(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20250418BHJP
【FI】
B65D47/34 100
(21)【出願番号】P 2021162060
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-179381(JP,A)
【文献】特開2001-002156(JP,A)
【文献】特開2000-024561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0030829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体の前方に設けられ、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、
を備え、
前記噴出器本体は、
上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔に向けて流通させるトリガー機構と、
前記縦供給筒部及び前記ノズル部材の間に設けられるとともに、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う第1軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記第1軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、前記第1軸方向のうちの他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、を備え、
前記貯留シリンダ内が前記噴出孔を通じて外部に開放された開放状態と、前記噴出孔を通じた前記貯留シリンダ内と外部との連通が遮断された遮断状態と、に切り替える開閉機構を備え
、
前記噴出器本体は、前記貯留シリンダから前記ノズル部材に向けて延びる射出筒部を備え、
前記開閉機構は、
前記射出筒部内に連通可能な第1連通口、及び前記噴出孔に連通する第2連通口を有し、前記射出筒部及び前記ノズル部材間を接続する接続筒部と、
前記第1連通口を開閉可能な弁体と、を備えているトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
前記接続筒部は、前記ノズル部材に固定されるとともに、前記射出筒部の中心軸線に沿う第2軸方向に移動可能に構成され、
前記弁体は、前記射出筒部に対する前記接続筒部及び前記ノズル部材の前記第2軸方向の移動に伴い、前記第1連通口を開閉する請求項
1に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
前記開閉機構は、前記射出筒部の中心軸線回りに回転可能に前記噴出器本体に設けられた操作部を備え、
前記接続筒部及び前記ノズル部材は、前記操作部の回転操作に伴い前記操作部に対して前記第2軸方向に移動可能に構成され、
前記操作部は、前記開放状態から前記遮断状態への前記接続筒部及び前記ノズル部材の前記第2軸方向での移動を規制する規制部を備えている請求項
2に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体の前方に設けられ、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、
を備え、
前記噴出器本体は、
上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔に向けて流通させるトリガー機構と、
前記縦供給筒部及び前記ノズル部材の間に設けられるとともに、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う第1軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記第1軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、前記第1軸方向のうちの他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、を備え、
前記貯留シリンダ内が前記噴出孔を通じて外部に開放された開放状態と、前記噴出孔を通じた前記貯留シリンダ内と外部との連通が遮断された遮断状態と、に切り替える開閉機構を備え、
前記貯留シリンダには、前記噴出孔に連通する連通孔が形成され、
前記貯留プランジャは、前記貯留シリンダに対する前記第1軸方向の移動に伴い、前記連通孔を開閉可能に設けられ、
前記貯留プランジャには、前記連通孔を閉塞した状態で、前記貯留シリンダ内と前記噴出孔内とを連通させる連通流路が形成されてい
るトリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式液体噴出器として、上下方向に延びる縦供給筒部と、前方に向けて液体を噴出する噴出孔を有するノズル部材と、縦供給筒部内の液体を噴出孔に向けて流通させるトリガー機構と、を備える構成が開示されている(例えば、下記特許文献1参照)。トリガー機構は、縦供給筒部内に連通するシリンダと、トリガー部の前後動に伴いシリンダの内周面上を前後方向に摺動するピストンと、を備えている。
この構成によれば、トリガー部を後方に引くと、ピストンによってシリンダ内が加圧されることで、シリンダ内の液体が縦供給筒部内を噴出孔に向けて流れる。これにより、液体が噴出孔を通じて噴出される。一方、トリガー部が前方に復帰する過程でシリンダ内が減圧されることで、容器体内の液体が縦供給筒部内に吸い上げられる。縦供給筒部内に吸い上げられた液体は、シリンダ内に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、一度のトリガー部の操作に対し、トリガー部(ピストン)のストロークに応じた噴出量しか液体を噴出できなかった。したがって、大量の液体を噴出する点で未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、大量の液体を噴出できるトリガー式液体噴出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
本開示の一態様に係るトリガー式液体噴出器は、液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体の前方に設けられ、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、上下方向に延在し、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔に向けて流通させるトリガー機構と、前記縦供給筒部及び前記ノズル部材の間に設けられるとともに、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う第1軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記第1軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、前記第1軸方向のうちの他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、を備え、前記貯留シリンダ内が前記噴出孔を通じて外部に開放された開放状態と、前記噴出孔を通じた前記貯留シリンダ内と外部との連通が遮断された遮断状態と、に切り替える開閉機構を備えている。
【0007】
本態様によれば、貯留シリンダを遮断状態にした状態でトリガー部を操作することで、貯留シリンダ内に液体を貯留することができる。そして、貯留シリンダ内に液体を貯留した後、貯留シリンダ内を開放状態とすることで、トリガー部のストロークに応じた噴出量以上の液体を噴出することができる。その結果、大量の液体を噴出できる。
【0008】
上記態様のトリガー式液体噴出器において、前記噴出器本体は、前記貯留シリンダから前記ノズル部材に向けて延びる射出筒部を備え、前記開閉機構は、前記射出筒部内に連通可能な第1連通口、及び前記噴出孔に連通する第2連通口を有し、前記射出筒部及び前記ノズル部材間を接続する接続筒部と、前記第1連通口を開閉可能な弁体と、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、開閉機構が貯留シリンダとノズル部材との間に設けられているので、貯留シリンダが遮断状態にあるときに液体が噴出孔まで到達するのを抑制できる。これにより、貯留シリンダが遮断状態にあるときに、不意に液体が噴出するのを抑制できる。
【0009】
上記態様のトリガー式液体噴出器において、前記接続筒部は、前記ノズル部材に固定されるとともに、前記射出筒部の中心軸線に沿う第2軸方向に移動可能に構成され、前記弁体は、前記射出筒部に対する前記接続筒部及び前記ノズル部材の前記第2軸方向の移動に伴い、前記第1連通口を開閉することが好ましい。
本態様によれば、貯留シリンダの開放状態及び遮断状態でノズル部材の第2軸方向での位置が異なるので、貯留シリンダの開放状態及び遮断状態を判断し易くなる。
【0010】
上記態様において、前記開閉機構は、前記射出筒部の中心軸線回りに回転可能に前記噴出器本体に設けられた操作部を備え、前記接続筒部及び前記ノズル部材は、前記操作部の回転操作に伴い前記操作部に対して前記第2軸方向に移動可能に構成され、前記操作部は、前記開放状態から前記遮断状態への前記接続筒部及び前記ノズル部材の前記第2軸方向での移動を規制する規制部を備えていることが好ましい。
本態様によれば、規制部によって接続筒部及びノズル部材の第2軸方向への移動を規制することで、開放状態を維持したままトリガー操作を行うことができる。この場合、液体の大量噴出以外の噴出モード(通常噴出モード、連続噴出モード等)での噴出も可能にすることができ、利便性を向上させることができる。
【0011】
上記態様のトリガー式液体噴出器において、前記貯留シリンダには、前記噴出孔に連通する連通孔が形成され、前記貯留プランジャは、前記貯留シリンダに対する前記第1軸方向の移動に伴い、前記連通孔を開閉可能に設けられ、前記貯留プランジャには、前記連通孔を閉塞した状態で、前記貯留シリンダ内と前記噴出孔とを連通させる連通流路が形成されていることが好ましい。
本態様によれば、貯留シリンダを開放状態にした上で、トリガー部を操作することで、縦供給筒部を流れる液体が連通流路を通じて噴出孔から噴出される。これにより、トリガー部のストロークに応じた量の液体を噴出することもできる。その結果、使い勝手を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大量の液体を噴出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るトリガー式液体噴出器の縦断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るトリガー式液体噴出器の横断面図である。
【
図4】第1実施形態に係るトリガー式液体噴出器の動作説明図である。
【
図5】第1実施形態に係るトリガー式液体噴出器の動作説明図である。
【
図6】第1実施形態に係るトリガー式液体噴出器の動作説明図である。
【
図7】第2実施形態に係るトリガー式液体噴出器の縦断面図である。
【
図8】第2実施形態に係るトリガー式液体噴出器の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、トリガー式液体噴出器1が容器体Aに取り付けられた噴出容器を例にして説明する。
図1に示すトリガー式液体噴出器1は、噴出器本体2と、液体を噴出する噴出孔3を有し、噴出器本体2に取り付けられたノズル部材4と、噴出器本体2に取り付けられるとともに、噴出孔3を通じた液体の噴出及び遮断を切り替える開閉機構5と、噴出器本体2を覆うカバー体Cと、を備えている。
【0015】
噴出器本体2は、縦供給筒部10と、装着キャップ11と、連絡筒12と、貯留ポンプ部13と、射出筒部14と、主ポンプ部15を有するトリガー機構16と、ジョイント部17と、を有している。
【0016】
本実施形態では、縦供給筒部10の中心軸線を軸線Oと呼ぶ。軸線Oに沿う方向を上下方向とし、上下方向において、容器体A側を下側とし、その反対側を上側とする。上下方向から見て、軸線Oに交差する一方向を前後方向L1と呼び、上下方向及び前後方向L1の双方に直交する方向を左右方向L2と呼ぶ。前後方向L1において、ノズル部材4側を前側とし、その反対側を後側とする。
【0017】
縦供給筒部10は、主ポンプ部15によって容器体A内から吸い上げられる液体が流通する。縦供給筒部10は、上方に向かうに従い径が縮小する多段筒状に形成されている。具体的に、縦供給筒部10は、上方に位置する小径部10aと、段差部10bを介して小径部10aの下方に連なる大径部10cと、を備えている。なお、縦供給筒部10は、二重筒状に形成されている。
【0018】
大径部10cには、径方向(上下方向から見て軸線Oに交差する方向)の外側に張り出すフランジ部10dが設けられている。
小径部10a内には、ボール弁21が設けられている。ボール弁21は、小径部10aに設けられた下弁座部10fに対し、下弁座部10fの上方から接離可能に設けられている。ボール弁21は、小径部10a内を通じた容器体A内と主ポンプ部15との間の連通及び遮断を切り替える。具体的に、ボール弁21は、主ポンプ部15(後述する主シリンダ51)による加圧時に容器体A内と主ポンプ部15との連通を遮断するとともに、主ポンプ部15による減圧時に容器体A内と主ポンプ部15との連通を許容する逆止弁とされている。
【0019】
縦供給筒部10には、パイプ23が設けられている。パイプ23は、大径部10cの内側を通じて小径部10a内に下方から嵌め込まれている。パイプ23は、トリガー式液体噴出器1が容器体Aに装着された状態において、容器体A内を下方に延びている。
【0020】
装着キャップ11は、上下方向に延びる筒状に形成されている。装着キャップ11は、容器体Aのうち口部A1の上端開口縁との間に、パッキンを介してフランジ部10dを挟み込んだ状態で、口部A1に着脱可能に締め付けられる。なお、装着キャップ11と口部A1との固定方法は、ねじ以外の方法(例えば、嵌合等)であってもよい。
【0021】
連絡筒12は、小径部10aの上端部から前方に延びている。連絡筒12の前端開口部には、閉塞栓28が装着されている。閉塞栓28は、連絡筒12の前端開口部を閉塞している。
小径部10a内において、ボール弁21よりも上方に位置する部分には、貯留弁29が設けられている。貯留弁29は、小径部10aに設けられた上弁座部10gに対し、上弁座部10gの上方から接離可能に設けられている。貯留弁29は、連絡筒12及び縦供給筒部10を通じた主ポンプ部15と貯留ポンプ部13との連通及び遮断を切り替える。具体的に、貯留弁29は、主ポンプ部15の加圧時に縦供給筒部10から貯留ポンプ部13(後述する貯留シリンダ31)内への液体の供給を許容するとともに、貯留ポンプ部13から縦供給筒部10内への液体の流出を規制する逆止弁とされている。
【0022】
貯留ポンプ部13は、貯留シリンダ31と、貯留プランジャ32と、付勢部材33と、を備えている。
貯留シリンダ31は、縦供給筒部10の上方に設けられている。貯留シリンダ31は、前端部に位置する前壁部31aと、前壁部31aの外周縁から後方に延びるシリンダ筒31bと、を有し、後方に開口する有頂筒状に形成されている。本実施形態では、貯留シリンダ31(シリンダ筒31b)の中心軸線を軸線O1と呼ぶ。本実施形態において軸線O1は、前後方向L1に延びている。すなわち、本実施形態において前後方向L1は、軸線O1に沿う軸方向(第1軸方向)に相当する。本実施形態において後側は、軸線O1に沿う軸方向のうちの一方側に相当する。また、本実施形態において前側は、軸線O1に沿う軸方向のうちの他方側に相当する。但し、軸線O1に沿う軸方向は、前後方向L1と一致していなくてもよい。
【0023】
シリンダ筒31bの前端部及び連絡筒12の前端部には、供給孔31cが形成されている。供給孔31cは、シリンダ筒31bの下部及び連絡筒12の上部を上下方向に貫通している。供給孔31cは、貯留シリンダ31内と連絡筒12内とを連通させている。なお、シリンダ筒31bの後端開口部には、ばね受部材35が嵌め込まれている。
前壁部31aには、前壁部31aを前後方向L1に貫通する連通孔31dが形成されている。連通孔31dは、軸線O1と同軸に配設されている。
【0024】
貯留プランジャ32は、貯留シリンダ31内を前後方向L1に移動可能に設けられている。貯留プランジャ32は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。具体的に、貯留プランジャ32は、前端部に位置する閉塞壁32aと、閉塞壁32aの外周縁から後方に延びる摺動筒32bと、を有し、後方に開口する有頂筒状に形成されている。貯留プランジャ32は、摺動筒32bの外周面がシリンダ筒31bの内周面上を摺動した状態で、貯留シリンダ31内を前後動することで、閉塞壁32aが前壁部31aに対して後方から接離する。
【0025】
閉塞壁32aは、前後方向L1から見て軸線O1と同軸の円板状に形成されている。閉塞壁32aは、第1径方向(前後方向L1から見て軸線O1に交差する方向)において、外周部に位置する対向部32a1と、中央部に位置する膨出部32a2と、を備えている。
【0026】
図2に示すように、対向部32a1は、前壁部31aに対して前後方向L1に向かい合っている。対向部32a1には、逃げ溝(連通流路)32a3が形成されている。逃げ溝32a3は、対向部32a1の前面において、軸線O1に対して放射状に形成されている。
膨出部32a2は、対向部32a1に対して前方に向けて膨出している。膨出部32a2は、前方に向かうに従い外径が漸次縮小するテーパ状に形成されている。膨出部32a2は、対向部32a1が前壁部31aに当接した状態で、連通孔31dの開口縁に当接している。膨出部32a2の外周面には、連通溝(連通流路)32a4が形成されている。連通溝32a4は、膨出部32a2の外周面上を前後方向L1に延びている。連通溝32a4の前端開口部は、連通孔31d内で開口している。連通溝32a4の後端開口部は、逃げ溝32a3に連通している。すなわち、連通溝32a4は、閉塞壁32aが前壁部31aに当接した状態(連通孔31dを閉塞した状態)において、貯留シリンダ31内と射出筒部14内とを常時連通させている。なお、連通溝32a4は必須の構成ではない。
【0027】
図1に示すように、付勢部材33は、貯留プランジャ32の後方に設けられている。付勢部材33は、貯留プランジャ32とばね受部材35との間に介在して、貯留プランジャ32を前方に向けて付勢している。
【0028】
射出筒部14は、前壁部31aから前方に向けて延びている。射出筒部14内は、連通孔31dを通じて貯留シリンダ31内に連通可能に構成されている。本実施形態において、射出筒部14の中心軸線を軸線O2と呼ぶ。軸線O2は、軸線O1と平行に前後方向L1に延びている。但し、軸線O2は、軸線O1と同軸上に配置されていてもよい。また、軸線O2に沿う軸方向(第2軸方向)は、前後方向L1と一致していなくてもよい。
【0029】
射出筒部14の後部には、ばね座14aが設けられている。ばね座14aは、射出筒部14の内周面から第2径方向(前後方向L1から見て軸線O2に交差する方向)の内側に向けて突出するとともに、前後方向L1に延びている。射出筒部14の前部には、連通溝14bが形成されている。連通溝14bは、射出筒部14の内周面上で開口するとともに、前後方向L1に延びている。
【0030】
図2に示すように、ジョイント部17は、噴出器本体2及びノズル部材4同士、並びに噴出器本体2及び開閉機構5同士を連結する。ジョイント部17は、ベース部17aと、後部取付筒17bと、前部取付外筒17cと、前部取付内筒17dと、を備えている。
ベース部17aは、射出筒部14の前方において、軸線O2と同軸に配置された環状に形成されている。
後部取付筒17bは、ベース部17aの外周部分から後方に向けて延びている。後部取付筒17bは、射出筒部14の周囲を取り囲む装着筒40内に嵌め込まれている。
【0031】
前部取付外筒17cは、ベース部17aの外周部分から前方に向けて延びている。
前部取付内筒17dは、ベース部17aのうち、前部取付外筒17cに対して第2径方向の内側に位置する部分から前方に向けて延びている。
【0032】
図1に示すように、トリガー機構16は、主ポンプ部15と、トリガー部50と、を備えている。
主ポンプ部15は、トリガー部50の操作(後方に引く操作)に応じて容器体A内の液体の貯留及び圧送を行う。主ポンプ部15は、主シリンダ51と、主ピストン52と、を備えている。
主シリンダ51は、縦供給筒部10のうち小径部10aの前方に設けられている。主シリンダ51は、前方に向けて開口する有底筒状に形成されている。具体的に、主シリンダ51は、シリンダ筒51aと、後壁部51bと、ピストンガイド51cと、連通筒51dと、を備えている。
【0033】
シリンダ筒51aは、前後方向L1に沿うポンプ軸線O3を中心とする筒状に形成されている。シリンダ筒51aは、縦供給筒部10から前方に向けて延びる取付筒56に前方から嵌め込まれている。なお、取付筒56は、ポンプ軸線O3と同軸に配置され、前後方向L1に延びている。以下の説明において、前後方向L1から見てポンプ軸線O3に交差する方向をポンプ径方向という場合がある。
【0034】
後壁部51bは、シリンダ筒51aの後端開口部を閉塞している。
ピストンガイド51cは、後壁部51bのうちポンプ軸線O3上に位置する部分から前方に突出する筒状に形成されている。
連通筒51dは、後壁部51bの外周部分(ピストンガイド51cよりも上方に位置する部分)から後方に向けて突出している。連通筒51dの後端部は、小径部10aのうち、ボール弁21よりも上方に位置する部分に差し込まれている。連通筒51dの後端開口部は、縦供給筒部10内で開放されている。すなわち、主シリンダ51内と縦供給筒部10内とは、連通筒51dを通じて連通している。
【0035】
主ピストン52は、前後方向L1に移動可能に主シリンダ51内に設けられている。主ピストン52は、ピストン本体部52aと、摺動筒部52bと、を備えている。
ピストン本体部52aは、ポンプ軸線O3を中心とする有頂筒状に形成されている。ピストン本体部52a内には、ピストンガイド51cがピストン本体部52aの後方から挿入されている。ピストン本体部52aとピストンガイド51cとの間には、付勢部材55が介在している。付勢部材55は、ピストン本体部52aを介して主ピストン52を前方に向けて付勢している。これにより、主ピストン52は、ピストン本体部52aがピストンガイド51cに案内された状態で、前方付勢状態で前後方向L1に移動可能に構成されている。
【0036】
摺動筒部52bは、ピストン本体部52aの後端部に連なっている。摺動筒部52bは、ポンプ軸線O3と同軸に配置された筒状に形成されている。摺動筒部52bは、ピストン本体部52aをポンプ径方向の外側から取り囲んでいる。摺動筒部52bは、シリンダ筒51aの内周面に密接している。摺動筒部52bは、主シリンダ51に対する主ピストン52の前後動に伴い、シリンダ筒51aの内周面上を摺動する。
【0037】
トリガー部50は、縦供給筒部10の前方において、下方に向かうに従い前方に延びている。トリガー部50の上端部は、装着筒40又はジョイント部17に対して左右方向L2に沿う軸線回りに回動可能に支持されている。トリガー部50のうち、上下方向の中間部には、ピストン本体部52aの前端部が接続されている。したがって、主ピストン52は、トリガー部50の後方への回動に伴い、主シリンダ51に対して後方に移動する。
【0038】
図2に示すように、開閉機構5は、噴出孔3を通じた貯留シリンダ31の内外の連通及び遮断を切り替える。具体的に、開閉機構5は、弁部材60と、第1操作部64と、第2操作部(操作部)65と、を備えている。
【0039】
弁部材60は、射出筒部14とノズル部材4との間に設けられている。弁部材60は、接続筒部61と、ガイド部材62と、弁体63と、を備えている。
接続筒部61は、射出筒部14内に前後方向L1に移動可能に設けられている。接続筒部61は、前方に向けて開口する有底筒状に形成されている。接続筒部61の後端部は、射出筒部14の前端開口部を通じて射出筒部14内に挿入されている。この場合、接続筒部61の前端部は、前部取付内筒17dよりも前方に突出している。接続筒部61の後端部には、ばね座61aが形成されている。ばね座61aは、接続筒部61の周壁部から第2径方向の外側に張り出している。接続筒部61のばね座61a、及び射出筒部14のばね座14aとの間には、付勢部材68が介在している。付勢部材68は、接続筒部61を前方に向けて付勢している。
【0040】
接続筒部61には、周溝61cが形成されている。周溝61cは、接続筒部61の周壁部のうち、ばね座61aよりも前方に位置する部分を軸線O2回りの全周に亘って延びている。周溝61c内において、左右方向L2の両側に位置する部分には、連通口61bが形成されている。連通口61bは、周溝61cの底壁(接続筒部61の周壁部)を左右方向L2に貫通している。接続筒部61内と射出筒部14内とは、連通口61b及び連通溝14bを通じて連通可能になっている。
【0041】
ガイド部材62は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。ガイド部材62の頂壁部には、頂壁部を前後方向L1に貫通する通過孔62aが形成されている。ガイド部材62は、通過孔62aを通じて接続筒部61が貫通した状態で、射出筒部14に装着されている。
【0042】
弁体63は、射出筒部14に対する接続筒部61の前後動に伴い、連通口61bを開閉する。弁体63は、前後方向L1に弾性変形可能な円環状に形成されている。弁体63は、射出筒部14の前端開口縁とガイド部材62の頂壁部との間に挟み込まれている。具体的に、弁体63は、射出筒部14の前端開口縁から第2径方向の内側に向けて突出している。弁体63における径方向の内側端部は、接続筒部61が初期位置にある状態において、周溝61c内に嵌まり込むことで連通口61bを閉塞している。これにより、弁体63は、連通口61bを通じた接続筒部61内及び射出筒部14内の連通を遮断している。一方、弁体63は、接続筒部61が初期位置に対して後方に移動するのに伴い、周溝61c内から離脱することで連通口61bから開放する。これにより、連通口61b及び連通溝14bを通じて、接続筒部61内と射出筒部14内とが連通する。なお、弁体63は、周溝61c内に進退することで連通口61b内を開閉する構成に限られない。弁体63は、例えば接続筒部61の外周面に対して接離することで、連通口61bを開閉する構成であってもよい。
【0043】
本実施形態において、貯留プランジャ32の前方であって、貯留シリンダ31と貯留プランジャ32とで囲まれた空間、及び射出筒部14内であって、接続筒部61よりも後方に位置する空間は、貯留空間36として機能する。貯留空間36は、供給孔31cを通じて連絡筒12内に連通する一方、連通口61bを通じて接続筒部61内に連通可能に構成されている。本実施形態において、主ポンプ部15の最大容積(トリガー部50が初期位置にあるときの主シリンダ51内の容積)は、貯留空間36の最大容積(貯留プランジャ32が最後端位置にあるときの容積)よりも小さく設定されている。なお、トリガー部50の初期位置とは、主ピストン52が付勢部材55の復元力によって最前進位置に戻り切った状態のことをいう。
【0044】
本実施形態では、射出筒部14に対する接続筒部61の前後動により、連通口61bが弁体63によって開閉されることで、貯留空間36が開放状態と遮断状態とに切り替えられる。遮断状態とは、連通口61bが弁体63によって閉塞されることで、噴出孔3を通じた貯留空間36内とトリガー式液体噴出器1の外部との連通が遮断された状態である。開放状態とは、連通口61bが開放されることで、噴出孔3を通じて貯留空間36内とトリガー式液体噴出器1の外部とが連通した状態である。
【0045】
ここで、ノズル部材4は、接続筒部61に固定されて、接続筒部61と一体で前後動可能に構成されている。具体的に、ノズル部材4は、嵌合筒71と、ガイド筒72と、連結片73(
図3参照)と、を備えている。
嵌合筒71は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。嵌合筒71内には、接続筒部61の前端部が嵌合筒71の後方から嵌め込まれている。嵌合筒71内及び接続筒部61内は、嵌合筒71の後端開口部及び接続筒部61の前端開口部(第2連通口)を通じて連通している。嵌合筒71の頂壁部には、頂壁部を前後方向L1に貫通する噴出孔3が形成されている。噴出孔3は、接続筒部61の内外を連通させている。
【0046】
ガイド筒72は、嵌合筒71の周壁部から第2径方向の外側に連なっている。ガイド筒72の内側には、前部取付内筒17dがガイド筒72の後方から挿入されている。ノズル部材4とジョイント部17との間には、不図示の回り止め部が設けられている。したがって、ノズル部材4は、ジョイント部17に対する軸線O2回りの回転が規制された上で、接続筒部61とともに前後動可能に構成されている。なお、回り止め部は、ジョイント部17及び射出筒部14に対するノズル部材4及び接続筒部61の回転が規制されていれば、接続筒部61に設けられていてもよい。
【0047】
ガイド筒72の前端部には、摺動部72aが形成されている。摺動部72aは、ガイド筒72から前方に突出するとともに、軸線O2回りの周方向に延びる突条である。摺動部72aは、周方向の一方側から他方側に向かうに従いガイド筒72からの突出量が漸次増加している。
【0048】
図3に示すように、連結片73は、ガイド筒72の後端縁から第2径方向の外側に延びた後、後方に向けて延びている。連結片73の後端部は、装着筒40に対して左右方向L2の両側に位置している。連結片73の後端部には、係合突部73aが設けられている。係合突部73aは、各連結片73の後端部から左右方向L2の外側に向けて突出している。
【0049】
図2、
図3に示すように、上述した開閉機構5のうち、第1操作部64は、ノズル部材4を介して接続筒部61に連係している。第1操作部64は、ジョイント部17のうち、接続筒部61よりも上方に位置する部分に、左右方向L2に沿う軸線回りに回動可能に設けられている。具体的に、第1操作部64は、一対のアーム部64aと、連結板64bと、操作片64cと、を備えている。
【0050】
一対のアーム部64aは、ジョイント部17に対して左右方向L2の両側に各別に配置されている。各アーム部64aは、下方に向かうに従い前方に向けて延びている。各アーム部64aの下端部は、第2操作部65の下方に位置している。各アーム部64aの上端部は、回動ピン17fを介してジョイント部17に支持されている。具体的に、回動ピン17fは、ジョイント部17から左右方向L2の外側に向けて各別に突出している。回動ピン17fは、各アーム部64aの上端部に形成された回動孔64d内に挿入されている。したがって、アーム部64aは、ジョイント部17のうち接続筒部61よりも上方に位置する部分で左右方向L2に沿う軸線回りに回動可能に構成されている。なお、第1操作部64は、装着筒40に支持されていてもよい。
【0051】
連結板64bは、第2操作部65の下方において、一対のアーム部64aの下端部同士を連結している。
操作片64cは、連結板64bから前方に向けて突出している。
【0052】
上述した各アーム部64aのうち、回動ピン17fよりも下方に位置する部分には、係合凹部64fが形成されている。係合凹部64f内には、上述した係合突部73aが係合されている。すなわち、第1操作部64は、操作片64cの操作により回動ピン17f回りの後方に回動することで、係合凹部64fの内周面を介して係合突部73aを後方に押し込む。これにより、ノズル部材4及び接続筒部61が、射出筒部14に対して後方に移動する。すなわち、第1操作部64は、初期位置から後方への回動操作によって貯留空間36を遮断状態から開放状態に切り替える。なお、第1操作部64は、付勢部材68の付勢力によって初期位置に復帰可能になっている。
【0053】
第2操作部65は、ノズル部材4を介して接続筒部61に連係している。第2操作部65は、軸線O2回りに回転可能に前部取付外筒18に取り付けられている。具体的に、第2操作部65は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。第2操作部65の周壁部65a内には、前部取付外筒18がアンダーカット嵌合されている。これにより、第2操作部65は、ジョイント部17に対する前後方向L1の移動が規制された上で、軸線O2回りに回転可能に構成されている。
【0054】
第2操作部65の頂壁部65bは、周壁部65aの前端開口縁から第2径方向の内側に張り出している。頂壁部65bのうち、第2径方向の中央部には、頂壁部65bを前後方向L1に貫通する露出孔65cが形成されている。露出孔65cは、ノズル部材4(嵌合筒71の頂壁部)を外部に露呈させている。頂壁部65bのうち、露出孔65cの開口縁には、係合突部(規制部)65dが形成されている。係合突部65dは、露出孔65cの開口縁から後方に向けて突出している。係合突部65dは、第2操作部65の回転に伴い、摺動部72aの前端面上を摺動可能に構成されている。すなわち、第2操作部65は、ジョイント部17に対する周方向の一方側から他方側への回転に伴い、摺動部72aの前端面上を周方向の一方側から他方側に向けて摺動することで、ノズル部材4を押し込む。これにより、ノズル部材4及び接続筒部61が射出筒部14に対して後方に移動する。一方、ノズル部材4及び接続筒部61が後方に移動した状態において、第2操作部65を周方向の他方側から一方側に向けて回転させることで、ノズル部材4及び接続筒部61が付勢部材55の復元力によって前方に移動する。なお、第2操作部65は、初期位置から周方向の他方側端部まで回転させたとき(貯留空間36が開放状態に位置しているとき)、付勢部材68の復元力によるノズル部材4の前方移動を規制する。すなわち、第2操作部65は、貯留空間36を開放状態に維持する。
【0055】
カバーCは、噴出器本体2を上方、後方及び左右方向L2の両側から覆っている。ノズル部材4及び第2操作部65は、カバーCから前方に突出している。
【0056】
次に、上述したトリガー式液体噴出器1の作用について説明する。以下の説明では、遮断状態でトリガー部50を操作する大量噴出モードと、開放状態でトリガー部50を操作する通常噴出モードと、について説明する。
【0057】
まず、大量噴出モードについて説明する。トリガー部50を初期位置から後方に引くと、主ピストン52が最前端位置から後方に移動し、主シリンダ51内が加圧される。これにより、主シリンダ51内の液体が、連通筒51d内を通じて縦供給筒部10(小径部10a)内に供給される。すると、縦供給筒部10内に供給された液体は、ボール弁21を下方に向けて押し付けるとともに、貯留弁29を上方に向けて押し上げる。これにより、ボール弁21が下弁座部10fに接触した状態で、貯留弁29が上弁座部10gから上方に離反する。
【0058】
そして、
図4に示すように、縦供給筒部10内の液体が、連絡筒12内及び供給孔31cを通して、貯留空間36(貯留シリンダ31内)に供給される。貯留空間36内への液体の流入により貯留空間36が加圧されると、貯留プランジャ32が付勢部材33の付勢力に抗して最前進位置から後方に向けて移動する。これにより、貯留空間36内に液体が貯留される。
【0059】
なお、トリガー部50の操作を解除すると、付勢部材55の付勢力によって主ピストン52が主シリンダ51内を前方に向けて復元移動し、これに伴いトリガー部50も前方に復元移動する。その結果、主シリンダ51内が減圧する。すると、ボール弁21が下弁座部10fから浮き上がり、容器体A内と主シリンダ51とが小径部10a内を通じて連通する。一方、貯留弁29は、上弁座部10gに着座した状態を維持することで、小径部10a内を通じた主シリンダ51内と貯留空間36内との連通が遮断される。その結果、容器体A内の液体が縦供給筒部10内に吸い上げられる。縦供給筒部10内に流入した液体は、連通筒51dを通じて主シリンダ51内に導入されることで、次のトリガー操作に備えることができる。
【0060】
貯留プランジャ32が後方に移動することで、閉塞壁32aが貯留シリンダ31の前壁部31aから後方に離れ、連通孔31dが開放される。したがって、貯留シリンダ31内の液体は、連通孔31dを通じて射出筒部14(貯留空間36)内に流入する。但し、遮断状態において、接続筒部61内への液体の移動は遮断されている。そのため、トリガー操作のたびに、貯留プランジャ32が後方に移動して、貯留空間36内に液体が貯留される。
【0061】
貯留空間36内に貯留された液体を噴出させるには、噴出孔3を通じて貯留空間36を外部に連通させる(開放状態)。本実施形態では、第1操作部64を操作することで、貯留空間36を開放状態とする。
【0062】
まず、第1操作部64について、
図5に示すように、操作片64cを介して第1操作部64を押し下げる。すると、第1操作部64は、回動ピン17f回りに回動することで、後方に移動する。これにより、係合突部73aを介してノズル部材4が後方に押し込まれることで、ノズル部材4及び接続筒部61が射出筒部14に対して後方に移動する。ノズル部材4及び接続筒部61の後方への移動に伴い、弁体63が周溝61c内(連通口61b)から離脱する。これにより、連通溝14b及び連通口61bを通じて射出筒部14内及び接続筒部61内が連通する。その結果、貯留空間36は、接続筒部61内及びノズル部材4を通じて外部に連通した開放状態となる。
【0063】
貯留空間36が開放状態になると、貯留空間36に溜められた液体が外部に噴出可能となる。すなわち、貯留空間36に溜められた液体は、付勢部材33の復元力によって前方に押し込まれる。これにより、貯留空間36内の液体は、トリガー部50を操作することなく、連通溝14b及び連通口61bを通じて接続筒部61内に流入する。その後、接続筒部61内に流入した液体は、噴出孔3を通じて外部に噴出される。なお、貯留空間36から縦供給筒部10内への液体の流出は、貯留弁29によって規制される。
【0064】
液体の噴出が完了した後は、第1操作部64を初期位置に復帰させる。すなわち、操作片64cを介した第1操作部64の押し下げを解除することで、ノズル部材4及び接続筒部61が付勢部材68の付勢力によって射出筒部14に対して前方に移動する。これに伴い、第1操作部64が付勢部材68の復元力によって回動ピン17f回りに回動する。これにより、第1操作部64が前方に移動する。ノズル部材4及び接続筒部61が前方に移動する過程において、連通口61bが弁体63と向かい合う位置まで接続筒部61が到達する。すると、弁体63が復元変形することで、弁体63が周溝61c内内に進入する。これにより、弁体63によって連通口61bが閉塞される。その結果、貯留空間36が遮断状態に復帰することで、液体の噴出が停止する。
【0065】
次に、通常噴出モードについて説明する。通常噴出モードでは、貯留プランジャ32が貯留シリンダ31の前壁部31aに当接した状態で、第2操作部65を操作して貯留空間36を開放状態とする。具体的には、
図6に示すように、周壁部65aを把持して、第2操作部65を周方向の一方側から他方側に向けて回転させる。すると、第2操作部65の係合突部65dがノズル部材4の摺動部72a上を摺動することで、ノズル部材4が後方に押し込まれる。これにより、ノズル部材4及び接続筒部61が一体で射出筒部14に対して後方に移動することで、貯留空間36が開放状態となる。
【0066】
この状態で、トリガー部50を操作すると、大量噴出モードと同様に、主ポンプ部15(主シリンダ51)内の液体が縦供給筒部10及び連絡筒12を通じて貯留シリンダ31内(貯留空間36内)に流入する。貯留シリンダ31内に流入した液体は、逃げ溝32a3及び連通溝32a4を通じて貯留シリンダ31を通過する。貯留シリンダ31を通過した液体は、射出筒部14内に流入した後、接続筒部61内を通って噴出孔3から噴出される。
【0067】
液体の噴出が完了した後は、第2操作部65を初期位置に復帰させる。すなわち、第2操作部65を周方向の他方側から一方側に向けて回転させると、ノズル部材4及び接続筒部61が付勢部材68の付勢力によって射出筒部14に対して前方に移動する。ノズル部材4及び接続筒部61が前方に移動する過程において、連通口61bが弁体63と向かい合う位置まで接続筒部61が到達する。すると、弁体63が復元変形することで、弁体63が連通口61b内に進入する。これにより、弁体63によって連通口61bが閉塞される。その結果、貯留空間36が遮断状態に復帰することで、液体の噴出が停止する。
【0068】
このように、本実施形態では、貯留シリンダ31内が噴出孔3を通じて外部に開放された開放状態と、噴出孔3を通じた貯留シリンダ31内と外部との連通が遮断された遮断状態と、に切り替える開閉機構5を備えている構成とした。
この構成によれば、貯留空間36を遮断状態にした状態でトリガー部50を操作することで、貯留空間36内に液体を貯留することができる。そして、貯留空間36内に液体を貯留した後、貯留空間36内を開放状態とすることで、トリガー部50のストロークに応じた噴出量以上の液体を噴出することができる。その結果、大量の液体を噴出できる。
【0069】
本実施形態において、開閉機構5は、射出筒部14内に連通可能な連通口(第1連通口)61b、及び噴出孔3に連通する前端開口部(第2連通口)を有し、射出筒部14及びノズル部材4間を接続する接続筒部61と、連通口61bを開閉可能な弁体63と、を備えている構成とした。
この構成によれば、開閉機構5が貯留シリンダ31とノズル部材4との間に設けられているので、貯留空間36が遮断状態にあるときに液体が噴出孔3まで到達するのを抑制できる。これにより、貯留空間36が遮断状態にあるときに、不意に液体が噴出するのを抑制できる。
【0070】
本実施形態において、弁体63は、射出筒部14に対する接続筒部61及びノズル部材4の前後方向L1の移動に伴い、連通口61bを開閉する構成とした。
この構成によれば、貯留空間36の開放状態及び遮断状態でノズル部材4の前後方向L1での位置が異なるので、貯留空間36の開放状態及び遮断状態を判断し易くなる。
【0071】
本実施形態において、第1操作部64は、前後方向L1に移動可能に噴出器本体2に設けられている構成とした。
この構成によれば、接続筒部61や弁体63が貯留シリンダ31とノズル部材4との間に設けられている場合であっても、貯留空間36の開放状態及び遮断状態の切り替えを容易に行うことができる。
【0072】
本実施形態において、接続筒部61及びノズル部材4は、第2操作部65の回転操作に伴い第2操作部65に対して前後方向L1に移動可能に構成されている。
この構成によれば、接続筒部61や弁体63が貯留シリンダ31とノズル部材4との間に設けられている場合であっても、貯留空間36の開放状態及び遮断状態の切り替えを容易に行うことができる。
【0073】
特に、本実施形態では、係合突部65dによって接続筒部61及びノズル部材4の前後方向L1への移動を規制することで、開放状態を維持したままトリガー操作を行うことができる。この場合、大量噴出モードの他、例えば通常噴出モードでの噴出も可能にすることができ、利便性を向上させることができる。
【0074】
本実施形態において、貯留プランジャ32には、連通孔31dを閉塞した状態で、貯留シリンダ31内と射出筒部14内とを連通させる連通溝(連通流路)32a4が形成されている構成とした。
この構成によれば、貯留空間36を開放状態にした上で、トリガー部50を操作することで、主ポンプ部15内の液体が連通溝32a4を通じて噴出孔3から噴出される。これにより、トリガー部50のストロークに応じた量の液体を噴出することもできる。その結果、使い勝手を向上させることができる。なお、連通流路は、閉塞壁32aを前後方向L1に貫通する構成等であってもよい。
【0075】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1操作部100がトリガー部50に一体に形成されている点で第1実施形態と相違している。
図7に示すトリガー式液体噴出器1において、第1操作部100は、操作片101と、係合部102と、を備えている。
操作片101は、トリガー部50の上部から前方に向けて延びている。具体的に、操作片101は、左右方向L2から見た側面視において、上方に向けて突の円弧状に形成されている。操作片101は、操作片101の下方から指等を引っ掛け、上方への引き上げ操作が可能になっている。
【0076】
係合部102は、トリガー部50の上端部から上方に向けて突出している。係合部102は、ノズル部材4の係合突部73aに係合突部73aの前方から係合している。
【0077】
本実施形態において、膨出部32a2には、第1実施形態での連通溝32a4(
図2参照)が形成されていない。したがって、閉塞壁32aが前壁部31aに当接した状態では、膨出部32a2が連通孔31dの開口縁に密接することで、連通孔31dが密閉されている。
【0078】
本実施形態のトリガー式液体噴出器1において、大量噴出モードを行うには、上述した第1実施形態と同様に、貯留空間36を遮断状態にしてトリガー部50を初期位置から後方に操作する。これにより、貯留空間36に液体が貯留される。この状態で、貯留空間36を開放状態にするには、
図8に示すように、例えば操作片101に指を引っ掛け、操作片101を引き上げる。すると、トリガー部50が初期位置にある状態から、トリガー部50及び第1操作部100が一体になって前方に向けて回動する。これにより、係合部102を介して係合突部73aが後方に押し込まれることで、ノズル部材4及び接続筒部61が射出筒部14に対して後方に移動する。その結果、貯留空間36が開放状態になり、貯留空間36内の液体が噴出孔3を通じて噴出される。
【0079】
貯留空間36を再び遮断状態に戻すには、例えば第1操作部100から手を放す。すると、トリガー部50及び第1操作部100が、付勢部材55,68の復元力によって初期位置に復帰する。これにより、貯留空間36が遮断状態に戻る。
【0080】
本実施形態のトリガー式液体噴出器1では、大量噴出モードの他、連続噴出モードでの操作が可能になっている。連続噴出モードとは、貯留空間36を開放状態にした上で、トリガー部50による噴出操作を行うモードである。例えば第2操作部65を操作して貯留空間36を開放状態にした上で、トリガー部50を後方に引くと、主ポンプ部15内の液体が縦供給筒部10及び連絡筒12を通じて貯留空間36内に流入する。貯留空間36内への液体の流入により貯留空間36が加圧されると、貯留プランジャ32が付勢部材33の付勢力に抗して最前進位置から後方に向けて移動する。これにより、貯留空間36内に液体が貯留される。
【0081】
貯留プランジャ32が後方に移動することで、閉塞壁32aが貯留シリンダ31の前壁部31aから後方に離れ、連通孔31dが開放される。これにより、貯留空間36内の液体は、連通孔31dを通じて射出筒部14内に流入し、接続筒部61を通じて噴出孔3から噴出される。
【0082】
このように、トリガー部50を後方に引く操作を行う毎に、主ポンプ部15から貯留空間36内に液体を流入させるとともに、貯留空間36内の液体が連続的に噴出孔3から噴出される。すなわち、貯留空間36内に液体が残存した状態で、トリガー部50の操作を停止した場合、主ポンプ部15から貯留空間36への液体の供給は停止するものの、付勢部材33の付勢力によって貯留プランジャ32が最前進位置に向けて前方移動しはじめる。これにより、貯留空間36に溜まった液体を、トリガー部50の操作時だけでなく、トリガー部50を非操作時においても噴出させることができ、液体の連続噴出を行うことができる。
【0083】
本実施形態では、第1操作部100は、トリガー部50に一体に形成されるとともに、トリガー部50の初期位置から前方への回動操作に伴い、接続筒部61及びノズル部材4を前後方向L1に移動させる構成とした。
この構成によれば、第1操作部100を別部品として設ける必要がないので、部品点数の削減を図ることができる。また、噴出操作の際に、トリガー部50の操作と、第1操作部100の操作と、で手を持ち替える必要がないので、優れた操作性を具備させることができる。
【0084】
特に、本実施形態では、係合突部65dによって接続筒部61及びノズル部材4の前後方向L1への移動を規制することで、開放状態を維持したままトリガー操作を行うことができる。この場合、大量噴出モードの他、例えば連続噴出モードでの噴出も可能にすることができ、利便性を向上させることができる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、開閉機構5が、貯留空間36内とトリガー式液体噴出器の外部との連通及び遮断をノズル部材4と射出筒部14との間で切り替える構成について説明したが、この構成に限られない。開閉機構は、噴出孔3をノズル部材4の外側から開閉することで、貯留空間36内とトリガー式液体噴出器の外部との連通及び遮断を切り替えてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、開閉機構5の操作部として、第1操作部及び第2操作部を備える構成について説明したが、この構成に限られない。開閉機構5の操作部は、少なくとも一つ備えていればよい。
上述した実施形態では、接続筒部61が移動することで、連通口61bが開閉される構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、弁体63が移動することで、連通口61bが開閉される構成であってもよい。
【0087】
上述した実施形態では、トリガー部50が回動することで、前後方向L1に移動する構成について説明したが、この構成に限られない。トリガー部50は、前後方向L1にスライド移動する構成であってもよい。
なお、開閉機構5は、第2操作部65を周方向の他方側端部まで回転させたときに(貯留空間36を開放状態としたときに)、第1操作部を操作不能とする(前後方向L1への移動を規制する)固定部を備えていてもよい。
【0088】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1:トリガー式液体噴出器
2:噴出器本体
3:噴出孔
4:ノズル部材
5:開閉機構
10:縦供給筒部
14:射出筒部
16:トリガー機構
31:貯留シリンダ
31d:連通孔
32:貯留プランジャ
32a3:逃げ溝(連通流路)
32a4:連通溝(連通流路)
50:トリガー部
61:接続筒部
61b:連通口(第1連通口)
63:弁体
64:第1操作部
65:第2操作部(操作部)
65d:係合突部(規制部)
100:第1操作部
A:容器体