(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュール
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20250418BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
G06F3/041 600
G06F3/044 129
G06F3/041 400
G06F3/044 140
(21)【出願番号】P 2023100217
(22)【出願日】2023-06-19
(62)【分割の表示】P 2020522172の分割
【原出願日】2019-05-27
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2018102735
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【審査官】小河 俊弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0357354(US,A1)
【文献】特開2017-097675(JP,A)
【文献】特開2013-058553(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017407(WO,A1)
【文献】特開2009-116090(JP,A)
【文献】実開平03-053860(JP,U)
【文献】特開2001-298217(JP,A)
【文献】特開2007-123428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0088736(US,A1)
【文献】特開2010-33382(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/041-3/047
G06F 3/048-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面の押圧を検知する静電容量式の感圧タッチセンサであって、
基材シートと、保護層と、第1の電極と、第2の電極と、弾性層と、を備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極は前記基材シートの任意の面に設けられ、
前記保護層は、前記基材シートの前記第1の電極及び前記第2の電極が設けられた面に、前記第1の電極及び前記第2の電極を覆うように積層され、
前記基材シート及び前記保護層により、本体部と、前記本体部に向かって折り返される折り返し部が形成され、
前記基材シート及び前記保護層が前記本体部に設けられた前記第1の電極と前記折り返し部に設けられた前記第2の電極の間で折り返されて、前記第1の電極と前記第2の電極の互いの面が対向し、
前記基材シート及び前記保護層を折り返すための前記本体部と前記折り返し部の境界の折り線部には、前記折り線部の長さ方向に沿って直線状のスリットが前記折り線部の一方の端部から他方の端部に向かって形成され、前記本体部と前記折り返し部とが片側の端部で部分的に接続されており、
前記基材シート及び前記保護層の折り返された部分の間に前記弾性層が設けられ、
前記弾性層が、一対のシート部と、それら一対のシート部に挟持された柱部とを備えるゴム状弾性体であり、
押圧力により前記弾性層が厚さ方向に圧縮変形し、前記第1の電極と前記第2の電極の距離が近づくことによる静電容量の変化から、操作面の押圧を検知する、静電容量式の感圧タッチセンサ。
【請求項2】
操作面の押圧を検知する静電容量式の感圧タッチセンサであって、
基材シートと、保護層と、第1の電極と、第2の電極と、弾性層と、を備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極は前記基材シートの任意の面に設けられ、
前記保護層は、前記基材シートの前記第1の電極及び前記第2の電極が設けられた面に、前記第1の電極及び前記第2の電極を覆うように積層され、
前記基材シート及び前記保護層により、本体部と、前記本体部に向かって折り返される折り返し部が形成され、
前記基材シート及び前記保護層が前記本体部に設けられた前記第1の電極と前記折り返し部に設けられた前記第2の電極の間で折り返されて、前記第1の電極と前記第2の電極の互いの面が対向し、
前記基材シート及び前記保護層を折り返すための前記本体部と前記折り返し部の境界の折り線部には、前記折り線部の長さ方向に沿って直線状のスリットが前記折り線部の両方の端部からそれぞれ中央に向かって形成され、前記本体部と前記折り返し部とが前記折り線部の中央部で部分的に接続されており、
前記基材シート及び前記保護層の折り返された部分の間に前記弾性層が設けられ、
前記弾性層が、一対のシート部と、それら一対のシート部に挟持された柱部とを備えるゴム状弾性体であり、
押圧力により前記弾性層が厚さ方向に圧縮変形し、前記第1の電極と前記第2の電極の距離が近づくことによる静電容量の変化から、操作面の押圧を検知する、静電容量式の感圧タッチセンサ。
【請求項3】
前記感圧タッチセンサを操作パネルに貼り付けるための粘着剤層が、前記基材シートにおける折り返し部以外の部分に設けられている、請求項1又は2に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項4】
前記スリットが、前記基材シートにおける少なくとも前記第1の電極と前記第2の電極の間に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項5】
前記弾性層が、前記第1の電極と前記第2の電極の間に位置している、請求項1~4のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項6】
前記弾性層が、一対のシート部と、それら一対のシート部に挟持された複数の柱部と、それら複数の柱部の周囲を囲うように設けられた枠状部とを備えるゴム状弾性体である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項7】
前記弾性層が、一対のシート部と、前記の一対のシート部に挟持された複数の柱部と、前記の一対のシート部に挟持され、かつ前記の複数の柱部の高さよりも低い突条部又は突起部とを備えるゴム状弾性体である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項8】
前記弾性層が、一対のシート部と、前記の一対のシート部に挟持された複数の柱部と、前記の一対のシート部に挟持され、かつ前記の複数の柱部のそれぞれを個別に囲うように格子状に設けられた突条部とを備えるゴム状弾性体である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項9】
前記基材シートの第1の面に第3の電極がさらに設けられ、操作面に導体が接触することによる前記第3の電極の静電容量の変化から、操作面への導体の接触を検知する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサ。
【請求項10】
操作面を有する操作パネルと、フレーム部材と、請求項1~
9のいずれか一項に記載の感圧タッチセンサとを備え、
前記感圧タッチセンサが前記操作パネルと前記フレーム部材で挟持されている、感圧タッチセンサモジュール。
【請求項11】
前記フレーム部材が凸部を有し、
前記感圧タッチセンサの前記弾性層が位置する部分が前記操作パネルと前記凸部で挟持されている、請求項
10に記載の感圧タッチセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュールに関する。
本願は、2018年5月29日に、日本に出願された特願2018-102735号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
車載用の電子機器等の様々な分野において、操作面の操作を検知するセンサモジュールとして、感圧検知可能な静電容量式の感圧タッチセンサモジュールが提案されている。例えば、特許文献1には、基材シートの一方の面に第1の電極と第2の電極が設けられ、基材シートを部分的に折り返して第1の電極と第2の電極とを対向させ、さらに第1の電極と第2の電極の間に弾性シートが設けられた感圧タッチセンサモジュールが開示されている。前記感圧タッチセンサモジュールでは、操作面を押圧したときに弾性シートが圧縮変形して第1の電極と第2の電極が接近し、第2の電極の電流が変化して静電容量が変化する。この静電容量の変化を検知することで、操作面の押圧を認識できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような感圧タッチセンサモジュールでは、操作面へのタッチが誤検知され、操作が正しく認識されないことがある。
【0005】
本発明は、操作面へのタッチが誤検知されにくい静電容量式の感圧タッチセンサ、及び前記感圧タッチセンサを備える感圧タッチセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]操作面の押圧を検知する静電容量式の感圧タッチセンサであって、
基材シートと、第1の電極と、第2の電極と、弾性層と、を備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極は前記基材シートの任意の面に設けられ、
前記基材シートが前記第1の電極と前記第2の電極の間で折り返されて、前記第1の電極と前記第2の電極の互いの面が対向し、
前記基材シートを折り返す折り線部にはスリットが形成され、
前記基材シートの折り返された部分の間に前記弾性層が設けられ、
押圧力により前記弾性層が厚さ方向に圧縮変形し、前記第1の電極と前記第2の電極の距離が近づくことによる静電容量の変化から、操作面の押圧を検知する、静電容量式の感圧タッチセンサ。
[2]前記スリットが、前記基材シートにおける少なくとも前記第1の電極と前記第2の電極の間に形成されている、[1]に記載の感圧タッチセンサ。
[3]前記弾性層が、前記第1の電極と前記第2の電極の間に位置している、[1]又は[2]に記載の感圧タッチセンサ。
[4]前記弾性層が、一対のシート部と、それら一対のシート部に挟持された柱部とを備えるゴム状弾性体である、[1]~[3]のいずれかに記載の感圧タッチセンサ。
[5]前記弾性層が、一対のシート部と、それら一対のシート部に挟持された複数の柱部と、それら複数の柱部の周囲を囲うように設けられた枠状部とを備えるゴム状弾性体である、[1]~[4]のいずれかに記載の感圧タッチセンサ。
[6]前記弾性層が、一対のシート部と、前記の一対のシート部に挟持された複数の柱部と、前記の一対のシート部に挟持され、かつ前記の複数の柱部の高さよりも低い突条部又は突起部とを備えるゴム状弾性体である、[1]~[5]のいずれかに記載の感圧タッチセンサ。
[7]前記弾性層が、一対のシート部と、前記の一対のシート部に挟持された複数の柱部と、前記の一対のシート部に挟持され、かつ前記の複数の柱部のそれぞれを個別に囲うように格子状に設けられた突条部とを備えるゴム状弾性体である、[1]~[5]のいずれかに記載の感圧タッチセンサ。
[8]前記基材シートの第1の面に第3の電極がさらに設けられ、操作面に導体が接触することによる前記第3の電極の静電容量の変化から、操作面への導体の接触を検知する、[1]~[7]のいずれかに記載の感圧タッチセンサ。
[9]操作面を有する操作パネルと、フレーム部材と、[1]~[8]のいずれかに記載の感圧タッチセンサとを備え、
前記感圧タッチセンサが前記操作パネルと前記フレーム部材で挟持されている、感圧タッチセンサモジュール。
[10]前記フレーム部材が凸部を有し、
前記感圧タッチセンサの前記弾性層が位置する部分が前記操作パネルと前記凸部で挟持されている、[9]に記載の感圧タッチセンサモジュール。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作面へのタッチを誤検知しにくい静電容量式の感圧タッチセンサ、及び感圧タッチセンサモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の感圧タッチセンサの一例を示した平面図である。
【
図2】
図1の感圧タッチセンサのA-A断面図である。
【
図3】
図1の感圧タッチセンサのB-B断面図である。
【
図4】
図1の感圧タッチセンサの折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図5】
図4の感圧タッチセンサのC-C断面図である。
【
図6】
図1の感圧タッチセンサにおける弾性層の折り返し部分の間に設ける前の状態を示した平面図である。
【
図8】本発明の感圧タッチセンサモジュールの一例を示した分解斜視図である。
【
図9】本発明の感圧タッチセンサモジュールの一例を示した断面図である。
【
図10】本発明の感圧タッチセンサにより操作面へのタッチを認識する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図12】
図11の感圧タッチセンサの折り返し部を折り返した状態を示した断面図である。
【
図13】本発明の感圧タッチセンサにおける弾性層の他の例の折り返し部分の間に設ける前の状態を示した断面図である。
【
図14】本発明の感圧タッチセンサにおける弾性層の他の例の折り返し部分の間に設ける前の状態を示した平面図である。
【
図15】本発明の感圧タッチセンサにおける弾性層の他の例の折り返し部分の間に設ける前の状態を示した平面図である。
【
図17】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図18】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図19】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図20】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図21】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【
図22】本発明の感圧タッチセンサの他の例の折り返し部を折り返す前の状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[感圧タッチセンサ]
本発明の感圧タッチセンサは、操作面の押圧を検知する静電容量式の感圧タッチセンサである。以下、本発明の感圧タッチセンサの一例を示して説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0010】
図1は、本実施形態の感圧タッチセンサ1を示した平面図である。
図2及び
図3は、
図1の感圧タッチセンサ1のA-A断面図及びB-B断面図である。
図4は、本実施形態の感圧タッチセンサ1の折り返し部1bを折り返す前の状態を示した平面図である。
図5は、
図4の感圧タッチセンサ1のC-C断面図である。
【0011】
本実施形態の感圧タッチセンサ1は、
図1~5に示すように、基材シート10と、保護層12と、粘着剤層14と、剥離紙16と、4つの第1の電極18と、4つの第2の電極20と、3つの第3の電極22と、3つの補助電極24と、4つの弾性層26と、を備えている。
【0012】
この例の感圧タッチセンサ1は、平面視で長方形の本体部1aと、本体部1aの4つの角部から幅方向の外側に突き出るように形成された平面視で矩形の4つの折り返し部1bと、本体部1aの短辺から延びる帯状の帯状部1cとを有している。
【0013】
基材シート10の第1の面10aには第1の電極18、第2の電極20、第3の電極22及び補助電極24が設けられ、それらを覆うように保護層12が積層されている。保護層12は、感圧タッチセンサ1における本体部1a、折り返し部1b及び帯状部1cの全体において、基材シート10の第1の面10a側に積層されている。基材シート10の第2の面10b側には、粘着剤層14を介して剥離紙16が貼り合わされている。粘着剤層14及び剥離紙16は、感圧タッチセンサ1における折り返し部1bには設けられず、本体部1a及び帯状部1cの部分に設けられている。
【0014】
基材シート10の形状は、この例の形状には限定されず、用途に応じて適宜設定できる。基材シート10の寸法も特に限定されず、用途に応じて適宜設定できる。
基材シートとしては、透明な樹脂製の絶縁フィルムを使用できる。ここで、「透明」とは、JIS K7136に従って測定した光線透過率が50%以上であることを意味する。また、「絶縁」とは、電気抵抗値が1MΩ以上、好ましくは10MΩ以上であることを意味する。
【0015】
基材シートを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース等が挙げられる。
基材シートを形成する材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0016】
基材シートの平均厚さは、10~250μmが好ましく、25~188μmがより好ましい。基材シートの平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な強度及び剛性を確保しやすい。基材シートの平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、感圧タッチセンサを容易に薄型化できる。
なお、本明細書中において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0017】
保護層12の形状及び寸法は、この例の形状には限定されず、用途に応じて適宜設定できる。
保護層としては、特に限定されず、例えば、基材シートで挙げたものと同じ透明な樹脂製の絶縁フィルムを例示できる。
【0018】
保護層の平均厚さは、10~250μmが好ましく、10~188μmがより好ましい。保護層の平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な強度及び剛性を確保しやすい。保護層の平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、感圧タッチセンサを容易に薄型化できる。
【0019】
感圧タッチセンサ1は、
図1及び
図2に示すように、4つの折り返し部1bが本体部1aに向かって折り返されるようになっている。また、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、感圧タッチセンサ1の折り返し部1bを折り返す折り線部1d、すなわち基材シート10及び保護層12における本体部1aと折り返し部1bの境界線部分には、折り線部1dの長さ方向に沿って直線状のスリット28が形成されている。これにより、
図1及び
図2に示すように、感圧タッチセンサ1では、スリット28を利用してそれぞれの折り返し部1bを本体部1a側に容易に折り返すことができるようになっている。また、スリット28が形成されていることで、折り返し部1bが折り返された状態において、折り返し部1bが折り返す前の元の状態に戻ろうとする力が弱くなる。
【0020】
この例ではスリット28は連続して実線状に形成されているが、スリット28は、断続的に破線状に形成されていてもよい。
スリット28の長さは、折り返す部分の折り線部の長さに応じて適宜設定できる。
スリット28の幅は、適宜設定でき、例えば、0.5~10mmとすることができ、0.5~5mmが好ましく、1~3mmがより好ましい。スリット28の幅が前記範囲の下限値以上であれば、弾性層を挟持しやすい。スリット28の幅が前記範囲の上限値以下であれば、製品サイズが大きくなりにくい。
【0021】
図2に示すように、感圧タッチセンサ1の折り線部1dには、粘着剤層14及び剥離紙16が設けられていないことが好ましい。折り線部1dに粘着剤層14や剥離紙16が設けられていると、折り返し部1bを折り返した際に粘着剤層14や剥離紙16の影響で折り返し部1bの元の状態に戻ろうとする力が強くなりやすい。折り線部1dに粘着剤層14や剥離紙16が設けられていないことで、折り返された折り返し部1bが元の状態に戻ろうとする力が弱くなり、第1の電極18と第2の電極20との距離が安定になるため、押圧による静電容量の変化の検知精度がさらに高くなる。また、折り返し部1bを折り返した際に粘着剤層14が破断したり、剥離紙が損傷したりすることを抑制しやすい。さらに、感圧タッチセンサ1を操作パネルに貼り付ける際や、押圧操作の際等に、感圧タッチセンサ1の予期しない箇所が操作パネルに貼り付きにくくなるため、圧縮変形する弾性層26の復元性が損なわれることが抑制される。
【0022】
第1の電極18及び第2の電極20は、操作面の押圧を検知するための感圧電極である。それぞれの第1の電極18及び第2の電極20は、配線2a,2bによって、帯状部1cの先端部分に形成された接続端子部30と接続されており、接続端子部30を介してさらに図示しない静電容量検知部と電気的に接続される。
【0023】
感圧タッチセンサ1では、基材シート10の第1の面10aにおける4つの折り返し部1bのそれぞれに第2の電極20が設けられている。また、基材シート10の第1の面10aにおける本体部1aの四隅のスリット28に対して第2の電極20と線対称となる位置に、それぞれ第1の電極18が設けられている。このように、この例では基材シート10及び保護層12における第1の電極18と第2の電極20の間にスリット28が形成されている。
図2に示すように、基材シート10の第1の面10aが内側となるように折り返し部1bを本体部1a側に折り返した状態では、基材シート10の厚さ方向から見たときに第1の電極18と第2の電極20が重なり、それらの互いの面が対向するようになっている。
なお、本発明の感圧タッチセンサは、基材シート10の第2の面10bが内側となるように折り返し部1bが折り返されたものであってもよい。
【0024】
この例の第1の電極18及び第2の電極20の形状は、平面視で矩形である。なお、第1の電極18及び第2の電極20の形状は、矩形には限定されず、適宜設計できる。
第1の電極18及び第2の電極20の寸法も特に限定されず、例えば、縦10mm×横10mm程度とすることができる。第1の電極18及び第2の電極20が大きいほど、押圧力の検知感度が向上する。
本発明では、第1の電極及び第2の電極のうち、操作面から遠い側の電極の大きさを、操作面に近い側の電極よりも小さくしてもよい。例えば、感圧タッチセンサ1において、第2の電極20を第1の電極18よりも小さいサイズにしてもよい。これにより、厚さ方向から見たときに、操作面から遠い側の電極が操作面に近い側の電極からはみ出しにくくなるため、誤検知をさらに抑制しやすくなる。
【0025】
第1の電極18は接地されることが好ましい。これにより、指が第1の電極18に接近しても、第1の電極18がシールドとなって静電容量が変化することを抑制できる。これにより、第1の電極18及び第2の電極20の静電容量の変化から、操作面に触れようとする指が第1の電極18に近づくことによる影響を排除し、押圧力の影響による変化に限定できるため、押圧の誤検知をさらに抑制できる。
【0026】
第1の電極18及び第2の電極20は、公知の態様の感圧電極を採用でき、自己容量方式であってもよく、相互容量方式であってもよい。
自己容量方式としては、例えば、第1の電極18及び第2の電極20がいずれもベタ電極であり、第1の電極18が接地された態様が挙げられる。
相互容量方式としては、例えば、第1の電極18及び第2の電極20をいずれもベタ電極とし、それらを送信電極と受信電極にする態様が挙げられる。また、第1の電極18を接地されたベタ電極とし、第2の電極20を送信電極と受信電極とが櫛歯状に配置されたものにする態様としてもよい。
【0027】
第1の電極18及び第2の電極20の材料としては、特に限定されず、感圧電極として通常用いられる電極を使用できる。例えば、銅、銀等が挙げられる。用途によっては、電極材料として、インジウムドープ酸化錫(ITO)、導電性高分子、銀ナノワイヤー、銀ペースト、カーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ等を使用してもよい。なかでも、第1の電極18及び第2の電極20の電極材料としては、銀ペーストが好ましい。
ここで、「導電」とは、電気抵抗値が1MΩ未満であることを意味する。
第1の電極18及び第2の電極20の平均厚さは、材料に応じて適宜設定すればよく、第1の電極18及び第2の電極20の平均厚さの好ましい範囲は後述の第3の電極の平均厚さの好ましい範囲と同様である。
【0028】
この例では第1の電極18及び第2の電極20は4個ずつであるが、第1の電極18及び第2の電極20の数は、特に限定されない。第1の電極18の数は、3個以下であってもよく、5個以上であってもよい。同様に、第2の電極20の数は、3個以下であってもよく、5個以上であってもよい。
【0029】
配線2a,2bの材料は、第1の電極18及び第2の電極20の材料と同じものを例示でき、銀ペーストが好ましい。
配線2a,2bの平均厚さの好ましい範囲は、後述の第3の電極の平均厚さの好ましい範囲と同様である。
【0030】
また、感圧タッチセンサ1では、4つの折り返し部1bを折り返した状態で、本体部1aとそれぞれの折り返し部1bとの間に弾性層26が設けられている。この例では、4つの折り返し部1bが折り返された状態で、各弾性層26が第1の電極18と第2の電極20の間に位置している。
【0031】
弾性層26は、弾性体を含む層であり、押圧によって圧縮変形する。感圧タッチセンサ1が厚さ方向に押圧されたときには、弾性層26が厚さ方向に圧縮変形し、第1の電極18と第2の電極20との距離が近づくことで静電容量が変化する。この静電容量の変化を検知することで操作面の押圧が認識される。
【0032】
一般に、基材シートを部分的に折り返すと、折り返した部分が広がって元の折り返していない状態に戻ろうとする。そのため、特許文献1のような感圧タッチセンサでは、折り返した部分が元の状態に戻ろうとする力によって、第1の電極と第2の電極との距離が一定に保たれにくくなるため、押圧による静電容量の変化の検知精度が低下すると考えられる。
【0033】
これに対して、感圧タッチセンサ1では、前記のように、基材シート10及び保護層12の折り返し部1bを折り返す際の折り線部1dにスリット28が形成されている。これにより、折り返し部1bが元の状態に戻ろうとする力が弱くなるため、第1の電極18と第2の電極20の距離が安定する。そのため、押圧による静電容量の変化の検知精度が高くなり、押圧の誤検知が抑制される。
【0034】
本発明では、この例のように、スリットは、基材シートにおける少なくとも第1の電極と第2の電極の間に形成されていることが好ましい。これにより、折り返した部分が元の状態に戻ろうとする力がより弱くなり、第1の電極18と第2の電極20の距離がより安定するため、押圧の検知精度がさらに高くなる。
【0035】
この例の弾性層26は、
図6及び
図7に示すように、一対の第1シート部26a及び第2シート部26bと、それら第1シート部26aと第2シート部26bに挟持された複数の柱部26cとを備えるゴム状弾性体である。第1シート部26a、第2シート部26b及び複数の柱部26cは一体化されている。
第1シート部26aと第2シート部26bの間における柱部26c以外の空間部には、スポンジ等の弾性部材を配置してもよい。これにより、弾性層26が過度に圧縮変形して基材シート10や保護層12の折り線部1dが損傷することが抑制されやすくなる。
【0036】
第1シート部26a、第2シート部26b及び複数の柱部26cを形成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。弾性層26のうち、弾性体からなる必要があるのは、圧縮変形する柱部26cのみである。第1シート部26a及び第2シート部26bは、弾性材料によって形成されていてもよく、非弾性の硬質材料によって形成されていてもよい。硬質材料としては、例えば、エラストマー以外の樹脂、ガラス、金属、セラミックス、木材等が挙げられる。
【0037】
弾性層26の弾性体を形成する弾性材料としては、押圧による厚さ方向の圧縮変形の程度が適当であり、押し心地が良好であるものを使用することが好ましい。弾性材料としては、例えば、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、或いはそれらの複合物等が挙げられる。熱硬化性エラストマーとしては、例えば、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系又はフッ素系等が挙げられる。これらの中でも、繰り返しの押圧に対する寸法変化が小さい、即ち圧縮永久歪が小さい点から、シリコーンゴムが好ましい。前記弾性材料は、内部に気泡を含む発泡材料でもよく、実質的な気泡を含まない非発泡材料でもよい。
【0038】
弾性層26を形成する弾性体の厚み(高さ)を1cmとして測定した際のショアA硬度は、85以下が好ましい。前記ショアA硬度が85以下であれば、押圧された際に容易に弾性変形する。ただし、過度に軟らかいと、弾性変形後の回復が遅くなるため、前記ショアA硬度は10以上が好ましい。
【0039】
第1シート部26aの平均厚さは、5~100μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。第1シート部26aの平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、柱部26cとの接合強度を強くできる。第1シート部26aの平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、操作面を押圧していない状態における第1の電極18と第2の電極20との距離を近づけやすく、押圧の検知精度をより高くすることができる。
第2シート部26bの平均厚さの好ましい範囲は、第1シート部26aの平均厚さの好ましい範囲と同じである。第1シート部26aの厚さと第2シート部26bの平均厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
柱部26cの形状は、特に限定されず、例えば、円柱状、円錐台状、角柱状等の柱状が挙げられる。なかでも、耐久性に優れる点から、円柱状、円錐台状が好ましい。複数の柱部26cの形状は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0041】
単一の柱部26cの高さ方向に垂直な方向の断面積は、特に限定されず、例えば、0.005~4mm2が挙げられ、0.02~0.8mm2が好ましい。前記柱部26cの断面積が前記範囲の下限値以上であれば、押圧力が加わった際に高さ方向に圧縮変形することが容易になり、柱部26cが圧縮せずに屈曲することを防止しやすい。前記柱部26cの断面積が前記範囲の上限値以下であれば、指で押す程度の適度な押圧力で容易に圧縮変形させることができる。
ここで、柱部の断面積は、柱部の1/2の高さの位置で高さ方向に直交する断面の面積を意味する。柱部の断面積は、光学顕微鏡測定機等の公知の微細構造観察手段により測定できる。
【0042】
弾性層26が有する全ての柱部26cの合計の断面積は、弾性材料の物性と、設定する押し心地に応じて適宜設定できる。第1シート部26a又は第2シート部26bの面積を100%としたとき、前記合計の断面積は、0.1~30%が好ましく、0.5~20%がより好ましく、1~10%がさらに好ましい。前記合計の断面積が前記範囲内であれば、指で押す程度の適度な押圧力で容易に圧縮変形させることができる。
具体的には、例えば、前記合計の断面積を1~100mm2とすることができる。
【0043】
柱部26cの平均高さは、1~3000μmが好ましく、50~2000μmがより好ましく、200~1000μmがさらに好ましく、300~1000μmが特に好ましい。柱部26cの平均高さが前記範囲の上限値以下であれば、操作面を押圧していない状態における第1の電極18と第2の電極20との距離を近づけやすく、押圧力の検知精度をより高くできる。また、操作面を押圧した際に操作面がへこむ感覚が抑制されやすく、通常のタッチパネルのように硬い面に触れているのと同じ感覚で操作しやすくなる。
ここで、柱部26cの高さには、第1シート部26aの厚さ及び第2シート部26bの厚さは含まれない。柱部26cの高さは、光学顕微鏡測定機等の公知の微細構造観察手段により測定できる。
【0044】
柱部26cは、第1シート部26a及び第2シート部26bと接続され、弾性層26の厚さを支える部材である。弾性層26の厚さが部位によらず同じであれば、複数の柱部26cの高さは実質的に同じである。
【0045】
この例の複数の柱部26cの平面視での配置パターンは、矩形状の第1シート部26a及び第2シート部26bの平面方向において、縦方向と横方向に5×5の25本の柱部26cが間隔をあけて整列したパターンである。なお、複数の柱部26cの配置パターンは、このパターンには限定されず、例えば、複数の柱部26cが千鳥状に配列したパターンであってもよい。
【0046】
弾性層26が有する柱部26cの個数は、複数でもよく、1個でもよい。例えば、第1シート部26a及び第2シート部26bの平面方向の中央領域に1個の平面視矩形の柱部26cが設けられた態様であってもよい。この態様の場合、柱部26cを形成する弾性体は、内部に気泡を含む発泡体であることが好ましい。
【0047】
弾性層26が有する柱部26cの個数は、1~1000個が好ましく、3~100個がより好ましく、4~50個がさらに好ましい。前記個数が前記範囲の下限値以上であれば、操作面を指で押す程度の適度な押圧力で弾性層26を圧縮変形させることができる。前記個数が前記範囲の上限値以下であれば、指で押す程度の押圧の検出精度を向上させることができる。
【0048】
隣り合う柱部26c同士の平均ピッチは、0.1~5mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましい。前記平均ピッチが前記範囲の下限値以上であれば、操作面を指で押す程度の適度な押圧力で弾性層26を圧縮変形させることができる。前記平均ピッチが前記範囲の上限値以下であれば、指で押す程度の押圧の検出精度を向上させることができる。
【0049】
この例の弾性層26は、
図2に示すように、第1基材フィルム32と第2基材フィルム34に挟持された状態で、基材シート10及び保護層12の折り返し部1bを折り返した部分の間に配置され、接着層36,38を介して保護層12と接着されている。弾性層26の折り線部1d側の側縁が、第1の電極18及び第2の電極20の折り線部1d側の側縁よりも折り線部1dに近い位置となるように、接着層36,38によって弾性層26が保護層12に接着されている。このように、弾性層26が第1の電極18及び第2の電極20よりも折り線部1dに近くなるように貼り付けられることで、折り返した状態の折り返し部1bの折り線部1d側の部分が撓んで広がることが抑制されやすい。そのため、第1の電極18と第2の電極20との距離が安定になり、検知精度が向上する。
折り返し部1bを折り返した部分の間に配置する前においては、
図6及び
図7に示すように、接着層36,38の表面には剥離紙40,42が積層されている。
【0050】
接着層36,38は、それぞれ第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34の保護層12との密着面の一部のみに設けられていてもよく、密着面の全面に設けられていてもよい。弾性層26に対する押圧力を面方向に均一化することが容易な点から、前記密着面の全体に接着層36,38が設けられていることが好ましい。
【0051】
接着層36,38の材料としては、それぞれ独立に、例えば、公知の硬化型接着剤(接着前は液状の接着剤)、又は粘着剤(接着前はゲル状の感圧性接着剤)が挙げられる。また、各接着層は、基材層の両面に接着剤又は粘着剤が配置された基材型接着層であってもよい。基材型接着層としては、例えば公知の両面テープが挙げられる。
前記接着剤、粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。前記硬化型接着剤は、硬化時に揮発する溶剤を含む溶剤型であってもよく、ホットメルト型であってもよい。
【0052】
接着層36,38の厚みとしては、それぞれ独立に、例えば1~75μmが挙げられる。前記硬化型接着剤を用いた接着層36,38の厚みは、1~20μmが好ましい。前記粘着剤を用いた接着層36,38の厚みは、10~75μmが好ましい。
【0053】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34を形成する材料としては、絶縁性の樹脂材料を使用でき、それぞれ独立に、例えば、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ウレタン等が挙げられる。第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34を形成する樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0054】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34の平均厚さは、それぞれ独立に、例えば、10~200μmが挙げられる。前述の樹脂材料を用いる場合、その厚みは、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましく、25~100μmがさらに好ましい。平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、弾性層26に対する押圧力を面方向に均一化することが容易である。平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、操作面に対する入力の検知精度を高めることができる。
【0055】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34は、それぞれ弾性層26の第1シート部26aの外表面と第2シート部26bの外表面にそれぞれ接着されている。これらは不図示の接着層によって接着されていてもよく、公知の表面処理又は加熱処理によって直に接着されていてもよい。
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34の接着面には、接着力を向上させる目的で、物理的又は化学的な公知の表面処理が施されていてもよい。
【0056】
第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34は、操作面に加えられた押圧力が弾性層26に均一に伝達されるようにするために、弾性層26に対する平滑な表面を有する。仮に、第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34が存在しないと、第1の電極18や第2の電極20が設けられた部分の凹凸が弾性層26に対する押圧を不均一にすることがある。本実施形態では第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34が備えられているため、第1の電極18や第2の電極20が設けられた部分の凹凸が弾性層26に対する押圧を不均一にする影響を低減できる。また、第1の電極18や第2の電極20が局所的に弾性層26の柱部26cからの応力を受けて損傷することが抑制される。
【0057】
感圧タッチセンサ1では、基材シート10の第1の面10aにおける幅方向の中央部に、長さ方向に間隔をあけて3つの第3の電極22が設けられている。第3の電極22は、操作面への導体の接触を検知するためのタッチ電極である。
本発明では、このように基材シートの第1の面に、操作面の押圧を検知するための第1の電極及び第2の電極に加えて、タッチ電極である第3の電極がさらに設けられていることが好ましい。これにより、操作面の操作を指の接触と押圧の2段階で判定して認識することができるため、誤検知をより安定して抑制できる。
【0058】
この例の第3の電極22の形状は、平面視で矩形状である。なお、第3の電極22の形状は、矩形状には限定されず、適宜設計できる。第3の電極22の寸法も特に限定されず、例えば、縦10mm×横10mm程度とすることができる。
【0059】
第3の電極22は、自己容量方式であってもよく、相互容量方式であってもよい。
相互容量方式の第3の電極22の態様としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形等のベタ電極や、櫛歯電極、又は、基材の一方の面に帯状の送信電極が形成され、他方の面に送信電極と直交する方向に延びる複数の帯状の受信電極が形成された田形電極パターン、ダイヤモンドパターン等が挙げられる。
自己容量方式の第3の電極22の態様としては、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形等のベタ電極や、ダイヤモンドパターン等が挙げられる。
【0060】
第3の電極22としては、透明導電膜を使用できる。
透明導電膜としては、導電性高分子を含む膜、導電性ナノワイヤーを含む膜、金属粒子又は導電性金属酸化物粒子を含む膜、カーボンを含む膜、金属蒸着法によって形成された金属蒸着膜等が挙げられる。透明導電膜としては、曲げ耐性に優れる点では、導電性高分子を含む膜が好ましい。
【0061】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等が挙げられる。導電性高分子のなかでも、ポリチオフェンが好ましく、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸をドープしたものが特に好ましい。
【0062】
導電性ナノワイヤーとしては、銀ナノワイヤー、金ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
金属粒子としては、例えば、銀、銅、金等の金属の粒子が挙げられる。
導電性金属酸化物粒子としては、例えば、インジウムドープ酸化錫の粒子が挙げられる。
カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
金属蒸着膜を形成する金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、亜鉛、金等が挙げられる。これらの中でも、電気抵抗が低く、低コストであることから、銅が好ましい。
【0063】
導電性高分子を含む透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、0.1~5.0μmが好ましく、0.1~2.0μmがより好ましい。
金属ナノワイヤーを含む透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、20~1000nmが好ましく、50~300nmがより好ましい。
金属粒子、導電性金属酸化物粒子又はカーボンを含む透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、0.01~25μmが好ましく、0.1~15μmがより好ましい。
金属蒸着膜の透明導電膜からなる第3の電極22の平均厚さは、0.01~1.0μmが好ましく、0.05~0.3μmがより好ましい。
第3の電極22の平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、ピンホールによる断線を抑制しやすい。第3の電極22の平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、薄型化が容易になる。
【0064】
電極の厚さを測定する方法としては、厚さのレンジによって異なる。例えば、μmオーダーの膜厚の場合には、マイクロメーター、デジマティックインジケーターやレーザー変位計測によって厚さを測定できる。また、μmオーダーよりも薄い膜厚の場合には、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察や蛍光X線分析装置によって厚さを測定できる。
平均厚さは、電極において中心付近で測定した厚さの平均値である。
【0065】
この例では第3の電極22は3個であるが、第3の電極22の数は、特に限定されない。第3の電極22の数は、2個以下であってもよく、4個以上であってもよい。
【0066】
感圧タッチセンサでは、第3の電極22の周囲を囲うように、第3の電極22と全周にわたって接触した補助電極24が設けられている。補助電極24は、配線2cによって、帯状部1cの先端部分に形成された接続端子部30と接続されており、さらに接続端子部30を介して図示しない静電容量検知部と電気的に接続される。これにより、第3の電極22は静電容量検知部と接続できるようになっている。
補助電極24を設けることで、第3の電極22と配線2cとを点接触させる場合に比べて、抵抗の影響を受けにくくなる。そのため、第3の電極22を比較的抵抗が大きい導電性高分子で形成した場合でも、高い検知精度を確保できる。
【0067】
補助電極24の材料は、第1の電極18及び第2の電極20の材料と同じものを例示でき、銀ペーストが好ましい。
補助電極24の平均厚さの好ましい範囲は、第3の電極22の平均厚さの好ましい範囲と同様である。
【0068】
粘着剤層14を形成する粘着剤としては、特に限定されず、例えば、接着層36,38で挙げた粘着剤が挙げられる。
剥離紙16としては、特に限定されず、公知の剥離紙を使用できる。
【0069】
感圧タッチセンサ1の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。
第1の電極18、第2の電極20、第3の電極22及び補助電極24は、例えば、基材シート10に対して印刷等により電極材料でパターンを形成することで製造できる。また、基材の一方の面又は両面に電極を形成し、それを接着剤や両面テープ等により基材シート10に接合してもよい。電極を形成する方法としては、例えば、導電性ペーストを印刷した後に加熱して硬化させる方法、金属粒子を含むインクを印刷する方法、金属箔又は金属蒸着膜を形成してパターニングする方法等が挙げられる。
第1の電極18、第2の電極20、第3の電極22及び補助電極24を形成した後、基材シート10の第1の面10a側に、接着剤等で保護層12を貼り合わせて積層する。また、基材シート10の第2の面10b側に粘着剤を塗布して粘着剤層14を形成する。
【0070】
弾性層26は、例えば、以下の方法で製造することができる。具体的には、第2基材フィルム34の片面にスクリーン印刷等により第2シート部26bを形成する。第2シート部26bの表面と各柱部26cの第2シート部26bに接する面に紫外線を照射し、それらを重ね合せて加圧して、第2シート部26bと各柱部26cとを接合する。また、第1基材フィルム32の片面にスクリーン印刷等により第1シート部26aを形成する。第1シート部26aの表面と各柱部26cの第1シート部26aに接する面に紫外線を照射し、それらを重ね合せて加圧して、第1シート部26aと各柱部26cとを接合する。これにより第1基材フィルム32及び第2基材フィルム34に挟持された弾性層26を形成できる。
【0071】
基材シート10及び保護層12における折り返し部1bを、基材シート10の第1の面10aが内側となるように折り線部1dで折り返し、第1の電極18と第2の電極20の互いの面を対向させる。次いで、その折り返した部分の間に弾性層26を配置し、接着層36,38を介して保護層12に接着する。これにより、感圧タッチセンサ1が得られる。
【0072】
[感圧タッチセンサモジュール]
本発明の感圧タッチセンサモジュールは、操作面を有する操作パネルと、フレーム部材と、本発明の感圧タッチセンサとを備え、本発明の感圧タッチセンサが操作パネルとフレーム部材で挟持された装置である。以下、本発明の感圧タッチセンサモジュールの一例として、感圧タッチセンサ1を備える感圧タッチセンサモジュール100(以下、「モジュール100」とも記す。)について、
図8及び
図9に基づいて説明する。
【0073】
モジュール100は、操作面112を有する操作パネル110と、4つの凸部122を有するフレーム部材120と、感圧タッチセンサ1とを備えている。感圧タッチセンサ1は折り返し部1bが折り返され、その折り返した部分の間に弾性層26が設けられた状態で、操作パネル110とフレーム部材120により挟持されている。感圧タッチセンサ1の折り返し部1bを折り返した側にフレーム部材120が設けられ、折り返し部1bを折り返した側と反対側に操作パネル110が設けられている。この例では、操作パネル110とフレーム部材120とはバネ130により接続されている。
操作パネル110における感圧タッチセンサ1と反対側の表面が操作面112となる。
【0074】
操作パネル110としては、指で押圧した際に、パネルを通して指で押圧した位置から離れた位置にある弾性層を圧縮できる剛性を備えたものが使用できる。ただし、押圧する位置と弾性層のある位置が近い場合は、操作パネル110として、剛性の低いパネルを使用してもよい。操作パネル110としては、例えば、感圧タッチセンサ1の表面を覆うカバー層と、前記カバー層の表面に形成された加飾層を備えるものが挙げられる。カバー層は、光源からの光線を平面方向に導くライトガイド層を兼ねる層であってもよい。
【0075】
カバー層の材料としては、例えば、ガラス、樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、PC、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン(PS)、PVC、PET、PBT、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
カバー層の平均厚さは、0.05mm~10mmが好ましく、2mm~5mmがより好ましい。カバー層の平均厚さが前記範囲の下限値以上であれば、充分な強度が得られやすい。カバー層の平均厚さが前記範囲の上限値以下であれば、モジュール100が過度に厚くなることを抑制しやすく、また指で電極に触れた際に第3の電極の静電容量が十分に変化して良好な検知精度が得られやすい。
【0077】
加飾層は、装飾、文字、図形、記号、絵柄、これらの組み合わせ、あるいはこれらと色彩との組み合わせによる任意の装飾が施された層である。加飾層は、例えば、カバー層に印刷を施すことにより形成できる。
なお、操作パネル110は、加飾層を有しないものであってもよい。
【0078】
フレーム部材120には、感圧タッチセンサ1側の表面における感圧タッチセンサ1の各弾性層26と対応する位置に、平面視矩形状の4つの凸部122が設けられている。感圧タッチセンサ1が操作パネル110とフレーム部材120で挟持された状態では、4つの凸部122がそれぞれ、感圧タッチセンサ1における弾性層26が位置する折り返し部1bに圧接している。このように、感圧タッチセンサ1の弾性層26が位置する部分が操作パネル110とフレーム部材120の凸部122で挟持された状態になっている。
【0079】
なお、凸部122は粘着剤等で感圧タッチセンサ1と接着されていてもよい。凸部122を粘着剤で感圧タッチセンサ1と接着する場合でも、感圧タッチセンサ1の折り返し部1bを折り返す折り線部1dには、凸部122と接着させるための粘着剤が設けられないことが好ましい。具体的には、感圧タッチセンサ1の折り線部1dにおけるスリット28が設けられていない部分には、粘着剤が設けられていないことが好ましい。これにより、感圧タッチセンサ1における折り返された折り返し部1bが元の状態に戻ろうとする力が弱くなる。
【0080】
この例では、フレーム部材120の感圧タッチセンサ1側の表面における4つの凸部122よりも内側には、静電容量検知部(IC)を備える制御基板124が固定されている。制御基板124は図示されないコネクターを介して感圧タッチセンサ1の接続端子部30と接続されていてもよい。また、制御基板124には、静電容量検知部(IC)に加え、文字照光用のLED126が実装されており、タッチ判定状態に対応して感圧タッチセンサ1の第3の電極22及び操作パネル110を透過して文字照光させるようになっている。
【0081】
本発明では、このようにフレーム部材が凸部を有し、感圧タッチセンサの弾性層が位置する部分が操作パネルとフレーム部材の凸部で挟持されていることが好ましい。これにより、指で押圧した程度でも弾性層26が圧縮変形しやすくなり、タッチ操作の検出精度がより高くなる。
【0082】
フレーム部材を形成する材料としては、例えば、樹脂、ガラス、無機物等が挙げられる。
フレーム部材を形成する樹脂としては、例えば、カバー層を形成する樹脂として挙げた樹脂と同じものが挙げられる。フレーム部材を形成する樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
以下、モジュール100を用いたタッチ操作の判定処理について、
図10に基づいて説明する。
モジュール100における感圧タッチセンサ1の4対の第1の電極18及び第2の電極20を1つの静電容量検知部と接続し、3つの第3の電極22をそれぞれ個別の静電容量検知部と接続する。そして、各々の第3の電極22と接続された静電容量検知部で検出される検出値について、それぞれ第1の閾値を設定し、操作パネル110の操作面112における特定の第3の電極22に対応する部分に触れた場合に、その第3の電極22に対応する検出値が第1の閾値以上となるようにする。また、4対の第1の電極18及び第2の電極20と接続された静電容量検知部で検出される検出値について第2の閾値を設定し、所定の押圧力以上で押圧した場合に検出値が第2の閾値以上となるようにする。
なお、4対の第1の電極18及び第2の電極20は、それぞれ個別の静電容量検知部と接続されていてもよい。その場合は、4つの静電容量検知部のそれぞれで検出された検出値の合計値に対して、第2の閾値を設定することができる。
【0084】
この状態で操作パネル110の操作面112における1つの第3の電極22に対応する部分を指で押圧する。すると、まずその第3の電極22において静電容量が変化し、対応する静電容量検知部で検出された検出値が第1の閾値以上となる。さらに押圧によって弾性層26が圧縮変形し、4対の第1の電極18と第2の電極20の距離が近づいて静電容量が変化すると、それらと接続された静電容量検知部で検出された検出値が第2の閾値以上となる。この場合、操作する意図を持って押圧したタッチ状態であると判定される。
【0085】
一方、操作パネル110の操作面112に触れずに指が接近しただけの場合は、各々の第3の電極22に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第1の閾値未満となり、非タッチ状態であると判定される。
また、操作パネル110の操作面112における1つの第3の電極22に対応する部分に触れているだけで、その部分を押圧していない場合、その第3の電極22に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第1の閾値以上となるものの、4対の第1の電極18及び第2の電極20に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第2の閾値未満となる。そのため、操作する意図がなく単に指が操作面に触れてしまっただけの場合には非タッチ状態であると判定される。
また、操作パネル110の操作面112における第3の電極22に対応していない部分を押圧した場合、各々の第3の電極22に対応する静電容量検知部で検出された検出値は第1の閾値未満となり、非タッチ状態であると判定される。
【0086】
以上説明したように、本発明においては、感圧タッチセンサの基材シートにおける、第1の電極と第2の電極を対向させるための折り線部にスリットが形成されている。これにより、基材シートの折り返された部分は元の状態に戻ろうとする力が弱く、第1の電極と第2の電極の距離が安定するため、押圧の誤検知が抑制される。
【0087】
また、本発明の感圧タッチセンサは、基材シートを第1の電極と第2の電極の間で部分的に折り返して第1の電極と第2の電極の互いの面を対向させるため、第2の電極が設けられた折り返し部を個別の部材として積層する態様に比べて、製造が容易で、コスト面でも有利である。
また、本発明の感圧タッチセンサは、柔軟な部材で形成されているため、曲面への追従性が良好であり、操作パネルへの接着強度が高く、操作パネルとの間に気泡が混入することも抑制しやすい。
【0088】
また、押圧を検知する第1の電極及び第2の電極と、指の接触を検知する第3の電極を組み合わせる態様、すなわちそれぞれ独立した感圧電極とタッチ電極を備える態様は、指の接触と感圧の2段階の閾値を用いてタッチ状態を判定できるため、誤検知をさらに抑制できる。
【0089】
なお、本発明の感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュールは、前記した感圧タッチセンサ1には限定されない。
例えば、
図11及び
図12に示すように、同じ矩形状の本体部1aと折り返し部1eを有し、本体部1aと折り返し部1eの間で半分に折り返される感圧タッチセンサ1Aであってもよい。
図11及び
図12における
図4及び
図2と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
図12は、
図11の感圧タッチセンサ1Aの折り返し部1eが折り返されて弾性層26Aが設けられた状態における、第1の電極18及び第2の電極20が位置する部分の断面図である。
【0090】
感圧タッチセンサ1Aでは、本体部1aと折り返し部1eの境界線部分が折り線部1dとなっており、その折り線部1dに沿うように直線状のスリット28Aが形成されている。
また、本体部1aと折り返し部1eの間には、4つの弾性層26の代わりに1つの弾性層26Aが設けられている。弾性層26Aは、第1の電極18及び第2の電極20と対応する部分に複数の柱部26cを有し、それ以外の部分は空間が埋められた中実部27となっている。弾性層26Aが中実部27を有することで、段差が生じることを抑制しつつ、良好な光透過性を確保できる。
【0091】
感圧タッチセンサ1では、本体部1aにおける折り返し部1bが存在する部分と折り返し部1bが存在しない部分の境界で段差が生じる。しかし、感圧タッチセンサ1Aでは、折り返し部1eが折り返された状態でこのような段差が生じないため、操作パネルに貼り付ける際に気泡が混入しにくく、貼り付け作業が容易な点で有利である。また、第1の電極18及び第2の電極20の配置が比較的自由になる点でも有利である。
一方、感圧タッチセンサ1は、感圧タッチセンサ1Aに比べて、基材シートの折り返し部が小さく、弾性層も必要最小限の大きさにでき、低コストである。また、第3の電極が設けられた部分(文字照光部)は、弾性層が介在していないため光透過性が良好で文字の視認性にも優れる。
【0092】
また、弾性層26の代わりに、
図13に例示した弾性層26Bを備える感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュールであってもよい。
図13における
図7と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
弾性層26Bは、一対の第1シート部26a及び第2シート部26bと、複数の柱部26cと、それら複数の柱部26cの全ての周囲を囲うように設けられた枠状部26dとを備えるゴム状弾性体である。弾性層26Bでは、複数の柱部26cと枠状部26dが一対の第1シート部26a及び第2シート部26bで挟持されている。
【0093】
折り返された折り返し部1bが元の状態に戻ろうとする力は、折り線部1dに近い部分ほど大きい。しかし、枠状部26dを有する弾性層26Bを用いれば、枠状部26dを有しない弾性層26に比べて、弾性層26Bの折り線部1dに近い部分がより高い接着強度で基材シート10及び保護層12に接着される。そのため、第1の電極18と第2の電極20の距離をより安定して保つことができるため、押圧の検知精度がさらに高くなる。また、弾性層26Bに対し面方向に働く剪断力に対しての強度も高まる。
【0094】
また、
図14に示すように、弾性層26Bにおいて、枠状部26dに部分的な欠け部26eが形成された弾性層26Cを備える感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュールであってもよい。
図14における
図13と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。弾性層26Cであれば、圧縮変形時に枠状部26dの内部に存在する空気が外部に抜けやすいため、弾性層26Bに比べて厚さ方向に圧縮変形しやすくなる。
【0095】
また、
図15及び
図16に示すように、第2シート部26bの上面から突き出る複数の突条部26fが、複数の柱部26cをそれぞれ囲うように格子状に設けられた弾性層26Dを備える感圧タッチセンサ及び感圧タッチセンサモジュールであってもよい。
図15及び
図16における
図6及び
図7と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
弾性層26Dであれば、突条部26fによって弾性層26Dが厚さ方向に過度に圧縮変形されることを抑制して押し込み量を容易に制御できるため、押し込みすぎによる弾性層26Dの圧縮永久歪みを低減しやすい。
【0096】
突条部26fの高さは、柱部26cの高さに応じて相対的に薄くなるように設定される。柱部26cの高さを100%としたとき、突条部26fの高さは、80%以下が好ましい。操作面の押し込みの程度を大きく設定する場合には、例えば、50%以下でもよく、30%以下でもよい。
柱部26cの圧縮永久歪を低減する観点では、突条部26fの高さは、柱部26cの高さの100%に対して、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましく、50%以上が特に好ましい。柱部26cの圧縮に関する性質(圧縮特性)の線形性が良好な圧縮初期の領域を利用する観点では、突条部26fの高さは、柱部26cの高さの100%に対して、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。突条部26fの高さが高い程、柱部26cの圧縮初期の領域を利用して第1の電極と第2の電極との距離を制御することができる。
【0097】
突条部26fの高さは、柱部26cの高さの100%に対して、例えば10~80%の範囲、20~70%の範囲、30~60%の範囲、10~50%の範囲、20~50%の範囲、30~50%の範囲等に設定することができる。
具体例として、柱部26cの高さが200μm超である場合、比較的高い場合に該当するので、突条部26fの高さは柱部26cの高さ(100%)に対して、例えば80%であれば、押し込みの可動範囲(許容範囲)は40μm超になる。40μm超の可動範囲があれば充分に押し込みが可能である。
ここで、突条部26fの高さには、第2シート部26bの厚さは含まれない。突条部26fの高さは、光学顕微鏡測定機等の公知の微細構造観察手段により測定できる。
【0098】
弾性層26が有する全ての突条部26fの天面(第1シート部26a側の表面)の合計の面積は、柱部26cの過度な押し込みを抑制できるように適宜調整される。第1シート部26a又は第2シート部26bの面積を100%としたとき、全ての突条部26fの天面の合計の面積は、1~70%が好ましく、6~60%がより好ましく、8~50%がさらに好ましい。前記割合が前記範囲の下限値以上であれば、操作面が過度に押し込まれた場合に、第1シート部26aに接触した突条部26fの天面が、押圧力に対して対抗し、それ以上の押し込みを容易に抑制することができる。前記割合が前記範囲の上限値以下であれば、弾性層26の弾性力を決定する主体である柱部26cの設置領域を充分に確保することができる。さらに、第1シート部26aと突条部26fの接触面積が過度に大きくなり、その接触面において第1シート部26aと突条部26fとが互いに吸着することを防止できる。第1シート部26a及び突条部26fを構成する材料がタック性を呈する場合、上記の吸着を防止することは、押圧の繰り返し操作を円滑に行う観点から重要である。
具体的には、例えば、全ての突条部26fの天面の合計の面積を0.1~10mm2とすることができる。
【0099】
弾性層26において、全ての柱部26cの高さ方向に垂直な方向の断面の合計面積S1に対する、全ての突条部26fの天面の合計面積S2の比(S2/S1)は、0.1以上が好ましく、1以上がより好ましい。S2/S1の比の上限値の目安は、例えば、50程度が挙げられる。S2/S1が前記範囲の下限値以上であれば、操作面が過度に押し込まれた場合に、第1シート部26aに接触した突条部26fの天面が、押圧力に対して充分に対抗し、それ以上の押し込みを容易に抑制することができる。S2/S1が前記範囲の上限値以下であれば、弾性層26の弾性力を決定する主体である柱部26cの設置領域を充分に確保することができる。
弾性層26においては、合計面積S2が合計面積S1よりも大きいことが好ましい。この関係であると、過度な押し込みに対して充分に対抗することができ、柱部26cの圧縮永久歪を低減することがより容易になる。
【0100】
また、突条部は格子状には限定されない。例えば、弾性層としては、平面視で弾性層の外縁(一対のシート部の外縁)に沿って、複数の柱部の外側にそれら全てを囲うように、柱部の高さよりも低い環状の突条部が設けられた弾性層であってもよい。
また、平面視で弾性層の外縁(一対のシート部の外縁)に沿って複数の柱部が設けられ、それら複数の柱部よりも内側に柱部の高さよりも低い1つ以上の突起部が設けられた弾性層であってもよい。前記突起部の高さ、第1シート部26a側の天面の合計面積の好ましい態様は、突条部の好ましい態様と同様である。
【0101】
また、
図17に示すように、本体部1aにおいて第1の電極18Aが第3の電極22及び補助電極24を囲うように枠状に設けられ、折り返し部1eにおける第1の電極18Aと対応する位置に第1の電極18Aと同形状の第2の電極20Aが設けられた感圧タッチセンサ1Bであってもよい。
図17における
図11と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0102】
本発明の感圧タッチセンサは、タッチ電極である第3の電極を有していなくてもよい。例えば、
図18に示すように、半分に折り返される本体部1aと折り返し部1fを有し、それらのそれぞれに第1の電極18と第2の電極20が設けられ、第3の電極22及び補助電極24を有しない感圧タッチセンサ1Cであってもよい。
図18における
図4と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0103】
本発明の感圧タッチセンサにおける第1の電極及び第2の電極の位置は、感圧タッチセンサ1、1A~1Cのような位置には限定されず、適宜設定できる。本発明の感圧タッチセンサにおける第3の電極の位置も、感圧タッチセンサ1、1A、1Bのような位置には限定されず、適宜設定できる。
【0104】
本発明の感圧タッチセンサにおけるスリットの態様は、前記したスリット28,28Aには限定されない。スリットは、感圧タッチセンサの折り線部における、基材シートの第1の電極と第2の電極の間の部分以外の部分に形成されていてもよい。
例えば、
図19~22に例示した感圧タッチセンサ1D~1Gであってもよい。
図19~22における
図18と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。
【0105】
感圧タッチセンサ1Dでは、
図19に示すように、本体部1aと折り返し部1fの折り線部1dの一方の端部から他方の端部に向かって延びるスリット28Bが形成され、本体部1aと折り返し部1fが折り線部1dの片側の端部で接続されている。
感圧タッチセンサ1Eでは、
図20に示すように、本体部1aと折り返し部1fの折り線部1dの両側の端部から中央に向かって延びるスリット28Cが形成され、本体部1aと折り返し部1fが折り線部1dの中央部で接続されている。
【0106】
感圧タッチセンサ1Fでは、
図21に示すように、本体部1aと折り返し部1fの折り線部1dの一方の端部から他方の端部に向かって延び、さらに折り返し部1f側に直角に曲がって延びるスリット28Dが形成され、本体部1aと折り返し部1fが折り線部1dの片側の端部で接続されている。
感圧タッチセンサ1Gでは、
図22に示すように、本体部1aと折り返し部1fの折り線部1dの両側の端部から中央に向かって延びる、スリット28Cよりも幅が広いスリット28Eが形成され、本体部1aと折り返し部1fが折り線部1dの中央部で接続されている。
【0107】
感圧タッチセンサ1Cのように本体部1aと折り返し部1fが折り線部1dの両側の端部で接続された態様は、感圧タッチセンサ1D~1Gのようにそれらが折り線部1dの中央部や片側の端部で接続された態様に比べて、折り返し部1fを折り返して貼り合わせる際に位置ずれしにくい点で有利である。
【0108】
感圧タッチセンサ1Dのように本体部1aと折り返し部1fが折り線部1dの片側の端部で接続された態様は、感圧タッチセンサ1Eのようにそれらが折り線部1dの中央部で接続された態様と異なり、配線2bが第1の電極18と第2の電極20の間に配置されない。これにより、折り返された折り返し部1fが元の状態に戻ろうとする力が第1の電極18と第2の電極20に影響しにくくなる。そのため、感圧タッチセンサ1Dのような態様は、感圧タッチセンサ1Eのような態様に比べ、第1の電極18と第2の電極20の距離がより安定し、検知精度がより高い点で好ましい。
【0109】
感圧タッチセンサ1Fのような態様では、折り返し部1fにおける第2の電極20が設けられている矩形状の部分と、本体部1aと折り返し部1fが接続されている折り線部1dの片側の端部とを繋ぐ部分が長細い帯状になっている。これにより、折り返された折り返し部1fが元の状態に戻ろうとする力が第2の電極20に影響しにくい。そのため、感圧タッチセンサ1Fのような態様は、感圧タッチセンサ1Dのような態様に比べ、第1の電極18と第2の電極20の距離がより安定し、検知精度がより高い点で好ましい。配線を短くできる点では、感圧タッチセンサ1Fのような態様よりも感圧タッチセンサ1Dのような態様の方が好ましい。
【0110】
感圧タッチセンサ1Gのような態様は、第1の電極18と折り線部1dとの距離、及び第2の電極20と折り線部1dとの距離を長くすることができるため、折り返された折り返し部1fが元の状態に戻ろうとする力が第1の電極18と第2の電極20に影響しにくい。そのため、第1の電極18と第2の電極20の距離がより安定し、検知精度がより高い点で好ましい。一方、製品サイズを小さくしやすい点では、感圧タッチセンサ1Gのような態様よりも、感圧タッチセンサ1C~1Fのような態様が好ましい。
感圧タッチセンサ1C~1Gを比較すると、感圧タッチセンサ1E~1Gよりも感圧タッチセンサ1C、1Dが好ましく、感圧タッチセンサ1Cが特に好ましい。
【0111】
本発明の感圧タッチセンサは、第1の電極と第2の電極を基材シートの同一面に設け、第1の電極と第2の電極を設けた面が内側となるように基材シートを折り返す態様には限定されない。例えば、第1の電極と第2の電極を基材シートの同一面に設け、第1の電極と第2の電極を設けた面が外側となるように基材シートを折り返して第1の電極と第2の電極の互いの面を対向させる感圧タッチセンサであってもよい。
また、本発明の感圧タッチセンサでは、第1の電極と第2の電極を基材シートの異なる面に設けてもよい。例えば、基材シートの第1の面に第1の電極を設け、第2の面に第2の電極を設け、基材シートを折り返して第1の電極と第2の電極の互いの面を対向させる感圧タッチセンサであってもよい。
【0112】
第1の電極と第2の電極を基材シートの同一面に設ける態様は、第1の電極と第2の電極を基材シートの異なる面に設ける態様に比べ、製造工程を少なくでき、低コストである点で有利である。また、第1の電極と第2の電極の距離をより短くでき、感度がより高くなる点で、第1の電極と第2の電極を基材シートの同一面に設け、第1の電極と第2の電極を設けた面が内側となるように基材シートを折り返して第1の電極と第2の電極の互いの面を対向させる態様が特に好ましい。
【符号の説明】
【0113】
1…感圧タッチセンサ、1a…本体部、1b…折り返し部、1c…帯状部、2a~2c…配線、10…基材シート、12…保護層、14…粘着剤層、16…剥離紙、18…第1の電極、20…第2の電極、22…第3の電極、24…補助電極、26…弾性層、26a…第1シート部、26b…第2シート部、26c…柱部、28…スリット、100…感圧タッチセンサモジュール、110…操作パネル、112…操作面、120…フレーム部材、122…凸部。