーム連結部121c、第2アーム部121d、第2アーム連結部121eの位置をそれぞれ示しており、
図3(b)に示す例と同様に運動する。
【0090】
この場合において、可動部連結部121aに対して作用する力Fと、積層構造体2に対して付与される荷重Pとの関係は、上述の式[1]と同様である。詳しくは、上述の式[1]において、θ=0とし、第4アーム部121b’が存在しないためP=F×tanαとして得られる等式により説明することができる。
【0091】
(第1実施形態:荷重付与装置1の第2変形例)
荷重付与装置1は、例えば
図7(a)に示すように、第1の弾性体117a(弾性体117)を備える第1の荷重付与装置1aと、第2の弾性体117b(弾性体117)を備える第2の荷重付与装置1bとを備え、各荷重付与装置1a、1bがそれぞれ独立して運動できるように配置されてもよい。この場合、一の荷重付与装置1を用いる場合と比べて、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに面的に安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0092】
荷重付与装置1は、例えば
図7(b)に示すように、第1の弾性体117a(弾性体117)を備える第1の荷重付与装置1aと、第2の弾性体117b(弾性体117)を備える第2の荷重付与装置1bとを備え、各荷重付与装置1a、1bが積層構造体2を挟持するように配置されてもよい。この場合、積層構造体2の膨張方向(例えば積層方向に平行な2方向のうちの何れか)に応じて付与する荷重の向き及び荷重量を調整することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0093】
荷重付与装置1は、例えば
図7(c)に示すように、第2アーム部121d、第2アーム連結部121e、第5アーム部121d’、第5アーム連結部121e’を有さず、第3アーム部121fが第1アーム連結部121cに連結され、第6アーム部121f’が第4アーム連結部121c’に連結された力伝達部12を備えてもよい。また、荷重付与装置1は、可動部連結部121aを弾性運動自在に支持する弾性体117-1(弾性体117)と、第3アーム連結部121gを弾性運動自在に支持する弾性体117-2(弾性体117)と、を備えてもよい。この場合、力伝達部12の部材点数を低減することができる。これにより、荷重付与装置1の製造性及び修復性の向上を図ることができる。なお、基部111を積層方向Xへ適切に運動させるために、第1アーム連結部121cが積層構造体2の表面に遊嵌され、第4アーム連結部121c’が対向板103の表面に遊嵌されてもよい。
【0094】
なお、本実施形態においては、弾性体117が圧縮による弾性変形に伴い積層構造体2に荷重を付与する例を説明したが、弾性体117は、例えば可動部連結部121aと第3アーム連結部121gとの間において可動部連結部121aと連結されることにより、引張による弾性変形に伴い積層構造体2に荷重を付与してもよい。
【0095】
本実施形態によれば、荷重付与装置1及び蓄電装置100は、弾性部11から入力される弾性力を積層構造体2の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から積層方向Xの力を分割して積層構造体2に伝達する力伝達部12を備える。このため、積層構造体2に対して積層方向Xに安定性の高い荷重Pを付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる。
【0096】
(第2実施形態:荷重付与装置1)
図面を参照して、本実施形態における荷重付与装置1の一例を説明する。本実施形態は、荷重付与装置1が弾性力の少なくとも一部を補正する力補正部13をさらに備える点で、第1実施形態とは異なる。なお、上述の内容と同様の構成については、説明を省略する。
【0097】
<力補正部13>
力補正部13は、例えば
図8に示すように、支持体10の内面に設けられてよい。具体的には、力補正部13として例えば積層方向Xに対して傾斜した傾斜板131が第1支持板101の内面に設けられてもよい。
【0098】
傾斜板131は、例えば少なくとも一部の面が積層方向Xに対して傾斜しており、傾斜板131の表面と第2支持板102の内面との間隔は、例えば積層方向X上を積層構造体2に近接する方向に向かうにつれて拡幅又は狭幅される。ここで、傾斜板131の表面と第2支持板102の内面との間隔が拡幅されるほど弾性体117に加わる圧縮力が小さくなるように補正され、一方でその間隔が狭幅されるほど弾性体117に加わる圧縮力が大きくなるように補正される。なお、本実施形態では支持体10の内面に傾斜板131が取り付けられる例を説明するが、支持体10の内面が傾斜板131と同様の傾斜した面に加工されてもよい。
【0099】
すなわち、荷重付与装置1は、支持体10の表面に設けられ、弾性部11から力伝達部12に入力される弾性力の少なくとも一部を補正する力補正部13をさらに備える。この場合、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0100】
傾斜板131は、例えば
図9(a)に示すように、側面視で表面が凹曲面状である。
図9(a)の例では、第1摺動部112は、積層方向Xに対して所定の傾斜角度で設計された傾斜板131の表面と接触している。ここで、傾斜板131は、初期位置から積層構造体2の膨張方向(
図9(a)の上方)に表面上を第1摺動部112が移動する場合において、弾性体117の弾性力を増強させる増強補正域131aと、弾性体117の弾性力を低減させる低減補正域131bと、を有する。これは、増強補正域131aが膨張方向に向かうにつれて第2支持板102との間隔が減幅され、低減補正域131bが膨張方向に向かうにつれて第2支持板102との間隔が拡幅されることによる。また、増強補正域131a又は低減補正域131bは、各領域内において傾斜板131の表面の傾斜角度すなわち表面の接線の傾きが異なってもよく、初期位置から所定の補正幅ΔYだけ第1積層直交方向Yにずれた位置に表面が形成されてもよい。このとき、第1摺動部112は、傾斜板131の表面上で積層方向Xの座標に応じて傾斜板131から弾性方向に受ける力が異なるため、斜面の傾斜角度に応じて弾性力が変化する。このため、傾斜板131の表面は、第1摺動部112に対する力作用点の軌跡に相当し、積層構造体2の膨張の程度、すなわち積層方向Xの座標に応じて傾斜角度を設計して傾斜板131の表面に補正曲線(補正曲面)を形成することで、積層構造体2に対する積層方向Xの荷重が平滑板104と比べて均一化されやすい傾斜板131の形状を特定することができる。
【0101】
(第2実施形態:荷重付与装置1の第1変形例)
傾斜板131は、例えば
図9(b)に示すように、一部において弾性体117の弾性力が初期位置から増減しない領域131cを含んでもよい。弾性力が増減しない領域131cは、例えば表面が側面視で積層方向Xに平行な直線状の平滑面であり、すなわち、傾斜板131の表面と第2支持板102との間隔がほぼ変化しない。積層方向Xに略平行な平滑面を含んでもよい。
【0102】
(第2実施形態:荷重付与装置1の第2変形例)
力伝達部12は、例えば
図10に示すように、部材121の表面に力補正部13として傾斜面132が形成される。
【0103】
弾性部11は、傾斜面132を介して力伝達部12と接触する。弾性部11は、第1支持板101上に設けられた基部直動案内部111sをさらに有し、固定部116が基部直動案内部111s又は第1支持板101に固定されており、積層方向Xには運動しない。
【0104】
部材121は、傾斜面132が形成された一端で弾性部11と接触し、他端で第2支持板102と接触する。部材121は、第2支持板102上を摺動することで積層方向Xに運動自在であり、第1積層直交方向Yには運動しない。傾斜面132は、側面視で、弾性部11に対して膨出した円弧形状であり、弾性部11の延長方向に対する円弧の接線方向の傾斜角度が縮小方向(
図10において下方向)に向かうにつれて最大値90°まで大きくなり、膨張方向(
図10において上方向)に向かうにつれて小さくなる。なお、傾斜角度=90°のとき、弾性力Fは部材121の表面に対して垂直に付与されるため、部材121に積層方向Xの力成分が伝達せず、積層構造体2に荷重Pが付与されない。
【0105】
この場合において、積層構造体2の膨張により部材121は積層方向Xに直線運動し、傾斜面132の表面と第1支持板101の内面との間隔が狭幅されるため、弾性力Fが増加する。また、弾性部11が部材121の縮小方向側、すなわち傾斜角度がより大きい面に接触する。その結果、部材121に伝達する積層方向Xの力成分が小さくなり、積層構造体2に付与される荷重Pを減少させる補正量が大きくなる。一方で、積層構造体2の縮小により弾性部11がより傾斜角度の小さい面に接触する。その結果、部材121に伝達する積層方向Xの力成分が大きくなり、積層構造体2に付与される荷重Pを減少させる補正量が小さくなる。すなわち、積層構造体2が膨張するほど弾性力Fが減少されやすく、縮小するほど弾性力Fが減少されにくい。この場合、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重Pを付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0106】
(第2実施形態:荷重付与装置1の第3変形例)
力伝達部12は、例えば
図11(a)に示すように、部材121の表面に力補正部13として複数の傾斜面132(第1傾斜面132a、第2傾斜面132b)が形成される。なお、部材121及び傾斜面132の形状及び機能、弾性力Fと荷重Pとの関係については、
図10と同様である。
【0107】
弾性部11は、第1傾斜面132aと接触する第1弾性部11aと、第2傾斜面132bと接触する第2弾性部11bと、を有する。第1弾性部11aは、端部が第1支持板101に固定され、第1積層直交方向Yに運動するように案内される。第2弾性部11bは、端部が第2支持板102に固定され、第1積層直交方向Yに運動するように案内される。
【0108】
この場合において、積層構造体2の膨張により部材121は積層方向Xに直線運動し、第1傾斜面132aの表面と第1支持板101の内面との間隔が狭幅されるとともに、第2傾斜面132bの表面と第2支持板102の内面との間隔が狭幅されるため、弾性力Fが増加する。また、第1弾性部11a及び第2弾性部11bが部材121の縮小方向側、すなわち傾斜角度がより大きい面に接触する。その結果、部材121に伝達する積層方向Xの力成分が小さくなり、積層構造体2に付与される荷重Pを減少させる補正量が大きくなる。一方で、積層構造体2の縮小により第1弾性部11a及び第2弾性部11bがより傾斜角度の小さい面に接触する。その結果、部材121に伝達する積層方向Xの力成分が大きくなり、積層構造体2に付与される荷重Pを減少させる補正量が小さくなる。すなわち、積層構造体2が膨張するほど弾性力Fが減少されやすく、縮小するほど弾性力Fが減少されにくい。この場合、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重Pを付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0109】
また、力伝達部12は、複数点で接する第1弾性部11a及び第2弾性部11bから弾性力が入力される。この場合、積層構造体2に対して積層方向にさらに安定性の高い荷重Pを付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0110】
弾性部11は、例えば
図11(b)に示すように、板バネが用いられてよい。このとき、傾斜面132は、膨張方向に反発するように支持体10に固定された板バネと接触してもよい。また、傾斜面132は、例えば
図11(c)に示すように、圧縮方向に反発するように支持体10に固定された板バネの可動面と接触してもよい。なお、
図11(b)~
図11(c)に示す破線は、それぞれ電池膨張モード時の弾性部11及び部材121の位置をそれぞれ示している。
【0111】
力伝達部12は、板バネの第1弾性部11a及び板バネの第2弾性部11bと同等の機能を有する円筒型、環状又は角筒型の一の板バネが用いられてもよい。この場合も同様に、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重Pを付与することができ、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0112】
また、この場合において、部材121は可撓性又は弾性を有する材質が用いられてよい。この場合、荷重Pの方向がぶれにくく、かつ、部材121が自ら膨縮することで積層構造体2の膨縮の幅を所定量吸収することができ、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重Pを付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0113】
本実施形態によれば、荷重付与装置1は、支持体10又は力伝達部12の表面に設けられ、弾性部11から力伝達部12に入力される弾性力Fの少なくとも一部を補正する力補正部13をさらに備える。このため、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重Pを付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、力伝達部12は、複数点で接する1以上の弾性部11から弾性力Fが入力される。このため、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重Pを付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【実施例】
【0115】
本実施例では、荷重付与装置1を用いたときの積層方向変位量ΔHに対する荷重Pについて、
図1に示す平滑板104を有する荷重付与装置1を用いた場合と、
図8に示す傾斜板131を有する荷重付与装置1を用いた場合と、
図10に示す傾斜板131を有する荷重付与装置1を用いた場合と、のそれぞれについて、シミュレーション結果を説明する。
【0116】
本シミュレーションでは、
図1又は
図8に示す例については、力Fの方向に対する第1アーム部121b及び第4アーム部121b’の延長方向の角度αについて、初期角度α
0=30(°)、35(°)、40(°)、45(°)としたときの荷重Pをそれぞれ算出した。
図10に示す例については、力Fの方向に対する傾斜面132の法線方向の角度αについて同様に初期角度α
0(初期荷重P
0)を設定したときの荷重Pをそれぞれ算出した。
【0117】
本シミュレーションの前提条件としては、次のとおりである。力伝達部12の第1アーム部121b、第2アーム部121d、第3アーム部121f、第4アーム部121b’、第5アーム部121d’、第6アーム部121f’の長さLAは、それぞれ100(a.u.)とした。また、弾性部11の可動部118の初期圧縮量(初期長さ)L0を20(a.u.)、ばね定数kを0.3(a.u.)、ばね初期弾性力F0を6(a.u.)とした。このとき、式[1]により、初期角度α0=40(°)における初期荷重P0は約2.52(a.u.)となる。なお、上述の「初期」とは、積層方向変位量ΔHが0(a.u.)であるときの値をいう。
【0118】
また、積層方向変位量ΔH、可動部連結部121aの積層方向変位量ΔI、可動部連結部121aの第1積層直交方向変位量ΔL、弾性体117の弾性力F、補正幅ΔYについては、以下の[式2]~[式10]に基づいて算出した。なお、[式2]及び[式4]の「2」と、[式3]の「1/2」とは、力伝達部12に対する第1アーム部121b及び第4アーム部121b’の延長方向の角度が互いに同じ角度αを維持しながら変化することに基づく。[式7]は、荷重Pが初期荷重P0から変化せずに一定値を維持することに基づく。[式8]については、[式7]の荷重Pについて[式1]を代入し、[式1]の力FDについて[式5]を、[式5]の第1積層直交方向変位量ΔLについて[式4]をそれぞれ代入した上で、両辺に2/kを乗じて導出した。[式9]は、[式8]についてΔYの二次方程式として整理して導出した。[式10]については、[式9]について解の公式を適用してΔYの解として導出した。
【0119】
【0120】
<実施例1:
図1の荷重付与装置1を用いた場合>
図1に示すように、平滑板104を有する荷重付与装置1を用いた場合のシミュレーション結果を
図12に示す。
図12によれば、初期角度α
0に応じて、荷重Pが所定値をピークとして抑制される。また、荷重付与装置1は、積層方向変位量ΔHの許容量に応じて初期角度α
0が設定されることで、積層構造体2に付与する荷重Pの範囲を制御することができる。
【0121】
以上から、荷重付与装置1によれば、弾性力の方向と荷重の方向とが同じである従来技術と比べて荷重Pの変化を抑制でき、積層構造体2に対して積層方向Xに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる。また、初期角度α0の設定に応じて荷重Pの変化をさらに抑制でき、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0122】
<実施例2:
図8に示す荷重付与装置1を用いた場合>
図8に示すように、傾斜板131を有する荷重付与装置1を用いた場合について、初期角度α
0=30(°)、35(°)、40(°)、45(°)としたときの荷重Pをそれぞれ算出した。傾斜板131は、初期角度に応じて積層方向変位量ΔHに対応する補正幅ΔYが
図13(a)に示すとおり設計されている。補正幅ΔYは、初期角度α
0ごとに積層方向変位量ΔH=0の初期荷重P
0と略同値となる荷重Pを付与可能な角度θ(上述の式1参照)に基づいて算出する。
【0123】
傾斜板131を有する荷重付与装置1を用いた場合のシミュレーション結果を
図13(b)に示す。
図13(b)によれば、
図13(a)に示す補正幅ΔYを満足する傾斜面132を適用することで、初期角度α
0に応じて、荷重Pが初期荷重から略変化しない。
【0124】
なお、
図13(c)は、
図1に示す荷重付与装置1の荷重P(補正前荷重)と、本実験例の荷重P(補正後荷重)及び補正幅ΔYと、の関係を示している。
図13(a)に示す補正幅ΔYを満足する傾斜板131を適用することで、積層方向変位量ΔHが0~90(a.u.)の位置で荷重Pを均一化することができる。すなわち、
図13(a)に示す補正幅ΔYが、荷重Pの変化を最も抑制できる傾斜板131の傾斜表面の最適形状であるといえる。
【0125】
以上から、
図8に示す荷重付与装置1によれば、荷重Pの変化をさらに抑制でき、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0126】
<実施例3:
図10の荷重付与装置1を用いた場合>
図10に示すように、弾性部11が力伝達部12の曲面上を運動する荷重付与装置1を用いた場合を説明する。なお、本実施例においては、傾斜板131表面の初期位置を基準とした第1積層直交方向Yの補正幅ΔYと区別するため、部材121の傾斜面132表面の初期位置を基準とした第1積層直交方向Yの補正幅ΔY’とする。詳しくは、
図10の傾斜板131表面の座標(X、Y)について、基準座標(H
0、Y’
0)、力作用位置の座標(H、Y’)とし、積層方向Xの差分を積層方向変位量ΔH、第1積層直交方向Yの差分を補正幅ΔY’とした。また、傾斜面132に力Fが作用する方向(力作用点法線方向)は、力Fの方向(
図10の第1積層直交方向Y)に対して傾きα
1だけ傾斜するものとし、このとき、力作用点接線方向も積層方向Xに対して傾きα
1だけ傾斜する。また、基準座標と力作用位置の座標とを通過する直線は積層方向Xに対して傾きα
2だけ傾斜するものとした。
【0127】
また、荷重P、弾性体117の弾性力F、補正幅ΔY’については、上述の[式7]、及び以下の[式11]~[式15]に基づいて算出した。[式14]は、[式7]に[式11]~[式13]を代入した結果を示す。[式15]については、[式14]について解の公式を適用して補正幅ΔY’の解として導出した。なお、[式12]のΔY’
0は、第1積層直交方向Yについて基準座標のY’
0との差分の初期値(補正幅ΔY’の初期値)を示す。また、[式11]のα(
図10中のα
1)と[式13]のα(
図10中のα
2)とは、荷重Pについて傾斜面132上の隣り合う2つの測定点が非常に近い場合、すなわちΔY’、ΔL、ΔHが何れも十分小さい場合を仮定して、α=α
1=α
2とみなしている。また、[式15]の補正幅ΔY’の導出式は、初期角度α
0の記載がないが、初期角度α
0が荷重P=初期荷重P
0となるときの角度αに相当するため、初期角度α
0に応じて初期荷重P
0が変化し、その結果、補正幅ΔY’が異なる値を取る。
【0128】
【0129】
[式15]によれば、補正幅ΔY’は、例えば
図14(a)に示すように積層方向変位量ΔHの平方根に比例することがわかる。また、
図14(a)に示す補正幅ΔY’を満足する傾斜面132を適用することで、例えば
図14(b)に示すように、積層方向変位量ΔHが0~40(a.u.)の位置で荷重Pを均一化することができる。すなわち、
図14(a)に示す補正幅ΔY’が傾斜面132の傾斜表面の最適形状であるといえる。
【0130】
以上から、
図10に示す荷重付与装置1によれば、荷重Pの変化をさらに抑制でき、積層構造体2に対して積層方向Xにさらに安定性の高い荷重を付与することができる。これにより、全固体電池の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0132】
100 蓄電装置
1 荷重付与装置
10 支持体
101 第1支持板
102 第2支持板
103 対向板
104 平滑板
11 弾性部
111 基部
112 第1摺動部
113 第2摺動部
114 第1嵌合部
115 第2嵌合部
116 固定部
117 弾性体
118 可動部
12 力伝達部
121 部材
13 力補正部
131 傾斜板
132 傾斜面
2 積層構造体
21 正極材
22 固体電解質
23 負極材
24 保護材
X 積層方向
Y 第1積層直交方向
Z 第2積層直交方向
【要約】
【課題】全固体電池の耐久性及びエネルギー消費効率の向上を図ることができる荷重付与装置、及び蓄電装置を提供する。
【解決手段】荷重付与装置1は、全固体電池の積層構造体2に荷重を付与する荷重付与装置1であって、支持体10と、支持体10から支持され、自身が弾性変形して弾性力を生成する弾性部11と、弾性部11と積層構造体2とに接し、弾性部11から入力される弾性力を積層構造体2の膨縮に応じて可変の力伝達方向に伝達した力の少なくとも一部から積層構造体2の積層方向の力を分割して積層構造体2に伝達する力伝達部12と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1