(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】パドル用把持補助具
(51)【国際特許分類】
B63H 16/04 20060101AFI20250417BHJP
【FI】
B63H16/04
(21)【出願番号】P 2024210603
(22)【出願日】2024-12-03
【審査請求日】2024-12-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518397847
【氏名又は名称】株式会社ラーテルハート
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128141
【氏名又は名称】飯田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】堀江 圭馬
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第214397171(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104159818(CN,A)
【文献】米国特許第05387143(US,A)
【文献】米国特許第06328617(US,B1)
【文献】中国実用新案第214241202(CN,U)
【文献】中国実用新案第219428352(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0331575(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0192257(US,A1)
【文献】国際公開第2010/118460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パドルのシャフトに取り付けられるパドル用把持補助具であって、
前記パドルの使用者が前記シャフトを把持する際に、該使用者の第一の指と第二の指の間に挟み込まれる突起部と、
前記突起部が前記シャフトから突出するように前記突起部を前記シャフトに取り付ける取付部と、
を備え
、
前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義しつつ、前記高さ方向から前記第一の指と前記第二の指の間で挟み込まれた状態の前記突起部を視た際、
前記第一の指と前記第二の指の間の指間みずかきに近位な前記奥行方向における前記突起部の端部から前記幅方向において前記突起部が最大幅となる位置までの前記奥行方向における長さは、10~30(mm)の範囲内となり、
前記突起部の最大幅は、10~30(mm)の範囲内となることを特徴とする、
パドル用把持補助具。
【請求項2】
パドルのシャフトに取り付けられるパドル用把持補助具であって、
前記パドルの使用者が前記シャフトを把持する際に、該使用者の第一の指と第二の指の間に挟み込まれる突起部と、
前記突起部が前記シャフトから突出するように前記突起部を前記シャフトに取り付ける取付部と、
を備え、
前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義した際、
前記突起部は、前記突起部が前記幅方向の両側から前記第一の指と前記第二の指で挟み込まれた際に、前記第一の指が接触する第一領域と、前記第二の指が接触する第二領域を有し、
前記第一の指と前記第二の指の間の指間みずかきに近位な前記奥行方向における前記突起部の端部から前記幅方向において前記突起部が最大幅となる位置までの前記奥行方向における区間の少なくとも一部では、
前記第一領域及び前記第二領域は、前記奥行方向において前記端部に近位な方が遠位な方よりも前記幅方向における前記突起部の幅が小さくなるように前記奥行方向に対して傾斜することを特徴とする、
パドル用把持補助具。
【請求項3】
前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義し、前記奥行方向から前記第一の指と前記第二の指の間で挟み込まれた状態の前記突起部を視た際、
前記突起部は、前記第一の指側を向く第一領域と、前記第二の指側を向く第二領域を有し、
前記第一領域及び前記第二領域は、前記突起部の前記高さ方向に沿う区間の少なくとも一部では、前記高さ方向において前記突起部の根元に近位な方が遠位な方よりも前記突起部の幅が
大きくなるように前記高さ方向に対して傾斜することを特徴とする、
請求項1
又は2に記載のパドル用把持補助具。
【請求項4】
パドルのシャフトに取り付けられるパドル用把持補助具であって、
前記パドルの使用者が前記シャフトを把持する際に、該使用者の第一の指と第二の指の間に挟み込まれる突起部と、
前記突起部が前記シャフトから突出するように前記突起部を前記シャフトに取り付ける取付部と、
を備え、
前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義し、
前記シャフトの軸方向から前記パドルと前記突起部を視た際に、前記奥行方向に平行な方向における前記パドルのブレードの両端を結ぶ第一仮想線と平行で、且つ前記シャフトの中心軸を通る第二仮想線を境界として、前記第一仮想線が位置する第一領域と、該第一領域とは反対側の第二領域を定義した場合、
前記突起部の前記奥行方向における両端部は、前記第二領域に位置することを特徴とする、
パドル用把持補助具。
【請求項5】
前記シャフトの軸方向から前記パドルと前記突起部を視た際、
前記突起部の前記奥行方向における両端部は、前記シャフトの中心軸を中心とする周方向における第一周方向範囲に位置し、
前記第一周方向範囲は、前記第二領域において、前記シャフトの中心軸を中心として前記第二仮想線に対して30度以上150度以下の周方向範囲であることを特徴とする、
請求項
4に記載のパドル用把持補助具。
【請求項6】
前記シャフトの軸方向から前記パドルと前記突起部を視た際、
前記突起部の前記奥行方向における一方の端部は、前記シャフトの中心軸を中心とする周方向における第二周方向範囲に位置し、
前記突起部の前記奥行方向における他方の端部は、前記シャフトの中心軸を中心とする周方向における第三周方向範囲に位置し、
前記第二周方向範囲は、前記第二領域において、前記シャフトの中心軸を中心として前記第二仮想線に対して30度以上70度以下の周方向範囲であり、
前記第三周方向範囲は、前記第二領域において、前記シャフトの中心軸を中心として前記第二仮想線に対して110度以上150度以下の周方向範囲であることを特徴とする、
請求項
5に記載のパドル用把持補助具。
【請求項7】
前記突起部は、前記取付部の外周面から突出し、
前記取付部は、前記シャフトに取り付けられると、前記取付部の内周面が前記シャフトの外周面に接触しつつ、前記シャフトの周方向の少なくとも一部を覆うように構成されることを特徴とする、
請求項1
、2及び4のいずれか一項に記載のパドル用把持補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パドルを把持することを補助するパドル用把持補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カヌーで用いられるパドルとして、例えば、漕ぎ操作用シャフトと、該シャフトの少なくとも一端側に設けられた水掻き部とを備え、水掻き部は平板状の水掻き面をシャフト側で狭く先端側で広がった略三角形状に形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記パドルは、シャフトを使用者が両手で把持して操作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用者の腕の可動域が大きくして上記パドルを漕いだ方がカヌーはより大きな推進力を得られる。しかしながら、腕の可動域には個人差がある。また、腕の可動域を意識して広げようとしてもなかなか難しい。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、パドルを漕ぐ操作の過程で使用者の腕の可動域を大きくさせるパドル用把持補助具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパドル用把持補助具は、パドルのシャフトに取り付けられるパドル用把持補助具であって、前記パドルの使用者が前記シャフトを把持する際に、該使用者の第一の指と第二の指の間に挟み込まれる突起部と、前記突起部が前記シャフトから突出するように前記突起部を前記シャフトに取り付ける取付部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明のパドル用把持補助具において、前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義しつつ、前記高さ方向から前記第一の指と前記第二の指の間で挟み込まれた状態の前記突起部を視た際、前記第一の指と前記第二の指の間の指間みずかきに近位な前記奥行方向における前記突起部の端部から前記幅方向において前記突起部が最大幅となる位置までの前記奥行方向における長さは、10~30(mm)の範囲内となり、前記突起部の最大幅は、10~30(mm)の範囲内となることを特徴とする。
【0008】
本発明のパドル用把持補助具において、前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義した際、前記突起部は、前記突起部が前記幅方向の両側から前記第一の指と前記第二の指で挟み込まれた際に、前記第一の指が接触する第一領域と、前記第二の指が接触する第二領域を有し、前記第一の指と前記第二の指の間の指間みずかきに近位な前記奥行方向における前記突起部の端部から前記幅方向において前記突起部が最大幅となる位置までの前記奥行方向における区間の少なくとも一部では、前記第一領域及び前記第二領域は、前記奥行方向において前記端部に近位な方が遠位な方よりも前記幅方向における前記突起部の幅が小さくなるように前記奥行方向に対して傾斜することを特徴とする。
【0009】
本発明のパドル用把持補助具において、前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義し、前記奥行方向から前記第一の指と前記第二の指の間で挟み込まれた状態の前記突起部を視た際、前記突起部は、前記第一の指側を向く第一領域と、前記第二の指側を向く第二領域を有し、前記第一領域及び前記第二領域は、前記突起部の前記高さ方向に沿う区間の少なくとも一部では、前記高さ方向において前記突起部の根元に近位な方が遠位な方よりも前記突起部の幅が大きくなるように前記高さ方向に対して傾斜することを特徴とする。
【0010】
本発明のパドル用把持補助具において、前記突起部において前記シャフトの軸方向に平行な方向を前記突起部の幅方向と定義し、前記突起部の突出方向を高さ方向と定義し、前記幅方向と前記高さ方向の双方に直交する方向を前記突起部の奥行方向と定義し、前記シャフトの軸方向から前記パドルと前記突起部を視た際に、前記奥行方向に平行な方向における前記パドルのブレードの両端を結ぶ第一仮想線と平行で、且つ前記シャフトの中心軸を通る第二仮想線を境界として、前記第一仮想線が位置する第一領域と、該第一領域とは反対側の第二領域を定義した場合、前記突起部の前記奥行方向における両端部は、前記第二領域に位置することを特徴とする。
【0011】
本発明のパドル用把持補助具において、前記シャフトの軸方向から前記パドルと前記突起部を視た際、前記突起部の前記奥行方向における両端部は、前記シャフトの中心軸を中心とする周方向における第一周方向範囲に位置し、前記第一周方向範囲は、前記第二領域において、前記シャフトの中心軸を中心として前記第二仮想線に対して30度以上150度以下の周方向範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明のパドル用把持補助具において、前記シャフトの軸方向から前記パドルと前記突起部を視た際、前記突起部の前記奥行方向における一方の端部は、前記シャフトの中心軸を中心とする周方向における第二周方向範囲に位置し、前記突起部の前記奥行方向における他方の端部は、前記シャフトの中心軸を中心とする周方向における第三周方向範囲に位置し、前記第二周方向範囲は、前記第二領域において、前記シャフトの中心軸を中心として前記第二仮想線に対して30度以上70度以下の周方向範囲であり、前記第三周方向範囲は、前記第二領域において、前記シャフトの中心軸を中心として前記第二仮想線に対して110度以上150度以下の周方向範囲であることを特徴とする。
【0013】
本発明のパドル用把持補助具において、前記突起部は、前記取付部の外周面から突出し、前記取付部は、前記シャフトに取り付けられると、前記取付部の内周面が前記シャフトの外周面に接触しつつ、前記シャフトの周方向の少なくとも一部を覆うように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパドル用把持補助具によれば、パドルを漕ぐ操作の過程で使用者の腕の可動域を大きくさせることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態におけるパドル用把持補助具を装着したパドルの斜視図である。
【
図2】(A)は、パドルに本実施形態のパドル用把持補助具を装着した際の拡大図である。(B)は、パドルに本実施形態のパドル用把持補助具の変形例を装着した際の拡大図である。
【
図3】(A),(B)は、パドルに本実施形態のパドル用把持補助具を装着する様子を時系列に並べた断面図(パドルのシャフトの軸に直交する方向から切ったもの)である。(C)は、パドルに装着された本実施形態のパドル用把持補助具の変形例をパドルのシャフトの軸に直交する方向から切った際の断面図である。(D)は、パドルに装着された本実施形態のパドル用把持補助具の別の変形例をパドルのシャフトの軸に直交する方向から切った際の断面図である。
【
図4】使用者により把持された本実施形態のパドル用把持補助具を装着したパドルをパドル用把持補助具の突起部の高さ方向の上方側から視た図である。
【
図5】(A),(B)は、使用者により把持された本実施形態のパドル用把持補助具の変形例を装着したパドルを同パドル用把持補助具の突起部の高さ方向の上方側から視た図である。
【
図6】(A)は、使用者により把持された本実施形態のパドル用把持補助具を装着したパドルを同パドル用把持補助具の突起部の奥行き方向から視た図である。(B)は、使用者により把持された本実施形態のパドル用把持補助具の変形例を装着したパドルを同パドル用把持補助具の突起部の奥行き方向から視た図である。
【
図7】パドルのシャフトの軸方向から視た際の同パドル用把持補助具を装着したパドルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。添付図面は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。また、各図における各部の形状や寸法比は、必ずしも正確なものではない。
【0017】
<全体構成>
本発明の実施形態におけるパドル用把持補助具1は、パドル100のシャフト110を使用者が把持する際に補助するものである。そして、パドル100は、例えば、カヌー等の小型の舟で使用されるものであり、シャフト110の両端にブレード120を有する。両端のブレード120は、シャフト110の中心軸112の周方向において角度差を有してもよいし、有していなくてもよい。また、
図1のブレード120の形状は一例であって、その他の形状であってもよい。なお、パドル用把持補助具1は、シャフト110の一端にブレード120を有するタイプのパドルにも適用できる。
【0018】
パドル用把持補助具1は、
図1に示すように、シャフト110に取り付けられる。具体的にパドル用把持補助具1は、パドル100の使用者がパドル100を把持する位置に取り付けられる。本実施形態におけるパドル用把持補助具1は、取付部2と、突起部3と、を有する。
【0019】
<取付部>
図2を参照して、取付部2について説明する。取付部2は、シャフト110に取り付けられる。取付部2がシャフト110に取り付けられると、取付部2は、取付部2の内周面がシャフト110の外周面に接触しつつ、シャフト110の周方向の少なくとも一部を覆うように構成される。そして、取付部2は、弾性力によりシャフト110をシャフト110の径方向の内側に押圧する。シャフト110の周方向に沿う所定以上の外力を取付部2に加えなければ、取付部2はシャフト110に対して相対回転しない。
【0020】
具体的に取付部2は、例えば、
図3(B)に示すように、断面が閉じない環状となる部材を有する。閉じない環状は、シャフト110の断面の形状に応じたものとなる。シャフト110の断面が円形となる場合、閉じない環状は、例えば、C型となり、取付部2の上記部材はC型部材20により構成される。以下、上記部材がC型部材20で構成される場合を例にとって説明する。
【0021】
C型部材20は、弾性変形可能に構成される。C型部材20をシャフト110に取り付ける際は、
図3(A)に示すように、外力を加えてC型部材20の両端21A,21Bが相互に離れるようにC型部材20を広げる。そして、C型部材20の両端21A,21Bの間の領域からシャフト110をC型部材20が取り囲む包囲領域Sに入れる。外力を解くと、弾性変形に起因する復元力によりC型部材20は元の形状に復元して、内周面がシャフト110に接触しつつ、シャフト110を押圧する。これにより、C型部材20の内周側にシャフト110が嵌め込まれ、C型部材20のシャフト110への取付けが完了する。
【0022】
なお、取付部2は、以上の態様に限定されるものではなく、断面がシャフト110の周方向に全周する、閉じた環状の環状部材(図示省略)で構成されてもよい。
【0023】
そして、シャフト110の周方向に沿う所定以上の外力を取付部2に加えて、取付部2をシャフト110に対して相対回転させて、取付部2の位置決めを行う。取付部2の位置決めが完了すると、取付部2をシャフト110に対して固定することが好ましい。
【0024】
取付部2をシャフト110に対して固定するために、取付部2をシャフト110にテープ等の固定部材を用いて固定してもよいし、取付部2に以下で説明するような固定機構22を設けて固定してもよい。
【0025】
図3(C)に示すように、固定機構22は、例えば、C型部材20の周方向の一端に連続し、その一端から突出する第一突出片220と、C型部材20の周方向の他端に連続し、その他端から突出する第二突出片222と、固定部材224と、を有する。
【0026】
第一突出片220及び第二突出片222は、C型部材20が取り囲む包囲領域Sから離反する方向に突出しつつ、相互に対向する。固定部材224は、第一突出片220と第二突出片222に係合しつつ、第一突出片220と第二突出片222の対向方向に第一突出片220と第二突出片222を接近させることにより、C型部材20によるシャフト110の押圧力を強くして、シャフト110に対する取付部2の相対移動を強固に制限する。
【0027】
固定部材224は、例えば、ネジ224Aとナット224Bで構成される。この場合、ネジは、第一突出片220と第二突出片222の孔を通され、ナットとの締結によりC型部材20をシャフト110に固定する。
【0028】
なお、固定部材及び固定機構22の態様は特に限定されるものではなく、シャフト110に対する取付部2の相対移動を制限可能な全ての固定部材及び固定機構22が、本発明の範囲に含まれる。
【0029】
以上の取付部2は一例であって、突起部3がシャフト110から突出するように突起部3をシャフト110に取り付けることができる全てのものが取付部2として本発明の範囲に含まれる。取付部2は、例えば、突起部3をシャフト110に接着する接着剤やテープ等の接着手段24(
図3(D)参照)で構成されてもよいし、突起部3をシャフト110に固定するその他の固定機構で構成されてもよい。
【0030】
<突起部>
図2~
図4を参照して、突起部3について説明する。
図2及び
図3に示すように、突起部3は、シャフト110から突出する。本実施形態では、突起部3は、取付部2の外周面から突出するが、これに限定されるものではなく、取付部2の態様に応じて突起部3の突出起点はその他の位置であってもよい。そして、本実施形態では、取付部2がシャフト110に取り付けられた場合、突起部3はシャフト110の径方向に突出するが、これに限定されるものではなく、突起部3はシャフト110の軸方向周りの周面から突出すれば、その他の方向に突出するものであってもよい。
【0031】
ここで、
図3及び
図4に示すように、突起部3の突出方向(突起部3の中心軸の軸方向)を突起部3の高さ方向Hと定義し、シャフト110の軸方向に平行な方向を突起部3の幅方向Wと定義し、突起部3の高さ方向Hと幅方向Wの双方に直交する方向を突起部3の奥行方向Dと定義する。
【0032】
パドル100の使用者がシャフト110を把持する際に、
図4に示すように、使用者の指の腹を取付部2及びシャフト110に接触させつつ、突起部3の幅方向Wにおいて使用者の指(第一の指)920と指(第二の指)922の間で突起部3を挟み込む。使用者が突起部3を挟み込む隣接する2つの指(指920、指922)は、中指と薬指であることが好ましい。薬指と中指の間の間隔を広げると、小指側の筋膜と体幹が繋がり、腕の可動域が広がるからである。腕の可動域が広がるとパドルの移動範囲を広げることができるので、カヌー等の小舟の推進力を向上させることができる。
【0033】
突起部3は、例えば、隣接する2つの指920,922で挟み込まれた際、
図4に示すように、隣接する一方の指920が接触する第一領域30と、隣接する他方の指922が接触する第二領域32を有する。
【0034】
ここで、隣接する2つの指920,922の間に形成される指の指間みずかき924に、突起部3の奥行方向Dにおいて近位な突起部3の端部3Aから最大幅部34までの突起部3の奥行方向Dに沿う区間Eに着目する。ちなみに、最大幅部34とは、突起部3を突起部3の高さ方向Hから平面視した際、幅方向Wにおける突起部3の幅が最大となる部分を指す。
【0035】
区間Eにおいて、第一領域30及び第二領域32は、突起部3の奥行方向Dにおいて突起部3の端部3Aに近位な方が遠位な方よりも突起部3の幅が小さくなるように奥行方向Dに対して傾斜する傾斜部を有することが好ましい。ここで、第一領域30の傾斜部を第一傾斜部30Aと定義し、第二領域32の傾斜部を第二傾斜部32Aと定義し、第一傾斜部30A及び第二傾斜部32Aの端部3Aに近位側の端部を第一端部、最大幅部34に近位側の端部を第二端部と定義する。突起部3を突起部3の高さ方向Hから平面視した際、第一傾斜部30Aに近位な取付部2の幅方向の一端2Aを基準として、第一傾斜部30Aは、第一傾斜部30Aの端部3Aに遠位な側の方が近位な側よりも取付部2の幅方向の一端2Aに近位となるように傾斜する。また、第二傾斜部32Aに近位な取付部2の幅方向の他端2Bを基準として、第二傾斜部32Aは、第二傾斜部32Aの端部3Aに遠位な側の方が近位な側よりも取付部2の幅方向の他端2Bに近位となるように傾斜する。なお、取付部2の幅方向とは、取付部2がシャフト110に取り付けられた際はシャフト110の軸方向と平行となる方向を指す。
【0036】
そして、第一傾斜部30Aと第二傾斜部32Aの奥行方向Dに対する傾斜角は、同じであることが好ましい。2つの指920,922のそれぞれは、それぞれの指の根元を起点として広がるので、第一領域30及び第二領域32が上記のように傾斜すれば、2つの指920,922に負担を掛けずに済む。
【0037】
なお、区間Eの終点(最大幅部34)から突起部3の端部3Aとは反対側の端部3Bまでの区間Fでは、隣接する2つの指920,922は、突起部3に接触しないので、どのような形状であってもよい(
図5(A)参照)。また、
図5(B)に示すように、区間Fは無くてもよい。
【0038】
以上の区間Eの奥行方向Dにおける長さは、使用者の指の長さを考慮すると、10~30(mm)の範囲内であることが好ましく、10~20(mm)の範囲内であることがより好ましい。また、最大幅部34の長さ(突起部3の最大幅)は、10~30(mm)の範囲内であることが好ましく、15~20(mm)の範囲内であることがより好ましい。
【0039】
また、
図6(A)に示すように、突起部3の奥行方向Dから突起部3を視た際、突起部3の根元(取付部2の外周面)から突起部3の最上部3Cまでの突起部3の高さ方向Hに沿う区間Gの全部又は一部において、突起部3は、突起部3の高さ方向Hにおいて突起部3の最上部3Cに近位な方が遠位な方よりも突起部3の幅が
小さくなるように高さ方向Hに対して傾斜する1対の傾斜部35,36を有する。傾斜部35は、傾斜部35に近位な取付部2の幅方向の一端2Aを基準として、傾斜部35の最上部3Cに遠位な側の方が近位な側よりも取付部2の幅方向の一端2Aに近位となるように傾斜する。傾斜部36は、傾斜部36に近位な取付部2の幅方向の他端2Bを基準として、傾斜部36の最上部3Cに遠位な側の方が近位な側よりも取付部2の幅方向の他端2Bに近位となるように傾斜する。そして、傾斜部35,36の高さ方向Hに対する傾斜角は、同じであることが好ましい。
【0040】
以上のような構成される突起部3の形状として、例えば、
図2(A)に示すように、半球形状、半楕円球形状が一例として挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、例えば、
図2(B)に示すように、突起部3の形状として、楕円柱形状や円柱形状が一例として挙げられる。
【0041】
なお、
図6(B)に示すように、突起部3の最上部3C又はその近傍から突起部3の幅方向Wの両側に突出するストッパ4A,4Bを設けてもよい。ストッパ4Aと突起部3と取付部2で取り囲まれる領域R1には、指920等が収まり、ストッパ4Bと突起部3と取付部2で取り囲まれる領域R2には、指922等が収まる。ストッパ4A,4Bは、パドル用把持補助具1から指920,922が外れることを制限する。
【0042】
<突起部の延在範囲>
図7を参照して、シャフト110の周方向における突起部3の延在範囲について説明する。シャフト110の軸方向から視た際の本実施形態のパドル用把持補助具1を装着したパドル100を
図7に示す。なお、シャフト110の軸方向から視た際のパドル100の手前側のブレード120及びパドル用把持補助具1は図示しているが、奥側のブレード120及びパドル用把持補助具1は図示を省略している。
【0043】
ここで、シャフト110の軸方向から視た際、突起部3の奥行方向Dに平行な方向におけるパドル100の手前側のブレード120の両端を結ぶ仮想点線(第一仮想点線)126と平行で、且つシャフト110の中心軸112を通る仮想点線(第二仮想点線)130を境界として、仮想点線126が位置する第一領域Q1と、第一領域Q1とは反対側の第二領域Q2を定義する。ブレード120の水を掻く方の面を表面121Aとし、シャフト110の軸方向からパドル100と突起部3を視た際、突起部3は、表面121Aとは反対側のブレード120の反対面121B側に位置する。このため、シャフト110の軸方向からパドル100と突起部3を視た際、突起部3の奥行方向Dにおける一方の端部37及び他方の端部38は、第二領域Q2に位置する。つまり、突起部3は、シャフト110の中心軸112を中心とする周方向における第二領域Q2側の周方向範囲(以下、第二領域側周方向範囲と呼ぶ。)に位置することが好ましい。
【0044】
また、突起部3の奥行方向Dにおける一方の端部37及び他方の端部38は、第二領域側周方向範囲の中でも、特に、シャフト110の中心軸112を中心として仮想点線(第二仮想点線)130に対して30度以上150度以下の周方向範囲(以下、第一周方向範囲と呼ぶ。)内にあることが好ましい。第一周方向範囲は、
図7ではP2,P4,P3を合わせた周方向範囲に相当する。第一周方向範囲に突起部3の奥行方向Dにおける一方の端部37及び他方の端部38があれば、突起部3の奥行方向Dの長さが使用者にとって使いやすいものになる。
【0045】
更に、突起部3の奥行方向Dにおける一方の端部37は、第二領域側周方向範囲の中でも、特に、シャフト110の中心軸112を中心として仮想点線(第二仮想点線)130に対して30度以上70度以下の周方向範囲(以下、第二周方向範囲と呼ぶ。)P2内にあることが好ましい。第二周方向範囲P2は、
図7ではP2の周方向範囲に相当する。突起部3の奥行方向Dにおける一方の端部37が第二周方向範囲にあれば、突起部3の奥行方向Dの長さが使用者にとって使いやすいものになる。
【0046】
また、突起部3の奥行方向Dにおける他方の端部38は、第二領域側周方向範囲の中でも、特に、シャフト110の中心軸112を中心として仮想点線(第二仮想点線)130に対して110度以上150度以下の周方向範囲(以下、第三周方向範囲と呼ぶ。)P3内にあることが好ましい。第三周方向範囲P3は、
図7ではP3の周方向範囲に相当する。突起部3の奥行方向Dにおける他方の端部38が第三周方向範囲にあれば、突起部3の奥行方向Dの長さが使用者にとって使いやすいものになる。
【0047】
なお、
図7において仮想直交点線132は、シャフト110の中心軸112を通り、仮想点線130に対して直交する点線である。そして、仮想点線134は、シャフト110の中心軸112を通り、仮想直交点線132よりもブレード120の一端122に近位な側で仮想点線130に対して30度傾斜しつつ、仮想直交点線132に対して―60度傾斜する。仮想点線136は、シャフト110の中心軸112を通り、仮想直交点線132よりもブレード120の他端124に近位な側で仮想点線130に対して150度傾斜しつつ、仮想直交点線132に対して60度傾斜する。また、仮想点線138は、シャフト110の中心軸112を通り、仮想直交点線132よりもブレード120の一端122に近位な側で仮想点線130に対して70度傾斜しつつ、仮想直交点線132に対して―20度傾斜する。仮想点線140は、シャフト110の中心軸112を通り、仮想直交点線132よりもブレード120の他端124に近位な側で仮想点線130に対して110度傾斜しつつ、仮想直交点線132に対して20度傾斜する。
【0048】
図7における仮想点線138と仮想点線140の間の第四周方向範囲P4、仮想点線130と仮想点線134の間の第五周方向範囲P5、仮想点線130と仮想点線136の間の第六周方向範囲P6は、突起部3の端部37と端部38が位置しなくてもよい周方向範囲である。第四周方向範囲P4では、突起部3の奥行方向Dの長さが小さ過ぎるものになり得るので、使用者にとって使いづらくなる可能性がある。第五周方向範囲P5及び第六周方向範囲P6では、突起部3の広がりが大き過ぎるものになり、使用者にとって使いづらくなる可能性がある。
【0049】
なお、第四周方向範囲P4は、第二領域Q2において、シャフト110の中心軸112を中心として仮想点線130に対して70度超え且つ110度未満の周方向範囲である。第五周方向範囲P5は、第二領域Q2において、シャフト110の中心軸112を中心として仮想点線130に対して0度以上30度未満の周方向範囲である。第六周方向範囲P6は、第二領域Q2において、シャフト110の中心軸112を中心として仮想点線130に対して150度超え且つ180度以下の周方向範囲である。
【0050】
なお、シャフト110の軸方向から視た際のパドル100の奥側のブレード120及びパドル用把持補助具1についても上記説明を適用することができる。更に、
図7に示すシャフト110の軸方向からパドル100を視た際の、パドル100のシャフト110とブレード120の形状、位置関係は一例であって、その他の態様のものであっても、当然ながら上記説明を適用可能である。
【0051】
尚、本発明のパドル用把持補助具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 パドル用把持補助具
2 取付部
3 突起部
4A,4B ストッパ
20 C型部材
22 固定機構
30 第一領域
30A 第一傾斜部
32 第二領域
32A 第二傾斜部
34 最大幅部
35,36 傾斜部
37 突起部の一端部
38 突起部の他端部
100 パドル
110 シャフト
112 シャフトの中心軸
120 ブレード
122 ブレードの一端
124 ブレードの他端
126,130,138,140 仮想点線
132 仮想直交点線
134,136 仮想二等分点線
220 第一突出片
222 第二突出片
224 固定部材
920,922 指
【要約】
【課題】パドルを漕ぐ操作の過程で使用者の腕の可動域を大きくさせるパドル用把持補助具を提供する。
【解決手段】本発明の把持補助具は、パドルのシャフトに取り付けられるパドル用把持補助具であって、前記パドルの使用者が前記シャフトを把持する際に該使用者の第一の指と第二の指の間に挟み込まれる突起部と、前記突起部が前記シャフトから突出するように前記突起部を前記シャフトに取り付ける取付部と、を備える。前記突起部は、前記取付部の外周面から突出し、前記取付部は、前記シャフトに取り付けられると、前記取付部の内周面が前記シャフトの外周面に接触しつつ、前記シャフトの周方向の少なくとも一部を覆うように構成される。
【選択図】
図2