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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20250417BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20250417BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20250417BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20250417BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20250417BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20250417BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
B32B27/30 A
B32B27/36 102
B32B27/16 101
C08L33/06
C08L69/00
C08F290/06
C09D4/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020167794
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059906
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 敦大
(72)【発明者】
【氏名】野中 健太
(72)【発明者】
【氏名】高崎 雅登
(72)【発明者】
【氏名】向井 剛
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/133784(WO,A1)
【文献】特開2010-121013(JP,A)
【文献】特開2019-069541(JP,A)
【文献】特開2017-179173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
C08J 7/04
C08L 33/06
C08L 69/00
C08F 290/06
C09D 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂層、およびハードコート層を含む樹脂積層体であって、前記ハードコート層は、1分子中に2個以上のエーテル結合と2個以上のアクリロイル基を含むウレタンアクリレート、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化樹脂組成物の硬化物を含み、前記ハードコート層は、水接触角が50~75°であり、表面抵抗値が6.5×1012~5.0×1015Ωであることを特徴とする樹脂積層体。
【請求項2】
前記ハードコート層はスルホン酸アンモニウム塩を含有する請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂層および前記ハードコート層の間に、高硬度樹脂層を含み、前記高硬度樹脂層は以下の樹脂(B1)~(B6)からなる群より選択される樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂積層体:
・樹脂(B1):下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合体、または該共重合体と樹脂(B2)とのアロイ
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり;Rは炭素数1~18のアルキル基である。)
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり;Rは炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。);
・樹脂(B2):(メタ)アクリル酸エステル構成単位を6~77質量%、スチレン構成単位を15~71質量%、および不飽和ジカルボン酸構成単位を8~23質量%含む共重合体(D)、該共重合体(D)同士のアロイ、該共重合体(D)と他の高硬度樹脂とのアロイ、または、該共重合体(D)とアクリル樹脂とのアロイ;
・樹脂(B3):下記一般式(3)で表される構成単位(c)と、任意に下記一般式(4)で表される構成単位(d)とを含む共重合体;
【化3】
【化4】
・樹脂(B4):スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を60~90質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む共重合体(G)、または該共重合体(G)と前記樹脂(B2)とのアロイ;
・樹脂(B5):下記一般式(5)で表される構成単位(e)を含む重合体;
【化5】
・樹脂(B6):スチレン構成単位を50~95質量%、不飽和ジカルボン酸単位を5~50質量%含む共重合体とアクリル樹脂とのアロイ。
【請求項4】
前記ハードコート層に透明粘着体とガラスとを積層した樹脂積層体を、85℃、湿度85%の環境下で500時間の耐久性試験に供した時に発泡しないことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層体に関し、詳しくは、親水性ハードコート表面を持つ樹脂シート積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードコート層を有する樹脂シート積層体が様々な分野で使用されている(特許文献1を参照)。このような樹脂シートの積層体は、例えば、自動車等の内装部材や電子機器の筐体等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-180099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、帯電しにくく、光学糊で光学フィルムを貼り合わせた後の高温高湿条件下においても発泡しにくい樹脂積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂を基材として含む樹脂積層体であって、光学糊を介して透明フィルムを貼合した後に発泡不具合が生じにくい樹脂積層体を鋭意研究した。その結果、光学糊と接するハードコート層の水接触角、表面抵抗値が一定の値を持つ樹脂積層体が優位であることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
<1>ポリカーボネート樹脂層、およびハードコート層を含む樹脂積層体であって、前記ハードコート層は、1分子中に2個以上のエーテル結合と2個以上のアクリロイル基を含むウレタンアクリレート、およびテトラヒドロフルフリルアクリレートを含有する活性エネルギー線硬化樹脂組成物の硬化物を含み、前記ハードコート層は、水接触角が50~75°であり、表面抵抗値が6.5×1012~5.0×1015Ωであることを特徴とする樹脂積層体。
<2>前記ハードコート層はスルホン酸アンモニウム塩を含有する<1>に記載の樹脂積層体。
<3>さらに高硬度樹脂層を含む<1>または<2>に記載の樹脂積層体。
<4>前記高硬度樹脂層は以下の樹脂(B1)~(B6)からなる群より選択される樹脂を含む、<3>に記載の樹脂積層体:
・樹脂(B1):下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合体、または該共重合体と樹脂(B2)とのアロイ
【化1】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり;Rは炭素数1~18のアルキル基である。)
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり;Rは炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基である。);
・樹脂(B2):(メタ)アクリル酸エステル構成単位を6~77質量%、スチレン構成単位を15~71質量%、および不飽和ジカルボン酸構成単位を8~23質量%含む共重合体(D)、該共重合体(D)同士のアロイ、該共重合体(D)と他の高硬度樹脂とのアロイ、または、該共重合体(D)とアクリル樹脂とのアロイ;
・樹脂(B3):下記一般式(3)で表される構成単位(c)と、任意に下記一般式(4)で表される構成単位(d)とを含む共重合体;
【化3】
【化4】
・樹脂(B4):スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を60~90質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む共重合体(G)、または該共重合体(G)と前記樹脂(B2)とのアロイ;
・樹脂(B5):下記一般式(5)で表される構成単位(e)を含む重合体;
【化5】
・樹脂(B6):スチレン構成単位を50~95質量%、不飽和ジカルボン酸単位を5~50質量%含む共重合体とアクリル樹脂とのアロイ。
<5>前記ハードコート層に透明粘着体とガラスとを積層した樹脂積層体を、85℃、湿度85%の環境下で500時間の耐久性試験に供した時に発泡しないことを特徴とする<1>~<4>のいずれかに記載の樹脂積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、帯電しにくく、光学糊で光学フィルムを貼り合わせた後の高温高湿条件下においても発泡しにくい樹脂積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について製造例や実施例等を例示して詳細するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意に変更して行うこともできる。
【0008】
本発明の樹脂積層体は、ポリカーボネート樹脂層、およびハードコート層を含む。前記樹脂積層体は、さらに高硬度樹脂層を含んでいても良い。以下、樹脂積層体に含まれ得る各層について説明する。
【0009】
1.ポリカーボネート樹脂層(基材層)
基材層に含まれるポリカーボネート樹脂(a1)は、1種類であっても2種類以上であってもよい。基材層中のポリカーボネート樹脂(a1)の含有量は、基材層の全質量に対して75~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ポリカーボネート樹脂の含有量を増やすことで、耐衝撃性が向上する。
【0010】
ポリカーボネート樹脂(a1)としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合、即ち、-[O-R-OCO]-単位(ここで、Rは、脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含んでいてもよく、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい)を含むものであれば特に限定されるものではないが、芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましく、特に下記式(a1-1)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を使用することで、耐衝撃性により優れた樹脂シートを得ることができる。
【0011】
【化6】
【0012】
具体的には、ポリカーボネート樹脂(a1)として、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。
【0013】
近年、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点を制御する目的で、下記一般式(a1-2)で表されるような1価フェノールを末端停止剤として付加したポリカーボネート樹脂も使用されている。本発明においても、このように末端停止剤を付加したポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【化7】
(式中、Rは、炭素数8~36のアルキル基または炭素数8~36のアルケニル基を表し;R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、または置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~12のアリール基を表し;ここで、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基である。)
本明細書において、「アルキル基」および「アルケニル基」は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0014】
より好ましくは、一般式(a1-2)で表される1価フェノールは、下記一般式(a1-3)で表される。
【化8】
(式中、Rは、炭素数8~36のアルキル基または炭素数8~36のアルケニル基を表す。)
【0015】
一般式(a1-2)または一般式(a1-3)におけるRの炭素数は、特定の数値範囲内であることがより好ましい。具体的には、Rの炭素数の上限値として36が好ましく、22がより好ましく、18が特に好ましい。また、Rの炭素数の下限値として、8が好ましく、12がより好ましい。
【0016】
一般式(a1-2)または一般式(a1-3)で示される1価フェノールの中でも、パラヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、パラヒドロキシ安息香酸2-ヘキシルデシルエステルのいずれかもしくは両方を末端停止剤として使用することが特に好ましい。
【0017】
例えば、一般式(a1-3)においてRが炭素数16のアルキル基である1価フェノールを末端停止剤として使用した場合、ガラス転移温度、溶融流動性、成形性、耐ドローダウン性等に優れたポリカーボネート樹脂を得ることができ、また、ポリカーボネート樹脂製造時の1価フェノールの溶剤溶解性にも優れるため、特に好ましい。
【0018】
一方、一般式(a1-2)または一般式(a1-3)におけるRの炭素数が増加しすぎると、1価フェノール(末端停止剤)の有機溶剤溶解性が低下する傾向があり、ポリカーボネート樹脂製造時の生産性が低下することがある。
一例として、Rの炭素数が36以下であれば、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性が高く、経済性も良い。Rの炭素数が22以下であれば、1価フェノールは、特に有機溶剤溶解性に優れており、ポリカーボネート樹脂を製造するにあたって生産性を非常に高くすることができ、経済性も向上する。このような1価フェノールを使用したポリカーボネート樹脂としては、例えば、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
一般式(a1-2)または一般式(a1-3)におけるRの炭素数が小さすぎると、ポリカーボネート樹脂のガラス転移点が十分に低い値とはならず、熱成形性が低下することがある。
【0019】
本発明において、ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量は、樹脂シートの耐衝撃性および成形条件に影響し得る。つまり、重量平均分子量が小さすぎる場合は、樹脂シートの耐衝撃性が低下するおそれがある。重量平均分子量が高すぎる場合は、ポリカーボネート樹脂(a1)を含む基材層を形成する時に過剰な熱源を必要とする場合がある。また、選択する成形法によっては高い温度が必要になるので、ポリカーボネート樹脂(a1)が高温にさらされることになり、その熱安定性に悪影響を及ぼすことがある。
ポリカーボネート樹脂(a1)の重量平均分子量は、15,000~75,000が好ましく、20,000~70,000がより好ましく、20,000~65,000がさらに好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0020】
基材層は、ポリカーボネート樹脂(a1)に加え、他の樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、ポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として主にテレフタル酸を含んでいることが好ましく、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
例えば、主成分であるエチレングリコール80~60モル%に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールを20~40モル%(合計100モル%)含むグリコール成分が重縮合してなるポリエステル樹脂(所謂「PETG」)が好ましい。基材層における樹脂は、ポリカーボネート樹脂(a1)のみであることが好ましいが、その他の樹脂を含む場合には、その量は基材層の全質量に対して0~25質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましい。
【0021】
基材層は、さらに添加剤等を含んでいてもよい。添加剤としては、樹脂シートにおいて通常使用されるものを使用することができる。そのような添加剤としては、例えば、抗酸化剤、抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、樹脂改質剤、相溶化剤、有機フィラーや無機フィラーのような強化材等が挙げられる。添加剤と樹脂を混合する方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法等を用いることができる。
添加剤の量は、基材層の全質量に対して0~10質量%であることが好ましく、0~7質量%であることがより好ましく、0~5質量%であることが特に好ましい。
【0022】
基材層の厚みは、0.3~10mmであることが好ましく、0.3~5mmであることがより好ましく、0.3~3.5mmであることが特に好ましい。
【0023】
2.高硬度樹脂層
上述のとおり、本発明の樹脂積層体は、さらに高硬度樹脂層を含んでいても良い。高硬度樹脂層に含まれる高硬度樹脂としては、特に制限されないが、樹脂(B1)~(B6)からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0024】
(樹脂(B1))
樹脂(B1)は、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含む共重合体である。この際、前記樹脂(B1)は、他の構成単位をさらに有していてもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリルおよび/またはアクリルを示す。
【0025】
【化9】
【0026】
式中、Rは水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0027】
またRは炭素数1~18のアルキル基であり、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基等が挙げられる。これらのうち、Rは、メチル基、エチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0028】
なお、Rがメチル基、エチル基である場合、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)は(メタ)アクリル酸エステル構成単位となり、Rがメチル基かつRがメチル基である場合、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)はメタクリル酸メチル構成単位となる。
【0029】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0030】
【化10】
【0031】
式中、Rは水素原子またはメチル基であり、水素原子であることが好ましい。
【0032】
は炭素数1~4の炭化水素基で置換されていてもよいシクロヘキシル基であり、置換基を有さないシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0033】
が水素原子であり、Rがシクロヘキシル基である場合、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)はビニルシクロヘキサン構成単位となる。
【0034】
一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0035】
本明細書中において、「炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、置換基を有していてもよい。
【0036】
前記樹脂(B1)における他の構成単位としては、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーとを重合した後に該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して樹脂(B1)を製造する過程において生じる、水素化されていない芳香族二重結合を含む芳香族ビニルモノマー由来の構成単位等が挙げられる。具体的な他の構成単位としては、スチレン構成単位が挙げられる。
【0037】
他の構成単位は、樹脂(B1)中に1種のみが含まれていても、2種以上含まれていてもよい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と脂肪族ビニル構成単位(b)との合計含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
【0039】
一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、好ましくは65~80モル%であり、より好ましくは70~80モル%である。前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が65モル%以上であると、基材層との密着性や表面硬度に優れた樹脂層を得ることができることから好ましい。一方、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)の割合が80モル%以下であると、樹脂シートの吸水による反りが発生しづらいことから好ましい。
【0040】
また、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、好ましくは20~35モル%であり、より好ましくは20~30モル%である。脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量が20モル%以上であると、高温高湿下での反りを防ぐことができることから好ましい。一方、脂肪族ビニル構成単位(b)の含有量が35モル%以下であると、基材との界面での剥離を防ぐことができることから好ましい。
【0041】
さらに、他の構成単位の含有量は、樹脂(B1)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0042】
なお、本明細書において、「共重合体」は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、および交互共重合体のいずれの構造であってもよい。
【0043】
樹脂(B1)の重量平均分子量は、特に制限はないが、強度および成型性の観点から、50,000~400,000であることが好ましく、70,000~300,000であることがより好ましい。
【0044】
樹脂(B1)のガラス転移点は、110~140℃であることが好ましく、110~135℃であることがより好ましく、110~130℃であることが特に好ましい。ガラス転移点が110℃以上であると、樹脂シートが熱環境あるいは湿熱環境において変形や割れを生じることが少ないことから好ましい。一方、140℃以下であると、鏡面ロールや賦形ロールによる連続式熱賦形、あるいは鏡面金型や賦形金型によるバッチ式熱賦形によって成形する場合に加工性に優れることから好ましい。
【0045】
具体的な樹脂(B1)としては、オプティマス7500、6000(三菱ガス化学社製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B1)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
高硬度樹脂として樹脂(B1)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380(三菱ガス化学製)を使用することが好ましい。
【0047】
また、高硬度樹脂として、一般式(1)で表される構成単位(R、Rがともにメチル基;メタクリル酸メチル)を75モル%、一般式(2)で表される構成単位(Rが水素原子、Rがシクロヘキシル基;ビニルシクロヘキサン)を25モル%含む共重合体である樹脂(B1)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(a1-1)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用し、末端停止剤として一般式(a1-3)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。
【0048】
樹脂(B1)の製造方法としては、特に限定されないが、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルモノマーと少なくとも1種の芳香族ビニルモノマーとを重合した後、該芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化して得られたものが好適である。
【0049】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、スチレン、α-メチルスチレン、p-ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、クロロスチレン、およびそれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、芳香族ビニルモノマーはスチレンであることが好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーの重合には、公知の方法を用いることができるが、例えば、塊状重合法や溶液重合法等により製造することができる。
【0051】
塊状重合法は、上記モノマーおよび重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、100~180℃で連続重合する方法等により行われる。上記モノマー組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含んでいてもよい。
【0052】
前記重合開始剤としては、特に限定されないが、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t-ヘキシルプロポキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
前記連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。
【0054】
溶液重合法に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、イソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーを重合した後の芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合を水素化する水素化反応に用いられる溶媒は、上記の重合溶媒と同じであっても異なっていてもよい。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。
【0056】
水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、水素圧力3~30MPa、反応温度60~250℃でバッチ式あるいは連続流通式で行うことができる。反応温度が60℃以上であると、反応時間がかかり過ぎることがないことから好ましい。一方、反応温度が250℃以下であると、分子鎖の切断やエステル部位の水素化等の副反応が起こらないまたはほとんど起こらないことから好ましい。
【0057】
水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウム等の金属またはそれら金属の酸化物、塩もしくは錯体化合物を、カーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒等が挙げられる。
【0058】
水素化反応により、芳香族ビニルモノマー由来の芳香族二重結合は、70%以上が水素化されることが好ましい。即ち、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中に含まれる芳香族二重結合の未水素化率は、30%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、5%未満であることがさらに好ましい。未水素化率が30%未満であると、透明性に優れた樹脂を得ることができることから好ましい。なお、未水素化部分の構成単位は、樹脂(B1)における他の構成単位となりうる。
【0059】
(樹脂(B2))
樹脂(B2)は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を6~77質量%、スチレン構成単位を15~71質量%、および不飽和ジカルボン酸構成単位を8~23質量%含む共重合体である。この際、前記樹脂(B2)は、他の構成単位をさらに有していてもよい。
【0060】
前記樹脂(B2)における(メタ)アクリル酸エステル構成単位を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に制限されないが、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル単量体はメタクリル酸メチルであることが好ましい。上述の(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0061】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して、6~77質量%であり、20~70質量%であることが好ましい。
【0062】
前記樹脂(B2)におけるスチレン構成単位としては、特に限定されず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることができる。前記スチレン単量体としては、入手の容易性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、相溶性の観点からスチレン単量体はスチレンであることが好ましい。上述のスチレン単量体は、スチレン構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0063】
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して、15~71質量%であり、20~66質量%であることが好ましい。
【0064】
前記樹脂(B2)における不飽和ジカルボン酸構成単位を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、特に限定されないが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられる。これらのうち、スチレン系単量体との相溶性の観点から、不飽和ジカルボン酸無水物単量体は無水マレイン酸であることが好ましい。上述の不飽和ジカルボン酸無水物単量体は、不飽和ジカルボン酸構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0065】
不飽和ジカルボン酸構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全質量に対して、8~23質量%であり、10~23質量%であることが好ましい。
【0066】
前記樹脂(B2)における他の構成単位としては、例えば、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0067】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B2)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0068】
上述の(メタ)アクリル酸エステル構成単位、スチレン構成単位、および不飽和ジカルボン酸構成単位の合計含有量は、樹脂(B2)の全構成単位に対して、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは95~100モル%であり、特に好ましくは98~100モル%である。
【0069】
樹脂(B2)の重量平均分子量は、特に制限はないが、50,000~300,000であることが好ましく、80,000~200,000であることがより好ましい。
【0070】
樹脂(B2)のガラス転移点は、90~150℃であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましく、115~150℃であることが特に好ましい。
【0071】
具体的な樹脂(B2)としては、レジスファイ R100、R200、R310(デンカ社製)、デルペット980N(旭化成社製)、hw55(ダイセル・エボニック社製)等が挙げられる。なお、上述した樹脂(B2)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
高硬度樹脂として樹脂(B2)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(a1-1)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(a1-3)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学社製)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が挙げられる。
【0073】
また、高硬度樹脂として、メタクリル酸メチル構成単位6~26質量%、スチレン構成単位55~21質量%、無水マレイン酸構成単位15~23質量%で構成される共重合体(R100、R200、またはR310;デンカ社製)の樹脂(B2)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用する態様が好ましい。
【0074】
さらに、高硬度樹脂として、メタクリル酸メチル構成単位6質量%、スチレン71質量%、無水マレイン酸23質量%で構成される共重合体(R310;デンカ社製)である樹脂(B2)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用する態様が特に好ましい。
【0075】
なお、樹脂(B2)の製造方法は、特に限定されないが、塊状重合法や溶液重合法が挙げられる。
【0076】
(樹脂(B3))
樹脂(B3)は、一般式(3)で表される構成単位(c)を含む重合体である。この際、前記重合体は、一般式(4)で表される構成単位(d)をさらに含むことが好ましい。また、前記重合体は、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0077】
【化11】
【0078】
一般式(3)で表される構成単位(c)の含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、50~100モル%であることが好ましく、60~100モル%であることがより好ましく、70~100モル%であることが特に好ましい。
【0079】
【化12】
【0080】
一般式(4)で表される構成単位(d)の含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、0~50モル%であることが好ましく、0~40モル%であることがより好ましく、0~30モル%であることが特に好ましい。
【0081】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0082】
構成単位(c)と構成単位(d)の合計含有量は、樹脂(B3)の全構成単位に対して、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、98~100モル%であることがさらに好ましい。
【0083】
樹脂(B3)の重量平均分子量は、15,000~75,000が好ましく、20,000~70,000がより好ましく、25,000~65,000が特に好ましい。
【0084】
樹脂(B3)のガラス転移点は、105~150℃であることが好ましく、110~140℃であることがより好ましく、110~135℃であることが特に好ましい。
【0085】
具体的な樹脂(B3)としては、ユーピロン KH3410UR、KH3520UR、KS3410UR(三菱エンジニアリングプラスチック社製)等が挙げられる。なお、上述した樹脂(B3)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
高硬度樹脂として樹脂(B3)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(a1-1)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(a1-3)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学社製)が挙げられる。特に、樹脂(B3)としてユーピロンKS3410UR(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380(三菱ガス化学社製)を使用することが好ましい。
【0087】
なお、高硬度樹脂として樹脂(B3)を使用する場合には、樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含むことが好ましい。この際、前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂としては、構成単位(c)を含まず構成単位(d)を含む樹脂が好ましく、構成単位(d)のみからなる樹脂がより好ましい。具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。
【0088】
前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含む場合、樹脂(B3)は、高硬度樹脂層に含まれる全樹脂に対して、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上の割合で含まれる。
【0089】
樹脂(B3)の製造方法は、特に限定されないが、モノマーとしてビスフェノールCを使用することを除いては、上述したポリカーボネート樹脂(a1)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0090】
(樹脂(B4))
樹脂(B4)は、スチレン構成単位を5~20質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位を60~90質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位を5~20質量%含む共重合体である。なお、前記樹脂(B4)は、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0091】
前記樹脂(B4)におけるスチレン構成単位としては、特に限定されず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることができる。前記スチレン単量体としては、入手の容易性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらのうち、相溶性の観点からスチレン単量体はスチレンであることが好ましい。上述のスチレン単量体は、スチレン構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0092】
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して、5~20質量%であり、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0093】
前記樹脂(B4)における(メタ)アクリル酸エステル構成単位を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に制限されないが、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル単量体はメタクリル酸メチルであることが好ましい。上述の(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸エステル構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0094】
(メタ)アクリル酸エステル構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して、60~90質量%であり、70~90質量%であることが好ましく、80~90質量%であることがより好ましい。
【0095】
前記樹脂(B4)におけるN-置換型マレイミド構成単位としては、N-フェニルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミド等のN-アリールマレイミド等に由来する構成単位が挙げられる。このうち、アクリル樹脂との相溶性の観点からN-フェニルマレイミドに由来する構成単位が好ましい。上述のN-置換型マレイミドに由来する構成単位は、N-置換型マレイミド構成単位として単独で含まれていても、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0096】
N-置換型マレイミド構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全質量に対して、5~20質量%であり、5~15質量%であることが好ましく、5~10質量%であることがより好ましい。
【0097】
前記他の構成単位としては、一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位と、一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位等が挙げられる。この際、前記一般式(1)および前記一般式(2)は、上述した樹脂(B1)のものと同様である。
【0098】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B4)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0099】
スチレン構成単位、(メタ)アクリル酸エステル構成単位、およびN-置換型マレイミド構成単位の合計含有量は、樹脂(B4)の全構成単位に対して、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、98~100モル%であることがさらに好ましい。
【0100】
樹脂(B4)の重量平均分子量は、50,000~250,000であることが好ましく、100,000~200,000がより好ましい。
【0101】
樹脂(B4)のガラス転移点は、110~150℃であることが好ましく、115~140℃であることがより好ましく、115~135℃であることが特に好ましい。
【0102】
具体的な樹脂(B4)としては、デルペット PM120N(旭化成株式会社製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B4)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
高硬度樹脂として樹脂(B4)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(a1-1)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(a1-3)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学社製)が挙げられる。特に、樹脂(B4)としてスチレン構成単位7質量%、(メタ)アクリル酸エステル構成単位86質量%、およびN-置換型マレイミド構成単位7質量%からなるデルペットPM-120Nを使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用するのが好ましい。
【0104】
樹脂(B4)の製造方法は、特に限定されないが、溶液重合、塊状重合等によって製造することができる。
【0105】
(樹脂(B5))
樹脂(B5)は、一般式(5)で表される構成単位(e)を含む重合体である。この際、樹脂(B5)は、さらに他の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0106】
【化13】
【0107】
一般式(5)で表される構成単位(e)の含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、80~100モル%であることが好ましく、90~100モル%であることがより好ましく、95~100モル%であることが特に好ましい。
【0108】
他の構成単位としては、例えば、一般式(3)で表される構成単位(c)、一般式(4)で表される構成単位(d)等が挙げられる。この際、前記一般式(3)および前記一般式(4)は、上述した樹脂(B3)のものと同様である。
【0109】
他の構成単位の含有量は、樹脂(B5)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0110】
樹脂(B5)の重量平均分子量は、10,000~1,000,000であることが好ましく、15,000~50,000がより好ましい。
【0111】
樹脂(B5)のガラス転移点は、120~200℃であることが好ましく、130~190℃であることがより好ましく、140~190℃であることが特に好ましい。
【0112】
樹脂(B5)として、具体的には、ユピゼータ FPC0220(三菱ガス化学社製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B5)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
高硬度樹脂として樹脂(B5)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(a1-1)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)が挙げられる。特に、樹脂(B5)としてユピゼータFPC0220(三菱ガス化学社製)を使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)を使用することが好ましい。
【0114】
高硬度樹脂として樹脂(B5)を使用する場合には、樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含むことが好ましい。この際、前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂としては、構成単位(c)を含まず構成単位(d)を含む樹脂が好ましく、構成単位(d)からなる樹脂がより好ましい。具体的には、芳香族ポリカーボネート樹脂(例えば、ユーピロンS-2000、ユーピロンS-1000、ユーピロンE-2000;三菱エンジニアリングプラスチックス社製)等が使用可能である。
【0115】
前記樹脂(B1)~(B6)以外の他の樹脂を含む場合、樹脂(B5)は、高硬度樹脂層に含まれる全樹脂に対して、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上の割合で含まれる。
【0116】
樹脂(B5)の製造方法は、特に限定されないが、モノマーとしてビスフェノールAPを使用することを除き、上述したポリカーボネート樹脂(a1)の製造方法と同様の方法で製造することができる。
【0117】
(樹脂(B6))
樹脂(B6)は、スチレン構成単位を50~95質量%、不飽和ジカルボン酸構成単位を5~50質量%含む共重合体である。
【0118】
スチレン構成単位としては、樹脂(B4)で記載のスチレン系単量体を用いることができる。樹脂(B6)は、これらのスチレン構成単位を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
スチレン構成単位の含有量は、樹脂(B6)の全質量に対して、50~95質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましく、65~87質量%であることがさらに好ましい。
【0120】
不飽和ジカルボン酸構成単位を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられる。これらのうち、スチレン系単量体との相溶性の観点から無水マレイン酸であることが好ましい。なお、上述の不飽和ジカルボン酸無水物単量体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
不飽和ジカルボン酸構成単位の含有量は、樹脂(B6)の全質量に対して、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、13~35質量%であることがさらに好ましい。
【0122】
樹脂(B6)は、上記構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位としては、例えば、下記一般式(1)に由来する構成単位(a)、一般式(2)に由来する構成単位(b)等が挙げられる。
【0123】
【化14】
【0124】
式中、RおよびRは上記と同様である。
【0125】
【化15】
【0126】
式中、RおよびRは上記と同様である。
【0127】
その他の構成単位の含有量は、樹脂(B6)の全構成単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることがさらに好ましい。
【0128】
樹脂(B6)の重量平均分子量は、50,000~250,000であることが好ましく、100,000~200,000がより好ましい。
【0129】
樹脂(B6)のガラス転移点は、110~150℃であることが好ましく、115~140℃であることがより好ましく、115~137℃であることが特に好ましい。
【0130】
樹脂(B6)として、具体的には、XIBOND140、XIBOND160(ポリスコープ社製)が挙げられる。なお、上述した樹脂(B6)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
高硬度樹脂として樹脂(B6)を使用する場合には、ポリカーボネート樹脂(a1)として一般式(a1-1)の構成単位を含むポリカーボネート樹脂を使用する態様が好ましい。さらには、末端停止剤として一般式(a1-3)で表される1価フェノール(Rの炭素数が8~22)を使用する態様が特に好ましい。このようなポリカーボネート樹脂としては、ユピゼータT-1380(三菱ガス化学社製)が挙げられる。特に、樹脂(B6)としてスチレン構成単位78質量%、無水マレイン酸構成単位22質量%からなるXIBOND160とアクリル樹脂とのアロイを使用し、ポリカーボネート樹脂(a1)としてユピゼータT-1380を使用するのが好ましい。
【0132】
樹脂(B6)の製造方法は、特に限定されないが、溶液重合、塊状重合等によって製造することができる。
【0133】
上述の樹脂(B1)~(B6)からなる群から選択される少なくとも1つは、アロイとして含有されていてもよい。
【0134】
前記アロイとしては、特に制限されないが、2種の樹脂(B1)のアロイ、2種の樹脂(B2)のアロイ、2種の樹脂(B3)のアロイ、2種の樹脂(B4)のアロイ、2種の樹脂(B5)のアロイ、2種の樹脂(B6)のアロイ、樹脂(B1)と樹脂(B2)とのアロイ、樹脂(B2)と樹脂(B4)とのアロイ、樹脂(B2)と他の高硬度樹脂とのアロイ、樹脂(B2)とアクリル樹脂とのアロイ、樹脂(B6)とアクリル樹脂とのアロイ等が挙げられる。
【0135】
前記他の高硬度樹脂としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0136】
前記アクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルとの共重合体等が挙げられる。市販品としては、アクリペット(三菱ケミカル株式会社製)、スミペックス(住友化学株式会社製)、パラペット(株式会社クラレ製)等が挙げられる。
【0137】
2種の樹脂のアロイとする場合、よりガラス転移温度が高い樹脂同士のアロイとすることが好ましい。
【0138】
なお、上述のアロイは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
アロイの製造方法としては、特に制限されないが、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化する方法等が挙げられる。
【0140】
高硬度樹脂層に含まれる高硬度樹脂は、1種類であっても2種類以上であってもよく、樹脂(B1)~(B6)から2種類以上を選択する場合は、同じまたは異なるカテゴリーから選択することができ、さらに樹脂(B1)~(B6)以外の高硬度樹脂を含んでいてもよい。
【0141】
高硬度樹脂層中の高硬度樹脂の含有量は、高硬度樹脂層の全質量に対して、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0142】
(他の樹脂)
高硬度樹脂層は、高硬度樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。前記他の樹脂としては、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、シクロオレフィン(コ)ポリマー樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、各種エラストマー等が挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
他の樹脂の含有量は、高硬度樹脂層の全質量に対して、35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0144】
(添加剤)
高硬度樹脂層は、添加剤等を含んでいてもよい。当該添加剤としては、上述したものが用いられうる。
【0145】
(高硬度樹脂層)
高硬度樹脂層の厚みは、好ましくは10~250μmであり、より好ましくは30~200μmであり、特に好ましくは60~150μmである。高硬度樹脂層の厚みが10μm以上であると、表面硬度が高くなることから好ましい。一方、高硬度樹脂層の厚みが250μm以下であると、耐衝撃性が高くなることから好ましい。
【0146】
(高硬度樹脂層の基材層への積層)
基材層と高硬度樹脂層の間にはさらなる層が存在していてもよいが、ここでは、基材層上に高硬度樹脂層を積層する場合について説明する。
【0147】
高硬度樹脂層を基材層に積層する方法としては、特に限定されず、別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を加熱圧着する方法;個別に形成した基材層と高硬度樹脂層とを重ね合わせて、両者を接着剤によって接着する方法;基材層と高硬度樹脂層とを共押出成形する方法;予め形成しておいた高硬度樹脂層に、基材層をインモールド成形して一体化する方法等が挙げられる。これらのうち、製造コストや生産性の観点から、共押出成形する方法が好ましい。
【0148】
共押出の方法は特に限定されない。例えば、フィードブロック方式では、フィードブロックで基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、Tダイでシート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。また、マルチマニホールド方式では、マルチマニホールドダイ内で基材層の片面上に高硬度樹脂層を配置し、シート状に押し出した後、成形ロールを通過させながら冷却して所望の積層体を形成する。
【0149】
なお、上記方法は高硬度樹脂層を基材層以外の層に積層する場合にも同様の方法で積層することができる。
【0150】
基材層と高硬度樹脂層の合計厚みは、好ましくは0.5~3.5mm、より好ましくは0.5~3.0mm、さらに好ましくは1.2~3.0mmである。合計厚みが0.5mm以上であると、シートの剛性を保つことができることから好ましい。一方、合計厚みが3.5mm以下であると、シートの下にタッチパネルを設置する場合等にタッチセンサーの感度が悪くなるのを防ぐことができることから好ましい。
【0151】
基材層および高硬度樹脂層の合計厚みに占める基材層の厚みの割合は、好ましくは75%~99%であり、より好ましくは80~99%であり、特に好ましくは85~99%である。上記範囲とすることにより、硬度と耐衝撃性を両立できる。
【0152】
3.ハードコート層
本発明の樹脂積層体は、ハードコート層を含む。ハードコート層と高硬度樹脂層との間にさらなる層が存在していてもよいが、好ましくは、ハードコート層は、高硬度樹脂層上に積層される。即ち、本発明の樹脂積層体の好ましい態様は、基材層上に高硬度樹脂層が積層され、高硬度樹脂層上にハードコート層が積層されたものである。
【0153】
ハードコート層は、アクリル系ハードコートで作製されることが好ましい。本明細書において、「アクリル系ハードコート」とは、重合基として(メタ)アクリロイル基を含有するモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーを重合して架橋構造を形成した塗膜を意味する。
【0154】
アクリル系ハードコートの組成としては、活性エネルギー線硬化樹脂組成物の硬化物であり、その成分組成において、1分子中に2個以上のエーテル結合と2個以上のアクリロイル基を含むウレタンアクリレートを2~98質量%、テトラヒドロフルフリルアクリレートを1~60質量%、表面改質剤を1~15質量%、および光重合開始剤を含む樹脂組成物であることが好ましい。
【0155】
より具体的には、アクリル系ハードコートは、1分子中に2個以上のエーテル結合と2個以上のアクリロイル基を含むウレタンアクリレートを、好ましくは2~98質量%、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは9~30質量%含む。
また、アクリル系ハードコートは、テトラヒドロフルフリルアクリレートを、好ましくは1~60質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは9~30質量%含む。
また、アクリル系ハードコートは、表面改質剤を、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~10質量%含む。
また、アクリル系ハードコートは、光重合開始剤を重合性単量体の総和100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは2~6質量部含む。
【0156】
前記以外の重合性単量体を併用することに特に制限はなく、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等を併用することが挙げられる。
【0157】
また、ハードコート層は、表面改質剤としてスルホン酸アンモニウム塩を含有することが好ましい。
【0158】
スルホン酸アンモニウム塩としては、アルキル硫酸エステルアンモニウム、ポリオキシエチレン硫酸エステルアンモニウム等が挙げられる。
【0159】
活性エネルギー線としては、紫外線であることが多く、メタルハライドランプ、LEDランプ、高圧水銀ランプ等が挙げられる。
【0160】
また、光重合開始剤としてはIrgacure-184、Irgacure-907、Irgacure-1173等が挙げられる。
【0161】
ハードコート層の厚みは、好ましくは1~50μmであり、より好ましくは2~30μmであり、特に好ましくは4~15μmである。ハードコート層の厚みが1μm以上であると、表面硬度が向上するため好ましい。一方、ハードコート層の厚みが50μm以下であると、シートカット時にクラックが発生しにくいことから好ましい。
【0162】
基材層、高硬度樹脂層、およびハードコート層の合計厚みは、好ましくは0.25~5mm、より好ましくは0.35~4mm、さらに好ましくは0.5~3mmである。合計厚みが0.25mm以上であると、耐衝撃性の観点から好ましい。一方、合計厚みが5mm以下であると、軽量化の観点から好ましい。
【0163】
基材層、高硬度樹脂層、およびハードコート層の合計厚みに占める基材層の厚みの割合は、好ましくは75~99%であり、より好ましくは83~99%であり、特に好ましくは88~98%である。上記範囲とすることにより、表面硬度と耐衝撃性を両立することができる。
【0164】
なお、ハードコート層を高硬度樹脂層上に積層する方法としては、高硬度樹脂層上に活性エネルギー線硬化樹脂組成物を塗布し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、当該樹脂組成物を硬化させる方法を挙げることができる。
【0165】
4.樹脂積層体
上記「1.」~「3.」で説明した各層を含む樹脂積層体は、その表面のハードコート層が次の物性を有するものである。
即ち、水接触角は、好ましくは50~75°であり、より好ましくは55~70°であり、さらに好ましくは60~70°である。
また、表面抵抗値は、好ましくは6.5×1012~5.0×1015Ωであり、より好ましくは1.0×1013~5.0×1015Ωであり、さらに好ましくは1.0×1013~1.0×1015Ωである。
【0166】
本発明の樹脂積層体は、例えば、光学ディスプレー(例えば、陰極線管(CRT)、発光ダイオード(LED)ディスプレー)、カード、カメラのレンズまたは本体、扇風機、ドアノブ、蛇口の取手、鏡、および掃除機、洗濯機等の家電、並びに携帯情報端末(PDA)、携帯電話、液晶ディスプレー(LCD)パネル、タッチスクリーン、および着脱式コンピュータスクリーン等のデバイス等に有用である。本発明の樹脂積層体は、例えば、家具、ドアおよび窓、便器およびバスタブ、車の内装部材/外装部材、レンズ(例えばメガネ用)、ゴーグル、液体輸送用部材、医療用部材、または太陽電池パネル等にも使用することができる。
【実施例
【0167】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下に説明する各実施例および比較例において、水の接触角は、協和界面科学社製DropMaster(型番:DM-300)を使用し、θ/2法により計算した。また、表面抵抗値は、ADVANTEST社製R8340を使用し、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0168】
(実施例1)
高硬度樹脂層として(B1)、ポリカーボネート樹脂層として三菱ガス化学製ユーピロンE-2000を用いた積層体に、活性エネルギー線硬化樹脂組成物1をバーコーターにて塗装し、メタルハライドランプを用いて、120W/cm、5秒間照射の条件で紫外線を照射して当該樹脂組成物を硬化させ、ポリカーボネート樹脂層、高硬度樹脂層、ハードコート層を含む樹脂積層体とした。各層の厚みは、ポリカーボネート樹脂層は1mmで、高硬度樹脂層は70μmで、ハードコート層は10μmであった。
活性エネルギー線硬化樹脂組成物1の組成は、ポリオキシエチレン含有2官能ウレタンアクリレート30質量部、6官能ウレタンアクリレート20質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート20質量部、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート20質量部、ポリオキシエチレン硫酸エステルアンモニウム10質量部、1-ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン1質量部とした。
水の接触角は50.1°であった。また、表面抵抗値は6.5×1012であった。
OCAとして積水化学製の高透明両面テープを使用し、0.4mmtのガラス板を貼合した。この後、85℃、湿度85%の高温高湿槽に500時間投入し発泡の有無を目視にて確認した結果、発泡は認められなかった。
【0169】
(実施例2)
高硬度樹脂層として(B1)、ポリカーボネート樹脂層として三菱ガス化学製ユーピロンE-2000を用いた積層体に、活性エネルギー線硬化樹脂組成物2をバーコーターにて塗装し、メタルハライドランプを用いて、120W/cm、5秒間照射の条件で紫外線を照射して当該樹脂組成物を硬化させ、ポリカーボネート樹脂層、高硬度樹脂層、ハードコート層を含む樹脂積層体とした。各層の厚みは、ポリカーボネート樹脂層は0.93mmで、高硬度樹脂層は70μmで、ハードコート層は10μmであった。
活性エネルギー線硬化樹脂組成物2の組成は、ポリオキシエチレン含有2官能ウレタンアクリレート20質量部、6官能ウレタンアクリレート30質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート20質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート20質量部、ポリオキシエチレン硫酸エステルアンモニウム10質量部、1-ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン1質量部とした。
水の接触角は61.8°であった。また、表面抵抗値は1.4×1015あった。
OCAとして積水化学製の高透明両面テープを使用し、0.4mmtのガラス板を貼合した。この後、85℃、湿度85%の高温高湿槽に500時間投入し発泡の有無を目視にて確認した結果、発泡は認められなかった。
【0170】
(実施例3)
高硬度樹脂層として(B1)、ポリカーボネート樹脂層として三菱ガス化学製ユーピロンE-2000を用いた積層体に、活性エネルギー線硬化樹脂組成物3をバーコーターにて塗装し、メタルハライドランプを用いて、120W/cm、5秒間照射の条件で紫外線を照射して当該樹脂組成物を硬化させ、ポリカーボネート樹脂層、高硬度樹脂層、ハードコート層を含む樹脂積層体とした。各層の厚みは、ポリカーボネート樹脂層は0.93mmで、高硬度樹脂層70μmで、ハードコート層は10μmであった。
活性エネルギー線硬化樹脂組成物3の組成は、ポリオキシエチレン含有2官能ウレタンアクリレート10質量部、6官能ウレタンアクリレート30質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート30質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート25質量部、ポリオキシエチレン硫酸エステルアンモニウム5質量部、1-ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン1質量部とした。
水の接触角は66.9°であった。また、表面抵抗値は4.8×1015であった。
OCAとして積水化学製の高透明両面テープを使用し、0.4mmtのガラス板を貼合した。この後、85℃、湿度85%の高温高湿槽に500時間投入し発泡の有無を目視にて確認した結果、発泡は認められなかった。
【0171】
(実施例4)
高硬度樹脂層として(B1)、ポリカーボネート樹脂層として三菱ガス化学製ユーピロンE-2000を用いた積層体に、活性エネルギー線硬化樹脂組成物4をバーコーターにて塗装し、メタルハライドランプを用いて、120W/cm、5秒間照射の条件で紫外線を照射して当該樹脂組成物を硬化させ、ポリカーボネート樹脂層、高硬度樹脂層、ハードコート層を含む樹脂積層体とした。各層の厚みは、ポリカーボネート樹脂層は0.93mmで、高硬度樹脂層70μmで、ハードコート層は10μmであった。
活性エネルギー線硬化樹脂組成物4の組成は、ポリオキシエチレン含有2官能ウレタンアクリレート23質量部、6官能ウレタンアクリレート30質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート30質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート15質量部、ポリオキシエチレン硫酸エステルアンモニウム2質量部、1-ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン3質量部、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン1質量部とした。
水の接触角は64.7°であった。また、表面抵抗値は1.4×1013であった。
OCAとして積水化学の高透明両面テープを使用し、0.4mmtのガラス板を貼合した。この後、85℃、湿度85%の高温高湿槽に500時間投入し発泡の有無を目視にて確認した結果、発泡は認められなかった。
【0172】
(比較例1)
高硬度樹脂層として(B1)、ポリカーボネート樹脂層として三菱ガス化学製ユーピロンE-2000を用いた積層体に、活性エネルギー線硬化樹脂組成物5をバーコーターにて塗装し、メタルハライドランプを用いて、120W/cm、5秒間照射の条件で紫外線を照射して当該樹脂組成物を硬化させ、ポリカーボネート樹脂層、高硬度樹脂層、ハードコート層を含む樹脂積層体とした。各層の厚みは、ポリカーボネート樹脂層は0.93mmで、高硬度樹脂層は70μmで、ハードコート層は10μmであった。
活性エネルギー線硬化樹脂組成物5の組成は、ウレタンアクリレートとPEG200とジメチロール-トリシクロデカンジアクリレートを質量比5:3:2とした。
水の接触角は81.6°であった。また、表面抵抗値は3.6×1016であった。
OCAとして積水化学製の高透明両面テープを使用し、0.4mmtのガラス板を貼合した。この後、85℃、湿度85%の高温高湿槽に500時間投入し発泡の有無を目視にて確認した結果、発泡の発生が認められた。
【0173】
(比較例2)
高硬度樹脂層として(B1)、ポリカーボネート樹脂層として三菱ガス化学製ユーピロンE-2000を用いた積層体に、活性エネルギー線硬化樹脂組成物を塗布せず、ポリカーボネート樹脂層、高硬度樹脂層を含む樹脂積層体とした。各層の厚みは、ポリカーボネート樹脂層は0.93mmで、高硬度樹脂層は70μmであった。
水の接触角は78.8であった。また、表面抵抗値は3.4×1016Ωであった。 OCAとして積水化学製の高透明両面テープを使用し、0.4mmtのガラス板を貼合した。この後、85℃、湿度85%の高温高湿槽に500時間投入し発泡の有無を確認した結果、発泡の発生が認められた。
【0174】
実施例1~4および比較例1~2の結果を下記表1に示す。
【表1】