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特許7668265炭素に埋め込まれたコバルトナノ粒子を含む材料、それらの製造方法、及び不均一系触媒としての使用
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  • 特許-炭素に埋め込まれたコバルトナノ粒子を含む材料、それらの製造方法、及び不均一系触媒としての使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】炭素に埋め込まれたコバルトナノ粒子を含む材料、それらの製造方法、及び不均一系触媒としての使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/75 20060101AFI20250417BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20250417BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20250417BHJP
   B01J 37/32 20060101ALI20250417BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 9/02 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 31/02 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 29/156 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 33/18 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 67/303 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 209/60 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 211/07 20060101ALI20250417BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20250417BHJP
   C01G 51/04 20250101ALI20250417BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250417BHJP
【FI】
B01J23/75 Z
B01J23/889 Z
B01J37/08
B01J37/32
B01J37/00 F
C07C1/04
C07C1/12
C07C9/02
C07C11/02
C07C31/02
C07C29/156
C07C33/18
C07C67/303
C07C69/24
C07C209/60
C07C211/07
C07C211/27
C01G51/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022514963
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2020074523
(87)【国際公開番号】W WO2021043858
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】19195500.4
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーネ ラインスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ドーリト ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】レナート カディロフ
(72)【発明者】
【氏名】サラ ハムスキー
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-019332(JP,A)
【文献】特開2016-081839(JP,A)
【文献】国際公開第2019/020086(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105032424(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102125844(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106311237(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109305876(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109304177(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109305880(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
C01G 51/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難黒鉛化性炭素のグレインを、それらの中に分散されたコバルトナノ粒子と共に含む、触媒活性材料であって、
、前記難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子の平均直径は、1nm~20nmの範囲内であり、
D、前記難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子間の平均距離は、2nm~150nmの範囲内であり、かつ
ω、前記難黒鉛化性炭素グレインにおける金属の合計した全質量分率は、前記難黒鉛化性炭素グレインの全質量の30重量%~70重量%の範囲内であり、
及びDは、TGZ-TEMにより測定され、
かつ
、D及びωは、以下の関係:
4.5d/ω>D≧0.25d/ω
に従い、
前記触媒活性材料が、有機化合物の水素化、カルボニル化合物の還元的アミノ化及び/又は有機化合物のヒドロホルミル化用の触媒である、前記触媒活性材料。
【請求項2】
前記難黒鉛化性炭素グレインが、以下の粒子サイズ分布:d10=5μm、d50=40μm、d90=150μmを示す、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記難黒鉛化性炭素グレインにおける窒素の全質量分率が、前記難黒鉛化性炭素グレインの全質量の1重量%未満である、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
が1nm~10nmの範囲内である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
が2nm~6nmの範囲内である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
前記材料が、ドーパント金属でドープされており、
かつ前記ドーパント金属が、Mn、Cu又はそれらの混合物から選択され、
かつ前記難黒鉛化性炭素グレインが、2~15の範囲内のモル比=n(コバルト)n(ドーパント金属)を示す、請求項1から5までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
Cuの全質量分率が、前記難黒鉛化性炭素グレインの全質量の10-4重量%未満である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の材料の製造方法であって、以下の工程:
(a)金属前駆物質と有機炭素源とを含む水溶液を用意する工程、
ここで、前記金属前駆物質が、有機の、少なくとも部分的に水溶性の、コバルトの塩の1種又は1種を超える組合せを含み、かつ
前記有機炭素源が、飽和の、脂肪族ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はポリカルボン酸の1種又は1種を超える組合せであり、
(b)前記の金属前駆物質と有機炭素源との水溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥し、かつ、こうして、中間生成物Pを得る工程、
(c)中間生成物Pを200℃~380℃の範囲内の温度で熱処理する工程
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記有機炭素源が、マロン酸、酒石酸、クエン酸及びそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
中間生成物Pを、255℃~375℃の範囲内の温度で1~4時間、熱処理する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
中間生成物Pを、300℃~350℃の範囲内の温度で1~4時間、熱処理する、請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
触媒としての請求項1から7までのいずれか1項に記載の材料の使用であって、
前記触媒が、有機化合物の水素化、カルボニル化合物の還元的アミノ化及び/又は有機化合物のヒドロホルミル化用の触媒である、前記使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難黒鉛化性炭素のグレインを、それらの中に分散されたコバルトナノ粒子と共に含む、材料に関する。本発明による材料は、多様な化学反応において触媒活性であり、かつ平易な手順により得ることができる。
【0002】
本発明の炭素相は、主として非晶質であり、かつ活性炭、カーボンブラック、黒鉛、黒鉛化カーボンブラック又はパラクリスタリン炭素ではないようである。
【0003】
従来技術
従来技術のかなりの労力は、特に触媒活性を有する遷移金属ナノ粒子を含めた、遷移金属ナノ粒子を合成することに向けられている。しかしながら、ナノ粒子それ自体は、たいていの不均一系触媒による方法において使用することができないので、適した担体、基板又はウェーハに付着された遷移金属ナノ粒子を含有する材料を開発する、さらなる努力が行われた。このための従来技術のアプローチは、主に、多孔質又はメソポーラスの担体上への金属前駆物質の含浸又は化学蒸着(Sietsma, Jelle R. A., et al.“Highly active cobalt-on-silica catalysts for the fischer-tropsch synthesis obtained via a novel calcination procedure.” Studies in Surface Science and Catalysis (2007);Van Deelen, T. W., et al.“Assembly and activation of supported cobalt nanocrystal catalysts for the Fischer-Tropsch synthesis.” Chemical Communications (2018))又はそれらの金属種について明確に定義された配位子を使用し、かつ高温処理を適用すること(Westerhaus, Felix A., et al.“Heterogenized cobalt oxide catalysts for nitroarene reduction by pyrolysis of molecularly defined complexes” Nature Chemistry (2013);Banerjee, Debasis, et al.“Convenient and Mild Epoxidation of Alkenes Using Heterogeneous Oxide Catalysts” Angewandte Chemie, International Edition (2014))に基づいていた。しかしながら、ナノ粒子と担体との相互作用は、かなりの制限をまねくことが見出された(Oschatz, M., et al.“Effects of calcination and activation conditions on ordered mesoporous carbon supported iron catalysts for production of lower olefins from synthesis gas” Catalysis Science & Technology (2016))。特に、従来技術の手順は、高い金属含有率との組合せでの遷移金属/金属酸化物ナノ粒子の高分散及び一様な配位を示す材料を生じることができなかった。たいていの従来技術の遷移金属ナノ粒子材料は実際、クラスター化の結果としての20重量%未満のどちらかと言えば低い活性金属濃度及びより高い金属濃度での金属粒子の分散の相応する損失を示す(Hernandez Mejia, Carlos, Tom W. van Deelen及びKrijn P de Jong.“Activity enhancement of cobalt catalysts by tuning metal-support interactions” Nature Communications (2018);Oschatz, M., et al.“Effects of calcination and activation conditions on ordered mesoporous carbon supported iron catalysts for production of lower olefins from synthesis gas.” Catalysis Science & Technology (2016))。高い金属含有率との組合せでの遷移金属/金属酸化物ナノ粒子の高分散及び一様な配位を示す材料が、現在入手できない一方で、そのような特性は、望ましいとみなされるという事実に照らして、高い触媒活性を有する材料を得るために、そのような材料並びにそれらの製造方法を提供する技術への需要がある。
【0004】
本発明は、所望の特性を示す材料及びそれらの製造のための平易な方法を提供する。
【0005】
本発明
本発明は、難黒鉛化性炭素のグレインを、それらの中に分散されたコバルトナノ粒子と共に含む、触媒活性材料に関するものであって、
ここで、
、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子の平均直径は、1nm~20nmの範囲内であり、
D、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子間の平均距離は、2nm~150nmの範囲内であり、かつ
ω、該難黒鉛化性炭素グレインにおける金属の合計した全質量分率は、該難黒鉛化性炭素グレインの全質量の30重量%~70重量%の範囲内であり、
及びDは、本明細書に記載されたとおりTGZ-TEMにより測定され、
かつ
、D及びωは、以下の関係:
4.5d/ω>D≧0.25d/ω
に従う。
【0006】
本発明による材料は、以下の工程:
(a)金属前駆物質と有機炭素源とを含む水溶液を用意する工程、
ここで、該金属前駆物質が、有機の、少なくとも部分的に水溶性の、コバルトの塩の1種又は1種を超える組合せを含み、かつ
該有機炭素源が、飽和の、脂肪族ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はポリカルボン酸の1種又は1種を超える組合せである、
(b)前記の金属前駆物質と有機炭素源との水溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥し、かつ、こうして、中間生成物Pを得る工程、
(c)中間生成物Pを200℃~380℃の範囲内の温度で熱処理する工程
を含む方法により得ることができる。
【0007】
本発明の基礎をなす研究の結果として、中に分散されたコバルトナノ粒子を有する難黒鉛化性炭素のグレインが、金属前駆物質と有機炭素源との水溶液から、
(i)該水溶液の噴霧乾燥又は凍結乾燥を、
(ii)工程(i)から得られた中間体の適度な温度での熱処理と
組み合わせることにより、得ることができることが見出された。
【0008】
その最終生成物は、多様な化学反応における触媒活性を示すことが見出された。本発明に関連して、触媒反応により自体が消費されることなく、化学反応の活性化エネルギーを低下させ、ひいては特定の温度でその速度を増大させる任意の材料又は物質は、触媒活性であるとみなされる。
【0009】
方法条件の変形及び得られた材料の調査により、請求の範囲に記載のとおりの方法条件及び材料特性が見出された。
【0010】
金属前駆物質と有機炭素源との水溶液をガラスビーカー中で形成し、かつこれらの溶液を一晩、乾燥器中でゆっくりと乾燥させることが、適度な温度での熱処理により、中に分散されたコバルトナノ粒子を有する難黒鉛化性炭素のグレインへ変換されることができる中間生成物を生じないことが見出された。具体的に言うと、該乾燥方法の実施がゆっくりすぎた場合に、ポリカルボン酸のかなりの分解及び二酸化炭素の形成が早く開始しすぎて、該炭素源の酸素官能基の早期の損失をまねくことが見出された。しかしながら、酸素官能基の早期の損失は、金属成分のアグロメレーション及び金属前駆物質及び炭素源の凝離と相関するように思われ、最終的に、該炭素マトリックス内の大きいサイズの金属クラスターの不規則分布を生じる。理論により縛られることを望むものではないが、こうして、該乾燥手順の一部の間に酸素含有官能基を十分に利用できることが、金属前駆物質を、高分散かつ規則的な方法で、該炭素源内で固定するのに本質的であるように思われることが明らかになる。
【0011】
さらに、200℃未満及び380℃超の温度での中間生成物Pの熱処理が、中に分散されたコバルトナノ粒子を有する本発明による難黒鉛化性炭素のグレインを生じないことが見出された。特に、本発明による難黒鉛化性炭素相自体の割合が、熱処理のために選択される温度が高すぎた場合に低下したことが見出された。しかしながら、これらの相は、推測すると好都合な水素伝導性に関連しており、この水素伝導性はそしてまた、水素の転化を包含する効率的に触媒する反応に本質的である。他方では、熱処理のために選択される温度が低すぎたか又は熱処理の期間が短すぎた場合には、得られる炭素相中の残留酸素のレベルが高すぎ、かつ金属前駆物質の減少が不完全なままであり、結果として低下された触媒活性をまねいた。
【0012】
そのうえ、従来技術を鑑みて、本発明の方法の結果として、本発明の難黒鉛化性炭素相の形成が驚くべきことであると思われうることに注目すべきである。しかしながら、理論により縛られることを望むものではないが、本発明の方法の低温条件下での難黒鉛化性炭素の形成が、続く熱処理の前の中間生成物P中に高分散された方法での金属前駆物質の高濃度の存在により促進されることが仮定される。
【0013】
本発明の方法は、粒状形の難黒鉛化性炭素材料を生じる(図1参照)。難黒鉛化性炭素は当業者により、TEM分析を使用して同定することができる(P.W. Albers, Neutron scattering study of the terminating protons in the basic structural units of non-graphitizing and graphitizing carbons, Carbon 109 (2016), 239-245, p.241、図1c参照)。
【0014】
本発明に関連して得られた実験結果は、本発明の方法により得られる材料の触媒活性が、本発明の特徴を示す難黒鉛化性炭素のグレインのその含有率と良好に相関することを示す。
【0015】
典型的には、本発明の方法により得られる難黒鉛化性炭素グレインの90%は、適切なサイズ、すなわち2μm~200μmの直径を示す。一般に、本発明の方法により得られる、それらの適度なサイズの難黒鉛化性炭素グレインの95%超が、関係4.5d/ω>D≧0.25d/ω(ここで、dは、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子の平均直径を表し、Dは、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子間の平均距離を表し、かつωは、該難黒鉛化性炭素グレインにおける金属の合計した全質量分率を表す)に従う、それらの中に分散されたコバルトナノ粒子を含有することが目下見出された。本発明の方法は、典型的には、グレインを生じ、ここで、極めて小さいグレインのフラクション及び極めて大きいグレインのフラクション、すなわち2μm~200μmの適切なサイズ範囲外の粒子フラクションのみが、グレインのかなりの部分を含有し、ここで、コバルトナノ粒子が、関係4.5d/ω>D≧0.25d/ωに従わない。それに応じて、本発明の方法は、一般に、コバルトナノ粒子を含有するグレインの高い含有率を有する材料を生じ、ここで、コバルトナノ粒子が、関係4.5d/ω>D≧0.25d/ωに従う。しかしながら、これらのグレインのより低い含有率を有する材料は、他の方法又は他の材料での希釈により得られうるものであり、こうして、同様に本発明により含まれる。
【0016】
それに応じて、好ましい実施態様において、本発明は、難黒鉛化性炭素のグレインをそれらの中に分散されたコバルトナノ粒子と共に含む、触媒活性材料に関するものであって、適度なサイズの難黒鉛化性炭素グレイン、すなわち2μm~200μmの直径を有する難黒鉛化性炭素グレイン90%超中のコバルトナノ粒子が、関係4.5dp/ω>D≧0.25dp/ωに従い、かつ、さらにdp、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子の平均直径が、1nm~20nmの範囲内であり、D、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子間の平均距離が、2nm~150nmの範囲内であり、かつω、該難黒鉛化性炭素グレインにおける金属の合計した全質量分率が、該難黒鉛化性炭素グレインの全質量の30重量%~70重量%の範囲内である。
【0017】
別の好ましい実施態様において、本発明は、難黒鉛化性炭素のグレインを、それらの中に分散されたコバルトナノ粒子と共に含む、触媒活性材料に関するものであって、適度なサイズの難黒鉛化性炭素グレイン、すなわち2μm~200μmの直径を有する難黒鉛化性炭素グレイン95%超中のコバルトナノ粒子が、関係4.5dp/ω>D≧0.25dp/ωに従い、かつ、さらにdp、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子の平均直径が、1nm~20nmの範囲内であり、D、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子間の平均距離が、2nm~150nmの範囲内であり、かつω、該難黒鉛化性炭素グレインにおける金属の合計した全質量分率が、該難黒鉛化性炭素グレインの全質量の30重量%~70重量%の範囲内である。
【0018】
本発明の難黒鉛化性炭素材料におけるコバルトナノ粒子は、主に元素コバルトから構成されるが、しかし、例えば、酸化コバルト及び/又はドーパント金属も含有していてよい。
【0019】
Degussa派生のTGZ法と結合されたTEM写真(TEM=透過型電子顕微鏡法)のコンピュータ支援分析は、個々のコバルトナノ粒子の直径並びにそれらのセットの統計的な尺度を決定することを可能にする(Parker et al. “The effect of particle size, morphology and support on the formation of palladium hydride in commercial catalysts” Chemical Science, 2019, 10, 480参照)。
【0020】
本発明に関連して、コバルトナノ粒子の平均直径、d、及び該平均距離Dは、以下において記載されるとおり、TGZ-TEM法により決定される:
1.試料調製
ほとんどの場合、試験されうる試料は、粉末として入手可能である。
【0021】
該粉末は、通常、超音波の適用下に溶剤中に分散される。前記の超音波の適用は、アグロメレートをアグリゲートへと崩壊させ、かつその結果は、アグリゲートとアグロメレートとの混合物よりもむしろアグリゲート分布である。ミクロピペットは、ついで、ろ紙1枚上にあるフィルムコーティングされた網上へ滴を落下させるのに使用される。過剰な液体は、該ろ紙を通じて素早く吸い取られるので、アグロメレート形成は、その乾燥方法により防止される。懸濁されたグレインは、密すぎてはいけない、なぜなら、該ナノ粒子の形状及び外形は、グレインの接触及び重なりを通してはっきりと見ることができないからである。最適な希釈は、希釈系列を用いる試験的な実験により決定しなければならない。
【0022】
一般に、製造の種類が、該一次ナノ粒子サイズ評価の結果にほとんど何の影響を及ぼさないことを述べることができる。
【0023】
2.該試験の実施
該TEM像に基づいて特性決定されうる個々のナノ粒子は、十分にシャープな輪郭で画像化されなければならない。
【0024】
該TEM像上で重なりがほとんどないか又はできる限り互いに分離されている粒子を有する密すぎない該ナノ粒子の分布は、該TGZ3での測定を容易にするが、しかし該測定結果に影響を及ぼさない。
【0025】
TEM標本の多様な像区域を調べた後に、適した領域がそれに応じて選択される。前記のそれぞれの試料について小さい、中程度及び大きいナノ粒子の比が代表的かつ特徴的であり、かつ小さい粒子又は大きい粒子の選択的な優先度がその操作者により与えられないことに注目すべきである。
【0026】
測定されうる一次ナノ粒子の総数は、該一次ナノ粒子サイズの散乱範囲に依存する:該散乱範囲が大きければ大きいほど、より多くの粒子を、十分な統計量を得るために測定しなければならない。金属触媒については、約1500個の単一粒子が測定される。全てのTGZ分析について、CCDカメラを備え、100keVで操作される校正されたHitachi H-7500フィールド透過型電子顕微鏡を使用した。
【0027】
3.測定手順の説明
該測定手順は、Carl ZEISSによるTGZ3マニュアル(“Teilchengroessenanalysator (particle size analyser) TGZ3”;Carl ZEISS社のマニュアル)に従って行われる。
【0028】
4.測定データ処理
該測定データ処理の詳細な説明は、(F. Endter u. H. Gebauer, “Optik (Optics)” 13 (1956), 97)及び(K. Seibold及びM. Voll, “Distribution function for describing the particle size distribution of Soot and pyrogenic oxides”. Chemiker-Zeitung, 102 (1978), No. 4, 131-135)に与えられている。
【0029】
統計的な要約は、報告の形でまとめられる。詳細な統計的な説明は、(Lothar Sachs, “Statistical methods”, 第5版, Springer-Verlag, Berlin (1982))に与えられている。
【0030】
5.結果の評価及び表示
a.粒子の総数(N)
b.1試料あたり1500個の単離されたナノ粒子の評価された粒子サイズ分布q0(x)及びq3(x)
c.粒径d、平均直径(d
【数1】
=直径dを有する粒子の数
d.直角平面上の平均距離D
【数2】
a、b=直角平面の長さ、幅
x、y、x、y=粒子座標。
【0031】
前記の金属の合計した全質量分率、ωは、前記の考慮される材料の全質量の、コバルト及び全てのドーパント金属の合計した全質量の分率として定義される:ω=(m(コバルト)+m(ドーパント金属))/m(材料);ここで、m(コバルト)=該材料中に元素状コバルト自体の形で及び/又はコバルトの任意の化合物の形で含まれる、元素の形のコバルトの全質量、m(ドーパント金属)=該材料中に元素状ドーパント金属自体の形で及び/又は該ドーパント金属の任意の化合物の形で含まれる、元素の形の全てのドーパント金属の合計した全質量、及びm(材料)=考慮される材料の全質量。
【0032】
前記の金属の合計した全質量分率、ωは、定量元素分析のためのあらゆる方法、特にXRF(蛍光X線)及びICP-AES(誘導結合プラズマ原子発光分光)によって決定することができる。
【0033】
本発明による方法における条件の適した選択は、得られる材料中で、前記の金属の合計した全質量分率、ωを制御することを可能にする:
工程(a)において、高い金属含有率(コバルト及びドーパント金属を合わせて)を有する溶液を用意する方法は、工程(a)においてより低い金属含有率を有する溶液を用意する方法よりも高い金属の合計した全質量分率、ωを有する材料を生じる。
【0034】
200℃~380℃の範囲内の高温での工程(c)における熱処理を伴う方法は、より低い温度での工程(c)における熱処理を伴う方法よりも高い金属の合計した全質量分率、ωを有する材料を生じる。
【0035】
本発明の方法は、粒状材料を生じる。この材料の個々の粒子のサイズ並びにそれらのセットの統計的な尺度は、当業者に周知の、レーザー回折分析(例えばCilas 1190 Series)によって決定することができる。
【0036】
典型的には、本発明の方法は、以下の粒子サイズ分布:d10=5μm、d50=40μm、d90=150μmを示す粒状材料を生じる。
【0037】
本発明による方法により得られる材料が、成形された触媒を製造するのに極めて適していることが見出されたという事実に照らして、好ましい実施態様において、本発明は、難黒鉛化性炭素のグレインを、それらの中に分散されたコバルトナノ粒子と共に含む、触媒活性材料に関するものであって、
、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子の平均直径が、1nm~20nmの範囲内であり、
D、該難黒鉛化性炭素グレイン中のコバルトナノ粒子間の平均距離が、2nm~150nmの範囲内であり、かつ
ω、該難黒鉛化性炭素グレインにおける金属の合計した全質量分率が、該難黒鉛化性炭素グレインの全質量の30重量%~70重量%の範囲内であり、
かつ
、D及びωが、以下の関係:
4.5d/ω>D≧0.25d/ω
に従い、
かつ
該難黒鉛化性炭素グレインは、以下の粒子サイズ分布:d10=5μm、d50=40μm、d90=150μmを示す。
【0038】
窒素の存在が有害である場合の本発明による材料のための用途がありうる。それに応じて、好ましい実施態様において、本発明は、本発明による材料に関するものであって、窒素の全質量分率が、該材料の全質量の1重量%未満である。
【0039】
実験結果は、(例1及び3参照)、比較的小さいコバルトナノ粒子を有する材料が、特に魅力的な触媒特性を有しうることを示す。それに応じて、好ましい実施態様において、本発明は、本発明による材料に関するものであって、dが、1nm~10nmの範囲内である。特に好ましい実施態様において、本発明は、本発明による材料に関するものであって、dが、2nm~6nmの範囲内である。
【0040】
実験結果により示されるように(例2、3及び4参照)、ドーパント金属の添加は、本発明の材料の触媒活性に影響を及ぼす。それに応じて、好ましい実施態様において、本発明は、本発明による材料に関するものであって、該コバルトナノ粒子が、ドーパント金属でドープされており、かつ該ドーパント金属が、Mn、Cu又はそれらの混合物から選択され、かつ該材料が、2~15の範囲内のモル比RDM=n(コバルト):n(ドーパント金属)を示す。特に好ましい実施態様において、本発明は、本発明による材料に関するものであって、該コバルトナノ粒子が、ドーパント金属でドープされており、かつ該ドーパント金属が、Mn、Cu又はそれらの混合物から選択され、かつ該材料が、4~10の範囲内のモル比RDM=n(コバルト):n(ドーパント金属)を示す。
【0041】
実験結果は、(例1及び3参照)、銅の極めて低い含有率を有する材料が、特に魅力的な触媒特性を有しうることを示す。それに応じて、好ましい実施態様において、本発明は、本発明による材料に関するものであって、Cuの全質量分率が、該材料の全質量の10-4重量%未満である。
【0042】
本発明は、さらに、本発明の材料の製造方法に関する。上記で示されたように、2つの方法工程の組合せが、決定的であることが見出された:
(i)前記の金属前駆物質と有機炭素源との水溶液の噴霧乾燥又は凍結乾燥、及び
(ii)生じる中間体の適度な温度での熱処理。
【0043】
それに応じて、別の態様において、本発明は、さらに、本発明による材料の製造方法に向けられ、以下の工程:
(a)金属前駆物質と有機炭素源とを含む水溶液を用意する工程、
ここで、該金属前駆物質が、有機の、少なくとも部分的に水溶性の、コバルトの塩の1種又は1種を超える組合せを含み、かつ
該有機炭素源が、飽和の、脂肪族ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はポリカルボン酸の1種又は1種を超える組合せであり、
(b)前記の金属前駆物質と有機炭素源との水溶液を噴霧乾燥又は凍結乾燥し、かつ、こうして、中間生成物Pを得る工程、
(c)中間生成物Pを200℃~380℃の範囲内の温度で熱処理する工程
を含む。
【0044】
該方法工程のそれぞれが、バッチ式又は連続的な形態で実施されてよい。
【0045】
別の態様において、本発明は、さらに、本発明の方法により得ることができる材料に向けられる。
【0046】
上記で示されたように、本発明の材料の形成は、噴霧乾燥又は凍結乾燥と、適度な温度での適した熱処理との組合せを必要とする。それに応じて、溶液中に、すなわち該方法の工程(a)において用意される溶液中に溶解された形で存在する材料のみが、本発明による材料へ変換することができることを仮定することが合理的であると思われる。しかしながら、固体の形の不溶解物は、本発明の材料を形成する方法と干渉しない限り、工程(a)において用意される溶液中に懸濁されうる。例えば、溶解されない金属前駆物質又は有機炭素源に由来しうる、そのような固形分は、本発明の方法の工程(c)後に得られる固体生成物中で本発明の材料の固体希釈剤を形成しうる。同様に、有機溶剤は、それらの存在が本発明の材料を形成する方法と干渉しない限り、工程(a)において用意される溶液中に溶解又は乳化されうる。しかしながら、本発明の材料を形成する方法との干渉を回避するために、好ましい実施態様において、本発明の方法は、固体の形の不溶解物不含並びに有機溶剤不含である、工程(a)において用意される水溶液を用いて、実施される。
【0047】
ドーパント金属が使用されない場合には、本発明の方法の工程(a)において用意される溶液中の該金属前駆物質は、有機の、少なくとも部分的に水溶性の、コバルトの塩の1種又は1種を超える組合せである。本文脈で、塩は、該塩の少なくとも一部が、該方法において使用される条件下で工程(a)において用意される水溶液中に溶解する場合に、少なくとも部分的に水溶性であるとみなされる。好ましくは、ドーパント金属が使用されない場合には、本発明の方法の工程(a)において用意される溶液中の該金属前駆物質は、コバルトの有機塩の1種又は1種を超える組合せであり、該溶液中へ含まれうるその所望の量は、工程(a)の水溶液に完全に可溶である。
【0048】
ドーパント金属が使用される場合には、本発明の方法の工程(a)において用意される溶液中の該金属前駆物質は1種以上の有機の、少なくとも部分的に水溶性の、コバルトの塩と、1種以上の有機の、少なくとも部分的に水溶性の、マンガン及び/又は銅の塩との組合せである。好ましくは、ドーパント金属が使用される場合には、本発明の方法の工程(a)において用意される溶液中の該金属前駆物質は、コバルトの1種以上の有機塩とマンガン及び/又は銅の1種以上の有機塩との組合せであり、該溶液中へ含まれうるその所望の量は、工程(a)の水溶液に完全に可溶である。
【0049】
本発明の方法の工程(a)において用意される溶液中の該金属前駆物質の好ましい有機アニオンは、アセテート、カーボネート、オキサレート、シトレート、マロネート、タルトレート及びグルタレートである。窒素が回避される必要がない場合には、ニトレートは、工程(a)において用意される溶液中の該金属前駆物質の別の好ましいアニオンである。
【0050】
飽和の、脂肪族ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はポリカルボン酸は、単独で又は混合物の一部として、それらが本発明の材料の形成を支援する限り、工程(a)において用意される水溶液の有機炭素源として使用されうる。好ましい実施態様において、マロン酸、グルタル酸、クエン酸又はそれらの混合物は、本発明の方法の工程(a)において用意される水溶液の有機炭素源として使用される。本発明の特に好ましい実施態様において、クエン酸は、本発明の方法の工程(a)において用意される水溶液の有機炭素源として使用される。
【0051】
工程(a)において用意される水溶液は、本発明の方法の工程(b)において噴霧乾燥又は凍結乾燥される。それから得られる生成物は、本発明に関連して中間生成物Pと呼ばれる。噴霧乾燥及び凍結乾燥のための方法パラメーターは、該乾燥方法が中断なしに実施され、かつ中間生成物Pにより示される水及び有機溶剤の合計した含有率が10重量%未満である限り、幅広い範囲にわたって変えることができる。本発明の好ましい実施態様において、工程(a)において用意される水溶液は、本発明の方法の工程(b)において噴霧乾燥される。
【0052】
本発明の方法の工程(c)による熱処理は、定義された温度条件及び不活性ガス雰囲気、例えば窒素、又は空気下で実施される。このために適した幅広い範囲の炉は、商業的に入手可能である。好ましい実施態様において、熱処理は、不活性ガス雰囲気、例えば窒素下で実施される。熱処理中の加熱速度は、熱の均質な分布を可能にするのに十分なほど小さい、すなわち典型的に15K/min未満、好ましくは10K/min未満、及び特に好ましくは5K/min未満であるべきである。中間生成物Pの熱処理は、200℃~380℃の範囲内の温度で実施される。本発明の好ましい実施態様において、中間生成物Pの熱処理は、255℃~375℃の範囲内の温度で実施される。特に好ましい実施態様において、中間生成物Pの熱処理は、300℃~350℃の範囲内の温度で実施される。典型的には、中間生成物Pの熱処理は、1~4時間の期間、実施されるが、しかし、より長い又はより短い時間間隔の熱処理も同様に行われうる。加熱及び冷却間隔は、熱処理の期間を決定する際の原因とされない。好ましい実施態様において、中間生成物Pの熱処理は、1~4時間の期間、実施される。
【0053】
上記で示されたように、本発明による材料は、触媒活性を示す。それに応じて、別の態様において、本発明は、さらに、触媒としての本発明の材料の使用に関する。
【0054】
本発明による材料は、例えば、有機化合物、具体的に言うと不飽和化合物、例えばアルケン及びアルキン、アルデヒド及びケトン、エステル及びイミン、ニトロ化合物及びニトリルの液相水素化における触媒として、使用することができる。本発明による材料は、さらに、カルボニル化合物の還元的アミノ化のための極めて活性な触媒である。それに応じて、別の態様において、本発明は、さらに、有機化合物の水素化、カルボニル化合物の還元的アミノ化及び/又は有機化合物のヒドロホルミル化用の触媒としての本発明の材料の使用に関する。
【0055】
本発明による材料は、一酸化炭素、二酸化炭素又はそれらの混合物の、水素での、アルコール、アルケン、アルカン又はそれらの混合物への転化における触媒として使用することもできる。それに応じて、別の態様において、本発明は、さらに、一酸化炭素、二酸化炭素又はそれらの混合物の、水素での、アルコール、アルケン、アルカン又はそれらの混合物への転化用の触媒としての、本発明の材料の使用に関する。
【0056】
本発明による材料は、触媒として未変性の形で使用されうるか又は当業者に周知の、成形方法(例えばタブレット化、ペレット化、押出し、コーティング、3Dプリンティング)により触媒体へ変換されうる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明による炭素に埋め込まれたコバルトナノ粒子(Cat. 1b)のTEM像。
【実施例
【0058】
例1a,b - 炭素に埋め込まれたCoナノ粒子の製造
炭素に埋め込まれたCoナノ粒子を、クエン酸(最高純度、Sigma Aldrich)14.4gを脱イオン水75mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させることにより製造した。第2のビーカー中に、酢酸コバルト(II)四水和物((CHCOO)Co・4HO、Sigma Aldrich)18.7gを、脱イオン水75mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させた。該酢酸コバルト溶液を、該クエン酸溶液にゆっくりと添加し、室温でもう30min撹拌した。生じた溶液を、従来のミニ噴霧乾燥機(Buechi、Mini Spray Dryer B-290)を用いて220℃の一定の入口温度、120℃の出口温度及びポンプ速度20%で噴霧乾燥した。得られた粉末を、最終的な熱処理のために同一の質量を有する2つのフラクションへ分けた。
【0059】
第1の試料を、管形炉中で窒素雰囲気下に300℃への180minの勾配で熱処理し、そこで温度をもう4h維持し、続いて自然冷却した。生じた触媒粉末をCat. 1aと名付けた。
【0060】
第2の試料を、同様の方法で窒素雰囲気下に熱処理した。該試料を、180min以内に350℃に加熱し、そこで温度を4h維持し、続いて自然冷却した。生じた触媒粉末をCat. 1bと名付けた。
【0061】
該材料は、XRF(蛍光X線)及びTGZ分析により、CCDカメラを備え、100keVで操作される校正されたHitachi H-7500フィールド透過型電子顕微鏡を用いて決定された、以下の特性を示す:
【表1】
【0062】
例2 - 炭素に埋め込まれたCo-Cuナノ粒子の製造
炭素に埋め込まれたCo-Cuナノ粒子を、クエン酸(最高純度、Sigma Aldrich)19.4gを脱イオン水100mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させることにより製造した。第2のビーカー中に、酢酸コバルト(II)四水和物((CHCOO)Co・4HO、Sigma Aldrich)19.9g及び酢酸Cu(II)一水和物((CHCOO)Cu・HO、Alfa Aesar)3.9gを、脱イオン水100mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させた。このコバルト-銅溶液を、該クエン酸溶液にゆっくりと添加し、室温でもう30min撹拌した。生じた溶液を、従来のミニ噴霧乾燥機(Buechi、Mini Spray Dryer B-290)を用いて220℃の一定の入口温度、130℃の出口温度及びポンプ 速度30%で噴霧乾燥した。得られた粉末を、管形炉中で窒素雰囲気下に350℃への180minの勾配で熱処理し、ここで温度をもう4h維持し、続いて自然冷却した。生じた触媒粉末をCat. 2と名付けた。
【0063】
該材料は、XRF(蛍光X線)及びTGZ分析により、CCDカメラを備え、100keVで操作される校正されたHitachi H-7500フィールド透過型電子顕微鏡を用いて決定された、以下の特性を示す:
【表2】
【0064】
例3a,b - 炭素に埋め込まれたCo-Mnナノ粒子の製造
炭素に埋め込まれたCo-Mnナノ粒子を、クエン酸(最高純度、Sigma Aldrich)14.4gを脱イオン水75mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させることにより製造した。第2のビーカー中に、酢酸コバルト(II)四水和物((CHCOO)Co・4HO、Sigma Aldrich)18.7g及び酢酸Mn(II)四水和物(Mn(CHCOO)・4HO、Sigma Aldrich)1.5gを、脱イオン水75mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させた。このコバルト-マンガン溶液を、該クエン酸溶液にゆっくりと添加し、室温でもう30min撹拌した。生じた溶液を、従来のミニ噴霧乾燥機(Buechi、Mini Spray Dryer B-290)を用いて220℃の一定の入口温度、125℃の出口温度及びポンプ速度25%で噴霧乾燥した。生じた粉末を、最終的な熱処理のために同一の質量を有する2つのフラクションへ分けた。
【0065】
第1の試料を、マッフル炉中で窒素雰囲気下に300℃への180minの勾配で熱処理し、そこで温度をもう4h維持し、続いて自然冷却した。生じた触媒粉末をCat. 3aと名付けた。
【0066】
第2の試料を、同様の方法で窒素雰囲気下に熱処理した。該試料を、180min以内に350℃に加熱し、そこで温度を4h維持し、続いて自然冷却した。生じた触媒粉末をCat. 3bと名付けた。
【0067】
該材料は、XRF(蛍光X線)及びTGZ分析により、CCDカメラを備え、100keVで操作される校正されたHitachi H-7500フィールド透過型電子顕微鏡を用いて決定された、以下の特性を示す:
【表3】
【0068】
例4a,b - 炭素に埋め込まれたCo-Cu-Mnナノ粒子の製造
炭素に埋め込まれたCo-Cu-Mnナノ粒子を、クエン酸(最高純度、Sigma Aldrich)14.4gを脱イオン水75mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させることにより製造した。第2のビーカー中に、酢酸コバルト(II)四水和物((CHCOO)Co・4HO、Sigma Aldrich)14.9g、酢酸Cu(II)一水和物((CHCOO)Cu・HO、Alfa Aesar)2.9g及び酢酸Mn(II)四水和物(Mn(CHCOO)・4HO、Sigma Aldrich)1.5gを、脱イオン水75mL中に一定に撹拌しながら室温で溶解させた。このコバルト-銅-マンガン溶液を、該クエン酸溶液にゆっくりと添加し、室温でもう30min撹拌した。生じた溶液を、従来のミニ噴霧乾燥機(Buechi、Mini Spray Dryer B-290)を用いて220℃の一定の入口温度、125℃の出口温度及びポンプ速度25%で噴霧乾燥した。得られた粉末を、最終的な熱処理のために同一の質量を有する2つのフラクションへ分けた。
【0069】
第1の試料を、マッフル炉中で窒素雰囲気下に300℃への180minの勾配で熱処理し、そこで温度をもう4h維持し、続いて自然冷却した。生じた触媒粉末をCat. 4aと名付けた。
【0070】
第2の試料を、同様の方法で窒素雰囲気下に熱処理した。該試料を、180min以内に350℃に加熱し、そこで温度を4h維持し、続いて自然冷却した。生じた触媒粉末をCat. 4bと名付けた。
【0071】
該材料は、XRF(蛍光X線)及びTGZ分析により、CCDカメラを備え、100keVで操作される校正されたHitachi H-7500フィールド透過型電子顕微鏡を用いて決定された、以下の特性を示す:
【表4】
【0072】
比較例
技術水準との比較のために、2種の「炭素担体上のコバルト」触媒を、Westerhaus, Felix A., et al.“Heterogenized cobalt oxide catalysts for nitroarene reduction by pyrolysis of molecularly defined complexes” Nature Chemistry (2013)に従って製造した。
【0073】
従来のVulcan XC72R炭素担体上のコバルト3重量%を有する触媒を、Westerhaus et al.(Westerhaus, Felix A., et al.“Heterogenized cobalt oxide catalysts for nitroarene reduction by pyrolysis of molecularly defined complexes” Nature Chemistry (2013) p.538、表1、エントリ1)に従って得て、かつCat. 5と名付けた。
【0074】
従来のVulcan XC72R炭素担体上のコバルト20重量%を有する高添加量の触媒を、Westerhaus et al.(Westerhaus, Felix A., et al.“Heterogenized cobalt oxide catalysts for nitroarene reduction by pyrolysis of molecularly defined complexes” Nature Chemistry (2013) p.538、表1、エントリ1;より高いCo添加量を有する)に従って得て、かつCat. 6と名付けた。
【0075】
さらに、高分散性Co/TiOを、Van Deelen, T. W., et al.“Preparation of Cobalt Nanocrystals Supported on Metal Oxides to Study Particle Growth in Fischer-Tropsch Catalysts.” ACS Catalysis (2018)に従って製造した。
【0076】
従来のEvonik Aeroxide P25 TiO担体上のコバルト7重量%を有する触媒を、Van Deelen et al.(Van Deelen, T. W., et al.“Preparation of Cobalt Nanocrystals Supported on Metal Oxides to Study Particle Growth in Fischer-Tropsch Catalysts.” ACS Catalysis (2018) p.10582、Incipient Wetness Impregnation)に従って得て、かつCat. 7と名付けた。
【0077】
該材料は、XRF(蛍光X線)及びTGZ分析により、CCDカメラを備え、100keVで操作される校正されたHitachi H-7500フィールド透過型電子顕微鏡を用いて決定された、以下の特性を示す:
【表5】
) 触媒材料Cat. 5、Cat. 6、及びCat. 7は、例1~4から得られた材料において見出されたような微細に分散されたナノ粒子の配列の代わりに、明らかにランダムな配置におけるより大きな金属クラスターを有する、それらの金属含有率の極めて不均質な分布を示す。したがって、D値を決定することは、有意義であるとは思われない。
【0078】
触媒活性の試験
該材料の触媒活性及び選択性を決定するための実験を、メタノール5ml中の触媒200mg及び基質5mmolを用いてバッチ式で実施した。オートクレーブを、所望の反応温度に加熱し、全ての実験について50barの一定の水素圧力下で撹拌した。反応生成物をろ過し、GC-MSにより分析した。
【0079】
I.メチルクロトネートの、メチルブチレートへの水素化
【化1】
【表6】
【0080】
II.アセチルナフタレンの水素化
【化2】
【表7】
【0081】
III.N-ベンジリデン-ベンジルアミンの水素化
【化3】
【表8】
【0082】
IV.ドデカンニトリルの水素化
【化4】
【表9】
【0083】
V.シクロヘキサノンのアミノ化
【化5】
【表10】
図1