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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】バルブ取付装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/06 20060101AFI20250418BHJP
   F16L 41/16 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
F16L41/06
F16L41/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021135428
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023030347
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391037814
【氏名又は名称】株式会社東京エネシス
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】大浦 仁
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-038886(JP,U)
【文献】特開2020-153452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/06
F16L 41/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管にバルブを取り付ける装置であって、
前記流体管の外周面に合わせた部分円筒凹面をなす当接面を有し、内室が前記当接面に達して開口が形成されたケーシングと、
前記バルブを有し、前記ケーシングに設けられた1又は複数のコネクタと、
前記当接面が前記流体管の外周面に宛がわれるようにして、前記ケーシングを前記流体管に固定するクランプと、
前記ケーシング内に収容されて保持され、かつ先端の穿孔刃物が前記開口から出没可能であり、かつ前記穿孔刃物とは反対側の接続端が駆動手段と接続される穿孔工具と、
を備え、前記クランプが、前記ケーシングと固定された穿孔側挟持体と、前記穿孔側挟持体との間に前記流体管を挟み付ける受け側挟持体と、これら挟持体どうしを連結するボルト及びナットを有し、前記ボルト又は前記ナットが何れか一方の挟持体に溶接によって固定され、
前記当接面には、前記開口を囲む環状の当接側シール部材が設けられ、
前記当接側シール部材が、前記ボルト及びナットのうち前記溶接されていないほうの締め付けによって厚み方向へ圧縮されて薄厚化されるクッションパッキンを含み、前記締め付けが必要量に達したとき、前記クッションパッキンが更に薄厚化可能であり、ひいては前記当接面における前記クッションパッキンの配置部分と前記外周面とが更に接近可能であることを特徴とするバルブ取付装置。
【請求項2】
流体管にバルブを取り付ける装置であって、
前記流体管の外周面に合わせた部分円筒凹面をなす当接面を軸線方向の一端部に有し、内室が前記当接面に達して開口が形成されたケーシングと、
前記バルブを有し、前記ケーシングの前記軸線方向に互いに離れて設けられた複数のコネクタと、
前記当接面が前記流体管の外周面に宛がわれるようにして、前記ケーシングを前記流体管に固定するクランプと、
前記ケーシング内に収容されて保持され、かつ先端の穿孔刃物が前記開口から出没可能であり、かつ前記穿孔刃物とは反対側の接続端が駆動手段と接続される穿孔工具と、
前記ケーシングの前記軸線方向の中間部の内周面に設けられ、前記穿孔工具に密着する環状の内部シール部材と
を備え、前記中間部の内部シール部材を挟んで前記開口側にも前記開口とは反対側にもコネクタが設けられていることを特徴とするバルブ取付装置。
【請求項3】
少なくとも1のコネクタよりも前記開口とは反対側のケーシングの内周面には、前記穿孔工具に密着する環状の内部シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ取付装置。
【請求項4】
前記ケーシングが、前記当接面及び少なくとも1のコネクタを含む筒状の第1ケーシング部と、前記第1ケーシング部の前記開口とは反対側に配置されて前記第1ケーシング部と分離可能に連結された筒状の第2ケーシング部とを有し、
前記穿孔工具が、前記第1ケーシング部から前記第2ケーシング部側へ引き抜き可能であり、かつ前記第2ケーシングには前記穿孔工具を駆動を許容するように保持する保持部が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のバルブ取付装置。
【請求項5】
前記第1ケーシング部と前記第2ケーシング部との間には、開通状態において前記穿孔工具の挿通を許容し、前記穿孔工具が引き抜かれたとき閉止可能な中間バルブが設けられていることを特徴とする請求項に記載のバルブ取付装置。
【請求項6】
前記ケーシングにおける前記開口とは反対側のヘッド端部に蓋が装着可能であるか、又は前記ケーシングにおける少なくとも1のコネクタよりも前記ヘッド端部側の中間部には、該中間部より更に前記ヘッド端部側の部分及び前記穿孔工具から分離されて、蓋が装着可能であることを特徴とする請求項1~に記載のバルブ取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管にバルブを取り付ける装置に関し、特に、放射性汚染水等の外部漏洩が厳しく規制された流体を流す流体管の配管ルートを変更したり内圧を抜いて切断、撤去したりするのに適したバルブ取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、福島第一原子力発電所においては、放射性汚染水を移送する流体管が数十キロメートルにわたって敷設されている。廃炉作業の進捗に合わせて、流体管を切断して撤去したりルート(流通経路)を変更したりしている。切断等を行う際は、管内の高圧の汚染水を床や地面にこぼすことなく排出する必要がある。現状では、流体管における切断しようとする箇所のまわりを何重もの漏洩防止カバーで囲むとともに、仮設の排水設備を設置して、切断作業を行っている。
特許文献1には、管を圧潰して閉塞した後、切断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-076604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記漏洩防止カバーを被せる作業は煩雑で時間を要する。また、流体管を切断した箇所から水が出始めたら、その出水流量を調整するのは困難であり、出水が終わるまで水抜き作業を中断できず、作業員を増員して長時間対応する必要がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、流体管内の流体を外部へ漏洩させることなく簡易に排出、ルート変更、出水流量調節等が可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、発明者は、鋭意研究考察を行なった結果、流体管の所定又は任意の箇所にバルブを取り付けて、流体管内の流体を排出、ルート変更、出水流量調節等を行なうことを着想した。本発明は、前記着想に基づいてなされたものであり、流体管にバルブを取り付ける装置であって、
前記流体管の外周面に合わせた部分円筒凹面をなす当接面を有し、内室が前記当接面に達して開口が形成されたケーシングと、
前記バルブを有し、前記ケーシングに設けられた1又は複数のコネクタと、
前記当接面が前記流体管の外周面に宛がわれるようにして、前記ケーシングを前記流体管に固定するクランプと、
前記ケーシング内に収容されて保持され、かつ先端の穿孔刃物が前記開口から出没可能であり、かつ前記穿孔刃物とは反対側の接続端が駆動手段と接続される穿孔工具と、
を備えたことを特徴とする。
【0006】
前記穿孔工具の駆動によって、流体管に孔を開け、その孔を通して、流体管とケーシング内とを連通させる。
好ましくは、前記バルブに排水管等の第2流体管を接続する。前記バルブを操作することで、流体管内の流体をケーシング及び第2流体管を介して排出したり、ルート変更したり、流量調節したりできる。排出工程の途中でバルブを閉じて、流体管内の流体の排出作業を中断することもできる。その後、バルブを開けて排出作業を再開することもできる。
【0007】
前記クランプが、前記ケーシングと固定された穿孔側挟持体と、前記穿孔側挟持体との間に前記流体管を挟み付ける受け側挟持体と、これら挟持体どうしを連結するボルト及びナットを有し、前記ボルト又は前記ナットが何れか一方の挟持体に固定されていることが好ましい。
ボルト及びナットの締め付け操作によって、クランプひいてはバルブ取付装置を流体管に取り付けることができる。ボルトを溶接しておくことで、ナットを嵌める前にボルトがクランプから脱落するおそれがなく、ナットを締め込む際はボルトを回り止めする必要が無い。したがって、バルブ取付装置の取り付け作業を簡易化でき、施工時間を大幅に短縮できる。よって、原子力発電所の廃炉作業等に適用した場合、作業員の被爆線量を低減できる。
【0008】
前記当接面には、前記開口を囲む環状の当接側シール部材が設けられ、前記当接側シール部材が、厚み方向へ圧縮可能なクッションパッキンを含むことが好ましい。
当接側シール部材によって、前記孔から出た流体が、流体管の外周面とバルブ取付装置との間から漏れ出るのを阻止できる。
当接側シール部材としてクッションパッキンを用いることによって、前記ボルト及びナットの締め付け量を厳密に管理しなくても、流体管の外周面とバルブ取付装置との間を確実にシールできる。
【0009】
少なくとも1のコネクタよりも前記開口とは反対側のケーシングの内周面には、前記穿孔工具に密着する環状の内部シール部材が設けられていることが好ましい。
内部シール部材によって、ケーシングの内周面と穿孔工具との間をシールでき、流体が、ケーシングの内周面と穿孔工具との間から漏れ出るのを阻止できる。
少なくとも1のコネクタは、ケーシングの軸線に沿って前記開口に最も近いコネクタを含む。
【0010】
前記ケーシングが、前記当接面及び少なくとも1のコネクタを含む筒状の第1ケーシング部と、前記第1ケーシング部の前記開口とは反対側に配置されて前記第1ケーシング部と分離可能に連結された筒状の第2ケーシング部とを有し、
前記穿孔工具が、前記第1ケーシング部から前記第2ケーシング部側へ引き抜き可能であり、かつ前記第2ケーシングには前記穿孔工具を駆動を許容するように保持する保持部が設けられていることが好ましい。
穿孔工具及び第2ケーシング部は、他の箇所でのバルブ取り付けに使い回すことができ、コストダウンを図ることができる。
【0011】
前記第1ケーシング部と前記第2ケーシング部との間には、開通状態において前記穿孔工具の挿通を許容し、前記穿孔工具が引き抜かれたとき閉止可能な中間バルブが設けられていることが好ましい。
先行後、穿孔工具を引き抜いて、中間バルブを閉じることで、流体漏洩を一層確実に防止できる。
【0012】
前記ケーシングにおける前記開口とは反対側のヘッド端部に蓋が装着可能であることが好ましい。蓋によって流体漏洩を一層確実に防止できる。
前記穿孔工具が、前記ヘッド端部から引き抜き可能であり、引き抜き後の前記ヘッド端部に前記蓋が装着可能であってもよい。
前記穿孔工具の前記接続端が、前記ケーシングにおける前記開口とは反対側のヘッド端部から突出されて、前記駆動手段と分離可能に接続され、前記ヘッド端部には、前記駆動手段が分離された前記接続端を収容する収容筒部を含む蓋が装着可能であってもよい。この場合、穿孔工具をケーシング内に残置したままでも、ヘッド端部に蓋をすることができる。
又は、前記ケーシングにおける少なくとも1のコネクタよりも前記ヘッド端部側の中間部には、該中間部より更に前記ヘッド端部側の部分及び前記穿孔工具から分離されて、蓋が装着可能であってもよい。
前記中間部より更に前記ヘッド端部側の部分及び前記穿孔工具は、他の箇所でのバルブ取り付けに使い回すことができ、コストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流体管内の流体を外部へ漏洩させることなく簡易に排出、ルート変更、出水流量調節などを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るバルブ取付装置を流体管に設置した状態で示す側面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う正面断面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う平面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿う、前記バルブ取付装置のケーシング、穿孔工具及び穿孔側挟持体の底面図である。
図5図5は、図2の円部Vの拡大断面図である。
図6図6(a)は、前記クランプの当接側シール部材を使用前の状態で示す断面図である。図6(b)は、前記当接側シール部材を使用状態で示す断面図である。
図7図7は、前記流体管に穿孔した状態を示す正面断面図である。
図8図8は、前記バルブ取付装置を、穿孔工具を引き抜いて蓋をした状態で示す正面断面図である。
図9図9は、前記バルブ取付装置を、穿孔工具を残置して蓋をした状態で示す正面断面図である。
図10図10は、前記バルブ取付装置を、第2ケーシング部及び穿孔工具を取り外して、第1ケーシング部に蓋をした状態で示す正面断面図である。
図11図11は、前記流体管の複数箇所にバルブ取付装置を設けた状態を示す側面図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係るバルブ取付装置を流体管に設置した状態で示す正面断面図である。
図13図13は、前記第2実施形態のバルブ取付装置を、穿孔工具を取り外して蓋をした状態で示す正面断面図である。
図14図14は、前記第2実施形態のバルブ取付装置を、第2ケーシング部及び穿孔工具を取り外して、中間バルブに蓋をした状態で示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図11)>
図1に示すように、例えば廃炉作業中の原子力発電所には、放射性汚染水(流体)を移送する流体管1が数十キロメートルにわたって敷設されている。流体管1の材質は、特に限定が無く、樹脂でもよく、金属でもよい。
廃炉作業の進捗に合わせて、流体管1を切断して撤去したりルート(流通経路)を変更したりするために、流体管1の所定又は任意の箇所にバルブ取付装置3が取り付けられている。
【0016】
図2に示すように、バルブ取付装置3は、ケーシング10と、クランプ20と、穿孔工具30を備えている。
ケーシング10は、流体管1と直交する筒状に形成されている。詳しくは、図2に示すように、ケーシング10は、流体管1に近い側の第1ケーシング部11と、流体管1から遠い側の第2ケーシング部12を含む。各ケーシング部11,12は、概略円筒形状に形成されている。これらケーシング部11,12が、互いに同一軸線上に一列に並んで対向端面どうしが突き当てられ、ボルト14によって連結されている。ボルト14を外すことで、ケーシング部11,12どうしが分離可能である。すなわち、ケーシング10は、軸方向(図2の上下方向)の中間部において分割可能である。図5に示すように、ケーシング部11,12の前記対向端面どうし間には、環状のシール材16が設けられている。
【0017】
図2に示すように、第1ケーシング部11における流体管1を向く端面は、当接面13を構成している。当接面13は、流体管1の円筒面をなす外周面に合わせた部分円筒凹面になっている。第1ケーシング部11の内室11bが、当接面13に達して、開口15を形成している。当接面13は、開口15を囲む環状になっている。
【0018】
図4に示すように、当接面13には、当接側シール部材41が貼り付けられている。当接側シール部材41は、例えば4本の真っ直ぐなシール部材を「井」型に組んだ四角形の環状に形成されている。当接側シール部材41が、円形の環状であってもよい。環状の当接側シール部材41が、開口15を囲んでいる。
【0019】
図6に示すように、当接側シール部材41は、クッションパッキン41aと、その両面に積層された粘着層41b,41cを含む。クッションパッキン41aは、厚み方向へ圧縮変形可能である。クッションパッキン41aにおける裏面に積層された裏側粘着層41bが当接面13に粘着されている。図6(a)に示すように、クッションパッキン41aにおける流体管1を向く表側面に積層された粘着層41cの表面には剥離紙41dが設けられている。図6(b)に示すように、流体管1に取り付けられた状態では、剥離紙41dが剥がされ、粘着層41cが流体管1の外周面に粘着されている。
粘着層41cを省略して、クッションパッキン41aが、流体管1の外周面に直接的に当たるようにしてもよい。
【0020】
第2ケーシング部12は、第1ケーシング部11よりもヘッド端側(開口とは反対側)に配置されている。第2ケーシング部12におけるヘッド端部(図2において上端部)には、環状のヘッドピース19が設けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように、ケーシング10の周壁には、1又は複数(ここでは3つ)のコネクタ51が設けられている。各コネクタ51は、ケーシング10の径方向へ突出する筒状に形成されている。各コネクタ51にバルブ52が設けられるとともに、流体管2が接続されている。3つ(複数)バルブ52付きコネクタ51は、互いにケーシング10の軸線方向(図2において上下)に離れて配置されている。
【0022】
これらバルブ52付きコネクタ51及び流体管2を互いに区別するときは、それぞれの符号にA,B,Cを付す。図2に示すように、下段(当接面側)及び中段の2つのコネクタ51A,51B及びバルブ52A,52Bは、第1ケーシング部11の周壁11aに設けられている。コネクタ51A,51Bの内部通路が第1ケーシング部10の内室11bに連なっている。バルブ52A,51Bによって、対応するコネクタ51A,51Bがそれぞれ開閉され、ないしは開度調節される。
【0023】
第2ケーシング部12の周壁12aには、上段のコネクタ51Cが設けられている。コネクタ52Cの内部通路が第2ケーシング部12の内室12bに連なっている。コネクタ51Cにバルブ52Cが設けられている。バルブ52Cによって、コネクタ51Cが開閉され、ないしは開度調節される。
【0024】
図3に示すように、3つのコネクタ51A,51B,51Cの軸線は、ケーシング10の周方向の互いに異なる角度へ向けられているが、本発明はこれに限られない。
なお、図1図2等におけるコネクタ51A,51B,51Cの向きは、図示の都合上、図3との整合を無視している。
【0025】
図2に示すように、ケーシング10にクランプ20が取り付けられている。クランプ20によって、ケーシング10が流体管1に固定され、当接面13が流体管1の外周面に宛がわれている。クランプ20は、一対をなす開閉可能な穿孔側挟持体21及び受け側挟持体22と、これら挟持体21,22どうしを閉状態に固定するボルト25及びナット26を含む。挟持体21,22が離間ないしは分離されることでクランプ20が開かれ、挟持体21,22どうしが合わさることでクランプ20が閉じられる。
以下、特に断らない限り、クランプ20は、閉状態であるものとする。
【0026】
図2に示すように、穿孔側挟持体21は、当接板21aと、突片21fを一体に有している。当接板21aは、半円状に形成されている。図4に示すように、当接板21aの中央部には、嵌合穴21cが形成されている。当接板21aの両端から突片21fが外方へ突出されている。第1ケーシング部11の当接面13を含む端部(図2において下端部)が、嵌合穴21cに差し込まれて、当接板21aにおける嵌合穴21cの周縁部に溶接されて接合されている。当接板21aの内面は、当接面13と段差無く連続して、当接面13の延長部分を構成している。当接側シール部材41が、当接面の一部としての当接板21aの内面に張り出していてもよい。
【0027】
図2に示すように、受け側挟持体22は、半円状の当接板22aと、その両端から外方へ突出された突片22fを一体に有している。一対の当接板21a,22aが、流体管1を上下両側から挟むようにして、流体管1の外周面にそれぞれ宛がわれている。互いに同じ側の突片21f,22fどうしが近接して対向している。これら突片21f,22fどうしが、ボルト25及びナット26によって連結されている。ボルト25の頭部25aは、突片21f,22fのうち好ましくは下側の突片22fに溶接されて固定されている。ボルト25の首下部25bは、上側の突片21fの挿通孔21gに通され、これにナット26がねじ込まれている。これによって、クランプ20が流体管1に固定されている。ひいては、ケーシング10が流体管1に固定されている。
【0028】
図2に示すように、ケーシング10内に穿孔工具30が収容されている。穿孔工具30は、シャフト31と、穿孔刃物32と、接続突起33(接続端)を含む。シャフト31は、真っ直ぐなロッド状に形成されて、ケーシング10の軸線上に配置されている。ケーシング10には、軸線方向に離れて2段の軸受61,62が設けられている。具体的には、第2ケーシング部12の軸方向の両端部に軸受61,62が設けられている。これら軸受61,62によって、シャフト31が、ケーシング10に対して回転可能かつ軸方向へ昇降可能に保持されている。軸受61,62は、穿孔工具30を、駆動を許容するように保持する保持部を構成している。好ましくは、図5に示すように、軸受61,62の外輪と内輪との上端部どうし間及び下端部どうし間には、それぞれ環状の軸受パッキン63(軸受けシール部材)が設けられている。
【0029】
図2に示すように、第1ケーシング部11の内室11bの内径は、シャフト31ひいては穿孔工具30の外径より十分に大きい。内室11bは、穿孔工具30による穿孔時に発生する切粉の捕集室となっている。
シャフト31の先端部(下端部)には、穿孔刃物32が設けられている。穿孔刃物32は、シャフト31と同軸の穿孔ドリルによって構成されている。図2及び図7に示すように、シャフト31の昇降に伴って、穿孔刃物32が開口15から出没可能である。
【0030】
図2に示すように、シャフト31の手元側端部(上端部)は、ケーシング10のヘッド端部(上端部)から突出されている。該シャフト31の手元側端部の外周部にストッパ34が設けられている。ストッパ34は、環状に形成されて、シャフト31から径方向へ突出されている。ストッパ34として、例えばスナップリングが用いられている。図7に示すように、穿孔工具30が下降されたとき、ストッパ34が、ケーシング10のヘッド端部に突き当たる。具体的には、ストッパ34は、ヘッドピース19内に入り込んで、軸受62の内輪に突き当たる。これによって、穿孔工具30の下降可能な高さ(先端方向への移動可能位置)が規制されている。ひいては、穿孔刃物32の開口15からの突出量が規制されている。
【0031】
図2に示すように、シャフト31の手元側端面には、接続突起33が設けられている。接続突起33は、シャフト31と同軸をなして、シャフト31から手元方向(図2において上方)へ突出されている。接続突起33には、電動ドリル本体4(駆動手段)が着脱可能に接続される。電動ドリル本体4の駆動によって、穿孔工具30がケーシング10に対して高速回転可能である。
【0032】
穿孔工具30は、ケーシング10における少なくとも第1ケーシング部11から上方(第2ケーシン部側)へ引き抜き可能である。好ましくは、図8に示すように、穿孔工具30は、ケーシング10のヘッド端部から上方へ引き抜くことで、ケーシング10から分離可能である。
【0033】
図2及び図5に示すように、ケーシング10内には、環状の内部シール部材42,43が設けられている。内部シール部材42,43が、シャフト31の外周面の全周にわたって密着されている。これによって、ケーシング10の内周面とシャフト31の外周面との間のクリアランスが液密にシールされている。内部シール部材42,43としては、オイルシール、ダストシール等のリップ付きシールないしはラビリンスシールが用いられている。
【0034】
図2に示すように、2つの内部シール部材42,43は、ケーシング10の軸線方向に離れている。具体的には、内部シール部材42,43は、第2ケーシング部12の軸方向の両端部の軸受61,62にそれぞれ近接して、軸受61,62より第2ケーシング部12の内側に設けられている。したがって、下段(中間部)の内部シール部材42は、コネクタ51A,51Bよりヘッド側(開口15側とは反対側)に配置されている。上段の内部シール部材43は、コネクタ51Cよりヘッド側(開口15側とは反対側)に配置されている。
【0035】
図8図10に示すように、バルブ取付装置3は、複数種類の蓋70,71,72を備えている。これら蓋70,71,72の1つが、状況に応じて選択されて、ケーシング10に装着されることで、ケーシング10が閉塞される。図8及び図10に示すように、平蓋70,71は、円板形状に形成されている。
【0036】
図9に示すように、凸蓋72は、蓋縁部73と、収容筒部74とを一体に有している。蓋縁部73は、環状に形成されている。蓋縁部73の中央部に収容筒部74が設けられている。収容筒部74は、下方へ開口されるとともに上端部が塞がった筒状に形成されており、蓋縁部73から上方へ突出されている。
【0037】
バルブ取付装置3は、流体管1の切断、撤去やルート変更に際して、次のようにして使用される。
流体管1の所定箇所又は任意の箇所を選んで、バルブ取付装置3を設置する。すなわち、クランプ20の一対の挟持体21,22を、互いに上下から流体管1を挟むようにして、流体管1の外周面に宛がう。このとき、ボルト25を挿通孔21gに通す。そして、ナット26をボルト25に締め込む。ボルト25は、受け側挟持体22に溶接されて固定されているから、脱落のおそれがなく、ナット26の締め込み時にはボルト25の頭部25aを回り止めしておく必要が無い。これによって、バルブ取付装置3を流体管1に簡単かつ迅速に取り付けることができる。また、狭隘な場所でも簡単に取り付け作業を行うことができる。例えば幅100mm程度のスペースがあれば、バルブ取付装置3を設置可能である。したがって、施工時間を大幅に短縮でき、作業員の被爆線量を低減できる。
【0038】
前記挟持体21を流体管1に宛がう際は、予め剥離紙41dを剥がしておく。これによって、当接側シール部材41の粘着層41cが、流体管1の外周面に粘着される。前記ナット26の締め込みによって、当接側シール部材41のクッションパッキン41aが厚み方向に圧縮される。ナット26の締め付け量を厳密に管理しなくても、流体管1の外周面とバルブ取付装置3との間を確実にシールできる。
【0039】
続いて、接続突起33に電動ドリル本体4を接続し、電動ドリル本体4の駆動によって、穿孔刃物33を高速回転させながら下降させて開口15から突出させる。これによって、流体管1に穿孔刃物33によるキリ孔1cが形成される。
穿孔工具30を下降させていくと、やがてストッパ34がケーシング10のヘッド端部(上端部)に突き当たり、それ以上の下降が阻止される。これによって、穿孔工具30の過度な押し込みを防止でき、流体管1におけるキリ孔1cとは180°反対側の管壁にも孔を開けてしまうのを回避できる。したがって、作業者の熟練度を要求されない。
その後、電動ドリル本体4を穿孔工具30の接続突起33から分離して撤去する。
穿孔時に発生した切粉は、第1ケーシング部11の内室11bに捕集される。これによって、切粉が第2流体管2に流入するのを防止できる。
【0040】
前記キリ孔1cを通して、流体管1とケーシング10の内室とが連通される。
バルブ52は開けておく。これによって、流体管1内の放射性汚染水(流体)をケーシング10の内室及び第2流体管2を介して排出したり、ルート変更したりできる。バルブ52の開度を調整することによって、流量調節することもできる。
当接側シール部材41によって、前記放射性汚染水(流体)が、流体管1の外周面とバルブ取付装置3との間から漏れ出るのを阻止できる。
【0041】
好ましくは、下段及び中段のバルブ52A,52Bのうち一方又は両方を開けることで、流体管1内の放射性汚染水(流体)を、第1ケーシング部10の内室11bから第2流体管2A,2Bを介して排出又はルート変更する。これによって、流体管1を水抜きできる。または、流体管1内の水圧を下げることができる。このため、前記放射性汚染水が、第1ケーシング部11の内室11bから上昇して第2ケーシング部11の内室12bへ流入するのを抑制できる。たとえ、放射性汚染水が、第1ケーシング部11の内室11bから更に上昇しようとしても、内部シール部材42によって第2ケーシング部11の内室12bへの流入を阻止できる。
【0042】
より好ましくは、上段のバルブ52Cをも開けておく、これによって、万が一、放射性汚染水が、第2ケーシング部11の内室12bに流入したときは、該放射性汚染水を第2流体管2Cへ導いて排出できる。かつ、内部シール部材43によって、前記放射性汚染水の更なる上昇を阻止できる。
これによって、放射性汚染水を外部へ一切漏洩させることなく、排出したりルート変更したりできる。
【0043】
流体管1からの前記放射性汚染水の排出が長時間かかるとき等は、途中でバルブ52を閉じて、排出作業を中断することもできる。その後、バルブ52を開けて排出作業を再開することもできる。
【0044】
図8に示すように、キリ孔1cの穿孔後、ないしは排出作業の中断時等には、必要に応じて、ケーシング10のヘッド端部(上端部)に平蓋70を設ける。その際は、先ず、穿孔工具30をケーシング10の上方へ引き抜く。また、ヘッドピース19を外す。該ヘッドピース19に代えて、平蓋70をケーシング10のヘッド端部にボルト締めによって取り付ける。これによって、ヘッド端部を閉塞することができる。
引き抜いた穿孔工具30は、他の箇所の穿孔ひいてはバルブ取り付け作業に使い回すことができる。
【0045】
穿孔工具30をバルブ取付装置3の外部に出すのを避けたいときは、平蓋70(図8)に代えて、図9に示すように、凸蓋72を用いる。この場合、穿孔工具30をケーシング10から引き抜くことなく、ヘッドピース19だけを取り外す。該ヘッドピース19に代えて、凸蓋72ケーシング10のヘッド端部に取り付ける。すなわち、電動ドリル本体4から分離された接続突起33を収容筒部74に収容しながら、凸蓋72をヘッド端部に被せる。該凸蓋72の蓋縁部73をヘッド端部にボルト締めする。これによって、穿孔工具30をケーシング10内に残置したままで、ヘッド端部を閉塞できる。
【0046】
図10に示すように、第2ケーシング部12を穿孔工具30と共に、第1ケーシング部11から分離してもよい。分離後の第1ケーシング部11における第2ケーシング部側端部(ケーシング10における少なくとも1のコネクタ51よりもヘッド端部側の中間部)には、平蓋71を装着して閉塞する。平蓋71としては、平蓋70と同じものを用いてもよい。
【0047】
図11に示すように、分離した第2ケーシング部12(前記中間部より更にヘッド端部側の部分)及び穿孔工具30は、流体管1の他の箇所での穿孔及びバルブ取り付けに使い回すことができる。これによって、流体管1の管軸方向に離れた複数箇所にバルブ52を取り付けることができる。
比較的高価な穿孔工具30や、内部シール部材42,43及び軸受61,62を含む第2ケーシング部12を、複数箇所のバルブ取り付け作業に使い回すことで、コストダウンを図ることができる。
【0048】
前記のようにして、流体管1の内部の放射性汚染水を排出し、ないしは内圧を十分に下げた後、流体管1を切断して、撤去したりルート変更したりする。これによって、切断時における放射性汚染水の飛散を確実に回避できる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図12図14)>
図12に示すように、第2実施形態に係るバルブ取付装置3Bにおいては、ケーシング10の第1ケーシング部11と第2ケーシング部12との間に中間バルブ80が介在されている。中間バルブ80は、手動式のゲートバルブによって構成されている。
【0050】
詳しくは、中間バルブ80は、弁箱81と、弁体82と、弁棒83と、ハンドル84を備えている。弁箱81は、上下両端部が開口された概略円形の箱状に形成されている。弁箱81の下端部が、環状の連結ピース17を介して、第1ケーシング部11とボルト締めによって連結されている。弁箱81の上端部が、環状の連結ピース18を介して、第2ケーシング部12とボルト締めによって連結されている。
なお、バルブ取付装置3Bにおいては、連結ピース18に内部シール部材42が設けられている。ヘッド端部側の内部シール部材43(図2参照)は省略されているが、第2ケーシング部12に内部シール部材43を設けてもよい。
【0051】
弁箱81の内部に弁体82が収容されている。弁体82は、弁棒83に連結されて支持されている。弁棒82は、ケーシング10の軸方向と直交する方向へ延びて、弁箱81から突出され、その突出端にハンドル84が設けられている。ハンドル84を回すことによって、弁棒83ひいては弁体82が前記直交する方向へ進退され、弁体82が弁箱81の内面の座部85に離着座される。これによって、中間バルブ80が開閉される。
【0052】
図12に示すように、離座状態の弁体82は、穿孔工具30と干渉されることがなく、開通状態の中間バルブ80は、穿孔工具30の挿通を許容している。これによって、穿孔工具30を駆動して、流体管1に穿孔することができる。
【0053】
図13に示すように、例えば、排出作業の中断等のためにケーシング10のヘッド端部を塞ぐ際は、穿孔工具30を引き抜く。これによって、弁体82を弁座85に着座させて、中間バルブ80を閉止できる。ケーシング10のヘッド端部(上端部)には、蓋70を設ける。第2実施形態によれば、蓋70に加えて、中間バルブ80を閉じることで、放射性汚染水(流体)の漏洩を一層確実に防止できる。
【0054】
図14に示すように、穿孔工具30と共に第2ケーシング部12及び連結ピース18を、中間バルブ80から分離してもよい。この場合、分離後の中間バルブ80における第2ケーシング部側端部(ケーシング10における少なくとも1のコネクタ51よりもヘッド端部側の中間部)に平蓋71を設けることによって閉塞する。
分離した第2ケーシング部12及び連結ピース18(前記中間部より更にヘッド端部側の部分)、並びに穿孔工具30は、第1実施形態と同様に、他の箇所でのバルブ取り付けに使い回すことができる。
【0055】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、バルブ取付装置におけるバルブ52付きコネクタ51の数は、3つに限らず、1つだけでもよく、2つでもよく、4つ以上でもよい。第1ケーシング部11には、開口15の直近のバルブ52A付きコネクタ51Aを含む少なくとも1のバルブ付きコネクタが設けられていればよい。
クランプ20においては、ナット26が挟持体21,22の何れか一方に溶接等によって固定されていてもよく、該ナット26に対してボルト25を回して締め込むことにしてもよい。挟持体21,22の何れか一方に、ナットとしての雌ネジ孔が形成されていてもよい。
本バルブ取付装置を、流体管におけるU字状に屈曲する部分の下端部に設けて、ドレン管として利用することも可能である。
流体管内の流体は、気体であってもよい。
ケーシングは、筒状に限らず、箱状であってもよい。
ケーシングは、2段に限らず、1段でもよく、3段以上のケーシング部を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば原子力発電所の廃炉作業に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 流体管
1c キリ孔(孔)
2,2A~2C 排水管
3,3B バルブ取付装置
4 電動ドリル本体
10 ケーシング
11 第1ケーシング部
11a 周壁
11b 内室
12 第2ケーシング部
12a 周壁
12b 内室
13 当接面
15 開口
20 クランプ
21 穿孔側挟持体
21a 当接板
21c 嵌合穴
21f 突片
21g 挿通孔
22 受け側挟持体
22f 突片
25 ボルト
25a 頭部
25b 首下部
26 ナット
30 穿孔工具
32 穿孔刃物
33 接続突起(接続端)
34 ストッパ
41 当接側シール部材
41a クッションパッキン
41b,41c 粘着層
41d 剥離紙
42,43 内部シール部材
51,51A~51C コネクタ
52,52A~52C バルブ
61,62 軸受
63 軸受パッキン(軸受シール部材)
70,71 平蓋(蓋)
72 凸蓋(蓋)
73 蓋縁部
74 収容筒部
80 中間バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14