(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】部品のカバー構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20250418BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20250418BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
B60R16/02 610Z
B62D25/08 H
B60R16/04 J
(21)【出願番号】P 2021047034
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶野 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰稔
(72)【発明者】
【氏名】岸本 航貴
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347326(JP,A)
【文献】特開2009-083637(JP,A)
【文献】特開2008-162386(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229459(US,A1)
【文献】特開2015-009734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B62D 25/08
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム内において蓋部材が部品を覆うように取付けられている部品のカバー構造において、
前記蓋部材は、外力が加えられることで部品側に撓み変形可能であるとともに、前記蓋部材に設けられた嵌合部が前記エンジンルームに設けられた被嵌合部に嵌合されることで前記エンジンルーム内に取付けられており、
前記嵌合部は、前記蓋部材の撓み変形方向と交差する嵌合方向より前記被嵌合部に嵌合されているとともに、前記蓋部材が撓み変形することで嵌合方向とは逆向きに移動するように構成されて
おり、
前記エンジンルームには、前記車両のエンジンフードの後端部を支持するカウルルーバが配設されていると共に、前記蓋部材は、前記カウルルーバに設けられた前記被嵌合部に前記嵌合部が嵌合することで、前記部品と前記カウルルーバ間に渡されて
おり、
嵌合方向における前記蓋部材の一端部に前記嵌合部が設けられているとともに、前記一端部とは反対側の前記蓋部材の他端部に係合部が設けられ、前記係合部は、前記エンジンルームに設けた被係合部に対して、外力が加えられることで回動するように係合されている部品のカバー構造。
【請求項2】
前記蓋部材は、外力が加わることで車両高さ方向に撓み変形するとともに、前記嵌合部は、車両高さ方向に交差する嵌合方向から前記被嵌合部に嵌合されている請求項1に記載の部品のカバー構造。
【請求項3】
前記嵌合部と前記被嵌合部とは、前記嵌合部と前記被嵌合部のいずれか一方に部分的に設けられた突部を、前記一方とは異なる前記嵌合部と前記被嵌合部のいずれか他方に、前記蓋部材の撓み変形方向から接触させた状態で嵌合している請求項1又は2に記載の部品のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両のエンジンルーム内において蓋部材が部品を覆うように取付けられている部品のカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の部品のカバー構造に関する技術が特許文献1に開示されている。この特許文献1では、電気部品を収容したリレーボックスが、車両前部のエンジンルーム内に配設されている。このリレーボックスは、電気部品を囲う箱状の本体部と、本体部の上部開口を覆う蓋部とから構成されている。そして蓋部(本発明の蓋部材に相当)は、電気部品の上側を覆う上壁と、この上壁の周縁から下方に垂設された四方の周壁を有し、周壁に設けられた係合部が本体部の上部に係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記車両では、車両前部に加わる衝撃荷重を、エンジンルームを囲う車両部分がエンジンルーム内に変形することで吸収する。このような構成では、車両部分の変形ストローク、例えばエンジンフードの場合には車両高さ方向の変形ストロークを確保することが望ましい。しかし公知技術の構成では、エンジンルーム内にリレーボックスがあり、その蓋部が、エンジンフード等の車両部分の下側に配置されている。このため上記構成では、車両部分の変形が蓋部材に邪魔されるなどして、当該車両部分の変形ストロークの確保、即ち、衝撃荷重の吸収性の確保に手間取るおそれがあった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材をエンジンルーム内に取付けておくことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の部品のカバー構造では、車両のエンジンルーム内において蓋部材が部品を覆うように取付けられている。この種の構成では、車両の衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材をエンジンルーム内に取付けておくことが望ましい。そこで本発明の蓋部材は、外力が加えられることで部品側に撓み変形可能であるとともに、蓋部材に設けられた嵌合部がエンジンルームに設けられた被嵌合部に嵌合されることでエンジンルーム内に取付けられている。そして嵌合部は、蓋部材の撓み変形方向と交差する嵌合方向より被嵌合部に嵌合されているとともに、蓋部材が撓み変形することで嵌合方向とは逆向きに移動するように構成されている。そしてエンジンルームには、車両のエンジンフードの後端部を支持するカウルルーバが配設されていると共に、蓋部材は、カウルルーバに設けられた被嵌合部に嵌合部が嵌合することで、部品とカウルルーバ間に渡されている。本発明では、エンジンルームを囲う車両部分の変形の際に、この車両部分から外力が加えられた蓋部材が撓み変形する。そして蓋部材が撓み変形して、その嵌合部が嵌合方向とは逆向きに移動することにより、嵌合部が被嵌合部から外れるようになる。このため車両部分がエンジンルーム内に変形して衝撃を吸収する際に、この車両部分の変形ストロークを蓋部材が外れることで確保することが可能となる。そして本発明では、エンジンフードがカウルルーバとともに変形して衝撃荷重を吸収する際に、蓋部材が車両高さ方向に撓み変形して、被嵌合部から嵌合部が外れるようになる。
そして第1発明の部品のカバー構造では、嵌合方向における蓋部材の一端部に嵌合部が設けられているとともに、一端部とは反対側の蓋部材の他端部に係合部が設けられ、前記係合部は、前記エンジンルームに設けた被係合部に対して、外力が加えられることで回動するように係合されている。本発明では、蓋部材に設けた係合部を被係合部に係合しているため、撓み変形していない自由状態の蓋部材において、被嵌合部に対する嵌合部の意図しない抜外れが生じ難くなっている。
【0006】
第2発明の部品のカバー構造は、第1発明の部品のカバー構造において、蓋部材は、外力が加わることで車両高さ方向に撓み変形するとともに、嵌合部は、車両高さ方向に交差する嵌合方向から被嵌合部に嵌合されている。本発明では、例えば車両部材としてのエンジンフードがエンジンルーム内に変形して衝撃を吸収する際に、このエンジンフードから外力の加えられた蓋部材が車両高さ方向に撓み変形して、被嵌合部から嵌合部が外れるようになる。
【0008】
第3発明の部品のカバー構造は、第1発明又は第2発明の部品のカバー構造において、嵌合部と被嵌合部とは、嵌合部と被嵌合部のいずれか一方に部分的に設けられた突部を、一方とは異なる嵌合部と被嵌合部のいずれか他方に、蓋部材の撓み変形方向から接触させた状態で嵌合している。本発明の嵌合部と被嵌合部とは、突部を介して部分的に接触しているとともに、突部の介在で蓋部材の撓み変形方向(例えば車両高さ方向)の隙が生じ難くなっている。このため嵌合部は、嵌合方向とは逆向きに移動しやすくなっている一方、被嵌合部に対して撓み変形方向には動き難くなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第1発明によれば、車両の衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材をエンジンルーム内に取付けておくことができる。また第1発明によれば、車両高さ方向から加わる衝撃荷重の吸収性をより確実に確保することができる。そして第1発明によれば、蓋部材をエンジンルーム内に更に適切に取付けておくことができる。また第2発明によれば、車両高さ方向から加わる衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材をエンジンルーム内に取付けておくことができる。また第3発明によれば、車両の衝撃荷重の吸収性をさらに確実に確保しつつ、蓋部材をエンジンルーム内により適切に取付けておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図2のIII-III線断面に相当する車両上部の断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線断面に相当する車両上部の断面図である。
【
図6】嵌合部と被嵌合部を示す蓋部材とカウルルーバの断面図である。
【
図7】蓋部材を取付ける際の嵌合部と被嵌合部の断面図である。
【
図8】外力の加えられた嵌合部と被嵌合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1~
図8を参照して説明する。各図には、便宜上、車両用シート装置の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。
図3では、便宜上、外力の加えられた蓋部材の上面を破線で図示し、カウルルーバから外れた蓋部材を二点破線で図示する。
【0013】
[車両の前部の概要]
部品のカバー構造について説明する前に、まず車両10の前部の概要について説明する。車両10の前部には、
図1に示すように、車両10の車室Rの前側に設けられたエンジンルームERと、エンジンルームERの上側を開閉可能に構成されたエンジンフード16とが設けられている。このエンジンルームERは、
図2に示すように、ダッシュパネル12によって車室Rと仕切られている。またエンジンルームERの車幅方向(左右方向)側部には、
図2及び
図3に示すように、その上部側壁を構成するアッパメンバ17と、アッパメンバ17の車両10外側を覆うフェンダパネル18とが設けられている。そしてエンジンルームERの後側には、
図2及び
図4を参照して、車幅方向に延びるカウルルーバ15が設けられている。このカウルルーバ15は、ダッシュパネル12の上側に設けられたカウルパネル13上に配設されており、このカウルルーバ15によってエンジンフード16の後端部が支持されている。
【0014】
ここで
図4に示すカウルルーバ15は、フロントガラス14から流下した水を車両10の車幅方向両端部まで導くとともに、外気導入機能を持った車体外装部品である(なお
図4では、便宜上、カウルパネル及びダッシュパネルの図示を省略する)。このカウルルーバ15は、車両前後方向における途中部分に山部151を備えており、その山部151が車幅方向に延びるように形成されている。このカウルルーバ15の山部151の後側は、フロントガラス14側が低くなるように緩やかに傾斜しており、その後端縁151bが、フロントガラス14の下端縁に面一な状態で接続されている。またカウルルーバ15の山部151の前側には、車幅方向に延びる溝部152が形成されており、溝部152の後部をなす後側壁部153が、山部151と溝部152との間に形成されている。また溝部152には、その底板152bから傾斜状に立ち上がる前側壁部154が形成され、その前側壁部154の上端位置にフランジ部154fが車幅方向に延びるように形成されている。そしてカウルルーバ15のフランジ部154fには、エンジンフード16の後端部が支持されており、さらにエンジンフード16とカウルルーバ15の間にはウエザストリップ155が設けられている。
【0015】
また
図1~
図3に示すエンジンルームER内には、エンジンカバーECによって覆われたエンジンEが配設されている。またエンジンカバーECの車両右側には、
図2に示すように、蓋部材45によって覆われた部品30(例えばバッテリやブレーキ関連部品)が設置されている。この部品30の前側にはリレーボックス35が配置され、部品30の車両後側にはカウルルーバ15が配置されている。そして部品30は、
図3に示すトレイ32上に設置されており、このトレイ32は、右側のホイールハウス20を構成するエプロンパネルに設置されている。そして部品30の左側(エンジンE側)は隔壁部材43によって囲われている。この隔壁部材43は、エンジンEからの輻射熱を遮る耐熱性の部材であり、前後に長い塀状に形成されて部品30を左側から囲っている。そして隔壁部材43の上端には、囲いの外側方向に突出するフランジ状の凸状部435が形成され、この凸状部435上に蓋部材45が配置されている。
【0016】
[部品のカバー構造]
そして本実施例の部品のカバー構造では、
図2~
図4に示すエンジンルームER内において、上述した蓋部材45が部品30の上側を覆っている。この蓋部材45は、後述するようにエンジンルームERに取付けられており、蓋部材45の上側は、
図4に示す閉じ状態のエンジンフード16で覆われている。そして車両10においては、車両10の前部に加わる衝撃荷重を、エンジンルームERを囲うように設けられた車両部分(本実施例ではエンジンフード16)が変形することで吸収する。この種の構成では、エンジンフード16の変形ストロークSK、即ち、衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材45をエンジンルームER内に取付けておくことが望まれる。そこで本実施例では、後述する構成によって、車両10の衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材45をエンジンルームER内に取付けておくこととした。以下、蓋部材45の構成とその取付け手法について詳述する。
【0017】
[蓋部材]
蓋部材45は、
図5に示すように、上方視で概ね矩形の天井部451と、その天井部451の左側から前側にかけての部分に設けられた傾斜壁部453とから浅いハット状に形成されている。この傾斜壁部453の左端縁には、隔壁部材43の凸状部435に対して上から重ね合わされるフランジ状の縁部453fが形成されている。また天井部451は、
図4に示すリレーボックス35とカウルルーバ15との間に渡されて、エンジンルームERに設置された部品30を上側から覆っている。なお天井部451と部品30との間には、適度な車両高さ方向のクリアランスCが設けられている。そして蓋部材45は、適度な可撓性を備えた素材(例えば樹脂やエラストマ)で形成されている。このため蓋部材45は、後述するようにエンジンフード16から外力を加えられることで部品側、即ち、車両高さ方向となる下方向に撓み変形するようになっている。
【0018】
[嵌合部]
また
図5に示す天井部451の後端部E1は、蓋部材45の一端部に相当し、一対の嵌合部50,50Xが設けられている。ここで各嵌合部50,50Xは、概ね同一の基本構成を有して、天井部451の後端部E1にて左右に分かれて設けられている(
図5では、便宜上、左側の嵌合部の各構成にのみ詳細な符号を付す)。例えば左側の嵌合部50は、上方視で概ね矩形の平板状に形成されており、天井部451の後端部E1の左側から概ね直線的に車両後側に突出している。この左側の嵌合部50の下面には、
図5及び
図6を参照して、一対の下側突部51,51Xが左右対称に一体形成されている。そして左右の下側突部51,51Xは、いずれも車両前後方向に延びる縦壁状に形成され、嵌合部50の下面で左右に適宜の間隔をあけて並列している。
【0019】
[被嵌合部]
そして
図5に示す各嵌合部50(50X)は、エンジンルームERにおいて蓋部材45の車両後側に設けられた各被嵌合部60(60X)に嵌合することが可能となっている。即ち、エンジンルームERの後端側にはカウルルーバ15が配設されており、このカウルルーバ15の前側壁部154に一対の被嵌合部60,60Xが設けられている。ここで各被嵌合部60,60Xは、正面視で横長な孔状に形成されており、カウルルーバ15の前側壁部154にて左右に分かれて設けられている(
図5では、便宜上、左側の被嵌合部の各構成にのみ詳細な符号を付す)。
【0020】
そして
図5及び
図6を参照して、左側の被嵌合部60は、その上縁部601と下縁部602が、左側の嵌合部50を挿通できるように車両高さ方向に離間している(離間寸法S1)。また上縁部601と下縁部602とは、左側の嵌合部50を斜め上側から受け入れられるように車両前後方向に離間しており、上縁部601に対して下縁部602が車両前側位置に配置されている(離間寸法S2、S2>S1)。また左側の被嵌合部60の上縁部601側には一対の上側突部61,61Xが左右対称に一体形成されている。これら各上側突部61,61Xは、いずれもカウルルーバ15の前側壁部154に対して車両前側に起立する縦壁状に形成されている。そして各上側突部61,61Xは、前側壁部154に沿うように車両前後方向に延びているとともに、各上側突部61,61Xの下端が、各被嵌合部60の上縁部601よりも車両下側に突出している。
【0021】
[係合部、被係合部]
また
図5に示す前側の傾斜壁部453の前端部E2は、一端部とは反対側の蓋部材45の他端部に相当し、一対の係合部70,70Xが設けられている。ここで各係合部70,70Xは、概ね同一の基本構成を有して、前側の傾斜壁部453の前端部E2にて左右に分かれて設けられている(
図5では、便宜上、左側の係合部の各構成にのみ詳細な符号を付す)。例えば左側の係合部70は、前側の傾斜壁部453の前端部E2から下側に張り出す窓状の受部71と、受部71から上側に湾曲して突出する係合爪72とを備えている。この係合爪72は、受部71側となる下側に撓み変形可能とされている。そして
図2を参照して、各係合部70(70X)は、エンジンルームERにおいて蓋部材45の前側に設けられた各被係合部80(80X)に係合することが可能となっている。即ち、エンジンルームERの蓋部材45より前側にはリレーボックス35が配設されており、このリレーボックス35の上部の後端縁に一対の被係合部80,80Xが設けられている。ここで各被係合部80,80Xは、概ね同一の基本構成を有して、リレーボックス35の後端縁で左右に分かれて設けられている。例えば
図4に示す左側の被係合部80は、左側の係合部70の係合爪72を受け入れられるように、リレーボックス35の後面開口821と上面開口822をつなぐ通路状に形成されている。
【0022】
[蓋部材の取付け手法]
蓋部材45を、
図2~
図4に示すように、部品30の上側を覆うように配置させてエンジンルームER内に取り付ける。この蓋部材45の取付けに際しては、
図7に示すように蓋部材45を車両後側且つ下側に傾斜させて、その後端部E1に設けた各嵌合部50等を下側に向けておく。つづいて蓋部材45の各嵌合部50等を、車両後側且つ下側に移動させながら、カウルルーバ15の各被嵌合部60の上縁部601と下縁部602の間に差し込んでいく(
図7の矢線A1を参照)。このとき各嵌合部50等の上面を、各被嵌合部60等の上側突部61,61Xに沿わせながら移動させることで、上縁部601と下縁部602の間にスムーズに差し込むことができる。そして各嵌合部50等を各被嵌合部60等に差し込んだ状態で、蓋部材45前側を下側におろしていく(
図7の矢線A2を参照)。このように本実施例では、蓋部材45を傾けて各嵌合部50等を各被嵌合部60等に差し込んだのち、この蓋部材45の前側を下側におろすという二動作で、蓋部材45の後端部E1をエンジンルームERにスムーズに取付けられる。このため上記構成によれば、蓋部材45の組付け作業性向上に資するとともに、作業タクト短縮や組付け不良の低減を図ることが可能となる。そして蓋部材45の各嵌合部50等は、
図6に示すように、その嵌合方向となる車両後方向より各被嵌合部60等に嵌合される。この各嵌合部50等の嵌合方向となる車両後方向は、蓋部材45の撓み変形方向となる車両高さ方向(
図6の上下方向)と交差する方向となっている。そして
図4に示すようにエンジンフード16でエンジンルームERを閉じた場合、このエンジンフード16は、その後端部がカウルルーバ15に支持された状態となって蓋部材45の上側を覆えるようになる。
【0023】
ここで
図5に示す各嵌合部50,50Xの嵌合状態を、左側の嵌合部50を一例に説明する。
図5及び
図6を参照して、左側の嵌合部50は、その下面(一方)に設けられた各下側突部51,51Xを介して左側の被嵌合部60の下縁部602(他方)に部分的に接触、即ち、左右方向では当該突部51,51Xのみで接触している。また左側の嵌合部50の上面(別の他方)には、左側の被嵌合部60の上縁部601(別の一方)に設けられた上側突部61,61Xが部分的に接触している。こうして左側の嵌合部50と被嵌合部60とは、各突部(51,61等)を介して部分的に接触し、さらに当該突部の介在で蓋部材45の撓み変形方向、即ち、上下方向の隙が生じ難くなっている。このため車両走行時の振動が蓋部材45に加わった場合にも、その左側の嵌合部50が上下方向にガタつき難くなり、このガタつきが原因の異音発生を極力回避することができる。
【0024】
また本実施例では、
図2に示すように、蓋部材45の前端部E2に設けられた各係合部70(70X)を、リレーボックス35に設けた各被係合部80(80X)に係合することができる。このとき
図4を参照して、各係合部70等の係合爪72を、下側に撓ませながら各被係合部80等の後面開口821に差し込んだのち、係合爪72を元に戻しつつ先端を上面開口822から突出させる。こうして蓋部材45の前端部E2に設けた各係合部70等を各被係合部80等に係合することにより、蓋部材45の前端部E2をエンジンルームERに取付けることができる。そして蓋部材45の前端部E2をエンジンルームERに係合したことにより、撓み変形していない自由状態の蓋部材45において、各被嵌合部60等に対する各嵌合部50等の意図しない抜外れが生じ難くなっている。また各係合部70等は、その係合爪72が各被係合部80等に対して上下回動可能に係合している。このため部品30の点検時等においては、各係合部70等と被係合部80等の係合箇所を中心に蓋部材45を上回動させることで、この蓋部材45から部品30を外部に露出させられるようになる。なお蓋部材45の回動の際には、各嵌合部50等を各被嵌合部60等から人力で外しておくことができる。
【0025】
[衝撃吸収の際の蓋部材の挙動]
図4に示す車両10では、車両10の前部に加わる衝撃荷重を、エンジンフード16が、カウルルーバ15とともにエンジンルームER内(
図4の下側)に変形することで吸収する。この種の構成では、エンジンフード16の変形ストロークSK、即ち、衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材45をエンジンルームER内に取付けておくことが望まれる。そこで本実施例の部品のカバー構造では、
図2及び
図4を参照して、蓋部材45に設けられた各嵌合部50(50X)が、エンジンルームERに設けられた各被嵌合部60(60X)に嵌合されることで、蓋部材45がエンジンルームER内に取付けられている。そして各嵌合部50(50X)は、各被嵌合部60(60X)に対して蓋部材45が撓み変形する方向と交差する嵌合方向(各図の車両後方向)より嵌合されているとともに、蓋部材45が撓み変形することで嵌合方向とは逆向きに移動するように構成されている。
【0026】
上記構成によると、衝撃吸収の際に、エンジンフード16が変形して、
図4に示すように蓋部材45を下方に押圧する(
図4の破線状態を参照)。そしてエンジンフード16から外力F(荷重)の加えられた蓋部材45は、
図4及び
図8を参照して、その後端部E1を車両前側に引き寄せながら車両高さ方向となる下方向に撓み変形する。このように蓋部材45の後端部E1が車両前側に引き寄せられることで、この後端部E1に設けられた嵌合部50等が、嵌合方向とは逆向きとなる車両前方向に移動して各被嵌合部60等から外れるようになる(
図8の矢線A3を参照)。そして各嵌合部50等と各被嵌合部60等とは、下側突部51,51Xと上側突部61,61Xを介して部分的に接触している。このため各嵌合部50等は、前移動の際に各被嵌合部60等から受ける摩擦が小さくなって、各被嵌合部60等から外れやすくなっている。そして
図4に示すように蓋部材45が外れる(同図の二点破線状態)ことで、エンジンフード16が蓋部材45に極力邪魔されることなく下方に変形することができ、このエンジンフード16の下側への変形ストロークSKを確保することが可能となる。また部品のカバー構造では、変形ストロークSKを確保するためにエンジンフード16の設置高さを必要以上に高くする必要がないため、車両10の意匠選択の自由度を確保することができる。
【0027】
以上説明した通り本実施例の部品のカバー構造では、エンジンルームERを囲う車両部分の変形の際に、この車両部分から外力が加えられた蓋部材45が撓み変形する。そして蓋部材45が撓み変形して、その各嵌合部50,50Xが嵌合方向とは逆向きに移動することにより、各嵌合部50,50Xが各被嵌合部60,60Xから外れるようになる。即ち、車両部分としてのエンジンフード16がカウルルーバ15とともにエンジンルームER内に変形して衝撃を吸収する際に、当該車両部分から外力の加えられた蓋部材45が車両高さ方向に撓み変形して、各被嵌合部60,60Xから各嵌合部50,50Xが外れるようになる。このため車両部分がエンジンルームER内に変形して衝撃を吸収する際に、この車両部分の変形ストロークSKを蓋部材45が外れることで確保することが可能となる。よって本実施例によれば、車両10の衝撃荷重の吸収性を確保しつつ、蓋部材45をエンジンルームER内に取付けておくことができる。
【0028】
さらに本実施例の各嵌合部50,50Xと各被嵌合部60,60Xとは、各突部(51,61等)を介して部分的に接触しているとともに、当該突部の介在で蓋部材45の撓み変形方向(例えば車両高さ方向)の隙が生じ難くなっている。このため各嵌合部50,50Xは、嵌合方向とは逆向きに移動しやすくなっている一方、各被嵌合部60,60Xに対して撓み変形方向には動き難くなっている。そして本実施例では、蓋部材45に設けた係合部70を被係合部80に係合しているため、撓み変形していない自由状態の蓋部材45において、各被嵌合部60,60Xに対する各嵌合部50,50Xの意図しない抜外れが生じ難くなっている。
【0029】
本実施形態の部品のカバー構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、蓋部材の構成を例示したが、蓋部材の構成を限定する趣旨ではない。この蓋部材には、複数又は単数の嵌合部を適宜の位置に設けることができる。また嵌合部は、撓み変形方向と交差する方向から被嵌合部に嵌合でき、この交差方向として、車両前後方向や車幅方向の少なくとも一方向、また当該一方向で且つ車両高さ方向に傾いた方向を例示できる。例えば蓋部材の前側に設けた嵌合部を、エンジンルームの前側の部材(リレーボックス等)に設けた被嵌合部に車両前方向より嵌合することができる。また蓋部材の車幅方向外側に設けた嵌合部を、エンジンルームの被嵌合部に車幅方向より嵌合することもできる。例えば蓋部材の右側に設けた嵌合部を、エンジンルーム右側のアッパメンバ等に設けた被嵌合部に右方向より嵌合することができる。この場合には、車幅方向(右方向)が嵌合方向となり、嵌合方向とは逆向き(左方向)に嵌合部が移動することで被嵌合部から外れるようになる。また係合部は、嵌合部の位置に応じて蓋部材の適宜の位置に設けることができ、省略することも可能である。なお係合部を省略する場合には、蓋部材の他端部をエンジンルームに固定してもよく、蓋部材の一端部と他端部に設けた一対の嵌合部を、エンジンルーム内に設けた対応する被嵌合部に嵌合することもできる。なお嵌合部と被嵌合部は、そのいずれかに設けた突部を介して嵌合していてもよく、突部を介することなく嵌合していてもよい。なお突部は、その位置や形成数を適宜変更可能であり、また必ずしも前後方向に延びる縦壁状(線的)に形成する必要はなく点的に形成することも可能である。例えば嵌合部や被嵌合部に、切欠きや孔を線的又は点的に設けて部分的に接触する構成とすることも可能である。
【0030】
また本実施形態では、蓋部材が、外力が加わることで車両高さ方向に撓み変形する例を説明した。これとは異なり、蓋部材を車幅方向や車両前後方向に向けて、外力が加わることで車両幅方向や車両前後方向に撓み変形する構成としてもよい。例えばアッパメンバが車幅方向に変形して荷重を吸収する際に、このアッパメンバからの外力を受けて蓋部材が車幅方向に変形して嵌合部が外れる構成とすることもできる。そして蓋部材は、エンジンルームの適宜の位置に複数又は単数設けることができる。またエンジンルーム内の部品も、バッテリやブレーキ関連部品のほか、各種の部品を想定できる。そして本実施形態の構成は、エンジンの代替えとなるモータ等を備える車両に適用することも可能であり、エンジンルームは必ずしも車両前部に設けられる必要はない。
【符号の説明】
【0031】
10 車両
ER エンジンルーム
R 車室
12 ダッシュパネル
13 カウルパネル
14 フロントガラス
15 カウルルーバ
151 山部
151b 後端縁
152 溝部
152b 底板
153 後側壁部
154 前側壁部
154f フランジ部
155 ウエザストリップ
16 エンジンフード
17 アッパメンバ
18 フェンダパネル
20 ホイールハウス
30 部品
32 トレイ
35 リレーボックス
43 隔壁部材
435 凸状部
45 蓋部材
451 天井部
453 傾斜壁部
453f (傾斜壁部の)縁部
E1 後端部(本発明の蓋部材の一端部)
E2 前端部(本発明の蓋部材の他端部)
50 左側の嵌合部
50X 右側の嵌合部
51 左側の下側突部
51X 右側の下側突部
60 左側の被嵌合部
601 上縁部
602 下縁部
60X 右側の被嵌合部
61 左側の上側突部
61X 右側の上側突部
70 左側の係合部
70X 右側の係合部
71 受部
72 係合爪
80 左側の被係合部
821 後面開口
822 上面開口
80X 右側の被係合部
E エンジン
EC エンジンカバー
SK (エンジンフードの)変形ストローク