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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20250418BHJP
   H05B 6/68 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
F24C7/02 330D
F24C7/02 320Q
H05B6/68 320Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021082241
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175641
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 紀子
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋一
(72)【発明者】
【氏名】熊木 彰
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 卓也
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084401(JP,A)
【文献】特開昭59-032721(JP,A)
【文献】国際公開第2014/102746(WO,A1)
【文献】米国特許第06111239(US,A)
【文献】特開2022-110659(JP,A)
【文献】特開2013-036635(JP,A)
【文献】特開2017-194173(JP,A)
【文献】特開2002-243164(JP,A)
【文献】特開2002-213751(JP,A)
【文献】特開2005-241241(JP,A)
【文献】特開昭59-221527(JP,A)
【文献】特開2020-148399(JP,A)
【文献】特開2019-143927(JP,A)
【文献】特開2017-003149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/02
F24C 7/08
H05B 6/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容した容器を内部に収容する調理室と、
前記被調理物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段を制御する制御手段と、
前記被調理物または前記容器の温度を検出する温度分布検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記被調理物に加熱を行なう初期加熱、前記被調理物への加熱を停止または大幅に熱量を低下させた状態で加熱を行なう加熱休止、前記初期加熱よりも低い熱量で前記被調理物への加熱を行なう再加熱、および前記被調理物への加熱の終了のいずれかの加熱制御を行なうように前記加熱手段を制御し、
前記温度分布検出手段からの検出信号に基づいて、次に移行する加熱制御を定める移行手段と、
前記被調理物への加熱の時間や前記加熱を一旦停止する時間を計時する計時手段と、
所定時間開始時および経過時の前記被調理物の温度を記憶する記憶手段と、をさらに備え、
前記移行手段は、前記初期加熱の加熱制御時において、前記被調理物の温度が第1の温度閾値以上になったとき、または前記被調理物の温度上昇率が第1の温度上昇率閾値を超えたときは、その時点で前記加熱休止に移行するように定め、
前記初期加熱の加熱制御を行なう期間である第1の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より低く、前記被調理物の温度上昇率が前記第1の温度上昇率閾値以下であり、かつ、前記第1の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が第1の温度差閾値を超えているときは、前記第1の所定期間経過後に前記加熱休止に移行するように定め、
前記第1の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より低く、前記被調理物の温度上昇率が前記第1の温度上昇率閾値以下であり、かつ、前記第1の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が前記第1の温度差閾値以下のときは、前記初期加熱に再度移行するように定めることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記移行手段は、前記加熱休止の加熱制御時において、前記被調理物の温度が、前記第1の温度閾値より上の数値である第2の温度閾値以上になったときは、その時点で前記被調理物への加熱の終了に移行するように定め、
前記加熱休止の加熱制御を行なう期間である第2の所定期間開始時の前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値以上であり、前記第2の所定期間内の前記被調理物の温度が前記第2の温度閾値より下であり、かつ、前記第2の所定期間内の前記被調理物の温度上昇率が、前記第1の温度上昇率閾値よりも低い値の第2の温度上昇率閾値を超えたときは、その時点で前記被調理物への加熱の終了に移行するように定め、
前記第2の所定期間開始時の前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より下であり、前記第2の所定期間経過時の前記被調理物の温度が前記第2の温度閾値より下で前記第1の温度閾値以上であり、かつ前記第2の所定期間内で前記被調理物の温度上昇率が前記第2の温度上昇率閾値を超えたときがあったときは、前記第2の所定期間経過後に前記加熱休止に再度移行するように定め、
前記第2の所定期間開始時の前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より下であり、前記第2の所定期間経過時の前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より下であり、かつ前記第2の所定期間内で前記被調理物の温度上昇率が前記第2の温度上昇率閾値を超えたときがあったときは、前記第2の所定期間経過後に前記初期加熱に再度移行するように定め、
前記第2の所定期間経過時の前記被調理物の温度が前記第2の温度閾値より下であり、前記第2の所定期間内で前記被調理物の温度上昇率が前記第2の温度上昇率閾値を超えたときがなく、かつ、前記第2の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が第2の温度差閾値以上であるときは、前記第2の所定期間経過後に前記再加熱に移行するように定め、
前記第2の所定期間経過時の前記被調理物の温度が前記第2の温度閾値より下であり、前記第2の所定期間内で前記被調理物の温度上昇率が前記第2の温度上昇率閾値を超えたときがなく、かつ、前記第2の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が前記第2の温度差閾値より下であるときは、前記第2の所定期間経過後に前記初期加熱に移行するように定めることを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記移行手段は、前記再加熱の加熱制御時において、前記被調理物の温度が前記第2の温度閾値以上になったとき、または前記被調理物の温度上昇率が第3の温度上昇率閾値を超えたときは、その時点で前記被調理物への加熱の終了に移行するように定め、
前記再加熱時の加熱制御を行なう期間である第3の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第2の温度閾値を超えず、かつ、前記被調理物の温度上昇率が前記第3の温度上昇率閾値以下のときは前記第3の所定期間経過後に前記加熱休止に移行するように定めることを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記移行手段は、前記初期加熱への再度移行時において、前記初期加熱へ連続して移行した回数が第1の所定回数以上であり、前記第1の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より低く、前記被調理物の温度上昇率が前記第1の温度上昇率閾値以下であり、かつ、前記第1の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が前記第1の温度差閾値以下のときは、前記第1の所定期間経過後に前記加熱休止に移行するように定めることを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記移行手段は、前記加熱休止の加熱制御時において、前記加熱休止の加熱制御を行なう期間である第2の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より上の数値である第2の温度閾値より低く、前記被調理物の温度上昇率が第2の温度上昇率閾値以下であり、かつ、前記第2の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が第3の温度差閾値より下であるときは、前記第2の所定期間経過後に前記加熱休止に再度移行するように定め、
前記加熱休止へ連続して移行した回数が第2の所定回数以上であり、前記第2の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第2の温度閾値より低く、前記被調理物の温度上昇率が前記第2の温度上昇率閾値以下であり、かつ、前記第2の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が第3の温度差閾値より下であるときは、前記第2の所定期間経過後に前記被調理物への加熱の終了に移行するように定めることを特徴とする請求項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記容器の底面または側面下部の表面温度を検出する容器温度検出手段をさらに備え、
前記移行手段は、前記温度分布検出手段および前記容器温度検出手段からの検出信号に基づいて、次に移行する加熱制御を定めることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物の表面温度を検出することにより加熱を制御する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加熱調理器は数多くあり、例えば特許文献1には、調理室内の温度分布を検出する赤外線センサによる温度分布検出手段と、赤外線センサからの検出信号によりマグネトロンを制御する制御手段と、を備え、この赤外線センサを往復回転駆動させることにより、調理室内のほぼ全ての領域における温度分布を検出し、そこから温度を検出した領域が、食品を載せる載置台であるのか又は加熱対象である被調理物としての食品であるのかを判定して、マグネトロンからのマイクロ波により被調理物を適切にレンジ加熱するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-127827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような電子レンジでは、例えばマグカップやコップなど開口部が狭く細長い容器に被調理物として液体を収容して加熱すると、容器の開口部が狭い、容器に収容された被調理物の量が少なく、被調理物の表面の位置が容器の高さに対して浅いなどの理由で、被調理物に赤外線センサの視野が届かず、被調理物の温度変化を検知できないために、被調理物が過加熱や加熱不足になる虞があった。そのため、例えば被調理物に赤外線センサの視野が届くような形状に変更する必要があるなどのユーザが使用する容器の形状の制約があり、また被調理物を収容する量を、例えば被調理物に赤外線センサの視野が届くように多くする必要があるなどの被調理物の量の制約があり、電子レンジの誤った使用の原因となっていた。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、加熱可能な容器形状の制約がなく、どのような形状の容器でも被調理物の加熱不足や過加熱を防止することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱調理器は、被調理物を収容した容器を内部に収容する調理室と、前記被調理物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段を制御する制御手段と、前記被調理物または前記容器の温度を検出する温度分布検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記被調理物に加熱を行なう初期加熱、前記被調理物への加熱を停止または大幅に熱量を低下させた状態で加熱を行なう加熱休止、前記初期加熱よりも低い熱量で前記被調理物への加熱を行なう再加熱、および前記被調理物への加熱の終了のいずれかの加熱制御を行なうように前記加熱手段を制御し、温度分布検出手段からの検出信号に基づいて、次に移行する加熱制御を定める移行手段と、前記被調理物への加熱の時間や前記加熱を一旦停止する時間を計時する計時手段と、所定時間開始時および経過時の前記被調理物の温度を記憶する記憶手段と、をさらに備え、前記移行手段は、前記初期加熱の加熱制御時において、前記被調理物の温度が第1の温度閾値以上になったとき、または前記被調理物の温度上昇率が第1の温度上昇率閾値を超えたときは、その時点で前記加熱休止に移行するように定め、前記初期加熱の加熱制御を行なう期間である第1の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より低く、前記被調理物の温度上昇率が前記第1の温度上昇率閾値以下であり、かつ、前記第1の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が第1の温度差閾値を超えているときは、前記第1の所定期間経過後に前記加熱休止に移行するように定め、前記第1の所定期間内に前記被調理物の温度が前記第1の温度閾値より低く、前記被調理物の温度上昇率が前記第1の温度上昇率閾値以下であり、かつ、前記第1の所定期間開始時および経過時の前記被調理物の温度の差が前記第1の温度差閾値以下のときは、前記初期加熱に再度移行するように定めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、当該加熱調理器で加熱可能な容器形状の制約がなくなり、ユーザは、所望する形状の容器を使用して加熱することができる。また初期加熱、加熱休止および再加熱を組み合わせて加熱制御することにより、加熱休止の加熱制御時に加熱手段から放射されるマイクロ波による、温度分布検出手段からの検知温度のゆらぎを防止して、検知温度の精度を向上させることができ、この向上させた精度で温度の検知することにより被調理物の状態を判定することができ、また被調理物の加熱不足や過加熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態を示す電子レンジの外観斜視図である。
図2】同上、前面から見た縦断面概略図である。
図3】同上、主な電気的構成を示すブロック図である。
図4】同上、表示手段の正面図である。
図5】同上、初期加熱の加熱制御のフローチャートを示す図である。
図6】同上、加熱休止の加熱制御のフローチャートを示す図である。
図7】同上、再加熱の加熱制御のフローチャートを示す図である。
図8】同上、レンジ加熱時の食品温度センサの検知温度の経時変化を示すグラフである。
図9】同上、レンジ加熱時の食品温度センサの検知温度の経時変化を示すグラフである。
図10】同上、レンジ加熱時の食品温度センサの検知温度の経時変化を示すグラフである。
図11】同上、レンジ加熱時の食品温度センサの検知温度および蒸気検知センサの検知温度の経時変化を示すグラフである。
図12】同上、前面から見た縦断面概略図である。
図13】本発明の第1の実施形態の変形例を示す電子レンジの、表示手段の正面図である。
図14】本発明の第2の実施形態を示す電子レンジの、前面から見た縦断面概略図である。
図15】同上、レンジ加熱時の食品温度センサの検知温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【実施例1】
【0010】
図1図12は、本発明の第1の実施形態の加熱調理器を電子レンジに適用した構成を示している。先ず図1図3に基いて、電子レンジの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となる電子レンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。また3は、本体1の前面に設けられる開閉自在な扉である。
【0011】
扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の側部には、表示や報知や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする、例えば表示手段6の表面に設けられる操作手段7としてのタッチセンサが配設される。扉3の内部で操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。また8は、家庭用のコンセントに挿抜が可能な電源プラグが設けられた電源コードである。
【0012】
本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は金属製のオーブン11を覆うように設けられ、このオーブン11が加熱調理すべき被調理物Sを収容した容器13を内部に収容する調理室12を形成する。オーブン11は金属製のため、後述する容器置台24を除く調理室12の内面は全てマイクロ波が透過不能な材料で形成されている。
【0013】
また調理室12の内面を形成する周壁は、天井壁12aと、底壁12bと、左側壁12cと、右側壁12dと、奥壁12eとからなり、天井壁12aに調理室12の温度を検出する温度検出手段としての、サーミスタや湿度センサで構成される蒸気検知センサ14が設けられ、左側壁12cの上部外側に調理室12内の温度分布を検出する温度分布検出手段としての、赤外線センサで構成される食品温度センサ15が設けられる。ここでの食品温度センサ15は、窓16を通して調理室12内全体の温度分布を検出することで、そこに収容された被調理物が放射する赤外線の量から被調理物の表面温度を短時間で検出するものである。また調理室12の前面はオーブン11の前面を形成するオーブン前板(図示せず)に達していて、被調理物Sを出し入れするために開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。調理室12の底壁12bには容器13を載置する容器置台24が設けられる。容器置台24は、マイクロ波を透過するガラスやセラミックなどからなる。またレンジ加熱時では、容器13は、マイクロ波を透過し、またマイクロ波に耐える耐熱性を有する材質、例えばプラスチックやセラミックス、ガラスなどから作成されたものが使用される。なお容器13を載置する容器載置部24aに対向する部分に、透明または半透明に形成された赤外線透過窓が形成されてもよく、この赤外線透過窓に対向して、底壁12bと容器置台24との間に赤外線センサで構成される容器底温度センサが設けられてもよい。
【0014】
本実施形態のマイクロ波加熱手段は調理室12の容器置台24の下方から調理室12の内部空間に向けてマイクロ波を放射する構成を採用しており、本体1の側部空間18の下部に、調理室12内に電波であるマイクロ波を供給するためのマイクロ波発生手段としてのマグネトロン19が設けられ、調理室12の底壁12bと容器置台24との間に形成される空間27に導波管21が設けられる。マイクロ波発生装置は、マグネトロン19やこのマグネトロン19を駆動するマグネトロン駆動装置37(図3参照)、導波管21の他に、容器置台24の下方に設けられる回転アンテナ28と、この回転アンテナ28を回転させるアンテナ回転モータ29と、により主に構成される。
【0015】
回転アンテナ28は、マグネトロン19で発振されて導波管21により回転アンテナ28の直下に導かれたマイクロ波を撹拌して、このマイクロ波を容器置台24に載置された容器13に万遍なく照射するものであり、容器置台24に対向して、回転アンテナ28の全体が容器置台24と平行に配置される。
【0016】
30は、左側壁12cの下部外側に、容器13を載置する容器置台24から所定の高さで設けられ、容器13の側面下部の表面温度を検知する容器側面下部温度センサである。この容器側面下部温度センサ30は赤外線センサで構成され、容器置台24が配設される位置の少し上の高さに設けられており、容器13の底部から側面に移行する立ち上がり部13aの表面温度を検知するように構成される。
【0017】
容器13の中に被調理物Sとして水分を含む調理物を収容したとき、この被調理物Sがマイクロ波で加熱されると被調理物Sの温度が上昇する。このとき被調理物Sに水分が存在する場合、容器13の被調理物Sと接触している部分の内面温度は沸騰温度である100℃を超えることがなく、すなわち被調理物Sの沸騰後は、容器13の内容物である被調理物Sにより、この部分が被調理物Sの沸騰温度である100℃に冷却された状態となる。その一方で、容器13の被調理物Sと接触していない部分の内面温度は被調理物Sの影響をあまり受けないため、この部分の温度を検出しても容器13内に水分が存在するかどうかを安定的に把握することができず、また被調理物Sの温度も算出することが困難である。
【0018】
そこで容器側面下部温度センサ30を容器13に収容された被調理物Sの水面よりも低い位置に設けているので、被調理物Sの量が少ない場合でも、容器13の被調理物Sと接触している部分の外面である立ち上がり部13aの表面温度を検知できるため、被調理物Sの温度変化を速やか、かつ精度よく把握することができる。また、被調理物Sから蒸発した蒸気が容器側面下部温度センサ30に向かうことがなく、容器13上方の開口部から上方へと放出されるため、容器13から発生する蒸気の影響を最小限にできる。そして容器側面下部温度センサ30と容器13の温度検知位置である立ち上がり部13aとの距離、すなわち容器側面下部温度センサ30の視野V2の距離を最短にすることができる。したがって容器側面下部温度センサ30は、容器13の温度を非接触に検出する容器温度検出手段として作用している。
【0019】
41は、本体1の内部において、調理室12の室外側方に具備されるオーブン加熱用の熱風ヒータユニットである。この熱風ヒータユニット41は、被調理物Sを収容した容器13の加熱手段として本体1の側部空間18に設けられており、右側壁12dに取付けられる凸状のケーシング42と、空気を加熱する熱風ヒータ43と、調理室12内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン44と、熱風ファン44を所定方向に回転させる電動の熱風モータ45と、により概ね構成される。右側壁12dとケーシング42との間の内部空間として、調理室12の室外側方に形成された加熱室46には、熱風ヒータ43と熱風ファン44がそれぞれ配設される。
【0020】
熱風ファン44は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ43は熱風ファン44の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ43は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。右側壁12dは、その中央に吸込み口47を備えており、吸込み口47の周囲には複数の熱風吹出し口48を備えている。これらの吸込み口47や熱風吹出し口48は、調理室12と加熱室46との間を連通する通風部として機能するものである。
【0021】
そして本実施形態では、熱風モータ45への通電に伴い熱風ファン44が回転駆動すると、調理室12の内部から吸込み口47を通して吸引された空気が、熱風ファン44の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ43により加熱され、熱風が熱風吹出し口48を通過して、調理室12内に供給される。これにより、調理室12の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室12内の被調理物Sや容器13を熱風コンベクション加熱する構成となっている。
【0022】
図3は、本実施形態の電子レンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、31はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段31は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶媒体としてのメモリなどの記憶手段32や、時刻や調理に関する時間など様々な時間を計時するタイマなどの計時手段33や、入出力デバイスなどを備えている。
【0023】
制御手段31の入力ポートには、前述した操作手段7や、蒸気検知センサ14や、食品温度センサ15や、容器側面下部温度センサ30の他に、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段34と、熱風ファン44の回転速度を検出する熱風モータ回転検出手段35と、マイクロ波発生装置を構成する回転アンテナ28の原点位置を検出するアンテナ位置検出手段36とが、それぞれ電気的に接続される。また制御手段31の出力ポートには、前述した表示手段6やマグネトロン駆動装置37の他に、調理室12内にマイクロ波を放射する回転アンテナ28を回転駆動させるアンテナ回転モータ29を動作させるための回転アンテナ駆動手段38と、オーブン加熱用の熱風ヒータ43をそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段39と、熱風モータ45を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段40と、が、それぞれ電気的に接続される。
【0024】
制御手段31は、操作手段7からの操作信号と、蒸気検知センサ14や、食品温度センサ15や、容器側面下部温度センサ30や、扉開閉検出手段34や、熱風モータ回転検出手段35や、アンテナ位置検出手段36からの各検出信号を受けて、計時手段33からの計時に基づく所定のタイミングで、マグネトロン駆動装置37や、回転アンテナ駆動手段38や、ヒータ駆動手段39や、熱風モータ駆動手段40に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体32に記憶したプログラムを、制御手段31が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段31を加熱調理制御部51と、表示制御部52として機能させるプログラムを備えている。
【0025】
加熱調理制御部51は、主に被調理物Sの加熱調理に係る各部の動作を制御するもので、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、扉開閉検出手段82からの検出信号により、扉3が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マグネトロン駆動装置37や、回転アンテナ駆動手段38や、ヒータ駆動手段39や、熱風モータ駆動手段40に制御信号を送出して、被調理物Sに対する種々の加熱調理を制御する。本実施形態では、電子レンジで加熱調理を行なうことが可能な全てのメニューの調理情報が、記憶手段32に記憶保持されており、加熱調理制御部51は、記憶手段32に記憶されたメニューの中から選択された一つのメニューについて、操作手段9から調理開始を指示する操作が行われると、その選択されたメニューの調理情報に従う所定の手順で、被調理物を加熱調理する構成となっている。
【0026】
例えばマイクロ波加熱を実行するための被調理物Sの材料および加熱条件を含む調理情報として、予め複数のメニューが記憶手段32に記憶保持されており、加熱調理制御部51はその中から選択された一つのメニューについて、操作手段7から実行する操作が行われると、その選択されたメニューに従う所定の手順で、被調理物Sを自動的に加熱する機能を備えている。具体的には、加熱調理制御部51は、被調理物Sに加熱を行なう初期加熱(A)、被調理物Sへの加熱を停止、または大幅に熱量を低下させた状態で加熱を行なう加熱休止(B)、初期加熱よりも低い熱量で被調理物Sへの加熱を行なう再加熱(C)、および被調理物Sへの加熱の終了(D)のいずれかの加熱制御を行なうように加熱手段としてのマグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動手段38を制御しており、そのため食品温度センサ15からの検出信号に基づいて、次に移行する加熱制御を定める移行手段53を備えている。
【0027】
また加熱調理制御部51は、被調理物Sとして肉を加熱する自動オーブン調理のメニューを選択した場合に、熱風ヒータ43で加熱された空気が熱風ファン44により調理室12の内部に供給されながら、調理時間や加熱温度などを操作手段7からの操作入力無しに自動的に設定して、熱風ヒータ43および熱風ファン44を設定時間に達するまで設定温度で駆動制御し、調理室12に入れられた被調理物Sとしての肉を熱風コンベクション加熱する機能を備えている。
【0028】
表示制御部52は、加熱調理制御部51と連携して、表示手段6の表示に係る動作を制御するものである。表示制御部52の制御対象となる表示手段6は、液晶パネルや照明灯により構成されるが、それ以外の表示器を用いてもよい。
【0029】
図4は本実施形態の電子レンジの表示手段6の正面図である。この図4を参照して表示手段6に表示された表示要素55の説明をすると、表示手段6は、右側部分に上から下に並んで配置される「スタート」の表示要素55-1、「お任せ あたため」の表示要素55-2、および「ストップ」の表示要素55-3と、これらの表示要素55-1~55-3の左側に上から下に並んで配置される「ご飯」の表示要素55-4、「冷凍ご飯」の表示要素55-5、「おかず」の表示要素55-6、「お弁当」の表示要素55-7、「冷凍食品」の表示要素55-8、および「飲み物」の表示要素55-9と、左側上段部分に左から右に並んで配置される「カップ コップ」の表示要素55-11、「茶碗 お椀」の表示要素55-12、「平皿 トレー」の表示要素55-13、および「容器形状 お任せ」の表示要素55-14と、左側下段部分に左から右に並んで配置される「ラップ 有り」の表示要素55-15、「ラップ 無し」の表示要素55-16、および「ラップ お任せ」の表示要素55-17と、で主に構成される。
【0030】
操作手段7としてのタッチセンサは、導電性ポリマーによる透明電極部と、表示手段6や操作手段7を制御する制御PC板(図示せず)に接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、前述のように表示手段6の上に配設され、タッチセンサの下の表示手段6に表示される複数の表示要素55の何れかに指先のタッチ操作を行なうことで、その表示要素55の上に配設され、当該表示要素に対応したタッチキーがタッチ操作されて、この表示要素55が選択される構成となっている。
【0031】
「スタート」の表示要素55-1は加熱を開始する際に操作されるもので、「スタート」の表示要素55-1に重なるタッチセンサの部位を操作すると、表示制御部52がタッチセンサからの操作信号を受け付けて加熱調理制御部51に送出し、加熱調理制御部51が調理室12内の被調理物Sに対する加熱開始の制御をする構成となっている。
【0032】
「ストップ」の表示要素55-3は加熱をやめる際に操作されるもので、「ストップ」の表示要素55-3に重なるタッチセンサの部位を操作すると、表示制御部52がタッチセンサからの操作信号を受け付けて加熱調理制御部51に送出し、加熱調理制御部51が調理室12内の被調理物Sに対する加熱を中止して切状態にする制御を行なう。
【0033】
「お任せ あたため」の表示要素55-2は、後述する容器の形状の選択やラップ有無の選択をせず、容器形状判定手段およびラップ有無判定手段を使用して自動でレンジ加熱する際に操作されるもので、「お任せ あたため」の表示要素55-2に重なるタッチセンサの部位を操作すると、表示制御部52がタッチセンサからの操作信号を受け付けて加熱調理制御部51に送出し、加熱調理制御部51が、自動で容器形状やラップ有無を判定して、調理室12内の被調理物Sに対するレンジ加熱の制御をする構成となっている。
【0034】
表示要素55-4~表示要素55-9は、加熱する被調理物Sの種類を選択する際に操作されるもので、表示要素55-4~表示要素55-9に重なるタッチセンサの部位を操作すると、表示制御部52がタッチセンサからの操作信号を受け付けて、例えば図4の「ご飯」の表示要素55-4のように、表示要素内を点灯させて字を白抜き文字にする表示をするように表示手段6を制御し、この状態で「スタート」の表示要素55-1に重なるタッチセンサの部位を操作すると、加熱調理制御部51が、記憶手段32に記憶されたメニューの中から、その選択されたメニューの調理情報に従う所定の手順で、被調理物をレンジ加熱する構成となっている。
【0035】
表示要素55-11~55-14は、加熱する被調理物Sが収容された容器の形状を選択する際に操作されるもので、本実施形態では、容器の形状が、大別して、マグカップやコップなど開口部が狭く細長い容器である「カップ コップ」の表示要素55-11、茶碗やお椀など開口部が広めで高さが低めの容器である「茶碗 お椀」の表示要素55-12、および平皿やトレーなど浅くて広い開口部の容器である「平皿 トレー」の表示要素55-13から選択可能である。これらに加えて、容器形状を問わずに被加熱物を入れた容器の形状を判定する容器形状判定手段により、お任せで容器形状を設定する「容器形状お任せ」の表示要素55-14も選択可能に構成される。ここで表示要素55-11~55-14に重なるタッチセンサの部位を操作すると、表示制御部52がタッチセンサからの操作信号を受け付けて、例えば図4の「平皿 トレー」の表示要素55-13のように、表示要素の下部にある略楕円の表示内を点灯させるように表示手段6を制御し、この状態で「スタート」の表示要素55-1に重なるタッチセンサの部位を操作すると、加熱調理制御部51が、記憶手段32に記憶されたメニューの中から、その選択されたメニューの調理情報に従う所定の手順で、被調理物をレンジ加熱する構成となっている。したがって、表示要素55-11~55-14および操作手段7は、容器13の形状を選択する容器形状選択手段として作用している。
【0036】
表示要素55-11~55-14は、加熱する被調理物Sが収容された容器の形状を選択する際に操作されるもので、本実施形態では、容器にラップを使用する「ラップ 有り」の表示要素55-15と、容器にラップを使用しない「ラップ 無し」の表示要素55-16に加えて、容器へのラップ使用の有無を判定するラップ有無判定手段により、お任せでラップ使用の有無を設定する「ラップ お任せ」の表示要素55-17から選択可能に構成される。ここで表示要素55-11~55-14に重なるタッチセンサの部位を操作すると、表示制御部52がタッチセンサからの操作信号を受け付けて、例えば図4の「ラップ 有り」の表示要素55-15のように、表示要素の下部にある略楕円の表示内を点灯させるように表示手段6を制御し、この状態で「スタート」の表示要素55-1に重なるタッチセンサの部位を操作すると、加熱調理制御部51が、記憶手段32に記憶されたメニューの中から、その選択されたメニューの調理情報に従う所定の手順で、被調理物をレンジ加熱する構成となっている。したがって、表示要素55-11~55-14および操作手段7は、ラップの有無を選択するラップ有無選択手段として作用している。
【0037】
次に図5図11を参照しつつ、本実施形態において上記構成の電子レンジについて、その作用を詳しく説明する。図5図7は、初期加熱(A)、加熱休止(B)、再加熱(C)の加熱制御のフローチャートを示しており、図8図11は、実際にレンジ加熱したときの温度の経時変化を示している。
【0038】
被調理物Sをレンジ加熱するときの作用について説明すると、まず容器13内に被調理物Sを入れる。それと前後して、電源コード8の電源プラグをコンセントに差し込んで本体1を通電させ、ハンドル4を手で握りながら扉3を開けて、容器13を容器置台24の容器載置部24aに載置する。その後、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により、例えば「お任せ あたため」の表示要素55-2に重なるタッチセンサの部位を操作して調理メニューを選択操作する。その後、「スタート」の表示要素55-1に重なるタッチセンサの部位を操作して被調理物Sの加熱調理開始を指示すると、制御手段31のメモリに組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が、制御手段31の出力ポートから所定のタイミングで出力され、例えばレンジ加熱で被調理物Sが加熱調理され、ステップS11に移行する。
【0039】
(ケース1)
まず図8に示されたケース1の場合について説明する。ステップS11に移行すると、加熱調理制御部51は、マグネトロン駆動装置37や回転アンテナ駆動装置38に制御信号を送出して、マグネトロン19からのマイクロ波を放射させ、回転アンテナ28によりこのマイクロ波を容器13に照射するように加熱制御を行なう初期加熱(A)の加熱制御を開始する。ここで初期加熱(A)の加熱制御時の加熱量としての出力は、例えば1000W、900W、600W、500Wなど任意に設定してよく、初期加熱(A)の加熱制御を行なう期間である初期加熱制御期間Tは、例えば30秒、45秒、60秒など任意に設定してよい。また加熱調理制御部51は、ステップ0から移行してきた初期の段階に、食品温度センサ15からの検知温度を安定化させる検知温度安定化期間を、例えば5秒程度設けており、この検知温度安定化期間終了後の検知温度を用いて、視野V1が向けられる被調理物Sまたは容器13の表面温度の変化を監視する。なお検知温度安定化期間は、例えば10秒など任意に設けてもよく、また検知温度安定化期間を設けなくてもよい。初期加熱(A)の加熱制御を開始したら、ステップS12に移行する。
【0040】
ステップS12に移行すると、加熱調理制御部51の移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上であるかを判定する。温度tのグラフで示されるように、60℃以上であると判定した場合(ステップS12で「Yes」)は、被調理物Sへの過加熱を防止するためにステップS21の加熱休止(B)に移行させ、60℃未満であると判定した場合(ステップS12で「No」)は、ステップS13に移行させる。なお本実施形態では初期加熱温度閾値tに60℃を採用しているが、例えば55℃、65℃、70℃など任意に設定してもよい。
【0041】
ステップS13に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率Rが初期加熱温度上昇率閾値Rの10秒間で10℃を超えた上昇率であるかを判定する。温度tのグラフで示されるように、10秒間で10℃を超えた上昇率であると判定した場合(ステップS13で「Yes」)、急速な温度上昇があったときは被調理物Sへの加熱過多が想定されるため、被調理物Sへの過加熱を防止するためにステップS21の加熱休止(B)に移行させ、10秒間で10℃以下の上昇率であると判定した場合(ステップS13で「No」)はステップS14に移行させる。なお本実施形態では初期加熱温度上昇率閾値Rに、急速な温度上昇が判定可能な10秒間で10℃の温度上昇率を採用しているが、機体特性や初期加熱(A)の加熱制御時の出力などに応じて任意に設定してもよい。
【0042】
ケース1では、初期加熱(A)の加熱制御において、ステップS11の開始から計時手段33で計時している、初期加熱(A)の加熱制御を行なう期間である初期加熱制御期間Tが経過する前に、温度tが初期加熱温度閾値tの60℃以上に達しており、また温度tの温度上昇率Rが初期加熱温度上昇率閾値Rの10秒間で10℃を超えた上昇率であるため、移行手段53はステップS12またはステップS13で、ステップS21の加熱休止(B)に移行させる。
【0043】
ステップS21に移行すると、加熱調理制御部51は、マグネトロン駆動装置37や回転アンテナ駆動装置38に制御信号を送出して、マグネトロン19からのマイクロ波の放射を停止させ、または出力を大幅に低下させるように加熱制御を行ない、被調理物Sへの加熱を停止または大幅に熱量を低下させた状態で加熱を行なう加熱休止(B)の加熱制御を開始する。このようにマイクロ波の放射を停止させ、または大幅に出力を低下させることにより、このマイクロ波による、食品温度センサ15の検知温度のゆらぎを防止して、検知温度の精度を向上させることができ、この向上させた精度で温度の検知することにより被調理物Sの状態を判定することができる。ここで本実施例では、加熱休止(B)の加熱制御時の加熱量としての出力は、マイクロ波の放射を停止させるときは0Wであり、出力を大幅に低下させるときは、例えば初期加熱の出力が1000Wの場合は500W、初期加熱の出力が500Wの場合は、500Wの40%通電率である200Wなど、初期加熱の出力に対応して出力を低下させることで、大幅に熱量を低下させた状態で加熱を行なうように構成される。加熱休止(B)の加熱制御を開始したら、ステップS22に移行する。
【0044】
ステップS22に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上であるかを判定する。温度t’のグラフで示されるように80℃以上であると判定した場合(ステップS22で「Yes」)は、向上させた精度で行った検知温度で加熱完了温度閾値tの80℃以上であり被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止する。その一方で温度tのグラフで示されるように、80℃未満であると判定した場合(ステップS22で「No」)は、ステップS23に移行させる。なお本実施形態では加熱完了温度閾値tに80℃を採用しているが、例えば75℃、85℃、90℃など任意に設定してもよく、またユーザが操作手段7で加熱完了温度閾値tを設定可能にする構成にしてもよい。
【0045】
ステップS23に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率において加熱休止温度上昇率閾値Rの10秒間で5℃を超えた上昇率があったかを判定する。ここで温度t’のグラフで示されるように、温度上昇率において10秒間で5℃を超えた上昇率があったと判定した場合(ステップS23で「Yes」)はステップS24に移行させる。その一方、温度tのグラフで示されるように10秒間で5℃以下の上昇率がなかったと判定した場合(ステップS23で「No」)はステップS25に移行させる。なお加熱休止温度上昇率閾値Rは加熱休止(B)時の温度上昇率であるため、初期加熱温度上昇率閾値Rよりも低い値であるのが好ましく、本実施形態では加熱休止温度上昇率閾値Rに10秒間で5℃の温度上昇率を採用しているが、機体特性や初期加熱(A)の加熱制御時の出力などに応じて任意に設定してもよい。
【0046】
ステップS24で移行手段53は、加熱休止制御期間T開始時の検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上に達していたかを判定する。そして温度t’のグラフで示されるように、加熱休止制御期間T開始時の検知温度が60℃以上に達していたと判定した場合(ステップS24で「Yes」)は、加熱休止制御期間T開始時の検知温度が60℃以上であり、向上させた精度で行った検知温度で加熱休止温度上昇率閾値Rの10秒間で5℃を超えた上昇率であるため、被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止する。その一方で、加熱休止制御期間T開始時の検知温度が60℃未満であると判定した場合(ステップS24で「No」)はステップS27に移行させる。
【0047】
ステップS25に移行すると、移行手段53は、ステップS21の開始から計時手段33で計時している、加熱休止(B)の加熱制御を行なう期間である加熱休止制御期間Tが経過したかを判定する。加熱休止制御期間Tは初期加熱制御期間Tよりも短い期間であることが好ましく、例えば10秒、20秒、30秒など任意に設定してもよい。加熱休止制御期間Tが経過したと判定した場合(ステップS25で「Yes」)は、ステップS26に移行させ、加熱休止制御期間Tがまだ経過していないと判定した場合(ステップS23で「No」)は、ステップS22に移行させる。
【0048】
ステップS26に移行すると、移行手段53は、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が所定回数Nの4回未満であるかを判定する。ここで温度tのグラフで示されるように、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が4回未満であると判定した場合(ステップS26で「Yes」)はステップS27に移行させる。その一方で、繰り返した回数が4回以上であると判定した場合(ステップS26で「No」)はステップS29-1に移行させる。
【0049】
ステップS27に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の妥当性を判断するために、加熱休止制御期間T開始時の検知温度と加熱休止制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが加熱休止温度差閾値DBの0℃を超えているかを判定する。温度tのグラフで示されるように、温度差Dが0℃を超えていると判定した場合(ステップS27で「Yes」)、向上させた精度で検知した被調理物Sの温度が狙い通りに上昇していると判定して、ステップS31の再加熱(C)に移行させる。その一方で、温度差Dが0℃以下と判定した場合(ステップS27で「No」)は加熱休止制御期間T内に温度降下があり、加熱不足であると判断してステップS11の初期加熱(A)に再度移行させる。
【0050】
ケース1では、加熱休止(B)の加熱制御において、加熱休止制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度tが80℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で5℃を超えたときがなく、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が4回未満であり、加熱休止制御期間T開始時と加熱休止制御期間T経過時の検知温度の温度差Dが0℃を超えているので、移行手段53はステップS25で、ステップS31の再加熱(C)に移行させる。
【0051】
ステップS31に移行すると、加熱調理制御部51は、マグネトロン駆動装置37や回転アンテナ駆動装置38に制御信号を送出して、マグネトロン19からのマイクロ波を放射させ、回転アンテナ28によりこのマイクロ波を容器13に照射するように加熱制御を行なう再加熱(C)の加熱制御を開始する。ここで再加熱(C)の加熱制御時の加熱量としての出力は、初期加熱(A)の出力と同一であることが好ましい一方で、出力を変更してもよい。また再加熱(C)は、移行手段53が加熱休止(B)の加熱制御で被調理物Sの加熱不足と判定したときの加熱制御であり、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値t近傍のときに行なう加熱制御であるため、ステップS31の開始から計時手段33で計時している、再加熱(C)の加熱制御を行なう期間である再加熱制御期間Tは、例えば10秒、20秒、30秒など初期加熱制御期間Tよりも短い期間であることが好ましく、被調理物Sへの過加熱を防止している。そのため、再加熱(C)の加熱制御で被調理物Sに与える熱量は、初期加熱(A)の加熱制御で被調理物Sに与える熱量よりも低くなる。再加熱(C)の加熱制御を開始したら、ステップS32に移行する。
【0052】
ステップS32に移行すると、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上であるかを判定する。温度t”のグラフで示されるように80℃以上であると判定した場合(ステップS32で「Yes」)は、被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止する。その一方で温度tのグラフで示されるように、80℃未満であると判定した場合(ステップS32で「No」)は、ステップS33に移行させる。
【0053】
ステップS33に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率Rが再加熱温度上昇率閾値Rの4秒間で2℃を超えた上昇率であるかを判定する。温度t”のグラフで示されるように、温度上昇率Rが4秒間で2℃を超えた上昇率であると判定した場合(ステップS33で「Yes」)は、被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止する。その一方、温度tのグラフで示されるように4秒間で2℃以下の上昇率であると判定した場合(ステップS33で「No」)はステップS34に移行させる。なお本実施形態では、再加熱温度上昇率閾値Rは再加熱(C)時の温度上昇率であるため、初期加熱温度上昇率閾値Rよりも単位時間が短いことが好ましく、温度上昇率Rが再加熱温度上昇率閾値Rを超えたら速やかにステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止することができるようにしているが、機体特性や初期加熱(A)の加熱制御時の出力などに応じて任意に設定してもよい。
【0054】
ステップS34に移行すると、移行手段53は、再加熱制御期間Tが経過したかを判定する。再加熱制御期間Tが経過したと判定した場合(ステップS34で「Yes」)、ステップS21の加熱休止(B)に再度移行させ、再加熱制御期間Tがまだ経過していないと判定した場合(ステップS34で「No」)は、ステップS22に移行させる。
そして図6に示された加熱休止(B)の加熱制御を再度行ない、向上させた精度で被調理物Sの温度を検知して、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇があれば被調理物Sへの加熱の終了、加熱不足であれば図7に示された再加熱(C)の加熱制御を再度行なうように、加熱休止(B)と再加熱(C)の加熱制御を繰り返すことにより、被調理物Sへの過加熱および加熱不足を防止している。
【0055】
(ケース2)
次に図9に示されたケース2の場合について説明する。まずケース1の場合と同様にステップS11に移行して、加熱調理制御部51が初期加熱(A)の加熱制御を開始し、ステップS12に移行する。
【0056】
ステップS12に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、60℃未満であると判定した場合(ステップS12で「No」)は、ステップS13に移行させる。
【0057】
ステップS13に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えた上昇率であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、10秒間で10℃以下の上昇率であると判定した場合(ステップS13で「No」)はステップS14に移行させる。
【0058】
ステップS14に移行すると、移行手段53は、初期加熱制御期間Tが経過したかを判定する。初期加熱制御期間Tが経過したと判定した場合(ステップS14で「Yes」)は、ステップS15に移行させ、初期加熱制御期間Tがまだ経過していないと判定した場合(ステップS14で「No」)は、ステップS12に移行させる。
【0059】
ステップS15に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の妥当性を判断するために、初期加熱制御期間T開始時の検知温度と初期加熱制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが初期加熱温度差閾値Dの5℃を超えているかを判定する。温度tのグラフで示されるように、温度差Dが5℃を超えていると判定した場合(ステップS15で「Yes」)、被調理物Sの温度が狙い通りに上昇していると判定して、ステップS21の加熱休止(B)に移行させる。その一方で、温度差Dが5℃以下と判定した場合(ステップS15で「No」)はステップS16に移行させる。
【0060】
ケース2では、初期加熱制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度tが60℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えたときがなく、温度差Dが5℃を超えているので、移行手段53はステップS15で、ステップS21の加熱休止(B)に移行させる。
【0061】
ステップS21に移行すると、加熱調理制御部51が加熱休止(B)の加熱制御を開始し、ステップS22に移行する。
【0062】
ステップS22に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、80℃未満であると判定した場合(ステップS22で「No」)は、ステップS23に移行させる。
【0063】
ステップS23に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率Rで加熱休止温度上昇率閾値Rの10秒間で5℃を超えた上昇率があったかを判定し、温度tIIIのグラフに示されるように、10秒間で5℃以下の上昇率があったと判定した場合(ステップS23で「Yes」)はステップS24に移行させ、その一方で、温度tのグラフで示されるように10秒間で5℃以下の上昇率がなかったと判定した場合(ステップS23で「No」)はステップS25に移行させる。
【0064】
ステップS24に移行すると、移行手段53は、加熱休止制御期間T開始時の食品温度センサ15からの検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上に達していたかを判定し、温度tIIIのグラフで示されるように、加熱休止制御期間T開始時の検知温度が60℃未満であると判定した場合(ステップS24で「No」)はステップS27に移行させる。
【0065】
ステップS27に移行すると、移行手段53は、加熱休止制御期間T経過時時の食品温度センサ15からの検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上に達していたかを判定する。そして温度tIIIのグラフで示されるように、加熱休止制御期間T経過時の検知温度が60℃以上に達していたと判定した場合(ステップS27で「Yes」)は、加熱休止制御期間T経過時の検知温度が60℃以上であり、向上させた精度で行った食品温度センサ15からの検知温度で加熱休止温度上昇率閾値Rの10秒間で5℃を超えた上昇率であるため、加熱休止制御期間T経過後にステップS21の加熱休止(B)に再度移行させる。その一方で、加熱休止制御期間T経過時の検知温度tが60℃未満であったと判定した場合(ステップS27で「No」)は、加熱不足であると判断してステップS11の初期加熱(A)に再度移行させる。
【0066】
その後ケース2において、温度tIIIのグラフで示されるように、2回目の加熱休止(B)の加熱制御において、加熱休止制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度が80℃に達していたため、被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止する。
【0067】
ステップS25に移行すると、移行手段53は、加熱休止制御期間Tが経過したかを判定し、加熱休止制御期間Tが経過したと判定した場合(ステップS25で「Yes」)は、ステップS26に移行させ、加熱休止制御期間Tがまだ経過していないと判定した場合(ステップS23で「No」)は、ステップS22に移行させる。
【0068】
ステップS26に移行すると、移行手段53は、加熱休止制御期間T開始時の食品温度センサ15からの検知温度と加熱休止制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが加熱休止温度差閾値Dの0℃を超えているかを判定する。ここで温度tのグラフで示されるように、加熱休止制御期間T開始時と加熱休止制御期間T経過時の検知温度の温度差Dが0℃以下と判定した場合(ステップS23で「No」)は、ステップS27に移行させる。
【0069】
ステップS27に移行すると、移行手段53は、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が所定回数Nの4回未満であるかを判定する。ここで温度tのグラフで示されるように、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が4回未満であると判定した場合(ステップS27で「Yes」)は、加熱休止制御期間T内に温度降下があり、加熱不足であると判断してステップS11の初期加熱(A)に再度移行させる。その一方で、繰り返した回数が4回以上であると判定した場合(ステップS27で「No」)はステップS29に移行させる。
【0070】
ケース2では、1回目の加熱休止(B)の加熱制御において、加熱休止制御期間T内で検知温度tが80℃未満であり、温度上昇率が10秒間で5℃を超えたときがなく、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が4回未満であり、加熱休止制御期間T開始時と加熱休止制御期間T経過時の検知温度の温度差Dが0℃以下であるので、移行手段53はステップS27で、ステップS11の初期加熱(A)に再度移行させる。
【0071】
その後、2回目の初期加熱(A)の加熱制御において、初期加熱制御期間T内に温度tが初期加熱温度閾値tの60℃以上に達しており、また温度tの温度上昇率Rが初期加熱温度上昇率閾値Rの10秒間で10℃を超えた上昇率であるため、移行手段53はステップS12またはステップS13で、ステップS21の加熱休止(B)に再度移行させる。なお複数回目の初期加熱(A)の加熱制御において、初期加熱制御期間Tを、例えば出力が1000Wの場合は30秒、出力が500Wの場合は60秒など、1回目の初期加熱制御期間Tと異なる期間にしてもよく、加熱するレンジ出力に応じて、調整して設定されてもよい。
【0072】
そして、2回目の加熱休止(B)の加熱制御において、加熱休止制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度tが80℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で5℃を超えたときがなく、加熱休止制御期間T開始時と加熱休止制御期間T経過時の検知温度の温度差Dが0℃を超えているので、移行手段53はステップS25で、ステップS31の再加熱(C)に移行させる。なお温度tIIIのグラフでは、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上に達したため、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止している。
【0073】
ステップS31に移行すると、加熱調理制御部51は再加熱(C)の加熱制御を開始し、ステップS32に移行する。
【0074】
ステップS32に移行すると、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上であるかを判定する。温度tのグラフで示されるように80℃以上であると判定した場合(ステップS32で「Yes」)は、被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止する。
【0075】
(ケース3)
次に図10に示されたケース3の場合について説明する。まずケース1やケース2の場合と同様にステップS11に移行して、加熱調理制御部51が初期加熱(A)の加熱制御を開始し、ステップS12に移行する。
【0076】
ステップS12に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、60℃未満であると判定した場合(ステップS12で「No」)は、ステップS13に移行させる。
【0077】
ステップS13に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率が10秒間で10℃を超えた上昇率であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、10秒間で10℃以下の上昇率であると判定した場合(ステップS13で「No」)はステップS14に移行させる。
【0078】
ステップS14に移行すると、移行手段53は、初期加熱制御期間Tが経過したかを判定する。初期加熱制御期間Tが経過したと判定した場合(ステップS14で「Yes」)は、ステップS15に移行させ、初期加熱制御期間Tがまだ経過していないと判定した場合(ステップS14で「No」)は、ステップS12に移行させる。
【0079】
ステップS15に移行すると、移行手段53は、初期加熱制御期間T開始時の食品温度センサ15からの検知温度と初期加熱制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが初期加熱温度差閾値DAの5℃を超えているかを判定する。温度tのグラフで示されるように温度差が5℃以下と判定した場合(ステップS15で「No」)はステップS16に移行させる。
【0080】
ステップS16に移行すると、移行手段53は、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数である初期加熱連続回数Nが第1の所定回数Nの4回未満であるかを判定する。ここで温度tのグラフで示されるように、初期加熱連続回数Nが4回未満であると判定した場合(ステップS16で「Yes」)は、加熱休止制御期間T内に温度降下があり、加熱不足であると判断してステップS11の初期加熱(A)に再度移行させる。その一方で、初期加熱連続回数Nが4回以上であると判定した場合(ステップS16で「No」)はステップS21の加熱休止(B)に移行させる。なお所定回数Nは4回に限定されるものではなく、電子レンジの加熱特性に応じて、初期加熱(A)の初期加熱制御期間Tと共に任意に設定されてもよい。
【0081】
初期加熱(A)の加熱制御で食品温度センサ15からの検知温度が上昇しない理由としては、被調理物S自体の実際の温度は上昇している一方で、例えば容器13にラップや蓋を使用しているために被調理物Sが露出していない可能性や、容器13の側面の高さが高すぎ、容器13の開口部が狭い、容器13に収容された被調理物Sの量が少なく、被調理物Sの表面の位置が容器13の高さに対して浅いなどの理由で、例えば図12に示されるように、被調理物Sに食品温度センサ15の視野V1が届いていない可能性が想定される。そのため移行手段53は、ステップS15で温度差が初期加熱温度差閾値Dの5℃以下の場合でも初期加熱(A)の加熱制御を所定回数Nの4回を限度に連続して繰り返して温度上昇の変曲点を監視し、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率Rにおいて初期加熱温度上昇率閾値Rの10秒間で10℃を超えた上昇率があり、温度上昇の変曲点を検知した場合はステップS21の加熱休止(B)に移行させる。したがって移行手段53は、容器13の形状を判定する容器形状判定手段、および容器13に使用するラップの有無を判定するラップ有無判定手段としての機能も有している。
【0082】
ケース3では、2回目の初期加熱(A)の加熱制御において、温度tIVのグラフに示されるように、初期加熱制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度が60℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えたときがなく、温度差Dが5℃を超えている場合、移行手段53はステップS15で、ステップS21の加熱休止(B)に移行させる。
【0083】
その後、加熱休止(B)の加熱制御において、温度tIVのグラフに示されるように、変曲点ItIVが検知され、加熱休止制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度が80℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で5℃を超えた上昇率があり、加熱休止制御期間T経過時時の検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上であるので、移行手段53はステップS27で、加熱休止制御期間T経過後にステップS21の加熱休止(B)に再度移行させる。そして2回目の加熱休止(B)の加熱制御において、加熱休止制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度が80℃に達したため、被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止している。
【0084】
また温度tのグラフに示されるように、2回目および3回目の初期加熱(A)の加熱制御においても、初期加熱制御期間T内で検知温度tが60℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えたときがなく、温度差Dが5℃以下である場合、移行手段53はステップS16で、ステップS11の初期加熱(A)に再度移行させる。そして4回目の初期加熱(A)の加熱制御において、温度tのグラフに示されるように、変曲点Iが検知され、ステップS13で移行手段53は、温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えた上昇率であると判定した場合(ステップS13で「Yes」)、ステップS21の加熱休止(B)に移行させる。ここで移行手段53は、温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えた時点ではなく、この時点から、例えば10秒後など所定時間経過後にステップS21の加熱休止(B)に移行させるように構成してもよい。また移行手段53は、温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えた時点ではなく、初期加熱制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度が60℃以上に達した時点でステップS21の加熱休止(B)に移行させるように構成してもよい。
【0085】
前述した被調理物Sに食品温度センサ15の視野V1が届いていない場合、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率Rの変化が少ないために、移行手段53が加熱不足と誤検知する虞があり、また加熱を続行して過加熱になる虞がある。例えば図12に示されるように、ラップや蓋や容器13が障害となり、食品温度センサ15の視野V1で被調理物Sの放射温度を直接検知できない場合、容器13内の被調理物Sの水分が加熱され、被調理物Sの水分が加熱されて当該被調理物Sの表面から放射熱や湯気や蒸気が発されて、これらの放射熱や湯気や蒸気が、間に介在する空気層を経由してラップや蓋や容器13に達することにより、これらのラップや蓋や容器13に熱が伝達され、被調理物Sの温度上昇に遅れて、これらのラップや蓋や容器13の温度が上昇する。また被調理物Sが接している容器13の箇所からラップや蓋や容器13に熱が伝達されて、被調理物Sの温度上昇に遅れて、これらのラップや蓋や容器13の温度が上昇する。そしてラップや蓋や容器13の温度が上昇すると、移行手段53が温度上昇の変曲点ItIVやIを検知する。移行手段53がこれらの変曲点ItIVやIを検知した時点において、被調理物Sはすでに十分に加熱された状態であるので、移行手段53は、ステップS13で温度上昇の変曲点ItIVやIを検知した時点で、加熱休止(B)に移行させるように構成される。このように、初期加熱(A)や加熱休止(B)の加熱制御中に、移行手段53が温度上昇の変曲点ItIVやIを検知するように監視することで、前述した被調理物S自体の実際の温度は上昇している一方で、食品温度センサ15が被調理物Sの温度を検知していない場合に過加熱を防止することができる。
【0086】
ケース3では加熱休止(B)の加熱制御において、温度tのグラフに示されるように、加熱休止制御期間T内で食品温度センサ15からの検知温度が80℃に達したため、被調理物Sが十分に加熱されたと判定し、ステップS41の加熱終了(D)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止している。
【0087】
(ケース4)
次に図11に示されたケース4の場合について説明する。まずケース1~ケース3の場合と同様にステップS11に移行して、加熱調理制御部51が初期加熱(A)の加熱制御を開始し、ステップS12に移行する。
【0088】
ステップS12に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、60℃未満であると判定した場合(ステップS12で「No」)は、ステップS13に移行させる。
【0089】
ステップS13に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率が10秒間で10℃を超えた上昇率であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、10秒間で10℃以下の上昇率であると判定した場合(ステップS13で「No」)はステップS14に移行させる。
【0090】
ステップS14に移行すると、移行手段53は、初期加熱制御期間Tが経過したかを判定する。初期加熱制御期間Tが経過したと判定した場合(ステップS14で「Yes」)は、ステップS15に移行させ、初期加熱制御期間Tがまだ経過していないと判定した場合(ステップS14で「No」)は、ステップS12に移行させる。
【0091】
ステップS15に移行すると、移行手段53は、初期加熱制御期間T開始時の食品温度センサ15からの検知温度と初期加熱制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが初期加熱温度差閾値DAの5℃を超えているかを判定する。温度tのグラフで示されるように温度差が5℃以下と判定した場合(ステップS15で「No」)は、被調理物Sが加熱不足であると判断して、ステップS11の初期加熱(A)に再度移行させる。
【0092】
ステップS15に移行すると、移行手段53は、初期加熱制御期間T開始時の食品温度センサ15からの検知温度と初期加熱制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが初期加熱温度差閾値DAの5℃を超えているかを判定する。温度tのグラフで示されるように温度差が5℃以下と判定した場合(ステップS15で「No」)はステップS16に移行させる。
【0093】
ステップS16に移行すると、移行手段53は、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が所定回数Nの4回未満であるかを判定する。初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が4回未満であると判定した場合(ステップS16で「Yes」)はステップS11の初期加熱(A)に再度移行させ、繰り返した回数が4回以上であると判定した場合(ステップS16で「No」)はステップS21の加熱休止(B)に移行させる。
【0094】
初期加熱(A)において長時間加熱しても食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇が認められない場合は、何らかの理由で、被調理物S自体の実際の温度は上昇している一方で、例えば容器置台24において容器の指定位置に容器13が載置されておらず、食品温度センサ15で温度の検知ができる視野V1の範囲に被調理物Sや容器13や蓋がない場合や、視野V1の範囲にある被調理物Sの部分や容器13の部分や蓋の部分の温度が上昇していない一方で、それ以外の被調理物Sの部分や容器13の部分や蓋の部分の温度が上昇している場合など、食品温度センサ15がこの被調理物Sの実際の温度を検知していない可能性が想定される。そのため移行手段53は、初期加熱連続回数Nが第1の所定回数Nの4回以上になったら、ステップS21の加熱休止(B)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止し、また加熱休止(B)の加熱制御における、向上させた精度で温度の検知することにより被調理物Sの状態を判定することにより、食品温度センサ15からの検知温度の変化を確認する構成としている。
【0095】
ケース4では、温度tのグラフに示されるように、1回目~4回目の初期加熱(A)の加熱制御において、初期加熱制御期間T内で検知温度tが60℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で10℃を超えたときがなく、温度差Dが5℃以下であるため、移行手段53は、ステップS16で、ステップS21の加熱休止(B)に移行させる。
【0096】
ステップS21に移行すると、加熱調理制御部51が加熱休止(B)の加熱制御を開始し、ステップS22に移行する。
【0097】
ステップS22に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上であるかを判定し、温度tのグラフで示されるように、80℃未満であると判定した場合(ステップS22で「No」)は、ステップS23に移行させる。
【0098】
ステップS23に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の温度上昇率Rで加熱休止温度上昇率閾値Rの10秒間で5℃を超えた上昇率があったかを判定し、温度tのグラフで示されるように10秒間で5℃以下の上昇率がなかったと判定した場合(ステップS23で「No」)はステップS25に移行させる。
【0099】
ステップS25に移行すると、移行手段53は、加熱休止制御期間Tが経過したかを判定し、加熱休止制御期間Tが経過したと判定した場合(ステップS25で「Yes」)は、ステップS26に移行させ、加熱休止制御期間Tがまだ経過していないと判定した場合(ステップS23で「No」)は、ステップS22に移行させる。
【0100】
ステップS26に移行すると、移行手段53は、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数である初期加熱連続回数Nが所定回数Nの4回未満であるかを判定する。ここで温度tのグラフで示されるように、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が4回以上であると判定した場合(ステップS26で「No」)はステップS29-1に移行させる。
【0101】
ステップS29-1に移行すると、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度の妥当性を判断するために、加熱休止制御期間T開始時の検知温度と加熱休止制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが第3の温度差閾値DB4の3℃を超えているかを判定する。ここで温度差Dが3℃を超えていると判定した場合(ステップS27で「Yes」)、向上させた精度で検知した被調理物Sの温度が狙い通りに上昇していると判定して、ステップS31の再加熱(C)に移行させる。その一方で、温度tのグラフで示されるように、加熱休止制御期間T開始時と加熱休止制御期間T経過時の検知温度の温度差Dが3℃以下と判定した場合(ステップS23で「No」)はステップS29-2に移行させる。
【0102】
ステップS29-2に移行すると、移行手段53は、加熱休止(B)の加熱制御を連続で繰り返した回数である加熱休止連続回数Nが所定回数Nの2回未満であるかを判定する。ここで加熱休止連続回数Nが2回未満であると判定した場合(ステップS26で「Yes」)は、ステップS21の加熱休止(B)に再度移行させる。その一方で、加熱休止連続回数Nが2回以上であると判定した場合(ステップS26で「No」)、移行手段53は、食品温度センサ15が被調理物Sの実際の温度を検知していない一方で、食品温度センサ15の視野V1の範囲以外の被調理物Sの部分の温度が上昇しており、理論的に被調理物Sが十分に加熱されていると判断して、ステップS41の加熱終了(D)に移行させる。
【0103】
ケース4では加熱休止(B)の加熱制御において、温度tのグラフに示されるように、加熱休止制御期間T内で検知温度tが80℃未満であり、温度上昇率Rが10秒間で5℃を超えたときがなく、初期加熱(A)の加熱制御を連続で繰り返した回数が4回以上であり、加熱休止制御期間T開始時と加熱休止制御期間T経過時の検知温度の温度差Dが3℃以下で、加熱休止(B)の加熱制御を連続で繰り返した回数が2回以上であるので、移行手段53はステップS29-2で、ステップS41の加熱終了(D)に移行させる。
【0104】
本実施形態は、加熱休止(B)の加熱制御中の食品温度センサ15からの検知温度の温度変化を捉え、またレンジ加熱で加熱休止(B)の加熱制御を組み合わせることで、赤外線センサである食品温度センサ15の被調理物Sに対する検知の精度を向上させ、また食品温度センサ15の視野V1で検知する放射温度が被調理物Sの温度か否かを判定し、その判定結果により、被調理物Sの加熱不足や過加熱を防止するものであり、容器13の形状やラップの有無の制約を無くすことができる。しかしながら前述のように、食品温度センサ15による温度検知だけでは誤検知の虞がある。そこで本実施形態では、特にケース3およびケース4の場合に、図11に記載されるように蒸気検知センサ14も併用して温度検知を行なっており、蒸気検知センサ14からの検知温度tの経時変化を示した温度tのグラフで示されるように、移行手段53は、蒸気検知センサ14で所定の温度上昇率Rを超えた上昇率を検知したときにステップS21の加熱休止(B)の加熱制御に移行する構成としている。
【0105】
また本実施形態では、容器13上部の開口部より低い位置である、容器13の底部から側面に移行する立ち上がり部13aの表面温度を容器側面下部温度センサ30が検知する構成としており、湯気や蒸気は空気より軽いので容器13上部の開口部から上方へ向かうため、調理室12の庫内に発生するこれらの湯気や蒸気の影響を受けずに、容器13の外面温度を検出することができる。そこで本実施形態では、特にケース3およびケース4の場合に、この容器側面下部温度センサ30からの検知温度を用いて、容器13の外面温度の温度上昇率が所定の上昇率を超えたことを検知したときや、容器13の外面温度が、例えば80℃以上になったことを検知したときにステップS21の加熱休止(B)の加熱制御に移行する構成にしてもよい。この場合、特に容器13にラップを使用せずに加熱した場合、調理室12の庫内に湯気や蒸気が発生して食品温度センサ15が前述の影響を受けたときに被調理物Sが過加熱になることを防止することができる。
【0106】
ケース1~ケース4では、例えば「お任せ あたため」を選択して加熱調理を開始し、容器形状判定手段およびラップ有無判定手段としての機能を有する移行手段53で容器13の形状やラップの有無を判定した場合について説明しているが、例えば「平皿 トレー」の表示要素55-13に重なるタッチセンサの部位を選択操作して調理開始した場合、移行手段53は、被調理物Sの温度が食品温度センサ15で検知されていることを前提にした、例えばケース1やケース2を想定して移行させ、「茶碗 お椀」の表示要素55-12に重なるタッチセンサの部位を選択操作して調理開始した場合、移行手段53は、被調理物Sの温度が食品温度センサ15で検知されていることを前提にした、例えばケース1やケース2、また検知されておらず容器13やその蓋の温度が食品温度センサ15で検知されていることを前提にした、例えばケース3やケース4の両方を想定して移行させ、「カップ コップ」の表示要素55-11に重なるタッチセンサの部位を選択操作して調理開始した場合、移行手段53は、被調理物Sの温度が食品温度センサ15で検知されていないことを前提にした、例えばケース3やケース4を想定して移行させる構成としている。また例えば、「ラップ 有り」の表示要素55-15に重なるタッチセンサの部位を選択操作した場合、移行手段53は、被調理物Sの温度が食品温度センサ15で検知されておらず容器13に使用されたラップの温度が食品温度センサ15で検知されていることを前提にした、例えばケース3やケース4を想定して移行させる構成としている。したがって、容器形状判定手段を用いて容器13の形状を選択し、表示要素55-11~55-14および操作手段7を使用してラップの有無を選択することにより、本体1で加熱可能な容器形状の制約がなくなり、ユーザは、所望する形状の容器13を使用して本体1で加熱することができる。
【0107】
以上のように、本実施形態の加熱調理器としての電子レンジは、被調理物Sを収容した容器13を内部に収容する調理室12と、被調理物Sを加熱する加熱手段としてのマグネトロン19および回転アンテナ28を駆動させるマグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38と、マグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38を制御する制御手段としての加熱調理制御部51と、被調理物Sまたは容器13の温度を検出する温度分布検出手段としての食品温度センサ15と、を備え、加熱調理制御部51は、被調理物Sに加熱を行なう初期加熱(A)、被調理物Sへの加熱を停止または大幅に熱量を低下させた状態で加熱を行なう加熱休止(B)、初期加熱(A)よりも低い熱量で被調理物Sへの加熱を行なう再加熱(C)、および被調理物Sへの加熱の終了としての加熱終了(D)のいずれかの加熱制御を行なうようにマグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38を制御し、食品温度センサ15からの検出信号に基づいて、次に移行する加熱制御を定める移行手段53をさらに備えて構成している。
【0108】
このように構成することで、本体1で加熱可能な容器形状の制約がなくなり、ユーザは、所望する形状の容器13を使用して本体1で加熱することができる。また初期加熱(A)、加熱休止(B)および再加熱(C)を組み合わせて加熱制御することにより、加熱休止(B)の加熱制御時にマイクロ波による、食品温度センサ15からの検知温度のゆらぎを防止して、検知温度の精度を向上させることができ、この向上させた精度で温度の検知することにより被調理物Sの状態を判定することができ、また被調理物Sの加熱不足や過加熱を防止することができる。
【0109】
また本実施形態の電子レンジは、被調理物Sへの加熱の時間や前記加熱を一旦停止する時間を計時する計時手段33と、所定時間開始時および経過時の前記被調理物の温度を記憶する記憶手段32と、をさらに備え、移行手段53は、初期加熱(A)の加熱制御時において、被調理物Sの温度が第1の温度閾値としての初期加熱温度閾値t以上になったとき、または被調理物Sの温度上昇率が第1の温度上昇率閾値としての初期加熱温度上昇率閾値Rを超えたときは、その時点で前記加熱休止に移行するように定め、初期加熱(A)の加熱制御を行なう期間である第1の所定期間としての初期加熱制御期間T内に被調理物の温度が初期加熱温度閾値tより低く、被調理物Sの温度上昇率Rが初期加熱温度上昇率閾値R以下であり、かつ、初期加熱制御期間T開始時および経過時の被調理物Sの温度の差Dが第1の温度差閾値としての初期加熱温度差閾値Dを超えているときは、初期加熱制御期間T経過後に加熱休止(B)に移行するように定め、初期加熱制御期間T内に被調理物Sの温度が初期加熱温度閾値tより低く、被調理物の温度上昇率Rが初期加熱温度上昇率閾値R以下であり、かつ、初期加熱制御期間T開始時および経過時の被調理物Sの温度の差Dが初期加熱温度差閾値D以下のときは、初期加熱(A)に再度移行するように定める構成としている。
【0110】
このように構成することで、被調理物Sの加熱不足や過加熱を防止することができる。また初期加熱(A)の加熱制御時に、移行手段53が、容器13の形状や容器13に使用するラップの有無を判定することができ、ケース1~ケース4を想定して確実に移行させることができる。
【0111】
また本実施形態の電子レンジでは、移行手段53は、加熱休止(B)の加熱制御時において、被調理物Sの温度が、初期加熱温度閾値tより上の数値である加熱完了温度閾値t以上になったときは、その時点で被調理物への加熱終了(D)に移行するように定め、加熱休止(B)の加熱制御を行なう期間である第2の所定期間としての加熱休止制御期間T開始時の被調理物Sの温度が初期加熱温度閾値t以上であり、加熱休止制御期間T内の被調理物Sの温度が加熱完了温度閾値tより下であり、かつ、加熱休止制御期間T内の被調理物Sの温度上昇率Rが、初期加熱温度上昇率閾値Rよりも低い値の加熱休止温度上昇率閾値Rを超えたときは、その時点で前記被調理物への加熱の終了に移行するように定め、加熱休止制御期間T開始時の被調理物Sの温度が初期加熱温度閾値tより下であり、加熱休止制御期間T経過時の前記被調理物の温度が加熱完了温度閾値tより下で初期加熱温度閾値t以上であり、かつ加熱休止制御期間T内で被調理物Sの温度上昇率Rが加熱休止温度上昇率閾値Rを超えたときがあったときは加熱休止制御期間T経過後に加熱休止(B)に再度移行するように定め、加熱休止制御期間T開始時の被調理物Sの温度が初期加熱温度閾値tより下であり、加熱休止制御期間T経過時の被調理物Sの温度が初期加熱温度閾値tより下であり、かつ加熱休止制御期間T内で被調理物Sの温度上昇率Rが加熱休止温度上昇率閾値Rを超えたときがあったときは、加熱休止制御期間T経過後に初期加熱(A)に再度移行するように定め、加熱休止制御期間T経過時の被調理物Sの温度が加熱完了温度閾値tより下であり、加熱休止制御期間T内で被調理物Sの温度上昇率Rが加熱休止温度上昇率閾値Rを超えたときがなく、かつ、加熱休止制御期間T開始時および経過時の被調理物Sの温度の差Dが第2の温度差閾値としての加熱休止温度差閾値D以上であるときは、加熱休止制御期間T経過後に再加熱(C)に移行するように定め、加熱休止制御期間T経過時の被調理物Sの温度が加熱完了温度閾値tより下であり、加熱休止制御期間T内で被調理物Sの温度上昇率Rが加熱休止温度上昇率閾値Rを超えたときがなく、かつ加熱休止制御期間T開始時および経過時の被調理物Sの温度の差Dが加熱休止温度差閾値Dより下であるときは、加熱休止制御期間T経過後に初期加熱(A)に移行するように定める構成としている。
【0112】
このように構成することで、被調理物Sの加熱不足や過加熱を防止することができる。また加熱休止(B)の加熱制御時に、移行手段53が、ケース1~ケース4を想定して確実に移行させることができる。
【0113】
また本実施形態の電子レンジでは、移行手段53は、再加熱(C)の加熱制御時において、被調理物Sの温度が加熱完了温度閾値t以上になったとき、または被調理物Sの温度上昇率Rが第3の温度上昇率閾値としての再加熱温度上昇率閾値Rを超えたときは、その時点で被調理物への加熱の終了(D)に移行するように定め、再加熱時(C)の加熱制御を行なう期間である第3の所定期間としての再加熱制御期間T内に被調理物Sの温度が加熱完了温度閾値tを超えず、かつ、被調理物Sの温度上昇率が再加熱温度上昇率閾値R以下のときは再加熱温度上昇率閾値R経過後に加熱休止(B)に移行するように定める構成としている。
【0114】
このように構成することで、被調理物Sの加熱不足や過加熱を防止することができる。また再加熱(C)の加熱制御時に、移行手段53が、ケース1~ケース3を想定して確実に移行させることができる。
【0115】
また本実施形態の電子レンジでは、移行手段53は、ステップS16で初期加熱(A)に再度移行させた時において、初期加熱(A)へ連続して移行した回数としての初期加熱連続回数Nが第1の所定回数N以上であり、初期加熱制御期間T内に被調理物Sの温度が初期加熱温度閾値tより低く、被調理物Sの温度上昇率Rが初期加熱温度上昇率閾値R以下であり、かつ、初期加熱制御期間T開始時および経過時の被調理物Sの温度の差Dが初期加熱温度差閾値D以下のときは、初期加熱制御期間T経過後に加熱休止(B)に移行するように定める構成としている。
【0116】
このように構成することで、ケース3のように、被調理物Sに食品温度センサ15の視野V1が届いていない場合であっても温度上昇の変曲点を監視し、温度上昇の変曲点Iを検知した場合は加熱休止(B)に移行させることができる。また被調理物S自体の実際の温度は上昇している一方で、食品温度センサ15がこの被調理物Sの実際の温度を検知していない場合を想定し、加熱休止(B)に移行させて被調理物Sの過加熱を防止し、また加熱休止(B)の加熱制御における、向上させた精度で温度の検知することにより被調理物Sの状態を判定することにより、食品温度センサ15からの検知温度の変化を確認することができる。
【0117】
また本実施形態の電子レンジでは、移行手段53は、加熱休止(B)の加熱制御時において、加熱休止制御期間T内に被調理物Sの温度が加熱完了温度閾値tより低く、被調理物Sの温度上昇率Rが加熱休止温度上昇率閾値R以下であり、かつ、加熱休止制御期間T開始時の食品温度センサ15からの検知温度と加熱休止制御期間T経過時の検知温度との温度差Dが第3の温度差閾値DB4より下であるときは、加熱休止制御期間T経過後に加熱休止(B)に再度移行するように定め、加熱休止(B)へ連続して移行した回数である加熱休止連続回数Nが第2の所定回数N以上であり、加熱休止制御期間T内に被調理物Sの温度が加熱完了温度閾値tより低く、被調理物Sの温度上昇率Rが加熱休止温度上昇率閾値R以下であり、かつ、加熱休止制御期間T開始時および経過時の被調理物の温度の差Dが第3の温度差閾値DB4より下であるときは、加熱休止制御期間T経過後に被調理物Sへの加熱の終了(D)に移行するように定める構成としている。
【0118】
このように構成することで、ケース4のように、被調理物Sに食品温度センサ15の視野V1が届いておらず、食品温度センサ15が被調理物Sの実際の温度を検知していない場合であっても、移行手段53は、食品温度センサ15の視野V1の範囲以外の被調理物Sの部分の温度が上昇しており、理論的に被調理物Sが十分に加熱されていると判断して、加熱休止制御期間T経過後に被調理物Sへの加熱の終了(D)に移行することができ、被調理物Sの過加熱を防止することができる。
【0119】
また本実施形態の電子レンジでは、容器13の形状を選択する容器形状選択手段としての表示要素55-11~55-14および操作手段7をさらに備え、移行手段53は、食品温度センサ15からの検出信号としての検知温度と、表示要素55-11~55-14および操作手段7で選択された容器13の形状とに基づいてケース1~ケース4を想定し、次に移行する加熱制御を定める構成としている。
【0120】
このように構成することで、電子レンジの本体1で加熱可能な容器形状の制約がなくなり、ユーザは、所望する形状の容器13を使用して本体1で加熱することができる。
【0121】
また本実施形態の電子レンジでは、移行手段53が、容器13の形状を判定する容器形状判定手段としての機能をさらに備え、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度と、容器形状判定手段で判定された容器13の形状とに基づいてケース1~ケース4を想定し、次に移行する加熱制御を定める構成としている。そのため、容器形状判定手段を用いて容器13の形状を選択することにより、本体1で加熱可能な容器形状の制約がなくなり、ユーザは、所望する形状の容器13を使用して本体1で加熱することができる。
【0122】
また本実施形態の電子レンジでは、容器13に使用されるラップの有無を選択するラップ有無選択手段としての表示要素55-11~55-14および操作手段7をさらに備え、移行手段53は、食品温度センサ15からの検知温度と、表示要素55-11~55-14および操作手段7で選択された容器13の形状と、表示要素55-11~55-14および操作手段7で選択されたラップの有無とに基づいてケース1~ケース4を想定し、次に移行する加熱制御を定める構成としている。
【0123】
このように構成することで、電子レンジの本体1で加熱可能な容器形状の制約がなくなり、ユーザは、所望する形状の容器13を使用して本体1で加熱することができる。
【0124】
また本実施形態の電子レンジでは、容器13の底面または側面下部としての立ち上がり部13aの表面温度を検出する容器温度検出手段としての容器側面下部温度センサ30をさらに備え、移行手段53は、食品温度センサ15および容器側面下部温度センサ30からの検出信号に基づいて、次に移行する加熱制御を定める構成であってもよい。
【0125】
このように構成することで、容器13にラップを使用せずに加熱した場合、調理室12の庫内に湯気や蒸気が発生して食品温度センサ15がこの湯気や蒸気の影響を受けたときに、被調理物Sが過加熱になることを防止することができる。
【0126】
図13は第1の実施形態の変形例を示している。本変形例では、食品温度センサ15による温度検知が正確に行なわれなかった場合に、表示制御部52が「不適」の表示要素55-11を表示するように表示手段6を制御しており、ユーザに分かりやすい表示にしている。
【0127】
第1の実施形態では、蒸気検知センサ14や、食品温度センサ15や、容器側面下部温度センサ30による温度検知が正確に行なわれなかった場合は、例えば表示制御部52が、「E-11」などのエラーの番号を表示するように表示手段6を制御している。しかしながら、ユーザはエラーの番号が表示された理由が分からないため、本体1が故障したものと誤解する虞がある。そこで本変形例では、表示制御部52が「不適」の表示要素55-11を表示するように表示手段6を制御しており、ユーザに分かりやすい表示にしている。
【0128】
図13は本変形例の電子レンジの表示手段6の正面図である。この図13を参照して表示手段6に表示された表示要素55の説明をすると、表示手段6は、右側部分に上から下に並んで配置される「不適」の表示要素55-11および加熱完了時間表示要素55-13と、これらの表示要素55-11,55-13や、表示要素55-4~55-9の下側に配置される不適表示の説明の表示要素55-12が、第1の実施形態の表示要素に追加して配置される。その他の個所は第1の実施形態と共通であるので、説明を省略する。
【0129】
「不適」の表示要素55-11や不適表示の説明の表示要素55-12は、例えば食品温度センサ15による温度検知が正確に行なわれなかった場合に表示されるもので、例えば第1の実施形態のステップS15で移行手段53が温度差Dを5℃以下と判定した場合に、表示制御部52が「不適」の表示要素55-11および不適表示の説明の表示要素55-12を表示するように表示手段6を制御し、変曲点Iが検知された場合やステップS21の加熱休止(B)に移行した場合に、表示制御部52が「不適」の表示要素55-11および不適表示の説明の表示要素55-12の表示を消すように表示手段6を制御する。そのためユーザは、現段階で食品温度センサ15による温度検知が正確に行なわれなかったことや、この食品温度センサ15による温度検知が行なわれたことが一目で理解できる。
【0130】
加熱完了時間表示要素55-13は、加熱完了までの残時間が表示されるもので、例えば第1の実施形態のステップS41の加熱終了(D)に移行したら、表示制御部52が加熱完了時間表示要素55-13に、例えば「30秒」など所定の残時間を表示するように表示手段6を制御し、その後、計時手段33により、1秒ずつ数字を減らして表示するカウントダウン表示をするように表示手段6を制御して、カウントダウン表示が0秒になってタイムアップし、加熱完了になったら、例えば図示しないブザーなどの報知手段により、ユーザに加熱完了を報知する。なお加熱終了(D)に移行してから加熱完了までの間は、すでに被調理物Sが加熱されているので、加熱調理制御部51は、マグネトロン駆動装置37や回転アンテナ駆動装置38に制御信号を送出して、マグネトロン19からのマイクロ波の放射を停止させる加熱OFFの制御を行なう。
【0131】
なお表示制御部52は、移行手段53が変曲点ItIVやIを検知したら、例えば「45秒」など所定の残時間を表示するように表示手段6を制御してもよく、また初期加熱(A)の加熱制御時に、ステップS12で食品温度センサ15による検知温度が初期加熱温度閾値tの60℃以上であることを検知したときや、ステップS13で検知温度の温度上昇率Rが初期加熱温度上昇率閾値Rの10秒間で10℃を超えた上昇率であることを検知したときに、例えば「60秒」など所定の残時間を表示するように表示手段6を制御してもよい。
【実施例2】
【0132】
図14および図15は、本発明の第2の実施形態の加熱調理器を電子レンジに適用した構成を示している。本実施形態の電子レンジでは、第1の実施形態よりもシンプルな制御で、被調理物Sの性状に応じてラップ61を使用していない誤使用のリスクを低減し、またラップを誤使用した場合でも過加熱を防止している。
【0133】
被加熱物の加熱をマイクロ波によるレンジ加熱で行ない、食品温度センサ15などの赤外線温度検知センサのように、被加熱物の温度変化を非接触で検知する構成の電子レンジの場合、例えばご飯について、冷飯はラップしないで加熱する一方で冷凍飯はラップして加熱する、煮物について、肉じゃがはラップしないで加熱する一方で煮魚は身がはじけ散るためにラップして加熱する、など被調理物Sの性状に応じて、ラップや蓋の使用要否の制限がある。しかしながら、ラップを使用しない方がよい場合でも、例えば被調理物Sの油煙やにおいが調理室12の庫内につくことを嫌い、また例えば煮魚等の過加熱などで内部の水分の温度上昇に伴う内圧上昇による飛び散りの対策のため、ラップを使用するユーザも存在する。このラップを使用しない方がよい場合でもラップを使用する誤使用の場合、食品温度センサ15が正確に被調理物Sの温度を検知できず、加熱不足になる虞があり、また逆に過加熱になる虞がある。特に過加熱の場合、ラップされた容器13内に被調理物Sから発生した蒸気が過熱水蒸気化し、内圧が上昇して破裂する虞や、この蒸気の熱が容器13に伝導するために容器13が100℃以上の高温になり、容器13が熱くなりすぎる虞がある。そこで本実施形態では、被調理物Sを収容した容器13の開口部をラップで覆う場合と、覆わない場合とを選択可能にしており、被調理物Sの性状に応じてラップ61を使用していない誤使用のリスクを低減し、またラップを誤使用した場合でも過加熱を防止している。
【0134】
図14は、第2の実施形態の電子レンジの前面から見た縦断面概略図を示している。同図において、容器13上部の開口部にラップ61が使用されている点が第1の実施形態の電子レンジと相違している。その他の点は共通するので、説明を省略する。
【0135】
次に図15を参照しつつ、本実施形態において上記構成の電子レンジについて、その作用を詳しく説明する。図15は、実際にレンジ加熱したときの、ラップ61を使用したときの温度tと使用していないときの温度tの経時変化を示している。
【0136】
まずラップを使用していないときの作用について説明すると、容器13内に被調理物Sを入れる。それと前後して、電源コード8の電源プラグをコンセントに差し込んで本体1を通電させ、ハンドル4を手で握りながら扉3を開けて、容器13を容器置台24の容器載置部24aに載置する。その後、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により、例えば「ラップ 無し」の表示要素55-16に重なるタッチセンサの部位を操作して調理メニューを選択操作する。その後、「スタート」の表示要素55-1に重なるタッチセンサの部位を操作して被調理物Sの加熱調理開始を指示すると、制御手段31のメモリに組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が、制御手段31の出力ポートから所定のタイミングで出力され、例えばレンジ加熱で被調理物Sが加熱調理される。ここで、レンジ加熱の出力は、500W~1000Wの間で任意に設定されてもよい。
【0137】
加熱調理が開始されると、加熱調理制御部51は、「ラップ 無し」が選択されているので、食品温度センサ15の視野V1により被調理物Sの表面から放射される赤外線を検知しており、また被調理物S表面の温度変化を検知していると判断して、この温度変化が加熱開始してからの時間であるT秒で何度上昇するかの温度上昇率Rを算出し、このk℃/T秒の温度上昇率Rに応じて、あたため開始としての加熱開始S0からあたため終了としての加熱終了(D)までの加熱時間を可変する。例えば加熱開始してから20秒間で5℃~10℃以下の温度上昇であれば、加熱調理全体の加熱時間が120秒、加熱開始してから20秒間で10℃~20℃以下の温度上昇であれば、加熱調理全体の加熱時間が90秒、加熱開始してから20秒間で20℃以上の温度上昇であれば、加熱調理全体の加熱時間が60秒に設定される。なお、これらの温度上昇や加熱時間は一例であり、本発明はこれらに限定されることはない。
【0138】
また温度tのグラフに示されるように、加熱調理中に、食品温度センサ15からの検知温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上に達したことを検知したとき、または蒸気検知センサ14が蒸気を検知してこの蒸気が80℃以上であることを検知したとき、加熱調理制御部51の移行手段53は、その時点で加熱休止(B)の加熱制御に移行させ、食品温度センサ15で検知する被調理物S表面の温度で温度低下があったときは、再加熱(C)に移行させて、加熱調理制御部51は、温度上昇率に応じて設定された加熱時間が終了するまでの間、マグネトロン駆動装置37や回転アンテナ駆動装置38に制御信号を送出して、マグネトロン19からのマイクロ波の放射を再開させる制御を行なう。
【0139】
ここで、最初に算出した温度上昇率が加熱開始してから20秒間で5℃以下の温度上昇である場合、加熱調理制御部51は、例えば20秒後に温度上昇率の算出を行ない、この20秒間の温度上昇率がまた5℃以下の温度上昇である場合、加熱調理制御部51は、例えばさらに20秒後に温度上昇率の算出を行なう。その一方で、温度上昇率の算出は所定回数の3回までとし、3回目の温度上昇率がまた20秒間で5℃以下の温度上昇である場合、加熱調理全体の加熱時間が180秒に設定される。なお、これらの温度上昇や加熱時間は一例であり、本発明はこれらに限定されることはない。
【0140】
また加熱時間が設定されたら、変形例の加熱完了時間表示要素55-13のように、表示制御部52が、加熱終了までの残時間を表示するように表示手段6を制御する構成にしてもよい。
【0141】
移行手段53は、設定された加熱時間が終了したら加熱終了(D)に移行させ、被調理物Sの加熱調理が完了する。
【0142】
次にラップ61を使用するときの作用について説明すると、容器13内に被調理物Sを入れて、ラップ61で容器13の開口部を覆う。このラップ61は食品包装用のラップフィルムである。それと前後して、電源コード8の電源プラグをコンセントに差し込んで本体1を通電させ、ハンドル4を手で握りながら扉3を開けて、容器13を容器置台24の容器載置部24aに載置する。その後、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により、例えば「ラップ 有り」の表示要素55-15に重なるタッチセンサの部位を操作して調理メニューを選択操作する。その後、「スタート」の表示要素55-1に重なるタッチセンサの部位を操作して被調理物Sの加熱調理開始を指示すると、制御手段31のメモリに組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が、制御手段31の出力ポートから所定のタイミングで出力され、例えばレンジ加熱で被調理物Sが加熱調理される。
【0143】
加熱調理が開始されると、容器13内の被調理物Sの水分が加熱され、この被調理物Sの表面から容器13内の空気経由でラップ61に熱が伝達され、またラップ61に湯気や蒸気が付着することや、被調理物Sと接触することによりラップ61に熱が伝達される。また容器13の被調理物Sの接触していない箇所は、容器13の被調理物Sの接触している箇所からの熱伝導や、湯気や蒸気が付着することにより熱が伝達される。そのため温度tのグラフに示されるように、湯気や蒸気が発生するまでの食品温度センサ15からの検知温度の変化は緩慢であり温度上昇率も低い。その一方で湯気や蒸気が発生すると、この検知温度が急上昇し、食品温度センサ15の視野V1により検知しているラップ61の温度が急激に上昇するため、温度上昇率も急に高くなる。
【0144】
この温度上昇率が急に高くなる変曲点ItWが食品温度センサ15に検知されたときには、被調理物Sがすでに十分に加熱された状態であるので、移行手段53は、食品温度センサ15が変曲点ItWを検知すると、その時点で加熱休止(B)の加熱制御に移行させる。なお移行手段53は、食品温度センサ15が変曲点ItWを検知してから、例えば30秒など所定時間後に加熱休止(B)の加熱制御に移行させてもよく、また食品温度センサ15が加熱完了温度閾値tの80℃以上に達してから加熱休止(B)の加熱制御に移行させてもよい。
【0145】
移行手段53は、食品温度センサ15が加熱完了温度閾値tの80℃以上に達したことを検出したら加熱終了(D)に移行させ、被調理物Sの加熱調理が完了する。
【0146】
このように構成することにより、表示要素55-11~55-14および操作手段7が、被調理物Sを収容した容器13の開口部をラップ61で覆う場合と、覆わない場合とを選択可能なラップ有無選択手段として作用し、このラップ有無選択手段で選択されたラップ61の有無に応じて、加熱調理制御部51が被調理物Sに対する加熱制御を可変させる。そのため、被調理物Sの性状に応じてラップ61を使用していない誤使用のリスクを低減することができる。またラップ61を使用するときは、湯気や蒸気の発生時の食品温度センサ15からの検知温度が急上昇するため、食品温度センサ15の視野V1により検知しているラップ61の温度の温度上昇率が急に高くなる変曲点ItWを検知することにより、加熱休止(B)の加熱制御に移行させて被調理物Sの過加熱を防止することができる。
【0147】
なお表示制御部52は、食品温度センサ15が変曲点ItWを検知したら、加熱完了時間表示要素55-13に、例えば30秒など加熱終了までの残時間を表示するように表示手段6を制御する構成にしてもよい。
【0148】
そして第1の実施形態と同様に、容器13上部の開口部より低い位置である、容器13の底部から側面に移行する立ち上がり部13aの表面温度を容器側面下部温度センサ30が検知する構成にし、湯気や蒸気の影響を受けずに容器13の外面温度を検出可能にする構成にし、移行手段53は、この容器側面下部温度センサ30の検出温度が加熱完了温度閾値tの80℃以上に達したら、加熱休止(B)の加熱制御に移行させるように構成してもよい。
【0149】
また第1の実施形態と同様に、移行手段53が、容器13へのラップ61の使用の有無を検知するラップ使用検知手段としての機能を有していてもよい。このラップ使用検知手段としての移行手段53は、加熱調理が開始されてからのk℃/T秒の温度上昇率と、湯気や蒸気の発生時に食品温度センサ15からの検知温度が急上昇し、温度上昇率が急に高くなる変曲点ItWの検知とを組み合わせてラップ61の使用を検知している。すなわち、加熱調理が開始されてから食品温度センサ15で温度を検知し、移行手段53がk℃/T秒の温度上昇率を算出しているときに、ラップを使用していないときの温度tの変化と異なる急激な温度上昇を検知し、温度上昇率が急に高くなる変曲点ItWを検知した場合は、移行手段53は、ラップ61または蓋が容器13に使用されていると判定し、ラップ61を検知したものとして、加熱調理制御部51は、「ラップ 有り」を選択操作した場合の加熱制御を行なう。したがって、ラップ有無選択手段としての表示要素55-11~55-14および操作手段7を使用しなくても、ラップ61の有無に応じて、加熱調理制御部51が被調理物Sに対する加熱制御を可変させることができる。
【0150】
以上のように、本実施形態の加熱調理器としての電子レンジは、被調理物Sを収容した容器13を内部に収容する調理室12と、被調理物Sを加熱する加熱手段としてのマグネトロン19および回転アンテナ28を駆動させるマグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38と、マグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38を制御する制御手段としての加熱調理制御部51と、容器13に使用されるラップ61の有無を選択するラップ有無選択手段としての表示要素55-11~55-14および操作手段7と、被調理物Sまたはラップ61の温度を検出する温度分布検出手段としての食品温度センサ15と、を備え、加熱調理制御部51は、食品温度センサ15からの検出信号としての検出温度と、表示要素55-11~55-14および操作手段7で選択されたラップ61の有無とに基づいて、マグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38を制御する構成としている。
【0151】
このような構成により、ラップ有無選択手段で選択されたラップ61の有無に応じて、加熱調理制御部51が被調理物Sに対する加熱制御を可変させることができ、被調理物Sの性状に応じてラップ61を使用していない誤使用のリスクを低減することができる。
【0152】
また本実施形態の加熱調理器としての電子レンジは、被調理物Sを収容した容器13を内部に収容する調理室12と、被調理物Sを加熱する加熱手段としてのマグネトロン19および回転アンテナ28を駆動させるマグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38と、マグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38を制御する制御手段としての加熱調理制御部51と、容器13に使用されるラップ61の有無を検知するラップ使用検知手段の機能を有する移行手段53と、被調理物Sまたはラップ61の温度を検出する温度分布検出手段としての食品温度センサ15と、を備え、加熱調理制御部51は、食品温度センサ15からの検出信号としての検出温度と、移行手段53で検知したラップ61の有無とに基づいて、マグネトロン駆動装置37および回転アンテナ駆動装置38を制御する構成としている。
【0153】
このような構成により、ラップ有無選択手段を使用しなくても、移行手段53が検知するラップ61の有無に応じて、加熱調理制御部51が被調理物Sに対する加熱制御を可変させることができ、被調理物Sの性状に応じてラップ61を使用していない誤使用のリスクを低減することができる。
【0154】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、第1の実施形態と第2の実施形態の両方の構成を備えてもよい。また本実施形態の各部の構成や形状は、図示したものに限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0155】
2 調理室
13 容器
15 食品温度センサ(温度分布検出手段)
19 マグネトロン(加熱手段)
28 回転アンテナ(加熱手段)
30 容器側面下部温度センサ(容器温度検出手段)
32 記憶手段
33 計時手段
37 マグネトロン駆動装置(加熱手段)
38 回転アンテナ駆動装置(加熱手段)
51 加熱調理制御部(制御手段)
53 移行手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15