(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】クラッディングモードのプルバックトリガを備えた光ファイバイメージングプローブ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20250417BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20250417BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20250417BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20250417BHJP
【FI】
A61B1/00 526
A61B1/00 511
G01N21/17 620
G01N21/47 B
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2020512531
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018048073
(87)【国際公開番号】W WO2019046155
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-20
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
【合議体】
【審判長】南 宏輔
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526283号公報(JP,A)
【文献】特表2016-515032号公報(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0101374(US,A1)
【文献】特表2010-529465号公報(JP,A)
【文献】特表2016-513267号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2016/015052(WO,A1)
【文献】米国特許第11259702(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照ビームを伝送する参照アームと、サンプルビームを伝送するサンプルアームとを含む干渉計と、
前記サンプルアームに光学的に接続され、かつ、体腔に挿入されて、前記体腔及び前記体腔内に含まれる流体に前記サンプルビームの光を照射するように構成されるイメージングプローブと、
前記参照アーム及び前記イメージングプローブと光学的に通信する第1の検出器であり、前記体腔から反射された前記サンプルビームの光と反射器から反射された前記参照ビームの光との間の干渉の検出に基づいて、光干渉断層撮影(OCT)干渉信号を出力するように構成される第1の検出器と、
前記イメージングプローブと光学的に通信する第2の検出器であり、前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体によって後方散乱された光の検出に基づいて、後方散乱信号を出力するように構成される第2の検出器と、
前記第1の検出器及び前記第2の検出器に動作可能に接続されたプロセッサと、
を備えるOCTイメージングシステムであって、
前記イメージングプローブは、ファイバカプラ及び第1のダブルクラッドファイバを介して前記第1の検出器及び前記第2の検出器と光学的に通信し、
前記プロセッサは、前記第2の検出器によって出力された前記後方散乱信号の強度レベルが閾値に達することに基づいて、前記体腔を通る前記イメージングプローブのプルバックを自動的にトリガし、前記体腔のOCT画像の記録を自動的に開始し、
前記体腔から反射された前記サンプルビームの前記光と、前記反射器から反射された前記参照ビームの前記光と、前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体によって後方散乱された前記光は、全て同じ波長をもち、
前記体腔内に含まれる前記流体は血液細胞
及び光散乱体を含み、
前記プロセッサは、更に、
前記イメージングプローブの遠位端の周りからの前記光散乱体の除去を示す除去状態を決定し、
前記後方散乱信号の強度レベルを前記閾値と比較し、
前記後方散乱信号の強度レベルが最大強度レベルの少なくとも75%まで低下した時点を決定するように構成される、
OCTイメージングシステム。
【請求項2】
前記閾値は、前記後方散乱信号の所定の強度レベルに対応し、
前記プロセッサは、前記後方散乱信号の強度レベルに基づいて、(a)前記イメージングプローブの
前記遠位端と前記体腔の内壁との間の作動距離と、(b)前記体腔に含まれる前記流体に存在する
前記光散乱体の濃度とのうちの1つ以上を決定
する、
請求項1に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項3】
前記第1のダブルクラッドファイバ及び前記イメージングプローブに動作可能に接続された患者インタフェースユニット(PIU)を更に備え、
前記PIUは、カテーテルコネクタと、回転モータ及び並進ステージを有する光ファイバロータリジョイント(FORJ)とを含み、
前記イメージングプローブは、カテーテルの保護シースに配置された第2のダブルクラッドファイバ及びトルクコイルを含み、
前記PIUの前記カテーテルコネクタは、前記カテーテルに接続されるように構成され、
前記FORJは、前記カテーテル内で前記第2のダブルクラッドファイバが
前記プルバック中に回転及び
並進される間に、前記PIUと前記カテーテルとの間で光信号の不断伝送を提供するように構成される、
請求項1に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項4】
前記FORJは、前記第1のダブルクラッドファイバを前記第2のダブルクラッドファイバに結合するように構成された自由空間光ビームカプラを含み、
前記FORJは、前記第1のダブルクラッドファイバを回転させずに、前記カテーテル内の前記第2のダブルクラッドファイバを回転させながら、前記PIUと前記カテーテルとの間で光信号の不断伝送を提供するように構成される、
請求項3に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項5】
前記イメージングプローブは、前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体に、前記第2のダブルクラッドファイバのコアを通して伝送された前記サンプルビームの光を照射し、
前記イメージングプローブは、前記第2のダブルクラッドファイバのクラッディングを通して、前記体腔及び前記体腔に含まれる前記流体によって後方散乱された前記光を集光し、
前記第2の検出器は、前記第2のダブルクラッドファイバの前記クラッディング及び前記第1のダブルクラッドファイバのクラッディングを通して伝送された前記後方散乱された光を検出する、
請求項3又は請求項4に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項6】
前記イメージングプローブは、前記FORJが前記カテーテル内の前記第2のダブルクラッドファイバを回転及び並進させる間に、前記体腔の内壁をヘリカル経路でスキャンし、前記第2のダブルクラッドファイバのコアを通して、前記体腔の前記内壁から反射された光を集光する、
請求項3、請求項4又は請求項5のいずれか一項に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項7】
前記サンプルアーム及び前記参照アームと光学的に通信する第1の光源であり、前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体に照射するのに適した波長の光を発するように構成される第1の光源を更に備え、
前記イメージングプローブは、前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体に、前記第1の光源から発せられた前記光を照射する、
請求項1又は請求項2に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項8】
前記体腔からの自家蛍光、又は前記体腔内に含まれる前記流体に添加された蛍光バイオマーカからの自家蛍光を発生させるために、前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体に照射するのに適した波長をもつ励起光を発するように構成される第2の光源と、
前記体腔から、又は、前記体腔内に含まれる前記流体に添加された前記蛍光バイオマーカから集光された蛍光を検出するように構成された第3の検出器と、
を更に備え、
前記プロセッサは、前記第2の検出器によって出力された前記後方散乱信号が前記閾値に達することに基づいて、前記体腔の蛍光画像の記録を自動的に開始するように更に構成され、
前記体腔の前記蛍光画像は、前記体腔の前記OCT画像と相互登録される、
請求項7に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項9】
前記第1の光源は、約1300nmの中心波長を有する光を発する低コヒーレンス光源であり、前記第2の光源は、約633nmの波長を有する励起光を発し、
前記第3の検出器は、約633nm~800nmの範囲の波長を有する蛍光を検出するように構成される、
請求項8に記載のOCTイメージングシステム。
【請求項10】
光干渉断層撮影(OCT)システムの制御方法であって、
参照ビームを伝送する参照アームと、サンプルビームを伝送するサンプルアームとを含む干渉計を提供するステップと、
イメージングプローブが、体腔及び前記体腔内に含まれる流体に前記サンプルビームの光を照射することであって、前記イメージングプローブは、前記OCTシステムの前記干渉計に光学的に接続されている、照射することと、
第1の検出器が、前記体腔から反射又は後方散乱された前記サンプルビームの光と反射器から反射された前記参照ビームの光との干渉を検出して、OCT干渉信号を生成することと、
第2の検出器が、前記体腔及び前記体腔に含まれる前記流体によって後方散乱された光を検出して、後方散乱信号を生成することと、
プロセッサが、前記第2の検出器によって出力された前記後方散乱信号を処理してトリガ信号を生成し、前記第1の検出器によって出力された前記OCT干渉信号を処理して前記体腔のOCT画像を生成することと、
を含み、
前記イメージングプローブは、ファイバカプラ及び第1のダブルクラッドファイバを介して前記第1の検出器及び前記第2の検出器と光学的に通信し、前記第1のダブルクラッドファイバは、コア、内側クラッディング及び外側クラッディングを有し、
前記プロセッサは、前記後方散乱信号の強度レベルが閾値に達することに基づいて、前記体腔を通る前記イメージングプローブのプルバックを自動的に開始し、前記体腔の前記OCT画像の記録を自動的に開始し、
前記体腔から反射された前記サンプルビームの前記光と、前記反射器から反射された前記参照ビームの前記光と、前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体によって後方散乱された前記光は、全て同じ波長をもち、
前記体腔内に含まれる前記流体は血液細胞
及び光散乱体を含み、
前記プロセッサは、更に、
前記イメージングプローブの遠位端の周りからの前記光散乱体の除去を示す除去状態を決定し、
前記後方散乱信号の強度レベルを前記閾値と比較し、
前記後方散乱信号の強度レベルが最大強度レベルの少なくとも75%まで低下した時点を決定する、
制御方法。
【請求項11】
前記プロセッサ
は、
更に、
(a
)前記光散乱体の濃度と、(b)前記イメージングプローブの
前記遠位端と前記体腔の内壁との間の作動距離とのうちの1つ以上に基づいて、前記後方散乱信号の強度レベルを計算
し、前記閾値は、前記後方散乱信号の所定の強度レベルに対応する
、
請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記体腔及び前記体腔内に含まれる前記流体に、前記体腔からの自家蛍光、又は前記体腔内に含まれる前記流体に添加された蛍光バイオマーカからの自家蛍光を発生させるのに適した波長をもつ励起光を照射することと、
第3の検出器が、前記体腔から、又は、前記体腔内に含まれる前記流体に添加された前記蛍光バイオマーカから集光された蛍光を検出することと、
検出された前記蛍光を処理して、前記閾値に達している前記後方散乱信号に基づいて、前記体腔の蛍光画像の記録を自動的に開始することと、
を更に含み、
前記体腔の前記蛍光画像は、前記体腔の前記OCT画像と相互登録される、
請求項10又は請求項11に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願の開示は、概して光学イメージングに関し、特に、光ファイバイメージング装置が管腔の除去(clearance)のトリガにクラッディングモードを用いる、体腔の医用光学イメージング及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト及び動物の内臓にアクセスし撮像するために、カテーテルや内視鏡等の光ファイバプローブが開発されており、今では様々な医療分野で一般に使用されている。例えば心臓学では、カテーテルを用いて血管の深さ分解画像を見るために、ファイバベースの光干渉断層撮影法(OCT)が開発されている。カテーテル(概してシース、コイル及び光プローブを備える)は、手動制御又は自動制御によって、冠動脈までナビゲートされる。一般に「体腔」と呼ばれる血管や食道、鼻腔等の管及び空洞の断面画像を取得するために、光プローブは、光ファイバロータリジョイント(FORJ)によって回転される。更に、ヘリカル走査パターンで画像が取得されるように、光プローブは、回転中に同時に長手方向に移動(並進)される。この長手方向の移動は、最も一般的には、プローブの先端(遠位端)を近位端に向かって機械的に引き戻すことによって行われるので、このプロセスは「プルバック」動作と呼ばれる。
【0003】
血管内OCTシステムによる冠動脈のイメージングにより、血管の内側から血管サイズ及びプラークを検査することが可能となる。しかしながら、血液細胞はOCT光を強く散乱する。したがって、管腔の内部を見るには血液の除去が必要である。プルバックの前に血液細胞を除去するために、造影剤、生理食塩水、デキストランその他の液体が流される。或いは、血液除去は、放射線不透過性造影剤や生理食塩水、ポンプ空気等の光学的に透明な媒体で満たされたバルーンを使用することによって、達成することができる。バルーンは、光がイメージングプローブから出る(かつそこに戻る)カテーテルの領域を囲むことができる。いずれにせよ、イメージングプローブの周囲から血液細胞が除去されると、システムは、短時間でプルバックによってOCT画像を記録する必要がある。
【0004】
従来、第2のイメージングモダリティを用いたリアルタイム画像処理に基づく手動のプルバックの開始及び終了が、一般の慣行であった。更に、取得されたOCT画像のリアルタイム画像処理に基づく、自動化されたプルバックの開始及び終了が提案されている。しかしながら、自動プルバックを開始する前に正確なリアルタイム画像処理を実行するには、大がかりなデータ分析が必要である。
【0005】
例えば、Suterらは、“Optimizing flushing parameters in intracoronary optical coherence tomography:an in vivo swine study”と題された非特許文献(NPL)文書(Springer Science、2015年)において、取得されたOCT画像の各フレームを分析して、(a)血液によって血管壁の視覚化が不明瞭になっているかどうか、(b)血管腔が見えるかどうか、(c)動脈壁の診断品質画像が取得されたかどうか、又は(d)動脈腔内に見える血液がないかどうかを判定する必要性を記載している。このプロセスには、かなりの計算能力と処理時間が必要である。同様に、Haririらは、“An automatic image processing algorithm for initiating and terminating intracoronary OFDI pullback”と題されたNPL記事(Biomedical Express,第1巻、第2号、2010年9月)において、OCT画像が、血液によって不明瞭になった像とは対照的に、動脈壁の明確な診断品質の像を含むときを決定して、プルバック及びデジタルデータ記録を開始及び停止するための制御信号をリアルタイムで生成する、ある画像処理技術を開示した。
【0006】
別の例では、Judellら(米国特許第8412312号)は、血管から収集された光干渉断層データの1つ以上のフレームを分析し、血液除去状態が発生しているかどうかを決定し、血液除去状態に応えて、プルバック及び画像記録のトリガ信号を生成する、コンピュータ実装方法を記載している。Judellは、OCT画像のうちの1つ以上のフレームのOCTデータに基づいて、フラッシュ除去状態を検出するための処理時間の削減に努めている。しかしながら、このコンピュータ実装方法では、OCT画像を分析し、十分な血液除去がいつ達成されたかを判定するために、計算能力と時間が同様に必要である。特に、Judellは、当該フラッシュ除去検出方法では、トリガ信号を生成する前に各画像フレームを処理する時間が必要であると記載している。
【0007】
更に、Courtneyら(US20150366536)は、第1のプルバック動作中、関心領域を特定するために、第1のイメージングモダリティから取得された画像がリアルタイムで処理される方法を、2つのイメージングモダリティを用いて実行するシステムを開示している。第1のイメージングモダリティから得られた画像が関心領域を特定する場合、第2のプルバック動作中に第2のイメージングモダリティによって画像を記録しながら、フラッシュ動作が実行される。Courtneyによれば、関心領域を特定するために記録され処理される画像を取得してからフラッシュ動作を開始するためには、第1のイメージングモダリティは、管腔内媒体の存在に対応しなければならない。したがって、この方法及びシステムは、関心領域を特定するための処理時間を必要とするだけでなく、管腔内媒体の存在下で画像を取得することのできるモダリティも必要とする。
【0008】
しかしながら、プルバックと画像記録をトリガするために診断品質画像の検出と処理が必要である限り、遅延なしで高速のリアルタイム画像取得を達成することは、依然として困難である。したがって、管腔の除去の開始後に最小限の時間で適切な量のイメージングデータを取得する必要性は、依然として満たされていない。
【発明の概要】
【0009】
本特許出願は、上記の最新技術を改善することを目的とする。本願の態様によれば、システムは、血液除去を検出し、OCTプローブの遠位端付近の血液細胞によって散乱された光の検出に基づいて、プルバック及び画像記録を自動的に開始する。この方法では、検出信号の強度に基づいてトリガ信号が生成されるので、診断品質画像を検出及び処理するための計算能力や処理時間を必要としない。したがって、この新しい技術は、リアルタイムでの高速取得を実現することができる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、光干渉断層撮影(OCT)システムは、サンプルアーム、参照アーム及びOCTプローブを含む。プローブは、ダブルクラッドファイバ(DCF)を通して伝送されるサンプルビームの光を、体腔及び体腔内に含まれる流体に照射する。第1の検出器は、参照ビームの光と、体腔から反射されDCFのコアを通って伝播する光とを検出して、OCT干渉信号を生成する。体腔及び体腔に含まれる流体によって後方散乱された光は、DCFのクラッディングを通して伝播し、第2の検出器によって検出されて、強度信号が生成される。プロセッサは、強度信号を分析し、後方散乱光の強度が所定の閾値に達することに応えて、プローブのプルバックをトリガし、体腔のOCT画像の記録を開始する。
【0011】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照した例示的な実施形態の以下の説明から、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一部の実施形態による、OCTイメージングシステムの機能ブロック図である。
【
図2】
図2Aは、ダブルクラッドファイバ(DCF)の断面構造を示す図である。
図2Bは、DCFの屈折率分布を示す図である。
図2Cは、DCFを用いた光の照射及び集光を示す図である。
【
図3】
図3Aは、サンプルを撮像するためにカテーテルに使用することのできるOCTプローブ(光プローブ)の例示的な表現を示す図である。
図3Bは、サンプルから後方散乱された光の検出強度の関係を、カテーテルとサンプルとの間の距離(作動距離)の関数として示すグラフである。
【
図4】
図4Aは、「血液除去」動作を開始するための論理信号を示す図である。
図4Bは、閾値と比較された、第2の検出器122によって検出された後方散乱強度に基づくトリガ信号を示す図である。
図4Cは、プルバック及び記録の動作を開始するための論理信号を示す図である。
【
図5】
図5Aは、患者インタフェースユニット(PIU)の関連部分の実装の一例を概略的に示す図である。
図5Bは、光ファイバロータリジョイント(FORJ)の光接続部として用いられる自由空間光学系の例示的な実装を示す図である。
【
図6】
図6は、干渉OCTシステム100において制御及び画像処理を実行するための例示的なコンピュータ制御システムのブロック図である。
【
図7】
図7は、OCTシステムを制御して、後方散乱信号を用いてプルバック及び画像記録をトリガするためのフロープロセスである。
【
図8】
図8は、一部の実施形態による、蛍光サブシステムを含むOCTイメージングシステムの機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、蛍光サブシステムを含むOCTイメージングシステムを制御して、後方散乱信号に基づいて、プルバック、OCT画像記録及び蛍光イメージングをトリガするための、例示的なフロープロセスを示す図である。
【
図10】
図10Aは、スタンバイ信号の論理信号を示す図である。
図10Bは、閾値と比較された、後方散乱強度に基づくトリガ信号を示す図である。
図10Cは、プルバック、OCT画像記録及び蛍光イメージングの動作を開始するための論理信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、開示する発明を実施及び実践することのできる実施形態の説明図である添付図面を参照する。しかし、当然ながら、当業者であれば、本開示の新規性及び範囲から逸脱することなく他の構造及び機能の変更を展開することができる。
【0014】
説明を参照する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されていない。本発明の一部の実施形態はコンピュータシステム上で実践されてよく、コンピュータシステムは、一般に、情報及び命令を処理するための1つ又は複数のプロセッサと、情報及び命令を格納するためのランダムアクセス(揮発性)メモリ(RAM)と、静的情報及び命令を格納するための読出し専用(不揮発性)メモリ(ROM)と、情報及び命令を格納するための磁気又は光学のディスク及びディスクドライブ等のデータ記憶デバイスと、情報をユーザに表示するための表示デバイス(例えばモニタ)等の任意のユーザ出力デバイスと、情報及びコマンド選択をプロセッサに伝えるための英数字キー及びファンクションキーを含む任意のユーザ入力デバイス(例えばキーボード)と、ユーザ入力情報及びコマンド選択をプロセッサに伝えるためのポインティングデバイス(例えばマウス)等の任意のユーザ入力デバイスとを含む。
【0015】
当業者には当然のことながら、本実施例は、システム、方法又はコンピュータプログラム製品として具現化することができる。それに応じて、一部の実施例は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、又はソフトウェア態様とハードウェア態様を組み合せた実施形態の形をとってよく、それらは全て、概して、「回路」、「モジュール」又は「システム」と呼ばれることがある。更に、一部の実施形態は、コンピュータで使用可能なプログラムコードが格納された、任意の非一時的な有形の表現媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形を取ることがある。例えば、方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して後述される一部の実施形態は、コンピュータプログラム命令によって実施されてよい。コンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読媒体に格納されてよく、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置によって実行されたとき、コンピュータ又は処理装置を、コンピュータ可読媒体に格納された命令がフローチャート及び/又はブロック図において指定された機能/動作/ステップを実施する命令及びプロセスを含む製品を構成するように、特定の方法で機能させる。
【0016】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又はセクションを説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然ながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又はセクションは、これらの指定の用語によって限定されない。これらの指定の用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションを別の領域、部品又はセクションと区別するためにのみ使用されている。よって、後述される第1の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションは、単に区別を目的として、しかし構造又は機能の意味から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションと呼ばれることがある。
【0017】
以下、いくつかの図面を参照して、例示的な実施形態をより詳細に説明する。図中、同様の参照番号は同様の部分を指す。
図1は、例示的なOCTシステム100のブロック図である/を示す。
【0018】
広義には、一部の実施形態によれば、OCTシステムは、光プローブを有するカテーテルを備え、光プローブは、少なくとも2つのクラッド(DCF)を備えた光ファイバから成る。光プローブは、単一のファイバによってサンプルを照明し、サンプルからの光を集光するように機能する。光1は、光プローブを用いてサンプルを照明する。光2(OCT光)は、光プローブによってサンプルの異なる深さから集光され、DCFのコアを通して第1の検出器に伝播して、OCT画像が生成される。光3(散乱光)は、サンプル表面及び散乱媒体から光プローブによって集光され、DCFのクラッドを通して第2の検出器に伝播する。光3の強度は、光プローブからサンプル表面までの距離の関数である。集光された光2と光3は、カプラによって分離されて、第1の検出器と第2の検出器に伝播する。光1、光2及び光3は、全て同じ波長である。プロセッサがカテーテルの動作を制御し、OCT画像を記録するために、光3信号の検出強度に基づいて、トリガ信号が生成される。
【0019】
より具体的には、
図1は、冠動脈又は他の体腔のイメージングのための血管内OCTシステムとして適用することができる、例示的な干渉OCTシステム100を示す。なお、干渉OCTシステム100は、蛍光透視イメージングモダリティの管腔内イメージングシステムとして使用されるように適合させることもできる。更に、干渉OCTシステム100は、バルーンカテーテルと組み合せると、食道イメージングに適用可能である。
図1に示されるように、OCTシステム100は、サンプルアーム及び参照アームを有する干渉計と、光源110と、検出器ユニット120と、データ取得電子機器130と、データ処理コンピュータ190とを含む。サンプルアームは、患者インタフェースユニット(PIU)150、OCTプローブ160を含む。OCTプローブ160(カテーテル)は、患者インタフェースユニット(PIU)150を介してサンプルアームに接続される。コヒーレント光源110(例えばレーザ源)からの光は、サンプルアームを通ってサンプル170に誘導され、また、参照アームを通って反射器140に誘導され、それによってOCT干渉縞を生成する。
【0020】
具体的には、光源110からの光は、スプリッタ102によってサンプルビームと参照ビームとに分割され、それらは、それぞれの光ファイバを介してそれぞれサンプルアームと参照アームに送られる。サンプルアームでは、サンプルビームはサーキュレータ105に入り、シングルモード(SM)ファイバ106を介してダブルクラッドファイバカプラ(DCFC)108に進み、ダブルクラッドファイバ107を介してOCTプローブ160に送られる。OCTプローブ160では、PIU150は、サンプル170を走査方式で照射するようにサンプルビームを制御する。サンプル170によって反射及び/又は散乱されたサンプルビームの光は、カテーテル160の遠位端に配置された光学系によって集光され、集光された光は、PIU150を通してDCFC108に送り返される。DCFC108は、SMファイバ106を介してサーキュレータ105に向かってサンプルビームの一部を結合し、サーキュレータ105は、当該サンプルビームの一部をコンバイナ104に誘導する。更に、DCFC108は、マルチモードファイバ109を介して、サンプルビームの別の部分を検出器122(第2の検出器)に結合する。
【0021】
参照アームでは、参照ビームの光はサーキュレータ103に入り、標示のない光ファイバを介して反射器140に送られる。時間領域OCTイメージングの場合には、反射器140は走査ミラーとして実装されてよい。また、周波数領域OCT(FD-OCT)イメージングの場合には、反射器140は固定ミラーとして実装されてよい。反射器140から反射された参照ビームの光は、サーキュレータ105を通り抜け、また、コンバイナ104に誘導される。このように、サンプルビームと参照ビームはビームコンバイナ104で結合され、それから検出器121によって検出されて、既知のOCT原理に従って干渉信号が生成される。
【0022】
光ファイバサーキュレータ(例えば
図1のサーキュレータ103又は105)は、信号ルータとして働くパッシブな偏光無依存の3ポートデバイスである。第1のファイバからの光は、第1のポートを介してサーキュレータに入力され、第2のポートを介して第2のファイバに導かれる。第2のファイバを通って返る光は、第3のポートを介して、実質的に損失なしに、第3のファイバに再び導かれる。すなわち、第1のポートに入力される光は、第3のポートファイバへは直接結合されず、第2のポートに入力される光は、第1のポートファイバへは結合されない。したがって、光サーキュレータ(103及び105)により、サンプルビームと参照ビームの低損失出力が可能になり、OCT干渉計から正確な干渉縞が得られる。
【0023】
コンバイナ104から得られたOCT干渉計の出力(干渉縞)は、検出器121(第1の検出器)によって検出される。第1の検出器121は、フォトダイオードのアレイ、光電子増倍管(PMT)、カメラのマルチアレイ、又は他の同様の干渉縞検出デバイスとして実装される。第1の検出器121から出力された信号は、データ取得電子機器(DAQ1)131によって前処理され、コンピュータ190に伝達される。コンピュータ190は、信号処理を実行して、既知の方式でOCT画像を生成する。干渉縞は、サンプルアームの経路長が光源110のコヒーレンス長内で参照アームの経路長と一致するときにのみ、生成される。
【0024】
第2の検出器122は、マルチモードファイバ109を介してDCFC108によって出力されたサンプルビームの一部を検出し、後方散乱光の強度に対応するアナログ信号(後方散乱信号)を出力する。検出器122から出力された信号は、データ取得電子機器(DAQ2)132によってデジタルデータに変換される。とりわけ、後で詳述するように、後方散乱光の強度に対応するデジタル信号は、プルバック及び画像記録を開始及び/又は終了するためのトリガ信号として用いられる。したがって、検出器122から出力され、データ取得電子機器(DAQ2)132によってデジタルデータに変換された信号は、直接的にトリガ信号として用いられてもよいし、又は、制御処理のためにコンピュータ190に転送されてもよい。
【0025】
典型的な医用イメージング用途では、OCTプローブ160のコンポーネントは、OCTシステム100のうち、撮像される患者の領域(例えば体腔)と接触する(又は近接する)必要のある唯一のコンポーネントである。したがって、プローブ160のコンポーネントは、手持ち式のイメージングプローブ又はカテーテルの形で提供され、典型的には、外科医又は医学的診断若しくは治療を行う他の医師によって操作される。光源110、検出器ユニット120及びデータ取得電子機器130を含むOCT干渉計は、OCTプローブ160から離れて位置するイメージングコンソールに組み込まれてよい。コンソールとプローブ160との間の動作及び通信のための制御信号は、主にコンピュータ190から発信され、患者インタフェースユニット(PIU)150を介してプローブ160に転送される。
【0026】
<ダブルクラッドファイバ(DCF)の使用>
DCFC108、PIU150及びプローブ160は、ダブルクラッドファイバによって互いに接続される。
図1では、DCFC108は、ダブルクラッドファイバ(DCF)107
-1によってPIU150に接続されている。更に、以下により詳細に説明されるように、OCTプローブ160は、DCF
107-2によってPIU150に接続される。
図2Aは、コア202、内側クラッド204及び外側クラッド206(この順序で同心円状に配置される)から成るDCF200の断面構造を示す。OCTイメージングで使用される市販のダブルクラッドファイバの典型的な寸法は、例えば、コア径が9ミクロン(μm)、内側クラッディング径が105μm、外側クラッディング径が125μmである。コア領域の光伝送は主にシングルモードであり、一方、内側クラッディングの光伝送はマルチモードである。
図2Bに示されるように、生物医学用途のDCFの典型的な屈折率(n)は、コアの中心から内側クラッディング及び外側クラッディングの境界までの半径(r)の関数として、カスケード状に低下する。シングルモードとマルチモードの両方の光伝送を単一のファイバに統合することにより、照明光の送達(シングルモードコアを用いる)と組織反射光の集光(マルチモード内側クラッディングを用いる)に、単一の光ファイバを使用することが可能となる。
【0027】
本特許出願の一実施形態では、
図2Cに示されるように、OCT光(サンプルビーム)は、DCF200のコア202を通して、サンプル210を照明する。相互作用すると、サンプル210から散乱及び/又は反射された光は、コア202と内側クラッディング204の両方によって集光される。よって、後方散乱光は、DCF200のコア202と内側クラッディング204の両方を通して送り返される。再び
図1を参照すると、プローブ160、PIU150及びDCFC108はダブルクラッドファイバ
107-1及び107-2を介して相互接続されているので、サンプルから後方散乱された光は集光され、DCFC108に送り返される。
【0028】
DCFC108は、コアとクラッドを通して伝送されたサンプルビームの光を分離する機能を有する。具体的には、DCFC108は、シングルモード信号からマルチモード信号を分離することにより、シングルファイバ内視鏡検査に使用される。DCF107-1のコア内の光(コア光)は、DCFC108を通って低損失で伝播し、シングルモードファイバ106を介してサーキュレータ105に進む。一方、DCF107-1のクラッド内の光(クラッド光)は、DCFC108を通って伝播せず、代わりに、DCFC108がクラッド光をマルチモードファイバ109に結合する。このように、クラッド光(サンプル170から後方散乱された光)のみが、マルチモードファイバ109を通して第2の検出器122に送られる。
【0029】
第2の検出器122は、クラッド光(後方散乱光)の強度に対応するアナログ信号を出力し、検出器122から出力された信号は、データ取得電子機器(DAQ2)132によってデジタルデータに変換される。次に、後方散乱光の強度に対応するデジタルデータが、コンピュータ190に転送される。ダブルクラッドファイバコネクタ(DCFC)を用いる代わりに、光学フィルタ及び/又はビームスプリッタを用いることにより、コア光をクラッド光から分離することができる。例えば、ピンホール等の空間フィルタリングを用いて、クラッド光を遮断しながらコア光のみを検出器121に通過させることができる。同様に、アポダイゼーション(例えばアポダイゼーションマスクを用いる)を用いて、コア光を遮断し、クラッド光のみを通過させることができる。
【0030】
<クラッド光強度の検出>
検出器122によって検出される後方散乱光の強度(クラッド光の強度)は、カテーテルとサンプルとの間の距離(一般に「作動距離」として知られる)に依存する。
図3Aは、カテーテル300において使用可能なOCTプローブ(光プローブ)の例示的な表現を示す。カテーテル300は、シース310、コイル320、透明保護体330及び光プローブ350を備える。プローブ350の遠位端は、ダブルクラッドファイバ(DCF)352、レンズ354(例えばGRINレンズ)及び反射表面356を含む。カテーテル300は、その近位端でPIU150に接続される(
図1に示されるように)。コイル320は、PIU150に配置された図示されていない回転モータにより、近位端から遠位端に回転トルクを伝達する。プローブ350の遠位端では、反射表面356(例えばミラー又はプリズム)が、照明光(サンプルビーム)をサンプル(管腔の壁)に向かって外向きに偏向させる。コイル320は、血管等の中空器官(管腔)の内表面の全方向像を取得するために、光プローブの遠位先端(遠位端)もスピン(回転)するように、光プローブと固定される。光プローブ350の近位端では、ダブルクラッドファイバ352が、図示されていないファイバコネクタを介してPIU150に接続される。上述のように、ダブルクラッドファイバ352は、コアを通してOCT光を送達及び集光し、クラッドを通してサンプルからの後方散乱光を集光するために用いられる。レンズ354は、カテーテルの中心から作動距離(Wd)に位置するサンプルに光を集束させ、かつ/又は、サンプルから光を集光するために用いられる。
図2A~
図2Cに示されるように、コアのサイズはクラッドよりもはるかに小さいので、DCF352のクラッドを通して伝送される後方散乱光の強度は、コアを通して集光される後方散乱光の強度よりも比較的高い。
【0031】
図3Bは、サンプルから後方散乱された光の検出強度の関係を、カテーテルとサンプルとの間の距離(作動距離)の関数として示すグラフである。
図3Bに示されるように、作動距離が短いほど後方散乱信号の検出強度が高くなるが、これはカテーテルの集光効率が原因である。集光効率を決定し得る要因には、様々なものがある。例えば、作動距離が長いほど、サンプルから光プローブのアクティブエリアまでの立体角が小さくなる。したがって、集光効率は、サンプルから光プローブのアクティブエリアまでの立体角によって決定することができる。集光効率はまた、OCTプローブの光学パラメータ(焦点位置、開口数、スポットサイズ等)にも依存する。ここで、後方散乱強度は、サンプルビームと相互作用する散乱体の量にも依存することに留意されたい。例えば、血流の動態(血行動態)から、血管内検査における光の主な散乱体が赤血球(RBC)であることが知られている。したがって、後方散乱信号の強度をモニタリングして、作動距離(Wd)と、光プローブ350の遠位端を囲む散乱媒体(例えばRBC)の量及び/又は密度とを決定することができる。したがって、本特許出願の発明者は、後方散乱信号の強度を用いて、カテーテル周辺の除去の状態を常にモニタリングすることができ、また、後方散乱信号を用いて、最初に管腔の画像を分析し、処理し、又は記録する必要なく、プルバック及び画像記録をリアルタイムでトリガすることができることを認識した。
【0032】
<クラッディングモードを用いたトリガ>
本開示によれば、血管内イメージングにおいて、血液がカテーテルの周囲を囲んでいるとき、血液細胞からの後方散乱は、第2の検出器122によって高強度信号として検出される。次に、造影剤、生理食塩水及び/又はデキストラン等のフラッシング媒体によって血液細胞が除去されたとき、第2の検出器122によって受信される信号は徐々に低下する。これは、フラッシング媒体が比較的透明であることが理由であり、また、カテーテルの遠位端を囲む散乱媒体(赤血球)の欠乏が原因で後方散乱が少ないことが理由である。
【0033】
一部の実施形態によれば、検出器122によって検出される後方散乱光の強度は、血液除去中に絶えずモニタリングされる。次に、信号が特定の閾値をまたぐとき、コンピュータ190は、プルバック及びOCT画像の記録を自動的に開始するためのトリガ信号を生成する。トリガ信号とプルバック及び記録の開始の時系列を
図4A~4Cに示し、OCTシステム100を制御するためのフロープロセスを
図7に示す。
【0034】
図4Aは、「血液除去」動作を開始するための論理信号を示す。
図4Bは、閾値と比較された、第2の検出器122によって検出された後方散乱強度に基づくトリガ信号を示す。
図4Cは、プルバック動作及び記録動作を開始するための論理信号を示す。
【0035】
図4Aに示されるように、時間t0において、第2の検出器(DET2)122が後方散乱信号を検出する。時間t1において、例えばイメージング実施者(ユーザ)により、関心領域に対するカテーテルの位置を観察しながら、血液除去動作が実行される。関心領域のリアルタイム観察は、例えば、カテーテル自体によるライブビューイメージングによって実行されてもよいし、又は、2次イメージングモダリティを用いて実行されてもよい。時間t1において血液除去動作が開始されると(ON)、検出器122(DET2)は、後方散乱信号のレベルが所定の閾値に達するまで、後方散乱信号の強度を継続的にモニタリングする。
図4Bは、検出器122(DET2)で見られる信号の例示的なグラフを示す。検出器122の信号は、閾値と比較されるトリガ信号として用いられる。
図4A~4Cに示されるように、時間t2において、後方散乱信号の強度が所定の閾値に達すると、コンピュータ190は、プルバック動作及び画像記録動作を自動的に開始する。例えば、時間t2において、コンピュータ190は、PIU150を制御してプルバック動作を生じさせ、第1の検出器121を制御して、OCT干渉信号に基づいてOCT画像を記録する。この状態(時間t2においてON)では、何らかの理由で強度が急上昇して閾値を超えた場合に、不要な(ノイズの多い)画像の記録を防ぐためにプルバック及び記録が自動的に停止され得るように、第2の検出器122は、後方散乱信号の強度のモニタリングを続けることになる。
【0036】
<プルバック動作>
図5Aは、カテーテル300(
図3Aに示す)の近位端に位置する患者インタフェースユニット(PIU)500の関連部分の実装の一例を概略的に示す。
図5Aに示されるように、PIU500は外側ケーシング502に入れられており、外側ケーシング502は、OCT光プローブの制御に有用な機械コンポーネント、電子コンポーネント及び光学コンポーネントのためのハウジングとしての役割を果たす。また、ハウジング502内には、回転モータ520、電動の並進(translation)ステージ514及び自由空間光学接続部510から成る光ファイバロータリジョイント(FORJ)が含まれる。一方の端部において、PIU500は光学/電気コネクタ516を備え、その他方の端部において、PIU500は光学コネクタ518を備える。シース504aに入れられたダブルクラッドファイバ506a及び電子配線接続515は、PIU500を、OCT干渉計のサンプルアームに接続し、コネクタ516を介してコンピュータ190に接続する。シース504bに入れられたダブルクラッドファイバ506bは、カテーテル300の一部であり、コネクタ517を介してPIU500に接続される。当然ながら、ガイドワイヤや1つ以上の導管(例えば血液除去媒体(液体)を送るための)等の他の要素を、カテーテル300に含めることができる。
【0037】
モータ520及び電動並進ステージ513は、カテーテル300の可動コンポーネントを作動させるために、回転トルク及び並進トルクを供給する。モータ520は、標示のないシャフトを駆動してギア512を回転させ、ギア512は、回転トルクをギア511に伝達する。モータ520は、ベースプレート513に機械的に固定される。更に、電動並進ステージ514もベースプレート513に固定される。電動並進ステージ514は、カテーテル300内の可動コンポーネントの直線移動(管腔への挿入又はプルバック)を制御するために、並進トルクを供給する役割を果たす。支持体508は、カテーテル300内の可動コンポーネントの並進動作に対して、支持及び方向制御を提供する。言い換えれば、支持体508は、並進動作のための直線ガイドとしての役割を果たす。電動並進ステージ514は、プルバック時に並進トルクを供給するためにも用いられる。コネクタ517は、カテーテル300に接続されるカテーテルコネクタである。
【0038】
カテーテル300の可動コンポーネントの作動のための回転トルク及び並進トルクは、電動運動に限定されない。モータと機械ギアの代わりに、空気圧駆動機構又は電磁駆動機構を用いることによって回転トルク及び並進トルクを実装して、回転と前方/後方の機械的運動を実現することもできる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる刊行物US20140180133(Brennanら)を参照されたい。更に、超音波モータ(USM)システムを有利に用いることができる。例えば、MRベースモダリティの磁場下でOCTプローブを動作させる場合、FORJにおいてUSM又は空気圧駆動機構を用いて、磁場が金属ベースの駆動機構に対して及ぼし得る影響を回避することができる。
【0039】
図5Bは、FORJの一部であるカテーテル自由空間光学接続部510の例示的な実装の詳細図を示す。カテーテル光学接続部510は、1対のレンズ5101及び5102等の自由空間光学系を含む。FORJにより、ファイバ軸に沿った右側(ロータ側)でダブルクラッドファイバを回転させながら、光信号の不断伝送が可能となる。FORJは、ロータ側とステータ側とを分離するために自由空間光ビームカプラを有する。ロータ側とステータ側は、両方とも、光が平行ビームとして伝送されることを確実にするためのレンズとともに、ダブルクラッドファイバ506を備える。ロータ側はカテーテル300に接続され、ステータ側はPIU500内の光学サブシステムに接続される。回転モータ520は、トルクをロータ又は回転側に送る。
図5Bから理解されるように、レンズ5101はDCF506aから分離される必要がなく、同様に、レンズ5102はDCF506bから分離される必要がなく、平行ビームがステータ側からロータ側に伝達される(逆の場合も同様)限り、レンズは、DCF506aとDCF506bとの間の任意の位置に配置することができる。
【0040】
<システム制御及び画像処理>
図6は、干渉OCTシステム100の例示的なコンピュータ制御システムの概略図である。
図6に示されるように、コンピュータ制御システムは、
図1に示されるコンピュータ190を代表するものである。
図6において、コンピュータ190は、中央処理装置(CPU)601、記憶メモリ(ROM/RAM)602、ユーザ入出力(I/O)インタフェース603及びシステムインタフェース604を含む。コンピュータ190の様々なコンポーネントは、既知の方式でデータバス(BUS)を介して互いに通信する。
【0041】
記憶メモリ602は、1つ以上のコンピュータ可読及び/又は書込み可能媒体を含み、例えば、磁気ディスク(例えばハードディスクドライブHHD)、光ディスク(例えばDVD(登録商標)、Blu-ray(登録商標)等)、光磁気ディスク、半導体メモリ(例えば不揮発性メモリカード、Flash(登録商標)メモリ、ソリッドステートドライブ、SRAM、DRAM)、EPROM、EEPROM等を含んでよい。記憶メモリ902は、コンピュータ可読データ、並びに/又は、オペレーティングシステム(OS)プログラムと制御プログラム及び処理プログラムとを含むコンピュータ実行可能命令を格納してよい。
【0042】
ユーザインタフェース603は、入出力(I/O)デバイスとの通信インタフェース(電子接続)を提供し、入出力(I/O)デバイスは、キーボード、ディスプレイ、マウス、印刷デバイス、タッチスクリーン、ライトペン、外部光記憶デバイス、スキャナ、マイクロホン、カメラ、ドライブ、通信ケーブル及びネットワーク(有線又は無線のいずれか)を含んでよい。
【0043】
システムインタフェース604はまた、光源110、検出器121~122、データ取得電子機器DAQ1(131)及びDAQ(132)、並びに患者インタフェースユニット(PIU)150のうちの1つ以上のための通信インタフェース(電子接続部)を提供する。ユーザインタフェース603及びシステムインタフェース604の機能は、記憶装置902に記録されたコンピュータ実行可能命令(例えば1つ以上のプログラム)によって、少なくとも部分的に実現されてよい。更に、コンピュータ190は、1つ以上の追加のデバイス、例えば、通信インタフェース又はネットワークインタフェースや、光源110、検出器121~122、ミラー140及びPIU150のうちの1つ以上を制御するための回路インタフェース(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ:FPGA)等のコンポーネントを備えてよい。
【0044】
CPU601は、記憶メモリ602に記憶されたコンピュータ実行可能命令を読み出して実行するように構成された1つ以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)から成る。コンピュータ実行可能命令は、本明細書に開示される新規のプロセス、方法及び/又は計算の実行のための命令を含んでよい。例えば、CPU601は、光学検出器120(121~122)から出力され取得電子機器130によって前処理された電気信号に基づいて、後方散乱光の強度を計算する。更に、CPU190は、本開示の他の箇所でより詳細に説明されるように、OCT散乱信号が所定の閾値に達することに基づいて、プルバック及び画像記録の開始及び終了を計算及び/又は決定する。
【0045】
図7は、イメージング装置を制御して、後方散乱信号が所定の閾値に達することに基づいてプルバック及び画像記録をトリガするための、例示的なフロープロセスを示す。
図7のプロセスは、コンピュータ190を含む図示されていないシステムコンソールが、ステップS702及びS704においてシステムセットアップを受ける動作状態を想定している。システムコンソールのセットアップは、例えば、ステップS702において、コンピュータ190のブートシーケンスを実行し、OCTシステム100を動作させるシステムソフトウェアを初期化することを含んでよい。更に、システムセットアップは、ステップS704において、カテーテルがシステムコンソールに接続されているかどうかをコンピュータ190が検出することを含んでよい。カテーテルが接続されているとき、コンピュータ190は、カテーテルとそれに接続された光学系の特定のパラメータを初期化するコマンドを発行してもよい。例えば、コンピュータ190は、PIU150、検出器120、DAQ130及び光源110の電子素子を有効化してよい。
【0046】
カテーテルがシステムコンソールに接続されていることをシステムが検出し(S704:YES)、システムが初期化された後、プロセスはステップS706に進む。ステップS706では、システムは「スタンバイモード」に入る。スタンバイモードでは、イメージングシステム全体が有効化され、動作の準備が整うが、カテーテルの動き(回転及び並進)はまだアクティブになっていない。ステップS708において、システムは、カテーテルを囲む環境のリアルタイム画像(ライブビュー画像)の取得を開始してもよいが(S708:YES)、そのようなライブビュー画像を記録せず、又は、システムは、リアルタイム観察が開始されるまでスタンバイモードのままである(S708:NO)。ライブビュー観察が開始された場合、プロセスはステップS710に進む。
【0047】
ステップS710において、システムは「自動トリガ準備完了」モードに入る。具体的には、ステップS710において、イメージングシステムは、カテーテル内のイメージング光学系の回転及び並進の運動を開始することができ、また、システムを用いて、患者内のカテーテルを操作しながらライブビュー画像を観察して、関心領域に到達したかどうかを決定することができる。自動トリガモードでは、システムは、ステップS711において「タイムアウト」タイマを開始してよい。タイムアウトタイマが切れた場合、システムは、イメージング光学系の運動を停止し、ライブビューイメージングを停止し、その後スタンバイモード(S706)に戻る。一方、自動トリガモードが達成されると、ステップS714において、システムは、トリガ信号が受信されたかどうかの決定を待つ。
【0048】
第2の検出器122によって検出される後方散乱信号が分析されて、カテーテルがOCT画像を記録することなく回転(スピン)する間の複数のaライン及び/又はフレームが平均化される。中空血管の内表面の全方向像からの後方散乱を検出して、カテーテルの遠位端の周りの血液除去の状態を確立するために、フレーム内の少なくとも全てのaラインからの信号が平均化されてよい。このように、部分的な血液除去によるトリガの生成を防ぐことが可能であり、また、ノイズアーチファクトの影響を低減することができる。この処理により、信頼性の高いトリガが実現される。
【0049】
ステップS714において、コンピュータ190は、検出器122によって検出された後方散乱信号の強度に基づいて、DCF506のクラッディングモードから受信されたトリガ信号を分析する。より具体的には、ステップS714では、コンピュータ190は、第2の検出器122から出力された信号を受信し、受信信号の強度をモニタリングして、
図4Bに示されるように、そのような強度を所定の強度閾値と比較する。閾値は、後方散乱信号の強度レベルに対応し、様々なパラメータに基づいて実験的に決定することができる。
【0050】
図3Bに示されるように、後方散乱信号の強度レベルは、プローブの遠位端と体腔の内壁との間の作動距離の、作動距離が増大するほど強度レベルが減少するような関数として、計算することができる。したがって、後方散乱信号の強度レベルを決定し得る1つの側面は、体腔の半径(例えば血管の半径)である場合がある。しかしながら、散乱信号の強度は、体腔に含まれる流体(血液)に存在する光散乱体(血液細胞)の濃度にも影響を受ける。血管内の血球数の濃度は対象の健康状態に応じて変化する可能性があるので、後方散乱信号の初期強度は、検査されている各個人の血球数を考慮に入れることができる。このように、透明な媒体による血管フラッシングが適用されるとき、閾値は、最小量の除去を確保するために調整されてよい。一実施形態では、閾値は、後方散乱信号の強度がその初期(最大)強度レベルの75%まで低下する時点として、定められてよい。閾値はまた、プローブが血管の少なくともフル360度像をスキャンし、プローブのプルバックが少なくとも所定の距離を移動できることを確実にするように、時間の関数として確立されてもよい。この理由から、トリガ信号は除去動作を開始した後に少し遅れて発生する可能性があるが、除去状態は数ミリ秒よりも長くは維持されないことがあるので、そのような遅延は長くなり得ない。閾値は、検出信号の変動の関数として定められてもよい。血液からフラッシュ媒体への移行中、検出信号は変動するので、システムは、いつフラッシュが始まり安定したのかを検出することができる。また、複数の閾値を組み合せて、システムの信頼性を高めることも可能である。
【0051】
後方散乱信号の強度が所定の閾値に達すると、コンピュータ190は、コマンド又は信号(トリガ信号)をPIU150に自動的に出力して、プローブのプルバックを開始し、同時にコンピュータ190は、画像記録動作を開始する(S714:YES)。すなわち、ステップS714において、後方散乱信号を閾値と比較した後、プルバック及び画像記録が自動的にトリガされている。したがって、
図7のフロープロセスは、
図4Cに示される時間図に従ってS716に進む。ステップS714において、検出器122によって検出された後方散乱信号が所定の閾値に達しない場合(S714でNO)、システムは、自動トリガ準備完了モードのままである(すなわち、フローはS710に戻る)。このように、システムは最終的に、S711でタイムアウトするか、自動的にトリガされ(S714でYES)S716に進むかのいずれかとなる。
【0052】
ステップS716において、システムは、カテーテルプルバックと画像記録を同時に開始する。更に、プルバックと記録が自動的にトリガされると、システムは、プルバックが開始された場所を記憶してよい。すなわち、ステップS717において、コンピュータ190は初期プルバック位置を記憶することができる。
【0053】
ステップS716では、中空血管の内表面の少なくともフル全方向像を見るために、第1の検出器121によって検出されたOCT信号が処理され、記録される。その目的で、ステップS716のプルバック及び画像記録は、少なくとも、撮像される関心領域のフル360度のヘリカルスキャンを得るのに必要な長さの時間の間、実行される。ここで、当然のことながら、「管腔除去済み」状態が維持される限り、ステップS716のプルバック及び画像記録を継続することができる。したがって、コンピュータ190は、検出器122の後方散乱信号を継続的にモニタリングし、それを閾値と比較することができる。このように、後方散乱信号の強度が閾値の所望のパラメータを満たさなくなった時点で、プルバック及び記録を自動的に終了して、無用な画像データの記録を防ぐことができる。
【0054】
所望の関心領域が少なくともフル360度スキャンされると、コンピュータ190は、視覚的レビューのために、関心領域のOCT画像を生成及び出力することができる。すなわち、プロセスはステップS718に進み、イメージング技術者により視覚的に、又はコンピュータ190によって実行される画像処理により、又は視覚分析と画像処理分析の組合せにより、画像レビューが実行される。ステップS720において、イメージング技術者又はコンピュータソフトウェアのいずれかが、新しい記録を実行するべきかどうかを決定することができる。新しい記録を実行するべきである場合(S720:YES)、プロセスはステップS721に進む。ステップS721において、コンピュータ190は、PUI150にコマンドを発行して、カテーテルの可動部分を初期プルバック位置(ステップS717で記録された)に戻す(リセットする)。ステップS721から、フロープロセスはステップS710に戻り、再び自動トリガ準備完了モードに入ることができる。或いは(任意に)、プロセスはステップS706に戻り、スタンバイモードに入ることができる。画像レビューの後、更なる記録が必要でない場合(S720:NO)、イメージング装置のプロセス及び制御は、自動的に、又は手動操作によって終了する。
【0055】
<蛍光を用いたマルチモダリティ>
他の実施形態によれば、OCTシステムは蛍光サブシステムを含む。すなわち、一部の実施形態は、マルチモダリティイメージングシステムを開示する。これらの実施形態では、OCTシステムは上記のものと同じである。蛍光サブシステムにおいて、光4は、光プローブを介してサンプルを照明する励起光であり、光5は、光プローブによってサンプルから集光され、DCFのクラッドを通して第3の検出器に伝播する蛍光である。ここでは、プロセッサがカテーテルの動作を制御し、OCT画像と蛍光画像を記録するために、光3信号の検出強度に基づいてトリガ信号が生成される。
【0056】
図8は、蛍光サブシステムを含むOCTイメージングシステム800を示す。血管内マルチモダリティOCTシステムによる冠動脈のイメージングについて説明する。具体的には、これらの実施形態では、システムは、血液除去を検出し、生きている対象(サンプル)の血液細胞による後方散乱光に基づいて、自動的に測定を開始することが可能である。この方法は、OCT又は他のモダリティの画像のリアルタイム処理を必要としない。したがって、蛍光サブシステムを含むOCTイメージングシステムは、リアルタイムで高速のプルバック及び画像記録のトリガを実現することができる。
【0057】
図8に示される実施形態によれば、OCTイメージングシステム800は、
図1のOCTシステム100と同様である。しかしながら、一部の実施形態は、OCTシステム100に加えて蛍光サブシステムを含む。蛍光サブシステムは、光源810(第3の光源)及び検出器823(第3の検出器DET3)等を含み、両者はそれぞれ光ファイバ811,819を介してPIU150に接続される。
【0058】
第2の光源810からの633nmの波長をもつ励起光は、PIU150及びOCTプローブ160を通してサンプル170に送られる。サンプル170は、励起光を照射されることに応えて、633~800nmの広帯域波長をもつ自家蛍光を発する。自家蛍光はカテーテルによって集光され、PIU150に接続された光ファイバ819を介して第3の検出器823(DET3)に送られる。検出器823から出力される信号は、データ取得電子機器132(DAQ2)によってデジタル化され、コンピュータ190に送信される。
【0059】
PIU150は、約1300nmのOCT光を633nmの励起光及び633~800nmの蛍光から分離する自由空間光ビームコンバイナ/スプリッタ(例えばダイクロイックフィルタ)を有する。約1300nmの波長をもつ光は、コア光によるOCT画像の生成と、クラッド光によるトリガ信号の生成とに用いられる。マルチモダリティ実施形態における後方散乱信号に基づいてトリガ信号を生成するプロセスは、上記の実施形態に関して説明したプロセスと同様である。
【0060】
コンピュータ190が検出器122(DET2)によってトリガ信号を検出すると、第2の光源810がONになり、プルバック及びOCT記録の動作が自動的に開始する。このように、OCTイメージングシステム800と蛍光サブシステムを含むマルチモダリティシステムは、OCT記録中にのみ励起光でサンプルを照明することができる。蛍光は一般に、光退色効果が原因で、照明時間とともに減衰する。したがって、実際のOCT測定及びOCT画像の記録の間にのみ、サンプル170を励起光で照明することが望ましい。その目的で、トリガ信号に基づいて、光源810のドライバ及び/
又はコントローラ、並びに/又は、光源810とカテーテルの間のどこかにあるシャッターとともに、第2の光源810の制御が用いられる。
図8のシステムは、3D OCTと近赤外蛍光イメージング(NIRF)血管内イメージングを同時に実行して、生物学的マーカの蛍光色素反応を分析しながら、血管壁の物理的状態を同時に視覚化するために、有利に使用することができる。このように、トリガ信号を用いて、より簡単にOCT画像と蛍光画像を互いに相互登録することもできる。
【0061】
図9は、マルチモダリティイメージング装置を制御して、後方散乱信号が所定の閾値に達することに基づいて、プルバック、OCT画像の記録及び蛍光イメージングをトリガするための、例示的なフロープロセスを示す。マルチモダリティシステム800の閾値は、
図4A~
図4Cの閾値と同じである。
図9のフロープロセスは、ステップS916を除いて、
図7のフロープロセスと同様である。
図9では、ステップS916において、中空血管の内表面の少なくともフル全方向像が見られるように、第2の検出器122で検出されたOCT信号が処理され、記録される。更に、ステップS916において、蛍光サブシステムの光源810がONにされ、検出器823(DET3)によって蛍光信号が記録される。前の実施形態と同様に、ステップS916のプルバック、OCT記録及び蛍光画像記録は、少なくとも、撮像される関心領域のフル360度のヘリカルスキャンを得るのに必要な長さの時間の間、実行される。サンプルの所望の関心領域が少なくともフル360度スキャンされると、コンピュータ190は、ステップS718での視覚的レビューのために、関心領域のOCT画像及び蛍光画像を生成及び出力することができる。有利なことに、この実施形態のステップS717では、カテーテルの初期プルバック位置を記録することに加えて、システムは、サンプルに関するカテーテルのパラメータと座標(2つのモダリティの座標)を記録することもできるので、蛍光減衰時間や光退色効果を調整する必要なく、OCT画像と蛍光画像を簡単に互いに相互登録することができる。
【0062】
<変更>
図10A、
図10B及び
図10Cは、トリガ信号並びにプルバック及び画像記録の開始の時系列の変更を示す。
図10Aは、スタンバイ信号の論理信号を示す。
図10Bは、閾値と比較された、第2の検出器122によって検出された後方散乱強度に基づくトリガ信号を示す。
図10Cは、プルバック及びOCT画像記録を開始し、蛍光イメージング動作を開始するための論理信号を示す。トリガ信号(
図4B)が除去状態の論理的ONと時間同期される
図4Aとは対照的に、
図10Aの論理的ONは、
図10Bのトリガ信号と時間同期される必要はない。この理由は、
図10Aでは、自動トリガ準備完了信号をコンピュータから直接的に、例えば手動で生成することができるからである。
【0063】
図10A~
図10Cの時系列及び論理信号は、本明細書に記載の各実施形態のシステムに均等に適用することができる。
図10A~
図10Cの変更された時系列により、システムは、別の「自動トリガ準備完了信号」(又は「準備完了モード」信号)がONであり、検出器122によって検出された後方散乱信号が閾値をまたぐ場合にのみ、トリガ信号を生成することができる。光源、シャッター、コンピュータ及び/又はモータ等のデバイスは、トリガを受信することによって起動する。
【0064】
上述したように、カテーテルは、サンプルに光を送りサンプルから光を集光するために、単一のダブルクラッドファイバ(DCF)を含む。しかしながら、カテーテルは、2つを超えるクラッディングを有するファイバ(マルチクラッディングファイバ)、又はファイバ束、又はホーリーファイバ(フォトニック結晶微細構造ファイバ)、又は特注のマルチファイバ構造、又はそれらの組合せを含むように変更することができる。
図11Aは例示的なファイバ束の断面図を示し、
図11Bはマルチファイバ構造を示す。
図11Aと
図11Bの両方において、中心ファイバは、OCT信号の収集に用いられるシングルモードファイバ(SMF)であり、一方、中心ファイバを囲む複数のファイバ(ファイバ1、ファイバ2、ファイバ3、…ファイバn)は、強度信号がプルバック及び画像記録のトリガに用いられる後方散乱光を集光するために用いられるマルチモードファイバ(MMF)又はシングルモードファイバのいずれかである。
【0065】
例示的な実施形態を参照して本特許出願を説明したが、当然ながら、本発明は開示される例示的な実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲の範囲は、全ての考えられる変更並びに均等な構造及び機能を包含するように、最も広い解釈を与えられるべきである。その目的で、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、特許請求の範囲にそのように記載されない限り、限定を意図しないことに留意されたい。本明細書で使用される場合、単数形(“a”,“an”及び“the”)は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」(“includes”及び/又は“including”)という用語は、本明細書と特許請求の範囲で使用される場合、記載の機能、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明記されていない1つ以上の他の機能、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/若しくはそのグループの存在又は追加を排除しない。
【0066】
本明細書において、要素又は部品が別の要素又は部品に「接触(on)」し、「押し当て(against)」られ、「接続(connected to)」され、又は「結合(coupled to)」されると言及される場合、当然ながら、それは別の要素又は部品に直接的に接触し、押し当てられ、接続され、又は結合されることが可能であり、又は、介在する要素若しくは部品が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素又は部品に「直接的に接触」し、「直接的に接続」され、又は「直接的に結合」されると言及される場合、介在する要素又は部品は存在しない。「及び/又は」という用語は、使用されるとき、そのように提供される場合には、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のあらゆる全ての組合せを含む。
【0067】
本明細書では、様々な図に示されるような1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を記述するための説明を簡単にするために、「下(under)」、「真下(beneath)」、「下方(below)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」等の空間的な相対語が使用されることがある。しかしながら、当然ながら、空間的な相対語は、図に示される向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの様々な向きを包含することを意図する。例えば、図中のデバイスがひっくり返されると、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」にあると説明される要素は、他の要素又は特徴の「上」に配置されることになる。よって、「下方」等の相対的な空間用語は、上と下の両方の向きを含むことができる。デバイスは、他の状態に(90度回転されて、又は他の向きに)向けられてもよく、本明細書で使用される空間的な相対的記述語は、それに応じて解釈されるものとする。同様に、「近位」及び「遠位」という相対的空間用語も、該当する場合には交換可能とすることができる。
【0068】
本明細書で使用される「約」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。実施形態によっては、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。
【0069】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又はセクションを説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然ながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又はセクションはこれらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションを別の領域、部品又はセクションから区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションは、本明細書の教示から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションと呼ぶことができる。