(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】注出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20250418BHJP
B65D 47/40 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
B65D47/06 400
B65D47/40
(21)【出願番号】P 2021091400
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2021077606
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000216195
【氏名又は名称】天龍化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 仁昭
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101401(JP,A)
【文献】特開2000-159254(JP,A)
【文献】特開2001-341764(JP,A)
【文献】特開2019-006475(JP,A)
【文献】特開2018-087034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 47/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルの首部に打栓又はねじ込まれる本体
と、前記本体の一側部にヒンジを介して一体に連結された蓋とを有しており、
前記本体は、前記ボトルの首部に取り付く筒部とその上端に設けた頂壁とを備え、前記頂壁
のうち軸心を挟んで前記ヒンジと反対側にずれた位置にノズルが配置されている合成樹脂製の注出キャップであって、
前記本体の頂壁は、全体的に上向きに膨れつつ前記ノズルに向けて窄まったランド部に形成されていて、前記ノズルを挟んで前記ヒンジの側に位置した緩傾斜部と、前記ノズルを挟んで前記ヒンジと反対側に位置した急傾斜部とを有している一方、
前記ノズルは、前記ランド部の上端に連続したストレート部と、前記ストレート部の上端に連続して内面が上向きに広がった開口縁とを有して、前記ストレート部の上下高さは当該ストレート部の内径及び
前記ランド部の高さよりも小さくなっており、
前記蓋には、閉じた状態で前記本体のストレート部に密嵌するシール突起が形成されている、
注出キャップ。
【請求項2】
前記ノズルの開口縁は、全周に亙って同じ高さに設定されている、
請求項1に記載した注出キャップ。
【請求項3】
前記ノズルの開口縁は、前記本体の軸心から離れるに従って高くなるように傾斜しているか、又は、前記本体の軸心から離れるに従って低くなるように傾斜している、
請求項
1に記載した注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内容物をノズルから注出させる注出キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
注出キャップの一態様として、本体にノズルを突設し、ノズルから内容物を注出する(小出しする)タイプがある。このタイプでは、ボトル(容器)は一般に合成樹脂によって変形可能に構成されており、ボトルを手で加圧して内容物をノズルから噴出させていることが多い。例えば、ケチャップやソース、マヨネーズ、液体味噌、タレ類(例えば焼肉のタレ)のような粘度が高い調味料類の包装に多用されている。ボトルはチューブ仕様になっていることもある。
【0003】
このタイプの注出キャップにおいては、内容物を注ぎ終えた後にノズルの先端から内容物が垂れ落ちる「液ダレ」の現象が発生しやすいという問題がある。そこで、ノズルの上端(開口縁)にフランジを設けて液ダレを防止することが提案されている。
【0004】
その例として、特許文献1には、ノズルを全周に亙って同じ高さに形成しつつ、上端の全周にフランジを均等に形成することが開示されている。すなわち、特許文献1では、ノズルを単純なラッパ状に形成している。
【0005】
他方、特許文献2では、蓋がヒンジを介して本体に一体に形成されたヒンジキャップにおいて、ノズルの上面を、ヒンジに近づくに従って低くなるように傾斜させて、高くなっている部位にフランジを形成することが開示されている。また、特許文献3には、特許文献2と同様に蓋がヒンジを介して本体に一体に形成されたヒンジキャップにおいて、特許文献2と同様にノズルの上面を、ヒンジに近づくに従って低くなるように傾斜させつつ、ノズルの開口縁の全周にフランジを形成することが開示されている。
【0006】
特許文献2,3において、ノズルの上面がヒンジに近づくに従って低くなるように傾斜している(或いは、ヒンジから遠ざかるに従って高くなるように傾斜している)のは、蓋に設けたシール用の突起をノズルの内部に嵌入させるにおいて、突起の嵌入を容易にする意味合いが強い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平08-86552号公報
【文献】特開2013-154934号公報
【文献】特開2020-19482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液ダレの問題は注出キャップにおいて広く問題になっている現象であるが、ノズル付き注出キャップにおいては、内容物が液体味噌のように粘度高い液体である場合に、内容物を注ぎ出してからボトルを起こしたときに、内容物が風船状に膨れた球体がノズルの開口縁に生成されて、これが瞬時に破裂し、周囲に飛散してテーブルを汚したり人の衣服を汚したりする現象が発生することがある。この現象は、特許文献2,3のようにノズルの上面を傾斜させた場合も現れている。
【0009】
ボトルを起こしたときに球体が生成されて破裂するメカニズムは正確に解明するには至っていないが、内容物の粘度が大きいと表面張力も大きいため、ボトルを起こしたときに、表面張力によって内容物の膜がノズルの開口縁を覆うように形成され、この膜が、ボトルの押圧解除による負圧化によって球体に変化するものの、表面張力は球体を維持する程には強くないために、球体になるのと同時に破裂して内容物の粒が周囲に飛散しているものと推測される。
【0010】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、注ぎ出しの後に内容物が飛散する現象を抑制できる注出キャップを開示せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は様々な構成を含んでおり、典型例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「ボトルの首部に打栓又はねじ込まれる本体と、前記本体の一側部にヒンジを介して一体に連結された蓋とを有しており、
前記本体は、前記ボトルの首部に取り付く筒部とその上端に設けた頂壁とを備え、前記頂壁のうち軸心を挟んで前記ヒンジと反対側にずれた位置にノズルが配置されている合成樹脂製の注出キャップ」
という基本構成において、
「前記本体の頂壁は、全体的に上向きに膨れつつ前記ノズルに向けて窄まったランド部に形成されていて、前記ノズルを挟んで前記ヒンジの側に位置した緩傾斜部と、前記ノズルを挟んで前記ヒンジと反対側に位置した急傾斜部とを有している一方、
前記ノズルは、前記ランド部の上端に連続したストレート部と、前記ストレート部の上端に連続して内面が上向きに広がった開口縁とを有して、前記ストレート部の上下高さは当該ストレート部の内径及び前記ランド部の高さよりも小さくなっており、
前記蓋には、閉じた状態で前記本体のストレート部に密嵌するシール突起が形成されている」
という特徴を保持している。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
請求項1のいずれかの展開例として、請求項2では、
「前記ノズルの開口縁は、全周に亙って同じ高さに設定されている」
という構成になっており、同じく請求項1の展開例として、請求項3では、
「前記ノズルの開口縁は、前記本体の軸心から離れるに従って高くなるように傾斜しているか、又は、前記本体の軸心から離れるに従って低くなるように傾斜している」
という構成になっている。
【0016】
【発明の効果】
【0017】
さて、内容物を皿等の狙った部位(対象部位)に注ぎ出すには、ノズルにはある程度の高さが必要である。そして、各特許文献は、いずれも頂壁はフラットであってこれからノズルを立設しており、従って、ノズルはある程度の長さがある。このようにノズルが長いことにより、ボトルを起こしたときに内容物の戻りが悪くて、ノズルの開口縁に内容物の膜が生成されやすいと推測される。
【0018】
これに対して本願発明では、頂壁が全体として上向きに膨れた(窄まった)ランド部になっていて、ノズルはランド部に設けているため、ノズルの上端を使用に支障がない高さと成しつつ、ノズルの長さをできるだけ短くできる。これにより、ボトルを起こしたときに内容物をボトルの内部に戻りやすくして、ノズルの開口縁に膜が生成することを防止又は著しく抑制できる。これにより、内容物が球状化してから破裂して周囲を汚すことを、防止又は著しく抑制できる。
【0019】
請求項1のように蓋を設けると、不使用時の汚れを防止できる。特に、本願発明の注出キャップは、調味料のような食品を包装するボトルに使用されることが多いため、汚れ防止の役割は重要である。
【0020】
請求項1のように、ノズルを本体の軸心に対して偏心させる(オフセットさせる)と、ボトルを傾けて内容物を注ぎ出すにおいて、ノズルをできるだけ対象部に近づけることができるため、内容物の飛翔位置を狙いやすい。また、内容物を注ぎ出してからボトルを起こしたときの液ダレも抑制できる。
【0021】
ランド部の膨出態様は様々に具体化できるが、請求項1のように、ノズルに向けて窄まった断面形状に形成すると、内容物を注ぎ出すにおいて、内容物がノズルに向けてスムースにガイドされると解される。
【0022】
そして、ランド部は本体の軸心の側(ヒンジの側)に広く広がっているため、ランド部は本体の軸心と反対側において急傾斜になるが、このように急傾斜であることにより、内容物を長く形成したのと同様の効果が現れて内容物を注ぎ出すに際して直進性を高めることができ、内容物を狙った部位に的確に注ぎ出すことができる。
【0023】
請求項1のようにヒンジキャップに具体化すると、蓋はワッタッチ的に開閉できる利点がある。この場合、請求項3のようにノズルの開口縁(上面)を傾斜させると、シール用突起の嵌入・離脱を容易化できて好適である。
【0024】
また、請求項2のようにノズルの上端面を同じ高さに設定すると、内容物を注ぎ出してらボトルを起こすに際して、ボトルの口部に残った内容物を全体的に容器内に戻す機能が高くなり、その結果、内容物を注ぎ出してから容器を起こすに際して、内容物が垂れ落ちる液ダレを防止又は抑制できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は開蓋状態の平面図、(B)は(A)のB-B視断面図である。
【
図2】第1実施形態を示す図で、(A)は開蓋状態の側面図、(B)は(A)のB-B視図、(C)は(A)のC-C視図、(D)は閉蓋状態の平面図、(E)は(D)のE-E視図、(F)は(D)のF-F視図である。
【
図3】(A)は
図1(B)のIIIA-IIIA 視断面図、(B)は
図2(D)のIIIB-IIIB 視断面図、(C)は注ぎ出している状態の縦断側面図である。
【
図4】注ぎ出してからボトルを起こして状態での縦断側面図である。
【
図5】第1実施形態の変形例である第2実施形態の縦断側面図である。
【
図6】
参考例を示す図で、(A)は閉蓋状態での縦断側面図、(B)は注ぎ出してからボトルを起こした状態での縦断側面図、(C)は他の参考例の縦断側面図である。
【
図7】
第3実施形態を示す図で、(A)は開蓋状態の側面図、(B)は縦断側面図、(C)は注ぎ出してからボトルを起こしている状態での縦断側面図、(D)は比較を示す図である。
【
図8】
(A)は第4実施形態の縦断側面図、(B)は第5実施形態の部分的な縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1).第1実施形態の構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1~4に示す第1実施形態を説明する。本実施形態はヒンジキャップに適用している。従って、注出キャップは、本体1とこれにヒンジ2を介して一体に連結された蓋3とで構成されている。
【0027】
本体1は、ボトル4の首部に外側から嵌合する外筒5と、ボトル4の首部に内側から嵌合する内筒6と、両者の上端に繋がった頂壁7とを備えており、外筒5の一側部にヒンジ2を介して蓋3が一体に繋がっている。ヒンジ2は、幅広のセンターヒンジ2aと幅狭のサイドヒンジ(フィルムヒンジ)2bから成っている。
【0028】
本体1の頂壁7には、その外周よりも少し入り込んだ状態で環状フレーム8が形成されている。環状フレーム8には外向きに突出した外向き係合部9が形成されている。一方、蓋3における筒部の開口縁には、本体1の環状フレーム8が入り込む肉盗み段部10が形成されており、肉盗み段部10に、環状フレーム8の係合部9と係合する内向き係合部11が形成されている。
【0029】
蓋3の筒部のうちヒンジ2と反対側の部位には、開くに際して指先をかけるタブ12を突設している。また、本体1の外周面には、タブ12の指かかりを良くするための凹所13を形成している。本体1を構成する外筒5には、ボトル4における首部の外向き環状凹所14に係合する内向き環状突起15を形成している。従って、本体1は、弾性変形を利用して強制嵌合(打栓)される。
【0030】
なお、本体1のうち環状フレーム8の外側の部位には、外筒5と頂壁7との連結強度を低下させてボトル4の首部からの離脱を容易化する上向き開口溝16が、凹所13の部位を除いた広い範囲に形成されている。開いた状態の蓋3を上向きに引き起こすと外筒5が縦に千切れ、それから蓋を周方向に引っ張ると、本体1と頂壁7との連結部(弱化部)上向き開口溝16の箇所で破断し、これにより、ボトル4の首部に対する外筒5の係合が解除される。従って、本体1をボトル4から容易に取り外しできる。
【0031】
本体1の頂壁7には、当該頂壁7の広い範囲に広がって頂壁7が全体的に上向きに膨れたようなランド部17が形成されている。ランド部17は、ヒンジ2と反対側にずれた部位に向けて窄まるような山形を成しており、上面の全体が上向きに凹んだ曲面を成している。そして、ヒンジ2と反対側に位置して最も高くなった部位にノズル18を突設している。従って、ノズル18は、本体1の軸心挟んでヒンジ2と反対側にずれている(偏心している、オフセットされている。)。
【0032】
また、ノズル18が偏心していることにより、ランド部17の断面は、ノズル18を挟んでヒンジ2の側に位置した部位は緩傾斜部17aになって、ノズル18を挟んでヒンジ2と反対側に位置した部位は急傾斜部17bになっている。急傾斜部17bとノズル18とは滑らかに連続している。
【0033】
ノズル18の開口縁の上面18aは、ヒンジ2から遠ざかるに従って高さが高くなるように傾斜しており、かつ、主としてヒンジ2と反対側の部位に、フランジ19を形成している。敢えて述べるまでもないが、フランジ19は内容物の流れをガイドすると共に液ダレを防止するためのものであり、先端に向けて厚さが薄くなっている。
【0034】
ノズル18の開口縁の内面は面取り状の逃がし面20が形成されており、逃がし面20の最下端の下方にストレート部21が存在している。ストレート部21は、内径よりも高さ(上下長さ)H2が小さくなっており、かつ、ストレート部21の高さH2はランド部17の高さH1よりも遥かに小さくなっている。そして、蓋3を構成する天板の下面に、ストレート部21と密嵌するシール用突起22が形成されている。シール用突起22は円筒状に形成されているが、中実状(丸棒状、ピン状)に形成してもよい。
【0035】
(2).作用
ボトル4はPETのような合成樹脂製であり、
図3(B)に示すように、蓋3を上にした姿勢でボトル4を傾けることにより、内容物23を注ぎ出すことができる。通常は、ボトル4を加圧することにより、内容物23を噴出させることが多いと云える。
【0036】
そして、本実施形態では、ランド部17の全体がノズル18に向けて窄まった山形に形成されているため、注出に際して内容物23がランド部17によってノズル18に向かうようにガイドされる。これにより、内容物23の注出をスムースに行える。
【0037】
また、ノズル18はランド部17に設けているため、頂壁7からランド部17の上端までの距離(高さH1)は高くなっている。このことと、ノズル18が本体1の軸心から偏心していることとが相まって、ノズル18の先端を皿等の対象部にできるだけ近づけることができる。従って、皿(或いは料理)の対象部位に内容物を噴出させることの容易性は損なわれていない。
【0038】
そして、注出してからボトル4を起こすと、ノズル18に溜まっていた内容物23はボトル4に戻るが、ボトル4は加圧を解除されて負圧状態になるため、内容物23がボトル4の内部に引き込まれる傾向を呈する。
【0039】
この場合、従来は、
図4に点線で模式的に表示するように、ノズル18の上面18aを覆うように内容物23の膜24が生成され、これが球体化して瞬時に破裂する現象が生じることがあった。これは、ノズル18
の上下高さが長いと、ノズル18の内面の流れ抵抗が大きいことにより、ノズル18に残っていた内容物23の一部が表面張力によってノズル18の上面18aを覆うように残ってしまい、ボトル4の負圧化によって球体化するものの、球体を維持できずに瞬時に破裂しているものと推測される。
【0040】
これに対して本実施形態では、ノズル18は
上向きに窄まったランド部17の最高位箇所にあるため、
上端の高さを高くしつつ上下長さは従来よりも短くなっており、従って、内容物23が戻るに際して流れ抵抗は著しく低下している。これにより、
図4に示すように、ノズル18に戻っていた内容物23は、ボトル4の負圧化によって(或いは自重によって)全体がボトル4に戻ってくれる。
つまり、ランド部17における緩傾斜部17aの下方が、内容物23を抵抗なしに流下させる逃がし空間27になっていて、内容物23はスムースに流下すると云える。従って、ノズル18の上面18aに膜24が生成されることはなくて、球体の破裂による飛散現象も生じない。
【0041】
従って、ノズル18の高さを高くして皿等の対象部位にピンポイント的に注出することの容易性を損なうことなく、ボトル4を起こしたときに内容物23の小粒が飛散する現象を防止できる。
【0042】
実施形態では、ランド部17はラッパを伏せたように湾曲した形態になっているが、断面形状が直線に現れるテーパ状に形成することも可能である。この場合も、上記と同じ作用・効果を発揮する。
【0043】
(3).第2~8実施形態
次に、
図5以下の実施形態を説明する。
図5に示す第2実施形態では、ランド部17のうちノズル18を挟んでヒンジ2と反対側に位置した急傾斜部17bを外向きに膨れた(内向きに凹んだ)曲面に形成している。このように形成すると、注出後にノズル18に残った内容物23がボトル4に戻るに際して、ノズル18の内面との接触面積が低下するため、内容物23の速やかな戻りを確実化して、内容物23の飛散現象防止効果を大きく向上できると云える。
【0044】
【0045】
図6に示す参考例では、ノズル18の上面18aが、ヒンジ2から遠ざかる方向に低くなるように傾斜している。すなわち、ノズル18の18aの傾斜姿勢が、従前の実施形態とは逆になっている。ノズル18の開口縁のうちヒンジ2に近い部位は、ヒンジ2の側に傾斜した広がり部25になっている。蓋3のシール用突起22との干渉を抑制するためである。本実施形態は、ランド部17は第3実施形態に適用しているが、他の形態にも適用できる。
【0046】
さて、従来の構造においてノズル18の開口面に膜24が出来やすいことは
図4を参照して述べたとおりであるが、膜24の生成の容易性はノズル18の上面18aの形状とも関連しているのではないかと推測される。
【0047】
すなわち、従来、ノズル18の上面18aは傾斜することなく全体が同じ高さになっているか、ヒンジ2に向けて低くなるように傾斜している(本願の第
1,2実施形態も同様である。)。他方、
図4に矢印26で示すように、注出を終えてボトル4を起こすとノズル18に残った内容物23がボトル4の内部に戻るように移動するが、従来構造では、内容物23がノズル18の上面(開口縁)18aに沿って移動する傾向を呈するため、内容物23がノズル18の上面18aの全体に広がりやすくて、膜24が生成されやすいのではないかと推測される。
【0048】
他方、
図6の参考例のようにノズル18の上面18aを従来と逆に傾斜させると、ノズル18の上面は内容物23の戻り方向に向かって高くなっているため、内容物23がノズル18の上面18a全体に広がることは重力の法則から困難であり、従って、ノズル18に残っていた内容物23の全体を速やかにボトル4に戻すことができると解される。
【0049】
図6(C)に示す他の参考例では、ノズル18のうちヒンジ2に近い側に壁27を立てているが、これによっても、膜の生成を防止して内容物23の飛散現象を防止できると期待される。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
図7では、請求項
2に対応した実施形態を示している。この実施形態は、基本構造は第1実施形態と同じであり、第1実施形態との相違点は、ランド部17の急傾斜部17bがカール構造でなく直線状の断面形状に成っている点と、ノズル18の上面18aが全周に亙って同じ高さになっている点である。この実施形態では、ノズル18の上端部の逃がし面20は、全周に亙って内向きに膨れた曲面になっており、外側のはみ出しは殆どない。すなわち、第1実施形態のフランジ19は存在していないと云えるが、外向きに張り出したフランジ19を排除するものではない。
【0055】
さて、第1実施形態のようにノズル18の上面18aが傾斜していると、内容物を注ぎ出してからボトルを起こすに際して、内容物が液ダレ落ちることがあった。この点について本願発明者が研究したが、上面18aが傾斜していると、
図7(D)に示すように、ノズル18の口部に表面張力によって塊状に残っていた内容物23が全体としてボトルに戻らずに、塊の一部がノズル18の外側にはみ出た状態に残って、これが垂れ落ちている
と推測される。
【0056】
つまり、内容物23を注ぎ出してからボトル4を起こすと、
図4(A)に示すように、内容物23はその一部をノズル18に残した状態でボトル4の内部に戻ることになり、その場合、内容物23のうちノズル18に残った部分は表面張力によって塊の状態になっており、内容物23の一部がノズル18の外側にはみ出た状態になることがあるが、内容物23の表面張力は必ずしも強くない一方、ノズル18の上面18aが傾斜していると、
図7(D)に示すように、内容物23がノズル18に充満せずに即座にボトルの内部に流下するため、内容物23が、ノズル18からはみ出た状態の部分23aとボトル4の内部に流下する本体部分23bとに分離して、ノズル18からはみ出た部分23aが下方に
ダレ落ちていると推測される。
【0057】
更に補足すると、ボトルがプラスチック製の場合は、人は内容物を注ぎ出すに際してボトルを加圧して噴出させ、注ぎ出してから起こすに際してはボトルに対する加圧を解除しており、このため、ボトルを元の姿勢に戻すに際してボトルの内部は負圧化するが、ボトルの内部が負圧化していることにより、塊化していた内容物23の本体部分23bが速やかに戻るため、内容物23を塊に保持する表面張力が本体部分23bの引っ張り力に負けて塊が二分し、ノズル18にはみ出た状態で残っていた部分23aが垂れ落ちやすくなっていると推測される。
【0058】
これに対して本実施形態のようにノズル18の上面を同じ高さに設定すると、
図7(C)に示すように、内容物23がノズル18から流下するにおいて流れ抵抗が高くなることにより、内容物23の塊がノズル18の内部に詰まった状態である程度の時間保持されるため、内容物23が表面張力によって全体として塊に保持された状態が維持され、その結果、ノズル18の開口部に残った内容物23の全体がボトル4の内部に戻って、液ダレ落ち現象が著しく改善できる。
【0059】
つまり、本実施形態では、ノズル18に残った内容物23が過剰に流動することを防止して、内容物23を表面張力によって塊の状態に保持されたままでボトル4に戻せるのであり、これにより、内容物23の液ダレ落ち現象を著しく改善できる。
【0060】
そして、本実施形態は、上窄まりのランド部17を備えていることにより、ボトル4を起こしたときに内容物をボトル4の内部に戻りやすくして、ノズル18の開口縁に膜が生成することを防止又は著しく抑制して内容物23の飛散現象を著しく改善できるが、本実施形態は、内容物23を塊の状態のままで速やかに戻せることにより、内容物23のダレ落ち現象と飛散現象との両方を防止又は大幅に抑制できる。
【0061】
図8に示す第4実施形態も請求項
2を具体化したものであり
、ノズル18の逃がし面20を全周に亙ってテーパ面に形成している。他方、
図8(B)に示す第5実施形態では、逃がし面20のうち内容物23が流れ出る流出部20aは内向きに凹んだ曲面に形成して、内容物23の流出部20aと反対側の部分は内向きに膨れた曲面に形成している。従って、逃がし面20の形状は周方向に徐々に変化している。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、注出キャップはボトルにねじ込まれるねじ蓋方式にすることもできる。本願発明では、ボトルはチューブ容器も含んでいる。
【0066】
また、本願で提示した各注出キャップは従来にない形態であってデザイン的に優れている。従って、各形態は意匠登録の対象たり得るが、その場合、ランド部及びノズルの部分のみを対象とした登録(部分意匠としての登録)も可能である。ノズルの全周にフランジを設けでに、第1実施形態や第5実施形態のように上面を傾斜させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本願発明は、注出キャップに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 本体
2 ヒンジ
3 蓋
4 ボトル
5 外筒
6 内筒
7 頂壁
17 ランド部
17a 緩傾斜部
17b 急傾斜部
18 ノズル
18a ノズルの上面(開口縁)
19 フランジ
20 開口縁の逃がし面
21 ストレート部
22 シール用突起