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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】フルベストラント誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07J 31/00 20060101AFI20250418BHJP
   A61K 31/565 20060101ALN20250418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20250418BHJP
【FI】
C07J31/00
A61K31/565
A61P35/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021549727
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020056463
(87)【国際公開番号】W WO2020187658
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-08-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】102019000004041
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521372998
【氏名又は名称】ファーマバイオス エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】ガボアルディ、マウロ
(72)【発明者】
【氏名】マンフロット、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ディ ジャコモ、マリオ
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】木村 敏康
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV)
【化1】
(IV)
の化合物を、
式(III)
【化2】
(III)
の化合物に変換することを含む、フルベストラント3-ボロン酸(I)の調製方法。
【請求項2】
前記変換が、反応溶媒における、前記式(IV)の化合物と二フッ化水素カリウムとの反応によって起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が、水混和性の溶媒である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水混和性の溶媒が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトン、水及びそれらの混合物の間で選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、水及びアセトンの混合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
以下の工程、
-前記式(III)の化合物の酸化反応により、式(IIa)
【化3】
(IIa)
の化合物を得ることと、
-前記式(IIa)の化合物の加水分解反応により、フルベストラント3-ボロン酸(I)を得ることと、と
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
以下の工程、
-前記式(III)の化合物の加水分解反応により、式(IIb)
【化4】
(IIb)
の化合物を得ることと、
-前記式(IIb)の化合物の酸化反応により、フルベストラント3-ボロン酸(I)を得ることと、と
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(III)の化合物。
【化5】
(III)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルベストラント誘導体、具体的にはフルベストラント-3ボロン酸の調製方法、及びその調製に有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
フルベストラントは、選択的エストロゲン受容体抑制薬(SERD)であり、競合的かつ可逆的に当該受容体に結合して、その抑制及び分解をもたらすことができる。
フルベストラントは、Faslodex(登録商標)の商品名で、薬物として2002年に米国で最初に承認され、次いで2004年に欧州で承認された。フルベストラントは、以前に内分泌療法で治療されていない、又は抗エストロゲン療法で疾患再発した閉経後の女性における、エストロゲン受容体陽性、局所進行又は転移性乳癌の治療のための単剤療法として、及び以前に内分泌療法を受けたことがある女性における、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の局所進行又は転移性乳癌の治療のためのパルボシクリブとの組合せとして示される。
フルベストラントは、経口投与された場合、急速なO-グルクロン酸化及びO-硫酸化を受けて、不活性かつ水溶性である第II相極性代謝産物をもたらすことが知られている。代謝不活性化及び高いクリアランスにより、フルベストラントを標的組織にとって不十分にするか、又は利用できなくする。
したがって、その経口バイオアベイラビリティが低いため、フルベストラントは筋肉内注射によって投与しなければならない。
むしろ最近では、初期の代謝不活性化を防ぐために、3位のヒドロキシ基がボロン酸基で置換されたフルベストラント誘導体、フルベストラント-3ボロン酸が開発されている。そのような変化は、そのSERD特性を付与するステロイド部分を変化させずに維持しながら、フルベストラントの代謝不活性化を減少させ、それによって経口投与後にもバイオアベイラビリティを得る(Jiawang Liu et al.,’’Fulvestrant-3Boronic Acid(ZB716):An Orally Bioavailable Selective Estrogen Receptor Downregulator(SERD)’’J.Med.Chem.2016,59,8134-8140)。
フルベストラント-3ボロン酸、CAS化学名((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)スルフィニル)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)ボロン酸は、式(I)
【化1】
(I)
の化合物であり、国際特許出願第2016004166号明細書に最初に記載されている。
当技術分野で既知のフルベストラント-3ボロン酸の調製のための全ての方法は、取扱い及び精製が困難であり、いくつかの欠点をもたらす中間体の使用を提供する。
特に、文献(J.Med.Chem.2016,59,8134-8140)では、17-アセチルS-デオキソフルベストラントとトリフルオロメタンスルホン酸無水物とのエステル化により、対応するトリフラート(2)を得、次いでこれを酢酸パラジウム(II)及びトリシクロヘキシルホスフィンの存在下でビス(ピナコラト)ジボロンと反応させて、3-ピナコリルボロン酸エステル(3)を得ることを含む、フルベストラント-3-ボロン酸の調製方法(スキームI)が知られている。塩基性条件下で17-アセチル基を除去した後、脱アセチルボロン酸エステル(4)をメタ-クロロ過安息香酸(mCPBA)で酸化して、最終生成物を無色結晶として得る。
スキームI
【化2】
しかし、ボロン酸エステル(3及び4)は油であるため、単離が困難であり、複雑な精製工程を必要とし、これが最終生成物の全体的な収率及び純度を低下させる。更に、エステル4はクロマトグラフィ条件下で不安定であり、可変量の他の望ましくない生成物の形成が生じ、その結果、収率が低下する。
したがって、既知の方法の欠点を克服するフルベストラント-3ボロン酸の合成のための改善された方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際特許出願第2016004166号明細書
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jiawang Liu et al.,’’Fulvestrant-3Boronic Acid(ZB716):An Orally Bioavailable Selective Estrogen Receptor Downregulator(SERD)’’J.Med.Chem.2016,59,8134-8140
【文献】J.Med.Chem.2016,59,8134-8140
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、カリウム17-アセチルS-デオキソフルベストラント3-トリフルオロボレート(略して、カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレート)の形成を通じて生じるフルベストラント-3ボロン酸の調製方法である。化合物カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートは、本発明の更なる目的である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートのXRPDスペクトルである。
図2】カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートのH NMRスペクトルである。
図3】カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートの13C NMRスペクトルである。
図4】カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートのLC-MSスペクトルである。
図5】再結晶化前のカリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートのクロマトグラムである。
図6】再結晶化後のカリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
広範な実験の後、本発明の発明者等は、現在、驚くべきことに、例えば国際公開第2016/004166号に記載されている方法に従って得られたフルベストラント3-ピナコリルボロネートから出発して、新たな中間体、カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートを得ることができ、フルベストラント-3ボロン酸の合成において有利に使用することができることを見出した。
したがって、本発明の目的は、フルベストラント-3ボロン酸の合成方法であって、
式(IV)
【化3】
(IV)
の化合物を、式(III)
【化4】
(III)
の化合物に変換することを含む。
一実施形態では、当該変換により、好適な反応溶媒中で、17-アセチルS-デオキソフルベストラント3-ピナコリルボロネート(IV)と二フッ化水素カリウム(KHF)との反応を提供して、カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレート(III)が得られる。
式(IV)の化合物と二フッ化水素カリウムとのモル比は、約3~約8、好ましくは7であり得る。
二フッ化水素カリウムは、2M~5M、好ましくは4.5Mの濃度を有する水溶液として使用することができる。
本発明によれば、好適な反応溶媒は、任意の水混和性溶媒であり得る。例えば、溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、アセトン、水及びそれらの混合物の中から選択することができる。本発明の特に好ましい実施形態では、溶媒は水及びアセトンの混合物である。
当該変換は、反応混合物を撹拌下、15~30゜Cの温度、好ましくは室温で、約60~120分間、好ましくは90分間維持することによって行うことができる。いずれにせよ、温度及びより長い反応時間は、本変換の重要なパラメータではない。
上記の変換から得られた式(III)の化合物は、本発明の更なる目的である。驚くべきことに、当技術分野で既知のフルベストラント3-ボロン酸の合成のための中間体とは異なり、式(III)の化合物は結晶性固体である。当該結晶性固体は、好適な炭化水素及び水の混合物(結晶化混合物)を反応終了混合物に添加して、式(III)の化合物の沈殿を得ることによって得ることができる。
結晶化混合物中の炭化水素と水との体積比は、約5:1~約5:2、好ましくは16:5であり得る。
好適な炭化水素は、例えば、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン及びメチル-シクロヘキサンの中から選択することができる。好ましい実施形態では、混合物はヘプタン及び水の混合物である。
【0008】
特に好ましい実施形態では、式(III)の化合物の結晶化は、本明細書において報告されるように、ヘプタン:水が16:5の結晶化混合物を反応混合物に添加し、粗固体沈殿物を濾過し、ヘプタン:水が1:1の混合物で洗浄し、次いで、30゜C~50゜C、好ましくは約40゜Cの温度で、好適な期間、例えば2~10時間、好ましくは約5時間乾燥させた後に発生する。乾燥は、真空オーブン、Rotavapor(登録商標)、風乾チャンバ、静止層乾燥機、流動床乾燥機、噴霧乾燥機等を含むがこれらに限定されない当技術分野で既知の方法に従って行うことができる。好ましくは、乾燥は、40゜±5゜Cの真空下のオーブン中における乾燥によって行われる。
この中間体(III)は、既に非常に良好な品質、すなわち>97.0%の純度及び1.0%以下の単一不純物で得られる(図5)。更に、任意の再結晶化により、高収率(回収率>90%)で純度>99.8%の生成物が生じる(図6)。
当該再結晶化は、当技術分野で既知の方法に従って、具体的には、最初に、カリウムフルベストラント3-トリフルオロボレートを温状態で、例えばアセトニトリル等の好適な溶媒に溶解し、次いで得られた溶液を冷却して生成物の沈殿を得、最後に沈殿を濾過によって分離し、乾燥させる、熱-冷結晶化(hot-cold crystallization)によって行うことができる。
油性中間体の欠点を回避することに加えて、式(III)の化合物が結晶形態で得られ、全ての精製工程を通して安定であることは注目に値する。
本発明により得られた式(III)の化合物は、粉末X線回折(XRPD)によっても特性決定されており、XRPDディフラクトグラム(図1)において、以下の特徴的なピーク、5.09、8.03、8.61、10.20、15.37、17.72±0.2度2θのうちの少なくとも3つを示す。
フルベストラント-3ボロン酸は、従来の方法に従って式(III)の化合物から得ることができる。
しかし、本発明者等はまた、式(III)の中間体化合物の形成を通して生じるフルベストラント-3ボロン酸の調製方法を開発した。
本発明によれば、式(III)の化合物、カリウム17-アセチルS-デオキソフルボレート3-トリフルオロボレートは、硫黄原子の酸化反応、並びに17位のアセチル基及び3位のカリウムトリフルオロボレート基の加水分解反応、又はその逆を経て、フルベストラント3-ボロン酸を得ることができる。
したがって、本発明の特に好ましい実施形態は、フルベストラント-3ボロン酸の調製方法であって、以下の工程、
-式(III)の化合物の酸化反応により、式(IIa)
【化5】
(IIa)
の化合物を得ることと、
-式(IIa)の化合物の加水分解反応により、フルベストラント3-ボロン酸(I)を得ることと、と
を更に含む。
本発明の別の特に好ましい実施形態は、フルベストラント-3ボロン酸の調製方法であって、以下の工程、
-式(III)の化合物の加水分解反応により、式(IIb)
【化6】
(IIb)
の化合物を得ることと、
-式(IIb)の化合物の酸化反応により、フルベストラント3-ボロン酸(I)を得ることと、と
を更に含む。
【0009】
より具体的には、加水分解反応は、それぞれ式(IIa)又は(III)の化合物を、好適な反応溶媒中で塩基と反応させることによって行うことができる。
好適な塩基は、水酸化リチウム、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムの中から選択されるアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化リチウムであり得る。
酸化反応は、それぞれ式(III)又は(IIb)の化合物を、好適な反応溶媒中で好適な酸化剤と反応させることによって行うことができる。
好適な酸化剤には、例えば過ヨウ素酸ナトリウムとメタクロロ過安息香酸のどちらか、好ましくは過ヨウ素酸ナトリウムが選択され得る。
好適な反応溶媒は、例えば、メタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びそれらの混合物の中から選択される、プロトン性又は非プロトン性の極性溶媒であり得る。好ましくは、酸化反応において、好適な溶媒は、水、テトラヒドロフラン及びメタノールの混合物である。
上記の酸化及び加水分解反応は、厳密に必要でなくても、不活性下、例えば窒素存在下で行うことが好ましい。
更に、式(IIa)及び(IIb)の両方の中間体化合物が固体であることは注目に値する。
有利には、本発明により得られたフルベストラント-3ボロン酸は、クロマトグラフィカラムを必要とせずに95%までもを超える純度を有し、1つのクロマトグラフィを使用することによって、99%を超える純度を達成することができる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明の発明者等は、これは単に、クロマトグラフィを含まない従来の方法によって精製するのが困難な油性中間体の使用を回避することを可能にする、式(III)の中間体化合物の使用によるものであり得ると考えている。
したがって、本発明を詳細に説明したにもかかわらず、フルベストラント-3ボロン酸の調製のための本方法の唯一の本質的な特徴は、式(III)の中間体化合物であるフルベストラント-3カリウムトリフルオロボレートの形成を介して起こることである。
本開示で使用される全ての用語は、別段の指示がない限り、当技術分野で知られているそれらの一般的な意味で理解されるべきである。
用語「約」は、測定において起こり得る実験誤差の範囲を含む。具体的には、値に言及する場合、それは所与の値のプラス又はマイナス5%を意味し、範囲に言及する場合、それは外側の値のプラス又はマイナス5%を意味する。
本発明をその特性を決定する特徴において説明してきたとしても、当業者に明らかな改変及び等価物は、添付の特許請求の範囲に包含される。以下、本発明をいくつかの実施例によって説明するが、これらは例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0010】
式(III)の化合物のX線回折スペクトル(XRPD)は、CuKα線、シンチレーション検出器及び湾曲グラファイトモノクロメータを備えたBruker D5005回折計を用いて回折ビームに対して行った。アセトニトリルからの結晶化後の式(III)の化合物の試料を、めのう乳鉢で穏やかに粉砕して微粉末を得て、粒子凝集体を崩壊させた。データは、シリコン単結晶低バックグラウンド試料ホルダにおいて室温で収集されている。検出:2θ度、3゜~35゜(2θ)の範囲の角度の測定、0.03゜のステップ及び4s/ステップのカウント時間。
HPLCクロマトグラムは、Agilent1200シリーズの装置を使用して、RP18カラム、150x4.6mm、5μmに10μLの溶液を注入することによって行った。リン酸を添加したアセトニトリル及び水の混合物からなる移動相を用いて試料を勾配溶出した。次いで、225nmの波長を適用することによって化合物を分析した。
H及び13C NMRスペクトルは、25゜CでBruker AVANCE III分光計(500MHz)によって、それぞれ500MHz及び125.8MHzでH及び13Cを観察することにより得た。化学シフトは、テトラメチルシランに対してppmで表され、スペクトルは、試料をアセトンに溶解することによって得られた。
LC-質量分析は、Varian 500MS装置を用いてESI(-)で行った。
【0011】
実施例1:カリウム((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-アセトキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)チオ)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)トリフルオロボレート(III)の合成。
(7R,8R,9S,13S,14S,17S)-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)チオ)ノニル)-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イルアセテートを含む文献(国際公開第2016004166号-実施例2、工程2)に記載されているように得られた粗残渣32gを、アセトン(85.5ml)に溶解し、撹拌下、脱塩水(38、5ml)及び4.5M二フッ化水素カリウム水溶液(57ml)を添加した。反応混合物を室温で90分間維持した。反応の終わりに、水(160ml)及びヘプタン(512ml)を添加した。固体を濾過し、ヘプタン(70ml)及び水(70ml)の混合物で洗浄した。固体を真空下40゜Cのオーブンで5時間乾燥させた。24gのカリウム((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-アセトキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)-チオ)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)トリフルオロボレート(III)をHPLC純度97.2%で得た。
更に、式(III)の化合物を再結晶化することができる。
式(III)の化合物24gを還流温度でアセトニトリル60mlに溶解し、続いて0~10゜Cに冷却した。生成物を濾過し、0~10゜Cでアセトニトリル24mlで洗浄した。生成物を40゜C、真空下で5時間乾燥させた。HPLC純度>99.8%の式(III)の化合物22gを得た。
H NMR:7.24(1H,d,H-1)、7.18(1H,s,H-4)、7.04(3H,d,H-4)、4.69(1H,t,H-17)、2.65(2H,t,-CH-S)、2.53(2H,t,-CH-S)、2.00(3H,s,-CH)、0.86(3H,s,-CH)。
13C NMR:12.5(CH)、21.0(CH)、21.4(tCH)、29.9(tCH)、32.2-23.5(nCH)、34.5(CH)、35.5(CH)、38.1(CH)、39.6(CH)、43.0(CH)、43.9(C)、47.2、83.3、124.5、130.2(CH)、133.0(C)、134.4(CH)、136.5、171.0、206.3(C)。
【0012】
実施例2:カリウム((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-アセトキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)スルフィニル)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)トリフルオロボレート(IIa)の合成。
丸底フラスコ内、及び窒素下で、式(III)の化合物(5.0g、6.9mmol)をTHF(50ml)及びメタノール(10ml)に撹拌下で溶解し、溶液を0~5゜Cにした。別の丸底フラスコ内で、過ヨウ素酸ナトリウム(2.95g、13.8mmol)の水(12ml)中の溶液を30~35゜Cで調製した。過ヨウ素酸ナトリウムの溶液を0~5゜Cで反応混合物に添加した。その後、温度を20~25゜Cにし、反応混合物を反応が完了するまで24~48時間撹拌し続けた。得られた固体を濾過し、THFで洗浄し、10%w/wチオ硫酸ナトリウム水溶液(10ml)で酸化強度を消失させた。有機溶媒を真空下で除去し、混合物を酢酸エチル(50ml)に溶解した。相を分離し、水相を酢酸エチル(25ml)で再度抽出した。回収した有機相を水(25ml)で一回、及び飽和塩化ナトリウム溶液(25ml)で一回洗浄した。溶媒を蒸発させて残渣を得て、4.5カリウム((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-アセトキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)スルフィニル)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)トリフルオロボレート(IIa)をHPLC純度96.5%で得た。
【0013】
実施例3:((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)スルフィニル)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)ボロン酸(I)の合成。
丸底フラスコ内、窒素下で、式(IIa)の化合物(3.0g、4.0mmol)をアセトニトリル(30ml)及び水(10ml)に溶解した。別に、水酸化リチウム(1.2g、28.0mmol)の水(10ml)中の溶液を調製し、0~5゜Cで反応混合物に撹拌下で添加した。温度を20~25゜Cにし、混合物を24~48時間反応させた。反応が完了したら、最大pH5~6の塩化アンモニウム及び塩酸の溶液並びに酢酸エチル(30ml)を添加した。相を分離し、水相を酢酸エチル(15ml)で再度抽出した。回収した有機相を水(15ml)で一回、及び飽和塩化ナトリウム溶液(15ml)で一回洗浄した。溶媒を蒸発させて残渣を得て、2.0gの((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)-スルフィニル)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)ボロン酸(I)をHPLC純度95.0%で得た。
【0014】
実施例4:((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)チオ)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)ボロン酸(IIb)の合成。
丸底フラスコ内、窒素下で、式(III)の化合物(1.0g、1.38mmol)をTHF(5ml)及びMeOH(5ml)に溶解した。別に、水酸化カリウム(0.78g、13.8mmol)のメタノール(5ml)中の溶液を調製し、0~5゜Cで反応混合物に撹拌下で添加した。温度を20~25゜Cにし、混合物を18時間反応させた。反応が完了したら、酢酸をpH5~6まで添加した。有機溶媒を真空下で除去し、酢酸エチル(10ml)を添加した。相を分離し、水相を酢酸エチル(5ml)で再度抽出した。回収した有機相を水(5ml)で1回、及び飽和塩化ナトリウム溶液(5ml)で1回洗浄した。溶媒を蒸発させて残渣を得て、0.85gの((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)-チオ)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)ボロン酸(IIb)をHPLC純度94.2%で得た。
【0015】
実施例5:((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)スルフィニル)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)ボロン酸(I)の合成。
丸底フラスコ内、窒素下で、式(IIb)の化合物(0.66g、1.07mmol)を撹拌しながらTHF(7ml)及びメタノール(1.2ml)に溶解した。別の丸底フラスコ中で、過ヨウ素酸ナトリウム(0.39g、1.7mmol)の水(2ml)中の溶液を30~35゜Cで調製した。過ヨウ素酸ナトリウムの溶液を0~5゜Cで反応混合物に添加した。その後、温度を20~25゜Cにし、反応混合物を反応が完了するまで24~48時間撹拌し続けた。得られた固体を濾過し、THFで洗浄し、10%w/wチオ硫酸ナトリウム水溶液(5ml)で酸化強度を消失させた。有機溶媒を真空下で除去し、混合物を酢酸エチル(10ml)に溶解した。相を分離し、水相を酢酸エチル(5ml)で再度抽出した。回収した有機相を水(5ml)で1回、及び飽和塩化ナトリウム溶液(25ml)で1回洗浄した。溶媒を蒸発させて残渣を得て、0.6gの((7R,8R,9S,13S,14S,17S)-17-ヒドロキシ-13-メチル-7-(9-((4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)-スルフィニル)ノニル)-7,8,9,11,12,13,14,15,16,17-デカヒドロ-6H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)ボロン酸(I)を得た。HPLC純度92%。

図1
図2
図3
図4
図5
図6