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特許7668845撮像レンズ、撮像装置および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】撮像レンズ、撮像装置および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20250418BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023096570
(22)【出願日】2023-06-12
(65)【公開番号】P2024178057
(43)【公開日】2024-12-24
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 高士
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-026434(JP,A)
【文献】特表2017-513034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に配置されてなる第1レンズ~第5レンズと、
前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置されてなる開口絞りと、
から構成され、
前記第1レンズは、
物体側の面が凸面で偏肉比が0.4~0.6であり、その物体側の面が周辺部に変曲点を有する正レンズであり、
前記第2レンズは、
物体側および像側それぞれの面が凸面の正レンズであり、
前記第3レンズは、
少なくとも物体側の面が凸面の負レンズであり、
前記第4レンズは、
像側の面が凸面であり、凸メニスカスの正レンズであり、
前記第5レンズは、
物体側の面が凸面で偏肉比が0.7~1.1であり、その物体側の面が周辺部に変曲点を有し、かつ、像側の面が凹面で、その像側の面が周辺部に変曲点を有する負レンズであり、
全系の焦点距離をF、前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第5レンズの焦点距離をf5、前記開口絞りから像側のレンズの合成焦点距離をG2とするとき、条件(1)、(2)、
-1.5<f1/f5<-0.1 ・・・(1)
0.1<|f1/G2|<1.0 ・・・(2)
を満足する撮像レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
前記第1レンズの材質のd線に対する屈折率をN1、第5レンズの材質のd線に対する屈折率をN5とするとき、条件(3)、
N1<N5 ・・・(3)
を満足する撮像レンズ。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
前記第1レンズの材質のd線に対する屈折率N1は、条件(4)、
1.49<N1<1.55 ・・・(4)
を満足する撮像レンズ。
【請求項4】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
前記第5レンズの材質のd線に対する屈折率N5は、条件(5)、
1.63<N5<1.67 ・・・(5)
を満足する撮像レンズ。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
光学系全系の焦点距離をf、光学系の全長をOALとするとき、条件(6)、
0.6<f/OAL<1.0 ・・・(6)
を満足する撮像レンズ。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
光学系の全長をOAL、最も像側に配置されてなる第5レンズの光学有効径をSDoとするとき、条件(7)、
1.6<OAL/SDo<2.6 ・・・(7)
を満足する撮像レンズ。
【請求項7】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
前記第4レンズの焦点距離をf4、前記第5レンズの焦点距離をf5とするとき、条件(8)、
0.5<|f4/f5|<1.0 ・・・(8)
を満足する撮像レンズ。
【請求項8】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
射出瞳位置をEXP、像高をIHとするとき、条件(9)、
-0.5<EXP/IH<-1.5 ・・・(9)
を満足する撮像レンズ。
【請求項9】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
光学全長をOAL、像高をIHとするとき、条件(11)
0.9<OAL/(2*IH)<1.1 ・・・(11)
を満足する撮像レンズ。
【請求項10】
請求項1に記載の撮像レンズと、
前記撮像レンズが結像した像を受光して撮像信号を生成する個体撮像素子と、
を備える、
撮像装置。
【請求項11】
請求項10に記載の撮像装置と、
前記撮像装置が生成した前記撮像信号に対応する画像を表示する表示部と、
を備える、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像レンズ、撮像装置および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の個体撮像素子および撮像レンズを備える、デジタルスチイルカメラ、デジタルカムコーダおよびスマートフォン用カメラ等の撮像装置が普及している。
【0003】
それらの撮像装置に用いられる個体撮像素子は、高画素化が進んでいる。この個体撮像素子の高画素化に伴って、撮像レンズにも、光学性能の高性能化が求められている。
【0004】
また、近年、撮像装置が設けられたPC(Personal Computer)では、Webを通じて動画の配信やコミュニケーションが行われている。このため、撮像装置では、携帯性を考慮した小型化も図られている。市場で求められる撮像装置は、高性能化および小型化を両立させたものが主となっており、撮像レンズにも高性能化のみのならず、小型化が求められている。このため、高性能化と小型化の両立を図った撮像レンズが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-513034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、Webを通じた動画配信の場合、従来の撮像レンズより広角な画角で撮像することができるものが望まれていた。このため、従来の撮像レンズより広角な画角で、明るく、高性能、かつ小型化された撮像レンズが望まれていた。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、広角な画角で、明るく、高性能、かつ小型の撮像レンズ、撮像装置および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の第1態様に係る撮像レンズは、物体側から像側へ順に配置されてなる第1レンズ~第5レンズと、前記第1レンズと前記第2レンズとの間に配置されてなる開口絞りと、を備え、前記第1レンズは、物体側の面が凸面で偏肉比が大きく、その物体側の面が周辺部に変曲点を有する正レンズであり、前記第2レンズは、物体側および像側それぞれの面が凸面の正レンズであり、前記第3レンズは、少なくとも物体側の面が凹面の負レンズであり、前記第4レンズは、像側の面が凸面であり、偏肉比の小さい凸メニスカスの正レンズであり、前記第5レンズは、物体側の面が凸面で偏肉比が大きく、その物体側の面が周辺部に変曲点を有し、かつ、像側の面が凹面で、その像側の面が周辺部に変曲点を有する負レンズであり、全系の焦点距離をF、前記第1レンズの焦点距離をf1、前記第5レンズの焦点距離をf5、前記開口絞りから像側のレンズの合成焦点距離をG2とするとき、条件(1)、(2)、
-1.5<f1/f5<-0.1 ・・・(1)
0.1<|f1/G2|<1.0 ・・・(2)
を満足する。
【0009】
また、本開示の第2態様に係る撮像装置は、上記の撮像レンズと、前記撮像レンズが結像した像を受光して撮像信号を生成する個体撮像素子と、を備える。
【0010】
また、本開示の第3態様に係る情報処理装置は、上記撮像装置と、上記撮像装置が生成した前記撮像信号に対応する画像を表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、広角な画角で、明るく、高性能、かつ小型の撮像レンズを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施の形態1に係る撮像レンズのレンズ構成を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態1に係る撮像レンズの収差図である。
図3図3は、本開示の実施の形態2に係る撮像レンズのレンズ構成を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態2に係る撮像レンズの収差図である。
図5図5は、本開示の実施の形態3に係る撮像レンズのレンズ構成を示す図である。
図6図6は、本開示の実施の形態3に係る撮像レンズの収差図である。
図7図7は、本開示の各実施の形態の撮像レンズを有する撮像装置を備える情報処理装置の概略構成を示す図である。
図8図8は、図7の撮像装置の概略構成を示す図である。
図9図9は、本開示の各実施の形態の撮像レンズを有する撮像装置を備える情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る撮像レンズ、撮像装置および情報処理装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態により本開示が限定されるものではない。また、以下の説明において参照する各図は、本開示の内容を理解でき得る程度に形状、大きさ、および位置関係を概略的に示してあるに過ぎない。即ち、本開示は、各図で例示された形状、大きさおよび位置関係のみに限定されるものではない。また、同一の部分には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0014】
[実施の形態]
図1図3および図5は、それぞれ、実施の形態1~4の撮像レンズのレンズ構成を示す断面図である。各断面図において、左方が物体側(前方)で、右方が像側(後方)である。
【0015】
各実施の形態の撮像レンズ100は、物体側から像側へ順に配置されてなる第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4および第5レンズL5を備える。さらに、撮像レンズ100は、第1レンズL1と第2レンズL2との間に配置されてなる開口絞りS(STOP)を備える。
【0016】
なお、図1図3図5および図7において、第1レンズL1~第5レンズL5および開口絞りSのいずれかに付された符号1~11は、各レンズまたは絞りの面を表している。以下、これらの面を物体側から像側へ向けて順次面1~面11と言う。面3は、開口絞りSの面である。さらに、図1図3図5および図7において、符号CGは、個体撮像素子のカバーガラスおよび各種のフィルタの少なくとも1つ以上で構成されたものと等価な透明平行平板を表したものである。透明平行平板CGの入射側面を面12と言い、像側面を面13と言う。
【0017】
撮像レンズ100は、第1レンズL1のみを1つの群とする負の第1群および第2レンズL2~第5レンズL5を1つの群として負または正の第2群からなる。撮像レンズ100は、像面から離れた第1レンズL1と第2レンズL2との間に開口絞りSを配置することにより、射出瞳と像面との距離を十分にとることができるので、像側の良好なテレセントリック性を実現することができ、かつ、球面収差とコマ収差の補正を容易にすることができる。
【0018】
第1レンズL1は、物体側の面が凸面で偏肉比(アスペクト比)が大きく、その物体側の面が周辺部に変曲点を有する正レンズを用いて構成される。ここで、偏肉比は、略0.4~0.6である。また、その物体側の面が周辺部とは、面1側における第1レンズL1の口径に対して、中心(光軸)から外縁に向かう9割付近の位置を含む領域である。
【0019】
第2レンズL2は、物体側および像側それぞれの面が凸面の正レンズを用いて構成される。
【0020】
第3レンズL3は、少なくとも物体側の面が凹面の負レンズを用いて構成される。
【0021】
第4レンズL4は、像側の面が凸面であり、偏肉比の小さい凸メニスカスの正レンズを用いて構成される。
【0022】
第5レンズL5は、物体側の面が凸面で偏肉比が大きく、その物体側の面が周辺部に変曲点を有し、かつ、像側の面が凹面で、その像側の面が周辺部に変曲点を有する負レンズを用いて構成される。ここで、偏肉比は、略0.7~1.1である。また、その物体側の面が周辺部とは、面10側における第5レンズL5の口径に対して、中心(光軸)から外縁に向かう9割付近の位置を含む領域である。また、その像側の面が周辺部とは、面11側における第5レンズL5の口径に対して、中心(光軸)から外縁に向かう9割付近の位置を含む領域である。
【0023】
このように構成された第1レンズL1~第5レンズL5は、全て非球面レンズであり、各々が非球面の形状に特徴を有している。さらに、第1レンズL1および第5レンズL5が変曲点を有する形状とすることで、撮像レンズ100の光方向の厚さ(全長)を薄くした状態で収差を高度に補正することができる。さらに、第5レンズL5は、偏肉比が0.7~1.1であるため、撮像レンズ100の製造誤差感度を低減することができる。
【0024】
図2図4および図6は、それぞれ、実施の形態1~3の撮像レンズ100の縦収差図である。球面収差図では、d線(黄色:波長587.6nm)、g線(青色:波長435.8nm)およびC線(赤色:653.3nm)それぞれに対する球面収差量を示す。また、非点収差図では、実線Sがサジタル像面における非点収差量を示し、破線Tがタンジェンシャル像面における非点収差量を示す。さらに、歪曲収差図では、d線のみに対する歪曲収差量を示す。また、Angle(deg)は、撮像半画角(°)を示す。
【0025】
次に、各実施の形態の撮像レンズ100の条件について説明する。
各実施の形態の撮像レンズ100は、第1レンズL1の焦点距離をf1、第5レンズL5の焦点距離をf5、開口絞りSから像側のレンズの合成焦点距離をG2とするとき、以下の条件(1)、(2)を満足する。
2.0<f1/f5<10.5 ・・・(1)
2.5<|f1/G2|<9.0 ・・・(2)
【0026】
条件(1)は、第1レンズL1の負のパワーと第5レンズL5の負のパワーのバランスをとる条件である。
【0027】
f1/f5が条件(1)の下限以下である場合、非点収差がオーバー傾向となるうえ、歪曲収差とコマ収差も大きく発生し、所望の性能の実現が困難である。また、f1/f5が条件(1)の上限以上である場合、球面収差がアンダー傾向になるため、非点収差とのバランスが崩れ、所望の性能の実現が困難である。
【0028】
条件(2)は、第1レンズL1の負のパワーと、開口絞りSから像側のレンズである第2群の合成の正のパワーのバランスをとる条件である。
【0029】
|f1/G2|が条件(2)の下限以下である場合、第1レンズL1の負のパワーが第2群(第2レンズL2~第5レンズL5)の合成パワーに対して、相対的に大きくなるため、非点収差がオーバーであり、歪曲収差で樽型が強く、かつコマ収差が補正過剰の傾向を有する。また、|f1/G2|が条件(2)の上限以上である場合、第1レンズL1の負のパワーが第2群の合成パワーに対し、相対的に小さくなるため、球面収差と非点収差とのバランスが崩れる傾向を有する。
【0030】
即ち、撮像レンズ100が条件(1)および条件(2)を満足することにより、球面収差と非点収差とのバランスが取れ、明るく、高性能、かつ小型(コンパクト)な撮像レンズ100を実現することができる。ここで、小型化とは、撮像レンズ100の光軸方向の全長を短くすることによって厚みを小さくすること、および、撮像レンズ100の口径を小さくすることである。
【0031】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、第1レンズL1の材質のd線に対する屈折率をN1、第5レンズL5の材質のd線に対する屈折率をN5とするとき、条件(3)を満足する。
N1<N5 ・・・(3)
【0032】
条件(3)は、第1レンズL1の材質の屈折率N1と第5レンズL5の材質の屈折率N5との関係を規定する条件である。
【0033】
第1レンズL1は、負レンズであり、上記レトロフォーカス機能を十分に発揮させるため、負の屈折力が大きくなければならない。本開示においては、第1レンズL1の屈折率N1は、第5レンズL5の屈折率N5よりも小さい屈折率の材質で形成し、条件(3)を満足させることで、所望のレトロフォーカス機能を良好な色収差を実現することができる。
【0034】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、第1レンズL1の材質のd線に対する屈折率N1が、条件(4)を満足する。
1.49<N1<1.55 ・・・(4)
【0035】
屈折率N1が条件(4)の下限以下である場合、光学性能は、さらに向上されるが、コストが高くなるため好ましくない。また、屈折率N1が条件(4)の上限以上である場合、光学性能は、色収差に影響がでてくるので好ましくない。よって、撮像レンズ100が条件(4)を満足することにより、コストと色収差のバランスが取れ、明るく、高性能、かつ小型(コンパクト)の撮像レンズ100を実現することができる。
【0036】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、第5レンズL5の材質のd線に対する屈折率N5が、条件(5)を満足する。
1.63<N5<1.67 ・・・(5)
【0037】
屈折率N5が条件(5)の下限以下である場合、または、屈折率N5が条件(5)の上限以上である場合、色収差のバランスが崩れる。コストと色収差のバランスを考慮すると、条件(5)を満足することで、明るく、高性能、かつ小型の撮像レンズ100を実現することができる。
【0038】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、光学系全系(撮像レンズ100)の焦点距離をf、光学系(撮像レンズ100の長手方向)の全長をOALとするとき、条件(6)を満足する。
0.25<f/OAL<0.45 ・・・(6)
【0039】
条件(6)は、光学系全系の焦点距離fと全長OALのバランスをとる条件である。
【0040】
各実施の形態の撮像レンズ100においては、f/OALが条件(6)の下限以下である場合、さらなる広角化の実現することができるが、前玉径が大きくなる傾向になるため、サイズの大型化につながるおそれがある。また、f/OALが条件(6)の上限以上である場合、光学系の全長は、小さくなるが広画角化が難しくなる。条件(6)を満足する撮像レンズ100は、サイズの小型化と画角の広角化を実現することができる。
【0041】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、光学系の全長をOAL、最も物体側に配置されてなるレンズ(第1レンズL1)の光学有効径をSDoとするとき、条件(7)を満足する。
1.2<OAL/SDo<1.6 ・・・(7)
【0042】
条件(7)は、レンズ全長とレンズ(第1レンズL1)の前玉径のバランスをとる条件である。
【0043】
OAL/SDoが条件(7)の下限以下である場合、光学系の小型化(光軸方向の短縮化)になるが、広画角を達成することが困難になる。OAL/SDoが条件(7)の上限以上である場合、光学系の性能が向上するが、小型化(光軸方向の短縮化)を達成することが困難になる。撮像レンズ100は、条件(7)を満足することで、小型化(光軸方向の短縮化)と高性能化を実現することができる。
【0044】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、第4レンズL4の焦点距離をf4、第5レンズL5の焦点距離をf5とするとき、条件(8)を満足する。
0.5<|f4/f5|<0.9 ・・・(8)
【0045】
条件(8)は、歪曲収差を最適な範囲にする条件である。
【0046】
|f4/f5|が条件(8)の下限以下である場合、光学系は、糸巻型の歪曲収差の傾向になり、|f4/f5|が条件(8)の上限以上である場合、光学系は、樽型の歪曲収差の傾向が強くなる。このため、撮像レンズ100は、条件(8)を満足することで、最適な範囲の歪曲収差を実現することができる。
【0047】
また、各実施の形態の撮像レンズは、射出瞳位置をEXP、像高をIHとするとき、条件(9)を満足する。
-2.0<EXP/IH<-1.0 ・・・(9)
【0048】
EXP/IHが条件(9)の下限以下である場合、光線入射角が低くなる傾向になるが、光学系の全長を短くして小型化することが困難になる傾向にある。また、EXP/IHが条件(9)の上限以上である場合、光線入射角が高くなる傾向にある。このため、撮像レンズ100は、条件(9)を満足することで、小型化を実現することができる。
【0049】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、最も物体側のレンズの光学有効径をSDo、光学系の入射瞳径をENP_Dとするとき、条件(10)を満足する。
3.5<SDo/ENP_D<5.5 ・・・(10)
【0050】
条件(10)は、画角の広角化と明るさを両立するための条件である。
【0051】
SDo/ENP_Dが条件(10)の下限以下である場合、光学系は、明るくなるが、球面収差が大きくなる傾向にあり、SDo/ENP_Dが条件(10)の上限以上である場合、光学系は、球面収差が補正される傾向になるものの、明るさが暗くなる傾向になる。ここで、明るさとは、Fナンバーである。また、明るさが暗くなるとは、Fナンバーが大きくなることである。
【0052】
また、各実施の形態の撮像レンズ100は、光学全長をOAL、像高をIHとするとき、条件(11)を満足する。
0.9<OAL/(2*IH)<1.1 ・・・(11)
【0053】
条件(11)は、撮像レンズ100の全長と像高の関係を与える条件である。
【0054】
OAL/(2*IH)が条件(11)の下限を下回った場合、光学系の全長が短くなる傾向になるが、OAL/(2*IH)条件(11)の上限を上回った場合、光学系の全長が長くなる。このため、撮像レンズ100は、条件(11)を満足することで、短形化(低背化)と高性能化のバランスを実現することができる。
【0055】
〔撮像装置〕
次に、各実施の形態の撮像レンズ100を撮像光学系として用いた撮像装置を備える情報処理装置(PC)の実施の形態について説明する。
【0056】
図7は、各実施の形態の撮像レンズ100を有する撮像装置を備える情報処理装置の概略構成を示す図である。図8は、図7の撮像装置の概略構成を示す図である。図9は、各実施の形態の撮像レンズを有する撮像装置を備える情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【0057】
図7図9に示す情報処理装置30は、少なくとも、撮像装置31、信号処理部32、画像処理部33、制御部34、表示部35、記憶部36、通信部37、入力部38および音声入出力部39を備える。
【0058】
撮像装置31は、制御部34の制御のもと、所定の視野領域を撮像することによって撮像信号を生成し、この撮像信号を信号処理部32へ出力する。撮像装置31は、図10に示すように、少なくとも、カバー311、各実施の形態の撮像レンズ100および個体撮像素子312を備える。撮像装置31は、情報処理装置30の前面側に配置されてなる。具体的には、撮像装置31は、撮像装置31の撮像方向が情報処理装置30のユーザを撮像することができる位置に配置されてなる。もちろん、撮像装置31は、情報処理装置30の形状、大きさ、使用態様に応じて、配置位置を適宜変更することができる。
【0059】
カバー311は、撮像レンズ100の汚れおよび防塵のための部材なカバーガラス等を用いて構成される。なお、情報処理装置30は、カバー311に対して、さらに、ユーザの操作に応じて開閉する蓋等を設けてもよい。
【0060】
個体撮像素子312は、撮像レンズ100が結像した撮像対象物の像を受光し、光電変換を行うことによって撮像信号を生成する。個体撮像素子312は、CCDセンサやCMOSセンサ等を用いて構成される。個体撮像素子312は、好ましくは、800万画素以上、所謂4K以上(3840×2160以上)の有効画素が2次元マトリクス状に配置されてなる。
【0061】
信号処理部32は、制御部34の制御のもと、個体撮像素子312から入力される撮像信号に対して、A/D変換処理等を行ってデジタルの撮像信号に変換して画像処理部33へ出力する。信号処理部32は、例えばDSP(Digital Signal Processor)等を用いて構成される。
【0062】
画像処理部33は、制御部34の制御のもと、信号処理部32から入力されたデジタルの撮像信号に対して、所定の画像処理を行って表示部35または記憶部36に出力する。画像処理部33は、例えばGPU(Graphics Processing Unit)等を用いて構成される。ここで、所定の画像処理とは、シェーディングの電気的な補正処理、ホワイトバランス調整処理、画像中心部のトリミング処理およびノイズ低減処理等である。
【0063】
制御部34は、情報処理装置30を構成する各部を制御する。制御部34は、プロセッサと、メモリとを備える。そのプロセッサは、CPUやFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いて構成される。メモリは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を用いて構成される。
【0064】
表示部35は、制御部34の制御のもと、画像処理部33が画像処理を行った撮影中の動画、撮影された撮像画像、記憶部36に記憶された画像信号に対応する静止画像、情報処理装置30に関する各種情報を表示する。
【0065】
記憶部36は、情報処理装置30に関する各種情報、情報処理装置30が実行するプログラム、撮像装置31が撮像した撮像信号(RAWデータやJPEGデータ)を記憶する。記憶部36は、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)およびメモリカード等を用いて構成される。
【0066】
通信部37は、制御部34の制御のもと、ネットワークを経由して、撮像装置31が撮像した撮像信号を所定の通信規格に従って外部へ送信し、かつ、外部から入力される各種情報を受信する。通信部37は、例えば3GPP(登録商標)、IEEEによって策定された4G、LTE、5G、WiMAXおよびWi-Fi(登録商標)等の通信規格に準拠した通信規格が用いられる。
【0067】
入力部38は、ユーザの操作入力を受け付け、受け付けた操作に応じた操作情報を制御部34へ出力する。入力部38は、例えばタッチパネル、キーボード、マウス等を用いて構成される。
【0068】
音声入出力部39は、制御部34の制御のもと、外音の入力を受け付けて音声信号に変換して記憶部36または通信部37に出力する。また、音声入出力部39は、制御部34の制御のもと、記憶部36または通信部37から入力される音声信号を変換して外部へ出力する。音声入出力部39は、マイクおよびスピーカー等を用いて構成される。
【0069】
このように構成された情報処理装置30は、撮像レンズ100を有する撮像装置31を用いて外部の機器と4Kの高画質で、ネットワークを介したWeb通信によるコミュニケーションを行うことができる。
【0070】
なお、実施の形態では、情報処理装置30としてPCを一例に説明したが、撮像装置31を、例えばタブレット型端末、携帯電話等の撮像装置に適用することができる。もちろん、撮像装置31を、PC等に有線または無線で通信することができるWebカメラ等に適用してもよい。
【0071】
以上説明した実施の形態によれば、広角な画角で、明るく、高性能、かつ小型のものを実現することができる。
【0072】
また、実施の形態によれば、撮像レンズ100が広角な画角で、Fナンバーが小さく、高性能、かつ小型のもの実現することができるので、動画撮影の場合、暗い環境等の様々な環境下での撮影や撮影速度の高速化に対応することができる。
【0073】
また、実施の形態によれば、広角な画角で、明るく、高性能、かつ小型のもの実現することができるため、像側において個体撮像素子の受光素子における入射角度と受光面に入射する光線とのマッチングを高めることができる。
【0074】
また、実施の形態によれば、明るく、高性能、かつ小型の半画角27.5°~40°を5枚のレンズで構成することができるため、例えばスマートフォン等の携帯電話やPCに用いられる単焦点レンズとして用いることができるので、4K以上(3840×2160以上)の高画素数の動画撮影を要求された場合であって、従来の撮像レンズと比して十分な収差の補正を行うことができ、要求される性能を満たすことができる。
【0075】
また、実施の形態によれば、明るく、高性能、かつ小型の半画角50°以上を5枚で構成することができるため、撮像レンズ100の光軸方向の全長を短くすることができるうえ、レンズ径も小さくなり、小型化を実現することができるので、小型化したレンズの屈折力が小さくなるうえ、製造誤差や組み付け誤差の影響を小さくすることができる。この結果、生産性が向上することがで、生産コストが抑えることができる。
【0076】
なお、本開示の実施の形態に係る情報処理装置に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、上述した本開示の実施の形態に係る情報処理装置に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、上述した本開示の実施の形態に係る情報処理装置で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0077】
また、本開示の実施の形態に係る情報処理装置では、上述してきた「部」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0078】
また、本開示の実施の形態に係る情報処理装置に実行させるプログラムは、インストールすることができる形式または実行することができる形式のファイルデータでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB媒体、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取りすることができる記録媒体に記録されて提供される。
【0079】
また、本開示の実施の形態に係る情報処理装置に実行させるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【実施例
【0080】
以下に、実施の形態1~3それぞれに対応する撮像レンズ100の実施例1~3を示す。
各実施例における記号の意味は以下の通りである。
f:レンズ全系の焦点距離
Lensf:レンズ各々の焦点距離
Groupf:各群の焦点距離
FNo.:開口数(Fナンバ)
R:面の曲率半径
D:面間隔
Nd:d線に対する屈折率
Vd:d線に対するアッベ数
IP:変曲点(Inflectoin Point)
なお、変曲点は、有効半径1.0としたときの変曲点の位置を示す。例えば「0.6」ならば、有効半径の6割の位置に変曲点があることを示す。
また「―(ハイフン)」の倍は、変曲点が有効径内に無いこと、また、有効径外に変曲点がある場合も「―」で示す。
TP:偏肉比(Thickness Point=周辺肉厚/中心肉厚)
なお、偏肉比は、例えば「1.5」の場合は、周辺の肉厚が中心の肉厚に比べて1.5倍の厚みであることを示す。
非球面は、光軸方向のデプスをX、光軸からの高さをH、近軸曲率半径をR、円錐定数をk、高次の非球面係数をC4、C6、C8、C10・・・CN(N=12以上の偶数)とした場合、非球面係数を用いて、周知の次式(12)で表す。
X=(H/R)/[1+{1-k(H/r)1/2
+C4H+C6H+C8H+C10H10+・・・+CNH・・・(12)
【0081】
[実施例1]
f=3.0mm、FNo.=2.0、HFOV=27.5°
実施例1のデータを表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
非球面のデータを下に示す。
【表2】

上記非球面の表記で、例えば「-2.4866E-03」は「-2.4866*10-3」を意味する。以下の他の実施例においても同様である。
【0084】
各条件のパラメータの値は以下の通りである。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
各実施例とも、第1レンズL1から第5レンズL5において非球面を用いており、非球面により収差を良好に補正している。
【0088】
上記実施例1に関する収差図を図2に示すが、各収差図から明らかな様に、性能は良好である。
【0089】
[実施例2]
f=2.6mm、FNo.=2.0、HFOV=31°
実施例2のデータを表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
非球面のデータを下に示す。
【表6】
【0092】
各条件のパラメータの値は以下の通りである。
【表7】

【表8】
【0093】
これらの収差図を図4に示すが、各収差図から明らかな様に、性能は良好である。
【0094】
[実施例3]
f=2.3mm、FNo.=2.0、HFOV=35°
実施例3のデータを表9に示す。
【0095】
【表9】
【0096】
非球面のデータを下に示す。
【表10】
【0097】
各条件のパラメータの値は以下の通りである。
【表11】
【0098】
【表12】
【0099】
これらの収差図を図6に示すが、各収差図から明らかな様に、性能は良好である。
【0100】
以上、実施例1~3と、図2図4および図6に示したように、本開示の撮像レンズ100は、明るく、高性能、かつ小型化(光軸方向に対して短縮化)で、半画角27.5°~40°をレンズ5枚構成で実現するものであり、また、撮像装置、特にPC用(ラップトップ用)の撮像装置として相応しいことは明らかである。
【0101】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0102】
30 情報処理装置
31 撮像装置
100 撮像レンズ
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
S 開口絞り
CG カバーガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9