(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-16
(45)【発行日】2025-04-24
(54)【発明の名称】動力電池の充電の方法及び電池管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20250417BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20250417BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250417BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250417BHJP
H01M 10/637 20140101ALI20250417BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H01M10/44 Q
H01M10/48 301
H01M10/637
(21)【出願番号】P 2023541351
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2021133268
(87)【国際公開番号】W WO2023092416
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲珊▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲廣▼玉
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲海▼力
(72)【発明者】
【氏名】李 世超
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-23836(JP,A)
【文献】特開2021-68637(JP,A)
【文献】特開平10-284133(JP,A)
【文献】特開2019-9002(JP,A)
【文献】特開2019-212392(JP,A)
【文献】特開2018-147843(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103427137(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108199122(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0266038(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112615075(CN,A)
【文献】特開2015-225782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/10
H01M 10/44
H01M 10/48
H01M 10/637
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池の充電の方法であって、
前記動力電池の電池管理システムBMSに適用され、
前記動力電池の第1充電電流を決定するステップであって、前記第1充電電流は前記動力電池の温度下で許容される最大充電電流であるステップと、
前記動力電池の温度に基づいて、前記動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定するステップと、
前記動力電池に対して熱管理を行うと決定した場合、前記第1充電電流及び充電スタンド電力に基づいて、熱管理電流を決定するステップと、
充電スタンドに前記第1充電電流と前記熱管理電流を送信し、前記第1充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ、前記熱管理電流は前記動力電池に対して熱管理を行うことに用いられるステップと、
前記動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得するステップと、
前記負極電位に基づいて、前記動力電池が前記充電スタンド電力で充電できることを決定するステップと、
前記動力電池に対する熱管理を停止するステップと、
前記充電スタンドに第2充電電流を送信するステップであって、前記第2充電電流は前記動力電池に対して充電を行うことに用いられ且つ前記充電スタンド電力に対応する充電電流である、ステップと、を含む、動力電池の充電の方法。
【請求項2】
前記動力電池の温度は前記動力電池の充電前の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記負極電位に基づいて、前記動力電池が前記充電スタンド電力で充電できることを決定する前記ステップは、
前記動力電池の現時点での負極電位に基づいて、前記動力電池の次の時点での充電電流である前記第2充電電流を決定するステップと、
前記第2充電電流及び前記動力電池の電圧に基づいて、前記動力電池が次の時点で前記充電スタンド電力で充電できることを決定するステップと、
を含む、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記動力電池の温度に基づいて、前記動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定する前記ステップは、
前記動力電池の温度を温度閾値と比較するステップと、
前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低い場合、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定するステップと、
を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低い場合、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定する前記ステップは、
前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低く、且つ前記充電スタンド電力と前記動力電池の充電電力との間の差が熱管理最小起動電力以上である場合、前記動力電池に対する熱管理を行うことを決定するステップを含み、
前記充電電力は前記第1充電電流と前記動力電池の電圧との間の積である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記動力電池に対する熱管理を行う過程で、前記方法は、
前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下した場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも小さい第3充電電流に調整するステップをさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記動力電池に対して熱管理を行う過程で、前記方法は、
前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下せず且つ前記動力電池の充電時間が時間閾値よりも長い場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも大きい第4充電電流に調整するステップをさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記動力電池の充電状態SOC、温度及び劣化状態SOHのうちの少なくとも1つを含む前記動力電池の電池状態パラメータに基づいて、前記負極電位安全閾値を決定するステップをさらに含む、請求項
6又は
7に記載の方法。
【請求項9】
動力電池の充電の電池管理システムであって、
前記動力電池の第1充電電流を決定することに用いられ、前記第1充電電流は前記動力電池の温度下で許容される最大充電電流であり、前記動力電池の温度に基づいて、前記動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定することにさらに用いられ、前記動力電池に対して熱管理を行うと決定した場合、前記第1充電電流及び充電スタンド電力に基づいて、熱管理電流を決定することにさらに用いられる決定ユニットと、
充電スタンドに前記第1充電電流と前記熱管理電流を送信することに用いられる通信ユニットであって、前記第1充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ、前記熱管理電流は前記動力電池に対して熱管理を行うことに用いられる前記通信ユニットと、
前記動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得することに用いられる取得ユニットと、を含み、
前記決定ユニットは、前記負極電位に基づいて、前記動力電池が前記充電スタンド電力で充電できることを決定することにさらに用いられ、
前記電池管理システムは、
前記動力電池に対する熱管理を停止することに用いられる管理ユニットをさらに含み、
前記通信ユニットは、前記充電スタンドに第2充電電流を送信することにさらに用いられ、前記第2充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ且つ前記充電スタンド電力に対応する充電電流である、動力電池の充電の電池管理システム。
【請求項10】
前記動力電池の温度は前記動力電池の充電前の温度である、請求項
9に記載の電池管理システム。
【請求項11】
前記決定ユニットは具体的に、
前記動力電池の現時点での負極電位に基づいて、前記動力電池の次の時点での充電電流である前記第2充電電流を決定することと、
前記第2充電電流及び前記動力電池の電圧に基づいて、前記動力電池が次の時点で前記充電スタンド電力で充電できることを決定することと、
に用いられる、請求項
10に記載の電池管理システム。
【請求項12】
前記決定ユニットは具体的に、
前記動力電池の温度を温度閾値と比較することと、
前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低い場合、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定することと、
に用いられる、請求項
9~
11のいずれか一項に記載の電池管理システム。
【請求項13】
前記決定ユニットは具体的に、
前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低く、且つ前記充電スタンド電力と前記動力電池の充電電力との間の差が熱管理最小起動電力以上である場合、前記動力電池に対する熱管理を行うことを決定することに用いられ、
前記充電電力は前記第1充電電流と前記動力電池の電圧との間の積である、請求項
12に記載の電池管理システム。
【請求項14】
前記動力電池に対する熱管理を行う過程で、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下した場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも小さい第3充電電流に調整することに用いられる調整ユニットをさらに含む、請求項
9~
13のいずれか一項に記載の電池管理システム。
【請求項15】
前記動力電池に対して熱管理を行う過程で、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下せず且つ前記動力電池の充電時間が時間閾値よりも長い場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも大きい第4充電電流に調整することに用いられる調整ユニットをさらに含む、請求項
9~
13のいずれか一項に記載の電池管理システム。
【請求項16】
前記決定ユニットは、前記動力電池の充電状態SOC、温度及び劣化状態SOHのうちの少なくとも1つを含む前記動力電池の電池状態パラメータに基づいて、前記負極電位安全閾値を決定することにさらに用いられる、請求項
14又は
15に記載の電池管理システム。
【請求項17】
プロセッサ及びメモリを含み、前記メモリはコンピュータプログラムを記憶することに用いられ、前記プロセッサは前記コンピュータプログラムを呼び出して、前記プロセッサは請求項1~
8のいずれか一項に記載の動力電池の充電の方法を実行することに用いられる、動力電池の電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は動力電池分野に関し、特に動力電池充電の方法及び電池管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
時代が進むにつれて、電気自動車はその環境保護性に優れ、騒音が低く、使用コストが低い等の利点により、巨大市場の将来性を有し、且つ省エネルギーと排出削減を効果的に促進することができ、社会の発展及び進歩に寄与する。
【0003】
電気自動車及びその関連分野にとって、電池技術はその発展に関わる重要な要素であり、特に動力電池の安全性能は、動力電池関連製品の発展及び応用に影響を与え、且つ一般の人が電気自動車をどのように受け入れるかに影響を与える。同時に、ユーザつまり消費者からの電気自動車の充電速度に対する要求はますます高くなっている。従って、動力電池の安全性能を確保すると同時にユーザの充電速度に対するニーズをどのように満たすかは、早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【0004】
本願の実施例は、動力電池の安全性能を確保すると同時にユーザの充電速度に対するニーズを満たすことができる、動力電池充電の方法及び電池管理システムを提供する。
【0005】
第1態様によれば、動力電池の電池管理システムBMSに適用される動力電池充電の方法であって、前記動力電池の第1充電電流を決定するステップと、前記動力電池の温度に基づいて、前記動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定するステップと、前記動力電池に対して熱管理を行うと決定した場合、前記第1充電電流及び充電スタンド電力に基づいて、熱管理電流を決定するステップと、充電スタンドに前記第1充電電流と前記熱管理電流を送信し、前記第1充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ、前記熱管理電流は前記動力電池に対して熱管理を行うことに用いられるステップと、を含む動力電池充電の方法を提供する。
【0006】
本願の実施例では、BMSはまず動力電池の充電電流を決定し、動力電池が熱管理を必要とする場合に動力電池電流及び充電スタンド電力に基づいて熱管理電流を決定し、すなわち動力電池の充電電流を優先して確保し、熱管理を必要とする場合に充電スタンドの余剰電力を動力電池の熱管理に用いる。これにより、動力電池の充電速度を確保するだけでなく、動力電池に対して熱管理を行うことにより、動力電池の温度によるリチウム析出から生じる動力電池の安全上の問題、例えば電池の燃焼又は爆発等を回避して、動力電池の安全性能を保証することができる。
【0007】
いくつかの可能な実現形態において、前記第1充電電流は前記動力電池の温度下で許容される最大充電電流である。
【0008】
上記技術的解決手段において、第1充電電流は動力電池の温度下で許容される最大充電電流であり、動力電池の充電速度をさらに向上させることができる。
【0009】
いくつかの可能な実現形態において、前記動力電池の温度は前記動力電池の充電前の温度である。
【0010】
上記技術的解決手段は、動力電池の充電前の温度に基づいて動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定し、これにより、動力電池に対して熱管理を行うことを決定した場合、BMSは、動力電池の充電を開始した時点から動力電池に対する熱管理を行うことができ、動力電池がある期間に熱管理を必要とするが動力電池に対して熱管理が行われず、動力電池の充電速度に影響を及ぼすという問題を回避する。
【0011】
いくつかの可能な実現形態において、前記方法は、前記動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得するステップと、前記負極電位に基づいて、前記動力電池が前記充電スタンド電力で充電できることを決定するステップと、前記動力電池に対する熱管理を停止するステップと、前記充電スタンドに第2充電電流を送信し、前記第2充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ且つ前記充電スタンド電力に対応する充電電流であるステップと、をさらに含む。
【0012】
上記技術的解決手段は、動力電池の充電過程において、動力電池の負極電位に基づいて動力電池が充電スタンド電力で充電できるか否かをリアルタイムに判断する。動力電池が充電スタンド電力で充電できると決定することは、充電スタンドの最大充電能力が動力電池の充電ニーズを満たせることを示しており、この時に動力電池に対する熱管理を継続しても動力電池の充電速度は向上せず、逆に動力電池の充電速度を低下させる。このような状況では動力電池に対する熱管理を停止して、動力電池を無駄に加熱するという問題を避けて、省エネルギーの目的を達成することができる。
【0013】
いくつかの可能な実現形態において、前記負極電位に基づいて、前記動力電池が前記充電スタンド電力で充電できることを決定する前記ステップは、前記動力電池の現時点での負極電位に基づいて、前記動力電池の次の時点での充電電流である前記第2充電電流を決定するステップと、前記第2充電電流及び前記動力電池の電圧に基づいて、前記動力電池が次の時点で前記充電スタンド電力で充電できることを決定するステップと、を含む。
【0014】
いくつかの可能な実現形態において、前記動力電池の温度に基づいて、前記動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定する前記ステップは、前記動力電池の温度を温度閾値と比較するステップと、前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低い場合、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定するステップと、を含む。
【0015】
上記技術的解決手段は動力電池の温度が低い場合に動力電池に対して熱管理を行い、動力電池の温度を上げて、動力電池に低温下でリチウム析出が生じやすいという問題を回避して、動力電池の充電過程の正常な実行及び動力電池の安全性能を保証する。
【0016】
いくつかの可能な実現形態において、前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低い場合、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定する前記ステップは、前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低く、且つ前記充電スタンド電力と前記動力電池の充電電力との間の差が熱管理最小起動電力以上である場合、前記動力電池に対する熱管理を行うことを決定するステップを含み、前記充電電力は前記第1充電電流と前記動力電池の電圧との間の積である。
【0017】
場合によっては、動力電池の温度が温度閾値より低くても、充電スタンド電力と動力電池の充電電力との間の差が小さすぎて、熱管理最小起動電力の要件を満たさない可能性がある。上記技術的解決手段は、動力電池の温度が温度閾値よりも低く、且つ充電スタンド電力と充電電力との間の差が熱管理最小起動電力以上である場合に、BMSは動力電池に対する熱管理を行うことを決定し、すなわち動力電池の温度及び熱管理最小起動電力などの、熱管理の起動に影響する複数の要素を総合的に考慮して、動力電池の熱管理がスムーズに実行されることを効果的に保証することができる。
【0018】
いくつかの可能な実現形態において、前記動力電池に対する熱管理を行う過程で、前記方法は、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下した場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも小さい第3充電電流に調整するステップをさらに含む。
【0019】
上記技術的解決手段において、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下することは、該動力電池にリチウム析出現象が発生する可能性があることを示しており、このような状況で動力電池の充電要求電流を低下させることにより、リチウムイオンの凝集などの問題から生じる動力電池の安全上の問題、例えば電池の燃焼又は爆発等を回避して、動力電池の安全性能を保証することができる。
【0020】
いくつかの可能な実現形態において、前記動力電池に対して熱管理を行う過程で、前記方法は、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下せず且つ前記動力電池の充電時間が時間閾値よりも長い場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも大きい第4充電電流に調整するステップをさらに含む。
【0021】
上記技術的解決手段において、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで長時間降下しない場合、動力電池の現時点の充電電流が小さすぎることを示す。このような場合に動力電池の充電要求電流を引き上げて、充電速度を向上させ、動力電池の充電時間を大幅に短縮して、ユーザ体験を向上させることができる。
【0022】
いくつかの可能な実現形態において、前記方法は、前記動力電池の充電状態SOC、温度及び劣化状態SOHのうちの少なくとも1つを含む前記動力電池の電池状態パラメータに基づいて、前記負極電位安全閾値を決定するステップをさらに含む。
【0023】
動力電池のリチウム析出のリスクの程度はそれ自体の電池状態パラメータと密接に関連しているため、上記技術的解決手段において動力電池の電池状態パラメータに基づいて負極電位安全閾値を決定することで、決定された負極電位安全閾値はより正確になり、該動力電池のリチウム析出の臨界電位により接近し、動力電池の安全性能をさらに保証することができる。
【0024】
第2態様によれば、動力電池充電の電池管理システムであって、前記動力電池の第1充電電流を決定することに用いられ、前記動力電池の温度に基づいて、前記動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定することにさらに用いられ、前記動力電池に対して熱管理を行うと決定した場合、前記第1充電電流及び充電スタンド電力に基づいて、熱管理電流を決定することにさらに用いられる決定ユニットと、充電スタンドに前記第1充電電流と前記熱管理電流を送信することに用いられる通信ユニットであって、前記第1充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ、前記熱管理電流は前記動力電池に対して熱管理を行うことに用いられる前記通信ユニットと、を含む動力電池充電の電池管理システムを提供する。
【0025】
いくつかの可能な実現形態において、前記第1充電電流は前記動力電池の温度下で許容される最大充電電流である。
【0026】
いくつかの可能な実現形態において、前記動力電池の温度は前記動力電池の充電前の温度である。
【0027】
いくつかの可能な実現形態において、前記電池管理システムは、前記動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得することに用いられる取得ユニットをさらに含み、前記決定ユニットは、前記負極電位に基づいて、前記動力電池が前記充電スタンド電力で充電できることを決定することにさらに用いられ、前記電池管理システムは、前記動力電池に対する熱管理を停止することに用いられる管理ユニットをさらに含み、前記通信ユニットは、前記充電スタンドに第2充電電流を送信することにさらに用いられ、前記第2充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ且つ前記充電スタンド電力に対応する充電電流である。
【0028】
いくつかの可能な実現形態において、前記決定ユニットは具体的に、前記動力電池の現時点での負極電位に基づいて、前記動力電池の次の時点での充電電流である前記第2充電電流を決定することと、前記第2充電電流及び前記動力電池の電圧に基づいて、前記動力電池が次の時点で前記充電スタンド電力で充電できることを決定することと、に用いられる。
【0029】
いくつかの可能な実現形態において、前記決定ユニットは具体的に、前記動力電池の温度を温度閾値と比較することと、前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低い場合、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定することと、に用いられる。
【0030】
いくつかの可能な実現形態において、前記決定ユニットは具体的に、前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低く、且つ前記充電スタンド電力と前記動力電池の充電電力との間の差が熱管理最小起動電力以上である場合、前記動力電池に対する熱管理を行うことを決定することに用いられ、前記充電電力は前記第1充電電流と前記動力電池の電圧との間の積である。
【0031】
いくつかの可能な実現形態において、前記電池管理システムは、前記動力電池に対する熱管理を行う過程で、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下した場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも小さい第3充電電流に調整することに用いられる調整ユニットをさらに含む。
【0032】
いくつかの可能な実現形態において、前記電池管理システムは、前記動力電池に対して熱管理を行う過程で、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下せず且つ前記動力電池の充電時間が時間閾値よりも長い場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも大きい第4充電電流に調整することに用いられる調整ユニットをさらに含む。
【0033】
いくつかの可能な実現形態において、前記決定ユニットは、前記動力電池の充電状態SOC、温度及び劣化状態SOHのうちの少なくとも1つを含む前記動力電池の電池状態パラメータに基づいて、前記負極電位安全閾値を決定することにさらに用いられる。
【0034】
第3態様によれば、プログラムを記憶することに用いられるメモリと、前記メモリに記憶されたプログラムを実行することに用いられ、前記メモリに記憶されたプログラムが実行される時、上記第1態様又はその各実現形態における方法を実行することに用いられるプロセッサと、を含む動力電池の電池管理システムBMSを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に本願の実施例に必要な図面を簡単に説明し、理解すべきことは、以下に示された図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、図面に基づいて他の図面をさらに取得することができる。
【0036】
【
図1】本願の一実施例に適用される充電システムの構造図である。
【0037】
【
図2】本願の実施例に係る動力電池充電の方法の概略図である。
【0038】
【
図3】本願の実施例に係る分極一次RC等価回路モデルの概略図である。
【0039】
【
図4】本願の実施例に係る動力電池充電の方法の概略フローチャートである。
【0040】
【
図5】本願の実施例に係るBMSの概略ブロック図である。
【0041】
【
図6】本願の実施例に係るBMSの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に図面及び実施例を参照しながら本願の実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明及び図面は本願の原理を例示的に説明するために用いられるが、本願の範囲を限定するものではなく、本願は記載された実施例に限定されない。
【0043】
本願の記載において説明すべきことは、別途説明されない限り、「複数」は、2つ以上という意味であり、「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」等の用語が指示する方位又は位置関係は、本願の説明を容易にして、説明を簡略化するものであるに過ぎず、対象の装置や素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成され及び操作されるべきであることを示す又は暗示するものではなく、従って本願を限定するものと理解すべきではない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、説明する目的で用いられるに過ぎず、相対的な重要性を示す又は暗示するものと理解すべきではない。
【0044】
新エネルギー分野において、動力電池は電力消費装置(例えば車両、船舶又は宇宙機等)の主な動力源とすることができる。現在、市販の動力電池の多くは充電可能な蓄電池であり、最も一般的なものは、リチウムイオン電池又はリチウムイオンポリマー電池等のリチウム電池である。しかしながら、いくつかの特殊な状況では、動力電池の安全性能が低い。例えば、低温の状況では、動力電池の充電過程において、動力電池にリチウム析出等の現象が発生しやすく、リチウム析出現象は動力電池の性能を低下させ、サイクル寿命を大幅に短縮してしまうだけでなく、動力電池の急速充電容量を制限し、且つ燃焼、爆発等の災害をもたらす可能性があり、安全上の深刻な問題を引き起こす。
【0045】
さらに、ユーザからの動力電池の充電速度に対する要求はますます高まっている。しかしながら、上記特殊な状況では、動力電池の充電速度がユーザのニーズを満たすことは困難である。
【0046】
これに鑑みて、本願の実施例は、動力電池の安全性能を確保すると同時にユーザの充電速度に対するニーズを満たすことができる、動力電池充電の方法を提供する。
【0047】
図1は本願の実施例に適用される充電システムの構造図を示す。
図1に示すように、該充電システム100は、充電装置110及び電池システム120を含むことができ、該電池システム120は電気自動車(純粋な電気自動車及びプラグインハイブリッド電気自動車)における電池システム又は他の応用シーンにおける電池システムであってもよい。
【0048】
電池システム120内に少なくとも1つの電池パック(battery pack)が設置されてもよく、該少なくとも1つの電池パックの全体を動力電池121と総称することができる。電池の種類について、該動力電池121は、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、リチウム硫黄電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、又はリチウム空気電池などを含む任意のタイプの電池であってもよいが、これらに限定されない。電池の規模について、本願の実施例における動力電池121はセル/電池セル(cell)であってもよく、電池モジュール又は電池パックであってもよく、電池モジュール又は電池パックはいずれも複数の電池を直並列接続して形成されてもよく、本願の実施例において、動力電池121の具体的なタイプ及び規模はいずれも具体的に限定されない。
【0049】
また、該動力電池121をスマート化管理及びメンテナンスして、動力電池121に過充電や過放電が生じることを防ぎ、電池の耐用年数を延長するために、電池システム120には一般的に電池管理システム(battery management system、BMS)122がさらに設置され、充放電管理、高圧制御、電池保護、電池データの収集、電池状態の評価等の機能を実施することに用いられる。該BMS122は動力電池121と同一の機器又は装置内に統合して設置されてもよく、又は、該BMS122は独立した機器又は装置として動力電池121の外部に設置されてもよい。
【0050】
充電装置110はBMS122の充電要求に応じて充電電力を出力し、動力電池121に充電することができる。例えば、充電装置110はBMS122が送信する要求電圧及び要求電流に応じて電圧及び電流を出力することができる。本願の実施例における充電装置110は充電器とも呼ばれる充電スタンドであってもよい。ここでの充電スタンドは、例えば一般的な充電スタンド、スーパーチャージャー、ビークルツーグリッド(vehicle to grid、V2G)モードをサポートする充電スタンド等あってもよい。
【0051】
図1に示すように、充電装置110は電線130を介して動力電池121に接続され、且つ通信線140を介してBMS122に接続され、通信線140は充電装置110及びBMSの間の情報インタラクティブを実現するために用いられる。例として、該通信線140はコントローラエリアネットワーク(control area network、CAN)通信バス又はデイジーチェーン(daisy chain)通信バスを含むが、これらに限定されない。
【0052】
充電装置110は通信線140を介してBMS122と通信できるだけでなく、無線ネットワークを介してBMS122と通信することができる。本願の実施例は充電装置110とBMS122との有線通信タイプ又は無線通信タイプをいずれも具体的に限定しない。
【0053】
図2は本願の実施例に係る動力電池充電の方法200の概略フローチャートを示す。方法200はBMSにより実行され、BMSは例えば
図1におけるBMS122であってもよい。方法200は、以下のうちの少なくともいくつかの内容が含まれてもよい。
【0054】
ステップS210では、動力電池の第1充電電流を決定する。
【0055】
ステップS220では、動力電池の温度に基づいて、動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定する。
【0056】
ステップS230では、動力電池に対して熱管理を行うことを決定した場合、第1充電電流及び充電スタンド電力に基づいて、熱管理電流を決定する。
【0057】
ステップS240では、充電スタンドに第1充電電流と熱管理電流を送信し、第1充電電流は動力電池に充電することに用いられ、熱管理電流は動力電池に対して熱管理を行うことに用いられる。
【0058】
動力電池に対して熱管理を行うとは、動力電池を加熱することであると理解できる。
【0059】
BMSは動力電池の充電状態(state of charge、SOC)、温度及び劣化状態(state of health、SOH)、電圧等のパラメータに基づいて第1充電電流を決定してもよい。SOHは動力電池の劣化状態を示すために用いられてもよく、動力電池の残存寿命として理解されてもよい。動力電池は長期間運用することで性能が絶えず減衰するため、残存寿命が短くなり、すなわちSOHの値も小さくなる。SOCは動力電池の残存容量を示すために用いられてもよく、動力電池の現在の残存容量と利用可能な総容量との比として数値的に定義され、通常はパーセンテージで表示される。具体的には、SOC=100%であれば、動力電池が完全に充電されていることを示し、逆に、SOC=0%であれば、動力電池が完全に放電されていることを示す。
【0060】
BMSは充電スタンドに第1充電電流と熱管理電流を同時に送信してもよい。又は、BMSは充電スタンドに第1充電電流をまず送信し、その後、充電スタンドに熱管理電流を送信することができ、又は、BMSは充電スタンドに熱管理電流を送信してから、充電スタンドに第1充電電流を送信することができる。
【0061】
第1充電電流及び/又は熱管理電流は、電池充電要求BCLメッセージ内で搬送されてもよいがこれに限定されない。
【0062】
上記技術的解決手段では、BMSはまず動力電池の充電電流を決定し、動力電池が熱管理を必要とする場合に動力電池電流及び充電スタンド電力に基づいて熱管理電流を決定し、すなわち動力電池の充電電流を優先して確保し、熱管理を必要とする場合に充電スタンドの余剰電力を動力電池の熱管理に用いる。これにより、動力電池の充電速度を確保するだけでなく、動力電池に対して熱管理を行うことにより、動力電池の温度によるリチウム析出から生じる動力電池の安全上の問題、例えば電池の燃焼又は爆発等を回避して、動力電池の安全性能を保証することができる。
【0063】
動力電池の充電速度をさらに向上させるために、いくつかの実施例では、第1充電電流は動力電池の温度下で許容される最大充電電流であってもよい。これにより、動力電池の充電速度をさらに向上させ、充電時間を短縮して、ユーザの充電ニーズを満たすことができる。
【0064】
いくつかの実施例において、動力電池の温度は動力電池の充電前の温度であってもよい。これにより、動力電池に対して熱管理を行うことを決定した場合、BMSは、動力電池の充電を開始した時点から動力電池に対する熱管理を行うことができ、動力電池がある期間に熱管理を必要とするが動力電池に対して熱管理が行われず、動力電池の充電速度に影響を及ぼすという問題を回避する。
【0065】
本願の実施例において、第1充電電流I1及び熱管理電流I2は
I2=(P0-I1*U0)/U0
の関係を満たしてもよく、
【0066】
P0は充電スタンド電力であり、U0は動力電池の電圧である。すなわち、動力電池の充電電力と熱管理電力との和が充電スタンド電力である。例えば、充電スタンド電力が11KWで、充電前の動力電池の温度に対応する充電電力が9KWであれば、熱管理電力は2KWである。
【0067】
動力電池の充電及び熱管理の過程において、動力電池の温度は絶えず上昇する。従って、BMSは充電過程において動力電池が充電スタンド電力で充電できるか否かをリアルタイムに判断する必要がある。そのため、いくつかの実施例において、方法200は、動力電池の充電過程において、BMSが動力電池の負極電位(又は陽極電位と呼ばれる)を取得するステップと、負極電位に基づいて、動力電池が充電スタンド電力で充電できることを決定するステップと、動力電池に対する熱管理を停止するステップと、充電スタンドに第2充電電流を送信し、該第2充電電流は動力電池に充電することに用いられ且つ充電スタンド電力に対応する充電電流であるステップと、をさらに含む。
【0068】
BMSは動力電池の負極電位をリアルタイムに取得してもよい。一例として、BMSは動力電池の負極電位を周期的に取得してもよい。例えば、BMSは5sに1回負極電位を取得することができる。
【0069】
本願の実施例は、BMSが動力電池の負極電位を取得する具体的な実施方法を具体的に限定しない。例えば、BMSは負極電位予測モデルによって動力電池の負極電位を予測してもよく、又はBMSは参照電極付きの3極電池によって動力電池の負極電位を実測してもよい。
【0070】
一実施例において、2極電池に対して、BMSは負極電位予測モデルによって、電池の正極と負極を分離し、それにより負極電位を取得することができる。ここで、負極電位予測モデルは等価回路モデル、電気的及び化学的モデル、さらには等価回路モデルと電気的及び化学的モデルの結合モデル等であってもよい。
【0071】
別の実施例において、BMSは参照電極付きの3極電池の負極電位及び参照電極の電位を収集することによって動力電池の負極電位を取得することができ、3極電池は従来の2極電池の正極及び負極を含む以外に、さらに1つの参照電極を追加したものであり、該参照電極は、例えばリチウム金属参照電極、リチウム合金参照電極又は銅線インサイチュリチウムめっき参照電極等である。
【0072】
具体的には、まず3極電池の分極等価モデルを確立することができ、該分極等価モデルは正極パラメータ及び負極パラメータを含むことができ、それにより該3極電池の外部特性及び内部特性を反映し、負極電位を正確に予測する。分極等価モデルは分極Rintモデル、分極一次RC等価回路モデル、分極二次RC等価回路モデル等を含んでもよい。
【0073】
図3は本願の実施例に係る分極一次RC等価回路モデルの概略図である。
図3に示すように、Utは全電池の端子電圧であり、Uca及びUanはそれぞれ正極の参照電極に対する電位及び負極の参照電極に対する電位である。OCVca及びOCVanはそれぞれ正極の開回路電圧及び負極の開回路電圧を示し、Rca_0及びRan_0はそれぞれ正極のオーミック内部抵抗及び負極のオーミック内部抵抗を示し、Uca_p及びUan_pはそれぞれ正極の分極電圧及び負極の分極電圧を示し、Rca_p及びRan_pはそれぞれ正極の分極内部抵抗及び負極の分極内部抵抗を示し、Cca_p及びCan_pはそれぞれ正極の分極容量及び負極の分極容量を示し、Iは電流を示す。Uca_p’及びUan_p’はそれぞれUca_p及びUan_pの導関数を示す。
【0074】
まず、実測によって正極の開回路電圧OCVca及び負極の開回路電圧OCVanを取得してから、公式(1)~(5)に基づいて例えば最小二乗法、遺伝的アルゴリズム等の最適化アルゴリズムと組み合わせてモデルパラメータRca_0、Ran_0、Rca_p、Ran_p、Cca_p及びCan_pを決定し、最後に拡張カルマンフィルタアルゴリズム、比例-積分-微分(Proportion Integral Differential、PID)アルゴリズム又はルーエンバーガー観測器等を利用して負極電位を推定する。
Ut=Uca-Uan (1)
Uca=OCVca+I*Rca_0+Uca_p (2)
Uan=OCVan+I*Ran_0+Uan_p (3)
Uca_p’=I/Cca_p-Uca_p/(Rca_p*Cca_p) (4)
Uan_p’=I/Can_p-Uan_p/(Ran_p*Can_p) (5)
【0075】
以下では拡張カルマンフィルタアルゴリズムを利用して負極電位を推定する実施例を簡単に説明する。拡張カルマンフィルタアルゴリズムは主に、状態方程式(6)及び観測方程式(7)で構成され、さらに再帰方程式(8)-(12)を組み合わせて時間及び状態に対して反復更新を行い状態推定を実現する。
【数1】
【0076】
ただし、Xは推定対象の状態量であり、Uは制御可能入力量であり、Yは出力量であり、Q及びRはそれぞれシステム誤差及び測定誤差であり、Pは推定誤差共分散行列であり、下付きkはk時点での変量を示し、下付きk-1はk-1時点での変量を示し、下付きk+1はk+1時点での変量を示し、上付き
【数2】
は推定値を示し、上付きTは行列に対して転置演算を行うことを示す。Pは推定誤差共分散行列であり、例えば、P
k
-はk時点での事前推定共分散行列を示し、P
kはk時点での事後推定共分散行列を示す。A、B、C及びDは系数行列であり、K
kはカルマンゲインである。
【0077】
X、A、B、C、Q、Rの値を上記の方程式に代入する。
【数3】
【0078】
すなわち負極電位推定方程式によって負極電位を取得することができる。
【数4】
【0079】
動力電池の負極電位を決定した後、BMSは負極電位に基づいて動力電池が充電スタンド電力で充電できるか否かを決定することができる。
【0080】
具体的には、BMSは負極電位に基づいて第2充電電流を決定した後、動力電池の電圧と第2充電電流を乗算し、且つ得られた積を充電スタンド電力と比較することができる。該積が充電スタンド電力に等しい場合、BMSは動力電池が充電スタンド電力で充電できると決定し、動力電池に対する熱管理を停止することができる。該積が充電スタンド電力未満であり、BMSは動力電池が充電スタンド電力で充電できないと決定した場合、BMSは動力電池に対する熱管理を継続することができる。
【0081】
第2充電電流は動力電池の次の時点での充電電流であってもよい。この場合、BMSは動力電池の負極電位に基づいて、動力電池が充電スタンド電力で充電できることを決定するステップは、具体的には、BMSは動力電池の現時点での負極電位に基づいて、第2充電電流を決定するステップと、第2充電電流及び動力電池の電圧に基づいて、動力電池が次の時点で充電スタンド電力で充電できることを決定するステップと、を含む。
【0082】
言い換えれば、BMSはまず現時点での負極電位に基づいて次の時点での充電電流を決定し、次に動力電池の電圧及び次の時点での充電電流に基づいて動力電池が次の時点で充電スタンド電力で充電できることを決定する。これにより、BMSは現時点で動力電池に対する熱管理を変わらず行い、次の時点で動力電池に対する熱管理を停止する。
【0083】
一実現形態において、BMSは予測制御アルゴリズムを介して第2充電電流を決定することができる。例えば、BMSは比例-積分-微分(proportion integral differential、PID)制御アルゴリズムを介して第2充電電流を決定することができる。
【0084】
具体的には、BMSは以下の式によって第2充電電流を得ることができる。
【数5】
【0085】
ここで、I0k+1はk+1時点での充電要求電流すなわち第2充電電流であり、I0kはk時点での充電要求電流すなわち第1充電電流であり、ΔUankはk時点での動力電池の負極電位であり、ΔUank-1はk-1時点での動力電池の負極電位であり、kp、ki、kdはそれぞれPID制御アルゴリズムの比例パラメータ、積分パラメータ及び微分パラメータである。例示的に、kpは20であってもよく、kiは5であってもよく、kdは70であってもよい。
【0086】
上記技術的解決手段は、動力電池の充電過程において、動力電池の負極電位に基づいて動力電池が充電スタンド電力で充電できるか否かをリアルタイムに判断する。動力電池が充電スタンド電力で充電できると決定することは、充電スタンドの最大充電能力が動力電池の充電ニーズを満たせることを示しており、この時に動力電池に対する熱管理を継続しても動力電池の充電速度は向上せず、逆に動力電池の充電速度を低下させる。このような状況では動力電池に対する熱管理を停止して、動力電池を無駄に加熱するという問題を避けて、省エネルギーの目的を達成する。
【0087】
動力電池の温度が低い場合、動力電池にはリチウム析出現象が生じやすく、動力電池の充電過程の正常な実行及び動力電池の安全性能に影響を及ぼす。従って、本願のいくつかの実施例において、ステップ220は具体的に、動力電池の温度を温度閾値と比較して、動力電池の温度が温度閾値よりも低い場合、動力電池に対して熱管理を行うことを決定するステップを含む。
【0088】
例示的に、温度閾値は25℃であってもよい。
【0089】
上記技術的解決手段は、動力電池の温度が低い場合に動力電池に対して熱管理を行い、動力電池の温度を上げて、動力電池に低温下でリチウム析出が生じやすいという問題を回避して、動力電池の充電過程の正常な実行及び動力電池の安全性能を保証する。
【0090】
しかしながら、動力電池の温度が温度閾値より低くても、充電スタンド電力と動力電池の充電電力との間の差が小さすぎて、熱管理最小起動電力の要件を満たさない可能性がある。従って、動力電池の温度が温度閾値より低いだけでなく、充電スタンド電力と充電電力との間の差が熱管理最小起動電力以上である必要があり、この場合に、BMSは動力電池に対する熱管理を行うことを決定する。
【0091】
熱管理最小起動電力は固定値であってもよい。例えば、0.2KWである。又は、熱管理最小起動電力は、動力電池の電池状態パラメータ又は動力電池の現在の外部環境(周囲温度など)の変化に応じて変更してもよい。電池状態パラメータはSOC、温度及びSOHが含まれてもよいがこれに限定されない。
【0092】
これにより、動力電池の温度及び熱管理最小起動電力などの、熱管理の起動に影響する複数の要素を総合的に考慮して、動力電池の熱管理がスムーズに実行されることを効果的に保証する。
【0093】
一般的な状況では、動力電池の充電過程において、動力電池の負極電位は徐々に降下し、動力電池の負極電位がある電位まで降下すると、動力電池にリチウム析出現象が生じる可能性がある。
【0094】
このような状況に基づいて、本願の実施例において、動力電池に対する熱管理を行う過程で、方法200は、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下した場合、BMSは、第1充電電流を第1充電電流よりも小さい第3充電電流に調整するステップをさらに含んでもよい。
【0095】
負極電位安全閾値は動力電池にリチウム析出現象が生じる時の負極電位よりも少し大きくすることができ、すなわち負極電位安全閾値と動力電池にリチウム析出現象が生じる時の負極電位との差は予め設定された範囲内にある。
【0096】
第1充電電流を第3充電電流に調整してから、BMSは充電スタンドに第3充電電流を送信し、それにより充電スタンドは第3充電電流に基づいて動力電池に充電することができる。
【0097】
上記技術的解決手段において、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下することは、該動力電池にリチウム析出現象が発生する可能性があることを示しており、このような状況で動力電池の充電電流を低下させることにより、リチウムイオンの凝集などの問題から生じる動力電池の安全上の問題、例えば電池の燃焼又は爆発等を回避して、動力電池の安全性能を保証することができる。
【0098】
又は、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下せず且つ動力電池の充電時間が時間閾値より長いことは、現時点での充電電流が小さいことを示しており、その場合BMSは動力電池の充電電流を引き上げる、すなわち第1充電電流を、第1充電電流よりも大きい第4充電電流に調整することができる。
【0099】
BMSが充電スタンドに第1充電電流を送信する時、BMSはタイマーを起動し、該タイマーの設定時間は時間閾値であってもよい。タイマーがタイムアウトすると、動力電池の充電時間が時間閾値より長いことを示す。
【0100】
時間閾値は30sであってもよいがこれに限定されない。
【0101】
第1充電電流を第4充電電流に調整してから、BMSは充電スタンドに第4充電電流を送信し、それにより充電スタンドは第4充電電流に基づいて動力電池に充電することができる。
【0102】
上記技術的解決手段において、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで長時間降下しない場合、動力電池の現時点の充電電流が小さすぎることを示す。このような場合に動力電池の充電電流を引き上げて、充電速度を向上させ、動力電池の充電時間を大幅に短縮して、ユーザ体験を向上させることができる。
【0103】
又は、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下せず、且つ動力電池の充電時間が時間閾値より短い場合、動力電池の充電電流を変更せず、BMSは充電スタンドに第1充電電流を送信し続けてもよく、又は、BMSは動力電池の負極電位を取得することにより、負極電位と負極電位安全閾値を比較し続けてもよい。
【0104】
BMSが動力電池の充電電流を調整してから、BMSは計時を再開し続けてもよい。
【0105】
BMSが第1充電電流を第3充電電流に調整してから、BMSは第3充電電流及び充電スタンド電力に基づいて熱管理電流を更新してもよい。同様に、BMSが第1充電電流を第4充電電流に調整してから、BMSは第4充電電流及び充電スタンド電力に基づいて熱管理電流を更新することができる。
【0106】
なお、第3充電電流及び第4充電電流はいずれも第2充電電流よりも小さい。
【0107】
方法200は、BMSが負極電位安全閾値を決定するステップをさらに含んでもよい。
【0108】
一実現形態において、負極電位安全閾値は固定値であってもよい。例えば、負極電位安全閾値はBMSに予め設定されてもよい。
【0109】
他の実現形態において、BMSは動力電池の電池状態パラメータに基づいて、負極電位安全閾値を決定してもよい。
【0110】
動力電池の電池状態パラメータは動力電池の充電前の電池状態パラメータであってもよい。すなわち動力電池の充電前に、BMSは動力電池の電池状態パラメータを取得し、且つ該電池状態パラメータに基づいて負極電位安全閾値を決定する。その後、充電過程全体において、BMSは動力電池の電池状態パラメータを取得せず、負極電位安全閾値も変更しない。
【0111】
動力電池の電池状態パラメータは動力電池の充電過程における電池状態パラメータであってもよい。すなわち動力電池の充電過程において、BMSは動力電池の電池状態パラメータをリアルタイムに取得してもよい。
【0112】
BMSは動力電池の充電過程において、動力電池の電池状態パラメータを周期的に取得してもよい。例えば、動力電池の充電過程において、BMSは5sに1回動力電池の電池状態パラメータを取得してもよい。
【0113】
又は、動力電池の充電過程において、動力電池の電池状態パラメータが1回変化するごとに、BMSは電池状態パラメータを1回取得してもよい。
【0114】
動力電池の電池状態パラメータは充電の過程で絶えず変化する可能性があるため、上記技術的解決手段において、BMSは充電の過程で動力電池の電池状態パラメータを決定し、これにより、決定された電池状態パラメータは現時点での動力電池の実際の電池状態パラメータに最も近いパラメータである可能性があり、BMSが動力電池の最新の電池状態パラメータに基づいて決定する負極電位安全閾値はより正確になり、電池の安全性能をさらに保証するだけでなく、電池の充電速度を効果的に引き上げることができる。
【0115】
本願の実施例において、動力電池のリチウム析出のリスクが高まると、負極電位安全閾値は大きくなる。
【0116】
例として、動力電池のSOCが第1SOC範囲にある場合、負極電位安全閾値は第1設定負極電位安全閾値であり、動力電池のSOCが第2SOC範囲にある場合、負極電位安全閾値は第2設定負極電位安全閾値である。第1SOC範囲内のSOCは第2SOC範囲内のSOCよりも小さく、第1設定負極電位安全閾値は第2設定負極電位安全閾値よりも小さい。
【0117】
つまり、他の要因が変化しない場合、動力電池のSOCが大きいほど、負極電位安全閾値は大きくなる。例えば、動力電池の温度が[-10℃,0℃)の範囲にあり、且つSOHが95%~100%であり、動力電池のSOCが[0%、40%)の範囲にある場合、負極電位安全閾値は10mvであり、動力電池のSOCが[40%、80%)の範囲にある場合、負極電位安全閾値は15mvである。
【0118】
別の例として、動力電池の温度が第1温度範囲にある場合、負極電位安全閾値は第3設定負極電位安全閾値であり、動力電池の温度が第2温度範囲にある場合、負極電位安全閾値は第4設定負極電位安全閾値である。第1温度範囲内の温度は第2温度範囲内の温度よりも低く、第3設定負極電位安全閾値は第4設定負極電位安全閾値よりも大きい。
【0119】
つまり、他の要因が変化しない場合、動力電池の温度が低いほど、負極電位安全閾値は大きくなる。例えば動力電池のSOCが[80%、100%]の範囲にあり、且つSOHが85%~95%であり、動力電池の温度が[-10℃,0℃)の範囲にある場合、負極電位安全閾値は35mvであり、動力電池の温度が[0℃,10℃)の範囲にある場合、負極電位安全閾値は30mvである。
【0120】
さらに別の例として、動力電池のSOHが第1SOH範囲にある場合、負極電位安全閾値は第5設定負極電位安全閾値であり、動力電池のSOHが第2SOH範囲にある場合、負極電位安全閾値は第6設定負極電位安全閾値である。第1SOH範囲内のSOHは第2SOH範囲内のSOHよりも小さく、第5設定負極電位安全閾値は第6設定負極電位安全閾値よりも大きい。
【0121】
つまり、他の要因が変化しない場合、動力電池のSOHが小さいほど、負極電位安全閾値は大きくなる。例えば動力電池のSOCが[0%、40%)の範囲にあり、且つ温度が[-10℃,0℃)の範囲にあり、動力電池のSOHが85%~90%である場合、負極電位安全閾値は18mvであり、動力電池のSOHが90%~95%である場合、負極電位安全閾値は15mvである。
【0122】
なお、本明細書における具体的な例は当業者が本願の実施例をよりよく理解することを助けるためのものに過ぎず、本願の実施例の範囲を限定するものではない。
【0123】
さらに、本願の実施例における「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」は異なる対象を区別するためのものであるに過ぎず、本願の実施例の範囲を限定するためのものではない。
【0124】
上記技術的解決手段は、動力電池のリチウム析出のリスクの程度に基づいて負極電位安全閾値を設定することにより、一方では、リチウム析出のリスクが高い動力電池に対応する負極電位安全閾値を相対的に大きく設定し、動力電池のリチウム析出のリスクを効果的に抑制して、動力電池の安全性能を向上させることができる。他方では、リチウム析出のリスクが低い動力電池に対応する負極電位安全閾値を相対的に小さく設定し、動力電池の安全性能に影響しない前提で、動力電池の充電速度を保証することができる。
【0125】
他の実現形態において、BMSは動力電池の充電モードに基づいて、動力電池の負極電位安全閾値を決定してもよい。
【0126】
動力電池の充電モードは超急速充電モード、通常急速充電モード、長寿命充電モード等が含まれてもよいがこれらに限定されない。超急速充電モードは充電速度のニーズに応えるものであり、一般的に充電電流が大きい。ユーザが直ぐに該動力電池を含む電力消費装置を使用しようとする場合、ユーザは一般的に超急速充電モードを選択する。超急速充電モードに対して、通常急速充電モードは充電速度に対するニーズがそれほど高くなく、充電速度と充電安全性のバランスを図った充電モードである。長寿命充電モードは充電安全性のニーズに応えるものであり、充電速度に対する要求は低い。ユーザは夜間に動力電池を充電する場合、一般的に、長寿命充電モードを選択する。なお、超急速充電モード、通常急速充電モード、長寿命充電モードの順に充電電流が減少し、充電時間が増加する。
【0127】
当然のことながら、動力電池の充電モードには定時定SOCモードなどの他の充電モードが含まれてもよく、該定時定SOCモードは規定の時間内に特定のSOCまで充電する充電モードであり、予約機能に応えるものである。
【0128】
BMSは充電過程全体で充電モードを1回だけ取得してもよい。言い換えれば、動力電池の充電過程全体で、充電モードは固定されている。又は、ユーザが充電過程で充電モードを変更する可能性があることを考慮し、例えば、ユーザが充電を開始した直後は長寿命充電モードを選択し、一定時間充電した後にユーザに急用ができて、該電力消費装置を急いで使用しなければならない場合、充電モードを超急速充電モードに変更することがある。従って、BMSは充電過程で充電モードを複数回取得してもよい。例示的に、BMSは充電モードを周期的に取得し、例えば、BMSは5sに1回充電モードを取得することができる。
【0129】
例として、BMSは取得した充電モードに基づき、及び充電モードと負極電位安全閾値との間の対応関係に基づいて、負極電位安全閾値を決定することができる。
【0130】
充電モードと負極電位安全閾値との間の対応関係はBMSに予め設定されてもよい。例えば、充電モードと負極電位安全閾値との間の対応関係は、大量の実験データによって得られたものであってもよく、その後、BMSの出荷時に技術者は対応関係をBMSに設定することができる。
【0131】
例として、充電モードと負極電位安全閾値との間の対応関係は表又はグラフの形態でBMSに予め設定されてもよいが、これには限定されない。これにより、BMSは内部ルックアップテーブル又は内部マップを介して充電モードを決定することができる。
【0132】
充電モードと負極電位安全閾値との間の対応関係は、BMSが他の機器又はクラウドから取得したものであってもよい。
【0133】
上記技術的解決手段において、充電モードと負極電位安全閾値との間の対応関係に基づいて負極電位安全閾値を決定することは、実現しやすいだけでなく、必要な時間が短い。
【0134】
通常は、ユーザが選択する充電モードは、該ユーザの現在のニーズに関連している。例えば、ユーザが超急速充電モードを選択した場合、該ユーザは動力電池の電気量が短時間のうちに所望の電気量まで充電されること又は満充電されることを希望していることを示している。この場合、負極電位安全閾値は高すぎてはならない。負極電位安全閾値が高すぎると、動力電池の充電電流が制限され、動力電池の充電時間が長くなり、ユーザのニーズとは逆行する。さらに、例えば、ユーザが長寿命充電モードを選択した場合、該ユーザはその後の一定期間内に該動力電池を含む電力消費装置を使用しない可能性があることを示しており、充電速度に対するユーザのニーズは低く、動力電池の安全性能をより重視している。この場合、負極電位安全閾値は低すぎてはならない。負極電位安全閾値が低すぎると、動力電池の負極電位がリチウム析出の臨界電位まですでに降下しているが、負極電位安全閾値まで降下していないという状況が出現する可能性があり、動力電池の安全性能に影響を及ぼす。
【0135】
そのため、他の要因が同じである場合、充電電流が大きい充電モードであれば、それに対応する負極電位安全閾値は小さくなる。
【0136】
充電モードが少なくとも第1充電モードと第2充電モードを含む場合、第1充電モードでは、動力電池の充電電流は第1充電電流であり、第2充電モードでは、動力電池の充電電流は第2充電電流であり、第1充電電流は第2充電電流よりも大きく、第1充電モードに対応する負極電位安全閾値は、第2充電モードに対応する負極電位安全閾値よりも小さい。例えば、第1充電モードが超急速充電モードであり、第2充電モードが通常急速充電モードで、その他の条件が同じであれば、超急速充電モードに対応する負極電位安全閾値は8mvであり、通常急速充電モードに対応する安全閾値は12mvである。
【0137】
なお、これまでBMSが動力電池の電池状態パラメータに基づいて負極電位安全閾値を決定するという実現形態、及び充電モードに基づいて負極電位安全閾値を決定するという実現形態をそれぞれ説明したが、これは2つの実現形態が独立していることを意味するものではない。矛盾しない限り、該2つの実現形態を組み合わせて使用することができる。例えば、BMSは動力電池の充電モード及び動力電池の電池の電池状態パラメータに基づいて、負極電位安全閾値を決定してもよい。
【0138】
本願の実施例の動力電池充電の方法200をより明確に理解するために、以下では
図4を参照しながら本願の可能な実施例の動力電池充電の方法を説明する。
【0139】
ステップ401では、BMSは動力電池が充電状態にあるか否かを判断する。
【0140】
動力電池が充電状態にある場合、ステップ402を実行し、動力電池が充電状態にない場合、ステップ416を実行する。
【0141】
ステップ402では、BMSは動力電池の第1充電電流I1を決定する。
【0142】
具体的には、BMSはまず動力電池のSOC、SOH、温度及び電圧等のパラメータを取得し、且つ動力電池のSOC、SOH、温度及び電圧等のパラメータに基づいてI1を決定する。
【0143】
ステップ403では、BMSは動力電池に対して熱管理を行うか否かを判断する。
【0144】
BMSは動力電池の温度を温度閾値と比較して、動力電池の温度が温度閾値よりも低い場合、BMSは動力電池に対して熱管理を行うことを決定し、ステップ404を実行し、動力電池の温度が温度閾値以上である場合、BMSは動力電池に対して熱管理を行わないことを決定し、ステップ406を実行する。
【0145】
ステップ404では、BMSは第1充電電流I1及び充電スタンド電力に基づいて、熱管理電流I0を決定する。
【0146】
ステップ405では、BMSは充電スタンドに第1充電電流I1及び熱管理電流I0を送信する。
【0147】
ステップ406では、BMSは充電スタンドに第1充電電流I1を送信する。
【0148】
ステップ407では、充電過程において、BMSは動力電池の負極電位をリアルタイムに取得する。
【0149】
ステップ408では、BMSは動力電池の負極電位と負極電位安全閾値を比較して、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下したか否かを判断する。
【0150】
動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下した場合、ステップ409を実行し、動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下していない場合、ステップ410を実行する。
【0151】
ステップ409では、BMSは第1充電電流I1を第3充電電流I3に調整し、且つ充電スタンドに第3充電電流I3を送信し、それにより充電スタンドはI3に基づいて動力電池に充電する。
【0152】
ステップ410では、BMSは動力電池の充電時間が時間閾値より長いか否かを判断する。
【0153】
充電時間が時間閾値より長い場合、BMSはステップ411を実行し、充電時間が時間閾値より短い場合、BMSはステップ407を実行する。
【0154】
ステップ411では、BMSは第1充電電流I1を第4充電電流I4に調整し、且つ充電スタンドに第4充電電流I4を送信し、それにより充電スタンドはI4に基づいて動力電池に充電する。
【0155】
ステップ412では、BMSは動力電池に対する熱管理を継続するか否かを判断する。
【0156】
具体的には、BMSは動力電池の負極電位に基づいて第2充電電流I2を決定し、動力電池の電圧と第2充電電流I2との積が充電スタンド電力に等しい場合、BMSは次の時点で動力電池に対する熱管理を停止することを決定し、且つステップ413を実行し、動力電池の電圧と第2充電電流I2との積が充電スタンド電力よりも小さい場合、BMSは動力電池に対する熱管理を継続することを決定し、且つステップ414を実行する。
【0157】
ステップ413では、BMSは充電スタンドに第2充電電流I2を送信する。
【0158】
ステップ414では、BMSは第3充電電流I3に基づいて熱管理電流を更新し、又は第4充電電流I4に基づいて熱管理電流を更新する。
【0159】
ステップ415では、BMSは充電スタンドに第3充電電流I3及び更新後の熱管理電流を送信し、又は、充電スタンドに第4充電電流I4及び更新後の熱管理電流を送信する。
【0160】
ステップ416では、BMSは動力電池が満充電状態又はコネクタが外された状態にあるか否かを判断する。
【0161】
動力電池が満充電状態又はコネクタが外された状態にある場合、今回の充電過程を終了し、動力電池が満充電状態又はコネクタが外された状態にない場合、BMSはステップ407を実行し続ける。
【0162】
以上は本願の実施例の方法実施例を詳細に説明したものであり、以下は本願の実施例の装置実施例を説明し、装置実施例と方法実施例は互いに対応することから、詳細に説明しない部分は上記の各方法実施例を参照し、装置は上記方法における任意の実現可能な形態を実現することができる。
【0163】
図5は本願の一実施例に係るBMS500の概略ブロック図を示す。該BMS500は上記本願の実施例に係る動力電池充電の方法200を実行することができる。
図5に示すように、該BMS500は、決定ユニット510と、通信ユニット520と、を含むことができる。
【0164】
決定ユニット510は、前記動力電池の第1充電電流を決定することに用いられる。
【0165】
前記決定ユニット510は、前記動力電池の温度に基づいて、前記動力電池に対して熱管理を行うか否かを決定することにさらに用いられる。
【0166】
前記決定ユニット510は、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定した場合、前記第1充電電流及び充電スタンド電力に基づいて、熱管理電流を決定することにさらに用いられる。
【0167】
通信ユニット520は、充電スタンドに前記第1充電電流と前記熱管理電流を送信することにさらに用いられ、前記第1充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ、前記熱管理電流は前記動力電池に対して熱管理を行うことに用いられる。
【0168】
本願の一実施例において、前記第1充電電流は前記動力電池の温度下で許容される最大充電電流であってもよい。
【0169】
本願の一実施例において、前記動力電池の温度は前記動力電池の充電前の温度であってもよい。
【0170】
本願の一実施例において、前記電池管理システム500は、前記動力電池の充電過程において、前記動力電池の負極電位を取得することに用いられる取得ユニットをさらに含み、前記決定ユニット510は、前記負極電位に基づいて、前記動力電池が前記充電スタンド電力で充電できることを決定することにさらに用いられ、前記電池管理システム500は、前記動力電池に対する熱管理を停止することに用いられる管理ユニットをさらに含み、前記通信ユニット520は、前記充電スタンドに第2充電電流を送信することにさらに用いられ、前記第2充電電流は前記動力電池に充電することに用いられ且つ前記充電スタンド電力に対応する充電電流であってもよい。
【0171】
本願の一実施例において、前記決定ユニット510は具体的に、前記動力電池の現時点での負極電位に基づいて、前記動力電池の次の時点での充電電流である前記第2充電電流を決定することと、前記第2充電電流及び前記動力電池の電圧に基づいて、前記動力電池が次の時点で前記充電スタンド電力で充電できることを決定することと、に用いられてもよい。
【0172】
本願の一実施例において、前記決定ユニット510は具体的に、前記動力電池の温度を温度閾値と比較することと、前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低い場合、前記動力電池に対して熱管理を行うことを決定することと、に用いられてもよい。
【0173】
本願の一実施例において、前記決定ユニット510は具体的に、前記動力電池の温度が前記温度閾値よりも低く、且つ前記充電スタンド電力と前記動力電池の充電電力との間の差が熱管理最小起動電力以上である場合、前記動力電池に対する熱管理を行うことを決定することに用いられ、前記充電電力は前記第1充電電流と前記動力電池の電圧との間の積であってもよい。
【0174】
本願の一実施例において、前記電池管理システム500は、前記動力電池に対する熱管理を行う過程で、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下した場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも小さい第3充電電流に調整することに用いられる調整ユニットをさらに含んでもよい。
【0175】
本願の一実施例において、前記電池管理システム500は、前記動力電池に対して熱管理を行う過程で、前記動力電池の負極電位が負極電位安全閾値まで降下せず且つ前記動力電池の充電時間が時間閾値よりも長い場合、前記第1充電電流を、前記第1充電電流よりも大きい第4充電電流に調整することに用いられる調整ユニットをさらに含んでもよい。
【0176】
本願の一実施例において、前記決定ユニット510は、前記動力電池の充電状態SOC、温度及び劣化状態SOHのうちの少なくとも1つを含む前記動力電池の電池状態パラメータに基づいて、前記負極電位安全閾値を決定することにさらに用いられてもよい。
【0177】
なお、該BMS500は方法200におけるBMSの対応する操作を実現することができ、簡潔にするために、ここでは説明を省略する。従って、該BMS500は上記の方法200と同じ効果を実現することができ、簡潔にするために、ここでは説明を省略する。
【0178】
図6は本願の実施例に係るBMSのハードウェア構造概略図である。BMS600は、メモリ601と、プロセッサ602と、通信インタフェース603と、バス604と、を含む。メモリ601、プロセッサ602、通信インタフェース603はバス604を介して互いの間の通信接続を実現する。
【0179】
メモリ601はリードオンリメモリ(read-only memory、ROM)、スタティックメモリデバイス及びランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)であってもよい。メモリ601はプログラムを記憶することができ、メモリ601に記憶されたプログラムがプロセッサ602によって実行されると、プロセッサ602及び通信インタフェース603は本願の実施例の動力電池充電の方法における各ステップを実行することに用いられる。
【0180】
プロセッサ602は汎用の中央処理装置(central processing unit、CPU)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、グラフィックスプロセッサ(graphics processing unit、GPU)又は1つ又は複数の集積回路を用いてもよく、関連プログラムを実行し、それにより本願の実施例の装置におけるユニットが実行すべき機能を実現し、又は本願の実施例の動力電池充電の方法を実行することに用いられる。
【0181】
プロセッサ602は信号の処理能力を有する集積回路チップであってもよい。実現の過程で、本願の実施例の動力電池充電の方法における各ステップは、プロセッサ602におけるハードウェアの集積論理回路又はソフトウェア形式のコマンドによって完了することができる。
【0182】
上記プロセッサ602はさらに汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor、DSP)、ASIC、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)又はその他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタロジックデバイス、ディスクリートハードウェアコンポーネントであってもよい。本願の実施例に開示された各方法、ステップ及び論理ブロック図を実現又は実行することができる。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよく、又は該プロセッサは任意の従来のプロセッサ等であってもよい。本願の実施例に開示された方法のステップを組み合わせてハードウェアプロセッサで直接実現して実行し完了させてもよく、又はプロセッサにおけるハードウェア及びソフトウェアモジュールの組み合わせで実行し完了させてもよい。ソフトウェアモジュールはランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、リードオンリメモリ、プログラマブルリードオンリメモリ又はイレーサブルプログラマブルメモリ、レジスタ等の本分野における成熟した記憶媒体内に位置してもよい。該記憶媒体はメモリ601に位置し、プロセッサ602はメモリ601内の情報を読み取り、ハードウェアを組み合わせて本願の実施例のBMSに含まれるユニットが実行すべき機能を完了させ、又は本願の実施例の動力電池充電の方法を実行する。
【0183】
通信インタフェース603は、BMS600と他の機器又は通信ネットワークとの間の通信を実現するために、トランシーバなどであるがこれに限定されない送受信装置を使用する。例えば、BMS600は通信インタフェース603を介して充電スタンドに充電要求情報を送信することができる。
【0184】
バス604は、BMS600に含まれる各要素(例えば、メモリ601、プロセッサ602、通信インタフェース603)間で情報を転送するための経路が含まれてもよい。
【0185】
なお、上記BMS600はメモリ、プロセッサ、通信インタフェースのみを示しているが、具体的な実現過程では、当業者であれば理解されるように、BMS600は通常の運用に不可欠な他のデバイスをさらに含むことができる。同時に、当業者であれば理解されるように、必要に応じて、BMS600は他の付加機能を実現するハードウェアデバイスをさらに含むことができる。また、当業者であれば理解されるように、BMS600は本願の実施例を実現するために必要なデバイスのみを含むことができ、
図6に示すデバイスのすべてを含む必要はない。
【0186】
本願の実施例は、機器が実行するためのプログラムコードを記憶し、前記プログラムコードは上記動力電池充電の方法におけるステップを実行するためのコマンドを含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。
【0187】
本願の実施例は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶され且つプログラムコマンドを含むコンピュータプログラムを含み、前記プログラムコマンドがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに上記動力電池充電の方法を実行させる、コンピュータプログラム製品をさらに提供する。
【0188】
上記コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は一時的なコンピュータ可読記憶媒体であってもよく、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であってもよい。
【0189】
なお、本願の各実施例において、各過程の番号の大きさは実行順序の前後を意味するものではなく、各過程の実行順序はその機能及び内部論理に基づいて決定されるべきであり、本願の実施例の実施過程に対していかなる限定も構成すべきではない。
【0190】
さらに、本明細書に記載の各実施形態は、単独で実施してもよく、組み合わせて実施してもよく、本願の実施例はこれに限定されない。
【0191】
好ましい実施例を参照して本願を説明したが、本願の範囲を逸脱することなく、種々の改良を行い、その構成要素を等価物に置換することができる。特に、各実施例で言及した各技術的特徴は、構造的な矛盾がない限り、いずれも任意の方法で組み合わせることができる。本願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲に含まれる全ての技術的解決手段を含む。
【符号の説明】
【0192】
100 充電システム
110 充電装置
120 電池システム
121 動力電池
122 BMS
130 電線
140 通信線
500 電池管理システム
510 決定ユニット
520 通信ユニット
600 装置
601 メモリ
602 プロセッサ
603 通信インタフェース
604 バス