(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】配電盤用器具取付装置およびスイッチギヤ
(51)【国際特許分類】
H02B 1/04 20060101AFI20250418BHJP
H02B 1/052 20060101ALI20250418BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
H02B1/04 C
H02B1/052
H02B3/00 C
(21)【出願番号】P 2021200521
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク オソン
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-259579(JP,A)
【文献】特開2004-168541(JP,A)
【文献】特開2000-92633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/04
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する金属板と、
前記金属板の一方の面に設けられた器具取付用の支持部材と、
前記金属板の他方の面に設けられた絶縁用の碍子と、
前記金属板の端部に設けられた吊り金具と、
を備えたことを特徴とする配電盤用器具取付装置。
【請求項2】
前記支持部材は器具取付レールであることを特徴とする請求項1に記載の配電盤用器具取付装置。
【請求項3】
前記金属板の前記開口部の形状が楕円形状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配電盤用器具取付装置。
【請求項4】
前記金属板の前記開口部の形状が四角形であり、前記金属板は格子状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配電盤用器具取付装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配電盤用器具取付装置を用い、前記配電盤用器具取付装置に盤内収納機器の制御を行う制御器具が取付けられ配線されていることを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項6】
前記配電盤用器具取付装置が、遮断器のアークスペースに隣接して設けられていることを特徴とする請求項5に記載のスイッチギヤ。
【請求項7】
着脱可能な天板を備え、前記天板を取り外した状態で前記吊り金具を使用して前記配電盤用器具取付装置の上げ下ろしが可能であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のスイッチギヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、配電盤用器具取付装置および配電盤用器具取付装置を使用したスイッチギヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電盤内のスペースが少ないところでは、器具の取付けおよび配線作業の作業性が悪くなる。そのような少ないスペースを利用して器具を取付けている例として、特許文献1がある。特許文献1では、配電盤の扉の一部を折り曲げて支持部材とし、扉の内側に器具取付けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、接地された仕切り板によって複数の部位に切り分けられ、その中に遮断器、避雷器、母線、制御回路などが配置され、各機器のメンテナンスのための引出し機構を持つスイッチギヤでは、配電盤内の器具取付けスペースの確保が問題となる。すなわち、各機器の収納に盤内スペースが取られる一方、収納機器の制御および状態計測などに使用される器具の数量が多く、配電盤の扉および盤内側面だけでは、これらの器具の取付けおよび配線のスペースが十分に確保できないという問題点があった。
【0005】
特に、電鉄変電所向け直流高速遮断器を収納する直流スイッチギヤでは、遮断器の上部に大きなアークスペースを設ける必要があるので、スイッチギヤ内の奥行寸法が取りにくく、さらに器具取付けスペースの確保が困難であるという問題があった。そのため、アークスペース前面に制御器具の取付けスペースを確保する必要があった。
直流スイッチギヤの制御部の側面壁は外部引込み線、盤内配線およびそれらに関係する器具で占有されることが多いため、制御部の最も奥の空間であるアークスペース前面の空間に制御器具を取付ける際は、側面壁に設けられた器具に作業者の身体が接触するため、作業空間が狭く作業性が悪くなるという問題があった。
【0006】
本願は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、スイッチギヤ内での器具取付けスペースの確保が困難な状態であっても、器具取付け配線が容易にできる配電盤用器具取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係わる配電盤用器具取付装置は、開口部を有する金属板と、前記金属板の一方の面に設けられた器具取付用の支持部材と、前記金属板の他方の面に設けられた絶縁用の碍子と、前記金属板の端部に設けられた吊り金具と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本願によれば、配電盤用器具取付装置への金属板に設けた支持部材で器具の取付け配線が容易に行える。また、金属板は開口部により軽量化され、また吊り金具を有するので、吊り金具で吊り下げスイッチギヤ内の狭い器具取付けスペースへの器具配置を容易に行うことができる。また、絶縁用の碍子を有するので、スイッチギヤ内の他の収納機器と絶縁した状態で盤内に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係わるスイッチギヤの側面配置図である。
【
図2】実施の形態1に係わる配電盤用器具取付装置を示す図であり、
図2(A)は正面図、
図2(B)は背面図、
図2(C)は側面図である。
【
図3】実施の形態1に係わる配電盤用器具取付装置を使用したスイッチギヤを示す図であり、
図3(A)は
図1におけるDD断面となる正面図、
図3(B)は
図3(A)のEE断面となる平面図である。
【
図4】実施の形態2に係わる配電盤用器具取付装置を示す図であり、
図4(A)は正面図、
図4(B)は背面図である。
【
図5】実施の形態3に係わる配電盤用器具取付装置を示す図であり、
図5(A)は正面図、
図5(B)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係わるスイッチギヤの側面配置図である。スイッチギヤ200は、仕切り板で区切られた部位に各機器が配置されている配電盤である。本実施の形態では電鉄変電所向け直流高速遮断器を収納する直流スイッチギヤの例を示す。
図1において、直流高速遮断器を収納する遮断器部100、その上に直流電流を遮断するために必要となるアークスペース部110が設けられている。また、遮断器を保守するための断路器部120が設けられている。これらの機器は制御部130に設けられた制御器具によって制御される。本願の配電盤用器具取付装置10は、この制御部130内で制御器具を取付けするために使用される。避雷器部140は、配電盤の最下段に設けられ、床のピットから避雷器接地用ケーブルがつなぎ込まれる。盤内の各機器は、配線部150における電線または導体によって接続されている。
【0011】
図2は配電盤用器具取付装置10を示す図であり、
図2(A)は正面図、
図2(B)は背面図、
図2(C)は側面図である。
図2において、配電盤用器具取付装置10は、開口部2を有する金属板1の一方の面に、器具を取付けるための支持部材となる器具取付レール3と、器具の配線ダクトが取付けられる配線ダクト取付フレーム4とが設けられている。また、金属板1の両サイドはZ形フレーム5によって補強されている。器具取付レール3としては、ドイツ規格であるDINレールなどが用いられ、規格に合った器具の取付けがワンタッチで行えるようになっている。さらに、金属板1の裏面には絶縁用の碍子6がボルトによって固定されており、配電盤用器具取付装置10をスイッチギヤ内の仕切り板などに絶縁された状態でボルト固定できる。碍子6は筒状の碍子であり、筒の両端に互いに絶縁された状態でメスネジが設けられており、ボルトによって支持物に固定できる構造となっている。また、金属板1の端部となる上部には吊り金具7が設けられており、配電盤用器具取付装置10を上部から吊り下げるためのフック穴が設けられている。
【0012】
図3は、スイッチギヤ200内に配電盤用器具取付装置10を設けた例を示す。
図3(A)は
図1のDD断面となる正面図、
図3(B)は
図3(A)のEE断面でみた平面図である。
図3では、配電盤用器具取付装置10はスイッチギヤ200の制御部130にアークスペース部110に隣接して設けられている。配電盤用器具取付装置10には、制御用の器具20および配線ダクト30が設けられ、配線が施されている。また、碍子6によって、アークスペース部110の仕切り板となる前側壁面にボルト固定されている。
【0013】
スイッチギヤ200の工場での組立時は、スイッチギヤ200から外した単独の状態で、配電盤用器具取付装置10への器具の取付けおよび配線の作業が行われる。器具20の取付けには器具取付レール3が使用され、器具間の配線には配線ダクト取付フレーム4に取付けられた配線ダクト30が使用される。また、器具20によっては金属板1に設けられた開口部2を使って裏面配線を施すことが可能である。配電盤用器具取付装置10への器具の取付けおよび配線の作業がスイッチギヤ200の外で行うことができるので、スペース上の制約がなく、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
取付け配線が完了したら、配電盤用器具取付装置10はこれらの器具、配線を搭載したまま吊り金具7を使用してクレーンで吊下げられ、スイッチギヤ200の天井部から制御部130内の設置位置に降ろされる。そのため、スイッチギヤ200の天板は、クレーンによる配電盤用器具取付装置10の上げ下ろしのための着脱可能な構造となっている。この構造により、現地での改造工事においても器具、配線を搭載した配電盤用器具取付装置10を交換または取出し改造することができ、作業時間を短縮し作業性を良くすることが可能となる。また、配電盤用器具取付装置10に搭載された器具と他の機器類を接続する配線にはコネクタ(図示せず)を使用する。このコネクタにより、配電盤用器具取付装置10の外部配線との着脱が容易に行える。
【0015】
以上のように、配電盤用器具取付装置10の金属板1に軽量化のための開口部2を設けたので、配電盤用器具取付装置10を吊下げるときの重量を軽減することができ、大きな重機を用いなくても吊下げが可能となる。
また、開口部2を使用して、取付けられた器具の裏面での配線が可能であり、配線ルートが簡素化できる。
さらに、配電盤用器具取付装置10をアークスペース部110の仕切り板となる前側壁面に碍子6を用いてボルト固定することができる。そのため、制御部130の側面壁に設けられた器具に妨げられて取付け作業ができなかった場所にも器具を配置することが可能となる。また、制御部130の側面壁の使用可能なスペースが増える。作業者にとっても狭い空間で器具の取付けのための作業をする必要がなくなる。
【0016】
実施の形態2.
図4は実施の形態2に係わる配電盤用器具取付装置10を示す図であり、
図4(A)は正面図、
図4(B)は背面図である。実施の形態1に説明した構成部分と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施の形態2において変化した構成部分について説明する。
図4において、配電盤用器具取付装置10の金属板1に設けられた開口部2aは楕円形状を有している。このように金属板1を形成することで、配電盤用器具取付装置10に加わる曲げおよびねじり荷重に対する強度が確保しやすくなる。
このように開口部2aを楕円形状にしても実施の形態1で述べた効果を得ることが可能である。
【0017】
実施の形態3.
図5は実施の形態3に係わる配電盤用器具取付装置10を示す図であり、
図5(A)は正面図、
図5(B)は背面図である。実施の形態1に説明した構成部分と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施の形態3において変化した構成部分について説明する。
図5において、配電盤用器具取付装置10の金属板1に設けられた開口部2bは複数の四角形であり、これらを格子状に並べたものである。このように金属板1を形成することで、配電盤用器具取付装置10の軽量化および裏面配線を考慮した設計がし易くなる。また、四角形の角の部分に丸みとなるR加工を施すことにより、荷重に対する応力集中を防ぎ、強度を上げることができる。
このように開口部2bを四角形にしても実施の形態1で述べた効果を得ることが可能である。
【0018】
実施の形態1から3に述べた金属板1の開口部2の形状以外でも、例えば、網目状、パンチ穴状などの形状でも同じように軽量化を図ることができ、同様な効果を得ることができる。
【0019】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0020】
1 金属板、2,2a,2b 開口部、3 器具取付レール、4 配線ダクト取付フレーム、5 Z形フレーム、6 碍子、7 吊り金具、10 配電盤用器具取付装置、20 器具、30 配線ダクト、100 遮断器部、110 アークスペース部、120 断路器部、130 制御部、140 避雷器部、150 配線部、200 スイッチギヤ。