(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/00 20060101AFI20250418BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20250418BHJP
B65H 43/04 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
B41J29/00 H
B41J29/38
B65H43/04
(21)【出願番号】P 2021118429
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】野村 星也
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晋
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-500913(JP,A)
【文献】特開2019-049663(JP,A)
【文献】特開2006-145888(JP,A)
【文献】特開2005-070494(JP,A)
【文献】特開2008-015609(JP,A)
【文献】特開2011-218696(JP,A)
【文献】特開2008-191215(JP,A)
【文献】特開2016-170479(JP,A)
【文献】特開2009-139501(JP,A)
【文献】特開2016-112764(JP,A)
【文献】米国特許第09082069(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00
B41J 29/38
B65H 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
、
前記後処理装置で待ち時間が発生したときに前記印刷済み印刷媒体を一時的に保持するための、前記印刷装置と前記ダミーページ除去部との間に設けられた印刷媒体バッファと
を備え
、
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷媒体バッファの消費量を考慮して、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入するか否かを決定することを特徴とする、印刷システム。
【請求項2】
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷部による各ジョブに基づく印刷が開始される際に当該各ジョブに基づく後処理の終了時における前記印刷媒体バッファの消費量を予測し、予測消費量が0またはその近傍の閾値未満でなければ前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することを特徴とする、請求項
1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記印刷部で複数のジョブに基づく連続印刷が実行される際に、前記ダミーデータ挿入部は、最後に印刷が実行されるジョブを除く各ジョブの最終ページが印刷された直後に前記ダミーページが印刷されるよう、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することを特徴とする、請求項
1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記印刷部で複数のジョブに基づく連続印刷が実行される際に、前記ダミーデータ挿入部は、最後に印刷が実行されるジョブを除く複数のジョブに基づく印刷が行われる毎に前記ダミーページが印刷されるよう、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することを特徴とする、請求項
1に記載の印刷システム。
【請求項5】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
を備え
、
前記後処理装置で発生する1回の待ち時間に応じて前記ダミーデータ挿入部によって前記印刷データに挿入される前記ダミーデータに対応する前記ダミーページの長さは、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される速度と前記後処理装置で発生する待ち時間との積に相当する長さ以上の長さであることを特徴とする、印刷システム。
【請求項6】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
、
前記印刷済み印刷媒体のうち前記ダミーページ除去部によって除去されたダミーページを蓄積する、所定の容量を有する廃棄ダミーページ蓄積部と、
前記廃棄ダミーページ蓄積部の残容量を検出する残容量センサと、
前記残容量センサによる前記廃棄ダミーページ蓄積部の残容量の検出結果に基づいて、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することによって前記廃棄ダミーページ蓄積部の残容量が所定の閾値以下になると予測される場合に所定の警告メッセージを通知する警告通知部と
を備えることを特徴とする、印刷システム。
【請求項7】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
、
入稿データにラスタライズ処理を施すことによって前記印刷データを生成するラスタライズ処理装置と
を備え
、
前記ラスタライズ処理装置は、前記ダミーデータ挿入部を含み、
前記ダミーデータ挿入部は、前記ラスタライズ処理装置によって前記ラスタライズ処理が行われる際に、前記印刷データに前記ダミーページを挿入するか否かを決定することを特徴とする、印刷システム。
【請求項8】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に
前記印刷装置の処理速度と前記後処理装置の処理速度との速度差に起因して前記後処理装置で発生する待ち時間
を少なくとも前記速度差に基づいて計算し、計算された待ち時間の長さに応じた印刷長を有するダミーページの印刷が前記印刷部によって行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入する
、前記印刷装置に設けられたダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
を備えることを特徴とする、印刷システム。
【請求項9】
前記ダミーページ除去部は、画像読み取り部を含み、
前記ダミーページには、前記印刷部によって、識別可能なマークが印刷され、
前記ダミーページ除去部は、前記画像読み取り部による前記印刷済み印刷媒体の各ページの読み取り結果に基づいて、前記印刷済み印刷媒体の各ページが前記ダミーページであるか否かを判定することを特徴とする、請求項
8に記載の印刷システム。
【請求項10】
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷部による印刷が実行されるべきジョブに関する情報であるジョブ情報に基づいて、前記後処理装置で発生する待ち時間を求めることを特徴とする、請求項
8に記載の印刷システム。
【請求項11】
前記ダミーページには、前記印刷部によって、前記印刷部のメンテナンスに用いられる所定のパターンが印刷されることを特徴とする、請求項
8に記載の印刷システム。
【請求項12】
前記印刷装置は、前記印刷部および前記搬送部の動作を制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記ダミーデータ挿入部を含み、
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷データを構成する各ジョブのデータに基づき前記制御部による前記印刷部の動作の制御が開始される際に、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入するか否かを決定することを特徴とする、請求項
8に記載の印刷システム。
【請求項13】
前記印刷済み印刷媒体を断裁する断裁機を更に備え、
前記断裁機は、前記ダミーページ除去部を含み、
前記後処理装置として、前記断裁機による断裁後の印刷媒体を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成するブックブロック作成機が設けられ、
前記ブックブロック作成機において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに待ち時間が発生することを特徴とする、請求項
8に記載の印刷システム。
【請求項14】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記印刷システムは、複数のジョブを順次、処理することが可能であり、
先行するジョブの処理が終了した後、後続のジョブの処理を開始するまでに前記後処理装置で発生することが予測される待ち時間
と前記印刷装置の印刷速度とに基づいて計算された長さのダミーページが前記印刷部によって印刷
されるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
を備えることを特徴とする、印刷システム。
【請求項15】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入ステップと、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去するダミーページ除去ステップと
を含
み、
前記印刷システムは、前記後処理装置で待ち時間が発生したときに前記印刷済み印刷媒体を一時的に保持するための印刷媒体バッファを更に含み、
前記ダミーデータ挿入ステップでは、前記印刷媒体バッファの消費量を考慮して、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入するか否かが決定されることを特徴とする、印刷方法。
【請求項16】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記印刷装置において、前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に
前記印刷装置の処理速度と前記後処理装置の処理速度との速度差に起因して前記後処理装置で発生する待ち時間
を少なくとも前記速度差に基づいて計算し、計算された待ち時間の長さに応じた印刷長を有するダミーページの印刷が前記印刷部によって行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入ステップと、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去するダミーページ除去ステップと
を含むことを特徴とする、印刷方法。
【請求項17】
印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記印刷システムは、複数のジョブを順次、処理することが可能であり、
先行するジョブの処理が終了した後、後続のジョブの処理を開始するまでに前記後処理装置で発生することが予測される待ち時間
と前記印刷装置の印刷速度とに基づいて計算された長さのダミーページが前記印刷部によって印刷
されるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入ステップと、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去するダミーページ除去ステップと
を含むことを特徴とする、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムおよび印刷方法に関し、より詳しくは、印刷から製本までの工程を一貫して行うことができるように構成された印刷システムおよび当該印刷システムにおける印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、書籍などの印刷製本を行うための装置として、基材(印刷媒体)に対して印刷を行う印刷装置と、印刷後の基材に対して「後加工」と呼ばれる処理(以下、「後処理」ともいう。)を行う後加工機(後処理装置)とが知られている。印刷装置としては、近年ではデジタル印刷装置(例えば、インクジェットプリンタ)の採用が多くなっている。製本用に使用されるデジタル印刷装置では、典型的には、ロール紙と呼ばれる長尺帯状の印刷用紙(連続紙)が基材として採用されている。後加工機としては、印刷装置による印刷後の連続紙を指定サイズに切断するシートカッター機(断裁機)、指定サイズに切断された印刷用紙から折り丁を作成する折り機、複数の折り丁をまとめる丁合機、丁合された状態の折り丁群に綴じ加工を施す綴じ機、本の三方向(天、地、小口)の仕上げ裁ちを行う三方断裁機などが知られている。なお、最終成果物の種類によって、使用される後加工機は異なる。
【0003】
ところで、印刷製本に関しては、近年、多品種小ロット生産が行われることが多くなっている。多品種小ロット生産が行われると、少品種大量生産が行われる場合に比べて人の作業が必要となる頻度が高くなる。人の作業が必要になると、コストは増加するし、作業ミスに起因する不良品等の発生確率も高くなる。そこで、近年、印刷から製本までの工程のインライン化が進んでいる。インライン化したシステムによれば、印刷から製本までの工程を一貫して自動的に行うことができる。このため、多品種小ロット生産が行われる場合であっても、作業ミスに起因する不良品等の発生を抑制することができる。また、従来に比較して納期の短縮やコストの低減も可能となる。
【0004】
印刷後の連続紙を元にして製本のための後加工を行う工程に関し、後加工機で或る1セット(一冊)の処理から次の1セット(一冊)の処理に移行する際に待ち時間(遅延)が発生することがある。典型的には、印刷装置の下流側に設けられた後加工機群(複数の後加工機)のうち断裁後の印刷用紙を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成する装置(便宜上、「ブックブロック作成機」という。)において、処理対象のセットの切り替えの際に待ち時間が発生する。印刷装置と後加工機群とが直接に接続された構成(インライン化された構成)が採用されている場合には、印刷速度(印刷用紙の搬送速度)に応じて後加工機に印刷用紙が供給されるので、例えばページ数の少ない書籍についての印刷後の印刷用紙が後加工機に供給された際に、印刷用紙の供給速度に当該後加工機での処理が間に合わないことがある。そこで、印刷装置と後加工機との処理速度の差を吸収するために、
図20に示すように、ブックブロック作成機93を含む後加工機群92と印刷装置90との間に印刷済み印刷用紙を一時的に保持するためのウェブバッファ91が設けられている。
【0005】
ここで、
図20に示した構成に関し、印刷装置90での印刷用紙の搬送速度をV1と表し、後加工機群92での印刷用紙(印刷済み印刷用紙)の搬送速度をV2と表す。ブックブロック作成機93で待ち時間が発生していないときには、通常、V2はV1に等しい。ブックブロック作成機93で待ち時間が発生しているときには、V2はV1よりも小さくなる。このとき、印刷済み印刷用紙が徐々にウェブバッファ91に蓄積される。その後、待ち状態が解消されると、ウェブバッファ91の残量(以下、「バッファ残量」という。)がフルになるまで(換言すると、ウェブバッファ91の消費量が0になるまで)V1よりもV2の方が大きいという状態が維持される。以上のようにして、印刷装置90と後加工機(ブックブロック作成機93など)との処理速度の差が吸収される。
【0006】
ところが、印刷装置90と後加工機との処理速度の差を充分に吸収することができなくなると(例えば、バッファ残量が予め定められた閾値以下になると)、ウェブバッファ91から印刷装置90に対して減速や停止を要求する指示(信号)が送られる。このような指示に応じて、印刷装置90は印刷速度(印刷用紙の搬送速度V1)を変化させる。
【0007】
図21は、従来の構成において印刷速度の減速が行われる際の一動作例について説明するための図である。
図21のA部にバッファ残量の変化を示し、
図21のB部に印刷速度の変化を示している。時刻t90には、バッファ残量はL1(フルの状態)であって、印刷速度は高速VHである。時刻t91に後加工機で待ち時間が発生すると、当該時刻t91以降にバッファ残量は徐々に低下する。このとき、印刷速度は高速VHで維持されている。時刻t92にバッファ残量がL2になると、ウェブバッファ91から印刷装置90に対して減速を要求する指示が送られる。これにより、時刻t92に印刷速度が低下し始め、時刻t93に印刷速度は低速VLとなる。その後、
図21には示していないが、バッファ残量が充分に増加すると、印刷速度は低速VLから高速VHに変化する。
【0008】
なお、本発明に関連して、特開平7-237336号公報には、2台のプリンタを用いた両面印刷システムにおいて当該2台のプリンタの間に紙送り速度差を吸収する中間バッファ装置を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図21に示したような動作を実現するためには、印刷装置がウェブバッファからの減速や停止を要求する指示(信号)に対応できるように構成されていなければならない。すなわち、印刷装置が加減速印刷に対応している必要があり、実現可能な機種が限定される。また、加減速が行われても印刷の品質を維持するための補正回路等の組み込みが必要となるので、高コストとなる。
【0011】
また、
図21に示した例では、印刷装置の運転中に印刷速度(印刷用紙の搬送速度)は大きく変動している。これに関し、印刷装置にとっては、指示された時間内に指示された速度に印刷速度を変化させることは必ずしも容易ではない。また、印刷速度の大きな変動は、ヘッドから吐出されるインク量の変化、印刷速度の変化に乾燥ヒーターの制御が追いつかないことに起因する乾燥むら、インク滴の着弾ずれ、印刷速度を制御するためのサーボモータの共振などを引き起こす。その結果、印刷品質が低下する。
【0012】
なお、特開平7-237336号公報には、後加工機での待ち時間の発生や印刷装置と後加工機との処理速度の差を吸収することについては何ら記載されていない。
【0013】
以上のような状況に鑑み、本発明は、印刷装置が加減速印刷に対応していなくても後加工機(後処理装置)で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と、
前記後処理装置で待ち時間が発生したときに前記印刷済み印刷媒体を一時的に保持するための、前記印刷装置と前記ダミーページ除去部との間に設けられた印刷媒体バッファと
を備え、
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷媒体バッファの消費量を考慮して、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入するか否かを決定することを特徴とする。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷部による各ジョブに基づく印刷が開始される際に当該各ジョブに基づく後処理の終了時における前記印刷媒体バッファの消費量を予測し、予測消費量が0またはその近傍の閾値未満でなければ前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することを特徴とする。
【0018】
第3の発明は、第1の発明において、
前記印刷部で複数のジョブに基づく連続印刷が実行される際に、前記ダミーデータ挿入部は、最後に印刷が実行されるジョブを除く各ジョブの最終ページが印刷された直後に前記ダミーページが印刷されるよう、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することを特徴とする。
【0019】
第4の発明は、第1の発明において、
前記印刷部で複数のジョブに基づく連続印刷が実行される際に、前記ダミーデータ挿入部は、最後に印刷が実行されるジョブを除く複数のジョブに基づく印刷が行われる毎に前記ダミーページが印刷されるよう、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することを特徴とする。
【0020】
第5の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
を備え、
前記後処理装置で発生する1回の待ち時間に応じて前記ダミーデータ挿入部によって前記印刷データに挿入される前記ダミーデータに対応する前記ダミーページの長さは、前記搬送部によって前記印刷媒体が搬送される速度と前記後処理装置で発生する待ち時間との積に相当する長さ以上の長さであることを特徴とする。
【0022】
第6の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と、
前記印刷済み印刷媒体のうち前記ダミーページ除去部によって除去されたダミーページを蓄積する、所定の容量を有する廃棄ダミーページ蓄積部と、
前記廃棄ダミーページ蓄積部の残容量を検出する残容量センサと、
前記残容量センサによる前記廃棄ダミーページ蓄積部の残容量の検出結果に基づいて、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入することによって前記廃棄ダミーページ蓄積部の残容量が所定の閾値以下になると予測される場合に所定の警告メッセージを通知する警告通知部と
を備えることを特徴とする。
【0026】
第7の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と、
入稿データにラスタライズ処理を施すことによって前記印刷データを生成するラスタライズ処理装置と
を備え、
前記ラスタライズ処理装置は、前記ダミーデータ挿入部を含み、
前記ダミーデータ挿入部は、前記ラスタライズ処理装置によって前記ラスタライズ処理が行われる際に、前記印刷データに前記ダミーページを挿入するか否かを決定することを特徴とする。
【0027】
第8の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に前記印刷装置の処理速度と前記後処理装置の処理速度との速度差に起因して前記後処理装置で発生する待ち時間を少なくとも前記速度差に基づいて計算し、計算された待ち時間の長さに応じた印刷長を有するダミーページの印刷が前記印刷部によって行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入する、前記印刷装置に設けられたダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
を備えることを特徴とする。
第9の発明は、第8の発明において、
前記ダミーページ除去部は、画像読み取り部を含み、
前記ダミーページには、前記印刷部によって、識別可能なマークが印刷され、
前記ダミーページ除去部は、前記画像読み取り部による前記印刷済み印刷媒体の各ページの読み取り結果に基づいて、前記印刷済み印刷媒体の各ページが前記ダミーページであるか否かを判定することを特徴とする。
第10の発明は、第8の発明において、
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷部による印刷が実行されるべきジョブに関する情報であるジョブ情報に基づいて、前記後処理装置で発生する待ち時間を求めることを特徴とする。
第11の発明は、第8の発明において、
前記ダミーページには、前記印刷部によって、前記印刷部のメンテナンスに用いられる所定のパターンが印刷されることを特徴とする。
第12の発明は、第8の発明において、
前記印刷装置は、前記印刷部および前記搬送部の動作を制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記ダミーデータ挿入部を含み、
前記ダミーデータ挿入部は、前記印刷データを構成する各ジョブのデータに基づき前記制御部による前記印刷部の動作の制御が開始される際に、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入するか否かを決定することを特徴とする。
第13の発明は、第8の発明において、
前記印刷システムは、前記印刷済み印刷媒体を断裁する断裁機を更に備え、
前記断裁機は、前記ダミーページ除去部を含み、
前記後処理装置として、前記断裁機による断裁後の印刷媒体を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成するブックブロック作成機が設けられ、
前記ブックブロック作成機において1セットの処理の開始時点から次の1セットの処理の開始時点までに待ち時間が発生することを特徴とする。
第14の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムであって、
前記印刷システムは、複数のジョブを順次、処理することが可能であり、
先行するジョブの処理が終了した後、後続のジョブの処理を開始するまでに前記後処理装置で発生することが予測される待ち時間と前記印刷装置の印刷速度とに基づいて計算された長さのダミーページが前記印刷部によって印刷されるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部と、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去する、前記印刷装置と前記後処理装置との間に配置されたダミーページ除去部と
を備えることを特徴とする、印刷システム。
【0028】
第15の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に発生する待ち時間に基づいて、前記印刷部によってダミーページの印刷が行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入ステップと、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去するダミーページ除去ステップと
を含み、
前記印刷システムは、前記後処理装置で待ち時間が発生したときに前記印刷済み印刷媒体を一時的に保持するための印刷媒体バッファを更に含み、
前記ダミーデータ挿入ステップでは、前記印刷媒体バッファの消費量を考慮して、前記印刷データに前記ダミーデータを挿入するか否かが決定されることを特徴とする。
第16の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記印刷装置において、前記後処理装置で前記印刷済み印刷媒体に対する後処理が行われる際に前記印刷装置の処理速度と前記後処理装置の処理速度との速度差に起因して前記後処理装置で発生する待ち時間を少なくとも前記速度差に基づいて計算し、計算された待ち時間の長さに応じた印刷長を有するダミーページの印刷が前記印刷部によって行われるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入ステップと、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去するダミーページ除去ステップと
を含むことを特徴とする。
第17の発明は、印刷媒体を搬送する搬送部と前記搬送部によって搬送される印刷媒体に対して印刷データに基づく印刷を行う印刷部とを有する印刷装置と、前記印刷部による印刷が行われた印刷済み印刷媒体に対して後処理を行う後処理装置とを含む印刷システムにおける印刷方法であって、
前記印刷システムは、複数のジョブを順次、処理することが可能であり、
先行するジョブの処理が終了した後、後続のジョブの処理を開始するまでに前記後処理装置で発生することが予測される待ち時間と前記印刷装置の印刷速度とに基づいて計算された長さのダミーページが前記印刷部によって印刷されるよう前記印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入ステップと、
前記ダミーページが前記後処理装置に供給されないよう前記印刷済み印刷媒体から前記ダミーページを除去するダミーページ除去ステップと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
上記第1の発明によれば、印刷装置と後処理装置とを含む印刷システムに、後処理装置で発生する待ち時間に基づいて印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部が設けられる。印刷データにダミーデータが挿入されると、印刷部によってダミーページの印刷が行われる。また、当該印刷システムにおいて、印刷装置と後処理装置との間にはダミーページを除去するダミーページ除去部が設けられる。以上のような構成により、後処理装置で待ち時間が発生する場合には、当該待ち時間の長さに応じて本来的には不要なダミーページが印刷される。従って、後処理装置で待ち時間が発生しても印刷速度を低下させる必要はない。また、ダミーページは後処理装置に供給されることなく除去されるので、印刷装置と後処理装置との処理速度の差が吸収される。以上より、印刷装置が加減速印刷に対応していなくても後処理装置で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システムが実現される。
また、後処理装置で待ち時間が発生する場合であっても、印刷媒体バッファに充分な残容量があれば必ずしもダミーページを印刷する必要はない。すなわち、ダミーページの印刷量の増大を抑制することができる。従って、損紙の発生が抑制される。
【0032】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0033】
上記第3の発明によれば、印刷システムの構成に関し、容量の小さな印刷媒体バッファを設ける構成あるいは印刷媒体バッファを設けない構成を採用することが可能となる。これにより、コスト低減が可能となる。
【0034】
上記第4の発明によれば、ジョブ毎にダミーページを挿入する構成に比べて、ダミーページの印刷量を少なくすることができる。これにより、損紙の発生が抑制される。
【0035】
上記第5の発明によれば、印刷装置と後処理装置とを含む印刷システムに、後処理装置で発生する待ち時間に基づいて印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部が設けられる。印刷データにダミーデータが挿入されると、印刷部によってダミーページの印刷が行われる。また、当該印刷システムにおいて、印刷装置と後処理装置との間にはダミーページを除去するダミーページ除去部が設けられる。以上のような構成により、後処理装置で待ち時間が発生する場合には、当該待ち時間の長さに応じて本来的には不要なダミーページが印刷される。従って、後処理装置で待ち時間が発生しても印刷速度を低下させる必要はない。また、ダミーページは後処理装置に供給されることなく除去されるので、印刷装置と後処理装置との処理速度の差が吸収される。以上より、印刷装置が加減速印刷に対応していなくても後処理装置で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システムが実現される。
また、印刷速度の低下が必要となる状態の発生が確実に抑制される。これにより、後処理装置で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下が確実に抑制される。
【0037】
上記第6の発明によれば、印刷装置と後処理装置とを含む印刷システムに、後処理装置で発生する待ち時間に基づいて印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部が設けられる。印刷データにダミーデータが挿入されると、印刷部によってダミーページの印刷が行われる。また、当該印刷システムにおいて、印刷装置と後処理装置との間にはダミーページを除去するダミーページ除去部が設けられる。以上のような構成により、後処理装置で待ち時間が発生する場合には、当該待ち時間の長さに応じて本来的には不要なダミーページが印刷される。従って、後処理装置で待ち時間が発生しても印刷速度を低下させる必要はない。また、ダミーページは後処理装置に供給されることなく除去されるので、印刷装置と後処理装置との処理速度の差が吸収される。以上より、印刷装置が加減速印刷に対応していなくても後処理装置で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システムが実現される。
また、ダミーページ除去部の周囲が廃棄後のダミーページ(廃棄用紙)で散らかった状態となることが防止される。
【0041】
上記第7の発明によれば、印刷装置と後処理装置とを含む印刷システムに、後処理装置で発生する待ち時間に基づいて印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部が設けられる。印刷データにダミーデータが挿入されると、印刷部によってダミーページの印刷が行われる。また、当該印刷システムにおいて、印刷装置と後処理装置との間にはダミーページを除去するダミーページ除去部が設けられる。以上のような構成により、後処理装置で待ち時間が発生する場合には、当該待ち時間の長さに応じて本来的には不要なダミーページが印刷される。従って、後処理装置で待ち時間が発生しても印刷速度を低下させる必要はない。また、ダミーページは後処理装置に供給されることなく除去されるので、印刷装置と後処理装置との処理速度の差が吸収される。以上より、印刷装置が加減速印刷に対応していなくても後処理装置で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システムが実現される。
【0042】
上記第8の発明によれば、印刷装置と後処理装置とを含む印刷システムに、後処理装置で発生する待ち時間に基づいて印刷データにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部が設けられる。印刷データにダミーデータが挿入されると、印刷部によってダミーページの印刷が行われる。また、当該印刷システムにおいて、印刷装置と後処理装置との間にはダミーページを除去するダミーページ除去部が設けられる。以上のような構成により、後処理装置で待ち時間が発生する場合には、当該待ち時間の長さに応じて本来的には不要なダミーページが印刷される。従って、後処理装置で待ち時間が発生しても印刷速度を低下させる必要はない。また、ダミーページは後処理装置に供給されることなく除去されるので、印刷装置と後処理装置との処理速度の差が吸収される。以上より、印刷装置が加減速印刷に対応していなくても後処理装置で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システムが実現される。
上記第9の発明によれば、ダミーページの除去漏れや本来的に必要なページを誤って除去することが抑制される。
上記第10の発明によれば、後処理装置で実際に待ち時間が発生する前に精度良く待ち時間の長さを予測することが可能となる。
上記第11の発明によれば、ダミーページの印刷が印刷部のメンテナンスに寄与することが可能となる。
上記第12の発明によれば、上記第8の発明と同様の効果が得られる。
上記第13の発明によれば、印刷装置が加減速印刷に対応していなくてもブックブロック作成機で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システムが実現される。
上記第14の発明によれば、上記第8の発明と同様の効果が得られる。
【0043】
上記第15の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
上記第16の発明によれば、上記第8の発明と同様の効果が得られる。
上記第17の発明によれば、上記第14の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】上記第1の実施形態における印刷装置の一構成例を示す模式図である。
【
図3】上記第1の実施形態における印刷制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】上記第1の実施形態における制御部の概略機能構成を示すブロック図である。
【
図5】上記第1の実施形態において、ダミーデータの挿入について説明するための図である。
【
図6】上記第1の実施形態において、ダミーページに二次元コードが印刷されることについて説明するための図である。
【
図7】上記第1の実施形態において、ダミーデータ挿入処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】上記第1の実施形態において、印刷データの一例を模式的に示した図である。
【
図9】上記第1の実施形態において、ダミーデータ挿入処理について説明するための図である。
【
図10】上記第1の実施形態において、ダミーデータが挿入された印刷データに基づく印刷の結果を模式的に示した図である。
【
図11】上記第1の実施形態において、バッファ残量の変化について説明するための図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態において、ダミーデータ挿入処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】上記第2の実施形態において、ダミーデータ挿入処理について説明するための図である。
【
図14】上記第2の実施形態において、ダミーデータが挿入された印刷データに基づく印刷の結果を模式的に示した図である。
【
図15】上記第2の実施形態において、バッファ残量の変化について説明するための図である。
【
図16】第1の変形例の構成について説明するためのブロック図である。
【
図17】第2の変形例における印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図18】第3の変形例の構成について説明するためのブロック図である。
【
図19】上記第3の変形例において、印刷制御装置の表示部に表示される警告画面の一例を示す図である。
【
図20】従来例に関し、印刷済み印刷用紙を一時的に保持するためのウェブバッファが設けられていることについて説明するための図である。
【
図21】従来の構成において印刷速度の減速が行われる際の一動作例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0046】
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷システム1の全体構成を示すブロック図である。この印刷システム1は、印刷装置10と印刷ワークフロー管理装置30とRIPサーバ40とウェブバッファ50と後加工機群60とによって構成されている。後加工機群60は、印刷済み印刷用紙(印刷済み印刷媒体)に対して後加工(後処理)を行うための複数の装置(後加工機)からなる。
【0047】
印刷装置10と印刷ワークフロー管理装置30とRIPサーバ40とは、LANなどのネットワーク7によって通信可能に接続されている。印刷対象のデータである入稿データは、このネットワーク7を経由して、図示しないクライアントコンピュータ等から送られてくる。
【0048】
印刷装置10は、概略的には、印刷機本体とそのコントローラである印刷制御装置とによって構成されている。本実施形態における印刷装置10は、インクジェットプリンタである。印刷用紙としては、連続紙であるロール紙が採用されている。ところで、この印刷装置10では、後加工機で発生する待ち時間を考慮してダミーデータが挿入された印刷データに基づいて、印刷用紙への印刷が行われる。従って、印刷済み印刷用紙には、所望の画像等が印刷されたページに加えてダミーページが含まれている。なお、印刷データへのダミーデータの挿入に関する詳しい説明は後述する。
【0049】
印刷ワークフロー管理装置30は、この印刷システム1で印刷を行うための一連の処理の管理(すなわち、印刷ワークフローの管理)を行う。なお、これに関し、印刷ワークフローを管理するためのアプリケーションソフトウェア(印刷ワークフロー管理システム)がインストールされたパソコン等のコンピュータが、印刷ワークフロー管理装置30として機能する。
【0050】
RIPサーバ40は、PDFファイルなどの入稿データ(ベクター形式のデータ)にRIP処理(ラスタライズ処理)を施す。このRIP処理によって生成された印刷データがRIPサーバ40から印刷装置10に送られる。なお、本実施形態においては、RIPサーバ40によってラスタライズ処理装置が実現される。
【0051】
ウェブバッファ50は、
図1に示すように、印刷装置10と後加工機群60との間に設けられている。印刷済み印刷用紙は、ウェブバッファ50を介して印刷装置10から後加工機群60に含まれるシートカッター機(断裁機)61に供給される。ウェブバッファ50は、印刷装置10と後加工機群60との処理速度の差を吸収するために、適宜、印刷済み印刷用紙を一時的に保持する。なお、本実施形態においては、ウェブバッファ50によって印刷媒体バッファが実現される。
【0052】
後加工機群60は、シートカッター機61、折り機62、丁合機63、綴じ機64、および三方断裁機65からなる。シートカッター機61は、印刷装置10による印刷後の連続紙を指定サイズに切断する。折り機62は、指定サイズに切断された印刷用紙から折り丁を作成する。丁合機63は、複数の折り丁をまとめる。綴じ機64は、丁合された状態の折り丁群に綴じ加工を施す。三方断裁機65は、本の三方向(天、地、小口)の仕上げ裁ちを行う。なお、ここで示した後加工機群60の構成は一例であって、これには限定されない。
【0053】
後加工機群60のうちの丁合機63は、シートカッター機61による断裁後の印刷用紙を1セット分ずつまとめることによってブックブロックを作成するブックブロック作成機として機能する。このブックブロック作成機において1セットの処理の終了時点から次の1セットの処理の開始時点までに待ち時間が発生する。
【0054】
ところで、上述したように、印刷済み印刷用紙には所望の画像等が印刷されたページに加えてダミーページが含まれている。このダミーページは本来的には不要なものである。そこで、本実施形態においては、ダミーページが丁合機63に供給されないよう印刷済み印刷用紙からダミーページを除去するダミーページ除去部610がシートカッター機61に設けられている。
【0055】
<1.2 印刷装置の構成>
図2は、印刷装置10の一構成例を示す模式図である。上述したように、この印刷装置10は、印刷機本体200とそのコントローラである印刷制御装置100とによって構成されている。
【0056】
印刷機本体200は、印刷用紙(ここではロール紙)PAを供給する用紙送出部21と、印刷用紙PAの表面への印刷を行う第1の印刷機構20aと、第1の印刷機構20aから出力された印刷用紙PAの表面と裏面とを反転させる反転ユニット27と、印刷用紙PAの裏面への印刷を行う第2の印刷機構20bとを備えている。第1の印刷機構20aは、印刷用紙PAを内部へと搬送するための第1の駆動ローラ22aと、第1の印刷機構20aの内部で印刷用紙PAを搬送するための複数個の支持ローラ23aと、印刷用紙PAにインクを吐出して印刷を行う印刷部24aと、印刷後の印刷用紙PAを乾燥させる乾燥部25aと、印刷用紙PAを第1の印刷機構20aの内部から出力するための第2の駆動ローラ26aとを備えている。印刷部24aは、例えば、印刷用紙PAの搬送方向に列置されたC色(シアン色)、M色(マゼンタ色)、Y色(黄色)、およびK色(黒色)のインクジェットヘッド列から構成されている。各インクジェットヘッド列は、千鳥状に配置された複数個のインクジェットヘッド(印刷ヘッド)により構成されている。各インクジェットヘッドには、インクを吐出する多数のノズルが含まれている。第2の印刷機構20bの構成については、第1の印刷機構20aの構成と同様であるので、説明を省略する。なお、第1の印刷機構20aの構成要素については符号の末尾に“a”を付し、第2の印刷機構20bの構成要素については符号の末尾に“b”を付している。
【0057】
印刷制御装置100は、以上のような構成の印刷機本体200の動作を制御する。印刷制御装置100に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置100は、印刷用紙PAが用紙送出部21から内部へと搬送されるよう、印刷機本体200の動作を制御する。そして、第1の印刷機構20aおよび第2の印刷機構20bのそれぞれにおいて、まず印刷部24a,24bによって印刷用紙PAへの印刷が行われ、次に乾燥部25a,25bによって印刷用紙PAの乾燥が行われる。
【0058】
なお、ここではカラー印刷を行うインクジェットプリンタの構成を例示したが、モノクロ印刷を行うインクジェットプリンタが採用されている場合にも本発明を適用することができる。また、ここでは水性インクを用いるインクジェットプリンタの構成を例示したが、例えばラベル印刷向けインクジェットプリンタのようにUVインク(紫外線硬化インク)を用いる印刷装置が採用されている場合にも本発明を適用することができる。さらに、ここでは表面印刷用の第1の印刷機構20aと裏面印刷用の第2の印刷機構20bとからなるインクジェットプリンタの構成を例示したが、裏面印刷用の第2の印刷機構20bを備えていないインクジェットプリンタが採用されている場合にも本発明を適用することができる。さらにまた、印刷済み印刷用紙が印刷装置から直接に後加工機に送られる構成が採用されていれば、インクジェットプリンタ以外の印刷装置(例えば、レーザープリンタ)が用いられている場合にも本発明を適用することができる。以上のように、印刷装置の種類については特に限定されない。
【0059】
<1.3 印刷制御装置のハードウェア構成>
図3は、印刷制御装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、印刷制御装置100は、本体110、補助記憶装置121、光ディスクドライブ122、表示部123、キーボード124、およびマウス125などを備えている。本体110は、CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、出力インタフェース部117、およびネットワークインタフェース部118を含んでいる。CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、出力インタフェース部117、およびネットワークインタフェース部118は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部113には補助記憶装置121が接続されている。第2ディスクインタフェース部114には光ディスクドライブ122が接続されている。表示制御部115には、表示部(表示装置)123が接続されている。入力インタフェース部116には、キーボード124およびマウス125が接続されている。出力インタフェース部117には、通信ケーブルを介して印刷機本体200が接続されている。ネットワークインタフェース部118にはネットワーク7が接続されている。補助記憶装置121は磁気ディスク装置などである。光ディスクドライブ122には、CD-ROMやDVD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク8が挿入される。表示部123は液晶ディスプレイなどである。表示部123は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。キーボード124およびマウス125は、この印刷制御装置100に対して作業者が指示を入力するために使用される。
【0060】
補助記憶装置121には、印刷制御プログラム(印刷機本体200による印刷処理の実行を制御するためのプログラム)Pが格納されている。CPU111は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをメモリ112に読み出して実行することにより、印刷制御装置100の各種機能を実現する。メモリ112は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ112は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをCPU111が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、印刷制御プログラムPは、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、印刷制御プログラムPの記録媒体としての光ディスク8を購入して光ディスクドライブ122に挿入し、光ディスク8から印刷制御プログラムPを読み出して補助記憶装置121にインストールする。また、これに代えて、ネットワーク7を介して送信される印刷制御プログラムPをネットワークインタフェース部118で受信して、それを補助記憶装置121にインストールするようにしてもよい。ところで、補助記憶装置121あるいはメモリ112は印刷キューとしても機能し、印刷キューには印刷実行待ち状態のジョブの印刷データやそれらのジョブ(印刷部24a,24bによる印刷が実行されるべきジョブ)に関する情報であるジョブ情報が保持される。
【0061】
<1.4 印刷制御装置の機能構成>
図4は、印刷制御装置100で印刷制御プログラムPが実行されることによって実現される制御部140の概略機能構成を示すブロック図である。制御部140は、概略的には、ダミーデータ挿入部141と搬送制御部142と印刷制御部143と乾燥制御部144とを含んでいる。制御部140は、上述した印刷キューから印刷データPDおよびジョブ情報JIを読み込む。
【0062】
ダミーデータ挿入部141は、後加工機群60に含まれる丁合機63(
図1参照)で印刷済み印刷用紙に対する後処理(具体的には、ブックブロックを作成する処理)が行われる際に発生する待ち時間(より詳しくは、発生することが予測される待ち時間)に基づいて、印刷部24a,24bによってダミーページの印刷が行われるよう印刷データPDにダミーデータを挿入する。その際、丁合機63で発生する待ち時間は、ジョブ情報JIに基づいて求められる。
【0063】
搬送制御部142は、搬送部28a,28bが印刷用紙PAを搬送する速度(搬送速度)を制御する。なお、本実施形態においては、用紙送出部21と第1の駆動ローラ22aと複数個の支持ローラ23aと第2の駆動ローラ26aとよって搬送部28aが実現され、第1の駆動ローラ22bと複数個の支持ローラ23bと第2の駆動ローラ26bとによって搬送部28bが実現される(
図2参照)。
【0064】
印刷制御部143は、印刷部24a,24bを構成する各インクジェットヘッドに含まれる各ノズルからのインクの吐出を制御する。例えば、インクの吐出タイミングやインクの吐出量の制御が行われる。本実施形態においては、印刷制御部143はダミーデータが挿入された印刷データに基づいて印刷部24a,24bの動作を制御するので、印刷部24a,24bによる印刷後の印刷用紙にはダミーページが含まれている。
【0065】
乾燥制御部144は、乾燥部25a,25bが印刷用紙PAを乾燥させる際の温度(乾燥温度)を制御する。
【0066】
<1.5 ダミーデータの挿入およびダミーページの除去>
本実施形態においては、印刷装置10と後加工機群60との処理速度の差を吸収するために、ダミーデータ挿入部141によって、印刷物(印刷済み印刷用紙)中のダミーページの生成元となるダミーデータが印刷データPDに挿入される。ダミーデータは丁合機63で発生する待ち時間に応じて印刷データPDに挿入されるので、丁合機63で待ち時間が発生するときには、その待ち時間の長さに応じた印刷長を有するダミーページの印刷が印刷部24a,24bで行われる。そして、ダミーページは、丁合機63には供給されず、シートカッター機61に設けられたダミーページ除去部610によって除去される。以上のような動作が行われるので、丁合機63で実際に待ち時間が発生した際に、印刷速度(印刷装置10内での印刷用紙PAの搬送速度)を低下させることなく、印刷装置10の処理速度と後加工機群60の処理速度との差が吸収される。なお、ダミーデータ挿入部141が印刷データPDにダミーデータを挿入する処理によってダミーデータ挿入ステップが実現され、ダミーページ除去部610が印刷済み印刷用紙からダミーページを除去する処理によってダミーページ除去ステップが実現される。
【0067】
ここで、印刷装置10と後加工機群60との処理速度の差を充分に吸収するために必要とされるダミーページの印刷長(印刷用紙の搬送方向についての長さ)について説明する。丁合機63で発生する待ち時間をTwと表し、印刷速度をVと表すと、Twの長さの期間中に印刷用紙が搬送される距離は“V×Tw”で表される。仮にダミーページの印刷長が“V×Tw”よりも短ければ、ウェブバッファ50を消費する(印刷済み印刷用紙がウェブバッファ50に蓄積される)ことになる。この場合、印刷装置10と後加工機群60との処理速度の差を充分に吸収することができない。そこで、本実施形態においては、ダミーページの印刷長が“V×Tw”となるように印刷データPDへのダミーデータの挿入が行われる。
【0068】
例えば、ジョブJaの最終ページとジョブJbの先頭ページとの間にダミーページを挿入しようとする場合、
図5に示すようにジョブJaの最終ページの印刷終了時点から上記Twの長さの期間経過後にジョブJbの先頭ページの印刷が開始されるように、印刷データPDへのダミーデータの挿入が行われる。このとき、ジョブJaの最終ページとジョブJbの先頭ページとの間に挿入されるダミーページの印刷長は、上記“V×Tw”となる。なお、
図5では、1つのページを1つの矩形で模式的に表している。
【0069】
上記の例ではダミーページの印刷長は“V×Tw”であるが、ダミーページの印刷長は“V×Tw”よりも長くても良い。すなわち、丁合機63で発生する1回の待ち時間に応じてダミーデータ挿入部141によって印刷データPDに挿入されるダミーデータに対応するダミーページの長さは、印刷速度(搬送部28a,28bによって印刷用紙が搬送される速度)と丁合機63で発生する待ち時間との積に相当する長さ以上の長さであれば良い。
【0070】
また、本実施形態においては、ダミーページには、ダミーページ識別用の二次元コードが印刷される。例えば、ジョブJaの最終ページとジョブJbの先頭ページとの間にダミーページが挿入される場合、
図6に示すように、挿入された各ダミーページの所定位置に二次元コード71が印刷される。この二次元コード71に基づき各ページがダミーページであるか否かを識別することができるよう、ダミーページ除去部610(
図1参照)は二次元コードリーダを有している。印刷済み印刷用紙がシートカッター機61に供給されると、ダミーページ除去部610は、二次元コードリーダによる印刷済み印刷用紙の各ページの読み取り結果に基づいて、印刷済み印刷用紙の各ページがダミーページであるか否かを判定する。そして、ダミーページである旨の判定がなされたページは、ダミーページ除去部610によって除去される。このように二次元コード71に基づき各ページがダミーページであるか否かを識別することによって、ダミーページの除去漏れや本来的に必要なページを誤って除去することが抑制される。
【0071】
ところで、一般に、インクジェットプリンタでは、ノズル欠けの有無を検査するためのテストパターンの印刷やインクの吐出不良を解消するためのフラッシングパターンの印刷が行われることがある。そのようなパターン(テストパターン、フラッシングパターン)が印刷されたページをダミーページとして流用することもできる。すなわち、印刷部24a,24bのメンテナンスに用いられる所定のパターンが当該印刷部24a,24bによってダミーページに印刷されるようにしても良い。これにより、ダミーページの印刷が印刷部24a,24bのメンテナンスに寄与することが可能となる。
【0072】
次に、
図7に示すフローチャートを参照しつつ、印刷データPDにダミーデータを挿入する処理(以下、「ダミーデータ挿入処理」という。)の手順について説明する。このダミーデータ挿入処理はダミーデータ挿入部141(
図4参照)で行われる。ここでは、模式的には
図8に示すような印刷データPDに基づく印刷が行われるケースに着目する。
図8に示す印刷データPDに関し、ジョブJa、Jb、Jc、およびJeについてはページ数は200であり、ジョブJdについてはページ数は100である。なお、
図8では、1つのページを1つの矩形で模式的に表し、矩形内にはページ番号を記している。また、印刷速度は100mpm(メートル毎分)であると仮定する。
【0073】
ダミーデータ挿入処理の開始後、まず、印刷キューから処理対象のジョブについてのジョブ情報JIが取得される(ステップS100)。ジョブ情報JIには、ジョブのページ数やジョブを構成する各ページのページ長などの情報が含まれている。
【0074】
次に、処理対象のジョブが最終ジョブであるか否かの判定が行われる(ステップS110)。判定の結果、処理対象のジョブが最終ジョブであれば、このダミーデータ挿入処理は終了する。一方、処理対象のジョブが最終ジョブでなければ、処理はステップS120に進む。
【0075】
ステップS120では、ステップS100で取得されたジョブ情報JIに基づいて、丁合機63で発生する待ち時間が計算される。このステップS120では、例えば
図9で符号72を付した矢印で示す欄のように、処理対象のジョブの処理の終了後に丁合機63で発生する待ち時間が計算される。
【0076】
次に、挿入するダミーページの印刷長(挿入ページ長)が計算される(ステップS130)。上記と同様に待ち時間をTw、印刷速度をVと表すと、挿入ページ長Ldは次式(1)で求められる。なお、印刷速度の100mpmは秒速1.667mである。
Ld=V×Tw ・・・(1)
【0077】
例えばジョブJaの処理の終了後に発生する待ち時間は2秒であるので、ジョブJaの最終ページの直後に挿入されるダミーページの印刷長は3.33mとなる(
図9参照)。また、例えばジョブJcの処理の終了後に発生する待ち時間は3秒であるので、ジョブJcの最終ページの直後に挿入されるダミーページの印刷長は5.00mとなる(
図9参照)。
【0078】
ダミーページの印刷長の計算後、その計算結果に基づく長さのダミーページが挿入されるように、印刷データPDにダミーデータが挿入される(ステップS140)。その後、処理はステップS100に戻り、次の処理対象のジョブに関する処理が行われる。
【0079】
印刷データPDへのダミーデータの挿入は、以上のように、実際に待ち時間が発生してから行われるのではなく、ジョブ情報JIに基づいて行われる。すなわち、本実施形態においては、ダミーデータ挿入部141は、印刷データPDを構成する各ジョブのデータに基づき制御部140(詳しくは印刷制御部143)による印刷部24a,24bの動作の制御が開始される際に、印刷データPDにダミーデータを挿入するか否かを決定する。
【0080】
以上のようにしてダミーデータが挿入された印刷データに基づく印刷の結果は、
図10に示すようなものとなる。なお、
図10では、「DUM」と記した矩形部分がダミーページである(
図14も同様)。ジョブJaの最終ページとジョブJbの先頭ページとの間(符号74aを付した部分)およびジョブJbの最終ページとジョブJcの先頭ページとの間(符号74bを付した部分)にはそれぞれ3.33m分のダミーページが挿入されている。また、ジョブJcの最終ページとジョブJdの先頭ページとの間(符号74cを付した部分)およびジョブJdの最終ページとジョブJeの先頭ページとの間(符号74dを付した部分)にはそれぞれ5.00m分のダミーページが挿入されている。なお、最終ジョブであるジョブJeの最終ページの後にはダミーページは挿入されていない。
【0081】
ここで、
図11を参照しつつ、上記の例におけるバッファ残量の変化について説明する。なお、バッファ残量がL2にまで低下すると、ウェブバッファ50から印刷装置10に対して減速を要求する指示が送られる。時刻t10には、バッファ残量はL1(フルの状態)である。時刻t10から時刻t11までの期間には、丁合機63でジョブJaの処理が行われる。この期間には、丁合機63で待ち時間が発生することなくジョブJaの処理が行われるので、バッファ残量はL1で維持される。時刻t11から時刻t12までの期間は、丁合機63で待ち時間が発生している期間である。この期間には、丁合機63で待ち時間が発生しているが、上述のように待ち時間の長さに応じたダミーページが挿入され、かつ、ダミーページはダミーページ除去部610で除去されるので、バッファ残量はL1で維持される。時刻t12以降の期間にも、同様にして、バッファ残量はL1で維持される。以上のように、本実施形態においては、最後に印刷が実行されるジョブを除く各ジョブの最終ページが印刷される毎にダミーページが印刷され、かつ、ダミーページはダミーページ除去部610で除去されるので、バッファ残量はフルの状態で維持される。従って、たとえ丁合機63で待ち時間が発生しても、印刷速度を低下させる必要はない。
【0082】
なお、ウェブバッファ50の容量を考慮して、最後に印刷が実行されるジョブを除く複数のジョブに基づく印刷が行われる毎にダミーページが印刷されるよう、印刷データPDにダミーデータを挿入するようにしても良い。この場合、複数回発生した待ち時間の合計時間に応じた印刷長を有するダミーページが印刷される。
【0083】
<1.6 効果>
本実施形態によれば、印刷機本体200の動作を制御する制御部140には、丁合機63で発生する待ち時間に基づいて印刷データPDにダミーデータを挿入するダミーデータ挿入部141が設けられている。印刷データPDにダミーデータが挿入されると、印刷部24a,24bによってダミーページの印刷が行われる。また、印刷装置10と丁合機63との間に配置されているシートカッター機61には、印刷済み印刷用紙からダミーページを除去するダミーページ除去部610が設けられている。以上のような構成により、丁合機63で待ち時間が発生する場合には、当該待ち時間の長さに応じて本来的には不要なダミーページが印刷される。従って、丁合機63で待ち時間が発生しても印刷速度を低下させる必要はない。すなわち、印刷装置10が加減速印刷に対応していなくても良い。また、印刷品質の低下が抑制される。印刷済み印刷用紙に含まれるダミーページは丁合機63に供給されることなく除去されるので、印刷装置10と後加工機群60との処理速度の差が吸収される。このように印刷装置10と後加工機群60との処理速度の差が吸収されるので、丁合機63で発生する待ち時間を考慮してジョブの実行順序の並び替えを行う必要もない。
【0084】
以上のように、本実施形態によれば、印刷装置10が加減速印刷に対応していなくても丁合機63で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システム1が実現される。
【0085】
<2.第2の実施形態>
<2.1 概要>
印刷システム1の全体構成、印刷装置10の構成、印刷制御装置100のハードウェア構成、および印刷制御装置100の機能構成については、上記第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する(
図1~
図4を参照)。
【0086】
上記第1の実施形態においては、複数のジョブに基づく連続印刷が実行される際に、最後に印刷が実行されるジョブを除く各ジョブの最終ページが印刷される毎にダミーページが印刷されるよう印刷データPDにダミーデータが挿入されていた。これに対して、本実施形態においては、各ジョブに基づく印刷が開始される際に当該各ジョブの後処理の終了時点におけるバッファ残量の予測が行われ、予測結果としてのバッファ残量がフルまたはその近傍の所定量以上でなければ(換言すれば、ウェブバッファ50の予測消費量が0またはその近傍の閾値未満でなければ)印刷データPDにダミーデータが挿入される。
【0087】
<2.2 ダミーデータの挿入>
図12に示すフローチャートを参照しつつ、本実施形態におけるダミーデータ挿入処理の手順について説明する。ステップS200、ステップS210、およびステップS220の処理については、それぞれ、
図7のステップS100、ステップS110、およびステップS120の処理と同様である。
【0088】
ステップS230では、処理対象のジョブの後処理の終了時点におけるバッファ残量の予測(換言すれば、バッファ消費量の予測)が行われる。なお、バッファ残量の予測についての詳しい説明は後述する。
【0089】
次に、ステップS230での予測結果としてのバッファ残量がフルであるか否かの判定(換言すれば、ウェブバッファ50の予測消費量が0であるか否かの判定)が行われる(ステップS240)。判定の結果、バッファ残量がフルであれば、処理はステップS200に戻り、次の処理対象のジョブに関する処理が行われる。すなわち、バッファ残量がフルであれば、処理対象のジョブに対応するダミーデータの挿入は行われない。一方、バッファ残量がフルでなければ、処理はステップS250に進む。
【0090】
ステップS250では、
図7のステップS130と同様にしてダミーページの印刷長(挿入ページ長)が計算され、ステップS260では、
図7のステップS140と同様にして印刷データPDにダミーデータが挿入される。その後、処理はステップS200に戻り、次の処理対象のジョブに関する処理が行われる。
【0091】
なお、上記の手順によれば待ち時間に応じてバッファ残量が減少した後にバッファ残量がフルの状態にまで回復しないと予測される場合に印刷データPDへのダミーデータの挿入が行われるが、印刷速度の低下が必要となる程度にまでバッファ残量が減少することが予測される場合(すなわち、バッファ残量が所定の閾値以下になることが予測される場合)に印刷データPDへのダミーデータの挿入が行われるようにしても良い。
【0092】
ここで、
図8に示した印刷データPDに基づく印刷が行われるケースに着目しつつ、バッファ残量の求め方およびバッファ残量の予測結果に基づくダミーページの挿入について説明する。
図13には、各ジョブについての後処理(丁合機63でのブックブロックを作成する処理)が行われているときのウェブバッファ50の状態などを示している。なお、このケースでは、いずれのジョブのいずれのページについてもページ長は0.61mである。また、印刷速度(印刷装置10での印刷用紙の搬送速度)は100mpmかつ後処理速度(後加工機群60の内部で印刷済み印刷用紙が丁合機63へと搬送される速度)は103mpmであると仮定する。
【0093】
ジョブJaは最初に印刷が行われるジョブであるので、ジョブJaについての後処理が行われている時にはバッファ残量はフルの状態で維持される。後処理の対象がジョブJaからジョブJbに切り替わる際、2秒の待ち時間が発生する。これに伴うバッファ残量の減少量は、上式(1)と同様の式によって求められる。印刷速度は100mpm(秒速1.667m)であって、待ち時間は2秒であるので、バッファ残量の減少量は3.33mとなる。従って、ジョブJbの後処理の開始時点には、バッファ消費量は3.33mとなっている。
【0094】
ジョブJbの後処理が行われている期間中には、印刷速度(100mpm)よりも後処理速度(103mpm)の方が高いため、バッファ残量は徐々に回復する。印刷速度をV1、後処理速度をV2、ページ長をLと表すと、各ページの処理が行われている期間におけるバッファ残量の回復量Brは次式(2)で求められる。
Br=(V2-V1)×(L/V1) ・・・(2)
上式(2)より、各ページの処理が行われている期間におけるバッファ残量の回復量Brは約0.02mとなる。
【0095】
各ページの処理の終了時点におけるバッファ消費量については、その前ページの処理の終了時点におけるバッファ消費量から当該各ページの処理が行われている期間におけるバッファ残量の回復量を減ずることによって求められる。
【0096】
以上より、ジョブJbの後処理の終了時点(ジョブJbの最終ページの処理の終了時点)におけるバッファ消費量を予め予測することができる(
図12のステップS230)。
図13で符号81を付した部分に示すようにジョブJbの後処理の終了時点におけるバッファ消費量は0となるので、
図13で符号82を付した部分に示すようにジョブJaの最終ページとジョブJbの先頭ページとの間にはダミーページは挿入されない。同様に、
図13で符号83を付した部分に示すようにジョブJcの後処理の終了時点におけるバッファ消費量は0となるので、
図13で符号84を付した部分に示すようにジョブJbの最終ページとジョブJcの先頭ページとの間にはダミーページは挿入されない。
【0097】
ところが、ジョブJb,Jcのページ数が200であるのに対してジョブJdのページ数は100であるので、
図13で符号85を付した部分に示すようにジョブJdの後処理の終了時点におけるバッファ消費量は1.50となる。従って、ジョブJcの最終ページとジョブJdの先頭ページとの間には、上式(1)によって求められる長さ(3.33m)のダミーページが挿入される(
図13で符号86を付した部分を参照)。但し、このような場合に各ジョブの後処理の終了時点におけるバッファ消費量に等しい長さ(上記の例では1.50m)のダミーページを挿入するようにしても良い。
【0098】
上述の処理によりダミーデータが挿入された印刷データに基づく印刷の結果は、
図14に示すようなものとなる。ジョブJcの最終ページとジョブJdの先頭ページとの間(符号76を付した部分)にのみ、3.33m分のダミーページが挿入されている。
【0099】
図15を参照しつつ、バッファ残量の変化について説明する。
図15に関し、ダミーページを全く挿入しない場合のバッファ残量の変化をA部に示し、本実施形態におけるバッファ残量の変化をB部に示している。
【0100】
まず、A部に着目する。ジョブの切り替わりの際には、待ち時間の発生に応じてバッファ残量は減少している。ジョブJbの処理期間の終了時点(時刻t23)およびジョブJcの処理期間の終了時点(時刻t25)には、バッファ残量はフルの状態にまで回復している。しかしながら、ジョブJdのページ数はジョブJbやジョブJcのページ数よりも少ないため、ジョブJdの処理期間の終了時点(時刻t27)には、バッファ残量はフルの状態にまで回復していない(
図15で符号77を付した部分を参照)。このことから、印刷対象のジョブにページ数の少ないジョブが多数含まれていると、印刷速度の低下が必要となる程度にまでバッファ残量が減少することが懸念される。上述したように、印刷速度の低下は印刷品質の低下を引き起こす。
【0101】
次に、B部に着目する。ジョブJaからジョブJbへの切り替わりの際およびジョブJbからジョブJcへの切り替わりの際には、待ち時間の発生に応じてバッファ残量は減少している。ジョブJbの処理期間の終了時点(時刻t23)およびジョブJcの処理期間の終了時点(時刻t25)には、バッファ残量はフルの状態にまで回復している。ジョブJcからジョブJdへの切り替わりの際には、待ち時間は発生するが、上述したようにジョブJcの最終ページとジョブJdの先頭ページとの間にダミーページが挿入されているので、バッファ残量は減少することなくフルの状態で維持される(
図15で符号78を付した部分を参照)。その後、ジョブJdからジョブJeへの切り替わりの際に待ち時間の発生に応じてバッファ残量は減少するが、ジョブJeの処理期間の終了時点(時刻t29)にはバッファ残量はフルの状態にまで回復している。このように、本実施形態においては、ジョブの切り替わり毎にダミーページが挿入されるわけではないが、印刷速度の低下が必要となる程度にまでバッファ残量が減少することはない。
【0102】
<2.3 効果>
本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様、印刷装置10が加減速印刷に対応していなくても丁合機63で待ち時間が発生することに起因する印刷品質の低下を抑制することのできる印刷システム1が実現される。また、本実施形態によれば、丁合機63で待ち時間が発生した後にバッファ残量がフルの状態に回復しないことが予測される場合にのみ、印刷データPDへのダミーデータの挿入が行われる。このため、上記第1の実施形態と比較して、損紙の発生が抑制される。
【0103】
<3.変形例>
以下、変形例について説明する。
【0104】
<3.1 第1の変形例>
上記各実施形態においては、印刷機本体200に含まれている各構成要素の動作を制御する制御部140にダミーデータ挿入部141が設けられていた。しかしながら、これには限定されず、
図16に示すように、ラスタライズ処理装置としてのRIPサーバ40にダミーデータ挿入部41を設けるようにしても良い。この場合、ダミーデータ挿入部41は、RIPサーバ40にて入稿データに対してRIP処理が施される際に、印刷データにダミーページを挿入するか否かを決定する。印刷データにダミーページを挿入する場合には、ダミーデータ挿入部41は、上記第1の実施形態あるいは上記第2の実施形態と同様の手順で待ち時間の計算やダミーページの印刷長の計算を行うことができる。本変形例においては、ダミーページが挿入された印刷データがRIPサーバ40から印刷装置10に送られる。従って、印刷装置10では上述したダミーデータ挿入処理を行う必要はない。
【0105】
<3.2 第2の変形例>
上記第1の実施形態では、複数のジョブに基づく連続印刷が実行される際、最後に印刷が実行されるジョブを除く各ジョブの最終ページが印刷される毎にダミーページが印刷されていた。それ故、連続印刷の実行中、
図11に示したようにバッファ残量はフルの状態で維持されていた。これを考慮すると、ウェブバッファ50が設けられていなくても、後処理装置(丁合機63など)で待ち時間が発生したときに印刷速度を低下させる必要性がなくなる。そこで、
図17に示すように、印刷装置10と後加工機群60との間にウェブバッファ50が設けられていない構成を採用することもできる。このような構成によれば、従来の構成に比較してコストが低減される。
【0106】
<3.3 第3の変形例>
上記各実施形態においては、印刷部24a,24bによって印刷されたダミーページは、シートカッター機61に設けられたダミーページ除去部610によって除去されていた。これに関し、ダミーページ除去部610によって除去されたダミーページを回収するための箱(以下、「廃棄用紙回収ボックス」という。)を設けるとともに当該廃棄用紙回収ボックスから印刷用紙(廃棄用紙)があふれることが予測されるときに警告メッセージを通知する機能を設けるようにしても良い。これを実現する構成について、
図18を参照しつつ以下に説明する。
【0107】
本変形例においては、シートカッター機61の近傍に、印刷済み印刷用紙のうちダミーページ除去部610によって除去されたダミーページ(すなわち、廃棄用紙)を蓄積する廃棄用紙回収ボックス611が設けられる。廃棄用紙回収ボックス611は、所定の容量を有している。また、廃棄用紙回収ボックス611の内部あるいは外部に、廃棄用紙回収ボックス611の残容量を検出する残容量センサ612が設けられる。さらに、印刷制御装置100の制御部140には、印刷データPDにダミーデータを挿入することによって廃棄用紙回収ボックス611の残容量が所定の閾値以下になると予測される場合に所定の警告メッセージを通知する警告通知部146が設けられる。このような構成において、残容量センサ612によって検出された残容量を表す検出信号Sは、残容量センサ612から警告通知部146へと送られる。警告通知部146では、その検出信号Sに基づいて、廃棄用紙回収ボックス611の残容量が所定の閾値以下になるか否かの予測が行われる。そして、廃棄用紙回収ボックス611の残容量が所定の閾値以下になると予測される場合に、警告通知部146は、例えば
図19に示すような警告画面88を印刷制御装置100の表示部123(
図3)に表示する。なお、本変形例においては、廃棄用紙回収ボックス611によって廃棄ダミーページ蓄積部が実現される。
【0108】
本変形例によれば、ダミーページ除去部610の周囲が廃棄後のダミーページ(廃棄用紙)で散らかった状態となることが防止される。
【0109】
<4.その他>
本発明は、上記実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では印刷速度の減速の必要性が生じるほどバッファ残量が少なくならないようにダミーデータを挿入する処理が行われていたが、「印刷速度の減速は許容するが印刷の停止は許容しない」という運用を採用する場合にも本発明を適用することができる。
【0110】
さらに、上記実施形態では、ダミーページには、ダミーページ識別用の記号として二次元コード(二次元バーコード)を印刷したが、ダミーページ識別用の記号は二次元コードには限定されない。例えば、サイズや濃度において識別可能なマーク(例えば、紙搬送方向または紙幅方向に長さが異なる矩形マーク)を通常の印刷ページとダミーページの各々に印刷するようにしてもよい。この場合には、ダミーページ除去部は、二次元コードリーダの代わりに、画像認識可能なスキャナ(画像読み取り部)を用いて、通常の印刷ページとダミーページとを識別すればよい。
【符号の説明】
【0111】
1…印刷システム
10…印刷装置
24a,24b…印刷部
40…RIPサーバ
50…ウェブバッファ
60…後加工機群
61…シートカッター機(断裁機)
63…丁合機(ブックブロック作成機)
100…印刷制御装置
140…制御部
141…ダミーデータ挿入部
142…搬送制御部
143…印刷制御部
144…乾燥制御部
200…印刷機本体
610…ダミーページ除去部
611…廃棄用紙回収ボックス
612…残容量センサ
JI…ジョブ情報
PD…印刷データ