(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】視野検査装置、視野検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/024 20060101AFI20250418BHJP
【FI】
A61B3/024
(21)【出願番号】P 2023141403
(22)【出願日】2023-08-31
【審査請求日】2024-11-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506423051
【氏名又は名称】株式会社QDレーザ
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第217138037(CN,U)
【文献】特開昭50-025091(JP,A)
【文献】特開平01-238819(JP,A)
【文献】特表2010-533522(JP,A)
【文献】特表2021-502881(JP,A)
【文献】特開2018-202090(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101342072(CN,A)
【文献】特表2015-513430(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022757(WO,A1)
【文献】特開2011-161122(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0049316(US,A1)
【文献】特開平08-117186(JP,A)
【文献】特開2021-186339(JP,A)
【文献】国際公開第2021/200067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の網膜に刺激光を照射する光照射部と、
前記刺激光の強度を時間経過とともに所定の輝度まで上昇させる検査用パターン
と前記刺激光の強度を前記検査用パターンよりも急峻に上昇させる反応時間測定用パターンとで前記刺激光を前記光照射部から照射させる投影制御部と、
前記刺激光を視認した前記被験者により操作されるスイッチと、
前記検査用パターンにおいて前記スイッチが操作されるタイミング
と、前記反応時間測定用パターンにおいて前記スイッチが操作されるタイミングとに基づいて
、前記被験者が視認可能な前記刺激光の強度を算出する算出部と、
を備える、視野検査装置。
【請求項2】
前記投影制御部は、前記網膜上の複数の部位のうちの一をランダムに順次、選択し、選択された前記部位に前記光照射部から前記検査用パターンで前記刺激光を照射させる、請求項
1に記載の視野検査装置。
【請求項3】
前記投影制御部は、前記検査用パターンでの検査中に、ランダムなタイミングで前記反応時間測定用パターンを割り込ませる、請求項
2に記載の視野検査装置。
【請求項4】
前記投影制御部は、選択された前記部位に対応する前記スイッチへの操作があった場合には、前記刺激光の強度を前記所定の輝度まで上昇させる前に、検査対象を前記網膜上の複数の部位の中から選択された次の部位に移行させる、請求項
2に記載の視野検査装置。
【請求項5】
刺激光の強度を時間経過とともに所定の輝度まで上昇させる検査用パターン
と前記刺激光の強度を前記検査用パターンよりも急峻に上昇させる反応時間測定用パターンとで前記刺激光を照射させる投影制御ステップと、
前記検査用パターンにおいて前記刺激光を視認した被験者により操作されるスイッチが操作されるタイミング
と、前記反応時間測定用パターンにおいて前記刺激光を視認した前記被験者により前記スイッチが操作されるタイミングとに基づいて
、前記被験者が視認可能な前記刺激光の強度を算出する算出ステップと、
を備える、視野検査方法。
【請求項6】
刺激光の強度を時間経過とともに所定の輝度まで上昇させる検査用パターン
と前記刺激光の強度を前記検査用パターンよりも急峻に上昇させる反応時間測定用パターンとで前記刺激光を照射させる投影制御ステップと、
前記検査用パターンにおいて前記刺激光を視認した被験者により操作されるスイッチが操作されるタイミング
と、前記反応時間測定用パターンにおいて前記刺激光を視認した前記被験者により前記スイッチが操作されるタイミングとに基づいて
、前記被験者が視認可能な前記刺激光の強度を算出する算出ステップと、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視野検査装置、視野検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被験者の視野を覆う筐体の中に注視点を呈示し、被験者が視線を注視点に向けた状態で、輝点(視標)を被験者の視野内にランダムに表示し、それを被験者が視認できたかどうかを検査する視野検査装置が知られている。なお、事前に被験者の応答により測定した閾値に基づいて、検査時に使用する刺激光の強度を決定する技術は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の視野検査装置では、網膜上の各部位に当てる刺激光の強度は固定されるため、被験者個々人の網膜感度を測定することができない。また、例えば、刺激光の強度を切り換えながら、各強度ごとに被験者が視認できたかどうかを検査することも考えられる。しかしこの場合には、検査時間が長くなり、被験者の負担が大きくなる。
【0005】
そこで、1つの側面では、本発明は、被験者の負担を増大させることなく、網膜感度を測定することが可能な視野検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、
被験者の網膜に刺激光を照射する光照射部と、
前記刺激光の強度を時間経過とともに所定の輝度まで上昇させる検査用パターンと前記刺激光の強度を前記検査用パターンよりも急峻に上昇させる反応時間測定用パターンとで前記刺激光を前記光照射部から照射させる投影制御部と、
前記刺激光を視認した前記被験者により操作されるスイッチと、
前記検査用パターンにおいて前記スイッチが操作されるタイミングと、前記反応時間測定用パターンにおいて前記スイッチが操作されるタイミングとに基づいて、前記被験者が視認可能な前記刺激光の強度を算出する算出部と、
を備える、視野検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本発明によれば、被験者の負担を増大させることなく、網膜感度の絶対値を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の視野検査装置の構成を示す図である。
【
図1A】本実施例の視野検査装置が適用される検査器の外観を例示する図である。
【
図3】網膜上に刺激光(レーザー光)が呈示される部位を示す図である。
【
図4】本実施例の視野検査装置における視野検査処理を示すフローチャートである。
【
図5】被験者の反応時間を計測するための反応時間計測処理を示すフローチャートである。
【
図6】算出部における算出処理を示すフローチャートである。
【
図7】視野検査実行時における刺激光の検査用パターンと反応時間測定用パターンの配置例を示す図である。
【
図8】
図5の反応時間計測処理で取得される照射継続時間のカウント値を示す図である。
【
図9】被験者の網膜上の所定の部位の網膜感度を算出する方法を示す図である。
【
図10】スイッチへの操作に応じて、網膜上の次の部位へ検査対象を移行するタイミングを早める例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施例の視野検査装置の構成を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本実施例の視野検査装置は、被験者の網膜に刺激光を照射する光照射部11と、刺激光の強度を時間経過とともに所定の輝度まで上昇させる検査用パターンで刺激光を光照射部11から照射させる投影制御部12と、刺激光を視認した被験者により操作されるスイッチ13と、検査用パターンにおいてスイッチ13が操作されるタイミングに基づいて被験者が視認可能な刺激光の強度を算出する算出部14と、を備える。
【0011】
また、本実施例の視野検査装置は、検査に関連するデータや算出部14により算出された検査結果等のデータを記憶する記憶部15と、記憶部15に記憶された検査結果等を出力する出力部16と、を備える。
【0012】
本実施例の視野検査装置は、所定のプログラムが実装されたコンピュータを用いて構成することができる。
【0013】
図1Aは、本実施例の視野検査装置が適用される検査器の外観を例示する図である。
図1Aの例では、光照射部11は、検査器の内部に収容される。なお、
図1Aでは、左右両眼に対応する検査器を示しているが、左右の片眼ずつの検査に対応した検査器を使用することもできる。検査器の構成は任意であり、例えば、被験者が装着可能なゴーグルないし眼鏡のような形状の装置内に光照射部11を内蔵した検査器を使用することもできる。
【0014】
図1Aに示す検査器は、フレーム102、調整部材103、104、基部105、支持部106a、106b、画像投影部107a、107b、台座108、撮像部109a、109bを有する。また、基部105の上に台座108が設けられており、フレーム102は、両端が基部105の上面に固定されている。
【0015】
画像投影部107a、107bは、支持部106a、106bによって支持されている。画像投影部107a、107bは、光照射部11によって、視野、視力、視認等の視覚を検査する被験者の左眼と右眼に対し、刺激光を照射し、被験者の網膜に検査用画像を含む投影画像を投影させる。
【0016】
調整部材103は、画像投影部107a、107bが支持された支持部106a、106bを、
図1Aに示すY軸方向に移動させる。調整部材104は、画像投影部107を支持部106に沿って
図1Aに示すZ軸方向に移動させる。
【0017】
視覚検査装置100は、台座108とフレーム102のそれぞれに被験者の顎と額とを接触させ、調整部材103、104によって、被験者が画像投影部107a、107bを覗くような状態となるように、画像投影部107を眼球に近づけた状態で検査が行われる。
【0018】
図2は、光照射部の構成を示す図である。光照射部11は、マクスウェル視を利用して、被験者の眼球20の網膜22に刺激光(レーザ光)を照射する。
【0019】
図2に示すように、光照射部11は、光源111、調整部112、光学系113を有する。光学系113は、走査部114、平面ミラー115、レンズ116、117を有する。走査部114は、例えば、2軸のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。
【0020】
光照射部11において、光源111が出射したレーザ光Lは、調整部112において開口数(NA)及び/又はビーム径が調整される。レーザ光Lは、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光などの可視レーザ光である。
【0021】
レーザ光Lは、平面ミラー115で反射し、走査部114より2次元に走査される。走査されたレーザ光Lは、レンズ116及びレンズ117を介し、被験者の眼球20に照射される。レーザ光Lは、水晶体21近傍で収束し、硝子体23を通過し網膜22に照射される。これにより、網膜22に画像が投影される。走査部114は、例えば、1秒間に60フレームの画像が投影されるような28kHz等の比較的高い周波数で振動する。
【0022】
なお、光照射部11に対する眼球20の位置は、レーザ光Lが眼球20の瞳孔の位置でけられない(遮蔽されない)ように、例えば、調整部材103、104により調整される。例えば、走査により拡散したレーザ光Lが、その光軸方向について眼球20の水晶体21の近傍で収束するような位置関係を得ることにより、画像の周辺が欠落することなく、視野全体で画像を結像させることが可能となる。
【0023】
図3は、網膜上に刺激光(レーザ光)が呈示される部位を示す図である。
図3において、各部位は描画されたドット51により示される。
【0024】
図3に示すように、網膜22上における全部で28箇所の部位に刺激光が呈示される。隣り合う部位の間隔は、縦方向および横方向とも、水晶体21の中心近傍の収束点から網膜22へ投影される刺激光の角度として6度の間隔に相当する。28箇所の部位が分布する領域を含む領域(矩形状の領域)には、所定の輝度(グレー色)の背景52が投影される。背景52の輝度として任意の値を選択できるが、以降の説明では、背景52の輝度が、全256諧調の内、例えば100の値に相当する明るさに設定された例を示す。また、28箇所の部位が分布する領域の中心部には、被験者が中心固視をする部位を示すマーク53が呈示される。被験者は、マーク53を固視しつつ、28箇所の部位における刺激光を認識したときにスイッチ13を操作することで、被験者の視野検査が行われる。
【0025】
次に、本実施例の視野検査装置の動作について説明する。
【0026】
図4は、本実施例の視野検査装置における視野検査処理を示すフローチャートである。
【0027】
図4のステップS102では、投影制御部12は、未だ検査対象となっていない網膜22上の部位に相当する候補の中から1つの部位を選択する。
【0028】
ステップS104では、投影制御部12は、刺激光の強度を時間経過とともに所定の輝度まで上昇させる検査用パターンで、光照射部11から刺激光を選択されている網膜22上の部位に照射させる動作を開始させる。例えば、検査用パターンでは、8ビット256個の諧調値を背景52の輝度に相当する100から256まで連続的に増加させることにより、当該部位の光量を連続的に増加させる。光量を増加させるのに要する時間は、例えば、2~4秒間の範囲で設定することができる。
【0029】
ステップS106では、投影制御部12は、ステップS104において動作が開始されてからの経過時間のカウントを開始する。
【0030】
ステップS108では、投影制御部12は、ステップS106でカウントが開始された経過時間のカウント値を取得する。
【0031】
ステップS110では、投影制御部12は、ステップS108で取得された経過時間のカウント値に基づき、刺激光の強度が上記の所定の輝度まで上昇したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS114へ進め、判断が否定されれば処理をステップS112へ進める。
【0032】
ステップS112では、投影制御部12は、スイッチ13が操作されたか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS114へ進め、判断が否定されれば処理をステップS110へ進める。
【0033】
ステップS114では、記憶部15は、ステップS108で取得された経過期間のカウント値を網膜22上の部位と対応付けて記憶する。
【0034】
ステップS118では、投影制御部12は、今回検査対象となった網膜22上の部位を候補(ステップS102で選択されうる部位)から削除する。
【0035】
ステップS120では、投影制御部12は、網膜22上の部位の候補(ステップS102で選択されうる部位)が残っているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS122へ進め、判断が否定されれば処理を終了する。
【0036】
ステップS122では、投影制御部12は、ステップS108で取得された経過時間のカウント値に基づき、検査用パターンでの刺激光の照射が終了したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS102へ進め、判断が否定されればステップS122の処理を繰り返す。
【0037】
このように、本実施例では、
図4の視野検査処理において、網膜22上における28箇所の部位のすべてについて経過期間のカウント値を取得、記憶する。ここで、経過期間のカウント値が異常(エラー)を示す場合には、網膜22上の当該部位について、再度、検査(ステップS104~S114)を実行し、有効な経過時間のカウント値を取得してもよい。
【0038】
本実施例において、
図4の視野検査処理を複数回(例えば、3回)、実行し、検査結果の精度向上を図ることができる。この場合、網膜22上における部位ごとに取得された経過期間のカウント値の平均値を、当該部位に対応する最終的な結果(経過期間のカウント値)としてもよい。
【0039】
本実施例では、
図4に示す処理を実行中の所定のタイミングで、反応時間測定用パターンで刺激光を光照射部11から照射させ、被験者の反応時間を計測する。
【0040】
図5は、被験者の反応時間を計測するための反応時間計測処理を示すフローチャートである。反応時間計測処理は、例えば、
図4に示す処理を実行中に、ランダムなタイミングで実行される。
【0041】
図5のステップS202では、投影制御部12は、網膜22上の所定の部位に対し、刺激光の強度を検査用パターンよりも急峻に上昇させる反応時間測定用パターンで刺激光を光照射部11から照射させる。反応時間測定用パターンは、例えば、刺激光の輝度が背景52の輝度から所定の輝度(例えば、諧調値として256の輝度)まで瞬時に立ち上がり、所定継続時間だけ継続するパターンとされる。また、反応時間測定用パターンが適用される網膜22上の部位としては、例えば、
図3に示す中心領域51Aにある部位(
図3の例では、4つの部位のうちの一つ)が選択される。これにより、被験者の反応時間をより正確に測定することができる。
【0042】
ステップS204では、投影制御部12は、ステップS202において照射が開始された刺激光の照射継続時間のカウントを開始する。
【0043】
ステップS206では、投影制御部12は、ステップS204で開始された照射継続時間のカウント値を取得する。
【0044】
ステップS208では、投影制御部12は、ステップS108で取得された継続時間のカウント値に基づき、上記の所定継続時間が経過したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS212へ進め、判断が否定されれば処理をステップS210へ進める。
【0045】
ステップS210では、算出部14は、スイッチ13が操作されたか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS212へ進め、判断が否定されれば処理をステップS206へ進める。
【0046】
ステップS212では、記憶部15は、ステップS206で取得された照射継続時間のカウント値を記憶し、処理を終了する。
【0047】
本実施例では、
図5に示す反応時間計測処理を、
図4に示す処理を実行する間に複数回行い、照射継続時間のカウント値を複数取得する。これにより、当該被験者の反応時間を正確に把握できる。反応時間計測処理の実行回数は任意であるが、例えば、3~5回程度、実行してもよい。ステップS206で取得された照射継続時間のカウント値が異常(エラー)を示す場合には、反応時間計測処理の実行回数を増やし、有効な照射継続時間のカウント値の個数を確保してもよい。
【0048】
図6は、算出部における算出処理を示すフローチャートである。
【0049】
図6のステップS302では、算出部14は、
図4の処理で記憶された対応する被験者のデータを記憶部15から取得する。被験者のデータには、照射継続時間のカウント値(ステップS212)と、経過期間のカウント値(ステップS114)とが含まれる。
【0050】
ステップS304では、算出部14は、ステップS302で取得された照射継続時間のカウント値に基づいて、当該被験者の反応時間を算出する。反応時間は、例えば、複数の照射継続時間のカウント値の平均値として算出することができる。また、照射継続時間のカウント値にエラーと考えられる値(小さすぎる値および大きすぎる値)が含まれる場合には、当該カウント値を除外したうえで、残りのカウント値の平均値を反応時間として算出してもよい。
【0051】
ステップS306では、算出部14は、ステップS302で取得された経過期間のカウント値に基づいて、当該被験者の網膜22上の各部位ごとの網膜感度(被験者が視認可能な刺激光の強度)を算出し、処理を終了する。
【0052】
図7は、視野検査実行時における刺激光の検査用パターンと反応時間測定用パターンの配置例を示す図である。
【0053】
図7の例では、基本的には、一定の周期(例えば、2~4秒間)で、順次、異なる網膜22上の部位に対して検査用パターンによる刺激光の照射が繰り返される(ステップS122参照)。しかし、その周期内に、
図5に示す反応時間計測処理が割り込み処理として挿入される(
図4では、割り込み処理を示していない)。
図7では、時刻t0、t1、t3に検査用パターンによる刺激光の照射が開始され、時刻t2から時刻t3の間で、反応時間測定用パターンによる刺激光の照射が行われる。検査用パターンでは、背景52(
図3)の輝度に相当する諧調値100から諧調値256まで強度が連続的に増加する。また、反応時間測定用パターンによる刺激光の強度は、諧調値256に相当している。
【0054】
図8は、
図5の反応時間計測処理で取得される照射継続時間のカウント値を示す図である。
【0055】
図8の例では、時刻t11に、反応時間測定用パターンによる刺激光の強度が諧調値100から256に立ち上がり、時刻t3にその強度が諧調値256から100に戻る。時刻t12にスイッチ13が操作された場合(ステップS210の判断が肯定された場合)、照射継続時間のカウント値は、カウント値Δtとして取得(記憶)される。
【0056】
図9は、被験者の網膜上の所定の部位の網膜感度を算出する方法を示す図である。
【0057】
上記のように、
図6に示す算出処理では、照射継続時間のカウント値に基づいて被験者の反応時間が算出される。
【0058】
図9の例では、照射継続時間のカウント値に対応する被験者の反応時間を、反応時間ΔTとして示している。
【0059】
図9において、検査用パターンによる刺激光の強度は、時刻t1からその諧調値が100から徐々に増加し、時刻t2に諧調値256に到達する。ここで、時刻t21にスイッチ13が操作された場合、算出部14は、被験者が刺激光を認識したのは、時刻t21よりも反応時間ΔTだけ前の時点である時刻t22であるとみなす。したがって、算出部14は、時刻t22の時点に対応する刺激光の諧調値Xを、対応する網膜22上の部位の網膜感度(被験者が視認可能な刺激光の強度)として算出する。
【0060】
なお、検査用パターンによる刺激光の強度が諧調値256に到達した後、すなわち、検査用パターンによる刺激光の照射が終了した時点(時刻t2)よりも後に、スイッチ13が操作される場合もある。
図9において、時刻t23にスイッチ13が操作された場合には、算出部14は、時刻t23よりも反応時間ΔTだけ前の時点である時刻t24で被験者が刺激光を認識したとみなす。したがって、この場合には、時刻t24の時点に対応する刺激光の諧調値X0が、対応する網膜22上の部位の網膜感度(被験者が視認可能な刺激光の強度)として算出される。
【0061】
算出部14により算出された網膜22上の各部位の網膜感度は、記憶部15に保存され、さらに保存されたデータは、出力部16により出力される。例えば、網膜22上の各部位を
図3に示すような2次元的なチャートとして示し、チャート内の各部位の網膜感度、すなわち、被験者が視認可能な刺激光の強度(諧調値)に対応した表示態様で表示することができる。例えば、チャート内の各領域を、対応する部位の網膜感度に応じた表示色(例えば、諧調の異なる表示色)で表示してもよい。
【0062】
図10は、スイッチへの操作に応じて、網膜上の次の部位へ検査対象を移行するタイミングを早める例を示す図である。
【0063】
投影制御部12は、選択されている部位に対応するスイッチ13への操作があった場合には、検査用パターンによる刺激光の輝度を最後まで上昇させる前に、検査対象を網膜22上の次の部位に移行させてもよい。
【0064】
図10の例では、検査用パターンによる刺激光は、時刻t0からその諧調値が100から徐々に増加し、時刻t1に諧調値256に到達するように初期設定されている。しかし、スイッチ13への被験者の操作が時刻t31にあった場合、被験者が刺激光を認識したのは、時刻t31よりも反応時間ΔTだけ前の時点である時刻t32であるとみなされ、時刻t32の時点に対応する刺激光の諧調値X1が、対応する網膜22上の部位の網膜感度(被験者が視認可能な刺激光の強度)として算出される。そして、この場合、スイッチ13が操作された時刻t31以降、検査用パターンによる刺激光の照射を継続する必要性が失われる。このため、
図10の例では、時刻t33に検査用パターンによる刺激光の照射を停止し、検査対象を網膜22上の次の部位に移行させている。
【0065】
このような動作を採用することにより、被験者のスイッチ13への操作が早期になされた場合には、速やかに検査対象を網膜22上の次の部位に移行させることができる。このため、検査時間の短縮化および被験者への負担の軽減を図ることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施例の視野検査装置では、刺激光の強度を時間経過とともに所定の輝度まで上昇させる検査用パターンを用い、被験者がスイッチを操作するタイミングに基づいて被験者が視認可能な刺激光の強度を算出している。このため、被験者の負担を増大させることなく、被験者個々人の網膜22上の各部位における網膜感度を算出できる。したがって、例えば、白内障などの混濁に起因する疾病と、緑内障などの視野欠損による疾病の識別なども容易となる。
【0067】
また、感度の低い被験者であっても、検査中、最初から最後まで何も見えないというようなケースの発生を防止でき、被験者のフラストレーションや負担を招くことを回避できる。
【0068】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
11 光照射部
12 投影制御部
13 スイッチ
14 算出部
15 記憶部
16 出力部