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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】下水処理場におけるスカム除去システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/40 20230101AFI20250417BHJP
【FI】
C02F1/40 F
C02F1/40 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2025504466
(86)(22)【出願日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2024029787
【審査請求日】2025-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2023149311
(32)【優先日】2023-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504036291
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 秀雄
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321000(JP,A)
【文献】特許第7112795(JP,B1)
【文献】特開2011-88048(JP,A)
【文献】特開2011-240271(JP,A)
【文献】特許第7018552(JP,B1)
【文献】特開2017-100114(JP,A)
【文献】特開2004-202493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初沈殿池用導水渠、最初沈殿池群、反応槽、最終沈殿池用導水渠及び最終沈殿池群を経由して処理される原水からスカムを除去する下水処理場のスカム除去システムであって、
前記最初沈殿池用導水渠及び前記最終沈殿池用導水渠に設けられる第1スカム除去装置と、前記最初沈殿池群の各最初沈殿池に設けられる第2スカム除去装置と;前記最終沈殿池群の各最終沈殿池に設けられる第3スカム除去装置と;を有し、
前記第1スカム除去装置は、原水が流れる導水渠本体の両側壁の内側で前記原水の流れ方向に沿って延び、かつ、長さ方向に間隔をおいて複数の開口部を有し、前記スカムの下側に位置するように設けられる一対のパイプ、およびこれらパイプに圧力流体供給源からの圧力流体を供給する圧力流体供給部を備えるスカム剥離装置と;前記導水渠本体の終端に設けられるスカムピット側へ前記スカムを移動させる導水渠用の水噴射ノズルと;を備え、
前記第2スカム除去装置は、前記スカムを収集する最初沈殿池用のパイプスキマと;前記スカムを前記最初沈殿池の幅方向の中央方向に集めるスカム案内機構と;前記スカムを前記最初沈殿池用の前記パイプスキマ側へ移動させる最初沈殿池用の水噴射ノズルと;を備え、
前記第3スカム除去装置は、前記スカムを収集する最終沈殿池用のパイプスキマと;前記スカムを前記最終沈殿池用の前記パイプスキマ側へ移動させる最終沈殿池用の水噴射ノズルと;を備え、
前記最終沈殿池用の前記水噴射ノズルは、前記導水渠用の前記水噴射ノズルよりも水噴射量が少なく設定されており、
前記スカム案内機構は、前記最初沈殿池用の前記パイプスキマの前記スカムを受け入れるための開口の下方に配置された前壁板と;前記前壁板の両端部から原水が流れてくる上流側に向けて漸次相互間隔を広げるように配置される一対のガイド板と;を有し、
前記前壁板及び前記ガイド板の近傍には、前記前壁板及び前記ガイド板の下端部から前記前壁板及び前記ガイド板の原水が流れてくる側の表面に沿って上昇する圧力流体を噴出する流体噴出管が設けられている
ことを特徴とする下水処理場のスカム除去システム。
【請求項2】
請求項1に記載の下水処理場のスカム除去システムであって、
前記最終沈殿池用の前記パイプスキマには、前記スカムを受け入れるための開口の前方で水面の下方に配置され、前記スカムを流動させながら案内するスカム誘導板が備えられている
ことを特徴とする下水処理場のスカム除去システム。
【請求項3】
請求項1に記載の下水処理場のスカム除去システムであって、
前記最終沈殿池用の前記パイプスキマには、前記最終沈殿池の幅方向に沿って配置されるパイプ材とこのパイプ材を軸中心に回動させる回動機構とを有し、
前記パイプ材は、周方向に間隔をあけて上流側に形成された上流側スカム取込み口と下流側に形成された下流側スカム取込み口とを有し、
前記回動機構は、前記パイプ材を一の方向に回動させることにより前記上流側スカム取込み口を水面に配置するとともに、前記パイプ材を前記一の方向とは反対方向に回動させることにより前記下流側スカム取込み口を水面に配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の下水処理場のスカム除去システム。
【請求項4】
請求項1に記載の下水処理場のスカム除去システムであって、
前記圧力流体供給部は複数設けられ、前記パイプの複数箇所にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項1に記載の下水処理場のスカム除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場におけるスカム除去システムに関する。本願は、2023年9月14日に出願された特願2023-149311号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場には、下水処理場に受け入れられた下水中の沈殿性物質を沈降分離処理する、第一沈殿池と称される場合もある最初沈殿池と、最初沈殿池の処理水を生物学的に処理する反応槽、反応槽で処理した原水を受け入れて活性汚泥を沈降分離処理する、第二沈殿池と称される場合もある最終沈殿池が設けられている。
【0003】
これら両沈殿池は、多数の沈殿池を並設して構成されていて、各沈殿池には、一つの導水渠(「流入渠」と称される場合もある。)から原水が分配供給されるように構成されている。
【0004】
下水処理場に受け入れた原水は、下水という性質上、沈殿性物質の他に浮上性物質が含まれている。このため、最初沈殿池、最終沈殿池及びこれら沈殿池に原水を分配供給する導水渠の水面には、浮上性物質の集合状態となったスカムが生成される。このため、これら施設にはスカム除去装置が設けられている。
【0005】
本出願人は、先に、特許文献1(特許第3943551号)に示されるような最初沈殿池に好適なスカム除去装置を提案するとともに、多くの実績を有している。この提案に係るスカム除去装置は「週一君」(登録商標)として知られている。
【0006】
この提案に係るスカム除去装置は、スカムが流れ込むパイプスキマの開口部の近傍に、上方に向けて流体(空気)を噴出させる噴出手段を設けて構成されている。そして、スカム排出時には、この噴出手段から空気が噴出されると、スカムの取り込みが誘発され、スカムが次々にパイプスキマ内に流入される。一旦スカムの流入が開始されると、空気の噴出が停止されてもスカムの流入は継続される。
【0007】
この提案に係るスカム除去装置は、従来のスカム除去装置に比べて、処理水質を改善することができるとともに、スカムの排出に必要な水量を1/20~1/30にすることができ、省エネルギー化に貢献できるという優れた特長を有している。
【0008】
また本出願人は、特許文献2(特許第4990856号)及び特許文献3(特許第5443261号)に示されるような最終沈殿池に好適なスカム処理装置を提案するとともに、その実績をも有している。この提案に係るスカム除去装置は「日一君」(登録商標)として知られている。
【0009】
このスカム除去装置は、パイプスキマに設けられている開口部を形成する下辺に、その開口部が水面上に位置しているときに、先端部が水面に生成されるスカムの下方に位置する深さを保って水流の上流側に所定長さ伸びる案内板を設けるとともに、その案内板の先端部位置よりも水流の上流側の所定位置には、その開口部の一部が水中に位置したときに、その開口部に向けて噴出ノズルから水を噴出するようにしている。
【0010】
この提案に係るスカム除去装置は、案内板の上面側には開口部に向く周辺に比して流速の速い水流を生成することができ、その速い水流に同伴させてスカムをフロック化させることなく短時間で、かつ、確実に開口部に移動させることができる。このため、排出される処理水質の悪化を防止することができるとともに、スカム排出に伴う水の量も少なくて済み、省エネルギー化を図ることができるという優れた特長を有している。
【0011】
さらに本出願人は、特許文献4(特許第7018552号)に示されるようなスカム除去装置を備えた導水渠(流入渠と呼ばれている場合もある。)を提案している。
【0012】
この導水渠には、スカムの上方に設けられ、そのスカムをスカムピット側に押し出すように圧力水を噴出する水噴射ノズル、スカムの下側に位置する水中に設けられ、そのスカムをスカムピット側に押し出すように圧力水を噴出する噴出ノズル、及び導水渠の内壁に設けられ、その内壁に沿って圧縮空気を噴出してその内壁からスカムを剥離する圧縮空気噴出機構が備えられている。
【0013】
この提案に係る導水渠は、スカムの上方及び下方から、スカムをスカムピット側に押し出すように圧力水が噴出されるとともに、スカムが導水渠の内壁から剥離されるので、スカムをスカムピットに円滑に排出できる特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2004-202493号公報
【文献】特開2010-046622号公報
【文献】特開2011-240271号公報
【文献】国際公開第2022/123652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願人は、上述したように、各沈殿池や導水渠に好適なスカム除去装置を提案し、かつ実績を有しているが、下水処理場を俯瞰したとき、下水処理場全体において発生するスカムを効率よく除去することができて、処理水質を改善することができ、また、スカム除去に伴う水の量を可能な限り少なくすることができれば、下水処理場全体のスカム処理の省エネルギー化を図ることができるという知見を得ている。
【0016】
そこで、本発明は、処理水質を改善して環境への負荷を軽減することができるとともに、省エネルギー化に資することのできる、下水処理場におけるスカム処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る下水処理場のスカム除去システムは、最初沈殿池用導水渠、最初沈殿池群、反応槽、最終沈殿池用導水渠及び最終沈殿池群を経由して処理される原水からスカムを除去する下水処理場のスカム除去システムであって、
前記最初沈殿池用導水渠及び前記最終沈殿池用導水渠に設けられる第1スカム除去装置と;前記最初沈殿池群の各最初沈殿池に設けられる第2スカム除去装置と;前記最終沈殿池群の各最終沈殿池に設けられる第3スカム除去装置と;を有し、
前記第1スカム除去装置は、原水が流れる導水渠本体の両側壁の内側で前記原水の流れ方向に沿って延び、かつ、長さ方向に間隔をおいて複数の開口部を有し、前記スカムの下側に位置するように設けられる一対のパイプ、およびこれらパイプに圧力流体供給源からの圧力流体を供給する圧力流体供給部を備えるスカム剥離装置と;前記導水渠本体の終端に設けられるスカムピット側へ前記スカムを移動させる導水渠用の水噴射ノズルとを備え、
前記第2スカム除去装置は、前記スカムを収集する最初沈殿池用のパイプスキマと;前記スカムを前記最初沈殿池の幅方向の中央方向に集めるスカム案内機構と;前記スカムを前記最初沈殿池用の前記パイプスキマ側へ移動させる最初沈殿池用の水噴射ノズルと;を備え、
前記第3スカム除去装置は、前記スカムを収集する最終沈殿池用のパイプスキマと;前記スカムを前記最終沈殿池用の前記パイプスキマ側へ移動させる最終沈殿池用の水噴射ノズルと;を備え、
前記最終沈殿池用の前記水噴射ノズルは、前記導水渠用の前記水噴射ノズルよりも水噴射量が少なく設定されている。
【0018】
最初沈殿池用及び最終沈殿池用の各導水渠では、浮上したスカムをパイプから噴出する圧力流体によって導水渠本体の側壁から剥離しつつ中央側に寄せ(スカム剥離装置)、導水渠用の水噴射ノズルによってスカムピットに押し流す。最初沈殿池及び最終沈殿池では、それぞれのパイプスキマにスカムを収集して排出する。
【0019】
この一連の処理において、最初沈殿池では、厚く固まったスカムを最初沈殿池用の水噴射ノズルから噴射される水の勢いでパイプスキマに押し流す。最終沈殿池では、スカムも少なくなってきていて、流速も遅くなっているため、最終沈殿池用の水噴射ノズルからの水の噴射により表層を加速して水面上のスカムをパイプスキマに送り出す。
【0020】
この場合、最終沈殿池用の水噴射ノズルからの水噴射量を少なくしていることにより、少なくなって水面に浮上しているスカムを水噴射の勢いで散乱させて水中に懸濁させたり溶かしたりしてしまうことなく、水面上に浮上した状態で確実にパイプスキマに送ることができる。
【0021】
このようにして、最初沈殿池から最終沈殿池まで、その処理状況に応じてスカムを円滑かつ確実に除去して、処理水質を改善することができる。この処理水は自然環境に放流されることになるが、水質が改善されているので、環境に与える負荷も軽減される。また、パイプスキマにスカムとともに流れ込む水の量も少なくかつ短時間でスカム除去できるため、パイプスキマから上流に返送される水量が少なくなる結果、これに伴う電力量も削減でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0022】
本発明に係る下水処理場のスカム除去システムにおいて、前記最終沈殿池用の前記パイプスキマには、前記スカムを受け入れるための開口の前方で水面の下方に配置され、前記スカムを流動させながら案内するスカム誘導板が備えられているとよい。
【0023】
パイプスキマの開口の直前でスカム誘導板上にスカムを載せて流動させながらパイプスキマの開口に案内する。少ないスカムを除去するために、スカム誘導板が原水の表層を薄く掬いとるように流れ込ませる。また、水面近くにスカム誘導板が配置されることから、下方からの上昇流等の影響を受けずに、スカムを確実にパイプスキマに案内することができる。これらにより、確実にスカムを排除することができる。
【0024】
本発明に係る下水処理場のスカム除去システムにおいて、前記スカム案内機構は、前記最初沈殿池用の前記パイプスキマの前記スカムを受け入れるための開口の下方に配置された前壁板と;前記前壁板の両端部から原水が流れてくる上流側に向けて漸次相互間隔を広げるように配置される一対のガイド板と;を有し、前記前壁板及び前記ガイド板の近傍には、前記前壁板および前記ガイド板の下端部から前記前壁板及び前記ガイド板の原水が流れてくる側の表面に沿って上昇する圧力流体を噴出する流体噴出管が設けられているとよい。
【0025】
沈殿池を流れてくるスカムを一対のガイド板によって中央部に集めながらスカム取込み用の開口に案内することができる。その場合に、ガイド板の近傍に設けられている流体噴出管から噴出される圧力流体によりスカムをガイド板に付着させることなく、ガイド板から離した状態で案内することができる。
【0026】
また、前壁板の近傍に設けられている流体噴出管から圧力流体を噴出することにより、スカムを下方から持ち上げるようにしながらスカム取込み用の開口に案内することができる。したがって、スカムの取り残しを少なくし、円滑かつ確実にスカム取込み用の開口に取り込むことができる。
【0027】
前記圧力流体は圧縮空気であるとよい。バブリング現象により、スカムを壁面から効果的に離すことができ、また、スカムに浮力を生じさせて、開口(スカム取込み口)に効果的に案内することができる。
【0028】
本発明に係る下水処理場のスカム除去システムにおいて、前記最終沈殿池用の前記パイプスキマには、前記最終沈殿池の幅方向に沿って配置されるパイプ材とこのパイプ材を軸中心に回動させる回動機構とを有し、前記パイプ材は、周方向に間隔をあけて上流側に形成された上流側スカム取込み口と下流側に形成された下流側スカム取込み口とを有し、前記回動機構は、前記パイプ材を一の方向に回動させることにより前記上流側スカム取込み口を水面に配置するとともに、前記パイプ材を前記一の方向とは反対方向に回動させることにより前記下流側スカム取込み口を水面に配置するとよい。
【0029】
これにより、上流側から流れてくるスカムを上流側スカム取込み口から取り込む。この上流側スカム取込み口に入らずに下流側に流れてしまったスカムや下流側で浮上したスカムがある場合には、パイプスキマを反転させることにより、下流側のスカムを下流側スカム取込み口から除去することができる。
【0030】
本発明に係る下水処理場のスカム除去システムにおいて、前記圧力流体供給部は複数設けられ、前記パイプの複数箇所にそれぞれ接続されているとよい。
【0031】
パイプの複数箇所に圧力流体が供給されるので、長尺なパイプに均等に圧力流体を供給することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の下水処理場のスカム除去システムは、最初沈殿池用導水渠、最初沈殿池群、最終沈殿池用導水渠、及び最終沈殿池群に、それぞれの状況に応じて組み込まれている第1~第3スカム除去装置により効率よくスカム除去を行うことができ、処理水質を改善できるので、自然環境に放流された場合の環境への負荷を軽減することができる。また、パイプスキマにスカムとともに流れ込む水の量も少なくかつ短時間でスカム除去できるため、パイプスキマから上流に返送される水量が少なくなる結果、これに伴う電力量も削減でき、省エネルギー化を図ることができ、下水処理場におけるスカム処理費用の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施の形態に係るスカム除去システムを適用した下水処理場全体の概略構成を示す平面図である。
図2】最初沈殿池用導水渠及びこの導水渠に接続状態の最初沈殿池の一部を示す平面図である。
図3図2のX1-X1線に沿う断面図であり、可動ゲートが閉じている状態を示している。
図4図2のX1-X1線に沿う部分断面図であり、可動ゲートが開いている状態を示している。圧力流体供給部は省略している。
図5図2の最初沈殿池用導水渠に組み込まれているスカム剥離装置の要部を示す拡大平面図である。
図6図5のX2-X2線に沿うパイプ及び吐出口部材の部分拡大図である。
図7】第2スカム除去装置を備えた最初沈殿池の一部を示す平面図である。
図8図7のX3-X3線に沿う断面図である。
図9図8のパイプスキマ付近の拡大図である。
図10】水噴射ノズルの断面図(図10A)および平面図(図10B)である。
図11】最終沈殿池における第3スカム除去装置を示す平面図である。
図12図11のパイプスキマの回動機構を示す模式図である。
図13】(図13A)スカム非取込み時、(図13B)上流側スカム取込み時、(図13C)下流側スカム取込み時のそれぞれのパイプスキマの姿勢を示す断面図である。
図14】最終沈殿池に設けられる水噴射ノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスカム除去システムを適用した下水処理場全体の概略構成を示す平面図であって、図中、左下の矢印aで示される下水の原水(以下、単に「原水」というときもある)の流入から、右横中央の矢印bで示される処理水の流出まで、水の流れに沿って示されている。
【0035】
この下水処理場においても周知の下水処理場と同様に、原水(下水)の流れの上流側から下流側にかけて、最初沈殿池用導水渠A、最初沈殿池群B、反応槽C、最終沈殿池用導水渠D及び最終沈殿池群Eの各処理施設が設けられている。これら施設のうち、反応槽Cを除いた各施設A,B,D,Eには、それぞれスカム除去装置が設けられている。以下、施設毎に図2以下の図面も参照しながら説明する。
【0036】
(最初沈殿池用導水渠A)
最初沈殿池用導水渠A(流入渠と呼ばれることもある。以下、単に導水渠Aと称することもある)は、導水渠本体2及びこの導水渠本体2に接続状態のスカムピット3を含んで構成されている。この導水渠本体2は、上部開放形の長水路を呈し、その長手方向の一端側(図2に示す例では右端側)からは、下水からなる原水が供給されるように構成されている(矢印a参照)。
【0037】
スカムピット3は、この導水渠本体2の原水の流れ方向の終端側(図2に示す例では左端側)に設けられており、このスカムピット3を形成する一部の壁と導水渠本体2の終端側を形成する壁とは共用されている。その共用されている壁の上壁面3aの高さは、導水渠本体2内の水面よりも少し低くなるように決められている(図3参照)。
【0038】
そして、その上壁面3aの設けられている壁の導水渠本体2側には、可動ゲート4が設けられていて、導水渠本体2からの原水がスカムピット3へ流入するのを制御できるように構成されている。
【0039】
この可動ゲート4は、ゲート板4aと駆動機構4bとを含んで構成されていて、導水渠本体2からスカムピット3内にスカムSを排出しないときは図3に示すように閉じられ、導水渠本体2からスカムピット3内にスカムSを排出するときは図4に示すように開けられるように構成されている。
【0040】
したがって、可動ゲート4が図4に示されるように開けられたときは、導水渠本体2の表層水、すなわちスカムSを含んだ原水をスカムピット3内に排出させることができる。
【0041】
ゲート板4aの幅は、導水渠本体2の水路幅より少し小さく、その高さは、上壁面3aの位置と導水渠本体2内の水面位置との差分よりも十分に大きくなるように決められている。駆動機構4bは、ゲート板4aを上下動できるように構成されていて、ねじ棒と回転ナットとからなる方式やラックアンドピニオン方式、油圧シリンダー等の周知の上下動移動機構が採用される。
【0042】
スカムSを排出しないとき、駆動機構4bは、図3に示されるように、ゲート板4aの上端位置が導水渠本体2内の水面位置よりも十分に高くなるようにゲート板4aを上昇させることで、スカムピット3と導水渠本体2との間を遮断する。
【0043】
そして、スカムSを排出するとき、駆動機構4bは、図4に示されるように、ゲート板4aの上端位置が導水渠本体2内の水面位置よりも下で、かつ、その導水渠本体2内に生成されるスカム層Sの底面位置よりも少し下となるようにゲート板4aを降下させることにより、スカムピット3と導水渠本体2との間を連通することができる。
【0044】
スカムピット3には、溜まったスカムをスカムピット3から排出するためのスカム排出装置10が設けられる。
【0045】
導水渠本体2を形成する長水路の長手方向に延びる一対の側壁5のうち、一方の側壁(図2の上側の側壁)5の外側には、下水処理場の最初沈殿池群Bに当たる複数の最初沈殿池6が並設されている。
【0046】
この最初沈殿池6の周壁の一部は、導水渠本体2の側壁5と共用されている。そして、その側壁5の深さの途中位置に、各最初沈殿池6に通じる流入口7と開閉ゲート8とが設けられている。したがって、この流入口7を介して導水渠本体2内と最初沈殿池6内とが連通する。このため、流入口7の開閉ゲート8が開かれているとき、導水渠本体2内の原水は最初沈殿池6内に流入し、その流入した原水は、最初沈殿池6内を側壁5から離れる方向(図2の矢印c参照)に向けて流れることができる。
【0047】
なお、図2に示す例では、最初沈殿池6は、導水渠本体2の一方の側壁5の外側に並設されているが、両方の側壁5の外側に並設されていてもよい。
【0048】
(スカム剥離装置20)
導水渠本体2の側壁5,5には流通する原水に含まれるスカムSが付着するため、このスカムSを側壁5,5から剥離するスカム剥離装置20が設けられている。この導水渠本体2の両側壁5の内側には、スカム剥離装置20の一部を構成する一対のパイプ9,9が、原水の流れ方向に沿って延びるように、各側壁5と平行に設けられている。これらのパイプ9,9は、鋼製や合成樹脂製等の周知のパイプ材からなり、図6に示すように、その長さ方向に所定間隔で一列状に多数の吐出口部材21が設けられている。
【0049】
吐出口部材21は、フッ素樹脂等の合成樹脂からなり、その外形形状は下部に開口部22を有するカップ状(わん状、釣鐘状等)に形成されている。これらの吐出口部材21は、その内部空間をパイプ9内に連通させた状態でパイプ9に固定され、開口部22を垂直下向きに配置している。
【0050】
これらパイプ9は、導水渠本体2内に生成されるスカム層Sの下方位置になるように設置されている。例えば、導水渠Aの運転によりスカムSが滞留し、その厚さが例えば10cm近くに成長したときに、導水渠本体2からスカムピット3内にスカムSを排出するようになっている場合、パイプ9は、水面から10cmよりも少し下となるように設置される。パイプ9の設置位置は、導水渠本体2の設置される下水処理場によって異なるが、いずれにしても、生成されるスカムSの下となるように決められる。
【0051】
スカム剥離装置20は、上述したパイプ9と、これらのパイプ9に圧縮空気や圧力水、あるいは気液混合圧力水を供給する圧力流体供給部23とを備えている。ここでは圧力流体として圧縮空気の例を示す。
【0052】
パイプ9は、導水渠本体2の長さ方向に沿って(原水の流れ方向に沿って)設けられているが、その長さ方向に沿う所定長さの複数の領域S1~S3に区分され、その区分された領域S1~S3ごとに圧力流体供給部23が設けられている。したがって、一つの導水渠本体2内に複数個の圧力流体供給部23が設けられている。
【0053】
(圧力流体供給部23)
図2に示す例では、3つの領域S1~S3に区分されており、したがって、3つの圧力流体供給部23が設けられている(ただし、図4では圧力流体供給部23の図示を省略している。)。各圧力流体供給部23には、圧力供給源から圧力流体を供給する圧力流体配管24が接続されている。この圧力流体配管24には、各圧力流体供給部23のそれぞれに圧力流体を供給する分岐管25が設けられている。各分岐管25には、それぞれの圧力流体供給部23への流量を制御するための流量調整弁26が設けられている。
【0054】
圧力流体供給部23は、図5に示すように、一対のパイプ9,9のそれぞれに平行に配置されるように設けられた一対の長管部27,27と、それら長管部27,27の両端部をそれぞれ接続するように設けられた一対の短管部28,28とにより、平面視が一つのループ状を形成するように構成されている。
【0055】
長管部27,27のそれぞれ略中央位置には、両長管部27,27を連結する中央接続管29が接続されている。そして、この中央接続管29の長さ方向の中央位置に、圧力流体供給部23の各分岐管25が接続されている。
【0056】
圧力流体供給部23の長管部27,27には、各長管部27,27とパイプ9,9との間を連結する接続管30が互いに所定の間隔を保って複数設けられている。したがって、圧力流体供給源からの圧力流体は、圧力流体配管24から各分岐管25を介してそれぞれの圧力流体供給部23に供給され、各圧力流体供給部23から各接続管30を介してパイプ9に供給される。
【0057】
各圧力流体供給部23は、圧力流体配管24及び分岐管25等とともに、導水渠本体2の水面よりも上方位置に設けられる。これらを水中に配置することも可能であるが、原水の流れの妨げになるので、水面より上方に配置するのが好ましい。図2等においてパイプ9等を破線で示しているが、この破線は水中に設けられていることを示す。
【0058】
このように構成されたスカム剥離装置20において、各圧力流体供給部23からパイプ9,9内に圧力流体(圧縮空気)が供給されると、各吐出口部材21の下向きの開口部22から原水中に気泡となって放出される(図6参照)。そして、その放出された気泡は側壁5の内面に沿って上昇し、側壁5に付着していたスカムを剥離させことができる。
【0059】
なお、パイプ9と吐出口部材21とに代えて、長さ方向に間隔をおいて多数のスリット(細長い開口部)を設けた天然ゴム、合成ゴム等の弾性材からなるパイプ、長さ方向に間隔をおいて多数の孔(開口部)を設けた鋼製のパイプの等も採用することができる。
【0060】
(導水渠用の水噴射ノズル11)
導水渠本体2には、導水渠用の複数の水噴射ノズル(以下、水上ノズル)11が水上に設けられている。この水上ノズル11は、導水渠本体2内の水面より少し上で、かつ、その導水渠本体2内の水の流れ方向の長さを所定の間隔で区分するように複数箇所に、かつ、導水渠本体2の幅方向に複数個ずつ設けられている(図2参照)。
【0061】
各水上ノズル11には、圧力水供給管12を介して所定圧の水が供給される。なお、水上ノズル11に供給される水は、下水処理場の処理水を用いることができる。
【0062】
水上ノズル11は、先端開口が導水渠本体2内の水の流れの下流側で、さらに下向きに向くように斜めに設けられている。したがって、各水上ノズル11から圧力水が噴射されることにより、導水渠本体2の水面上に層状に形成されているスカムSに対して噴出水が下流側に向けて供給され、スカムピット3に向けて流れようとするスカムSの流れを助長させる(図3,4参照)。
【0063】
なお、ここでは、説明の便宜上、水面上にある程度の厚さの層状に成長したスカムSを「スカム層S」というときもある。
【0064】
(導水渠用の水噴射ノズル13)
また、この導水渠本体2には、導水渠用の複数の水噴射ノズル(以下、水中ノズル)13が水中に設けられている。
【0065】
この水中ノズル13は、導水渠本体2内の水面より少し下の水中で、かつ、その導水渠本体2内の水の流れ方向に所定の間隔をおいて複数個設けられている。また、導水渠本体2内の水の流れ方向と直交する方向、つまり水路幅に対しても、互いに所定の間隔を保って複数個(図2に示す例では2個)の水中ノズル13が設けられている。ただし、この水中ノズル13を有しない場合もある。
【0066】
この水中ノズル13には、圧力水供給管14を介して所定圧の水が供給される。そしてこの水中ノズル13は、圧力水供給管14から圧力水が供給されると、スカムピット3側に向けられている開口から圧力水を噴出して、スカムピット3に向けて流れようとするスカムSの流れを助長させることができる(図4参照)。この水中ノズル13に供給される水は、下水処理場の処理水を用いることができる。
【0067】
以下では、水上に設置される水噴射ノズル11を水上ノズル、水中に設置される水噴射ノズル13を水中ノズルとして説明する。
【0068】
以上の最初沈殿池用導水渠Aにおいて、第1スカム除去装置35は、可動ゲート4を有するスカムピット3、スカム剥離装置20、水上ノズル11,水中ノズル13等により構成される(図2,3)。
【0069】
上記構成からなる導水渠Aにおけるスカム排出動作を含む下水処理方法について説明する。
【0070】
導水渠本体2に原水(下水)が供給され、その供給された原水が各最初沈殿池6に対して各流入口7を介して分配供給されると、各最初沈殿池6で沈降分離処理が行われる。このとき、導水渠本体2の水面上には、徐々にスカムSが生成されてくる。図3及び図4はこの状態を示している。
【0071】
導水渠本体2内でスカム層Sの生成がある程度すすみ、その厚さが所定の厚さ(例えば10cm)に達した時点で、水中ノズル13および水上ノズル11に圧力水が供給され、スカム層Sの一部を破壊しながら下流側へ推し進める。さらに、パイプ9に圧縮空気が供給される。これにより、スカムSのスカムピット3への排出動作が開始される。
【0072】
水中ノズル13に圧力水が供給されると、スカムSがスカムピット3側に流れるように水中ノズル13から圧力水が噴出される。水中ノズル13の先端側が少し上向きに形成されているので、スカムSを水中から少し持ち上げるように作用し、スカムSの移動が行われる。同時に、水上ノズル11からもスカムSがスカムピット3側に流れるように圧力水が噴出される。
【0073】
スカムSのスカムピット3への排出動作が開始されると、パイプ9からも圧縮空気が噴出され、その圧縮空気により側壁5に付着していたスカムSが剥離されるので、スカムSはより円滑に、かつ、速やかにスカムピット3に排出される。図3,4はこの状態を示している。
【0074】
パイプ9からの圧縮空気の噴出についてさらに説明する。
【0075】
パイプ9,9には、各圧力流体供給部23から接続管30を介して供給される。これらの圧力流体供給部23はループ状に形成されているので、その内部の圧力が略均一に保たれている。このため、各圧力流体供給部23に対応したパイプ9に略均一の圧力の圧縮空気が供給でき、これにより全ての吐出口部材21の開口部22からは、略均一の圧縮空気が噴出される。したがって、圧力流体供給部23の各長管部27に対応した側壁5に付着していたスカムSを効果的に剥離することができる。
【0076】
しかも、圧力流体配管24から各分岐管25を通じて各圧力流体供給部23に供給される圧縮空気量は、各流量調整弁26によって調整することができる。したがって、複数の圧力流体供給部23のうち、導水渠本体2のうちのスカムSが滞留しやすく付着力が大きい箇所、例えば、導水渠本体2内の流れの終端側に設けられる圧力流体供給部23に対して供給される圧縮空気量を増やして、その箇所のスカムSの剥離をより強力に行うことができる。
【0077】
したがって、各圧力流体供給部23への圧力流体の供給流量を流量調整弁26で個々に制御しながら、スカムの付着状況等に応じて適切に圧力流体を供給することができ、スカムを有効に剥離することができる。
【0078】
なお、圧力流体供給部23は、複数が分離した状態で設けられているが、これらを連結状態としてもよい。
【0079】
導水渠本体2からほとんどのスカムSがスカムピット3へ排出された時点で、水中ノズル13及び水上ノズル11への圧力水の供給が停止されるとともに、パイプ9への圧縮空気の供給が停止される。これにより、スカムSのスカムピット3への排出動作が終了となる。
【0080】
なお、上述のスカムSのスカムピット3への排出動作は、水中ノズル13および水上ノズル11を用いるようにしたが、いずれか一方を用いるようにしてもよい。いずれか一方又は両方を用いるかは、生成されるスカムSの性状や量等によって決められる。
【0081】
(最初沈殿池群B) 最初沈殿池群Bは、図1及び図2に示すように複数の最初沈殿池6が並列に設置されており、前述したように下水処理場に受け入れられた下水が最初沈殿池用導水渠Aを介して最初沈殿池群B(各最初沈殿池6)に受け入れられるように構成されている。
【0082】
図7は、一つの最初沈殿池6の下流側部分を示している。最初沈殿池6に受け入れられた下水は、最初沈殿池6の一方側(上流側:図示の例では左側)から他方側(下流側:図示の例では右側)に移動する途中、すなわち、図中の矢印dに示される流れの途中、下水に含まれている沈降性物質が沈降して分離される。
【0083】
最初沈殿池6の底面に沈降した沈降性物質(汚泥)は、図示略の汚泥掻寄機を介して最初沈殿池6の一方側の底部に設けられているピットに集められた後、排泥管15(図1参照)を介して汚泥処理施設に送られて処理される。
【0084】
原水には、沈殿性物質の他に浮上性物質が含まれており、沈殿池1の水面上に浮上性物質が集合状態となったスカムSが生成される。そこで、最初沈殿池6において、前述した沈降性物質を分離するとともに、第2スカム除去装置60によりスカムSを除去する。
【0085】
沈殿性物質及び浮上性物質(スカムS)が除去された処理水は、最初沈殿池6の他方側(下流側)に設けられている溢流トラフ52に受け入れられる。溢流トラフ52に受け入れられた処理水は、図7中の矢印eに示されるように取り出され、反応槽(曝気槽)Cに送られて生物学的な処理が施される。
【0086】
第2スカム除去装置60は、最初沈殿池6の原水の流れの下流側で溢流トラフ52より上流位置に設けられている。この第2スカム除去装置60においては、スカム取込みのための(最初沈殿池用)パイプスキマ61が設けられている。パイプスキマ61は、スカム取込み口63を有するパイプ材62,およびパイプ材62を回動させる回動機構55を備える。
【0087】
このパイプスキマ61は、パイプ材62が水面の流れをせき止めるように設けられている。すなわち、このパイプ材62は、最初沈殿池6を幅方向(流れに交差する方向)に横断するように水平に設けられており、その周壁に長手方向に沿うスリット(スロット)状の開口(スカム取込み口63)が設けられている。そして、パイプ材62の長手方向の一端側が最初沈殿池6の一方の側壁6aを水密的に貫通し、かつ回動自在に支持されており、他端側が最初沈殿池6の他方の側壁6bに回動自在に支持されている。側壁6aを貫通したパイプ材62の端部は、側壁6aの外側に設けられているスカムピット54内に配置されている。
【0088】
パイプ材62の他端側が設けられる最初沈殿池6の他方の側壁6bの上面には、モータを含んで構成されている回動機構55が設けられている。この回動機構55は、パイプ材62をその軸心回りに所定の角度で往復回動できるように構成されている。
【0089】
パイプ材62は、長手方向に設けられているスカム取込み口63が図7及び図8に示すように水面より上方を通常位置として配置されるように支持されている。回動機構55は、スカム除去の時機が到来したときは、図9の矢印fに示されるように(図9においては反時計方向に)回転して、スカム取込み口63の幅(パイプ材62の周方向に沿う幅)のほぼ中間に水面が位置するように回動される。
【0090】
これにより、水面上のスカムSは、パイプ材62の前方からスカム取込み口63に向けて流れ、スカム取込み口63からパイプ材62内に落とし込まれた後、パイプ材62の内部を通ってスカムピット54に送られる。このときのスカム取込み口63の位置をスカム取込み位置とし、スカム取込み口63が水面より上方に配置されている位置を非取込み位置とする。
【0091】
なお、回動機構55としては、モータ等を設けずに手動でパイプ材62を回動させる構造でもよい。
【0092】
スカムピット54内に排出されたスカムSは、矢印g(図7)に示すようにスカムピット54から取り出され、図示しない脱水機等を備えたスカム処理施設に送られて処理される。スカムSを取り除いた後の水は、上流側に返送され、原水に混入されて再び処理される。
【0093】
そして、スカム除去が終了したときは、矢印f(図9)と反対方向に、すなわち図8,9においては時計方向にパイプ材62を回動し、スカム取込み口63が図8図9の二点鎖線も参照)に示されるように水面より上方に位置するように配置する。このような回動機構55の回動制御は、第2スカム除去装置60を含んだ最初沈殿池6全体を制御する図示しないプログラマブルコントローラによって実施される。
【0094】
図7に示すように、パイプ材62は最初沈殿池6の幅よりも長く形成され、最初沈殿池6の水流方向を横断するように配置される。その長手方向に設けられているスカム取込み口63は、最初沈殿池6の幅よりも短い長さに形成されており、長手方向の両端が、最初沈殿池6の両側壁6a,6b内面から所定距離離間している。
【0095】
第2スカム除去装置60は、このパイプスキマ61と、スカムSを最初沈殿池6の幅方向の中央方向に集めるスカム案内機構としての前壁板70及び一対のガイド板80とを有している。これら前壁板70及びガイド板80は、パイプ材62の前方(上流側)、すなわちパイプ材62に原水が向かってくる側(図示の例ではパイプ材62の左側)に設けられている。
【0096】
前壁板70は、鋼製又は合成樹脂製の板材からなり、原水の流れ方向から見たときの形状が細長い長方形状を呈している。前壁板70は、その長方形の長辺の長さがスカム取込み口63の長さより少し長く決められており、その短辺を最初沈殿池6の深さ方向に沿って配置している。図9に示されるように、前壁板70の上端位置は、パイプ材62が回動してスカム取込み口63の一部が水中に没したときのスカム取込み口63の下端部位置より下側(スカム取込み位置にあるスカム取込み口63の下端部位置)となるように決められている。前壁板70の下端位置は、パイプ材62の下部位置より下方まで延びている。
【0097】
この前壁板70の長手方向(沈殿池1の幅方向)の一方の端部は、支持部材71を用いて沈殿池1の一方の側壁6aの内面に固定され、他方の端部は、他の支持部材71を用いて沈殿池1の他方の側壁6bの内面に固定される。前壁板70の両端部の固定作業に際しては、前壁板70の裏側の面(下流側の面)、すなわち原水が流れて来る方向と反対側の面がパイプ材62の回動を妨げない範囲でパイプ材62に近接し、かつ、前壁板70の上辺位置が、上流側に向かう状態のスカム取込み口63の下端位置よりも下となるように慎重に取りけられる。ただし、前壁板70の上辺位置を、スカム取込み位置におけるパイプ材62のスカム取込み口63の下端位置とほぼ同じ高さ位置となるようにしてもよい。
【0098】
この前壁板70の表側(上流側)の下辺近く、すなわち原水が流れて来る方向側の下辺近くには、沈殿池1の幅方向に延びる流体噴出管72がUボルト等を用いて設けられている。この流体噴出管72は、鋼製又は合成樹脂製のパイプ材からなり、その長さ方向に所定間隔で一列状に多数の吐出口部材73が設けられている。
【0099】
吐出口部材73は、フッ素樹脂等の合成樹脂からなり、その外形形状は下部に開口部74を有するカップ状(わん状、釣鐘状等)に形成されている。そして、これらの吐出口部材73は、その内部空間を流体噴出管72内に連通させた状態で流体噴出管72に固定され、開口部74を垂直下向きに配置している。
【0100】
流体噴出管72の長手方向の一端側は閉止され、他端側は、流量調整弁75を介して流体供給管76に接続されている。流体供給管76には仕切弁等の開閉弁77が設けられる。
【0101】
なお、図7図9では前壁板70を設けた例を示しているが、スカム案内機構としてはこの前壁板70は必ずしも必要ではなく、前壁板70を有しない場合もある。ただし、前壁板70を備えた方がパイプスキマ61の下方に壁ができるので好ましい。
【0102】
前壁板70を設けない場合も、吐出口部材73を有し圧力流体を噴出する流体噴出管72は設けられることが好ましい。
【0103】
一対のガイド板80は同一形状である。これらのガイド板80も前壁板70と同様の鋼製又は合成樹脂製の板材で作られている。そしてこれらのガイド板80は、長方形状であり、その短辺が沈殿池1内に深さ方向に沿って配置されている。このガイド板80を設けない場合もある。
【0104】
各ガイド板80の短辺の幅(沈殿池1の深さ方向に沿う寸法)は、前壁板70の短辺の長さ(幅;沈殿池1の深さ方向に沿う寸法)より2倍程度大きく形成されている。両ガイド板80は、沈殿池1に設置されたときに、上辺の位置がスカムSの上面位置よりも高く、下辺位置が前壁板70の下辺位置とほぼ等しくなるように決められている(図8及び図9参照)。
【0105】
これらのガイド板80の表側(上流側)の下辺近くに、複数の吐出口部材78を備えた流体噴出管79がUボルト等を用いて取り付けられている。両ガイド板80に設けられる流体噴出管79は、前壁板70の流体噴出管72と同様に、流量制御弁75を介して流体供給管76に接続されている。
【0106】
側壁6b側の流体噴出管79の配管は、作図の便宜上、途中までが示されており、図7の符号“Q”で示す位置で図の上部に示す配管と接続される。
【0107】
これらのガイド板80の長手方向の具体的な寸法(長辺の寸法)については後述するが、両ガイド板80とも、長手方向の一方の端部は、前壁板70の各端部(図7において上側及び下側の端部)に当接し、長手方向の他方の端部は沈殿池1の各側壁6a,6bの内面に当接するように支持部材82を用いて固定される。この固定に際しては、上辺の位置がスカムSの上面位置よりも高く、下辺位置が前壁板70の下辺位置とほぼ等しくなるように慎重に取り付けられる。
【0108】
一対のガイド板80の長さは、最初沈殿池6の両側壁6a,6bの内面に対していかなる取付角度θを保って取り付けるかによって決められる。図7の例では、各側壁6a,6bの内面に対して約15°の角度に取り付けられており、上流に向かうにしたがって一対のガイド板80の相互間隔が徐々に広がるように配置されている。
【0109】
一対のガイド板80に取付角度θを付ける目的は、流れて来るスカムSを流れの中心部側に向けて徐々に集めることによりスカムSの濃度を高め、含水率の低いスカムSを得ることにある。この濃度を高めるために、パイプ材62に設けられるスカム取込み口63及び前壁板70の長さ(最初沈殿池6の幅方向に沿う寸法)をより短くしてすることも考えられるが、取付角度θが大きくなると、ガイド板80自体がスカムSの流れの抵抗を増してしまう。したがって設置角度θは、沈殿池1に受け入れられる原水の性状、スカムSの発生量等によって適切に決められる。
【0110】
なお、一対のガイド板80に流体噴出管79及び後述する水噴射ノズル90,91が設けられることにより、ガイド板80の設置角度θをある程度大きくすることができている。
【0111】
一対のガイド板80の取付角度θを0°に近づけると、最初沈殿池6の両側壁6a,6bと平行に近くなるので、ガイド板80によりスカムS集積効果は小さくなる。しかしながら、スカムSに対する抵抗が少なくなる分スカムSの移動速度が高まり、また一対のガイド板80に流体噴出管79及び後述する水噴射ノズル90,91が設けられることから、スカムSの排出に伴う時間が短くなり、その分、排出に伴う水の量も少なくて済む。
【0112】
上記前壁板70及び一対のガイド板80を含んで構成されている第2スカム除去装置60の近傍の水面近くには、図10A,10Bに示される(最初沈殿池用の)水噴射ノズル(水上ノズル)90,91が水上に設けられ、(最初沈殿池用の)水噴射ノズル(水中ノズル)92が水中に設けられている。このうち、図7に示すように、水噴射ノズル90は、一対のガイド板80の間の領域で沈殿池1を横断する方向(流れに交差する方向)に互いに所定の間隔を保って複数個(図示の例では5個)設けられ、水噴射ノズル91.92は、水噴射ノズル90の設置位置よりも少し上流側(図示の例では一対のガイド板80の間よりも外側)に、水噴射ノズル90と同様にして複数個(図示の例では合計6個)設けられている。
【0113】
各噴射ノズル90,91,92は、水を水面方向とほぼ平行に噴出するスリット93と、このスリット93の上部から突出するように設けられ、スリット93から噴出された層状の水流を保持する整流片94とを有して構成されている。両ガイド板80の間の領域に配置される噴射ノズル90(水上ノズル)は、ほぼ水面位置に設けられ、スリット93から噴出された層状の水流が第2スカム除去装置60側(パイプスキマ61側)に向くように設置される。
【0114】
両ガイド板80の間の領域よりも上流位置には、水面より若干上方位置の3個の水上ノズル91と、水面より若干下方位置の3個の水中ノズル92とが交互に配置されている。水上ノズル91は、わずかに下向きに傾斜して設けられて、水面に向けて斜め上方から散水する。水中ノズル92は、わずかに上向きに傾斜して設けられることにより、水中から水面に向けて水を噴射する。なお、図7及び図8において、水上ノズル90,91は実線により、水中ノズル92は破線により示している。
【0115】
これら水噴射ノズル90,91,92は、流量調整弁95により、噴射量を適宜調整できるように構成されており、開閉弁96を備える水供給管97に接続されている。
【0116】
スカムとして浮上している固形物のうち、気泡が付着していなければ沈降する固形物は、水噴射ノズル91によるスカムSの上からの散水と水噴射ノズル92による水中からの水噴射により、気泡を破壊して沈降分離させることができる。このため、水上ノズル91及び水中ノズル92の数は配置については、水面上のスカムSの性状等によって決められる。
【0117】
上記構成の第2スカム除去装置60を備えた最初沈殿池6のスカムSの除去動作は、以下のようにして行われる。
【0118】
図9に示されるように、水面上にスカムSがある程度滞留してきてスカム排出時期が到来したとする。この時期到来によりパイプスキマ61が図7及び図8に示す状態から、図9に示す状態に回動される。
【0119】
パイプスキマ61の回動と同時に、あるいは回動より前に、開閉弁77,96が開かれる。上流位置に設けられている水噴射ノズル90,91,92からスカム層Sに水が噴射されることにより、スカム層Sの固形物に付着している気泡を消失させて、気泡により浮上している固形物を沈降分離させるとともに、下流側に向けて噴射される水によって水面の流れを加速しスカムを下流側に押し流す。
【0120】
そして、スカム層Sはガイド板80の間を通ってパイプスキマ61のスカム取込み口63に押し流される。このとき、ガイド板80の表面では、流体噴出管79の吐出口部材78から圧力流体として圧縮空気が噴出されており、そのバブリング流が水面まで達するので、スカム層Sがガイド板80の表面から離間して中央側に寄せられた状態で流れ、ガイド板80に付着することなくスカム取込み口63に案内される。
【0121】
前壁板70の前面においては、流体噴出管72から比較的緩やかに圧縮空気が噴出され、その浮力によってスカムSが持ち上げられるようにしてスカム取込み口63に流される。このようにしてスカム取込み口63へのスカムSの取り込みが誘発され、以後、スカムSは連続して次々にパイプスキマ61のパイプ材62内に流入される。一旦スカムSの流入が開始されると、前壁板70における流体噴出管72からの空気の噴出が停止される。
【0122】
ガイド板80における流体噴出管79からの圧縮空気の噴出は、ガイド板80へのスカムSの付着を防ぐとともに、ガイド板80表面からスカムSを離してスカム取込み口63への円滑な流れを促すので、スカムSの取込み開始後も継続して行われる。
【0123】
一方、ガイド板80間の領域に配置される水噴射ノズル90においては、噴出される水流によってスカムSの流れが促進され、パイプスキマ61のパイプ材62側へ向けてスカムSを速やかに排出することができる。
【0124】
パイプスキマ61内に取り込まれたスカムSはスカムピット54に排出され、スカム処理施設に送られて処理される。
【0125】
スカムSのほとんどがパイプスキマ61内に排出されると、パイプスキマ61(パイプ材62)は図7および図8に示す非取込み位置の状態に回動されるとともに、開閉弁77,96が閉じられる。これにより流体噴出管72,79からの圧縮空気が停止され、水噴射ノズル90,91,92から水噴射が停止される。これにより第2スカム除去装置60の一連のスカム除去動作が終了となる。
【0126】
上記構成の第2スカム除去装置60は、パイプスキマ61のパイプ材62が水面上に流路を遮るように配置され、流体噴出管72を備えた前壁板70及び一対のガイド板80及び水噴射ノズル90,91,92を含んで構成されているので、例えば、週に1回、7分から10分程度運転することにより、スカムを除去することができる。
【0127】
したがって、より短時間でスカム排出ができることから、スカムとともにパイプスキマ61内に流れ込む水の量も少なくなり、スカム除去及び原水への返送に要する電力消費量を大幅に削減することができるという極めて優れた効果を奏する。また、処理水は自然環境に放流されることになるが、水質が改善されているので、環境に与える負荷は軽減される。したがって、上記構成の第2スカム除去装置60は、自然環境への負荷の軽減及びより省エネルギー化に貢献できるという優れた特長を有している。
【0128】
しかも、上記構成の第2スカム除去装置60は、主要な構成要素の流体噴出管72,79を備えた前壁板70及び一対のガイド板80は工場で予め製作することが可能であり、既設の沈殿池にも容易に適用できるという特長を有している。
【0129】
(反応槽C)
反応槽Cは、最初沈殿池群Bの処理水を生物学的に処理する箇所であり、標準活性汚泥法、嫌気無酸素好気法(AO法)や嫌気好気活性汚泥法(AO法)等の高度処理法により処理される(図1参照)。この反応槽Cでは、最初沈殿池群Bの処理水を受け入れるとともに、必要に応じて最終沈殿池群Eからの返送汚泥を受け入れて生物学的に処理するもので、下水処理場の中核となる処理施設であるが、この反応槽Cでは、スカムの除去は行われないのでこれ以上の説明は省略する。
【0130】
(最終沈殿池用導水渠D)
この最終沈殿池用導水渠Dは、反応槽Cからの処理水を受け入れ、その処理水を原水として最終沈殿池群Eの各最終沈殿池100に分配供給するように構成されている(図1参照)。この最終沈殿池用導水渠Dには、上述した図2から図4を用いて説明した最初沈殿池用導水渠Aに組み込まれている第1スカム除去装置35(図1参照)と同様のスカム除去装置が組み込まれている。その構成は第1スカム除去装置35とほぼ同一であるので、これ以上の説明は省略する。
【0131】
なお、この最終沈殿池用導水渠Dにおけるスカム除去装置では、図2から図4中に示されている水上ノズル11は省略してもよい。もちろん、スカムの性質によって必要があるときは設けられる。
【0132】
(最終沈殿池群E)
図11は、最終沈殿池群Eのうちの一つの最終沈殿池100の下流側の部分の平面図であり、最初沈殿池群E用の各最終沈殿池100は同一構成であるので、以下、この一つの最終沈殿池100を用いて説明する。
【0133】
最終沈殿池100は、周知の沈殿池と同様に、受け入れられた原水(反応槽Cの処理水)が最終沈殿池100の一方側から他方側に(図11においては矢印hで示すように左側から右側に)移動する途中、原水に含まれている沈降性物質が沈降して分離される。図示されていないが、最終沈殿池100の底面に沈降した沈降性物質(汚泥)は、汚泥掻寄機によって最終沈殿池100の一方側の底部に設けられているピットに集められた後、排泥管101(図1参照)を介して返送汚泥として反応槽Cに送られて利用され、残りの汚泥は余剰汚泥として汚泥処理施設に送られて処理される。
【0134】
また、沈降性物質が分離され、後に詳述する第3スカム除去装置105によりスカムの除去された最終沈殿池100の処理水は、最終沈殿池100の他方側に設けられている溢流トラフ102に受け入れられる。溢流トラフ102に受け入れられた処理水は、図11中の矢印iに示されるように取り出され、消毒処理されたのち放流される。
【0135】
この最終沈殿池100に設けられる第3スカム除去装置105は、最終沈殿池用のパイプスキマ106、水噴射ノズル107を含んで構成されている。
【0136】
パイプスキマ106は、鋼製や合成樹脂製のパイプ材108とパイプ材108を回動させる回動機構112とを備える。パイプ材108は長手方向に伸びる二つの開口(スカム取込み口)109,110を有していて、最終沈殿池100の原水の水面の流れをせき止めるように設けられている。すなわち、このパイプ材108は、長手方向の一端側が最終沈殿池100の一方の側壁(図11において上側の側壁)100aを水密的に貫通し、かつ回動自在に設けられ、他端側が最終沈殿池100の他方の側壁100bに回動自在に設けられている。
【0137】
側壁100aを貫通したパイプ材108の端部は、側壁100aの外側に設けられているスカムピット111内に位置している。したがって、パイプ材108内のスカムをスカムピット111内に排出することができる。スカムピット111内に排出されたスカムは、矢印jに示すように取り出され、図示しないスカム処理施設に送られて処理される。
【0138】
パイプ材108の各開口(上流側スカム取込み口109,下流側スカム取込み口110)は、パイプ材108の周方向に間隔をおいて相互に平行に形成されている。各開口109,110の両端のそれぞれの位置は、最終沈殿池100の側壁100a,100b近くに位置している。各開口109,110の長さは、最終沈殿池100の幅とほぼ等しくなっている。
【0139】
最終沈殿池100の他方の側壁100bの上面には、モータを含んで構成されている回動機構112が設けられている。この回動機構112は、パイプ材108の一端部に突設されたアーム113に連結された駆動ロッド114を上下方向に駆動することにより、パイプ材108を所定の回動角度内で往復回動できるように構成されている。なお、回動機構112としては、モータ等を設けずに、パイプ材108を手動で往復回動させる構造でもよい。
【0140】
パイプ材108には、一方の側壁にスカム誘導板(誘導板)115が設けられている。このスカム誘導板115は、鋼製又は合成樹脂製からなる平面形状が長方形の板状の案内板であって、パイプスキマ106の一方の開口(最終沈殿池100の上流側に配置される開口;上流側スカム取込み口)109を形成する下辺の位置から上流側(図示の例では左側)に向って所定距離伸びるように設けられている。
【0141】
すなわち、このスカム誘導板115は、スカム誘導板115の基部に相当する一端辺側(図示においては右辺側)が開口109の下辺に接合され、パイプ材108の半径方向に対して傾斜して延びている。誘導板115は、他端辺、つまりスカム誘導板115の先端部115aが上面に凸となるように湾曲形成されている。
【0142】
このような形状により、スカム誘導板115の先端部115aが水面上に突出しているときに(図13A)、スカムSの流れがスカム誘導板115によってせき止められる。スカム誘導板115の先端部115aが水中に配置されたときには(図13B)、スカム誘導板115の表面(上面)が上流側から開口109に向けて下り勾配に配置されることにより、上流側から流れてくるスカムSを、スカム誘導板115の表面に載せて下り勾配に沿って流動させながら開口109内に取り込むことができる。
【0143】
開口(下流側スカム取込み口)110は、図13Aに示すように、開口109が水面上に配置されている状態で、該開口109よりも下流側に並んで配置される。上述したようにスカム誘導板115の先端部がスカムSの進入を阻止しているとき(図13A)、及び上流側の開口109でスカムを取込む時(図13B)には、水面よりも上方に配置される位置関係に設定される。そして、パイプ材108を上流側のスカム取込み時とは逆方向(図13A~Cにおいて時計方向)に回動させた際に、開口110の下端縁が下流側に向けて水面より下方に配置されるようになっている。
【0144】
したがって、パイプ材108を図13Aに示す状態から反時計方向に回動したときには、図13Bに示すようにスカム誘導板115の先端部115aが水中に配置され、該スカム誘導板115の表面(上面)上を通ってスカムSが開口109内に導かれる。図13Aに示す状態から時計方向にパイプ材108を回動したときには、図13Cに示すように開口110の一部を水中に配置して、パイプ材108の下流側に浮遊しているスカムを開口110内に取り込むことが可能になる。この図13Cに示す状態では、上流側のスカム誘導板115は水面の上方に大きく突出した状態となる。
【0145】
このような回転機構112によるパイプ材108の回動制御は、第3スカム除去装置105を含んだ最終沈殿池100全体を制御する図示しないプログラマブルコントローラによって実施される。
【0146】
水噴射ノズル107は、水中に配置され、水中からスカムSが浮上している水面に向けて圧力水を噴出させ、表面に浮上するスカムに対して水中から水の流れをつくって下流側に押し流す。この水噴射ノズル107は、高さに比べて幅が大きい扁平な筒状先端部121と、その筒状先端部121内に設けられ筒状先端部121の開口122を開閉可能な弁体123とを備える。
【0147】
この弁体123は、その基端部が筒状先端部121内に軸124により回動自在に支持されており、図14Aに示すように筒状先端部121の上壁121a下面に当接して弁体123の下面と筒状先端部121の下壁121bとの間に開口122を形成する位置と、図14Bに示すように筒状先端部121の下壁121b上面に当接して開口122を閉塞する位置との間で上下に回動する。
【0148】
弁体123は、圧力水が供給されないときに自重により下方に回動することにより開口122を閉塞し、圧力水が供給されるときに圧力水の圧力によって上方に回動することにより開口122を開放する重さを有している。また、弁体123の先端には、開口122を図14Bに示すように閉塞した状態において、弁体123の上面と筒状先端部121の上壁121aとの間に生じる隙間130を閉塞する立ち上がり板124aが一体に形成されている。
【0149】
この立ち上がり板124aが設けられていることにより、図14Bに示すように開口122を閉塞した状態で、弁体123の上方空間(隙間130)も立ち上がり板124aにより閉塞されるため、スカム等が内部に進入して詰まりの原因となることを防止することができ、弁体123を円滑に動作させることができる。
【0150】
この水噴射ノズル107は、スカム誘導板115の先端位置から上流側に所定距離離れた位置の水面近くの水中で、最終沈殿池100の流れと直交する方向に互いに所定間隔を保って複数個(図示の例では5個)設けられている。各水噴射ノズル107には、途中に流量調整弁125を備える水供給配管126が接続されていて、圧力水が供給される。
【0151】
各水噴射ノズル107の圧力水の噴射方向は、パイプ材108に向く(上流側から下流側へ向く)ように決められている。したがって、各水噴射ノズル107から圧力水が噴射されると、最終沈殿池100内の表層水の流速が高められ、その表層水面上に浮かんでいるスカムSをパイプ材108に向けて送り出すことができる。
【0152】
なお、この最終沈殿池群Eにおいては、すでに述べたように、最初沈殿池用導水渠A、最初沈殿池群B及び最終沈殿池用導水渠Dにおいて、スカムSの大部分が除去されているので、発生するスカムは少ない。したがって、最初沈殿池用導水渠A等のように壁面にスカムが付着していたり、スカムどうしが固着していたりするなどの状態となることは少なく、水面上に分散して浮遊している状態である。
【0153】
このため、水噴射ノズル107からの水噴射量(噴射圧)は、最初沈殿池用導水渠A、最初沈殿池群B及び最終沈殿池用導水渠D等に備えられた水中ノズル13,92等による水噴射量(噴射圧)より少なく設定され、スカムSを水噴射によって破壊したり散乱させて処理水に混濁させたり溶かしたりしてしまわないように設計されている。
【0154】
なお、図11には、導水渠A等と同様に、側壁100a,100bの内側に吐出口部材131を有する流体噴出管132が設けられており、水中から圧縮空気を噴出して、側壁100a,100b付近のスカムを中央に寄せることができるようになっているが、スカムが少ない場合等には、流体噴出管132を省略してもよい。
【0155】
また、スカム誘導板115の上方位置には、スカム誘導板115に向けて水を噴射する散水ノズル127が複数設けられている。この散水ノズル127は、物体に軽く付着している汚染物質を剥離流出させることのできる周知の清掃用散水ノズルであり、途中に流量調節弁128を有する水供給配管129に連絡されている。
【0156】
次に、上記構成からなる第3スカム除去装置105におけるスカム除去動作を説明する。
【0157】
最終沈殿池100が沈殿処理を行っていて、図13Aに示されるようにパイプスキマ106の開口109,110が水面上に位置している。開口109の上流位置では、スカム誘導板115の先端部115aが水面上に突出して、スカムSをせき止めている。このスカム誘導板115より上流側の水面上には薄膜状にスカムSが生成されてくる。
【0158】
スカムSの生成がある程度の面積を示した時点で、パイプスキマ106のパイプ材108は回動機構112により回動される。これにより、図13Bに示すようにスカム誘導板115が水没し、上流側の開口109の一部が水中に位置するとともに、各水噴射ノズル107から圧力水が噴射される。
【0159】
各水噴射ノズル107から噴射される圧力水はパイプ材108の開口109に向けられており、最終沈殿池100のため流速が遅い原水の流れを、水噴射ノズル107からの水噴射により表層のみ加速させて、水面上に浮遊するスカムを効率的にパイプ材108の開口109に送り出す。
【0160】
この場合、水噴射ノズル107からの水は噴射量が少なく比較的緩やかに噴射されるので、スカムSは、水面上に浮遊した状態、あるいは薄膜状を保った状態で流れに同伴されて移動し、開口109からパイプ材108内に取り込まれてスカムピット111に排出される。
【0161】
このとき、スカム誘導板115がパイプ材108の上流側で水面近くに配置されるので、下方からの上昇流等の影響を受けることなく、スカムを効率的に開口109に案内できる。このため、このパイプスキマ106では、例えば、1日に1回、5分から7分程度運転するだけの短時間でスカムを除去することができる。スカムピット111に排出されたスカムSはスカム処理施設に送出されて処理される。
【0162】
なお、スカムSが除去された後の処理水は、パイプスキマ106の下流で溢流トラフ102に流され、溢流トラフ102から図11中の矢印iに示されるように取り出され、消毒処理されたのち放流される。
【0163】
このようにしてスカムSはパイプ材108の開口109内に大部分が取り込まれるが、このパイプ材108の下流に若干量が流れることがある。そこで、パイプ材108を図13Aに示す状態から上流側のスカムS取込み時とは逆方向に回動させて、図13Cに示すように下流側に配置されている開口110の一部を水面より下方に配置する。これにより、水面上に浮遊していたスカムSを開口110内に流れ込ませ、スカムピット111に排出することができる。
【0164】
スカムSの除去が終わったら、パイプ材108の回動位置が図13Aに示す状態に戻され、必要に応じて散水ノズル127からの散水が開始され、スカム誘導板115の表面が洗浄される。誘導板115の洗浄に用いられた水は、開口109からパイプ材108内に流される。この散水ノズル127からの散水によりスカム誘導板115の表面が清掃されるので、スカムSがスカム誘導板115にこびりつくなどして次回のスカム除去に支障をきたすことを効果的に防止することができる。
【0165】
上記構成からなる最終沈殿池群Eにおける第3スカム除去装置105は、少ないながらも発生するスカムSを比較的緩やかに流しながら、スカムSを処理水中に混濁させてしまうことなく、水面上に浮遊した状態、あるいは薄膜状を保った状態でパイプスキマ106に捕捉することができる。
【0166】
このため、排出される処理水質の悪化を防止することができるとともに、スカムSの排出に伴う水の量も少なくて済み、省エネルギー化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。すなわち、上記構成からなる第3スカム除去装置105は、いわゆるエコ対策に大きく貢献することができる性質を有している。しかも、先端部が湾曲したスカム誘導板115を設けたことにより、浮遊するスカムSを効率よく開口109に流動させることができるので、この点でもパイプスキマ106に流れ込む水の量は少なくなる。また、スカム誘導板115の上面は、散水ノズル127からの散水で清掃されるので、次回のスカム除去に支障をきたすことを防止することができる。
【0167】
上記構成からなる下水処理場におけるスカム除去システムは、最初沈殿池用導水渠Aに組み込まれている第1スカム除去装置35、最初沈殿池群Bに組み込まれている第2スカム除去装置60、最終沈殿池用導水渠Dに組み込まれているスカム除去装置(スカム除去装置35と同様の構成)及び最終沈殿池群Eに組み込まれている第3スカム除去装置105により効率よくスカム除去が行えるようにしたので、下水処理場全体におけるスカム除去の効率を高めることができる。
【0168】
したがって、処理水質を改善でき、自然環境への負荷を軽減できるとともに、パイプスキマによるスカム除去を短時間で行うことができ、それに伴う返流水も少なくできるので、省エネルギー化の達成により下水処理場におけるスカム処理費用を大幅に低減できる効果がある。
【0169】
以上、本発明に係る下水処理場のスカム除去システムについて図面を参照して説明したが、具体的な構成は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計変更等が可能である。
【0170】
例えば、上述の実施形態では、流体噴出管72,79に吐出口部材73を設けたが、吐出口部材73を設けずに、流体噴出管自体に小孔を形成した構造としてもよい。しかし、吐出口部材73を設けた場合は、圧縮空気の量を増大させることができる。また、これら流体噴出管72,79から噴出させる流体は圧縮空気としたが、水流や気泡を含んだ圧力水としても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0171】
最初沈殿池用導水渠、最初沈殿池、最終沈殿池用導水渠、及び最終沈殿池に、それぞれの状況に応じて組み込まれているスカム除去装置により効率よくスカム除去を行うことができる。これにより処理水質を改善できるので、自然環境に放流された場合の環境への負荷を軽減することができる。また、パイプスキマにスカムとともに流れ込む水の量も少なくかつ短時間でスカム除去できるため、パイプスキマから上流に返送される水量が少なくなる結果、これに伴う電力量も削減でき、省エネルギー化を図ることができ、下水処理場におけるスカム処理費用の低減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0172】
A 最初沈殿池用導水渠
B 最初沈殿池群
C 反応槽
D 最終沈殿池用導水渠
E 最終沈殿池群
2 導水渠本体
3 スカムビット
4 可動ゲート
6 沈殿池(最初沈殿池)
7 流入口
8 開閉ゲート
9 パイプ
11 (導水渠用)水噴射ノズル(水上ノズル)
13 (導水渠用)水噴射ノズル(水中ノズル)
20 スカム剥離装置
21 吐出口部材
22 開口部
23 圧力流体供給部
24 圧力流体配管
35 第1スカム除去装置
52 溢流トラフ
54 スカムピット
60 第2スカム除去装置
61 (最初沈殿池用)パイプスキマ
62 パイプ材
63 スカム取込み口
70 前壁板
72 流体噴出管
73 吐出口部材
74 開口部
78 吐出口部材
79 流体噴出管
80 ガイド板
90,91 (最初沈殿池用)水噴射ノズル(水上ノズル)
92 (最初沈殿池用)水噴射ノズル(水中ノズル)
100 沈殿池(最終沈殿池)
102 溢流トラフ
105 第3スカム除去装置
106 (最終沈殿池用)パイプスキマ
107 (最終沈殿池用)水噴射ノズル
108 パイプ材
109 開口(上流側スカム取込み口)
110 開口(下流側スカム取込み口)
111 スカムピット
112 回動機構
115 スカム誘導板(誘導板)
123 弁体
124a 立ち上がり板
127 散水ノズル
【要約】
処理水質を改善して自然環境への負荷を軽減できるとともに、省エネルギー化に資する。
導水渠の第1スカム除去装置は、原水の流れ方向に沿って延び、かつ、複数の開口部を有し、スカムの下側に位置するように設けられる一対のパイプおよびこれらパイプに圧力流体を供給する圧力流体供給部を備えるスカム剥離装置と;導水渠本体の終端のスカムピット側にスカムを移動させる水噴射ノズルとを備え、最初沈殿池の第2スカム除去装置は、パイプスキマと、スカム案内機構と、スカムをパイプスキマ側へ移動させる水噴射ノズルとを備え、最終沈殿池の第3スカム除去装置は、パイプスキマと、スカムをパイプスキマ側へ移動させる水噴射ノズルとを備え、最終沈殿池用の前記水噴射ノズルは、水面の流れを加速してスカムを移動させるが、導水渠用の水噴射ノズルよりも水噴射量が少なく、スカムを水噴射の勢いで破壊して水中に混濁させない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14