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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】液晶乳化物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20250418BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250418BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20250418BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/55
A61Q19/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020039268
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021138662
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-07-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】594197757
【氏名又は名称】株式会社アイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】西岡 佳世乃
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-69979(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103202772号明細書(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
C09K23/00-23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分30~60重量部と(B)成分10~30重量部と(C)成分0.2~5重量部と(D)成分15~30重量部と溶媒としての水0~25重量部とを含有し、
前記(A)成分のうち、高級アルコールの添加量が10重量部未満であって、
前記(B)成分が親水性界面活性剤(b1)とともにアルキル基の炭素数が18以上の多鎖型である界面活性剤(b2)とを含み、下記式(i)に示される前記(B)成分における平均HLB値が8.0以上である
ことを特徴とする液晶乳化物。
(A):油剤
(B):HLB値が13以上である親水性界面活性剤(b1)を1種含む界面活性剤
(C):リン脂質
(D):多価アルコール
【数1】
【請求項2】
前記(C)成分のリン脂質が水添レシチン又はリゾレシチンである請求項1に記載の液晶乳化物。
【請求項3】
前記液晶乳化物が、クレンジング化粧料である請求項1又は2に記載の液晶乳化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンジング用化粧料に用いられる液晶乳化物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、メイク落としのためのクレンジング用化粧料は、クレンジング用化粧料を皮膚になじませて、皮膚上に残存するメイクアップ用化粧料を溶解ないし分散させるために用いられる。そして、クレンジング用化粧料を水で流したり、拭き取ることによって皮膚から取り除いてメイク落としを行う。
【0003】
しかし、クレンジング用化粧料は皮膚から完全に除去することは容易ではなく、洗い流しが手間であったり、拭き取りによる皮膚への負担が懸念されることがある。そこで、メイクアップ用の化粧料になじみやすく、かつ水洗性に優れたジェルタイプの液晶型化粧料用組成料が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。いわゆる液晶型メイク落としといわれるクレンジング用化粧料は、洗浄力(メイク落とし力)が高く、水洗性が良好であるといわれ、クレンジング用化粧料として優れた特性を有するといわれている。
【0004】
クレンジング用化粧料は、オイルタイプやジェルタイプ、クリームタイプの他、ミルク(乳液)タイプのようにいくつかの性状があり、濃い化粧を落とすためにはオイルタイプが使用されたり、マッサージを兼ねたメイク落としにはジェルタイプが使用される等、使用目的や用途に応じて化粧落とし性能や性状ごとに適宜選択されて使用される。また、使用者の好みによっては、クレンジング用化粧料の粘度や化粧落としに掛かる時間までもがクレンジング用化粧料の選択基準として挙げられる。
【0005】
ところが、前掲の液晶型化粧料用組成料は、ジェルタイプであって他の性状には適しておらず、使用者の好みに合わせた性状等にコントロールすることは難しい。これらのことから、いわゆる液晶型メイク落としといわれるクレンジング用化粧料であって、粘度や性状等を好みに合わせて選択できるクレンジング用化粧料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4969773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、メイク落ちの良さを維持しつつ、クレンジング用化粧料としたときの性状を任意に調整可能とし、かつ粘度や使用感の調整も容易に行うことができ、さらに安価に製造可能な液晶乳化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1の発明は、(A)成分30~60重量部と(B)成分10~30重量部と(C)成分0.2~5重量部と(D)成分15~30重量部と溶媒としての水0~25重量部とを含有し、
前記(A)成分のうち、高級アルコールの添加量が10重量部未満であって、
前記(B)成分が親水性界面活性剤(b1)とともにアルキル基の炭素数が18以上の多鎖型である界面活性剤(b2)とを含み、下記式(i)に示される前記(B)成分における平均HLB値が8.0以上である
ことを特徴とする液晶乳化物に係る。
(A):油剤
(B):HLB値が13以上である親水性界面活性剤(b1)を1種以上含む界面活性剤
(C):リン脂質
(D):多価アルコール
【0009】
【数1】
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記(C)成分のリン脂質が水添レシチン又はリゾレシチンである液晶乳化物に係る。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記液晶乳化物が、クレンジング化粧料である液晶乳化物に係る。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る液晶乳化物によると、(A)成分30~60重量部と(B)成分10~30重量部と(C)成分0.2~5重量部と(D)成分15~30重量部と溶媒としての水0~25重量部とを含有し、前記(A)成分のうち、高級アルコールの添加量が10重量部未満であって、前記(B)成分が親水性界面活性剤(b1)とともにアルキル基の炭素数が18以上の多鎖型である界面活性剤(b2)とを含み、上記式(i)に示される前記(B)成分における平均HLB値が8.0以上であるから、メイク落ちの良さを維持しつつ、液晶成分の形成を妨げることなく、クレンジング用化粧料としたときの性状を任意に調整可能とし、かつ粘度や使用感、さらにはメイク落ちのスピード等を任意に調整も容易に行うことができ、さらに安価に製造可能とすることができる。
【0013】
第2の発明に係る液晶乳化物によると、第1の発明において、前記(C)成分のリン脂質が水添レシチン又はリゾレシチンであることから、液晶成分が安定して形成されることができる。
【0014】
第3の発明に係る液晶乳化物によると、第1又は2の発明において、前記液晶乳化物が、クレンジング化粧料であることから、メイク落ちの良さを維持しつつ使用者のニーズに合わせた性状や質感を有するクレンジング用化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】試作例1のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図2】試作例4のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図3】試作例5のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図4】試作例7のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図5】試作例8のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図6】試作例9のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図7】試作例10のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図8】試作例11のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図9】試作例13のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図10】試作例16のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図11】試作例17のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図12】試作例18のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図13】試作例20のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図14】試作例23のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図15】試作例25のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図16】試作例26のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図17】試作例27のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図18】試作例29のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図19】試作例30のクレンジング用化粧料の液晶成分を写した250倍拡大写真である。
図20】試作例1のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図21】試作例5のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図22】試作例7のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図23】試作例8のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図24】試作例9のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図25】試作例10のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図26】試作例11のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図27】試作例13のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図28】試作例16のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図29】試作例17のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図30】試作例18のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図31】試作例20のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図32】試作例23のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図33】試作例25のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図34】試作例26のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図35】試作例27のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図36】試作例29のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図37】試作例30のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した1000倍拡大写真である。
図38】試作例1のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図39】試作例5のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図40】試作例7のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図41】試作例8のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図42】試作例9のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図43】試作例10のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図44】試作例11のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図45】試作例13のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図46】試作例16のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図47】試作例17のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図48】試作例18のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図49】試作例20のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図50】試作例23のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図51】試作例25のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図52】試作例26のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図53】試作例27のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図54】試作例29のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
図55】試作例30のクレンジング用化粧料を用いたメイク落とし実験により洗い出たエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の液晶乳化物は、メイク落としのためのクレンジング用化粧料に用いられるとともに、希釈することにより乳液や化粧水等への使用も可能である。そして、本発明の液晶乳化物は、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分及び溶媒とを含む。また、該液晶乳化剤が使用されるクレンジング用化粧料には、一般の化粧料に使用されるような添加剤、例えば、保湿剤、防腐剤、香料、着色料やpH調整剤等を適宜添加されることができる。
【0017】
(A)成分は、油剤であり、主にメイク落としの主成分となるクレンジング剤に適したものが主に選択される。例えば、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、エチルヘキサン酸セチルやミネラルオイル等、公知の油剤が挙げられる。特に、安価な油剤を選択すると経済性にも優れる。
【0018】
また、上記の油剤の他に、クレンジング用化粧料のノビや皮膚への馴染み感等の使用感を変化させるための調整用の油剤も添加させることができる。シリコーンや高級アルコール、脂肪酸等から選択され、使用感の他、粘度の調整のためにも添加される。例えば、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、ジメチコン等の鎖状・環状シリコーン、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セタノールやステアリルアルコール等の高級アルコール等、公知の油剤が挙げられる。さらには、需要者に好まれるいわゆるコンセプトとなるような油剤も添加されることができる。これらコンセプトとなる油剤は、香りの良いものや自然物由来のもの、ビタミン誘導体等の機能性成分等がよく、例えば、ホホバ種子油、アルガニアスピノサ核油、アボカド油、アーモンド油、マカデミアナッツ油等の植物油、馬油、ラノリン等の動物由来油、スクワラン、スクワレン、ワセリン、流動パラフィン等の炭化水素、トコフェロールやレチノールやその誘導体等の油溶性の機能性成分等、公知の油剤が挙げられる。
【0019】
(B)成分は、界面活性剤であり、メイクへの馴染み方や落ち方、粘度を任意に調整するために選択され添加される。特に、本発明の液晶乳化物に係る液晶成分を生成するために、HLB値が13以上の親水性界面活性剤(b1)が選択される。後述の実施例では、オクチルドデセス-20を主に選択した。オクチルドデセス-20の他にも、オクチルドデセス-25等が挙げられる。さらには、他の界面活性剤(b2)を組み合わせることで、液晶成分の生成効率を向上させたり、クレンジング用化粧料としたときの性状を液状やクリーム状、ジェル状等任意にコントロールすることが可能となる。また、粘度も変化させることができ、使用感の調整までもが可能である。
【0020】
ここで、他の界面活性剤(b2)は、アルキル基の炭素数が18以上の多鎖型のものが選択される。そして、前掲の式(i)にて示されるHLB値が13以上の親水性界面活性剤(b1)とアルキル基の炭素数が18以上の多鎖型の界面活性剤(b2)の平均HLB値を8.0以上とすることにより、後述の実施例に示すように、液晶成分の生成が良好となる。アルキル基の炭素数が18以上の多鎖型の界面活性剤(b2)は、例えば、イソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油、ジステアリン酸PEG(ポリエチレングリコール)-4グリセリル、PEG-30水添ヒマシ油、ジイソステアリン酸PEG-8、ジヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-10、ポリソルベート80トリステアリン酸PEG-4グリセリルほか、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10、セスキステアリン酸ポリグリセリル-10、テトラオレイン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸PEG-4、ジイソステアリン酸PEG-8、ジイソステアリン酸PEG-12、ジイソステアリン酸PEG-10BG、ジイソステアリン酸PEG-25BG、ジイソステアリン酸PEG-65BG、ジイソステアリン酸PEG-15BG、トリイソステアリン酸PEG-4ソルビタン、トリイソステアリン酸PEG-3グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-15グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-30グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-40グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-50グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-5水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-10水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-15水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-30水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-40水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-60水添ヒマシ油、トリステアリン酸PEG-4グリセリル、トリステアリン酸PEG-5グリセリル、トリステアリン酸PEG-6グリセリル、トリステアリン酸PEG-10グリセリル、トリステアリン酸PEG-15グリセリル、トリステアリン酸PEG-20グリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、ジステアリン酸PEG-4、ジステアリン酸PEG-6ジステアリン酸PEG-8、ジステアリン酸PEG-12等、公知の界面活性剤が挙げられる。これら(B)成分は、特殊な界面活性剤ではないため、入手しやすく安価であり、経済性に優れる。
【0021】
(C)成分は、リン脂質であり、液晶生成のための因子となる。後述の実施例では主に、水添レシチンを選択した。水添レシチンによれば、殊更液晶の生成が良好で均一な液晶が生成されやすい。水添レシチンの他には、リゾレシチン等、公知のリン脂質が選択されることができる。
【0022】
(D)成分は、多価アルコールであり、系の安定化に寄与する。多価アルコールを多く添加するとクレンジング用化粧料の性状をジェル化させることが可能であり、目的の性状に応じて添加する量を変化させることができる。多価アルコールは、グリセリンやブチレングリコール(BG)、ポリエチレングリコール、イソペンチルジオール、プロパンジオール、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、トレハロース等、公知の多価アルコールから選択されることができる。
【0023】
本発明の液晶乳化物は、(A)成分は30~60重量部、(B)成分は10~30重量部、(C)成分は0.2~5重量部、(D)成分は15~30重量部及び溶媒としての水が0~25重量部含有されてなる。(A)成分の油剤の添加量が多すぎると、液晶成分が均一に分散されなくなったり、各成分が混合されないことがある。(A)成分の配合量が高くなると、粘度が低くなり液状の性状を示す。高級アルコールやシリコーンを添加すると粘度が高くなり硬い質感となりやすい。後述の実施例に示されるように高級アルコールを10重量部以上添加すると、液晶成分が生成されなかったり、各成分が分離したりする場合がある。
【0024】
(B)成分の界面活性剤の量が多すぎると、皮膚への負荷が大きくなり、少なすぎるとメイク落ちが悪くなるきらいがある。(C)成分が少なすぎると、液晶成分が生成されなくなる。(C)成分は多く添加しても特に問題ないが、2重量部程度からは液晶成分の生成量は大きく変化することはないため、添加量の上限を5重量部とした。(D)成分の多価アルコールの量が少なすぎると系が安定せず分離が生じたりする。逆に多すぎると固形化するおそれがある。
【0025】
本発明の液晶乳化物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の油相を70~80℃で加温しながら攪拌し、(D)成分と溶媒及び各添加物を70~80℃で加温攪拌したものを混合し、冷却して得ることができる。なお、各成分を一度に混合し、加温攪拌しても本発明の液晶乳化物を得ることもできると考えられる。該製造方法には、特別な工程がないことから、容易に本発明の液晶乳化物を得ることができ、経済性に優れる。
【実施例
【0026】
[使用材料]
発明者は、試作例の液晶乳化物を用いたクレンジング用化粧料を調製するため、下記の材料を用いた。
【0027】
<(A)成分>
・パルミチン酸エチルヘキシル(A1):日清オイリオグループ株式会社製、「サラコスP-8」(登録商標)
・トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2):花王株式会社製、「ココナードMT」(登録商標)
・シクロペンタシロキサン(A3):信越化学工業株式会社製、「CY-5」
・ミネラルオイル(A4):株式会社MORESCO製「モレスコホワイトP-70」(登録商標)
・セテアリルアルコール(A5):花王株式会社製、「カルコール6850」(登録商標)
【0028】
<(B)成分>
・オクチルドデセス-20(B1):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX OD-20」(登録商標)、HLB値13、アルキル基の炭素数20、多鎖型
・トリイソステアリン酸ポリグリセリル-10(B2):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX TISG-10」、HLB値8、アルキル基の炭素数18、多鎖型
・ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス-5(B3):日本エマルジョン株式会社製、「AMITER LGOD-5(H)」(登録商標)、HLB値6、アルキル基の炭素数20、多鎖型
・イソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油(B4):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX RWIS-120」、HLB値8、アルキル基の炭素数18、多鎖型
・ジステアリン酸PEG-4グリセリル(B5):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX GWS-204」、HLB値4、アルキル基の炭素数18、多鎖型
・PEG-60水添ヒマシ油(B6):花王株式会社、「エマノーンCH-60(K)」(登録商標)、HLB値14、アルキル基の炭素数18(混合品)、多鎖型
・PEG-30水添ヒマシ油(B7):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX HC-30」、HLB値11、アルキル基の炭素数18(混合品)、多鎖型
・ジイソステアリン酸PEG-8(B8):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX 400di-IS」、HLB値6、アルキル基の炭素数18、多鎖型
・ジヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-10(B9):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX DCCG-10」、HLB値12、アルキル基の炭素数8~18、多鎖型
・ポリソルベート80(B10):花王株式会社製、「レオドールTW-0120V」(登録商標)、HLB値15、アルキル基の炭素数18、単鎖型
・セスキオレイン酸ソルビタン(B11):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX SPO-150」、HLB値6、アルキル基の炭素数18、単鎖・多鎖混合型
・トリイソステアリン酸PEG-4グリセリル(B12):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX GWS-304」、HLB値2、アルキル基の炭素数18、多鎖型
・ステアレス-11(B13):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX 611」、HLB値11、アルキル基の炭素数18、単鎖型
・オクチルドデセス-5(B14):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX OD-5」、HLB値7、アルキル基の炭素数20、多鎖型
・オクチルドデセス-10(B15):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX OD-10」、HLB値10、アルキル基の炭素数20、多鎖型
・オクチルドデセス-25(B16):日本エマルジョン株式会社製、「EMALEX OD-25」、HLB値14、アルキル基の炭素数20、多鎖型
【0029】
<(C)成分>
・水添レシチン(C1):日光ケミカルズ株式会社製、「NIKKOL レシノールS-10」(登録商標)
【0030】
<(D)成分>
・グリセリン(D1):阪本薬品工業株式会社製、「化粧品用濃グリセリン」
【0031】
<添加剤>
発明者らは、試作例の液晶乳化物を用いたクレンジング用化粧料の調製にあたり、下記の添加剤を適宜添加した。
・防腐剤(フェノキシエタノール):四日市合成株式会社製、「フェノキシエタノールS」
・保湿剤(グルコシルトレハロース):株式会社林原製「トルナーレ」(登録商標)
【0032】
[試作例のクレンジング用化粧料の調製]
発明者は、上記材料を用い、以下の試作例のクレンジング用化粧料を得た。なお、各試作例の平均HLB値は上記式(i)より算出した。
【0033】
[試作例1]
(A)成分としてパルミチン酸エチルヘキシル(A1)12重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)19重量部、シクロペンタシロキサン(A3)1重量部、ミネラルオイル(A4)5.5重量部、セテアリルアルコール5重量部の計42.5重量部と、(B)成分としてオクチルドデセス-20(B1)13重量部と、(C)成分として水添レシチン(C1)1重量部とを80℃で加熱して攪拌したものに、(D)成分としてグリセリン(D1)20重量部と、溶媒としての水22重量部と、添加剤として保湿剤グルコシルトレハロースを1重量部と防腐剤フェノキシエタノールを0.5重量部とを80℃で加熱して攪拌したものを混合して冷却し、試作例1のクレンジング用化粧料を得た。試作例1の平均HLB値は13.0である。
【0034】
[試作例2]
(B)成分をトリイソステアリン酸ポリグリセリル-10(B2)13重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例2のクレンジング用化粧料を得た。試作例2の平均HLB値は8.0である。
【0035】
[試作例3]
(B)成分をラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデセス-5(B2)13重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例3のクレンジング用化粧料を得た。試作例3の平均HLB値は6.0である。
【0036】
[試作例4]
(B)成分をイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油(B4)13重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例4のクレンジング用化粧料を得た。試作例4の平均HLB値は8.0である。
【0037】
[試作例5]
(B)成分をオクチルドデセス-20(B1)8重量部、ジステアリン酸PEG-4グリセリル(B5)5重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例5のクレンジング用化粧料を得た。試作例5の平均HLB値は9.5である。
【0038】
[試作例6]
(B)成分をオクチルドデセス-20(B1)8重量部、PEG-60水添ヒマシ油(B6)5重量部とし、(C)成分を添加せず、溶媒を23重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例6のクレンジング用化粧料を得た。試作例6の平均HLB値は13.4である。
【0039】
[試作例7]
(B)成分をオクチルドデセス-20(B1)8重量部、PEG-60水添ヒマシ油(B6)5重量部とし、(C)成分の水添レシチン(C1)を2重量部とし、溶媒を21重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例7のクレンジング用化粧料を得た。試作例7の平均HLB値は13.4である。
【0040】
[試作例8]
(B)成分のうち、PEG-60水添ヒマシ油(B6)をPEG-30水添ヒマシ油(B7)に変更した以外は試作例7と同様とし、試作例8のクレンジング用化粧料を得た。試作例8の平均HLB値は12.2である。
【0041】
[試作例9]
(B)成分のうち、PEG-60水添ヒマシ油(B6)をジイソステアリン酸PEG-8(B8)に変更し、溶媒22重量部、保湿剤を0重量部(添加せず)とした以外は試作例7と同様とし、試作例9のクレンジング用化粧料を得た。試作例9の平均HLB値は10.3である。
【0042】
[試作例10]
(B)成分のうち、PEG-60水添ヒマシ油(B6)をジヤシ油脂肪酸ポリグリセリル(B9)に変更し、溶媒22重量部、保湿剤を0重量部(添加せず)とした以外は試作例7と同様とし、試作例10のクレンジング用化粧料を得た。試作例10の平均HLB値は12.6である。
【0043】
[試作例11]
(B)成分のうち、PEG-60水添ヒマシ油(B6)をポリソルベート80(B10)に変更し、溶媒22重量部、保湿剤を0重量部(添加せず)とした以外は試作例7と同様とし、試作例11のクレンジング用化粧料を得た。試作例11の平均HLB値は13.8である。
【0044】
[試作例12]
(B)成分のうち、PEG-60水添ヒマシ油(B6)をセスキオレイン酸ソルビタン(B11)に変更し、溶媒22重量部、保湿剤を0重量部(添加せず)とした以外は試作例7と同様とし、試作例12のクレンジング用化粧料を得た。試作例12の平均HLB値は10.3である。
【0045】
[試作例13]
(B)成分のうち、PEG-60水添ヒマシ油(B6)をトリイソステアリン酸PEG-4グリセリル(B12)に変更し、溶媒22重量部、保湿剤を0重量部(添加せず)とした以外は試作例7と同様とし、試作例13のクレンジング用化粧料を得た。試作例13の平均HLB値は8.8である。
【0046】
[試作例14]
(B)成分のうち、PEG-60水添ヒマシ油(B6)をステアレス-11(B13)に変更し、溶媒22重量部、保湿剤を0重量部(添加せず)とした以外は試作例7と同様とし、試作例14のクレンジング用化粧料を得た。試作例14の界面活性剤のHLB値の平均値は12.2である。なお、表中、界面活性剤のHLB値の平均値は、平均HLB値の欄に記載される。
【0047】
[試作例15]
(B)成分をジステアリン酸PEG-4グリセリル(B5)5重量部、PEG-60水添ヒマシ油(B6)8重量部とし、溶媒22重量部、保湿剤を0重量部(添加せず)とした以外は試作例7と同様とし、試作例15のクレンジング用化粧料を得た。試作例15の平均HLB値は10.2である。
【0048】
[試作例16]
(A)成分としてパルミチン酸エチルヘキシル(A1)23重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)15重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部の計46重量部と、(B)成分としてオクチルドデセス-20(B1)15重量部、ジイソステアリン酸PEG-8(B5)6重量部と、(C)成分として水添レシチン(C1)2重量部と、(D)成分としてグリセリン(D1)19.5重量部と、溶媒としての水11重量部と、添加剤として防腐剤フェノキシエタノールを0.5重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例16のクレンジング用化粧料を得た。試作例16の平均HLB値は11.0である。
【0049】
[試作例17]
(B)成分をオクチルドデセス-20(B1)6重量部、ジイソステアリン酸PEG-8(B5)15重量部とした以外は試作例16と同様とし、試作例17のクレンジング用化粧料を得た。試作例17の平均HLB値は8.0である。
【0050】
[試作例18]
(B)成分をオクチルドデセス-20(B1)15重量部、トリステアリン酸PEG-4グリセリル(B12)6重量部とした以外は試作例16と同様とし、試作例18のクレンジング用化粧料を得た。試作例18の平均HLB値は9.9である。
【0051】
[試作例19]
(B)成分をオクチルドデセス-20(B1)6重量部、トリステアリン酸PEG-4グリセリル(B12)15重量部とした以外は試作例16と同様とし、試作例19のクレンジング用化粧料を得た。試作例19の平均HLB値は5.1である。
【0052】
[試作例20]
(B)成分をオクチルドデセス-20(B1)11重量部、ステアレス-11(B13)10重量部とした以外は試作例16と同様とし、試作例20のクレンジング用化粧料を得た。試作例20の平均HLB値は12.0である。
【0053】
[試作例21]
(A)成分としてパルミチン酸エチルヘキシル(A1)23重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)15重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部の計46重量部と、(B)成分としてオクチルドデセス-5(B14)10重量部、ジイソステアリン酸PEG-8(B5)11重量部と、(C)成分として水添レシチン(C1)2重量部と、(D)成分としてグリセリン(D1)19.5重量部と、溶媒としての水11重量部と、添加剤として保湿剤を0重量部(添加せず)、防腐剤フェノキシエタノールを0.5重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例21のクレンジング用化粧料を得た。試作例21の平均HLB値は6.5である。
【0054】
[試作例22]
(B)成分のオクチルドデセス-5(B14)をオクチルドデセス-10(B15)に変更した以外は試作例21と同様とし、試作例22のクレンジング用化粧料を得た。試作例22の平均HLB値は7.9である。
【0055】
[試作例23]
(B)成分のオクチルドデセス-5(B14)をオクチルドデセス-25(B16)に変更した以外は試作例21と同様とし、試作例23のクレンジング用化粧料を得た。試作例23の平均HLB値は9.8である。
【0056】
[試作例24]
(B)成分をオクチルドデセス-10(B15)3重量部、オクチルドデセス-25(B16)3重量部、ジイソステアリン酸PEG-8(B5)15重量部とした以外は試作例21と同様とし、試作例24のクレンジング用化粧料を得た。試作例24の平均HLB値は7.7である。
【0057】
[試作例25]
(A)成分としてパルミチン酸エチルヘキシル(A1)28重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)20重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部の計56重量部と、(B)成分としてオクチルドデセス-5(B14)6重量部、ジイソステアリン酸PEG-8(B5)15重量部と、(C)成分として水添レシチン(C1)2重量部と、(D)成分としてグリセリン(D1)20.9重量部と、添加剤として防腐剤フェノキシエタノールを0.1重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例25のクレンジング用化粧料を得た。試作例25の平均HLB値は8.0である。
【0058】
[試作例26]
(A)成分をパルミチン酸エチルヘキシル(A1)23重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)15重量部、シクロペンタシロキサン(A3)10重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部とした以外は試作例25と同様とし、試作例26のクレンジング用化粧料を得た。試作例26の平均HLB値は8.0である。
【0059】
[試作例27]
(A)成分としてパルミチン酸エチルヘキシル(A1)23重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)10重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部、セテアリルアルコール(A5)5重量部の計46重量部と、(B)成分としてオクチルドデセス-5(B14)6重量部、ジイソステアリン酸PEG-8(B5)15重量部と、(C)成分として水添レシチン(C1)2重量部と、(D)成分としてグリセリン(D1)19.5重量部と、溶媒としての水11重量部と、添加剤として防腐剤フェノキシエタノールを0.5重量部とした以外は試作例1と同様とし、試作例27のクレンジング用化粧料を得た。試作例27の平均HLB値は8.0である。
【0060】
[試作例28]
(A)成分をパルミチン酸エチルヘキシル(A1)18重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)10重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部、セテアリルアルコール(A5)10重量部とした以外は試作例27と同様とし、試作例28のクレンジング用化粧料を得た。試作例28の平均HLB値は8.0である。
【0061】
[試作例29]
(A)成分をパルミチン酸エチルヘキシル(A1)23重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)10重量部、シクロペンタシロキサン(A3)5重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部、とした以外は試作例27と同様とし、試作例29のクレンジング用化粧料を得た。試作例29の平均HLB値は8.0である。
【0062】
[試作例30]
(A)成分をパルミチン酸エチルヘキシル(A1)18重量部、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(A2)10重量部、シクロペンタシロキサン(A3)10重量部、ミネラルオイル(A4)8重量部とした以外は試作例27と同様とし、試作例30のクレンジング用化粧料を得た。試作例30の平均HLB値は8.0である。
【0063】
各試作例の(A)~(D)成分の種類と添加量、溶媒と添加剤の添加量及び(B)成分の平均HLB値を表1~6にまとめた。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
[クレンジング用化粧料の性状及び液晶成分の生成の評価]
各試作例のクレンジング用化粧料の性状を目視で評価するとともに、液晶成分の有無を評価した。各試作例の性状は「ジェル」、「クリーム」「液」の3つに分類し、各成分が混ざらず分離したものは、性状の欄を「×」とした。液晶成分が均一に多く生成されているものを「◎」、液晶成分が生成されているものの不均一であるものを「〇」、液晶成分の生成がわずかでも確認できるものを「△」、液晶成分の生成が確認できないものを「×」とした。また、図1~20に各試作例のクレンジング用化粧料の250倍拡大写真を示した。図2に示される拡大写真は、液晶成分が生成されなかった試作例4のものであって、他の液晶成分が生成されなかった試作例についての写真は省略した。
【0071】
次に、各試作例のクレンジング用化粧料の粘度をJIS Z 8803(2011)に準拠し、TVB-15H形粘度計(東機産業株式会社製)を使用して温度25℃、湿度50%の条件下で測定した。
【0072】
[メイク落とし性能の評価]
さらに、液晶成分が生成された各試作例のクレンジング用化粧料を用いてメイク落とし実験を行い、メイク落とし性能の評価を行った。前腕内側の2cm四方の枠内にファンデーション0.01gを塗り広げ、評価対象のクレンジング用化粧料0.03gを塗り広げたファンデーション上に載置して指先の腹部分により馴染ませる。この時、ファンデーションとクレンジング用化粧料が馴染んで、指先の抵抗が軽くなるまでの時間を計測し、マッサージ時間とした。その後、マッサージしながら水約3mlでゆっくり洗い流し、この洗い出たエマルション(水)を採取し、粒子径の観察を行った。マッサージ時間として表中に示した。
【0073】
また、クレンジング用化粧料でメイクを洗い流した際に洗い出たエマルション中の粒子を確認し粒子の径及び量を評価した。洗い出た粒子は小さく量が多いものの方がメイク落ちの良いクレンジング化粧料であるといえる。図20~37の1000倍拡大写真粒子径に示されるエマルション中の粒子の粒子径が、1μmよりも小さいものを「◎」、1~5μmの範囲のものを「〇」、それ以上のものを「△」、粒子径がバラバラのものを「不揃い」と表記した。粒子の量については、図38~55に示されるエマルション中の粒子を写した250倍拡大写真において、全体に満遍なく多量の粒子が分散しているものを「◎」、隙間が多く粒子間の間隔が大きく少量の粒子が分散しているものは「△」、その間を「〇」とした。
【0074】
各試作例のクレンジング用化粧料の性状、液晶成分の有無の評価、粘度、マッサージ時間、粒子の径及び量を表7~12に示した。また、表中には、液晶成分の拡大写真と洗い出た粒子の拡大写真(1000倍、250倍)の図番号を表記した。
【0075】
【表7】
【0076】
【表8】
【0077】
【表9】
【0078】
【表10】
【0079】
【表11】
【0080】
【表12】
【0081】
[結果と考察]
表1、表7及び図1図20図38に示されるように、HLB値が13の界面活性剤を使用した試作例1については、液晶成分を含むジェル状であって、メイク落とし性能の高いクレンジング用化粧料を得ることができた。HLB値が13未満の界面活性剤が単独で配合された試作例2~4は液晶成分は生成されず、また、分離してしまうことがわかった。また、試作例14についてみると、試作例1において液晶が生成された界面活性剤(B1)と単鎖型の界面活性剤(B13)の組み合わせでは平均HLB値が8.0以上でも液晶が生成されないことがわかった。
【0082】
表1~3、表7~9及び図4~9、図22~27、図40~43に示されるように、HLB値13以上の界面活性剤(B1)と他の界面活性剤とを組み合わせた試作例5~試作例16をみると、平均HLB値が8.0以上であっても、アルキル基の炭素数が18以上かつ多鎖型である界面活性剤を組み合わせないと液晶成分が生成されないことが理解される。そして、性状がジェル状であっても、粘度が高く硬い質感のジェルや、逆に粘度が低く緩い質感のジェルを得ることができ、メイク落とし性能を損ねることなく、様々な質感のクレンジング用化粧料を得ることが可能であることがわかった。さらに、界面活性剤の組み合わせによっては、クリーム状とすることも可能で、性状のコントロールが可能であることが示されるとともに、メイクを落とすためのマッサージ時間の調整も可能であることが理解される。
【0083】
表4、表10及び図10~13、図28~31、46~49に示されるように、同様に平均HLB値が8.0未満のものでは液晶成分がみられず、平均HLB値が8.0以上の試作例では液晶成分が生成された。また、一般に、油剤の総量と界面活性剤の総量が増加すると、メイクの浮きが速くなる傾向があり、試作例17,18においては、その傾向通りマッサージ時間の短縮がみられ、良好なメイク落ち性能を維持しつつ、メイク落ちのスピードの調整が可能であることが示された。先と同様に、ジェル状であっても粘度の変更が可能であることも示された。
【0084】
表5、表11及び図14,15、図32,33、図50,51に示されるように、界面活性剤をHLB値の異なるオクチルドデセスで試作した結果、HLB値の大きいオクチルドデセス-25が液晶を生成させることが理解され、液晶生成のためには少なくともHLB値が13以上の界面活性剤を使用することを要することが示された。
【0085】
表6、表12及び図16~19、図34~37、図52~55に示されるように、試作例26及び試作例27では、溶媒としての水を添加せず、性状を液状とすることができ、メイク落ち性能の高いクレンジング用化粧料を得ることができた。
【0086】
試作例28及び試作例29では、高級アルコールを添加すると硬めの質感となることが示され、高級アルコールが10重量部以上添加すると、液晶成分が減少するとともに、各成分が混ざらずに分離してしまうことがわかった。試作例30では、シリコーンを添加することにより、やや硬い質感とすることができマッサージ時間が短縮されることが可能であることが示された。また、洗い流し後のすっきり感に優れることがわかった。
【0087】
以上、表7~12に示されるように、液晶が生成された試作例に係るクレンジング用化粧料にあっては、高いメイク落ち性能を確認することができた。また、液晶成分が多いほど、よりメイク落ち性能が高い傾向があり、液晶成分がメイク落ちの良さに寄与することが示された。これにより、本発明に係る液晶乳化物を含むいわゆる液晶型クレンジング用化粧料の有用性が示されるとともに、クレンジング用化粧料の性状や質感等を任意にコントロール可能な液晶乳化物を得ることができ、使用者の好みやニーズに合わせた調整が可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の液晶乳化物によると、メイク落ち性能の良さを維持しつつ、クレンジング用化粧料としたときの性状を任意に選択することが可能であるとともに、質感やメイク落ちのスピードをも調整が可能であるため、需要者のニーズに合わせたクレンジング用化粧料を提供することができる。また、該液晶乳化物を希釈して乳化することにより、乳液や化粧水等にも使用することができる。本発明の液晶乳化物は、特別な界面活性剤を使用することなく、かつ煩雑な工程を経ることなく製造が可能であることから、安価で経済性にも優れる。
図1
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