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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】空調システムおよび空調管理システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/63 20180101AFI20250418BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20250418BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20250418BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20250418BHJP
   F24F 11/79 20180101ALI20250418BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20250418BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20250418BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20250418BHJP
【FI】
F24F11/63
F24F11/64
F24F11/72
F24F11/74
F24F11/79
F24F11/80
F24F110:10
F24F110:20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023567327
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2021046007
(87)【国際公開番号】W WO2023112137
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲雑▼賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 久登
(72)【発明者】
【氏名】菊地 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鶴島 誠也
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-339496(JP,A)
【文献】特開2017-096511(JP,A)
【文献】特開2021-006755(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203603(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230201(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/245986(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112361560(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間が分割された複数の区画のうちの一部または全部の区画に設置され、調和空気を吹き出す1または複数の空調機器と、
それぞれの前記区画に設置され、前記空調対象空間を形成する壁面または天井面の温度である壁面温度を計測する複数の温度センサと、
それぞれの前記区画に設置され、前記区画内の空気温度および空気湿度を計測する複数の温湿度センサと、
前記壁面温度と、前記空気温度および前記空気湿度に対応する露点温度とに基づき、前記空調機器を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記壁面温度と前記露点温度との温度差に基づき、それぞれの前記区画の結露状態を判断し、
結露が発生すると判断された区画が複数存在する場合に、前記結露が発生すると判断された複数の前記区画に対して、前記温度差が小さいほど高くなる優先度を設定し、
前記優先度の高い区画から順に、前記空調機器を制御して結露を緩和させる結露緩和制御を行う
空調システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記空気温度および前記空気湿度に基づき、前記露点温度を取得する演算部と、
前記壁面温度および前記露点温度に基づき、それぞれの前記区画の前記結露状態を判断する領域判断部と、
前記結露状態に基づき、前記結露緩和制御を行う空調制御部と
を有する
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記領域判断部は、
前記壁面温度が前記露点温度以下である場合に、対象の前記区画が結露発生領域に含まれると判断し、
前記壁面温度が前記露点温度より高く、前記露点温度に第1分類値を加算した温度以下である場合に、対象の前記区画が第1結露可能性領域に含まれると判断し、
前記壁面温度が前記露点温度に前記第1分類値を加算した温度より高く、前記露点温度に前記第1分類値および第2分類値を加算した温度以下である場合に、対象の前記区画が第2結露可能性領域に含まれると判断し、
前記空調制御部は、
前記結露発生領域、前記第1結露可能性領域または前記第2結露可能性領域に含まれる場合に、
前記対象の区画に向けて前記空調機器から前記調和空気を吹き出す前記結露緩和制御を行う
請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記空調制御部は、
前記対象の区画が前記結露発生領域または前記第1結露可能性領域に含まれる場合に、前記空調機器から前記調和空気を全速で吹き出す第1の結露緩和制御を行い、
前記対象の区画が前記第2結露可能性領域の場合に、前記空調機器から前記調和空気を全速よりも遅い速度で吹き出す第2の結露緩和制御を行う
請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記空調制御部は、
前記対象の区画内の温度変化が安定している場合と、前記対象の区画内の温度変化が安定していない場合とで、前記第1分類値および前記第2分類値のうちの少なくとも一方を変化させる
請求項3又は4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記空調制御部は、
前記対象の区画内の温度変化が設定範囲内に含まれる場合、前記第1分類値および前記第2分類値のうちの少なくとも一方を基準値よりも小さくする
請求項5に記載の空調システム。
【請求項7】
前記空調制御部は、
前記対象の区画内の温度変化が設定範囲を超える場合、前記第1分類値および前記第2分類値のうちの少なくとも一方を基準値よりも大きくする
請求項5又は6に記載の空調システム。
【請求項8】
前記領域判断部は、
前記壁面温度が前記露点温度に第1分類値および第2分類値を加算した温度より高い場合に、対象の前記区画が第3結露可能性領域に含まれると判断し、
前記空調制御部は、
前記対象の区画が前記第3結露可能性領域に含まれる場合に、前記空調機器から吹き出される前記調和空気の風速を維持する
請求項2~のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項9】
前記区画内の状態を報知する報知手段をさらに備え、
前記制御装置は、
対象の前記区画が前記第1結露可能性領域または前記第2結露可能性領域に含まれなくなるまで前記結露緩和制御を繰り返し行い、
前記結露緩和制御の回数が設定回数を超えた場合に、前記区画内における設定温度の変更の可否を前記報知手段によって報知する
請求項3、4、5、6、7、または、請求項3、4、5、6、もしくは7に従属する請求項のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記設定温度の変更を行っても対象の前記区画が前記第1結露可能性領域または前記第2結露可能性領域に含まれる場合に、結露の発生を抑制できないことを前記報知手段によって報知する
請求項に記載の空調システム。
【請求項11】
前記演算部は、
前記領域判断部での判断結果に基づき、それぞれの前記区画における単位期間での結露可能性領域発生率を演算し、
前記制御装置は、
演算された前記結露可能性領域発生率に基づき、それぞれの前記区画における前記単位期間での前記結露可能性領域発生率を学習する解析部をさらに有する
請求項2~10のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項12】
前記演算部は、
前記露点温度および前記壁面温度を入力データとし、前記結露緩和制御を行った場合の結露発生の抑制状態を教師データとして、前記区画毎において前記空調機器から吹き出される前記調和空気の風速を学習する
請求項11に記載の空調システム。
【請求項13】
複数の前記空調対象空間にそれぞれ設けられた請求項1~12のいずれか一項に記載の空調システムと、
複数の前記空調システムを一元管理する集中管理装置と
を備える
空調管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調対象空間の空調を行う空調システムおよび空調管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、室内の換気需要が高まっている。室内を換気する場合には、外気を室内に流入させる必要があるが、高温高湿の外気が室内に流入した場合、壁面あるいは天井面等に結露が発生し、カビ等が増殖して衛生的環境が悪化する可能性がある。
【0003】
例えば、天井裏に室内ユニットが設けられた空気調和機では、室内ユニットによって吸い込まれた室内空気を室内熱交換器で熱交換して冷却し、天井裏に配置された通気ダクトを介して、冷却された空気を室内に供給する。このような空気調和機では、天井裏の環境が高温高湿となった場合に、冷却された空気が通過する通気ダクトの表面に結露が発生することがある。そして、発生した露は、通気ダクトから落下して天井を濡らし、天井のシミとなったり、室内に漏洩したりする可能性がある。
【0004】
そこで、最近では、結露の発生による衛生的環境の悪化を抑制することができる種々の空調機器が提案されている。例えば、特許文献1には、天井裏に温度センサおよび湿度センサを設置し、天井裏の空気の温度および湿度に応じて圧縮機の運転周波数を制御する空気調和機が開示されている。この空気調和機は、温度センサおよび湿度センサで検出された温度および湿度が設定値よりも高い場合に、通気ダクトを通過する空気の温度を高くして通気ダクトの外面温度を上げる。これにより、天井裏の空気が高温高湿であっても、通気ダクト表面への結露の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-336888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の空気調和機では、天井裏等の通気ダクトが設置された箇所に発生する結露を抑制することはできる。しかしながら、この空気調和機では、室内全体等の温度センサおよび湿度センサで温度および湿度を検出しにくい局所的な箇所での結露の発生を抑制することは困難である。
【0007】
本開示は、上記従来の技術における課題に鑑みてなされたものであって、空調対象空間における結露の発生を抑制することができる空調システムおよび空調管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る空調システムは、空調対象空間が分割された複数の区画のうちの一部または全部の区画に設置され、調和空気を吹き出す1または複数の空調機器と、それぞれの前記区画に設置され、前記空調対象空間を形成する壁面または天井面の温度である壁面温度を計測する複数の温度センサと、それぞれの前記区画に設置され、前記区画内の空気温度および空気湿度を計測する複数の温湿度センサと、前記壁面温度と、前記空気温度および前記空気湿度に対応する露点温度とに基づき、前記空調機器を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記壁面温度と前記露点温度との温度差に基づき、それぞれの前記区画の結露状態を判断し、結露が発生すると判断された区画が複数存在する場合に、前記結露が発生すると判断された複数の前記区画に対して、前記温度差が小さいほど高くなる優先度を設定し、前記優先度の高い区画から順に、前記空調機器を制御して結露を緩和させる結露緩和制御を行うものである。
【0009】
本開示に係る空調管理システムは、複数の前記空調対象空間にそれぞれ設けられた上記の空調システムと、複数の前記空調システムを一元管理する集中管理装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、空調対象空間が分割された複数の区画のそれぞれにおける壁面温度および露点温度との関係から結露状態が判断され、判断結果に応じて空調機器が制御される。これにより、結露が発生している区画または結露の発生する可能性が高い区画に対して空調機器からの送風が行われ、対象の区画における空気の循環が促される。そのため、結露が発生している区画または結露の発生する可能性が高い区画を含む空調対象空間における結露の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る空調システムの設置例を示す概略図である。
図2】空調対象空間について説明するための概略図である。
図3図1の制御装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4図3の制御装置の構成の一例を示すハードウェア構成図である。
図5図3の制御装置の構成の他の例を示すハードウェア構成図である。
図6】実施の形態1に係る空調機器である空気調和機の構成の一例を示す回路図である。
図7】露点温度の取得について説明するためのグラフである。
図8】露点温度と壁面温度との関係について説明するためのグラフである。
図9】実施の形態1に係る結露抑制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】実施の形態2に係る制御装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図11】結露可能性領域発生率について説明するためのグラフである。
図12】実施の形態3に係る空調管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0013】
実施の形態1.
本実施の形態1に係る空調システムについて説明する。本実施の形態1に係る空調システムは、空調対象空間における結露の発生を抑制するものである。
【0014】
[空調システム100の構成]
図1は、本実施の形態1に係る空調システムの設置例を示す概略図である。図2は、空調対象空間について説明するための概略図である。図1に示すように、空調システム100は、1または複数の空調機器1、複数の温度センサ2、複数の温湿度センサ3および制御装置4を含んで構成されている。空調システム100を構成する各機器は、店舗または倉庫等の壁面および天井面等によって形成される空調対象空間50に設置されている。
【0015】
図2に示すように、本実施の形態1では、店舗または倉庫等の空調対象空間50は、幅方向、高さ方向および奥行き方向に複数の区画に分割される。図1では、空調対象空間50が4つの区画である空調対象空間50A、50B、50Cおよび50Dに分割された場合の例が示されている。
【0016】
空調機器1は、例えば、空気調和機、冷凍機および除湿機等の調和空気を吹き出す機器であり、空調対象空間50の空気調和を行う。空調機器1は、分割された区画のうちの一部または全部の区画に設置されている。図1に示す例では、空調機器1として2つの空調機器1Aおよび1Bが空調対象空間50に設置されている。空調機器1Aは、例えば空気調和機であり、空調対象空間50A内に設置されている。空調機器1Bは、例えば除湿機であり、空調対象空間50D内に設置されている。
【0017】
空調機器1は、室内空気を吸い込む吸込口と、調和空気を吹き出す吹出口とが設けられている。吹出口には、吹き出される調和空気の吹出方向を上下左右方向に変更するルーバーが設けられている。ルーバーの動作は、空調制御装置10によって制御される。
【0018】
温度センサ2は、空調対象空間50の分割された各区画において、結露が最も発生しやすい箇所に設けられている。例えば、区画内にショーケースが設置されている場合、結露が最も発生しやすい箇所は、ショーケース近傍の局所的に温度が上昇しやすい壁面、あるいは、ショーケース上の天井面等である。温度センサ2は、このように壁面または天井面に設けられる。また、温度センサ2は、例えば、ショーケースの側面等の外周面に設けられてもよい。
【0019】
温度センサ2は、設置された壁面または天井面の温度である壁面温度を計測する。図1に示す例では、分割された空調対象空間50A~50Dのそれぞれに、温度センサ2A~2Dが設けられている。なお、分割された区画内にショーケース等が設置されておらず、また、壁面および天井面が存在しない場合、このような区画には温度センサ2が設けられていなくてもよい。
【0020】
温湿度センサ3は、空調対象空間50の分割された各区画にそれぞれ設けられている。温湿度センサ3は、設置された空間の温度である空気温度と、当該空間の湿度である空気湿度とを計測する。図1に示す例では、分割された空調対象空間50A~50Dのそれぞれに、温湿度センサ3A~3Dが設けられている。
【0021】
制御装置4は、この空調システム100における各機器を制御する。特に、本実施の形態1において、制御装置4は、温度センサ2で計測された壁面温度と、温湿度センサ3で計測された空気温度および空気湿度とに基づき、空調対象空間50での結露の発生を抑制する結露抑制処理を行う。結露抑制処理の詳細については、後述する。
【0022】
図3は、図1の制御装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。図3に示すように、制御装置4は、情報取得部41、演算部42、領域判断部43、空調制御部44、カウンタ45および記憶部46を備えている。制御装置4は、マイクロコンピュータなどの演算装置上でソフトウェアを実行することにより各種機能が実現され、もしくは各種機能を実現する回路デバイスなどのハードウェア等で構成されている。なお、ここでは、制御装置4が有する機能のうち、本実施の形態1において特徴的な処理に関連する機能についてのみ説明する。
【0023】
情報取得部41は、温度センサ2で計測された各区画の壁面温度を取得する。また、情報取得部41は、温湿度センサ3で計測された各区画の空気温度および空気湿度を取得する。
【0024】
演算部42は、情報取得部41で取得された空気温度および空気湿度に基づき、露点温度を取得する。具体的には、演算部42は、予め設定された設定計測時間の間に、温湿度センサ3によって予め設定された設定時間間隔で計測された空気温度および空気湿度から、平均空気温度および平均空気湿度を算出する。そして、演算部42は、算出された平均空気温度および平均空気湿度に基づき、記憶部46に記憶されたマップデータを参照して、露点温度を取得する。マップデータは、空気温度および空気湿度と、露点温度との関係がマッピングされたデータである。
【0025】
なお、以下では、説明が容易となるように、「設定時間間隔で設定時間の間計測された空気温度および空気湿度から算出される平均空気温度および平均空気湿度に基づき、露点温度を取得する」ことを、単に「空気温度および空気湿度に基づき、露点温度を取得する」のように記載するものとする。
【0026】
領域判断部43は、情報取得部41で取得された壁面温度と、演算部42で取得された露点温度とに基づき、各区画における結露状態を判断する。結露状態は、結露が発生しているか、あるいは、結露の発生する可能性があるかといった、対象の区画における結露の可能性を示すものである。
【0027】
空調制御部44は、領域判断部43で判断された結露状態に基づき、区画内の結露を緩和させる結露緩和制御の際に、対象となる空調機器1を制御する。例えば、空調制御部44は、空調機器1に設けられた送風機の風速が結露状態に適した風速となるように、空調機器1を制御する。
【0028】
カウンタ45は、各種の時間をカウントする。本実施の形態1において、カウンタ45は、結露抑制処理における結露緩和制御が設定時間だけ行われるように、カウントする。
【0029】
記憶部46は、制御装置4の各部で用いられる各種の値等を記憶する。例えば、本実施の形態1において、記憶部46は、演算部42で露点温度を取得する際に用いられるマップデータを予め格納している。
【0030】
図4は、図3の制御装置の構成の一例を示すハードウェア構成図である。制御装置4の各種機能がハードウェアで実行される場合、図3の制御装置4は、図4に示すように、処理回路21で構成される。図3の情報取得部41、演算部42、領域判断部43、空調制御部44、カウンタ45および記憶部46の各機能は、処理回路21により実現される。
【0031】
各機能がハードウェアで実行される場合、処理回路21は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。情報取得部41、演算部42、領域判断部43、空調制御部44、カウンタ45および記憶部46の各部の機能それぞれを処理回路21で実現してもよいし、各部の機能を1つの処理回路21で実現してもよい。
【0032】
図5は、図3の制御装置の構成の他の例を示すハードウェア構成図である。制御装置4の各種機能がソフトウェアで実行される場合、図3の制御装置4は、図5に示すように、プロセッサ22およびメモリ23で構成される。情報取得部41、演算部42、領域判断部43、空調制御部44、カウンタ45および記憶部46の各機能は、プロセッサ22およびメモリ23により実現される。
【0033】
各機能がソフトウェアで実行される場合、情報取得部41、演算部42、領域判断部43、空調制御部44、カウンタ45および記憶部46の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ23に格納される。プロセッサ22は、メモリ23に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
【0034】
メモリ23として、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable and Programmable ROM)およびEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ等が用いられる。また、メモリ23として、例えば、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、CD(Compact Disc)、MD(Mini Disc)およびDVD(Digital Versatile Disc)等の着脱可能な記録媒体が用いられてもよい。
【0035】
(空調機器1)
空調機器1の一例について、概略的に説明する。ここでは、空調機器1Aである空気調和機を例にとって、その構成について説明する。図6は、本実施の形態1に係る空調機器である空気調和機の構成の一例を示す回路図である。図6に示すように、空気調和機は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、第1送風機15、第2送風機16および空調制御装置10を備えている。圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14が冷媒配管で接続されることにより、冷媒が循環する冷媒回路が形成されている。
【0036】
圧縮機11は、低温低圧の冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮し、高温高圧の冷媒を吐出する。圧縮機11は、例えば、運転周波数が空調制御装置10によって変化することにより、単位時間あたりの冷媒の送出量である容量が制御されるインバータ圧縮機等からなる。
【0037】
凝縮器12は、第1送風機15によって供給される空気と冷媒との間で熱交換を行い、冷媒の熱を空気に放熱して冷媒を凝縮させる。第1送風機15は、図示しないモータによって駆動され、凝縮器12に対して空気を供給する。第1送風機15の回転数は、空調制御装置10によって制御されることにより、凝縮器12に対する送風量が調整される。
【0038】
膨張弁13は、冷媒を減圧して膨張させる。膨張弁13は、例えば、電子式膨張弁などの開度の制御を行うことができる弁で構成される。膨張弁13の弁開度は、空調制御装置10によって制御される。
【0039】
蒸発器14は、第2送風機16によって供給される空調対象空間50の空気である室内空気と冷媒との間で熱交換を行い、冷媒を蒸発させ、その際の気化熱により室内空気を冷却する。第2送風機16は、図示しないモータによって駆動され、蒸発器14に対して室内空気を供給する。第2送風機16の回転数は、空調制御装置10によって制御されることにより、蒸発器14に対する送風量が調整される。
【0040】
空調制御装置10は、図示しない各種のセンサで検出された情報、ならびに、ユーザによって設定された設定室内温度等に基づき、空気調和機全体を制御する。例えば、空調制御装置10は、センサ等から受け取った情報に基づき、室内温度が設定室内温度となるように、圧縮機11、膨張弁13、第1送風機15および第2送風機16を制御する。空調制御装置10は、マイクロコンピュータなどの演算装置上でソフトウェアを実行することにより各種機能が実現され、もしくは各種機能を実現する回路デバイスなどのハードウェア等で構成されている。
【0041】
[結露抑制処理]
結露抑制処理について説明する。空調対象空間50の壁面または天井面等の温度である壁面温度が、内部の空気の露点温度よりも低い場合、結露が発生する。そこで、本実施の形態1に係る空調システム100は、空調対象空間50における空気の攪拌を促し、結露を抑制する結露抑制処理を行う。
【0042】
(露点温度の算出)
図7は、露点温度の取得について説明するためのグラフである。図7において、横軸は相対湿度[%]を示し、縦軸は露点温度[℃]を示す。また、この図には、空気温度[℃]に対応するグラフが設定温度間隔で示されている。ここでは、設定温度間隔が5℃である場合が示されているが、この設定温度間隔は、任意に変更することができる。
【0043】
それぞれのグラフにおいて、空気湿度が100%である場合の空気温度は、露点温度と一致している。すなわち、空気湿度が100%である場合は、空気温度がそのまま露点温度となる。そして、空気湿度が100%から低下するに従って、露点温度も低下する。具体的には、例えば、空気温度が25℃であり、空気湿度が70%である場合、露点温度は、グラフに基づき、約19℃となる。また、例えば、空気温度が25℃であり、空気湿度が40%である場合、露点温度は、グラフに基づき、約10℃となる。
【0044】
このようなグラフに相当するマップデータが制御装置4の記憶46部に予め格納されている。演算部42は、温湿度センサ3で計測された空気温度および空気湿度に基づき、記憶部46に格納されたマップデータを参照して露点温度を算出する。なお、露点温度の導出方法は、この例に限られず、露点温度は、例えば公知の近似式を用いて、温湿度センサ3で計測された空気温度および空気湿度に基づき算出されるようにしてもよい。
【0045】
(結露状態の判断)
空調対象空間50の各区画における結露状態の判断について説明する。各区画における結露状態は、区画内の空気の露点温度と、当該区画の壁面または天井面の壁面温度との関係から判断することができる。本実施の形態1では、露点温度および壁面温度の関係に基づき、対象区画の結露状態を複数に分類する。
【0046】
図8は、露点温度と壁面温度との関係について説明するためのグラフである。図8の横軸は露点温度[℃]を示し、縦軸は壁面温度[℃]を示す。このグラフでは、露点温度および壁面温度の関係に応じた空調対象空間50の結露状態を表す領域が示されている。
【0047】
図8において、境界線Xは、壁面温度が露点温度と等しい点を結んだ直線である。露点温度および壁面温度の関係が境界線X以下の領域に含まれる場合には、対象の区画において結露が発生する。この結露が発生する領域を「結露発生領域」と称する場合、結露発生領域は、以下の式(1)で示される。
結露発生領域:壁面温度≦露点温度 ・・・(1)
【0048】
境界線Yは、壁面温度が露点温度よりもα[℃]だけ高い点を結んだ直線である。αは、結露状態を分類するための第1分類値であり、任意に設定可能な値である。第1分類値αは、制御装置4の記憶部46に予め記憶されている。露点温度および壁面温度の関係が境界線Xと境界線Yとによって囲まれた領域に含まれる場合には、対象の区画において結露が発生する可能性が高い。この結露発生の可能性が高い領域を「第1結露可能性領域」と称する場合、第1結露可能性領域は、以下の式(2)で示される。
第1結露可能性領域:露点温度<壁面温度≦露点温度+α ・・・(2)
【0049】
境界線Zは、壁面温度が露点温度よりもα+β[℃]だけ高い点を結んだ直線である。βは、結露状態を分類するための第2分類値であり、任意に設定可能な値である。第2分類値βは、制御装置4の記憶部46に予め記憶されている。露点温度および壁面温度の関係が境界線Yと境界線Zとによって囲まれた領域に含まれる場合には、対象の区画において結露が発生する可能性がやや高い。この結露発生の可能性がやや高い領域を「第2結露可能性領域」と称する場合、第2結露可能性領域は、以下の式(3)で示される。
第2結露可能性領域:露点温度+α<壁面温度≦露点温度+α+β
・・・(3)
【0050】
また、露点温度および壁面温度の関係が境界線Zよりも上の領域に含まれる場合には、結露が発生する可能性は低い。この結露発生の可能性が低い領域を「第3結露可能性領域」と称する場合、第3結露可能性領域は、以下の式(4)で示される。
第3結露可能性領域:壁面温度>露点温度+α+β ・・・(4)
【0051】
本実施の形態1に係る結露抑制処理では、区画毎に露点温度および壁面温度が導出され、露点温度と壁面温度との関係が上記のどの分類に含まれているかにより、区画毎の結露状態が判断される。そして、結露状態に応じて、結露の発生を抑制する結露緩和制御が行われる。
【0052】
具体的には、それぞれの区画における露点温度と壁面温度との関係が、結露発生領域、第1結露可能性領域および第2結露可能性領域に含まれる場合に、当該区画における結露の発生を抑制する結露緩和制御が行われる。より具体的には、露点温度と壁面温度との関係が、結露発生領域または第1結露可能性領域に含まれる場合、制御装置4は、当該区画に対して第1の結露緩和制御を行う。第1の結露緩和制御では、空調機器1の室内に設けられた送風機が、例えば全速で運転するように制御される。
【0053】
また、露点温度と壁面温度との関係が、第2結露可能性領域に含まれる場合、制御装置4は、当該区画に対して第2の結露緩和制御を行う。第2の結露緩和制御では、空調機器1の室内に設けられた送風機が、全速よりも遅い速度、例えば全速の80%で運転するように制御される。なお、露点温度と壁面温度との関係が第3結露可能性領域に含まれる場合、制御装置4は、空調機器1における現在の動作を維持するように制御する。すなわち、制御装置4は、空調機器1における送付機の現在の風速を維持する。
【0054】
第1の結露緩和制御または第2の結露緩和制御が行われる場合、制御装置4は、結露緩和制御を行うべき区画と、空調対象空間50に設置されたそれぞれの空調機器1との位置関係を確認する。そして、制御装置4の空調制御部44は、結露緩和制御を行うべき区画に最も近い空調機器1を見つけ、当該空調機器1から対象となる区画に向けて送風するように吹出口のルーバーを制御し、調和空気の風向を制御する。また、空調制御部44は、当該空調機器1の送風機の風量を増速させる。
【0055】
このように、結露緩和制御によって空調機器1における送風機の運転が制御されることにより、区画内の空気の循環が促される。そのため、空調対象空間50の壁面温度が空気の露点温度以下になるような環境であっても、結露を抑制することができる。
【0056】
なお、第1分類値αおよび第2分類値βは、ユーザが任意の値を設定できるが、例えば、重視する性能に応じて設定されるとよい。例えば、結露発生の抑制を重視する場合には、第2分類値βが第1分類値αよりも大きくなる(β>α)ように、第1分類値αおよび第2分類値βが設定されると好ましい。また、例えば、快適性または省エネ性を重視する場合には、第1分類値αが第2分類値βよりも大きくなる(α>β)ように、第1分類値αおよび第2分類値βが設定されると好ましい。
【0057】
また、第1分類値αおよび第2分類値βは、区画内の温度状態に応じて可変とすることもできる。
例えば、第1分類値αおよび第2分類値βにそれぞれ基準値を予め設定しておき、区画内の温度変化が設定範囲内に含まれるように安定している場合、制御装置4は、第1分類値αおよび第2分類値βのうち、少なくとも一方を基準値よりも小さくする。また、例えば、区画内の温度変化が設定範囲を超えるなど不安定な場合、制御装置4は、第1分類値αおよび第2分類値βのうち、少なくとも一方を基準値よりも大きくする。これは、区画内の温度変化が安定している場合には、結露が急激に進行することがないためである。
【0058】
具体的には、空調対象空間50が店舗内の空間である場合で、店舗が開店中、特に、顧客または物品の出入りまたは移動が多い時間帯であるときにおいては、空調対象空間50内の温度変化が不安定となる。したがって、このような場合、制御装置4は、第1分類値αおよび第2分類値βのうち、少なくとも一方を基準値よりも大きくする。
【0059】
一方、店舗が開店中であっても、夜間または出入りまたは移動が少ない時間帯である場合には、空調対象空間50(区画)内の温度変化が安定する。したがって、このような場合、制御装置4は、第1分類値αおよび第2分類値βのうち、少なくとも一方を基準値よりも小さくする。
【0060】
図9は、本実施の形態1に係る結露抑制処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、ステップS10において、制御装置4の情報取得部41は、温度センサ2で計測された、分割された各区画の壁面温度を取得する。また、情報取得部41は、温湿度センサ3で計測された、各区画の空気温度および空気湿度を取得する。
【0061】
ステップS11において、演算部42は、情報取得部41で取得された空気温度および空気湿度に基づき、記憶部46に記憶されたマップデータを参照して露点温度を取得する。ステップS12において、領域判断部43は、取得した壁面温度および露点温度に基づき、各区画における結露状態を判断する。
【0062】
ステップS13において、領域判断部43は、第2結露可能性領域以上の区画が存在するか否かを判断する。判断の結果、第2結露可能性領域以上の区画が存在する場合、すなわち、結露発生領域、第1結露可能性領域または第2結露可能性領域の区画が存在する場合(ステップS13:YES)には、処理がステップS14に移行する。一方、第2結露可能性領域以上の区画が存在しない場合、すなわち、すべての区画が第3結露可能性領域である場合(ステップS13:NO)には、一連の処理が終了する。
【0063】
ステップS14において、領域判断部43は、ステップS12で抽出された区画について、第1結露可能性領域以上の区画が存在するか否かを判断する。判断の結果、第1結露可能性領域以上の区画が存在する場合、すなわち、結露発生領域または第1結露可能性領域の区画が存在する場合(ステップS14:YES)には、処理がステップS15に移行する。ステップS15において、制御装置4は、第1の結露緩和制御を行う。すなわち、空調制御部44は、送風機が例えば全速で運転するように、空調機器1を制御し、対象の区画に向けて調和空気を送風する。
【0064】
一方、ステップS14において、第1結露可能性領域以上の区画が存在しない場合、すなわち、第2結露可能性領域以上の区画のうちのすべての区画が第2結露可能性領域である場合(ステップS14:NO)には、処理がステップS16に移行する。ステップS16において、制御装置4は、第2の結露緩和制御を行う。すなわち、空調制御部44は、送風機が全速より遅い速度、例えば全速の80%で運転するように、空調機器1を制御し、対象の区画に向けて調和空気を送風する。
【0065】
次に、ステップS17において、制御装置4は、カウンタ45によるカウントに基づき、設定時間が経過するまで待機する。ステップS18において、領域判断部43は、ステップS11で抽出された区画について、第3結露可能性領域であるか否かを判断する。
【0066】
判断の結果、ステップS13で抽出されたすべての区画が第3結露可能性領域である場合(ステップS18:YES)、領域判断部43は、結露発生の可能性が低いと判断する。そして、一連の処理が終了する。一方、ステップS13で抽出されたすべての区画が第3結露可能性領域でない場合、すなわち、少なくとも1つの区画が第2結露可能性領域以上である場合(ステップS18:NO)には、処理がステップS13に戻る。
【0067】
なお、結露緩和制御によって結露が発生している区画または結露の可能性がある区画に対して空調機器1による送風が行われても、当該区画に調和空気を十分に供給できず、結露の発生を抑制できない場合があることが考えられる。この場合には、図9に示すフローチャートにおけるステップS12~ステップS17の処理が巡回的に繰り返されることになる。そこで、制御装置4は、このような場合に、別の処理を行って対象の区画の空気を攪拌するようにしてもよい。
【0068】
具体的には、制御装置4は、結露緩和制御または繰り返される処理の回数等をカウントする。そして、処理回数が予め設定された設定回数を超えても、対象の区画の結露状態が第3結露可能性領域とならない場合に、制御装置4は、空調機器1の設定温度を高くする等の設定変更を行い、当該区画の空気を攪拌する。
【0069】
なお、例えば夏場に設定温度を高くしたり、暖房運転に切り替えたりする等の設定変更が行われると、結露発生の抑制が優先される一方で、快適性を損なう可能性がある。そのため、区画内の設定温度を変更する等の設定変更を行う場合には、設定変更の可否をユーザに対して報知すると好ましい。この場合、例えば、空調システム100に表示装置等のユーザに対して区画内の状態を報知するための報知手段が設けられ、この報知手段により、設定変更を行うかどうかが報知される。そして、設定変更がユーザによって認められた場合に、制御装置4は、設定温度の変更または運転モードの切り替え等の当該区画に対する設定変更を行う。
【0070】
また、設定変更を行っても結露の発生を抑制できない場合、あるいは、設定変更がユーザによって認められない場合、制御装置4は、結露の発生を抑制できないことをユーザに対してさらに報知してもよい。ここで、結露の発生を抑制できない場合とは、設定変更を行っても対象の区画が第1結露可能性領域または第2結露可能性領域に含まれる場合である。この場合、例えば、制御装置4は、報知手段により、結露の発生を抑制できないことをユーザに対して報知する。その際、制御装置4は、例えば、結露の発生を抑制できない区画あるいはセンサの位置を示す情報を表示させたり、送風機の追加または湿気吸着材の設置等を提案したりすると好ましい。
【0071】
ここで、図9のフローチャートは、複数の区画のうちの特定の区画で行われる処理の流れについて説明しているが、この処理はそれぞれの区画において行われる。そのため、第2結露可能性領域以上の結露状態が複数の区画で同時に存在した場合には、通常、対象の区画に対して同時に結露緩和制御が行われる。
【0072】
しかしながら、空調機器1が一部の区画にのみ設けられている場合には、1つの空調機器1で複数の区画に向けて送風する必要が生じ、結露の発生を適切に抑制することができなくなる可能性がある。そこで、このような場合、制御装置4は、第2結露可能性領域以上の結露状態であると判断された複数の区画に対して優先度を設定し、優先度の高い区画から順に結露緩和制御を行うとよい。
【0073】
優先度は、例えば、露点温度と壁面温度との差である温度差が小さいほど高くなるように設定される。また、例えば、温度差と優先度ランクとが対応付けられたテーブルを予め用意し、優先度は、このテーブルに基づいて決定されるようにしてもよい。また、優先度は、例えば、図8のグラフで示される露点温度と壁面温度との関係が右下に近づくに従って、より高く設定される。すなわち、第1結露可能性領域の区画の優先度が第2結露可能性領域の区画の優先度よりも高く設定される。
【0074】
なお、優先度が同じ区画が複数存在する場合には、例えば、制御装置4は、一方の区画に対して空調機器1による送風を優先的に行い、温度差が大きくなることによって優先度が低下した段階で、他方の区画に対して空調機器1による送風を行ってもよい。
【0075】
以上のように、本実施の形態1に係る空調システム100では、空調対象空間50が分割された複数の区画のそれぞれにおける壁面温度および露点温度との関係から結露状態が判断され、判断結果に応じて空調機器1が制御される。これにより、結露が発生している区画または結露の発生する可能性が高い区画に対して空調機器1からの送風が行われ、対象の区画における空気の循環が促されるため、当該区画における結露の発生を抑制することができる。
【0076】
実施の形態2.
本実施の形態2について説明する。本実施の形態2に係る空調システム100は、結露抑制処理を行うタイミングおよび対象区画を学習する点で、実施の形態1と相違する。なお、本実施の形態2において、実施の形態1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
本実施の形態2に係る空調システム100の構成は、図1に示す実施の形態1と同様である。なお、本実施の形態2では、制御装置4の一部の機能が実施の形態1と相違している。
【0078】
図10は、本実施の形態2に係る制御装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。図10に示すように、制御装置4は、実施の形態1と同様に、情報取得部41、演算部42、領域判断部43、空調制御部44、カウンタ45および記憶部46を備えている。また、本実施の形態2において、制御装置4は、解析部47をさらに備えている。
【0079】
本実施の形態2において、演算部42は、領域判断部43の判断結果に基づき、すべての区画について、単位期間での結露可能性領域発生率を演算する。結露可能性領域発生率は、単位期間あたりで結露発生領域、第1結露可能性領域および第2結露可能性領域に含まれる結露状態が発生する割合を示す。期間の単位は、例えば、時刻単位および月日単位である。
【0080】
記憶部46は、すべての区画について、領域判断部43での判断結果を日時と対応付けて記憶する。また、記憶部46は、演算部42で演算された結露可能性領域発生率を日時と対応付けて記憶する。解析部47は、記憶部46に記憶された結露可能性領域発生率に基づき、単位期間での結露可能性領域発生率を学習する。
【0081】
制御装置4は、解析部47による学習結果に基づいて結露抑制処理を実施する。このとき、制御装置4は、例えば、図11に示すように結露可能性領域発生率に対して閾値THを設定し、閾値TH以上の結露可能性領域発生率となった月日および時刻で、対象の区画に対して結露抑制処理を実施する。
【0082】
図11は、結露可能性領域発生率について説明するためのグラフである。図11の上図は、時刻単位での結露可能性領域発生率の一例であり、横軸は時刻を示し、縦軸は結露可能性領域発生率を示す。この図において、TH1は時刻単位での結露可能性領域発生率に対する第1閾値である。
【0083】
また、図11の下図は、時刻単位での結露可能性領域発生率の一例であり、横軸は月を示し、縦軸は結露可能性領域発生率を示す。この図において、TH2は月単位での結露可能性領域発生率に対する第2閾値である。
【0084】
図11に示す例において、制御装置4は、学習結果に基づき、結露可能性領域発生率が第2閾値TH2以上となる月において、結露可能性領域発生率が第1閾値TH1以上となる時刻に、結露抑制処理を実施する。これにより、それぞれの区画における結露の発生を事前に予防することができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態2に係る空調システム100では、それぞれの区画における単位期間での結露可能性領域発生率が演算されて記憶部46に蓄積され、蓄積された結露可能性領域発生率に基づき、単位期間での結露可能性領域発生率が学習される。これにより、結露が発生する、または結露の発生の可能性がある区画および期間を推定することができるため、推定結果に基づいて結露抑制処理が行われることにより、それぞれの区画における結露の発生を事前に予防することができる。
【0086】
実施の形態3.
本実施の形態3について説明する。本実施の形態3では、それぞれが空調システム100を備えた複数の店舗または倉庫等の空調対象空間50における結露発生の抑制を管理する空調管理システムについて説明する。なお、本実施の形態3において、実施の形態1および2と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0087】
[空調管理システム200の構成]
図12は、本実施の形態3に係る空調管理システムの構成の一例を示すブロック図である。図12に示すように、空調管理システム200は、集中管理装置201と、複数の店舗または倉庫等の空調対象空間50にそれぞれ設けられた空調システム100とがネットワーク上のクラウド202を介して接続されて構成されている。
【0088】
本実施の形態3に係る空調システム100の構成は、実施の形態1または2と同様である。なお、本実施の形態3において、空調システム100の制御装置4は、取得した露点温度および壁面温度を含む結露状態の判断結果、ならびに、学習した結露可能性領域発生率等の解析情報を、集中管理装置201に送信する構成となっている。また、制御装置4は、空調システム100が設置された店舗または倉庫等の空調対象空間50に関する情報である管理情報を、集中管理装置201に送信する。管理情報は、例えば、店舗に陳列されている内容物または倉庫は保管されている内容物についての情報、店舗の業態、および稼働時間等である。
【0089】
集中管理装置201は、クラウド202を介して接続された複数の空調システム100を管理する。集中管理装置201は、複数の空調システム100から受け取った解析情報および管理情報を解析し、結露が発生しやすい区画および時間等の状況を抽出する。そして、集中管理装置201は、解析結果をそれぞれの空調システム100に対してフィードバックし、解析結果に基づく結露抑制処理を実施させる。
【0090】
このように、本実施の形態3では、集中管理装置201が複数の空調システム100から受け取った解析情報および管理情報に基づく解析結果を、それぞれの空調システム100にフィードバックする。そのため、それぞれの空調システム100は、異なる空調システム100での結露の発生状況等を参考にして、結露抑制処理をより適切に実施することができる。
【0091】
以上、本実施の形態1~3について説明したが、本開示は、上述した実施の形態1~3に限定されるものではなく、本開示要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、本実施の形態2および3では、制御装置4の解析部47は、結露可能性領域発生率を学習したが、これに限られず、例えば、解析部47は、区画毎の露点温度および壁面温度に応じた送風機の風速制御を学習するようにしてもよい。
【0092】
この場合、解析部47は、露点温度および壁面温度を入力データとし、送風機の風速を変更する結露緩和制御を行った場合の結露発生の抑制状態を教師データとして、区画毎に、結露緩和制御の際の最適な風速制御を学習する。このようにして学習した結果に基づいて結露緩和制御が行われることにより、露点温度および壁面温度に応じた最適な送風機の風速が設定されるため、結露発生を適切に抑制することができる。また、複数の区画において結露緩和制御を行う必要が生じた場合でも、それぞれの区画に対する結露緩和制御の優先度を適切に設定することができる。
【符号の説明】
【0093】
1、1A、1B 空調機器、2、2A、2B、2C、2D 温度センサ、3、3A、3B、3C、3D 温湿度センサ、4 制御装置、10 空調制御装置、11 圧縮機、12 凝縮器、13 膨張弁、14 蒸発器、15 第1送風機、16 第2送風機、21 処理回路、22 プロセッサ、23 メモリ、41 情報取得部、42 演算部、43 領域判断部、44 空調制御部、45 カウンタ、46 記憶部、47 解析部、50、50A、50B、50C、50D 空調対象空間、100 空調システム、200 空調管理システム、201 集中管理装置、202 クラウド。
図1
図2
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図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12