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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-17
(45)【発行日】2025-04-25
(54)【発明の名称】電子機器及び電子機器筐体
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20250418BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20250418BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20250418BHJP
【FI】
G06F1/16 312J
G06F1/16 312E
H05K5/02 V
F16C11/04 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024183597
(22)【出願日】2024-10-18
【審査請求日】2024-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
(72)【発明者】
【氏名】笹井 美里
(72)【発明者】
【氏名】杉沢 和敏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健二
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-510220(JP,A)
【文献】特表2016-516952(JP,A)
【文献】特表2013-508818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
H05K 5/02
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体をヒンジで連結した電子機器であって、
前記ヒンジは、
回転軸となるヒンジシャフトと、
前記第1筐体と固定され、前記ヒンジシャフトの一端を支持した第1ブラケットと、
前記第2筐体と固定され、前記ヒンジシャフトの他端を支持した第2ブラケットと、
を備え、
前記第1ブラケットは、プレート状部と、該プレート状部と一体に形成され、前記ヒンジシャフトの一端を支持する軸受部と、を有し、
前記第1筐体の一縁部には、前記プレート状部が接着剤で固定される被接着面が設けられ、
前記プレート状部は、前記第1筐体の一縁部から反対側の他縁部に向かう第1方向で前記他縁部に近い側の端部に面取り部又は凹状部を有し、
前記面取り部又は凹状部は、前記被接着面側を臨むように設けられ、前記接着剤が充填されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1筐体は、前記第1方向で前記被接着面の前記他縁部側で起立した土手部を有し、
前記接着剤は、前記面取り部又は凹状部と、前記土手部との間に充填されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記プレート状部は、前記一縁部に沿う第2方向に対して、前記軸受部よりも幅広に形成され、
前記面取り部又は凹状部は、少なくとも前記プレート状部が前記軸受部と前記第1方向にオーバーラップする範囲に形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
ヒンジの回転軸となるヒンジシャフトの一端を支持するためのブラケットが固定された電子機器筐体であって、
前記ブラケットは、プレート状部と、該プレート状部と一体に形成され、前記ヒンジシャフトの一端を支持する軸受部と、を有し、
当該電子機器筐体の一縁部には、前記プレート状部が接着剤で固定される被接着面が設けられ、
前記プレート状部は、前記一縁部から反対側の他縁部に向かう第1方向で前記他縁部に近い側の端部に面取り部又は凹状部を有し、
前記面取り部又は凹状部は、前記被接着面側を臨むように設けられ、前記接着剤が充填されている
ことを特徴とする電子機器筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び電子機器筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、ディスプレイパネルを備える第1筐体と、キーボード等を備える第2筐体とをヒンジで連結した構成がある。この種の電子機器では、第1筐体に支持部品を固定し、この支持部品にヒンジシャフトを支持するブラケットをねじ止めした構成がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-139653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は軽量化及び薄型化の要望が強い。そこでヒンジは、支持部品を用いず、ヒンジシャフトを支持したブラケットを直接的に筐体に接着固定することが考えられる。この構成では、ブラケットと筐体との接着部には筐体の回動時の負荷が直接的に作用するため、ブラケットの接着強度が問題になる。また、例えば筐体間が180度まで回動可能な電子機器において、180度を超える方向の回転力が付与される場合もある。この場合、筐体にはブラケットとの接着部を引き剥がす方向の力が作用するため、ブラケットの接着強度が一層問題となる。なお、ブラケットの接着面積を増大させて接着強度を担保することも考えられるが、筐体内のスペースとの兼ね合いで制限がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ヒンジのブラケットの接着強度を向上させることができる電子機器及び電子機器筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る電子機器は、第1筐体と第2筐体をヒンジで連結した電子機器であって、前記ヒンジは、回転軸となるヒンジシャフトと、前記第1筐体と固定され、前記ヒンジシャフトの一端を支持した第1ブラケットと、前記第2筐体と固定され、前記ヒンジシャフトの他端を支持した第2ブラケットと、を備え、前記第1ブラケットは、プレート状部と、該プレート状部と一体に形成され、前記ヒンジシャフトの一端を支持する軸受部と、を有し、前記第1筐体の一縁部には、前記プレート状部が接着剤で固定される被接着面が設けられ、前記プレート状部は、前記第1筐体の一縁部から反対側の他縁部に向かう第1方向で前記他縁部に近い側の端部に面取り部又は凹状部を有し、前記面取り部又は凹状部は、前記被接着面側を臨むように設けられ、前記接着剤が充填されている。
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器筐体は、ヒンジの回転軸となるヒンジシャフトの一端を支持するためのブラケットが固定された電子機器筐体であって、前記ブラケットは、プレート状部と、該プレート状部と一体に形成され、前記ヒンジシャフトの一端を支持する軸受部と、を有し、当該電子機器筐体の一縁部には、前記プレート状部が接着剤で固定される被接着面が設けられ、前記プレート状部は、前記一縁部から反対側の他縁部に向かう第1方向で前記他縁部に近い側の端部に面取り部又は凹状部を有し、前記面取り部又は凹状部は、前記被接着面側を臨むように設けられ、前記接着剤が充填されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、ヒンジのブラケットの接着強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
図2図2は、第1筐体の模式的な平面図である。
図3図3は、図2に示す第1ブラケット及びその周辺部の斜視図である。
図4図4は、第2筐体に対して180度位置に回転させた第1筐体の模式的な側面断面図である。
図5図5は、第1ブラケットの斜視図である。
図6A図6Aは、図2中のVIA-VIA線に沿う模式的な断面図である。
図6B図6Bは、図2中のVIB-VIB線に沿う模式的な断面図である。
図7図7は、第1変形例に係る第1ブラケット及びその周辺部の側面断面図である。
図8図8は、第2変形例に係る第1ブラケット及びその周辺部の側面断面図である。
図9図9は、第3変形例に係る第1ブラケット及びその周辺部の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器及び電子機器筐体について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、本実施形態の電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCであり、第1筐体11と第2筐体12とをヒンジ14によって相対的に回動可能に連結した構成である。本実施形態では、ノート型PCの電子機器10を例示しているが、電子機器はノート型PC以外、例えば単体のディスプレイ装置、タブレット型PC、スマートフォン、又は携帯用ゲーム機等でもよい。
【0012】
第2筐体12は、扁平な箱体であり、第1筐体11と隣接している。第2筐体12の内部には、CPU等を搭載したマザーボード、バッテリ装置、メモリ、アンテナ装置等の各種電子部品が収容されている。第2筐体12の上面には、キーボード16及びタッチパッド17が臨んでいる。
【0013】
第1筐体11は、第2筐体12よりも薄い扁平な箱体である。第1筐体11は、ディスプレイパネル18を搭載している。以下、第1筐体11及びこれに搭載された各構成要素について、ディスプレイパネル18の表示面18aを視認するユーザから見た方向を基準とし、左右方向をそれぞれX1,X2方向、上下方向をそれぞれY1,Y2方向、奥行方向(厚み方向)をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。
【0014】
ディスプレイパネル18の表示面18aは、第1筐体11のZ1側表面(正面11a)を臨んでいる。第1筐体11は、Z2側表面(背面11b)を形成する筐体部材20と、正面11aの周縁部を形成するベゼル部材22とを有する。第1筐体11の上下左右の側面は、筐体部材20の四周縁部から起立した立壁23によって形成されている。ベゼル部材22は、ディスプレイパネル18の外周縁部を囲む枠状の薄いプレートである。ヒンジ14は、第1筐体11のY2側縁部(一縁部20b)に連結され、X方向に延在する棒状のヒンジカバー34で覆われている。
【0015】
ディスプレイパネル18は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。ディスプレイパネル18は、例えばガラス、液晶層、及び導光板等を積層してそれぞれの層の外周縁部同士を両面テープや接着剤等で固定した構造である。ディスプレイパネル18は、筐体部材20の内面20aに対して両面粘着テープ24図2参照)で固定される。
【0016】
図2は、第1筐体11の模式的な平面図である。図2は、ディスプレイパネル18及びベゼル部材22を取り外して第1筐体11の内部構造を模式的に示している。図3は、図2に示す第1ブラケット30及びその周辺部の斜視図である。図4は、第2筐体12に対して180度位置に回転させた第1筐体11の模式的な側面断面図である。
【0017】
図2図4に示すように、本実施形態の筐体部材20は、中央部を含む大部分を形成する矩形状のプレート部26と、プレート部26の外周縁部に接合された枠状のフレーム部27と、を有する。
【0018】
プレート部26は、例えばプリプレグの積層板、樹脂板、又はアルミニウムやチタン等の金属板で構成される。プリプレグの積層板は、例えば炭素樹脂等の強化繊維にマトリクス樹脂(例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂)を含浸させたプリプレグを複数層積層し、仕様によってはプリプレグ層間に発泡体等の中間材を挟んだものである。本実施形態のプレート部26は、強化繊維として炭素繊維を用いた炭素繊維強化樹脂プレート(CFRPプレート)である。
【0019】
フレーム部27は、プレート部26の外周縁部に樹脂材を射出成形し、接合したものである。フレーム部27は、例えばPCCF(炭素繊維強化ポリカーボネート)で形成することができる。CFRPで形成されたプレート部26は、軽く且つ高強度であるが、機械加工や形状加工の施工性に問題がある。そこで筐体部材20は、プレート部26の周囲に樹脂材で形成されたフレーム部27を設け、このフレーム部27に形成する立壁23や後述する被接着面38及び土手部42等の各種形状を形成している。
【0020】
一縁部20bを含む筐体部材20の外周縁部には、プレート部26の内面26aにフレーム部27を積層した積層部28が設けられている。積層部28は、プレート部26に対するフレーム部27の接合強度を高め、同時にプレート部26の内面26aの縁部にフレーム部27による突起や凹み等の形状を設けるためのものである。
【0021】
なお、本実施形態の筐体部材20は、プレート部26の中央が周囲よりも滑らかに窪んだドーム状の曲面形状20dを有する(図4参照)。曲面形状20dは、プレート部26の一部又は全部を背面11b側に膨出させることで、内面20aを皿状に窪ませたものである。プレート部26は曲面形状20dを形成せず、全体を平面で形成してもよい。
【0022】
次に、ヒンジ14及びその周辺部の構成を説明する。
【0023】
図2図4に示すように、ヒンジ14は、第1筐体11を構成する筐体部材20の一縁部20bに連結されている。ヒンジ14は、第1ブラケット30と、第2ブラケット31と、ヒンジシャフト32と、ヒンジカバー34とを有することができる。ヒンジ14は、ブラケット30,31及びヒンジシャフト32を左右一対設置し、左右の第1ブラケット30及びヒンジシャフト32を1本の棒状のヒンジカバー34で覆った構成である。ヒンジカバー34は左右の第1ブラケット30及びヒンジシャフト32に対してそれぞれ個別に設置されてもよい。
【0024】
図5は、第1ブラケット30の斜視図である。図6Aは、図2中のVIA-VIA線に沿う模式的な断面図である。図6Bは、図2中のVIB-VIB線に沿う模式的な断面図である。図6A及び図6Bは、第1ブラケット30及びその周辺部の断面構造を示している。
【0025】
図2図6Bに示すように、第1ブラケット30は、第1筐体11を構成する筐体部材20の一縁部20bの内面20aに接着固定される。つまり第1ブラケット30は積層部28の内面20aに固定されている。
【0026】
第1ブラケット30は、プレート状部36と、軸受部37とを有する。プレート状部36及び軸受部37は一体に形成されている。第1ブラケット30は、例えばアルミニウム合金、チタン、ステンレス等の金属をCNC(コンピュータ数値制御)加工によって削り出して成形したものである。
【0027】
軸受部37はヒンジシャフト32の一端を支持する部分である。軸受部37はプレート状部36のY2側縁部からZ1方向に起立しており、側面視で略アーム形状或いはP字形状を有する。軸受部37にはヒンジシャフト32の一端が挿入される軸穴37aがX方向に沿って形成されている。本実施形態の場合、ヒンジ14は、ヒンジシャフト32の一端が軸穴37aに相対回転不能に嵌合される。つまり第1筐体11はヒンジシャフト32と一体的に回転する。
【0028】
プレート状部36は、第1筐体11に固定される部分である。プレート状部36は、例えば平面視で略台形状或いは略組形状の外形を有する薄いプレート部分である。プレート状部36は、Z2側表面(接着面36a)が筐体部材20の被接着面38に接着剤40で固定される。被接着面38は一縁部20bの内面20aに形成されている。接着剤40は、例えば2液硬化型のエポキシ系接着剤を用いることができるが、その種類はこれに限られない。
【0029】
被接着面38は、筐体部材20の一縁部20bの長手方向(X方向)に沿って設けられている。図6A及び図6Bに示すように、被接着面38は筐体部材20の曲面形状20dに対応するようにY方向に段差を有している。筐体部材20がフラットである場合には、被接着面38もフラット面で形成するとよい。被接着面38の一部には、Z1側に僅かに突出した支持面38aを設けることができる。支持面38aはプレート状部36の接着面36aと被接着面38との空間を確保し、接着剤40の塗布厚みを確保するものである。
【0030】
被接着面38の周囲は内面20aからZ1方向に起立した土手部42で囲むことができる。土手部42は被接着面38の周囲に接着剤40が漏れることを防止する機能を有する壁である。土手部42のZ方向高さは、例えばプレート状部36の厚みと同程度である。土手部42は、後述する面取り部44の内側空間に充填される接着剤40の充填量を担保し、接着剤40の厚みをより確実に確保する機能も有する。
【0031】
図5図6Bに示すように、プレート状部36は面取り部44を有する。面取り部44はプレート状部36のY1側の端部に形成されている。つまりプレート状部36は、一縁部20bから反対側の他縁部20cに向かうY方向で他縁部20cに近い側の端部に面取り部44を有する。面取り部44は接着面36aとY1側の端面36bとの角部に形成された傾斜面である。面取り部44は被接着面38側を臨むように配置され、同時に土手部42側も臨んでいる。
【0032】
図3中の参照符号36cはプレート状部36を板厚方向(Z方向)に貫通した位置決め孔である。位置決め孔36cには被接着面38からZ1方向に突出した位置決めピン38bが嵌合し、プレート状部36の被接着面38に対する位置決めを行う。
【0033】
図2及び図4に示すように、第2ブラケット31は、第2筐体12内で後縁部12aにねじ止め等で固定される。第2ブラケット31は所定のトルク発生部を介してヒンジシャフト32の他端を相対回転可能に支持している。
【0034】
以上のように、本実施形態の電子機器10及びこれを構成する電子機器筐体(第1筐体11)は、プレート状部36と、プレート状部36と一体に形成され、ヒンジシャフト32の一端を支持する軸受部37とを有する第1ブラケット30を備える。第1筐体11の一縁部20bには、プレート状部36が接着剤40で固定される被接着面38が設けられている。プレート状部36は、筐体部材20の一縁部20bから反対側の他縁部20cに向かうY方向(第1方向)で他縁部20cに近い側の端部に面取り部44を有する。面取り部44は被接着面38側を臨むように設けられ、接着剤40が充填されている。つまりプレート状部36は、Y1側の角部に面取り部44を有することで、接着面36aの他の位置よりも被接着面38との間に接着剤40を厚く貯めることができる充填空間を形成している。
【0035】
このように、第1ブラケット30の接着面36aは第1筐体11の被接着面38に対して接着剤40で固定される。さらに第1ブラケット30は、内側に充填空間を形成した面取り部44の表面が被接着面38に対して厚みを拡大した接着剤40で固定される。面取り部44に充填され、他の位置よりも塗布厚みを拡大させた接着剤40を、以下では「接着剤40A」と呼ぶこともある。
【0036】
従って、第1ブラケット30は被接着面38に対して接着剤40,40Aで接着されるため、第1筐体11に対する接着強度が向上する。特に第1ブラケット30は、ねじを用いずに接着剤40によって直接的に筐体部材20に固定されている。このため第1ブラケット30と被接着面38との接着部は、筐体11,12間を回動させた際にヒンジ14に加わる負荷を直接的に受けることになる。しかしながら第1ブラケット30はY1側端部に面取り部44を有する。これにより第1ブラケット30は、塗布厚みを増大させて接着強度を増した接着剤40Aによって筐体11,12の回動時の負荷を受け止めることができ、剥離を抑制できる。
【0037】
ところで、例えば図4に示すように、第1筐体11が第2筐体12に対して180度位置に回転された場合において、第1筐体11の他縁部20cに180度を超える方向の力F1が加えられた場合を考えてみる。つまり第1筐体11が第2筐体12に対して設計上の回転限度を超えて回転させられた場合を考える。この場合、第1筐体11は一縁部20bが第2筐体12の後縁部12aに当たり、それ以上の回転が物理的に阻止されている。このため第1ブラケット30と第1筐体11との接着部には、ヒンジシャフト32を回転支点とした「てこの原理」により、筐体部材20が図4中で時計方向に回転する力F2が負荷される。この力F2は、特に第1ブラケット30のY1側の端部(端面36b)付近において、接着面36aと被接着面38とを互いに引き剥がす方向に特に強く作用する。
【0038】
そこで、本実施形態では、第1ブラケット30のY1側端部に面取り部44を設け、その内側の充填空間に塗布厚みを増大させた接着剤40Aを保持している。これにより第1ブラケット30は、接着剤40Aの大きな接着強度により、力F2の影響を特に受けるY1側端部での被接着面38からの剥離を抑制できる。その結果、電子機器10は上記のような回転限度(例えば180度)を超えた負荷が付与された場合であっても第1ブラケット30が被接着面38から剥離することを効果的に抑制できる。
【0039】
本実施形態の第1ブラケット30は、上記したようにアルミニウム等の金属をCNC加工で削り出して成形することができる。このため面取り部44は、いわゆる後加工でカットしたものではなく、第1ブラケット30の削り出し加工時に同時に成形することができ、製造効率が高い。
【0040】
第1筐体11は、Y方向で被接着面38の他縁部20c側(Y1側)で起立した土手部42を有することができる。図6A及び図6Bに示すように、接着剤40Aは、面取り部44と土手部42との間に充填されていることができる。これにより電子機器10は、塗布厚みを増大させた接着剤40AのY方向での幅も十分に確保でき、接着強度が一層安定する。
【0041】
図3に示すように、本実施形態のプレート状部36は、一縁部20bに沿うX方向(第2方向)に対して軸受部37よりも幅広に形成されている。この場合、面取り部44は、少なくともプレート状部36が軸受部37とY方向にオーバーラップする範囲Rに形成されていることができる。これにより第1ブラケット30は、力F2の支点となる軸受部37と向かい合う範囲Rに接着剤40Aを確実に設置できる。このため電子機器10は、力F2での第1ブラケット30の剥離を一層効率よく抑制することができる。勿論、図4に示すように、面取り部44はプレート状部36のX方向の全幅に亘って形成されていてもよい。そうすると接着剤40Aはその範囲が最大に確保できるため、接着強度がさらに向上する。
【0042】
接着剤40の塗布厚みを増大させる構成は面取り部44に限られない。以下の各変形例に係る構成でも第1ブラケット30A~30Cの接着強度を向上させることができる。
【0043】
図7は、第1変形例に係る第1ブラケット30A及びその周辺部の側面断面図である。図7に示す第1ブラケット30Aは、図6A及び図6Bに示す第1ブラケット30と比べて、面取り部44とは形状の異なる面取り部46を有する。面取り部44はいわゆるCカット面である。これに対して、面取り部46は端面36bと接着面36aとの角部を矩形状にカットしたような形状を有する。このような面取り部46も、プレート状部36のY1側の端部と被接着面38との間に塗布厚みを増大させた接着剤40Aを充填する充填空間を形成できる。
【0044】
図8は、第2変形例に係る第1ブラケット30B及びその周辺部の側面断面図である。図8に示す第1ブラケット30Bは、図6A及び図6Bに示す第1ブラケット30と比べて、面取り部44とは形状の異なる面取り部48を有する。面取り部48は端面36bと接着面36aとの角部を断面円弧状にカットしたような形状(R形状)を有する。このような面取り部48も、プレート状部36のY1側の端部と被接着面38との間に塗布厚みを増大させた接着剤40Aを充填する充填空間を形成できる。
【0045】
図9は、第3変形例に係る第1ブラケット30C及びその周辺部の側面断面図である。図9に示す第1ブラケット30Cは、面取り部44,46,48に代えて凹状部50を有する。凹状部50は、プレート状部36のY1側の端部近傍に形成され、接着面36aをZ1方向に穴状に掘り下げたようなスリット形状を有する。このような凹状部50も、プレート状部36のY1側の端部と被接着面38との間に塗布厚みを増大させた接着剤40Aを充填する充填空間を形成できる。
【0046】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10 電子機器
11 第1筐体
12 第2筐体
14 ヒンジ
18 ディスプレイパネル
20 筐体部材
30,30A~30C 第1ブラケット
31 第2ブラケット
32 ヒンジシャフト
36 プレート状部
36a 接着面
37 軸受部
38 被接着面
40,40A 接着剤
42 土手部
44,46,48 面取り部
50 凹状部
【要約】
【課題】ヒンジのブラケットの接着強度を向上させる。
【解決手段】電子機器は、第1筐体と第2筐体をヒンジで連結した電子機器であって、前記ヒンジは、回転軸となるヒンジシャフトと、前記第1筐体と固定され、前記ヒンジシャフトの一端を支持した第1ブラケットと、前記第2筐体と固定され、前記ヒンジシャフトの他端を支持した第2ブラケットと、を備え、前記第1ブラケットは、プレート状部と、該プレート状部と一体に形成され、前記ヒンジシャフトの一端を支持する軸受部と、を有し、前記第1筐体の一縁部には、前記プレート状部が接着剤で固定される被接着面が設けられ、前記プレート状部は、前記第1筐体の一縁部から反対側の他縁部に向かう第1方向で前記他縁部に近い側の端部に面取り部又は凹状部を有し、前記面取り部又は凹状部は、前記被接着面側を臨むように設けられ、前記接着剤が充填されている。
【選択図】図6A
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9