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特許7668878熱交換器、冷凍サイクル装置および熱交換器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】熱交換器、冷凍サイクル装置および熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/30 20060101AFI20250418BHJP
【FI】
F28F1/30 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023531187
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024516
(87)【国際公開番号】W WO2023275978
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾中 洋次
(72)【発明者】
【氏名】足立 理人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 七海
(72)【発明者】
【氏名】五明 泰作
(72)【発明者】
【氏名】七種 哲二
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇志
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-101074(JP,A)
【文献】特開昭56-066695(JP,A)
【文献】特開2019-045033(JP,A)
【文献】特開2004-085168(JP,A)
【文献】国際公開第2021/095538(WO,A1)
【文献】特開2013-245883(JP,A)
【文献】特開2013-250016(JP,A)
【文献】特開平05-045474(JP,A)
【文献】特開2015-146123(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0227945(US,A1)
【文献】特開2010-281509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/30
F25B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面をそれぞれ対向させて並列された複数の扁平伝熱管と、
波形状を有し、対向する前記複数の扁平伝熱管の間に配置されるコルゲートフィンと、を備え、
前記コルゲートフィンは、
前記波形状の頂部が前記複数の扁平伝熱管の前記外側面に接合され、
前記頂部の間を接続するフィンが前記複数の扁平伝熱管の軸方向に並列して配置され、
前記複数の扁平伝熱管が並列する方向を並列方向とし、前記複数の扁平伝熱管の断面形状の長軸方向を奥行方向としたとき、前記フィンは、
奥行方向に複数並べられた複数の伝熱促進部を有し、
前記複数の伝熱促進部のそれぞれは、
前記フィンの表面から突き出して形成された伝熱促進凸部と、
前記フィンの表面に開口された開口部分と、を備え、
前記複数の伝熱促進部の間には、
奥行方向に幅を有する霜成長領域を備え、
前記霜成長領域は、
前記複数の伝熱促進部のそれぞれの前記開口部分と連続して形成された貫通孔を備え
前記貫通孔は、前記コルゲートフィンが打ち抜かれて形成された孔である、熱交換器。
【請求項2】
前記複数の伝熱促進部は、
前記フィンの表面から突出する方向の先端に位置する先端面を備え、
前記先端面は、
奥行方向において中央部が凸となるように形成されている湾曲面を有する、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記複数の伝熱促進部は、
前記フィンの表面から突出する方向の先端に位置する先端面を備え、
前記先端面は、
前記フィンの表面に対し傾斜している、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記複数の伝熱促進部の1つに前記霜成長領域を挟んで隣り合って配置されている平坦部を備え、
前記平坦部は、
前記複数の伝熱促進部の前記先端面と同じ角度及び向きに傾斜している傾斜部を備える、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記複数の伝熱促進部のうち隣り合って配置されている2つの伝熱促進部は、
互いに並列方向にずれて配置されている、請求項1~4の何れか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記フィンは、
奥行方向において前記霜成長領域の長さをL、前記伝熱促進部の長さをLとしたときに、L/7<Lの関係を満たす、請求項1~5の何れか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
複数の伝熱促進部のうち隣り合って配置されている2つの伝熱促進部の間に、平坦部を有する、請求項1~6の何れか1項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記フィンは、
奥行方向において前記霜成長領域の長さをL、前記伝熱促進部の長さをL、前記平坦部の長さをLとしたときに、L/7<L≦Lの関係を満たす、請求項7に記載の熱交換器。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の熱交換器を備える、冷凍サイクル装置。
【請求項10】
交換器の製造方法であって、
前記熱交換器は、
外側面をそれぞれ対向させて並列された複数の扁平伝熱管と、
波形状を有し、対向する前記複数の扁平伝熱管の間に配置されるコルゲートフィンと、を備え、
前記コルゲートフィンは、
前記波形状の頂部が前記複数の扁平伝熱管の前記外側面に接合され、
前記頂部の間を接続するフィンが前記複数の扁平伝熱管の軸方向に並列して配置され、
前記複数の扁平伝熱管が並列する方向を並列方向とし、前記複数の扁平伝熱管の断面形状の長軸方向を奥行方向としたとき、前記フィンは、
奥行方向に複数並べられた複数の伝熱促進部を有し、
前記複数の伝熱促進部のそれぞれは、
前記フィンの表面から突き出して形成された伝熱促進凸部と、
前記フィンの表面に開口された開口部分と、を備え、
前記複数の伝熱促進部の間には、
奥行方向に幅を有する霜成長領域を備え、
前記霜成長領域は、
前記複数の伝熱促進部のそれぞれの前記開口部分と連続して形成された貫通孔を備えるものであり、
前記製造方法は、
平坦な板材から前記コルゲートフィンを形成する工程と、
前記コルゲートフィンの前記頂部を前記扁平伝熱管に接合する工程と、を有し、
前記コルゲートフィンを形成する工程は、
前記板材に前記貫通孔を形成する穴開け工程と、前記貫通孔の縁の少なくとも一方の平坦部分を前記板材の表面に対して垂直方向に移動させるように変形して前記伝熱促進部を形成する伝熱促進部形成工程と、
前記貫通孔及び前記伝熱促進部が形成された前記板材を波形に折り曲げる折り曲げ工程と、
前記折り曲げ工程の後に所定の長さに前記板材を切断する工程と、を備える、熱交換器の製造方法。
【請求項11】
前記穴開け工程は、
カッターを備え平行な回転軸を備える2つのローラーカッターの間に前記板材を通して行われ、
前記伝熱促進部形成工程は、
前記穴開け工程の後に行われ、平行な回転軸を備える2つのローラーの間に前記板材を通すことにより行われる、請求項10に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項12】
撮像装置により撮影された前記板材の表面の画像に基づき前記穴開け工程における前記貫通孔の位置精度を監視し、前記画像から得られた前記貫通孔の位置精度データに基づき、前記ローラーカッターの回転速度及び前記板材の送り速度を含む加工条件を変動させる、請求項11に記載の熱交換器の製造方法。
【請求項13】
外側面をそれぞれ対向させて並列された複数の扁平伝熱管と、
波形状を有し、対向する前記複数の扁平伝熱管の間に配置されるコルゲートフィンと、を備え、
前記コルゲートフィンは、
前記波形状の頂部が前記複数の扁平伝熱管の前記外側面に接合され、
前記頂部の間を接続するフィンが前記複数の扁平伝熱管の軸方向に並列して配置され、
前記複数の扁平伝熱管が並列する方向を並列方向とし、前記複数の扁平伝熱管の断面形状の長軸方向を奥行方向としたとき、前記フィンは、
奥行方向に複数並べられた複数の伝熱促進部を有し、
前記複数の伝熱促進部のそれぞれは、
前記フィンの表面から突き出して形成された伝熱促進凸部と、
前記フィンの表面に開口された開口部分と、を備え、
前記複数の伝熱促進部の間には、
奥行方向に幅を有する霜成長領域を備え、
前記霜成長領域は、
前記複数の伝熱促進部のそれぞれの前記開口部分と連続して形成された貫通孔を備え、
前記複数の伝熱促進部は、
前記フィンの表面から突出する方向の先端に位置する先端面を備え、
前記先端面は、
前記フィンの表面に対し傾斜しており、
前記複数の伝熱促進部の1つに前記霜成長領域を挟んで隣り合って配置されている平坦部を備え、
前記平坦部は、
前記複数の伝熱促進部の前記先端面と同じ角度及び向きに傾斜している傾斜部を備える熱交換器。
【請求項14】
前記複数の伝熱促進部のうち隣り合って配置されている2つの伝熱促進部の間に、平坦部を有し、
前記霜成長領域は、
前記伝熱促進部と前記平坦部とに挟まれて、前記伝熱促進部と前記平坦部とに隣合って配置されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記霜成長領域は、
前記伝熱促進部の奥行方向の両側又は空気の流れの上流側のみに配置されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項16】
前記霜成長領域の並列方向の幅寸法は、前記伝熱促進部の並列方向の幅寸法以上である請求項1に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コルゲートフィンと扁平伝熱管とを組み合わせて構成する熱交換器、冷凍サイクル装置および熱交換器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば冷媒が通過する一対のヘッダー間に接続された複数の扁平伝熱管の平面部と平面部との間に、コルゲートフィンを配置したコルゲートフィンチューブ型の熱交換器が普及している。そして、コルゲートフィンが配置された扁平伝熱管の間には、気体が気流として通過する。このような熱交換器は、扁平伝熱管とコルゲートフィンとの少なくとも一方の表面温度が氷点以下になる可能性がある。表面温度が低下すると、表面近くの空気中の水分が析出して水となり、さらに、氷点以下になると、水が凍結する。そこで、熱交換器は、排水をはかるため、フィンとなる部分に空隙となるスリットを設け、表面に析出した水を、スリットを介して排出する(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-183908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱交換器は、コルゲートフィン表面に析出する水を排出する構造であるスリットを有する。スリットは、コルゲートフィンを構成する板材を部分的に切断して板材を貫通する切り込みを形成して形成される。そのため、スリットは、幅が小さく、スリットの間に水又は霜が滞留してしまうと、排出するのが困難であった。滞留した水又は霜は、熱交換器を通過する空気の抵抗となり、コルゲートフィンの伝熱性能を低下させてしまうという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するため、コルゲートフィンの排水性及び着霜耐力を向上した熱交換器、冷凍サイクル装置および熱交換器の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の熱交換器は、外側面をそれぞれ対向させて並列された複数の扁平伝熱管と、波形状を有し、対向する前記複数の扁平伝熱管の間に配置されるコルゲートフィンと、を備え、前記コルゲートフィンは、前記波形状の頂部が前記複数の扁平伝熱管の前記外側面に接合され、前記頂部の間を接続するフィンが前記複数の扁平伝熱管の軸方向に並列して配置され、前記複数の扁平伝熱管が並列する方向を並列方向とし、前記複数の扁平伝熱管の断面形状の長軸方向を奥行方向としたとき、前記フィンは、奥行方向に複数並べられた複数の伝熱促進部を有し、前記複数の伝熱促進部のそれぞれは、前記フィンの表面から突き出して形成された伝熱促進凸部と、前記フィンの表面に開口された開口部分と、を備え、前記複数の伝熱促進部の間には、奥行方向に幅を有する霜成長領域を備え、前記霜成長領域は、前記複数の伝熱促進部のそれぞれの前記開口部分と連続して形成された貫通孔を備え、前記貫通孔は、前記コルゲートフィンが打ち抜かれて形成された孔である。
【0007】
また、本開示の冷凍サイクル装置は、上記の熱交換器を備えるものである。
【0008】
また、本開示の熱交換器の製造方法は、外側面をそれぞれ対向させて並列された複数の扁平伝熱管と、波形状を有し、対向する前記複数の扁平伝熱管の間に配置されるコルゲートフィンと、を備え、前記コルゲートフィンは、前記波形状の頂部が前記複数の扁平伝熱管の前記外側面に接合され、前記頂部の間を接続するフィンが前記複数の扁平伝熱管の軸方向に並列して配置され、前記複数の扁平伝熱管が並列する方向を並列方向とし、前記複数の扁平伝熱管の断面形状の長軸方向を奥行方向としたとき、前記フィンは、奥行方向に複数並べられた複数の伝熱促進部を有し、前記複数の伝熱促進部のそれぞれは、前記フィンの表面から突き出して形成された伝熱促進凸部と、前記フィンの表面に開口された開口部分と、を備え、前記複数の伝熱促進部の間には、奥行方向に幅を有する霜成長領域を備え、前記霜成長領域は、前記複数の伝熱促進部のそれぞれの前記開口部分と連続して形成された貫通孔を備える熱交換器の製造方法であって、平坦な板材から前記コルゲートフィンを形成する工程と、前記コルゲートフィンの前記頂部を前記扁平伝熱管に接合する工程と、を有し、前記コルゲートフィンを形成する工程は、前記板材に前記貫通孔を形成する穴開け工程と、前記貫通孔の縁の少なくとも一方の平坦部分を前記板材の表面に対して垂直方向に移動させるように変形して前記伝熱促進部を形成する伝熱促進部形成工程と、前記貫通孔及び前記伝熱促進部が形成された前記板材を波形に折り曲げる折り曲げ工程と、前記折り曲げ工程の後に所定の長さに前記板材を切断する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、熱交換器のコルゲートフィンの上側に位置するフィンが伝熱促進部に隣り合う霜成長領域を通過して水を下側のフィンに排水できるように構成されている。従って、フィン上の水の滞留を抑え、凍結を防ぐことができ、コルゲートフィンの伝熱性能をさらに向上させることができる。また、霜着霜空間が設けられていることにより、霜成長時のフィン間の風路の閉塞時間を延ばすことができ、着霜耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る熱交換器10の構造を説明する正面図である。
図2】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る熱交換器10の複数の扁平伝熱管1及びコルゲートフィン2の構造を説明する拡大斜視図である。
図4】実施の形態1に係るコルゲートフィン2の上面図である。
図5】実施の形態1に係るコルゲートフィン2のフィン21の変形例を示す上面図である。
図6】実施の形態1に係るコルゲートフィン2の変形例を示す上面図である。
図7】実施の形態1に係るコルゲートフィン2のフィン21の変形例を示す上面図である。
図8】実施の形態1に係るフィン21の断面構造の説明図である。
図9】実施の形態1に係るフィン21の比較例であるフィン121の断面構造の説明図である。
図10】実施の形態1に係る熱交換器10における霜成長領域の幅と排水性の関係を示す図である。
図11】実施の形態2に係るフィン21の構造の一例を示したものである。
図12】実施の形態3に係るフィン21の一例を示したものである。
図13】実施の形態4に係るフィン21の断面形状の一例を示した説明図である。
図14】実施の形態5に係るコルゲートフィン2を製造する装置の構造の説明図である。
図15】実施の形態5に係るコルゲートフィン2の加工工程のフローの一例である。
図16】実施の形態5に係るコルゲートフィン2の加工工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態に係る熱交換器、冷凍サイクル装置及び熱交換器の製造方法について、添付図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、以下の説明において、図における上方を「上側」とし、下方を「下側」として説明する。さらに、理解を容易にするために、方向を表す用語(たとえば「右」、「左」、「前」、「後」など)などを適宜用いるが、説明のためのものであって、これらの用語により限定されるものではない。また、湿度および温度の高低については、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではなく、装置などにおける状態および動作などにおいて相対的に定まるものとする。そして、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る熱交換器10の構造を説明する正面図である。実施の形態1の熱交換器10は、パラレル配管形となるコルゲートフィンチューブ型の熱交換器である。熱交換器10は、上下方向に管軸を向けた複数の扁平伝熱管1、複数のコルゲートフィン2および一対のヘッダー3を有する。ヘッダー3は、複数の扁平伝熱管1の下側に位置するヘッダー3Aおよび上側に位置するヘッダー3Bを備える。ここで、以下では、図1における上下方向を管軸方向と呼び、左右方向を並列方向と呼ぶ。そして、図1における紙面垂直方向を奥行方向と呼ぶ。奥行方向は、熱交換器10を通過する空気の流通する方向である。実施の形態1においては、複数の扁平伝熱管1の管軸を重力方向、つまり高さ方向に沿って配置させているが、管軸は必ずしも重力方向に平行でなくともよく、傾斜して配置されていても良い。
【0013】
(熱交換器10)
ヘッダー3A及び3Bは、それぞれ、冷凍サイクル装置を構成する他の装置と配管接続され、熱交換媒体となる流体である冷媒が流入出し、冷媒を分岐または合流させる管である。2本のヘッダー3A及び3Bの間には、複数の扁平伝熱管1が、各ヘッダー3に対して垂直に管軸を向け、互いに管軸を平行となるように配置されている。実施の形態1の熱交換器10においては、2本のヘッダー3Aおよびヘッダー3Bは、上下に分かれて配置されている。ここでは、液状の冷媒が通過するヘッダー3Aが下側に位置し、ガス状の冷媒が通過するヘッダー3Bが上側に位置する。冷媒は、下側に位置するヘッダー3Aから流入し、複数の扁平伝熱管1に分流した後、上側に位置するヘッダー3Bにおいて合流し、熱交換器10から流出する。
【0014】
(冷凍サイクル装置)
図2は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成を示す図である。実施の形態1においては、冷凍サイクル装置の一例として、空気調和装置1000について説明する。図2に示す空気調和装置1000では、熱交換器10を室外熱交換器203として用いる。ただし、熱交換器10は、室外熱交換器203に使用するものに限定されるものではなく、室内熱交換器110として用いてもよいし、室外熱交換器203および室内熱交換器110の両方に用いてもよい。
【0015】
図2に示すように、空気調和装置1000は、室外機200と室内機100とを、ガス冷媒配管300及び液冷媒配管400により配管接続することで、冷媒回路が構成される。室外機200は、圧縮機201、四方弁202、室外熱交換器203および室外ファン204を有している。実施の形態1の空気調和装置は、1台の室外機200と1台の室内機100が配管接続されているものとする。
【0016】
圧縮機201は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。特に限定するものではないが、圧縮機201は、たとえばインバータ回路などにより、運転周波数を任意に変化させることにより、圧縮機201の容量を変化させることができる。四方弁202は、たとえば冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り換える弁である。
【0017】
室外熱交換器203は、冷媒と室外の空気との熱交換を行う。たとえば、暖房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。また、冷房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。室外ファン204は、室外熱交換器203に室外の空気を送り込み、室外熱交換器203における熱交換を促す。
【0018】
一方、室内機100は、室内熱交換器110、膨張弁120および室内ファン130を有している。絞り装置などの膨張弁120は、冷媒を減圧して膨張させる。たとえば電子式膨張弁などで構成した場合には、制御装置(図示せず)などの指示に基づいて開度調整を行う。また、室内熱交換器110は、空調対象空間である室内の空気と冷媒との熱交換を行う。たとえば、暖房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。また、冷房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。室内ファン130は、室内の空気を、室内熱交換器110に通過させ、室内熱交換器110を通過させた空気を室内に供給する。
【0019】
次に、空気調和装置1000の各機器の動作について、冷媒の流れに基づいて説明する。まず、暖房運転における冷媒回路の各機器の動作を、冷媒の流れに基づいて説明する。圧縮機201により圧縮されて吐出した高温および高圧のガス冷媒は、四方弁202を通過し、室内熱交換器110に流入する。つまり、暖房運転において冷媒は図2の四方弁202の点線で示される経路で流れる。ガス冷媒は、室内熱交換器110を通過中に、たとえば、空調対象空間の空気と熱交換することで凝縮し、液化する。凝縮し液化した冷媒は、膨張弁120を通過する。冷媒は膨張弁120を通過する際に減圧される。膨張弁120で減圧されて気液二相状態となった冷媒は、室外熱交換器203を通過する。室外熱交換器203において、室外ファン204から送られた室外の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化した冷媒は、四方弁202を通過して、再度、圧縮機201に吸入される。以上のようにして空気調和装置の冷媒が循環し、暖房に係る空気調和を行う。
【0020】
次に、冷房運転について説明する。圧縮機201により圧縮されて吐出した高温および高圧のガス冷媒は、四方弁202を通過し、室外熱交換器203に流入する。つまり、冷房運転において冷媒は図2の四方弁202の実線で示される経路で流れる。そして、室外熱交換器203内を通過して、室外ファン204が供給した室外の空気と熱交換することで凝縮し、液化した冷媒は、膨張弁120を通過する。冷媒は、膨張弁120を通過する際に減圧される。膨張弁120で減圧されて気液二相状態となった冷媒は、室内熱交換器110を通過する。そして、室内熱交換器110において、たとえば、空調対象空間の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化した冷媒は、四方弁202を通過して再度圧縮機201に吸入される。以上のようにして空気調和装置の冷媒が循環し、冷房に係る空気調和を行う。
【0021】
(扁平伝熱管1)
図3は、実施の形態1に係る熱交換器10の複数の扁平伝熱管1及びコルゲートフィン2の構造を説明する拡大斜視図である。図3において、扁平伝熱管1は管軸に垂直な断面構造を示し部分的に表示されており、コルゲートフィン2もフィン21の構造を説明するため、つづら折り形状の一部分が示されている。扁平伝熱管1は、管軸に垂直な断面が扁平形状であり、空気の流通方向である奥行方向に沿って扁平形状の長手方向を向けて配置されている。扁平伝熱管1は、断面形状の長手方向に沿った平面である外側面1Aを有する。また、扁平伝熱管1の当該長手方向に直交する短手方向の側面、つまり扁平伝熱管1の断面形状において長手方向の端面が曲面状に構成されている。
【0022】
扁平伝熱管1は、内部に冷媒流路となる複数の穴1Bを有する多穴扁平伝熱管である。実施の形態1において、扁平伝熱管1の穴1Bは、ヘッダー3A及び3Bの間を接続する流路となる。そのため、穴1Bは、高さ方向に延びるように形成されている。複数の扁平伝熱管1のそれぞれは、長手方向に沿った外側面1A同士を対向させて、管軸方向に直交する方向に等間隔に並列されている。
【0023】
実施の形態1に係る熱交換器10を製造する際、各扁平伝熱管1は、各ヘッダー3が有する挿入穴(図示せず)に挿し込まれ、ろう付けにより接合される。ろう付けのろう材は、たとえばアルミニウムを含むろう材が使用される。
【0024】
熱交換器10が、冷凍サイクル装置において凝縮器として使用される場合は、高温および高圧の冷媒が扁平伝熱管1の管内の冷媒流路を流れる。また、熱交換器10が、蒸発器として使用される場合は、低温および低圧の冷媒が扁平伝熱管1の管内の冷媒流路を流れる。熱交換器10は、図2に示される室内熱交換器110又は室外熱交換器203として用いられるものである。
【0025】
冷媒は、上述した空気調和装置1000を構成する四方弁202又は膨張弁120等の冷凍サイクルを構成する機器から熱交換器10に冷媒を供給する配管(図示せず)を介して、一方のヘッダー3に流入する。一方のヘッダー3に流入した冷媒は、分配されて各扁平伝熱管1を通過する。扁平伝熱管1は、管内を通過する冷媒と管外を通過する外部の大気である外気との間で熱交換を行う。このとき、冷媒は、扁平伝熱管1を通過する間に、外気に対して放熱または外気から吸熱する。冷媒の温度が外気の温度より高い場合には、冷媒は自身が持つ熱を外気に放出する。冷媒の温度が外気の温度より低い場合には、冷媒は、外気から熱を吸収する。扁平伝熱管1を通過して熱交換された冷媒は、他方のヘッダー3に流入し、合流する。そして、冷媒は、他方のヘッダー3に接続された配管を通って、外部装置に還流される。
【0026】
(コルゲートフィン2)
配列された複数の扁平伝熱管1の互いに対向する外側面1Aの間には、コルゲートフィン2が配置される。コルゲートフィン2は、熱交換器10の冷媒と外気との伝熱面積を広げるために設置される。コルゲートフィン2は、板材に対してコルゲート加工が行われ、山折りおよび谷折りを繰返すつづら折りに折り曲げられている。換言すると、図1に示す正面図においては、コルゲートフィン2は、波形状又は蛇腹形状となっている。ここで、コルゲートフィン2の折り曲げ部分は、波形状の頂部となる。実施の形態1において、コルゲートフィン2の頂部は、扁平伝熱管1の外側面1Aに沿って管軸方向に並んで配置されている。
【0027】
図3に示す様に、コルゲートフィン2は、対向する扁平伝熱管1の外側面1Aの間から空気の流通方向において上流側に突出している一端部分である前縁部2Bを除き、コルゲートフィン2において波形状の頂部2Aと扁平伝熱管1の外側面1Aとが接触している。そして、頂部2Aと外側面1Aとの接触部分は、ろう材によってろう付けされ、接合されている。
【0028】
コルゲートフィン2を構成する板材は、たとえば、アルミニウム合金を材質とする。そして、板材表面には、ろう材層がクラッドされている。クラッドされたろう材層は、たとえば、アルミシリコン系のアルミニウムを含むろう材を基本としており、ろう材層は、30μm~200μm程度である。
【0029】
波形に形成されているコルゲートフィン2の各頂部2Aの間の山腹、即ち各頂部2Aを接続する部分をフィン21と呼ぶ。各フィン21は、それぞれ表面から上方に突き出た凸部である伝熱促進部22および霜成長領域23を有する。伝熱促進部22は、各フィン21において空気の流通方向である奥行方向に複数並んで設けられる。
【0030】
伝熱促進部22は、フィン21から管軸方向に突出した伝熱促進凸部22Aと、空気又は結露水を通過させる開口部分22Bとを有している。開口部分22Bは、伝熱促進凸部22Aの直下に形成された開口である。また、各フィン21において、霜成長領域23は、奥行方向に伝熱促進部22と隣り合う位置に配置されている。霜成長領域23は、フィン21を貫通する孔であり、フィン21の表面に垂直な視点において、複数の扁平伝熱管1の並列方向に長く延びる長方形の孔である。また、霜成長領域23は、伝熱促進部22と平坦部24と挟まれて、伝熱促進部22と平坦部24とに隣合って配置されている。言い換えると、フィン21は、複数の開口部を有し、複数の開口部のそれぞれが部分的に上方を伝熱促進凸部22Aに覆われた構造を有している。そして、複数の開口部は、平坦部24と隣接して配置されている。また、複数の開口部は熱交換器10の奥行方向に並列されている。
【0031】
(伝熱促進部22及び霜成長領域23の作用)
熱交換器10が蒸発器として作用する場合、扁平伝熱管1およびコルゲートフィン2の表面は、熱交換器10を通過する空気の温度より低い。このため、空気中の水分が、扁平伝熱管1およびコルゲートフィン2の表面で結露し、凝縮水4が析出する。また、更に空気温度が低い場合には、コルゲートフィン2の表面温度が氷点下となり、コルゲートフィン2の表面に滞留する凝縮水4が凍結して霜となり、霜が成長し風路を塞ぐ。そのため、熱交換器10は、通風抵抗が増加し、熱交換器10を流れる空気風量が低下し、それにより、熱交換器10の性能が低下する虞がある。
【0032】
実施の形態1においては、コルゲートフィン2の各フィン21の表面に結露した凝縮水4は、伝熱促進部22の開口部分22Bおよび霜成長領域23に流れ、下部側のフィン21に流下する。その際、霜成長領域23と伝熱促進部22の開口部分22Bとを接続して連続的に設けることで、開口面積が大きくなる。このため、フィン21は、表面張力による凝縮水4の保持量が低減され、かつ排水速度を向上させることができる。また、コルゲートフィン2の各フィン21は、扁平伝熱管1の並列方向に平行ではなく、傾斜して配置されている。そのため、凝縮水排出ではフィン21の傾斜した表面を伝って、霜成長領域23から下方へ流れる。これにより、熱交換器10は、コルゲートフィン2に滞留する凝縮水4が少なく、排水速度向上に繋がる。
【0033】
コルゲートフィン2の表面温度が氷点下となる低温条件下においては、フィン21の表面に付着した水分が凍結し、霜として成長していく。特に熱交換器10に流れ込む空気の上流側に位置するフィン21の前縁部2Bほど熱伝達率が良いため、霜の成長が顕著になる。したがって、前縁部2Bの霜の成長により、空気の風路が閉塞し、熱交換器の性能が低下していく。しかし、実施の形態1では、あらかじめ霜が成長しやすい前縁部2Bに霜成長領域23を隣接させ、また霜が成長し易い伝熱促進部22にも連続して霜成長領域23が配置されているため、風路閉塞を遅らせることができ、熱交換器性能の低下を抑制することができる。すなわち、熱交換器10は、霜成長領域23を設けることにより着霜耐力が向上する。特に、熱交換器10において最も風上側にある伝熱促進部22においては空気とフィン表面との温度差が風下側の伝熱促進部22と比較して大きいため、着霜量が大きくなる。従って、実施の形態1に係る熱交換器10のフィン21のように霜成長領域23を確保することによって、排水速度の低下を抑え、風路閉塞も遅らせる効果が大きくなる。
【0034】
図4は、実施の形態1に係るコルゲートフィン2の上面図である。図4は、複数の扁平伝熱管1の管軸方向から見た図である。図4に示すA-Aは、複数の扁平伝熱管1の奥行方向の中心を示している。また図4のB-Bは、コルゲートフィン2を挟む2つの扁平伝熱管1の間の中心を示している。前述したように伝熱促進部22を挟み込むように霜成長領域23が設けられている。これにより結露水が生じ易い伝熱促進部22の両側に配置された霜成長領域23から下方に排水されるため、排水が促進される。また、低温条件下においては、伝熱促進部22の両側の空間である霜成長領域23において着霜が成長するため、複数の扁平伝熱管1の間の通風性が損なわれにくく、熱交換器10の着霜耐力が向上する。
【0035】
図5は、実施の形態1に係るコルゲートフィン2のフィン21の変形例を示す上面図である。霜の成長は、伝熱促進部22のうち、熱伝達率の高い空気の流れの上流側に位置する前縁部2B側で顕著である。よって、例えば、図5に示すように霜成長領域23は、複数の伝熱促進部22の風上側にのみ設けられても良い。この場合、上面視においてフィン21に開口された孔である霜成長領域23が伝熱促進部22の上流側のみに形成されるため、伝熱面積の減少を抑制することができ、かつ着霜耐力を向上させることができる。
【0036】
図6は、実施の形態1に係るコルゲートフィン2の変形例を示す上面図である。図4および図5に示すフィン21では、一例として伝熱促進部22と霜成長領域23とが扁平伝熱管1の並列方向の幅寸法と位置とが同じ場合について示しているが、これに限るものではない。例えば、霜成長領域23の幅寸法が伝熱促進部22に対して異なるように構成されていても良い。つまり、霜成長領域23と伝熱促進部22とが、奥行方向に一部のみ重なっていても良い。また、隣合う伝熱促進部22が中心を並列方向にずらして配置されていても良い。
【0037】
製造上、コルゲートフィン2を形成する際に、霜成長領域23となる貫通孔27(図16参照)を形成する工程と、伝熱促進部22の伝熱促進凸部22Aをフィン21の表面から突出させて形成する工程とが必要となる。図6に示すようなフィン21の構造の場合、霜成長領域23を打ち抜くための金型と、伝熱促進部22を形成するための金型とは、幅方向にずれた位置においてフィン21に押し付け、力を加える必要がある。仮に、霜成長領域23と伝熱促進部22とが奥行方向に一部のみ重なるように配置された場合、霜成長領域23を形成する金型と伝熱促進部22を形成する金型とは扁平伝熱管1の並列方向にずらしてフィン21に押し付けられる。このとき、2つの金型がずれていると成形時にフィン21に反りが発生しやすいが、霜成長領域23と伝熱促進部22の水平方向の中心位置が揃っていると、形状形成の過程においてフィン21の反りが抑制されやすいという利点がある。
【0038】
図7は、実施の形態1に係るコルゲートフィン2のフィン21の変形例を示す上面図である。実施の形態1においては、図4図6に示すように霜成長領域23の形状は、長方形状であるが、長方形状のものに限定されない。例えば、発明者らの解析と実験により明らかになった霜の成長分布を考慮し、霜成長領域23は、図7に示すように2つの扁平伝熱管1のそれぞれから離れるに従い奥行方向の開口幅が小さくなるように構成されている。図7に示す霜成長領域23の形状によれば、フィン21による熱交換効率の低い領域ほど奥行方向の開口幅が狭くなっており、開口面積が小さい。そのため、2つの扁平伝熱管1から離れた領域において伝熱面積の低下を抑制しつつ、着霜耐力を効率的に上げることができる。
【0039】
図8は、実施の形態1に係るフィン21の断面構造の説明図である。図8は、フィン21に垂直な断面を示しており、図4のB-B部に相当する断面におけるフィン21の形状パターンの概略を示したものである。前述したように、伝熱促進部22はフィン21の表面から突出しており、熱交換器10を通過する外気の風路に突き出すようにして設けられている。このように形成されることにより、伝熱促進部22は、2つの扁平伝熱管1の間の風路において空気の温度境界層を乱すことにより伝熱を促進している。
【0040】
霜成長領域23は、伝熱促進部22に対し空気の流れの上流側又は上流側と下流側との両方に配置される。霜成長領域23は、フィン21に貫通して設けられた孔である。霜成長領域23の下流側には、平坦部24が配置されている。そして、平坦部24の下流側にも霜成長領域23が配置されている。つまり、平坦部24も上流側および下流側の両方に霜成長領域23が配置されている。
【0041】
霜成長領域23は、フィン21の表面に開口された孔であり、少なくとも伝熱促進部22の上流側に隣接して配置されている。伝熱促進部22は、フィン21の一部分を平坦部24に対して上方に持ち上げて変形させて形成された伝熱促進凸部22Aを有する。伝熱促進凸部22Aの下部には開口部分22Bが形成される。霜成長領域23は、伝熱促進部22の下部の開口部分22Bと連続して一体の開口を形成している。つまり、伝熱促進凸部22Aは、フィン21に設けられた開口部の上方にまたがるように配置されている。
【0042】
図9は、実施の形態1に係るフィン21の比較例であるフィン121の断面構造の説明図である。従来の熱交換器においては、フィン121の一部を切り起こすようにしてルーバー122が形成されている。従来のルーバー122は、フィン21を構成する板材に切り込み125を設け、プレス加工で平坦な板面を起こすことにより、切り込み125をフィン21の板面に垂直方向に広げることにより形成される。よって、ルーバー122の風上側に位置する前縁部122aと平坦部121aとの間には、平坦部121aに対して垂直方向に開口部122Bが形成される。しかし、従来のルーバー122は、平坦部121aに垂直な方向から見た時に開口部122Bが見えないか、見えたとしても微小な隙間として見えるだけである。
【0043】
これに対して、実施の形態1に係る熱交換器10においては、図4図7に示す様に、フィン21の面に垂直な方向から見て開口である霜成長領域23が視認できる。この開口は、例えば、フィン21の面に垂直な方向から見たときに、奥行方向において0.5mm、望ましくは1mm以上の幅の開口であり、伝熱促進部22の少なくとも上流側に配置されている。つまり、実施の形態1においては、フィン21の表面を切り起こすのではなく、伝熱促進部22の伝熱促進凸部22Aと霜成長領域23としての孔とが奥行方向に並列して配置されている。よって、管軸方向からみて、フィン21は、霜成長領域23が孔として視認できる。
【0044】
ここで、図8に示すように、通風方向、つまり奥行方向において、霜成長領域の長さL、伝熱促進部22と霜成長領域23との中心間距離をL、伝熱促進部22の長さL、平坦部24長さL、フィン全長Lと定義する。
【0045】
図8に示すような熱交換器10のフィン21において、着霜耐力を向上しつつ、除霜運転時の排水性を向上させるには、霜成長領域23を伝熱促進部22に比べてある程度の大きさとすることが望ましい。具体的には、L>L/7、望ましくはL>L/6とするのが好ましい。霜成長領域23の長さLと伝熱促進部22の長さLとをこの関係を満たすように設定することにより、着霜耐力を向上させつつ、霜成長領域23において排水性が高くなる。これにより、熱交換器10が低温下において蒸発器として機能する場合に着霜耐力が向上するため、空気調和装置1000は、暖房低温能力が向上する。
【0046】
図10は、実施の形態1に係る熱交換器10における霜成長領域の幅と排水性の関係を示す図である。図10は、LをL/5~L/7の範囲に設定したときの排水性を示したグラフであり発明者らが開発した二相流3次元解析の結果を示したものである。熱交換器10の排水性は、熱交換器10を水槽に浸漬し、それを引き上げた際に、熱交換器10に保持される水量を任意時間で算出した結果を比較したものである。つまり、図10は、排水性が大きいものほど、排水速度が速いことを示している。
【0047】
図10に示すように、霜成長領域23の奥行方向の長さであるSの割合が伝熱促進部22の奥行方向の長さLに対して相対的に大きくなることによって排水性は向上し、L>L/7で急激に排水性が向上する。これは、霜成長領域23の長さLがある程度大きくなると平坦部24と伝熱促進部22との間の水の表面張力によるブリッジが抑制されるためであると考えられる。
【0048】
なお、霜成長領域23の奥行方向の長さLは好ましくはL/6以上となるように設定されると良い。また、フィン21をロール成形するためには、フィン21を構成する板材は、ある程度の剛性及び強度が必要である。実施の形態1に係るコルゲートフィン2において、これを満足させるためには、霜成長領域23の長さLは、平坦部24の長さLよりも小さい方が良い。従って、実施の形態1においては、フィン21の寸法関係は、L≦Lを満足する方が好ましい。つまり、霜成長領域23の奥行方向の長さは、L/7<L≦Lとなるように設定される。
【0049】
さらには、実施の形態1に係る熱交換器10において、着霜耐力を向上させるには霜成長領域平坦部24の奥行方向の長さLに対しある程度の大きさが必要となる。具体的には、L≧L/4、望ましくはL≧L/3とするのが良い。
【0050】
実施の形態1においてフィン21は、霜成長領域23を設けているため、平坦部長さLおよび伝熱促進部長さLの総和がフィン全長Lよりも小さくなる。すなわち、伝熱促進部22を仮想的に平坦部24と同じ高さにしたとき、フィン全長Lに対して複数の霜成長領域23の長さLの総和の分だけ、フィン21の長さが短くなっている。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態2に係る熱交換器10について説明する。実施の形態2に係る熱交換器10は、実施の形態1に係る熱交換器10に対し、伝熱促進部22の形状を変更したものである。実施の形態2においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0052】
図11は、実施の形態2に係るフィン21の構造の一例を示したものである。実施の形態2では、伝熱促進部22は、フィン21の表面から突出した伝熱促進凸部222Aの先端面が平坦面ではなく、並列方向に垂直な断面において中央部が凸となっている湾曲面を備える。このような形状とすることで、伝熱促進部22の伝熱促進凸部222Aの上面において凝縮水4の滞留を抑制し、排水性を向上させることができる。また、熱交換器10を通過する空気が、伝熱促進凸部22Aの上面に形成された湾曲面を通過する際に、乱流が促進され、熱交換性能が向上する。
【0053】
実施の形態3.
実施の形態3に係る熱交換器10について説明する。実施の形態3に係る熱交換器10は、実施の形態1に係る熱交換器10に対し、伝熱促進部22の形状を変更したものである。実施の形態3においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0054】
図12は、実施の形態3に係るフィン21の一例を示したものである。実施の形態3では、隣り合う伝熱促進部22が、図12に示す伝熱促進部22p及び22qのように扁平伝熱管1の並列方向にずれて形成されている。このようにすることで、伝熱促進部22の前縁効果を大きくすることができる。つまり、フィン21においては空気の上流側において熱交換効率が大きく着霜が生じ易いが、各伝熱促進部22は、前縁側において排水性が高く着霜しても通風性が損なわれにくく、低圧損で熱交換器の性能を向上させることができる。また、霜成長領域23は前縁効果が大きい実施の形態3のような場合に着霜耐力の向上効果がより大きくなる。
【0055】
実施の形態4.
実施の形態4に係る熱交換器10について説明する。実施の形態4に係る熱交換器10は、実施の形態1に係る熱交換器10に対し、伝熱促進部22の形状を変更したものである。実施の形態4においては実施の形態1からの変更点を中心に説明する。
【0056】
図13は、実施の形態4に係るフィン21の断面形状の一例を示した説明図である。実施の形態4では、伝熱促進部22および平坦部24は傾斜面を有しており、いわゆるルーバー形状となっているものである。つまり、実施の形態4においては、伝熱促進部422の伝熱凸部422Aが傾斜しており、奥行方向において一方の端部422aが平坦部24の表面よりも上方に位置し、他方の端部422bが平坦部24の表面よりも下方に位置する。または、伝熱凸部422Aの端部422a及び422bは、平坦部24と同じ高さにあっても良い。
【0057】
伝熱促進部422の上流側および下流側には霜成長領域423が配置され、実施の形態1~3のフィン21における霜成長領域23と同様に、フィン21の面に垂直な方向から見たときに、奥行方向において0.5mm、望ましくは1mm以上の幅の開口が確保されている。
【0058】
図9に示すように、従来のコルゲートフィンは、フィン121に切り込み125を形成してルーバー122を形成するのに対し、実施の形態4に係るフィン21においては、霜成長領域423をフィン21に孔として設けることにより、伝熱促進部422の伝熱凸部422A同士の間隔が大きくなる。よって、ルーバー間の空間を広くとることができ、伝熱促進を図りつつ、凝縮水の排水性向上と着霜耐力の向上を図ることができる。
【0059】
特に、伝熱促進効果の高いルーバー122を有するフィン121においては、隣り合うルーバー122間の前縁部122a、即ちルーバー122の上流側の部分で霜の成長が顕著になる。これにより、風路閉塞が生じ、低温条件下での熱交換器の性能低下を引き起こす原因となる。しかし、実施の形態4に係る熱交換器410は、霜成長領域423を設けており、この霜成長領域423は図13に示す断面において奥行方向に長さLを有する。そして、奥行方向に2つ並んだ伝熱促進部422の一方の上流側端部422aと他方の下流側端部422bとの奥行方向の距離がLとなっている。これにより、霜の成長が顕著な伝熱促進部422の上流側端部422aにおいて霜が成長できる空間が大きく、風路閉塞を抑制できる。
【0060】
フィン21の奥行方向の中央付近には、平坦部24が設けられていても良い。平坦部24の上流側又は下流側には排水性向上を目的とした霜成長領域423Aが、奥行方向の長さLで形成されている。フィン21の奥行方向の中央部にも霜成長領域423Aが形成されているため、排水性が更に向上する。
【0061】
実施の形態4に係るフィン21は、伝熱促進部422が傾斜しているが、仮想的にルーバー角度を0°にしたときに、(フィン21の奥行方向の全長L-霜成長領域23の奥行方向長さLの総和)>(傾斜部長さLの総和+平坦部長さLの総和)の関係を満足するものである。また、ルーバーである伝熱促進部422は、奥行方向中央部に対し対称に配置されている。伝熱促進部422は、中央部付近の平坦部24の霜成長領域423Aを挟んで向かい合うように形成されている。
【0062】
図13において、中央部に対し対称の位置に配置されている伝熱促進部422の板厚方向の中心線を伸ばした仮想線Pを定義したとき、仮想線Pがフィン21の下方で交わるように伝熱促進部422の向きが設定されている。この構成によれば、伝熱促進部422に沿って凝縮水がフィン21の中央部分に集まってくるため、上下方向に複数並んだフィン21のそれぞれで中央部に凝縮水が集まり、平坦部24の周囲の霜成長領域423Aに効率的に導水できる。これにより、熱交換器10は、排水性が向上する。実施の形態4においては、平坦部24及び霜成長領域423Aを複数設置する場合について説明したが、平坦部24及び霜成長領域423Aの個数や形状は限定されるものではない。
【0063】
霜成長領域423を挟んで伝熱促進部422に隣合って配置されている平坦部24は、霜成長領域423側の端部に傾斜部424aを備えていてもよい。傾斜部424aは、伝熱促進部422の傾斜と同じ角度及び同じ向きに形成されていると良い。
【0064】
実施の形態5.
実施の形態5に係る熱交換器10について説明する。実施の形態5においては、実施の形態1~4の熱交換器10のフィン21の製造方法の一例を説明する。
【0065】
図14は、実施の形態5に係るコルゲートフィン2を製造する装置の構造の説明図である。具体的には、実施の形態1~実施の形態4に係るコルゲートフィン2を製造するための、穴あけローラー500の一例を示したものである。穴あけローラー500は、コルゲートフィン2となる板材521(図16参照)に、貫通孔27(図16参照)を設けることにより霜成長領域23を形成する。上下方向に配置された第1ローラーカッター501と第2ローラーカッター502との間にコルゲートフィン2となる板材521を供給すると、ローラー間の嵌めあいにより、板材521の一部に、霜成長領域23となる貫通孔27を形成することができる。
【0066】
第1ローラーカッター501と第2ローラーカッター502とは、回転軸が平行に配置されており外周に板材521を加工するカッター501a、502aを有する。第1ローラーカッター501と第2ローラーカッター502とは、回転軸間の距離が所定に設定され、カッター501a及び502aの間を板材521が通ることによって、板材を打ち抜き又は曲げるものである。図14に示す第1ローラーカッター501及び第2ローラーカッター502は一例として打ち抜きにより霜成長領域23を形成する。
【0067】
第1ローラーカッター501と第2ローラーカッター502とは、それぞれが有するカッター501a及び502aの回転方向における間隔を変化させることにより、加工された板材に、水平方向の間隔が異なる霜成長領域23を形成することもできる。このとき、第1ローラーカッター501及び第2ローラーカッター502は、1回転が1周期となり、形成される貫通孔27の間隔の変化が周期的に同じになる。
【0068】
例えばローラーの周の長さをコルゲートフィン2の長さよりも長くなるようにすれば、コルゲートフィン2に形成される霜成長領域23の間隔がすべて異なるように加工することもできる。このように、穴あけローラー500を用いて、コルゲートフィン2の霜成長領域23を形成することで、コルゲートフィン2を製造する際の加工スピードを通常のプレス加工よりも速くすることができる。なお、図14に示す様に、コルゲートフィン2を製造する装置は、制御装置590を備える。制御装置590は、第1ローラーカッター501及び第2ローラーカッター502の回転速度及び板材521の送り速度等の加工条件を制御するものである。
【0069】
図15は、実施の形態5に係るコルゲートフィン2の加工工程のフローの一例である。まず、コルゲートフィン2を構成する板材521に貫通孔27を形成する(ステップS01)。貫通孔27は、例えば図14に示す穴開けローラー500により形成される。この工程を穴開け工程と呼ぶ。そこを起点に、霜成長領域23で挟まれた平坦部分に凸状成形又はルーバー成形などを加えることにより伝熱促進部422を形成する(ステップS02)。この工程を伝熱促進部形成工程と呼ぶ。その後に、コルゲートフィン2を構成する板材を波形状に折り曲げる(ステップS03)。この工程を折り曲げ工程と呼ぶ。その後、所望の長さに調整して切断する(ステップS04)。
【0070】
図16は、実施の形態5に係るコルゲートフィン2の加工工程の説明図である。ステップS01は、コルゲートフィン2を構成する平坦な板材521に霜成長領域23となる細長い長方形又は略長方形の貫通孔27を打ち抜いて形成する。図16において、板材521は、図中の白抜き矢印に沿って長い帯状の金属板である。貫通孔27は、長手方向を揃えて並べられた貫通孔群527ごとに板材521に形成され、板材521の長手方向(図16中の白抜き矢印方向)に順次連続的に形成される。
【0071】
ステップS02においては、細長い長方形の貫通孔27の長辺を形成する平坦部分28のうち少なくとも一方をもとの位置29からから板材521の表面に対し垂直方向に移動させ、図9又は図10に示される断面構造の伝熱促進部22を形成するように変形させる。つまり、平行に並んだ貫通孔27の間の平坦部分28を板材521の表面に対し垂直方向に起こすようにブリッジ形(ブリッジランスbridge lanceともいう)に変形させる。または、スリットの長辺を形成する平坦部分を元の位置29から傾斜させるように変形させ、図13に示す伝熱促進部22のようなルーバー状の構造に成形しても良い。
【0072】
ステップS02の成形は、図13に示される様なローラーにより行われ、2つのローラーの間に貫通孔27が形成された板材521を通し、伝熱促進部22を形成しても良い。伝熱促進部22を形成するローラーは、例えば図14の穴あけローラー500の下流に配置され、図14の穴開けローラー500を通過した板材521が連続的に供給されるように構成しても良い。
【0073】
また、貫通孔27を打ちぬく工程(ステップS01)及び貫通孔27の間の平坦部分28をその垂直方向に起きあがらせてブリッジ形に変形させる工程(ステップS02)を1つの工程で行ってもよい。例えば、図14の穴開けローラー500で、貫通孔27と伝熱促進部22の成形を同時に行っても良い。
【0074】
ステップS01及びステップS02において、板材521の穴あけ及び変形を実施したあとに、板材521は、図16(a)に示す直線mに沿って折り曲げられる。板材521は、図16(a)の白抜き矢印方向に送られ、順次貫通孔27の列の間の仮想線である直線mに沿って折り曲げられる(ステップS03)。そして、折り曲げられた板材521は、所定の長さで切断されコルゲートフィン2が形成される(ステップS04)。
【0075】
以上のように形成されたコルゲートフィン2を扁平伝熱管1の間に挟み、ろう付け等によりコルゲートフィン2の波形に曲げた頂部2Aを扁平伝熱管の外側面1Aに接合させる。また、扁平伝熱管1の両端は、ヘッダー3A,3Bに設けられた差込み孔差し込まれた状態でろう付け接合される。このようにして熱交換器10が完成する。
【0076】
実施の形態5に係る熱交換器10の製造方法によれば、コルゲートフィン2は、貫通孔27と伝熱促進部22の成形とを連続的に高精度で行えるため、実施の形態1~4に示すコルゲートフィン2の製造が容易に早く行える。
【0077】
従来は貫通孔27と伝熱促進部22の成形とを連続的に実施するのが困難であり、例えば比較例のフィン121のように、板材に切り込み125を入れてその切り込み125を板材の表面に垂直方向に開くことによりルーバー122を形成して開口部122Bを形成していたため、フィン121を有するコルゲートフィン2の排水性及び着霜耐力は低かった。しかし、実施の形態5に係る熱交換器10の製造方法によれば、貫通孔27と伝熱促進部22の成形を同期させて、高精度に行うことにより、コルゲートフィン2の通風方向において伝熱促進部22の少なくとも一方の端部に隣接して霜成長領域23を設けることができる。これにより、実施の形態1~4に係る霜成長領域23を備えるフィン21の構造が実現可能となった。
【0078】
ここで、同期の方法の一例としては、CCDカメラ等の図14に示されている撮像装置580を活用し、CCDカメラから得られる画像に画像処理を施しながら、貫通孔27の形成位置及び形成位置のばらつきをモニターする。貫通孔27の形成位置及び形成位置のばらつきを把握しながら、貫通孔27と伝熱促進部22とが連続的に形成される様に材料の送り速度及びローラー500の回転速度を調整する。または、画像から得られた貫通孔27の形成位置の情報、材料の送り速度及びローラー500の回転速度等の加工条件並びに伝熱促進部22の形状の精度のデータセットを教師データとし、AIを活用した機械学習により、材料の送り速度及びローラー500の回転速度等の加工条件を調整するタイミングを最適化することもできる。
【0079】
熱交換器10の製造方法において、穴開け工程及び伝熱促進部形成工程は、連続的に行われる。そのため、材料の送り速度及びローラー500の回転速度のばらつきによっては、穴開け工程における貫通孔27の位置ずれが生じ、また伝熱促進部形成工程における伝熱促進部22の成形の位置のばらつきが生じ、伝熱促進部22の成形が貫通孔27に対してずれて行われる場合が想定される。特に、材料は一方向にある設定された速度で次の工程に送られるため、貫通孔27の位置並びに加工された伝熱促進部22の形状及び位置は、材料の送り方向にばらつきを生ずる。
【0080】
例えば、CCDカメラを穴開け工程と伝熱促進部形成工程との間に配置して貫通孔27が形成された材料の表面を撮影する。また、CCDカメラを伝熱促進部形成工程の後に配置して、伝熱促進部22が成形された材料表面を撮影する。これらのCCDカメラの画像に画像処理を施し、例えば、貫通孔27の位置と伝熱促進部22の形成位置とのずれ量等の位置精度データを把握して、これと材料の送り速度及びローラー500の回転速度等の加工条件の情報をラベル付きデータとして、モデルに機械学習させる。また、材料の送り速度及びローラー500の回転速度以外の加工条件の情報である、温度及び板材521の厚み等の加工条件の情報をラベル付きデータに加えてモデルの機械学習を行っても良い。
【0081】
また、モデルは、穴開け工程及び伝熱促進部形成工程において、実際にCCDカメラからの画像から貫通孔27の位置と伝熱促進部22の形成位置とのずれ量を把握し、そのずれ量に基づき材料の送り速度及びローラー500の回転速度等の加工条件を調整する。その調整内容は、上述した機械学習によりAIが判断する。なお、機械学習は、穴開け工程及び伝熱促進部形成工程を実施しながら得られた画像に基づく加工精度のデータ及び加工条件をモデルにフィードバックし、加工と同時進行で反映するようにしてもよい。
【0082】
モデルは、例えばコルゲートフィン2を製造する装置の制御装置590内において実現されても良いし、装置に接続された電子計算機において実現されていても良い。モデルは、穴開け工程及び伝熱促進部形成工程を行っている実際の加工条件及び画像等のデータから、適切な加工条件を判断する。モデルが最適として判断した加工条件の情報は、制御装置590からコルゲートフィン2を製造する装置のローラー500及び伝熱促進部形成工程を行う装置に指示が送られ、加工条件が制御される。制御装置590は、モデルによる最適な加工条件の判断結果を受け、常時加工条件を監視、制御しても良いし、所定の時間間隔で加工条件を修正する様にしても良い。
【0083】
以上のように、本開示の実施の形態1~5について説明したが、実施の形態1~5は、熱交換器10、冷凍サイクル装置及び熱交換器の製造方法の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることもできる。また、熱交換器10は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略変更することもできる。
【0084】
実施の形態1~5において説明した熱交換器10においては、フィン21に設けられた霜成長領域23及び伝熱促進部22の位置が、フィン21の空気の流れの方向、即ち奥行方向の中央に対し対称な位置に配置されていることが望ましい。つまり、フィン21は、図4図7及び図12において示されているA-Aを中心にして対称な形状であることが望ましい。霜成長領域23及び伝熱促進部22を中心線に対して左右対称になるように配置することにより、穴開け工程及び伝熱促進部形成工程を行う際に、板材521をまっすぐ供給し易くなり、板材521が材料の送り方向に対し左右にずれることなく、精度良く貫通孔27及び伝熱促進部22を成形できる。
【符号の説明】
【0085】
1 扁平伝熱管、1A 外側面、1B 穴、2 コルゲートフィン、2A 頂部、2B 前縁部、3 ヘッダー、3A ヘッダー、3B ヘッダー、4 凝縮水、10 熱交換器、21 フィン、21A 表面、22 伝熱促進部、22A 伝熱促進凸部、22B 開口部分、22p 伝熱促進部、22q 伝熱促進部、23 霜成長領域、24 平坦部、27 貫通孔、28 平坦部分、100 室内機、110 室内熱交換器、120 膨張弁、121 フィン、121a 平坦部、122 ルーバー、122B 開口部、122a 前縁部、125 切り込み、130 室内ファン、200 室外機、201 圧縮機、202 四方弁、203 室外熱交換器、204 室外ファン、210 熱交換器、222A 伝熱促進凸部、300 ガス冷媒配管、310 熱交換器、400 液冷媒配管、410 熱交換器、422 伝熱促進部、422A 伝熱凸部、422a 上流側端部、422b 下流側端部、422c 端部、422d (他方の)端部、423 霜成長領域、423A 霜成長領域、500 ローラー、501 第1ローラーカッター、501a カッター、502 第2ローラーカッター、502a カッター、510 熱交換器、521 板材、527 貫通孔群、580 撮像装置、590 制御装置、1000 空気調和装置。
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