(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/14 20060101AFI20250417BHJP
【FI】
A47C27/14 Z
(21)【出願番号】P 2021130284
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2024-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】郡司 秀樹
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-066164(JP,A)
【文献】登録実用新案第3041719(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0307259(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸排気可能な吸排気口を備える袋体と、
前記袋体に収納されたウレタンフォームからなるマットと、を備えるマットレスであって、
密封性の部材からなる前記袋体は、前記マットを収納する収納部を複数備え、
一つの収納部とこれに隣り合う他の収納部との境界は、互いの収納部を区画するための1以上の固定部と、互いの収納部間の気体の流通を可能とする1以上の連通部とを有し、
前記境界における少なくとも1つの連通部には、通気可能な芯材が隣り合う収納部間に亘り貫通していることを特徴とするマットレス。
【請求項2】
複数の前記収納部は前記マットレスの長辺が伸長する長辺方向において連続して設けられているとともに、前記固定部は前記長辺方向に対し交差する交差方向に伸長しており、
前記固定部の、前記マットレスの前記長辺寄りの端部側に第一連通部が設けられており、
前記第一連通部に前記芯材が貫通している請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記芯材は、前記マットレスの前記長辺に沿って連続している請求項2に記載のマットレス。
【請求項4】
一つの前記境界において、前記固定部が2以上設けられており、隣り合う固定部間に第二連通部が設けられている請求項2または3に記載のマットレス。
【請求項5】
前記芯材がウレタンフォームから形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のマットレス。
【請求項6】
前記芯材が樹脂シートで被覆されている請求項1から5のいずれか一項に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な布団の代替として、収納スペースを有効に活用可能な空気マットレスが提案されている。
例えば特許文献1には、複数の空気袋を有するとともに、隣り合う空気袋との間で相互に空気のやりとりが可能なように、空気袋の外部に設けられた送気パイプによって隣り合う空気袋が連通された空気マットレスが開示されている。
【0003】
上記空気マットレスは吸排気バルブを備え、未使用時には、当該吸排気バルブから内部の空気を排出することで、空気マットレスの体積を減容させることができる。これによって空気マットレスの収納場所を大きく占めることが回避可能である。また、使用時には、吸排気バルブより空気袋内部に空気を送り込むことで全体を膨張させ、これによってマットレスとして使用可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記空気マットレスには以下の問題があった。
即ち、上記空気マットレスは、使用時に吸排気バルブより空気を送り込む作業が必要である。かかる作業を、人が浮き輪などを口で膨らませる作業と同様に人力で行おうとすると非常に労力がかかる。そのため、機械式または手動式の給気ポンプなどを用いることが推奨される。したがって従来の空気マットレスは、実質的に給気ポンプとセットとして扱わなければならなかった。また、このような空気マットレスを、一度に複数枚使用する場合には、たとえポンプを使用したとしても全ての空気マットレスに空気を送り込む作業に長時間を要する。したがって、従来の空気マットレスは使い勝手が悪かった。
【0006】
また、上記空気マットレスは、空気袋に外部に隣り合う空気袋同士を連通させる送気パイプが設けられており、複数の空気マットレスを重ねて収容する際などに送気パイプが他の空気マットレスに引っ掛かり、送気パイプ自体または他の空気マットレスの空気袋が破れてしまう等の虞があった。
【0007】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、収納し易く、かつ使用時の状態にするために多大な労力を要したり、給気ポンプなどの装置の使用を要するといった使い勝手の悪さが改善され、また重ねて収納した場合であってマットレス同士の引っ掛かりなどが生じ難いマットレスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマットレスは、吸排気可能な吸排気口を備える袋体と、上記袋体に収納されたウレタンフォームからなるマットと、を備えるマットレスであって、密封性の部材からなる上記袋体は、上記マットを収納する収納部を複数備え、一つの収納部とこれに隣り合う他の収納部との境界は、互いの収納部を区画するための1以上の固定部と、互いの収納部間の気体の流通を可能とする1以上の連通部とを有し、上記境界における少なくとも1つの連通部には、通気可能な芯材が隣り合う収納部間に亘り貫通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成を備える本発明のマットレスは、従来の空気マットレスと同様に内部の空気を排気させることによってコンパクトに収容することができる上、従来の空気マットのように人力や給気ポンプを使用せずとも排気により減容させた状態から元の状態に戻すことが可能であるため使い勝手が良い。また本発明のマットレスは、マットを収納する複数の収納部同士がマットレス内部に設けられ連通部において連通しているため、重ねて収容された際に他のマットレスに対し引っ掛かり難く、かつ当該連通部には通気可能な芯材が貫通していることから、マットレスの内部が陰圧になっても隣り合うマット間のスムーズな通気が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(1A)は本発明の第一実施形態に用いる袋体の上面図であり、(1B)は本発明の第一実施形態のマットレスの上面図である。
【
図2】図(1B)に示すマットレスのII-II端面図である。
【
図3】図(1B)に示すマットレスのIII-III端面図である。
【
図4】(4A)は本発明の第一実施形態のマットレスを折り畳んだ状態の側面図であり、(4B)は本発明の第一実施形態のマットレスを排気し折り畳んだ状態の側面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態の変形例のマットレスの上面図である。
【
図6】(6A)は本発明の第二実施形態のマットレスの斜視図であり、(6B)は本発明の第二実施形態のマットレスの枕用マットをマット本体側に折り畳んだ状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
以下に本発明のマットレスの第一実施形態について説明する。説明には、
図1~
図5を用いる。
図1Aは本発明の第一実施形態であるマットレス100に用いられる袋体10の上面図であり、
図1Bは本発明の第一実施形態のマットレス100の上面図である。
図2は
図1Bに示すマットレス100のマット20が配置された領域の断面であるII-II端面図であり、
図3は
図1Bに示すマットレス100の境界14の領域の断面であるIII-III端面図である。
図4Aはマットレス100を折り畳んだ状態の側面図である。
図4Bは本発明の第一実施形態のマットレスを排気し折り畳んだ状態の側面図である。
図4Aおよび
図4Bはいずれも、上面視長方形のマットレス100の短辺側を側面視した側面図である。
図5は、本発明の第一実施形態の変形例のマットレス110の上面図である。
【0012】
尚、本発明に関し、特段の異なりなく上下方向という場合には、マットレスを床面などに置いた状態における天地方向を指す。また、以下の説明において、マットレスの内部に収納されたマットが通常の形状を保ち、マットレスとして使用可能な状態を、使用状態といい、マットレスの内部の気体が排気されて減容された状態を減容状態という場合がある。本発明のマットレスは内部に充填される気体は特に限定されないが、空気であることが一般的であり、以下の説明では空気が充填された態様について説明する。
【0013】
まずマットレス100の概要について説明する。
図1Bに示すとおり、本実施形態のマットレス100は、吸排気可能な吸排気口40を備える袋体10と、袋体10に収納されたウレタンフォームからなるマット20と、を備えるマットレスである。
袋体10は、密封性の部材から構成されており、内部に空気が入った状態で吸排気口40を閉止することによって、マットレス100の上に重量がかかっても当該空気が保持され、使用状態が維持される。
図1Aに示すとおり、袋体10は、マット20を収納する収納部12が複数設けられている。一つの収納部12とこれに隣り合う他の収納部12との境界14は、互いの収納部12を区画するための1以上の固定部16と、互いの収納部12間の空気の流通を可能とする1以上の連通部18とが設けられている。そして、一つの境界14における少なくとも1つの連通部18には、通気可能な芯材30が隣り合う収納部12間に亘り貫通している。
【0014】
上記構成を備えるマットレス100は、未使用時には、吸排気口40から内部の空気が排出されることによって、マットレス100の内部が陰圧になるためマット20が弾性変形して収縮し減容する。この状態で速やかに吸排気口40を閉止することでマットレス100を減容状態とすることができる。このように減容状態のマットレス100は、コンパクトに収容することができる。
また減容状態であるマットレス100を使用状態に戻す場合、吸排気口40を開口することで陰圧であったマットレス100の内部に空気が流れ込むとともに、弾性変形して収縮していたマット20が元の形状に戻ろうとして膨張することによって袋体10を内側から押し広げ、これによってマットレス100の形状が人為的な作業を要さずに復元可能である。このようにマットレス100は、使用者等が人力で袋体10を膨らませたり、あるいは給気ポンプを使用したりすることなく、減容状態から使用状態に戻すことができるため、非常に使い勝手が良い。
【0015】
またマットレス100は、減容状態でコンパクトに収容可能であることから、たとえば災害用の備蓄品としての使用にも適しており、災害発生などにより、一度に沢山のマットレス100を使用する必要が生じた場合にも、各マットレス100の吸排気口40を開口させ、マット20の復元力により自然と元の形状になるのを待ち、その後、吸排気口40を閉止するだけで、速やかに使用状態のマットレス100を提供することができ望ましい。
以下に、マットレス100の詳細について説明する。
【0016】
(袋体)
本実施形態のマットレス100は、上面視において長方形の袋体10を備える。本実施形態における袋体10は、2以上の収納部12を有しており、図面では具体的には6つの収納部12を有したマットレス100を示している。尚、本発明のマットレスは上面視において長方形で限定されるものではなく、その形状は任意に決定することができる。
【0017】
袋体10は、密封性の部材から構成される。ここで密封性の部材とは、非通気性の部材を指し、たとえば加工容易な点から樹脂シートが好ましい。樹脂シートとしては、塩化ビニル系シート、ポリエチレン系シート、ポリプロピレン系シートなどが例示されるが、柔軟性、ウエルダー性の観点からは塩化ビニル系シートが好ましい。樹脂シートの厚みは特に限定されず、マットレス100の通常の使用に耐えうる強度を維持できる範囲で適宜決定することができるが、たとえば、0.1mm~0.3mm程度が好ましい。
【0018】
(収納部)
袋体10に設けられる複数の収納部12の配置は特に限定されないが、
図1Aでは、複数の収納部12がマットレス100の長辺方向において連続して設けられた態様を示している。
本実施形態における袋体10は、具体的には6つの収納部12を有している。6つの収納部12は、いずれも同形状に構成されており、各収納部12に収納される6つのマット20も互いに同形状に構成されている。収納部12の厚みは、
図2に示すとおり、収納されるマット20の厚みと同程度か、またはマット20を収納した状態で少しゆとりのある程度に構成されるとよい。
【0019】
本発明における収納部12は、6つに限定されるものではなく、2以上であればよく、隣り合う収納部12間に存在する境界14において、マットレス100の収容時または使用時に任意の境界14を折り曲げることで折り畳めることができる。たとえば、マットレス100の収容性の観点からは、収納部12の数は3つ以上であることが好ましく、4つ以上であることがより好ましい。また、使用時にマットレス100の一部を枕として使用するという観点からは収納部12は2以上であって、マットレス100の上面視において端部に位置する収納部12を折り畳んで枕の代替として使用可能な態様であってもよい。かかる態様については第二実施形態として後述する。
【0020】
(マット)
収納部12に収納されたマット20は、ポリウレタンフォームより構成される。マット20は、外圧により収縮して見掛け密度が減容され、外圧が取り除かれると、自己の復元力により元の形状に戻る復元性を有する。上記復元性を良好に実現させるために、マット20を構成するポリウレタンフォームの密度は、25kg/m3以上であることが好ましい。
【0021】
マットレス100は、収納部12にマット20が収納された状態で使用される。使用状態にあるマットレス100を、
図4Aに示すように境界14で折り畳むことができる。減容状態にないマットレス100をこのように折り畳んで押入れや倉庫に収容してもよい。
本実施形態における境界14は、使用状態において、山折りにしても谷折りにしても折り畳み可能なように、境界14の幅寸法(隣り合うマット20間の距離)が適度に確保されている。より具体的には、本実施形態では、境界14に形成されている固定部16が、これを挟んで隣り合う収納部12(マット20)間において、収納部12の厚み方向略2分の1の高さ位置を亘って設けられており、かつ、固定部16を含む境界14の幅寸法(隣り合うマット20間の距離)が1つの収納部12の厚み程度となるよう構成されている。かかる境界14を有するマットレス100によれば、
図4Aに示すように使用状態のままマット20を上下方向に重ねるように簡易に折り畳むことができる。
【0022】
また、マットレス100をコンパクトに収容したい場合には、
図4Bに示すように、吸排気口40からマットレス100の内部の空気を吸引して減容状態とし境界14にて折り畳むとよい。収容場所の収容面積にゆとりがあれば、減容状態のマットレス100を折り畳まずに収容してもよく、また
図4Aのように使用状態で折り畳んだ後に排気させて減容状態とし
図4Bの状態とすることも可能である。
【0023】
マット20の厚みは、特に限定されないが、使用時のクッション性および収容時の収容性などの観点からは、たとえば20mm以上100mm以下であることが好ましく、30mm以上70mm以下であることがより好ましい。
【0024】
(固定部)
図1Aに示すとおり、一つの収納部12とこれに隣り合う他の収納部12との境界14には、固定部16が設けられている。固定部16は、
図3に示すとおり、具体的には、袋体10を構成する上面と下面と接合させることによって構成され、各収納部12に収納されたマット10が他の収納部12に移動することを防止する部位である。換言すると、マットレス100は、一つの収納部12とこれに隣り合う他の収納部12とが固定部16によって区画されている。
ここで上記接合とは、袋体10を構成する上面と下面とが離間しない状態を維持可能な手段であればよく、たとえば、袋体10の所定の箇所における上下面を、熱などで溶融させて融着させ又は接着剤などで接着させるなどの手段が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
(連通部)
境界14を固定部16によって完全に封止してしまうと、1つの吸排気口40から全ての収納部12に対し吸排気することができない。そのため境界14には、互いの収納部12間の空気の流通を可能とする1以上の連通部18が設けられている。
外部に送気パイプが設けられている従来の空気マットレスとは異なり、マットレス100は、袋体10の内部に連通部18が設けられているため、複数のマットレス100を重ねて収容した場合などにおいて、互いが接触することによる袋体10の破損の発生が防止されている。
【0026】
上述する袋体10を構成する上面と下面とを非接合とすることで構成される連通部18は以下の問題があった。即ち、使用状態にあるマットレス100に対し、吸排気口40から内部の空気を排出させようとした場合、マットレス100の内部が陰圧となり、袋体10を構成する上面と下面とが密着してしまい通気困難になる場合があった。
上記問題に対し、本発明では、連通部18に後述する芯材30が配置される。これによって、マットレス100の内部の空気を排気することで陰圧になった場合でも、連通部18における袋体10の上面側と下面側とは近接するが、通気可能な隙間が連通部18において確保される。
【0027】
連通部18は、1つの境界14において少なくとも1つ設けられればよく、これによって実質的に全ての収容部12が通気可能な状態となる。本実施形態では吸排気口40は1か所にのみ設けられているが、この一か所の吸排気口40から内部の空気を吸引等することによって、全ての収容部12における空気を排気可能である。
たとえば本実施形態では、
図1及び
図3に示すとおり、連通部18として、第一連通部18A及び第二連通部18Bが設けられている。
【0028】
収納部12がマットレス100の長辺が伸長する長辺方向において連続して設けられている態様において、第一連通部18Aは、当該長辺方向に交差する交差方向(本実施形態では長辺方向に対し垂直方向)に伸長する固定部16の、マットレス100の長辺寄りの端部側に設けられた連通部18である。換言すると第一連通部18Aは、上面視においてマット20の外縁よりもさらにマットレス100の長辺寄りの位置に設けられている。かかる第一連通部18Aには、後述する芯材30が配置されている。このように上面視において、マット20の外縁よりさらにマットレス100の長辺寄りの位置に設けられた第一連通部18Aに芯材30が配置されることで、マットレス100に使用者が横たわったとき、芯材30が使用者の体に当接し難いよう配慮されている。
尚、本実施形態では、1つの境界14の両端に第一連通部18Aが設けられているが、いずれか一方のみに第一連通部18Aを設けることもできる。
【0029】
一方、1つの境界14において2以上の固定部16が設けられた態様において、第二連通部18Bは、隣り合う固定部16間に設けられた連通部18である。換言すると、上面視においてマットレス100の短辺方向中間部に第二連通部18Bが設けられている。
本実施形態では、第二連通部18Bには芯材30を配置していない。そのため、マットレス100の内部の空気を排気させる場合には、第二連通部18Bは内部の陰圧により密着して実質的に通気不可能となる場合があるが、上述する第一連通部18Aによって排気時の通気が確保されているため構わない。
第二連通部18Bは、減容状態のマットレス100を使用状態に戻す際、マット20の復元を速やかにするために有効である。上述するとおり、減容状態のマットレス100の吸排気口40を開口することによって、マットレス100の外部から内部に自然と空気が吸引されるとともに、マット20自体の復元力により袋体10が押し広げられて、マットレス100が使用状態となるが、このとき、マット20の上面視中間部において設けられた第二連通部18Bの存在によりマット20に空気が取り込まれやすく、マット20の速やかな復元を助けることができる。
尚、本発明は、第二連通部18Bにも芯材30が配置された態様を包含し、かかる態様においても第二連通部18はマット20の速やかな復元を助ける作用を発揮する。
【0030】
上述するとおりマットレス100内部の空気を排出させ、また空気を供給させる(流入させる)ための吸排気口40は、繰り返し開口および閉止可能であればよい。
【0031】
(芯材)
次に芯材30について説明する。芯材30は、連通部18において隣り合う収納部12に亘って配置される通気可能な部材である。かかる芯材30が配置されることによって、マットレス100の内部の空気を排気する際、内部が陰圧になっても連通部18における通気が確保される。
【0032】
芯材30を構成する通気可能な部材としては、部材自体が通気可能なもの、たとえば、密度の低い発泡樹脂、織物や編物などを束ねたもの等の軟質な部材が挙げられる。また芯材30は、樹脂やばねなどの弾性部材から構成され通気孔を有する硬質部材であってもよい。樹脂やばねなどの場合には、たとえば円筒形のパイプ状成形品などが挙げられる。
ただし、使用者の体に当たり違和感を与える虞や袋体10を損傷させる虞を考慮すると、芯材30は、上述する軟質な部材から構成されることが好ましく、中でも、マットレス100を減容させ、また復元させる際にマット20と同じ挙動を示すという観点から芯材30もウレタンフォームから構成されることが好ましい。
【0033】
上述する軟質部材から構成される芯材30は、連通部18を通り、隣り合う収納部12間に亘って設けられることから細長状の形状であることが好ましい。細長状の形状である芯材30の断面形状は特に限定されず、
図2に示すとおり、上下方向の寸法がマットレス20の厚み寸法以下であって、連通部18を通過することができる範囲で適宜決定することができる。
【0034】
ウレタンフォームなどの軟質な部材から構成される芯材30は、マットレス100を折り畳む際の繰り返しの屈曲に対し破損し難く、また排気時に潰れて通気量が少量になり過ぎないようにするといった観点から、
図2及び
図3に示すとおり、樹脂シート32で被覆されていることが好ましい。樹脂シート32は、厚みが適度に小さいシート状物であって、たとえば塩化ビニル系樹脂シート、ポリエチレン系樹脂シート、ポリプロピレン系樹脂シートなどが挙げられる。また第一連通部18Aの、より良好な通気性およびマットレス100の折り畳み時の柔軟性を確保するという観点からは上述する樹脂シート32は、メッシュシートであることが好ましい。樹脂シート32として用いられるメッシュシートは、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などの任意の樹脂から構成され、目の開きは特に限定されないが、例えば0.05mm~0.5mm程度であることが好ましい。
【0035】
図1Aに示すとおり、第一連通部18Aは、マットレス100の長辺に沿って複数設けられている。本実施形態では、かかる複数の第一連通部18Aを亘る1本の芯材30が設けられている。換言すると、本実施形態では、芯材30は、マットレス100の長辺に沿って連続している。これによってマットレス100を排気させ減容させる際、芯材30を通じて各収納部12の内部の空気をよりスムーズに排気させることができる。
ただし、図示省略するが、本発明は、独立した複数の芯材30を各第一連通部18Aに配置した態様を包含する。
【0036】
(変形例)
次に、第一実施形態のマットレス100の変形例であるマットレス110について
図5を用いて説明する。
マットレス110は、上述するマットレス100を内包する袋体カバー50を備える点でマットレス100と相違し、それ以外の点はマットレス100と同様に構成される。
カバー50は、マットレス100を出し入れ可能な開口部(図示省略)が設けられ、少なくとも内包されるマットレス100の上面側を覆うよう構成される。たとえば、カバー50は、マットレス100の全体を覆う袋状の構造とすることができる。
【0037】
カバー50にマットレス100が内包された状態で、吸排気口40から吸排気を行うことを可能とするために、カバー50にはマットレス100の吸排気口40に対応する位置に、吸排気口40を露出させるための窓部42が設けられている。
【0038】
カバー50を構成する部材は特に限定されず、織布、編布などの布地、樹脂シート、天然皮革、人造皮革などが挙げられる。ここでいう人造皮革とは、合成皮革、人工皮革を含む天然皮革様の人造シートを指す。合成皮革は、ナイロンやポリエステルなどからなる生地上にポリウレタンなどの樹脂を積層してなる樹脂層を備えるシートである。人工皮革は不織布をベースとし、当該不織布にポリウレタンなどの樹脂をしみこませて作成されたシートである。
【0039】
上述するマットレス100は、隣り合うマット20の間に境界14が設けられ、マット20の上面に対し境界14が相対的に凹んだ構成となっている(
図2、
図3参照)が、これをカバー50で被覆してなるマットレス110は、外観上の一体感が出るとともに、使用時に境界14の凹みを感じさせ難い。またマットレス110は、カバー50で袋体10が覆われることで袋体10の破損を防止することができる。
【0040】
特に天然皮革を用いて作成されたカバー50を備えるマットレス110は、高級感があり肌触りもよく好ましい。また人造皮革を用いて作成されたカバー50を備えるマットレス110は、製造コストを抑えつつ、高級感のあるマットレス110を提供することができるため好ましい。
【0041】
[第二実施形態]
次に本発明の第二実施形態であるマットレス200について
図6を用いて説明する。
図6Aは本発明の第二実施形態のマットレス200の斜視図であり、
図6Bはマットレス200の枕用マット20Bをマット本体20A側に折り畳んだ状態の斜視図である。尚、
図6では、芯材30を被覆するメッシュシートである樹脂シート32を視認容易に図示している。
【0042】
マットレス200は、サイズの異なる収納部12を2つ備え、それぞれの収納部12のサイズにあった寸法のマット20が収納されている点および第一連通部18Aがマットレス200の長辺の一方側のみに設けられている点で第一実施形態におけるマットレス100と相違しており、その他の構成は適宜マットレス100と同様に構成されることができる。
【0043】
より具体的には、マットレス200は、
図6に示すとおり、マットレス200の長辺方向において、長さの長い収納部12である第一収納部12Aと、相対的に長さの短い収納部12である第二収納部12Bとを備える。マットレス200の短辺方向において、第一収納部12Aと第二収納部12Bとのサイズは同じである。第一収納部12Aと第二収納部12Bとの間には、境界14が設けられており、境界14には、固定部16および連通部18(第一連通部18A、第二連通部18B)が設けられている。
【0044】
第一収納部12Aには、第一収納部12Aの内部寸法よりやや小さいマット20であるマット本体20Aが収納されている。一方、第二収納部12Bには、第二収納部12Bの内部寸法よりやや小さいマット20である枕用マット20Bが収納されている。
【0045】
枕用マット20Bが収納された第二収納部12Bを備えるマットレス200は、使用状態において枕用マット20Bが収納された第二収納部12Bを第一収納部12A側に折り畳むだけで、枕部22を構成することができ、マットレスだけでなく枕も一緒に提供することができる。また体を横たえる領域に配置されたマット20であるマット本体20Aは、一連のマットであるため、複数のマット20を用いて当該領域を構成する態様に比べて、より望ましい寝心地を提供可能である。
【0046】
たとえば本発明のマットレス200を災害時に使用するための備蓄品として利用する場合、別途、枕の備蓄がなくても、マットレスと枕を同時にかつ簡易に提供することができる。災害時に避難している人にとって、慣れない場所で、フラットなマットレスだけで睡眠をとることは困難な場合があるが、枕部22があることで良好な睡眠を確保し得る。
【0047】
マットレス200は、マット本体20Aが収納された第一収納部12Aと、枕部22を構成可能な第二収納部12Bというシンプルな構成であるため、連通部18の数も少なく、吸排気が非常にスムーズである上、製造コストが抑えられるため、災害時の備蓄品として適している。
【0048】
以上に本発明の第一実施形態および第二実施形態について説明したが、上述する実施形態は本発明を何ら限定するものではない。たとえば、第一実施形態に示すマットレス100において、マットレス100の長辺方向端部に位置する収納部12を折り畳み、枕として使用することもできる。また、マットレス200は、災害時の備蓄品としてだけではなく、一般の家庭などにおけるマットレスとしても使用することができる。また、マットレス200の変形例として第一収容部12Aを2以上の収容部に分割し、それぞれに独立のマット20を収納させる態様を本発明は包含する。
【0049】
上述する本発明は、下記の技術的思想を包含する。
(1)吸排気可能な吸排気口を備える袋体と、
前記袋体に収納されたウレタンフォームからなるマットと、を備えるマットレスであって、
密封性の部材からなる前記袋体は、前記マットを収納する収納部を複数備え、一つの収納部とこれに隣り合う他の収納部との境界は、互いの収納部を区画するための1以上の固定部と、互いの収納部間の気体の流通を可能とする1以上の連通部とを有し、
前記境界における少なくとも1つの連通部には、通気可能な芯材が隣り合う収納部間に亘り貫通していることを特徴とするマットレス。
(2)複数の前記収納部は前記マットレスの長辺が伸長する長辺方向において連続して設けられているとともに、前記固定部は前記長辺方向に対し交差する交差方向に伸長しており、
前記固定部の、前記マットレスの前記長辺寄りの端部側に第一連通部が設けられており、
前記第一連通部に前記芯材が貫通している上記(1)に記載のマットレス。
(3)前記芯材は、前記マットレスの前記長辺に沿って連続している上記(2)に記載のマットレス。
(4)一つの前記境界において、前記固定部が2以上設けられており、隣り合う固定部間に第二連通部が設けられている上記(2)または(3)に記載のマットレス。
(5)前記芯材がウレタンフォームから形成されている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のマットレス。
(6)前記芯材が樹脂シートで被覆されている上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のマットレス。
【符号の説明】
【0050】
袋体10
収納部12
第一収容部12A
第二収容部12B
境界14
固定部16
連通部18
第一連通部18A
第二連通部18B
マット20
マット本体20A
枕用マット20B
枕部22
芯材30
樹脂シート32
吸排気口40
窓部42
カバー50
マットレス100、110、200