(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】防曇剤を含むパッケージングフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250418BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250418BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20250418BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20250418BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20250418BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B65D65/40 D
C08K5/103
C08L67/02 ZBP
C08L67/04
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2022579882
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 EP2021067193
(87)【国際公開番号】W WO2021260031
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】102020000015022
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592081988
【氏名又は名称】ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】アイアニ,マリアンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】バスティオリ,カティア
(72)【発明者】
【氏名】コマッツィ,パオラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲスティ ガルシア,セバスティア
(72)【発明者】
【氏名】ミリジア,ティジアナ
(72)【発明者】
【氏名】ルッソ,クラウディオ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-307769(JP,A)
【文献】特開2004-352799(JP,A)
【文献】特表2004-509204(JP,A)
【文献】特開2005-036088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0217836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08G 63/00-64/42
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)0.7~4gの溶融強度を有し、少なくとも1種のジカルボン酸単位及び少なくとも1種のジオール単位を含み、
M
n≧40000
M
w/q≦90000
を有する生分解性ポリエステルであって、
溶融強度は、ISO 16790:2005に従って、180℃及びγ = 103.7s
-1で、直径1mm及びL/D = 30のキャピラリを用いて、6mm/s
2の等加速度及び延伸長さ110mmにて測定し、
分子量「M
n」及び「M
w」はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し;
「q」= GPCによる分子量が10000以下であるポリエステルオリゴマーの重量パーセンテージである、生分解性ポリエステルと、
(ii)多官能性アルコールのエステル(但し、該エステルはステアレートではない)
、及びそれらのエトキシ化誘導体から選択される防曇剤と
を含む、5より大きい静止摩擦係数(COF)を有するパッケージングフィルム。
【請求項2】
前記多官能性アルコールのエステルが、多官能性アルコールと1種又は2種以上の脂肪酸との縮合生成物である、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項3】
厚さ3~50μ
mの薄膜の製造用の、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項4】
前記薄膜の厚さが6~25μmである、請求項3に記載のパッケージングフィルム。
【請求項5】
前記防曇剤が、ポリエステル含量に対して0.2~5
%の量で存在する、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項6】
前記防曇剤が、ポリエステル含量に対して1~3%の量で存在する、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項7】
前記防曇剤が、ポリエステル含量に対して1.0~2.0
%の量で存在する、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項8】
前記防曇剤が、ポリエステル含量に対して1.0~1.5%の量で存在する、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項9】
前記防曇剤が8~18の炭素原子を有する脂肪酸のエステルから選択される、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項10】
前記防曇剤がポリグリセリルラウレート及びソルビタンモノラウレートから選択される、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項11】
前記防曇剤がソルビタンポリオキシエチレンモノラウレートエステルである、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項12】
前記防曇剤が、前記ポリエステルに、押出プロセスにより所望の最終濃度として直に添加されるか、又はホッパー内でフィルム形成ステップの間に「マスターバッチ」の形態で添加される、請求項1に記載のパッケージングフィルム。
【請求項13】
前記生分解性ポリエステ
ルが、少なくとも1種の多官能性芳香族酸を含む芳香族成分と、少なくとも1種の脂肪族二酸及び少なくとも1種の脂肪族ジオールを含む脂肪族成分とを有する、請求項1~
12のいずれか1項又は2項以上に記載のパッケージングフィルム。
【請求項14】
前記生分解性ポリエステ
ルが、生分解性脂肪族-芳香族ポリエステル及び脂肪族ポリエステルを含む、請求項1~
13のいずれか1項又は2項以上に記載のパッケージングフィルム。
【請求項15】
前記多官能性芳香族酸が、フタル酸タイプの芳香族ジカルボン酸化合物及び再生可能起源の複素環式芳香族ジカルボン酸化合物並びにそのエステル並びにそれらの混合物から選択される、請求項
13に記載のパッケージングフィルム。
【請求項16】
前記生分解性ポリエステ
ルにおいて、前記ジカルボン酸が、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸又はそれらの混合物から選択される酸を、脂肪族ジカルボン酸の総モルの少なくとも50モル%で含む、請求項1~
15のいずれか1項又は2項以上に記載のパッケージングフィルム。
【請求項17】
前記生分解性ポリエステ
ルが合成起源又は天然起源の1種又は2種以上のポリマーと混合されている、請求項1~
16のいずれか1項又は2項以上に記載のパッケージングフィルム。
【請求項18】
前記合成起源又は天然起源のポリマーが生分解性である、請求項
17に記載のパッケージングフィルム。
【請求項19】
前記生分解性ポリエステ
ルが、ポリL乳酸、ポリD乳酸及びポリL-D乳酸立体異性体複合体、ポリε-カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレートと混合されている、請求項
17に記載のパッケージングフィルム。
【請求項20】
前記生分解性ポリエステ
ルが、少なくとも75%のL-乳酸若しくはD-乳酸又はその混合物を含有し30000を超える分子量Mwを有する、1~5重量%のポリ乳酸ポリマーと混合されている、請求項
17に記載のパッケージングフィルム。
【請求項21】
食品包装、産業用包装、農業における圧縮梱包又は廃棄物包装のための、請求項1~
20のいずれか1項に記載のパッケージングフィルム。
【請求項22】
厚さ3~50μ
mの薄膜を製造するための、多官能性アルコールのエステル(但し、該エステルはステアレートではない
)から選択される防曇剤の、請求項1に記載の生分解性ポリエステルとの混合物での使用。
【請求項23】
前記薄膜の厚さが6~25μmである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記多官能性アルコールのエステルが、多官能性アルコールと脂肪酸との縮合生成物である、請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリエステル及び防曇剤を含む生分解性パッケージングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージングフィルムは、交易及び文献から公知である。典型的には、これらのフィルムは、3~50μmの厚さであり、例えば、食品を冷蔵庫に入れるか又は容器に詰める前にかかる食品を包装するために使用される。
最適なパッケージングフィルムは、以下のような多くの特別な技術的特徴がその使用に要求されるので、実現することは容易ではない:
【0003】
-粘着性
フィルムは、接着剤を添加しなくても、それ自体と他の非接着性表面との両方に接着する特性が基本である。この特性により、このようなフィルムの使用者は、対象物(例えば、皿上の食品)の周りに1層又は2層以上の層のフィルムを巻き付け、このようにして対象物を密封封止することができる。
-透明性
本質的な特徴は透明性であり、これにより、このようなフィルムの使用者は、その中に包まれた対象物を、かかる対象物の包みを解く必要なしに識別することができる。商業的な観点からは、フィルムに包まれた製品が可能な限りはっきりと見えることが非常に望ましく、したがって、時間の経過とともにフィルムがくすまないことが特に重要である。
-機械的特性
機械的特性は、包装材に機械的性能及び強度を付与する物理的特性である。特に、機械方向(MD)及び横方向(TD)の両方における引張り強さ(MPa)、破断伸び(%)及び弾性率(MPa)を測定する。
【0004】
-貯蔵寿命
フィルムに良好なエージング安定性を与えるポリエステルを使用して、製品ができるだけ長く、いずれの場合にも少なくとも6ヶ月まで、好ましくは1年まで保持されることを確実にすることが必須である。
-巻き戻し
接着する能力は重要であるが、それが過剰であると、工業的にも最終製品の使用においてもフィルムの巻き戻しが困難になり、包装中にフィルムが破損する可能性がある。巻き 戻し易さは、産業用包装機械で使用するための決定的な特性である。
-防曇性
防曇特性は、市場で特に評価されている特徴である。それは、新鮮な及び冷蔵された製品、通常は肉及び野菜製品の包装を曇らせる水分のミクロ凝縮を回避する。
-包装機械に対するフィルム適性
フィルムは、自動包装機械(ラッピング機械)で使用するための薄い弾性フィルムの製造を可能にするための正しい要件を満たさなければならない。この用途では、可動部品上のフィルムの「滑らかさ」が特に重要であり、包装機械におけるフィルムの性能を改善するための特別なセットアップ作業を要する。
【0005】
したがって、上記の特性を最適化する生分解性ポリエステルから製造されたフィルムが特に必要とされている。
ポリマーフィルムに防曇性を利用することは、当該技術分野において広く知られている。
WO2019012564A1は、再生可能起源のエステル系可塑剤、ポリエステル及び天然油を含有する可塑化PVCストレッチフィルムを記載しており、かかるフィルムは、防曇剤、典型的には脂肪酸エステルをさらに含む。WO2019012564A1は、防曇性を有する生分解性ポリエステルフィルムが、自動包装機械(ラッピング機械)で使用するための薄い弾力性フィルムを製造するための特別な特徴及び正しい要件を保証しないという技術的欠点を指摘しており、この用途では、可動部品上のフィルムの「粘度」が特に肝要であり、包装機械におけるフィルムの性能を必然的に許容できないほど損なう特別なセットアップ作業を要するようなものである。
【0006】
EP2550330A1は、ポリマーブレンド、クリングフィルム及びそれを得るための方法を記載している。具体的には、それは、芳香族含有量の少ない脂肪族ポリエステルを含むフィルムである。
EP2499189B1は、45~70重量%の脂肪族-芳香族ポリエステル、30~55重量%のPLAを含み、ブローアップ比が4:1以下であり、少なくともコア層が20~70%w/wの脂肪族-芳香族ポリエステル、30~80重量%のPLAを含む多層フィルムを製造する方法を記載している。
【0007】
EP2331634B1は、40~95重量%の脂肪族又は脂肪族-芳香族ポリエステルと、5~60重量%のポリアルキレンカーボネート、特にポリプロピレンカーボネートと、先の2成分の合計に基づき0.1~5重量%の、スチレン、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをベースとするエポキシ基を含有するコポリマーとを含む生分解性ポリマー混合物を開示している。防曇剤を使用する可能性は、これら全ての特許に記載されている。
【0008】
特許IT102020000012184及びEP2632970において、本出願人は、少なくとも1種の二酸及び少なくとも1種のジオールから誘導された単位を含み、それぞれ5より大きい静止摩擦係数及び10より大きい静止摩擦係数を特徴とするフィルムの製造に使用するのに特に好適な生分解性ポリエステルを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
驚くべきことに、静止摩擦係数が上述の5を超える、好ましくは10を超えるフィルムの製造に使用される生分解性ポリエステルに防曇剤を添加すると、機械的特性及びエージング安定性を実質的に変化させずに維持しながら、これらのフィルムに、周知の改善された防曇能力だけでなく、より良好な巻き戻し性、時には透明性特性の向上さえも付与する相乗効果が得られることが見出された。驚くべきことに、これらのフィルムは食品トレー包装機械にも最適に適合させることができる。
【0010】
生分解性ポリエステルから製造されたフィルムにおける防曇剤の使用は、防曇剤がポリエステル自体と必ずしも相溶性ではないので、容易でも自明でもない。多くの場合、防曇剤は、単に所望の防曇機能を提供しない可能性があり、一方、他の場合では、防曇剤は、フィルムの表面上に粉末の形成をもたらす可能性があり、この粉末により、フィルムは、曇り、あまり透明ではなくなり、所望の粘着性についての能力が低下する。さらに、防曇剤を含む生分解性ポリエステルを用いて製造されたフィルムは、産業用包装機械でのその使用に不利であり、その使用が経済的に採算の取れないものとなる可能性があると主張されているという点において、当技術分野で技術的先入観がある。
【0011】
したがって、生分解性の脂肪族及び脂肪族-芳香族ポリエステルから製造されたフィルム用の特定の防曇剤を見出すことが特に望ましい。したがって、適切な防曇剤が、上記の技術的問題を解決するために選択されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明による一態様は、
(i)0.7~4gの溶融強度を有し、少なくとも1種のジカルボン酸単位及び少なくとも1種のジオール単位を含み、
Mn≧40000
Mw/q≦90000
を有する生分解性ポリエステルであって、
溶融強度は、ISO 16790:2005に従って、180℃及びγ=103.7s-1で、直径1mm及びL/D=30のキャピラリを用いて、6mm/s2の等加速度及び延伸長さ110mmにて測定し、
分子量「Mn」及び「Mw」はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し;
「q」=GPCにより測定された分子量が10000以下であるポリエステルオリゴマーの重量パーセンテージである、生分解性ポリエステルと、
(ii)多官能性アルコールのエステル(但し、該エステルはステアレートではない)、好ましくは多官能性アルコールと脂肪酸との縮合生成物から選択される防曇剤であって、ポリエステル含量に対して0.2~5%、好ましくは1~3%の量で存在する防曇剤と
を含む、5より大きい、好ましくは10より大きい静止摩擦係数(COF)を有する、3~50μm、好ましくは6~25μmのパッケージングフィルムを提供することである。より好ましくは、前記防曇剤は、1.0~2.0%の量で、さらにより好ましくは1.0~1.5%の量で存在する。
【0013】
ISO 16790:2005に関するものについては、前記規格によれば、溶融強度の値はニュートンで表される。しかしながら、本文及び実施例において、読みやすさのために、溶融強度の値は、以下の変換に従って「重量グラム」として表される。1N=102重量g;1cN=1.02重量g。このため、ニュートンで得られたデータは、得られた値に0.0098を乗じることによって重量グラムに変換される。
【0014】
本発明による防曇剤は、多官能性アルコールのエステル(但し、前記エステルはステアリン酸のエステルではない)、好ましくは多官能性アルコールと1種又は2種以上の脂肪酸との縮合生成物及びそれらのエトキシ化誘導体から選択される。したがって、防曇剤として使用し得る好適な化合物は、ポリグリセリルラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、グリセリンモノパルミテート及びソルビタンポリオキシエチレンモノラウレートエステルである。
本発明の好ましい態様では、防曇剤は、8~18の炭素原子、より好ましくは12~16の炭素原子を有する脂肪酸のエステルから選択される。本発明の特に好ましい態様において、脂肪酸エステルは、ポリグリセリルラウレート及びソルビタンモノラウレートから選択される。
【0015】
本発明において、防曇剤に関して、「エステル」とは、純粋なエステル又はエステルの混合物(2種以上の個々のエステルは互いに異なる)のいずれかを意味する。
本発明による防曇剤を特徴付けるエステルは、該エステル自体の少なくとも20重量%、好ましくは30重量%、さらにより好ましくは60重量%の多官能性アルコールの部分エステルを含む。ある場合には、多官能性アルコールの部分エステル又は多官能性アルコールと脂肪酸との縮合生成物は、該エステルに対して最高で80重量%又は90重量%であることが見出された。
【0016】
前記防曇剤は、押出プロセスによって所望の最終濃度に直接、又は「マスターバッチ」の形態でフィルム形成ステップ中にホッパー内で、ポリエステルに添加することができる。本発明における「マスターバッチ」とは、高濃度の防曇剤を含むポリエステルペレットを意味する。マスターバッチ中の添加剤の濃度は通常10%である。
好ましくは、本発明によるフィルム防曇剤は、規格EN13432に定められた基準に従って生分解性である。より好ましくは、防曇剤は、OECD法301Bによる28日間の試験内に10日のタイムウィンドウで10~60%の生分解を受ける。
本発明によるフィルムを製造するために使用することができるポリエステルは、本出願人名義の前述の特許IT102020000012184及びEP2632970におけるものであり、ポリエステルの特徴及び製造方法についてはこれらを参照する。
【0017】
静止摩擦係数(COF)に関する限り、それは材料の滑りに対する抵抗を表す。フィルムに関して、静止摩擦係数は、ASTM規格D1894「Static and kinetic coefficients of friction of plastic films and sheets」の改訂版に従って決定される。したがって、本発明では、以下のようにして静止摩擦係数を測定する。
厚さが3~50μm、好ましくは6~25μmであるフィルムの試料を、約150×300mm×2mm厚のガラス板支持表面の周りに巻き付ける。フィルム試料は、ガラス板に完全に接着しなければならず、表面が滑らかでしわのないものでなければならない。この条件を達成するために、ブラシを使用して、適度な圧力を加えることによって、フィルムとガラス板との間に形成され得る気泡を除去してもよい。このガラス板を水平位に置き、200±5グラムの重量及び63.5×5mm厚のステンレス鋼製スレッドをその上に置く。適度な圧力をその表面に手で加えて、スレッドのフィルム表面への接着を改善する。ロードセルを、ナイロンフィラメントでスレッドの一端に接続する。ロードセルを、動力計の可動クロスバー上に配置する。ロードセルは10mm/分の一定速度で移動することができる。静止摩擦係数は、スレッドがもはやフィルムに接着しなくなった瞬間に動力計によって記録された力(F)(滑りに対抗する接線方向の摩擦力)と、2つの接触面に垂直に作用する重量(Fg)(スチールスレッドの重量)との比として定義される。
【0018】
好ましくは、本発明による接着性フィルムの製造に使用されるポリエステルは、5%未満、より好ましくは3%未満、さらにより好ましくは1%未満のゲル分率を有する。ゲル分率は、ポリエステルの試料(X1)をクロロホルム中に入れ、次いで混合物を25~45μmのふるいでろ過し、ろ過スクリーン上に残った材料の重さ(X2)を測定することによって決定される。ゲル分率は、このようにして得られた材料と試料との重さの比、すなわち(X2/X1)×100として決定される。
【0019】
ポリエステルは、生分解性の脂肪族及び脂肪族-芳香族ポリエステルから有利に選択され、脂肪族-芳香族ポリエステルが特に好ましい。
脂肪族ポリエステルは、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジオールから得られる。
脂肪族-芳香族ポリエステルに関しては、それらは、少なくとも1種の多官能性芳香族酸によって主に構成される芳香族部分と、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジオールを含む脂肪族部分とを有する。
多官能性芳香族酸は、フタル酸タイプのジカルボン酸芳香族化合物及びそれらのエステル、並びに再生可能起源の複素環式ジカルボン酸芳香族化合物及びそれらのエステルである。特に好ましいのは、2,5-フランジカルボン酸及びそのエステル並びにテレフタル酸及びそのエステル並びにそれらの混合物である。
【0020】
脂肪族ジカルボン酸とは、主鎖中に2~22の炭素原子を有するジカルボン酸及びそのエステルを意味する。再生可能な供給源からのジカルボン酸、それらのエステル及びそれらの混合物が好ましく、これらのうち、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸及びそれらの混合物が好ましい。特に好ましい実施形態において、本発明による防曇性フィルムを製造するための生分解性ポリエステルの脂肪族ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸の総モルに対して少なくとも50モル%のアゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸又はそれらの混合物を含む。
イタコン酸及びマレイン酸などの、鎖内に不飽和を有するジカルボン酸も含まれる。
【0021】
本発明に従って使用されるポリエステルにおいて、ジオールは、2つのヒドロキシル基を有する化合物であると理解される。C2~C13の脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールの例としては、以下が挙げられる:1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール及びそれらの混合物。これらのうち、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール及び1,2-エタンジオール並びにそれらの混合物が特に好ましい。特に好ましい実施形態では、生分解性ポリエステルのジオールは、ジオールの総モルに対して少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも80モル%の1,4-ブタンジオールを含む。
【0022】
脂肪族芳香族ポリエステルは、ジカルボン酸の総モル含量に対して30~70モル%、好ましくは40~60モル%の多官能性芳香族酸含量を特徴とする。
有利には、分枝化合物は、ジカルボン酸の総モル含量に対して0.5モル%未満、好ましくは0.2モル%未満の量で脂肪族及び脂肪族-芳香族ポリエステルに添加されていてもよい。前記分枝化合物は、多官能性分子、例えば、ポリ酸、ポリオール及びそれらの混合物の群から選択される。
ポリ酸の例としては、以下がある。1,1,2-エタントリカルボン酸、1,1,2,2-エタンテトラカルボン酸、1,3,5-ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、3-ヒドロキシグルタル酸、ムチン酸、トリヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、それらの誘導体及びそれらの混合物。
【0023】
ポリオールの例としては、グリセロール、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、マンニトール、1,2,4-ブタントリオール、キシリトール、1,1,4,4-テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、アラビトール、アドニトール、イジトール及びそれらの混合物である。
脂肪族及び脂肪族-芳香族ポリエステルは、有利には、ヒドロキシ酸タイプのコモノマーを、ジカルボン酸の総モル含量に対して30モル%を超えない、好ましくは20モル%を超えないパーセンテージで含有してもよい。それらは、反復単位の不規則分布又はブロック分布のいずれかで存在してもよい。
好ましいヒドロキシ酸は、D乳酸及びL乳酸、グリコール酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸及びオクタデカン酸である。主鎖中に3又は4の炭素原子を有するタイプのヒドロキシ酸が好ましい。
異なるポリエステルの混合物から得られた防曇剤を含むフィルムも本発明に含まれる。
【0024】
本発明による意味において、生分解性ポリエステルは、規格EN 13432に従って生分解性であるポリエステルであると理解される。
本発明による防曇性フィルムを製造するために使用されるポリエステルは、生分解性であるか否かにかかわらず、合成起源又は天然起源の1種又は2種以上のポリマーとの混合物(反応押出プロセスによって得られるものを含む)中で使用してもよい。
好ましくは、この反応押出プロセスは、ペルオキシド、エポキシド又はカルボジイミドを添加して実施される。
好ましくは、前記反応押出プロセスは、反応押出プロセスに供給されるポリマーの合計に対して0.001~0.2重量%、好ましくは0.01~0.1重量%の範囲の量のペルオキシドを使用して行われる。
【0025】
エポキシドの添加に関する限り、これらは、反応押出プロセスに供給されるポリマーの合計の好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.2~1重量%の量で使用される。
カルボジイミドが使用される場合、これらは、反応押出プロセスに供給されるポリマーの合計の好ましくは0.05~2重量%、より好ましくは0.1~1重量%の量で使用される。
これらのペルオキシド、エポキシド及びカルボジイミドの混合物も使用してよい。
有利に使用し得るペルオキシドの例は、ジアルキルペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、イソノナノイルペルオキシド、ジ(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α'-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシ-3-イン、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、3,6,9-リエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート及びこれらの混合物の群から選択される。
【0026】
有利に使用し得るエポキシドの例としては、エポキシ化油及び/又はスチレン-グリシジルエーテル-メチルメタクリレート、グリシジルエーテル-メチルメタクリレートからの、1000~10000の範囲の分子量及び1~30、好ましくは5~25の範囲のエポキシド数/分子を有する全てのポリエポキシド、並びにジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、1,2-エポキシブタン、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、イソプレンジエポキシド、及び脂環式ジエポキシド、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリシジル2-メチルフェニルエーテル、グリセロールプロポキシラートトリグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、メタ-キシレンジアミンのテトラグリシジルエーテル及びビスフェノールAのジグリシジルエーテル並びにそれらの混合物を含む群から選択されるエポキシドである。
触媒はまた、反応性基の反応性を増加させるために使用され得る。ポリエポキシドの場合、例えば、脂肪酸の塩を使用してもよい。ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
【0027】
有利に使用し得るカルボジイミドの例は、ポリ(シクロオクチレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-ジメチレンシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(エチレンカルボジイミド)、ポリ(ブチレンカルボジイミド)、ポリ(イソブチレンカルボジイミド)、ポリ(ノニレンカルボジイミド)、ポリ(ドデシレンカルボジイミド)、ポリ(ネオペンチレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-ジメチレンフェニレンカルボジイミド)、ポリ(2,2',6,6'-テトライソプロピルジフェニレンカルボジイミド)(Stabaxol(登録商標)D)、ポリ(2,4,6-トリイソプロピル-1-フェニレンカルボジイミド)(Stabaxol(登録商標)P-100)、ポリ(2,6-ジイソプロピル-1,3-フェニレンカルボジイミド)(Stabaxol(登録商標)P)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(4,4'-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニレンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,3'-ジメチルー4,4'-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)、ポリ(クメンカルボジイミド)、p-フェニレンビス(エチルカルボジイミド)、1,6-ヘキサメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,8-オクタメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,10-デカメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,12-ドデカメチレンビス(エチルカルボジイミド)及びこれらの混合物を含む群から選択される。
【0028】
特に、本発明による防曇性フィルムの製造のためのポリエステルは、ジカルボン酸-ジオールタイプ、ヒドロキシ酸タイプ又はポリエステル-エーテルタイプの生分解性ポリエステルとの混合物で使用してもよい。
ジカルボン酸-ジオールタイプの生分解性ポリエステルに関する限り、それらは脂肪族又は脂肪族-芳香族のいずれであってもよい。
二酸-ジオールからの前記生分解性脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを含み、一方、前記生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルの芳香族部分は、合成起源及び再生可能起源の両方の多官能性芳香族酸から主になり、一方、脂肪族部分は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールからなる。
二酸-ジオールからの前記生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルは、好ましくは、酸成分に対して30~90モル%、好ましくは45~70モル%の芳香族酸含量を特徴とする。
【0029】
好ましくは、合成起源の多官能性芳香族酸は、フタル酸タイプのジカルボン酸芳香族化合物及びそれらのエステル、好ましくはテレフタル酸である。再生可能起源の多官能性芳香族酸は、好ましくは、2,5-フランジカルボン酸及びそのエステルを含む群から選択される。
芳香族二酸成分が合成起源及び再生可能起源の多官能性芳香族酸の混合物からなる、ジカルボン酸-ジオールからの生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルが特に好ましい。
ジカルボン酸-ジオールからの生分解性ポリエステルの脂肪族ジカルボン酸は、主鎖中に2~22の炭素原子数を有する脂肪族ジカルボン酸及びそのエステルである。再生可能な供給源からのジカルボン酸、それらのエステル及びそれらの混合物が好ましく、これらの中で、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸及びそれらの混合物が好ましい。
【0030】
二酸-ジオールからの生分解性ポリエステル中の脂肪族ジオールの例としては、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール及びそれらの混合物がある。これらのうち、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール及び1,2-エタンジオール並びにそれらの混合物が特に好ましい。
好ましくは、上記の二酸-ジオールから生分解性ポリエステルを用いて本発明による防曇性フィルムを製造するためのポリエステル混合物は、ポリエステル(i)に対して5~95重量%、より好ましくは10~90重量%の範囲で変化する、前記生分解性ポリエステルの含量を特徴とする。
【0031】
本発明による防曇性フィルムを製造するためのポリエステルは、また、合成起源及び再生可能起源の両方の多官能性芳香族酸又はそれらの混合物から主としてなる芳香族部分を有する2種以上の脂肪族-芳香族ポリエステルと混合してもよい。
本発明による防曇性フィルムを製造するためのポリエステル混合物に関して、ヒドロキシ酸からの好ましい生分解性ポリエステルとしては、ポリL乳酸、ポリD乳酸及びポリL-D乳酸立体異性体複合体、ポリε-カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレートが挙げられる。
好ましくは、上記の生分解性ヒドロキシ酸ポリエステルを用いて本発明による防曇性フィルムを製造するためのポリエステル混合物は、ポリエステル(i)に対して1~10重量%、より好ましくは1~5重量%の範囲で変化する、前記生分解性ポリエステルの含量を特徴とする。
【0032】
特に好ましい実施形態において、本発明による防曇性フィルムを製造するためのポリエステルは、少なくとも75%のL-乳酸若しくはD-乳酸又はその混合物を含有し30000を超える分子量Mwを有する、1~5重量%のポリ乳酸ポリマーと混合されている。
前記混合物は、有利には、本発明によるポリエステルを前記ポリ乳酸ポリマーと共に、好ましくは、有機ペルオキシド、例えば、上記で開示したものの存在下で押出成形するための反応性プロセスによって調製される。
ポリエステルは、天然起源のポリマー、例えば、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸塩、タンパク質、例えば、グルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、天然ゴム、リグニンそれ自体又は精製されたリグニン、加水分解されたリグニン、塩基性化されたリグニンなど、又はそれらの誘導体との混合物で使用してもよい。デンプン及びセルロースは修飾されていてもよく、例えば、0.2~2.5の置換レベルを有するデンプン又はセルロースエステル、ヒドロキシプロピル化デンプン、脂肪鎖を有する修飾デンプン、及びセロファンを含む。デンプンとの混合物が特に好ましい。デンプンはまた、構造化されていない(unstructured)、ゼラチン化された、又は充填剤の形態で使用されてもよい。
【0033】
本発明による「構造化されていない形態のデンプン」の定義については、欧州特許第0118240号明細書及び欧州特許第327505号明細書の教示が参照され、それによれば、デンプンは、光学顕微鏡下で偏光においていわゆる「マルタ十字」を実質的に示さず、かつ光学顕微鏡下で位相差においていわゆる「ゴースト」を実質的に示さないように加工される。
デンプンは、連続相若しくは分散相を構成してもよく、又は共連続形態であってもよい。分散されたデンプンの場合、デンプンは、好ましくは平均直径1μm未満、より好ましくは0.5μm未満の形態である。
好ましくは、ポリエステルと上記の天然起源のポリマーとの混合物は、ポリエステル(i)に対して1~30重量%、より好ましくは2~15重量%の範囲で変化する、前記天然起源のポリマーの含量を特徴とする。
【0034】
本発明による防曇剤を含むフィルムを製造するためのポリエステルは、ポリオレフィン、非生分解性ポリエステル、ポリエーテル-ウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリカーボネート及びそれらの混合物との混合物で使用してもよい。
好ましいポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、それらのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチル酢酸ビニル及びポリエチレンビニルアルコールである。
非生分解性ポリエステルの中では、PET、PBT、PTTが好ましく、特に再生可能含量が30%より大きく、ポリアルキレンフランジカルボキシレートが好ましい。中でも、ポリエチレンフランジカルボキシレート、ポリプロピレンフランジカルボキシレート、ポリブチレンフランジカルボキシレート及びそれらの混合物が特に好ましい。
【0035】
ポリアミドの例としては、ポリアミド6及び6.6、ポリアミド9及び9.9、ポリアミド10及び10.10、ポリアミド11及び11.11、ポリアミド12及び12.12、並びに6/9、6/10、6/11及び6/12型のそれらの組合せがある。
ポリカーボネートは、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、それらの混合物及びコポリマーであってもよい。
ポリエーテルは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、それらのコポリマー及びそれらの混合物であってもよい。
好ましくは、ポリエステルと上記のポリマー(ポリオレフィン、非生分解性ポリエステル、ポリエステル-及びポリエーテル-ウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリカーボネート及びそれらの混合物)との混合物は、ポリエステル(i)に対して0.5~99重量%、より好ましくは5~50重量%の範囲の前記ポリマーの含量を特徴とする。
【0036】
本発明による防曇フィルムを製造するために使用されるポリエステルの製造方法は、当該技術分野において公知の方法のいずれかに従って実施してもよい。
特に、ポリエステルは、重縮合反応によって有利に得ることができる。有利には、ポリエステル重合プロセスは、適切な触媒の存在下で行うことができる。好適な触媒として、例として、有機金属スズ化合物、例えば、スズ酸誘導体、チタン化合物、例えば、オルト-ブチルチタネート、アルミニウム化合物、例えば、Al-トリイソプロピル、又はアンチモン及び亜鉛化合物を挙げ得る。
【0037】
本発明による防曇性フィルムを製造するために使用されるポリエステル中の末端酸基の含量は、好ましくは100meq/kg未満、好ましくは60meq/kg未満、さらにより好ましくは40meq/kg未満である。
末端酸基含量は、以下のように測定してもよい。1.5~3gのポリエステルを60mlのクロロホルムと共に100mlのコニカルフラスコに入れる。ポリエステルが完全に溶解した後、25mlの2-プロパノールを加え、分析の直前に1mlの脱イオン水を加える。得られた溶液を、予め標準化したNaOHエタノール溶液で滴定する。適切なインジケータ、例えば、非水性溶媒中での酸-塩基滴定用のガラス電極を使用して、滴定当量点を決定する。末端酸基の含量は、以下の式に従って、NaOHエタノール溶液の消費量から計算される。
【0038】
【数1】
式中、
V
eq=試料滴定の当量点でのNaOHエタノール溶液のml;
V
b=ブランク滴定においてpH=9.5を達成するために必要なNaOHエタノール溶液のml;
T=モル/リットルで表されるNaOHエタノール溶液の濃度;
P=試料の重さ(グラム)
【0039】
本発明は、防曇剤を含む前記生分解性ポリエステルから得られるフィルム、及び前記フィルムの製造方法に関する。前記フィルムは、家庭用及び産業用の消費に関連する多くの実用的な用途に適した特性を有する。そのような用途の例としては、食品包装及び非食品包装、産業用包装(例えばパレット)、農業における梱包、及び廃棄物包装がある。
前記フィルムはまた、有利には、フィルムブローイングプロセスによって製造してもよい。該プロセスでは、バブルを膨らませることで、単層フィルムのリールをフィルム形成プロセスから下流で回収することができる。この特徴は、製造プロセスの生産性の点で特に有利である。
【0040】
好ましくは、バブルブローイングフィルム形成プロセスは、2~5のブローアップ比(BUR又は横延伸比)、及び5~60の機械方向(MD)のドローダウン比(DDR又は縦延伸比)を特徴とする。本発明の意味において、DDRは、延伸方向に押出機を出る溶融物の伸びの尺度を意味し、BURは、ダイ直径に対するバブル直径の比を意味する。有利には、プロセスパラメータは、バブルブローイング中に3~15のDDR/BUR比を有するように設定される。
【0041】
本発明による接着性フィルムの粘着性又は透明性に影響を及ぼすことなく、フィルム形成ステップ中に加工助剤を添加してもよい。このような添加は、当業者に公知の方法に従って行われる。プロセスコアジュバントは、好ましくは脂肪酸アミド、例えばステアルアミド、ベヘンアミド、エルカミド、オレアミド、エチレンビスステアルアミド、エチレンビスオレアミド及び誘導体、及びブロッキング防止剤、例えばシリカ、炭酸カルシウム、タルク又はカオリンである。
防曇剤を含む本発明によるフィルムは、3~50μmの範囲の極薄特性を有する。好ましくは6~25μmである。
【0042】
本発明によるフィルムは、それ自体と、他の非接着性表面、例えば、セラミック、ガラス、金属、及びプラスチック、例えば、HDPE、LDPE、PP、PET、PVCとの両方に対して強い接着特性を示す。
さらに、使用される生分解性ポリエステルの化学-物理特性の結果として、前記ポリエステルから得られる接着性フィルムは、可塑剤又は接着剤(粘着付与剤として知られる)、例えばポリイソブテン又はエチレンビニルアセテートを使用することなく製造することができる。これにより、本発明によるフィルムと、前述の添加剤の存在のために食品包装分野での使用に大きな制限があるPVC及びポリエチレン接着性フィルムとの間のさらなる顕著な差異を理解することができるようになる。
特に好ましい実施形態において、本発明によるフィルムは、可塑剤及び接着剤を実質的に含まない。
【0043】
フィルムはまた、優れた機械的特性を有し、これにより、引き裂き易さ、強度及び伸縮性の特定の組合せによって、かかるフィルムは、産業用包装及び食品包装における使用に特に適したものとなる。
好ましくは、前記フィルムは、フィルム形成方向に対して横方向に350%より大きい破断伸び、70MPaより大きい弾性率及び30MPaより大きい破断点荷重を有し、フィルム形成方向に対して長手方向に300%より大きい破断伸び、80MPaより大きい弾性率及び35MPaより大きい破断点荷重を有する。
より好ましくは、前記フィルムは、フィルム形成方向に対して横方向に400%より大きい破断伸び、90MPaより大きい弾性率及び40MPaより大きい破断点荷重を有し、フィルム形成方向に対して長手方向に350%より大きい破断伸び、100MPaより大きい弾性率及び45MPaより大きい破断点荷重を有する。
機械的特性に関する限り、本発明による意味において、これらは、ASTM D882(23℃及び55%相対湿度及びv0=50mm/分での牽引力)に従って決定される。
【0044】
フィルムは、ASTM D5748(Standard Test Method for Protrusion Puncture Resistance of Stretch Wrap Film)によって決定される、15Nを超える、好ましくは20Nを超える最大穿刺抵抗を特徴とする。
フィルムは、有利には、優れた光学特性を特徴とする。特に、それは、好ましくは、20%より小さい、好ましくは15%より小さい、さらにより好ましくは10%より小さいヘイズ値、及び80%より大きい、好ましくは90%より大きい透過率値を有し、それによって、使用者が、その中に包装された対象物を、その対象物の包みを解く必要なしに識別することを可能にする。この特徴は、食品包装に使用する場合に極めて有利である。光学特性は、ASTM D1003に従って決定される。
生分解性ヒドロキシ酸ポリエステル(例えば、PLA)を含む組成物を有するフィルムは、透明性を犠牲にして、増加した弾性率、減少した粘着性及び改善された巻き戻し性を有する。
【0045】
上述の特性に加えて、本発明によって得られるフィルムは、有利には、PVC及びPEフィルムよりもはるかに高い水蒸気透過性を有する。特に、それは、好ましくは、16μmの厚さのフィルム上で23℃、50%RHで測定して、200g/m2/日を超える、好ましくは300~900g/m2/日のWVTR(水蒸気透過率)を有する。
水蒸気透過特性は、ASTM F1249に従って決定される。
本発明による生分解性パッケージングフィルムは、規格EN 13432による生分解性且つ堆肥化可能なフィルムを意味する。
本発明によるフィルム防曇剤は、石鹸及び乳化剤のように、極性部分及び非極性部分を有する分子からなる化合物である。この分子中で、非極性部分は一般にフィルムに接着する一方、極性基はフィルム表面の極性を増大させる。このことは、水滴を拡散させ(水滴はフィルム上に追加の水の層として現れる)、除去する効果を有する。したがって、この追加の防曇剤層が、防曇剤を含まない点を除き同じ生分解性ポリエステルによって製造される同じフィルムと比較して、フィルムに対して透明性(特にヘイズ)を増加させる効果があることは特に驚くべきことである。
【0046】
当該技術分野における先入観を覆すさらなる驚くべき効果は、防曇剤が存在する本発明によるフィルムが、包装機械において優れた挙動を示すことである。
特に、現在の包装機械は、本発明によるフィルムを用いて毎分80~90個の包装が可能であることが確認されている。ナチュラルエージング条件下での機械的特性に関しては、フィルムは、フィルム形成プロセスの6ヶ月後でもなお良好な靭性を示す。
特に、ナチュラルエージング条件下での機械的特性に関して、フィルム形成プロセスの6ヶ月後に、フィルムは、破断点荷重(ASTM D882に従って23℃及び55%相対湿度及びvo=50mm/分で決定される)及び二軸応力下でのストレッチフィルムの穿孔抵抗(破断点力(N)として表され、ASTM D5748に従って23℃及び55%相対湿度及びvo=250mm/分で決定される)が35%を超えて、好ましくは25%を超えて低下しない。
本発明によるフィルムは、食糧包装、産業用包装、農業における圧縮梱包、及び廃棄物包装に特に好適である。
【実施例】
【0047】
実施例1-生分解性ポリエステルの製造、用いた防曇剤の説明、及び用いた組成物の表
P1:ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)[PBAT]、全ジカルボン酸成分に対して47モル%のテレフタル酸含量を有する。このPBATは、4.1g/10分(@190℃、2.16kg)のMFR、180℃で1304Pasの剪断粘度、1.0gの溶融強度、及び38meq/kgの末端酸基含量を有する。
P2:ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)[PBATAz]、全ジカルボン酸成分に対して47モル%のテレフタール酸含量を有する。PBATAzは、4.9g/10分(@190℃、2.16kg)のMFR、180℃で1178Pasの剪断粘度、1.1gの溶融強度及び34meq/kgの末端酸基含量を有する。
【0048】
PLA:Ingeo 3251Dポリ乳酸は、35g/10分のMFR(@190℃、2.16kg)及びMW=105000を特徴とする。
P3:ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)[PBAT]、全ジカルボン酸成分に対して47モル%のテレフタル酸含量を有する。このPBATは、4.2g/10分(@190℃、2.16kg)のMFR、180℃で1289Pasの剪断粘度、0.9gの溶融強度、及び33meq/kgの末端酸基含量を有する。
A1:Sabo社製のポリグリセロールラウレート防曇剤
A2:Croda社製のソルビタンポリオキシエチレンモノラウレートエステル
AC:Sabo社製のソルビタンモノステアレート防曇剤
S:HMV-5CA-LC加水分解安定剤
【0049】
【0050】
これら異なる組成物を、以下の条件下で運転するモデルOMC EBV60/36二軸スクリュー押出機に供給した。
スクリュー直径(D)=58mm;
L/D=36;
スクリュー回転=140rpm;
温度プロファイル=60-150-180-190×4-150×2 ℃;
スループット:40kg/h;
10のうちのゾーン8における真空脱気
【0051】
このようにして得られた顆粒を、スクリュー直径40mm及びL/D30を有し、30rpmで運転するGhioldiモデルインフレートフィルム機に供給した。フィルム形成ヘッドのエアギャップは0.9mm、L/Dは12であった。18μm厚(9+9)のフィルム[実施例1、2、4、6~10]及び20μm厚(10+10)のフィルム[実施例3、5]を、表2に記載の条件を使用して得た。
【0052】
【0053】
3グラムのフィルムを分析して、本文に記載の方法を用いてGPC≦10000の平均分子量を有するポリエステルオリゴマーの重量パーセンテージ(「q」)を決定した。フィルムをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析した。測定は、Agilent(登録商標)1100クロマトグラフを使用して40℃で行った。測定は、直列の2カラムのセット(混じったポロシティを有する5μm及び3μmの粒子直径)、屈折率検出器、溶離剤としてのクロロホルム(流速0.5ml/分)を使用し、参照標準としてポリスチレンを使用して行った。
【0054】
【0055】
機械的特性は、ASTM D882(23℃及び55%相対湿度及びv0=50mm/分での引張り強さ)に従って決定した。
光学特性をASTM D1003に従って決定した。
水蒸気透過性は、ASTM F1249を使用して23℃及び50%相対湿度で決定した。
低温曇り試験(Cold Fog test)を行って、防曇剤の性能を評価した。30℃の温度の200mlの水を250mlのビーカーに注いだ。試験フィルムをビーカーに取り付けた後、試料を4℃の冷蔵庫に入れた。水層形成に関するフィルム表面の変化を記録し、5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、1日、2日、3日、4日及び6日後に冷蔵庫からビーカーを取り出して観察した。防曇剤の効果の指標として、水滴層から水の不連続膜への移行が起こる時点を参照する。
【0056】
【0057】
表4の要点:本発明による「粘着性」との用語は、フィルムがそれ自体及び表面に接着する能力を1(小)~5(大)のスケールで定義する。本発明による「巻き戻し性」との用語は、1(小)~5(大)のスケールでフィルムの巻き戻し易さとして理解される。
【0058】
【0059】
表5の要点:本発明による「粘着性」との用語は、フィルムがそれ自体及び表面に接着する能力を1(小)~5(大)のスケールで定義する。本発明による「巻き戻し性」との用語は、1(小)~5(大)のスケールでフィルムの巻き戻し易さとして理解される。
【0060】
【0061】
表から理解できるように、比較例6における高い水蒸気バリア(WVTR=170g/m2/日)により、表面への防曇剤の過剰な添加は、防曇特性を付与せず、基準と比較して光学特性の劣化をもたらすことが確認される。
【0062】
【0063】
実施例3:食品トレー包装装置におけるフィルム性能
実施例1(組成物1)に従って製造したフィルムを、OMORI社製のSTN 8500 WE(登録商標)食品トレイ包装機械を使用して試験した。
フィルムは、16~18ミクロン-リールストリップ400mmの公称厚さを有し、使用したトレイは、360mmの短辺長を有するPSであった。
包装段階を3つのステージに分けた。
1.トレイを包み込み、中央で溶接し、筒状に切断する;
2.筒の先端部及び尾部の折り込み部をトレイの下に折り込む;
3.加熱ベルト上で搬送し、折り込み部を溶接する。
【0064】
第1段階において、フィルムは、輸送及び搬送(transport and conveying)段階と、2対の加熱ローラー(135℃に設定)により行われる中央部の封止段階との両方で良好な機械挙動(優れた弾性)を示した。切断ステージにおいても問題となる点は認められなかった。
第2段階において、ガラスファイバベルトの温度を150℃に設定し、35トレイ/分から80~90トレイ/分まで増加する高速の包装速度で運転して、折り込み部はトレイ底部で正しく折り畳まれた。
加熱ベルト上での搬送及び溶接のステージ(第3段階)の間に、顕著な問題は特定されなかった。