(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】木製部材の接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20250417BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
E04B1/58 503L
E04B1/26 E
(21)【出願番号】P 2020169078
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃治
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 義之
(72)【発明者】
【氏名】奥出 久人
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 朋典
(72)【発明者】
【氏名】車 創太
(72)【発明者】
【氏名】陶山 春菜
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英二
(72)【発明者】
【氏名】栗原 嵩明
(72)【発明者】
【氏名】塩出 宏紀
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-032114(JP,A)
【文献】実開昭60-008303(JP,U)
【文献】特開2003-090090(JP,A)
【文献】特開平07-259185(JP,A)
【文献】実開昭62-049502(JP,U)
【文献】実開昭56-003902(JP,U)
【文献】実開昭54-131709(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材軸方向に突き合わせて配置され、表面に材軸方向と直交する方向に沿って形成された直交スリットをそれぞれ有する第一木製部材及び第二木製部材と、
前記直交スリットへ挿入された支持鋼板と、
前記第一木製部材及び前記第二木製部材に跨って、かつ、前記第一木製部材及び前記第二木製部材の上下端面に亘って配置され、前記第一木製部材の前記直交スリットに挿入された前記支持鋼板と前記第二木製部材の前記直交スリットに挿入された前記支持鋼板とを連結する連結鋼板と、
を有する木製部材の接合構造。
【請求項2】
前記直交スリットは、前記第一木製部材及び前記第二木製部材のそれぞれに、材軸方向に沿って複数設けられ、
前記支持鋼板は、全ての前記直交スリットに挿入されている、
請求項1に記載の木製部材の接合構造。
【請求項3】
前記第一木製部材及び前記第二木製部材の表面には、前記材軸方向に沿って軸方向スリットが形成されており、
前記連結鋼板は、前記軸方向スリットに挿入されている請求項1又は2に記載の木製部材の接合構造。
【請求項4】
前記連結鋼板の端面には切込みが形成され、前記支持鋼板としての長方形状鋼板が前記切込みに食い込んでいる、請求項3に記載の木製部材の接合構造。
【請求項5】
前記長方形状鋼板の端面には切込みが形成され、前記連結鋼板の前記切込みと、前記長方形状鋼板の切込みと、が噛み合っている、
請求項4に記載の木製部材の接合構造。
【請求項6】
前記支持鋼板は、前記連結鋼板の片面に溶接されたブレード状又は爪状の突起であり、
前記直交スリットは、前記第一木製部材及び前記第二木製部材に前記支持鋼板が食い込んで形成されている、
請求項1に記載の木製部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製部材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、木質圧縮成形集合材の側面にピン穴を形成し、このピン穴へピンを挿入することで、木質圧縮成形集合材と木材とを接合した接合構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1における接合構造では、接合部に引張力が作用すると、ピンから木質圧縮成形集合材に支圧力が作用する。この支圧力によって、木質圧縮成形集合材と木材との間で引張力を伝達することができる。
【0005】
接合部の引張耐力を高めるためには、支圧面積を大きくして、単位面積に作用する支圧力を小さくする(支圧力を分散する)ことが好ましい。しかしながら、支圧面積を大きくするためにピンの断面積を大きくすると、木質圧縮成形集合材の断面欠損が大きくなり好ましくない。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、接合される木製部材に引張力が作用した際に、断面欠損が大きくなるのを抑制した上で、支圧力を分散できる接合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の木製部材の接合構造は、材軸方向に突き合わせて配置され、表面に材軸方向と直交する方向に沿って形成された直交スリットをそれぞれ有する第一木製部材及び第二木製部材と、前記直交スリットへ挿入された支持鋼板と、前記第一木製部材及び前記第二木製部材に跨って、かつ、前記第一木製部材及び前記第二木製部材の上下端面に亘って配置され、前記第一木製部材の前記直交スリットに挿入された前記支持鋼板と前記第二木製部材の前記直交スリットに挿入された前記支持鋼板とを連結する連結鋼板と、を有する。
【0008】
請求項1の木製部材の接合構造では、第一木製部材と第二木製部材との接合部に作用する圧縮力は、第一木製部材と第二木製部材との間で伝達される。
【0009】
一方、第一木製部材と第二木製部材との接合部に作用する引張力は、支持鋼板の木製部材に対する支圧力によって、第一木製部材と第二木製部材との間で伝達される。
【0010】
ここで、支持鋼板は板状の部材である。このため、支持鋼板による木製部材への支圧面積は、同じ断面積を備えた棒状の部材であるドリフトピン(円柱状の部材)より大きい。すなわち、第一木製部材及び第二木製部材の単位面積に作用する支圧力が、同じ断面積を備えたドリフトピンよりも分散されて小さくなる。これにより、断面欠損が大きくなるのを抑制した上で、木製部材接合部の耐力を上げることができる。
請求項2の木製部材の接合構造は、請求項1に記載の木製部材の接合構造において、前記直交スリットは、前記第一木製部材及び前記第二木製部材のそれぞれに、材軸方向に沿って複数設けられ、前記支持鋼板は、全ての前記直交スリットに挿入されている。
【0011】
請求項3の木製部材の接合構造は、請求項1又は2に記載の木製部材の接合構造において、前記第一木製部材及び前記第二木製部材の表面には、前記材軸方向に沿って軸方向スリットが形成されており、前記連結鋼板は、前記軸方向スリットに挿入されている。
【0012】
請求項3の木製部材の接合構造では、軸方向スリットに連結鋼板が挿入されている。このため、連結鋼板は、第一木製部材及び第二木製部材の表面から突出しない配置とすることができる。これにより、外観上目立ち難い接合構造を形成できる。
【0013】
請求項4の木製部材の接合構造は、請求項3に記載の木製部材の接合構造において、前記連結鋼板の端面には切込みが形成され、前記支持鋼板としての長方形状鋼板が前記切込みに食い込んでいる。
【0014】
請求項4の木製部材の接合構造では、支持鋼板としての長方形状鋼板が、連結鋼板の端面に形成された切込みに食い込むことで、連結鋼板に固定されている。このため、支持鋼板を連結鋼板に固定するための専用部材を用いる必要がない。
請求項5の木製部材の接合構造は、請求項4に記載の木製部材の接合構造において、前記長方形状鋼板の端面には切込みが形成され、前記連結鋼板の前記切込みと、前記長方形状鋼板の切込みと、が噛み合っている。
請求項6の木製部材の接合構造は、請求項1に記載の木製部材の接合構造において、前記支持鋼板は、前記連結鋼板の片面に溶接されたブレード状又は爪状の突起であり、前記直交スリットは、前記第一木製部材及び前記第二木製部材に前記支持鋼板が食い込んで形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、接合される木製部材に引張力が作用した際に、断面欠損が大きくなるのを抑制した上で、支圧力を分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る木製部材の接合構造における部材構成を示した分解斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る木製部材の接合構造によって2つの木材を接合した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る木製部材の接合構造における連結部材の中央鋼板を省略した変形例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る木製部材の接合構造における支持鋼板に切込みを形成しない変形例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態に係る木製部材の接合構造における部材構成を示した分解斜視図である。
【
図6】本発明の第二実施形態に係る木製部材の接合構造によって2つの木材を接合した状態を示す斜視図である。
【
図7A】本発明の第三実施形態に係る木製部材の接合構造における部材構成を示した分解斜視図である。
【
図7B】本発明の第三実施形態に係る木製部材の接合構造における鋼材の形状のバリエーションを示す分解斜視図である。
【
図8】比較例に係る木製部材の接合構造における部材構成を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る木製部材の接合構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0019】
<第一実施形態>
第一実施形態に係る木材の接合構造は、
図1に示すように、木材10Aと木材10Bとの接合構造(換言すると、継手構造)である。木材10A、10Bは、建物の柱に架け渡される梁の一部を構成する長尺部材である。木材10A、10Bは、支持鋼板20及び連結部材30を用いて互いに接合される。
【0020】
(木材)
木材10A、10Bは、それぞれ本発明における第一木製部材及び第二木製部材の一例である。木材10A、10Bの表面には、それぞれ軸方向スリット40及び直交スリット42、44が形成されている。木材10A、10Bを、材軸方向がX方向に沿うように配置した状態において、軸方向スリット40はX方向に沿い、直交スリット42はY方向に沿う。すなわち、軸方向スリット40は木材10A、10Bの材軸方向に沿うスリットであり、直交スリット42、44は材軸方向と直交する方向に沿うスリットである。
【0021】
軸方向スリット40は、木材10A、10Bの上下面(X軸及びY軸に沿う面)及び一方の端面(Y軸及びZ軸に沿う面)に開口する溝であり、木材10A、10Bのそれぞれに3本ずつ形成されている。軸方向スリット40は、木材10A、10Bの上面から下面を貫通して形成されている。なお、軸方向スリット40の本数は特に限定されるものではない。
【0022】
直交スリット42は、木材10A、10Bの上面及び両側面(X軸及びZ軸に沿う面)に開口する溝であり、木材10A、10Bのそれぞれに2本ずつ形成されている。また、直交スリット44は、木材10A、10Bの下面及び両側面(X軸及びZ軸に沿う面)に開口する溝であり、木材10A、10Bのそれぞれに2本ずつ形成されている。
【0023】
なお、直交スリット42、44の本数は特に限定されるものではないが、軸方向スリット40と交わる位置に形成されているものとする。
【0024】
(連結部材)
連結部材30は、中央鋼板32及び連結鋼板34を備えて形成されている。中央鋼板32は、木材10A、10Bの対向する端面に挟まれて配置される鋼板である。
【0025】
なお、本発明において「第一木製部材及び第二木製部材」が「材軸方向に突き合わせて配置され」た状態とは、中央鋼板32を挟んで配置される木材10A、10Bのように、木製部材同士が直接接触しないで対向して配置された状態を含む。
【0026】
連結鋼板34は、中央鋼板32に溶接された鋼板であり、中央鋼板32と直交する方向に沿って配置されている。連結鋼板34は、木材10A、10Bにおける軸方向スリット40に挿入される鋼板である。このため、連結鋼板34は、軸方向スリット40の幅と略同一の厚みで形成される。
【0027】
また、連結鋼板34には、軸方向スリット40に挿入された状態で直交スリット42、44と交わる位置に、切込み34Aが形成されている。切込み34Aの深さH2は、直交スリット42、44の深さH1の約半分とされている。
【0028】
(支持鋼板)
支持鋼板20は、長方形状(短冊状)に形成された鋼板であり、木材10A、10Bの直交スリット42、44に挿入される。このため、支持鋼板20は、直交スリット42、44の幅と略同一の厚みで形成される。また、支持鋼板20は、直交スリット42、44の深さH1と略同一の高さ(上下方向の幅)で形成される。なお、
図1においては図示を簡略化するため、支持鋼板20は2枚しか描かれていないが、支持鋼板20は、直交スリット42、44のそれぞれに挿入される。
【0029】
支持鋼板20には、直交スリット42、44に挿入された状態で軸方向スリット40と交わる位置に、切込み20Aが形成されている。切込み20Aの深さH2は、直交スリット42、44の深さH1の約半分とされている。また、この切込み20Aは、連結鋼板34の切込み34Aと噛み合って配置される。
【0030】
(接合方法)
木材10Aと木材10Bとを接合するためには、まず、木材10A、10Bそれぞれの軸方向スリット40に連結部材30の連結鋼板34を挿入しながら、木材10A、10Bを近接させる。これにより、木材10A、10Bは、中央鋼板32を挟んだ状態で、材軸方向に突き合わせて配置される。なお、連結鋼板34には接着剤を塗布してもよい。
【0031】
次に、支持鋼板20を、直交スリット42へ挿入する。このとき、支持鋼板20は、連結鋼板34と係合して配置される。なお、支持鋼板20には接着剤を塗布してもよい。
【0032】
これにより、
図2に示すように、木材10Aと木材10Bとが接合される。なお、
図1に破線Wで示すように、木材10A、木材10B及び連結鋼板34には、木材10A、木材10Bの材軸方向と交わる方向の貫通孔を形成し、この貫通孔へドリフトピンを挿通させてもよい。ドリフトピンを挿通させることにより、ドリフトピンのせん断耐力によって木材10A、10Bの接合強度を高めることができる。
【0033】
(作用及び効果)
第一実施形態に係る木製部材の接合構造では、木材10Aと木材10Bとの接合部に作用する圧縮力は、木材10Aと木材10Bとの間で伝達される。
【0034】
木材10Aと木材10Bとの間には、
図2に示すように、中央鋼板32が挟まれている。これにより、中央鋼板32がない場合と比較して、例えば木材10Aから作用する圧縮力が、中央鋼板32の内部で分散され、木材10Bの断面に均等に伝達される。また、木材10A及び木材10Bが接合されて形成される梁材の軸剛性を高めることができる。
【0035】
一方、木材10Aと木材10Bとの接合部に作用する引張力は、支持鋼板20の木材10A及び木材10Bに対する支圧力によって、木材10Aと木材10Bとの間で伝達される。
【0036】
ここで、支持鋼板20は板状の部材である。
図1に示す支持鋼板20による木材10A、10Bへの支圧面積S1は、
図8に比較例として示すドリフトピン100(円柱状の部材)による木材10A、10Bへの支圧面積S2より大きい。この比較例におけるドリフトピン100の断面積は、支持鋼板20の断面積(X軸及びY軸に沿う平面で切った断面積、換言すると、Z軸に沿った方向からみた断面積)と等しい。
【0037】
すなわち、木材10A、10Bの単位面積に作用する支圧力が、同じ断面積(X軸及びY軸に沿う平面で切った断面積)を備えたドリフトピンよりも分散されて小さくなる。これにより、本実施形態に係る木製部材の接合構造では、比較例より木製部材接合部の耐力を上げることができる。また、接合部の耐力が大きくなることで、木材10A、10Bの断面寸法を小さくすることもできる。
【0038】
なお、
図8の比較例においては、木材100A、100Bの端面にそれぞれ形成されたスリット102に、連結鋼板104が挿入されている。木材100A、100B及び連結鋼板104には、上下方向に貫通する貫通孔106が形成され、この貫通孔106に、ドリフトピン100が挿通されている。
【0039】
比較例の接合構造によると、木材100A、100Bに引張力が作用した際、木材100A、100Bは、ドリフトピン100から支圧力を受けて、せん断破壊する。この場合、木材100A、100B自体の引張耐力が十分に発揮され難い。これに対して本実施形態に係る木製部材の接合構造では、木材10A、10Bの引張耐力を発揮し易い。
【0040】
また、第一実施形態に係る木製部材の接合構造では、
図1に示すように、支持鋼板20は長方形状とされ、連結鋼板34の端面(上下端面)に形成された切込み34Aに食い込むことで、連結鋼板34に固定されている。すなわち、支持鋼板20を連結鋼板34に嵌め込むだけで、支持鋼板20を連結鋼板34に固定することができる。
【0041】
(変形例)
第一実施形態に係る木製部材の接合構造では、連結部材30が中央鋼板32及び連結鋼板34を備えて形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図3に示すように、中央鋼板32を省略した連結鋼板34のみを連結部材として用いてもよい。
【0042】
また、第一実施形態に係る木製部材の接合構造では、
図1に示すように、連結鋼板34と支持鋼板20のそれぞれに、切込み34A及び切込み20Aが形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0043】
例えば
図4に示すように、連結鋼板34のみに、支持鋼板20の高さ(Z軸方向の寸法)と等しい切込み34Bを形成し、支持鋼板20には切込みを形成しない構成としてもよい。
【0044】
また、第一実施形態に係る木製部材の接合構造では、
図1に示すように、木材10A、10Bの上下端面のそれぞれに直交スリット42、44が形成され、これらの直交スリット42、44のそれぞれに支持鋼板20が挿入されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0045】
例えば直交スリット42、44のどちらかのみを形成して支持鋼板20を挿入してもよい。すなわち、支持鋼板20は木材10A、10Bの上下のどちらかのみに配置してもよい。また、直交スリット42、44は、木材10A、10Bの側面に形成してもよい。すなわち、
図1、
図2におけるZ方向が水平方向、Y方向が鉛直方向となるように各部材を配置してもよい。
【0046】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る木材の接合構造は、
図5に示すように、木材12Aと、木材12Bと、の接合構造である。木材12A、12Bは、第一実施形態と同様に、建物の柱に架け渡される梁部材の一部を構成する長尺部材である。なお、以下の各実施形態において、第一実施形態と同様の構成及び効果については説明を省略するものとする。
【0047】
木材12A、12Bは、支持鋼板22A、22B、連結鋼板50及びボルト52を用いて接合される。
図6には、接合された状態の木材12A、12Bが示されている。
【0048】
連結鋼板50は、木材12A及び木材12Bの両側面に接して、かつ、跨って配置される板材である。また、連結鋼板50は、木材12A及び木材12Bの両側面に接した状態で、木材12Aを貫通するボルト52によって木材12A及び木材12Bに固定されている。ボルト52は、木材12A又は木材12BをY方向に沿って貫通している。このボルト52の本数は適宜選択することができる。
【0049】
図5に示すように、支持鋼板22A、22Bは、連結鋼板50の片面に溶接されたブレード状又は爪状の突起である。支持鋼板22Aは木材12A及び木材12Bの材軸方向に直交して配置され、支持鋼板22Bは木材12A及び木材12Bの材軸方向に沿って配置される。
【0050】
支持鋼板22A、22Bは、連結鋼板50を木材12A及び木材12Bに押し付けることにより、木材12A及び木材12Bに食い込んで(刺さって)配置される。
【0051】
このように、本発明における「直交スリット」とは、支持鋼板22Aが食い込んで形成されるスリットも含む。すなわち、木材12A及び木材12Bには、支持鋼板22Aと一体化された状態で直交スリットが形成されていればよく、支持鋼板22Aの一体化前に直交スリットが形成されている必要はない。
【0052】
このように、木材12A及び木材12Bに溝を形成しないことにより、木材の加工が容易となる。但し、支持鋼板22A、22Bの食い込み易さの観点から、木材12A及び木材12Bには、予め溝を形成しておいてもよい。
【0053】
なお、連結鋼板50は、木材12A及び木材12Bの両側面ではなく、一方の面のみに配置してもよい。また、連結鋼板50は、木材12A及び木材12Bの上下面の少なくとも一方に接して配置してもよい。さらに、ボルト52は省略してもよい。またさらに、支持鋼板22Bは省略してもよい。
【0054】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る木材の接合構造は、
図7(A)に示すように、木材14Aと、木材14Bと、の接合構造である。
【0055】
木材14A、14Bには、それぞれ軸方向スリット60及び直交スリット62が形成されている。軸方向スリット60は木材14A、14Bの材軸方向に沿うスリットであり、木材14A、14Bの上下面を貫通して形成されている。
【0056】
また、軸方向スリット60は、木材14A、14Bの一方の端面に開口しており、木材14A、14Bを突き合わせた状態で、木材14A、14Bそれぞれの軸方向スリット60のY方向位置が一致する。
【0057】
直交スリット62は材軸方向と直交する方向に沿うスリットであり、軸方向スリット60の端部(開口端と逆側の端部)に形成されている。また、直交スリット62は、木材14A、14Bの上下面を貫通して形成されている。
【0058】
この軸方向スリット60及び直交スリット62には、鋼材70が挿入される。鋼材70は、軸方向スリット60に挿入される連結鋼板72と、直交スリット62に挿入される支持鋼板74と、が一体化されて形成されている。換言すると、鋼材70は、木材14A、14Bの軸方向に沿う連結鋼板72の両端に、フランジ状の支持鋼板74が接合されて形成された、所謂H形鋼である。
【0059】
なお、支持鋼板74は、Y方向に沿う寸法が、X方向に沿う寸法より大きい。すなわち支持鋼板74は、Y方向に沿う平板状の形状とされている。
【0060】
なお、鋼材70に代えて、
図7(B)に示す鋼材80を用いてもよい。この鋼材80は、木材14A、14Bの軸方向に沿う連結鋼板82の両側面に、フランジ状の支持鋼板84が接合されて形成された鋼材である。このとき、木材14A、14Bには、鋼材の形状に合わせて、直交スリット64を適宜配置すればよい。
【0061】
支持鋼板84は、Y方向に沿う寸法が、X方向に沿う寸法より大きい。すなわち支持鋼板84は、Y方向に沿う平板状の形状とされている。
【0062】
鋼材70、80のように、連結鋼板と支持鋼板を一体的に形成することで、木材の接合作業が容易となる。
【符号の説明】
【0063】
10A 木材(第一木製部材)
10B 木材(第二木製部材)
12A 木材(第一木製部材)
12B 木材(第二木製部材)
14A 木材(第一木製部材)
14B 木材(第二木製部材)
20 支持鋼板
22A 支持鋼板
34 連結鋼板
40 軸方向スリット
42 直交スリット
44 直交スリット
50 連結鋼板
60 軸方向スリット
62 直交スリット
64 直交スリット
72 連結鋼板
74 支持鋼板
82 連結鋼板
84 支持鋼板