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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】放電事象検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20250418BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20250418BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20250418BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/56
G01R31/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021108353
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023005999
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏泰
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-32732(JP,A)
【文献】特開2009-294129(JP,A)
【文献】特開2007-267592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0021664(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2259667(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/50
G01R 31/08
G01R 31/34
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷が接続される電路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部で計測したデータを基に放電事象が発生したか否かを判定する判定部と、を備えた放電事象検出システムであって、
判定部は、放電事象を推認させるデータが所定時間ぶん継続して存在すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能であり、
放電事象が発生したと判定する前に放電事象を推認させるデータが継続して存在する状態から存在しない状態となった場合でも、放電事象を推認させるデータが存在しない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、
放電事象を推認させるデータが継続して存在する時間と放電事象を推認させるデータが存在しない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である放電事象検出システム。
【請求項2】
負荷が接続される電路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部で計測したデータを基に放電事象が発生したか否かを判定する判定部と、を備えた放電事象検出システムであって、
判定部は、閾値を超えているデータが所定時間ぶん継続して存在すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能であり、
放電事象が発生したと判定する前に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった場合でも、閾値を超えていない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、
データが閾値を超えている時間と閾値を超えていない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である放電事象検出システム。
【請求項3】
継続性判断時間を超過してデータが閾値以下の出力であった場合には、判定対象となるデータの継続性がリセットされる請求項1又は請求項2に記載の放電事象検出システム。
【請求項4】
データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めるタイミングで行う請求項1から3のいずれかに記載の放電事象検出システム。
【請求項5】
データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めてから一定時間経過後に行う請求項1から4のいずれかに記載の放電事象検出システム。
【請求項6】
計測部で取り出した出力波形について、商用周波数における正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域と、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域と、を区別するように定めることができる位相分割部を備え、
判定部では、閾値を超えているデータが所定時間ぶん継続して存在するか否かを確認するために、正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、または、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、のいずれか一方側で閾値を超えている時間の継続性を確認し、
閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となったのが継続性判断時間内だけであるか否かを確認するために、正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、または、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、のいずれか一方側で閾値を超えていない時間の継続性を確認する請求項1又は請求項2に記載の放電事象検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電事象検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、放電事故により発生するノイズを検出する技術が知られている。特許文献1に記載の技術は、設定されたターゲット周波数における出力を検出する計測部で、ノイズ出力の有無の判定基準となる閾値を所定時間の間超えているか否かを検出するものである。
【0003】
特許文献1に記載の放電事象のノイズの検出方法は、波形において商用周波数のピーク値に重畳したノイズを検出し、その検出結果を基に放電事象の発生を判定するものである。より詳しく説明すると、「ハイパスフィルタで高周波ノイズを取り出す。」、「増幅器で高周波ノイズを増幅する。」、「ノイズ波形を平滑部で平滑する。」、「ノイズレベルが閾値を一定時間以上超えたら放電事象と判定する。」というステップを順に踏んで放電事象の発生を判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-134231号公報
【0005】
ところで、放電事象で電路に重畳するノイズ出力は、必ずしも連続的に発生するものではなく、不連続で発生する場合がある。その場合、全体的に考察すると放電事象に相当する放電継続時間以上閾値を超えているレベルが出ているにも関わらず、瞬間的に連続性が途絶えただけで放電事象と判定しない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、放電事象によって生じる放電ノイズが不連続で発生する場合にも、放電事象と判定できる放電事象検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、負荷が接続される電路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部で計測したデータを基に放電事象が発生したか否かを判定する判定部と、を備えた放電事象検出システムであって、判定部は、放電事象を推認させるデータが所定時間ぶん継続して存在すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能であり、放電事象が発生したと判定する前に放電事象を推認させるデータが継続して存在する状態から存在しない状態となった場合でも、放電事象を推認させるデータが存在しない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、放電事象を推認させるデータが継続して存在する時間と放電事象を推認させるデータが存在しない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である放電事象検出システムとする。
【0008】
また、負荷が接続される電路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部で計測したデータを基に放電事象が発生したか否かを判定する判定部と、を備えた放電事象検出システムであって、判定部は、閾値を超えているデータが所定時間ぶん継続して存在すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能であり、放電事象が発生したと判定する前に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった場合でも、閾値を超えていない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、データが閾値を超えている時間と閾値を超えていない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である放電事象検出システムとする。
【0009】
また、継続性判断時間を超過してデータが閾値以下の出力であった場合には、判定対象となるデータの継続性がリセットされる構成とすることが好ましい。
【0010】
また、データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めるタイミングで行う構成とすることが好ましい。
【0011】
また、データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めてから一定時間経過後に行う構成とすることが好ましい。
【0012】
また、計測部で取り出した出力波形について、商用周波数における正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域と、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域と、を区別するように定めることができる位相分割部を備え、判定部では、閾値を超えているデータが所定時間ぶん継続して存在するか否かを確認するために、正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、または、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、のいずれか一方側で閾値を超えている時間の継続性を確認し、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となったのが継続性判断時間内だけであるか否かを確認するために、正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、または、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、のいずれか一方側で閾値を超えていない時間の継続性を確認する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、放電事象によって生じる放電ノイズが不連続で発生する場合にも、放電事象と判定できる放電事象検出システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】放電検出システムを備えた放電検出ユニットを負荷の一次側に取り付けた例を示す図である。
図2】放電検出システムを用いて放電事象が発生したか否かを確認する流れの例を示す図である。
図3】判定対象となるデータが若干の時間、閾値を下回った例を示す図である。
図4】閾値を超えている状態があった後に、継続性判断時間を超過してデータが閾値以下の状態になったが、再度継続して閾値を超える状態になった例を示す図である。
図5】閾値を超えている状態の時間のカウントを開始するカウントトリガがONになったときに、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガがONとなることを表した図である。
図6】閾値以上を所定時間継続する「連続計測時間」が存在する場合に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガを動作させることを表した図である。
図7】変更手段や表示部を有する放電検出ユニットを負荷の一次側に取り付けた例を示す図である。
図8】所定の時間の間に閾値が超えていることがある場合に「1」と記し、閾値が超えていない場合に「0」と記すことを表した図である。
図9】所定の時間の間に閾値が超えていることがあるか否かを継続的に確認した場合の出力例と、その出力内容と動作との関係例を示す図である。
図10】放電ノイズが商用周波数に重畳する場合とインバータモータのノイズが商用周波数に重畳する場合の違いを示す図である。
図11】位相分割部を有する放電検出ユニットを負荷の一次側に取り付けた例を示す図である。
図12】位相分割部を有する放電検出システムを用いて放電事象が発生したか否かを確認する流れの例を示す図である。
図13】放電ノイズが商用周波数に重畳する場合に位相分割部で分けた領域ごとに平滑化を行った例を示す図である。ただし、上側にノイズが乗った商用周波数を示し、下側に平滑後に得られた出力を表している。
図14】ピーク時間領域(A)と0値時間領域(B)のデータの差分を演算した結果が閾値を超えた回数が、複数回(25回)継続している例を示す図である。
図15】判定対象となるデータが若干の時間、閾値を下回った例を示す図である。
図16】継続性判断時間を超過して閾値を下回ったため閾値を超えている状態の時間のリセットがなされたが、再び閾値を超えたため、閾値を超えている状態の時間のカウントトリガが再度ONになった例を示す図である。
図17】閾値を超えている状態の時間のカウントを開始するカウントトリガがONになったときに、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガがONとなることを表した図である。
図18】閾値以上を所定時間継続する「連続計測時間」が存在する場合に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガを動作させることを表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の放電事象検出システムは、負荷ELが接続される電路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部11と、計測部11で計測したデータを基に放電事象が発生したか否かを判定する判定部14と、を備えている。また、この放電事象検出システムの判定部14は、放電事象を推認させるデータが所定時間(放電確認時間)ぶん継続して存在すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能であり、放電事象が発生したと判定する前に放電事象を推認させるデータが継続して存在する状態から存在しない状態となった場合でも、放電事象を推認させるデータが存在しない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、放電事象を推認させるデータが継続して存在する時間と放電事象を推認させるデータが存在しない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である。このため、放電事象によって生じる放電ノイズが不連続で発生する場合にも、放電事象と判定できる放電事象検出システムを提供することが可能となる。
【0016】
より詳しくは、負荷ELが接続される電路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部11と、計測部11で計測したデータを基に放電事象が発生したか否かを判定する判定部14と、を備えた放電事象検出システムであって、判定部14は、マイコンなどからなるプロセッサであり、閾値を超えているデータが所定時間(放電確認時間)ぶん継続して存在すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能であり、放電事象が発生したと判定する前に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった場合でも、閾値を超えていない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、データが閾値を超えている時間と閾値を超えていない時間を足しわせた時間が前記所定時間(放電確認時間)に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である放電事象検出システムである。
【0017】
ここで、放電事象検出システムを備えた放電事象検出ユニット1を例に挙げて実施形態を説明する。図1に示されていることから理解されるように、実施形態の放電事象検出ユニット1は、電路の電圧又は電流の高周波数成分のノイズ出力を取り出すCR回路からなる計測部11(フィルタ部)、計測部11で抽出したノイズ出力を増幅する増幅部12、増幅部12で増幅したノイズ出力を平滑する平滑部13、平滑部13で平滑したノイズ出力が所定の閾値を超えているかどうかを判定可能な判定部14、を備えている。なお、放電事象検出ユニット1は負荷EL(蛍光灯など)の一次側に接続すればよい。
【0018】
図2では、この放電検出システムを用いて放電事象が発生したか否かを確認する流れの例を示している。図2に示すことから理解されるように、この例ではノイズが重畳した波形から計測部11を用いてノイズ出力を取り出すことにより不連続な出力を得る。そして、この出力を増幅部12で増幅することで利用しやすい大きさとする。更に、判定をしやすくするために平濶部を用いてノイズ出力を平滑化する。このようにした上で閾値と比較し、放電事象の発生の有無を判定する。
【0019】
実施形態の判定部14は、出力が閾値を超えているか否かについて、あらかじめ記憶された閾値判定条件を基に判定することができる。また、判定部14は、放電事象が発生したか否かについて、あらかじめ記憶された放電確認時間条件を用いて判定することができる。なお、実施形態では上記した各条件は判定部14の判定条件格納部にあらかじめ記憶されている。
【0020】
例えば、閾値を超えているデータが所定時間(放電確認時間)ぶん継続して存在する場合には、放電事象が発生したと判定可能であるし、図3に示すように、放電事象が発生したと判定する前に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった場合でも、閾値を超えていない状態の時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、データが閾値を超えている時間と閾値を超えていない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である。
【0021】
また、判定部14は、閾値を継続的に低下する時間が継続性判断時間に達するか否かについて、あらかじめ記憶された継続性判断時間条件を用いて判定することができる。このため、継続性判断時間内の所定時間(50msなど)だけ、出力が閾値より低下することがあっても、放電事象が生じていないと判定されることを回避することができる。つまり、不連続な放電ノイズが生じていても放電事象の発生を検出することが可能となる。このため、トラッキングのように常に不連続な放電ノイズについても検出することができる。なお、実施形態では、継続性判断時間条件も判定部14の判定条件格納部にあらかじめ記憶されている。
【0022】
継続性判断時間は、閾値を超えない時間が瞬間的にあったとしても、即時に事象の継続性がリセットされることを回避することができるように設定するためのものであるため、電源波形の1~3周期の時間など、短い時間に設定するのが好ましい。また、図4に示すことから理解されるように、継続性判断時間を超過してデータが閾値以下の出力であった場合には、判定対象となるデータの継続性がリセットされるようにするのが好ましい。具体的には、継続性判断時間として設定した時間を超過して継続して閾値を下回るようであれば、放電確認時間の計測カウントをリセットすればよい。
【0023】
ところで、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測の準備は常時されている必要は無い。そのため、どこかのタイミングで当該時間の計測の準備がなされるようにするのが好ましいが、例えば、図5に示すことから理解されるように、データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めるタイミングで行うようにすれば良い。具体的には、閾値を超えている状態の時間のカウントを開始するカウントトリガがONになったときに、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガがONとなるようにすれば良い。
【0024】
また、データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めてから一定時間経過後に行うようにしても良い。具体的には、図6に示すことから理解されるように、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガとして、閾値以上を所定時間継続する「連続計測時間」が存在する場合に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガを動作させることもできる。この場合、「連続計測時間」は放電確認時間より短く設定する。
【0025】
閾値以上の出力がある程度継続した場合に、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった時間の計測のトリガを動作させるようにすれば、瞬間的に他の機器から侵入した突発的なノイズがあった場合、閾値を超えていない状態の時間として計測される時間はないため、放電事象が発生したと誤判定されることを抑制することができる。
【0026】
また、継続性判断時間は、出荷前などにあらかじめ放電検出ユニットに設定しておくようにすれば良いが、変更手段15を設け、後から継続性判断時間の変更を行えるようにするのも好ましい(図7参照)。このようなことを可能とする変更手段15は、ボタン操作ができるようにするものが例示でき、例えば、ボタンを押圧することで表示部16に現在設定されている継続性判断時間を表示したり、設定時間を変更できるようにしたりすればよい。また、設定装置などの外部機器を通信可能に接続して継続性判断時間を設定できるような構成としても良い。
【0027】
継続性判断時間を超過してデータが閾値以下の出力であった場合には、閾値を超えているデータの計測カウンタと閾値を超えていない状態の時間として計測されたデータの計測カウンタがリセットするように構成するのが好ましい。
【0028】
なお、閾値を超えていない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内である場合、閾値を超えていない状態の時間として計測された時間は、閾値を超えた時間として扱ってカウントして放電事象が発生したか否かを判定しても良いし、あくまで閾値を超えた時間としては扱わず、放電事象が発生したか否かの判定において、閾値を超えていない状態の時間のカウントと、継続性判断時間内で閾値を超えていない状態の時間のカウントを総合して、判定対象としても良い。
【0029】
ところで、閾値以上であることの継続性の確認のために、所定時間ごとに区切って計測し、それぞれの時間内で閾値を超えている状態(図8及び図9に示す例では「1」を記した状態)か、超えていない状態(図8及び図9に示す例では「0」を記した状態)か、を判定するようにしても良い。
【0030】
図9に示す例では、3回連続して「1」が続く場合に、放電確認時間条件と比較するデータの計測を開始するように設定しているが、計測を開始する設定は、「1」の連続が3回である場合に限る必要は無い。ただし、複数回を連続して「1」が続く場合に、放電確認時間条件と比較するデータの計測を開始するように設定するのが好ましい。ここで示す「3回連続」は電源波形の電源波形の1周期を3回連続計測している状態を示すものである。その他、1回の時間を任意に決めておくものであっても良い。
【0031】
また、3回連続して「0」が続く場合に、放電確認時間条件と比較するデータの計測時間をリセットするように設定しているが、計測をリセットする設定は、「0」の連続が3回である場合に限る必要は無い。ただし、放電確認時間条件と比較するデータの計測が開始されたあと、所定の回数分連続して「0」が続く場合に、リセットさせるのが好ましい。なお、「0」と表示される回数が、この所定回数未満である場合は、その間の時間を放電確認時間と比較される時間として扱うようにすればよい。
【0032】
ここで、他の実施形態について説明をする。図10に示すことから理解されるように、インバータなどのモータに起因するノイズは放電事象ではないにも関わらず、常にノイズを出力している状態である。一方、放電事象が発生した場合のノイズは商用周波数のピーク値付近において、大きく重畳する。このため、インバータなどのモータに起因するノイズが発生している場合であっても、商用周波数におけるピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域の比較を行うことによって、放電ノイズの有無を判定することができる。
【0033】
このようなことを可能とするために2つ目の例においては、放電事象検出ユニット1に位相分割部17を備えるようにしている(図11参照)。この位相分割部17は、計測部11で取り出した出力波形について、商用周波数における正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域と、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域と、を区別するように定めることができる。
【0034】
この例の放電検出ユニットは、高周波帯域の出力波形を抽出する計測部11(フィルタ部)を備えている。また、計測部11で抽出したノイズ出力を増幅する増幅部12を備えている。また、抽出した出力波形に関する商用周波数におけるピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域と、を区別するように定める位相分割部17を備えている。また、出力波形を分割した位相ごとで平滑する平滑部13を備えている。また、ピーク時間領域のタイミングにおける出力と、0値時間領域のタイミングにおける出力の差分を演算する演算部を備えている。また、演算部で演算した差分が所定の閾値以上であるか否かを判定する判定部14を備えている。
【0035】
判定部14では、閾値を超えているデータが所定時間ぶん継続して存在するか否かを確認するために、正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、または、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、のいずれか一方側で閾値を超えている時間の継続性を確認することができる。
【0036】
また、判定部14では、閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となったのが継続性判断時間内だけであるか否かを確認するために、正のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、正のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、または、負のピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、負のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域との差分、のいずれか一方側で閾値を超えていない時間の継続性を確認することができる。
【0037】
なお、図12に示すことから理解されるように、この例ではノイズが重畳した波形から計測部11を用いてノイズ出力を取り出すことにより不連続な出力を得る。この出力を増幅部12で増幅することで利用しやすい大きさとする。更に、位相分割部17で位相ごとに分割をする。また、分割された位相ごとに判定をしやすくするために平濶部を用いてノイズ出力を平滑化する。このようにした上で放電事象の発生の有無を判定する。
【0038】
このようなことをする過程では、位相ごとに平滑化することにより、例えば図13に示すような矩形波状の出力を得ることができる。
【0039】
このような処理をする場合、正負何れか一方の商用周波数におけるピークの前後の領域を含むピーク時間領域と、商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域の差分が所定時間(所定回数)の間継続的に閾値を超えている場合などに、放電事象が発生したと判定することができる。
【0040】
なお、図13に示す例では、放電事象が発生したか否かを判定するに際して、商用周波数における正側のピークの前後の領域を含むピーク時間領域(A)と、正のピークの直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域(B)と、の差分を演算しているが、正側のピークの前後の領域を含むピーク時間領域(A)と、正のピークの直前で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域(B’)と、の差分を演算してもよい。
【0041】
また、負荷ELのコンセントへのプラグの接続極によっては、商用周波数における負側のピークの前後の領域を含むピーク時間領域(A’)と、負側のピークの直前又は直後で商用周波数における出力が0値となる前後の0値時間領域(B’又はB)と、の差分を演算する方が適している場合もある。
【0042】
先に示した例と同様、放電事象が発生したか否かを判定するために、閾値を超えているデータが所定時間ぶん継続して存在するという条件や放電事象が発生したと判定する前に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった場合でも、閾値を超えていない状態の時間として計測された時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、データが閾値を超えている時間と閾値を超えていない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達するという条件に合っているか否かを確認するが、その際には、位相分割部17を用いて得られたデータが利用される。
【0043】
図14図15に示す例では、その判定をするために、周期ごとに閾値を超えるデータが存在するか否かが確認されている。図14図15に示す例では、商用周波数における正側のピークの前後の領域を含むピーク時間領域(A)に放電事象由来のノイズがのりやすい状況のため、商用周波数における正側のピークの前後の領域を含むピーク時間領域(A)と、ピーク時間領域(A)の直後に存在する0値時間領域(B)と、のデータの差分を演算している。なお、図15においては、差分の演算の結果が閾値を超えている場合は「1」と表示し、閾値を超えていない場合は「0」と表示している。
【0044】
ところで、先に示した例と同様、判定部14は、出力が閾値を超えているか否かについて、閾値判定条件を基に判定することができる。また、判定部14は、放電事象が発生したか否かについて、放電確認時間条件を用いて判定することができる。
【0045】
例えば、閾値を超えているデータが所定時間(放電確認時間)ぶん継続して存在する場合には、放電事象が発生したと判定可能であるし、放電事象が発生したと判定する前に閾値を超えている状態から閾値を超えていない状態となった場合でも、閾値を超えていない状態の時間があらかじめ設定された継続性判断時間内であり、データが閾値を超えている時間と閾値を超えていない時間を足しわせた時間が前記所定時間に達すると判定できる場合には放電事象が発生したと判定可能である。また、判定部14は、閾値を継続的に低下する時間が継続性判断時間に達するか否かについて、継続性判断時間条件を用いて判定することができる。
【0046】
継続性判断時間は、閾値を超えない時間が瞬間的にあったとあったとしても、即時に事象の継続性がリセットされることを回避することができるように設定するためのものであるため、電源波形の1~3周期の時間(例えば50ms)など、短い時間に設定するのが好ましい。
【0047】
継続性判断時間を超過してデータが閾値以下の出力であった場合には、判定対象となるデータの継続性がリセットされるようにするのが好ましい。具体的には、継続性判断時間として設定した時間を超過して継続して閾値を下回るようであれば、閾値を超えている状態の時間の計測カウントをリセットすればよい。図16に示す例では、一度リセットされた後で再び、閾値を超えるデータが発生したことから、再度カウントをし直している。
【0048】
また、図17に示すことから理解されるように、データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めるタイミングで行うようにすれば良いことや、図18に示すことから理解されるように、データが閾値を超えていない状態の時間を計測できるようにする設定を、閾値を超えているデータの継続性を確認し始めてから一定時間経過後に行うようにしても良いことは先の例と同様である。
【0049】
また、位相分割部17で区分している領域で閾値を超えているか否かを判定するようにすれば、図9に示すことと同じようにして、利用することができる。
【0050】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、ユニットを用いなくても良く、バラバラに配置した機器がシステムとして機能するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 放電事象検出ユニット
11 計測部
14 判定部
17 位相分割部
図1
図2
図3
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図5
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