IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-構造物の構築方法 図1
  • 特許-構造物の構築方法 図2
  • 特許-構造物の構築方法 図3
  • 特許-構造物の構築方法 図4
  • 特許-構造物の構築方法 図5
  • 特許-構造物の構築方法 図6
  • 特許-構造物の構築方法 図7
  • 特許-構造物の構築方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20250417BHJP
【FI】
E04G21/12 104A
E04G21/12 104E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021124685
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019735
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正典
(72)【発明者】
【氏名】吉原 知佳
(72)【発明者】
【氏名】中上 晋志
(72)【発明者】
【氏名】笠原 玲
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-303592(JP,A)
【文献】特開昭61-017670(JP,A)
【文献】特開2014-029088(JP,A)
【文献】特開2005-036505(JP,A)
【文献】特開2019-044473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0204092(US,A1)
【文献】実開昭55-053156(JP,U)
【文献】特開平09-273246(JP,A)
【文献】特開2010-281033(JP,A)
【文献】特開2018-178646(JP,A)
【文献】特開平07-071080(JP,A)
【文献】特開2015-175138(JP,A)
【文献】特開平10-196117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04C 3/00 - 5/20
E04H 5/00 - 5/12
E04H 7/00 - 7/32
E04H 12/00 -14/00
E02D 29/02
E02B 3/04 - 3/14
B65D 88/00 -90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着孔が設けられた基礎部を構築する工程と、
前記定着孔と連通する挿通孔を有する壁体を、前記基礎部の上に構築する工程と、
前記挿通孔と前記定着孔に、複数本のPC鋼撚り線を束ねたPC鋼材を挿入する工程と、
前記定着孔内に充填材を充填して前記PC鋼撚り線の下端部を前記基礎部に定着する工程と、
前記PC鋼撚り線の上端部を緊張し、前記壁体に定着する工程と、
を具備し、
複数本の前記PC鋼撚り線の下端部に拡径部が設けられ、前記拡径部の高さが前記PC鋼撚り線によって異なり、
前記基礎部がコンクリートにより形成され、前記定着孔の下端部は、前記基礎部のコンクリート内に位置することを特徴とする構造物の構築方法。
【請求項2】
前記壁体は、タンクの壁体であり、
前記壁体は、前記挿通孔を有するプレキャストブロックを上下複数段に設置して構築されることを特徴とする請求項1記載の構造物の構築方法。
【請求項3】
前記定着孔は直線状であることを特徴とする請求項1または請求項のいずれかに記載の構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の構築方法および構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
プレストレストコンクリート製のタンク(以下、PCタンクという)では、補強のため壁体内に鉛直方向の緊張材が設けられる。鉛直方向の緊張材は、タンク周方向に一定の間隔で複数配置される。
【0003】
鉛直方向の緊張材として、PC鋼撚り線をU字状に配置することがある。この場合、U字状のシースが埋設された壁体を構築した後、壁体の天端を作業スペースとしてシースに緊張材を挿入し、ポストテンション方式で緊張力を付与する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-109318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、U字状のシースに緊張材を挿入する際の施工手順は煩雑であり、クレーンや緊張材の牽引装置などの大型の設備も必要であった。また緊張材の配置の自由度が低いという課題もあった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、緊張材を容易に配置できる構造物の構築方法および構造物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明は、定着孔が設けられた基礎部を構築する工程と、前記定着孔と連通する挿通孔を有する壁体を、前記基礎部の上に構築する工程と、前記挿通孔と前記定着孔に、複数本のPC鋼撚り線を束ねたPC鋼材を挿入する工程と、前記定着孔内に充填材を充填して前記PC鋼撚り線の下端部を前記基礎部に定着する工程と、前記PC鋼撚り線の上端部を緊張し、前記壁体に定着する工程と、を具備し、複数本の前記PC鋼撚り線の下端部に拡径部が設けられ、前記拡径部の高さが前記PC鋼撚り線によって異なり、前記基礎部がコンクリートにより形成され、前記定着孔の下端部は、前記基礎部のコンクリート内に位置することを特徴とする構造物の構築方法である。
前記定着孔は、例えば直線状である。
【0008】
本発明では、基礎部に設けられた定着孔と壁体に設けられた挿通孔とを連通させ、PC鋼撚り線等の緊張材を挿入し、定着孔に充填材を充填して緊張材の下端部を基礎部に定着する。緊張材は、壁体側から垂下して挿通孔と定着孔に挿入できるので施工は容易であり、U字状に緊張材を配置する場合のような手間が掛かることはなく、緊張材の配置の自由度も高い。また定着孔内に充填材を充填することにより、緊張材の下端部を基礎部に容易に定着でき、緊張材の上端部を緊張したうえで壁体に定着することで、壁体に好適にプレストレスを導入することができる。
【0009】
前記壁体は、タンクの壁体であり、前記壁体は、前記挿通孔を有するプレキャストブロックを上下複数段に設置して構築されることが望ましい。
本発明の手法は、例えばタンクの壁体をプレキャストブロックにより構築する際に好適に用いることができ、緊張材によるプレストレスをタンクの壁体に容易に導入できる。
【0010】
本発明では、PC鋼撚り線の下端部について、拡径部の位置で断面を大きくすることができ、PC鋼撚り線の基礎部への定着効果が向上し、定着長を低減できる。
【0011】
発明により、定着孔が設けられた基礎部と、前記定着孔と連通する挿通孔を有し、前記基礎部の上に構築された壁体と、を備え、前記壁体にプレストレスを導入するための緊張材が、前記挿通孔および前記定着孔に挿入され、前記緊張材の下端部が、前記定着孔に充填された充填材によって前記基礎部に定着され、前記緊張材の上端部が、前記壁体に定着されたことを特徴とする構造物が構築される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、緊張材を容易に配置できる構造物の構築方法および構造物等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】PCタンク10を示す図。
図2】壁体20を構築する工程を示す図。
図3】PC鋼撚り線3の定着部を示す図。
図4】PC鋼撚り線3を示す図。
図5】PC鋼撚り線3aの他の配置例。
図6】定着孔11の別の例。
図7】現場打ちコンクリートにより壁体20を構築する例。
図8】緊張材としてPC鋼棒3bを用いる例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る構築方法で構築される構造物であるPCタンク10を示す図である。
【0016】
PCタンク10は、基礎版1の上に、プレキャストブロック2(以下「ブロック」ということがある)による筒状の壁体20を設けたタンクであり、その内部にLNG(Liquefied Natural Gas;液化天然ガス)などの貯留物を貯留する。壁体20の上端部には鋼製の屋根部30が設けられる。
【0017】
壁体20内にはPC鋼撚り線3が埋設され、その下端部が基礎版1内に定着される。PC鋼撚り線3は鉛直方向の緊張材であり、タンク周方向に間隔を空けて複数本設けられる。図1ではこれらのPC鋼撚り線3のうちの一部のみ図示している。
【0018】
PCタンク10を構築するには、図2(a)に示すように、基礎版1を構築した後、基礎版1の上にブロック2を設置する。基礎版1は壁体20の基礎部であり、円盤状のコンクリート部材によって構築される。
【0019】
基礎版1には、PC鋼撚り線3の下端部を挿入するための定着孔11が設けられる。定着孔11は、例えば直線状のシースを基礎版1のコンクリートに鉛直方向に埋め込むことで形成される。定着孔11は、PC鋼撚り線3の配置に合わせ、タンク周方向に所定の間隔を空けて複数設けられる。
【0020】
ブロック2は、工場等で予め製作されたコンクリート部材であり、PC鋼撚り線3を挿通するための挿通孔21が設けられる。挿通孔21は、例えば直線状のシースをブロック2のコンクリートに鉛直方向に埋め込むことで形成される。挿通孔21は、基礎版1の定着孔11に対応する位置に設けられており、基礎版1上にブロック2を設置したときに、ブロック2の挿通孔21と基礎版1の定着孔11とが連通する。
【0021】
ブロック2は、基礎版1の上でタンク周方向に複数並べて配置され、また図2(b)に示すように、基礎版1上で必要な高さまで上下複数段に設置される。これにより、ブロック2による壁体20が構築される。前記の挿通孔21は上下のブロック2の間で連通する。
【0022】
図2(b)に示すように壁体20を構築した後、壁体20の天端から、上下に連通する各ブロック2の挿通孔21内にPC鋼撚り線3を垂下させ、その下端部を基礎版1の定着孔11内に挿入する。
【0023】
こうしてPC鋼撚り線3を配置した後、PC鋼撚り線3の下端部を基礎版1の定着孔11内で定着する。図3(a)は、PC鋼撚り線3の定着部を示す図である。本実施形態では、PC鋼撚り線3の下端部が挿入された定着孔11に充填材4を充填することで、PC鋼撚り線3の下端部が基礎版1に定着される。充填材4としては例えばモルタル等のセメント系材料が用いられるが、これに限ることはない。また圧縮強度30N/mm2以上のPCグラウト用無収縮モルタルなど、より高強度の充填材4を用いることでPC鋼撚り線3の付着強度を上げ、定着長を低減させることもできる。
【0024】
基礎版1には、基礎版1の表面と定着孔11の底部とを連通する注入孔41と、基礎版1の表面と定着孔11の頂部とを連通するオーバーフロー管42とが予め設けられている。充填材4は注入孔41から定着孔11内に注入し、オーバーフロー管42から基礎版1の表面にオーバーフローさせる。これにより、充填材4が定着孔11の頂部まで確実に充填される。なお、図3(b)に示すように、オーバーフロー管42に代えて、同様の機能を有する溝42aを基礎版1の表面に設けることも可能である。
【0025】
図4(a)は、PC鋼撚り線3の下端部の一部を示す図である。PC鋼撚り線3は、複数の鋼線をらせん状に撚り合せて形成され、複数本のPC鋼撚り線3を平行に束ねてマルチストランド(PC鋼材)として用いられる。PC鋼撚り線3の下端部には圧着グリップ32が設けられる。本実施形態では、この圧着グリップ32によりPC鋼撚り線3に拡径部が形成される。ただし、後述するように別の金具等で拡径部を形成することも可能である。
【0026】
図4(b)は、圧着グリップ32の位置におけるマルチストランドの断面を示す図である。圧着グリップ32によりPC鋼撚り線3が拡径することで、マルチストランドの断面が大きくなるとともに、PC鋼撚り線3の隙間に充填材4が充填されやすくなり、PC鋼撚り線3の定着効果が向上し、定着長を低減できる。
【0027】
本実施形態では、マルチストランドの断面が大きくなり過ぎてブロック2の挿通孔21や基礎版1の定着孔11への挿入の支障とならないように、マルチストランドの同断面に設ける圧着グリップ32の数や配置を設定する。
【0028】
1本のPC鋼撚り線3に設ける圧着グリップ32の数やその配置は特に限定されず、例えば複数の圧着グリップ32を1本のPC鋼撚り線3の異なる高さに取り付けることも可能である。また圧着グリップ32以外の金具等を用いてPC鋼撚り線3に拡径部を形成することも可能である。例えば、マルチストランドにおけるPC鋼撚り線3の本数が少ない場合などでは、図4(c)に示すように、これらのPC鋼撚り線3に外接するように厚肉円筒管を圧着するなどしてマンションタイプの拡径部32aを形成することも可能である。同様の拡径部32aは、マルチストランドにおける一部のPC鋼撚り線3に設けることも可能である。
【0029】
図3に示すようにPC鋼撚り線3の下端部を基礎版1に定着した後、壁体20の天端でPC鋼撚り線3の上端部を緊張する。そして、図2(c)に示すように、PC鋼撚り線3の上端部を定着具33により壁体20の上端部のブロック2に定着し、挿通孔21に充填材4を充填する。この後、PCタンク10に必要なその他の部分を設けることで、PCタンク10が構築される。
【0030】
図3に示すように、壁体20の下端部のブロック2には、ブロック2の表面と挿通孔21の底部とを連通する注入孔43が設けられており、充填材4は注入孔43から挿通孔21に注入され、各ブロック2の挿通孔21に下から充填される。これにより、充填材4の品質を維持しつつ、充填材4を挿通孔21に確実に充填できる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態では、基礎版1に設けられた定着孔11と壁体20に設けられた挿通孔21とを連通させ、PC鋼撚り線3を挿入し、定着孔11に充填材4を充填してPC鋼撚り線3の下端部を基礎版1に定着する。PC鋼撚り線3は、壁体20側から垂下して挿通孔21と定着孔11に挿入できるので施工は容易であり、U字状に緊張材を配置する場合のような手間が掛かることはなく、PC鋼撚り線3の配置の自由度も高い。
【0032】
また定着孔11内に充填材4を充填することにより、PC鋼撚り線3の下端部を基礎版1に容易に定着でき、PC鋼撚り線3の上端部を緊張したうえで壁体20に定着することで、壁体20に好適にプレストレスを導入することができる。
【0033】
また本実施形態では、PC鋼撚り線3の下端部に圧着グリップ32を取り付けて拡径部を設けることで、PC鋼撚り線3の下端部について、圧着グリップ32の位置で断面を大きくすることができる。また、PC鋼撚り線3同士の間に隙間が生じて充填材4が入り込みやすくなり、PC鋼撚り線3の基礎版1への定着効果が向上し、定着長を低減できる。
【0034】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限らない。例えばPCタンク10では、壁体20の下端部で緊張材を密に配置する等の目的から、壁体20の下端部に短いPC鋼撚り線を配置することがある。このようなケースでは、図5(a)に示すように、壁体20の下端部のブロック2を設置した時点で前記と同様の方法で短いPC鋼撚り線3aを配置してその下端部を基礎版1に定着し、PC鋼撚り線3aの上端部を緊張したうえで定着具33により壁体20の下端部のブロック2に定着することも可能である。壁体20は、当該ブロック2の上に破線で示すように更にブロック2を積層することで構築される。
【0035】
また図5(b)に示すように、壁体20の下端部では外側にハンチ22が設けられる場合もあり、このような場合では、ブロック2の挿通孔21や、基礎版1の定着孔11をハンチ22の傾斜に沿って斜めに形成し、これらの挿通孔21と定着孔11にPC鋼撚り線3aを斜めに挿入することも可能である。図の例ではPC鋼撚り線3aの上端部が壁体20の下端部の内面で定着されており、壁体20の下端部のブロック2の配置後は勿論、壁体20の構築後に緊張作業を行うことも可能である。なお、前記した実施形態のような、壁体20の全長に亘るPC鋼撚り線3は、図5(a)、(b)のいずれの場合も、PC鋼撚り線3aとは別の位置で別途設けられる。
【0036】
さらに、基礎版1に埋設するシースを円錐台状のものとするなどして、図6に示すように、定着孔11を、頂部から底部に行くにつれ広がった円錐台状のものとすることも可能である。これにより、PC鋼撚り線3の定着効果が向上する。
【0037】
さらに、本実施形態ではプレキャストブロック2を用いて壁体20を構築したが、本発明の手法は、コンクリートの現場打設により壁体20を構築する場合にも適用可能であり、挿通孔21は、事前に設置したシースをコンクリートに埋設するなどして形成すればよい。
【0038】
例えばこの場合、基礎版1を前記と同様に構築した後、図7に示すようにコンクリートを現場打ちして壁体20を構築する。この時、事前に設置したシースをコンクリートに埋設して挿通孔21を形成し、挿通孔21にPC鋼撚り線3を挿入する。以下、前記と同様の手順でPC鋼撚り線3の定着、緊張を行うことで、壁体20にプレストレスを導入できる。
【0039】
また本発明の手法は、PCタンク10の壁体20を構築する際に好適に用いることができ、壁体20にPC鋼撚り線3によるプレストレスを容易に導入することができるが、本発明の手法の適用対象はこれに限らず、PCタンク10以外のタンクに適用することも可能であり、その用途もLNGの貯留に限らない。またタンクの平面形状も特に限定されることはなく、円形以外のタンクであっても適用できる。さらに、タンク以外の構造物に適用することも可能であり、例えば擁壁、ボックスカルバート、U字カルバートなど、基礎部の上に壁体を構築し、その壁体に緊張材によるプレストレスを導入するようなケース全般に適用可能である。例えばボックスカルバートやU字カルバートの場合、基礎部である底板の上に側壁を形成する際に、本発明の手法を適用可能である。
【0040】
また、緊張材がPC鋼撚り線3に限ることもない。例えば緊張材としてPC鋼棒を用いることも可能であり、この場合、図8(a)に示すように、基礎版1を前記と同様に構築した後、基礎版1の上にブロック2を設置し、ブロック2の挿通孔21に、短いPC鋼棒3bを挿入してその下端部を前記と同様に定着孔11に定着する。PC鋼棒3bの下端部に定着体(不図示)を設けて拡径部を形成し、定着孔11内の充填材4に対する定着効果を上げることも可能である。一方、PC鋼棒3bの上端部にはカプラージョイント34が設けられる。そして、図8(b)に示すように下段のブロック2の上に上段のブロック2を設置し、図8(c)に示すように上段のブロック2の挿通孔21にPC鋼棒3bを挿入してその下端部をカプラージョイント34に連結する。
【0041】
以上のようにブロック2の設置とPC鋼棒3bの連結を繰り返すことで任意の高さまでPC鋼棒3bを延ばすことができ、壁体20の頂部からPC鋼撚り線3を垂下させるような作業は不要である。PC鋼棒3bは最大で壁体20の頂部まで伸ばすことができるが、この例では、上下2本のPC鋼棒3bを連結した後、図8(d)に示すように連結したPC鋼棒3bの緊張を行い、その上端部を2段目のブロック2の上面に定着する。この後、破線で示す残りのブロック2を更に上段に設置して壁体20を構築する。壁体20の頂部に達する緊張材は、PC鋼撚り線3aとは別の位置で別途設けられる。
【0042】
図8の例ではブロック2を用いたが、ブロック2を複数段に設置する代わりに、現場打ちのコンクリートを複数層に分けて打ち継ぐことも可能であり、上記した図8の説明において、「ブロック2の設置」を「コンクリートの打設、硬化」と読み替えればよい。PC鋼棒3bを通すための挿通孔21は、コンクリートにシース管を埋設することで形成できる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0044】
1:基礎版(基礎部)
2:プレキャストブロック
3、3a:PC鋼撚り線(緊張材)
4:充填材
10:PCタンク(構造物)
11:定着孔
20:壁体
21:挿通孔
30:屋根部
32:圧着グリップ(拡径部)
33:定着具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8