(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】嫌気性共消化によるバイオガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20250418BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20250418BHJP
C02F 11/08 20060101ALI20250418BHJP
B09B 3/45 20220101ALI20250418BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20250418BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20250418BHJP
【FI】
B09B3/65
C02F11/04 A ZAB
C02F11/08
B09B3/45
B09B3/70
B09B101:85
(21)【出願番号】P 2023564395
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 ES2021070256
(87)【国際公開番号】W WO2022223852
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】523395292
【氏名又は名称】エコンワード・テック・ソシエダッド・リミターダ・ウニペルソナル
【氏名又は名称原語表記】Econward Tech, S.L.U.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】アパリシオ ガジャ,フリオ セサル
(72)【発明者】
【氏名】サルゲロ カルバハル,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ソレル,フリアン アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】メナ サンス,ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア カノ,ルーベン
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-514714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0121851(US,A1)
【文献】特開平07-185595(JP,A)
【文献】特開平11-028445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/65
C02F 11/04
C02F 11/08
B09B 3/45
B09B 3/70
B09B 101/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気性共消化によりバイオガスを生成する製造方法であって、
(a)都市の固形分廃棄物及び同化可能な廃出物の有機部分、都市の固形分廃棄物の選択収集に由来する有機廃棄物、並びに上記のいずれかの組み合わせからなる群から選ばれる有機固形分廃棄物から加水分解バイオマスを調製する第1工程であって、
i. 有機固形分廃棄物の熱加水分解処理を含む第1サブ工程であり、該熱加水分解処理は、1.5~4.5barの圧力及び120~160℃の温度で行い、その結果、原料バイオマスを得る第1サブ工程;及び
ii. その後、原料バイオマスの後処理として行う第2サブ工程であって、異物を分離して清浄な加水分解バイオマスを得、該加水分解バイオマスは、有機物質の比率が少なくとも90重量%、全固形物に対する揮発性固形物の重量比率が少なくとも0.6及び全固形物含有量が少なくとも5重量%含むことを特徴とする第2サブ工程;
を行う工程;
(b)前記工程で得た清浄な加水分解バイオマス5重量%~65重量%と廃水処理プラント(WWTP)からのスラッジ35重量%~95重量%とを混合する第2工程であって、30重量%未満の固形分濃度の混合物を生じるように混合し、該混合物を、その後、固形分濃度が20重量%未満となるまでコンディショニング処理する工程;並びに
(c)少なくとも1つの消化装置において、前記工程で得た混合物を湿式嫌気性消化し、バイオガスと消化物とを得る第3工程であって、該嫌気性消化は、25℃~40℃の中温条件下又は50℃~60℃の高温条件下で、12~30日間の水理学的滞留時間(HRT)の間行う工程
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
有機固形分廃棄物は、都市の固形分廃棄物の有機成分であり、
80mmより大きいサイズを有する嵩高い異物を分離する前処理工程、及び/又は、少なくとも1つの磁気セパレータにより鉄金属を分離する前処理工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法で得られるバイオガスの使用方法であって、
バイオガスは、コジェネレーションすること、熱を発生させるためにボイラーで用いること、又は精製又はアップグレード処理によるバイオメタンの製造に
使用することを特徴とする、
使用方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の製造方法で得られる消化物の使用方法であって、
消化物は、バイオ肥料として農業利用におい
て使用する
ことを特徴とする、
使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、環境技術の分野に属し、特に、有機廃棄物の嫌気性共消化によりバイオガスを製造する新たな製造方法に関する。該有機廃棄物は、都市廃水(urban wastewater、以下、UWWと称する)及び有機固形分廃棄物(organic solid waste、以下、OSWと称する)に由来するスラッジであり、都市の固形分廃棄物(municipal solid waste、以下、MSWと称する)及び同化可能な廃出物であると理解されるようなものであり、とりわけ、好ましくは、MSWの選択収集に由来する有機廃棄物、並びに、農業、園芸、水産養殖、林業、狩猟、漁業、又は、食品の準備・製造に由来する有機廃棄物並びに産業有機廃棄物である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、従来の都市の廃棄物管理プロセスを向上させる必要性に由来する。特に、本発明は、現在まで別々に管理されている2種類の有機廃棄物(即ち、OSW及びUWWに由来するスラッジ)を処理することによりバイオマスの生成を最適化する新しい方法に関する。
【0003】
処理プラントにおけるUWWの処理は、主に2つのプロセスラインを含み、1つは、廃水を処理して水路に放出する、及び/又は、道路の清掃及び/又は庭に水をまくように再利用できるようにし、もう1つは、廃水処理の間に分離又は形成される固形分又はスラッジを取り扱う。この場合、砂又は嵩高い廃棄物は、取り除かれ、集積場に送られ、他方、生物学的処理の間に生じる及び/又は沈降工程の間に除去するスラッジは、ほとんどが湿式の嫌気性消化プロセスに付される。
【0004】
都市の固形分廃棄物及び同化可能な廃出物の場合、通常の処理は、これらに含まれる様々な成分(通常は、プラスチック、金属、及び有機成分)を分離し、その後、各成分をそれぞれ処理及び回収することを含む。有機成分の場合、回収の主態様は、堆肥化又は好気性安定化、嫌気性消化又は熱回収(焼却、ガス化、熱分解等)である。
【0005】
嫌気性消化の場合、廃棄物処理の2つの主なトレンドがある。
・固形分濃度が20重量%超の乾式プロセス。
・固形分濃度が20重量%未満(通常、約10又は12%)の湿式プロセス。
【0006】
嫌気性消化によるスラッジ処理に関する多数の発明が特許文献に開示されている。
【0007】
例えば、米国特許第3338826号は、分解を加速するために2~4気圧の圧力に廃水を処理することを含む嫌気性消化により廃水を処理する方法に関する。
【0008】
さらに、欧州特許0737651号は、廃水処理方法に関し、該方法は、とりわけ、余剰スラッジを60℃以上の温度で熱前処理すること、余剰スラッジを脱水すること、及び、脱水スラッジとメタン発酵プロセスとから得られる消化スラッジとを混合することを含み、得られた混合物は新たなメタン発酵プロセスの基質として用いられるようになっている。
【0009】
廃水処理プラント(wastewater treatment plants、WWTP)で形成される廃水スラッジの処理方法を最適化するために、多くの解決策が提案されているが、これまで、他のタイプの有機廃棄物(好ましくは、MSWの有機成分の選択収集に由来する固形分廃棄物、前記廃棄物は、一旦処理されると、廃水スラッジ処理プラントにて形成又は分離されたスラッジの嫌気性消化プロセスにおける効率を向上させるために使用される)の熱分解プロセスを用いるコンディショニングに基づく解決策は見られない。本発明の解決方法とは異なり、有機廃棄物及び処理プラントのスラッジの共消化による組み合わせ処理では、従来技術の方法は原料有機廃棄物を用いている。言い換えると、従来技術の廃棄物では、異物を除去していない。
【0010】
有機固形分廃棄物の熱加水分解処理の結果、以下に詳細に示すように、複数の利益がもたらされる。中でも、得られるバイオガスの生成と品質に関しては、処理施設のエネルギーを自給でき、さらに、余剰分を生成できるという驚くべき結果が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、嫌気性共消化によりバイオガスを生成する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の工程を含む:
(a)有機固形分廃棄物から加水分解バイオマスを調製する第1工程。第1工程は、以下を含む:
i. 有機固形分廃棄物の熱加水分解処理を含む第1サブ工程。この熱加水分解処理は、好ましくは、1.5~4.5barの圧力及び120~160℃の温度に廃棄物を曝すことにより行われ、時間は10~75分間であってよい。上記圧力及び上記時間は、製造方法の次の工程に影響を与え得る阻害性化合物を生成することなく、熱加水分解の効果を最適化するように変えてよい。
熱加水分解処理により、次のようなメリットが得られる:
- 廃棄物処理;
- 異物に影響を及ぼすことなく、有機成分を部分的に分解する(このような異物は、嫌気性消化プロセスで回収されにくい廃棄物成分である)。これにより、
・有機成分を均質化でき、
・異物の分離効率を向上できる。これにより、有機成分の利用をより大きくでき、後続する洗浄プロセスにおける損失を小さくできる。
- 有機物を熱的及び生物学的に安定化する;
- 複雑な化合物を、可溶であり、より容易に分解できる分子へと変換する。
本明細書の範囲における、上記熱加水分解工程の結果物を、本明細書において「未処理バイオマス」と称する。「未処理バイオマス」の特徴は、出発廃棄物のソースに応じて大きく変わり得、特定の実施形態では、上記「未処理バイオマス」は、70~75重量%の生分解性有機物、10~15重量%の軽量の異物(このような物質(例えば、繊維、プラスチック、プラスチック-段ボール容器、木材の剪定廃材、木材又はコルク等)は、有機物が可溶化すると、有機物の懸濁液よりも密度が低いため、浮遊する傾向がある。)、及び、10~15重量%の重量のある異物(このような物質(例えば、ガラス、板ガラス、砂、石、骨等)は、有機物が可溶化されると、有機物の懸濁液よりも密度が高いため、沈殿する傾向がある。)を含むことを特徴とする。
ii. 第2サブ工程は、次いで、未処理バイオマスの後処理として行われ、異物を除去する。特に、軽量の異物及び重量の異物の分離を行う。
異物の除去は、前記分離工程で実施されている技術分野の公知の方法(例えば、軽量の異物を除去するために、トロンメル型の分離器、振動台又はデパッカーを使用する、重量の異物を除去するために、沈殿槽、液体分級機又はサンドトラップ等を使用する)により実施され得る。
このサブ工程により、本発明の目的物である加水分解バイオマス(「基質」又は「清浄な加水分解バイオマス」と称する)が得られ、これは、蓄積してよく、処理を続けて行ってよい。この基質は、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも98重量%の有機物を含むことを特徴とする。好ましくは、前記製品中の全固形物に対する揮発性固形物の重量比は、少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.8であり、全固形含有量は少なくとも5重量%である。
【0013】
(b)前記工程で得られる清浄な加水分解バイオマスと廃水処理プラント(WWTP)からのスラッジとを混合する第2工程であって、固形分濃度は30重量%未満、一般的には5~15重量%の混合物が生じる工程。好ましくは、混合物中の清浄な加水分解バイオマスの量は、5~65重量%であり、スラッジ量は、35~95重量%である。なお、混合物中の各成分の最終量は限定されず、季節性又は他の状況に応じて変動し得る。
このようにして、特許請求の範囲に記載の方法により、スラッジの形成において存在し得る変動(例えば、年間を通じて人口が変動する都市等)に関係なく、年間を通じてバイオマスを持続的に製造し得る。この場合、スラッジ生成が少ない期間は、加水分解バイオマスをより多く使用することによって補うことができ、バイオガスの生成を維持できる。
得られる混合物は、その後のコンディショニング処理に付して、全固形物の量を20重量%未満、好ましくは5~15重量%未満となるように調整する。この含有量は、方法の次の工程を行うのに必要な量である。
【0014】
(c)少なくとも1つの消化装置において、前記工程で得た混合物を湿式嫌気性消化し、バイオガスと消化物とを得る第3工程。
好ましくは、嫌気性消化は、中温条件(25℃~40℃の温度、好ましくは35℃~38℃の温度)下において、12~30日間の水理学的滞留時間(HRT)で行われる。本発明の他の態様では、嫌気性消化は、高温条件(50℃~60℃の温度)で実施し得る。
また、嫌気性消化プロセスのpHは7~8.5であり、有機物負荷率は1.5~5kgVS/m3日であってよい。
【0015】
有機固形分廃棄物が都市の固形分廃棄物及び同化可能な廃出物の有機成分である本発明の特定の実施形態では、該方法は、嵩高い廃棄物(これらの大きな体積部分又は構成成分は、サイズで容易に分離できるものであり、このサイズは一般に80mm超である)及び/又はその中の金属を分離することによって、廃棄物を準備する前段階を含んでよい。次に、嵩高い廃棄物の分離は、好ましくは60~120mmのメッシュサイズで、少なくとも1つのトロンメル型回転分離器を用いて実施できる。次に、鉄金属が存在する場合、前記金属は、少なくとも1つの磁気分離器によって分離され得る。
【0016】
同様に、この方法は、得られるバイオガスを利用する追加の工程を有してよく、好ましくは、コジェネレーション(熱と電気との両方を生成する)、熱を生成するボイラー、又はバイオメタンを得るための精製(アップグレード)工程に利用してよい。
【0017】
さらに、この方法は、消化物を利用する追加の工程を含んでいてよく、好ましくは、バイオ肥料として農業利用する追加の工程を有してよい。
【0018】
本明細書において、有機固形分廃棄物は、MSWの有機成分と同化可能な廃出物との両方(好ましくは、MSWの選択収集から生じる有機廃棄物)、並びに、農業、園芸、水産養殖、林業、狩猟、漁業、及び、食品製造及び生成物、産業有機廃棄物等の有機廃棄物であると理解されよう(理解するべきである)。
【0019】
MSWは、家庭廃棄物、言い換えると、家庭活動の結果、家庭において排出される物質又は物体として理解されよう。MSWの同化可能な廃出物は、店舗、工場及び施設(例えば、市場廃棄物、街路清掃廃棄物、下水廃棄物等)で生じる上述した廃棄物と同様の廃棄物であり得る。
【0020】
特に有機固形分廃棄物は、生物学的に分解されやすい廃棄物であることを特徴とし、特に限定されないが、果物及び野菜の廃棄物、肉及び魚の廃棄物、卵の殻、貝類の殻及びドライフルーツ類及びナッツ類、又は他の食品廃棄物、インフュージョン(抽出)及び粉砕コーヒーからの廃棄物、使用済みナプキン、油又は食品廃棄物により汚れたペーパータオル及び汚れた紙及び段ボール、小さな庭の廃棄物(植物、落葉又は花束)等を含み得る。
【0021】
さらに、本発明の目的のため、廃水処理プラント(WWTP)からのスラッジは、家庭廃水又は都市廃水を処理するプラントで得る水と固形物との混合物、又は、工業廃水及び/又は降雨流出水とのそのような混合物と理解されよう。したがって、その組成は、最初の廃水の組成、その発生源及び/又は廃水の処理方法によって変動し得る。一般にスラッジ中の水の割合は95重量%より大きい。
【0022】
WWTPからのスラッジを消化するための嫌気性消化プロセスにおいて、基質として有機固形分廃棄物を(熱加水分解処理に一旦付すと)用いることに基づく本発明の方法の目的から、多くの利点がある。特に、嫌気性消化の基質として加水分解バイオマスを用いると、次のような結果が得られる:
【0023】
(1)一般にエネルギーが不十分である既存の施設(特に、WWTPプラント施設)における、バイオ廃棄物(MSW及び同化可能な廃出物又は一度加水分解した、前述したように、発生源が相違する有機廃棄物の有機成分)の使用。
【0024】
(2)従来は別々に管理されていた廃棄物の管理の一元化。
【0025】
(3)1つの同一施設において異なる廃棄物の管理を一元化する新しいプラントを設けることも可能であるが、新たな投資を避けてWWTPの既存施設を利用すること。
【0026】
(4)全固形分の濃度だけでなく、消化装置の体積当たりの揮発性固形分の濃度の増加。その結果、有機負荷率(OLR)も増加する。本開示の特定の実施形態では、13~108%のOLRの増加が達成されている。消化装置の有機負荷率を高くすることに加えて、季節に関係なく、一定の有機負荷率を維持できる。
【0027】
(5)特許請求の範囲に記載された廃棄物の混合物により達成される相乗効果としての驚くべきバイオガスの製造の増加。特定の実施形態では、スラッジ/バイオマス比が93/7~80/20である現在のWWTPで達成される生成と比べて、15~124%のバイオガス生成が増加する。バイオガス生成がこのように大きく増加する結果、再生可能エネルギーの生成が増加するだけでなく、処理施設のエネルギーを自己供給でき、さらに余剰が生じることもある。
【0028】
(6)バイオガスの品質の向上、及びCH4の割合の増加。本発明の好ましい態様において、本方法により得られるバイオガスは、CH4を64.6~67.4%、CO2を35.4~32.6%含み得る。得られるバイオガスが、WWTPの現在のスラッジ処理で得られるバイオガスよりも品質が高いことは、生成量の増加とともに、多くの方法で優位になる。特に、複合サイクルで得られる電気の割合をより高くでき、自給の割合を大きくし得る。さらに、自給が達成された場合、余剰バイオガスは他の目的に使用し得る。例えば、精製(アップグレード)プロセスにおいてバイオメタンを得、バイオメタンを販売し、水処理プラントの追加収入を得ることができる。
【0029】
(7)バイオガス中のメタン濃度が増加することによる燃料の低位発熱量(LHV)の1~10%の増加。
【0030】
(8)脱臭及び濃縮(アップグレード)の必要性の減少。薬剤を節約でき、操業コスト及びメンテナンスコストを低減できる。同様に、品質が良いことから、使用するコジェネレーションエンジンの寿命を長くできる。
【0031】
(9)以下に示すようなプロセスの安定性の向上。
・消化装置における有機物負荷率が増加し、水理学的滞留時間(HRT)が5~60%減少し、
・方法に用いる化学薬剤の使用を最小限に抑えることができ、及び、
・消化装置の有機物の分解性が増加し、現在のプロセスと比較すると、総固形分及び揮発性固形分の削減率を6%~27%大きくできる。
【0032】
同様に、プロセスは加水分解バイオマスを使用することから、以下に説明するように、非加水分解有機廃棄物を使用するプロセスと比べて、一連の追加の長所を有する。
・第1に、より高い生分解性の達成。その結果、バイオガスの高い生成量が得られる。
・さらに、プロセス中の異物のより効率的な分離。特に、MSWの異物を除去する通常のプロセスの間、本発明の方法の結果得られる値と比べて30~40重量%の有機物が失われ、本発明の方法の結果として達成できるような品質の基質を得ることが妨げられる。本発明の加水分解プロセスの結果として、異物の除去プロセスにおける有機物の損失は5重量%未満となり、これにより出発廃棄物に含まれる有機物の利用率が高くなる。
・次に、廃棄物の処理の結果として、消化装置の運転に影響を与え得る病原体が追加されることの防止。
・最後に、熱的及び生物学的な安定。有機物の分解に伴う臭気の放出が最小限となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本明細書を捕捉するために、その一部分として次の図面を添付する。
図1は、理論上のバイオガス生成量と、本発明の方法によって得られるバイオマス生成量との比較グラフである。
【発明を実施するための態様】
【0034】
(本発明の好ましい実施形態)
本発明の特定の実施形態を、特許請求の範囲に記載の方法の利点を実証する目的で、以下に示す。特に、前記特定の実施形態は、マドリッド市におけるMSWの選択収集由来の有機固形分廃棄物に基づいて行われた。その組成は以下の表に示される。
【0035】
【0036】
廃棄物は、次の工程に付した。
・メッシュサイズ80mmのトロンメルで嵩高い異物を分離することにより廃棄物を調製する前工程。
・先の工程で得た有機固形分廃棄物から、加水分解バイオマスを調製する工程。この工程は、以下を含む。
- 圧力4bar及び温度150℃で20分間熱加水分解処理を行う第1サブ工程。
- デパッカーを用いて軽量の異物を除去し、かつ、サンドトラップにより重量の異物を除去する、第2サブ工程。
【0037】
この工程の最後に、有機含有量が98重量%の「基質」又は「清浄な加水分解バイオマス」を得た。前記基質は、以下に記載する共消化試験に用いた。
【0038】
特に、前記試験を実施するために、嫌気性スラッジ(anaerobic sludge、ANS)のみを含む2つのブランクと、割合を変えた好気性スラッジ(aerobic sludge、AES)及び清浄な加水分解バイオマスを含む4つのサンプルとを調製した。具体的には、準備したサンプルは以下のとおりである。
【0039】
【0040】
【0041】
各サンプルの主な特性を以下の表にまとめる。各パラメータの測定方法は以下のとおりである。
・全固形分(TS):APHA2540B
・揮発性固形分(VS):APHA2540E
・COD:APHA5220D
・COD溶液:APHA5220D
・VFA:APHA2310B
【0042】
【0043】
全重量が500gとなるまで、各サンプルに水を加えた。各サンプルは、3個調製した。
【0044】
調製したサンプルを35℃の嫌気性消化処理に付した。栄養分や緩衝剤は添加していない。
【0045】
次に、得られた結果物の分析を行い、これらの結果を以下の表に示す。
【0046】
【0047】
消化装置の基質としてMSWの有機成分に由来する加水分解バイオマスを用いると、VS/TSの割合が大幅に増加した。特に、VS/TSの割合は、ブランク(AES)では69%、サンプル1(ANS)では75%、サンプル2~4では80~85%となり、加水分解バイオマスを消化装置に供給する場合、混合物の生分解性が増加することが確認された。
【0048】
【0049】
上記結果は、VS量が同じ場合でも、VFAの場合と同様に加水分解バイオマスの存在に応じてCODが増加することを示しており、サンプルの生分解性が高いことを確認できる。
【0050】
【0051】
上記結果は、MSWの有機成分の加水分解プロセスにより得られた加水分解バイオマスとWWTPからのスラッジとの混合物により達成される相乗効果を示す。特に、本発明の方法は、バイオガス生成の非線形状の生成を達成し、20%の加水分解バイオマスを消化装置に加えると、除去されたCOD1kg当たりのメタンの生産比は340.8%増加し、加えられたCOD1kg当たり213.8kg増加する。嫌気性消化プロセスを行う消化装置に加えられる混合物に加水分解バイオマスを使用すると、加水分解の程度が増加し、従って、生分解性が増加することが実証された。
【0052】
バイオガスの生成の向上に加えて、次の表に示すように、メタン(CH4)含有量の分析を行った。
【0053】
【0054】
上記の結果は、消化装置で用いる加水分解バイオマスの割合を増やすことで、得られるバイオマスの品質が向上することを示す。
【0055】
最後に、本発明の方法の結果として得られる相乗効果を実証するために、本発明の方法により得られるバイオガスの生成と、処理プラントからのスラッジから生成されるバイオガスと加水分解バイオマスで生成されるバイオガスとの合計に基づく理論的なバイオガスの生成とを比較した。
図1に結果を示す。具体的には、図に示すように、バイオガスの実際に生成された量(実線)は、それぞれの基質から別々に(即ち、これらを混合することなく)得られるバイオガス生成量の理論的な合計量に相当する最大理論生成量(不連続線)に対して50%大きい。これは、処理プラントからのスラッジに加水分解バイオマスを加えることによる。特に下記の点において改良されている。
・有機炭素が増加することにより、C/N比が増加する(一般に、処理プラントからのスラッジは窒素が多く炭素が少ない)。
・例えば、亜鉛、コバルト、鉄、カリウム又はリン等の微量栄養素が増加する。
【0056】
共消化のバイオガスの実際の生成量が理論上の最大値よりも50%大きいことは、スラッジを加水分解バイオマスと混合するときに生じる相乗効果である。