(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 261/04 20060101AFI20250417BHJP
C07B 57/00 20060101ALN20250417BHJP
【FI】
C07D261/04
C07B57/00 350
(21)【出願番号】P 2021535068
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086620
(87)【国際公開番号】W WO2020127935
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ハラルド
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-51977(JP,A)
【文献】国際公開第2014/090918(WO,A1)
【文献】山中 宏 他,光学異性体の分離(季刊 化学総説 No.6),1989年,p. 2-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1a)
【化1】
で表される(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(1)
【化2】
で表される(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸から調製する方法であって、
(i)(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(2A)
【化3】
〔式中、Rは、1個又は2個の炭素原子を有するアルキルである〕、
で表される化合物と、180~230kJ/molの極性E
T(30)を有する有機溶媒中で反応させて、沈澱物及び上清溶液を形成させる段階であり、
ここで、Rがメチルであるときは、前記有機溶媒は、2-プロパノール、1-ブタノール及び1-ペンタノールから選択され、そして、Rがエチルであるときは、前記有機溶媒は、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール及び1-ペンタノールから選択され;
(ii)段階(i)からの沈澱物を上清溶液から分離させる段階;
(iii)段階(ii)からの沈澱物を酸性水溶液で処理する段階;及び、
(iv)(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(iii)の酸性水溶液から分離させる段階;
を含む、前記方法。
【請求項2】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(i)において、1:0.4~1:5のモル比で式(2A)で表される化合物と反応させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(i)が、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を式(2A)で表される化合物とともに前記溶媒中で、温度を30℃から有機溶媒の沸騰温度-5℃まで加熱することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(ii)における段階(i)からの沈澱物の上清溶液からの分離を、濾過によって実施する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(iii)における酸性水溶液が無機酸の水溶液である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(iii)の酸性水溶液からの、段階(iv)における(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の分離を、有機溶媒による抽出によって実施する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、さらに、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を再結晶させる段階(v)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記上清溶液を第2の有機溶媒中でアルカリ化合物と反応させるさらなる段階(vi)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の有機溶媒が、段階(i)の180~230kJ/molの極性E
T(30)を有する有機溶媒と同一である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(3)で表される(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミド:
【化4】
の製造方法であって、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法によって(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を製造する工程、および、
前記(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸
を式(4)
【化5】
で表される化合物と反応させて、式(3)で表される(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミドを
得る工程、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミドの合成において用いることができる、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の新規調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミド(以下、フルララネルと称する)は、下記式(A)によって表される合成殺虫剤である。
【化1】
【0003】
フルララネルは、経口投与可能な全身性有効成分剤である。その有効成分は、数種の節足動物の神経系におけるγ-アミノ酪酸(GABA)及び/又はグルタミン酸受容体への結合を介してクロリドチャンネルを拮抗的に阻害することが報告されている。フルララネルは哺乳動物の神経系では類似の結合を示さないことから、例えば、哺乳動物での、例えば、イヌ及びネコでの、ノミ、ダニ及びマダニ治療に適している。
【0004】
フルララネルはラセミ体である。(S)-エナンチオマーは、有効成分の抗寄生虫活性に大きく寄与するユートマーであることが報告されている。それを考慮すると、エナンチオ純粋又はエナンチオ富化(S)-フルララネルを用いることが、ラセミ体フルララネルに比べて有利であると考えられる。
【0005】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(IOBA)は、フルララネルの合成における重要な中間体であり、そして、当該化合物は、下記式(1)によって表される。
【化2】
【0006】
エナンチオ純粋又はエナンチオ富化(S)-フルララネルは有効成分として有利であると考えられ得ることから、エナンチオ純粋又はエナンチオ富化の(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(S-IOBA)の単離が望ましいものと考えられる。(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、下記式(1a)によって表される。
【化3】
【0007】
WO2014/090918A1には、類似の化合物のエナンチオマーへの分離をキラルカラムクロマトグラフィー又はジアステレオマー再結晶によって実施することができると記載されている。詳細には、当該文書には、類似化合物であるラセミ体3-メチル-5-[(5RS)-5-(3,4,5-トリクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]チオフェン-2-カルボン酸(IOTA)を、水、アセトニトリル及び2-ブタノールの三元混合物中(R)-1-(4-メチルフェニル)エチルアミンで処理することで、洗浄後に95%を超えるキラル純度を有する対応する(S)-イソオキサゾリンチオフェンカルボン酸塩の沈澱物が得られ、その純度はさらなる再結晶段階によって98%超まで高めることが可能であることが記載されている。しかしながら、このプロセスは、結晶化のために溶媒の三元混合物を用いる。さらに、WO2014/090918A1では、前記三元混合物中に残っている「副生成物」(R)-イソオキサゾリンチオフェンカルボン酸をラセミ化させたい場合、この三元溶媒混合物を別の溶媒混合物に変える必要がある。さらに、ラセミ体IOBAを(R)-1-(4-メチルフェニル)エチルアミンで処理しても(S)-IOBAは全く沈澱しないことが認められた。
【0008】
JP05679102には、ラセミ体イソオキサゾリン安息香酸誘導体をそれのエナンチオマーに分離できる方法であって、その方法を有機溶媒又はそれらの混合物中で実施され、そして、活性塩基性化合物が用いられることが記載されている。特に、ラセミ体(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び光学活性α-フェニルエチルアミンをトルエン及び酢酸エチルの混合物中で又は酢酸エチルのみの中で反応させて、比率1:1での(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び(S)-α-フェニルエチルアミンの対応するエナンチオマー塩である沈澱物が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2014/090918A1
【文献】JP05679102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、現在もなお、新たな合成経路、即ち、好ましくは簡単かつ効果的に適用可能な、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の調製方法が必要とされている。
【0011】
従って、本発明の目的は、上記調製方法の欠点の1以上を克服することにある。特には、本発明の目的は、高エナンチオマー過剰率で(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を調製する方法を提供することにある。別の目的は、特に大規模プロセスで用いた場合に、有利な高収率で(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を調製する方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、簡単な溶媒系を用いて(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を調製する方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、(S)-IOBAの沈澱物に関して、同一の溶媒系を(R)-IOBAのラセミ化に用いることが可能な(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、予想外に、式(1a)による化合物の調製のための新たな合成アプローチを提供することで、上記目的の少なくとも一つを解決した。
【0013】
従って、本発明の対象は、式(1a)
【化4】
で表される(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(1)
【化5】
で表される(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸から調製する方法であり、ここで、該方法は、
(i)(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(2A)、(2B)又は(2C)
【化6】
〔式中、Rは、1個又は2個の炭素原子を有するアルキルである〕、
【0014】
【化7】
〔式中、Xは、Cl又はBrである〕
で表される化合物と、180~230kJ/molの極性E
T(30)を有する有機溶媒中で反応させて、沈澱物及び上清溶液を形成させる段階;
(ii)段階(i)からの沈澱物を上清溶液から分離させる段階;
(iii)段階(ii)からの沈澱物を酸性水溶液で処理する段階;及び、
(iv)(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を段階(iii)の酸性水溶液から分離させる段階;
を含む。
【0015】
予想外に、本発明の方法によって、高エナンチオマー過剰率を有する化合物を有利な収率で得ることが可能となることが認められた。さらに、当該方法は、精巧な装置を用いることなく実施することができ、クロマトグラフィー精製段階の必要性が回避される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、段階(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を含む、式(1a)で表される化合物の調製方法に関する。本発明の好ましい実施形態及び/又は本発明のその実施形態において、上記の段階(i)、(ii)、(iii)及び(iv)は連続的に実施することができる。
【0017】
式(1a)による化合物は、式(1)による化合物(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の(S)-エナンチオマーであり、ここで、式(1)による化合物は、例えば、US2007/0066617の合成例3に記載の方法に従って調製することができる。
【0018】
本発明による方法及び/又はそれのいずれかの実施形態の段階(i)において、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、180~230kJ/molの極性ET(30)を有する有機溶媒中、式(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物と反応させて、沈澱物及び上清溶液を形成させる。
【0019】
式(2A)において、残基Rは、1個又は2個の炭素原子を有するアルキルである。
【0020】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、残基Rは、1個の炭素原子を有するアルキルであり、即ち、残基Rはメチルである。対応する塩基又はアルキル性化合物は、(S)-1-フェニルエチルアミンである。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、残基Rは、2個の炭素原子を有するアルキルであり、即ち、残基Rはエチルである。対応する塩基又はアルカリ化合物は、(S)-1-フェニルプロピルアミンである。
【0022】
式(2B)による化合物は、(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミンである。
【0023】
式(2C)において、残基Xは、Cl又はBrである。
【0024】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、式(2C)中の残基XはClであり、そして、対応する塩基又はアルカリ化合物は(R)-1-(4-クロロフェニル)-エチルアミンである。
【0025】
より好ましい実施形態において、式(2C)中の残基XはBrであり、そして、対応する塩基又はアルカリ化合物は(R)-1-(4-ブロモフェニル)-エチルアミンである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、式(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物は、(S)-1-フェニル-プロピルアミン、(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン、(R)-1-(4-クロロフェニル)-エチルアミン及び(R)-1-(4-ブロモフェニル)-エチルアミンからなる群から選択される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(i)で、式(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物と、1:0.4~1:5、好ましくは、1:0.5~1:3、より好ましくは、1:0.6~1:2、特には、1:0.7~1:1のモル比で反応させる。
【0028】
有機溶媒は、物質を溶解させ、好ましくは完全に溶解させて溶液を形成する液体化合物である。有機溶媒の例は、当業界では既知である。有機溶媒は、例えば、その沸点(高沸点又は低沸点溶媒)、それの酸性/塩基性(酸性又はアルカリ性溶媒)及び/又はそれの極性(極性及び非極性溶媒)でカテゴリーに分類することができる。
【0029】
本方法の段階(i)において、有機溶媒は、170~230kJ/mol、好ましくは、180~225kJ/mol、より好ましくは、190~220kJ/mol、特には、200~218kJ/molの、ET(30)値を有する。
【0030】
ET(30)値は、異なる溶媒の極性を示すとされている(例えば、Jose P.Ceron-Carrascoら:“Solvent polarity scales:determination of new ET(30) values for 84 organic solvents”,Research Article;Journal of Physical Organic Chemistry,2014,27,512-518ページを参照)。ET(30)値は、ベタイン30又はライヒハルト(Reichhardt’s)色素とも称されるネガ型ソルバトクロミック色素2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニルピリジン-1-イウム-1-イル)フェノレートを用いて求められる。ベタイン30は、下記式(B)
【0031】
【0032】
より具体的には、ET(30)値は、最長波長VIS/NIR吸着帯を通して対応する溶媒中でベタイン30を用いて求められる。高ET(30)値は、溶媒の高極性に対応すると考えられ、低ET(30)値は溶媒の低極性を示す。従って、要するに、ET(30)値が高いほど、溶媒の極性が高くなり、その逆も言える。ET(30)値は、モル電子励起エネルギーとも定義され、下記のように計算される。
【0033】
【数1】
式中、λ
maxは、25℃及び101kPaで測定した場合に、対応する溶媒中でのベタイン30の可視/近IR領域の長波長吸着帯である。
【0034】
170~230kJ/molのET(30)値を有する有機溶媒の例は、ピリジン類、例えば、2-フルオロピリジン及び2,6-ジフルオロピリジン;アルコール類、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、シクロブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、シクロペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、アリルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(n-ブトキシ)エタノール、2-フェノキシエタノール、シクロヘキサノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、2-クロロエタノール、1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-オール、1,1,1-トリフルオロ-2(トリフルオロメチル)ペンタ-4-エン-2-オール、2,2,2-トリフルオロ-1-フェニルエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-フェニルプロパン-2-オール;ケトン類、例えば、1,1,1-トリクロロアセトン;エステル類及びラクトン類、例えば、4-ブチロラクトン及びプロピン酸エチル;アミド類及びシアナミド類、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルシアナミド、ピロリジン-2-オン、N-メチルプロピオンアミド、N-エチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド;ニトリル類、例えば、n-プロパンニトリル、3-メトキシプロパンニトリル、アセトニトリル、クロロアセトニトリル;ニトロアルカン、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン;芳香族アミン類、例えば、アニリン;リン化合物、例えば、リン酸トリメチル;及び、硫黄化合物、例えば、テトラヒドロ-3-メチルチオフェン-1,1-ジオキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジメチルスルホキシド及び亜硫酸エチレンである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における有機溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、シクロブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、シクロペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、アリルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(n-ブトキシ)エタノール、2-フェノキシエタノール、シクロヘキサノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、2-クロロエタノール、1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン-2-オール、1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンタ-4-エン-2-オール、2,2,2-トリフルオロ-1-フェニルエタノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-フェニルプロパン-2-オール及びこれらの混合物から選択されるアルコールである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における有機溶媒は、2~8個の炭素原子を有するアルコールである。そのアルコールは、好ましくは、モノアルコールである、即ち、その有機溶媒は水酸基1個のみ有する。さらに、当該有機溶媒はその水酸官能基のみを有することが好ましい。即ち、当該アルコールは、(1個の)水酸基とは別に他の官能基を全く持たない。さらに、有機溶媒として使用される2~8個の炭素原子を有するアルコールは、水素、酸素及び炭素原子のみを含む。適切には、当該アルコールはそれ以上置換されていない。
【0037】
有機溶媒として使用される2~8個の炭素原子を有するアルコールの例は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、シクロブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、シクロペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール及びこれらの混合物である。
【0038】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、有機溶媒はエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール及びこれらの混合物からなる群から選択される2~8個の炭素原子を有するアルコールであり、より好ましくは、有機溶媒は、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される2~8個の炭素原子を有するアルコールである。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、有機溶媒はエタノールである。別の好ましい実施形態において、有機溶媒は2-プロパノールである。別の好ましい実施形態において、有機溶媒は1-ブタノールである。別の好ましい実施形態において、有機溶媒は1-ペンタノールである。別の好ましい実施形態において、有機溶媒は1-ヘキサノールである。
【0040】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における有機溶媒はアミドでもシアナミドでもない。
【0041】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における有機溶媒は硫黄化合物ではない。
【0042】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはメチルであり、そして、有機溶媒は、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール及びこれらの混合物から選択される。
【0043】
段階(i)における式(2A)の別の好ましい残基Rはメチルであり、そして、有機溶媒はエタノールであるか、又は、式(2A)の残基Rはメチルであり、そして、有機溶媒は2-プロパノールである。
【0044】
段階(i)における式(2A)の別の好ましい残基Rはメチルであり、そして、有機溶媒は1-ブタノールであるか、又は、式(2A)の残基Rはメチルであり、そして、有機溶媒は1-ペンタノールであるか、又は、式(2A)の残基Rはメチルであり、そして、有機溶媒は1-ヘキサノールである。
【0045】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における式(2A)の残基Rはエチルであり、そして、有機溶媒は、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール及びこれらの混合物から選択される。
【0046】
段階(i)における式(2A)の別の好ましい残基Rはエチルであり、そして、有機溶媒はエタノールであるか、又は、式(2A)の残基Rはエチルであり、そして、有機溶媒は2-プロパノールである。
【0047】
段階(i)における式(2A)の別の好ましい残基Rはエチルであり、そして、有機溶媒は1-ブタノールであるか、又は、式(2A)の残基Rはエチルであり、そして、有機溶媒は1-ペンタノールであるか、又は、式(2A)の残基Rはエチルであり、そして、有機溶媒は1-ヘキサノールである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)におけるキラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、そして、有機溶媒はエタノールであるか、又は、キラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、そして、有機溶媒は2-プロパノールであるか、又は、キラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、そして、有機溶媒は1-ブタノールであるか、又は、キラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、そして、有機溶媒は1-ペンタノールであるか、又は、キラル塩基は(R)-1-フェニル-2-メチル-プロピルアミン(式2B)であり、そして、有機溶媒は1-ヘキサノールである。
【0049】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基Xは、Cl(クロリド)又はBr(ブロミド)である。
【0050】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはClであり、そして、有機溶媒は2-プロパノールである。
【0051】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはBrであり、そして、有機溶媒は、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)における式(2C)の残基XはBrであり、そして、有機溶媒はエタノールであるか、又は、式(2C)の残基XはBrであり、そして、有機溶媒は2-プロパノールであるか、又は、式(2C)の残基XはBrであり、そして、有機溶媒は1-ブタノールであるか、又は、式(2C)の残基XはBrであり、そして、有機溶媒は1-ペンタノールである。
【0053】
段階(i)において、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式180~230kJ/molの極性ET(30)を有する有機溶媒中で、(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物と反応させて、沈澱物及び上清溶液を形成させる。従って、有機溶媒中、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、好ましくは、(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、及び、式(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物を互いに作用させて、沈澱する生成物及び上清溶液を形成させる。即ち、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、好ましくは、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、及び、式(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物を互いに反応させて、反応混合物から沈澱し得る固体生成物、好ましくは、完全に沈澱し得る固体生成物を形成し、その際に上清溶液が残る。前記上清溶液は、好ましくは、少量の未反応(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸、及び、好ましくは、多量の(5R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を含む。
【0054】
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸と式(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物との反応は、溶媒が液体状態である限り、任意の温度でも実施することができる。例えば、その反応は、23℃(室温とも称される)で実施することができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)は、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を式(2A)、(2B)又は(2C)で表される化合物とともに高温まで加熱することを含む。高温は、23℃(室温)~有機溶媒の沸騰温度、好ましくは、30℃~有機溶媒の沸騰温度-5℃、より好ましくは、40℃~有機溶媒の沸騰温度-20℃の温度である。それは、78℃の沸騰温度(即ち、沸点)を有するエタノールを有機溶媒として用いる場合、段階(i)における反応を、好ましくは、23℃~78℃、好ましくは、30℃~73℃、より好ましくは、40℃~68℃で実施することができることを意味する。本明細書中で示され、沸騰温度又は沸点に関連する温度はいずれも、常圧101kPaで測定される温度に関する。
【0056】
さらに、段階(i)は、好ましくは、前記段階の反応混合物を冷却することを含む。段階(i)が反応混合物を高温まで加熱することを含まない場合、その反応混合物は、0℃~20℃、好ましくは、約10℃まで冷却することができる。段階(i)が反応混合物を高温まで加熱することを含む場合、その反応混合物は、好ましくは、0℃~40℃、好ましくは、10℃~30℃、特には、約23℃(室温)まで冷却することができる。反応混合物を冷却することで、得られた生成物は、沈澱物及び上清溶液を形成し、ここで、その上清溶液は、好ましくは、(5R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を含む。
【0057】
さらに、段階(i)の反応については、好ましくは、撹拌又は超音波処理のような機械的運動に付すことができる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)の期間は、15分~24時間、好ましくは、30分~12時間、特には、1時間~6時間であることができる。
【0059】
段階(ii)において、段階(i)からの沈澱物を上清溶液から分離させる。段階(i)からの沈澱物は固体であり、固体を液体から分離させる任意の方法によって上清溶液から分離させることができる。これらの方法の例は、任意に先行する遠心段階を行う上清溶液のデカンテーション又は注ぎ出し、及び、濾過である。
【0060】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(ii)で、段階(i)からの沈澱物の上清溶液からの分離は、濾過によって行われる。本明細書で使用される濾過は、固体(この場合は沈澱物)を、液体(この場合は上清溶液)から、流体のみが通過可能な媒体を介して分離させる機械的若しくは物理的操作である。そのような媒体は、フィルター若しくは篩、好ましくは、フィルターと称され得るものと考えられる。適切なフィルターの例は、吸引フィルター、加圧フィルター又は折り畳みフィルター、好ましくは、吸引フィルターである。
【0061】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、上清溶液から分離された段階(i)からの沈澱物は、さらに、精製段階に付すことができる。そのような精製段階は、好ましくは、例えば、本方法の段階(i)で使用した有機溶媒又は酢酸エチルで段階(i)からの沈澱物を洗浄することを含み得る。それを行うことで、任意の残留粘着性上清溶液を除去することが可能であると考えられる。
【0062】
段階(ii)において、上清溶液から分離された段階(i)からの沈澱物をさらに乾燥させて残留溶媒を除去することができる。乾燥は、好ましくは、23℃~50℃、好ましくは、約40℃の温度及び/又は1kPa~90kPa、好ましくは、約10kPaの減圧下で実施することができる。
【0063】
段階(iii)において、段階(ii)からの沈澱物を酸性水溶液で処理する。本明細書において、酸性水溶液は、pH値7未満を有する溶液である。
【0064】
さらに、前記酸性水溶液は、好ましくは、ブレンステッド酸の水との反応によって得ることができる。
【0065】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(iii)における酸性水溶液は、pKa3.5以下、好ましくは、pKa3.0以下、より好ましくは、pKa2.5以下、特には、pKa2.0以下を有する酸の溶液である。
【0066】
pKa3.5以下を有する適切な酸の例は、塩化水素(対応する酸は塩酸である。)、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸、トリクロロ酢酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、2-クロロ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びこれらの混合物である。
【0067】
ブレンステッド酸は、有機酸又は無機酸であることができる。
【0068】
ブレンステッド酸として用いることができる有機酸の例は、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びこれらの混合物である。好ましいものは、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸であり、特には、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸である。
【0069】
ブレンステッド酸として用いることができる無機酸の例は、塩化水素(対応する酸は塩酸である)、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸及びこれらの混合物である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(iii)における酸性水溶液は、無機酸、好ましくは、塩化水素、臭化水素、硫酸、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸及びこれらの混合物、より好ましくは、塩化水素、硫酸水素ナトリウム若しくはカリウム、リン酸及びこれらの混合物、特には、塩化水素、硫酸水素カリウム又はリン酸、特別には硫酸水素カリウムの溶液である。
【0071】
段階(iii)で使用される酸性水溶液は、pH値-3~3.5、より好ましくは、-2~3、さらにより好ましくは、-1~2.5、特には、約2を有することが好ましい。
【0072】
段階(ii)からの沈澱物を酸性水溶液で処理する段階(iii)は、好ましくは、冷却下に、好ましくは、5℃~20℃、より好ましくは、約10℃の温度で実施することができる。
【0073】
さらに、段階(iii)の反応については、好ましくは、撹拌又は超音波処理、特には、撹拌のような機械的運動に付すことができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(iii)の期間は、5分~2時間、好ましくは、10分~1時間、特には、約30分であることができる。
【0075】
段階(iv)において、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(iii)の酸性水溶液から分離させる。分離は、固体有機化合物、特には、固体有機酸を、酸性水溶液から分離させる既知の方法を含むことができる。分離は、段階(ii)に関して記載された方法のような方法、即ち、任意に先行する遠心段階を行う溶液の上記デカンテーション又は注ぎ出し、及び濾過を含むことができる。さらに、分離は、所望の化合物(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の酸性水溶液からの抽出を介して実施することができる。
【0076】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(iv)では、段階(iii)からの酸性水溶液からの(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4-Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の分離を有機溶媒による抽出によって実施する。有機溶媒は、当業者には既知である。
【0077】
段階(iv)において、抽出は、好ましくは、非プロトン性有機溶媒中で実施することができる。本段階(iv)で使用するのに適切な有機溶媒は、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、環状及び非環状アルキルエーテル類、クロロベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン及びこれらの組み合わせである。好ましいものは、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン及びトリクロロメタンであり、特には、酢酸エチル及びトルエンであり、特別には酢酸エチルである。
【0078】
抽出は、好ましくは、段階(iii)からの酸性水溶液に有機溶媒を加えること、その2液を混和すること、有機溶媒を含む相を酸性水溶液から分離させることを含む。この手順は、好ましくは、繰り返すことができ、好ましくは、2~4回繰り返すことができる。次に、好ましくは、有機相を合し、脱水することができる。脱水は、硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムのようないずれか既知の脱水剤を用いて実施することができる。脱水後、脱水剤を、好ましくは、濾過によって有機相から分離させることができる。
【0079】
さらに、段階(iv)は、好ましくは、有機相から有機溶媒を、好ましくは、合した有機相から除去することを含む。有機溶媒の除去は、好ましくは、23℃~50℃、好ましくは、約40℃の温度で、及び/又は、1kPa~90kPa、好ましくは、約10kPaの減圧下で実施することができる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(iv)からの(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、少なくとも75%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも85%、特には、少なくとも90%のエナンチオマー過剰率(ee)を有する。
【0081】
エナンチオマー過剰率(ee)は、各エナンチオマーのモル分率間の差の絶対値として定義され、下記等式に従って計算されるエナンチオマー過剰率パーセントとして表すことができる。
【0082】
【数2】
式中、
F
Rは(R)-エナンチオマーのモル分率であり、
F
Sは(S)-エナンチオマーのモル分率である。
【0083】
対応するエナンチオマーの量、従ってモル分率は、例えば、対象化合物のエナンチオマー過剰率の数値を介して、キラルカラムクロマトグラフィー(キラルLC又はSFC)を介して、又はキラルシフト試薬存在下でのNMRスペクトル測定を介して、当業界で既知の方法によって求めることができる。本願において、対応するエナンチオマーのキラルLCモル分率は、キラルLCによって求められる。(システム:Agilent Technologies 1200サンプラーを搭載したAgilent Technologies 1100。Luxアミロース-1キラル相(5μm)を有するPhenomenexカラム(250mm×4.6mm)。溶離液:i-ヘキサン:エタノール75:25;12分間かけての定組成操作。流量:1mL/分。カラムオーブン温度:35℃。220、254、265及び280nmでUV検出。)。他の可能性は、キラルアミン類若しくはアルコール類による(S)-IOBAのジアステレオマーアミド若しくはエステルへの変換とLCによるee%の測定である。
【0084】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、本方法はさらに、段階(iv)からの生成物である(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を再結晶させる段階(v)を含む。再結晶化又は再結晶は、所望の化合物及び任意の不純物を適切な溶媒に溶解させるプロセスである。次に、所望の化合物が沈澱し(再結晶し)、任意の不純物は溶媒中に残る。
【0085】
再結晶される化合物は、好ましくは、溶媒に、好ましくは沸騰温度の溶媒に、その化合物を完全に溶解させるのに丁度ほぼ十分な量で溶解させる。次に、溶媒を冷却して、所望の生成物の沈澱物が形成できるようにすることがさらに好ましい。所望の化合物である(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4-Hイソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の分離は、例えば、段階(ii)に関して上述した方法に従って実施することができる。
【0086】
再結晶に適切な有機溶媒は、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、環状及び非環状アルキルエーテル類、クロロベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びこれらの組み合わせである。好ましいものは、非環状アルキルエーテル類、トルエン及び酢酸エチルである。
【0087】
本発明の好ましい実施形態及び/又は本方法のその実施形態においては、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(4)
【化9】
で表される化合物とさらに反応させて、式(3)
【化10】
で表される(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-N-[2-オキソ-2-(2,2,2-トリフルオロエチルアミノ)エチル]-2-メチル-ベンズアミドを与える。
【0088】
好ましくは、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び式(4)によるアミンを、カップリング剤の存在下に有機溶媒中で対応するアミド基を形成するようにすることができる。カップリング剤は、好ましくは、エステル又はアミドの形成を促進する物質である。そのカップリング剤は、反応性中間体を形成することでカルボキシ基と反応し、それは次に、アルコール又はアミンとさらに反応して、最終生成物、即ち、エステル又はアミドを形成する。適切なカップリング剤は、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル(etyhl)-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)又はカルボニルジイミダゾール(CDI)であることができる。
【0089】
適切な有機溶媒は、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びDMFであることができる。
【0090】
或いは、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、好ましくは、塩化チオニル若しくは塩化オキサリル、好ましくは、塩化チオニルと反応させて対応する酸塩化物を形成させることができる。次に、対応する酸塩化物を、好ましくは、有機溶媒、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム又はジクロロメタン中、式(4)によるアミンと反応に付すことができる。さらに、当該酸塩化物と式(4)によるアミンとの反応は、好ましくは、補助アルカリ化合物の存在下で実施する。適切なアルカリ化合物は、例えば、ピリジン、及び、アミン類、例えばトリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミン、好ましくは、ジイソプロピルエチルアミンである。
【0091】
本発明のさらなる対象は、式(1a)
【化11】
で表される(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(1)
【化12】
で表される(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸から調製する方法であり、ここで、該方法は、
(i)(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(2A)、(2B)又は(2C)
【化13】
〔式中、Rは、1個又は2個の炭素原子を有するアルキルである〕、
【化14】
【0092】
〔式中、Xは、Cl又はBrである〕
で表される化合物と、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール及び1-ヘキサノールから選択される有機溶媒中で反応させて、沈澱物及び上清溶液を形成させる段階;
(ii)段階(i)からの沈澱物を上清溶液から分離させる段階;
(iii)段階(ii)からの沈澱物を酸性水溶液で処理する段階;及び、
(iv)(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、段階(iii)の酸性水溶液から分離させる段階;
を含む。
【0093】
好ましい実施形態に関する限り、上記と同じことが当てはまる。
【0094】
本発明のさらなる対象は、式(1a)
【化15】
で表される(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(1)
【化16】
で表される(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸から調製する方法であり、ここで、該方法は、
(i)(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を、式(2A)、(2B)又は(2C)
【化17】
〔式中、Rは、1個又は2個の炭素原子を有するアルキルである〕、
【化18】
【0095】
〔式中、Xは、Cl又はBrである〕
で表される化合物と、180~230kJ/molの極性E
T(30)を有する第1の有機溶媒中で反応させて沈澱物及び上清溶液を形成させる段階;
(ii)段階(i)からの沈澱物を上清溶液から分離させる段階;
(iii)任意に、段階(ii)からの沈澱物を酸性水溶液で処理する段階;及び、
(iv)任意に、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を段階(iii)の酸性水溶液から分離させる段階;
(v)任意に、段階(iv)からの生成物である(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を再結晶させる段階;
(vi)前記上清溶液を、第2の有機溶媒中でアルカリ化合物と反応させる段階;
を含む。
【0096】
(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(S-IOBA)の沈澱後、上清は、式(1b)による(R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸(R-IOBA)及び式(1a)による(S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸(S-IOBA)の混合物となる。
【化19】
【0097】
ほとんどの場合、上清は、(R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)]-2-メチル-安息香酸(R-IOBA)富化になる。
【0098】
本発明による方法及び/又はそれのいずれかの実施形態の段階(vi)において、式(1a)による(R)-IOBA及び式(1b)による(S)-IOBAを含む混合物を、有機溶媒中でアルカリ化合物と反応させる。この反応は、混合物をラセミ化させ、(R)-IOBAのエナンチオマー過剰率をより低値の方にシフトさせる。ラセミ化は、ラセミ体の文字通りの意味であるエナンチオマー値を0にシフトするものと厳密には考えられない。
【0099】
アルカリ化合物は、有機又は無機アルカリ化合物であることができる。
【0100】
有機アルカリ化合物の例は、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-e及び2-tert-ブチルイミノ(btuyimino)-2-ジエタールアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン及びこれらの混合物である。
【0101】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)におけるアルカリ化合物は無機化合物である。
【0102】
適切な無機アルカリ化合物の例は、アルカリ若しくはアルカリ土類リン酸塩、アルカリ若しくはアルカリ土類炭酸塩、アルカリ若しくはアルカリ土類水素炭酸塩、アルカリ若しくはアルカリ土類水酸化物、アルカリ若しくはアルカリ土類酸化物又はそれの混合物である。
【0103】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)におけるアルカリ化合物は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、炭酸セシウム及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。好ましいものは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化バリウム及びこれらの混合物である。
【0104】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)におけるアルカリ化合物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0105】
段階(vi)で使用するのに適切なさらなるアルカリ化合物は、アルカリ又はアルカリ土類アルコラートである。適切な例は、ナトリウムメタノレート、カリウムメタノレート、ナトリウムエタノレート、カリウムエタノレート、ナトリウムtert-ブチレート及びカリウムtert-ブチレート及びこれらの混合物である。
【0106】
本方法の段階(vi)は、第2の有機溶媒中で実施する。
【0107】
適切な第2の有機溶媒は、例えば、水、アルコール類、例えば、プロパノール、環状エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン、脂肪族エステル類、例えば、酢酸エチル、置換されていないか置換されているアレン類、例えば、ベンゼン及びトルエンである。
【0108】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、第2の有機溶媒は、水、1~5個の炭素原子を有するアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、酢酸エチル及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、水、2~5個の炭素原子を有するアルコール、ジオキサン、トルエン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0109】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)における第2の有機溶媒は、1~5個の炭素原子を有するアルコールである。当該アルコールは、好ましくは、モノアルコールであり、即ち、有機溶媒は水酸基1個のみを有する。前記第2の有機溶媒はヒドロキシ官能基のみを有することがさらに好ましい。即ち、そのアルコールは、(1個の)ヒドロキシ基を別として他の官能基を全く持たない。さらに、第2の有機溶媒として使用される1~5個の炭素原子を有するアルコールは、水素、酸素及び炭素原子のみを含む。適切には、当該アルコールは、それ以上置換されていない。
【0110】
有機溶媒として使用される1~5個の炭素原子を有するアルコールの例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、シクロブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、シクロペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール及びこれらの混合物である。
【0111】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、前記第2の有機溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される1~5個の炭素原子を有するアルコールである。より好ましくは、第2の有機溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される2~5個の炭素原子を有するアルコールである。
【0112】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)における第2の有機溶媒は、段階(i)の180~230kJ/molの極性ET(30)を有する第1の有機溶媒と同じである。
【0113】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒はエタノールである。
【0114】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒はエタノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化ナトリウムである。
【0115】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒はエタノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化カリウムである。
【0116】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒はエタノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化セシウムである。
【0117】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒はエタノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化カルシウムである。
【0118】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒はエタノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化バリウムである。
【0119】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒はエタノールであり、そして、アルカリ化合物は酸化バリウムである。
【0120】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)における前記第2の有機溶媒は1-プロパノールである。
【0121】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化ナトリウムである。
【0122】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化カリウムである。
【0123】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化セシウムである。
【0124】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化カルシウムである。
【0125】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化バリウムである。
【0126】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は1-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は酸化バリウムである。
【0127】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)における前記第2の有機溶媒は2-プロパノールである。
【0128】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化ナトリウムである。
【0129】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化カリウムである。
【0130】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化セシウムである。
【0131】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化カルシウムである。
【0132】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は水酸化バリウムである。
【0133】
本発明の特に好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)では前記第2の有機溶媒は2-プロパノールであり、そして、アルカリ化合物は酸化バリウムである。
【0134】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、式(1b)による(R)-IOBA及び式(1a)による(S)-IOBAを含む混合物のアルカリ化合物に対するモル比は、1:1~1:10、より好ましくは、1:2~1:8、特には、1:3~1:6、特別には、約1:4.5である。
【0135】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)は高温で行われる。高温は、23℃(室温)から有機溶媒の沸点までの温度である。本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(i)は有機溶媒の沸点で行われる。本明細書で示され、沸点若しくは複数の沸点に関係する全ての温度が、101kPaの常圧で測定された温度に関する。
【0136】
さらに、段階(vi)の反応には、好ましくは、撹拌若しくは超音波処理のような機械的運動に付すことができる。
【0137】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)の期間は、30分~48時間、好ましくは、2時間~36時間、特には、4時間~24時間であることができる。
【0138】
本発明の好ましい実施形態及び/又はその実施形態において、段階(vi)は、相間移動触媒の非存在下で実施する。相間移動触媒は、一つの相から反応が起こる別の相への反応物の移動を促進する物質と見なすことができる。相間移動触媒は、不均一触媒と見なすこともできる。相間移動触媒は反応混合物及び/又は所望の生成物から除去するのが困難である場合が多いことから、相間移動触媒を用いずに実施することができる反応が有利である。
【0139】
次に、段階(vi)後に得られた結果的な混合物を、本発明によるいずれかの方法及び/又は段階(i)におけるそれのいずれかの実施形態で再度用いることができる。このようにして、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の収率を高めることができる。さらに、段階(vi)により、望ましくない生成物(5R)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸のリサイクルが可能となる。
【0140】
以上、本発明の特徴を本願の実施形態で説明したが、簡潔さのため、特徴の全ての組み合わせを文字通り記載しているわけではない。しかしながら、上記の特徴の組み合わせは、本発明の一部であると明瞭に考えられる。
【0141】
以下、下記の非限定的な実施例によって本発明についてさらに説明する。収率は、原料内の(S)-IOBAの割合に基づいて計算される。(S)-IOBAのこの量は収率100%を表す。
【実施例】
【0142】
実験の部
I. 先行技術の再現
I.1 JP05679102の実施例1
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2.09g;5.0mmol)、トルエン(10g)及び酢酸エチル(5g)を入れ、54℃で撹拌した。それに、(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン((S)-1-フェニルエチルアミン;0.304g;2.5mmol)を加えたところ、数秒以内で沈澱が開始した。反応混合物を、撹拌下で1時間以内に4℃まで冷却した。得られた固体を、減圧下に濾過することで回収した。トルエン/酢酸エチル5:1(5mL)で洗浄した後、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン1:1のジアステレオマー塩を白色固体として得た。
収量:1.12g。
エナンチオマー過剰率(ee):76%
【0143】
I.2 JP05679102の実施例4
上記のJP05679102の実施例1から得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン1:1のジアステレオマー塩(0.5g)に、酢酸エチル(10mL)及びトルエン(15mL)を加えた。それに、希塩酸(精製水(3mL)及び35%塩酸(0.53g))を加え、混合物を40℃まで5分間昇温させた。相を分離し、有機相を希塩酸(精製水(3mL)及び35%塩酸(0.53g))で洗浄し、次に精製水(3mL)で洗浄した。次に、有機溶媒を有機相から減圧下に蒸留し、残留物を真空乾燥して、非晶質物質4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸を得た。
収量:0.42g。
エナンチオマー過剰率(ee):77%。
【0144】
結論:
JP05679102の実施例1において、(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸及び(L)-(-)-α-フェニルエチルアミン1:1のジアステレオマー塩のエナンチオマー過剰率は丁度76%であることから、先行技術で引用されたもの(90%ee)より有意に低かった。JP05679102の実施例4で得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸のエナンチオマー過剰率(82%ee)にも同じことが当てはまる。
【0145】
JP05679102で報告されている収率は、再現することができなかった。
【0146】
I.3 WO2014/090918の実施例2
WO2014/090918によるイソオキサゾリンチオフェンカルボン酸(IOTA)に代えてラセミ体IOBAを用い、それより少量として、WO2014/090918の実施例2を再度行った。
【0147】
2-ブタノール(4.631mL)、アセトニトリル(18.881mL)及び水(0.987mL)からなる三元溶媒混合物を調製した。(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2g、4.78mmol)を撹拌下に溶解させた。(R)-(+)-1-(4-メチルフェニル)エチルアミン(0.358mL、2.433mmol)の2-ブタノール(0.515mL、5.63mmol)、アセトニトリル(2.110mL、40.6mmol)及び水(0.110mL、6.11mmol)からなる三元混合物中溶液を調製し、IOBAの溶液に加えた。その混合物を撹拌下に60~65℃まで120分間加熱した。撹拌機を停止し、溶液を終夜かけて冷却して室温とした。結晶の形成は観察されなかった。
【0148】
溶媒を留去し、残留物を真空乾燥させた。材料をアセトニトリル(20mL)に懸濁させ、加熱して70℃とした。2-ブタノール(4mL)及び水(3.4mL)を連続で加え、その間反応混合物を加熱して70℃とした。水全量を加えた後、透明溶液となった。混合物を冷却し、2日間放置した。
【0149】
固体材料床が形成された。その固体を撹拌下に上清に懸濁させ、さらなる材料を沈澱させた。固体の沈澱が停止した後、その材料を回収し、アセトニトリル/水9:1で洗浄し、終夜真空乾燥した。固体の重量は610mgであった。
【0150】
硫酸水素カリウムによる酸性後処理及び酢酸エチルでの抽出後に、上清並びに固体のサンプルをキラルLCによって分析した。キラルLC分析により、両方のサンプル中に等量の(S)-IOBA及び(R)-IOBAが存在し、エナンチオマー過剰率が全くないことが明らかになった。IOTAエナンチオマーの分離に関してWO2014/090918で適用された条件は、IOBAの場合、(S)-IOBAの生成には有用ではない。
【0151】
II.本発明によるスクリーニング例
II.1 (5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸の一般的合成手順
段階(i)
(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(173mg)の対応する溶媒A、B、C及びD中の2.1mL溶液を調製した。混合物を撹拌し、必要な場合は固体が溶解するまで緩やかに加熱した。4×4バイアル(4行、4列)の反応ブロックに等量の溶液(500μL)A、B、C及びDを入れた;一種類の溶液/行。対応する無希釈キラル塩基1、2、3及び4(0.6当量)を加え(1個の塩基/列)、混合物を75℃まで加熱しながら10分間撹拌した。その後、反応混合物を撹拌下に冷却して室温とした。
【0152】
段階(ii)
沈澱物を含む段階(i)の反応混合物から、上清溶液を濾過若しくは遠心によって分離した。回収した無色固体を対応する溶媒で洗浄し、懸濁液を再度濾過又は遠心した。次に、得られた固体を終夜乾燥させた。
【0153】
段階(iii)
乾燥固体材料を酢酸エチルに懸濁させ、得られた懸濁液に水及び硫酸水素カリウムを入れ二相系が得られ、水相は約1のpHを有していた。全ての固体材料が溶解するまで、その二相を混合した。
【0154】
段階(iv)
その二相系の有機(酢酸エチル)相を分離した。二相系の水相を、酢酸エチルで2回抽出した。有機相を合し、溶媒を留去して無色材料を得た。
【0155】
得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、下記のエナンチオマー過剰率を有している。
【表1】
【0156】
表から分かる通り、得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、先行技術(JP05679102)と同等又は有意により高いエナンチオマー過剰率を示す。
【0157】
II.2 異なる当量のキラル塩基
段階(i)
二つの別個の(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2.32g、5.0mmol)のそれぞれ12.5mLの1-ブタノール及び1-ペンタノール中溶液を、室温で三頸フラスコ中で調製した。(S)-1-フェニルプロパン-1-アミン(0.5g、3.7mmol、0.74当量)を各フラスコに加え、混合物を80℃まで20分間加熱させた。加熱を停止し、混合物を撹拌しながら3時間でゆっくり冷却して室温とした。得られた沈澱物を濾過し、その反応に用いた対応するアルコール6mLで2回洗浄した。残留物を40℃で真空乾燥した。
【0158】
段階(i)に記載の反応の繰り返し及び材料の単離。しかしながら、0.74当量のキラル塩基に代えて、0.5当量の(S)-1-フェニルプロパン-1-アミン(0.34g、2.5mmol)を用いた。
【0159】
段階(ii)
塩をEtOAc(30mL)に懸濁させ、KHSO4水溶液(15重量%、20mL)で洗浄した。有機相を分離した。水相をEtOAc(20mL)で再度抽出した。合した有機相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で脱水し、減圧下に濃縮した。残留物を高真空乾燥する。
【0160】
得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、下記のエナンチオマー過剰率及び収率を有する。
【表2】
【0161】
表からわかるように、得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、0.5当量又は0.74当量のキラル塩基を用いたかとは独立に、有利な高エナンチオマー過剰率を示しており、ただし、0.74当量のキラル塩基の方が、より高い収率を得た。
【0162】
II.3 他の溶媒
段階(i)
2本のガラスバイアルに、(5RS)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(41.8mg)を入れ、固体をそれぞれ1-ヘキサノール472μLに溶かした。混合物を撹拌し、固体が溶解するまで必要に応じて緩やかに昇温させた。対応する無希釈のキラル塩基(0.6当量)を加え(1個のバイアルに一つの塩基)、混合物を加熱下に75℃まで10分間撹拌した。その後、反応混合物を撹拌下に冷却して室温とした。
【0163】
段階(ii)~段階(iv)は、上記の段階(ii)~段階(iv)に対応する。
【0164】
得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、下記のエナンチオマー過剰率及び収率を有する。
【表3】
【0165】
表からわかるように、得られた(5S)-4-[5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸は、有利な高エナンチオマー過剰率を示しており、先行技術(JP05679102)より有意に高い。
【0166】
III. 実施例(大規模)
III.1:
250mL二頸フラスコに(5RS)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(10g、23.91mmol)及び2-プロパノール(60mL)を入れた。(S)-1-フェニルプロパン-1-アミン(2.064mL、14.35mmol)を、黄色溶液に加えた。その溶液をさらに10分間撹拌したら、材料が徐々に沈澱した。10分後、懸濁液を、撹拌下に15分間加熱還流した(82~83℃)。懸濁液を撹拌下にゆっくり冷却した。懸濁液が室温に達した時点で、撹拌を停止し、懸濁液を終夜熟成させた。材料を濾過し、フィルターケーキを2-プロパノールで洗浄した。濾液は保存した。
【0167】
フィルターケーキのサンプルをキラルLC-DADによって分析し、>95%のエナンチオマー過剰率(265nm)がわかった。
【0168】
フィルターケーキを減圧下に乾燥し、ここで、乾燥固体が得られた;量:5.737g;収率87%。
【0169】
固体材料を2-プロパノール200mLに懸濁させ、加熱還流した。2-プロパノール(50mL)を加えることで、82~83℃で透明溶液となった。加熱を切り、溶液を撹拌下に終夜にわたり冷却して室温とした。
【0170】
材料を濾過し、フィルターケーキを2-プロパノールで洗浄し、次に乾燥させて、乾燥固体5.145gを得た。サンプルをキラルLC-DADによって分析し、>99%のエナンチオマー過剰率(265nm)がわかった。
【0171】
300mLフラスコに、得られた(S)-IOBAのアンモニウム塩(5.145g)を入れた。固体を硫酸水素カリウムの水溶液(15重量%、6.72mL、17.14mmol)に懸濁させ、水50mLで希釈した。酢酸エチル150mLを加え、固体が完全に溶解するまで撹拌した。有機相を分離した。水相を酢酸エチル100mLで再度抽出した。合した有機相をブライン50mLで1回抽出し、MgSO4で脱水した。次に、脱水剤を除去した。溶媒留去後、(S)-IOBAが、エナンチオマー過剰率>99%で4.040gの量で単離された。
【0172】
III.2:
KPG撹拌ユニット(IKA RW-16ベーシック)及び還流冷却管を取り付けた1リットル三頸フラスコに、2-プロパノール(200mL)及び(5RS)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(100g、239mmol)を入れた。追加量の2-プロパノール(250mL)を加えた。全ての固体材料が溶解するまで混合物を撹拌した。(S)-1-フェニルプロパン-1-アミン(21mL、144mmol)を、1mL(第1)量及び20mL(第2)量で急速に約1分以内に注射器によって加えた。混合物を23℃(RT)でさらに撹拌した。5分後、固体材料が沈澱を開始し、75分後に溶液は粘稠懸濁液となった。次に、混合物を、さらに45分間にわたり、110℃の浴温で加熱還流した。加熱を切り、懸濁液を緩やかに撹拌しながら、冷却して室温とした。懸濁液を終夜にわたり撹拌状態とした。
【0173】
懸濁液を濾過し,無色フィルターケーキを再懸濁させ、2-プロパノール100mLで4回濾過した。フィルターケーキを終夜乾燥させて、量を測定し、材料のエナンチオマー過剰率を求めるための分析サンプルを採った。
【0174】
固体材料の量:57.065(収率:86.3%);エナンチオマー過剰率:95%。
【0175】
固体材料を2-プロパノール1300mLに懸濁させ、撹拌下に1時間加熱還流した。次に、懸濁液を、終夜にわたり撹拌下に冷却して23℃とした。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを2-プロパノール100mLに再懸濁させ、再度濾過し、デシケータで終夜真空乾燥した。固体(S)-IOBAアンモニウム塩(53.766g)のエナンチオマー過剰率は>97%であった。
【0176】
そのアンモニウム塩(53.766g)を酢酸エチル(500mL)に懸濁させた。その懸濁液に水(260mL)及び硫酸水素カリウム水溶液(15重量%、130mL、332mmol)を入れた。固体材料全てが溶解するまで(約20分)、二相系を撹拌した。水層はpH=1を有していた。相を分離し、有機相をブライン(50mL)で洗浄した。ブライン層は廃棄した。水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機層のそれぞれをブライン(25mL)で洗浄した。有機相を合し、MgSO4で脱水した。次に、脱水剤を除去した。溶媒留去後に、無色泡状物を得た。その無色泡状物をMeOH(120mL)に溶かした。その溶液を加熱還流した。溶液を加熱及び撹拌下に維持しながら、水(60mL)を加えた。水を最後に加えた後、白濁が生じた。その微細固体材料を、MeOH(10mL)をゆっくり加えることで再度溶解させた。透明溶液を、終夜撹拌しながらゆっくり冷却した。得られた懸濁液を濾過し、フィルターケーキを乾燥させた。
【0177】
得られた(S)-IOBA(41.1g;収率86%)は、97.3%のエナンチオマー過剰率を有する。
【0178】
III.3:
50mL三頸フラスコに、(5RS)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2.323g、5.0mmol)及び1-ブタノール(12.5mL)を入れた。反応混合物を23℃で撹拌した。得られた黄色溶液に(S)-1-フェニルエタン-1-アミン(0.453g、3.74mmol)を加え、白色固体の沈澱が開始した。5分後、懸濁液を最初に65℃まで15分間加熱し、次に80℃まで20分間加熱した。加熱を停止し、2時間以内に、懸濁液をゆっくり冷却して35℃とし、さらに2時間以内で23℃とした。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを1-ブタノール(6mL)で2回洗浄し、次に40℃で真空乾燥して、対応するアンモニウム塩を得た。
【0179】
アンモニウム塩のサンプルをキラルLC-DADによって分析した。(S)-IOBAは、96%のエナンチオマー過剰率を有していた。
【0180】
得られたアンモニウム塩(1.09g)を酢酸エチル(30mL)に懸濁させ、硫酸水素カリウム水溶液(15重量%水溶液、20mL)で洗浄し、有機相を分離した。水相を酢酸エチル(20mL)で抽出し、合した有機相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で脱水した。次に、脱水剤を濾去し、溶媒を減圧下に濃縮した。最後に、残留物を高真空乾燥して、96%eeを有する(S)-IOBAを得た。
【0181】
収量0.82g(78%)。
【0182】
III.4
50mL三頸フラスコに(5RS)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル]-2-メチル-安息香酸(2.323g、5.0mmol)及び1-ブタノール(12.5mL)を入れた。反応混合物を23℃で撹拌した。得られた黄色溶液に、(S)-1-フェニルプロパン-1-アミン(0.538mL、3.70mmol)を加え、白色固体の沈澱が開始した。その撹拌懸濁液を20分以内で80℃に加熱し、次にさらに20分間にわたりその温度に維持した。加熱を停止し、2時間以内に、懸濁液をゆっくり冷却して35℃とし、さらに2時間以内で21℃とした。懸濁液を濾過し(フリット番号4)、フィルターケーキを1-ブタノール(6mL)で2回洗浄し、次に40℃で真空乾燥して、対応するアンモニウム塩(1.23g)を得た。
【0183】
アンモニウム塩のサンプルをキラルLC-DADによって分析した。(S)-IOBAは、98%のエナンチオマー過剰率を有していた。
【0184】
得られたアンモニウム塩(1.09g)を酢酸エチル(30mL)に懸濁させ、硫酸水素カリウム水溶液(15重量%、20mL)で洗浄し、有機相を分離した。水相を酢酸エチル(20mL)で抽出し、合した有機相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で脱水した。次に、脱水剤を濾去し、溶媒を減圧下に濃縮した。最後に、残留物を高真空乾燥して、98%のエナンチオマー過剰率を有する(S)-IOBAを得た。
【0185】
収量0.92g(84%)。
【0186】
III.5
冷却管及び温度計を取り付けたフラスコに、2-プロパノール(12.5mL)及び水(0.85mL)を入れた。固体の水酸化カリウム(0.671g、11.96mmol)を溶媒に溶かし、87.2%eeを有する(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(1g、2.391mmol)を23℃(室温)で加えた。混合物を80℃に加熱した。
【0187】
50μLサンプルを1時間後、2時間後及び16時間後にそれぞれ採取して、ラセミ化度の測定に供した。各サンプルは次のように処理した。即ち、それをKHSO4溶液(1mL、2.3M)で反応停止し、酢酸エチルで2回抽出した(2mLで1回及び1mLで1回)。合した有機相を減圧下で濃縮した。残留物をオイルポンプ真空下で乾燥させ、i-ヘキサン:エタノール1:1の混合物(1mL)に溶かした。
【0188】
得られた(R)-IOBAは、1時間後で84.8%、2時間後で84.5%、16時間後で64%のエナンチオマー過剰率を有していた。
【0189】
III.6
冷却管及び温度計を取り付けたフラスコに、2-プロパノール(6.67mL)を入れ、86.4%eeを有する(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(1g、2.391mmol)を溶かした。水酸化ナトリウム(0.393g、9.83mmol)マイクロパールを40℃で加え、混合物を加熱還流することで、黄色懸濁液が得られた。
【0190】
50μLサンプルを2時間後、4時間後及び20時間後にそれぞれ採取して、ラセミ化度の測定に供した。各サンプルは実施例1に記載の方法に従って処理した。
【0191】
得られた(R)-IOBAは、2時間後で62.4%、4時間後で35.0%及び20時間後で31.8%のエナンチオマー過剰率を有していた。
【0192】
III.7
1mL円錐形バイアル中、>99%eeを有する(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(50mg、0.120mmol)の2-プロパノール(299μL)中溶液を、水酸化カリウムの2-プロパノール溶液(20.38μL、0.359mmol)とともにインキュベートした。混合物を90℃に終夜加熱した。
【0193】
反応混合物100μLのサンプルを濃縮して固体とし、KHSO4水溶液(15%)2mLで希釈し、酢酸エチル1~2mLで抽出した。有機相を分離し、濃縮した。得られた油状物を真空乾燥し、i-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)に溶かした。この溶液から、250μLをi-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)で希釈し、キラルLC-DADによって分析した。得られた(R)-IOBAは、56.47%のエナンチオマー過剰率を有していた。
【0194】
III.8
1mL円錐形バイアル中、>99%eeを有する(R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(50mg、0.120mmol)の2-プロパノール(299μL)中溶液を、水酸化セシウムの2-プロパノール溶液(66.8μL、0.359mmol)とともにインキュベートした。混合物を90℃に終夜加熱した。
【0195】
反応混合物100μLのサンプルを濃縮して固体とし、KHSO4水溶液(15%)2mLで希釈し、酢酸エチル1~2mLで抽出した。有機相を分離し、濃縮した。得られた油状物を真空乾燥し、i-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)に溶かした。この溶液から、250μLをi-ヘキサン:エタノール1:1(1mL)で希釈し、キラルLC-DADによって分析した。得られた(R)-IOBAは、27.76%のエナンチオマー過剰率を有していた。
【0196】
III.9
フラスコに冷却管及び温度計を取り付けた。そのフラスコに、2-プロパノール(6.67mL)を入れ、粉末水酸化カリウム(0.671g、11.96mmol)を溶媒に溶かし、87.2%eeを有する(5R)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(1g、2.391mmol)を40℃で加えた。混合物を加熱還流した。透明橙赤色溶液が形成された。しばらくしてから、黄色固体材料が沈澱した。懸濁液をさらに加熱還流した。2時間後、懸濁液の50μLサンプルを実施例II.1に記載の方法に従って後処理した。得られた(R)-IOBAは、0.8%のエナンチオマー過剰率を有していた。
【0197】
実施例5~9からわかるように、得られた生成物に含まれる(R)-IOBAの過剰は低下する。従って、出発混合物をラセミ化することで、(S)-IOBAのモル比が上昇すると結論付けることができる。
【0198】
III.10
KPG撹拌ユニット(IKARW-16ベーシック)及び還流冷却管を取り付けた1リットル三頸フラスコに、2-プロパノール(200mL)及び(5RS)-4-(5-(3,5-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-4H-イソオキサゾール-3-イル)-2-メチル安息香酸(100g、239mmol)を入れた。追加の2-プロパノール(250mL)を加えた。固体材料が全量溶解するまで混合物を撹拌した。(S)-1-フェニルプロピルアミン(21mL、144mmol)を、注射器によって、1mL(初回)量及び20mL(2回目)量で一気に加えた。
【0199】
混合物を室温で75分間さらに撹拌し、その後に懸濁液が形成された。混合物を還流温度で45分間撹拌した。加熱を切り、懸濁液を撹拌下にゆっくり冷却して室温とした。
【0200】
懸濁液を濾過し、得られた無色フィルターケーキを2-プロパノール100mLで4回洗浄した。フィルターケーキを減圧下に終夜乾燥させた。
【0201】
単離された(S)-IOBA-(S)-1-フェニルプロピルアンモニウム塩の量:57.065g(収率:86.3%)。アンモニウム塩のサンプルのキラルLC分析により、エナンチオ富化(S)-IOBAが95%のエナンチオマー過剰率を有することが示された。材料のエナンチオマー過剰率をさらに高めるため、アンモニウム塩を2-プロパノール(1300mL)に懸濁させ、撹拌下に1時間加熱還流させた。
【0202】
懸濁液を、撹拌下に室温まで終夜で冷却した。固体材料を濾過し、2-プロパノール(100mL)で洗浄した。フィルターケーキを終夜真空乾燥して、>97%のエナンチオマー過剰率を有する(S)-1-フェニルプロピルアンモニウム(S)-IOBA塩53.766gを得た。母液は(S)-及び(R)-IOBAを含む。それらは、次のリサイクル段階に供した。
【0203】
リサイクル段階:
結晶化段階からの回収上清及び洗浄溶液を、濃縮して400mLとした。エナンチオ富化(R)-IOBA溶液(ほぼ142mmol(S)/(R)-IOBA含有)に粉末水酸化カリウム(27.916g、498mmol)を加え、撹拌下に加熱還流した。反応混合物からサンプルを採り、キラルLCによって分析して、(R)-IOBAの残りのエナンチオマー過剰率を求めた。(R)-IOBAの残留エナンチオマー過剰率が2.4%に達した時点で加熱を停止した。
【0204】
溶媒を留去し、残ったIOBA塩に水300mLを加えた。撹拌下に濃H2SO4(13.3mL)の水溶液(水65mL)を加えた。得られた水系懸濁液を、追加量の濃H2SO4(3.8mL)の水溶液(水18.5mL)でpH=2とした。得られた水系懸濁液を酢酸エチルで連続的に抽出した(200mLで1回及び100mLで2回)。回収した有機相をブラインで洗浄し(100mLで2回)、MgSO4で脱水した。濾過後、有機溶媒を留去して、リサイクルIOBAを固体材料として得た。乾燥後のIOBAの量:53g、7重量%酢酸エチルを含有。