(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】アンテナ装置およびレーダ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/08 20060101AFI20250418BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20250418BHJP
H01P 5/04 20060101ALI20250418BHJP
H01P 5/107 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
H01Q21/08
H01Q13/08
H01P5/04 603D
H01P5/107 B
(21)【出願番号】P 2021555952
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2020038911
(87)【国際公開番号】W WO2021095434
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019204650
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 哲也
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-111336(JP,A)
【文献】特開2010-212895(JP,A)
【文献】特開2007-053656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/08
H01Q 13/08
H01P 5/04
H01P 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の第1給電線路と、
端部が前記第1給電線路に接続され、前記第1給電線路から垂直に延伸された複数の第1アンテナ素子と、
からなる第1ラインアンテナと、
前記第1給電線路と平行な仮想線を対称軸として、前記第1ラインアンテナに対して線対称となる、第2給電線路および複数の第2アンテナ素子と、
からなる第2ラインアンテナと、
前記第1給電線路および前記第2給電線路に給電する一つの給電部と、
を備え
、
前記第1ラインアンテナおよび前記第2ラインアンテナを1つのアンテナ組とした場合、2組のアンテナ組を備え、
一方の前記アンテナ組が他方の前記アンテナ組を挟むように設けられ、
前記給電部により各前記アンテナ組に同じ方向から給電が行われる、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1ラインアンテナおよび前記第2ラインアンテナに供給される電流の位相が互いに反転している、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記給電部から供給される電流を分岐して前記第1ラインアンテナおよび前記第2ラインアンテナに供給し、かつ前記第1ラインアンテナおよび前記第2ラインアンテナに供給する電流の位相を互いに反転させる分配器をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1アンテナ素子は、前記第1給電線路から一定の幅で垂直に延伸し、
前記第2アンテナ素子は、前記第2給電線路から一定の幅で垂直に延伸している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記複数の第1アンテナ素子は、いずれも前記第1給電線路の同一側に接続され、
前記複数の第2アンテナ素子は、いずれも前記第2給電線路の同一側に接続されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数の第1アンテナ素子および前記複数の第2アンテナ素子は、前記対称軸に向けて延伸している、請求項1から請求項5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記給電部は、バックショート方式の導波管-マイクロストリップ線路変換器を含む、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置を用いて電波を送受信する送受信部とを備える、レーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2007-53656号公報(特許文献1)には、以下のようなマイクロストリップアレーアンテナが開示されている。すなわち、背面に導体の接地板が形成された誘電体基板と、その誘電体基板上に形成されたストリップ導体とから形成されたマイクロストリップアレーアンテナにおいて、前記ストリップ導体は、線状に配設された給電ストリップ線路と、前記給電ストリップ線路の両側辺のうち少なくとも一方の側辺に沿って所定間隔で、その側辺から接続配列された複数の矩形状の放射アンテナ素子とから成り、前記各放射アンテナ素子は、長さと幅とが異なる矩形形状であり、その長手方向が給電ストリップ線路と概90度となるように接続され、1本の給電ストリップ線路上に、少なくとも1つ以上の線路幅変換構造により、2つ以上の異なる幅の給電ストリップ線路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンテナにおいて高周波の電波を伝搬させる場合、給電線路の伝搬損失による利得低下、ならびに不要放射および反射に起因する特性劣化が大きくなる。高周波の電波についてのアンテナ特性を向上させることが可能な技術が望まれる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、高周波の電波についてのアンテナ特性を向上させることが可能なアンテナ装置およびレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係るアンテナ装置は、直線状の第1給電線路と、端部が前記第1給電線路に接続され、前記第1給電線路から垂直に延伸された複数の第1アンテナ素子と、からなる第1ラインアンテナと、前記第1給電線路と平行な仮想線を対称軸として、前記第1ラインアンテナに対して線対称となる、第2給電線路および複数の第2アンテナ素子と、からなる第2ラインアンテナと、を備える。
【0007】
このように、給電線路にアンテナ素子の端部を接続する構成により、電流の分岐による損失を抑制することができる。そして、給電線路の幅方向に並べられたラインアンテナにおいて、対応する前記アンテナ素子の向きを互いに反転させる構成により、2つのラインアンテナに与える電波の位相を互いに反転させるか、または対応の2つのラインアンテナから伝搬する電波の位相を互いに反転させた場合、対応するアンテナ素子同士において、必要な方向の偏波を強めながら、不要な方向の偏波を弱めることができ、サイドローブ等を抑制することができる。したがって、高周波の電波についてのアンテナ特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高周波の電波についてのアンテナ特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例1の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例1の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例2の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例2の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例1および比較例2において水平偏波が発生する理由を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例3におけるラインアンテナの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例3の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例3において水平偏波が発生する理由を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における分配器の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置において水平偏波が打ち消し合う理由を説明するための図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例1の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例2の構成を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例3の構成を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例4の構成を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例5の構成を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の適用例であるレーダ装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
[比較例1]
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例1の構成を示す図である。
【0012】
図1を参照して、アンテナ装置71は、複数のラインアンテナ51と、分岐部61と、給電部62とを備える。ラインアンテナ51は、複数のアンテナ素子1と、直線状の給電線路2とを含む。
【0013】
アンテナ装置101は、たとえば、漁船等の船舶におけるレーダ装置に用いられる。アンテナ装置71は、たとえば、ミリ波等の高周波の電波の送信および受信の少なくともいずれか一方を行う。アンテナ装置71が電波を放射すべき放射方向Rは、たとえば、
図1の紙面を貫通する方向であって紙面から上方への方向である。
【0014】
各ラインアンテナ51は、給電線路2の幅方向に並んで設けられている。各ラインアンテナ51は、たとえば基板Bにおいて形成されるマイクロストリップラインを用いて実現されている。
【0015】
ラインアンテナ51は、コムラインアンテナである。より詳細には、ラインアンテナ51において、各アンテナ素子1は、給電線路2の延伸方向に沿って並ぶように接続されている。
【0016】
アンテナ素子1は、たとえば矩形状であり、開放されている第1端部と、給電線路2に接続された第2端部とを有する。すなわち、ラインアンテナ51は、直列給電型のアンテナである。各アンテナ素子1は、給電線路2の片側に接続されている。
【0017】
各ラインアンテナ51は、互いに同数のアンテナ素子1を含む。各ラインアンテナ51間において対応するアンテナ素子1が、給電線路2の幅方向に沿って対向している。ラインアンテナ51における複数のアンテナ素子1は、同じ方向に延伸している。
【0018】
たとえば、隣り合うラインアンテナ51において、給電線路2の幅方向におけるアンテナ素子1の中心間の距離が等しくなるように各ラインアンテナ51が配置されている。
【0019】
給電部62は、分岐部61を介して各ラインアンテナ51に給電を行う。給電部62は、たとえば、マイクロストリップラインである給電線路2と図示しない導波管とを電磁的に結合する導波管-マイクロストリップ線路変換器を含む。この変換器は、たとえば、マイクロストリップラインが基板を介して導波管と接続される近接給電方式である。
【0020】
分岐部61は、給電部62から供給される交流電流を分岐して各ラインアンテナ51に供給する。
【0021】
アンテナ装置71では、アンテナ素子1および給電線路2を直接結合する直列給電型のラインアンテナ51を採用する構成により、給電線路2からアンテナ素子1への分岐部が生じる並列給電型と比べて、電流の分岐による損失を抑制することができる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例1の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
【0023】
図2において、縦軸は利得[dB]を示し、横軸は方位角[度]を示す。
図2において、グラフG1およびG2は、それぞれ変換器が設けられたアンテナ装置71の垂直偏波および水平偏波の指向性であり、グラフG3およびG4は、それぞれ変換器が設けられていないアンテナ装置71の垂直偏波および水平偏波の指向性である。また、方位角ゼロ度が上述の放射方向Rの中心に相当し、方位角90度またはマイナス90度が給電線路2の延伸方向に相当する。
【0024】
図2を参照して、グラフG2およびG4より、アンテナ装置71では、水平偏波のサイドローブが大きくなっており、変換器を設けた場合の方が全体的にサイドローブが大きくなっていることが分かる。
【0025】
このように、アンテナ装置71では、近接給電方式を採用しているため、導波管-マイクロストリップ線路変換器からの不要放射が大きく、水平偏波のサイドローブが悪化する課題がある。
【0026】
[比較例2]
次に、アンテナ装置の比較例2について説明する。以下で説明する内容以外は比較例1と同様である。
図3は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例2の構成を示す図である。
【0027】
図3を参照して、アンテナ装置72は、アンテナ装置71と比べて、給電部62の代わりに給電部63を備える。
【0028】
給電部63は、分岐部61を介して各ラインアンテナ51に給電を行う。給電部63は、たとえば、マイクロストリップラインである給電線路2と図示しない導波管とを電磁的に結合する導波管-マイクロストリップ線路変換器を含む。
【0029】
この変換器は、たとえば、マイクロストリップラインの短絡部分を導波管の短絡部分から実効波長の1/4離れた位置に配置し、導波管およびマイクロストリップ線路間で伝送モードの変換を行うバックショート方式である。この変換器は、誘電体導波管の短絡部分を形成する接地部を含む。接地部は、たとえば金属ケースによって実現される。
【0030】
バックショート方式を採用することにより、信号の強度が最大となる位置にマイクロストリップラインの短絡部分を配置することができるため、信号の伝送モードの変換効率を高めることができる。
【0031】
図4は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例2の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
図4において、グラフG11およびG12は、それぞれ変換器が設けられたアンテナ装置72の垂直偏波および水平偏波の指向性であり、グラフG13およびG14は、それぞれ変換器が設けられていないアンテナ装置72の垂直偏波および水平偏波の指向性である。図の見方は
図2と同様である。
【0032】
図4を参照して、アンテナ装置72では、金属ケース等によって変換器からの不要放射を防ぐことができる。
【0033】
その一方で、グラフG12およびG14より、金属ケースにおける反射によって給電線路2の終端部分への方向すなわち方位角90度における水平偏波が強められ、水平偏波のサイドローブが大きくなり、変換器を設けた場合の方がサイドローブが大きくなっていることが分かる。
【0034】
このように、アンテナ装置72でも、アンテナ装置71と同様に、水平偏波のサイドローブが悪化する課題がある。
【0035】
図5は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例1および比較例2において水平偏波が発生する理由を説明するための図である。
【0036】
図5を参照して、ラインアンテナ51では、給電線路2からアンテナ素子1へ斜めに電流が流れることから、垂直偏波および水平偏波が発生する。そして、各ラインアンテナ51間で対向するアンテナ素子1において、あるタイミングにおける電流I1およびI2の向きが同じであることから、各ラインアンテナ51によって発生する垂直偏波V1およびV2同士が強め合うとともに、各ラインアンテナ51によって発生する水平偏波H1およびH2同士が強め合う。すなわち、各ラインアンテナ51による水平偏波のサイドローブが強め合うことになる。
【0037】
[比較例3]
次に、アンテナ装置の比較例3について説明する。以下で説明する内容以外は比較例1と同様である。
【0038】
図6は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例3におけるラインアンテナの構成を示す図である。
【0039】
図6を参照して、アンテナ装置73は、アンテナ装置71と比べて、ラインアンテナ51の代わりにラインアンテナ52を備える。
【0040】
ラインアンテナ52は、コムラインアンテナである。より詳細には、ラインアンテナ52において、各アンテナ素子1は、直線状の給電線路2の延伸方向に沿って並ぶように、かつ給電線路2の両側に交互に接続されている。
【0041】
図7は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例3の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
図7において、グラフG21およびG22は、アンテナ装置71,72と同様にそれぞれ各アンテナ素子1が給電線路2の片側に接続されたアンテナ装置の垂直偏波および水平偏波の指向性であり、グラフG23およびG24は、それぞれアンテナ装置73の垂直偏波および水平偏波の指向性である。図の見方は
図2と同様である。
【0042】
図8は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の比較例3において水平偏波が発生する理由を説明するための図である。
【0043】
図7および
図8を参照して、ラインアンテナ52において、給電線路2の両側にわたり給電線路2の延伸方向に沿って隣り合うアンテナ素子1の間隔は、ラインアンテナ52を形成する基板Bを伝搬する電波の波長λsの約1/2である。このため、隣り合うアンテナ素子1には、位相が反転した電流I1およびI2がそれぞれ供給されることから、放射方向Rにおいて水平偏波が打ち消し合う。
【0044】
その一方で、給電線路2の終端部分へ向かう方向においては、アンテナ素子1の間隔が約λs/2であることから、電波が次のアンテナ素子1に伝搬する間に位相が180度回転して同相になり、水平偏波が強め合う。
【0045】
このため、グラフG22およびG24より、アンテナ装置73では、給電線路2の終端部分へ向かう方向において、水平偏波のサイドローブがより大きくなることが分かる。
【0046】
このように、アンテナ装置73でも、アンテナ装置71,72と同様に、水平偏波のサイドローブが悪化する課題がある。
【0047】
そこで、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、以下のような構成により、上述のような課題を解決する。
【0048】
[構成]
図9は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【0049】
図9を参照して、アンテナ装置101は、1または複数のアンテナ組と、分配器21と、給電部22とを備える。アンテナ組は、2つのラインアンテナ11によって構成される。すなわち、アンテナ組は、2つのラインアンテナ11を含む。
【0050】
図9に示す例では、アンテナ装置101は、2つのアンテナ組31,32を備える。アンテナ組31は、ラインアンテナ11であるラインアンテナ11A,11Bを含む。アンテナ組32は、ラインアンテナ11であるラインアンテナ11C,11Dを含む。ラインアンテナ11は、複数のアンテナ素子1と、直線状の給電線路2とを含む。
【0051】
すなわち、アンテナ装置101は、ラインアンテナ11が偶数列配置された2次元アレイ構成である。
【0052】
2つのアンテナ組が、給電線路2の幅方向に並んで設けられている。そして、一方のアンテナ組が他方のアンテナ組を挟むように設けられている。
【0053】
アンテナ装置101は、たとえば、漁船等の船舶におけるレーダ装置に用いられる。アンテナ装置101は、たとえば、ミリ波等の高周波の電波の送信および受信の少なくともいずれか一方を行う。アンテナ装置101が電波を放射すべき放射方向Rは、たとえば、
図1の紙面を貫通する方向であって紙面から上方への方向である。
【0054】
各ラインアンテナ11は、給電線路2の幅方向に並んで設けられている。各ラインアンテナ11は、たとえば基板Bにおいて形成されるマイクロストリップラインを用いて実現されている。
【0055】
ラインアンテナ11は、コムラインアンテナである。より詳細には、ラインアンテナ11において、各アンテナ素子1は、給電線路2の延伸方向に沿って並ぶように接続されている。各アンテナ素子1は、給電線路2から垂直に延伸されている。
【0056】
アンテナ素子1は、たとえば矩形状であり、開放されている第1端部と、給電線路2に接続された第2端部とを有する。すなわち、ラインアンテナ11は、直列給電型のアンテナである。ラインアンテナ11における各アンテナ素子1は、給電線路2の片側に接続されている、すなわち、いずれも給電線路2の同一側に接続されている。
【0057】
なお、アンテナ素子1の形状は、矩形に限らず、他の形状であってもよい。すなわち、ラインアンテナ11は、各アンテナ素子1の端部が給電線路2に接続された、直列給電型であればよい。
【0058】
アンテナ組において、ラインアンテナ11は、互いに同数のアンテナ素子1を含む。当該各ラインアンテナ11間において対応するアンテナ素子1が、給電線路2の幅方向に沿って対向している。そして、当該各ラインアンテナ11間において対応するアンテナ素子1の延伸方向が互いに反転している。すなわち、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11は、自己のアンテナ組の、給電線路2の延伸方向に沿った中心軸に対して線対称の位置に設けられている。具体的には、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11の一方における給電線路2および複数のアンテナ素子1は、給電線路2と平行な仮想線Lを対称軸として、他方のラインアンテナ11に対して線対称となっている。
【0059】
また、たとえば、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11において、各アンテナ素子1が、他方のラインアンテナ11に向けて延伸している、すなわち、仮想線Lに向けて延伸している。
【0060】
たとえば、隣り合うラインアンテナ11において、給電線路2の幅方向におけるアンテナ素子1の中心間の距離が等しくなるように各ラインアンテナ11が配置されている。
【0061】
給電部22は、分配器21を介して各ラインアンテナ11に給電を行う。給電部22は、たとえば、比較例2の給電部63と同様に、バックショート方式の導波管-マイクロストリップ線路変換器を含む。なお、給電部22は、近接給電方式の導波管-マイクロストリップ線路変換器を含む構成であってもよい。
【0062】
アンテナ装置101では、アンテナ素子1および給電線路2を直接結合する直列給電型のラインアンテナ11を採用する構成により、給電線路2からアンテナ素子1への分岐部が生じる並列給電型と比べて、電流の分岐による損失を抑制することができる。
【0063】
図10は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置における分配器の構成を示す図である。
【0064】
図10を参照して、アンテナ装置101は、たとえば、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11に供給する電流の位相を互いに反転させる位相シフタを備える。すなわち、位相シフタは、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11に与える電波の位相を互いに反転させるか、またはアンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11から伝搬する電波の位相を互いに反転させる。
【0065】
位相シフタは、分配器21によって実現されている。より詳細には、分配器21は、線路41~46を有する。給電部22からの交流電流が、分岐されて線路41に供給され、そしてさらに分岐されて、ラインアンテナ11C,11Aにそれぞれ接続される線路43,44に供給される。給電部22からの交流電流が、分岐されて線路42に供給され、そしてさらに分岐されて、ラインアンテナ11B,11Dにそれぞれ接続される線路45,46に供給される。
【0066】
分配器21では、線路41の長さをLuとし、線路42の長さをLdとすると、Lu-Ld=λs/2が成り立つように、線路41,42の長さが設定されている。また、線路43~46の長さが等しくなるように設定されている。
【0067】
これにより、アンテナ組31,32の各々における対応の2つのラインアンテナ11に供給する交流電流の位相を互いに反転させることができる。
【0068】
すなわち、アンテナ組31,32の各々において、対応の2つのラインアンテナに与える電波の位相を互いに反転させるか、または2つのラインアンテナから伝搬する電波の位相を互いに反転させることができる。
【0069】
なお、アンテナ装置101は、位相シフタを備える構成に限らず、給電部22に導波管を介して接続される送受信部等に位相シフタが設けられる構成であってもよい。
【0070】
図11は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の水平面指向性のシミュレーション結果を示す図である。
図11において、グラフG31およびG32は、それぞれ変換器が設けられたアンテナ装置101の垂直偏波および水平偏波の指向性であり、グラフG33およびG34は、それぞれ変換器が設けられていないアンテナ装置101の垂直偏波および水平偏波の指向性である。図の見方は
図2と同様である。
【0071】
図12は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置において水平偏波が打ち消し合う理由を説明するための図である。
【0072】
図11および
図12を参照して、ラインアンテナ11では、比較例1~3と同様に、給電線路2からアンテナ素子1へ斜めに電流が流れることから、垂直偏波および水平偏波が発生する。
【0073】
その一方で、アンテナ装置101では、分配器21により、アンテナ組における2つのラインアンテナ11に位相が180度異なる交流電流を供給するとともに、各ラインアンテナ11間において対応するアンテナ素子1の延伸方向が互いに反転している。
【0074】
このような構成により、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ、たとえばラインアンテナ11A,11Bにおいて、たとえばあるタイミングにおける電流I1およびI2の向きがそれぞれ
図12の紙面右斜め上方向および左斜め上方向となり、ラインアンテナ11A,11Bによって発生する垂直偏波V1およびV2同士が強め合うとともに、ラインアンテナ11A,11Bによって発生する水平偏波H1およびH2が打ち消し合う。
【0075】
これにより、アンテナ装置101では、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナによって垂直偏波を強めながら水平偏波のサイドローブを抑制することができ、高周波領域においても良好なアンテナ特性を実現することができる。
【0076】
具体的には、グラフG34より、給電線路2の終端部分への方向すなわち方位角90度における水平偏波のサイドローブが、たとえば
図4のグラフG14に示すアンテナ装置72の特性と比べて抑制されていることが分かる。また、グラフG32より、変換器が設けられた場合でも、上記水平偏波のサイドローブが、たとえば
図4のグラフG12に示すアンテナ装置72の特性と比べて抑制されていることが分かる。
【0077】
また、2つのアンテナ組31,32を用いる構成により、
図11に示すようにメインローブのビーム幅を20度~30度程度に設定することができる。なお、ビームをより鋭くする場合には、アンテナ装置101をより多数のアンテナ組を備える構成とすればよい。
【0078】
[変形例]
次に、アンテナ装置の変形例について説明する。以下で説明する内容以外は上述のアンテナ装置101と同様である。
【0079】
図13は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例1の構成を示す図である。
【0080】
図13を参照して、アンテナ装置101は、1つのアンテナ組を備える構成であってもよい。
【0081】
図14は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例2の構成を示す図である。
【0082】
図14を参照して、アンテナ装置101は、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11において、各アンテナ素子1が、他方のラインアンテナ51に対して、すなわち仮想線Lに対して反対側に向けて延伸している構成であってもよい。
【0083】
図15は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例3の構成を示す図である。
【0084】
図15を参照して、アンテナ装置101は、2つのラインアンテナ51における各アンテナ素子1が、他方のラインアンテナ51に向けて、すなわち仮想線Lに向けて延伸しているアンテナ組と、2つのラインアンテナ51における各アンテナ素子1が、他方のラインアンテナ51に対して、すなわち仮想線Lに対して反対側に向けて延伸しているアンテナ組とを備える構成であってもよい。
【0085】
図16は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例4の構成を示す図である。
【0086】
図16を参照して、アンテナ装置101は、比較例3と同様の、2つのラインアンテナ52を含む1または複数のアンテナ組を備える構成であってもよい。
【0087】
図16に示す例では、アンテナ装置101は、1つのアンテナ組33を備える。
【0088】
アンテナ組33は、ラインアンテナ52であるラインアンテナ52A,52Bを含む。ラインアンテナ52A,52Bは、互いに同数のアンテナ素子1を含む。ラインアンテナ52A,52B間において対応するアンテナ素子1が、給電線路2の幅方向に沿って対向している。そして、ラインアンテナ52A,52B間において対応するアンテナ素子1の延伸方向が互いに反転している。
【0089】
図17は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の変形例5の構成を示す図である。
【0090】
図17を参照して、アンテナ装置101は、ラインアンテナ11における各アンテナ素子1の数が、アンテナ組間で異なる構成であってもよい。
【0091】
[レーダ装置]
図18は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の適用例であるレーダ装置の構成の一例を示す図である。
【0092】
図18を参照して、レーダ装置201は、たとえば漁船等の船舶に用いられ、空中線部99と、制御部83と、表示部84と、操作部85とを備える。空中線部99は、アンテナ装置101と、送受信部81と、信号処理部82とを含む。送受信部81は、変調部91と、送信部92と、送受切り替え部93と、周波数変換・増幅部94と、検波部95と、映像増幅部96とを有する。
【0093】
空中線部99は、アンテナ装置101を回転させる図示しない駆動部を含む。空中線部99における送受信部81は、アンテナ装置101を用いて電波を送受信する。
【0094】
より詳細には、制御部83は、操作部85において受け付けたユーザの操作を示す操作情報を操作部85から受けて、レーダ装置201における各ユニットを制御する。
【0095】
信号処理部82は、制御部83の制御に従い、トリガ信号を変調部91へ出力する。
【0096】
変調部91は、信号処理部82からトリガ信号を受けて、パルス電圧を作成して送信部92へ出力する。
【0097】
送信部92は、変調部91から受けたパルス電圧に応じた電波を生成し、送受切り替え部93および図示しない導波管を介してアンテナ装置101へ出力する。
【0098】
アンテナ装置101は、送信部92から受けた電波を放射する。また、アンテナ装置101は、放射した電波が物標において反射した反射波を受信し、図示しない導波管および送受切り替え部93を介して周波数変換・増幅部94へ出力する。
【0099】
周波数変換・増幅部94は、アンテナ装置101から受けた電波をダウンコンバートおよび増幅し、増幅した信号を検波部95へ出力する。
【0100】
検波部95は、周波数変換・増幅部94から受けた信号を検波することによって映像信号を生成し、映像増幅部96へ出力する。
【0101】
映像増幅部96は、検波部95から受けた映像信号を増幅して信号処理部82へ出力する。
【0102】
信号処理部82は、映像増幅部96から受けた映像信号に所定の信号処理を行い、信号処理後のデジタル信号を制御部83へ出力する。
【0103】
制御部83は、信号処理部82から受けたデジタル信号を映像情報に変換し、レーダ装置201に接続されたセンサ等の他の機器の映像情報とともに表示部84へ出力する。
【0104】
表示部84は、制御部83から受けた映像情報、すなわちレーダ映像および各種センサの情報等を画面に表示する。
【0105】
なお、アンテナ装置101は、電波の送信のみを行う装置に用いられてもよいし、電波の受信のみを行う装置に用いられてもよい。
【0106】
ところで、アンテナにおいて高周波の電波を伝搬させる場合、給電線路の伝搬損失による利得低下、ならびに不要放射および反射に起因する特性劣化が大きくなる。高周波の電波についてのアンテナ特性を向上させることが可能な技術が望まれる。
【0107】
これに対して、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11は、直線状の給電線路2と、端部が給電線路2に接続され、かつ給電線路2から垂直に延伸されている複数のアンテナ素子1とを含む。当該2つのラインアンテナ11の一方における給電線路2および複数のアンテナ素子1は、給電線路2と平行な仮想線Lを対称軸として、他方のラインアンテナ11に対して線対称となっている。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係るレーダ装置は、アンテナ装置101と、アンテナ装置101を用いて電波を送受信する送受信部81とを備える。
【0109】
このように、給電線路にアンテナ素子の端部を接続する構成により、電流の分岐による損失を抑制することができる。そして、2つのラインアンテナを線対称とする構成により、2つのラインアンテナに与える電波の位相を互いに反転させるか、または対応の2つのラインアンテナから伝搬する電波の位相を互いに反転させた場合、対応するアンテナ素子同士において、必要な方向の偏波を強めながら、不要な方向の偏波を弱めることができ、サイドローブ等を抑制することができる。
【0110】
したがって、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置およびレーダ装置では、高周波の電波についてのアンテナ特性を向上させることができる。
【0111】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナに供給される電流の位相が互いに反転している。
【0112】
このような構成により、アンテナ装置において、簡易な構成で、特定の方向の電波の位相を2つのラインアンテナ間で互いに反転させることができる。
【0113】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、分配器21は、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11に供給する電流の位相を互いに反転させる。
【0114】
このような構成により、分配器を利用して効率的に位相シフタの機能を実装することができる。
【0115】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、ラインアンテナ11における各アンテナ素子1は、いずれも給電線路2の同一側に接続されている。
【0116】
このような構成により、給電線路の幅方向におけるアンテナ装置のサイズを小さくすることができるため、たとえばグレーティングローブを抑制することができ、アンテナ特性を向上させることができる。
【0117】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、アンテナ組を構成する2つのラインアンテナ11において、各アンテナ素子1は、仮想線Lに向けて延伸している。
【0118】
このような構成により、たとえば、給電線路の幅方向における中央側に位置するアンテナ組の2つのラインアンテナにおいて、給電線路間の干渉を避けるために設ける当該給電線路間のスペースにアンテナ素子を配置することができるため、給電線路の幅方向におけるアンテナ装置のサイズをさらに小さくすることができ、たとえばグレーティングローブをさらに抑制することができる。
【0119】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、2つのアンテナ組が設けられ、一方のアンテナ組が他方のアンテナ組を挟むように設けられている。
【0120】
このような構成により、より適切な値のビーム幅を実現することができる。
【0121】
また、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置では、給電部22は、バックショート方式の導波管-マイクロストリップ線路変換器を含み、各給電線路2に給電する。
【0122】
このような構成により、接地部を構成する金属ケース等における電波の反射によってサイドローブが大きくなりやすいアンテナ装置において、サイドローブを抑制し、アンテナ特性を向上させることができる。
【0123】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 アンテナ素子
2 給電線路
11A,11B,11C,11D,51,52,52A,52B ラインアンテナ
21 分配器
22,62,63 給電部
31,32,33 アンテナ組
41~46 線路
61 分岐部
81 送受信部
82 信号処理部
83 制御部
84 表示部
85 操作部
91 変調部
92 送信部
93 送受切り替え部
94 周波数変換・増幅部
95 検波部
96 映像増幅部
99 空中線部
71,72,73,101 アンテナ装置
201 レーダ装置