(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池のプレリチオ化方法及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20250418BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20250418BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250418BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20250418BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250418BHJP
H01M 50/70 20210101ALI20250418BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20250418BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20250418BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20250418BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0587
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/587
H01M50/70
H01M4/1393
H01M4/1395
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022574413
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(86)【国際出願番号】 CN2022070955
(87)【国際公開番号】W WO2023024404
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】202110998587.X
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521437965
【氏名又は名称】ホーフェイ ゴション ハイテク パワー エナジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】徐興無
(72)【発明者】
【氏名】林少雄
(72)【発明者】
【氏名】劉超輝
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113113679(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107768743(CN,A)
【文献】特表2020-518991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 4/13-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常のリチウムイオン電池の製造過程において、電解液を注入する前に、コア本体に、1つ以上のリチウム源複合シートを設置し、かつ、少なくとも1つの前記リチウム源複合シートをリチウムイオン電池の負極タブに接続するステップと、
電解液を注入し、電解液を前記リチウム源複合シートに含浸させ、負極をプレリチオ化するステップと、を含み、
電池のプレリチオ量が5%SOC未満である場合、電池内部の電解液を動的に保持する措置を講じず、電池のプレリチオ量が10%SOCよりも多い場合、電池内部の電解液を動的に保持する措置を講じ、電解液を動的に保持する措置としては、リチウムイオン電池の回転、リチウムイオン電池の振動、リチウムイオン電池のセル内部に不活性ガスを入れること、又は電解液を電磁的に撹拌すること、を含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池のプレリチオ化方法。
【請求項2】
前記リチウム源複合シートは、リチウム箔と金属箔とが複合して形成された金属複合リチウムシートである、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属箔は、銅箔、ニッケル箔、又は白金箔である、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
コア本体に接近する前記リチウム源複合シートの面には、リチウムイオンの通過を阻止することができる阻止部材が設置され、リチウムイオン電池ケースに接近する前記リチウム源複合シートの面には、絶縁性の多孔質弾性材料が設置される、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記阻止部材は、金属箔又は絶縁テープである、
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リチウム源複合シートの厚さは、コア本体の厚さを超えない、
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウム源複合シートの厚さは、5~500μmである、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リチウム源複合シートは、負極タブに直接接続されて負極をプレリチオ化するか、又は、
前記リチウム源複合シートは、リチウムイオン電池の負極タブに外付け回路で接続されて負極をプレリチオ化する第3の電極に接続され、リチウムイオン電池が化成した後、第3の電極は、リチウムイオン電池の正極タブに外付け回路で接続されて正極をプレリチオ化する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウム源複合シートが負極タブに直接接続される場合、前記リチウム源複合シートと前記負極タブとの接続は、リチウムイオン電池のケースの内部に位置する、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池に注液口が設置され、第3の電極は、注液口を介して外付け回路で正極タブ又は負極タブと連通し、外付け回路の充放電機器は、放電状態において、電池がプレリチオ反応を起こす、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コア本体は、正極シート、負極シート、セパレータからなり、リチウムイオン電池のコア本体の表面及び/又は置かれ可能な他の空間内には少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置され、
又は、前記リチウムイオン電池は、互いに直列又は並列に接続されたいくつかのコア本体からなるコア本体の集合体を含み、前記コア本体の集合体における各コア本体の表面及び/又は置かれ可能な他の空間内には少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置される、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記コア本体は、正極シート、負極シート、セパレータからなり、
前記リチウムイオン電池のコア本体は、積層コアであり、前記積層コアの少なくとも片側の表面に少なくとも1つのリチウム源複合シートが設置され、又は前記積層コアの両側の表面に少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置され、又は側面及び置かれ可能な他の空間内にリチウム源複合シートが置かれ、
又は、前記リチウムイオン電池のコア本体は、巻きコアであり、前記巻きコアの側面又は頂面に少なくとも1つのリチウム源複合シートが設置され、前記リチウム源複合シートは、前記巻きコアの側面に被覆され、
又は、前記リチウムイオン電池は、互いに直列又は並列に接続されたいくつかのコア本体からなるコア本体の集合体を含み、前記コア本体の集合体における各コア本体の少なくとも片側の表面には少なくとも1つのリチウム源複合シートが設置される、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記リチウムイオン電池のコア本体の負極は、シリコン負極、黒鉛負極、チタン酸リチウム負極、スズ負極のうちの1種又は2種以上の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記負極は、シリコン含有負極であり、前記リチウム源複合シートは、前記リチウムイオン電池のケース内において負極のために予め保留された膨れ空間内に位置する、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
正極をプレリチオ化する電流は、0.00001C~1Cである、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記正極をプレリチオ化する電流は、0.0001C~0.5Cである、
ことを特徴とする請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
正極をプレリチオ化する過程において、定電圧放電の方式で行われ、電圧は、2.5V~3.5Vである、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記電圧は、3.0V~3.4Vである、
ことを特徴とする請求項1
7に記載の方法。
【請求項19】
正極のプレリチオ化は、間欠の方式で行われ、間欠の時間間隔は、1~3600秒である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記時間間隔は、60~600秒である、
ことを特徴とする請求項1
9に記載の方法。
【請求項21】
Ah当たりに必要とされる理論上のプレリチオ量Yの計算式は、以下に示され、
Y=1000nF/3.6A、
ここで、nは、Liカウント個数で、Fは、ファラデー定数で、Aは、リチウムの原子量であり、必要とされるAh数は、損失の初回効率にセルの設計容量を乗じたものに等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記プレリチオ化の時間は、8h~200hである、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池のプレリチオ化方法及びリチウムイオン電池に関し、リチウムイオン電池の生産技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車の電動化は、世界的に不可逆な流れとなっており、そのため、電気自動車の中核部品であるリチウムイオン電池に対する要求が高まっている。絶えず高まるエネルギー密度及びサイクル寿命に重点が置かれ、例えば、三元半固体電池は、重量エネルギー密度が350~400Wh/Kg以上であるように要求され、リン酸鉄リチウム単電池は、重量エネルギー密度が230Wh/Kg以上であるように要求され、サイクル寿命が15000回以上であるように要求されることなどである。このとき、シリコン含有負極材料を使用する必要があり、プレリチオ化技術の本格的な工業化への応用がますます差し迫ってきている。一方、携帯電子機器(携帯電話など)においても、同様に高容量化(より長い待受時間など)及び長寿命化が求められている。
【0003】
シリコン負極とは、一般的には金属シリコン(Si)又は一酸化シリコン(SiO)を指す。Siは、常温でLiとLi15Si4合金を形成することができ、理論的なグラム容量が3579mAh/gで、黒鉛負極の10倍である。しかし、合金が形成される過程には、シリコンの体積膨れ率は、約300~400%であり、負極及びセル全体の膨れをもたらす一方、膨れが大きすぎるとシリコン含有粒子材料の崩壊を招き、大量の新表面が再生されることで、大量のリチウムイオンが消費される。一般的に、黒鉛負極は、化成過程に負極によりSEIフィルムが形成されるために消費される不可逆リチウムイオンが約6%であるが、シリコン含有負極は、約10~20%のリチウムイオンを消費する。これはシリコン含有負極化成時の初回効率が低い要因となっている。
【0004】
この問題を解決するために、学術界及び産業界は、プレリチオ化技術(又はリチウム補給技術)について多くの研究を行っており、文献「リチウムイオン電池のリチウム補給技術」(「エネルギー貯蔵科学と技術」2021年5月、第10巻第3期)は、当該技術を概説している。要約すると、現在、主なプレリチオ化技術は、金属リチウム粉体プレリチオ化、金属リチウム箔圧延プレリチオ、金属リチウム蒸着プレリチオ、正極添加剤プレリチオ、電気化学プレリチオなどに分けられる。
【0005】
FMC会社の中国出願特許(公告番号CN1290209C)は、金属リチウム粉末プレリチオ化方法を提供する。しかし、当該方法は、プロセスに対する要求が極めて高く、原料や過程のコストも非常に高いため、未だ産業的に応用されていない。
【0006】
公開番号CN112310336A及びCN112397682Aの中国特許出願は、金属リチウム箔圧延プレリチオの装置及び方法を開示する。当該装置は、非常に複雑であり、過程制御の要求が非常に高く、環境制御の要求が厳しく、かつ大きな安全上の懸念を有する。また、当該方法は、特別に要求される潤滑剤、離型剤、及び担持材料などを使用するため、製造コストが非常に高い。
【0007】
公開番号CN111430659Aの中国特許出願は、真空蒸着によるプレリチオ化方法を開示する。当該方法は、金属リチウム蒸着層が薄くて均一であるという利点を有するが、真空蒸着機器が高価であり、産業的に応用しにくいという顕著な欠点がある。
【0008】
正極リチウム補給添加剤としては、現在、主に、Li2O、Li2S、Li3N、Li4FeO5、Li6CoO4、Li2NiO2、Li4DHBNなどがある。しかし、当該方法では、プレリチオした後の残留物が電池のエネルギー密度及び性能に影響を与えるとともに、副作用(ガス発生など)が多く、産業的に応用する要求に応じる添加剤はいまだに知られていない。
【0009】
許可公告番号CN105845894Bの特許は、電気化学的湿式プレリチオ化方法を提供する。当該方法は、実施過程において、負極モノリシックに対してプレリチオして電池を組み立てる方法が依然として複雑であり、さらなる改良が必要であることを見出した。開示番号CN110224182Aの特許出願は、電気化学的な「湿式プレリチオ」の改良手段を開示するが、当該方法は、プレリチオが完了した後に、裸のセルを取り出すステップを有し、依然として最も簡単なプロセスではない。開示番号CN110061299Aの特許出願は、電気化学的にプレリチオする方法を開示する。当該方法は、セルのカバープレートに円孔を開け、金属電極及び金属リチウムをセル内部に入れて電気化学的なプレリチオを行ってから取り出す必要がある。注液後に孔を開けて再封止することは困難であり、液漏れのリスクがあるため、当該方法は、産業的に応用しにくい。また、当該方法は、金属リチウムの溶出及びシートにおける局所的なリチウム析出のリスクもある。公開番号CN111969266Aの特許出願は、円筒型リチウムイオン電池の自動プレリチオ化方法を開示する。当該方法は、円筒型電池のみに限定され、金属リチウムを円筒型電池の中心孔に入れて負極ケースと接触させることで、自動的にプレリチオ化を完了する。当該方法では、局所的にリチウム金属を集中して置くことでセルに局所的なリチウム析出が生じ、その産業化には依然として大きな限界がある。また、電気化学的にプレリチオする方法の最大の問題点は、プレリチオに要する時間が極めて長いこと、プレリチオ量が少ないこと、金属リチウム粒子が溶出しやすいことなどである。
【0010】
以上のように、現在の各種プレリチオ化方法は、依然として様々な欠点があり、本格の産業化には至っていない。従って、産業的な応用を図るために、簡便で行いやすく、コストが低いプレリチオ化方法を見出す必要性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、電気化学的なプレリチオ化の時間が長く、プレリチオ量が低く、プレリチオが不均一であり、金属リチウム粒子が溶出するなどの技術的問題を解決するために、負極に接続されたリチウム源複合シートをセル内部に設置することで、負極のプレリチオ化過程を実現でき、電池が高いエネルギー密度と長い寿命を有するリチウムイオン電池のプレリチオ化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、リチウムイオン電池のプレリチオ化方法を提供し、当該方法は、産業化しやすく、コストが低い電気化学的なプレリチオ化方法であり、
通常のリチウムイオン電池の製造過程において、電解液を注入する前に、コア本体(例えば、巻きコア又は積層コア、以下同様である)に、1つ以上のリチウム源複合シートを設置し、かつ、少なくとも1つの前記リチウム源複合シートをリチウムイオン電池の負極タブに接続するステップと、
電解液を注入し、電解液を前記リチウム源複合シートに含浸させ、負極をプレリチオ化するステップと、を含む。
【0013】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、前記リチウム源複合シートは、リチウム箔と金属箔とが複合して形成された金属複合リチウムシート(例えば、1層のリチウム箔と1層の金属箔との複合構造、又は2層のリチウム箔が1層の金属箔の両側の表面にそれぞれ設置された「サンドイッチ」構造)であり、ここで、前記金属箔は、銅箔、ニッケル箔、又は白金箔などを含む、集電体として一般に使用される金属箔であってもよく、又は、前記リチウム源複合シートは、金属リチウムと電気化学的性質が近いリチウム含有物質で作られる。
【0014】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、リチウム源複合シートの形状は、必要に応じて設置してもよく、好ましくは、シート状、ストリップ状、又はテープ状であり、タブを備えることができる。
【0015】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、コア本体に接近する前記リチウム源複合シートの面(例えば正極シート又は負極シートに面する面)には、リチウムイオンの通過を阻止することができる阻止部材が設置される。阻止部材を設置することにより、リチウムの局所的な析出を阻止することができる。前記阻止部材は、好ましくは、金属箔又は絶縁テープであってもよい。1層のリチウム箔と1層の金属箔との複合構造を有するリチウム源複合シートを用いる場合、リチウム箔が設置されていない金属箔の表面を正極シート又は負極シートに向けて阻止することを実現することができる。
【0016】
前記リチウム源シートのリチウム含有量は、リチウム析出が生じるほど過剰でなく、かつプレリチオ量の要求を満たさないほど不十分でないように、適切であり、しかも、サイクル過程におけるリチウム補給の必要性も考慮する必要がある。言い換えれば、前記リチウム源シートの厚さは、置かれた空間内に入れることができるように、かつプレリチオの過程に脱落できないように、適切であり、しかも、プレリチオ化が完了した後にリチウムが完全に消費されることができる。この原理における任意の厚さは、いずれも本特許の保護範囲内に属する。具体的には、本発明の実施手段によれば、好ましくは、前記リチウム源複合シートの厚さは、コア本体の厚さを超えない。前記リチウム源複合シートの厚さは、5~500μm、好ましくは20~300μm、より好ましくは30~280μm、さらに好ましくは50~250μm、例えば50μm、80μm、150μm、200μm、220μmなどの前記範囲内容の具体的な数値であればよい。
【0017】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、リチウムイオン電池ケースに接近する前記リチウム源複合シートの面には、絶縁性の多孔質弾性材料が設置される。絶縁性の多孔質弾性材料を設置することにより、金属リチウムの溶出及び脱落を回避することができ、コア本体(積層コア又は巻きコア)を弾性的に拘束し、リチウムイオン電池内部の構造安定性を向上させることができる一方、プレリチオの過程において十分な電解液を有することを保証することができる。前記リチウム源複合シートは、弾性吸液材料で包まれてもよく、より好ましくは、前記弾性吸液材料は、セパレータ材料である。弾性材料で包むことにより、プレリチオ化の過程において、リチウム源複合シートの消費に伴って弾性材料が変形し、消費後に空間を充填し、構造の安定性を向上させることができる。
【0018】
本発明の具体的な手段によれば、好ましくは、前記リチウム源複合シートは、負極タブに直接接続される(例えば、一体的に溶接される)か、又は、前記リチウム源複合シートは、第3の電極を介して外付け回路で正極又は負極に接続される。即ち、本発明の技術的解決手段において、リチウム源複合シートと負極とは、2種類の接続方式を有してもよい。
【0019】
第1の種類において、リチウム源複合シートは、例えば、金属リード、金属シート接続、又は直接溶接などにより、負極タブに直接接続される。この方式では、電解液を注入した後、負荷を加えることなく、直ちに負極がプレリチオ化を開始し、このような方式で、プレリチオ量が少ない場合、例えばプレリチオ量が10%SOC以下の場合、例えばプレリチウム量が5%SOCの場合に適する。
【0020】
第2の種類において、リチウム源複合シートは、リチウムイオン電池の負極タブに外付け回路で接続されて負極をプレリチオ化する第3の電極に接続され、リチウムイオン電池が化成した後、第3の電極は、リチウムイオン電極の正極タブに外付け回路で接続されて正極をプレリチオ化する。このような方式で、外付け回路でプレリチオ化の進捗状況を制御することができ、プレリチオ化の速度を向上させることができ、プレリチオ量が多い場合に適し、かつ、リチウムイオン電池の使用過程に、必要時に第3の電極で補充するプレリチオ化を行うことができる。当該方式で、プレリチオ量が多い場合、例えばプレリチオ量が10%SOC以上の場合に適する。
【0021】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、上記リチウムイオン電池のプレリチオ化方法は、
電解液を注入する前に、リチウムイオン電池に、1つ以上のリチウム源複合シートと第3の電極を設置し、かつ、前記リチウム源複合シートを前記第3の電極に接続するステップと、
電解液を注入し、電解液を前記リチウム源複合シートに含浸させるステップと、
前記リチウム源複合シートを、第3の電極を介して外付け回路で負極タブに接続し、負極をプレリチオ化するステップと、を含む。
【0022】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、セルが正常に化成された後、リチウム源複合シートを、第3の電極を介して外付け回路で正極タブに接続し、正極をプレリチオ化する。即ち、本発明のリチウムイオン電池のプレリチオ化方法は、さらに、
電解液を注入する前に、リチウムイオン電池に、1つ以上のリチウム源複合シートと第3の電極を設置し、かつ、リチウム源複合シートを第3の電極に接続するステップと、
電解液を注入し、電解液をリチウム源複合シートに含浸させるステップと、
セルが正常に化成された後、リチウム源複合シートを、第3の電極を介して外付け回路で正極タブに接続し、正極をプレリチオ化するステップと、を含んでもよい。
【0023】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、リチウム源複合シートが負極タブに直接接続される場合、前記リチウム源複合シートと前記負極タブとの接続は、リチウムイオン電池のケースの内部に位置する。当該リチウム源複合シートとタブとの接続は、金属リード、金属シート接続、又は溶接などにより実現することができ、例えば、リチウム源複合シートを負極タブに超音波溶接により接続し、セル積層の過程において、リチウム源複合シートを入れるとともに、リチウム源複合シートの金属箔(例えば銅箔)を負極の銅箔と同じタブ(Tabシート)に溶接することにより、工業的な化成生産が行いやすい。リチウム源複合シートが負極タブに直接接続される場合、接続のための金属リード、金属シート、又は溶接位置などがいずれもケース内部に位置し、この場合、接続がケース内部に位置することで安全性を向上させ、タブがケースから延出することによる液漏れなどの問題を回避することができるとともに、生産プロセスも大幅に簡略化される。リチウム源複合シートと負極との接続をケース内部に設置し、リチウム源複合シートにタブを設置して、それをケース外部に延出させる必要がなく(もちろん、接続を容易にするために、リチウム源複合シートにタブを設置してもよいが、当該タブは、ケース内部に位置し、ケース外部に延出されない)、プレリチオ化した後、リチウム源複合シートにおけるリチウムが完全に消費され、この方式で、従来のリチウムイオン電池の構造を変えることなく、より多くの種類のリチウムイオン電池に適用でき、また、本発明のこのようなリチウムイオン電池のプレリチオ化方法は、良好な生産利便性を有し、従来の生産ラインへの調整が小さく、総合コストが低い。リチウム源複合シートを第3の電極を介して外付け回路で負極タブ又は正極タブに接続する場合、第3の電極などは、ケースの内部に位置してもよく、又はリチウムイオン電池のケースから一定の位置を隔てて延出してもよい。
【0024】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、リチウムイオン電池に注液口が設置され、第3の電極は、注液口を介して外付け回路で正極タブ又は負極タブと連通し、外付け回路の充放電機器は、放電状態において、電池がプレリチオ反応を起こす。負極と正極をプレリチオ化する必要がある場合、リチウム源複合シート、負極タブ及び正極タブを注液口を介して充放電機器の放電状態に接続し、電解液をセル内部に流動させることで、負極又は正極のプレリチオ化操作を実現することができる。ここで、注液口の配置位置は特に限定されるものではなく、従来技術における通常の配置方式と理解することができる。
【0025】
本発明の具体的な実施手段によれば、第3の電極は、主に、プレリチオ量の需要が大きい場合に使用され、好ましくは、第3の電極は、セルのケースに設置されてもよく、注液口を介するタブを仮にプレリチオすることで行ってもよい。
【0026】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、電池のプレリチオ量が5%SOC未満である場合、電池内部の電解液を動的に保持する措置を講じず、電池のプレリチオ量が10%SOCよりも多い場合、電池内部の電解液を動的に保持する措置を講じる。即ち、負極と正極のプレリチオ化の過程において、リチウムイオン電池のセル内部に電解液を流動させる措置を講じることで、流動する電解液で局所的に溶出したリチウムイオンを負極又は正極の電極シートに埋め込ませる(即ち、リチウム源複合シート表面のリチウムイオンを流動させて負極又は正極の電極シート内部に埋め込ませる)ことができ、これによりプレリチオ速度とプレリチオ量を大きくすることとともに、リチウム埋め込みの均一性を向上させることができる。これは本発明のポイントの1つである。上記「電解液を動的に保持する措置」としては、振動、回転、不活性ガス撹拌、電磁撹拌などを含むが、これらに限定されず、例えば、リチウムイオン電池の回転、リチウムイオン電池の振動、リチウムイオン電池のセル内部に不活性ガスを入れること、又は電解液を電磁的に撹拌することなどにより、電解液をリチウムイオン電池のセル内部に流動させることを実現する。電解液の流動を実現できる方式であれば、いかなるものでもよく、上記に列挙した方式に限定されない。
【0027】
本発明の具体的な実施手段によれば、リチウムイオン電池は、リチウム源複合シートに加えて、例えば、正極シート、負極シート、セパレータからなるコア本体、及びケースなどのいくつかの通常の他の部材をさらに含んでもよく、リチウムイオン電池のコア本体の表面及び/又は置かれ可能な他の空間内には少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置される。正極シート、負極シートには、正極タブ、負極タブがそれぞれ設置され、セパレータの材質、サイズ、設置方式は、リチウムイオン電池分野の通常の方式を参照してもよい。
【0028】
本発明の具体的な実施手段によれば、前記リチウムイオン電池は、互いに直列又は並列に接続されたいくつかのコア本体からなるコア本体の集合体を含んでもよく、前記コア本体の集合体における各コア本体の表面及び/又は置かれ可能な他の空間内には、少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置される。
【0029】
本発明の具体的な実施手段によれば、本発明のプレリチオ化方法に係るリチウムイオン電池は、通常の積層コア電池、巻きコア電池及びJTM(Jellyroll To Module)電池などであってもよい。
【0030】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、前記リチウムイオン電池のコア本体の表面及び/又は置かれ可能な他の空間内には少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置され、又は、前記リチウムイオン電池は、互いに直列又は並列に接続されたいくつかのコア本体からなるコア本体の集合体を含み、前記コア本体の集合体における各積層コアの表面及び/又は置かれ可能な他の空間内には、少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置される。
【0031】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、前記リチウムイオン電池のコア本体は、積層コアであり、前記積層コアの少なくとも片側の表面に少なくとも1つのリチウム源複合シートが設置され、又は前記積層コアの両側の表面に少なくとも1つのリチウム源複合シートがそれぞれ設置され、又は側面及び置かれ可能な他の空間内にリチウム源複合シートが置かれる。
【0032】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、前記リチウムイオン電池のコア本体は、巻きコアであり、前記巻きコアの側面又は頂面に少なくとも1つのリチウム源複合シートが設置され、好ましくは、前記リチウム源複合シートは、前記巻きコアの側面に被覆され、プレリチオ化の過程において、巻きコアの側面に被覆されたリチウム源複合シートは、均一に拡散し、負極に均一にリチウムを補給することができる。
【0033】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、前記リチウムイオン電池は、互いに直列又は並列に接続されたいくつかのコア本体からなるコア本体の集合体(例えばJTM電池)を含み、前記コア本体の集合体における各積層コアの少なくとも片側の表面には、少なくとも1つのリチウム源複合シートが設置される。上記リチウムイオン電池において、コア本体は、正極シートと負極シートからなる積層コア又は巻きコアであってもよい。
【0034】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、前記リチウムイオン電池のコア本体の負極は、シリコン負極、黒鉛負極、チタン酸リチウム負極、スズ負極などの負極の1種又は2種以上の組み合わせであり、より好ましくは、前記負極は、シリコン含有負極であり、前記リチウム源複合シートは、前記リチウムイオン電池のケース内において負極のために予め保留された膨れ空間内に位置する。シリコン含有負極を用いた電池では、シリコン含有負極のコア本体の膨れを考慮して、ケースの広い面とコア本体との間に一定の膨れ空間が必要となる。本発明は、リチウムイオン電池のプレリチオ化を行う際に、この空間によりリチウム源複合シート(例えば、1枚又は2枚のリチウム源複合シート)を置くことができ、このような方式により、電池構造に影響を与えない状況で、リチウム源複合シートを電池ケース内に置くことができ、プレリチオ化が完了した後、リチウム源複合シートは完全に消費され、予め保留した膨れ空間は再び空になり、リチウムイオン電池の通常の使用に影響を与えない。
【0035】
本発明の具体的な実施手段によれば、本発明に用いられる電解液は、リチウムイオン電池の分野で一般的に用いられる電解液であってもよく、ここで、リチウム源複合シートを含浸させるように保証することができる量の電解液を注入する。
【0036】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、第3の電極を介して負極又は正極をプレリチオする際に、電流及び電流方式を制御する必要がある。これでは、プレリチオ速度を速めることができるとともに、プレリチオの均一性を制御して局所的なリチウム析出を回避することができる。
【0037】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、セル化成の過程において、正極から負極へ一定量のリチウムを埋め込み、好ましくは、前記リチウムの埋め込み量は、10%~80%SOCであり、続いて正極のプレリチオ化を行う。
【0038】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、第3の電極を介して正極をプレリチオ化することを実現する過程において、定電圧放電の方式で行われ、電圧は、好ましくは2.5V~3.5Vであり、より好ましくは3.0V~3.4Vであり、例えば、2.5V、2.6V、2.7V、2.8V、2.9V、3.0V、3.1V、3.2V、3.3V、3.4V、3.5V、又はこれらの具体的な電圧値のうちの2つをそれぞれ上限及び下限とする範囲である。
【0039】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、正極をプレリチオ化する電流は、0.00001C~1Cであり、より好ましくは0.0001C~0.5Cである。
【0040】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、正極のプレリチオ化は、間欠の方式で行われる。電流間欠の時間は、1~3600秒、好ましくは300~1800秒、より好ましくは60~600秒、例えば、60秒、100秒、200秒、300秒、400秒、500秒、600秒、又はこれらの具体的な時間値のうちの2つをそれぞれ上限及び下限とする範囲で制御することができる。
【0041】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、第3の電極を介して負極をプレリチオ化する過程において、定電圧放電の方式で行われ、電圧は、好ましくは0.1V~0.3Vであり、より好ましくは0.2Vである。
【0042】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、負極をプレリチオ化する電流は、0.00001C~1Cであり、より好ましくは0.0001C~0.5Cであり、さらに好ましくは0.01C~0.2Cである。
【0043】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、負極のプレリチオ化は、間欠の方式で行われる。電流間欠の時間は、1~3600秒、好ましくは300~1800秒、好ましくは60~600秒、例えば、60秒、100秒、200秒、300秒、400秒、500秒、600秒、又はこれらの具体的な時間値のうちの2つをそれぞれ上限及び下限とする範囲で制御することができる。
【0044】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、前記プレリチオ化の時間は、8h~200h、例えば、10h、20h、30h、40h、50h、60h、70h、80h、90h、100h、110h、120h、130h、140h、150h、160h、170h、180h、190h、200h、又はこれらの具体的な時間値のうちの2つをそれぞれ上限及び下限とする範囲である。
【0045】
本発明の具体的な実施手段によれば、リチウム源複合シートのリチウム含有量は、利用率を適切に考慮して、必要とされるプレリチオ量に応じて計算される。リチウム源複合シートの厚さは、必要に応じて制御され、相応する空間に入れることができ、またプレリチオ化の過程に脱落しないように確保することができる要求を満たす必要があり、しかも、プレリチオ化が終了した後、リチウム源複合シートにおけるリチウムが完全に消費されるようになる。
【0046】
本発明の具体的な実施手段によれば、好ましくは、Ah当たりに必要とされる理論上のプレリチオ量Yの計算式は、以下に示され、
Y=1000nF/3.6A、
ここで、nは、Liカウント個数で、Fは、ファラデー定数で、Aは、リチウムの原子量であり、必要とされるAh数は、損失の初回効率にセルの設計容量を乗じたものに等しい。
【0047】
本発明は、さらに、上記プレリチオ化方法で製造された高エネルギー密度で長寿命のリチウムイオン電池を提供する。
【0048】
本発明にて提供されるプレリチオ化方法は、リチウム源複合シートを負極タブに直接接続し、電解液を注入した後にプレリチオ化反応を起こし、続いて放電(例えば、外付け回路で正極と負極を接続し、定電圧放電し、リチウムイオンを正極に入らせる)により正極のプレリチオ化を実現し、最終的に電池のプレリチオ化を実現することができる。本発明にて提供されるプレリチオ化方法では、負極のプレリチオ化を行う場合、負荷を余計に加える必要がなく、コア本体が浸潤し、化成し、容量選別する過程において、プレリチオ化を完了することができる。しかも、リチウム源複合シートを負極に直接接続し、当該接続をリチウムイオン電池のケース内に制御することは、プレリチオ化タブを別個に設置して、それを電池ケースの外に延在させることにより、容易に生じる安全性の問題を回避することもできる。
【0049】
従来の電気化学的なプレリチオ化方法は、いずれも電極シートをプレリチオする方式であり、プレリチオ化が完了した後に電池を組み立てることから、セルの組み立てが難しく、環境要求が高く、生産コストが高いなどの問題を招っている。本発明にて提供される方法は、電池の組み立てが完了した後に行われ、プレリチオ化による電池の組み立てへの影響を回避し、電気化学的なプレリチオ化の時間が長く、プレリチオ量が低く、プレリチオが不均一であり、金属リチウム粒子が溶出するなどの問題を解決することができ、環境に対する要求が低く、プレリチオ化が簡単で産業化しやすく、コストが低い。
【0050】
本発明にて提供されるプレリチオ化方法を用いることで、リチウム源複合シートにおけるリチウムは、プレリチオ化の過程に完全に消費され、電池内部に残らず、従来技術におけるリチウム源複合シートがリチウムイオン電池内部に長期間存在することによる安全性の懸念が回避される。
【0051】
本発明にて提供されるプレリチオ化方法を用いることで、簡単な方法でプレリチオの目的を達成することができる。当該方法は、リチウムイオン電池の本来のプロセスを基本的に変更することなく、機器の変更、例えば、プレリチオ化電解などのリチウム源複合シートをコア本体の表面に設置すること、プレリチオの際に電解液を流動させる治具を増加するなどを局所的に行うだけである。これらの変更は、いずれも容易に実現でき、工業的な生産が容易である。
【発明の効果】
【0052】
本発明がもたらす有益な効果は、従来のリチウムイオン電池のプロセス及び機器の変更が大きくない場合、本発明にて提供されるプレリチオ化方法は、プレリチオ化技術の産業的応用を実現することができ、コストが低いことである。本発明のプレリチオ化方法で製造されるリチウムイオン電池は、容量を5%以上向上させることができ、エネルギー密度が高く(例えば、三元電池で370Wh/kg以上、リン酸鉄リチウム電池で230Wh/kg以上など)、サイクル寿命が長く(例えば、リン酸鉄リチウム電池で15000回以上など)、コストが低く(電気量を上げるとともにコストを下げる)、非常に将来性がある革命的リチウムイオン電池プロセス方法である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】リチウム源複合シートの構造の概略図である。
【
図2】実施例1にて提供される角型電池の構造の概略図である。
【
図3】実施例2にて提供されるパウチ型電池の構造の概略図である。
【
図4】実施例3にて提供されるパウチ型電池の構造の概略図である。
【
図5】実施例1の角型電池及び対照例1の角型電池のサイクル寿命の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の技術的特徴、目的及び有益な効果をより明確に理解するために、現在、本発明の技術的解決手段について以下の詳細な説明を行うが、本発明の実施可能な範囲を限定するものと理解することができない。
【0055】
本発明に用いるリチウム源複合シートは、
図1に示すように、金属箔14の片面又は両側の表面にリチウム箔15を複合してなり、リチウム箔15の外側に弾性吸液材料層16を包んだ構成としてもよい。
【0056】
当該リチウム源複合シートは、積層コア11の側面(又は電解液を有する他のいかなる空間であればよく、例えば、巻きコアを用いる場合、リチウム源複合シートが巻きコアの頂部に複合したり、巻きコアの側面に被覆したりしてもよく)に複合してもよく、2つの間には絶縁テープ13で絶縁し、かつ、当該リチウム源複合シートは、金属箔14により負極タブ12に接続する。
【0057】
当該リチウム源複合シートの製造過程、及びコア本体との複合過程は、以下の方式で行うことができ、
リチウム箔15を金属箔14に圧延の方法で複合し、金属箔14の厚さを4~100μmの範囲に、リチウム箔15の厚さを0.01~10mmの範囲に制御することができ、リチウム箔15は、片面でも両面でも行われてもよく、
リチウム箔15を弾性吸液材料で包んで弾性吸液材料層16を形成し、
積層コア11とリチウム源複合シートとの接合面に、電解液に対する耐食性を有する絶縁テープ13を貼り付け、
続いて、相応のタブが上端に設置されてもよい金属箔14に、積層コア11のタブ12で接続する。
【0058】
(実施例1)
本実施例は、角型電池のプレリチオ化方法を提供し、当該角型電池の構造は、
図2に示される。当該角型電池は、
コア本体22であって、正極シート、負極シート、セパレータから巻き取り又は積層のプロセスにより作られ、ここで、正極シートがリン酸鉄リチウム材料であり、負極シートが黒鉛材料であり、2つには正極タブ26と負極タブ24がそれぞれ設置されるコア本体22と、
ケース21であって、コア本体22を収容するために用いられ、ケース21の上部に正極接続部27及び負極接続部25が設置されるケース21と、を含む。
【0059】
当該プレリチオ化方法は、
リチウム源複合シート23をコア本体22の片側に設置し、当該リチウム源複合シート23は、
図1に示す構造のリチウム銅複合テープ、即ち、1層の銅箔と1層のリチウム箔との複合体であり、リチウム箔の厚さが0.1mm、銅箔の厚さが4.5μmであり、当該リチウム源複合シート23が負極タブ24に接続され、電解液を注入する前、前記リチウム銅複合テープは、電解液に含浸可能な位置に位置するステップと、
リチウム源複合シートを設置した積層コアをケース21内に入れ、組み立てが完了した後、角型電池の内部に電解液を注入して、リチウム源複合シートを含浸させれば、プレリチオ化を開始するステップと、を含み、
プレリチオ時間は、プレリチオ量の要求に応じて制御され、本実施例のプレリチオ量は5%SOCであり、プレリチオ時間は48時間に制御され、当該プレリチオ化時間は、リチウムイオン電池製造プロセスの許容範囲内であり、
プレリチオが完了した後、通常の化成、放置、容量選別のプロセスを行い、具体的には、以下のとおりであり、
1、化成において、0.02Cの電流で4h充電し、10min放置し、次に0.1Cの電流で2h充電し、
2、エージングにおいて、化成が完了した後、12h静置してエージングし、
3、容量選別において、0.33Cの定電流で電圧3.65Vまで充電し、続いて3.65Vの定電圧で電流0.05Cまで充電し、完了した後、10min放置し、次に0.33Cの電流で電圧2.0Vまで放電し、容量選別を完了した。
【0060】
(対照例1)
本対照例は、リチウム源シートを置かない点、及びプレリチオ化を行わない点で実施例1と異なり、その他が全て同一である角型電池の通常の作り方法を提供する。
【0061】
実施例1及び対照例1で製造された角型電池の関連特性を検出した結果を表1に示した。
【0062】
【0063】
表1の内容から、実施例1のプレリチオ化方法で得られたリチウムイオンセルは、対照例1よりも約5%の容量を高くすることができ、約2000回まで減衰せず15000回程度のサイクル寿命を達成できることを見出したが、対照例1の試料は、6000回未満のサイクル寿命しか有していない(
図5に示される)。
【0064】
(実施例2)
本実施例は、パウチ型電池のプレリチオ化方法を提供し、ここで、当該パウチ型電池の構造は、
図3に示され、その長さが360mmである。当該パウチ型電池は、
コア本体32であって、正極シート、負極シート、セパレータから積層のプロセスにより作られ、ここで、正極シートが三元材料NCMであり、負極シートがシリコン600負極であり、2つには正極タブ35と負極タブ34がそれぞれ設置され、コア本体32の同一側に設置されるコア本体32と、
ケース31であって、アルミニウムラミネートであり、コア本体32を収容するために用いられるケース31と、を含む。
【0065】
当該プレリチオ化方法は、
リチウム源複合シート33をコア本体32の片側に設置し、当該リチウム源複合シート33を電解質に含浸させることを保証するように位置させ、当該リチウム源複合シート33は、
図1に示すような構造のリチウム銅複合テープ、即ち、1層の銅箔と1層のリチウム箔との複合体であり、リチウム箔の厚さは0.1~0.2mm、銅箔の厚さは4.5μmであり、当該リチウム銅複合テープが矩形、帯状、U字形などの種々の形状にすることができるステップと、
第3の電極36を当該リチウム源複合シート33に設置し、注液口を介して取り出し、
図3に示すように、負極、正極及びリチウム源複合シート33を接続すれば、負極、正極へのプレリチオを行うステップと、
リチウム源複合シートを設置したコア本体をケース内に入れ、組み立てが完了した後、パウチ型電池に電解液を注入して、リチウム源複合シートを含浸させるステップと、
第3の電極36を介して外付け回路でリチウム源複合シート33を負極タブ34と接続し、負極をプレリチオ化するステップと、を含む。
【0066】
負極のプレリチオ化が完了した後、通常の化成プロセスを行い、具体的には、以下のとおりであり、
0.02Cの電流で2h充電し、10min放置し、次に0.05Cの電流で2h充電し、10min放置し、続いて0.1Cの電流で1h充電し、
続いて第3の電極36を正極タブ35に接続し、正極をプレリチオ化し、プレリチオ化の電流を0.01Cに制御し、定電圧、間欠放電の方式で行うことができ、電圧が3.0V、間欠時間が60秒であり、
プレリチオ化の過程において、パウチ型電池に回転及び振動の方式でコア本体32内部の電解液を流動させて、プレリチオ速度を速くし、プレリチオ化を均一に行わさせ、ここで、回転は、正回転180°と逆回転180°が交互に行われ、回転速度は5回転/分間であり、振動モータの回転速度は1000回転/分間であり、具体的には、180°回転してから、60秒間留まって、それから180°回転するという間欠的な回転を行う。
【0067】
プレリチオ時間は、プレリチオ量の要求に応じて制御されるが、本実施例のプレリチオ量は、12%SOCであり、プレリチオ化時間は、96時間である。
【0068】
プレリチオが完了した後、セルに対して、通常のエージング、容量選別のプロセスを行い、具体的には、以下のとおりであり、
1、エージングにおいて、化成が完了した後、24h静置してエージングし、
2、容量選別において、0.33Cの定電流で電圧4.25Vまで充電し、続いて4.25Vの定電圧で電流0.05Cまで充電し、完了した後、10min放置し、次に0.33Cの電流で電圧2.0Vまで放電し、容量選別を完了した。
【0069】
(対照例2)
本対照例は、リチウム源シートを置かない点、及びプレリチオ化を行わない点で実施例2と異なり、その他が全て同一であるパウチ型電池の通常の作り方法を提供する。
【0070】
実施例2及び対照例2で製造されたパウチ型電池の関連特性を検出した結果を表2に示した。
【0071】
【0072】
表2の内容から、実施例2の方法で製造されたリチウムイオン電池は、高い充放電初回効率及び高い容量発揮を有し、セルの比エネルギーが370Wh/kgに達することに対し、対照例2の試料の比エネルギーが320Wh/kgしかでないことを見出した。
【0073】
(実施例3)
本実施例は、パウチ型電池のプレリチオ化方法を提供し、ここで、当該パウチ型電池の構造は、
図4に示され、その長さが357mmであり、その構造が実施例2のパウチ型電池と類似し、本実施例のパウチ型電池が両端にタブが出ているパウチ型電池である点のみで異なる。当該パウチ型電池は、
コア本体42であって、正極シート、負極シート、セパレータから積層のプロセスにより作られ、ここで、正極シートがリン酸鉄リチウム材料であり、負極シートがシリコン600負極材料であり、2つには正極タブ45と負極タブ44がそれぞれ設置され、コア本体42の上下両端にそれぞれ設置されるコア本体42と、
ケース41であって、アルミニウムラミネートであり、コア本体42を収容するために用いられるケース41と、を含む。
【0074】
リチウム源複合シート、プレリチオ化の過程及びエージング、容量選別のプロセスは、実施例2と同一である。
【0075】
(対照例3)
本対照例は、リチウム源シートを置かない点、及びプレリチオ化を行わない点で実施例3と異なり、その他が全て同一であるパウチ型電池の通常の作り方法を提供する。
【0076】
実施例3及び対照例3で製造された角型電池の関連特性を検出した結果を表3に示した。
【0077】
【0078】
表3の内容から、実施例3の方法で製造されたリチウムイオン電池は、高い充放電初回効率(初回効率が19%向上し、これは画期的なブレイクスルーである)及び高い容量発揮を有し、セルの比エネルギーが230.3Wh/kgに達することに対し、対照例3の試料の比エネルギーが199.6Wh/kgしかでないことを見出した。