(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】KRAS G12D阻害剤としての置換縮合アジン
(51)【国際特許分類】
C07D 409/02 20060101AFI20250418BHJP
A61K 31/5383 20060101ALI20250418BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20250418BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250418BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
C07D409/02 CSP
A61K31/5383
A61K31/517
A61P35/00
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2023575874
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2022032589
(87)【国際公開番号】W WO2022261154
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-12-08
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】バーダ,デイビッド アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン,ジョシュア ライアン
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコヴィッチ,ジェフリー バーナード
(72)【発明者】
【氏名】ファーネス,ケリー ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ガーナート,ダグラス リン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー,ジェイムズ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,リチャード デュエイン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,スペンサー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ラマー,ジェイソン エリック
(72)【発明者】
【氏名】レビンソン,アダム マーク
(72)【発明者】
【氏名】ムボファナ,カレン タプフマ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,マイケル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ルビオ,アルムデナ
(72)【発明者】
【氏名】シ,チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ガイイン
(72)【発明者】
【氏名】ジア-エブラヒミ,モハメド サデグ
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特表2024-508755(JP,A)
【文献】特表2024-505594(JP,A)
【文献】特表2023-540270(JP,A)
【文献】特表2024-517693(JP,A)
【文献】特表2023-531269(JP,A)
【文献】国際公開第2022/148422(WO,A1)
【文献】特表2021-505640(JP,A)
【文献】国際公開第2021/106231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物であって、
【化1】
式中、
Xは
、-S-であり、
Yは、-C(CN)
-であり、
Zは、-C(H)-又は-N-であり、
R
1は、H、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンであり、前記アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
2-4ヘテロアルキルで任意選択的に置換され、前記C
1-4アルキル、C
2-4ヘテロアルキルは、ハロゲン又はオキソによって任意選択的に置換され、前記アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、前記C
1-4アルキル又はC
2-4ヘテロアルキルによって任意選択的に架橋され、前記アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、前記C
1-4アルキル又はC
2-4ヘテロアルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、
R
2は、H、-O-CH
2-R
7、又は-O-CH(CH
3)-R
7であり、R
7は、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランであり、前記アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、1つ以上のハロゲン、ヒドロキシル、C
1-4アルキル、又はC
1-4アルケニルで任意選択的に置換され、前記C
1-4アルキルは、1つ以上のハロゲン又はヒドロキシルで任意選択的に置換され、前記アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、前記C
1-4アルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、R
2がHである場合、R
1は、Hではなく、
R
3及びR
5は、各々独立して、H、ハロゲン、-C
0-3アルキル-シクロプロピル、R
8で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6アルキル、又はR
8で1~3回任意選択的に置換される-O-C
1-6アルキルであり、
R
4a、R
4b、及びR
4cは、各々独立して、H、ハロゲン、又はR
8で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6アルキルであり、
R
6は、H、-CH
2OH、-CH
2-O-CH
3であり、
R
8は、各々独立して、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、-C
1-4アルキル、又は-O-C
1-4アルキルである、化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Zが、-N-である、請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
1が、Hである、請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
1が、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンである、請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
1が、N結合型ピペラジンである、請求項
4に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
1が、
【化2】
である、請求項
4に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
1が、
【化3】
である、請求項
4に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
R
2が、-O-CH
2-R
7、又は-O-CH(CH
3)-R
7である、請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
R
2が、-O-CH
2-R
7である、請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
R
7が、ピロリジンである、請求項
8に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
R
2が、
【化4】
である、請求項
1に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
R
2が、
【化5】
である、請求項
1に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
R
3及びR
5が、各々独立して、ハロゲン、-C
0-3アルキル-シクロプロピル、R
8で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6アルキル、又はR
8で1~3回任意選択的に置換される-O-C
1-6アルキルである、請求項
1に記載の化合物。
【請求項14】
R
3が、Fである、請求項
1に記載の化合物
、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
R
4cが、F又は-CH
3である、請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
R
5が、Clである、請求項
1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
R
3が、Fであり、R
4aが、Hであり、R
4bが、Hであり、R
4cが、Fであり、R
5が、Clである、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
【化6】
から選択される、請求項1に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
【化7】
である、請求項
18に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
請求項
20に記載の薬学的組成物を含む、がんの患者を治療するための薬剤であって、前記がんが、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び結腸直腸がんから選択される、薬剤。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、がんの患者を治療するための薬剤であって、前記がんが、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び結腸直腸がんから選択される、薬剤。
【請求項23】
前記がんが、非小細胞肺がんであり、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する、請求項
22に記載の薬剤。
【請求項24】
前記がんが、結腸直腸がんであり、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する、請求項
22に記載の薬剤。
【請求項25】
前記がんが、膵臓がんであり、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する、請求項
22に記載の薬剤。
【請求項26】
前記患者が、前記化合物又はその薬学的に許容される塩の投与前
にKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有すると決定されたがんを有する、請求項
22に記載の薬剤。
【請求項27】
がんを有する患者を治療するための薬剤であって、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む、薬剤。
【請求項28】
前記がんが、KRas G12D変異を有する、請求項
27に記載の薬剤。
【請求項29】
PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CD4/CDK6阻害剤、EGFR阻害剤、ERK阻害剤、オーロラA阻害剤、SHP2阻害剤、白金剤、及びペメトレキセドのうちの1つ以上、又はそれらの薬学的に許容される塩と併用される、請求項
27又は
28に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
MAPK/ERKシグナル伝達経路は、細胞外刺激を核に伝え、それにより、細胞増殖、分化、及びアポトーシスを含む多様な細胞応答を調節する。KRasタンパク質は、MAPK/ERKシグナル伝達経路を開始させるものであり、細胞分裂の誘導に関与するスイッチとして機能する。その非活性状態では、KRasは、グアノシン二リン酸(guanosine diphosphate、GDP)に結合し、負のシグナルを効果的に送り、細胞分裂を抑制する。細胞外シグナルに応答して、KRasは、アロステリックに活性化され、GDPとグアノシン三リン酸(guanosine triphosphate、GTP)のヌクレオチド交換を可能にする。そのGTPに結合した活性状態では、KRasは、成長因子誘導性シグナル伝達の伝播に必要なタンパク質、並びに他の細胞シグナル伝達受容体を動員し、活性化する。KRas-GTPによって動員されるタンパク質の例は、c-Raf及びPI3キナーゼである。GTPアーゼとしてのKRasは、結合したGTPを変換してGDPに戻し、それにより、それ自体を非活性状態に戻し、再びシグナルを伝播して細胞分裂を抑制する。KRas機能獲得型変異は、GTP結合の程度の増加及びGTPをGDPに変換する能力の低下を呈する。その結果、がん性細胞の増殖を促進するMAPK/ERKシグナルが増加する。コドン12のKRasのミスセンス変異は、最も一般的な変異であり、GTPアーゼ活性を著しく低下させる。
【0002】
発がん性KRas変異は、ヒトがんのおよそ30%で確認されており、複数の下流シグナル伝達経路を活性化することが実証されている。KRas変異の有病率にもかかわらず、それは困難な治療標的となっている。(Cox,A.D.Drugging the Undruggable RAS:Mission Possible? Nat.Rev.Drug Disc.2014,13,828-851;Pylayeva-Gupta,y et al.RAS Oncogenes:Weaving a Tumorigenic Web.Nat.Rev.Cancer 2011,11,761-774)。
【0003】
これまでに、KRas G12C変異体阻害剤に焦点を当てた研究が行われており(例えば、国際公開第2019/099524号、国際公開第2020/081282号、国際公開第2020/101736号、及び国際公開第2020/146613号は、KRas G12C阻害剤を開示している)、一方で、国際公開第2021/041671号は、KRas G12D小分子阻害剤を開示しており、国際公開第2017/011920号は、KRas G12C、G12D、及びG12V小分子阻害剤を開示している。
【0004】
代替の小分子KRas阻害剤を提供する必要性が依然として存在する。具体的には、がんの治療に有用なより強力で経口送達可能なKRas阻害剤を提供する必要性が存在する。より具体的には、KRas GTP活性を特異的に阻害する小分子阻害剤を提供する必要性が存在する。同じ又は低下したKRas阻害活性でより高い有効性を呈する小分子KRas阻害剤を提供する必要性も存在する。更に、より良好な薬物動態特性/薬力学的特性を呈するKRas阻害剤を提供することが望ましい。また、有害な若しくは望ましくない効果が減少した又は最小限に抑えられた、有効性の増加を呈するより強力なKRas阻害剤を提供する必要性が存在する。本発明は、新規KRas阻害剤を提供することにより、これらの必要性のうちの1つ以上に対処する。
【発明の概要】
【0005】
以下の式Iの化合物
【化1】
その薬学的に許容される塩、及びその薬学的組成物が、本明細書に提供される。式I中、
Xは、-O-又は-S-であり、
Yは、-C(CN)-又は-N-であり、
Zは、-C(H)-又は-N-であり、
R
1は、H、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンであり、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
1-4ヘテロアルキルで任意選択的に置換され、C
1-4アルキル、C
1-4ヘテロアルキルは、ハロゲン又はオキソによって任意選択的に置換され、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
1-4ヘテロアルキルによって任意選択的に架橋され、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
1-4ヘテロアルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、
R
2は、H、-O-CH
2-R
7、又は-O-CH(CH
3)-R
7であり、R
7は、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランであり、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、1つ以上のハロゲン、ヒドロキシル、C
1-4アルキル、又はC
1-4アルケニルで任意選択的に置換され、C
1-4アルキルは、1つ以上のハロゲン又はヒドロキシルで任意選択的に置換され、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、C
1-4アルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、R
2がHである場合、R
1は、Hではなく、
R
3及びR
5は、各々独立して、H、ハロゲン、-C
0-3アルキル-シクロプロピル、R
8で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6アルキル、又はR
8で1~3回任意選択的に置換される-O-C
1-6アルキルであり、
R
4a、R
4b、及びR
4cは、各々独立して、H、ハロゲン、又はR
8で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6アルキルであり、
R
6は、H、-CH
2OH、-CH
2-O-CH
3であり、
R
8は、各々独立して、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、-C
1-4アルキル、又は-O-C
1-4アルキルである。
【0006】
がんの治療、具体的には、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び結腸直腸がんの治療のために、式Iの化合物、その薬学的に許容される塩、及びその薬学的組成物を使用する方法。方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を、必要とする患者に投与することを含む。
【0007】
療法に使用するための、式Iの化合物、及びその薬学的に許容される塩も本明細書に提供される。更に、がんの治療、具体的には、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び結腸直腸がんの治療に使用するための、式Iの化合物、及びその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。がんの治療、具体的には、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び結腸直腸がんの治療のための薬品の製造における、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【発明を実施するための形態】
【0008】
KRas機能獲得型変異G12Dの新規阻害剤が、本明細書に記載される。これらの新規化合物は、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、又は食道がんなどのがんの治療における、機能獲得型変異体におけるKRas GTP活性の阻害剤の必要性に対処することができる。これらの新規KRas G12D変異体阻害剤化合物のうちのいくつかは、野生型KRas(及び恐らくG12C又はG12Vなどの他の変異型)よりもKRas G12D変異体に対して選択的である。追加的に、これらの新規KRas G12D変異体阻害剤化合物のうちのいくつは非選択的であり、野生型KRasとKRas G12D変異体の両方(及び恐らくG12C又はG12Vなどの他の変異型)を阻害する。
【0009】
本発明は、以下の式1の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化2】
式I中、
Xは、-O-又は-S-であり得、
Yは、-C(CN)-又は-N-であり得、
Zは、-C(H)-又は-N-であり得、
R
1は、H、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンであり得、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
1-4ヘテロアルキルで任意選択的に置換され、C
1-4アルキル、C
1-4ヘテロアルキルは、ハロゲン又はオキソによって任意選択的に置換され、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
1-4ヘテロアルキルによって任意選択的に架橋され、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
1-4ヘテロアルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、
R
2は、H、-O-CH
2-R
7、又は-O-CH(CH
3)-R
7であり得、R
7は、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランであり、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、1つ以上のハロゲン、ヒドロキシル、C
1-4アルキル、又はC
1-4アルケニルで任意選択的に置換され、C
1-4アルキルは、1つ以上のハロゲン又はヒドロキシルで任意選択的に置換され、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、C
1-4アルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、R
2がHである場合、R
1は、Hではなく、
R
3及びR
5は、各々独立して、H、ハロゲン、-C
0-3アルキル-シクロプロピル、R
8で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6アルキル、又はR
8で1~3回任意選択的に置換される-O-C
1-6アルキルであり得、
R
4a、R
4b、及びR
4cは、各々独立して、H、ハロゲン、又はR
8で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6アルキルであり得、
R
6は、H、-CH
2OH、-CH
2-O-CH
3であり得、
R
8は、各々独立して、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、-C
1-4アルキル、又は-O-C
1-4アルキルであり得る。
【0010】
ある実施形態では、本発明は、以下の式IIの化合物を提供し、
【化3】
式中、R
1、R
3、R
4、R
5、R
7、X、Y、及びZは、上記で定義されたとおりであり、Aは、-CH
2-若しくは-CH(CH
3)-、又はその薬学的に許容される塩である。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、以下の式IIIの化合物であって、
【化4】
式中、R
1、R
2、R
6、及びZが、上記で定義されたとおりである、化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
更なる実施形態では、本発明は、以下の式IVの化合物であって、
【化5】
式中、R
1、R
6、R
7、及びZが、上記で定義されたとおりであり、Aが、-CH
2-若しくは-CH(CH
3)である、化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0013】
本明細書で使用される場合、ハロゲンという用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、又はヨード(I)を意味する。本明細書で使用される場合、アルキルという用語は、1~6個の炭素原子の飽和直鎖又は分枝鎖一価炭化水素ラジカル、例えば、「-C1-6アルキル」又は「-C1-4アルキル」を意味する。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、1-プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「オキソ」という用語は、炭素に二重結合している酸素、つまりケトンを意味する。本明細書で使用される場合、ヘテロアルキルという用語は、2~4個の炭素原子及び少なくとも1個のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分枝鎖一価炭化水素ラジカル、例えば、「-C2-4ヘテロアルキル」を意味する。ヘテロ原子の例としては、窒素及び酸素が挙げられるが、これらに限定されない。ゼロが示されている場合、例えば、-C0-3アルキル-シクロプロピルの場合、置換基のアルキル成分は不在であり得、したがって、式IのR3又はR5が、アルキルが先頭にないシクロプロピル基である場合、置換基は、R3又はR5について説明される-C0-3アルキル-シクロプロピル置換基によって説明されることになる(すなわち、置換基は-C0-シクロプロピルであることになる)。
【0014】
R
1について、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN-結合型ピペラジンは、C
1-4アルキル又はC
2-4ヘテロアルキルによって任意選択的に架橋される。本明細書で使用される場合、R
1基について「架橋」という用語は、R
1基が、C
1-4アルキル又はC
2-4ヘテロアルキルがアゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジン環の2個の隣接しない原子に連結する二環式であることを意味する。架橋N-結合型ピペラジン環基の例としては、
【化6】
が挙げられる。
【0015】
本明細書で使用される場合、R
1基について「縮合」という用語は、R
1基が、C
1-4アルキル又はC
2-4ヘテロアルキルがアゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジン環の2個の隣接する原子に連結する二環式であることを意味する。縮合R
1基の例としては、
【化7】
が挙げられる。
【0016】
R1において、アゼチジン、ピロリジン、及びピペリジン基は、炭素又は窒素を介して結合していると特定されておらず、炭素を介して結合しているか、窒素を介して結合しているかのいずれかであり得る。同様に、R1アゼチジン、ピロリジン、及びピペリジン基上へのC1-4アルキル又はC1-4ヘテロアルキル置換は、炭素又はヘテロ原子上であり得る。
【0017】
R
7について、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、C
1-4アルキルと任意選択的に縮合して、二環式環を形成する。本明細書で使用される場合、R
7基について「縮合」という用語は、R
7基が、C
1-4アルキルがアゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフラン環の2個の隣接する原子に連結する二環式であることを意味する。縮合R
7基の例としては、
【化8】
が挙げられる。
【0018】
R7において、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフラン基は、炭素又は窒素を介して結合していると特定されておらず、炭素を介して結合しているか、窒素を介して結合しているかのいずれかであり得る。同様に、R7アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフラン基上へのC1-4アルキル又はC1-4アルケニル置換は、炭素又はヘテロ原子上であり得る。
【0019】
式I若しくはIIの化合物又はその薬学的に許容される塩のある実施形態では、Xは、-S-である。
【0020】
式I若しくはIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、Yは、-C(CN)-である。
【0021】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、Zは、-N-である。
【0022】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の追加の実施形態では、R1は、Hである。
【0023】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、R1は、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンである。
【0024】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、R1は、N結合型ピペラジンである。
【0025】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の追加の実施形態では、R
1は、
【化9】
である。
【0026】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、R
1は、
【化10】
である。
【0027】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、R
1は、
【化11】
である。
【0028】
式I若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の追加の実施形態では、R2は、-O-CH2-R7である。
【0029】
式II若しくはIVの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、R7は、ピロリジンである。
【0030】
式I若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、R
2は、
【化12】
である。
【0031】
式I若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の追加の実施形態では、R
2は、
【化13】
である。
【0032】
式I若しくはIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、R3及びR5は、各々独立して、ハロゲン、-C0-3アルキル-シクロプロピル、R8で1~3回任意選択的に置換される-C1-6アルキル、又はR8で1~3回任意選択的に置換される-O-C1-6アルキルである。
【0033】
式I若しくはIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、R3は、Fである。
【0034】
式I若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の追加の実施形態では、R4cは、F又は-CH3である。
【0035】
式I若しくはIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、R5は、Clである。
【0036】
式I若しくはIIの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、Xは、Sであり、Yは、-C(CN)-であり、R3は、Fであり、R4aは、Hであり、R4bは、Hであり、R4cは、Fであり、R5は、Clである。
【0037】
式III若しくはIVの化合物又はその薬学的に許容される塩の追加の実施形態では、R
1は、
【化14】
である。
【0038】
式III若しくはIVの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、R
1は、
【化15】
である。
【0039】
式III若しくはIVの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、R
1は、
【化16】
である。
【0040】
式III若しくはIVの化合物又はその薬学的に許容される塩の追加の実施形態では、R
1は、
【化17】
である。
【0041】
式II若しくはIVの化合物又はその薬学的に許容される塩の別の実施形態では、Aは、-CH2-である。
【0042】
式I、II、III、若しくはIVのうちのいずれかの化合物又はその薬学的に許容される塩の更なる実施形態では、R6は、Hである。
【0043】
本明細書に記載の化合物の例としては、表1の化合物及びその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0044】
本明細書に記載の化合物の好ましい例としては、表2の化合物及びその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【表2】
【0045】
式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物も本明細書に提供される。
【0046】
更に、がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法が、本明細書に提供される。がんは、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、胃がん、又は食道がんであり得る。がんは、より具体的には、非小細胞肺がん、膵臓がん、又は結腸直腸がんであり得る。また更に具体的には、がんは、非小細胞肺がんであり得る。
【0047】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も本明細書に提供される。本方法では、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得る。また、本方法では、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんである。更に、本方法では、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんである。追加的に、本方法では、本発明は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療する方法を含む。
【0048】
更に、KRas G12D変異を有するがんを有する患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法が、本明細書に提供される。
【0049】
追加的に、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することによって、変異体KRas G12D酵素の調節を必要とする患者において、変異体KRas G12D酵素を調節する方法が、本明細書に提供される。好ましくは、本方法は、ヒト変異体KRas G12D酵素を阻害することを含む。
【0050】
がんの治療を必要とする患者において、がんを治療する方法であって、患者が、KRas G12D変異体タンパク質を発現すると決定されたがんを有する、方法も本明細書に提供される。方法は、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。1つ以上のがん細胞のG12D変異状態は、当該技術分野で既知のいくつかのアッセイによって決定することができる。典型的には、1つ以上のがん細胞を含有する1つ以上の生検が得られ、配列決定及び/又はポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction、PCR)に供される。循環無細胞DNAも、例えば、進行性がんにおいて使用することができる。変異状態(例えば、1つ以上のがん細胞又は循環無細胞DNAにおけるG12D変異状態)を決定するために使用される配列決定技法及びPCR技法の非限定的な例としては、直接配列決定、次世代配列決定、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(reverse transcription polymerase chain reaction、RT-PCR)、マルチプレックスPCR、並びにパイロシーケンシング及び多検体プロファイリングが挙げられる。
【0051】
更に、療法に使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物又はその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。化合物又はその薬学的に許容される塩は、がんの治療に使用するためのものであり得る。好ましくは、がんは、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、又は食道がんである。より好ましくは、がんは、非小細胞肺がん、膵臓がん、又は結腸直腸がんである。更により好ましくは、がんは、非小細胞肺がんである。がんは、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上のがん細胞を有し得る。好ましくは、がんは、KRas G12D変異体非小細胞肺がん、KRas G12D変異体結腸直腸がん、及びKRas G12D変異体膵臓がんから選択される。追加的に、がんは、非小細胞肺がんであり得、1つ以上の細胞が、G12D変異体タンパク質を発現する。更に、がんは、結腸直腸がんであり得、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する。追加的に、がんは、膵臓がんであり得、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する。患者は、化合物又はその薬学的に許容される塩の投与前にKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有すると決定されたがんを有し得る。患者は、本明細書に記載されるように治療される前に、異なる治療過程で治療されていてもよい。
【0052】
式I~IVのうちのいずれか1つに従う本明細書に提供される化合物、又はその薬学的に許容される塩は、がんの治療のための薬品の製造にも使用してもよい。好ましくは、がんは、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、又は食道がんである。更に好ましくは、がんは、非小細胞肺がん、膵臓がん、又は結腸直腸がんである。更により好ましくは、がんは、非小細胞肺がんである。がんは、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上のがん細胞を有し得る。がん細胞がKRas G12Dタンパク質を発現する場合、がんは、KRas G12D変異体非小細胞肺がん、KRas G12D変異体結腸直腸がん、及びKRas G12D変異体膵臓がんから選択することができる。
【0053】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CD4/CDK6阻害剤、EGFR阻害剤、ERK阻害剤、オーロラA阻害剤、SHP2阻害剤、白金剤、及びペメトレキセドのうちの1つ以上、又はそれらの薬学的に許容される塩とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も本明細書に提供される。更に、PD-1又はPD-L1阻害剤、CD4/CDK6阻害剤、EGFR阻害剤、ERK阻害剤、オーロラA阻害剤、SHP2阻害剤、白金剤、及びペメトレキセドのうちの1つ以上、又はそれらの薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて、がんの治療に使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が、本明細書に提供される。追加的に、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、PD-1又はPD-L1阻害剤、CD4/CDK6阻害剤、EGFR阻害剤、ERK阻害剤、オーロラA阻害剤、SHP2阻害剤、白金剤、及びペメトレキセドのうちの1つ以上、又はそれらの薬学的に許容される塩と、を含む、組み合わせが提供される。
【0054】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、PD-1又はPD-L1阻害剤とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんの治療に使用するための、PD-1又はPD-L1阻害剤と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、PD-1又はPD-L1阻害剤と、を含む、組み合わせが提供される。本明細書で使用される場合、PD-1又はPD-L1阻害剤は、ペンブロリズマブであり得るか、PD-1若しくはPD-L1阻害剤は、ニボルマブであり得るか、PD-1若しくはPD-L1阻害剤は、セミプリマブであり得るか、PD-1若しくはPD-L1阻害剤は、シンチリマブであり得るか、PD-1若しくはPD-L1阻害剤は、アテゾリズマブであり得るか、PD-1若しくはPD-L1阻害剤は、アベルマブであり得るか、PD-1若しくはPD-L1阻害剤は、デュルバルマブであり得るか、又はPD-1若しくはPD-L1阻害剤は、ロダピリマブ(lodapilimab)であり得る。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得るか、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得るか、又はがんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本明細書に記載の方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療する方法も含む。
【0055】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、CDK4/CDK6阻害剤、又はその薬学的に許容される塩とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療に使用するために、CDK4/CDK6阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、CDK4/CDK6阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と、を含む、組み合わせが提供される。本明細書で使用される場合、CDK4/CDK6阻害剤は、アベマシクリブであり得るか、CDK4/CDK6阻害剤は、パルボシクリブであり得るか、又はCDK4/CDK6阻害剤は、リボシクリブであり得る。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本明細書に記載の方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療することも含む。
【0056】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、EGFR阻害剤、又はその薬学的に許容される塩とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんの治療のために、EGFR阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、EGFR阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と、を含む、組み合わせが提供される。本明細書で使用される場合、EGFR阻害剤は、エルロチニブであり得、EGFR阻害剤は、アファチニブであり得、EGFR阻害剤は、ゲフィチニブであり得、EGFR阻害剤は、セツキシマブであり得る。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得るか、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得るか、又はがんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本明細書に記載の方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療する方法も含む。
【0057】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、ERK阻害剤、又はその薬学的に許容される塩とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療のために、ERK阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、ERK阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と、を含む、組み合わせが提供される。本明細書で使用される場合、ERK阻害剤は、LY3214996であり得るか、ERK阻害剤は、LTT462であり得るか、又はERK阻害剤は、KO-947であり得る。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本明細書に記載の方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療することも含む。
【0058】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、オーロラA阻害剤とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療のために、オーロラA阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、オーロラA阻害剤と、を含む、組み合わせが提供される。本明細書で使用される場合、オーロラA阻害剤は、アリセルチブ、トザセルチブ、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:2-メチルプロパン-2-アミン(1:1)塩、及び(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:アミン(1:1)塩、又はそれらの薬学的に許容される塩であり得るが、これらに限定されない。一実施形態では、オーロラA阻害剤は、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療することも含む。
【0059】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、SHP2阻害剤とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療のために、SHP2阻害剤、又はその薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、SHP2阻害剤と、を含む、組み合わせが提供される。本明細書で使用される場合、SHP2阻害剤、又はその薬学的に許容される塩は、I型SHP2阻害剤又はII型SHP2阻害剤であり得る。I型SHP2阻害剤の例としては、PHPS1、GS-493、NSC-87877、NSC-117199、及びセフスロジン、並びにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。II型SHP2阻害剤の例としては、JAB-3068、JAB-3312、RMC-4550、RMC-4630、SHP099、SHP244、SHP389、SHP394、TN0155、RG-6433、及びRLY-1971、並びにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。SHP2阻害剤の追加の例としては、BBP-398、IACS-15509、IACS-13909、X37、ERAS-601、SH3809、HBI-2376、ETS-001、及びPCC0208023、並びにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療することも含む。
【0060】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、白金剤とを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療に使用するために、白金剤、又はその薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、白金剤と、を含む、組み合わせが提供される。本明細書で使用される場合、白金剤は、シスプラチンであり得るか、白金剤は、カルボプラチンであり得るか、又は白金剤は、オキサリプラチンであり得る。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、非小細胞肺がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本明細書に記載の方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療することも含む。
【0061】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、ペメトレキセドとを投与することを含み、がんが、変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、方法も提供される。更に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療のために、ペメトレキセドと同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせて使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。追加的に、がんが変異体KRas G12Dタンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、がんの治療に同時に、別個に、又は順次使用するための、式I~IVのうちのいずれか1つに従う化合物、又はその薬学的に許容される塩と、ペメトレキセドと、を含む、組み合わせが提供される。本明細書に記載されるように、がんは、KRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する。更に、白金剤を患者に投与することもできる(白金剤は、シスプラチン、カルボプラチン、又はオキサリプラチンであり得る)。本明細書に記載されるように、がんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、結腸直腸がんであり得るか、又はがんは、がんがKRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有する、変異体膵臓がんであり得る。本明細書に記載の方法は、KRas G12D変異体を有する他の起源のがんを治療することも含む。
【0062】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、臨床的使用及び/又は獣医学的使用に許容されるとみなされる化合物の塩を指す。薬学的に許容される塩及びそれらを調製するための一般的な方法論の例は、「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」P.Stahl,et al.,2nd Revised Edition,Wiley-VCH,2011及びS.M.Berge,et al.,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,1977,66(1),1-19に見出すことができる。
【0063】
本明細書に記載の式I~IVの化合物を含有する薬学的組成物は、薬学的に許容される添加剤を使用して調製してもよい。薬学的組成物について本明細書で使用される「薬学的に許容される添加剤」という用語は、組成物又は製剤の他の添加剤と適合性であり、かつ患者に有害ではない1つ以上の担体、希釈剤、及び賦形剤を指す。薬学的組成物及びその調製のためのプロセスの例は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」,Loyd,V.,et al.Eds.,22ndEd.,Mack Publishing Co.,2012に見出すことができる。薬学的に許容される担体、希釈剤、及び賦形剤の非限定的な例としては、生理食塩水、水、デンプン、糖、マンニトール、及びシリカ誘導体;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、及びポリビニルピロリドンなどの結合剤;カオリン及びベントナイト;並びにポリエチルグリコールが挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、がん性病変又は異常な細胞増殖及び/若しくは細胞分裂の進行などの障害又は疾患の治療において有効な用量である量を指す。主治医であれば、当業者として、従来の技術を使用して、かつ類似の状況下で得られた結果を観察することによって、有効量を容易に決定することができる。治療の1日当たりの投与量は、通常、1日当たり又は1日2回約1mg~1日当たり又は1日2回1000mg、より好ましくは1日当たり又は1日2回100mg~1日当たり又は1日2回900mgの範囲内である。化合物の有効量又は用量の決定において考慮される因子としては、以下が挙げられる:化合物又はその塩が投与されるかどうか;使用される場合、他の薬剤の同時投与;治療される患者の種類;患者のサイズ、年齢、及び全般的健康状態;障害の程度又は関与又は重症度;個々の患者の応答、投与様式、投与される調製物のバイオアベイラビリティ特徴、選択された投与レジメン;及び他の併用薬の使用。
【0065】
治療担当医、獣医、又は他の医療従事者は、治療を必要とする患者の治療のための化合物の有効量を決定することができるであろう。好ましい薬学的組成物は、経口投与用の錠剤若しくはカプセル剤、経口投与用の液剤、又は注射用液剤として製剤化することができる。錠剤、カプセル剤、又は溶剤は、がんの治療を必要とする患者を治療するための有効量の本発明の化合物を含むことができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」、又は「治療」という用語は、既存の症状、障害、状態の進行又は重症度を遅らせるか、軽減するか、又は逆転させることを含み、これは、特に、がん性病変の成長又は異常な細胞増殖及び/若しくは細胞分裂の進行を遅らせることを含むことができる。
【0067】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、治療を必要とする哺乳動物を指す。好ましくは、患者は、がん、例えば、KRas G12D変異体を有するがんの治療を必要とするヒトである。
【0068】
特定の略語は、以下のように定義される。「ACN」は、アセトニトリルを指し、「AIBN」は、アゾビスイソブチロニトリルを指し、「Boc-Gly-OH」は、N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシンを指し、「DCM」は、ジクロロメタンを指し、「DIEA」は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指し、「(dippf)Rh(cod)BF4」は、[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン](1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレートを指し、「DMAP」は、4-ジメチルアミノピリジンを指し、「DMEA」は、N,N-ジメチルエチルアミンを指し、「DMEM」は、ダルベッコ改変イーグル培地を指し、「DMF」は、N,N-ジメチルホルムアミドを指し、「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを指し、「DNA」は、デオキシリボ核酸を指し、「DPEPhosPdCl2」は、ジクロロビス(ジフェニルホフィノフェニル)エーテルパラジウム(II)を指し、「DTT」は、ジチオスレイトールを指し、「EDTA」は、エチレンジアミン四酢酸を指し、「EGTA」は、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸を指し、「ELISA」は、酵素結合免疫吸着アッセイを指し、「ERK」は、細胞外シグナル調節キナーゼを指し、「EtOAc」は、酢酸エチルを指し、「EtOH」は、エタノールを指し、「FBS」は、ウシ胎児血清を指し、「GDP」は、グアノシン二リン酸を指し、「GTP」は、グアノシン三リン酸を指し、「HATU」は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートを指し、「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィを指し、「HRP」は、西洋ワサビペルオキシダーゼを指し、「IPA」は、イソプロピルアルコールを指し、「IPAm」は、イソプロピルアミンを指し、「KOAc」は、酢酸カリウムを指し、「LC-ES/MS」は、液体クロマトグラフ-エレクトロスプレー質量分析法を指し、「LC/MS」は、液体クロマトグラフィ質量分析法を指し、「L-プロリノール」は、[(2S)-ピロリジン-2イル]メタノールを指し、「MAPK」は、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼを指し、「mCPBA」は、3-クロロ-ペルオキシ安息香酸を指し、「MeOH」は、メタノールを指し、「MTBE」は、メチルtert-ブチルエーテルを指し、「NaOMe」は、ナトリウムメトキシドを指し、「NBS」は、N-ブロモスクシンイミドを指し、「NCS」は、N-クロロスクシンイミドを指し、「N-メチル-L-プロリノール」は、[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メタノールを指し、「NMP」は、1-メチルピロリジン-2-オンを指し、「PCR」は、ポリメラーゼ連鎖反応を指し、「Pd(dppf)Cl2」は、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を指し、「RPMI」は、ロズウェルパーク記念研究所を指し、「SCX」は、強カチオン交換を指し、「SPE」は、固相抽出を指し、SPhos:2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニルであり、「TBDMSCl」は、tert-ブチルジメチルシリルクロリドを指し、「TEA」は、トリエチルアミンを指し、「TFA」は、トリフルオロ酢酸を指し、「THF」は、テトラヒドロフランを指し、XPhos:2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリ-i-プロピル-1,1’-ビフェニルである。
【0069】
個々の異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、及びアトロプ異性体は、選択的結晶化技法又はキラルクロマトグラフィなどの方法により、以下に列記される化合物の合成の任意の好都合な時点で分離又は分割され得る(例えば、J.Jacques,et al.,「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」,John Wiley and Sons,Inc.,1981,及びE.L.Eliel and S.H.Wilen,「Stereochemistry of Organic Compounds」,Wiley-Interscience,1994参照)。本明細書に記載の分子には、アトロプ異性体であり、かつ異なる配座で存在し得るか、又は異なる回転異性体として存在し得る化合物が含まれる。アトロプ異性体は、単結合の周りの制限された回転から生じる異なる配座で存在する化合物である。アトロプ異性体は、単結合の周りの回転に対するエネルギー障壁が十分に高く、かつ相互変換速度が個々の回転異性体を互いに分離させるのに十分に遅い場合、別個の化学種として単離され得る。この説明は、本明細書に開示される化合物に可能な、又は本明細書に開示される化合物を使用して作製され得る、異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、及びアトロプ異性体の全てを含むよう意図されている。本明細書に記載の分子において、キラル中心の絶対配座(又はアトロプ異性体配座)が知られている分子のみが、キラリティー又はアトロプ異性を示すために描かれた命名規則又は化学式を使用している。当業者であれば、いつ他のキラル中心が本明細書に記載の分子に存在するかを容易に理解し、それを特定することができるであろう。
【0070】
化学的に塩を形成することができる式I~IVのうちのいずれか1つの化合物は、薬学的に許容される塩に容易に変換され、薬学的に許容される塩として単離され得る。塩形成は、酸付加塩を形成するための薬学的に許容される酸の付加時に起こり得る。塩は、窒素又は酸素の脱保護時、すなわち、保護基の除去時に同時に形成することもできる。塩形成のための反応及び条件の例は、Gould,P.L.,「Salt selection for basic drugs,」International Journal of Pharmaceutics,33:201-217(1986);Bastin,R.J.,et al.「Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities,」Organic Process Research and Development,4:427-435(2000);及びBerge,S.M.,et al.,「Pharmaceutical Salts,」Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977)に見出すことができる。
【0071】
本発明の化合物又はその塩は、様々な手順によって調製してもよく、それらのいくつかを以下の調製及び実施例に例示する。記載される経路毎の特定の合成工程が異なる方式で組み合わせられるか、又は異なる経路の工程と併せられて、本発明の化合物又は塩を調製してもよい。以下の調製における各工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィ、濾過、粉砕、及び結晶化を含む、従来の方法によって回収することできる。
【0072】
調製1
1-tert-ブチル2-メチル(2S,3S)-3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート
【化18】
【0073】
DCM(20.00mL)中の1-tert-ブチル2-メチル(2S,3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(500.00mg、2.039mmol、1.00当量)及びイミダゾール(416.33mg、6.117mmol、3.00当量)の撹拌混合物に、TBDMSCl(768.13mg、5.098mmol、2.5当量)を室温で添加した。得られた混合物を2時間撹拌した。得られた混合物を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製し、DCM/MeOH/NH4OH(150:10:1~50:10:1)で溶出して、生成物(600mg、82%)を白色の固形物として得た。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ4.45-4.36(m,1H),3.97-3.86(m,1H),3.66(d,3H),3.48-3.34(m,2H),2.03-1.91(m,1H),1.80-1.69(m,1H),1.36(d,9H),0.86(s,9H),0.07(s,6H)。
【0074】
調製2
[(2R,3S)-3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-1-メチルピロリジン-2-イル]メタノール
【化19】
【0075】
THF(10mL)中の1-tert-ブチル2-メチル(2S,3S)-3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]ピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(540mg、1.5mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、LiAlH4(4.5mL、4.5mmol、3.0当量、THF中1M)をN2雰囲気下0℃で添加した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。反応物を室温でH2Oでクエンチした。得られた混合物を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製し、DCM/MeOH/NH4OH(100:10:1~50:10:1)で溶出して、生成物(120mg、32.55%)を白色の固形物として得た。1H NMR(300MHz,DMSO-d6)δ4.09-3.99(m,1H),3.44-3.25(m,2H),2.86-2.77(m,1H),2.43-2.31(m,1H),2.27(s,3H),2.13-2.06(m,1H),1.90-1.71(m,1H),1.55-1.38(m,1H),0.82(s,9H),0.01(s,6H)。
【0076】
調製3
[2-(ヒドロキシメチル)-1-メチルピロリジン-2-イル]メタノール
【化20】
【0077】
MeOH(10.00mL)中の[2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-イル]メタノール(500.00mg、3.812mmol、1.00当量)及びHCHO(343.35mg、11.435mmol、3.00当量)を室温で0.5時間撹拌した。次いで、NaBH3CN(479.07mg、7.623mmol、2.00当量)を0℃でゆっくり添加した。得られた混合物を室温で4時間撹拌した。反応物を0℃でH2O(5ml)でクエンチした。得られた混合物をH2Oで希釈した。得られた混合物をEtOAc(200ml×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaCl水溶液(100ml×3)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルによって精製し、DCM/MeOH/NH4OH(100:10:1~100:20:1)で溶出して、生成物(400mg、72.3%)を黄色の油状物として得た。LC-MS:(ES+H,m/z)[M+H]+=146.1。1H NMR(400MHz,DMSO-d6+D2O)δ3.32-3.19(m,4H),2.66(t,2H),2.25(s,3H),1.62-1.48(m,4H)。
【0078】
調製4及び5
tert-ブチル(2S)-2-(1-ヒドロキシエチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(異性体1)
tert-ブチル(2S)-2-(1-ヒドロキシエチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(異性体2)
【化21】
【0079】
THF(100mL)中のtert-ブチル(2S)-2-アセチルピロリジン-1-カルボキシレート(5.0g、23.4mmol、1.00当量)の溶液に、THF中のLiAlH4(46.89mL、46.89mmol、2.00当量THF中1.0M)を0℃で添加した。得られた混合物を室温で3時間撹拌した。得られた混合物をH2O(3mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し、トルエン/アセトン(30:1~20:1)で溶出して、tert-ブチル(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)ピロリジン-1-カルボキシレート、異性体1(1.6g、31.7%)を無色の油状物として、及びtert-ブチル(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)ピロリジン-1-カルボキシレート、異性体2(2.0g、39.6%)を無色の油状物として得た。異性体1:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ3.97-3.87(m,2H),3.56-3.45(m,1H),3.33-3.26(m,1H),2.10-1.94(m,1H),1.88-1.76(m,1H),1.66-1.53(m,2H),1.49(s,9H),1.10(d,3H)。異性体2:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ3.75-3.72(m,2H),3.51-3.47(m,1H),3.30-3.25(m,1H),2.01-1.90(m,1H),2.04-1.68(m,2H),1.61-1.51(m,1H),1.49(s,9H),1.13(d,3H)。
【0080】
調製6
1-[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]エタノール、異性体1
【化22】
【0081】
THF(200mL)中のtert-ブチル(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)ピロリジン-1-カルボキシレート、異性体1(700.00mg、3.25mmol、1.00当量)の撹拌混合物に、LiAlH4(6.5mL、6.50mmol、2当量、THF中1M)をN2雰囲気下0℃で滴加した。次いで、混合物を70℃で2時間撹拌した。得られた混合物をH2O(3mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し、DCM/MeOH/NH4OH(100:5:2~90:10:2)で溶出して、生成物1-[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]エタノール(300mg、71.4%)を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.91-3.87(m,1H),3.19-2.95(m,1H),2.33(s,3H),2.30-2.22(m,1H),2.18-2.06(m,1H),1.83-1.72(m,1H),1.75-1.59(m,3H),1.12(d,3H)。
【0082】
調製7
1-[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]エタノール、異性体2
【化23】
【0083】
THF中のtert-ブチル(S)-2-(1-ヒドロキシエチル)ピロリジン-1-カルボキシレート、異性体2(600mg、2.79mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、LiAlH4(5.57mL、5.57mmol、2当量THF中1M)をN2雰囲気下0℃で滴加した。次いで、混合物を70℃で2時間撹拌した。得られた混合物をH2O(3mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し、DCM/MeOH/NH4OH(100:5:2~90:10:2)で溶出して、生成物1-[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]エタノール(220mg61.1%)を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.91-3.87(m,1H),3.19-2.95(m,1H),2.33(s,3H),2.30-2.22(m,1H),2.18-2.06(m,1H),1.83-1.72(m,1H),1.75-1.59(m,3H),1.12(d,3H)。
【0084】
調製8
[(2S)-1,2-ジメチルピロリジン-2-イル]メタノール
【化24】
【0085】
THF(15.00mL)中のtert-ブチル(2S)-2-(ヒドロキシメチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボキシレート(700.00mg、3.251mmol、1.00当量)の撹拌溶液に、LiAlH4(3.90mL、3.901mmol、1.20当量、THF中1M溶液)をN2雰囲気下0℃で添加した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。H2O(0.1mL)の添加によって、反応物をクエンチした。得られた混合物を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製し、DCM/MeOH/NH3H2O(150:10:1~100:10:1)で溶出して、生成物(190mg、45.23%)を淡褐色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ4.21(s,1H),3.18(s,2H),2.84-2.78(m,1H),2.54-2.47(m,1H),2.17(s,3H),1.84-1.76(m,1H),1.67-1.53(m,2H),1.44-1.33(m,1H),0.84(s,3H)。
【0086】
調製9
tert-ブチル(2S,4S)-2-(ヒドロキシメチル)-4-メチルピロリジン-1-カルボキシレート
【化25】
【0087】
THF(20mL)中の(2S,4S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-メチルピロリジン-2-カルボン酸(2.00g、8.72mmol、1.0当量)の撹拌混合物に、BH3-THF(43.62mL、43.62mmol、5.00当量、THF中1.0M)をN2雰囲気下0℃で滴加した。次いで、混合物を一晩撹拌した。得られた混合物をMeOH(8mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し、DCM/MeOH(30:1~15:1)で溶出して、生成物(1.5g、79.8%)を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.90-3.83(m,1H),3.67-3.60(m,1H),3.60-3.56(m,1H),3.51-.3.39(m,1H),2.15-1.97(m,2H),1.53-1.44(m,1H),1.40(s,9H),1.35-1.27(m,1H),1.08-0.95(m,1H),0.95(d,3H)。
【0088】
調製10
(2S,4S)-1,4-ジメチルピロリジン-2-イル]メタノール
【化26】
【0089】
THF(20mL)中のtert-ブチル(2S,4S)-2-(ヒドロキシメチル)-4-メチルピロリジン-1-カルボキシレート(1.50g、6.97mmol、1.00当量)の撹拌混合物に、LiAlH4(13.93mL、13.93mmol、2.00当量、THF中1M)をN2雰囲気下0℃で滴加した。混合物を70℃で2時間撹拌した。得られた混合物をH2O(3mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し、DCM/MeOH/NH4OH(100:5:2~90:10:2)で溶出して、生成物(600mg、66.6%)を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.61-3.57(m,1H),3.37-3.34(m,1H),2.85-2.78(m,1H),2.70-2.60(m,1H),2.46-2.40(m,1H),2.37-2.30(m,1H),2.23(s,3H),2.17-2.07(m,1H),2.05-2.01(m,1H),1.39-1.31(m,1H),0.98(d,3H)。
【0090】
調製11
(2S,4R)-1,4-ジメチルピロリジン-2-イル]メタノール
【化27】
【0091】
THF(10.0mL)中の(2S,4R)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-メチルピロリジン-2-カルボン酸(300.00mg、1.31mmol、1.00当量)の撹拌混合物に、LiAlH4(5.23mL、5.23mmol、4.0当量、THF中1M)を、N2雰囲気下-20℃で滴加した。混合物を-20℃で2時間撹拌し、次いで55℃で更に2時間撹拌した。得られた混合物をMeOH(8mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し、DCM/MeOH/NH4OH(45:1.5:1~45:3:1)で溶出して、生成物(90mg、53.2%)を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.58-3.52(m,1H),3.42-3.26(m,1H),3.14-3.05(m,1H),2.48-2.39(m,1H),2.26(s,3H),2.16-2.03(m,1H),1.95-1.80(m,2H),1.46-1.34(m,1H),0.92(d,3H)。
【0092】
調製12
[(1R,2S,5S)-3-メチル-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-イル]メタノール
【化28】
【0093】
THF(20mL)中の(1R,2S,5S)-3-(tert-ブトキシカルボニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-カルボン酸(300mg、1.32mmol、1.0当量)の撹拌混合物に、LiAlH4(6.60mL、6.60mmol、5.0当量、THF中1M)をN2雰囲気下-40℃で滴加した。得られた混合物をN2雰囲気下-40℃で2時間撹拌した。次いで、得られた混合物をN2雰囲気下50℃で4時間撹拌した。反応物を0℃でMeOH(1mL)でクエンチした。混合物を減圧下で濃縮し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製し、DCM/MeOH/NH4OH(100:10:0.5~100:20:0.5)で溶出して、生成物(90mg、53.6%)を無色の油状物として得た。LC-MS:(ES+H,m/z):[M+H]+=128.4。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.78(dd,1H),3.74-3.64(m,2H),3.13(d,1H),2.64-2.57(m,1H),2.53(dd,1H),2.31(s,3H),1.54-1.43(m,1H),1.38-1.29(m,1H),0.85-0.77(m,1H),0.41-0.35(m,1H)。
【0094】
調製13
[(1S,2S,5R)-3-メチル-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-イル]メタノール
【化29】
【0095】
THF(10mL)中の(1S,2S,5R)-3-(tert-ブトキシカルボニル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-カルボン酸(450mg、1.98mmol、1.0当量)の撹拌混合物に、LiAlH4(7.92mL、7.92mmol、4.0当量、THF中1M)をN2雰囲気下-20℃で滴加した。混合物を-20℃で2時間撹拌し、次いで55℃で更に2時間撹拌した。得られた混合物をMeOH(8mL)でクエンチし、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルで精製し、DCM/MeOH/NH4OH(90:3:0.5~90:6:0.5)で溶出して、生成物(200mg、79.4%)を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ3.58-3.52(m,1H),3.45-3.41(m,1H),3.26-3.21m,1H),2.64-2.58(m,1H),2.46-2.42(m,1H),2.29(s,3H),1.45-1.39(m,1H),1.35-1.28(m,1H),0.72-0.67(m,1H),0.19-0.16(m,1H)。
【0096】
調製14
((2S,4R)-4-フルオロ-1-メチルピロリジン-2-イル)メタノール
【化30】
【0097】
THF(200mL)中の1-(tert-ブチル)2-メチル(2S,4R)-4-フルオロピロリジン-1,2-ジカルボキシレート(20.0g、80.9mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、LiAlH4(485.3mL、485.3mmol、6.0当量、THF中1M)をN2雰囲気下-50℃で滴加した。得られた混合物をN2雰囲気下-50℃で1時間撹拌した。次いで、得られた混合物をN2雰囲気下70℃で2時間撹拌した。混合物を室温まで冷却させた。反応物を0℃でH2Oの添加によってクエンチした。得られた混合物をEtOAcで抽出した。合わせた有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製し、DCM/MeOH(5:1)で溶出して、生成物(2.94g、27.30%)を黄色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.22-5.00(m,1H),3.72(dd,1H),3.60-3.41(m,2H),3.10(s,1H),2.84-2.55(m,2H),2.41(s,3H),2.19-2.00(m,2H)。
【0098】
19F NMR(377MHz,CDCl3)δ-170.22。
【0099】
調製15
[(2S)-1-[2-(オキサン-2-イルオキシ)エチル]ピロリジン-2-イル]メタノール
【化31】
【0100】
ACN(10mL)中の[(2S)-ピロリジン-2-イル]メタノール(500mg、4.94mmol、1.0当量)及び2-(2-ブロモエトキシ)オキサン(1.09g、5.19mmol、1.05当量)及びK2CO3(1.37g、9.89mmol、2.0当量)を窒素雰囲気下、室温で撹拌した。得られた混合物をN2雰囲気下60℃で8時間撹拌した。混合物をH2O(100mL)で希釈した。得られた混合物をEtOAc(3×100ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaCl水溶液(3×50ml)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製し、(DCM:MeOH=15:1~5:1)で溶出して、生成物(1.05g、93%)を黄色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3+D2O)δ4.63(dd,1H),3.91-3.80(m,2H),3.63-3.59(m,1H),3.54-3.47(m,2H),3.38-3.33(m,1H),3.23(ddd,1H),3.03-2.97(m,1H),2.69(td,1H),2.62-2.55(m,1H),2.39-2.33(m,1H),1.89-1.81(m,2H),1.78-1.69(m,4H),1.61-1.50(m,4H)。
【0101】
調製16
[(2S)-1-(2-フルオロエチル)ピロリジン-2-イル]メタノール
【化32】
【0102】
[(2S)-ピロリジン-2-イル]メタノール(2.015g、19.92mmol)及び1-ブロモ-2-フルオロ-エタン(5.0g、39mmol)をDMEA(6.4mL、59mmol)中で合わせ、室温で約18時間撹拌した。混合物にLiOH(1.00g、41.7mmol)、続いてH2O(0.1mL)を投入し、室温で15分間撹拌した。次いで、MeOH(2mL)、続いてDCM(4mL)を添加し、室温で1時間撹拌した。次いで、DCM(100mL)を添加し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%ACN~90%ACN/10%のMeOH中2M NH3で溶出して、生成物(1.78g、61%)を白色の固形物として得た。MS(ES)m/z=148(M+1)。
【0103】
調製17
6-ブロモ-2,3-ジフルオロベンゼンメタノール
【化33】
【0104】
6-ブロモ-2,3-ジフルオロベンズアルデヒド(20.0g、88.7mmol)をMeOH(250mL)に溶解し、NaBH4(6.70g、177mmol)を少しずつ添加した。発熱反応を周囲温度まで冷却した後(約1時間)、反応混合物を飽和NH4Cl水溶液に注ぎ、DCMで3回抽出した。合わせた有機抽出物をH2O及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を高真空下で一晩乾燥させて、生成物(19.5g、97%)を白色の固形物して得た。1H NMR(CDCl3)δ7.37(1H,m),7.07(1H,m),4.88(2H,m),2.13(1H,m)。
【0105】
調製18
(6-ブロモ-2,3-ジフルオロフェニル)メタンスルホン酸メチル
【化34】
【0106】
6-ブロモ-2,3-ジフルオロベンゼンメタノール(19.5g、85.7mmol)をTHF(200mL)に溶解し、DIEA(18.0mL、103mmol)を添加した。混合物を0℃に冷却し、次いでメタンスルホン酸無水物(17.1g、94.2mmol)で処理した。周囲温度で18時間撹拌した後、混合物をEtOAc:MTBE(1:1)で希釈し、冷H2Oで洗浄した。層を分離し、水層をEtOAc:MTBE(1:1)で2回抽出した。合わせた有機物をH2O及び飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO4及びK2CO3で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、生成物(26.0g、定量的)を黄色の油状物として得た。1H NMR(CDCl3)δ7.44(1H,m),7.18(1H,m),5.43(2H,d),3.12(3H,s)。
【0107】
調製19
2-(6-ブロモ-2,3-ジフルオロ-フェニル)アセトニトリル
【化35】
【0108】
EtOH(200mL)及びH2O(40.0mL)中の(6-ブロモ-2,3-ジフルオロフェニル)メタンスルホン酸メチル(26.0g、82.0mmol)及びKCN(6.06g、90.3mmol)の混合物を0.5時間還流し、次いで周囲温度まで冷却した。溶媒を真空中で除去し、残留物をDCMに懸濁させた。混合物をH2O、飽和NaHCO3水溶液及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、10~100%DCM/ヘキサンで溶出して、生成物(17.9g、94%)を得た。1H NMR(CDCl3)δ7.44(1H,m),7.15(1H,m),3.91(2H,d)。
【0109】
調製20
エチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート
【化36】
【0110】
DMF(200mL)中の2-(6-ブロモ-2,3-ジフルオロ-フェニル)アセトニトリル(17.9g、77.2mmol)の溶液を氷浴中で冷却し、次いでtBuOK(9.30g、81.2mmol)で少しずつ処理した。添加後、混合物を10分間撹拌し、エトキシカルボニルイソチオシアネート(9.80mL、81.4mmol)を滴加した。反応混合物を周囲温度で1時間撹拌し、次いで100℃で0.5時間加熱した。次いで、混合物を氷浴中で10分間冷却し、H2O(500mL)を撹拌しながらゆっくり添加した。得られた沈殿物を濾過によって収集し、H2O及びヘキサンですすぎ、風乾した。固形物を更に真空オーブン中60℃で一晩乾燥させて、生成物(24.5g、84%)を得た。ES/MS m/z340.8[M-H]-。
【0111】
調製21
2-アミノ-4-ブロモ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化37】
【0112】
エチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート(24.5g、71.4mmol)、DMSO(100mL)、及び5N NaOH(80.0mL、400mmol)の混合物を4時間還流した。混合物を周囲温度まで冷却し、激しく撹拌しながら冷H2Oで処理した。得られた沈殿物を濾過によって収集し、H2Oで洗浄し、真空オーブン中65℃で一晩乾燥させて、生成物(15.5g、80%)を得た。ES/MS m/z268.8[M-H]-。
【0113】
調製22
tert-ブチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート
【化38】
【0114】
DCM(100mL)及びDMF(100mL)中の2-アミノ-4-ブロモ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル(16.0g、57.8mmol)及びDIEA(15.0mL、86.0mmol)の混合物を室温で5分間撹拌した。DMAP(700mg、5.73mmol)、続いてジ-tert-ブチルジカルボネート(14.5g、64.4mmol)を添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空中で除去し、高真空下で更に乾燥させた。残留物を10%クエン酸水溶液(200mL)及び1:1のEtOAc:MTBE(200mL)で処理した。15分間撹拌した後、得られた沈殿物を濾過によって収集し、H2O、続いてEt2Oで洗浄し、真空オーブン中60℃で一晩乾燥させて、表題化合物(17.6g)を黄色の固形物として得た。濾液の層を分離し、水層を1:1のEtOAc:MTBE(200mL)で抽出した。有機層を合わせ、飽和NaHCO3水溶液、続いて飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗い黄色の固形物を得、これをEtOAc/ヘキサンから再結晶化させて、追加の2gの表題化合物(全生成物収率19.6g、91%)を得た。ES/MS(m/z):370.8(M+H)。
【0115】
調製23
tert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化39】
【0116】
tert-ブチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート(16.0g、41.4mmol)及びビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン(37.0g、157mmol)をN2下1,4-ジオキサン(300mL)に溶解した。KOAc(12.2g、124mmol)を添加し、混合物を50℃で1時間、N2でスパージした。DPEPhosPdCl2(3.0g、4.2mmol)を添加し、フラスコを95℃で1時間加熱した。次いで、混合物を室温まで冷却し、約100mLに真空中で濃縮し、ヘプタン(200mL)で希釈し、10分間撹拌し、珪藻土に通して濾過し、ヘプタン及びヘプタン:MTBE(1:1)ですすいだ。濾液を濃縮し、最小のDCMに溶解し、シリカゲルのパッドに通して濾過し、EtOAc:ヘプタン(1:1)ですすいだ。濾液を飽和NH4Cl水溶液及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、5~50%(DCM中20%アセトン)/ヘキサンで溶出して、生成物(13.0g、78%)を得た。1H NMR(DMSO-d6)δ11.6(1H,s),7.61(1H,m),7.20(1H,m),3.78(4H,s),1.54(9H,s),1.03(6H,s)。
【0117】
調製24
(6-ブロモ-2-フルオロ-3-メチル-フェニル)メタノール
【化40】
【0118】
6-ブロモ-2-フルオロ-3-メチル-ベンズアルデヒド(米国特許出願公開第2015/0126449(A1)号、実施例120A、63頁参照)を、調製17の方法に類似した様式で使用して、表題化合物(13.42g、92.2%)を得た。1H NMR(400.13MHz,CDCl3)δ7.29(dd,J=8.1,1.0Hz,1H),7.05(dd,J=8.1,8.1Hz,1H),4.87(d,J=2.2Hz,2H),2.27(d,J=2.1Hz,3H)。
【0119】
調製25
(6-ブロモ-2-フルオロ-3-メチル-フェニル)メタンスルホン酸メチル
【化41】
【0120】
(6-ブロモ-2-フルオロ-3-メチル-フェニル)メタノールを調製18の方法に本質的に類似した様式で使用して、表題化合物(19g、定量的)を得た。1H NMR(400.13MHz,CDCl3)δ7.35(dd,J=8.1,1.0Hz,1H),7.16(dd,J=8.1,8.1,1H),5.44(d,J=2.1Hz,2H),3.10(s,3H),2.29(d,J=1.9Hz,3H)。
【0121】
調製26
2-(6-ブロモ-2-フルオロ-3-メチル-フェニル)アセトニトリル
【化42】
【0122】
(6-ブロモ-2-フルオロ-3-メチル-フェニル)メタンスルホン酸メチルを調製19の方法に類似した様式で使用して、表題化合物(8.45g、62.2%)を得た。1H NMR(400.13MHz,CDCl3)δ7.33(dd,J=8.1,1.2Hz,1H),7.11(dd,J=8.1,8.1Hz,1H),3.88(d,J=1.8Hz,2H),2.28(d,J=2.1Hz,3H)。
【0123】
調製27
エチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-メチル-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート
【化43】
【0124】
DMF(70mL)中の2-(6-ブロモ-2-フルオロ-3-メチル-フェニル)アセトニトリル(6.45g、28.3mmol)の溶液を氷水浴中で冷却し、次いでNaH(鉱油中60%、1.24g、31.1mmol)で処理した。混合物を20分間撹拌し、エトキシカルボニルイソチオシアネート(3.51mL、29.7mmol)を添加した。得られた混合物を80℃で一晩加熱した。混合物を室温まで冷却し、H2Oでクエンチした。沈殿物を濾過によって収集し、真空オーブン中60℃で一晩乾燥させた。わずかに黄褐色の固形物をDCM(50mL)で希釈し、加熱して沸騰させ、超音波処理して残りの固形物を分解した。得られた白色の固形物を濾過によって収集して、生成物(2.72g、28%)を得た。ES/MS(m/z):339.0(M+H)。
【0125】
調製28
2-アミノ-4-ブロモ-7-メチル-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化44】
【0126】
エチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-メチル-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート(調製20から)を、反応物を100℃で2日間加熱したことを除いて、調製21の方法に類似した様式で使用して、表題化合物(1.9g、90%)を得た。ES/MS(m/z):267.0(M+H)。
【0127】
調製29
tert-ブチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-メチル-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート
【化45】
【0128】
2-アミノ-4-ブロモ-7-メチル-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル(調製21から)を、THFを反応溶媒として使用して調製22の方法と同様の様式で使用して、表題化合物(1.7g、64%)を得た。ES/MS(m/z):367.0(M+H)。
【0129】
調製30
tert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-メチル-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化46】
【0130】
トルエン(60mL)中のtert-ブチルN-(4-ブロモ-3-シアノ-7-メチル-ベンゾチオフェン-2-イル)カルバメート(1.60g、4.36mmol)及びKOAc(1.07g、10.9mmol)の混合物を175℃の反応ブロック中で加熱して、いずれのH2Oもディーン・スタークトラップ中に除去した。溶液を50℃に冷却し、ビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン(1.25g、5.53mmol)及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.153g、0.218mmol)で処理し、80℃まで一晩加熱した。反応混合物をEtOAcで希釈し、10分間撹拌し、珪藻土に通して濾過した。濾液を飽和NaHCO3水溶液、続いて飽和NaCl水溶液で2回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、10~40%(DCM中20%アセトン)/ヘキサンで溶出して、生成物(1.02g、58.5%)を白色の固形物として得た。ES/MS(m/z):277.0(M-tBu-CH2C(Me)2CH2+H)。1H NMR(400.13MHz,DMSO-d6):δ11.27(s,1H),7.49(d,J=7.2Hz,1H),7.16(d,J=7.2Hz,1H),3.77(s,4H),3.32(s,1H),2.49(s,3H),1.54(s,9H),1.03(s,6H)。
【0131】
【0132】
スキーム1は、キナゾリン化合物(10)の調製を示す。周知の条件を使用して、市販の4-アミノ-2,3-ジフルオロ-安息香酸(1)を、限定されないが、NCS、SO2Cl2、Cl2、及び1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントインなどの様々な好適な試薬で塩素化して、塩素化安息香酸(2)を供給してもよい。塩素化安息香酸(2)を当業者に既知の典型的なザンドマイヤー条件に供して、4-ブロモ-5-クロロ-2,3-ジフルオロ-安息香酸(3)を提供する。4-ブロモ-5-クロロ-2,3-ジフルオロ-安息香酸(3)をアルキル化チオ尿素又はその好適な塩で処理して、アリールスルファニルカルボンイミドイル(4)を得てもよい。その後のアリールスルファニルカルボンイミドイル(4)の環化は、適切な極性非プロトン性溶媒中での加熱により達成されて、キナゾリン(7)を得てもよく、当業者であれば、代替として、市販の2-アミノ-4-ブロモ-3-フルオロ-安息香酸から出発して合成し、前述の条件下で塩素化して、2-アミノ-4-ブロモ-5-クロロ-3-フルオロ-安息香酸(5)を供給してもよいこととを認識するであろう。2-アミノ-4-ブロモ-5-クロロ-3-フルオロ-安息香酸(5)は、対応する酸塩化物を形成し、続いてチオシアン酸アンモニウムを添加することによって、キナゾリン(6)に環化してもよい。2-チオキソキナゾリン-4-オン(6)は、塩基性条件下及び好適なアルキル求電子剤の添加下で、対応するアルキル化キナゾリンスルフィド(7)に変換してもよい。多数の適切な保護基をキナゾリン(7)に付加して、保護キナゾリン(10)を提供してもよい。また、2-アミノ-4-ブロモ-5-クロロ-3-フルオロ-安息香酸(5)を用いて、加熱下で尿素を添加することによってキナゾリン(10)への途中でキナゾリン-2,4-ジオン(8)を供給してもよい。当業者であれば、ジオン(8)が、塩化ホスホリル又は同様の塩素化試薬の使用によって塩素化されてもよいことを認識するだろう。キナゾリン上の窒素原子に隣接する塩素を選択的に置き換えて、置換キナゾリン(10)を提供してもよい。
【0133】
【0134】
スキーム2は、ベンゾチオフェン置換キナゾリン化合物(17)の調製を示す。チオエーテル(11)をDCM中のmCPBA又は他の好適な酸化剤で酸化して、スルホン(12)を供給してもよい。極性非プロトン性溶媒、例えば、THF及び様々なヘテロシクリルアルキルアルコール中で強い非求核性塩基を使用するスルホン部分の求核性芳香族置換(一般的にSNArとして知られている)により、置換キナゾリン(14)を得る。代替として、SNArは、塩化アリール(13)を前述のアルコール及び化学量論量のKFとともにDMSO中で加熱することによって達成してもよい。Cs2CO3などの塩基とビス(2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル)エーテル配位子が当業者に周知である様々なパラジウム(II)錯体とを使用して、スズキ条件下でベンゾチオフェンボロン酸エステルとのブロモ-キナゾリン(14)のアリールカップリングを達成して、ビス-アリール化合物(15)を得てもよい。その後の保護基の除去を、使用する保護基に適切な方法、例えば、DCM中のTFAによるBOC除去によって達成してもよい。キナゾリン(16)上の複素環基を、HATUなどの典型的なアミドカップリング試薬、DMFなどの極性非プロトン性溶媒、及び非求核性塩基下でアシル化して、アミド(17)を得てもよい。
【0135】
【0136】
スキーム3は、2,7-置換キナゾリン化合物(25)の調製を示す。クロロ-キナゾリン(18)を、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン配位子などの好適なパラジウム-配位子錯体、及びNaBH3CN+N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなどの塩基を使用することによって脱塩素化して、ヒドリド置換キナゾリン(19)を形成してもよい。キナゾリン(19)を2つの合成経路で集中的に使用して、異なる置換点へのアクセスを得てもよい。ブロモ-キナゾリン(19)のスズキカップリングにより、ビス-アリール(20)を得、これをチオエーテル部分で酸化してスルホン(21)を産生してもよい。次いで、これは、キナゾリン(24)へのエーテル部分の導入のためのSNAr反応を設定する。代替として、チオエーテル(19)の酸化を直接行って、ヘテロシクリルアルキルアルコール部分のSNAr導入を可能にして、様々なキナゾリン(23)を得てもよい。次いで、スズキアリールカップリングにより、ビス-アリール化合物(24)を得、これは2つの経路の収束を表し、次いでこれを脱保護して、置換キナゾリン(25)を産生してもよい。
【0137】
【0138】
スキーム4は、キナゾリン化合物(32)の調製を示す。クロロ-キナゾリン(26)のC-4中心で適切な置換スルフィドにより求核置換して、チオエーテル(27)を得る。ブロモ-キナゾリン(27)と置換ベンゾチオフェンボロン酸エステルとのスズキカップリングにより、置換キナゾリン化合物(28)を得、これを適切な複素環求核試薬によって置換して、更に置換キナゾリン(31)を得てもよい。代替として、4,7二置換キナゾリン(31)は、4-クロロ又は4-ヒドロキシキナゾリン(29)のいずれかから、求核置換を介して適切な複素環をキナゾリン(30)に導入することによって構築してもよい。同様のパラジウム触媒スズキ・ミヤウラカップリング条件を用いて、保護ビス-アリール(31)を得てもよい。先に詳述したように、保護アミノチオフェン(31)は、当業者に周知の様々な条件下で脱保護してもよい。
【0139】
【0140】
スキーム5は、(36)の化合物の合成を示す。前述の4-クロロキナゾリン(26)を、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、又はカリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの好適な非求核性塩基を使用して、適切なジカルボキシレートと選択的にカップリングさせて、四級酢酸メチル(33)を提供してもよい。当業者であれば、キナゾリンエステル(33)を、金属触媒作用、光酸化還元触媒作用、又はクラプコ条件などの様々な条件下で、好適な極性非プロトン性溶媒、無機塩、及び熱を利用して脱炭酸して、メチンキナゾリン(34)を供給してもよいことを認識するであろう。パラジウム触媒化スズキ・ミヤウラカップリング条件を、7-ブロモキナゾリン(34)に対して用いて、アリール-アリール結合形成に影響を与え、置換キナゾリン(35)を生成してもよい。追加的に、先に詳述したように、保護アミノチオフェン(35)を、当業者に周知の様々な条件下で脱保護してもよい。
【0141】
【0142】
スキーム6は、化合物42の合成を示す。市販の6-ブロモ-7-クロロ-8-フルオロ-キノリン(37)を、チチバビン型プロセスにおいてAgF2で酸化して、6-ブロモ-7-クロロ-8-フルオロ-キノリン(38)を得てもよい。当業者であれば、α-フッ素化キノリン(38)を、N-メチル-L-プロリノール及び好適な非求核性塩基(例えば、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、又はカリウムビス(トリメチルシリル)アミド)の溶液に添加することにより、置換キノリン(39)を提供することを認識するだろう。アルキル基を6-ブロモキノリン(39)上で選択的に置換して、典型的なパラジウム触媒化スズキ・ミヤウラカップリング条件を使用して、アルキル化キノリン(40)を提供してもよい。前述のように、同様の条件を7-クロロキノリン(40)に対して更に用いて、アリール-アリール結合形成に影響を与え、ビス-アリール(41)を生成してもよい。追加的に、先に詳述したように、保護アミノチオフェン(41)を、当業者に周知の様々な条件下で脱保護してもよい。
【0143】
調製31
4-アミノ-5-クロロ-2,3-ジフルオロ安息香酸
【化53】
【0144】
ACN(400mL)中の4-アミノ-2,3-ジフルオロ-安息香酸(33.3g、192mmol)の溶液に、NCS(34.5g、251mmol、1.30当量)を数回に分けて投入した。反応物を80℃で1.5時間加熱した。フラスコを氷浴に入れ、温度が約10℃に達したら、1.2L(3体積)のH2Oを約1時間かけて滴加した。固形物を濾過し、500mLのH2Oですすぎ、真空下に放置して乾燥させた(バッチ1)。濾液をEtOAc(2×1L)で更に抽出し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して固形物にした。固形物をH2O(1L)で2時間スラリー化し、次いで濾過し、真空下で乾燥させた(バッチ2)。バッチを合わせて、生成物(25.9g、65%)を黄褐色の固形物として得た。MS(ES)m/z=162(M-CO2H)。1H NMR(399.80MHz,DMSO-d6):δ7.88(dd,J=2.2,6.2Hz,1H)。
【0145】
調製32
4-ブロモ-5-クロロ-2,3-ジフルオロ安息香酸
【化54】
ACN(200mL)及びCuBr
2(25.8g、116mmol、2.00当量)の懸濁液を加熱マントルに入れ、温度調節器をオンにして78℃にした。混合物を加熱しながら、tert-亜硝酸ブチル(30mL、227mmol、3.9当量)を10分かけて滴加した。混合物を78℃で15分間加熱し、次いで4-アミノ-5-クロロ-2,3-ジフルオロ-安息香酸(12.00g、57.81mmol)を数回に分けて添加した。混合物を78℃で約7時間加熱した。混合物を濃縮し、EtOAc(200mL)を添加し、それを1N HCl(2×100mL)、飽和NaHSO
3水溶液(100mL)、及び飽和NaCl水溶液(100mL)で洗浄した。有機物を無水Na
2SO
4で乾燥させ、次いでこれを濾過し、濃縮し、ハウスバキューム下室温で乾燥させて、生成物(14g、89%)を黄褐色の固形物として得た。MS(ES-)m/z=262(M-CO
2H)。
1H NMR(399.80MHz,DMSO-d6):δ7.88(dd,J=2.2,6.2Hz,1H)、
【0146】
調製33
4-ブロモ-5-クロロ-N-(エチルスルファニルカルボンイミドイル)-2,3-ジフルオロ-ベンズアミド
【化55】
【0147】
ACN(30mL)中の4-ブロモ-5-クロロ-2,3-ジフルオロ-安息香酸(2.0g、6.1mmol)の懸濁液に、S-エチルイソチオ尿素臭化水素酸塩(2.11g、11.2mmol、1.8当量)、DIEA(2.6mL、15mmol、2.4当量)、HATU(4.33g、11.2mmol、1.8当量)を投入し、室温で15分間撹拌した。沈殿物を濾過した。濾液をH2O(120mL)で滴下処理し、室温で15分間撹拌した。固形物を濾過し、ハウスバキューム下50℃で放置して、生成物(1.86g、75%)を薄橙色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=359(M+1)。
【0148】
調製34
7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-3H-キナゾリン-4-オン
【化56】
【0149】
NMP(80mL)中の4-ブロモ-5-クロロ-N-(エチルスルファニルカルボンイミドイル)-2,3-ジフルオロ-ベンズアミド(8.6g、24mmol)の溶液を100℃で6時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、240mLのH2Oで滴下処理し、室温で2時間撹拌した。固形物を濾過し、真空下50℃で乾燥させた。固形物を40mLのDCMとともに0.5時間撹拌し、濾過して生成物(5.22g、64%)を得た。MS(ES+)m/z=338(M+1)。
【0150】
調製35
7-ブロモ-4,6-ジクロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン
【化57】
【0151】
DCM(75mL)中の7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-3H-キナゾリン-4-オン(5.2g、15mmol)の懸濁液に、(クロロメチレン)ジメチルイミニウムクロリド(7.96g、31.1mmol、4.0当量)を投入し、室温で18時間撹拌した。反応混合物を100mLのH2Oに注ぎ、分配し、飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機物を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、ヘキサン中10%~60%DCMの勾配で溶出して、生成物(5.1g、93%)を白色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=338(M+1)。
【0152】
調製35a
tert-ブチル9-(7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル)-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート
【化58】
【0153】
7-ブロモ-4,6-ジクロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン(0.34g、0.96mmol)を、ACN(5mL)及びDMF(2mL)中のtert-ブチル3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート(0.25g、1.0mmol、1.1当量)及びDIPEA(0.33mL、1.9mmol、2当量)を有するバイアルに入れ、室温で2時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、H2O及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して油状物にした。油状物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%ヘキサンからヘキサン中30%EtOAcの勾配で溶出して、生成物(0.483g、92%)を黄褐色の固形物として得た。MS(ES)m/z=547/549(M+1)。
【0154】
調製36
tert-ブチル9-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート
【化59】
【0155】
7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート(0.480g、0.8761mmol)を、25mLバイアル中で、トルエン(11mL)中のtert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.460g、1.14mmol)、Cs2CO3(0.874g、2.6mmol)、及びジクロロ[ビス(2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル)エーテル]パラジウム(II)(0.128g、0.17mmol)と合わせた。バイアルに蓋をし、N2/真空(2回)で交互にパージした。バイアルを加熱ブロックに入れ、120℃で2時間加熱した。反応物をEtOAcで希釈し、珪藻土で濾過し、EtOAcですすいだ。濾液を濃縮し、100%ヘキサンからヘキサン中40%EtOAcの勾配で精製して、生成物(0.385g、58%)を橙色のゴム状固形物として得た。MS(ES)m/z=760(M+1)。
【0156】
調製37
tert-ブチル9-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート
【化60】
【0157】
tert-ブチル9-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート(0.385g、0.51mmol)及びmCPBA(0.220g、1.27mmol)をDCM(10mL)中、室温で1時間撹拌した。反応物をDCMで希釈し、H2O及びNa2S2O3で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して油状物にした。油状物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製し、100%ヘキサンからヘキサン中60%EtOAcの勾配で溶出して、生成物(0.205g、32%)を得た。MS(ES)m/z=792(M+1)。
【0158】
調製38
tert-ブチル9-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート
【化61】
【0159】
THF中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1mol/L)をN-メチル-L-プロリノール(0.02mL、0.2mmol)の溶液に添加し、5分間撹拌した。THF(0.5mL)中のtert-ブチル9-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート(0.060g、0.076mmol)を添加し、室温で0.5時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、濃縮して、粗生成物(61mg、定量的)を油状物として得た。
【0160】
実施例1
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]-4-(3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-9-イル)キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化62】
【0161】
tert-ブチル9-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート(0.060g,0.074mmol)をDCM(2mL)及びTFA(1mL)中、室温で1時間撹拌した。混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%DCMからDCM中10%のMeOH中2N NH3の勾配で溶出して、生成物(0.024g、53%)を白色の固形物として得た。MS(ES)m/z=612(M+1)。
【0162】
表3の実施例化合物は、実施例に記載した様式と同様の様式で、C4で適切なピペラジン誘導体及びC2で適切なアルコールを使用して調製した。当業者には明らかであろう様々な方法を使用して、化合物を精製した。
【表3-1】
【表3-2】
【0163】
調製39
2-アミノ-4-ブロモ-5-クロロ-3-フルオロ-安息香酸
【化63】
【0164】
2-アミノ-4-ブロモ-3-フルオロ-安息香酸(200.0g、854mmol)をDMF(850mL)に添加し、続いてNCS(114.7g、854mmol)を4等分して15分毎に添加した。混合物を室温で約18時間撹拌した。別の部分のNCS(23.8g、179mmol)を添加し、反応物を室温で更に72時間撹拌した。混合物をH2O(4L)に注ぎ、撹拌し、濾過し、ハウスバキューム下50℃で乾燥させて、生成物(214g、93%)をベージュ色の固形物として得た。MS(ES)m/z=267(M-1)。
【0165】
調製40
7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-チオキソ-1H-キナゾリン-4-オン
【化64】
【0166】
2-アミノ-4-ブロモ-5-クロロ-3-フルオロ-安息香酸(213.7g、795.9mmol)をSOCl2(500mL)に5~10分かけて少しずつ添加した。次いで、フラスコにHClトラップを取り付け、5時間還流加熱した。均質な混合物を室温まで冷却し、18時間撹拌した。混合物を濃縮し、DCM(約500mL)を添加し、減圧下で2回除去した。オーバーヘッドスターラー及び内部温度計を備えた別の5Lフラスコに、NH4SCN(68g、871mmol)及びアセトン(530mL)を投入し、N2のブランケット下に入れた。アセトン(1060mL)中の酸塩化物の溶液を、内部温度を55℃以下に維持する速度で1時間かけて添加漏斗を介して添加した。反応物を撹拌し、撹拌しながら18時間冷却した。混合物を約500mLに濃縮した。固形物を濾過によって収集し、スラリー化し、アセトンで3回すすぎ、真空下で18時間乾燥させて、生成物(270g、90%)を淡褐色の固形物として得た。MS(ES)m/z=307(M-1)。
【0167】
調製41
7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルファニル-1H-キナゾリン-4-オン
【化65】
【0168】
7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-チオキソ-1H-キナゾリン-4-オン(106.6g、241mmol)を含有するフラスコに、EtOH(1.2L)、H2O(51mL、255mmol)中のNaOH(5mol/L)、続いてCH3I(15.7mL、252mmol)を5分間にわたって添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。DCM(400mL)及びMeOH(200mL)を導入して、均質な溶液を得るのを助けた。更にH2O(14.5mL、72.5mmol)中のNaOH(5mol/L)及びCH3I(4.5mL、72mmol)を添加し、反応物を室温で18時間撹拌した。混合物をDCM(3L)に注ぎ、分配し、有機溶液を約100~200mLに濃縮した。固形物を濾過し、DCM、H2O、ACN、Et2Oですすぎ、真空下、約50℃で乾燥させて、生成物(18g、24%)を黄褐色の固形物として得た。MS(ES)m/z=321(M-1)。
【0169】
調製42
tert-ブチル-4-(7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルファニル-キナゾリン-4-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化66】
【0170】
DCM(110mL)中の7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルファニル-1H-キナゾリン-4-オン(18.2g、56.3mmol)、POCl3(13mL、138.1mmol)、及びDIEA(10mL、57.3mmol)の混合物を100℃で4時間加熱した。加熱を停止し、反応物を室温で18時間撹拌したままにした。混合物を真空中で濃縮し、DCMで2回共沸させ、ハウスバキューム下で乾燥させて、暗褐色の固形物(38.6g、56.4mmol)を得て、これを1,4-ジオキサン(110mL)及びDIEA(30mL、172mmol)に溶解し、tert-ブチルピペラジン-1-カルボキシレート(11g、57.88mmol)で処理した。得られた混合物をN2下、室温で1.5時間撹拌した。次いで、反応混合物をEtOAcと飽和NaHCO3水溶液と飽和NaCl水溶液とで分配した。層を分離し、水層をEtOAcで2回抽出した。有機層を合わせ、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、褐色の油状物にした。油状物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%ヘキサンからヘキサン中20%EtOAcで溶出して、生成物(20.2g、73%)を淡黄褐色の固形物として得た。MS(ES)m/z=491(M+1)。
【0171】
調製43
tert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルファニル-キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート
【化67】
【0172】
tert-ブチル4-(7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルファニル-キナゾリン-4-イル)ピペラジン-1-カルボキシレートを、調製36に記載した様式と同じ様式で調製して、生成物(6.8g、52%)を薄黄色の泡状物として得た。MS(ES)m/z=703(M+1)。
【0173】
調製44
tert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルホニル-キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート
【化68】
【0174】
tert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルファニル-キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレートを、調製37に記載した様式と同じ様式で調製して、生成物(5.6g、79%)を白色の粉末として得た。MS(ES)m/z=735(M+1)。
【0175】
調製45
[(2S)-1-アリルピロリジン-2-イル]メタノール
【化69】
【0176】
ACN(95mL)中のL-プロリノール(2.0g、19.2mmol)の溶液に、K2CO3(3.97g、28.8mmol)及び3-ブロモブロプ-1-エン(2.44g、20.1mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を撹拌し、N2下、18時間かけて室温までゆっくりと加温した。反応混合物を珪藻土に通して濾過し、EtOAcですすいだ。濾液を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、DCM中2%~10%MeOHで溶出して、生成物(1.9g、70%)を淡黄色の油状物として得た。MS(ES)m/z=142(M+1)。
【0177】
調製46
tert-ブチル4-[2-[[(2S)-1-アリルピロリジン-2-イル]メトキシ]-7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート
【化70】
【0178】
5mLのマイクロ波管に、予め乾燥させた粉末状の4Åモレキュラーシーブ(0.4g)及びCs2CO3(0.443g、1.36mmol)を投入し、100℃で2時間乾燥させた。予め乾燥させた管に、DMSO(1.0mL)中のtert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-メチルスルホニル-キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート(0.20g、0.27mmol)及び[(2S)-1-アリルピロリジン-2-イル]メタノール(0.154g、1.09mmol)の溶液を添加した。得られた混合物を100℃で1時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、濾過して固形物を除去した。有機物をH2O、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、ヘキサン中20%~30%アセトンの勾配で溶出して、生成物(0.18g、83%)を得た。MS(ES)m/z=796(M+1)。
【0179】
調製47
4-[2-[[(2S)-1-アリルピロリジン-2-イル]メトキシ]-6-クロロ-8-フルオロ-4-ピペラジン-1-イル-キナゾリン-7-イル]-2-アミノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化71】
【0180】
tert-ブチル4-[2-[[(2S)-1-アリルピロリジン-2-イル]メトキシ]-7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレートを、実施例1に記載した様式と同じ様式で調製して、生成物(0.078g、99%)を得た。MS(ES)m/z=596(M+1)。
【0181】
実施例10
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-4-ピペラジン-1-イル-2-[[(2S)-1-プロピルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化72】
【0182】
4-[2-[[(2S)-1-アリルピロリジン-2-イル]メトキシ]-6-クロロ-8-フルオロ-4-ピペラジン-1-イル-キナゾリン-7-イル]-2-アミノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル(38.4mg、0.0644mmol)を含有するバイアルをグローブボックスに入れ、撹拌子を添加した。(dippf)Rh(cod)BF4(11mg、0.015mmol)及びMeOH(3mL)を添加した。バイアルに蓋をし、グローブボックスから除去した。バイアルをオートクレーブに入れた。キャップに針を挿入し、ガスを流した。オートクレーブを密封し、H2で3回パージした。反応混合物を150psiのH2の最終圧力にした。18時間後、反応物をベントし、混合物を濃縮した。残留物をDCMに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%EtOAc~100%(5%Et3N/ACN)、次いで100%MeOHの勾配で溶出して、生成物(0.015g、31%)を得た。MS(ES)m/z=598(M+1)。
【0183】
調製48
2-アミノ-4-ブロモ-5-クロロ-3-フルオロ-安息香酸
【化73】
【0184】
2-アミノ-4-ブロモ-3-フルオロ-安息香酸(200g、854mmol)及びDMF(850mL)を2L丸底フラスコ中で合わせ、NCS(136.3g、1.02mol、1.2当量)を2回に分けてほぼ等量ずつ、1時間間隔で投入し、室温で18時間撹拌した。反応混合物をH2O(4L)に注ぎ、スパチュラで撹拌し、生成物を濾過によって収集し、H2Oですすぎ、真空オーブン中50~60℃で乾燥させて、生成物(216.3g、94%)をベージュ色の固形物として得た。MS(ES)m/z=266/268(M-1)。
【0185】
調製49
7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-1H-キナゾリン-2,4-ジオン
【化74】
【0186】
冷却器を備えた1L丸底フラスコ中で、2-アミノ-4-ブロモ-5-クロロ-3-フルオロ-安息香酸(50.0g、186.2mmol)及び尿素(56.0g、932mmol、5当量)の混合物を200℃で4時間加熱した。反応物を室温まで冷却させ、その時点でフラスコ中に褐色の固形物が形成された。材料をフラスコから掻き取り、大きな断片を乳鉢と乳棒ですりつぶして褐色の固形物にした。EtOAc及びH2Oを添加し、混合物を70℃で2時間激しく撹拌した。混合物を濾過し、追加のEtOAcですすぎ、淡褐色の固形物を得た。湿った固形物をハウスバキューム下で一晩乾燥させて、生成物(55.3g、定量的)を淡褐色の固形物として得た。MS(ES)m/z=291/293(M-1)。
【0187】
調製50
7-ブロモ-2,4,6-トリクロロ-8-フルオロ-キナゾリン
【化75】
【0188】
冷却器を備えた500mLの丸底フラスコ中で、7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-1H-キナゾリン-2,4-ジオン(23.9g、81.4mmol)、POCl3(130mL、1381mmol)、及びDIPEA(35mL、201mmol、2.5当量)の混合物を105℃で約72時間加熱した。混合物を真空中で濃縮し、トルエンと2回共沸させて、暗褐色の油状物を得た。油状物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して、ヘキサン中5%~20%アセトンで溶出して、生成物(14.6g、54%)を薄橙色の固形物として得た。MS(ES)m/z=329/331/333(M+1)。
【0189】
調製51
tert-ブチル4-(7-ブロモ-2,6-ジクロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート
【化76】
【0190】
tert-ブチルピペラジン-1-カルボキシレート(7.0g、37mmol、1当量)及びDIEA(19mL、109mmol、3当量)を、1,4-ジオキサン(145mL)中の7-ブロモ-2,4,6-トリクロロ-8-フルオロ-キナゾリン(12.0g、36.3mmol)の撹拌混合物に添加し、50℃まで1時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、EtOAcで希釈し、H2O及び飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%ヘキサンからヘキサン中30%EtOAcの勾配で溶出して、生成物(12.4g、71%)をオフホワイトの固形物として得た。MS(ES)m/z=471/481/483(M+1)。
【0191】
調製52
tert-ブチル4-[7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート
【化77】
【0192】
tert-ブチル4-(7-ブロモ-2,6-ジクロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(3.0g、6.2mmol)を、マイクロ波中、DMSO(20mL、280mmol、100質量%)中のN-メチル-L-プロリノール(2.9g、25mmol、4当量)及びKF(2.2g、38mmol、6当量)と合わせ、マイクロ波中、90℃で2時間加熱した。反応溶液をEtOAcで希釈し、H2O及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%DCMからDCM中10%MeOHで溶出して、生成物(1.4g、40%)を黄褐色の泡状物として得た。MS(ES)m/z=558(M+1)。
【0193】
調製53
tert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート
【化78】
【0194】
tert-ブチル4-[7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート(0.376g、0.672mmol)、tert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.353g、0.873mmol、2.5当量)、DPEPhosPdCl2(0.096g、0.134mmol、0.2当量)、及びCs2CO3(0.657g、2.02mmol、3当量)を含有するバイアルに、トルエン(8.4mL)を添加した。フラスコを排気し、N2で再充填し(3回)、次いで125℃に設定した加熱ブロックに1.5時間入れた。混合物を珪藻土に通して濾過し、DCM及び約20mLの9:1のDCM/MeOHですすいだ。濾液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%DCMから20%MeOHで溶出して、生成物(0.224g、43%)を得た。MS(ES)m/z=770(M+1)。
【0195】
調製54
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]-4-ピペラジン-1-イル-キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化79】
【0196】
DCM(2mL)中のtert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート(0.098g、0.13mmol)の溶液に、TFA(1mL)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応物を濃縮し、10gのSCXカラムに通して濾過し、MeOH、続いて7Nアンモニア処理MeOHで溶出した。濾液を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、DCM中4%~20%のMeOH中7N NH3で溶出して、生成物(0.045g、52%)を得た。MS(ES)m/z=570(M+1)。
【0197】
調製55
(キラル精製)
tert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート、異性体2
【化80】
【0198】
tert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート(1.0g、175mmol)をMeOH(19mL)に溶解し、CHIRALPAK(登録商標)AD-H(5×15cm)、60/40CO2/IPA(0.5%DMEAを含む)(流速=300g/分、圧力=184バール、295nm)を使用するSFCを介して精製して、化合物を異性体1(0.321g、56mmol、ee>99%)及び異性体2(0.505g、88mmol、ee>99%)として分離して得た。
【0199】
実施例11
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]-4-ピペラジン-1-イル-キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル、異性体2
【化81】
【0200】
tert-ブチル4-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-4-イル]ピペラジン-1-カルボキシレート(0.505g、0.66mmol)をDCM(5mL)中で撹拌し、0℃に冷却した。TFA(2.5mL)を添加し、反応物を2時間撹拌した。反応溶液をSCXカラム(10g)に通して濾過し、3カラム体積のMeOHで洗浄し、次いで3カラム体積のMeOH中2N NH3でカラムから溶出した。塩基性濾液を濃縮して、生成物(0.251g、67%)を黄褐色の固形物として得た。MS(ES)m/z=570(M+1)。
【0201】
実施例12
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]-4-[4-(2,2,2-トリフルオロアセチル)ピペラジン-1-イル]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化82】
【0202】
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]-4-ピペラジン-1-イル-キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル(0.100g、0.17mmol)、HATU(0.204g、0.53mmol)、及びDMF(2mL)を含有するバイアルに、TFA(0.04mL、0.6mmol)及びDIEA(0.12mL、0.6mmol)を添加した。反応物を室温で約18時間撹拌した。反応溶液をEtOAcで希釈し、H2O及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィ(HPH Phenomenex Kinetix EVO 2.6u、2.1×50mm、1.1mL/分、1.8分、勾配5~100%B、実行時間2分、溶媒A:10mM重炭酸アンモニウム、溶媒B:ACN)を介して精製して、生成物(0.038g、33%)を白色の固形物として得た。MS(ES)m/z=666(M+1)。
【0203】
調製56
7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン
【化83】
【0204】
THF(266mL)中の7-ブロモ-4,6-ジクロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン(19g、53.37mmol)の溶液をN2で2分間スパージした。1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(2.2g、2.6mmol)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(9.6mL、64mmol)、及びNaBH3CN(4.02g、64.0mmol)を添加し、室温で35分間撹拌した。飽和NH4Cl水溶液(300mL)を添加し、混合物をEtOAc(3×200mL)で抽出した。有機物を飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。残留物(35g)をDCM(60mL)に溶解し、シリカ(200g)のプラグに通して濾過し、DCMで溶出して、生成物(16.2g、92%)を淡黄色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=321(M+1)。
【0205】
調製57
tert-ブチルN-[4-(6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化84】
【0206】
1Lフラスコにトルエン(300mL)を投入し、50℃で60分間N2でスパージした。次いで、7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン(7.00g、21.8mmol)、tert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(11.4g、28.2mmol)、及びCs2CO3(21.3g、65.4mmol)を添加し、続いてDPEPhosPdCl2(3.11g、4.35mmol)を添加した。次いで、混合物を120℃で1.5時間加熱した。混合物を珪藻土に通して濾過し、1:1のEtOAc/MTBE(500mL)ですすいだ。濾液をNaHCO3、H2O、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、0~80%EtOAc/ヘキサンの勾配で溶出して、生成物(7.00g、60%)を淡黄色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=533(M+1)。
【0207】
調製58
tert-ブチルN-[4-(6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化85】
【0208】
tert-ブチルN-[4-(6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(6.95g、13mmol)及びDCM(200mL)を窒素下、丸底フラスコ中で合わせた。mCPBA(8.40g、34.1mmol)を一度に添加し、室温で1時間撹拌した。10%Na2S2O3水溶液を添加し、有機相をNaHCO3溶液で洗浄した。単離した有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、0~80%EtOAc/ヘキサンで溶出して、生成物(5.50g、75%)を白色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=565(M+1)。
【0209】
調製59
tert-ブチルN-[4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化86】
【0210】
THF(1.5mL)中のN-メチル-L-プロリノール(0.05g、0.4mmol)溶液に、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中1M(0.6mL、0.6mmol))を一度に投入し、室温で5分間撹拌した。固形物のtert-ブチルN-[4-(6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.150g、0.265mmol)を一度に添加し、室温で0.5時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、飽和NH4Cl水溶液及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機物を無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、DCM中0~10%MeOHで溶出して、生成物(0.086g、55%)を黄色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=586(M+1)。
【0211】
実施例13
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化87】
【0212】
DCM(0.5mL)中の2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル(0.100g、0.171mmol)の溶液に、TFA(0.7mL)を投入し、室温で約18時間撹拌した。混合物を濃縮し、DCMを添加し、もう一度濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、DCM中10%のMeOH中7N NH3で溶出して、生成物(0.022g、27%)を黄色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=486(M+1)。
【0213】
実施例14及び15
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化88】
【0214】
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル(0.057g、0.12mmol)のアトロプ異性体を、SFC(CHIRALPAK(登録商標)AD-H、4.6×150mm、40%MeOH(0.2%IPAm)/CO2、5mL/分、225nm)を介して分離して、生成物(異性体1、0.012g、ee>99%;異性体2、0.010g、ee>99%)を白色の固形物として得た。異性体1:MS(ES+)m/z=486(M+1);異性体2:MS(ES+)m/z=485.8(M+1)。
【0215】
表4の実施例化合物を調製59に記載した様式と同様の様式で調製し、実施例13と同様の様式で脱保護した。当業者には明らかであろう様々な方法を使用して、化合物を精製した。
【表4-1】
【表4-2】
【0216】
実施例19を調製6アルコールから調製した。実施例30を調製7のアルコールから調製した。
【0217】
調製60
7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリン
【化89】
【0218】
mCPBA(6.55g、38.1mmol)をDCM(65.0mL)中の7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン(4.10g、12.7mmol)の溶液に0℃で添加した。0.5時間後に氷浴を除去し、反応物を室温で約18時間撹拌した。反応物をDCM及び飽和NaHCO3水溶液で希釈し、分配し、水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機相を飽和Na2SO4水溶液、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、100%DCM、次いでDCM中0~10%EtOAcの勾配で溶出して、生成物(1.87g、42%)を白色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=353(M+1)。
【0219】
調製61
7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2R)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン
【化90】
【0220】
調製59に記載した様式と同じ様式で、7-ブロモ-6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリンから調製して、粗生成物(1.0g、46%)を褐色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=374(M+1)。
【0221】
実施例31
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2R)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-メチル-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化91】
【0222】
マイクロ波バイアルに、tert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-メチル-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.310g、0.774mmol)、(2R)-2-[(7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-2-イル)オキシメチル]ピロリジン-1-アミン(0.25g、0.67mmol)、Cs2CO3(0.60g、1.8mmol)、及びトルエン(5.00mL)を添加した。混合物にN2流を通すことによって、混合物を3~4分間脱気した。次いで、ジクロロ[ビス(2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル)エーテル]パラジウム(II)(DPEPhosPdCl2)(0.135g、0.185mmol)を添加した。バイアルに蓋をし、120℃まで3時間加熱した。混合物をEtOAcで希釈し、珪藻土のパッドに通して濾過した。濾液をH2O、飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗残留物(0.130g、0.223mmol)をDCM(2.20mL)に溶解し、TFA(0.160mL)で処理した。反応物を室温で約18時間撹拌した。混合物を濃縮し、最小量のDMSOに溶解し、逆相クロマトグラフィによって精製し、ACN中5%MeOHを含む20~80%の10mM重炭酸アンモニウムの勾配で溶出した。適切な画分を合わせ、低体積に濃縮し、EtOAcで抽出した。有機物を無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、生成物(0.010g、9%)を褐色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=482(M+1)。
【0223】
調製62
7-ブロモ-6-クロロ-4-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン
【化92】
【0224】
DCM(125mL)中の7-ブロモ-4,6-ジクロロ-8-フルオロ-キナゾリン(12.31g、41.60mmol、米国特許第9,840,516(B2)号、第355欄参照)の溶液にエタンチオール(6.0mL、83.0mmol)を添加し、室温で一晩撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、飽和NaHCO3水溶液(2回)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、DCMで溶出し、更に、ヘキサン及びEt2Oから再結晶化して、生成物(11.41g、85%)をオフホワイトの固形物として得た。MS(ES+)m/z=323(M+1)。
【0225】
調製63
tert-ブチルN-[4-(6-クロロ-4-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化93】
【0226】
tert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(8.491g、18.90mmol)を含有するフラスコに、7-ブロモ-6-クロロ-4-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン(5.694g、17.35mmol)及びトルエン(70mL)を添加した。撹拌しながら溶液を通してN2をバブリングし、Cs2CO3(11.31g、34.71mmol)、続いてジクロロビス(ジフェニルホスフィノフェニル)エーテルパラジウム(II)(3.74g、5.22mmol)を添加した。反応物を110℃で一晩加熱した。反応混合物をEtOAcで希釈し、珪藻土に通して濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、0~75%アセトン/ヘキサンの勾配で溶出して、生成物(5.12g、53%)を淡黄色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=533(M+1)。
【0227】
調製64
tert-ブチル3-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]-3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレート
【化94】
【0228】
DMF(1.88mL)中のtert-ブチルN-[4-(6-クロロ-4-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(100mg、0.188mmol)の溶液に、mCPBA(130mg、0.75mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。DMSO(0.27mL、3.75mmol)を添加し、室温で5分間撹拌した。DMF(2mL、0.60mmol)中のtert-ブチル3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキシレートの0.3M溶液及びDMF(0.31mL、0.93mmol)中のTEAの3M溶液を添加し、反応物を室温で1時間撹拌した。10gのC18 SPEカートリッジを40mLのMeOH及び40mLのH2Oで平衡化した。反応混合物をカートリッジ上に注いだ。カートリッジを80mLのH2O、60mLのH2O/MeOHの3:1混合物、及び60mLのDCM/MeOHの1:1混合物で溶出して、生成物(168mg、純度38%、収率50%)を得た。MS(ES+)m/z=683(M+1)。
【0229】
調製65
tert-ブチルN-[4-(6-クロロ-8-フルオロ-4-ヒドロキシ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化95】
【0230】
アセトン(75mL)中のtert-ブチルN-[4-(6-クロロ-4-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(3.50g、6.57mmol)の溶液に、H2O(60mL)中のOXONE(登録商標)(10.1g、16.4mmol)の溶液を一度に添加した。THF(75mL)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を濃縮し、残留物をH2O及びEtOAcで希釈した。有機層を分離し、飽和NaCl水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、生成物(3.28g、収率100%)を白色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=489(M+1)。
【0231】
調製66
tert-ブチル9-[7-[2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-4-イル]-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル]-3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレート
【化96】
【0232】
ACN(10mL)中のtert-ブチルN-[4-(6-クロロ-8-フルオロ-4-ヒドロキシ-キナゾリン-7-イル)-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(180mg、0.37mmol)の溶液に、塩化ホスホニトリル三量体(128mg、0.37mmol)及びDIEA(0.32mL、1.84mmol)を添加した。室温で2時間撹拌した後、ACN(9mL、0.36mmol、0.04M)及びDIEA(0.26mL、1.47mmol)中のtert-ブチル3-オキサ-7,9-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン-7-カルボキシレートの0.04M溶液を添加した。室温で6時間撹拌した後、粗製物をDCM及びEtOAcの混合物で溶解し、飽和NaHCO3水溶液及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層を、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物(291mg、LC-MSにより純度40%、収率45%)を得た。MS(ES+)m/z=699(M+1)。
【0233】
表5の調製67の化合物を、調製66に記載した様式と同様の様式で、7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロキナゾリン-4-オール(米国特許第9,840,516(B2)号参照、7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロキナゾリン-4(3H)-オンについては第354欄参照)から調製した。
【表5】
【0234】
調製68
tert-ブチル(1S,4S)-5-(7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル)-2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート
【化97】
【0235】
ACN(5.6mL)中の7-ブロモ-4,6-ジクロロ-8-フルオロ-キナゾリン(250mg、0.844mmol、米国特許第9,840,516(B2)号、第355欄参照)、tert-ブチル(1S,4S)-2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボキシレート(184mg、0.928mmol)、DIEA(0.44mL、2.5mmol)の混合物を60℃まで1時間加熱した。反応混合物を元の体積の約半分まで部分的に濃縮し、固形物を真空濾過を介して収集し、最小のEt2Oで洗浄した。得られた材料を真空オーブンで一晩乾燥させて、生成物(284mg、収率74%)をベージュ色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=459(M+1)。
【0236】
表6の調製69の化合物を、調製68に記載した様式と同様の様式で調製した。
【表6】
【0237】
調製70
O1-tert-ブチルO3-メチル3-(7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル)アゼチジン-1,3-ジカルボキシレート
【化98】
【0238】
THF(15mL)中の7-ブロモ-4,6-ジクロロ-8-フルオロ-キナゾリン(1.06g、3.58mmol)及びO1-tert-ブチルO3-メチルアゼチジン-1,3-ジカルボキシレート(980mg、4.55mmol)の冷却溶液に、-78℃の乾燥氷/アセトン浴中で、THF(4mL、4mmol、1mol/L)中の1Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを滴加した。10分後、反応物を飽和NH4Cl水溶液の添加によってクエンチし、次いでEtOAcで3回抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、0~60%EtOAc/ヘキサンの勾配で溶出して、生成物(810mg、収率43%)をオフホワイトの固形物として得た。MS(ES+)m/z=474(M+1)。
【0239】
調製71
tert-ブチル3-(7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル)アゼチジン-1-カルボキシレート
【化99】
【0240】
マイクロ波容器に、O1-tert-ブチルO3-メチル3-(7-ブロモ-6-クロロ-8-フルオロ-キナゾリン-4-イル)アゼチジン-1,3-ジカルボキシレート(400mg、0.7584mmol)、LiCl(340mg、8.02mmol)、及びDMSO(2mL)を投入した。次いで、容器をマイクロ波反応器中に150℃で5分間置いた。反応混合物にH2Oを添加し、次いで混合物をEtOAcで2回抽出した。合わせた有機層をH2O、飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィを介して精製し、0~60%EtOAc/ヘキサンの勾配で溶出して、生成物(294mg、収率83%)を淡黄色の固形物として得た。MS(ES+)m/z=416(M+1)。
【0241】
表7の調製72及び73の化合物を、調製70及び71に記載した様式と同様の様式で調製した。当業者には明らかであろう異なる方法を使用して、分子を精製した。
【表7】
【0242】
表8の調製74~80の化合物を、調製63に記載した様式と同様の様式で調製した。当業者には明らかであろう異なる方法を使用して、分子を精製した。
【表8-1】
【表8-2】
【0243】
表9の実施例化合物を、実施例13に記載した様式と同様の様式で調製した。当業者には明らかであろう様々な方法を使用して、化合物を精製した。
【表9-1】
【表9-2】
【0244】
調製81
6-ブロモ-7-クロロ-2,8-ジフルオロ-キノリン
【化100】
【0245】
オーブン乾燥させたフラスコ中のN2雰囲気下のグローブボックスにおいて、無水ACN(160mL)中の6-ブロモ-7-クロロ-8-フルオロ-キノリン(4.31g、16.5mmol)のスラリーをAgF2(7.54g、51.7mmol)で処理した。得られた混合物をグローブボックスにおいて周囲温度で一晩撹拌した。混合物を珪藻土のパッドに通して濾過し、固形物をDCMですすいだ。濾液を真空中で濃縮して、橙色の固形物を得、これを100mLのDCM中で数分間撹拌した後、濾過して残りの固形物を除去した。濾液をシリカで直接精製して(DCMで溶出)、生成物(2.64g、57%)を白色の固形物として得た。GC/MS(m/z):277.0(M+)。
【0246】
調製82
6-ブロモ-7-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリン
【化101】
【0247】
N2の雰囲気下で、N-メチル-L-プロリノール(2.4mL、20mmol)及びTHF(120mL)の混合物をTHF(16mL、21mmol)中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1.3mol/L)の溶液でシリンジを介して滴下処理した。得られた混合物を20分間撹拌した。固形物の6-ブロモ-7-クロロ-2,8-ジフルオロ-キノリン(6.30g、17.0mmol、純度75%)を一度に添加し、混合物を周囲温度で一晩撹拌した。反応混合物をH2Oでクエンチし、EtOAcで希釈した。層を分離し、有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカで精製して(EtOAc中0~10%のMeOHの勾配で溶出)、生成物(5.61g、88.5%)を得た。ES/MS(m/z):373.0(M+H)。
【0248】
調製83
7-クロロ-8-フルオロ-6-メチル-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリン
【化102】
【0249】
マイクロ波反応容器中の6-ブロモ-7-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリン(0.45g、1.2mmol)、K2CO3(0.47g、3.4mmol)、1,4-ジオキサン(8mL)、及びトリメチルボロキシン(0.20mL、1.4mmol)の混合物をN2で脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.072g、0.060mmol)を添加した。得られた混合物をBIOTAGE INITIATOR(登録商標)マイクロ波反応器中、120℃で0.5時間加熱し、次いでそれを珪藻土のパッドに通して濾過し、EtOAcですすいだ。濾液を真空中で濃縮し、残留物をシリカで精製して(2.5%MeOH/DCMから5%MeOH/DCMから10%MeOH/DCMの勾配で溶出)、生成物(0.239g、64%)を得た。ES/MS(m/z):309.2(M+H)。
【0250】
調製84
7-クロロ-6-シクロプロピル-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリン
【化103】
【0251】
6-ブロモ-7-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリン(0.200g、0.535mmol)、シクロプロピルボロン酸(0.092mg、1.07mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.062g、0.054mmol)、K3PO4(0.239g、1.07mmol)、及び1,4-ジオキサン(5.35mL)の混合物を90℃で一晩加熱した。反応混合物を冷却し、濾紙で濾過した。濾液を真空中で濃縮した。第2のバッチを、50mgの6-ブロモ-7-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリンから出発して、記載した様式と同じ様式で実行した。各反応からの残留物をMeOHに溶解し、合わせ、SCXで精製し、最初にMeOHですすぎ、続いてアンモニア処理メタノールで溶出して、生成物(196mg、87%)を得た。ES/MS(m/z):335.0(M+H)。
【0252】
実施例41
2-アミノ-7-フルオロ-4-[8-フルオロ-6-メチル-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]-7-キノリル]ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化104】
【0253】
THF(5mL)中のKOtBu(0.067g、0.60mmol)、tert-ブチルN-[3-シアノ-4-(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボリナン-2-イル)-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.213g、0.527mmol)、7-クロロ-8-フルオロ-6-メチル-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリン(0.116g、0.376mmol)をN2で脱気した。SPhos Pd(クロチル)Cl(Pd-172;CAS番号1798781-99-3)(0.057g、0.09383mmol)を添加し、得られた混合物を70℃で一晩加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、EtOAc及びH2Oで希釈した。層を分離した。有機層を飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残留物をシリカで精製し、DCM中2.5%~5%MeOHの勾配で溶出した。画分を含有する生成物を合わせ、真空中で濃縮した。残留物をDCM(5mL)中に溶解し、TFA(0.5mL)を添加した。得られた混合物を室温で4時間撹拌し、次いで40℃で1.5時間加温した後、真空中で濃縮した。残留物をMeOHに溶解し、10gのSCXカートリッジに装填し、これをMeOHで予め洗浄した。カラムをメタノール、続いてメタノール中の2Mアンモニアで溶出した。アンモニア処理した溶離液を真空中で濃縮した。残留物をシリカ上で精製して(2.5%MeOH:DCMから5%MeOH:DCMから10%MeOH:DCMからMeOH中10%2Mアンモニア:DCMで溶出)、生成物(27mg、15%)を白色の固形物として得た。ES/MS(m/z):465.2(M+H)。
【0254】
実施例42
2-アミノ-4-[6-シクロプロピル-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]-7-キノリル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル
【化105】
【0255】
7-クロロ-6-シクロプロピル-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キノリンから、実施例41の方法に類似した様式で、触媒としてXPhos Pd(クロチル)Cl(Pd-170;CAS番号1798782-02-1)を使用して調製して、生成物(0.062g、22%)を得た。ES/MS(m/z):491.2(M+H)。
【0256】
調製85
メチル2-アミノ-3-クロロ-5,6-ジフルオロ-ベンゾエート
【化106】
【0257】
アセトニトリル(1.2L)中のメチル6-アミノ-2,3-ジフルオロ-ベンゾエート(63.3g、338mmol)の溶液をNCS(50g、374mmol)で処理した。得られた混合物を45℃で一晩加熱した。反応物を半分の体積に濃縮し、飽和NaHCO3水溶液を添加した。混合物をEtOAcで希釈し、層を分離した。有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄して、Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。残留物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(ヘキサン中10~25%EtOAcの勾配で溶出)、生成物(49.5g、66%)を得た。1H NMR(399.80MHz,CDCl3):δ7.32(dd,J=7.6,9.4Hz,1H),6.00(br s,2H),3.97(s,3H)。
【0258】
調製86
メチル2-ブロモ-3-クロロ-5,6-ジフルオロ-ベンゾエート
【化107】
【0259】
ACN(400mL)中のCuBr2(105g、470mmol)及びtert-亜硝酸ブチル(78mL、590mmol)の混合物を氷水浴中で冷却し、ACN(400mL)中のメチル2-アミノ-3-クロロ-5,6-ジフルオロ-ベンゾエート(91.2g、412mmol)の溶液で15分かけて滴下処理した。得られた混合物を周囲温度までゆっくりと加温し、一晩撹拌した。反応物を半分の体積に濃縮し、DCM(2L)で希釈し、5時間静置させた。混合物を珪藻土のパッドに通して濾過し、濾液がほぼ無色になるまで、DCM(1L)、続いて10%EtOAc/DCMの混合物ですすいだ。合わせた濾液を10%クエン酸(500mL)で2回、H2O(500mL)で2回、飽和EDTA水溶液(500mL)で1回洗浄した後、真空中で濃縮した。得られた固形物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(ヘキサン中10~40%EtOAcの勾配で溶出)、生成物(122g、定量的)を得た。1H NMR(399.80MHz,CDCl3):δ7.44(dd,J=7.4,9.4Hz,1H),4.02(s,3H)。
【0260】
調製87
メチル5-クロロ-2,3-ジフルオロ-6-(メトキシメチル)ベンゾエート
【化108】
【0261】
ジオキサン(450mL)中のメチル2-ブロモ-3-クロロ-5,6-ジフルオロ-ベンゾエート(25.0g、85.8mmol)及びカリウム(メトキシメチル)トリフルオロボレート(19.5g、128mmol)の混合物をH2O(45mL)中のCs2CO3(84g、258mmol)の混合物で処理し、連続的に排気し、N2で5回再充填した。[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、Pd(dppf)Cl2(6.27g、8.57mmol)を添加し、得られた混合物を真空脱気し、N2で更に5回パージした後、100℃で一晩加熱した。追加のカリウム(メトキシメチル)トリフルオロボレート(5.0g、32.9mmol)、H2O(10mL)中のCs2CO3(21g、64.5mmol)、及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、Pd(dppf)Cl2(1.6g、2.2mmol)を添加し、12時間加熱を再開した。混合物を周囲温まで冷却し、EtOAc(1.5L)、H2O(1L)、及び飽和NaCl水溶液(1L)で希釈した。相を分離し、水層をEtOAc(1L)で抽出した。有機層を合わせ、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(ヘキサン中0~15%のEtOAcの勾配で溶出)、生成物(15g、70%)をわずかに色のついた油状物として得た。ES/MS(m/z):251.2(M+H)。
【0262】
調製88
5-クロロ-2,3-ジフルオロ-6-(メトキシメチル)安息香酸
【化109】
【0263】
THF(100mL)及びMeOH(65mL)中のメチル5-クロロ-2,3-ジフルオロ-6-(メトキシメチル)ベンゾエート(10g、39.9mmol)の溶液を5MNaOH水溶液(24mL、120mmol)で処理した。得られた混合物を周囲温度で一晩撹拌した。氷片を添加し、冷スラッシュを5NHCl水溶液で滴下処理して、pH約1~2に調整した。混合物をEtOAc(3×500mL)で抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。固形物を真空オーブン中55℃で2時間乾燥させて、生成物(9.49g、95.5%)を得た。ES/MS(m/z):237.0(M+H)。
【0264】
調製89
5-クロロ-N-(エチルスルファニルカルボンイミドイル)-2,3-ジフルオロ-6-(メトキシメチル)ベンズアミド
【化110】
【0265】
THF(350mL)中の5-クロロ-2,3-ジフルオロ-6-(メトキシメチル)安息香酸(9.49g、40.1mmol)及びDIEA(28mL、161mmol)の懸濁液を氷水浴中で冷却した。S-エチルイソチオ尿素臭化水素酸塩(12.0g、63.5mmol)、続いてHATU(24.0g、61.9mmol)を添加した。氷浴が溶けるにつれて、得られた混合物を周囲温度までゆっくりと加温させた。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3水溶液及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。油状残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製して(DCMで溶出)、生成物(12.9g、99%)を透明の無色の油状物として得た。ES/MS(m/z):323.2(M+H)。
【0266】
調製90
6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)キナゾリン-4-オール
【化111】
【0267】
NMP(25mL)中の5-クロロ-N-(エチルスルファニルカルボンイミドイル)-2,3-ジフルオロ-6-(メトキシメチル)ベンズアミド(3.2g、9.4mmol、純度95%)の溶液を100℃で一晩加熱した。反応混合物を、冷却した脱イオン水(600mL)に注いだ。更に水を添加し、固形物を濾過によって収集した。固形物を追加のH2O(500mL)ですすぎ、真空オーブン中55℃で乾燥させて、生成物(2.84g、99%)を淡黄褐色の固形物として得た。ES/MS(m/z):303.2(M+H)。
【0268】
調製91
6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリン-4-オール
【化112】
【0269】
6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)-3H-キナゾリン-4-オン(3.50g、11.4mmol)を、熱電対及び滴下漏斗を備えた乾燥した250mLの3つ口丸底フラスコに入れた。フラスコを密封し、N2でフラッシュした。無水THF(60mL)をカニューレを介して添加し、混合物を60℃まで加熱した。2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル亜鉛クロリド塩化リチウム錯体(THF中1M、35mL、35mmol)を反応混合物に5分間かけて滴加した。2時間後、反応混合物を追加の2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル亜鉛クロリド-塩化リチウム錯体(THF中1M、11mL、11mmol)で滴下処理し、60℃での加熱を一晩続けた。固形物I2(5.8g、23mmol)を、内部温度を70℃未満に保つような速度で数回に少量に分けて添加した。反応物を更に5時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、反応混合物をEtOAc(100mL)及び1NHCl水溶液(100mL)で希釈した。層を分離し、有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。DCM(100mL)を添加し、混合物を10分間撹拌した。固形物を濾過により収集し、追加のDCM(20mL)ですすいで、生成物(2.96g、55.5%、純度92%)を得た。濾液を真空中で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(ヘキサン中25%EtOAcで溶出)、追加のバッチの生成物(0.910g、17%、純度85%)を白色の固形物として得た。ES/MS(m/z):429.4(M+H)。
【0270】
調製92
4,6-ジクロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリン
【化113】
【0271】
DCM(100mL)中の6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリン-4-オール(5.08g、11.9mmol)の懸濁液に、(クロロメチレン)ジメチルイミニウムクロリド(3.03g、23.7mmol)を一度に投入した。得られた混合物を周囲温度で2時間撹拌した。追加の(クロロメチレン)ジメチルイミニウムクロリド(0.30g、2.3mmol)を添加し、一晩撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、H2Oで3回洗浄した。有機層をNa2SO4及びMgSO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた褐色の固形物をDCMに溶解し、活性炭(DARCO(登録商標)20~40メッシュ)で処理した。混合物を5分間激しく撹拌した。透明な溶液をシリカのプラグに通して濾過し、DCMで溶出した。濾液を真空中で濃縮し、真空オーブン中45℃で更に乾燥させて、生成物(4.4g、76%)をわずかに黄色の固形物として得た。ES/MS(m/z):447.2(M+H)。
【0272】
調製93
6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリン
【化114】
【0273】
Teflonスクリューキャップを備えた密封反応容器中、CHCl3(70mL、874mmol)中の4,6-ジクロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリン(1.5g、3.4mmol)及びp-トルエンスルホニルヒドラジド(1.9g、10mmol)の混合物を55℃で一晩加熱した。白色の懸濁液をN2流を使用して蒸発乾固して、1.85gのN’-[6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリン-4-イル]-4-メチル-ベンゼンスルホノヒドラジドを得た。この固形物に、H2O(83mL)中のNa2CO3(3.28g、31.0mmol)の溶液を添加した。混合物を密封反応容器中120℃で6.5時間加熱した。反応物を濾過し、濾液のpHが約7~8になるまで固形物を脱イオン水ですすいだ。得られた黄褐色の固形物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(DCM中0~5%MeOHの勾配で溶出)、生成物(1.0g、全収率72%)を淡黄色の固形物として得た。ES/MS(m/z):412.6(M+H)。
【0274】
調製94
tert-ブチルN-[4-[6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化115】
【0275】
調製36の方法に類似した様式で、6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリンから調製して、生成物(1.03g、71.7%)を黄褐色の固形物として得た。ES/MS(m/z):491.2(M+H)。
【0276】
調製95
tert-ブチルN-[4-[6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化116】
【0277】
DCM(20mL)中のtert-ブチルN-[4-[6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.500g、0.87mmol))の混合物をmCPBA(0.530g、2.36mmol、77%)で処理した。得られた混合物を周囲温度で1.5時間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、1M飽和Na2S2O3水溶液及び飽和NaHCO3水溶液で洗浄した。層を分離し、有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(ヘキサン中10~70%EtOAcの勾配で溶出)、生成物(0.502g、95%)を黄褐色の固形物として得た。ES/MS(m/z):609.2(M+H)。
【0278】
調製96
tert-ブチルN-[4-[6-クロロ-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化117】
【0279】
THF(1.5M、1.2mL、1.8mmol)中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの溶液をTHF(8mL)中のN-メチル-L-プロリノール(0.22mL、1.8mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を5分間撹拌し、THF(5mL)中のtert-ブチルN-[4-[6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.502g、0.82mmol)の溶液で処理した。撹拌を周囲温度で15分間継続した。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液でクエンチし、EtOAcで希釈した。相を分離し、水層をEtOAcで抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(DCM中0~10%MeOHの勾配で溶出)、生成物(0.53g、定量的)を黄色の固形物として得た。ES/MS(m/z):630.4(M+H)。
【0280】
実施例43
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル、異性体1
【化118】
【0281】
tert-ブチルN-[4-[6-クロロ-8-フルオロ-5-(メトキシメチル)-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.200g、0.32mmol)及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(5mL)の混合物を密封容器中120℃で1.5時間加熱した。反応混合物を冷却し、高真空下で濃縮した。EtOAcを添加し、混合物を濃縮した(このプロセスを繰り返した)。残留物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(DCM中0~10%MeOHの勾配で溶出)、アトロプ異性体の混合物(105mg)を得た。アトロプ異性体の混合物を、CHIRALPAK(登録商標)AS-H(21×250cm)、80/20 CO2/MeOH(0.2%イソプロピルアミンを含む)(流速=80mL/分、UV検出波長=225nM、カラム温度40℃)を使用するSFCによって分離して、異性体1としての表題化合物(0.032g、31%、ee>99%)を固形物として得た。ES/MS(m/z):530.4(M+H)。
【0282】
調製97
(6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-キナゾリン-5-イル)メタノール
【化119】
【0283】
密封反応容器において、DCM(20mL)中の6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-5-(メトキシメチル)キナゾリン(0.293g、0.71mmol)の溶液を氷水浴中で冷却した。DCM(1.4mL、1.4mmol)中のBBr3の1M溶液を添加した。冷却しながら1.5時間撹拌した後、反応混合物をDCMで希釈し、水層がpHによって塩基性になるまで、飽和NaHCO3水溶液で注意深くクエンチした。黄色の沈殿物が生じ、混合物を5分間激しく撹拌した。DCM(100mL)を添加し、層を分離した。水層をEtOAc及びDCMで抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、337mgの5-(ブロモメチル)-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-キナゾリン及び(6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-キナゾリン-5-イル)メタノールの約9:1混合物を得た。9:1混合物を1,4-ジオキサン(30mL)及びH2O(30mL)に懸濁させた。Cs2CO3(2.0g、6.1mmol)を添加し、得られた混合物を50℃で一晩加熱した。反応物を室温まで冷却し、EtOAc及び飽和NaCl水溶液で希釈した。層を分離し、水層をEtOAcで2回抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させた。溶液を活性炭素で処理し、濾過し、真空中で濃縮して、生成物(0.253g、純度86%)を黄褐色の固形物として得た。ES/MS(m/z):399.2(M+H)。
【0284】
調製98
tert-ブチル-[(6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-キナゾリン-5-イル)メトキシ]-ジメチル-シラン
【化120】
【0285】
DCM(20mL)中の(6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-キナゾリン-5-イル)メタノール(0.373g、0.805mmol、純度86%)の懸濁液を氷水浴中で冷却し、2,6-ルチジン(0.175mL、1.50mmol)及びtert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸(0.250mL、1.09mmol)で処理した。冷却浴を除去し、混合物を周囲温度で撹拌させた。1時間後、追加の2,6-ルチジン(0.175mL、1.50mmol)及びtert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸(0.250mL、1.09mmol)を添加し、得られた混合物を20分間撹拌した。反応混合物を氷水浴中で冷却し、飽和NH4Cl水溶液でクエンチし、DCM及び飽和NaCl水溶液で希釈した。相を分離し、水層をDCMで抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製して(100%ヘキサンからヘキサン中10%EtOAcの勾配で溶出)、生成物(0.305g、70%)を白色の固形物として得た。ES/MS(m/z):513.4(M+H)。
【0286】
調製99
tert-ブチルN-[4-[5-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化121】
【0287】
調製36の方法に類似した様式で、tert-ブチル-[(6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-7-ヨード-キナゾリン-5-イル)メトキシ]-ジメチル-シランから調製して、生成物(0.27g、64%)を得た。ES/MS(m/z):677.3(M+H)。
【0288】
調製100
tert-ブチルN-[4-[5-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化122】
【0289】
95の調製の方法に類似した様式で、tert-ブチルN-[4-[5-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-6-クロロ-2-エチルスルファニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメートから調製して、生成物(0.28g、定量的)を白色の固形物として得た。ES/MS(m/z):709.0(M+H)。
【0290】
調製101
tert-ブチルN-[4-[5-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート
【化123】
【0291】
96の調製の方法に類似した様式で、tert-ブチルN-[4-[5-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-6-クロロ-2-エチルスルホニル-8-フルオロ-キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメートから調製して、生成物(0.26g、89%)を黄色の油状物として得た。ES/MS(m/z):730.0(M+H)。
【0292】
実施例44
2-アミノ-4-[6-クロロ-8-フルオロ-5-(ヒドロキシメチル)-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-3-カルボニトリル、異性体1。
【化124】
【0293】
TFA(5mL)中のtert-ブチルN-[4-[5-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシメチル]-6-クロロ-8-フルオロ-2-[[(2S)-1-メチルピロリジン-2-イル]メトキシ]キナゾリン-7-イル]-3-シアノ-7-フルオロ-ベンゾチオフェン-2-イル]カルバメート(0.250g、0.342mmol)の混合物を、H2O(0.5mL)で処理した。得られた混合物を周囲温度で20分間撹拌した。溶媒を真空中で除去した。残留物をDCMで処理し、濃縮し、繰り返した。残留物をDCM及び飽和Na2CO3水溶液に溶解し、pHを約8にした。層を分離し、水層をDCMで更に3回抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた白色の固形物をシリカゲルクロマトグラフィによって精製し、DCM中2%~10%(7Nアンモニア処理MeOH)の勾配で溶出して、アトロプ異性体の混合物(0.134g、76%)を得た。アトロプ異性体の混合物(0.129g)を、SFC(CHIRALPAK(登録商標)IC、21×250mm;60%CO2中40%MeOH(0.5%DMEAを含む)の移動相で溶出;カラム温度40℃;流速:80mL/分;Uv検出波長:225nm)によって分離して、表題化合物(0.046g、>97% ee)を第1の溶出エナンチオマー(異性体1)として得た。ES/MS(m/z):516.0(M+H)。
【0294】
生物学的アッセイ
以下のアッセイは、例示された化合物がKRas G12Dの阻害剤であり、インビトロ及び/又はインビボで特定の腫瘍の増殖を阻害することを実証する。
【0295】
PANC-1細胞活性RAS GTPアーゼELISA(KRas G12D変異)
本アッセイの目的は、ヒトPANC-1(RRID:CVCL_0480)膵管腺がん細胞(供給業者:ATCC番号CRL-1469)における構成的RAS GTPアーゼの活性を阻害する試験化合物の能力を測定することである。RAS GTPアーゼELISAキット(Active Motifカタログ番号52097)には、96ウェルのグルタチオンをコーティングした捕捉プレート及びキットに供給されているRaf-Ras結合ドメイン(Raf-Ras Binding Domain、RBD)タンパク質に縮合したグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(Glutathione-S-Transferase、GST)が含有されている。細胞抽出物中の活性化汎RAS(GTP結合)は、Raf-RBDに特異的に結合する。結合したRASを、ヒトK-Ras(及びH-Ras)を認識する一次Ras抗体で検出する。HRPコンジュゲート抗ラットIgG二次抗体は一次抗体を認識し、現像基質溶液は化学発光読み取りを容易にする。
【0296】
PANC-1細胞を、80μLの完全培地(DMEM、高グルコース、L-グルタミン、GIBCO;10%熱不活性化ウシ胎児血清、GIBCO)において75,000個の細胞/ウェルの濃度で入れ、37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。およそ24時間後、20μL(1:3)の段階希釈(完全培地中)した試験化合物(最高濃度1~50μM)及び20μLの段階希釈(完全培地中)した対照(最大シグナルウェル:0.5%DMSO及び最小シグナルウェル:10μMの参照陽性対照化合物)を細胞プレートに添加し、37℃/5%CO2で2時間インキュベートする。プロテアーゼ阻害剤カクテル(Protease Inhibitor cocktail、PIC)を含有する完全溶解/結合緩衝液を調製し、氷上で保存する。細胞プレートのインキュベーションが完了する1時間前に、GST-Raf-RBDを溶解/結合緩衝液で希釈し、1ウェル当たり50μLの混合緩衝液を、供給された乳白色ELISAアッセイプレートに添加し、穏やかに揺動させながら4℃で最低1時間インキュベートする。2時間後、細胞を100μLの氷冷Ca2+/Mg2+を含まないPBSで洗浄し、100μLのキットに供給されている溶解/結合緩衝液(AM11)で溶解させる。プレートを周囲温度で30~50分間激しく振盪した後、細胞プレートを410×g(およそ1500rpm)で10分間遠心分離する。超高純度H2Oで1倍希釈し、かつ0.2μmで濾過した洗浄緩衝液を遠心分離工程中に周囲温度で調製し、次いで、これを使用してGST-Raf-RBDをコーティングしたアッセイプレートを洗浄する(3×100μL)。次に、50μLの細胞溶解物をGST-Raf-RBDをコーティングしたアッセイプレートに添加し、穏やかに振盪しながら周囲温度で1時間インキュベートする。このインキュベーション期間中、1倍抗体結合緩衝液を解凍した濃縮物から調製する。アッセイプレートを1倍洗浄緩衝液(3×100μL)で洗浄し、次いで1倍抗体結合緩衝液中1:500で希釈した50μLの一次RAS抗体(キットに供給されているもの、番号101678)を添加する。穏やかに振盪しながら周囲温度で1時間インキュベートした後、アッセイプレートを1倍洗浄緩衝液(3×100μL)で洗浄する。その後、50μLの抗ラットHRPコンジュゲートIgG二次抗体(0.25μg/μL)(1倍抗体結合緩衝液中1:5000で希釈したもの)をアッセイプレートの各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら周囲温度で更に1時間インキュベートする。最後に、アッセイプレートを1倍洗浄緩衝液(4×100μL)で洗浄し、続いて50μLの混合化学発光希釈標準溶液(反応緩衝液と化学発光基質との組み合わせ)を周囲温度で添加する。各ウェルのルミネセンス発光からのデータを、アッセイプレート寸法に最適化された発光プログラムを使用して2104 EnVision(商標)プレートリーダー(Perkin Elmer)で記録する。
【0297】
シグナルを、次の方程式を使用して阻害パーセントに変換する:
阻害%=100-[(試験化合物シグナル-中央値最小シグナル)/(中央値最大シグナル-中央値最小シグナル)×100]。最大シグナルは、阻害剤を含まない対照ウェル(DMSO)である。最小シグナルは、活性を完全に阻害するのに十分な参照阻害剤を含有する対照ウェルである。IC50を、Genedata Screener(登録商標)バージョン17を使用して各阻害剤濃度での阻害パーセントを4パラメータ非線形ロジスティック方程式に当てはめることによって決定する:y=(A+((B-A)/(1+((x/C)^D))))(式中、yが阻害%であり、Aが最小漸近線であり、Bが最大漸近線であり、Cが相対IC50又は両方の漸近線の適合範囲内で50%阻害をもたらす阻害剤濃度であり、Dがヒル勾配である)。
【0298】
本明細書に記載され、表1に示される式I、II、III、又はIVの化合物は、実質的に記載されるように、本アッセイにおいて評価された。化合物は、KRas G12D変異酵素の阻害を示す構成的RAS GTPアーゼ活性を阻害する能力を呈した。本明細書の表1の実施例化合物の約4分の3が、本アッセイにおいて500nM未満の相対IC50を呈した。これらのうち、表2の好ましい実施例化合物は、本アッセイにおいて100nM未満の相対IC50を呈した。このデータは、本明細書に記載の式I、II、III、又はIVの化合物がこのヒト膵臓がん細胞培養においてKRAS-GTP活性を阻害することができることを示し、KRas G12D変異体を阻害する能力を実証する。
【0299】
MKN-45細胞活性RAS GTPアーゼELISA(KRas野生型)
本アッセイの目的は、ヒトMKN-45胃腺がん細胞(供給業者:JCRB、供給業者ID:JCRB 0254、ロット:05222009)における構成的RAS GTPアーゼ活性を阻害する試験化合物の能力を測定することである。RAS GTPアーゼELISAキット(Active Motifカタログ番号52097)には、96ウェルのグルタチオンをコーティングした捕捉プレート及びキットに供給されているRaf-Ras結合ドメイン(RBD)タンパク質に縮合したグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)含有されている。細胞抽出物中の活性化汎RAS(GTP結合)は、Raf-RBDに特異的に結合する。結合したRASを、ヒトK-Ras(及びH-Ras)を認識する一次Ras抗体で検出する。HRPコンジュゲート抗ラットIgG二次抗体は一次抗体を認識し、現像基質溶液は化学発光読み取りを容易にする。
【0300】
MKN-45細胞を、80μLの完全培地(DMEM、高グルコース、L-グルタミン、GIBCO;10%熱不活性化ウシ胎児血清、GIBCO)において75,000個の細胞/ウェルの濃度で入れ、37℃/5%CO2で一晩インキュベートした。およそ24時間後、20μL(1:3)の段階希釈(完全培地中)した試験化合物(最高濃度1~10μM)及び20μLの段階希釈(完全培地中)した対照(最大シグナルウェル:0.1%DMSO及び最小シグナルウェル:10μMの参照陽性対照化合物)を細胞プレートに添加し、37℃/5%CO2で2時間インキュベートする。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)を含有する完全溶解/結合緩衝液を調製し、氷上で保存する。細胞プレートのインキュベーションが完了する1時間前に、GST-Raf-RBDを溶解/結合緩衝液で希釈し、1ウェル当たり50μLの混合緩衝液を、供給された乳白色ELISAアッセイプレートに添加し、穏やかに揺動させながら4℃で最低1時間インキュベートする。2時間後、細胞を100μLの氷冷Ca2+/Mg2+を含まないPBSで洗浄し、100μLのキットに供給されている溶解/結合緩衝液(AM11)で溶解させる。プレートを周囲温度で30~50分間激しく振盪した後、細胞プレートを410×g(およそ1500rpm)で10分間遠心分離する。遠心分離工程中に洗浄緩衝液を超高純度H2Oで1倍希釈し、次いでこれを使用してGST-Raf-RBDをコーティングしたアッセイプレートを洗浄する(3×100μL)。次に、50μLの細胞溶解物をGST-Raf-RBDをコーティングしたアッセイプレートに添加し、穏やかに振盪しながら周囲温度で1時間インキュベートする。このインキュベーション期間中、1倍抗体結合緩衝液を解凍した濃縮物から調製する。アッセイプレートを1倍洗浄緩衝液(3×100μL)で洗浄し、次いで1倍抗体結合緩衝液中1:500で希釈した50μLの一次RAS抗体(キットに供給されているもの、番号101678)を添加する。穏やかに振盪しながら周囲温度で1時間インキュベートした後、アッセイプレートを1倍洗浄緩衝液(3×100μL)で洗浄する。その後、50μLの抗ラットHRPコンジュゲートIgG二次抗体(0.25μg/μL)(1倍抗体結合緩衝液中1:5000で希釈したもの)をアッセイプレートの各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら周囲温度で更に1時間インキュベートする。最後に、アッセイプレートを1倍洗浄緩衝液(4×100μL)で洗浄し、続いて50μLの混合化学発光希釈標準溶液(反応緩衝液と化学発光基質との組み合わせ)を周囲温度で添加する。各ウェルのルミネセンス発光からのデータを、アッセイプレート寸法に最適化された発光プログラムを使用して2104 EnVision(商標)プレートリーダー(Perkin Elmer)で記録する。
【0301】
シグナルを、次の方程式を使用して阻害パーセントに変換する:
阻害%=100-[(試験化合物シグナル-中央値最小シグナル)/(中央値最大シグナル-中央値最小シグナル)×100]。最大シグナルは、阻害剤を含まない対照ウェル(DMSO)である。最小シグナルは、活性を完全に阻害するのに十分な参照阻害剤を含有する対照ウェルである。IC50を、Genedata Screener(登録商標)バージョン17を使用して各阻害剤濃度での阻害パーセントを4パラメータ非線形ロジスティック方程式に当てはめることによって決定する:y=(A+((B-A)/(1+((x/C)^D))))(式中、yが阻害%であり、Aが最小漸近線であり、Bが最大漸近線であり、Cが相対IC50又は両方の漸近線の適合範囲内で50%阻害をもたらす阻害剤濃度であり、Dがヒル勾配である)。
【0302】
本明細書に記載される(実施例3、4、7、8、15、17、21、26、及び33)式I、II、III、又はIVの化合物のサブセットは、実質的に記載されるように、本アッセイにおいて評価された。本アッセイにおいて試験した全ての化合物も試験し、上記のKRas G12D変異体アッセイにおいて阻害活性を示した。本アッセイで試験した化合物の大部分は、構成的RAS GTPアーゼ活性を阻害するいくらかの能力(すなわち、KRas野生型阻害)を呈した。実施例3、4、7、及び33の化合物は、KRas野生型よりもKRas G12D変異体に対して有意な(すなわち、7倍を超える)選択的阻害優先性を示し、本明細書に記載の式I、II、III、又はIVの化合物の可能性がKRas G12D変異体の強力かつ選択的な阻害剤であることを実証した。
本願発明には以下の態様が含まれる。
[項目1]
以下の式の化合物であって、
【化125】
式中、
Xは、-O-又は-S-であり、
Yは、-C(CN)-又は-N-であり、
Zは、-C(H)-又は-N-であり、
R
1
は、H、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンであり、前記アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、C
1-4
アルキル又はC
2-4
ヘテロアルキルで任意選択的に置換され、前記C
1-4
アルキル、C
2-4
ヘテロアルキルは、ハロゲン又はオキソによって任意選択的に置換され、前記アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、前記C
1-4
アルキル又はC
2-4
ヘテロアルキルによって任意選択的に架橋され、前記アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンは、前記C
1-4
アルキル又はC
2-4
ヘテロアルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、
R
2
は、H、-O-CH
2
-R
7
、又は-O-CH(CH
3
)-R
7
であり、R
7
は、アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランであり、前記アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、1つ以上のハロゲン、ヒドロキシル、C
1-4
アルキル、又はC
1-4
アルケニルで任意選択的に置換され、前記C
1-4
アルキルは、1つ以上のハロゲン又はヒドロキシルで任意選択的に置換され、前記アゼチジン、ピロリジン、又はテトラヒドロフランは、前記C
1-4
アルキルと任意選択的に縮合して二環式環を形成し、R
2
がHである場合、R
1
は、Hではなく、
R
3
及びR
5
は、各々独立して、H、ハロゲン、-C
0-3
アルキル-シクロプロピル、R
8
で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6
アルキル、又はR
8
で1~3回任意選択的に置換される-O-C
1-6
アルキルであり、
R
4a
、R
4b
、及びR
4c
は、各々独立して、H、ハロゲン、又はR
8
で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6
アルキルであり、
R
6
は、H、-CH
2
OH、-CH
2
-O-CH
3
であり、
R
8
は、各々独立して、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、-C
1-4
アルキル、又は-O-C
1-4
アルキルである、化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
[項目2]
Xが、-S-である、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目3]
Yが、-C(CN)-である、項目1若しくは2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目4]
Zが、-N-である、項目1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目5]
R
1
が、Hである、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目6]
R
1
が、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、又はN結合型ピペラジンである、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目7]
R
1
が、N結合型ピペラジンである、項目6に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目8]
R
1
が、
【化126】
である、項目6に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
[項目9]
R
1
が、
【化127】
である、項目6に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
[項目10]
R
2
が、-O-CH
2
-R
7
、又は-O-CH(CH
3
)-R
7
である、項目1~9のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目11]
R
2
が、-O-CH
2
-R
7
である、項目1~9のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目12]
R
7
が、ピロリジンである、項目10若しくは11に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目13]
R
2
が、
【化128】
である、項目1~9のいずれか一項に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
[項目14]
R
2
が、
【化129】
である、項目1~9のいずれか一項に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
[項目15]
R
3
及びR
5
が、各々独立して、ハロゲン、-C
0-3
アルキル-シクロプロピル、R
8
で1~3回任意選択的に置換される-C
1-6
アルキル、又はR
8
で1~3回任意選択的に置換される-O-C
1-6
アルキルである、項目1~14のいずれか一項に記載の化合物。
[項目16]
R
3
が、Fである、項目1~15のいずれか一項に記載の化合物
、
又はその薬学的に許容される塩。
[項目17]
R
4c
が、F又は-CH
3
である、項目1~16のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目18]
R
5
が、Clである、項目1~17のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目19]
Xが、Sであり、Yが、-C(CN)-であり、R
3
が、Fであり、R
4a
が、Hであり、R
4b
が、Hであり、R
4c
が、Fであり、R
5
が、Clである、項目1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目20]
【化130】
から選択される、項目1に記載の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
[項目21]
【化131】
である、項目20に記載の化合物。
[項目22]
項目1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
[項目23]
がんの患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の項目22に記載の薬学的組成物を投与することを含み、前記がんが、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び結腸直腸がんから選択される、方法。
[項目24]
がんの患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の項目1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、前記がんが、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び結腸直腸がんから選択される、方法。
[項目25]
前記がんが、非小細胞肺がんであり、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する、項目24又は25に記載の方法。
[項目26]
前記がんが、結腸直腸がんであり、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する、項目24又は25に記載の方法。
[項目27]
前記がんが、膵臓がんであり、1つ以上の細胞が、KRas G12D変異体タンパク質を発現する、項目24又は25に記載の方法。
[項目28]
前記患者が、前記化合物又はその薬学的に許容される塩の投与前に前記KRas G12D変異体タンパク質を発現する1つ以上の細胞を有すると決定されたがんを有する、項目24又は25に記載の方法。
[項目29]
KRas G12D変異を有するがんを有する患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の項目1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
[項目30]
前記患者に、有効量の、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CD4/CDK6阻害剤、EGFR阻害剤、ERK阻害剤、オーロラA阻害剤、SHP2阻害剤、白金剤、及びペメトレキセドのうちの1つ以上、又はそれらの薬学的に許容される塩も投与される、項目24~29のいずれか一項に記載の方法。
[項目31]
療法に使用するための、項目1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目32]
がんの治療に使用するための、項目1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目33]
前記がんが、肺がん、膵臓がん、子宮頸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆管がん、及び直腸結腸がんから選択される、項目32に記載の使用のための化合物、又はその薬学的に許容される塩。
[項目34]
PD-1若しくはPD-L1阻害剤、CD4/CDK6阻害剤、EGFR阻害剤、ERK阻害剤、オーロラA阻害剤、SHP2阻害剤、白金剤、及びペメトレキセドのうちの1つ以上、又はそれらの薬学的に許容される塩と同時に組み合わせて、別個に組み合わせて、又は順次組み合わせてがんの治療に使用するための、項目1~21のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩。