(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】屋根材カバー、屋根材型太陽電池モジュールの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20180101AFI20250418BHJP
H02S 20/25 20140101ALI20250418BHJP
H02S 20/26 20140101ALI20250418BHJP
【FI】
E04D13/18
H02S20/25
H02S20/26
(21)【出願番号】P 2021176523
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2024-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】猪熊 裕一
(72)【発明者】
【氏名】河西 龍馬
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-078097(JP,A)
【文献】特開2001-164707(JP,A)
【文献】特開2002-371678(JP,A)
【文献】特開2010-163815(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006038729(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
H02S 20/25
H02S 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根に、屋根材と共に屋根材型の太陽電池モジュールを配置する際、前記太陽電池モジュールに隣り合って配置される前記屋根材に取り付けて用いられる屋根材カバーであって、
前記屋根材への取り付け状態で上方を向いたカバー上面と、前記太陽電池モジュールにおける軒及び棟に向かう方向に対して交わる方向の側面に対向するカバー側面と、前記カバー上面と前記カバー側面との間に位置する側方面取り部と、を備えた屋根材カバー。
【請求項2】
前記カバー上面に設けられており、前記屋根材カバーを複数用いる場合に、他の屋根材カバーの端部を挟み込むことで前記他の屋根材カバーを固定する係止片を備え、
前記係止片が、前記屋根材カバーの本体に対して着脱可能とされている、請求項1に記載の屋根材カバー。
【請求項3】
前記係止片の、前記他の屋根材カバーの端部を導入する部分の端縁が、前記取り付け状態で上方に立ち上げられている、請求項2に記載の屋根材カバー。
【請求項4】
前記屋根材カバーの本体から、前記取り付け状態で棟側縁部に位置し、締結具を介して前記屋根の野地板に固定される野地板固定部を備えた、請求項1~3のいずれかに記載の屋根材カバー。
【請求項5】
前記取り付け状態における棟側縁部が、軒側の部分よりも上方に位置する、請求項1~4のいずれかに記載の屋根材カバー。
【請求項6】
現場搬入前に、前記屋根材を配置予定箇所に応じた寸法に切断する屋根材切断工程と、
切断された前記屋根材に、現場において、請求項1~5のいずれかに記載の屋根材カバーを取り付けるカバー取付工程と、を有する、屋根材型太陽電池モジュールの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールと共に配置される屋根材に取り付けられる屋根材カバー、及び、これを用いる屋根材型太陽電池モジュールの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の屋根において、屋根材と共に野地板上に配置される屋根材型太陽電池モジュールが存在する(特許文献1)。この屋根材型太陽電池モジュールの周囲には、瓦等の屋根材が配置される。
【0003】
このような屋根材型太陽電池モジュールを野地板に配置する場合、太陽電池モジュールとの、屋根材がそのままの大きさでは配置できないような寸法関係により、屋根材が切断されることがある。この場合、切断面の保護のため、太陽電池モジュールに隣り合って配置される屋根材に、切断面を覆う板金製のカバーが取り付けられることがある。特許文献1に記載のカバーは、太陽電池モジュールに対向した部分が垂直面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなカバー形状では、屋根材が太陽電池モジュールよりも厚い場合、日射方向によっては、太陽電池モジュールの発電面にカバーの影がかかってしまうことで、発電性能が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は、屋根材型太陽電池モジュールの発電性能の低下を抑制した屋根材カバー、及び、屋根材型太陽電池モジュールの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の屋根材カバーは、建築物の屋根に、屋根材と共に屋根材型の太陽電池モジュールを配置する際、前記太陽電池モジュールに隣り合って配置される前記屋根材に取り付けて用いられる屋根材カバーであって、前記屋根材への取り付け状態で上方を向いたカバー上面と、前記太陽電池モジュールにおける軒及び棟に向かう方向に対して交わる方向の側面に対向するカバー側面と、前記カバー上面と前記カバー側面との間に位置する側方面取り部と、を備える。
【0008】
かかる構成によれば、側方面取り部を設けた分、カバー上面とカバー側面との間の、野地板からの高さを低くできるため、太陽電池モジュールの発電面に屋根材カバーの影をかかりにくくできる。屋根材カバーの影をかかりにくくできることから、屋根材型太陽電池モジュールの発電性能の低下を抑制できる。
【0009】
また、前記屋根材カバーは、前記カバー上面に設けられており、前記屋根材カバーを複数用いる場合に、他の屋根材カバーの端部を挟み込むことで前記他の屋根材カバーを固定する係止片を備え、前記係止片が、前記屋根材カバーの本体に対して着脱可能とされていてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、係止片を用いて、複数の屋根材カバーを固定できる。そして、例えば棟側最端部に配置される屋根材カバーでは係止片を使用しないことがあるので、不要な係止片を外すことにより、不要な部材による見栄えや経年による腐食や汚れへの影響を無くすことができる。
【0011】
また、前記屋根材カバーでは、前記係止片の、前記他の屋根材カバーの端部を導入する部分の端縁が、前記取り付け状態で上方に立ち上げられていてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、屋根材カバーの本体と係止片との間に他の屋根材カバーの端部を導入しやすい。
【0013】
また、前記屋根材カバーは、前記屋根材カバーの本体から、前記取り付け状態で棟側縁部に位置し、締結具を介して前記屋根の野地板に固定される野地板固定部を備えてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、野地板固定部にて、締結具を用いて野地板に屋根材カバーを固定できるので、屋根への確実な固定が可能である。
【0015】
また、前記屋根材カバーでは、前記取り付け状態における棟側縁部が、軒側の部分よりも上方に位置してもよい。
【0016】
かかる構成によれば、棟側縁部が立ち上げられた形態であるため、棟側縁部を通って野地板に水分が浸入することを抑制できる。
【0017】
本発明の屋根材型太陽電池モジュールの施工方法は、現場搬入前に、前記屋根材を配置予定箇所に応じた寸法に切断する屋根材切断工程と、切断された前記屋根材に、現場において、前記屋根材カバーを取り付けるカバー取付工程と、を有する。
【0018】
かかる構成によれば、現場搬入前に、あらかじめ屋根材を切断しておくことができるので、現場の施工効率が良く、現場において粉塵の問題も発生しない。
【発明の効果】
【0019】
以上より、本発明によれば、屋根材型太陽電池モジュールの発電性能の低下を抑制した屋根材カバー、及び、屋根材型太陽電池モジュールの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る屋根材カバーの正面図である。
【
図5】
図5は、前記屋根材カバーの右側面図である。
【
図6】
図6は、前記屋根材カバーの左側面図である。
【
図8】
図8は、
図1のVIII-VIII線切断部端面図である。
【
図9】
図9は、前記屋根材カバーの施工例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図9を参照しつつ説明する。なお、以下の説明における方向の表現は、建築物の屋根Rへの配置状態における方向による。
【0022】
屋根材カバー1は、
図9に示すように、建築物の屋根Rに、屋根材2と共に屋根材型の太陽電池モジュール3を配置する際、太陽電池モジュール3に隣り合って配置される屋根材2に取り付けて用いられるものである。複数の太陽電池モジュール3を配置する際は、複数の太陽電池モジュール3の集合体に隣り合って配置される屋根材2に取り付けて用いられるものである。なお、前記「屋根材型」とは、本明細書では、屋根材上に(屋根材を覆うように)配置されるものではなく、野地板4上に直接(防水シート等が介在することを含む)配置される配置形態を指している。また、屋根材型の太陽モジュール3は、屋根材2と混ぜ葺き可能な太陽電池モジュール全般を指す。
【0023】
本実施形態では、屋根材カバー1は、屋根材2における、太陽電池モジュール3に隣り合った領域を覆うように嵌め込まれることで取り付けられる。屋根Rが切妻屋根である場合、屋根材カバー1は、屋根材2におけるケラバ側に取り付けられる。屋根Rは、傾斜した屋根であり、軒(下)側から棟(上)側に延びている。
【0024】
屋根材2は、例えば、瓦である。太陽電池モジュール3は、板状であり、例えば、発電面側を太陽側に向けた状態で配置される。太陽電池モジュール3は、
図9に示すように、屋根材2とは異なる形状であって、屋根に対して正対して見た形状が長方形状とされている。
【0025】
屋根材カバー1は、
図1~
図7に示すように、屋根材2への取り付け状態で上方を向いたカバー上面10と、太陽電池モジュール3における軒及び棟に向かう方向に対して交わる方向の側面に対向するカバー側面11と、カバー上面10とカバー側面11との間に位置する側方面取り部12と、を備える。軒及び棟に向かう方向は、いわゆる、梁行方向である。軒及び棟に向かう方向に対して交わる(直交する)方向は、いわゆる、桁行方向である。
【0026】
この屋根材カバー1では、側方面取り部12を設けない構成と比べて、側方面取り部12を設けた分、カバー上面10とカバー側面11との間の、例えば直交する角部を無くすことができ、この角部を無くした部分でカバー上面10とカバー側面11との間の、野地板4からの高さを低くできるため、桁行方向で太陽電池モジュール3の発電面(表面)30に屋根材カバー1の影をかかりにくくできる。例えば、太陽電池モジュール3を南面設置した場合の、太陽が傾いた時間帯において、発電面(表面)30に屋根材カバー1の影をかかりにくくできる。これにより、屋根材型の太陽電池モジュール3の発電性能の低下を抑制できる。
【0027】
本実施形態では、桁行方向において、太陽電池モジュール3と隣り合う屋根材2の側面が、屋根材2の切断により生じ、素材の露出した切断面である。そのため、屋根材カバー1は、屋根材2の切断面を覆うことになる。これにより、屋根材2の切断面を塗装しなくても、屋根材2や太陽電池モジュール3を取り付けた屋根Rの外観を損ねることを防ぐことができる。
【0028】
屋根材カバー1は、カバー上面10、カバー側面11、及び、側方面取り部12を有する本体5と、本体5に設けられる係止片6と、を備える(
図1参照)。
【0029】
本体5は、例えば、板金製であり、本実施形態では、鋼板等の板金を曲げて形成されている。本体5の外面には、必要により塗装やめっきが施されている。なお、本体5は、樹脂成型品等のその他の構成であってもよい。
【0030】
また、本体5は、カバー上面10、カバー側面11、及び、側方面取り部12に加えて、軒側を向く軒側側面13と、カバー上面10と軒側側面13との間に位置する軒側面取り部14を有する。軒側面取り部14を設けた分、カバー上面10とカバー側面11との間の、野地板4からの高さを低くできるため、梁行方向で太陽電池モジュール3の発電面(表面)30に屋根材カバー1の影をかかりにくくできる。これにより、屋根材型の太陽電池モジュール3の発電性能の低下を抑制できる。このように、面取り部が二か所(側方面取り部12及び軒側面取り部14)設けられることにより、日射方向(桁行方向、梁行方向の両方)により広く対応できる。
【0031】
さらに、本体5は、軒側側面13の野地板4側の端縁から野地板4に沿って棟側に延びる延出部15を有する(
図2参照)。また、本体5は、棟側の端部に位置する棟側縁部16を有する。
【0032】
カバー上面10は、屋根材カバー1の取付状態において、野地板4に略平行な面である(
図1参照)。カバー側面11は、屋根材カバー1の取付状態において、野地板4に略垂直な面である。軒側側面13は、屋根材カバー1の取付状態において、野地板4に略垂直な面である。延出部15は、野地板4に略平行な面である(
図3参照)。
【0033】
側方面取り部12は、カバー上面10の桁行方向における、カバー上面10に正対した場合において斜め方向に延びている一方の端縁100から、斜め下方向に傾斜して延びている平面を有する部分である(
図1参照)。例えば、側方面取り部12は、軒側の部位ほど、桁行方向における寸法が大きくなる形状を有する。つまり、側方面取り部12は、カバー上面10の法線方向及び桁行方向に対して斜めを向いている。本実施形態では、側方面取り部12の軒側の端部は、軒側面取り部14と連続している。なお、本実施形態の側方面取り部12は平面から構成されているが、湾曲面や、二面以上の平面の組み合わせで構成されていてもよい。
【0034】
軒側面取り部14は、カバー上面10の軒側端縁101から、斜め下方向に傾斜して延びている平面を有する部分である。軒側面取り部14は、桁行方向において、幅寸法が略同じである形状を有する。なお、本実施形態の軒側面取り部14は平面から構成されているが、湾曲面や、二面以上の平面の組み合わせで構成されていてもよい。
【0035】
屋根材2への取り付け状態における棟側縁部16は、例えば、棟側縁部16よりも軒側の部分(例えば、カバー上面10)よりも上方に位置する(
図5、
図6、及び
図8参照)。この構成では、棟側縁部16がカバー上面10よりも立ち上げられた形態であるため、降雨時等に、棟側縁部16を通って野地板4に水分が浸入することを抑制できる。また、棟側縁部16が立ち上げられた形態であることにより、棟側に位置する他の屋根材カバー1や屋根材2の下面(野地板側の面)への風の吹き込み(台風や突風により他の屋根材カバー1や屋根材2が屋根Rから脱落する原因)も防止できる。
【0036】
本実施形態では、屋根材カバー1は、屋根材カバー1の本体5から、屋根Rへの取り付け状態で棟側縁部16に位置し、締結具(例えば、木ねじ、ボルト)を介して屋根Rの野地板4に固定される野地板固定部7を備える(
図1参照)。この構成では、野地板固定部7にて、締結具を用いて野地板4に屋根材カバー1を固定できるので、屋根Rへの確実な固定が可能である。
【0037】
野地板固定部7は、例えば、本体5(棟側縁部16)から棟方向に突出する突出片7である。突出片7には、貫通孔70が設けられている。また、突出片7は、締結具により野地板4に固定されることで、野地板4に面接触した状態で固定される。
【0038】
なお、野地板固定部7は、本実施形態の突出片7と異なる構成であってもよい。例えば、野地板固定部7は、本体5から突出せず、屋根材カバー1の棟側縁部16の一部に貫通孔70を設けた構成であってもよい。また、野地板固定部7は、屋根材カバー1の本体5の一部(棟側縁部16以外の部分)に貫通孔70を設けた構成であってもよい。
【0039】
本実施形態では、屋根材カバー1は、複数用いられる(
図9参照)。具体的に、屋根材カバー1は、屋根材カバー1aと、この屋根材カバー1aの棟側に配置される他の屋根材カバー1bを含む。さらに、屋根材カバー1aは、例えば、カバー上面10に設けられており、他の屋根材カバー1bの端部(具体的には、軒側の端部、本実施形態では、延出部15)を挟み込むことで他の屋根材カバー1bを固定する係止片6を備える(
図7参照)。
【0040】
係止片6は、屋根材カバー1の本体5に対して着脱可能とされている。この構成では、係止片6を用いて、複数の屋根材カバー1を固定できる。具体的に、係止片6を用いて、他の屋根材カバー1bが、屋根材カバー1aに対して固定される。そして、例えば棟側最端部に配置される屋根材カバー1では係止片6を使用しないことがあるので、不要な係止片6を外すことにより、不要な部材による見栄えへの影響(屋根材カバー1から不要な係止片6が突出していることによる見栄えへの影響)や経年による腐食や汚れ(例えば、係止片6から錆色の水が垂れることによる汚れ)の影響を無くすことができる。さらに、係止片6を用いて他の屋根材カバー1bの軒側と屋根材カバー1aの棟側とが固定されるため、耐風性を確保できる。
【0041】
本実施形態では、係止片6が、他の屋根材カバー1bに嵌め込まれることで、他の屋根材カバー1bが、屋根材カバー1aに対して固定される。詳しくは、屋根材カバー1aにおける本体5と係止片6との間に、他の屋根材カバー1bの延出部15(平板状の部分)が差し込まれることで前記固定がなされる。
【0042】
係止片6は、例えば、板状の部材であり、貫通孔60が形成されている。貫通孔60は、例えば、図示のような「ダルマ孔」である。貫通孔60がダルマ孔であることにより、貫通孔60でねじ止めした際に、ねじを緩めずに係止片6をずらすだけで、係止片6を屋根材カバー1の本体5から取り外すことができる。このため、係止片6の取り外しは、屋根材カバー1aに他の屋根材カバー1bが重ねられた後に行うこともできる。なお、係止片6の取り外しに伴い、ねじは一緒に取り外してもよいし、本体5に残したままとしてもよい。また、野地板4上に屋根材カバー1を取り付けた後でも、係止片6を本体5から取り外すことが可能である。
【0043】
係止片6は、例えば無着色としたり、本体5とは別の色彩としたりすることで、本体5と外観上区別できるように形成でき、本体5における係止片6の位置をわかりやすくすることができる。そうすることで、他の屋根材カバー1bを係止片6に位置合わせすることを、作業者が直感的にできるため、施工性が良くなる。
【0044】
また、係止片6は、屋根材カバー1の本体5にあらかじめ取り付けられているので、屋根材カバー1等の野地板4への設置の現場で、いわゆる「ポカミス」により、係止片6を取り付け忘れたまま施工してしまい、施工の仕直しが生じることを防止できる。なお、取り外した係止片6を他の用途、例えば、屋根材カバー1と異なる屋根R周辺の板金部材の固定金具(吊り子)とする用途に転用することもできる。このため、屋根材カバー1において不要となった係止片6を廃棄しなくてよいので、経済的である。
【0045】
係止片6の、他の屋根材カバー1bの端部(延出部15)を、係止片6の下方に導入する部分の端縁61が、屋根材2への取り付け状態で上方に立ち上げられている。具体的に、係止片6の端縁61は、この取付状態で斜め上に立ち上げられている(
図8参照)。この構成では、端縁61と本体5との間に空間Sを設けることができるので、屋根材カバー1の本体5と係止片6との間に他の屋根材カバー1bの端部(具体的には、軒側の端部、本実施形態では、延出部15)を導入しやすい。しかも、端縁61の立ち上がった形状により、他の屋根材カバー1bの軒側の端部が、係止片6と屋根材カバー1aとの間に刺さらず、屋根材2と係止片6の上面との間に刺さることを防止できる。
【0046】
以下、屋根材カバー1の野地板4への固定を含む屋根材型の太陽電池モジュール3の施工方法について説明する。太陽電池モジュール3の施工方法は、例えば、現場搬入前に、屋根材2を配置予定箇所に応じた寸法に切断する屋根材切断工程と、切断された屋根材2に、現場において、屋根材カバー1を取り付けるカバー取付工程と、を有する。この施工方法では、現場搬入前に、あらかじめ屋根材2を切断しておくこと(プレカット)ができるので、現場での施工効率が良く、現場において粉塵の問題も発生しない。さらに、この施工方法は、屋根材カバー1を取り付けた屋根材2及び太陽電池モジュール3を野地板4に配置する配置工程を有する。
【0047】
屋根材切断工程では、例えば、太陽電池モジュール3の梁行方向の寸法が屋根材2の同方向における寸法の倍数でない場合に、太陽電池モジュール3に隣接する屋根材2を切断する工程である。例えば、太陽電池モジュール3の同方向における寸法が546mmである場合、屋根材2の同方向における寸法を273mmとする。また、カバー取付工程では、屋根材2の切断面への屋根材カバー1のかぶせ量(桁行方向におけるかぶせ量)を、屋根材2に対する屋根材カバー1のスライド移動によって調整することで、屋根材2と太陽電池モジュール3との隙間の大小に対応できる。
【0048】
なお、本発明の屋根材カバーは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0049】
上記実施形態の屋根材カバー1は、
図1~
図9に示す形状に限らず、他の形状、例えば、前記説明では言及しなかったが、桁行方向における反対側に用いるため、太陽電池モジュール3における桁行方向において対称な形状を有してもよい。
【0050】
また、上記実施形態の屋根材カバー1は、締結部を介して屋根Rの野地板4に固定される野地板固定部7を備えていたが、これを備えなくてもよい。この場合、屋根材カバー1は、野地板4に接着剤により固定されてもよい。
【0051】
上記実施形態の屋根材カバー1は、取り付け状態における棟側縁部16が、本体5よりも上方に位置していたが、場合によっては下方に位置していたり、同一高さに位置していたりしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態の屋根材カバー1では、係止片6が、屋根材カバー1の本体5に対して着脱可能であったが、本体5に着脱不可能に固定されていてもよい。この場合、係止片6は、本体5と一体であってもよい。例えば、本体5の一部を切り欠いて形成した爪部を係止片6として用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1、1a、1b…屋根材カバー、2…屋根材、3…太陽電池モジュール、4…野地板、5…本体、6…係止片、7…野地板固定部(突出片)、10…カバー上面、11…カバー側面、12…側方面取り部、13…軒側側面、14…軒側面取り部、15…延出部、16…棟側縁部、30…発電面(表面)、60…貫通孔、61…端縁、70…貫通孔、100…端縁、101…軒側端縁、R…屋根、S…空間